SERT、5−HT3および5−HT1Aの組み合わせた活性を有する化合物の治療的使用
1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンおよびその薬学的に許容可能な塩の新規の薬学的使用が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SERT、5−HT3および5−HT1Aの組み合わせた活性を有する化合物の治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は有効であり、前の世代のCNS薬(すなわち、いわゆる三環系抗うつ薬)と比較して有利な安全性プロファイルを有するので、うつ病および不安などの多数のCNS疾患を処置するために医師によって何年もの間支持されてきた。それにもかかわらず、SSRIは、かなりの割合の非応答者(すなわち、処置に反応しないかまたは完全には反応しない患者)によって妨げられてもいる。さらに、通常SSRIは、数週間の処置の後に始めて効果を示すようになる。最後に、SSRIは通常三環系抗うつ薬よりも少ない有害作用を引き起こすが、SSRIの投与は性的な副作用および睡眠問題などの有害作用をもたらすことが多い。これらの有害作用は多くの患者にとって受け入れるのが困難であり、SSRIを受ける患者のかなりの割合で、処置のドロップアウトを生じ得る。
【0003】
セロトニントランスポーター(SERT)の阻害と、1つまたは2つ以上のセロトニン受容体における活性との組み合わせは有益であり得ることが知られている。5−HT1A部分アゴニストであるピンドロールと、セロトニン再取り込み阻害薬との組み合わせは効果の速やかな発現を引き起こすことが報告されている[非特許文献1]。これは、臨床におけるセロトニンレベルの増大効果のより急速な発現と、セロトニン再取り込み阻害薬の治療効果の増大または増強とを暗示し得る。
【0004】
例えばうつ病、不安および統合失調症などのCNS関連の疾患は、認知障害または認知機能障害などの他の障害または機能不全を併発していることが多い[非特許文献2、非特許文献3]。
【0005】
いくつかの神経伝達物質は、認知を調節するニューロン事象に関与すると推定される。特に、コリン作動系は認知において大きな役割を果たし、従って、コリン作動系に影響を及ぼす化合物は、認知機能障害の処置のために潜在的に有用である。5−HT1A受容体および/または5−HT3受容体に影響を及ぼす化合物はコリン作動系に影響を及ぼすことが知られており、従って、これらは認知機能障害の処置において有用であり得る。
【0006】
従って、5−HT1Aおよび/または5−HT3受容体活性を発揮する化合物は、認知機能障害の処置において有用であることが期待され得る。さらにSERT活性も発揮する化合物は、セロトニンレベルの(より速い)増大から利益を享受し得る疾患も患っている患者における認知機能障害の処置のために特に有用であり得る。
【0007】
特許文献1として公開された国際出願は、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジン(実施例1e)を含む、セロトニン再取り込み阻害活性を有する様々な化合物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2003/029232号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/144005号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Psych.Res.,125,81−86,2004
【非特許文献2】Scand.J.Psych.,43,239−251,2002
【非特許文献3】Am.J.Psych.,158,1722−1725,2001
【非特許文献4】T.Sumiyoshi、Am.J.Psych.,158,1722−1725,2001
【非特許文献5】Y.Chung、Brain Res.,1023,54−63,2004
【非特許文献6】Preston、Recent Advances in the treatment of Neurodegenerative disorders and cognitive function,1994,(編)RacagniおよびLanger,Basel Karger,p.89−93
【非特許文献7】J.Nervous Mental Disease,185,748−754,1997
【非特許文献8】Brain Res.Bull.,58,345−350,2002
【非特許文献9】Hum Psychpharmacol.,8,41−47,1993
【非特許文献10】Int.Clin.Psychpharm.,21(suppl 1),S25−S29,2006
【非特許文献11】Hum.Psychopharm.Clin.Exp.,20,533−559,2005
【非特許文献12】J.Clin.Psych.,66,844−848,2005
【非特許文献13】Pavlov J.Biol.Sci.,15、177−182、1980
【非特許文献14】Hippocampus,11,8−17,2001
【非特許文献15】J.Neurosci.,19,1106−1114,1999
【非特許文献16】Behav.Neurosci.,106,274−285,1992
【非特許文献17】Pavlov J.Biol.Sci,15,177−182,1980
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願の優先日の後に公開された国際出願の特許文献2は、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンが5−HT3アンタゴニストおよび5−HT1A部分アゴニストでもあることを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、驚くべきことに、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンがSERT阻害、5−HT3アンタゴニズムおよび5−HT1Aアゴニズムの組み合わせを発揮することを発見した。従って、本発明は疾患の処置方法を提供し、この方法は、治療的有効量の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]−ピペラジンまたはその薬学的に許容可能な塩を、それを必要としている患者に投与することを含む。
【0012】
一実施形態では、本発明は、疾患の処置のための薬剤の製造における、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンまたはその薬学的に許容可能な塩の使用に関する。
【0013】
一実施形態では、本発明は、疾患の処置において使用するための1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンまたはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】結晶性塩基のXRPD。
【図2】臭化水素酸塩のα型のXRPD。
【図3】臭化水素酸塩のβ型のXRPD。
【図4】臭化水素酸塩のγ型のXRPD。
【図5】臭化水素酸塩の半水和物のXRPD。
【図6】プラセボ、5mgおよび10mgの化合物I(HBr塩)のHAM−D評価項目4(入眠障害(Insomnia Early))の6週間にわたる変化。各グループ内の患者は約100人であった。
【図7】プラセボ、5mgおよび10mgの化合物I(HBr塩)のHAM−D評価項目5(熟眠障害(Insomnia Middle))の6週間にわたる変化。各グループ内の患者は約100人であった。
【図8】プラセボ、5mgおよび10mgの化合物I(HBr塩)のHAM−D評価項目6(早朝睡眠障害(Insomnia Late))の6週間にわたる変化。各グループ内の患者は約100人であった。
【図9a】皮内ホルマリン試験における化合物Iの効果。X軸は投与された化合物の量を示し、Y軸は足をなめるのに費やされた時間の量(秒)を示す。0〜5分の期間の応答。
【図9b】皮内ホルマリン試験における化合物Iの効果。X軸は投与された化合物の量を示し、Y軸は足をなめるのに費やされた時間の量(秒)を示す。20〜30分の期間の応答。
【図10a】1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンHBr塩を投与したときの自由行動ラットの前前頭皮質における細胞外アセチルコリンレベル。
【図10b】1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンHBr塩を投与したときの自由行動ラットの腹側海馬における細胞外アセチルコリンレベル。
【図11】獲得の60分前に与えられたときの、Sprague−Dawleyラットの文脈的恐怖条件付け(contextual fear conditioning)に対する1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンHBr塩の効果。フットショックUSの前の58秒間の馴化期間中、すくみ行動(freezing behaviour)をスコア化した(ショック前獲得)(白色バー)。訓練の24時間後にすくみ行動を測定した(保持試験)(黒色バー)。
【図12】保持試験の1時間前に与えられたときの、Sprague−Dawleyラットの文脈的恐怖条件付けに対する1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンHBr塩の効果。フットショックUSの前の58秒間、すくみ行動をスコア化した(獲得)(白色バー)。訓練の24時間後にすくみ行動を測定した(保持試験)(黒色バー)。
【図13】獲得の直後に与えられたときの、Sprague−Dawleyラットの文脈的恐怖条件付けに対する1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンHBr塩の効果。フットショックUSの前の58秒間、すくみ行動をスコア化した(ショック前獲得)(白色バー)。訓練の24時間後にすくみ行動を測定した(保持試験)(黒色バー)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、その構造が
【化1】
である化合物I、すなわち1−[2−(2,4−ジメチルフェニル−スルファニル)−フェニル]ピペラジンおよびその薬学的に許容可能な塩の使用に関する。
【0016】
一実施形態では、前記薬学的に許容可能な塩は、無毒性の酸の酸付加塩である。前記塩には、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、コハク酸、シュウ酸、ビス−メチレンサリチル酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、ケイ皮酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イタコン酸、グリコール酸、p−アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、テオフィリン酢酸、ならびに8−ハロテオフィリン(例えば、8−ブロモテオフィリン)などの有機酸から作られる塩が含まれる。また前記塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸および硝酸などの無機塩から作られてもよい。メタンスルホン酸、マレイン酸、フマル酸、メソ−酒石酸、(+)−酒石酸、(−)−酒石酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、亜リン酸および硝酸から作られる塩が特に言及される。明確に言及されるのは、臭化水素酸塩である。
【0017】
一実施形態では、本発明は開示されたような化合物Iの使用に関するが、ただし、前記化合物は、非結晶形態の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの遊離塩基ではないことを条件とする。
【0018】
経口剤形、特に錠剤は、投与の容易さおよびその結果であるより良いコンプライアンスのために、患者および開業医に好まれることが多い。錠剤の場合、活性成分は結晶性であることが好ましい。一実施形態では、本発明は、結晶性である化合物の使用に関する。本発明において使用される化合物の結晶化度は、図1〜5に示されるXRDPによって明示される。特許文献2は、本発明において使用されるさらなる塩のXRPD反射を開示する。以下の表は、本発明において使用されるいくつかの化合物の主要なXRDP反射を要約する。
【0019】
【表1】
【0020】
一実施形態では、本発明において使用される結晶は、溶媒和物、すなわち溶媒分子が結晶構造の一部を形成する結晶である。溶媒和物は水から形成されてもよく、その場合には、溶媒和物は水和物と呼ばれることが多い。あるいは、溶媒和物は、例えば、エタノール、アセトン、または酢酸エチルなどの他の溶媒から形成されてもよい。溶媒和物の正確な量は条件に依存することが多い。例えば、温度が上昇するにつれて、または相対湿度が低下するにつれて、通常、水和物は水を失うであろう。
【0021】
一実施形態では、本発明の化合物は溶媒和されていない結晶である。
【0022】
いくつかの化合物は吸湿性であり、すなわち、これらは湿気にさらされたときに水を吸収する。吸湿性は、一般に、医薬品製剤、特に錠剤などの乾燥製剤中で与えられる化合物にとって好ましくない特性であるとみなされる。一実施形態では、本発明は、吸湿性の低い結晶を提供する。結晶性活性成分を用いる経口剤形のために、前記結晶が詳細に定義されていることも有益である。本発明との関連では、「詳細に定義された(well−defined)」という用語は、特に、化学量論が詳細に定義されていること、すなわち、塩を形成するイオン間の比が、1:1、1:2、2:1、1:1:1などの小さい整数の比であることを意味する。一実施形態では、本発明の化合物は、詳細に定義された結晶である。
【0023】
本発明において使用される結晶性化合物は2つ以上の形態で存在してもよく、すなわち、これらは多形形態で存在してもよい。多形形態は、化合物が2つ以上の形態で結晶化できる場合に存在する。本発明は、全てのこのような多形形態を、純粋な化合物として、またはこれらの混合物としてのいずれかで包含することが意図される。
【0024】
一実施形態では、本発明は、精製された形態の化合物を使用する。「精製された形態」という用語は、化合物が、場合によって、他の化合物または同じ化合物の他の形態を本質的に含まないことを示すことが意図される。
【0025】
例えば、図2〜5によって明らかであるように、本発明において使用される化合物(この場合は、臭化水素酸塩)はいくつかの形態で存在し得る、すなわち多形であり得る。多形形態は異なる特性を有し、実施例2において示されるとおりである。臭化水素酸塩のβ型は、より高いDSC融点およびより低い溶解度によって実証されるように、より安定である。さらに、β型は低い吸湿性および溶解度の魅力的な組み合わせを有し、このことによって、この化合物は錠剤の製造に特に適している。従って、一実施形態では、本発明は、約6.89、9.73、13.78および14.62(°2θ)におけるXRDP反射を有する、特に図3に示されるようなXRPDを有する1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの臭化水素酸塩の使用を提供する。
【0026】
活性成分の溶解度も、バイオアベイラビリティに直接的な影響を与えるので、剤形の選択のために重要である。経口剤形のためには、活性成分のより高い溶解度はバイオアベイラビリティを増大させるので、一般的に有益であると考えられる。
【0027】
実施例1に示されるように、本発明において使用される化合物はヒトセロトニントランスポーターの強力な阻害薬であり、すなわち、これらはセロトニン再取り込みを阻害する。さらに、化合物は、マウス、ラット、モルモットおよびイヌ5−HT3受容体における強力なアンタゴニストである。卵母細胞にクローニングされたヒト5−HT3受容体において、化合物は、低濃度ではアンタゴニストである(IC50約20nM)が、より高い濃度では化合物はアゴニスト特性を示す(ED50=2.1μM)ことが分かった。高濃度の本発明の化合物のその後の適用は、アゴニスト応答を示さなかったが、これは、インビトロにおける急速な脱感作(desenitisation)または直接的なアンタゴニズムによるものであろう。従って、低濃度では、本発明の化合物は、他の種からの5−HT3受容体において観察されるように、ヒト5−HT3受容体における著しいアンタゴニズムを示す。またデータは、本発明において使用される化合物が、5−HT1A受容体におけるアゴニストであり、15nMのKi値および96%固有活性(または効力)を有することも示す。特許文献2はわずかに異なる値を開示する。しかしながら、この違いは程度の問題であり、化合物の認知の基本的な変化を要求しないと考えられる。
【0028】
上記のように、5−HT1Aアゴニストおよび/または5−HT3アンタゴニストである化合物が認知障害の処置において有用であることが期待されることについては理論的な理由があり、このことは、臨床的な証拠によって支持されている。非特許文献4は、プラセボまたはタンドスピロン(5−HT1Aアゴニストである)と組み合わせて、ハロペリドール、スルピリド(sulpride)およびピモジドなどの定型抗精神病薬(これらは全て5−HT1A活性を欠いている)を、患者に受けさせた研究を報告している。抗精神病薬に加えてタンドスピロンを受けている患者は、その認知能力の改善を示したが、プラセボを受けている患者は示さなかった。同様に、5−HT1Aアゴニストでもあるクロザピンなどの非定型抗精神病薬は、統合失調症患者において認知を向上させるが、5−HT1A活性を持たないハロペリドールなどの定型抗精神病薬は向上させない[非特許文献5]。健康な男性被験者の無作為化二重盲検交差研究において、言語および空間記憶ならびに持続的注意の評価によって、5−HT3アンタゴニストのアロセトロンは、スコポラミンに誘発される言語および空間記憶の欠損を減弱することが実証された[非特許文献6]。
【0029】
実施例5において示されるように、本発明の化合物は、ラット前前頭皮質および腹側海馬におけるアセチルコリンの細胞外レベルの増大を引き起こす。これらの前臨床知見は、認知機能障害(例えば、アルツハイマー病における)の処置におけるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の使用と比較して、認知機能障害の処置における臨床効果につながることが期待される。さらに、この見解への支持は実施例6に見出すことができ、データは、本発明の化合物がラットの文脈的(contextual)記憶を高めることを示す。全体として、ラットのアセチルコリンレベルおよび記憶における影響と組み合わせた本発明の化合物の薬理学的なプロファイルは、本発明において使用される化合物が、認知機能障害の処置において、あるいは患者が認知機能障害も患っている疾患の処置において有用であることを強く示唆する。
【0030】
認知機能障害は、うつ病(例えば、大うつ病性障害など)の典型的な特徴の1つである。抑うつ状態の改善が認知機能障害の改善ももたらし得るという意味では、認知障害はある程度うつ病に続発し得る。しかしながら、認知障害が実際にはうつ病から独立しているという明らかな証拠も存在する。例えば、研究によって、うつ病からの回復時に持続する認知機能障害が示されている[非特許文献7]。さらに、うつ病および認知機能障害に対する抗うつ薬の差動効果(differential effect)は、併発状態であることが多いがうつ病および認知機能障害が独立しているという考えに、さらなる支持を付与する。セロトニンおよびノルアドレナリン薬は抑うつ症状の同程度の改善を提供するが、いくつかの研究によって、ノルアドレナリン作動系の調節はセロトニン調節ほど認知機能を改善しないことが示されている[非特許文献8、非特許文献9]。
【0031】
認知機能は統合失調症患者で損なわれていることが多く、いわゆる統合失調症の陰性症状の一部を形成し得る。認知機能はADHD患者でも損なわれている。
【0032】
認知障害または認知機能障害には、認知機能または認知領域、例えば作業記憶、注意および警戒、言語学習および記憶、視覚学習および記憶、推論および問題解決、例えば実行機能、処理速度および/または社会的認知の低下が含まれる。特に、認知障害または認知機能障害は、注意欠陥、解体した思考、緩慢な思考、理解の困難、集中力低下、問題解決の障害、記憶の低下、思考の表現の困難および/または思考、感情および行動の統合の困難、または無関係な思考の消去の困難を示し得る。「認知障害」および「認知機能障害」という用語は同じものを示すことが意図され、交換可能に使用される。
【0033】
実施例4において与えられるデータは、化合物Iが疼痛の処置において有用であり、鎮痛効果さえも有し得る(動物モデルにおける神経因性疼痛の付加的な研究はこの観察を確認する)ことを示す。従って、化合物Iは、疼痛および感情または気分障害(疼痛、特に慢性疼痛に関連するうつ病および不安など)の処置において有用であり得る。慢性疼痛には、幻肢痛、神経因性疼痛、糖尿病性神経障害、ヘルペス後神経痛(PHN)、手根管症候群(CTS)、足根管症候群(tasus tunnel syndrome)、尺骨神経絞扼(ulnar nerve entrapment)、脊髄圧迫、HIV神経障害、複合性局所疼痛症候群(CPRS)、三叉神経痛(trigeminal neuralgia/trigeminus neuralgia)/疼痛性チック、外科的介入(例えば、術後鎮痛薬)、糖尿病性血管症、インスリン炎に関連する毛細血管抵抗または糖尿病症状、アンギナに関連する疼痛、月経に関連する疼痛、癌に関連する疼痛、歯痛、頭痛、片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経痛、顎関節症候群、筋筋膜痛筋傷害(myofascial pain muscular injury)、線維筋痛症候群、骨関節疼痛(変形性関節症)、関節リウマチ、やけどに関連する外傷から生じる関節リウマチおよび浮腫、捻挫または骨折、変形性関節症、骨粗鬆症、骨転移または未知の理由による疼痛、痛風、結合組織炎、筋筋膜痛、胸郭出口症候群、上背部痛または下背部痛(この背部痛は、系統的、局所性または原発性脊椎疾患(神経根障害)に起因する)、骨盤痛、心臓性胸痛、非心臓性胸痛、脊髄損傷(SCI)関連疼痛、中枢性脳卒中後痛、癌性神経障害、AIDS痛、鎌状赤血球痛(sickle cell pain)、むち打ち症および老人性疼痛などの徴候が含まれる。
【0034】
臨床的エンドポイントとしてHAM−D(うつ病のためのHamilton評価尺度)を用いて、化合物Iを臨床治験において試験した。HAM−D尺度を用いて、24項目の質問表により患者のうつ病の重症度を評価することができる。尺度の項目4、5および6は、患者がどのように眠るか、すなわち、眠りに落ちるのがどのくらい容易であるか(入眠障害)、患者が夜間にどのように目覚めるか(熟眠障害)、そして患者が早朝にどのように目覚めるか(早朝睡眠障害)に関する。治療群当たり約100人の患者で、プラセボに対して毎日5および10mgにおいて化合物を試験した。図6〜8のデータは、化合物Iが、睡眠パターンの大きく、用量依存性の改善を引き起こし、プラセボにより提供されるものよりも優れていることを明確に示す。睡眠障害がほとんどの抗うつ薬の一般的な有害作用であることはよく知られている。特に、SSRIおよびノルアドレナリントランスポーターを阻害する化合物は睡眠の開始および維持に関する問題を引き起こすことが報告されており、不眠に関する問題も頻繁に報告されている[非特許文献10]。他には、このような化合物がREM睡眠の抑制、睡眠潜時の増大、効率的な睡眠の低下、夜間覚醒の増大、および睡眠の断片化を引き起こすことが報告されている[非特許文献11]。従って、化合物Iの投与は有害な睡眠作用に関連しないが、実際には睡眠パターンの改善を提供することは驚くべき結果である。従って、本発明において使用される化合物は、就眠困難、頻繁な夜間覚醒および早朝覚醒などの睡眠障害の処置において有用であり得る。
【0035】
上記の臨床治験は、患者により報告された性的有害作用も捕らえた。以下の表は、特定のタイプの性的関連の有害作用を報告している患者の数を示す。
【0036】
【表2】
【0037】
一般に抗うつ薬、特にSSRIによる処置が性機能障害に関連し得ることはよく知られており、このことは、頻繁に、処置の中止に通じる。SSRIにおける患者の30〜70%もが性的機能の欠陥を報告しており[非特許文献12]、この欠陥としては、性欲低下、オルガズムの遅延、低下または欠如、覚醒の低下、および勃起障害が挙げられる。従って、化合物Iの性的有害作用がプラセボと類似していることを示す上記結果は、抗うつ薬、特にSSRIから通常期待され得るよりもはるかに優れている。本発明において使用される化合物は、無オルガズム症、遅漏、勃起障害、性欲低下、異常オルガズム、性欲減退またはオルガズム感の低下などの性機能障害の処置において有用であり得る。
【0038】
睡眠および性的行為を乱す有害作用は、患者、特に長期の患者(長期的な処置はいうまでもなく)にとって非常に受け入れ難いものであり、処置のドロップアウトを生じ得る。化合物Iの投与を含む処置においてこれらの有害作用が無いことにより、化合物Iは長期間にわたる治療的介入(例えば、うつ病再発予防など)において特に有用である。
【0039】
化合物Iによってもたらされる睡眠パターンにおける有益な効果によって、睡眠に関する問題を既に有しているか睡眠障害を患っている患者、あるいは性的関連の障害を有する患者の処置において、本明細書で記載される化合物Iを使用することは特に魅力的になる。
【0040】
本発明において使用される化合物は、睡眠または性的関連の有害事象のために、他の抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(NRI)、ノルアドレナリン/セロトニン再取り込み阻害薬(SNRI)または三環系抗うつ薬(TCA)など)などの他の薬物を使用することができない患者の二次的な処置としても有用であり得る。この実施形態では、処置すべき患者は別の投薬を受けたことがあり(あるいは、まだ受けており)、その投薬は、睡眠または性的関連の有害事象のために中止または低減された(あるいは、中止または低減せざるを得ない)ものである。通常、患者は、気分障害、例えばうつ病および不安、乱用(アルコール、麻薬など)または慢性疼痛障害を患っている。
【0041】
予想外に有利な安全性プロファイルと組み合わせた化合物Iの特有の薬理学的プロファイルによって、化合物Iは、例えば、概日リズム障害、睡眠障害、睡眠呼吸障害;低呼吸症候群;腹痛;うつ病、特に重度うつ病;気分変調性障害;循環気質;消耗性うつ病(exhaustive depression);非定型うつ病;全身の医学的障害に関連する気分障害;物質誘発性気分障害;反復性うつ病、単一エピソードうつ病;小児うつ病;脳卒中後うつ病;閉経期、閉経前または閉経後不快気分障害;季節性感情障害(SAD);アルツハイマー病などの認知症における攻撃性および激越(agitation);ADHD、自閉症およびアスペルガー症候群における強迫性および注意スペクトラム障害;リューコアライオーシス(leucariosis)、小血管疾患(small vessel disease);乱用、被刺激性、敵意、睡眠障害、疲労、ハンチントン病、多発性硬化症、不安(不安うつ病)および疼痛、特に胃腸管の疼痛(例えば、過敏性腸症候群(IBS)に関するうつ病;疼痛に関連する全般性不安障害;衝動調節疾患;間欠性爆発性障害;窃盗癖;放火癖;病的賭博;抜毛癖;統合失調症の陰性症状;軽度認知機能障害;血管性認知症;ダウン症候群、tph遺伝子突然変異、ADHD、てんかん、外傷性脳損傷またはアスペルガー症候群に関連する認知機能障害;ADHD、アスペルガー症候群および自閉症における強迫性および注意スペクトラム障害;認知症およびアルツハイマー病における攻撃性および激越;慢性疲労症候群;ストレス関連の障害、急性ストレス;ストレス;燃え尽き;HPA軸の機能亢進に関連するインスリン抵抗性;肥満、過食、食欲不振および神経性大食症などの摂食障害;行為障害;行動障害(behavioural disturbances);認知症に関連する行動障害;飛行恐怖症;エレベータ恐怖症;小部屋恐怖症(fear of small rooms);および弱視の処置において有用である。化合物Iの投与によるこれらの疾患の処置は、性的および睡眠関連の有害作用がないことが期待されるので、そして上記の疾患の多くに関連する認知機能障害における効果も期待されるので、特に有用および有益である。
【0042】
これに関連して、「重度うつ病」は、MADRS尺度において患者が30よりも高い、例えば32よりも高い、または35よりも高いスコアを得るうつ病である。
【0043】
一実施形態では、本発明は、概日リズム障害;就眠困難;夜間覚醒;早朝覚醒;睡眠呼吸障害;低呼吸症候群;重度うつ病;気分変調性障害;循環気質;消耗性うつ病;非定型うつ病;全身の医学的障害に関連する気分障害;物質誘発性気分障害;反復性うつ病;単一エピソードうつ病;小児うつ病;脳卒中後うつ病;閉経期、閉経前または閉経後不快気分障害;季節性感情障害(SAD);認知症またはアルツハイマー病における攻撃性および激越;ADHD、自閉症またはアスペルガー症候群における強迫性および注意スペクトラム障害;リューコアライオーシス;小血管疾患;乱用、被刺激性、敵意、睡眠障害、疲労、ハンチントン病、多発性硬化症、不安(不安うつ病)、疼痛、胃腸管の疼痛または過敏性腸症候群(IBS)に関連するうつ病;疼痛に関連する全般性不安障害;衝動調節疾患;間欠性爆発性障害;窃盗癖;放火癖;病的賭博;抜毛癖;統合失調症の陰性症状;軽度認知機能障害;血管性認知症;ダウン症候群、tph遺伝子突然変異、ADHD、てんかん、外傷性脳損傷またはアスペルガー症候群に関連する認知機能障害;認知症およびアルツハイマー病における攻撃性および激越;慢性疲労症候群;ストレス関連の障害;急性ストレス;ストレス;燃え尽き;HPA軸の機能亢進に関連するインスリン抵抗性;肥満;過食;食欲不振;神経性大食症;行為障害;行動障害;認知症に関連する行動障害;高齢者における行動障害;飛行恐怖症;エレベータ恐怖症;小部屋恐怖症;弱視;無オルガズム症;遅漏;勃起障害;性欲低下;異常オルガズム;性欲減退;あるいはオルガズム感の低下から選択される疾患の処置方法に関し、この方法は、治療的有効量の化合物Iを、それを必要としている患者に投与することを含む。
【0044】
一実施形態では、処置すべき患者は、前記患者が治療されている疾患を有すると診断されている。
【0045】
一実施形態では、処置すべき患者は、前記疾患の処置のために、別の抗うつ薬(例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(NRI)、ノルアドレナリン/セロトニン再取り込み阻害薬(SNRI)または三環系抗うつ薬(TCA)など)などの投薬を以前に受けたことがあり(あるいは、まだ受けており)、その投薬が睡眠または性的関連の有害事象のために中止または低減された(あるいは、中止または低減せざるを得ない)ものである。この実施形態では、本発明において使用される化合物は、二次的な処置として投与される。
【0046】
本明細書で使用される場合の化合物の「治療的有効量」は、前記化合物の投与を含む治療的介入において、所与の疾患およびその合併症の臨床症状を治癒、緩和または部分的に抑止するために十分な量を意味する。これを達成するのに十分な量は、「治療的有効量」と定義される。それぞれの目的のための有効量は、疾患または傷害の重症度ならびに対象者の体重および全身状態に依存するであろう。適切な投薬量の決定は、数値のマトリックスを構築し、マトリックス内の種々の点を試験する(これらは全て、訓練を受けた医師の通常の技能の範囲内である)ことによって、日常の実験を用いて達成可能であることが理解されるであろう。
【0047】
本明細書で使用される場合の「処置」および「処置する」という用語は、疾患または障害などの状態と闘うための患者の管理およびケアを意味する。この用語は、症状または合併症を緩和するため、疾患、障害または状態の進行を遅らせるため、症状および合併症を緩和または軽減するため、そして/あるいは疾患、障害または条件を治癒または排除するため、さらに状態を予防するための、患者が患っている所与の条件に対する全ての領域の処置(活性化合物の投与など)を含むことが意図され、ここで、予防は疾患、状態、または障害と闘うための患者の管理およびケアであると理解されるべきであり、症状または合併症の発現を防ぐための活性化合物の投与を含む。それにもかかわらず、予防的(予防に役立つ)処置および治療的(治癒のための)処置は、本発明の2つの別個の態様である。処置すべき患者は好ましくは哺乳類であり、特にヒトである。
【0048】
通常、本発明の処置は、本発明の化合物の毎日の投与を含むであろう。これは、1日1回の投与、または1日2回の投与、またはさらにそれよりも頻繁な投与を含み得る。
【0049】
一実施形態では、本発明は、概日リズム障害;就眠困難;夜間覚醒;早朝覚醒;睡眠呼吸障害;低呼吸症候群;重度うつ病;気分変調性障害;循環気質;消耗性うつ病;非定型うつ病;全身の医学的障害に関連する気分障害;物質誘発性気分障害;反復性うつ病;単一エピソードうつ病;小児うつ病;脳卒中後うつ病;閉経期、閉経前または閉経後不快気分障害;季節性感情障害(SAD);認知症またはアルツハイマー病における攻撃性および激越;ADHD、自閉症またはアスペルガー症候群における強迫性および注意スペクトラム障害;リューコアライオーシス;小血管疾患;乱用、被刺激性、敵意、睡眠障害、疲労、ハンチントン病、多発性硬化症、不安(不安うつ病)、疼痛、胃腸管の疼痛または過敏性腸症候群(IBS)に関連するうつ病;疼痛に関連する全般性不安障害;衝動調節疾患;間欠性爆発性障害;窃盗癖;放火癖;病的賭博;抜毛癖;統合失調症の陰性症状;軽度認知機能障害;血管性認知症;ダウン症候群、tph遺伝子突然変異、ADHD、てんかん、外傷性脳損傷またはアスペルガー症候群に関連する認知機能障害;認知症およびアルツハイマー病における攻撃性および激越;慢性疲労症候群;ストレス関連の障害;急性ストレス;ストレス;燃え尽き;HPA軸の機能亢進に関連するインスリン抵抗性;肥満;過食;食欲不振;神経性大食症;行為障害;行動障害;認知症に関連する行動障害;高齢者における行動障害;飛行恐怖症;エレベータ恐怖症;小部屋恐怖症;弱視;無オルガズム症;遅漏;勃起障害;性欲低下;異常オルガズム;性欲減退;あるいはオルガズム感の低下から選択される疾患の処置のための薬剤の製造における化合物Iの使用に関する。一実施形態では、薬剤は、前記疾患の処置のために、別の抗うつ薬(例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(NRI)、ノルアドレナリン/セロトニン再取り込み阻害薬(SNRI)または三環系抗うつ薬(TCA)など)などの別の投薬を以前に受けており(あるいは、まだ受けており)、その投薬が、睡眠または性的関連の有害事象のために中止または低減された(あるいは、中止または低減せざるを得ない)患者において使用するためのものである。
【0050】
一実施形態では、本発明は、概日リズム障害;就眠困難;夜間覚醒;早朝覚醒;睡眠呼吸障害;低呼吸症候群;重度うつ病;気分変調性障害;循環気質;消耗性うつ病;非定型うつ病;全身の医学的障害に関連する気分障害;物質誘発性気分障害;反復性うつ病;単一エピソードうつ病;小児うつ病;脳卒中後うつ病;閉経期、閉経前または閉経後不快気分障害;季節性感情障害(SAD);認知症またはアルツハイマー病における攻撃性および激越;ADHD、自閉症またはアスペルガー症候群における強迫性および注意スペクトラム障害;リューコアライオーシス;小血管疾患;乱用、被刺激性、敵意、睡眠障害、疲労、ハンチントン病、多発性硬化症、不安(不安うつ病)、疼痛、胃腸管の疼痛または過敏性腸症候群(IBS)に関連するうつ病;疼痛に関連する全般性不安障害;衝動調節疾患;間欠性爆発性障害;窃盗癖;放火癖;病的賭博;抜毛癖;統合失調症の陰性症状;軽度認知機能障害;血管性認知症;ダウン症候群、tph遺伝子突然変異、ADHD、てんかん、外傷性脳損傷またはアスペルガー症候群に関連する認知機能障害;認知症およびアルツハイマー病における攻撃性および激越;慢性疲労症候群;ストレス関連の障害;急性ストレス;ストレス;燃え尽き;HPA軸の機能亢進に関連するインスリン抵抗性;肥満;過食;食欲不振;神経性大食症;行為障害;行動障害;認知症に関連する行動障害;高齢者における行動障害;飛行恐怖症;エレベータ恐怖症;小部屋恐怖症;弱視;無オルガズム症;遅漏;勃起障害;性欲低下;異常オルガズム;性欲減退;あるいはオルガズム感の低下から選択される疾患の処置において使用するための化合物Iに関する。一実施形態では、化合物Iは、前記疾患の処置のために、別の抗うつ薬(例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(NRI)、ノルアドレナリン/セロトニン再取り込み阻害薬(SNRI)または三環系抗うつ薬(TCA)など)などの別の投薬を以前に受けており(あるいは、まだ受けており)、その投薬が、睡眠または性的関連の有害事象のために中止または低減された(あるいは、中止または低減せざるを得ない)患者において使用するためのものである。
【0051】
化合物Iは、当該技術分野における従来の方法によって調製され得る医薬組成物において都合よく与えられる。特に言及されるのは、活性成分を通常の佐剤および/または希釈剤と混合し、続いて、従来の打錠機において混合物を圧縮することによって調製され得る錠剤である。佐剤または希釈剤の例には、無水リン酸水素カルシウム、PVP、PVP−VAコポリマー、微結晶性セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、トウモロコシデンプン、マンニトール、ポテトデンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ゼラチン、ラクトース、ゴムなどが含まれる。このような目的のために通常使用される着色剤、風味料、防腐剤などの他の佐剤または添加剤は、活性成分と適合性であればどれでも使用することができる。
【0052】
注射のための溶液は、活性成分および可能性のある添加剤を注射用の溶媒、好ましくは無菌水の一部に溶解させ、溶液を所望の体積に調整し、溶液を滅菌して、それを適切なアンプルまたはバイアル中に充填することによって調製することができる。当該技術分野において従来使用されている等張化剤、防腐剤、酸化防止剤などの適切な添加剤はどれも添加することができる。
【0053】
本発明に従って製造される医薬組成物は任意の適切な経路によって投与することができ、例えば、錠剤、カプセル、粉末、シロップなどの形態で経口的に投与されてもよいし、あるいは注射用溶液の形態で非経口的に投与されてもよい。このような組成物を調製するために、当該技術分野においてよく知られている方法を使用することができ、当該技術分野において通常使用される薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤、賦形剤または他の添加剤はどれも使用され得る。
【0054】
都合よくは、化合物Iは、約1〜50mgの量の前記化合物を含有する単位投薬形態で投与される。上限は5−HT3活性の濃度依存性によって設定されると考えられる。1日の総用量は、通常、約1〜20mgの範囲、例えば、約1〜10mg、約5〜10mg、約10〜20mg、または約10〜15mgなどの範囲の本発明の化合物である。2.5、5、10、15または20mgである1日の用量が特に言及される。
【0055】
化合物Iを含む錠剤は、湿式造粒によって都合よく調製することができる。この方法を用いて、乾燥固体(活性成分、増量剤、バインダーなど)がブレンドされ、水または別の湿潤剤(例えば、アルコール)で湿らされ、湿った固体から凝集塊または顆粒が形成される。湿式集塊(wet massing)は、所望の均一な粒径が達成されるまで継続され、その後顆粒化生成物は乾燥される。化合物Iは、通常、水と共に高剪断ミキサー内で、ラクトース一水和物、トウモロコシデンプンおよびコポビドン(copovidone)と混合される。顆粒の形成に続いて、これらの顆粒は、適切なシーブサイズを有するふるいにおいてふるいにかけられ、乾燥され得る。得られた乾燥顆粒は、次に、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムと混合され、その後、錠剤がプレスされる。あるいは、本発明の化合物の湿式造粒は、マンニトール、トウモロコシデンプンおよびコポビドンを用いて達成されてもよく、この顆粒は、微結晶性セルロース、デンプングリコール酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムと混合された後、錠剤がプレスされる。あるいは、化合物Iの湿式造粒は、無水リン酸水素カルシウム、トウモロコシデンプンおよびコポビドンを用いて達成されてもよく、この顆粒は、微結晶性セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム(A型)、タルクおよびステアリン酸マグネシウムと混合された後、錠剤がプレスされる。コポビドンは、PVP−VAコポリマーである。
【0056】
一実施形態では、化合物Iは臭化水素酸(hydromide acid)塩(例えば、β型)であり、適切な錠剤は以下のように構成することができ、示される百分率はw/w%である。
HBr塩 3〜8%
無水リン酸水素カルシウム 35〜45%
トウモロコシデンプン 15〜25%
コポビドン 2〜6%
微結晶性セルロース 20〜30%
デンプングリコール酸ナトリウム 1〜3%
タルク 2〜6%
ステアリン酸マグネシウム 0.5〜2%
【0057】
特に、錠剤は以下のように構成することができる。
HBr塩 約5%
無水リン酸水素カルシウム 約39%
トウモロコシデンプン 約20%
コポビドン 約3%
微結晶性セルロース 約25%
デンプングリコール酸ナトリウム 約3%
タルク 約4%
ステアリン酸マグネシウム 約1%
【0058】
例えば、2.5、5、10、20、25、30、40、50、60または80mgの遊離塩基に相当するような異なる量の活性化合物を有する錠剤は、適切なサイズの錠剤と組み合わせて正確な量の化合物Iを選択することによって得ることができる。
【0059】
化合物Iは単独で投与されても、あるいは別の治療的に活性な化合物と組み合わせて投与されてもよく、2つの化合物は同時に投与されても、あるいは順次投与されてもよい。化合物Iと有利に組み合わせることができる治療的に活性な化合物には、ベンゾジアゼピンなどの鎮静薬または睡眠薬;ラモトリギン、バルプロ酸、トピラマート、ガバペンチン、カルバマゼピンなどの抗けいれん薬;リチウムなどの気分安定剤;ドーパミンアゴニストおよびL−Dopaなどのドーパミン作動薬;アトモキセチンなどのADHDを処置するための薬物;モダフィニル、ケタミン、メチルフェニデートおよびアンフェタミンなどの覚醒剤;ミルタザピン、ミアンセリンおよびブプロプリオンなどのその他の抗うつ薬;T3、エストロゲン、DHEAおよびテストステロンなどのホルモン;オランザピンおよびアリピプラゾールなどの非定型抗精神病薬;ハロペリドールなどの定型抗精神病薬;コリンエステラーゼ阻害薬およびメマンチン、葉酸塩などのアルツハイマー病を処置するための薬物;S−アデノシル−メチオニン;インターフェロンなどの免疫調節剤(immunmodulator);ブプレノルフィンなどのオピエート;アンジオテンシンII受容体1アンタゴニスト(AT1アンタゴニスト);ACE阻害薬;スタチン;プラゾシンなどのα1アドレナリンアンタゴニストが含まれる。
【0060】
化合物Iの遊離塩基は、特許文献1または特許文献2に開示されるように調製することができる。本発明において使用される塩は、遊離塩基を適切な溶媒中に溶解させ、関連の酸を添加した後、沈殿を形成することによって調製することができる。沈殿は、第2の溶媒の添加および/または蒸発および/または冷却のいずれかによって達成することができる。あるいは、本発明において使用される遊離塩基は、実施例において記載されるようなパラジウム触媒反応において合成されてもよい。
【0061】
本明細書で引用される刊行物、特許出願、および特許を含む全ての参考文献は参照によってその全体が本明細書に援用され、本明細書中のどこか他のところで成された特定の文書の援用が離れて提供されることに関係なく、あたかもそれぞれの参考文献が参照によって援用されると個々にそして具体的に示され、その全体が本明細書で説明されたかのように同じ程度まで援用される(法律で許される最大範囲まで)。
【0062】
「a」および「an」および「the」という用語ならびに同様の指示対象の使用は、本発明を説明するという状況では、本明細書において他で指示されない限り、または文脈により明らかに否定されない限りは、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。例えば、「化合物」という語句は、他で指示されない限り、本発明または特定の記載された態様の種々の化合物を示すと理解されるべきである。
【0063】
他で指示されない限り、本明細書において提供される全ての正確な値は、対応する概略値を代表する(例えば、特定の因子または測定に関して提供される全ての正確な典型的な値は、必要に応じて「約」によって修飾される対応する概略測定値も提供すると考えることができる)。
【0064】
要素(単数または複数)に関して「含む」、「有する」、「包含する」または「含有する」などの用語を用いて任意の態様または本発明の態様を本明細書中で説明することは、他で規定されない限り、または文脈により明らかに否定されない限りは、その特定の要素(単数または複数)「からなる」、「から本質的になる」、または「を実質的に含む」同様の態様または本発明の態様に対する支持を提供することが意図される(例えば、本明細書において特定の要素を含むと説明される組成物は、他で規定されない限り、または文脈により明らかに否定されない限りは、その要素からなる組成物も説明すると理解されるべきである)。
【実施例】
【0065】
分析方法
1HNMRスペクトルは、Bruker Avance DRX500機器において500.13MHzで記録される。溶媒としてジメチルスルホキシド(99.8%D)が使用され、内部参照基準としてテトラメチルシラン(TMS)が使用される。
【0066】
融点は、示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定される。装置は、開始値として融点を与えるように5°/分で較正されたTA−Instruments DSC−Q1000である。窒素流の下で、約2mgのサンプルをゆるく閉じたパンの中で5°/分で加熱する。
【0067】
乾燥材料の溶媒/水分含量を評価するために使用される熱重量分析(TGA)は、TA−instruments TGA−Q500を用いて実施される。窒素流の下で、1〜10mgのサンプルを開放されたパンの中で10°/分で加熱する。
【0068】
X線粉末ディフラクトグラム(diffractogram)は、CuKα1放射線を用いて、PANalytical X’Pert PRO X線回折計において測定した。X’celerator検出器を用いて、5〜40°の2θ範囲の反射モードでサンプルを測定した。提供される反射値は、±0.1(°2θ)である。
【0069】
実施例1 インビトロの受容体薬理学
ラットセロトニントランスポーター:IC505.3nM(5−HT取り込みの遮断)
ヒトセロトニントランスポーター:IC505.4nM(5−HT取り込みの遮断)
ヒト5−HT1A受容体:Ki15nM、アゴニズムを有する(効力または固有活性96%)
ラット5−HT3受容体:IC500.2nM(機能アッセイにおけるアンタゴニズム)
ヒト5−HT3A受容体:IC50約20nM(機能アッセイにおけるアンタゴニズム)。より高い濃度では、化合物は、2.1μMのED50を有するアゴニスト活性を示す。また本発明の化合物は、インビトロ結合アッセイにおいて、ヒト5HT3受容体に対する高い親和性も示した(Ki4.5nM)。
【0070】
実施例2a 化合物Iの遊離塩基の調製
10グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン臭化水素酸塩を、100mlの3MのNaOHおよび100mlの酢酸エチルの攪拌混合物で10分間処理した。有機相を分離し、100mlの15重量%のNaCl(水溶液)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、真空で濃縮して、7.7グラム(98%)の化合物I塩基が無色透明な油状物として生成された。
NMRは構造に適合している。
【0071】
実施例2b 化合物Iの結晶性塩基の調製
3.0グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの無色の油状物を70mlのアセトニトリルで処理し、加熱して還流させた。ほとんど透明の溶液をろ過し、透明なろ液を自然に冷却させると、ろ過の直後に沈殿が始まった。混合物を室温(22℃)で2時間攪拌し、生成物をろ過により単離し、真空(40℃)で一晩乾燥させた。結晶性塩基が2.7グラム(90%)の白色固体として単離された。NMRは構造に適合している。元素分析:72.40%のC、9.28%のN、7.58%のH(理論値:72.26%のC、9.36%のN、7.42%のH)。
【0072】
実施例2c 化合物Iの結晶性塩基のキャラクタリゼーション
実施例2bで調製された塩基は結晶性である(XRPD)(図1を参照)。これは、約117℃の融点を有する。そして、吸湿性を有さず、水中で0.1mg/mlの溶解度を有する。
【0073】
実施例2d 化合物Iの臭化水素酸塩のα型の調製
2.0グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンを熱い30mlの酢酸エチル中に溶解させ、0.73mlの48重量%のHBr(水性)を添加した。この添加により濃厚なスラリーが形成され、適切な攪拌を有するためにさらに10mlの酢酸エチルを添加した。スラリーを室温で1時間攪拌した。ろ過および一晩の真空乾燥(20℃)によって、2.0グラムの生成物が白色固体として生じた(80%)。NMRは構造に適合している。元素分析:57.05%のC、7.18%のN、6.16%のH(1:1塩の理論値:56.99%のC、7.39%のN、6.11%のH)。
【0074】
実施例2e 化合物Iの臭化水素酸塩のα型のキャラクタリゼーション
実施例2dで調製された臭化水素酸塩のα型は結晶性である(XRPD)(図2を参照)。これは、約226℃の融点を有する。そして、高い相対湿度にさらされたときに約0.3%の水を吸収し、水中で2mg/mlの溶解度を有する。
【0075】
実施例2f 化合物Iの臭化水素酸塩のβ型の調製
49.5グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの無色の油状物を500mlの酢酸エチル中に溶解させ、18.5mlの48重量%のHBr(水性)を添加した。この添加により濃厚なスラリーが形成され、これを室温で一晩攪拌した。ろ過および一晩の真空乾燥(50℃)によって、29.6グラムの生成物が白色固体として生じた(47%)。
NMRは構造に適合している。元素分析:56.86%のC、7.35%のN、6.24%のH(1:1塩の理論値:56.99%のC、7.39%のN、6.11%のH)。
【0076】
実施例2g 化合物Iの臭化水素酸塩のβ型のキャラクタリゼーション
実施例2fで調製された臭化水素酸塩のβ型は結晶性である(XRPD)(図3を参照)。これは約231℃の融点を有する。そして、高い相対湿度にさらされたときに約0.6%の水を吸収し、水中で1.2mg/mlの溶解度を有する。
【0077】
実施例2h 化合物Iの臭化水素酸塩のγ型の調製
実施例2dで調製された1gの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン臭化水素酸塩を20mlの水に添加し、85℃に加熱した。溶液はほとんど透明であった。1滴のHBrの添加により、透明になった。曇り点が観察されるまでHBrを添加した。溶液を室温まで冷却し、乾燥させた。NMRは構造に適合している。元素分析:56.63%のC、7.18%のN、6.21%のH(1:1塩の理論値:56.99%のC、7.39%のN、6.11%のH)。
【0078】
実施例2i 化合物Iの臭化水素酸塩のγ型のキャラクタリゼーション
実施例2hで調製された臭化水素酸塩は結晶性(XRPD)である(図4を参照)。DSC曲線は、約100℃においていくつかの熱事象、おそらくは結晶形態の変化を示す。次に、約220℃で溶融する。これは、高い相対湿度にさらされたときに約4.5%の水を吸収し、室温の30%RHでは、約2%の水が吸収される。
【0079】
実施例2j 化合物Iの臭化水素酸塩水和物の調製
1.4グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン油状物を20mlの水に添加し、60℃に加熱した。48%のHBrを用いてpHを1に調整した。溶液を室温まで冷却し、乾燥させた。NMRは構造に適合している。元素分析:55.21%のC、7.16%のN、6.34%のH(1:1塩半水和物の理論値:55.68%のC、7.21%のN、6.23%のH)。
【0080】
実施例2k 化合物Iの臭化水素酸塩の半水和物のキャラクタリゼーション
実施例2jで調製された水和物は結晶性(XRPD)である(図5を参照)。
水分含量は相対湿度に強く依存する。室温および95%RHにおいて、水分含量は約3.7%である。約100℃に加熱することによって脱水が生じる。
【0081】
実施例3 化合物Iの調製
【化2】
815gのNaOBut(8.48mol)、844gのピペラジン(9.8mol)、6.6gのPd(dba)2(11.48mmol)および13.6gのrac−BINAP(21.84mmol)を4Lのトルエンと共に50分間攪拌した。次に、840gの2−ブロモ−ヨードベンゼン(2.97mol)を1.5Lのトルエンと共に添加し、30分間攪拌を続けた。最後に、390,8gの2,4−ジメチルチオフェノール(2.83mol)を1.5Lのトルエンと共に添加した。懸濁液を加熱して還流させ、還流を5時間継続させた。反応混合物を一晩冷却させた。2Lの水を添加し、1時間攪拌した後、ろ過助剤により混合物をろ過した。次に、ろ液を3×1Lの塩水で洗浄した。次に、合わせた水相を600mlのトルエンで抽出した。次に、合わせたトルエン相を70℃に加熱した後、329.2mlの48重量%のHBr(水性)および164.6mlの水を添加した。混合物を室温まで一晩冷却した。最終生成物(1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン臭化水素酸塩)をろ過により収集し、真空(60℃)で乾燥させて、895gが得られた。(84%収率)。
【0082】
実施例4 マウス皮内ホルマリン試験における疼痛効果
このモデルでは、マウスは、左後足にホルマリン(4.5%、20μl)の注射を受ける。ホルマリン注射により生じた刺激は、損傷した足をなめるのに費やされる時間の量によって定量化されるような、特徴的な二相性の行動反応を誘発する。第1の相(約0〜10分)は直接的な化学刺激および痛覚を表し、第2の相(約20〜30分)は神経障害に由来する疼痛を表すと考えられる。2つの相は、行動が正常に戻る静止期間によって分離される。有痛性刺激を低減するための試験化合物の有効性は、2つの相において損傷した足をなめるのに費やされた時間の量を合計することによって評価される。
【0083】
化合物Iは、第2の相の疼痛スコアの著しい低減を示し(図9a)、神経障害に由来する疼痛に対する効力が示された。さらに、本発明の化合物は、第1の相のスコアの著しい低減も示し(図9b)、最高用量におけるより高い鎮痛作用が示された。要約すると、これらの結果は、本発明の化合物が疼痛障害の処置において効果的である可能性が高いことを示す。
【0084】
実施例5 自由行動ラットの脳におけるアセチルコリンの細胞外レベルに対する効果
動物に1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンのHBr塩を投与した。
【0085】
動物
275〜300gの初期重量のオスのSprague−Dawleyラットを使用した。通常の室内温度(21±2℃)および湿度(55±5%)に制御した条件下で、食餌および水道水を自由に摂取させ、12時間の明/暗サイクルにおいて動物を飼育した。
【0086】
手術および微小透析実験
ヒプノルム(hypnorm)/ドルミカム(2ml/kg)によりラットを麻酔し、透析プローブ先端を腹側海馬(座標:ブレグマの5.6mm後方、側方−5.0mm、硬膜の7.0mm腹側)または前前頭皮質(座標:ブレグマの3.2mm前方、側方、0.8mm、硬膜の4.0mm腹側)に配置することを目的として、脳内ガイドカニューレ(CMA/12)を脳内に定位的に植え込んだ。アンカースクリューおよびアクリルセメントをガイドカニューレの固定のために用いた。直腸プローブによって動物の体温を監視し、37℃に維持した。ラットを2日間手術から回復させ、ケージ内で1匹ずつ飼育した。実験の当日、ガイドカニューレを通して微小透析プローブ(CMA/12、0.5mm直径、3mm長さ)を挿入した。
【0087】
デュアルチャネルスイベルを介してプローブを微量注入ポンプに接続した。ろ過したリンガー溶液(0.5μMのネオスチグミンを含有する、145mmのNaCl、3mMのKCl、1mMのMgCl2、1.2mMのCaCl2)による微小透析プローブの灌流は、脳内にプローブを挿入する直前に開始し、実験期間中、1μl/分の一定流速で継続させた。安定化の180分後に、実験を開始した。透析液を20分ごとに捕集した。実験の後、動物を屠殺し、その脳を取り出して凍結し、プローブの配置を検証するためにスライスした。
【0088】
化合物を10%のHPbetaCD中に溶解させ、皮下注射した(2.5〜10mg/kg)。用量は、体重1kg当たりの塩のmgで表される。化合物を2.5ml/kgの容積で投与した。
【0089】
透析液アセチルコリンの分析
100mMのリン酸水素二ナトリウム、2.0mMのオクタンスルホン酸、0.5mMの塩化テトラメチルアンモニウムおよび0.005%のMB(ESA)(pH8.0)からなる移動相を用いて、電気化学検出を有するHPLCによって、透析液中のアセチルコリン(ACh)の濃度を分析した。分析カラム(ESA ACH−250)(流速0.35ml/分、温度:35℃)においてAChを分離する前に、固定化コリンオキシダーゼを含有するプレカラム酵素反応器(ESA)によって、注入サンプル(10μl)からコリンを除去した。分析カラムの後、サンプルに、固定化アセチルコリンエステラーゼおよびコリンオキシダーゼを含有するポストカラム固相反応器(ESA)を通過させた。後者の反応器はAChをコリンに変換し、続いてコリンをベタインおよびH2O2に変換した。後者は、白金電極(分析セル:ESA、モデル5040)を用いることによって電気化学的に検出した。
【0090】
データの提示
単回注射実験において、化合物投与の直前の3つの連続AChサンプルの平均値を各実験の基礎レベルとし、データを基礎レベルの百分率に変換(平均注射前基礎値を100%に正規化)した。
【0091】
結果
化合物は、ラット前前頭皮質および腹側海馬におけるAChの細胞外レベルを著しく増大させた(図10aおよび10bを参照)。
【0092】
実施例6 ラットにおける文脈的恐怖条件付け
この実験で投与した化合物は1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンHBr塩であった。
【0093】
我々は、ラットの文脈的恐怖条件付けの獲得、固定および想起に対する化合物の効果を研究した。恐怖条件付けパラダイムにおいて、動物は、中立環境(文脈、訓練チャンバ、CS)を嫌悪経験(電気的フットショック、US)と関連付けることを学習する。訓練チャンバに再度さらされている間、動物はすくみ行動を表し、これは、恐怖関連記憶の直接的な尺度であると考えられる[非特許文献13]。文脈的恐怖条件付けの神経解剖学は十分に研究されており、いくつかの研究によって、この記憶の形成のために海馬および扁桃体が必要であることが実証されている[非特許文献14、非特許文献15、非特許文献16]。
【0094】
動物および薬物
12時間の明/暗サイクル下で1つのケージ当たり2匹で飼育された、Charles River Laboratoriesからの成体のオスのSprague−Dawleyラット(訓練時の重量250〜300g)を使用した。食餌および水は自由に摂取させた。ラットは、到着してから1週間後に使用した。化合物を10%のHPbetaCD中に溶解させ、皮下注射した。薬物を2.5ml/kgの容積で投与した。
【0095】
装置
訓練および試験は、隔離した部屋に収容されて換気システムに接続された防音チャンバ(30×20×40cm)内で実行した。照明は、白色光(60ワット)により提供した。チャンバの床は、電気ショック発生器に取り付けられた金属格子で構成した。訓練および試験の前に、チャンバを70%のエタノール溶液で清浄にした。ビデオカメラにより、オフライン分析のための訓練セッションの行動観察および記録を可能にした。
【0096】
獲得および保持試験
獲得の間、1分間の馴化期間中、動物に新しい環境を自由に探索させ、帯電可能な格子の床を介する1回の回避できないフットショック(無条件刺激、US)によって同時に終了させた。フットショックは、持続時間が2秒であり、強度が0.75mAであった。USの後さらに60秒間、動物を条件付けチャンバ内に留めた。文脈に対するベースラインすくみ応答を決定するために、最初の58秒間(ショック前獲得、実験者はグループを知らされていない)すくみ行動をスコア化した。獲得の最後に、動物を優しく取り出し、そのホームケージに入れた。24時間後に、同じ動物を訓練状況(恐怖条件付けチャンバ)に再度導入し、2分間の保持試験を実施した。この期間中、フットショックは適用しなかった。グループを知らされていない実験者により全試験期間中すくみ行動をスコア化し、全試験期間の百分率で提示した。
【0097】
結果および検討
(i)獲得(獲得前に薬物を適用、図11)、(ii)記憶想起(試験前に薬物を適用、図12)および(iii)固定(獲得直後に薬物を適用、図13)に関して、ラットの文脈的恐怖条件付けに対する化合物の効果を研究した。第1の実験セットでは、獲得セッションの1時間前に化合物(1、5および10mg/kg)を投与した。図11は、訓練(フードショック前の58秒間)中および24時間後の保持試験におけるすくみ行動の獲得を示す。以下の知見が観察された:
− どの試験用量においても、化合物は、フットショックを与える前はベースラインのすくみ行動に影響を与えない。
− 5mg/kgの化合物は、獲得の24時間後の保持試験中にすくみに費やされる時間を増大させる傾向がある(ビヒクル処置動物の24.30±4.40%、n=16に対して、39.24±13.76%、n=6)。
− 10mg/kg化合物は、獲得の24時間後の保持試験中のすくみに費やされる時間を著しく増大させる(ビヒクル処置動物の24.30±4.40%、n=16に対して52.15±5.68%、n=10、p<0.01)。
【0098】
図11に記載されるような恐怖条件付けモデルは、学習および記憶の研究について文献で記載されている標準的な手順である。この薬物の記憶想起に対する急性効果をさらに解明するために、保持試験の1時間前に化合物(5、10および20mg/kg)を適用した。記憶試験中、5mg/kgにおいて、化合物はすくみ行動の発現を阻害することが観察された(ビヒクル処置動物の33.61±4.29%、n=13に対して、12.86±3.57%、n=9、p<0.05)(図13)。
【0099】
上記のように、化合物自体は、USの開始前のベースラインすくみ行動に影響を与えず(図11)、従って、最もありそうな仮説は、図12において観察される効果が抗不安作用によるというものである。条件付けされた記憶は、潜在的な抗不安作用を有する化合物によって低減される応答であるすくみ行動によって評価される。この実験は、記憶想起の直前に与えられる化合物が抗不安効力を有することを実証し、従って、図11に示されるすくみの増大が、化合物の不安惹起作用によるものであるとは考えにくい。
【0100】
化合物が不安惹起性ではなく、認知促進の可能性を有することを強化するために、獲得セッションの後に、化合物を5、10および20mg/kgで投与した。その結果、この実験セットでは、化合物は獲得中も保持試験の間中もオンボード(onboard)でなかった。ここで、5mg/kgの化合物は、獲得セッションの24時間後の保持試験中にすくみに費やされる時間を著しく高めることが観察された(ビヒクル処置動物の25.26±3.57%、n=19に対して、45.58±4.50%、n=8、p<0.05)。状況に再度さらされている間のすくみに費やされる時間の割合は恐怖関連記憶の尺度として記載されており[非特許文献17]、ビヒクル処置動物と比較したときに化合物処置ラットにおいて増大される(図11および12)。まとめると、データは、化合物が文脈記憶を高めることを示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、SERT、5−HT3および5−HT1Aの組み合わせた活性を有する化合物の治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は有効であり、前の世代のCNS薬(すなわち、いわゆる三環系抗うつ薬)と比較して有利な安全性プロファイルを有するので、うつ病および不安などの多数のCNS疾患を処置するために医師によって何年もの間支持されてきた。それにもかかわらず、SSRIは、かなりの割合の非応答者(すなわち、処置に反応しないかまたは完全には反応しない患者)によって妨げられてもいる。さらに、通常SSRIは、数週間の処置の後に始めて効果を示すようになる。最後に、SSRIは通常三環系抗うつ薬よりも少ない有害作用を引き起こすが、SSRIの投与は性的な副作用および睡眠問題などの有害作用をもたらすことが多い。これらの有害作用は多くの患者にとって受け入れるのが困難であり、SSRIを受ける患者のかなりの割合で、処置のドロップアウトを生じ得る。
【0003】
セロトニントランスポーター(SERT)の阻害と、1つまたは2つ以上のセロトニン受容体における活性との組み合わせは有益であり得ることが知られている。5−HT1A部分アゴニストであるピンドロールと、セロトニン再取り込み阻害薬との組み合わせは効果の速やかな発現を引き起こすことが報告されている[非特許文献1]。これは、臨床におけるセロトニンレベルの増大効果のより急速な発現と、セロトニン再取り込み阻害薬の治療効果の増大または増強とを暗示し得る。
【0004】
例えばうつ病、不安および統合失調症などのCNS関連の疾患は、認知障害または認知機能障害などの他の障害または機能不全を併発していることが多い[非特許文献2、非特許文献3]。
【0005】
いくつかの神経伝達物質は、認知を調節するニューロン事象に関与すると推定される。特に、コリン作動系は認知において大きな役割を果たし、従って、コリン作動系に影響を及ぼす化合物は、認知機能障害の処置のために潜在的に有用である。5−HT1A受容体および/または5−HT3受容体に影響を及ぼす化合物はコリン作動系に影響を及ぼすことが知られており、従って、これらは認知機能障害の処置において有用であり得る。
【0006】
従って、5−HT1Aおよび/または5−HT3受容体活性を発揮する化合物は、認知機能障害の処置において有用であることが期待され得る。さらにSERT活性も発揮する化合物は、セロトニンレベルの(より速い)増大から利益を享受し得る疾患も患っている患者における認知機能障害の処置のために特に有用であり得る。
【0007】
特許文献1として公開された国際出願は、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジン(実施例1e)を含む、セロトニン再取り込み阻害活性を有する様々な化合物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2003/029232号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/144005号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Psych.Res.,125,81−86,2004
【非特許文献2】Scand.J.Psych.,43,239−251,2002
【非特許文献3】Am.J.Psych.,158,1722−1725,2001
【非特許文献4】T.Sumiyoshi、Am.J.Psych.,158,1722−1725,2001
【非特許文献5】Y.Chung、Brain Res.,1023,54−63,2004
【非特許文献6】Preston、Recent Advances in the treatment of Neurodegenerative disorders and cognitive function,1994,(編)RacagniおよびLanger,Basel Karger,p.89−93
【非特許文献7】J.Nervous Mental Disease,185,748−754,1997
【非特許文献8】Brain Res.Bull.,58,345−350,2002
【非特許文献9】Hum Psychpharmacol.,8,41−47,1993
【非特許文献10】Int.Clin.Psychpharm.,21(suppl 1),S25−S29,2006
【非特許文献11】Hum.Psychopharm.Clin.Exp.,20,533−559,2005
【非特許文献12】J.Clin.Psych.,66,844−848,2005
【非特許文献13】Pavlov J.Biol.Sci.,15、177−182、1980
【非特許文献14】Hippocampus,11,8−17,2001
【非特許文献15】J.Neurosci.,19,1106−1114,1999
【非特許文献16】Behav.Neurosci.,106,274−285,1992
【非特許文献17】Pavlov J.Biol.Sci,15,177−182,1980
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願の優先日の後に公開された国際出願の特許文献2は、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンが5−HT3アンタゴニストおよび5−HT1A部分アゴニストでもあることを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、驚くべきことに、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンがSERT阻害、5−HT3アンタゴニズムおよび5−HT1Aアゴニズムの組み合わせを発揮することを発見した。従って、本発明は疾患の処置方法を提供し、この方法は、治療的有効量の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]−ピペラジンまたはその薬学的に許容可能な塩を、それを必要としている患者に投与することを含む。
【0012】
一実施形態では、本発明は、疾患の処置のための薬剤の製造における、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンまたはその薬学的に許容可能な塩の使用に関する。
【0013】
一実施形態では、本発明は、疾患の処置において使用するための1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンまたはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】結晶性塩基のXRPD。
【図2】臭化水素酸塩のα型のXRPD。
【図3】臭化水素酸塩のβ型のXRPD。
【図4】臭化水素酸塩のγ型のXRPD。
【図5】臭化水素酸塩の半水和物のXRPD。
【図6】プラセボ、5mgおよび10mgの化合物I(HBr塩)のHAM−D評価項目4(入眠障害(Insomnia Early))の6週間にわたる変化。各グループ内の患者は約100人であった。
【図7】プラセボ、5mgおよび10mgの化合物I(HBr塩)のHAM−D評価項目5(熟眠障害(Insomnia Middle))の6週間にわたる変化。各グループ内の患者は約100人であった。
【図8】プラセボ、5mgおよび10mgの化合物I(HBr塩)のHAM−D評価項目6(早朝睡眠障害(Insomnia Late))の6週間にわたる変化。各グループ内の患者は約100人であった。
【図9a】皮内ホルマリン試験における化合物Iの効果。X軸は投与された化合物の量を示し、Y軸は足をなめるのに費やされた時間の量(秒)を示す。0〜5分の期間の応答。
【図9b】皮内ホルマリン試験における化合物Iの効果。X軸は投与された化合物の量を示し、Y軸は足をなめるのに費やされた時間の量(秒)を示す。20〜30分の期間の応答。
【図10a】1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンHBr塩を投与したときの自由行動ラットの前前頭皮質における細胞外アセチルコリンレベル。
【図10b】1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンHBr塩を投与したときの自由行動ラットの腹側海馬における細胞外アセチルコリンレベル。
【図11】獲得の60分前に与えられたときの、Sprague−Dawleyラットの文脈的恐怖条件付け(contextual fear conditioning)に対する1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンHBr塩の効果。フットショックUSの前の58秒間の馴化期間中、すくみ行動(freezing behaviour)をスコア化した(ショック前獲得)(白色バー)。訓練の24時間後にすくみ行動を測定した(保持試験)(黒色バー)。
【図12】保持試験の1時間前に与えられたときの、Sprague−Dawleyラットの文脈的恐怖条件付けに対する1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンHBr塩の効果。フットショックUSの前の58秒間、すくみ行動をスコア化した(獲得)(白色バー)。訓練の24時間後にすくみ行動を測定した(保持試験)(黒色バー)。
【図13】獲得の直後に与えられたときの、Sprague−Dawleyラットの文脈的恐怖条件付けに対する1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンHBr塩の効果。フットショックUSの前の58秒間、すくみ行動をスコア化した(ショック前獲得)(白色バー)。訓練の24時間後にすくみ行動を測定した(保持試験)(黒色バー)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、その構造が
【化1】
である化合物I、すなわち1−[2−(2,4−ジメチルフェニル−スルファニル)−フェニル]ピペラジンおよびその薬学的に許容可能な塩の使用に関する。
【0016】
一実施形態では、前記薬学的に許容可能な塩は、無毒性の酸の酸付加塩である。前記塩には、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、コハク酸、シュウ酸、ビス−メチレンサリチル酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、ケイ皮酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イタコン酸、グリコール酸、p−アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、テオフィリン酢酸、ならびに8−ハロテオフィリン(例えば、8−ブロモテオフィリン)などの有機酸から作られる塩が含まれる。また前記塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸および硝酸などの無機塩から作られてもよい。メタンスルホン酸、マレイン酸、フマル酸、メソ−酒石酸、(+)−酒石酸、(−)−酒石酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、亜リン酸および硝酸から作られる塩が特に言及される。明確に言及されるのは、臭化水素酸塩である。
【0017】
一実施形態では、本発明は開示されたような化合物Iの使用に関するが、ただし、前記化合物は、非結晶形態の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの遊離塩基ではないことを条件とする。
【0018】
経口剤形、特に錠剤は、投与の容易さおよびその結果であるより良いコンプライアンスのために、患者および開業医に好まれることが多い。錠剤の場合、活性成分は結晶性であることが好ましい。一実施形態では、本発明は、結晶性である化合物の使用に関する。本発明において使用される化合物の結晶化度は、図1〜5に示されるXRDPによって明示される。特許文献2は、本発明において使用されるさらなる塩のXRPD反射を開示する。以下の表は、本発明において使用されるいくつかの化合物の主要なXRDP反射を要約する。
【0019】
【表1】
【0020】
一実施形態では、本発明において使用される結晶は、溶媒和物、すなわち溶媒分子が結晶構造の一部を形成する結晶である。溶媒和物は水から形成されてもよく、その場合には、溶媒和物は水和物と呼ばれることが多い。あるいは、溶媒和物は、例えば、エタノール、アセトン、または酢酸エチルなどの他の溶媒から形成されてもよい。溶媒和物の正確な量は条件に依存することが多い。例えば、温度が上昇するにつれて、または相対湿度が低下するにつれて、通常、水和物は水を失うであろう。
【0021】
一実施形態では、本発明の化合物は溶媒和されていない結晶である。
【0022】
いくつかの化合物は吸湿性であり、すなわち、これらは湿気にさらされたときに水を吸収する。吸湿性は、一般に、医薬品製剤、特に錠剤などの乾燥製剤中で与えられる化合物にとって好ましくない特性であるとみなされる。一実施形態では、本発明は、吸湿性の低い結晶を提供する。結晶性活性成分を用いる経口剤形のために、前記結晶が詳細に定義されていることも有益である。本発明との関連では、「詳細に定義された(well−defined)」という用語は、特に、化学量論が詳細に定義されていること、すなわち、塩を形成するイオン間の比が、1:1、1:2、2:1、1:1:1などの小さい整数の比であることを意味する。一実施形態では、本発明の化合物は、詳細に定義された結晶である。
【0023】
本発明において使用される結晶性化合物は2つ以上の形態で存在してもよく、すなわち、これらは多形形態で存在してもよい。多形形態は、化合物が2つ以上の形態で結晶化できる場合に存在する。本発明は、全てのこのような多形形態を、純粋な化合物として、またはこれらの混合物としてのいずれかで包含することが意図される。
【0024】
一実施形態では、本発明は、精製された形態の化合物を使用する。「精製された形態」という用語は、化合物が、場合によって、他の化合物または同じ化合物の他の形態を本質的に含まないことを示すことが意図される。
【0025】
例えば、図2〜5によって明らかであるように、本発明において使用される化合物(この場合は、臭化水素酸塩)はいくつかの形態で存在し得る、すなわち多形であり得る。多形形態は異なる特性を有し、実施例2において示されるとおりである。臭化水素酸塩のβ型は、より高いDSC融点およびより低い溶解度によって実証されるように、より安定である。さらに、β型は低い吸湿性および溶解度の魅力的な組み合わせを有し、このことによって、この化合物は錠剤の製造に特に適している。従って、一実施形態では、本発明は、約6.89、9.73、13.78および14.62(°2θ)におけるXRDP反射を有する、特に図3に示されるようなXRPDを有する1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの臭化水素酸塩の使用を提供する。
【0026】
活性成分の溶解度も、バイオアベイラビリティに直接的な影響を与えるので、剤形の選択のために重要である。経口剤形のためには、活性成分のより高い溶解度はバイオアベイラビリティを増大させるので、一般的に有益であると考えられる。
【0027】
実施例1に示されるように、本発明において使用される化合物はヒトセロトニントランスポーターの強力な阻害薬であり、すなわち、これらはセロトニン再取り込みを阻害する。さらに、化合物は、マウス、ラット、モルモットおよびイヌ5−HT3受容体における強力なアンタゴニストである。卵母細胞にクローニングされたヒト5−HT3受容体において、化合物は、低濃度ではアンタゴニストである(IC50約20nM)が、より高い濃度では化合物はアゴニスト特性を示す(ED50=2.1μM)ことが分かった。高濃度の本発明の化合物のその後の適用は、アゴニスト応答を示さなかったが、これは、インビトロにおける急速な脱感作(desenitisation)または直接的なアンタゴニズムによるものであろう。従って、低濃度では、本発明の化合物は、他の種からの5−HT3受容体において観察されるように、ヒト5−HT3受容体における著しいアンタゴニズムを示す。またデータは、本発明において使用される化合物が、5−HT1A受容体におけるアゴニストであり、15nMのKi値および96%固有活性(または効力)を有することも示す。特許文献2はわずかに異なる値を開示する。しかしながら、この違いは程度の問題であり、化合物の認知の基本的な変化を要求しないと考えられる。
【0028】
上記のように、5−HT1Aアゴニストおよび/または5−HT3アンタゴニストである化合物が認知障害の処置において有用であることが期待されることについては理論的な理由があり、このことは、臨床的な証拠によって支持されている。非特許文献4は、プラセボまたはタンドスピロン(5−HT1Aアゴニストである)と組み合わせて、ハロペリドール、スルピリド(sulpride)およびピモジドなどの定型抗精神病薬(これらは全て5−HT1A活性を欠いている)を、患者に受けさせた研究を報告している。抗精神病薬に加えてタンドスピロンを受けている患者は、その認知能力の改善を示したが、プラセボを受けている患者は示さなかった。同様に、5−HT1Aアゴニストでもあるクロザピンなどの非定型抗精神病薬は、統合失調症患者において認知を向上させるが、5−HT1A活性を持たないハロペリドールなどの定型抗精神病薬は向上させない[非特許文献5]。健康な男性被験者の無作為化二重盲検交差研究において、言語および空間記憶ならびに持続的注意の評価によって、5−HT3アンタゴニストのアロセトロンは、スコポラミンに誘発される言語および空間記憶の欠損を減弱することが実証された[非特許文献6]。
【0029】
実施例5において示されるように、本発明の化合物は、ラット前前頭皮質および腹側海馬におけるアセチルコリンの細胞外レベルの増大を引き起こす。これらの前臨床知見は、認知機能障害(例えば、アルツハイマー病における)の処置におけるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の使用と比較して、認知機能障害の処置における臨床効果につながることが期待される。さらに、この見解への支持は実施例6に見出すことができ、データは、本発明の化合物がラットの文脈的(contextual)記憶を高めることを示す。全体として、ラットのアセチルコリンレベルおよび記憶における影響と組み合わせた本発明の化合物の薬理学的なプロファイルは、本発明において使用される化合物が、認知機能障害の処置において、あるいは患者が認知機能障害も患っている疾患の処置において有用であることを強く示唆する。
【0030】
認知機能障害は、うつ病(例えば、大うつ病性障害など)の典型的な特徴の1つである。抑うつ状態の改善が認知機能障害の改善ももたらし得るという意味では、認知障害はある程度うつ病に続発し得る。しかしながら、認知障害が実際にはうつ病から独立しているという明らかな証拠も存在する。例えば、研究によって、うつ病からの回復時に持続する認知機能障害が示されている[非特許文献7]。さらに、うつ病および認知機能障害に対する抗うつ薬の差動効果(differential effect)は、併発状態であることが多いがうつ病および認知機能障害が独立しているという考えに、さらなる支持を付与する。セロトニンおよびノルアドレナリン薬は抑うつ症状の同程度の改善を提供するが、いくつかの研究によって、ノルアドレナリン作動系の調節はセロトニン調節ほど認知機能を改善しないことが示されている[非特許文献8、非特許文献9]。
【0031】
認知機能は統合失調症患者で損なわれていることが多く、いわゆる統合失調症の陰性症状の一部を形成し得る。認知機能はADHD患者でも損なわれている。
【0032】
認知障害または認知機能障害には、認知機能または認知領域、例えば作業記憶、注意および警戒、言語学習および記憶、視覚学習および記憶、推論および問題解決、例えば実行機能、処理速度および/または社会的認知の低下が含まれる。特に、認知障害または認知機能障害は、注意欠陥、解体した思考、緩慢な思考、理解の困難、集中力低下、問題解決の障害、記憶の低下、思考の表現の困難および/または思考、感情および行動の統合の困難、または無関係な思考の消去の困難を示し得る。「認知障害」および「認知機能障害」という用語は同じものを示すことが意図され、交換可能に使用される。
【0033】
実施例4において与えられるデータは、化合物Iが疼痛の処置において有用であり、鎮痛効果さえも有し得る(動物モデルにおける神経因性疼痛の付加的な研究はこの観察を確認する)ことを示す。従って、化合物Iは、疼痛および感情または気分障害(疼痛、特に慢性疼痛に関連するうつ病および不安など)の処置において有用であり得る。慢性疼痛には、幻肢痛、神経因性疼痛、糖尿病性神経障害、ヘルペス後神経痛(PHN)、手根管症候群(CTS)、足根管症候群(tasus tunnel syndrome)、尺骨神経絞扼(ulnar nerve entrapment)、脊髄圧迫、HIV神経障害、複合性局所疼痛症候群(CPRS)、三叉神経痛(trigeminal neuralgia/trigeminus neuralgia)/疼痛性チック、外科的介入(例えば、術後鎮痛薬)、糖尿病性血管症、インスリン炎に関連する毛細血管抵抗または糖尿病症状、アンギナに関連する疼痛、月経に関連する疼痛、癌に関連する疼痛、歯痛、頭痛、片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経痛、顎関節症候群、筋筋膜痛筋傷害(myofascial pain muscular injury)、線維筋痛症候群、骨関節疼痛(変形性関節症)、関節リウマチ、やけどに関連する外傷から生じる関節リウマチおよび浮腫、捻挫または骨折、変形性関節症、骨粗鬆症、骨転移または未知の理由による疼痛、痛風、結合組織炎、筋筋膜痛、胸郭出口症候群、上背部痛または下背部痛(この背部痛は、系統的、局所性または原発性脊椎疾患(神経根障害)に起因する)、骨盤痛、心臓性胸痛、非心臓性胸痛、脊髄損傷(SCI)関連疼痛、中枢性脳卒中後痛、癌性神経障害、AIDS痛、鎌状赤血球痛(sickle cell pain)、むち打ち症および老人性疼痛などの徴候が含まれる。
【0034】
臨床的エンドポイントとしてHAM−D(うつ病のためのHamilton評価尺度)を用いて、化合物Iを臨床治験において試験した。HAM−D尺度を用いて、24項目の質問表により患者のうつ病の重症度を評価することができる。尺度の項目4、5および6は、患者がどのように眠るか、すなわち、眠りに落ちるのがどのくらい容易であるか(入眠障害)、患者が夜間にどのように目覚めるか(熟眠障害)、そして患者が早朝にどのように目覚めるか(早朝睡眠障害)に関する。治療群当たり約100人の患者で、プラセボに対して毎日5および10mgにおいて化合物を試験した。図6〜8のデータは、化合物Iが、睡眠パターンの大きく、用量依存性の改善を引き起こし、プラセボにより提供されるものよりも優れていることを明確に示す。睡眠障害がほとんどの抗うつ薬の一般的な有害作用であることはよく知られている。特に、SSRIおよびノルアドレナリントランスポーターを阻害する化合物は睡眠の開始および維持に関する問題を引き起こすことが報告されており、不眠に関する問題も頻繁に報告されている[非特許文献10]。他には、このような化合物がREM睡眠の抑制、睡眠潜時の増大、効率的な睡眠の低下、夜間覚醒の増大、および睡眠の断片化を引き起こすことが報告されている[非特許文献11]。従って、化合物Iの投与は有害な睡眠作用に関連しないが、実際には睡眠パターンの改善を提供することは驚くべき結果である。従って、本発明において使用される化合物は、就眠困難、頻繁な夜間覚醒および早朝覚醒などの睡眠障害の処置において有用であり得る。
【0035】
上記の臨床治験は、患者により報告された性的有害作用も捕らえた。以下の表は、特定のタイプの性的関連の有害作用を報告している患者の数を示す。
【0036】
【表2】
【0037】
一般に抗うつ薬、特にSSRIによる処置が性機能障害に関連し得ることはよく知られており、このことは、頻繁に、処置の中止に通じる。SSRIにおける患者の30〜70%もが性的機能の欠陥を報告しており[非特許文献12]、この欠陥としては、性欲低下、オルガズムの遅延、低下または欠如、覚醒の低下、および勃起障害が挙げられる。従って、化合物Iの性的有害作用がプラセボと類似していることを示す上記結果は、抗うつ薬、特にSSRIから通常期待され得るよりもはるかに優れている。本発明において使用される化合物は、無オルガズム症、遅漏、勃起障害、性欲低下、異常オルガズム、性欲減退またはオルガズム感の低下などの性機能障害の処置において有用であり得る。
【0038】
睡眠および性的行為を乱す有害作用は、患者、特に長期の患者(長期的な処置はいうまでもなく)にとって非常に受け入れ難いものであり、処置のドロップアウトを生じ得る。化合物Iの投与を含む処置においてこれらの有害作用が無いことにより、化合物Iは長期間にわたる治療的介入(例えば、うつ病再発予防など)において特に有用である。
【0039】
化合物Iによってもたらされる睡眠パターンにおける有益な効果によって、睡眠に関する問題を既に有しているか睡眠障害を患っている患者、あるいは性的関連の障害を有する患者の処置において、本明細書で記載される化合物Iを使用することは特に魅力的になる。
【0040】
本発明において使用される化合物は、睡眠または性的関連の有害事象のために、他の抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(NRI)、ノルアドレナリン/セロトニン再取り込み阻害薬(SNRI)または三環系抗うつ薬(TCA)など)などの他の薬物を使用することができない患者の二次的な処置としても有用であり得る。この実施形態では、処置すべき患者は別の投薬を受けたことがあり(あるいは、まだ受けており)、その投薬は、睡眠または性的関連の有害事象のために中止または低減された(あるいは、中止または低減せざるを得ない)ものである。通常、患者は、気分障害、例えばうつ病および不安、乱用(アルコール、麻薬など)または慢性疼痛障害を患っている。
【0041】
予想外に有利な安全性プロファイルと組み合わせた化合物Iの特有の薬理学的プロファイルによって、化合物Iは、例えば、概日リズム障害、睡眠障害、睡眠呼吸障害;低呼吸症候群;腹痛;うつ病、特に重度うつ病;気分変調性障害;循環気質;消耗性うつ病(exhaustive depression);非定型うつ病;全身の医学的障害に関連する気分障害;物質誘発性気分障害;反復性うつ病、単一エピソードうつ病;小児うつ病;脳卒中後うつ病;閉経期、閉経前または閉経後不快気分障害;季節性感情障害(SAD);アルツハイマー病などの認知症における攻撃性および激越(agitation);ADHD、自閉症およびアスペルガー症候群における強迫性および注意スペクトラム障害;リューコアライオーシス(leucariosis)、小血管疾患(small vessel disease);乱用、被刺激性、敵意、睡眠障害、疲労、ハンチントン病、多発性硬化症、不安(不安うつ病)および疼痛、特に胃腸管の疼痛(例えば、過敏性腸症候群(IBS)に関するうつ病;疼痛に関連する全般性不安障害;衝動調節疾患;間欠性爆発性障害;窃盗癖;放火癖;病的賭博;抜毛癖;統合失調症の陰性症状;軽度認知機能障害;血管性認知症;ダウン症候群、tph遺伝子突然変異、ADHD、てんかん、外傷性脳損傷またはアスペルガー症候群に関連する認知機能障害;ADHD、アスペルガー症候群および自閉症における強迫性および注意スペクトラム障害;認知症およびアルツハイマー病における攻撃性および激越;慢性疲労症候群;ストレス関連の障害、急性ストレス;ストレス;燃え尽き;HPA軸の機能亢進に関連するインスリン抵抗性;肥満、過食、食欲不振および神経性大食症などの摂食障害;行為障害;行動障害(behavioural disturbances);認知症に関連する行動障害;飛行恐怖症;エレベータ恐怖症;小部屋恐怖症(fear of small rooms);および弱視の処置において有用である。化合物Iの投与によるこれらの疾患の処置は、性的および睡眠関連の有害作用がないことが期待されるので、そして上記の疾患の多くに関連する認知機能障害における効果も期待されるので、特に有用および有益である。
【0042】
これに関連して、「重度うつ病」は、MADRS尺度において患者が30よりも高い、例えば32よりも高い、または35よりも高いスコアを得るうつ病である。
【0043】
一実施形態では、本発明は、概日リズム障害;就眠困難;夜間覚醒;早朝覚醒;睡眠呼吸障害;低呼吸症候群;重度うつ病;気分変調性障害;循環気質;消耗性うつ病;非定型うつ病;全身の医学的障害に関連する気分障害;物質誘発性気分障害;反復性うつ病;単一エピソードうつ病;小児うつ病;脳卒中後うつ病;閉経期、閉経前または閉経後不快気分障害;季節性感情障害(SAD);認知症またはアルツハイマー病における攻撃性および激越;ADHD、自閉症またはアスペルガー症候群における強迫性および注意スペクトラム障害;リューコアライオーシス;小血管疾患;乱用、被刺激性、敵意、睡眠障害、疲労、ハンチントン病、多発性硬化症、不安(不安うつ病)、疼痛、胃腸管の疼痛または過敏性腸症候群(IBS)に関連するうつ病;疼痛に関連する全般性不安障害;衝動調節疾患;間欠性爆発性障害;窃盗癖;放火癖;病的賭博;抜毛癖;統合失調症の陰性症状;軽度認知機能障害;血管性認知症;ダウン症候群、tph遺伝子突然変異、ADHD、てんかん、外傷性脳損傷またはアスペルガー症候群に関連する認知機能障害;認知症およびアルツハイマー病における攻撃性および激越;慢性疲労症候群;ストレス関連の障害;急性ストレス;ストレス;燃え尽き;HPA軸の機能亢進に関連するインスリン抵抗性;肥満;過食;食欲不振;神経性大食症;行為障害;行動障害;認知症に関連する行動障害;高齢者における行動障害;飛行恐怖症;エレベータ恐怖症;小部屋恐怖症;弱視;無オルガズム症;遅漏;勃起障害;性欲低下;異常オルガズム;性欲減退;あるいはオルガズム感の低下から選択される疾患の処置方法に関し、この方法は、治療的有効量の化合物Iを、それを必要としている患者に投与することを含む。
【0044】
一実施形態では、処置すべき患者は、前記患者が治療されている疾患を有すると診断されている。
【0045】
一実施形態では、処置すべき患者は、前記疾患の処置のために、別の抗うつ薬(例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(NRI)、ノルアドレナリン/セロトニン再取り込み阻害薬(SNRI)または三環系抗うつ薬(TCA)など)などの投薬を以前に受けたことがあり(あるいは、まだ受けており)、その投薬が睡眠または性的関連の有害事象のために中止または低減された(あるいは、中止または低減せざるを得ない)ものである。この実施形態では、本発明において使用される化合物は、二次的な処置として投与される。
【0046】
本明細書で使用される場合の化合物の「治療的有効量」は、前記化合物の投与を含む治療的介入において、所与の疾患およびその合併症の臨床症状を治癒、緩和または部分的に抑止するために十分な量を意味する。これを達成するのに十分な量は、「治療的有効量」と定義される。それぞれの目的のための有効量は、疾患または傷害の重症度ならびに対象者の体重および全身状態に依存するであろう。適切な投薬量の決定は、数値のマトリックスを構築し、マトリックス内の種々の点を試験する(これらは全て、訓練を受けた医師の通常の技能の範囲内である)ことによって、日常の実験を用いて達成可能であることが理解されるであろう。
【0047】
本明細書で使用される場合の「処置」および「処置する」という用語は、疾患または障害などの状態と闘うための患者の管理およびケアを意味する。この用語は、症状または合併症を緩和するため、疾患、障害または状態の進行を遅らせるため、症状および合併症を緩和または軽減するため、そして/あるいは疾患、障害または条件を治癒または排除するため、さらに状態を予防するための、患者が患っている所与の条件に対する全ての領域の処置(活性化合物の投与など)を含むことが意図され、ここで、予防は疾患、状態、または障害と闘うための患者の管理およびケアであると理解されるべきであり、症状または合併症の発現を防ぐための活性化合物の投与を含む。それにもかかわらず、予防的(予防に役立つ)処置および治療的(治癒のための)処置は、本発明の2つの別個の態様である。処置すべき患者は好ましくは哺乳類であり、特にヒトである。
【0048】
通常、本発明の処置は、本発明の化合物の毎日の投与を含むであろう。これは、1日1回の投与、または1日2回の投与、またはさらにそれよりも頻繁な投与を含み得る。
【0049】
一実施形態では、本発明は、概日リズム障害;就眠困難;夜間覚醒;早朝覚醒;睡眠呼吸障害;低呼吸症候群;重度うつ病;気分変調性障害;循環気質;消耗性うつ病;非定型うつ病;全身の医学的障害に関連する気分障害;物質誘発性気分障害;反復性うつ病;単一エピソードうつ病;小児うつ病;脳卒中後うつ病;閉経期、閉経前または閉経後不快気分障害;季節性感情障害(SAD);認知症またはアルツハイマー病における攻撃性および激越;ADHD、自閉症またはアスペルガー症候群における強迫性および注意スペクトラム障害;リューコアライオーシス;小血管疾患;乱用、被刺激性、敵意、睡眠障害、疲労、ハンチントン病、多発性硬化症、不安(不安うつ病)、疼痛、胃腸管の疼痛または過敏性腸症候群(IBS)に関連するうつ病;疼痛に関連する全般性不安障害;衝動調節疾患;間欠性爆発性障害;窃盗癖;放火癖;病的賭博;抜毛癖;統合失調症の陰性症状;軽度認知機能障害;血管性認知症;ダウン症候群、tph遺伝子突然変異、ADHD、てんかん、外傷性脳損傷またはアスペルガー症候群に関連する認知機能障害;認知症およびアルツハイマー病における攻撃性および激越;慢性疲労症候群;ストレス関連の障害;急性ストレス;ストレス;燃え尽き;HPA軸の機能亢進に関連するインスリン抵抗性;肥満;過食;食欲不振;神経性大食症;行為障害;行動障害;認知症に関連する行動障害;高齢者における行動障害;飛行恐怖症;エレベータ恐怖症;小部屋恐怖症;弱視;無オルガズム症;遅漏;勃起障害;性欲低下;異常オルガズム;性欲減退;あるいはオルガズム感の低下から選択される疾患の処置のための薬剤の製造における化合物Iの使用に関する。一実施形態では、薬剤は、前記疾患の処置のために、別の抗うつ薬(例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(NRI)、ノルアドレナリン/セロトニン再取り込み阻害薬(SNRI)または三環系抗うつ薬(TCA)など)などの別の投薬を以前に受けており(あるいは、まだ受けており)、その投薬が、睡眠または性的関連の有害事象のために中止または低減された(あるいは、中止または低減せざるを得ない)患者において使用するためのものである。
【0050】
一実施形態では、本発明は、概日リズム障害;就眠困難;夜間覚醒;早朝覚醒;睡眠呼吸障害;低呼吸症候群;重度うつ病;気分変調性障害;循環気質;消耗性うつ病;非定型うつ病;全身の医学的障害に関連する気分障害;物質誘発性気分障害;反復性うつ病;単一エピソードうつ病;小児うつ病;脳卒中後うつ病;閉経期、閉経前または閉経後不快気分障害;季節性感情障害(SAD);認知症またはアルツハイマー病における攻撃性および激越;ADHD、自閉症またはアスペルガー症候群における強迫性および注意スペクトラム障害;リューコアライオーシス;小血管疾患;乱用、被刺激性、敵意、睡眠障害、疲労、ハンチントン病、多発性硬化症、不安(不安うつ病)、疼痛、胃腸管の疼痛または過敏性腸症候群(IBS)に関連するうつ病;疼痛に関連する全般性不安障害;衝動調節疾患;間欠性爆発性障害;窃盗癖;放火癖;病的賭博;抜毛癖;統合失調症の陰性症状;軽度認知機能障害;血管性認知症;ダウン症候群、tph遺伝子突然変異、ADHD、てんかん、外傷性脳損傷またはアスペルガー症候群に関連する認知機能障害;認知症およびアルツハイマー病における攻撃性および激越;慢性疲労症候群;ストレス関連の障害;急性ストレス;ストレス;燃え尽き;HPA軸の機能亢進に関連するインスリン抵抗性;肥満;過食;食欲不振;神経性大食症;行為障害;行動障害;認知症に関連する行動障害;高齢者における行動障害;飛行恐怖症;エレベータ恐怖症;小部屋恐怖症;弱視;無オルガズム症;遅漏;勃起障害;性欲低下;異常オルガズム;性欲減退;あるいはオルガズム感の低下から選択される疾患の処置において使用するための化合物Iに関する。一実施形態では、化合物Iは、前記疾患の処置のために、別の抗うつ薬(例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(NRI)、ノルアドレナリン/セロトニン再取り込み阻害薬(SNRI)または三環系抗うつ薬(TCA)など)などの別の投薬を以前に受けており(あるいは、まだ受けており)、その投薬が、睡眠または性的関連の有害事象のために中止または低減された(あるいは、中止または低減せざるを得ない)患者において使用するためのものである。
【0051】
化合物Iは、当該技術分野における従来の方法によって調製され得る医薬組成物において都合よく与えられる。特に言及されるのは、活性成分を通常の佐剤および/または希釈剤と混合し、続いて、従来の打錠機において混合物を圧縮することによって調製され得る錠剤である。佐剤または希釈剤の例には、無水リン酸水素カルシウム、PVP、PVP−VAコポリマー、微結晶性セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、トウモロコシデンプン、マンニトール、ポテトデンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ゼラチン、ラクトース、ゴムなどが含まれる。このような目的のために通常使用される着色剤、風味料、防腐剤などの他の佐剤または添加剤は、活性成分と適合性であればどれでも使用することができる。
【0052】
注射のための溶液は、活性成分および可能性のある添加剤を注射用の溶媒、好ましくは無菌水の一部に溶解させ、溶液を所望の体積に調整し、溶液を滅菌して、それを適切なアンプルまたはバイアル中に充填することによって調製することができる。当該技術分野において従来使用されている等張化剤、防腐剤、酸化防止剤などの適切な添加剤はどれも添加することができる。
【0053】
本発明に従って製造される医薬組成物は任意の適切な経路によって投与することができ、例えば、錠剤、カプセル、粉末、シロップなどの形態で経口的に投与されてもよいし、あるいは注射用溶液の形態で非経口的に投与されてもよい。このような組成物を調製するために、当該技術分野においてよく知られている方法を使用することができ、当該技術分野において通常使用される薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤、賦形剤または他の添加剤はどれも使用され得る。
【0054】
都合よくは、化合物Iは、約1〜50mgの量の前記化合物を含有する単位投薬形態で投与される。上限は5−HT3活性の濃度依存性によって設定されると考えられる。1日の総用量は、通常、約1〜20mgの範囲、例えば、約1〜10mg、約5〜10mg、約10〜20mg、または約10〜15mgなどの範囲の本発明の化合物である。2.5、5、10、15または20mgである1日の用量が特に言及される。
【0055】
化合物Iを含む錠剤は、湿式造粒によって都合よく調製することができる。この方法を用いて、乾燥固体(活性成分、増量剤、バインダーなど)がブレンドされ、水または別の湿潤剤(例えば、アルコール)で湿らされ、湿った固体から凝集塊または顆粒が形成される。湿式集塊(wet massing)は、所望の均一な粒径が達成されるまで継続され、その後顆粒化生成物は乾燥される。化合物Iは、通常、水と共に高剪断ミキサー内で、ラクトース一水和物、トウモロコシデンプンおよびコポビドン(copovidone)と混合される。顆粒の形成に続いて、これらの顆粒は、適切なシーブサイズを有するふるいにおいてふるいにかけられ、乾燥され得る。得られた乾燥顆粒は、次に、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムと混合され、その後、錠剤がプレスされる。あるいは、本発明の化合物の湿式造粒は、マンニトール、トウモロコシデンプンおよびコポビドンを用いて達成されてもよく、この顆粒は、微結晶性セルロース、デンプングリコール酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムと混合された後、錠剤がプレスされる。あるいは、化合物Iの湿式造粒は、無水リン酸水素カルシウム、トウモロコシデンプンおよびコポビドンを用いて達成されてもよく、この顆粒は、微結晶性セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム(A型)、タルクおよびステアリン酸マグネシウムと混合された後、錠剤がプレスされる。コポビドンは、PVP−VAコポリマーである。
【0056】
一実施形態では、化合物Iは臭化水素酸(hydromide acid)塩(例えば、β型)であり、適切な錠剤は以下のように構成することができ、示される百分率はw/w%である。
HBr塩 3〜8%
無水リン酸水素カルシウム 35〜45%
トウモロコシデンプン 15〜25%
コポビドン 2〜6%
微結晶性セルロース 20〜30%
デンプングリコール酸ナトリウム 1〜3%
タルク 2〜6%
ステアリン酸マグネシウム 0.5〜2%
【0057】
特に、錠剤は以下のように構成することができる。
HBr塩 約5%
無水リン酸水素カルシウム 約39%
トウモロコシデンプン 約20%
コポビドン 約3%
微結晶性セルロース 約25%
デンプングリコール酸ナトリウム 約3%
タルク 約4%
ステアリン酸マグネシウム 約1%
【0058】
例えば、2.5、5、10、20、25、30、40、50、60または80mgの遊離塩基に相当するような異なる量の活性化合物を有する錠剤は、適切なサイズの錠剤と組み合わせて正確な量の化合物Iを選択することによって得ることができる。
【0059】
化合物Iは単独で投与されても、あるいは別の治療的に活性な化合物と組み合わせて投与されてもよく、2つの化合物は同時に投与されても、あるいは順次投与されてもよい。化合物Iと有利に組み合わせることができる治療的に活性な化合物には、ベンゾジアゼピンなどの鎮静薬または睡眠薬;ラモトリギン、バルプロ酸、トピラマート、ガバペンチン、カルバマゼピンなどの抗けいれん薬;リチウムなどの気分安定剤;ドーパミンアゴニストおよびL−Dopaなどのドーパミン作動薬;アトモキセチンなどのADHDを処置するための薬物;モダフィニル、ケタミン、メチルフェニデートおよびアンフェタミンなどの覚醒剤;ミルタザピン、ミアンセリンおよびブプロプリオンなどのその他の抗うつ薬;T3、エストロゲン、DHEAおよびテストステロンなどのホルモン;オランザピンおよびアリピプラゾールなどの非定型抗精神病薬;ハロペリドールなどの定型抗精神病薬;コリンエステラーゼ阻害薬およびメマンチン、葉酸塩などのアルツハイマー病を処置するための薬物;S−アデノシル−メチオニン;インターフェロンなどの免疫調節剤(immunmodulator);ブプレノルフィンなどのオピエート;アンジオテンシンII受容体1アンタゴニスト(AT1アンタゴニスト);ACE阻害薬;スタチン;プラゾシンなどのα1アドレナリンアンタゴニストが含まれる。
【0060】
化合物Iの遊離塩基は、特許文献1または特許文献2に開示されるように調製することができる。本発明において使用される塩は、遊離塩基を適切な溶媒中に溶解させ、関連の酸を添加した後、沈殿を形成することによって調製することができる。沈殿は、第2の溶媒の添加および/または蒸発および/または冷却のいずれかによって達成することができる。あるいは、本発明において使用される遊離塩基は、実施例において記載されるようなパラジウム触媒反応において合成されてもよい。
【0061】
本明細書で引用される刊行物、特許出願、および特許を含む全ての参考文献は参照によってその全体が本明細書に援用され、本明細書中のどこか他のところで成された特定の文書の援用が離れて提供されることに関係なく、あたかもそれぞれの参考文献が参照によって援用されると個々にそして具体的に示され、その全体が本明細書で説明されたかのように同じ程度まで援用される(法律で許される最大範囲まで)。
【0062】
「a」および「an」および「the」という用語ならびに同様の指示対象の使用は、本発明を説明するという状況では、本明細書において他で指示されない限り、または文脈により明らかに否定されない限りは、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。例えば、「化合物」という語句は、他で指示されない限り、本発明または特定の記載された態様の種々の化合物を示すと理解されるべきである。
【0063】
他で指示されない限り、本明細書において提供される全ての正確な値は、対応する概略値を代表する(例えば、特定の因子または測定に関して提供される全ての正確な典型的な値は、必要に応じて「約」によって修飾される対応する概略測定値も提供すると考えることができる)。
【0064】
要素(単数または複数)に関して「含む」、「有する」、「包含する」または「含有する」などの用語を用いて任意の態様または本発明の態様を本明細書中で説明することは、他で規定されない限り、または文脈により明らかに否定されない限りは、その特定の要素(単数または複数)「からなる」、「から本質的になる」、または「を実質的に含む」同様の態様または本発明の態様に対する支持を提供することが意図される(例えば、本明細書において特定の要素を含むと説明される組成物は、他で規定されない限り、または文脈により明らかに否定されない限りは、その要素からなる組成物も説明すると理解されるべきである)。
【実施例】
【0065】
分析方法
1HNMRスペクトルは、Bruker Avance DRX500機器において500.13MHzで記録される。溶媒としてジメチルスルホキシド(99.8%D)が使用され、内部参照基準としてテトラメチルシラン(TMS)が使用される。
【0066】
融点は、示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定される。装置は、開始値として融点を与えるように5°/分で較正されたTA−Instruments DSC−Q1000である。窒素流の下で、約2mgのサンプルをゆるく閉じたパンの中で5°/分で加熱する。
【0067】
乾燥材料の溶媒/水分含量を評価するために使用される熱重量分析(TGA)は、TA−instruments TGA−Q500を用いて実施される。窒素流の下で、1〜10mgのサンプルを開放されたパンの中で10°/分で加熱する。
【0068】
X線粉末ディフラクトグラム(diffractogram)は、CuKα1放射線を用いて、PANalytical X’Pert PRO X線回折計において測定した。X’celerator検出器を用いて、5〜40°の2θ範囲の反射モードでサンプルを測定した。提供される反射値は、±0.1(°2θ)である。
【0069】
実施例1 インビトロの受容体薬理学
ラットセロトニントランスポーター:IC505.3nM(5−HT取り込みの遮断)
ヒトセロトニントランスポーター:IC505.4nM(5−HT取り込みの遮断)
ヒト5−HT1A受容体:Ki15nM、アゴニズムを有する(効力または固有活性96%)
ラット5−HT3受容体:IC500.2nM(機能アッセイにおけるアンタゴニズム)
ヒト5−HT3A受容体:IC50約20nM(機能アッセイにおけるアンタゴニズム)。より高い濃度では、化合物は、2.1μMのED50を有するアゴニスト活性を示す。また本発明の化合物は、インビトロ結合アッセイにおいて、ヒト5HT3受容体に対する高い親和性も示した(Ki4.5nM)。
【0070】
実施例2a 化合物Iの遊離塩基の調製
10グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン臭化水素酸塩を、100mlの3MのNaOHおよび100mlの酢酸エチルの攪拌混合物で10分間処理した。有機相を分離し、100mlの15重量%のNaCl(水溶液)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、真空で濃縮して、7.7グラム(98%)の化合物I塩基が無色透明な油状物として生成された。
NMRは構造に適合している。
【0071】
実施例2b 化合物Iの結晶性塩基の調製
3.0グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの無色の油状物を70mlのアセトニトリルで処理し、加熱して還流させた。ほとんど透明の溶液をろ過し、透明なろ液を自然に冷却させると、ろ過の直後に沈殿が始まった。混合物を室温(22℃)で2時間攪拌し、生成物をろ過により単離し、真空(40℃)で一晩乾燥させた。結晶性塩基が2.7グラム(90%)の白色固体として単離された。NMRは構造に適合している。元素分析:72.40%のC、9.28%のN、7.58%のH(理論値:72.26%のC、9.36%のN、7.42%のH)。
【0072】
実施例2c 化合物Iの結晶性塩基のキャラクタリゼーション
実施例2bで調製された塩基は結晶性である(XRPD)(図1を参照)。これは、約117℃の融点を有する。そして、吸湿性を有さず、水中で0.1mg/mlの溶解度を有する。
【0073】
実施例2d 化合物Iの臭化水素酸塩のα型の調製
2.0グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンを熱い30mlの酢酸エチル中に溶解させ、0.73mlの48重量%のHBr(水性)を添加した。この添加により濃厚なスラリーが形成され、適切な攪拌を有するためにさらに10mlの酢酸エチルを添加した。スラリーを室温で1時間攪拌した。ろ過および一晩の真空乾燥(20℃)によって、2.0グラムの生成物が白色固体として生じた(80%)。NMRは構造に適合している。元素分析:57.05%のC、7.18%のN、6.16%のH(1:1塩の理論値:56.99%のC、7.39%のN、6.11%のH)。
【0074】
実施例2e 化合物Iの臭化水素酸塩のα型のキャラクタリゼーション
実施例2dで調製された臭化水素酸塩のα型は結晶性である(XRPD)(図2を参照)。これは、約226℃の融点を有する。そして、高い相対湿度にさらされたときに約0.3%の水を吸収し、水中で2mg/mlの溶解度を有する。
【0075】
実施例2f 化合物Iの臭化水素酸塩のβ型の調製
49.5グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの無色の油状物を500mlの酢酸エチル中に溶解させ、18.5mlの48重量%のHBr(水性)を添加した。この添加により濃厚なスラリーが形成され、これを室温で一晩攪拌した。ろ過および一晩の真空乾燥(50℃)によって、29.6グラムの生成物が白色固体として生じた(47%)。
NMRは構造に適合している。元素分析:56.86%のC、7.35%のN、6.24%のH(1:1塩の理論値:56.99%のC、7.39%のN、6.11%のH)。
【0076】
実施例2g 化合物Iの臭化水素酸塩のβ型のキャラクタリゼーション
実施例2fで調製された臭化水素酸塩のβ型は結晶性である(XRPD)(図3を参照)。これは約231℃の融点を有する。そして、高い相対湿度にさらされたときに約0.6%の水を吸収し、水中で1.2mg/mlの溶解度を有する。
【0077】
実施例2h 化合物Iの臭化水素酸塩のγ型の調製
実施例2dで調製された1gの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン臭化水素酸塩を20mlの水に添加し、85℃に加熱した。溶液はほとんど透明であった。1滴のHBrの添加により、透明になった。曇り点が観察されるまでHBrを添加した。溶液を室温まで冷却し、乾燥させた。NMRは構造に適合している。元素分析:56.63%のC、7.18%のN、6.21%のH(1:1塩の理論値:56.99%のC、7.39%のN、6.11%のH)。
【0078】
実施例2i 化合物Iの臭化水素酸塩のγ型のキャラクタリゼーション
実施例2hで調製された臭化水素酸塩は結晶性(XRPD)である(図4を参照)。DSC曲線は、約100℃においていくつかの熱事象、おそらくは結晶形態の変化を示す。次に、約220℃で溶融する。これは、高い相対湿度にさらされたときに約4.5%の水を吸収し、室温の30%RHでは、約2%の水が吸収される。
【0079】
実施例2j 化合物Iの臭化水素酸塩水和物の調製
1.4グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン油状物を20mlの水に添加し、60℃に加熱した。48%のHBrを用いてpHを1に調整した。溶液を室温まで冷却し、乾燥させた。NMRは構造に適合している。元素分析:55.21%のC、7.16%のN、6.34%のH(1:1塩半水和物の理論値:55.68%のC、7.21%のN、6.23%のH)。
【0080】
実施例2k 化合物Iの臭化水素酸塩の半水和物のキャラクタリゼーション
実施例2jで調製された水和物は結晶性(XRPD)である(図5を参照)。
水分含量は相対湿度に強く依存する。室温および95%RHにおいて、水分含量は約3.7%である。約100℃に加熱することによって脱水が生じる。
【0081】
実施例3 化合物Iの調製
【化2】
815gのNaOBut(8.48mol)、844gのピペラジン(9.8mol)、6.6gのPd(dba)2(11.48mmol)および13.6gのrac−BINAP(21.84mmol)を4Lのトルエンと共に50分間攪拌した。次に、840gの2−ブロモ−ヨードベンゼン(2.97mol)を1.5Lのトルエンと共に添加し、30分間攪拌を続けた。最後に、390,8gの2,4−ジメチルチオフェノール(2.83mol)を1.5Lのトルエンと共に添加した。懸濁液を加熱して還流させ、還流を5時間継続させた。反応混合物を一晩冷却させた。2Lの水を添加し、1時間攪拌した後、ろ過助剤により混合物をろ過した。次に、ろ液を3×1Lの塩水で洗浄した。次に、合わせた水相を600mlのトルエンで抽出した。次に、合わせたトルエン相を70℃に加熱した後、329.2mlの48重量%のHBr(水性)および164.6mlの水を添加した。混合物を室温まで一晩冷却した。最終生成物(1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン臭化水素酸塩)をろ過により収集し、真空(60℃)で乾燥させて、895gが得られた。(84%収率)。
【0082】
実施例4 マウス皮内ホルマリン試験における疼痛効果
このモデルでは、マウスは、左後足にホルマリン(4.5%、20μl)の注射を受ける。ホルマリン注射により生じた刺激は、損傷した足をなめるのに費やされる時間の量によって定量化されるような、特徴的な二相性の行動反応を誘発する。第1の相(約0〜10分)は直接的な化学刺激および痛覚を表し、第2の相(約20〜30分)は神経障害に由来する疼痛を表すと考えられる。2つの相は、行動が正常に戻る静止期間によって分離される。有痛性刺激を低減するための試験化合物の有効性は、2つの相において損傷した足をなめるのに費やされた時間の量を合計することによって評価される。
【0083】
化合物Iは、第2の相の疼痛スコアの著しい低減を示し(図9a)、神経障害に由来する疼痛に対する効力が示された。さらに、本発明の化合物は、第1の相のスコアの著しい低減も示し(図9b)、最高用量におけるより高い鎮痛作用が示された。要約すると、これらの結果は、本発明の化合物が疼痛障害の処置において効果的である可能性が高いことを示す。
【0084】
実施例5 自由行動ラットの脳におけるアセチルコリンの細胞外レベルに対する効果
動物に1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンのHBr塩を投与した。
【0085】
動物
275〜300gの初期重量のオスのSprague−Dawleyラットを使用した。通常の室内温度(21±2℃)および湿度(55±5%)に制御した条件下で、食餌および水道水を自由に摂取させ、12時間の明/暗サイクルにおいて動物を飼育した。
【0086】
手術および微小透析実験
ヒプノルム(hypnorm)/ドルミカム(2ml/kg)によりラットを麻酔し、透析プローブ先端を腹側海馬(座標:ブレグマの5.6mm後方、側方−5.0mm、硬膜の7.0mm腹側)または前前頭皮質(座標:ブレグマの3.2mm前方、側方、0.8mm、硬膜の4.0mm腹側)に配置することを目的として、脳内ガイドカニューレ(CMA/12)を脳内に定位的に植え込んだ。アンカースクリューおよびアクリルセメントをガイドカニューレの固定のために用いた。直腸プローブによって動物の体温を監視し、37℃に維持した。ラットを2日間手術から回復させ、ケージ内で1匹ずつ飼育した。実験の当日、ガイドカニューレを通して微小透析プローブ(CMA/12、0.5mm直径、3mm長さ)を挿入した。
【0087】
デュアルチャネルスイベルを介してプローブを微量注入ポンプに接続した。ろ過したリンガー溶液(0.5μMのネオスチグミンを含有する、145mmのNaCl、3mMのKCl、1mMのMgCl2、1.2mMのCaCl2)による微小透析プローブの灌流は、脳内にプローブを挿入する直前に開始し、実験期間中、1μl/分の一定流速で継続させた。安定化の180分後に、実験を開始した。透析液を20分ごとに捕集した。実験の後、動物を屠殺し、その脳を取り出して凍結し、プローブの配置を検証するためにスライスした。
【0088】
化合物を10%のHPbetaCD中に溶解させ、皮下注射した(2.5〜10mg/kg)。用量は、体重1kg当たりの塩のmgで表される。化合物を2.5ml/kgの容積で投与した。
【0089】
透析液アセチルコリンの分析
100mMのリン酸水素二ナトリウム、2.0mMのオクタンスルホン酸、0.5mMの塩化テトラメチルアンモニウムおよび0.005%のMB(ESA)(pH8.0)からなる移動相を用いて、電気化学検出を有するHPLCによって、透析液中のアセチルコリン(ACh)の濃度を分析した。分析カラム(ESA ACH−250)(流速0.35ml/分、温度:35℃)においてAChを分離する前に、固定化コリンオキシダーゼを含有するプレカラム酵素反応器(ESA)によって、注入サンプル(10μl)からコリンを除去した。分析カラムの後、サンプルに、固定化アセチルコリンエステラーゼおよびコリンオキシダーゼを含有するポストカラム固相反応器(ESA)を通過させた。後者の反応器はAChをコリンに変換し、続いてコリンをベタインおよびH2O2に変換した。後者は、白金電極(分析セル:ESA、モデル5040)を用いることによって電気化学的に検出した。
【0090】
データの提示
単回注射実験において、化合物投与の直前の3つの連続AChサンプルの平均値を各実験の基礎レベルとし、データを基礎レベルの百分率に変換(平均注射前基礎値を100%に正規化)した。
【0091】
結果
化合物は、ラット前前頭皮質および腹側海馬におけるAChの細胞外レベルを著しく増大させた(図10aおよび10bを参照)。
【0092】
実施例6 ラットにおける文脈的恐怖条件付け
この実験で投与した化合物は1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンHBr塩であった。
【0093】
我々は、ラットの文脈的恐怖条件付けの獲得、固定および想起に対する化合物の効果を研究した。恐怖条件付けパラダイムにおいて、動物は、中立環境(文脈、訓練チャンバ、CS)を嫌悪経験(電気的フットショック、US)と関連付けることを学習する。訓練チャンバに再度さらされている間、動物はすくみ行動を表し、これは、恐怖関連記憶の直接的な尺度であると考えられる[非特許文献13]。文脈的恐怖条件付けの神経解剖学は十分に研究されており、いくつかの研究によって、この記憶の形成のために海馬および扁桃体が必要であることが実証されている[非特許文献14、非特許文献15、非特許文献16]。
【0094】
動物および薬物
12時間の明/暗サイクル下で1つのケージ当たり2匹で飼育された、Charles River Laboratoriesからの成体のオスのSprague−Dawleyラット(訓練時の重量250〜300g)を使用した。食餌および水は自由に摂取させた。ラットは、到着してから1週間後に使用した。化合物を10%のHPbetaCD中に溶解させ、皮下注射した。薬物を2.5ml/kgの容積で投与した。
【0095】
装置
訓練および試験は、隔離した部屋に収容されて換気システムに接続された防音チャンバ(30×20×40cm)内で実行した。照明は、白色光(60ワット)により提供した。チャンバの床は、電気ショック発生器に取り付けられた金属格子で構成した。訓練および試験の前に、チャンバを70%のエタノール溶液で清浄にした。ビデオカメラにより、オフライン分析のための訓練セッションの行動観察および記録を可能にした。
【0096】
獲得および保持試験
獲得の間、1分間の馴化期間中、動物に新しい環境を自由に探索させ、帯電可能な格子の床を介する1回の回避できないフットショック(無条件刺激、US)によって同時に終了させた。フットショックは、持続時間が2秒であり、強度が0.75mAであった。USの後さらに60秒間、動物を条件付けチャンバ内に留めた。文脈に対するベースラインすくみ応答を決定するために、最初の58秒間(ショック前獲得、実験者はグループを知らされていない)すくみ行動をスコア化した。獲得の最後に、動物を優しく取り出し、そのホームケージに入れた。24時間後に、同じ動物を訓練状況(恐怖条件付けチャンバ)に再度導入し、2分間の保持試験を実施した。この期間中、フットショックは適用しなかった。グループを知らされていない実験者により全試験期間中すくみ行動をスコア化し、全試験期間の百分率で提示した。
【0097】
結果および検討
(i)獲得(獲得前に薬物を適用、図11)、(ii)記憶想起(試験前に薬物を適用、図12)および(iii)固定(獲得直後に薬物を適用、図13)に関して、ラットの文脈的恐怖条件付けに対する化合物の効果を研究した。第1の実験セットでは、獲得セッションの1時間前に化合物(1、5および10mg/kg)を投与した。図11は、訓練(フードショック前の58秒間)中および24時間後の保持試験におけるすくみ行動の獲得を示す。以下の知見が観察された:
− どの試験用量においても、化合物は、フットショックを与える前はベースラインのすくみ行動に影響を与えない。
− 5mg/kgの化合物は、獲得の24時間後の保持試験中にすくみに費やされる時間を増大させる傾向がある(ビヒクル処置動物の24.30±4.40%、n=16に対して、39.24±13.76%、n=6)。
− 10mg/kg化合物は、獲得の24時間後の保持試験中のすくみに費やされる時間を著しく増大させる(ビヒクル処置動物の24.30±4.40%、n=16に対して52.15±5.68%、n=10、p<0.01)。
【0098】
図11に記載されるような恐怖条件付けモデルは、学習および記憶の研究について文献で記載されている標準的な手順である。この薬物の記憶想起に対する急性効果をさらに解明するために、保持試験の1時間前に化合物(5、10および20mg/kg)を適用した。記憶試験中、5mg/kgにおいて、化合物はすくみ行動の発現を阻害することが観察された(ビヒクル処置動物の33.61±4.29%、n=13に対して、12.86±3.57%、n=9、p<0.05)(図13)。
【0099】
上記のように、化合物自体は、USの開始前のベースラインすくみ行動に影響を与えず(図11)、従って、最もありそうな仮説は、図12において観察される効果が抗不安作用によるというものである。条件付けされた記憶は、潜在的な抗不安作用を有する化合物によって低減される応答であるすくみ行動によって評価される。この実験は、記憶想起の直前に与えられる化合物が抗不安効力を有することを実証し、従って、図11に示されるすくみの増大が、化合物の不安惹起作用によるものであるとは考えにくい。
【0100】
化合物が不安惹起性ではなく、認知促進の可能性を有することを強化するために、獲得セッションの後に、化合物を5、10および20mg/kgで投与した。その結果、この実験セットでは、化合物は獲得中も保持試験の間中もオンボード(onboard)でなかった。ここで、5mg/kgの化合物は、獲得セッションの24時間後の保持試験中にすくみに費やされる時間を著しく高めることが観察された(ビヒクル処置動物の25.26±3.57%、n=19に対して、45.58±4.50%、n=8、p<0.05)。状況に再度さらされている間のすくみに費やされる時間の割合は恐怖関連記憶の尺度として記載されており[非特許文献17]、ビヒクル処置動物と比較したときに化合物処置ラットにおいて増大される(図11および12)。まとめると、データは、化合物が文脈記憶を高めることを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
概日リズム障害;就眠困難;夜間覚醒;早朝覚醒;睡眠呼吸障害;低呼吸症候群;重度うつ病;気分変調性障害;循環気質;消耗性うつ病;非定型うつ病;全身の医学的障害に関連する気分障害;物質誘発性気分障害;反復性うつ病;単一エピソードうつ病;小児うつ病;脳卒中後うつ病;閉経期、閉経前または閉経後不快気分障害;季節性感情障害(SAD);認知症またはアルツハイマー病における攻撃性および激越(agitation);ADHD、自閉症またはアスペルガー症候群における強迫性および注意スペクトラム障害;リューコアライオーシス(leucariosis);小血管疾患(small vessel disease);乱用、被刺激性、敵意、睡眠障害、疲労、ハンチントン病、多発性硬化症、不安(不安うつ病)、疼痛、胃腸管の疼痛または過敏性腸症候群(IBS)に関連するうつ病;疼痛に関連する全般性不安障害;衝動調節疾患;間欠性爆発性障害;窃盗癖;放火癖;病的賭博;抜毛癖;統合失調症の陰性症状;軽度認知機能障害;血管性認知症;ダウン症候群、tph遺伝子突然変異、ADHD、てんかん、外傷性脳損傷またはアスペルガー症候群に関連する認知機能障害;認知症およびアルツハイマー病における攻撃性および激越;慢性疲労症候群;ストレス関連の障害;急性ストレス;ストレス;燃え尽き;HPA軸の機能亢進に関連するインスリン抵抗性;肥満;過食;食欲不振;神経性大食症;行為障害;行動障害(behavioural disturbances);認知症に関連する行動障害;高齢者における行動障害;飛行恐怖症;エレベータ恐怖症;小部屋恐怖症(fear of small rooms);弱視;無オルガズム症;遅漏;勃起障害;性欲低下;異常オルガズム;性欲減退;あるいはオルガズム感の低下から選択される疾患の処置方法であって、それを必要としている患者に、治療的有効量の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンである化合物Iおよびその薬学的に許容可能な塩を、それを必要としている患者に投与することを含む方法。
【請求項2】
前記患者に、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの臭化水素酸塩が投与される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩が結晶性である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩が、6.89、9.73、13.78および14.62(°2θ)(全て±0.1(°2θ))において主要なXRDPピークを有することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記塩が、図3に示されるようなXRDPを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物Iが、約1〜50mgの単位用量で患者に投与される請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記患者に、1日当たり約1〜20mgの間の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの臭化水素酸塩が経口投与される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記患者に治療的有効量の化合物Iが投与されるが、ただし、化合物Iが非結晶形態の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの遊離塩基ではないことを条件とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が前記疾患の処置のために投薬を以前に受けたことがあり(あるいは、まだ受けており)、前記投薬が睡眠または性的関連の有害事象のために中止または低減された(あるいは、中止または低減せざるを得ない)請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
概日リズム障害;就眠困難;夜間覚醒;早朝覚醒;睡眠呼吸障害;低呼吸症候群;重度うつ病;気分変調性障害;循環気質;消耗性うつ病;非定型うつ病;全身の医学的障害に関連する気分障害;物質誘発性気分障害;反復性うつ病;単一エピソードうつ病;小児うつ病;脳卒中後うつ病;閉経期、閉経前または閉経後不快気分障害;季節性感情障害(SAD);認知症またはアルツハイマー病における攻撃性および激越;ADHD、自閉症またはアスペルガー症候群における強迫性および注意スペクトラム障害;リューコアライオーシス;小血管疾患;乱用、被刺激性、敵意、睡眠障害、疲労、ハンチントン病、多発性硬化症、不安(不安うつ病)、疼痛、胃腸管の疼痛または過敏性腸症候群(IBS)に関連するうつ病;疼痛に関連する全般性不安障害;衝動調節疾患;間欠性爆発性障害;窃盗癖;放火癖;病的賭博;抜毛癖;統合失調症の陰性症状;軽度認知機能障害;血管性認知症;ダウン症候群、tph遺伝子突然変異、ADHD、てんかん、外傷性脳損傷またはアスペルガー症候群に関連する認知機能障害;認知症およびアルツハイマー病における攻撃性および激越;慢性疲労症候群;ストレス関連の障害;急性ストレス;ストレス;燃え尽き;HPA軸の機能亢進に関連するインスリン抵抗性;肥満;過食;食欲不振;神経性大食症;行為障害;行動障害;認知症に関連する行動障害;高齢者における行動障害;飛行恐怖症;エレベータ恐怖症;小部屋恐怖症;弱視;無オルガズム症;遅漏;勃起障害;性欲低下;異常オルガズム;性欲減退;あるいはオルガズム感の低下から選択される疾患の処置のための薬剤の製造における、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンである化合物Iおよびその薬学的に許容可能な塩の使用。
【請求項11】
前記化合物Iが、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの臭化水素酸塩である請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記塩が結晶性である請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記塩が、6.89、9.73、13.78および14.62(°2θ)(全て±0.1(°2θ))において主要なXRDPピークを有することを特徴とする請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記塩が、図3に示されるようなXRDPを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記薬物は、約1〜50mgの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンおよびその薬学的に許容可能な塩の経口投与のための単位用量である請求項10〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記薬物が、約1〜20mgの間の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの臭化水素酸塩を含む請求項15に記載の使用。
【請求項17】
化合物Iが、非結晶形態の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの遊離塩基ではないことを条件とする請求項10〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記薬剤が、前記疾患の処置のために投薬を以前に受けたことがあり(あるいは、まだ受けており)、前記投薬が睡眠または性的関連の有害事象のために中止または低減された(あるいは、中止または低減せざるを得ない)患者において使用するためのものである請求項10〜17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
概日リズム障害;就眠困難;夜間覚醒;早朝覚醒;睡眠呼吸障害;低呼吸症候群;重度うつ病;気分変調性障害;循環気質;消耗性うつ病;非定型うつ病;全身の医学的障害に関連する気分障害;物質誘発性気分障害;反復性うつ病;単一エピソードうつ病;小児うつ病;脳卒中後うつ病;閉経期、閉経前または閉経後不快気分障害;季節性感情障害(SAD);認知症またはアルツハイマー病における攻撃性および激越;ADHD、自閉症またはアスペルガー症候群における強迫性および注意スペクトラム障害;リューコアライオーシス;小血管疾患;乱用、被刺激性、敵意、睡眠障害、疲労、ハンチントン病、多発性硬化症、不安(不安うつ病)、疼痛、胃腸管の疼痛または過敏性腸症候群(IBS)に関連するうつ病;疼痛に関連する全般性不安障害;衝動調節疾患;間欠性爆発性障害;窃盗癖;放火癖;病的賭博;抜毛癖;統合失調症の陰性症状;軽度認知機能障害;血管性認知症;ダウン症候群、tph遺伝子突然変異、ADHD、てんかん、外傷性脳損傷またはアスペルガー症候群に関連する認知機能障害;認知症およびアルツハイマー病における攻撃性および激越;慢性疲労症候群;ストレス関連の障害;急性ストレス;ストレス;燃え尽き;HPA軸の機能亢進に関連するインスリン抵抗性;肥満;過食;食欲不振;神経性大食症;行為障害;行動障害;認知症に関連する行動障害;高齢者における行動障害;飛行恐怖症;エレベータ恐怖症;小部屋恐怖症;弱視;無オルガズム症;遅漏;勃起障害;性欲低下;異常オルガズム;性欲減退;あるいはオルガズム感の低下から選択される疾患の処置において使用するための1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンである化合物Iおよびその薬学的に許容可能な塩。
【請求項20】
1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの臭化水素酸塩である請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
前記塩が結晶性である請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
前記塩が、6.89、9.73、13.78および14.62(°2θ)(全て±0.1(°2θ))において主要なXRDPピークを有することを特徴とする請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
前記塩が、図3に示されるようなXRDPを特徴とする請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
約1〜50mgの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンおよびその薬学的に許容可能な塩の経口投与のための単位用量である請求項19〜23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
前記単位用量が、約1〜20mgの間の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの臭化水素酸塩を含む請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
非結晶形態の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの遊離塩基ではないことを条件とする請求項19〜25のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
前記疾患の処置のために投薬を以前に受けたことがあり(あるいは、まだ受けており)、前記投薬が睡眠または性的関連の有害事象のために中止または低減された(あるいは、中止または低減せざるを得ない)患者の処置において使用するための請求項19〜26のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項28】
治療的有効量の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンおよびその薬学的に許容可能な塩を、それを必要としている患者に投与することを含む、うつ病、不安、乱用または慢性疼痛から選択される疾患を処置する方法であって、前記患者が、前記疾患の処置のために投薬を以前に受けたことがあり(あるいは、まだ受けており)、前記投薬が睡眠または性的関連の有害事象のために中止または低減された(あるいは、中止または低減せざるを得ない)方法。
【請求項29】
うつ病、不安、乱用または慢性疼痛から選択される疾患の処置のための薬剤の製造における、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンおよびその薬学的に許容可能な塩の使用であって、前記薬剤が、前記疾患の処置のために投薬を以前に受けたことがあり(あるいは、まだ受けており)、前記投薬が睡眠または性的関連の有害事象のために中止または低減された(あるいは、中止または低減せざるを得ない)患者において使用するためのものである使用。
【請求項30】
うつ病、不安、乱用または慢性疼痛から選択される疾患の処置のために投薬を以前に受けたことがあり(あるいは、まだ受けており)、前記投薬が睡眠または性的関連の有害事象のために中止または低減された(あるいは、中止または低減せざるを得ない)患者において、前記疾患の処置で使用するための1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンおよびその薬学的に許容可能な塩。
【請求項1】
概日リズム障害;就眠困難;夜間覚醒;早朝覚醒;睡眠呼吸障害;低呼吸症候群;重度うつ病;気分変調性障害;循環気質;消耗性うつ病;非定型うつ病;全身の医学的障害に関連する気分障害;物質誘発性気分障害;反復性うつ病;単一エピソードうつ病;小児うつ病;脳卒中後うつ病;閉経期、閉経前または閉経後不快気分障害;季節性感情障害(SAD);認知症またはアルツハイマー病における攻撃性および激越(agitation);ADHD、自閉症またはアスペルガー症候群における強迫性および注意スペクトラム障害;リューコアライオーシス(leucariosis);小血管疾患(small vessel disease);乱用、被刺激性、敵意、睡眠障害、疲労、ハンチントン病、多発性硬化症、不安(不安うつ病)、疼痛、胃腸管の疼痛または過敏性腸症候群(IBS)に関連するうつ病;疼痛に関連する全般性不安障害;衝動調節疾患;間欠性爆発性障害;窃盗癖;放火癖;病的賭博;抜毛癖;統合失調症の陰性症状;軽度認知機能障害;血管性認知症;ダウン症候群、tph遺伝子突然変異、ADHD、てんかん、外傷性脳損傷またはアスペルガー症候群に関連する認知機能障害;認知症およびアルツハイマー病における攻撃性および激越;慢性疲労症候群;ストレス関連の障害;急性ストレス;ストレス;燃え尽き;HPA軸の機能亢進に関連するインスリン抵抗性;肥満;過食;食欲不振;神経性大食症;行為障害;行動障害(behavioural disturbances);認知症に関連する行動障害;高齢者における行動障害;飛行恐怖症;エレベータ恐怖症;小部屋恐怖症(fear of small rooms);弱視;無オルガズム症;遅漏;勃起障害;性欲低下;異常オルガズム;性欲減退;あるいはオルガズム感の低下から選択される疾患の処置方法であって、それを必要としている患者に、治療的有効量の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンである化合物Iおよびその薬学的に許容可能な塩を、それを必要としている患者に投与することを含む方法。
【請求項2】
前記患者に、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの臭化水素酸塩が投与される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩が結晶性である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩が、6.89、9.73、13.78および14.62(°2θ)(全て±0.1(°2θ))において主要なXRDPピークを有することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記塩が、図3に示されるようなXRDPを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物Iが、約1〜50mgの単位用量で患者に投与される請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記患者に、1日当たり約1〜20mgの間の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの臭化水素酸塩が経口投与される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記患者に治療的有効量の化合物Iが投与されるが、ただし、化合物Iが非結晶形態の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの遊離塩基ではないことを条件とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が前記疾患の処置のために投薬を以前に受けたことがあり(あるいは、まだ受けており)、前記投薬が睡眠または性的関連の有害事象のために中止または低減された(あるいは、中止または低減せざるを得ない)請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
概日リズム障害;就眠困難;夜間覚醒;早朝覚醒;睡眠呼吸障害;低呼吸症候群;重度うつ病;気分変調性障害;循環気質;消耗性うつ病;非定型うつ病;全身の医学的障害に関連する気分障害;物質誘発性気分障害;反復性うつ病;単一エピソードうつ病;小児うつ病;脳卒中後うつ病;閉経期、閉経前または閉経後不快気分障害;季節性感情障害(SAD);認知症またはアルツハイマー病における攻撃性および激越;ADHD、自閉症またはアスペルガー症候群における強迫性および注意スペクトラム障害;リューコアライオーシス;小血管疾患;乱用、被刺激性、敵意、睡眠障害、疲労、ハンチントン病、多発性硬化症、不安(不安うつ病)、疼痛、胃腸管の疼痛または過敏性腸症候群(IBS)に関連するうつ病;疼痛に関連する全般性不安障害;衝動調節疾患;間欠性爆発性障害;窃盗癖;放火癖;病的賭博;抜毛癖;統合失調症の陰性症状;軽度認知機能障害;血管性認知症;ダウン症候群、tph遺伝子突然変異、ADHD、てんかん、外傷性脳損傷またはアスペルガー症候群に関連する認知機能障害;認知症およびアルツハイマー病における攻撃性および激越;慢性疲労症候群;ストレス関連の障害;急性ストレス;ストレス;燃え尽き;HPA軸の機能亢進に関連するインスリン抵抗性;肥満;過食;食欲不振;神経性大食症;行為障害;行動障害;認知症に関連する行動障害;高齢者における行動障害;飛行恐怖症;エレベータ恐怖症;小部屋恐怖症;弱視;無オルガズム症;遅漏;勃起障害;性欲低下;異常オルガズム;性欲減退;あるいはオルガズム感の低下から選択される疾患の処置のための薬剤の製造における、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンである化合物Iおよびその薬学的に許容可能な塩の使用。
【請求項11】
前記化合物Iが、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの臭化水素酸塩である請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記塩が結晶性である請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記塩が、6.89、9.73、13.78および14.62(°2θ)(全て±0.1(°2θ))において主要なXRDPピークを有することを特徴とする請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記塩が、図3に示されるようなXRDPを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記薬物は、約1〜50mgの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンおよびその薬学的に許容可能な塩の経口投与のための単位用量である請求項10〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記薬物が、約1〜20mgの間の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの臭化水素酸塩を含む請求項15に記載の使用。
【請求項17】
化合物Iが、非結晶形態の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの遊離塩基ではないことを条件とする請求項10〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記薬剤が、前記疾患の処置のために投薬を以前に受けたことがあり(あるいは、まだ受けており)、前記投薬が睡眠または性的関連の有害事象のために中止または低減された(あるいは、中止または低減せざるを得ない)患者において使用するためのものである請求項10〜17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
概日リズム障害;就眠困難;夜間覚醒;早朝覚醒;睡眠呼吸障害;低呼吸症候群;重度うつ病;気分変調性障害;循環気質;消耗性うつ病;非定型うつ病;全身の医学的障害に関連する気分障害;物質誘発性気分障害;反復性うつ病;単一エピソードうつ病;小児うつ病;脳卒中後うつ病;閉経期、閉経前または閉経後不快気分障害;季節性感情障害(SAD);認知症またはアルツハイマー病における攻撃性および激越;ADHD、自閉症またはアスペルガー症候群における強迫性および注意スペクトラム障害;リューコアライオーシス;小血管疾患;乱用、被刺激性、敵意、睡眠障害、疲労、ハンチントン病、多発性硬化症、不安(不安うつ病)、疼痛、胃腸管の疼痛または過敏性腸症候群(IBS)に関連するうつ病;疼痛に関連する全般性不安障害;衝動調節疾患;間欠性爆発性障害;窃盗癖;放火癖;病的賭博;抜毛癖;統合失調症の陰性症状;軽度認知機能障害;血管性認知症;ダウン症候群、tph遺伝子突然変異、ADHD、てんかん、外傷性脳損傷またはアスペルガー症候群に関連する認知機能障害;認知症およびアルツハイマー病における攻撃性および激越;慢性疲労症候群;ストレス関連の障害;急性ストレス;ストレス;燃え尽き;HPA軸の機能亢進に関連するインスリン抵抗性;肥満;過食;食欲不振;神経性大食症;行為障害;行動障害;認知症に関連する行動障害;高齢者における行動障害;飛行恐怖症;エレベータ恐怖症;小部屋恐怖症;弱視;無オルガズム症;遅漏;勃起障害;性欲低下;異常オルガズム;性欲減退;あるいはオルガズム感の低下から選択される疾患の処置において使用するための1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンである化合物Iおよびその薬学的に許容可能な塩。
【請求項20】
1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの臭化水素酸塩である請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
前記塩が結晶性である請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
前記塩が、6.89、9.73、13.78および14.62(°2θ)(全て±0.1(°2θ))において主要なXRDPピークを有することを特徴とする請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
前記塩が、図3に示されるようなXRDPを特徴とする請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
約1〜50mgの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンおよびその薬学的に許容可能な塩の経口投与のための単位用量である請求項19〜23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
前記単位用量が、約1〜20mgの間の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの臭化水素酸塩を含む請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
非結晶形態の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの遊離塩基ではないことを条件とする請求項19〜25のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
前記疾患の処置のために投薬を以前に受けたことがあり(あるいは、まだ受けており)、前記投薬が睡眠または性的関連の有害事象のために中止または低減された(あるいは、中止または低減せざるを得ない)患者の処置において使用するための請求項19〜26のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項28】
治療的有効量の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンおよびその薬学的に許容可能な塩を、それを必要としている患者に投与することを含む、うつ病、不安、乱用または慢性疼痛から選択される疾患を処置する方法であって、前記患者が、前記疾患の処置のために投薬を以前に受けたことがあり(あるいは、まだ受けており)、前記投薬が睡眠または性的関連の有害事象のために中止または低減された(あるいは、中止または低減せざるを得ない)方法。
【請求項29】
うつ病、不安、乱用または慢性疼痛から選択される疾患の処置のための薬剤の製造における、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンおよびその薬学的に許容可能な塩の使用であって、前記薬剤が、前記疾患の処置のために投薬を以前に受けたことがあり(あるいは、まだ受けており)、前記投薬が睡眠または性的関連の有害事象のために中止または低減された(あるいは、中止または低減せざるを得ない)患者において使用するためのものである使用。
【請求項30】
うつ病、不安、乱用または慢性疼痛から選択される疾患の処置のために投薬を以前に受けたことがあり(あるいは、まだ受けており)、前記投薬が睡眠または性的関連の有害事象のために中止または低減された(あるいは、中止または低減せざるを得ない)患者において、前記疾患の処置で使用するための1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンおよびその薬学的に許容可能な塩。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2011−503125(P2011−503125A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533436(P2010−533436)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【国際出願番号】PCT/DK2008/050271
【国際公開番号】WO2009/062517
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【出願人】(509022185)タケダ・フアーマシユーテイカルズ・ノース・アメリカ・インコーポレイテツド (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【国際出願番号】PCT/DK2008/050271
【国際公開番号】WO2009/062517
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【出願人】(509022185)タケダ・フアーマシユーテイカルズ・ノース・アメリカ・インコーポレイテツド (8)
【Fターム(参考)】
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