説明

SNMPトラップの伝送方法とSNMPトラップの伝送装置

【課題】 エージェントから1回しか送信されないSNMPトラップを、マネージャに確実で受信されるようにすることにある。
【解決手段】 SNMPマネージャ側からSNMPエージェント側に定期的な監視を行わずに、SNMPエージェントから出力されるSNMPトラップをSNMPマネージャ側に伝送するSNMPトラップの伝送方法において、SNMPエージェントからSNMPマネージャに対して定期的に疎通確認用コマンド(例えば、PINGコマンド)を送信して、前記線路機器にMACアドレスを記憶させて伝送線路の疎通を常時確保し、その確保状態でSNMPトラップをSNMPマネージャに伝送するようにした。前記所定時間間隔は、線路機器のコントローラに記憶されているMACアドレスの保存時間内での間隔とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークシステムを監視し、管理するためのプロトコルの一つであるSNMP(Simple Network Management Protocol)エージェントからのSNMPトラップの伝送方法とSNMPトラップの伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及に伴って、各種場所でネットワークシステムが構築されてインターネットに接続されている。ネットワークシステムの障害は、そのシステムだけでなく、インターネットを通じて他のネットワークシステムに影響を及ぼすこともある。このような事態を避けるためにも、ネットワークシステムはシステム管理者によって管理される必要がある。
【0003】
ネットワークシステムの管理方法としては、自動監視ツールを使用してネットワークシステムを自動的に監視し、障害発生時(検知時)に自動的に管理者やオペレータに通知する方法がある。これら監視ツールで広く利用されているプロトコルとして前記SNMPがある。SNMPは管理(監視)対象となる端末機器に常駐するSNMPエージェント(以下、管理(監視)対象となる端末機器を「SNMPエージェント」という。)と、管理(監視)する側の機器(監視サーバ)上のSNMPマネージャ(以下、管理サーバを「SNMPマネージャ」という。)で構成される。
【0004】
前記SNMPマネージャとSNMPエージェントの間の通信は次のようにして行われる。
1.SNMPマネージャからSNMPエージェントに対して指定情報を要求すると、SNMPエージェントは指定された情報を入手してSNMPマネージャへ応答する。
2.SNMPエージェント側で状態変化が発生すると、SNMPエージェントは予め指定された送信先(SNMPマネージャ)に対して情報(SNMPトラップ)を送信する。
【0005】
前記2のSNMPトラップを送るLAN伝送線路にはスイッチング・ハブ、ルーター、メディアコンバータ等の各種線路機器が挿入されている。管理対象となるSNMPエージェントからSNMPマネージャへのSNMPトラップの伝送方式は、SNMPエージェントに状態変化が発生した場合に、予め指定された送信先に対して送信する方式である。SNMPトラップの通信方式はトランスポート層のUDP(User Datagram Protocol)を使用して行われ、1回だけしか送信されず、再送信は行われない。
【0006】
スイッチング・ハブは、IP(インターネットプロトコル)上で複数の機器の通信を切替えて通過させる機器であり、その構成は例えば図2に示すようになっている。その切替え方法としてはデータ・フレームの中に格納されている宛先端末のアドレス(MACアドレス)を読み取り、その宛先端末と接続しているポートにだけデータを転送するものである。例えば、図3のAポートに接続されている機器が、Eポ−トに接続されている機器と通信を行いたい場合は次のような手順で通信が行われる。
1.通信開始時にARPというブロードキャストプロトコルを使って相手側のMACアドレスを調べる。
2.スイッチング・ハブはAポ−トからブロードキャストプロトコルを受信すると入力されたデータをB〜Eの全てのポートから送出する(図3)。この時コントローラがポートとMACアドレスの対応を学習して記録する。
3.Eポ−トに接続された相手側が返事を戻すとAポ−トのみにデータを出力し(図4)、このときのMACアドレスを記録する。
4.その後は、記憶されたMACアドレスのテーブルによって入力されたデータを対向側の接続されたポ−トのみに出力する。
5.記憶されたMACアドレスは、パケットの送受信が行われなくなると、300秒(5分)(メーカーによって異なる)後に消去される。
【0007】
従来のSNMPトラップの伝送方法は次のような難点があった。
1.前記5のように、スイッチング・ハブに記憶されたMACアドレスは時間の経過により自動的に消去されるため、そのときは線路のスイッチ機能が途絶える。このため、前記UDP方式では、指定された送信先までSNMPトラップが届かないことがあり(図4)、届かないことがあっても確認ができない。
2.ネットワークの通信方式には、予め、送信の予告と送信了解の確認をした上で(コネクションを取った上で)送信するコネクション型の通信方式(TCP:Transmission Control Protocol)もあるが、SNMPで使用しているUDPは通信線路の疎通確認(コネクション)を行わずにデータを送信するコネクションレス型の通信方式であるため、定期的な監視間隔が長いと、伝送線路に使用されるスイッチング・ハブ等のMACアドレス(Media Access address)の記憶が消えてしまうことがあり、その場合は線路のスイッチ機能が途絶えてしまい(伝送路の疎通が切れてしまい)、指定された送信先までSNMPトラップが届かないことがある。
3.スイッチング・ハブに限らず、他の線路機器によっても、線路の伝送機能が途絶えてしまい(伝送路の疎通が切れてしまい:図5)、指定された送信先までSNMPトラップが届かないことがある。
【0008】
SNMPエージェントからSNMPマネージャに送るSNMPトラップが途中で失われることをなくして、信頼性を向上させた監視システムとして特許文献1の監視システムがある。特許文献1の監視システムは、TRAP受信専用回線を配置した冗長システムであるため、システムが複雑化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−18243
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、SNMPエージェントから1回しか送信されないSNMPトラップを、SNMPマネージャに確実で受信されるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のSNMPトラップの伝送方法は、SNMPマネージャ側からSNMPエージェント側に定期的な監視を行わずに、SNMPエージェントから出力されるSNMPトラップを線路機器が挿入された伝送線路を使用してSNMPマネージャ側に伝送するSNMPトラップの伝送方法において、SNMPエージェントからSNMPマネージャに対して所定時間間隔で定期的に疎通確認用コマンド(例えば、PINGコマンド)を送信して、前記線路機器にMACアドレスを記憶させて伝送線路の疎通を常時確保し、その確保状態でSNMPトラップをSNMPマネージャに伝送するようにしたSNMPトラップの伝送方法である。この場合の所定時間間隔は線路機器のコントローラに記憶されているMACアドレスの保存時間内での時間間隔とする。
【0012】
本発明のSNMPトラップの伝送装置は、SNMPマネージャ側からSNMPエージェント側に定期的な監視を行わずに、SNMPエージェントから出力されるSNMPトラップを線路機器が挿入された伝送線路を使用してSNMPマネージャ側に伝送するSNMPトラップの伝送装置において、SNMPエージェントが、SNMPエージェントからSNMPマネージャに対して所定時間間隔で定期的に疎通確認用コマンド(例えば、PINGコマンド)を送信する機能を備え、前記線路機器が疎通確認用コマンドの受信によりMACアドレスを記憶する機能を備えた装置である。この場合の所定時間間隔は線路機器のコントローラに記憶されているMACアドレスの保存時間内での時間間隔である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のSNMPトラップの伝送方法は、伝送線路に挿入される線路機器に所定時間間隔(線路機器のコントローラに記憶されているMACアドレスの保存時間内での時間間隔)で定期的に疎通確認用コマンドを送信して、線路機器にMACアドレスを記憶させるので、伝送線路の疎通が常時確保され、SNMPマネージャ側から定期的な監視を行わずとも、SNMPエージェントから不定期に発生するSNMPトラップの伝送が途中で途絶えてしまうことがなく、送信先まで確実に送信される。
【0014】
本発明のSNMPトラップの伝送装置はSNMPエージェントが、SNMPエージェントからSNMPマネージャに対して所定時間間隔(線路機器のコントローラに記憶されているMACアドレスの保存時間内での時間間隔)で定期的に疎通確認用コマンドを送信する機能を備え、前記線路機器が疎通確認用コマンドの受信によりMACアドレスを記憶する機能を備えているので、伝送線路の疎通が常時確保され、SNMPマネージャ側から定期的な監視を行わずとも、SNMPエージェントから不定期に発生するSNMPトラップを、途中で途絶えることなく、送信先まで確実に送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明におけるスイッチング・ハブの動作説明図。
【図2】スイッチング・ハブの構成説明図。
【図3】スイッチング・ハブのAポートから受信したブロードキャストプロトコルを他の全てのポートから送出する状態の説明図。
【図4】スイッチング・ハブのEポートに接続された相手側からAポートのみにデータを出力する場合の説明図。
【図5】スイッチング・ハブに記憶されたMACアドレスが時間経過により消去して、SNMPトラップが送信先まで届かない状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
本発明のSNMPトラップのSNMPトラップの伝送方法と、SNMPトラップの伝送装置の一例を図1に基づいて説明する。本発明の伝送線路にはスイッチング・ハブ、ルーター、メディアコンバータ等のいずれの線路機器が挿入されている場合であっても利用可能であるが、図1は伝送線路にスイッチング・ハブが挿入されている場合の一例である。
【0017】
この実施形態は、図1のスイッチング・ハブ3が挿入された伝送線路を使用してSNMPマネージャ側とSNMPエージェント側でデータの送受信を行うものである。その送受信は、基本的には、既存のデータ送受信と同様に、SNMPマネージャ側からSNMPエージェント側に対して指定情報を要求すると、SNMPエージェントは指定された情報を入手してSNMPマネージャへ応答することができ、SNMPエージェント側に状態変化が発生するとSNMPエージェントは予め指定されたSNMPマネージャに対してSNMPトラップを送信できるようにしてある。この場合、SNMPエージェントからSNMPマネージャに対してのSNMPトラップの通信方式は、トランスポート層のUDPを使用して行われ、1回だけしか送信されず、再送信は行われない方式である。
【0018】
本発明は、前記データ伝送方式において、SNMPエージェントからSNMPマネージャに対して所定時間間隔で定期的に疎通確認用コマンド(例えば、PINGコマンド)を送信して、前記スイッチング・ハブ3にMACアドレスを記憶させて伝送線路の疎通を常時確保し、その確保状態でSNMPトラップをSNMPマネージャに伝送するようにしたものである。PINGコマンドは接続相手とのネットワーク疎通を確認する際に使用するコマンドであり、ネットワーク疎通を確認したいSNMPマネージャ(ホスト)に対してIPパケットを発行し、そのパケットがSNMPマネージャに正しく届いて返答が行われるかを確認するためのコマンドである。
【0019】
前記の所定間隔で定期的とは、線路機器のコントローラに記憶されたMACアドレスの保存時間時内(メーカーによっても異なるが、例えば300秒(5分))の間隔で行う。この時間内の間隔で定期的に送信することにより、前記記憶が消去される前に線路機器にMACアドレスを記憶させて伝送線路の疎通を常時確保することができ、SNMPエージェントから不定期に発生するSNMPトラップが途中で消えずにSNMPマネージャに確実に伝送されるようにしてある。
【0020】
本発明のSNMPトラップの伝送装置は、SNMPエージェントが、SNMPエージェントからSNMPマネージャに対して所定時間間隔で定期的に疎通確認用コマンド(例えば、PINGコマンド)を送信する機能を備え、前記線路機器が疎通確認用コマンドの受信によりMACアドレスを記憶する機能を備えたものとしてある。この場合の所定時間間隔は、線路機器のコントローラに記憶されているMACアドレスの保存時間内での時間間隔としてある。
【0021】
図1のスイッチング・ハブ3は、既存のスイッチング・ハブと同様にアドレス管理テーブル1、バッファメモリ2、コントローラ等を備えている。
【符号の説明】
【0022】
1 アドレス管理テーブル
2 バッファメモリ
3 スイッチング・ハブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SNMPマネージャ側からSNMPエージェント側に定期的な監視を行わずに、SNMPエージェントから出力されるSNMPトラップを線路機器が挿入された伝送線路を使用してSNMPマネージャ側に伝送するSNMPトラップの伝送方法において、SNMPエージェントからSNMPマネージャに対して所定時間間隔で定期的に疎通確認用コマンドを送信して、前記線路機器にMACアドレスを記憶させて伝送線路の疎通を常時確保し、その確保状態でSNMPトラップをSNMPマネージャに伝送するようにしたことを特徴とするSNMPトラップの伝送方法。
【請求項2】
請求項1記載のSNMPトラップの伝送方法において、所定時間間隔が、線路機器のコントローラに記憶されているMACアドレスの保存時間内での時間間隔であることを特徴とするSNMPトラップの伝送方法。
【請求項3】
SNMPマネージャ側からSNMPエージェント側に定期的な監視を行わずに、SNMPエージェントから出力されるSNMPトラップを線路機器が挿入された伝送線路を使用してSNMPマネージャ側に伝送するSNMPトラップの伝送装置において、SNMPエージェントが、SNMPエージェントからSNMPマネージャに対して所定時間間隔で定期的に疎通確認用コマンドを送信する機能を備え、前記線路機器が疎通確認用コマンドの受信によりMACアドレスを記憶する機能を備えたことを特徴とするSNMPトラップの伝送装置。
【請求項4】
請求項3記載のSNMPトラップの伝送装置において、所定時間間隔が、線路機器のコントローラに記憶されているMACアドレスの保存時間内での時間間隔であることを特徴とするSNMPトラップの伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−104050(P2012−104050A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254125(P2010−254125)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000114226)ミハル通信株式会社 (38)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】