SOIウェーハの検査方法
【課題】SOIウェーハの膜厚の変動に起因する欠陥をSOIウェーハ表面異物に影響されることなく、感度良く、低コストで検査することができるSOIウェーハ検査方法を提供することを目的とする。
【解決手段】検査対象のSOIウェーハと、検査対象のSOIウェーハよりSOI層の膜厚が所定厚t[nm]だけ薄い、又は厚い膜厚のSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP1、P2を算出し、両者の差のプロファイルP3、又は変化率のプロファイルP4を算出し、該算出したプロファイルP3又はP4内の最大ピーク波長λMに基づいて選択した波長λ又は波長帯の光を検査対象のSOIウェーハの表面に照射し、該SOIウェーハからの反射光を検出し、その検出した反射光の反射強度が増加してピークとなる箇所をSOI層膜厚の変動に起因する欠陥として検知することを特徴とするSOIウェーハの検査方法。
【解決手段】検査対象のSOIウェーハと、検査対象のSOIウェーハよりSOI層の膜厚が所定厚t[nm]だけ薄い、又は厚い膜厚のSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP1、P2を算出し、両者の差のプロファイルP3、又は変化率のプロファイルP4を算出し、該算出したプロファイルP3又はP4内の最大ピーク波長λMに基づいて選択した波長λ又は波長帯の光を検査対象のSOIウェーハの表面に照射し、該SOIウェーハからの反射光を検出し、その検出した反射光の反射強度が増加してピークとなる箇所をSOI層膜厚の変動に起因する欠陥として検知することを特徴とするSOIウェーハの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はSOIウェーハのような多層膜構造を有する半導体基板の検査あるいはその基板を用いたデバイス工程の検査技術に関り、特に光を用いて行う検査において反射光を検出することで種々の表面欠陥及びパターン欠陥の検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
多層膜構造を有する半導体基板の製造工程、及びその基板を用いるデバイス工程において、デバイスの歩留まりに影響する表面及び表面近傍の種々欠陥を検出することは、工程管理、歩留まり向上を行う上で重要である。また近年、多層膜構造を持つ半導体基板としてSOIウェーハがデバイス作製に用いられるようになり、工程が複雑になり、微細化が進むに従って、検出力あるいはスループットの点から光学的検査の重要性が増してきている。
【0003】
このような表面及び表面近傍付近の検査対象となる欠陥等として、結晶欠陥、異物、スクラッチ、パターン欠陥、堆積されたパターンの異常などがあり、これらを検出するため散乱光を用いた暗視野検査方法、又は顕微鏡を利用した明視野検査方法が利用されている。
例えば、半導体基板にレーザ光を照射したときの散乱光を検出して半導体基板を検査する方法(特許文献1参照)、同一入射角度で2種以上の波長のレーザーを切り替えもしくは混合の形で被検査物に入射して表面を検査する方法(特許文献2参照)などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−112871号公報
【特許文献2】特開2004−132755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したような欠陥の具体的なものとして、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥(膜厚変動を伴う欠陥)があり、SOI上に作り込むデバイス特性に影響を与えている。そのため、SOIウェーハ製造プロセスあるいは製品SOIウェーハ検査でSOI層膜厚の変動に起因する欠陥を感度良く検査することが重要とされている。
このようなSOI層膜厚の変動に起因する欠陥には、SOI層膜厚の減少による窪みのような形状のものがあり、その深さとしては、埋め込み絶縁層(BOX層)まで達する深さではなく、およそ10nmから絶縁層に達しないまでの深さである。また、その大きさは、レーザ散乱法で使われる波長より大きい広がりをもっている。
【0006】
この欠陥の広がりとして10μm程度のものが典型的に観察されるが、光学的検査装置の顕微鏡の倍率を調整すれば、1〜2μm程度から、数100μm程度までのものが観察可能である。また、形状に関しては円状、円の連なったもの、楕円、その他デバイス工程で長方形のような角のある形も検出される可能性がある。また、上記したようなSOI層膜厚の減少による窪み形状ではなく、SOI層の膜厚の増加により層が厚くなったマウンドのような形状の欠陥も存在することがある。
【0007】
このSOI層膜厚の増加及び減少による変動に起因する欠陥を従来の検査方法により感度良く検査するのは困難であった。例えば、上述したような従来のレーザ散乱式による方法は、パーティクル等の異物の検出には有効であるが、SOI層の微小領域での膜厚の変動に起因する欠陥に対しては散乱強度が弱くて検出感度が十分ではなく、また、異物等と膜厚の変動に起因する欠陥とを分離して検出することも困難であった。
【0008】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、SOIウェーハのSOI層膜厚の変動に起因する欠陥をSOIウェーハ表面の異物に影響されることなく、感度良く、低コストで検査することができるSOIウェーハ検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明によれば、可視光波長以上の波長帯の光を照射する光源を有する光学的検査装置を用いて、埋め込み絶縁層上にSOI層が形成されたSOIウェーハの表面に前記光源から光を照射し、前記SOIウェーハからの反射光を検出して前記SOIウェーハ表面の前記SOI層膜厚の増加及び減少による変動に起因する欠陥を検知するSOIウェーハの検査方法において、少なくとも、前記検査対象のSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP1を算出する工程と、前記検査対象のSOIウェーハより前記SOI層の膜厚が所定厚t[nm]だけ薄い、又は厚い膜厚のSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP2を算出する工程と、前記算出した両方のプロファイルP1、P2の差のプロファイルP3(=P2−P1)、又はプロファイルP1、P2の変化率のプロファイルP4(=P2−P1/P1)を算出し、該算出したプロファイルP3又はP4内の最大ピーク波長λMの近傍の波長λ又は波長帯を選択する工程と、前記選択した波長λ又は波長帯の光を前記検査対象のSOIウェーハの表面に照射し、該SOIウェーハからの反射光を検出する工程と、前記検出した反射光の反射強度が増加してピークとなる箇所を前記SOIウェーハ表面の前記SOI層膜厚の変動に起因する欠陥として検知する工程とを有することを特徴とするSOIウェーハの検査方法が提供される。
【0010】
このように、少なくとも、前記検査対象のSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP1を算出する工程と、前記検査対象のSOIウェーハより前記SOI層の膜厚が所定厚t[nm]だけ薄い、又は厚い膜厚のSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP2を算出する工程と、前記算出した両方のプロファイルP1、P2の差のプロファイルP3(=P2−P1)、又はプロファイルP1、P2の変化率のプロファイルP4(=P2−P1/P1)を算出し、該算出したプロファイルP3又はP4内の最大ピーク波長λMの近傍の波長λ又は波長帯を選択する工程と、前記選択した波長λ又は波長帯の光を前記検査対象のSOIウェーハの表面に照射し、該SOIウェーハからの反射光を検出する工程と、前記検出した反射光の反射強度が増加してピークとなる箇所を前記SOIウェーハ表面の前記SOI層膜厚の変動に起因する欠陥として検知する工程とを有するSOIウェーハの検査方法であれば、SOIウェーハ表面のSOI層膜厚の変動に起因する欠陥を、SOI層の表面に存在する異物によるノイズに影響されることなく高感度で、低コストで検知することができる。また、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥だけを選択的に検知することができる。
【0011】
このとき、前記SOI層膜厚の減少による変動に起因する欠陥を検知する場合、前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚がtだけ薄い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出し、前記SOI層膜厚の増加による変動に起因する欠陥を検知する場合、前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚がtだけ厚い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出することができる。
【0012】
このように、前記SOI層膜厚の減少による変動に起因する欠陥を検知する場合、前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚がtだけ薄い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出し、前記SOI層膜厚の増加による変動に起因する欠陥を検知する場合、前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚がtだけ厚い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出すれば、SOI層膜厚の増加による変動に起因する欠陥と、減少による変動に起因する欠陥のそれぞれに適した波長又は波長帯を選択して検査することができ、それら欠陥をより確実に高感度で検知することができるとともに、増加及び減少による変動に起因する欠陥をそれぞれ分けて検知することができる。
【0013】
またこのとき、前記プロファイルP3又はP4に閾値を設定し、該閾値以上の欠陥を選択的に検出することができる。
このように、前記プロファイルP3又はP4に閾値を設定し、該閾値以上の欠陥を検出するようにすれば、デバイス工程に影響するSOI層膜厚の変動に起因する欠陥だけを選択的に検知することができる。
【0014】
またこのとき、前記所定厚tを前記SOIウェーハの膜厚均一性に応じて設定することが好ましい。
このように、前記所定厚tを前記SOIウェーハの膜厚均一性に応じて設定すれば、膜厚均一性に応じて適切な波長又は波長帯を選択して検査することができ、膜厚の不均一によるノイズが検査に影響するのを抑制して、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥をより確実に高感度で検知することができる。
【0015】
またこのとき、前記所定厚tを5〜20nmの範囲で設定することができる。
このように、前記所定厚tを5〜20nmの範囲で設定すれば、膜厚均一性が±3nm以下のSOIウェーハに対して適切な波長又は波長帯を選択して高感度で検査することができる。従って、本発明は、イオン注入剥離法で膜厚均一性が±3nm以下に作製されるSOIウェーハに対して好適に用いられる方法である。
【0016】
またこのとき、前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚が前記所定厚tだけ薄い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した場合、前記選択する波長λ又は波長帯を、λM−20[nm]以上、λM+100[nm]以下の範囲内から選択し、前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚が前記所定厚tだけ厚い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した場合、前記選択する波長λ又は波長帯を、λM−100[nm]以上、λM+20[nm]以下の範囲内から選択することができる。
【0017】
このように、前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚が前記所定厚tだけ薄い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した場合、前記選択する波長λ又は波長帯を、λM−20[nm]以上、λM+100[nm]以下の範囲内から選択し、前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚が前記所定厚tだけ厚い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した場合、前記選択する波長λ又は波長帯を、λM−100[nm]以上、λM+20[nm]以下の範囲内から選択すれば、プロファイルP2に応じ、より確実に高感度な検査を行うことができる波長λ又は波長帯を選択できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、SOIウェーハ表面のSOI層膜厚の増加及び減少による変動に起因する欠陥を検知するSOIウェーハの検査方法において、少なくとも、検査対象のSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP1を算出する工程と、前記検査対象のSOIウェーハよりSOI層の膜厚が所定厚t[nm]だけ薄い、又は厚い膜厚のSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP2を算出する工程と、前記算出した両方のプロファイルP1、P2の差のプロファイルP3(=P2−P1)、又はプロファイルP1、P2の変化率のプロファイルP4(=P2−P1/P1)を算出し、該算出したプロファイルP3又はP4内の最大ピーク波長λMの近傍の波長λ又は波長帯を選択する工程と、前記選択した波長λ又は波長帯の光を前記検査対象のSOIウェーハの表面に照射し、該SOIウェーハからの反射光を検出する工程と、前記検出した反射光の反射強度が増加してピークとなる箇所を前記SOIウェーハ表面の前記SOI層膜厚の変動に起因する欠陥として検知する工程とを有するので、SOIウェーハ表面のSOI層膜厚の変動に起因する欠陥を、SOI層の表面に存在する異物によるノイズに影響されることなく高感度で、低コストで検知することができる。また、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥だけを選択的に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のSOIウェーハの検査方法の工程を示すフロー図である。
【図2】算出したプロファイルP1、P2の一例を示す図である。
【図3】算出したプロファイルP3の一例を示す図である。
【図4】本発明のSOIウェーハの検査方法で使用することができる光学的検査装置を示す概略図である。
【図5】検出した反射光の反射強度の一例を示す図である。
【図6】検出した反射光の反射強度の別の一例を示す図である。
【図7】検出した反射光の反射強度から欠陥を検知する際に、反射強度に閾値を設定する一例を説明した図である。(A)閾値をピークのない箇所の3倍以上とした場合。(B)閾値をピークのない箇所の2倍以上とした場合。
【図8】算出したプロファイルP1、P2の別の一例を示す図である。
【図9】算出したプロファイルP3の別の一例を示す図である。
【図10】実施例及び比較例において、SOIウェーハの欠陥を検査した結果を示す図である。(A)実施例の結果。(B)比較例の結果。
【図11】算出したプロファイルP1、P2、P3、P4の別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
近年、多層膜構造を持つ半導体基板としてSOIウェーハがデバイス作製に用いられるようになり、工程が複雑になり、微細化が進むに従って、検出力あるいはスループットの点から光学的検査の重要性が増してきている。
このような光学的検査の対象として、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥があり、SOIウェーハ製造プロセスあるいは製品SOIウェーハ検査でSOI層膜厚の変動に起因する欠陥を感度良く検査することが重要とされている。
【0021】
このSOI層膜厚の変動に起因する欠陥を従来の検査方法により感度良く検査するのは困難であった。例えば、上述したような従来のレーザ散乱式による方法は、パーティクル等の異物の検出には有効であるが、SOI層の微小領域での膜厚の変動に起因する欠陥に対しては散乱強度が弱くて検出感度が十分ではなく、また、異物等と膜厚の変動に起因する欠陥とを分離して検出することも困難であった。
【0022】
そこで、本発明者はこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、コストの安い可視光を用いた明視野検査方法において、SOI層の膜厚変化に対して反射率の変化が増大する波長領域の検査光を用いて検査すれば、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥、あるいは膜厚異常領域を高感度で検知することが可能になることに想到した。
【0023】
そして、検査対象のSOI層膜厚のSOIウェーハと、そのSOIウェーハのSOI層膜厚よりも所定厚だけ膜厚の異なるSOIウェーハとのそれぞれの可視光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルの差分又は変化率を求め、この差分又は変化率の増大する最大ピークを示す波長の近傍の波長又は波長帯の光を用いて検査すれば、SOI層膜厚の上記所定厚の変動に起因する反射光のコントラストの変化を強調することができ、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥を高感度で、低コストで検知することができることに想到し、本発明を完成させた。
【0024】
本発明のSOIウェーハの検査方法では、可視光波長以上の波長帯の光を照射する光源を有する光学的検査装置を用いて検査を行う。このように本発明のSOIウェーハの検査方法ではコストの安い可視光を用いて検査を行うので、低コストな検査方法である。
また、本発明のSOIウェーハの検査方法で検知する欠陥はSOI層膜厚の変動に起因する欠陥であり、このような欠陥には、欠陥部分がSOI層膜厚の減少による変動で層が薄くなった例えば窪みのような形状のものと、SOI層膜厚の増加による変動で層が厚くなった例えばマウンドのような形状のものがある。
【0025】
図1は本発明のSOIウェーハの検査方法の工程を示すフロー図である。
本発明のSOIウェーハの検査方法の検査対象物は、埋め込み絶縁層(BOX層)上にSOI層が形成されたSOIウェーハであり、ここではSOI層の厚さをS[nm]、埋め込み絶縁層(BOX層)の厚さをB[nm]とする。
【0026】
まず、このような検査対象となるSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP1をシミュレーションにより算出する(図1のA参照)。
次に、検査対象のSOIウェーハよりSOI層の膜厚が所定厚t[nm]だけ薄い、又は厚い膜厚のSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP2をシミュレーションにより算出する(図1のB参照)。
【0027】
図2は、検査対象のSOIウェーハのSOI層の厚さSが72.5nm、埋め込み絶縁層の厚さBが145nmの場合のプロファイルP1と、その検査対象のSOIウェーハよりSOI層が10nm程度薄くなったSOIウェーハを仮定し、すなわち所定厚tを10nmとしてSOI層の膜厚が62.5nmの場合のプロファイルP2の一例を示す図である。図2に示すように、SOI層の厚さを変更することで反射率の波長依存性を示すプロファイルP1、P2が変化していることが分かる。
【0028】
次に、シミュレーションにより算出した両方のプロファイルP1、P2の差のプロファイルP3(=P2−P1)、又はプロファイルP1、P2の変化率のプロファイルP4(=P2−P1/P1)を算出する。そして、その算出したプロファイルP3又はP4内の増大するピーク中の最大ピーク波長λMの近傍の波長λ又は波長帯を、後工程で用いるSOIウェーハの表面に照射する光の波長λ又は波長帯として選択する(図1のC参照)。以下具体例で説明する。
【0029】
図3は、図2に示したプロファイルP1、P2の差を算出したプロファイルP3を示した図である。図3に示すように、プロファイルP3にはいくつかの増大するピーク(上向きのピーク)を示す箇所が観察される。そして、その中の矢印で示す箇所が最大ピーク波長λM(約620nm)であり、この波長λMの近傍の波長λ又は波長帯を検査波長として選択するようにする。
ここで、選択する波長λ又は波長帯として、プロファイルP3の最大ピーク波長λMを単一波長λとして選択しても良いし、その近傍の波長から単一波長λを選択しても良い。あるいは、その最大ピーク波長λMの近傍を波長帯として選択しても良い。
【0030】
ここで、プロファイルP3又はP4に閾値を設定することができる。そして、その閾値以上の場合のみSOI層膜厚の変動に起因する欠陥を選択的に検知するようにすれば、デバイス工程に影響するSOI層膜厚の変動に起因する欠陥だけを検知可能になる。
【0031】
次に、前工程で選択した波長λ又は波長帯の光を照射する光源を有する光学的検査装置を用いてSOIウェーハの検査を行う。
ここで、本発明で用いることができる光学的検査装置は、可視光波長以上の波長帯の光を照射する光源を有し、前工程で選択した波長又は波長帯の光を検査対象のSOIウェーハに照射してその反射光を検出できるものであれば特に限定されず、例えば図4に示すような、検出カメラ5の前にバンドパスフィルター4を取り付けた構成の光学的検査装置2を用いることができる。
図4に示す光学的検査装置2は、光源3からの光をバンドパスフィルター4により所望の波長λ又は波長帯の光のみを通過させるようにフィルタリングして、SOIウェーハ1の表面に照射することができるようになっている。
【0032】
あるいは、バンドパスフィルター4を、例えばアコースティックフィルター、液晶フィルター、波長可変レーザにして照射する光のフィルタリングを行うこともできる。
また、光源で波長λを設定することもでき、種種のレーザ(LD、ガスレーザ、固体レーザ、波長可変レーザ)、発光ダイオード(LED)、液晶表示装置(LCD)等を用いることもできる。また、簡易的にはカラーカメラのRGB信号の中の1つの信号を用いることもできる。
【0033】
このような光学的検査装置2を用いて、前工程で選択した波長λ又は波長帯の光を検査対象のSOIウェーハ1の表面に照射し、該SOIウェーハ1からの反射光を検出する(図1のD参照)。この際、XY軸ステージ6又はRθステージによりSOIウェーハの全面をスキャンして反射光を検出する。
そして、この検出した反射光の反射強度が増加してピークとなる箇所をSOIウェーハ表面のSOI層膜厚の変動に起因する欠陥として検知する(図1のE参照)。具体的には、検出した反射光の反射強度画像を取り、反射強度が増加してピーク(上向きのピーク)となる画像箇所をSOI層膜厚の変動に起因する欠陥として抽出すれば良い。
図5は、実際にSOI層膜厚の変動に起因する欠陥が存在する、SOI層の厚さSが72.5nm、埋め込み絶縁層の厚さBが145nmのSOIウェーハの一部の領域に対して、3つの波長(450nm、550nm、650nm)の光を照射した際の検出した反射光の反射強度を測定した実験結果を示す図である。
【0034】
また、図3がこのSOIウェーハに対するプロファイルP3を算出した結果を示したものであり、波長650nmは図3から求めた最大ピーク波長λM(620nm)の近傍の波長である。図5に示すように、波長650nmの場合、検出した反射光の反射強度が上向きのピークとなる箇所がウェーハ位置約50μm付近にあり、これをSOI層膜厚の変動に起因する欠陥として検知する。そして、実際に存在するSOI層膜厚の変動に起因する欠陥はこのウェーハ位置約50μm付近の位置にある。
一方、波長450nmの場合にはピークがなく、波長550nmの場合には減少してピーク(下向きのピーク)となる箇所がある。
このように、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥のある位置には、λM近傍の波長の検査光を用いれば反射強度が増加してピークとなる箇所が観察されるので、ここをSOI層膜厚の変動に起因する欠陥として検知するようにすれば良い。
【0035】
また、実際にSOI層膜厚の変動に起因する欠陥がなく、異物が存在するSOIウェーハの一部の領域に対して、同様に、3つの波長(450nm、550nm、650nm)の光を照射した際の反射光の反射強度を測定した実験結果を図6に示す。
図6に示すように、いずれの波長においても下向きのピークとなる箇所が観察される。そして、この箇所には実際に異物が存在する。すなわち、異物が存在する位置には、反射強度が減少してピークとなる箇所が観察されるので、異物とSOI層膜厚の変動に起因する欠陥とを明確に区別して検知することができる。
【0036】
ここで、欠陥として検知する際に、反射強度の閾値を設定することができる。そして、ある一定の反射強度の値以上のピークの場合のみ欠陥として検知するようにすることができる。例えば、図7(A)(B)に示すように、ピークのない箇所(図7(A)(B)のA)の反射強度に対する倍率で設定することができ、図7(A)は、増加してピークとなる箇所の反射強度が、ピークのない箇所の3倍の倍率で、図7(B)は2倍の倍率で検知できる場合の例を示したものである。
【0037】
上記説明したような本発明のSOIウェーハの検査方法によって、SOIウェーハ表面のSOI層膜厚の変動に起因する欠陥を、SOI層に存在する異物によるノイズに影響されることなく高感度で、低コストで検知することができる。また、上記したように、反射光の反射強度のピークの向きにより異物とSOI層膜厚の変動に起因する欠陥とを明確に区別して検知することができ、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥だけを選択的に検知することができる。
【0038】
このとき、SOI層膜厚の減少による変動に起因する欠陥を検知する場合、プロファイルP2の算出において、図2に示すように、SOI層の膜厚がtだけ薄い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出するようにすることができる。また、SOI層膜厚の増加による変動に起因する欠陥を検知する場合、プロファイルP2の算出において、図8に示すように、SOI層の膜厚がtだけ厚い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出するようにすることができる。図8では、検査対象のSOIウェーハのプロファイルP1と、それよりSOI層の膜厚が10nmだけ厚い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した一例である。この場合のプロファイルP1、P2の差を算出したプロファイルP3の一例を図9に示す。図9に示すように、この場合も図3と同様に、プロファイルP3にはいくつかの増大するピークを示す箇所が観察され、矢印で示す箇所が最大ピーク波長λMである。
【0039】
このようにすれば、SOI層膜厚の増加による変動に起因する欠陥と、減少による変動に起因する欠陥のそれぞれに適した波長又は波長帯を選択して検査することができ、それら欠陥をより確実に高感度で検知することができるとともに、増加及び減少による変動に起因する欠陥をそれぞれ分けて検知することができる。
【0040】
またこのとき、所定厚tをSOIウェーハの膜厚均一性に応じて設定することが好ましい。
このように、所定厚tをSOIウェーハの膜厚均一性に応じて設定すれば、膜厚均一性に応じて適切な波長又は波長帯を選択して検査することができ、例えば、膜厚均一性の悪いSOIウェーハに対して所定厚tを小さく設定した場合に、欠陥でないノイズを欠陥として検出してしまうなどといった膜厚の不均一によるノイズが検査に影響するのを抑制して、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥をより確実に高感度で検知することができる。
【0041】
具体的には、例えばイオン注入剥離法(スマートカット(登録商標)法とも呼ばれる。)で作製されるSOIウェーハは、ウェーハ面内の膜厚均一性として±3nm以下のSOI層が得られるので、この場合、減少厚さとして5〜20nm程度に設定することができる。
【0042】
またこのとき、プロファイルP2を算出する工程(図1のB)において、SOI層の膜厚が所定厚tだけ薄い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した場合、後工程(図1のC)で選択する波長λ又は波長帯を、λM−20[nm]以上、λM+100[nm]以下の範囲内から選択し、SOI層の膜厚が所定厚tだけ厚い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した場合、選択する波長λ又は波長帯を、λM−100[nm]以上、λM+20[nm]以下の範囲内から選択することができる。
【0043】
このようにすれば、プロファイルP2に応じ、より確実に高感度な検査を行うことができる波長λ又は波長帯を選択できる。例えば、図2に示すように、SOI層の膜厚が所定厚tだけ薄い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した場合、その後工程で算出したプロファイルP3は図3に示されており、図3を参照すれば明らかなように、λMより長波長側は尾を引くように反射強度が大きくなる領域が伸びているので広く取った方が積分強度は稼げること、短波長側は反射強度が反転する領域が急激に現れるので狭い波長範囲の設定が必要であることを考慮し、上記のように波長λ又は波長帯を設定すればより確実に高感度な検査を行うことができる。
また、図8に示すように、SOI層の膜厚が所定厚tだけ厚い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した場合、図9に示すように、プロファイルP3は、上述した所定厚tだけ薄くした場合の逆となり、λMより長波長側を狭い波長範囲とし、短波長側を広い波長範囲で設定することができる。
【0044】
上記では主に波長λ又は波長帯をP1、P2の差P3を用いて選択した場合について具体的に述べたが、P1、P2の変化率P4を用いて波長λ又は波長帯を選択しても良い。図11は検査対象のSOIウェーハのSOI層の厚さSが70nm、埋め込み絶縁層の厚さBが145nmの場合のプロファイルP1、P2、P3及びP4の別の一例を示めしたものである。図11に示すように、P4においても最大ピーク波長λMを示す箇所が観察され、上記したP3の場合と同様にして波長λ又は波長帯を選択すれば良い。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
(実施例)
図1に示すような本発明のSOIウェーハの検査方法を用いて、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥の検知を行った。検査対象のSOIウェーハは、SOI層の厚さSが72.5nm、埋め込み絶縁層の厚さBが145nmのものとした。このSOIウェーハに対するプロファイルP1を算出し、検査対象のSOIウェーハよりSOI層の膜厚が所定厚10nmだけ薄い62.5nmのSOIウェーハのプロファイルP2を算出した。次に、P1とP2の差のプロファイルP3を算出し、P3から波長帯600〜720nmを選択した。次に、その選択した波長帯の可視光をSOIウェーハに照射して、SOIウェーハからの反射光を検出した。そして、検出した反射光の反射強度が増加してピークとなる箇所をSOI層膜厚の変動に起因する欠陥として検知した。
【0047】
その結果、図10(A)に示すように、23個のSOI層膜厚の変動に起因する欠陥が検知された。この検知された欠陥の位置を顕微鏡により調査したところ、検知した23個全ての欠陥が実際に存在するものであることが確認できた。
このように、本発明のSOIウェーハの検査方法は、SOIウェーハ表面のSOI層膜厚の変動に起因する欠陥を、SOI層に存在する異物によるノイズに影響されることなく高感度で、低コストで検知することができることが確認できた。
【0048】
(比較例)
従来のレーザ散乱法によるSOIウェーハの検査方法を用いて、実施例と同様のSOIウェーハの表面の欠陥を検査した。KLA社のSP2装置を用いて355nmの単一波長のレーザ光をSOIウェーハに照射し、100nm以上のパーティクルを検知する条件を設定し、SOIウェーハからの散乱光を受光して欠陥の検知を行った。
その結果、図10(B)に示すように、5個のパーティクルを検知した。そして、その5個のパーティクルの位置は、実施例1で検知したSOI層膜厚の変動に起因する欠陥の位置といずれも異なる位置であることが分かった。
このように、本発明のSOIウェーハの検査方法では、従来のレーザ散乱法によるSOIウェーハの検査方法では検知できないSOI層膜厚の変動に起因する欠陥を検出することができる。
【0049】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0050】
1…SOIウェーハ、 2…光学的検査装置、 3…光源、
4…バンドパスフィルター、 5…検出カメラ、 6…XY軸ステージ。
【技術分野】
【0001】
本発明はSOIウェーハのような多層膜構造を有する半導体基板の検査あるいはその基板を用いたデバイス工程の検査技術に関り、特に光を用いて行う検査において反射光を検出することで種々の表面欠陥及びパターン欠陥の検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
多層膜構造を有する半導体基板の製造工程、及びその基板を用いるデバイス工程において、デバイスの歩留まりに影響する表面及び表面近傍の種々欠陥を検出することは、工程管理、歩留まり向上を行う上で重要である。また近年、多層膜構造を持つ半導体基板としてSOIウェーハがデバイス作製に用いられるようになり、工程が複雑になり、微細化が進むに従って、検出力あるいはスループットの点から光学的検査の重要性が増してきている。
【0003】
このような表面及び表面近傍付近の検査対象となる欠陥等として、結晶欠陥、異物、スクラッチ、パターン欠陥、堆積されたパターンの異常などがあり、これらを検出するため散乱光を用いた暗視野検査方法、又は顕微鏡を利用した明視野検査方法が利用されている。
例えば、半導体基板にレーザ光を照射したときの散乱光を検出して半導体基板を検査する方法(特許文献1参照)、同一入射角度で2種以上の波長のレーザーを切り替えもしくは混合の形で被検査物に入射して表面を検査する方法(特許文献2参照)などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−112871号公報
【特許文献2】特開2004−132755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したような欠陥の具体的なものとして、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥(膜厚変動を伴う欠陥)があり、SOI上に作り込むデバイス特性に影響を与えている。そのため、SOIウェーハ製造プロセスあるいは製品SOIウェーハ検査でSOI層膜厚の変動に起因する欠陥を感度良く検査することが重要とされている。
このようなSOI層膜厚の変動に起因する欠陥には、SOI層膜厚の減少による窪みのような形状のものがあり、その深さとしては、埋め込み絶縁層(BOX層)まで達する深さではなく、およそ10nmから絶縁層に達しないまでの深さである。また、その大きさは、レーザ散乱法で使われる波長より大きい広がりをもっている。
【0006】
この欠陥の広がりとして10μm程度のものが典型的に観察されるが、光学的検査装置の顕微鏡の倍率を調整すれば、1〜2μm程度から、数100μm程度までのものが観察可能である。また、形状に関しては円状、円の連なったもの、楕円、その他デバイス工程で長方形のような角のある形も検出される可能性がある。また、上記したようなSOI層膜厚の減少による窪み形状ではなく、SOI層の膜厚の増加により層が厚くなったマウンドのような形状の欠陥も存在することがある。
【0007】
このSOI層膜厚の増加及び減少による変動に起因する欠陥を従来の検査方法により感度良く検査するのは困難であった。例えば、上述したような従来のレーザ散乱式による方法は、パーティクル等の異物の検出には有効であるが、SOI層の微小領域での膜厚の変動に起因する欠陥に対しては散乱強度が弱くて検出感度が十分ではなく、また、異物等と膜厚の変動に起因する欠陥とを分離して検出することも困難であった。
【0008】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、SOIウェーハのSOI層膜厚の変動に起因する欠陥をSOIウェーハ表面の異物に影響されることなく、感度良く、低コストで検査することができるSOIウェーハ検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明によれば、可視光波長以上の波長帯の光を照射する光源を有する光学的検査装置を用いて、埋め込み絶縁層上にSOI層が形成されたSOIウェーハの表面に前記光源から光を照射し、前記SOIウェーハからの反射光を検出して前記SOIウェーハ表面の前記SOI層膜厚の増加及び減少による変動に起因する欠陥を検知するSOIウェーハの検査方法において、少なくとも、前記検査対象のSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP1を算出する工程と、前記検査対象のSOIウェーハより前記SOI層の膜厚が所定厚t[nm]だけ薄い、又は厚い膜厚のSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP2を算出する工程と、前記算出した両方のプロファイルP1、P2の差のプロファイルP3(=P2−P1)、又はプロファイルP1、P2の変化率のプロファイルP4(=P2−P1/P1)を算出し、該算出したプロファイルP3又はP4内の最大ピーク波長λMの近傍の波長λ又は波長帯を選択する工程と、前記選択した波長λ又は波長帯の光を前記検査対象のSOIウェーハの表面に照射し、該SOIウェーハからの反射光を検出する工程と、前記検出した反射光の反射強度が増加してピークとなる箇所を前記SOIウェーハ表面の前記SOI層膜厚の変動に起因する欠陥として検知する工程とを有することを特徴とするSOIウェーハの検査方法が提供される。
【0010】
このように、少なくとも、前記検査対象のSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP1を算出する工程と、前記検査対象のSOIウェーハより前記SOI層の膜厚が所定厚t[nm]だけ薄い、又は厚い膜厚のSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP2を算出する工程と、前記算出した両方のプロファイルP1、P2の差のプロファイルP3(=P2−P1)、又はプロファイルP1、P2の変化率のプロファイルP4(=P2−P1/P1)を算出し、該算出したプロファイルP3又はP4内の最大ピーク波長λMの近傍の波長λ又は波長帯を選択する工程と、前記選択した波長λ又は波長帯の光を前記検査対象のSOIウェーハの表面に照射し、該SOIウェーハからの反射光を検出する工程と、前記検出した反射光の反射強度が増加してピークとなる箇所を前記SOIウェーハ表面の前記SOI層膜厚の変動に起因する欠陥として検知する工程とを有するSOIウェーハの検査方法であれば、SOIウェーハ表面のSOI層膜厚の変動に起因する欠陥を、SOI層の表面に存在する異物によるノイズに影響されることなく高感度で、低コストで検知することができる。また、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥だけを選択的に検知することができる。
【0011】
このとき、前記SOI層膜厚の減少による変動に起因する欠陥を検知する場合、前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚がtだけ薄い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出し、前記SOI層膜厚の増加による変動に起因する欠陥を検知する場合、前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚がtだけ厚い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出することができる。
【0012】
このように、前記SOI層膜厚の減少による変動に起因する欠陥を検知する場合、前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚がtだけ薄い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出し、前記SOI層膜厚の増加による変動に起因する欠陥を検知する場合、前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚がtだけ厚い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出すれば、SOI層膜厚の増加による変動に起因する欠陥と、減少による変動に起因する欠陥のそれぞれに適した波長又は波長帯を選択して検査することができ、それら欠陥をより確実に高感度で検知することができるとともに、増加及び減少による変動に起因する欠陥をそれぞれ分けて検知することができる。
【0013】
またこのとき、前記プロファイルP3又はP4に閾値を設定し、該閾値以上の欠陥を選択的に検出することができる。
このように、前記プロファイルP3又はP4に閾値を設定し、該閾値以上の欠陥を検出するようにすれば、デバイス工程に影響するSOI層膜厚の変動に起因する欠陥だけを選択的に検知することができる。
【0014】
またこのとき、前記所定厚tを前記SOIウェーハの膜厚均一性に応じて設定することが好ましい。
このように、前記所定厚tを前記SOIウェーハの膜厚均一性に応じて設定すれば、膜厚均一性に応じて適切な波長又は波長帯を選択して検査することができ、膜厚の不均一によるノイズが検査に影響するのを抑制して、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥をより確実に高感度で検知することができる。
【0015】
またこのとき、前記所定厚tを5〜20nmの範囲で設定することができる。
このように、前記所定厚tを5〜20nmの範囲で設定すれば、膜厚均一性が±3nm以下のSOIウェーハに対して適切な波長又は波長帯を選択して高感度で検査することができる。従って、本発明は、イオン注入剥離法で膜厚均一性が±3nm以下に作製されるSOIウェーハに対して好適に用いられる方法である。
【0016】
またこのとき、前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚が前記所定厚tだけ薄い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した場合、前記選択する波長λ又は波長帯を、λM−20[nm]以上、λM+100[nm]以下の範囲内から選択し、前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚が前記所定厚tだけ厚い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した場合、前記選択する波長λ又は波長帯を、λM−100[nm]以上、λM+20[nm]以下の範囲内から選択することができる。
【0017】
このように、前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚が前記所定厚tだけ薄い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した場合、前記選択する波長λ又は波長帯を、λM−20[nm]以上、λM+100[nm]以下の範囲内から選択し、前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚が前記所定厚tだけ厚い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した場合、前記選択する波長λ又は波長帯を、λM−100[nm]以上、λM+20[nm]以下の範囲内から選択すれば、プロファイルP2に応じ、より確実に高感度な検査を行うことができる波長λ又は波長帯を選択できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、SOIウェーハ表面のSOI層膜厚の増加及び減少による変動に起因する欠陥を検知するSOIウェーハの検査方法において、少なくとも、検査対象のSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP1を算出する工程と、前記検査対象のSOIウェーハよりSOI層の膜厚が所定厚t[nm]だけ薄い、又は厚い膜厚のSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP2を算出する工程と、前記算出した両方のプロファイルP1、P2の差のプロファイルP3(=P2−P1)、又はプロファイルP1、P2の変化率のプロファイルP4(=P2−P1/P1)を算出し、該算出したプロファイルP3又はP4内の最大ピーク波長λMの近傍の波長λ又は波長帯を選択する工程と、前記選択した波長λ又は波長帯の光を前記検査対象のSOIウェーハの表面に照射し、該SOIウェーハからの反射光を検出する工程と、前記検出した反射光の反射強度が増加してピークとなる箇所を前記SOIウェーハ表面の前記SOI層膜厚の変動に起因する欠陥として検知する工程とを有するので、SOIウェーハ表面のSOI層膜厚の変動に起因する欠陥を、SOI層の表面に存在する異物によるノイズに影響されることなく高感度で、低コストで検知することができる。また、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥だけを選択的に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のSOIウェーハの検査方法の工程を示すフロー図である。
【図2】算出したプロファイルP1、P2の一例を示す図である。
【図3】算出したプロファイルP3の一例を示す図である。
【図4】本発明のSOIウェーハの検査方法で使用することができる光学的検査装置を示す概略図である。
【図5】検出した反射光の反射強度の一例を示す図である。
【図6】検出した反射光の反射強度の別の一例を示す図である。
【図7】検出した反射光の反射強度から欠陥を検知する際に、反射強度に閾値を設定する一例を説明した図である。(A)閾値をピークのない箇所の3倍以上とした場合。(B)閾値をピークのない箇所の2倍以上とした場合。
【図8】算出したプロファイルP1、P2の別の一例を示す図である。
【図9】算出したプロファイルP3の別の一例を示す図である。
【図10】実施例及び比較例において、SOIウェーハの欠陥を検査した結果を示す図である。(A)実施例の結果。(B)比較例の結果。
【図11】算出したプロファイルP1、P2、P3、P4の別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
近年、多層膜構造を持つ半導体基板としてSOIウェーハがデバイス作製に用いられるようになり、工程が複雑になり、微細化が進むに従って、検出力あるいはスループットの点から光学的検査の重要性が増してきている。
このような光学的検査の対象として、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥があり、SOIウェーハ製造プロセスあるいは製品SOIウェーハ検査でSOI層膜厚の変動に起因する欠陥を感度良く検査することが重要とされている。
【0021】
このSOI層膜厚の変動に起因する欠陥を従来の検査方法により感度良く検査するのは困難であった。例えば、上述したような従来のレーザ散乱式による方法は、パーティクル等の異物の検出には有効であるが、SOI層の微小領域での膜厚の変動に起因する欠陥に対しては散乱強度が弱くて検出感度が十分ではなく、また、異物等と膜厚の変動に起因する欠陥とを分離して検出することも困難であった。
【0022】
そこで、本発明者はこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、コストの安い可視光を用いた明視野検査方法において、SOI層の膜厚変化に対して反射率の変化が増大する波長領域の検査光を用いて検査すれば、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥、あるいは膜厚異常領域を高感度で検知することが可能になることに想到した。
【0023】
そして、検査対象のSOI層膜厚のSOIウェーハと、そのSOIウェーハのSOI層膜厚よりも所定厚だけ膜厚の異なるSOIウェーハとのそれぞれの可視光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルの差分又は変化率を求め、この差分又は変化率の増大する最大ピークを示す波長の近傍の波長又は波長帯の光を用いて検査すれば、SOI層膜厚の上記所定厚の変動に起因する反射光のコントラストの変化を強調することができ、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥を高感度で、低コストで検知することができることに想到し、本発明を完成させた。
【0024】
本発明のSOIウェーハの検査方法では、可視光波長以上の波長帯の光を照射する光源を有する光学的検査装置を用いて検査を行う。このように本発明のSOIウェーハの検査方法ではコストの安い可視光を用いて検査を行うので、低コストな検査方法である。
また、本発明のSOIウェーハの検査方法で検知する欠陥はSOI層膜厚の変動に起因する欠陥であり、このような欠陥には、欠陥部分がSOI層膜厚の減少による変動で層が薄くなった例えば窪みのような形状のものと、SOI層膜厚の増加による変動で層が厚くなった例えばマウンドのような形状のものがある。
【0025】
図1は本発明のSOIウェーハの検査方法の工程を示すフロー図である。
本発明のSOIウェーハの検査方法の検査対象物は、埋め込み絶縁層(BOX層)上にSOI層が形成されたSOIウェーハであり、ここではSOI層の厚さをS[nm]、埋め込み絶縁層(BOX層)の厚さをB[nm]とする。
【0026】
まず、このような検査対象となるSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP1をシミュレーションにより算出する(図1のA参照)。
次に、検査対象のSOIウェーハよりSOI層の膜厚が所定厚t[nm]だけ薄い、又は厚い膜厚のSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP2をシミュレーションにより算出する(図1のB参照)。
【0027】
図2は、検査対象のSOIウェーハのSOI層の厚さSが72.5nm、埋め込み絶縁層の厚さBが145nmの場合のプロファイルP1と、その検査対象のSOIウェーハよりSOI層が10nm程度薄くなったSOIウェーハを仮定し、すなわち所定厚tを10nmとしてSOI層の膜厚が62.5nmの場合のプロファイルP2の一例を示す図である。図2に示すように、SOI層の厚さを変更することで反射率の波長依存性を示すプロファイルP1、P2が変化していることが分かる。
【0028】
次に、シミュレーションにより算出した両方のプロファイルP1、P2の差のプロファイルP3(=P2−P1)、又はプロファイルP1、P2の変化率のプロファイルP4(=P2−P1/P1)を算出する。そして、その算出したプロファイルP3又はP4内の増大するピーク中の最大ピーク波長λMの近傍の波長λ又は波長帯を、後工程で用いるSOIウェーハの表面に照射する光の波長λ又は波長帯として選択する(図1のC参照)。以下具体例で説明する。
【0029】
図3は、図2に示したプロファイルP1、P2の差を算出したプロファイルP3を示した図である。図3に示すように、プロファイルP3にはいくつかの増大するピーク(上向きのピーク)を示す箇所が観察される。そして、その中の矢印で示す箇所が最大ピーク波長λM(約620nm)であり、この波長λMの近傍の波長λ又は波長帯を検査波長として選択するようにする。
ここで、選択する波長λ又は波長帯として、プロファイルP3の最大ピーク波長λMを単一波長λとして選択しても良いし、その近傍の波長から単一波長λを選択しても良い。あるいは、その最大ピーク波長λMの近傍を波長帯として選択しても良い。
【0030】
ここで、プロファイルP3又はP4に閾値を設定することができる。そして、その閾値以上の場合のみSOI層膜厚の変動に起因する欠陥を選択的に検知するようにすれば、デバイス工程に影響するSOI層膜厚の変動に起因する欠陥だけを検知可能になる。
【0031】
次に、前工程で選択した波長λ又は波長帯の光を照射する光源を有する光学的検査装置を用いてSOIウェーハの検査を行う。
ここで、本発明で用いることができる光学的検査装置は、可視光波長以上の波長帯の光を照射する光源を有し、前工程で選択した波長又は波長帯の光を検査対象のSOIウェーハに照射してその反射光を検出できるものであれば特に限定されず、例えば図4に示すような、検出カメラ5の前にバンドパスフィルター4を取り付けた構成の光学的検査装置2を用いることができる。
図4に示す光学的検査装置2は、光源3からの光をバンドパスフィルター4により所望の波長λ又は波長帯の光のみを通過させるようにフィルタリングして、SOIウェーハ1の表面に照射することができるようになっている。
【0032】
あるいは、バンドパスフィルター4を、例えばアコースティックフィルター、液晶フィルター、波長可変レーザにして照射する光のフィルタリングを行うこともできる。
また、光源で波長λを設定することもでき、種種のレーザ(LD、ガスレーザ、固体レーザ、波長可変レーザ)、発光ダイオード(LED)、液晶表示装置(LCD)等を用いることもできる。また、簡易的にはカラーカメラのRGB信号の中の1つの信号を用いることもできる。
【0033】
このような光学的検査装置2を用いて、前工程で選択した波長λ又は波長帯の光を検査対象のSOIウェーハ1の表面に照射し、該SOIウェーハ1からの反射光を検出する(図1のD参照)。この際、XY軸ステージ6又はRθステージによりSOIウェーハの全面をスキャンして反射光を検出する。
そして、この検出した反射光の反射強度が増加してピークとなる箇所をSOIウェーハ表面のSOI層膜厚の変動に起因する欠陥として検知する(図1のE参照)。具体的には、検出した反射光の反射強度画像を取り、反射強度が増加してピーク(上向きのピーク)となる画像箇所をSOI層膜厚の変動に起因する欠陥として抽出すれば良い。
図5は、実際にSOI層膜厚の変動に起因する欠陥が存在する、SOI層の厚さSが72.5nm、埋め込み絶縁層の厚さBが145nmのSOIウェーハの一部の領域に対して、3つの波長(450nm、550nm、650nm)の光を照射した際の検出した反射光の反射強度を測定した実験結果を示す図である。
【0034】
また、図3がこのSOIウェーハに対するプロファイルP3を算出した結果を示したものであり、波長650nmは図3から求めた最大ピーク波長λM(620nm)の近傍の波長である。図5に示すように、波長650nmの場合、検出した反射光の反射強度が上向きのピークとなる箇所がウェーハ位置約50μm付近にあり、これをSOI層膜厚の変動に起因する欠陥として検知する。そして、実際に存在するSOI層膜厚の変動に起因する欠陥はこのウェーハ位置約50μm付近の位置にある。
一方、波長450nmの場合にはピークがなく、波長550nmの場合には減少してピーク(下向きのピーク)となる箇所がある。
このように、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥のある位置には、λM近傍の波長の検査光を用いれば反射強度が増加してピークとなる箇所が観察されるので、ここをSOI層膜厚の変動に起因する欠陥として検知するようにすれば良い。
【0035】
また、実際にSOI層膜厚の変動に起因する欠陥がなく、異物が存在するSOIウェーハの一部の領域に対して、同様に、3つの波長(450nm、550nm、650nm)の光を照射した際の反射光の反射強度を測定した実験結果を図6に示す。
図6に示すように、いずれの波長においても下向きのピークとなる箇所が観察される。そして、この箇所には実際に異物が存在する。すなわち、異物が存在する位置には、反射強度が減少してピークとなる箇所が観察されるので、異物とSOI層膜厚の変動に起因する欠陥とを明確に区別して検知することができる。
【0036】
ここで、欠陥として検知する際に、反射強度の閾値を設定することができる。そして、ある一定の反射強度の値以上のピークの場合のみ欠陥として検知するようにすることができる。例えば、図7(A)(B)に示すように、ピークのない箇所(図7(A)(B)のA)の反射強度に対する倍率で設定することができ、図7(A)は、増加してピークとなる箇所の反射強度が、ピークのない箇所の3倍の倍率で、図7(B)は2倍の倍率で検知できる場合の例を示したものである。
【0037】
上記説明したような本発明のSOIウェーハの検査方法によって、SOIウェーハ表面のSOI層膜厚の変動に起因する欠陥を、SOI層に存在する異物によるノイズに影響されることなく高感度で、低コストで検知することができる。また、上記したように、反射光の反射強度のピークの向きにより異物とSOI層膜厚の変動に起因する欠陥とを明確に区別して検知することができ、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥だけを選択的に検知することができる。
【0038】
このとき、SOI層膜厚の減少による変動に起因する欠陥を検知する場合、プロファイルP2の算出において、図2に示すように、SOI層の膜厚がtだけ薄い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出するようにすることができる。また、SOI層膜厚の増加による変動に起因する欠陥を検知する場合、プロファイルP2の算出において、図8に示すように、SOI層の膜厚がtだけ厚い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出するようにすることができる。図8では、検査対象のSOIウェーハのプロファイルP1と、それよりSOI層の膜厚が10nmだけ厚い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した一例である。この場合のプロファイルP1、P2の差を算出したプロファイルP3の一例を図9に示す。図9に示すように、この場合も図3と同様に、プロファイルP3にはいくつかの増大するピークを示す箇所が観察され、矢印で示す箇所が最大ピーク波長λMである。
【0039】
このようにすれば、SOI層膜厚の増加による変動に起因する欠陥と、減少による変動に起因する欠陥のそれぞれに適した波長又は波長帯を選択して検査することができ、それら欠陥をより確実に高感度で検知することができるとともに、増加及び減少による変動に起因する欠陥をそれぞれ分けて検知することができる。
【0040】
またこのとき、所定厚tをSOIウェーハの膜厚均一性に応じて設定することが好ましい。
このように、所定厚tをSOIウェーハの膜厚均一性に応じて設定すれば、膜厚均一性に応じて適切な波長又は波長帯を選択して検査することができ、例えば、膜厚均一性の悪いSOIウェーハに対して所定厚tを小さく設定した場合に、欠陥でないノイズを欠陥として検出してしまうなどといった膜厚の不均一によるノイズが検査に影響するのを抑制して、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥をより確実に高感度で検知することができる。
【0041】
具体的には、例えばイオン注入剥離法(スマートカット(登録商標)法とも呼ばれる。)で作製されるSOIウェーハは、ウェーハ面内の膜厚均一性として±3nm以下のSOI層が得られるので、この場合、減少厚さとして5〜20nm程度に設定することができる。
【0042】
またこのとき、プロファイルP2を算出する工程(図1のB)において、SOI層の膜厚が所定厚tだけ薄い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した場合、後工程(図1のC)で選択する波長λ又は波長帯を、λM−20[nm]以上、λM+100[nm]以下の範囲内から選択し、SOI層の膜厚が所定厚tだけ厚い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した場合、選択する波長λ又は波長帯を、λM−100[nm]以上、λM+20[nm]以下の範囲内から選択することができる。
【0043】
このようにすれば、プロファイルP2に応じ、より確実に高感度な検査を行うことができる波長λ又は波長帯を選択できる。例えば、図2に示すように、SOI層の膜厚が所定厚tだけ薄い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した場合、その後工程で算出したプロファイルP3は図3に示されており、図3を参照すれば明らかなように、λMより長波長側は尾を引くように反射強度が大きくなる領域が伸びているので広く取った方が積分強度は稼げること、短波長側は反射強度が反転する領域が急激に現れるので狭い波長範囲の設定が必要であることを考慮し、上記のように波長λ又は波長帯を設定すればより確実に高感度な検査を行うことができる。
また、図8に示すように、SOI層の膜厚が所定厚tだけ厚い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した場合、図9に示すように、プロファイルP3は、上述した所定厚tだけ薄くした場合の逆となり、λMより長波長側を狭い波長範囲とし、短波長側を広い波長範囲で設定することができる。
【0044】
上記では主に波長λ又は波長帯をP1、P2の差P3を用いて選択した場合について具体的に述べたが、P1、P2の変化率P4を用いて波長λ又は波長帯を選択しても良い。図11は検査対象のSOIウェーハのSOI層の厚さSが70nm、埋め込み絶縁層の厚さBが145nmの場合のプロファイルP1、P2、P3及びP4の別の一例を示めしたものである。図11に示すように、P4においても最大ピーク波長λMを示す箇所が観察され、上記したP3の場合と同様にして波長λ又は波長帯を選択すれば良い。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
(実施例)
図1に示すような本発明のSOIウェーハの検査方法を用いて、SOI層膜厚の変動に起因する欠陥の検知を行った。検査対象のSOIウェーハは、SOI層の厚さSが72.5nm、埋め込み絶縁層の厚さBが145nmのものとした。このSOIウェーハに対するプロファイルP1を算出し、検査対象のSOIウェーハよりSOI層の膜厚が所定厚10nmだけ薄い62.5nmのSOIウェーハのプロファイルP2を算出した。次に、P1とP2の差のプロファイルP3を算出し、P3から波長帯600〜720nmを選択した。次に、その選択した波長帯の可視光をSOIウェーハに照射して、SOIウェーハからの反射光を検出した。そして、検出した反射光の反射強度が増加してピークとなる箇所をSOI層膜厚の変動に起因する欠陥として検知した。
【0047】
その結果、図10(A)に示すように、23個のSOI層膜厚の変動に起因する欠陥が検知された。この検知された欠陥の位置を顕微鏡により調査したところ、検知した23個全ての欠陥が実際に存在するものであることが確認できた。
このように、本発明のSOIウェーハの検査方法は、SOIウェーハ表面のSOI層膜厚の変動に起因する欠陥を、SOI層に存在する異物によるノイズに影響されることなく高感度で、低コストで検知することができることが確認できた。
【0048】
(比較例)
従来のレーザ散乱法によるSOIウェーハの検査方法を用いて、実施例と同様のSOIウェーハの表面の欠陥を検査した。KLA社のSP2装置を用いて355nmの単一波長のレーザ光をSOIウェーハに照射し、100nm以上のパーティクルを検知する条件を設定し、SOIウェーハからの散乱光を受光して欠陥の検知を行った。
その結果、図10(B)に示すように、5個のパーティクルを検知した。そして、その5個のパーティクルの位置は、実施例1で検知したSOI層膜厚の変動に起因する欠陥の位置といずれも異なる位置であることが分かった。
このように、本発明のSOIウェーハの検査方法では、従来のレーザ散乱法によるSOIウェーハの検査方法では検知できないSOI層膜厚の変動に起因する欠陥を検出することができる。
【0049】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0050】
1…SOIウェーハ、 2…光学的検査装置、 3…光源、
4…バンドパスフィルター、 5…検出カメラ、 6…XY軸ステージ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光波長以上の波長帯の光を照射する光源を有する光学的検査装置を用いて、埋め込み絶縁層上にSOI層が形成されたSOIウェーハの表面に前記光源から光を照射し、前記SOIウェーハからの反射光を検出して前記SOIウェーハ表面の前記SOI層膜厚の増加及び減少による変動に起因する欠陥を検知するSOIウェーハの検査方法において、少なくとも、
前記検査対象のSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP1を算出する工程と、
前記検査対象のSOIウェーハより前記SOI層の膜厚が所定厚t[nm]だけ薄い、又は厚い膜厚のSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP2を算出する工程と、
前記算出した両方のプロファイルP1、P2の差のプロファイルP3(=P2−P1)、又はプロファイルP1、P2の変化率のプロファイルP4(=P2−P1/P1)を算出し、該算出したプロファイルP3又はP4内の最大ピーク波長λMの近傍の波長λ又は波長帯を選択する工程と、
前記選択した波長λ又は波長帯の光を前記検査対象のSOIウェーハの表面に照射し、該SOIウェーハからの反射光を検出する工程と、
前記検出した反射光の反射強度が増加してピークとなる箇所を前記SOIウェーハ表面の前記SOI層膜厚の変動に起因する欠陥として検知する工程とを有することを特徴とするSOIウェーハの検査方法。
【請求項2】
前記SOI層膜厚の減少による変動に起因する欠陥を検知する場合、前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚がtだけ薄い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出し、
前記SOI層膜厚の増加による変動に起因する欠陥を検知する場合、前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚がtだけ厚い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出することを特徴とする請求項1に記載のSOIウェーハの検査方法。
【請求項3】
前記プロファイルP3又はP4に閾値を設定し、該閾値以上の欠陥を選択的に検出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のSOIウェーハの検査方法。
【請求項4】
前記所定厚tを前記SOIウェーハの膜厚均一性に応じて設定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のSOIウェーハの検査方法。
【請求項5】
前記所定厚tを5〜20nmの範囲で設定することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のSOIウェーハの検査方法。
【請求項6】
前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚が前記所定厚tだけ薄い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した場合、前記選択する波長λ又は波長帯を、λM−20[nm]以上、λM+100[nm]以下の範囲内から選択し、
前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚が前記所定厚tだけ厚い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した場合、前記選択する波長λ又は波長帯を、λM−100[nm]以上、λM+20[nm]以下の範囲内から選択することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のSOIウェーハの検査方法。
【請求項1】
可視光波長以上の波長帯の光を照射する光源を有する光学的検査装置を用いて、埋め込み絶縁層上にSOI層が形成されたSOIウェーハの表面に前記光源から光を照射し、前記SOIウェーハからの反射光を検出して前記SOIウェーハ表面の前記SOI層膜厚の増加及び減少による変動に起因する欠陥を検知するSOIウェーハの検査方法において、少なくとも、
前記検査対象のSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP1を算出する工程と、
前記検査対象のSOIウェーハより前記SOI層の膜厚が所定厚t[nm]だけ薄い、又は厚い膜厚のSOIウェーハの可視光以上の波長領域の光に対する反射率の波長依存性を示すプロファイルP2を算出する工程と、
前記算出した両方のプロファイルP1、P2の差のプロファイルP3(=P2−P1)、又はプロファイルP1、P2の変化率のプロファイルP4(=P2−P1/P1)を算出し、該算出したプロファイルP3又はP4内の最大ピーク波長λMの近傍の波長λ又は波長帯を選択する工程と、
前記選択した波長λ又は波長帯の光を前記検査対象のSOIウェーハの表面に照射し、該SOIウェーハからの反射光を検出する工程と、
前記検出した反射光の反射強度が増加してピークとなる箇所を前記SOIウェーハ表面の前記SOI層膜厚の変動に起因する欠陥として検知する工程とを有することを特徴とするSOIウェーハの検査方法。
【請求項2】
前記SOI層膜厚の減少による変動に起因する欠陥を検知する場合、前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚がtだけ薄い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出し、
前記SOI層膜厚の増加による変動に起因する欠陥を検知する場合、前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚がtだけ厚い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出することを特徴とする請求項1に記載のSOIウェーハの検査方法。
【請求項3】
前記プロファイルP3又はP4に閾値を設定し、該閾値以上の欠陥を選択的に検出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のSOIウェーハの検査方法。
【請求項4】
前記所定厚tを前記SOIウェーハの膜厚均一性に応じて設定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のSOIウェーハの検査方法。
【請求項5】
前記所定厚tを5〜20nmの範囲で設定することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のSOIウェーハの検査方法。
【請求項6】
前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚が前記所定厚tだけ薄い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した場合、前記選択する波長λ又は波長帯を、λM−20[nm]以上、λM+100[nm]以下の範囲内から選択し、
前記プロファイルP2を算出する工程において、前記SOI層の膜厚が前記所定厚tだけ厚い膜厚のSOIウェーハのプロファイルP2を算出した場合、前記選択する波長λ又は波長帯を、λM−100[nm]以上、λM+20[nm]以下の範囲内から選択することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のSOIウェーハの検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−263034(P2010−263034A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111785(P2009−111785)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】
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