説明

T細胞に媒介される疾患の処置

【課題】 T細胞に媒介される疾患を処置すること。
【解決手段】 本発明は、若干の不都合な炎症応答、アレルギー性疾患、移植片拒絶及び自己免疫疾患を含めた望ましくない免疫応答、及び他の疾患状態が、免疫系T細胞及び樹状細胞への特定のケモカインSLC(二次リンパケモカイン)及びMIP−3β(マクロファージ炎症性タンパク質3β)の結合を調節することによって治療することができるし又は予防することができるという発見に関する。本発明は、更に、SLCに媒介される及びMIP−3βに媒介される障害の処置において有用な治療用化合物についてスクリーニングする方法、及びこのようなスクリーニングによって検出される化合物に関する。適当な検定法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、T細胞に媒介される細胞過程の治療的モジュレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
T細胞(“胸腺由来”細胞)は、多数の細胞に媒介される免疫機能に関与し、間接的には、B細胞を刺激することにより、抗体産生の原因となる。T細胞の細胞膜は、T細胞の活性化、T細胞のいろいろなサブタイプへの分化、及び疾患部位へのT細胞の移動を含めたT細胞と他の細胞又は細胞成分との相互作用を容易にする多数の受容体及び補助タンパク質分子を含有する。
【0003】
T細胞に媒介される応答は、通常は極めて有益であるが、T細胞によって媒介される免疫応答を抑制すること又はそれ以外に調節することが適当である状況が存在する。重要な例は、器官、組織又は細胞の移植であり、この場合、移植された細胞に対する免疫応答の抑制が不可欠である。更に別の例には、アレルギー、自己免疫疾患、及び炎症を伴う疾患状態の処置が含まれる。T細胞は、そのように多数の免疫に媒介される過程に関与し、しかもこのような過程は、概して、種々のT細胞タンパク質及びシグナリング機能の重複する使用を必要とするので、他の望ましい細胞過程に悪影響を与えることなく、若干のT細胞機能だけを標的とすることは極めて困難であった。
【0004】
T細胞は、種々の細胞性免疫過程を行うために、抗原(概して、異種巨大分子、又は自己巨大分子と複合した更に小さい分子)の認識に応答して分化し且つ増殖する。抗原の認識後、T細胞の機能及び形態の変化が、T細胞活性化を引き起こす。分化したT細胞によって行われる機能には、(1)ウイルスに感染した自己細胞の致死、(2)異種細胞の致死、(3)異種粒子(細菌及びウイルスなど)を飲み込み、そして順に、追加のT細胞への提示及びその活性化のためにそれら巨大分子を処理することができる細胞(例えば、マクロファージ)の活性化、(4)例えば、免疫寛容を与えるように作用しうる抗原へのB細胞及びT細胞の免疫応答の抑制、(5)他のT細胞の活性化、及び(6)抗原によっていったん活性化されたら、抗体が産生されうるようにB細胞が異種抗原に応答するのを助けることである。ある場合には、これら作用は、T細胞とそれらの標的との直接的接触によって行われ、他の場合には、T細胞は、一定の距離にある追加の標的細胞を活性化するために、種々の物質(概して、リンホカインと称される)を分泌し、又は両方の機構が含まれてよい。
【0005】
下に更に詳細に述べられるように、これら相互に関係のある系全ての組合せの存在は、不都合な作用をもたらすこともありうる。例えば、免疫系は、自己免疫疾患を引き起こす自己巨大分子に対して反応することがありうる。更に、T細胞による若干のリンホカイン(γインターフェロンなど)の放出は、マクロファージ細胞を感染部位又は組織損傷部位に移動させるのみならず、望ましくない炎症を徐々に引き起こす(例えば、遅延型過敏症の場合)他の可溶性因子を放出させる。
【0006】
体内の炎症応答は、免疫系成分による関与の防止が、時には極めて価値がある状況の代表例である。概して、炎症応答は、局所傷害への応答を容易にする防御機構である。例えば、患部への組織液の漏入は、抗体との接触を容易にし、更には、何らかの有害物質と直接的に戦うように白血球を移動させる。残念ながら、炎症応答は、不適当であることがある、すなわち、それは、過度の一定期間続くことがありうるし、又は残念ながら、身体を傷つけるように作用することによって、限定されているとしても、ある疾患状態の原因となる炎症系成分による関与を伴うことがありうる。アレルギー及び喘息は、主要な複雑なクラス、典型的には、慢性炎症性疾患である。多数の炎症性疾患状態に典型的であるように、アレルギー性疾患状態も、免疫系の異常な又はそれ以外には望ましくない活性化を伴う。したがって、炎症過程を妨げることが医学的に適当である多数の状況が存在する。
【0007】
前述のように、細胞、組織又は器官の移植後のような、正常な免疫系を抑制することが望まれる更に別の状況が存在する。しかしながら、免疫系過程の複雑な性状が与えられると、正常な免疫機能を抑制する有効且つ安全な方法を決定するのは難しいことが判明している。
【0008】
前述のように、自己免疫疾患、移植片拒絶、アレルギー及び炎症は、抗原特異的T細胞の望ましくない活性化が、望ましくない臨床状態の誘導及び/又は進行に必要であると考えられる疾患状態である。したがって、T細胞の活性化を遮断する医薬化合物、又は特異的下流シグナリングイベントは、治療的に極めて価値があると期待される。例えば、J.H.Hanke et al., Inflammation Research, 44,pp.357-371,1995 を参照されたい。
【0009】
T細胞は、TcRと称される膜糖タンパク受容体によって抗原を認識するが、これは、構造及び配列がB細胞の抗体と部分的に似ている。これら二つのタンパク質クラスが発現される遺伝要素は、疑いなく共通の起源である。概して、T細胞は、他の細胞の表面上の、処理された形のそれらに提示される抗原を単に認識するにすぎない。抗体生産性B細胞と同様に、個々の先祖T細胞はそれぞれ、処理された抗原の具体的なアミノ酸又は炭水化物の配列及び/又は他の分子構造(エピトープと称される)を単に認識するにすぎないが、この構造は、通常は、抗原に独特である。このような特異的認識は、広範囲の異種巨大分子に対する応答を可能にし、自己分子に対する免疫応答が普通に妨げられる機構の不可欠な特徴である。
【0010】
T細胞表面への抗原の結合後、その活性化を達成するように、多数のイベントが細胞膜で及びT細胞内部で起こる必要がある。Hanke et al., で概説されるように、T細胞の活性化は、特に、CD4、CD8、CD3及びCD28のような他の細胞膜糖タンパク質とTcRとの結合、更には、これらタンパク質中のチロシンアミノ酸残基のリン酸化を含む(C.H.June et al., Journal of Immunology, 144,pp.1591-1599(1990), 及び D.B.Strauss et al., Cell, 70,pp.585-593,1992 を参照されたい)。
【0011】
本発明は、望ましくない免疫応答を妨げることに関する。本発明の実施により、ナイーブT細胞(それらの同族抗原に暴露されたことがないT細胞)は、それらの標的抗原に接触するのを妨げられているので、クローン増殖することも、エフェクター及び記憶T細胞に分化することもない。
【0012】
報告されている開発状況:
最近、個々のT細胞が、それらが認識することができる特異的抗原とどのようにして最初に接触した状態になるかについての理解が一層進んできている。一つのこのような機構では、樹状細胞として知られる若干の白血球は、抗原を捕捉し、そしてそれを、それら細胞表面上での提示のために、細胞膜のタンパク質との複合体として処理する。樹状細胞は、このような抗原提示細胞(APC)の最も強力な種類であると信じられている。
【0013】
白血球(樹状細胞及びリンパ球を含めた)は、通常は、末梢血管とリンパ系との間を再循環する。抗原の認識及び捕捉後、樹状細胞は、リンパ系を経て二次リンパ器官(例えば、リンパ節、扁桃、パイアー斑及び脾臓)に移動し、そこでそれらは、T細胞域と称される特殊化した区域に局在するようになる。同時に、ナイーブT細胞は、二次リンパ器官に連続的に移動する。特殊化した結合機構を用いて、ナイーブT細胞は、T細胞域にも入り込む(同様の機構は、T細胞を炎症部位の血管内皮壁に付着させる)。次に、T細胞は、内皮細胞間隙に入ることができるので、走化性勾配にしたがうことがありうる組織に入ることができる。これら過程の概説については、M.Gunn et al., The Journal of Experimental Medicine, 189(3),pp.451-460,1999, を参照されたい。
【0014】
T細胞域において、ナイーブT細胞の連続流は、現在局在している樹状細胞上に示される広範囲の抗原に接触することができる。ナイーブT細胞の大部分は循環に戻るが、それらの特定の同族抗原に遭遇するものは、T細胞域に残り、そこでそれらは、クローン増殖し、そしてエフェクター及び記憶T細胞に分化する(例えば、M.Gunn et al., at 452 を参照されたい)。
【0015】
二次リンパ器官及びそのT細胞域への樹状細胞及びナイーブT細胞両方の局在化は、この走化性活性を引き起こすケモカイン(低分子量ホルモン様タンパク質)によって媒介されるということが確認されている。同様に、若干のケモカインは、樹状細胞及びT細胞を炎症部位にも向ける。
【0016】
特に、SLC(二次リンパ器官ケモカイン)は、T細胞への抗原提示が行われるT細胞域中へのナイーブT細胞及び抗原輸送樹状細胞両方の移動に必要であると考えられる。M.Gunn et al., The Journal of Experimental Medicine, 189(3),pp.451-460,1999 及び T.Engeman et al., The Journal of Immunology, 164,pp.5207-5214,2000 を参照されたい。ケモカインMIP−3βも、リンパ球移動及び標的組織の浸潤の原因となると確認されている。これらケモカインは両方とも、T細胞及び樹状細胞上に存在するCCR7受容体において作用する。どちらのケモカインも、リンパ球移動中に細胞接着に強力な作用を有する。R.Yoshida et al., Journal of Biological Chemistry, 272,pp.7118-7122,1988 及び J.J.Campbell et al., J.Cell Biology, 141,1053-1059,1998 を参照されたい。
【0017】
ケモカイン(C−Cモチーフ)受容体7とも称されるCCR7は、適当なリガンドの結合後にサイクリックGMPによって細胞質作用が媒介される(したがって、G共役と称される)膜貫通受容体タンパク質である。CCR7は、ナイーブ及び活性のT細胞、B細胞及び樹状細胞上に存在するが、好中球、単球及びNK細胞のような他の白血球には不存在である。したがって、CCR7機能を妨げる物質は、T細胞が活性化した状態になりうる部位へのTリンパ球及び樹状細胞の移動を特異的に阻止するはずである。更に、Ngo et al.(The Journal of Experimental Medicine, 188,181-191,1998)は、樹状細胞自体がMIP−3βを放出し、潜在的可能性としては、ナイーブT細胞を引きつけて樹状細胞と接触させる自己増幅性フィードバックループの明らかな存在を実証している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、CCR7受容体による樹状細胞及びT細胞へのSLC及びMIP−3βの正常な結合を妨げる医薬化合物の開発に向けられている。本発明は、したがって、細胞の走化性応答を含めた若干の細胞内及び細胞間シグナリングイベントを選択的に妨げ、したがって、免疫応答の選択的調節を可能にする治療用化合物に向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、SLC及びCCR7の相互作用によって媒介される障害の処置において有用である治療用化合物についてスクリーニングする方法に関する。本発明は、更に、MIP−3β及びCCR7の相互作用によって媒介される障害の処置において有用である治療用化合物についてスクリーニングする方法に関する。
【0020】
種々の態様において、本発明は、SLC/CCR7及びMIP−3β/CCR7の相互作用のモジュレーター、すなわちアンタゴニスト及び/又はアゴニストである化合物を識別する一次スクリーニング検定を提供する。これら一次検定は、ハイスループットスクリーニングに応用可能である。
【0021】
他の態様において、本発明は、このようなモジュレーターの生物学的活性及び結果として得られるそれらの有用性を更に特性決定する二次検定を提供する。若干の識別される化合物は、CCR7が関与する障害及び状態、例えば、アレルギー、喘息、一般的には炎症状態、移植片拒絶及び自己免疫疾患などの処置及び予防において有用であろう。若干の識別される化合物は、SLCか又はMIP−3βとCCR7との相互作用を促進することが好都合である障害及び状態の処置及び予防において有用であろう。
【0022】
本発明は、SLC又はMIP−3βに媒介される過程を調節する化合物を識別する方法であって、(a)CCR7と試験化合物とを、SLC又はMIP−3βの存在下又は不存在下で接触させ;そして(b)それらの生物学的作用を決定することを含む方法を提供する。典型的な検定において、試験化合物は、SLC又はMIP−3βが通常結合するCCR7上の同じ部位で結合し且つ作用するであろうが、医療の実務家は、これが必ずしもそのようにある必要はないということを理解するであろう、すなわち、本発明の方法を用いて、通常のSLC及びMIP−3β結合部位に遠いCCR7上の部位で作用する化合物を識別することもできる。
【0023】
一つの態様において、識別される化合物は、SLC又はMIP−3βとCCR7との相互作用、又はその通常の結果を妨げるアンタゴニストである。もう一つの態様において、識別される化合物は、CCR7におけるSLC又はMIP−3βの結合の通常の作用を高レベルであるが模擬するアゴニストである。典型的な態様において、測定されるCCR7活性は、SLC又はMIP−3βと相互作用する能力である。本発明の更に別の態様において、試験化合物は、CCR7に特異的な抗体、又はSLC又はMIP−3βによって与えられるエピトープに特異的に抗体である。
【0024】
本発明は、更に、SLC/CCR7又はMIP−3β/CCR7に媒介される過程を調節する化合物を識別する方法であって、(a)CCR7発現性細胞を試験化合物と接触させ;そして(b)得られたCCR7活性レベル、又は細胞中のCCR7発現レベルを測定して、該測定される発生及び発現レベルが、試験化合物の不存在下で測定されるレベルと異なる場合、SLC−CCR7又はMIP−3β−CCR7に媒介される過程を調節する化合物が識別されるようにすることを含む方法を提供する。一つの態様において、測定されるCCR7活性は、SLCと相互作用する能力である。もう一つの態様において、測定されるCCR7活性は、MIP−3βと相互作用する能力である。もう一つの態様において、測定されるCCR7活性は、SLC又はMIP−3βへのT細胞の走化性応答である。あまり好ましくはない態様において、CCR7を発現する細胞に由来する膜小胞を、合成の又は再構成される膜標品の場合と同様に用いることもできる。
【0025】
本発明によって更に包含されるのは、CCR7へのSLC(又はMIP−3β)の結合を調節する化合物を識別する方法であって、(a)CCR7とSLC又はMIP−3β(又はその類似体)とを、試験化合物の存在下で接触させ;そして(b)CCR7に結合しているSLC又はMIP−3β(又は類似体)の量を測定して、(b)で測定される結合したSLC又はMIP−3βの量が、試験化合物の不存在下で測定される結合したSLC又はMIP−3βの量と異なる場合、CCR7へのSLC又はMIP−3βの結合を調節する化合物が識別されるようにすることを含む方法である。なおもう一つの態様において、結合したSLC又はMIP−3βの量は、SLC又はMIP−3β特異的抗体と細胞を接触させることによって測定する。
【0026】
なおもう一つの態様において、SLC又はMIP−3βを標識し、そして結合したSLC又はMIP−3βの量を、標識を検出することによって測定する。この方法の一つの態様において、SLC又はMIP−3βは、蛍光標識又は放射性標識を用いて標識する。
【0027】
本発明は、更に、哺乳動物におけるCCR7関連障害を検出する方法であって、患者試料中のCCR7遺伝子発現レベルか又はCCR7受容体のレベルを測定して、測定されるレベルが、臨床的に正常な個体において見出されるレベルと異なる場合、CCR7関連障害が存在しうるようにすることを含む方法を提供する。
【0028】
本発明によって更に包含されるのはキットである。キットであって、(a)SLC又はMIP−3β、又はそのフラグメント、又は(b)CCR7ポリペプチド、又は(c)CCR7ポリペプチドをコードしている核酸、又は例えば、(d)CCR7を発現する細胞を含み、適当な取扱説明書及び追加の試薬と一緒に容器中に包装されるキットを提供する。一つの態様において、このキットは、患者におけるCCR7関連障害の存在を検出する場合に用いるための取扱説明書を更に含む。
【0029】
したがって、本発明は、試験化合物が、CCR7受容体への二次リンパケモカイン(Secondary lymphoid chemokine; SLC)又はマクロファージ炎症性タンパク質3β(MIP−3β)の結合に影響を与えるか否かを検出する方法であって、
(a)CCR7の試料とSLC又はMIP−3βとを接触させ、SLC又はMIP−3βのそれへの結合を測定し;
(b)同様のCCR7の試料と、SLC又はMIP−3β及び更に、一定量のその試験化合物とを接触させ、このCCR7へのこのSLC又はMIP−3βの結合を測定し;そして
(c)(a)及び(b)の結果を比較して、SLC又はMIP−3βの結合がこの試験化合物の存在によって影響されるか否かを決定することを含む方法を提供する。
【0030】
本発明は、更に、試験化合物が、通常はSLC又はMIP−3βの結合に依存するCCR7受容体の活性に影響を与えるか否かを決定する方法であって、
(a)CCR7の試料とSLC又はMIP−3βとを接触させ、このCCR7の得られた活性を測定し;
(b)同様のCCR7の試料とSLC又はMIP−3βとを、一定量のこの化合物の存在下で接触させ、得られたCCR7活性を測定し;そして
(c)(a)及び(b)の結果を比較して、CCR7のSLC依存性又はMIP−3β依存性活性がこの化合物の存在によって影響されるか否かを決定する工程を含む方法を提供する。
【0031】
本発明の方法の好ましい実施例において、試験化合物は、CCR7のSLC依存性又はMIP−3β依存性活性を妨げるアンタゴニストとして同定する。本発明の更に別の実施例において、試験化合物は、CCR7のSLC依存性又はMIP−3β依存性活性を増強するアゴニストである。
【0032】
更に好ましい実施例において、試験化合物は、CCR7に特異的な抗体であり、又はSLC又はMIP−3βに特異的である。
本発明の実施によれば、CCR7のSLC依存性又はMIP−3β依存性活性は、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患、移植片拒絶、再灌流障害、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、コレセプター(co-receptor)使用によって媒介される増加したHIV感染性、肉芽種性疾患、炎症関連感染、及び癌細胞の転移から成る群より選択される疾患状態の原因となっている。このような疾患の経過は、本発明の実施によって処置することができる。
【0033】
本発明の実施によって処置することができる自己免疫疾患には、制限されることなく、慢性関節リウマチ、I型糖尿病(近年の発症)、狼瘡、炎症性腸疾患、原発性硬化性胆管炎、視神経炎、乾癬、多発性硬化症、多発性筋痛、ブドウ膜炎及び脈管炎が含まれる。
【0034】
本発明の実施によって処置することができる急性及び慢性の炎症性疾患には、制限されることなく、変形性関節症、成人呼吸窮迫症候群、幼児呼吸窮迫症候群、虚血性再灌流障害及び糸球体腎炎が含まれる。
【0035】
本発明の実施によって処置することができるアレルギー性疾患には、制限されることなく、喘息、アレルギー性鼻炎及びアトピー性皮膚炎が含まれる。
本発明の実施によって処置することができる移植片拒絶の状況には、制限されることなく、その拒絶が慢性であれ急性であれ、ヒトの細胞、組織又は器官の異種移植片及び移植片が含まれる。
【0036】
本発明の実施によって処置することができる肉芽種性疾患には、制限されることなく、サルコイドーシス、らい病及び結核が含まれる。
本発明の実施によって処置することができる感染に関連した炎症の状況には、制限されることなく、肝炎、インフルエンザ及びギラン・バレー症候群、一般的にはウイルス炎症が含まれる。
【0037】
本発明の実施によって処置することができる追加の疾患には、アテローム性動脈硬化症、再狭窄(バルーン及び/又はステント挿入後の再狭窄が含まれるがこれに制限されない)、及びコレセプター使用によって媒介される増加したHIV感染性が含まれる。
【0038】
本発明の実施によって処置することができる追加の疾患状態には、慢性気管支炎及び癌転移が含まれる。
本発明の実施によって開発される化合物は、樹状細胞に由来するIL−12放出を減少させる結果として、炎症部位において、TNF及びIL−1が含まれるがこれに制限されるわけではないサイトカインの産生を制限することもあり、したがって、制限されることなく、うっ血性心不全、肺気腫及びそれに関連した呼吸困難、気腫;HIV−1、HIV−2、HIV−3;サイトメガロウイルス(CMV)感染、アデノウイルス感染、ヘルペスウイルス(Herpes zoster 及び Herpes simplex)の感染が含まれる、TNF及びIL−1に関連した疾患に利益を与える。これら化合物は、このような感染が、TNFのような有害な炎症性サイトカインの生産を引き起こす感染に関連した続発症に、例えば、真菌性髄膜炎、関節組織損傷、過形成、パンヌス形成及び骨再吸収、乾癬性関節炎、肝不全、細菌性髄膜炎、川崎病、心筋梗塞、急性肝不全、ライム病、敗血症性ショック、癌、及びマラリア等の状況において利益を与えることもありうる。
【0039】
本発明は、CCR7受容体及びSLC又はMIP−3βの相互作用によって媒介される患者の障害を診断する方法であって、
(a1)患者試料中のCCR7遺伝子発現レベルを測定し;又は
(a2)患者試料中のCCR7のSLC依存性又はMIP−3β依存性活性を測定し;そして
(b)この測定値を、臨床的に正常な個体から決定される測定値と比較する工程を含む方法も含む。
【0040】
したがって、容器中に包装された診断用キットであって、
(a)SLC又はそのフラグメント;及び
(b)試薬であって、
(b1)CCR7タンパク質又はそのフラグメント、
(b2)CCR7タンパク質をコードしている核酸又はそのフラグメント、及び
(b3)CCR7を発現する細胞
より選択される試薬を含み;
CCR7受容体及びSLCの相互作用によって媒介される患者の障害を検出する又は処置する場合に用いるための取扱説明書を更に含んでいてよい診断用キットも提供する。MIP−3βがSLCに代わる同様のキットを提供する。
【0041】
本明細書中で用いられる“SLCに媒介される”及び“MIP−3βに媒介される”という用語には、SLC又はMIP−3βの発現、合成及び/又は活性のレベルに直接的にか又は間接的に依存する及び/又は応答性である過程が含まれる。このような過程には、炎症細胞の走化性のような、アレルギー、喘息及び炎症の過程が含まれるが、これに制限されるわけではない。本明細書中で用いられる“SLC/CCR7関連障害”及び“MIP−3β/CCR7関連障害”又は状態等という用語は、SLC又はMIP−3βが関与する障害及び状態、又は患者のSLC又はMIP−3βの濃度によって有益に又は不都合に影響されることがありうる障害及び状態を意味する。このような障害及び状態は、例えば、正常な、罹患していない、障害のない個体で見出されるレベルに相対して異常なレベルのSLC又はMIP−3βの発現、合成及び/又は活性によって生じることがありうる。このような障害には、アレルギー性鼻炎、アレルギー性喘息、気管支収縮及び自己免疫疾患のようなアレルギー性疾患、喘息性疾患及び炎症性疾患が含まれるが、これに制限されるわけではない。
【0042】
本発明の目的に関して、SLC又はMIP−3βの“類似体”は、概して、SLC又はMIP−3βとの一つ又はそれ以上の共通の構造特性を有する化合物であって、しかも概して、少なくとも一つの検定条件下において、これらケモカインと同様の一般的な生物学的作用を有する化合物である。したがって、例えば、潜在的なSLCアゴニスト又はSLCアンタゴニスト化合物の活性が測定される検定において、この類似体は、それ以外にはこの検定において用いられると考えられる任意のSLC又はMIP−3β自体の代わりに置き換えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本明細書中に開示されるのは、アレルギー性疾患、喘息、免疫疾患及び炎症応答障害のような、SLC及びMIP−3βに媒介される障害の検出及び処置に有用な治療用化合物の識別のためのスクリーニング検定である。これら検定は、SLC及びMIP−3β自体に相対して、CCR7における増加した結合及び活性を示す化合物の検出にも応用しうる。このようなスクリーニング検定には、ハイスループットスクリーニングフォーマットに適用しうる最初の一次スクリーニング検定、及びそれら一次スクリーニングで識別される先行(lead)化合物を更に特性決定するのに用いることができる次の二次スクリーニング検定が含まれる。更に、SLC及びMIP−3β関連障害の処置における識別された化合物の診断及び治療的使用方法を開示する。
【0044】
本明細書中に記載されるスクリーニング検定は、例えば、SLC又はMIP−3βとCCR7との相互作用を調節する有機化合物、ペプチド及びタンパク質(抗体を含めた)を識別するのに用いることができる。
【0045】
このような識別される化合物等は、SLC又はMIP−3βによってCCR7によるT細胞の走化性誘導のアゴニスト又はアンタゴニストとして用いることができる。CCR7に結合することによってSLC又はMIP−3βの結合を阻害し、しかも走化性誘導を阻害する(アンタゴニスト)か又は走化性誘導を促進する(アゴニスト)化合物は、本発明の実施によって有用である。
【0046】
本発明の方法は、SLC又はMIP−3βに結合することによって、このSLC又はMIP−3βのCCR7への結合を妨げる又は促進する化合物を検出する(又はその活性を確認する)のにも有用である。抗体の治療的活性は、本発明のこの側面によって確認することができる。
【0047】
CCR7は、インテグリンアビディティー及びTリンパ球の強固な接着を制御する場合に重要な役割を果たすことも知られている。二次リンパ組織中、更には、炎症部位中へのリンパ球補充は、高内皮細静脈(HEV)の制御下にある。リンパ球のHEVとの相互作用及びそれらの組織中への移動は、いくつかの段階を含む(下の図1を参照されたい)。最初に、リンパ球は、ローリングと称される過程においてセレクチンによって内皮細胞に可逆的に結合する。次に、細胞は、血流によって引き起こされる剪断力に耐えるために、内皮に強固に接着した状態になる。この強固な接着段階は、細胞表面上に存在するインテグリンに依存し、GiαサブユニットによるGタンパク質共役受容体(“GPCR”)によって制御されると考えられる。強固な接着後、細胞は、内皮細胞中の接着結合部を介して移動後、Gタンパク質依存性であることが分かってもいる過程である組織中への走化性を経験する。
【0048】
ケモカインは、7個の膜貫通ドメインを有するGPCRによって作用する8〜10,000MW走化性サイトカインである。多くの研究は、組織移動の最後の段階中のケモカインの役割に関する重要な証拠を提供している(C.R.Mackay et al., Current Biology, 7,R384-386,1997, 及び M.Baggiolini et al., Ann.Rev.Immunology, 15,pp.675-705,1997)。これは、ケモカインの強力な in vitro 及び in vivo 走化性活性(例えば、L.A.Beck et al., J.Immunology, 159,pp.2962-2972,1997)、及び炎症部位におけるケモカインの発現(例えば、D.H.Adams et al., Transplantation, 61,pp.817-825,1996, 及び A.E.Koch et al., J.Clin,Invest., 93,pp.921-928,1994 を参照されたい)に関する知見によって更に支持される。更なる支持は、動物モデルにおける疾患重症度及び組織浸潤を調節する抗ケモカイン中和抗体の能力に関する知見によって得られる(例えば、W.J.Karpus et al., J.Immunol., 155,pp.5003-5010,1995 を参照されたい)。
【0049】
しかしながら、リンパ球移動の最初の“強固な接着”段階に関与するGPCRの識別は未知のままとなっている。大部分のケモカインは、リンパ球移動のこの段階に最小限の作用を有する。最近、3種類の新規なケモカインが、インテグリンアビディティーを増強し、しかも静的条件下でも流動条件下でも、細胞接着に強力な作用を有することが示された。これらケモカインは、受容体CXCR4と相互作用するSDF−1α、及びどちらも受容体CCR7と相互作用するケモカインMIP−3β及びSLCである(R.Yoshida et al., Journal of Biological Chemistry, 272,pp.13803-13809,1997; 及び J.J.Campbell et al., Science, 279,pp.381-384,1998 を参照されたい)。
【0050】
SLCを用いた実験は、静的条件下でも流動条件下でも、Tリンパ球の迅速なインテグリン依存性阻止を引き起こすその能力を示している。1秒程度の短時間のSLCへのリンパ球の暴露は、MadCAM及びICAM−1タンパク質への接着を促進するであろう(M.D.Gunn et al., Keystone Conference, Lake Tahoe, Nevada, March 22,1998, 及び J.J.Campbell et al., Science, 279,pp.381-384,1998)。この接着の増加は、インテグリン発現の増加とは無関係であるがむしろ、インテグリンアビディティーの変化が、細胞を強固に接着させるのに必要であることが示される。受容体CCR7の役割は、これら研究において、CCR7でトランスフェクションされた細胞を用いることによって確認された。
【0051】
これら in vitro 知見の支持で、最近、in vivo のT細胞接着及び組織移動におけるSLCの重要な役割が示唆されている。DDD/1系統として知られる系統のマウスは、T細胞ホーミングの欠如、及びリンパ節中のTリンパ球数の80%減少を特徴とするリンパ節サイズの付随する減少を有すると特性決定されている(H.Nakano et al., Eur.J.Immunol., 27,215-221,1997)。更に、これら動物は、末梢血中の循環性Tリンパ球数の増加を有する。実験は、これら細胞の同系動物中への転移が正常なホーミングを生じたことから、リンパ球輸送におけるこの欠如が、T細胞レベルではなかったことを示している。むしろ、この欠如は、T細胞の侵入を支持する二次リンパ組織の低下した能力のためであると考えられた。Dr.M.Gunn(UCSF)によっていくつかの会合で報告された未公表の知見では、in situ ハイブリダイゼーションを用いて、Dr.Gunn は、これら動物の末梢リンパ節(HEV)はSLCを完全に欠いているが、野生型マウスは、HEV中においてSLCを高発現するということを示した。これは、ケモカイン遺伝子のクラスターを含有する領域中の染色体4上にDDD/1マウスの常染色体劣性欠如を局在している最近の連鎖分析と一致する。これら動物の表現型は、リンパ球強固接着の欠如と一致する。
【0052】
CCR7は、リンパ球及び樹状細胞の走化性を促進する:
リンパ球強固接着だけを促進するSLCの能力は、薬理物質によってその受容体CCR7との相互作用を妨げることが、T細胞炎症を減少させ且つ移植片拒絶を防止するということを示唆すると考えられるが、CCR7は、薬物標的としてのその可能性を更に強化する追加の性質を有する。最近のケモカイン Gordon 会議において、Gunn et al. は、in vitro 及び in vivo の樹状細胞移動におけるCCR7及びそのリガンドSLC及びMIP−3βの役割を示しており、抗原特異的応答を制御する場合のCCR7の臨界的役割が示唆された。Gunn は、樹状細胞移動が、SLC欠損マウスDDD/1において抑制されたことを示した。更に、現在、樹状細胞によるCCR7発現の速度論は、細胞がいったんリンパ組織に入ると保持されて、潜在的可能性としては、抗原を提示するそれらの能力を最大限にすることができるようにあるということが研究で示されている(S.Sozzani et al., J.Immunology, 161,pp.1083-1086,1998)。
【0053】
CCR7のもう一つの性質は、リンパ球走化性における役割である。本発明者は、Hut78及び一次T細胞へのSLC及びMIP−3β両方の作用を調べ、それらの活性を他のケモカインと比較している。試験された大部分のケモカインは、T細胞走化性に最小限の作用を有する(例えば、MIP−1α、MIP−1β、RANTES、MCP−1、MCP−3、Tarc及びIP−10)。対照的に、SLC及びMIP−3βは、本発明者が調べた最も強力なT細胞走化性物質であり、SDF−1αよりもずっと性能が優れている。CCR7は、ナイーブ及び活性両方のT細胞、更には、B細胞上に存在することが分かっているが、単球、NK細胞及び好中球には不存在であるので、CCR7を妨げる物質は、リンパ球及び樹状細胞移動を特異的に阻止するはずである。前述のように、V.N.Ngo et al., J.Exp.Med., 188,pp.181-191,1998 によって最近公表されたデータは、樹状細胞自体がMIP−3βを放出し、潜在的可能性として、T細胞を引きつけて樹状細胞と接触させることができる増幅ループを示唆している。
【0054】
スクリーニング法:
有用なスクリーニング法は次の通りである。放射性リガンド受容体結合検定を、Hut78細胞か又はCCR7でトランスフェクションされた細胞を用いて行う。最初の結合実験は、放射性標識されたMIP−3βを用いて行う。いったん“ヒット”が確認されたら、MIP−3β及びSLCに応答してHut78及び一次T細胞の走化性を阻害する化合物の能力を調べる。リガンド結合検定及び走化性検定を利用した他のケモカイン受容体に対する特異性も決定する。次に、動物の移植モデルにおける活性を、最終候補識別のために実験する。I期試験における生化学的効力の決定を支持するために、CCR7リガンド(MIP−3β又はSLC)を正常な志願者の皮膚内に注射して、細胞浸潤を評価する。このヒトモデル系は、CCR1アプローチで用いられているが、CCR7実験のためのII期移植実験の前に、I期試験で薬力学的終点を決定するのに有用であろう。
【0055】
転写に影響を与える分子(例えば、タンパク質又は小型有機分子)を含めた、CCR7遺伝子発現に影響を与える化合物、又はCCR7の完全長さ又は切断された形の発現を調節することができる化合物も、本発明のスクリーニングで識別することができる。
【0056】
更に、記載の検定は、CCR7シグナル伝達を調節する化合物(例えば、CCR7へのSLC若しくはMIP−3β又は他のリガンドの結合によって活性化されるシグナルの伝達に関与しうるGタンパク質活性の阻害剤又はエンハンサーのような、下流シグナリングイベントに影響を与える化合物)を識別することもできるということが注目されるはずである。CCR7の下流のシグナリングイベントに影響を与え、したがって、例えば、アレルギー又は炎症の応答へのCCR7の作用を調節するこのような化合物の識別及び使用は、本発明の範囲内である。
【0057】
本明細書中に記載の一次スクリーニング検定は、SLC又はMIP−3β/CCR7相互作用を調節する化合物を検出するように設計される、すなわち、試験化合物は、SLC又はMIP−3βと正か又は負に比較されるCCR7受容体においてSLC又はMIP−3βの代わりに作用し、又はSLC(又はMIP−3β)と組み合わされ又はそれ以外にはそれを調節することによって、CCR7においてそれが作用する方法に影響を与える。下に詳細に記載されるように、このような検定は、ハイスループットスクリーニング法に応用できる結合検定のような機能性検定である。
【0058】
結合検定は、直接結合検定としてか又は競合結合検定として行うことができる。直接結合検定の場合、試験化合物を、CCR7受容体か又はリガンドSLC又はMIP−3βへの結合について試験する。次に、第二段階で、試験化合物を、SLCか又はMIP−3βとCCR7受容体との相互作用を調節する能力について試験する。もう一方において、競合結合検定は、CCR7への結合についてSLC又はMIP−3βと競合する試験化合物の能力を評価する。
【0059】
直接結合検定の場合、SLCか又はMIP−3β及び/又はCCR7と試験化合物とを、リガンド又は受容体に試験化合物を結合させる条件下で接触させる。この結合は、溶液中で又は固体表面上で起こりうる。好ましくは、試験化合物を、検出のために予め標識する。標識には、発光、蛍光、又は放射性同位体又はそれらを含有する基、又は酵素又は色素のような非同位体標識のような任意の検出可能な基を用いることができるが、これに制限されるわけではない。結合が生じるのに充分な一定のインキュベーション時間後、過剰の又は非特異的に結合した試験化合物を除去する条件及び操作に反応を暴露する。典型的には、これには、適当な緩衝液を用いた洗浄を行う。最終的に、リガンド−試験化合物複合体又は受容体−試験化合物複合体の存在を検出する。
【0060】
競合結合検定の場合、試験化合物を、CCR7受容体へのSLC又はMIP−3βの結合を破壊する又は促進する能力について検定する。標識されたSLC又はMIP−3βを、CCR7又はそのフラグメント若しくは誘導体と混合し、それらの間の相互作用が通常は起こると考えられる条件下に、試験化合物の添加を伴ってか又は伴うことなく置くことができる。CCR7を結合する標識されたSLC又はMIP−3βの量を、試験化合物の存在下又は不存在下で結合した量と比較することができる。
【0061】
アフィニティー結合検定は、固体支持体に固定されているCCR7フラグメントを用いて行うことができる。典型的には、結合反応の非固定成分、この場合、SLCか、MIP−3βか又は試験化合物を標識して検出を可能にする。発光、発色団、蛍光、又は放射性同位体又は基の検出、又は酵素又は色素のような非同位体標識の検出のような種々の標識法が利用可能であり、用いることができる。一つの好ましい態様において、試験化合物を、フルオレセインイソチオシアネート(FITC,Sigma Chemicals, St.Louis から入手可能)のような発蛍光団を用いて標識する。
【0062】
次に、標識された試験化合物、又はSLC又はMIP−3βを加えた試験化合物を、特異的結合を生じさせる条件下において固体支持体と接触させる。結合反応が生じた後、結合していない及び非特異的に結合した試験化合物を、表面の洗浄によって分離する。固相への結合パートナーの付着は、化学架橋、プラスチック表面への非特異的接着、固相に結合した抗体との相互作用、結合パートナーに結合したリガンド(ビオチンなど)と固相に結合したリガンド結合タンパク質(アビジン又はストレプトアビジンなど)との間の相互作用等が含まれるがこれに制限されるわけではない当業者に知られている種々の方法で行うことができる。
【0063】
最後に、固体表面上に残った標識を、当該技術分野において知られているいずれかの検出法によって検出することができる。例えば、試験化合物が発蛍光団を用いて標識されている場合、発光光度計を用いて複合体を検出することができる。
【0064】
標識されたSLC又はMIP−3βは、CCR7を発現する細胞と混合することができるし、又はあまり好ましくはないが、このような細胞から得られる粗製抽出物と混合することができ、そして試験化合物を加えることができる。単離された膜を用いて、CCR7と相互作用する化合物を識別することができる。例えば、単離された膜を用いた典型的な実験では、CCR7を発現するように細胞を遺伝子操作することができる。膜は、標準的な技法によって採取され且つ in vitro 検定で用いることができる。標識されたリガンド(例えば、125I標識SLC)を膜に結合させ、比活性について検定するが、特異的結合は、過剰の未標識(放射性同位体不含)リガンドの存在下で行われる結合検定との比較によって決定する。或いは、可溶性CCR7を、組換え発現させ、非細胞基剤検定で利用して、CCR7に結合する化合物を識別することができる。1種類又は複数の組換え発現されたCCR7ポリペプチド、又はCCR7の細胞外ドメインの一つ又はそれ以上を含有する融合タンパク質は、非細胞基剤スクリーニング検定で用いることができる。或いは、CCR7の細胞質ドメインの一つ又はそれ以上に該当するペプチド、又はCCR7の細胞質ドメインの一つ又はそれ以上を含有する融合タンパク質は、非細胞基剤検定系で用いられて、CCR7の細胞質部分に結合する化合物を識別することができるが、このような化合物は、CCR7のシグナル伝達経路を調節するのに有用でありうる。非細胞基剤検定の場合、組換え発現されたCCR7を、当業者に知られている手段によって、試験管、マイクロタイターウェル又はカラムのような固体支持体に結合させる(Ausubel et al., 上記を参照されたい)。次に、試験化合物を、CCR7に結合する能力について検定する。
【0065】
もう一つの態様において、例えば、ファージライブラリーは、連続(continuous)ファージディスプレイライブラリーからのファージを、プラスチックビーズのような固相に結合した精製CCR7又はその誘導体、類似体、フラグメント又はドメインを含有するカラムを介して通過させることによってスクリーニングすることができる。洗浄用緩衝液のストリンジェンシーを変化させることにより、CCR7に高親和性を有するペプチドを発現するファージについて富化することは可能である。カラムから単離されたファージは、クローン化することができ、短いペプチドの親和性を、直接的に測定することができる。1種類を越える多いオリゴヌクレオチドの配列を組み合わせて、CCR7への一層高い親和性結合についても調べることができる。どのアミノ酸配列がCCR7に最も強い結合を与えるかを承知すると、コンピュータモデルを用いて、CCR7と試験化合物との間の分子接触を確認することができる。これは、それら接触を模擬する非タンパク質化合物の設計を可能にするであろう。このような化合物は、そのペプチドの同様の活性を有することがありうるので、治療的に用いて、有効で且つ製造するのにほとんど費用の掛からないという利点を有することができる。
【0066】
本発明のこの側面のもう一つ具体的な態様において、固体支持体は、マイクロタイターディッシュに付着したCCR7を含有する膜である。試験化合物、例えば、ライブラリーメンバーを発現する細胞を、マイクロタイターディッシュ中でライブラリーメンバーを発現させる条件下で培養する。タンパク質(又は核酸又は誘導体)に結合するライブラリーメンバーを採取する。このような方法は、例として、Parmley & Smith, 1988,Gene 73:305-318; Fowlkes et al., 1992, Bio Techniques 13:422-427; PCT公開WO94/18318号;及び本明細書中に引用される他の参考文献に記載されている。
【0067】
本発明のもう一つの態様において、CCR7又はSLC(又はMIP−3β)と試験化合物との相互作用は、in vitro で検定することができる。既知の又は未知の分子を、CCR7ペプチド又は誘導体への特異的結合について、結合に導く条件下において検定した後、CCR7に特異的に結合する分子を識別する。これら二つの成分は、種々の方法で測定することができる。一つのアプローチは、容易に検出可能な標識を用いてそれら成分の一つを標識し、それを、結合を生じさせる条件下において1種類又は複数の試験化合物と一緒にし、結合した標識成分を結合していない標識成分から分離する分離工程を行った後、結合した成分の量を測定することである。一つの態様において、CCR7を標識し、結合を生じさせる条件を用いて試験物質に加えることができる。試験物質の結合は、ポリアクリルアミドゲル分析を用いて確認して、試験物質の存在下及び不存在下で形成される複合体を比較することができる。
【0068】
更に、CCR7へのSLC(又はMIP−3β)の結合は、動物モデルにおける自然のままの細胞中で検定することができる。例えば、標識されたSLCは、試験化合物と一緒に及び試験化合物不含で、動物に直接的に投与することができる。SLCの取込みは、試験化合物の存在下及び不存在下で測定することができる。これら検定に関して、試験化合物が加えられた宿主細胞は、CCR7及び/又はSLC(又はMIP−3β)を発現するように遺伝子操作することができるが、この発現は、一時的、誘導性又は構成性であってよいし、又は安定していてよい。本発明のスクリーニング法の目的には、組織培養細胞、哺乳動物細胞、酵母細胞及び細菌が含まれるがこれに制限されるわけではない広範囲の宿主細胞を用いることができる。それぞれの細胞種類は、それ自体の一連の利点を有する。CCR7を発現するT細胞又は他の細胞のような哺乳動物細胞は、本発明の検定を行うのに好ましい細胞種類でありうる。細菌及び酵母は、培養するのが比較的容易であるが、哺乳動物細胞とは異なってタンパク質をプロセシングする。
【0069】
ある場合には、機能性CCR7リガンドは、CCR7との熱力学的に安定な複合体を形成しないことがありうるので、安定なバイナリー複合体の形成を必要とする一次検定によって検出することはできないと考えられる。しかしながら、このようなリガンドは、複合体形成の速度論的測定値によって検出可能でありうる。このような方法には、例えば、受容体へのリガンド結合のオンオフ率の速度論的測定が含まれる。したがって、本発明の結合検定には、速度論的研究及び測定も含まれる。
【0070】
更に、ある場合には、Gタンパク質共役受容体の応答が止む、又はリガンドへの長時間暴露で脱感作した状態になることが認められている。本発明のもう一つの態様において、検定は、CCR7受容体の脱感作を阻止する化合物を識別するのに利用することができるが、このような化合物は、CCR7の活性を維持するのに用いることができる。このような化合物は、喘息などのアレルギー及び炎症応答障害のような、SLC又はMIP−3βに関連した障害の処置の治療方法の一部分として用いることもできる。
【0071】
本発明の一つの態様において、例えば、熱力学的に安定な複合体の形成にあまり依存しない検定は、シンチレーション近接検定である(米国特許第4,568,649号に記載される)。精製された又は部分精製されたCCR7又はCCR7含有膜を、シンチレーターを加えられた固相(例えば、ビーズ)の表面上に被覆し、その固相を、アルブミン又は血清のような遮断薬を用いて処理する。次に、放射性標識された試験化合物(例えば、33P標識される)を、CCR7被覆ビーズと一緒に、固相上のCCR7に候補試験化合物を特異的に結合させると考えられる条件下で混合する。過剰の又は非特異的結合を除去するように洗浄後、標識された試験化合物及びCCR7の特異的結合が起こった場合、放射性標識をシンチレーターにごく接近させて、シンチレーターを発光させるが、これは、シンチレーションカウンターを用いて検出可能である。
【0072】
別の態様において、アフィニティー捕捉シンチレーション近接検定は、結合が溶液中で行われうるように用いることができる。この検定では、CCR7を精製し、ビオチンのようなアフィニティーラベルを用いて標識する。次に、ビオチニル化CCR7を、溶液結合を生じさせる条件下において放射性標識試験化合物と混合する。CCR7及び試験化合物の複合体を含めたビオチニル化CCR7を、ストレプトアビジンで被覆されシンチレーターを加えられたビーズ(Amersham から入手可能)上に捕捉し、上記のようにシンチレーションカウンターで計数する。
【0073】
走化性検定も一次検定として用いることができる。CCR7型の受容体と誘引物質との間の相互作用の一つの生物学的作用は、走化性として知られる過程である、特定の誘引物質に対して受容体を発現する細胞の方向性移動の誘導である。走化性検定は、本明細書中に記載のように、CCR7受容体及び誘引物質SLC又はMIP−3βの相互作用を妨げる化合物をスクリーニングするのに用いることができる。このような走化性検定は、ハイスループットスクリーニング法に応用可能であり、したがって、CCR7アンタゴニストを識別する一次検定として用いることができる。多数の技法が、走化性移動を検定するために開発されている(例えば、Leonard et al., 1995,“Measurement of α and β Chemokines”,in Current Protocols in Immunology, 6.12.1-6.12.28, Ed. Coligan et al., John Wiley & Sons,Inc. 1995 を参照されたい)。
【0074】
一つの態様において、例えば、ある化合物を、マルチウェル Boyden 走化性チャンバー中において化学誘引物質勾配を用いて、CCR7を発現する細胞の移動を引き起こすSLC(又はMIP−3β)の能力を調節するその能力について調べることができる。この装置は、典型的には、48U底ウェルのチャンバー底を含有し、この中に、化学誘引物質、又は化学誘引物質活性について調べられる化合物を入れる。シールガスケットを用いて覆われるポリカーボネート膜は、48穴チャンバー上部から底部チャンバーを分離し、ここにおいて、膜及びチャンバー上部によって形成されるウェルに細胞懸濁液を加える(実施例2を参照されたい)。
【0075】
この方法の具体的な実施例において、競合的検定を行って、SLC(又はMIP−3β)へのCCR7細胞の誘引を中断する化合物の能力について調べる。この方法では、Boyden 走化性チャンバーの底部ウェル中に試験化合物を希釈する。一定量のSLCも、CCR7細胞への走化性作用を有することが知られている濃度でこの希釈列に加える。対照として、少なくとも一つのアリコートは、SLCだけを含有する。CCR7を発現する細胞を、10mM HEPES及び1mg/mlウシ血清アルブミン(Sigma, St.Louis, MO)を補足したRPMI1640中に、例えば、3〜3.5x106個細胞/mlで再懸濁させ、チャンバーの上方ウェル中に入れる。これらチャンバーを、給湿CO2インキュベーター中において37℃で90〜120分間インキュベートする。インキュベーション時間後、メンブランフィルターの下方表面上の移動性細胞の数を、光学顕微鏡を用いて計数する。SLCの走化性活性への試験化合物の寄与は、SLCだけを含有するアリコートの走化性活性を、試験化合物及びSLCを含有するアリコートの活性と比較することによって測定される。SLC溶液への試験化合物の添加が、SLCだけを含有する溶液を用いて検出される細胞の数に相対して、膜の下方表面上で検出される細胞の数を減少させる場合、CCR7を発現する細胞の走化性活性のSLC誘導のアンタゴニストが識別される。対照的に、SLC溶液への試験化合物の添加が、(SLCだけを含有する溶液を用いて検出される細胞の数に相対して)膜の下方表面上で検出される細胞の数を減少させる場合、CCR7を発現する細胞の走化性活性のSLC誘導のアゴニストが識別される。
【0076】
本発明の方法は、多数の試験化合物を迅速にスクリーニングするハイスループット様式で常套的に行うことができる。具体的には、このような方法で用いられる細胞系は、マイクロタイタープレート、寒天プレート上スポッティング、寒天ウェル、チップ上スポッティング等が含まれるがこれに制限されるわけではない、当業者に知られている任意の多重コピーフォーマットにおいて発現させ且つ検定することができる。同様に、ロボット式取扱技術が含まれるがこれに制限されるわけではない標準的な多数の操作技術を、細胞及び/又は試験化合物の多数寄託に利用することができる。
【0077】
SLC(又はMIP−3β)とCCR7との相互作用を調節する試験化合物の識別後、二次スクリーニング検定を用いて、SLC(又はMIP−3β)、CCR7及びCCR7シグナリング過程の生物学的活性への作用について試験化合物を更に特性決定することができる。種々の検定を、二次スクリーニングとして用いるように応用することができる。例えば、このような方法には、結合検定、走化性検定、接着検定、細胞内カルシウム動態化検定、酸素放出検定及びアクチン重合検定が含まれるが、これに制限されるわけではない。このような検定の例は、本明細書中の下に詳細に考察される。
【0078】
結合検定は、一次結合検定の代わりに、又はそれに加えて、二次検定として行うことができる。一つの態様において、直接結合検定を一次スクリーニングとして用いた場合、競合検定は二次スクリーニングとして用いることができる。もう一つの態様において、結合検定は、ハイスループット走化性スクリーニング検定のような機能的一次スクリーニングによって識別される化合物について用いることができる。もう一つの態様において、結合検定を用いた一次スクリーニングで識別される化合物は、別の種類の結合検定を用いた二次スクリーニングで更に分析することができる。例えば、CCR7アフィニティーカラム検定を用いて識別される化合物は、その結合相互作用の速度論的分析によって二次スクリーニングで調べることができる。
【0079】
走化性検定は、二次検定として用いることができる。試験化合物[一次スクリーニング検定によって、CCR7へのSLC(又はMIP−3β)の結合を妨げる、又は或いは、CCR7へのSLC(又はMIP−3β)の結合を促進すると確認されている]は、走化性検定を用いて生物学的活性について調べることができる。上記のように、ケモカインは、細胞種類に特異的なケモカイン受容体とのそれらの相互作用によって細胞の方向性移動を引き起こすことができ、この走化性移動を調べるために多数の技術が開発されている(例えば、Leonard et al., 1995,“Measurement of α and β Chemokines”,in Current Protocols in Immunology, 6.12.1-6.12.28, Ed. Coligan et al., John Wiley & Sons,Inc. 1995 を参照されたい)。したがって、一つの態様において、例えば、ある化合物を、マルチウェル Boyden 走化性チャンバー中においてケモカイン勾配を用いて、CCR7を発現する細胞の移動を引き起こすSLCの能力を調節するその能力について調べることができる。
【0080】
この方法の具体的な実施例において、一次スクリーニングで識別されるSLC/CCR7アンタゴニスト又はアゴニスト試験化合物の連続希釈を、Boyden 走化性チャンバーの底部ウェル中に入れる。一定量のSLCも、この希釈列に加える。対照として、少なくとも一つのアリコートは、SLCだけを含有する。方法及び検定の条件は、一次スクリーニング検定において記載の通りであり、メンブランフィルターの下方表面上の移動性細胞の数を、光学顕微鏡を用いて計数する。SLCの走化性活性へのアンタゴニスト又はアゴニスト化合物の寄与は、SLCだけを含有するアリコートの走化性活性を、試験化合物及びSLCを含有するアリコートの活性と比較することによって測定される。SLC溶液への試験化合物の添加が、SLCだけを含有する溶液を用いて検出される細胞の数に相対して、膜の下方表面上で検出される細胞の数を減少させる場合、CCR7を発現する細胞の走化性活性のSLC誘導のアンタゴニストが識別される。対照的に、SLC溶液への試験化合物の添加が、SLCだけを含有する溶液を用いて検出される細胞の数に相対して、膜の下方表面上で検出される細胞の数を減少させる場合、CCR7を発現する細胞の走化性活性のSLC誘導のアゴニストが識別される。
【0081】
本明細書中に記載のスクリーニング検定は、例えば、SLC(又はMIP−3β)とCCR7との相互作用を調節する有機化合物、又はペプチド又はタンパク質を識別するのに用いることができる。したがって、本発明によってスクリーニングされうる物質には、抗体及びそれらのフラグメントも含まれる。例えば、CCR7の細胞外ドメイン(ECO)に結合して、天然のリガンドによって引き起こされる活性を阻害する(すなわち、アンタゴニスト)か又は天然のリガンドによって引き起こされる活性を模擬する(すなわち、アンタゴニスト)ペプチド模擬有機化合物をスクリーニングすることもできる。
【0082】
スクリーニングに用いることができる化合物には、例えば、ランダムペプチドライブラリーのメンバーが含まれるがこれに制限されるわけではない可溶性ペプチドなどのペプチド(例えば、Lam et al., 1991, Nature 354:82-84; Houghten et al., 1991, Nature 354:84-86 を参照されたい)、及びD−及び/又はL−立体配置アミノ酸から成る組合せ化学由来分子ライブラリー、ホスホペプチド(ランダム又は部分縮重した方向性のあるホスホペプチドライブラリーのメンバーが含まれるがこれに制限されるわけではない;例えば、Songyang et al., 1993, Cell 72:767-778 を参照されたい)、抗体(多クローン性、単クローン性、ヒト化、抗イディオタイプ、キメラ又は一本鎖抗体、及びFab、F(ab’)2及びFAb発現ライブラリーフラグメント、及びそれらのエピトープ結合フラグメントが含まれるがこれに制限されるわけではない)、及び低分子量有機又は無機分子が含まれるが、これに制限されるわけではない。
【0083】
ランダム又は組合せのペプチド又は非ペプチドライブラリーのような多様性ライブラリーは、CCR7受容体に特異的に結合する分子についてスクリーニングすることができる。用いることができる多数のライブラリー、例えば、化学合成ライブラリー、組換え体(例えば、ファージ展示ライブラリー)及び in vitro 翻訳に基づくライブラリーが、当該技術分野において知られている。
【0084】
化学合成ライブラリーの例は、Fodor et al., 1991, Science 251:767-773; Houghten et al., 1991, Nature 354:84-86; Lam et al., 1991, Nature 354:82-84; Medynski, 1994, Bio/Technology 12:709-710; Gallop et al., 1994, J.Medicinal Chemistry 37(9):1233-1251; Ohlmeyer et al., 1993, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:10922-10926; Erb et al., 1994, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422-11426; Houghten et al., 1992, Biotechniques 13:412; Jayawickreme et al., 1994, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:1614-1618; Salmon et al., 1993, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:11708-11712; PCT公開WO93/20242号;及び Brenner and Lerner, 1992, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5381-5383 に記載されている。
【0085】
ファージ展示ライブラリーの例は、Scott & Smith, 1990, Science 249:386-390; Devlin et al., 1990, Science, 249:404-406; Christian, et al., 1992, J.Mol.Biol. 227:711-718; Lenstra, 1992, J.Immunol.Meth. 152:149-157; Kay et al., 1993, Gene 128:59-65; 及び1994年8月18日付のPCT公開WO94/18313号に記載されている。
【0086】
非ペプチドライブラリーの例として、ベンゾジアゼピンライブラリー(例えば、Bunin et al., 1994, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:4708-4712 を参照されたい)を、使用に応用できる。ペプトイドライブラリー(Simon et al., 1992, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:9367-9371)を用いることもできる。ペプチド中のアミド官能基が完全メチル化されて、化学的に形質転換された組合せライブラリーを生じている、用いることができるライブラリーのもう一つの例は、Ostresh et al.(1994, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11138-11142)によって記載されている。
【0087】
ライブラリーをスクリーニングすることは、種々の一般的に知られている方法のいずれによっても行うことができる。例えば、ペプチドライブラリーのスクリーニングを開示している次の参考文献、すなわち、Parmley & Smith, 1989, Adv.Exp.Med.Biol. 251:215-218; Scott & Smith, 1990, Science 249:386-390; Fowlkes et al., 1992; Bio Techniques 13:422-427; Oldenburg et al., 1992, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5393-5397; Yu et al., 1994, Cell 76:933-945; Staudt et al., 1988, Science 241:577-580; Bock et al., 1992, Nature 355:564-566; Tuerk et al., 1992, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6988-6992; Ellington et al., 1992, Nature 355:850-852; いずれも Ladner et al. による米国特許第5,096,815号、米国特許第5,223,409号及び米国特許第5,198,346号;Rebar & Pabo, 1993, Science 263:671-673; 及びPCT公開WO94/18318号を参照されたい。
【0088】
本明細書中に記載の方法で調べ且つ識別することができる化合物には、Aldrich(1001 West St.Paul Ave., Milwaukee, WI 53533)、Sigma Chemical(P.O.Box 14508, St.Louis, MO 63178)、Fluka Chemie AG(Industriestrasse 25, CH-9471 Buchs, Switzerland(Fluka Chemical Corp. 980 South 2nd Street, Ronkonkoma, NY 11779))、Eastman Chemical Company,Fine Chemicals(P.O.Box 431, Kingsport, TN 37662)、Boehringer Mannheim GmbH(Sandhofer Strasse 116, D-68298 Mannheim)、Takasago(4 Volvo Drive, Rockleigh, NJ 07647)、SST Corporation(635 Brighton Road, Clifton, NJ 07012)、Ferro(111 West Irene Road, Zachary, LA 70791)、Riedel-deHaen Aktiengesellschaft(P.O.Box D-30918, Seelze, Germany)、PPG Industries Inc., Fine Chemicals(One PPG Place, 34th Floor, Pittsburgh, PA 15272)を含めたいずれかの市販元から入手される化合物が含まれうるが、これに制限されるわけではない。微生物、真菌、植物又は動物の抽出物を含めた更に別の任意の種類の天然産物を、本発明の方法を用いてスクリーニングすることができる。
【0089】
更に、小分子試験化合物を含めた試験化合物の多様性ライブラリーを利用することができる。例えば、ライブラリーは、Specs and BioSpecs B.V.(Rijswijk, The Netherlands)、Chembridge Corporation(San Diego, CA)、Contract Service Company(Dolgoprudny, Moscow Region, Russia)、Comgenex USA Inc.(Princeton, NJ)、Maybridge Chemicals Ltd.(Cornwall PL34 OHW,United Kingdom)及び Asinex(Moscow, Russia)から商業的に入手することができる。
【0090】
また更に、生物ライブラリー;空間的にアドレス可能な平行固相又は液相のライブラリー;デコンヴォルーションを必要とする合成ライブラリー法;“一ビーズ一化合物”ライブラリー法;及びアフィニティークロマトグラフィー選択を用いた合成ライブラリー法を含めた、当該技術分野において知られている組合せライブラリーを利用することができるが、これに制限されるわけではない。生物ライブラリーアプローチの一例は、好ましくは、ペプチドライブラリーを含むが、他の4種類のアプローチは、化合物のペプチド、非ペプチドオリゴマー又は小分子ライブラリーに応用可能である(Lam, 1997, Anticancer Drug Des. 12:145)。小分子試験化合物を含めた試験化合物の組合せライブラリーを利用することができ、例えば、Eichler & Houghten, 1995, Mol.Med.Today 1:174-180; Dolle, 1997, Mol.Divers. 2:223-236; 及び Lam, 1997, Anticancer Drug Des. 12:145-167 に開示されたように生じさせることができる。
【0091】
分子ライブラリーの合成方法の例は、当該技術分野において、例えば、DeWitt et al., 1993, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6909; Erb et al., 1994, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422; Zuckermann et al., 1994, J.Med.Chem. 37:2678; Cho et al., 1993, Science 261:1303; Carrell et al., 1994, Angew.Chem.Int.Ed.Engl. 33:2059; Carell et al., 1994, Angew.Chem.Int.Ed.Engl. 33:2061; 及び Gallop et al., 1994, J.Med.Chem. 37:1233 において見出されうる。
【0092】
化合物のライブラリーは、溶液から(例えば、Houghten, 1992, Bio/Techniques 13:412-421)、又はビーズ(Lam et al., 1991, Nature 354:82-84)、チップ(Fodor, 1993, Nature 364:555-556)、細菌(米国特許第5,223,409号)、胞子(特許第5,571,698号;第5,403,484号;及び第5,223,409号)、プラスミド(Cull et al., 1992, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1865-1869)又はファージ(Scott and Smith, 1990, Science 249:386-390; Devlin, 1990, Science 249:404-406; Cwirla et al., 1990, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:6378-6382; 及び Felici, 1991, J.Mol.Biol. 222:301-310)上で提示することができる。
【0093】
ライブラリーをスクリーニングすることは、種々の一般的に知られている方法のいずれによっても行うことができる。例えば、ペプチドライブラリーのスクリーニングを開示している次の参考文献、すなわち、Parmley & Smith, 1989, Adv.Exp.Med.Biol. 251:215-218; Scott & Smith, 1990, Science 249:386-390; Fowlkes et al., 1992; Bio Techniques 13:422-427; Oldenburg et al., 1992, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5393-5397; Yu et al., 1994, Cell 76:933-945; Staudt et al., 1988, Science 241:577-580; Bock et al., 1992, Nature 355:564-566; Tuerk et al., 1992, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6988-6992; Ellington et al., 1992, Nature 355:850-852; いずれも Ladner et al. による米国特許第5,096,815号、米国特許第5,223,409号及び米国特許第5,198,346号;Rebar & Pabo, 1993, Science 263:671-673; 及びPCT公開WO94/18318号を参照されたい。
【0094】
SLC(又はMIP−3β)とCCR7との相互作用を調節する化合物の識別により、このような化合物は、アレルギー又は炎症応答を変化させる能力について調べるために更に研究することができる。具体的には、例えば、本方法によって識別される化合物を、例えば、アレルギー、喘息及び炎症のようなSLC(又はMIP−3β)関連障害の許容される動物モデルにおいて in vivo で更に調べることができる。
【0095】
コンピュータモデリング及び検索方法は、SLC(又はMIP−3β)とCCR7との相互作用を調節することができる化合物の識別、又は既に識別された化合物の改良を可能にする。このような化合物又は組成物を識別したら、結合部位又は領域を識別する。結合部位は、例えば、ペプチドのアミノ酸配列から、核酸のヌクレオチド配列から、又は適切な化合物又は組成物のその天然のリガンドとの複合体の研究からの方法を含めた当該技術分野において知られている方法を用いて識別することができる。後者の場合、化学的又はX線結晶学的方法を用いて、複合体形成したリガンドが見出される標的上の場所を見つけることによって結合部位を見出することができる。
【0096】
次に、結合部位の三次元の幾何学的構造を決定する。これは、完全な分子構造を決定することができるX線結晶学を含めた既知の方法によって行うことができる。もう一方において、固相又は液相NMRを用いて、若干の分子内距離を決定することができる。構造決定のいずれか他の実験法を用いても、部分的又は完全な幾何学的構造を得ることができる。幾何学的構造は、決定される結合部位構造の正確さを向上させうる天然の又は人工の複合体形成したリガンドを用いて測定することができる。
【0097】
不完全な又は充分に正確でない構造が決定される場合、コンピュータに基づく多数のモデリング方法を用いて、その構造を完全にする又はその正確さを向上させることができる。タンパク質又は核酸のような特定の生体高分子に特異的なパラメーター化モデル、分子運動の計算に基づく分子動力学モデル、熱総体に基づく統計的力学モデル、又は組合せモデルを含めた、認められているモデリング方法のいずれを用いてもよい。大部分の種類のモデルについて、成分原子と基との間の力を示す標準的な分子力の場は必要であり、物理化学において知られている力の場より選択されうる。完全に又はあまり正確でない経験的構造は、これらモデリング方法によって計算される完全な及びより正確な構造上の束縛として役立ちうる。
【0098】
最後に、経験的にか、モデリングによってか又は組合せによって結合部位の構造を決定したら、化合物をそれらの分子構造についての情報と一緒に含有するデータベースを検索することによって、候補モジュレーター化合物を識別することができる。このような検索は、決定される結合部位構造に適合し且つ活性部位を規定する基と相互作用する構造を有する化合物を探索する。このような検索は,手動でありうるが、好ましくは、コンピュータで補助される。この検索から見出されるこれら化合物は、可能性のあるCCR7モジュレーター化合物である。
【0099】
或いは、これら方法を用いて、改善されたモジュレーター化合物を既知のモジュレーター化合物又はリガンドから識別することができる。既知の化合物の組成物は、修飾することができるが、修飾の構造的作用は、新規組成物に利用される上記の経験的及びコンピュータモデリング方法を用いて確認することができる。次に、変更された構造を、既知の化合物の結合部位構造と比較して、改良された適合又は相互作用が結果として生じるか否かを確認する。この方法で、側基を変更することなどによる組成物中の体系的変化を速やかに評価して、改善された特異性又は活性を有する修飾されたモジュレーター化合物又はリガンドを得ることができる。
【0100】
CCR7か又はSLC(又はMIP−3β)の結合部位の識別に基づいてモジュレーター化合物を識別するのに有用な更に別の経験的及びコンピュータモデリング方法は、当業者に明らかであろう。
【0101】
分子モデリングシステムの例は、CHARMm及びQUANTAプログラム(Polygen Corporation, Waltham, MA)である。CHARMmは、エネルギー最小化及び分子動力学関数を実行する。QUANTAは、分子構造の構成、グラフモデリング及び分析を実行する。QUANTAは、分子の互いの相互作用構成、修飾、可視化及び挙動分析を可能にする。
【0102】
多数の論文は、Rotivinen et al., 1988, Acta Pahrmaceutical Fennica 97:159-166; Ripka(1988 New Scientist 54-57);McKinaly and Rossmann(1989, Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol. 29:111-122);Perry and Davis, OSAR: Quantitative Structure-Activity Relationships in Drug Design pp.189-193 Alan R.Liss,Inc. 1989; Lewis and Dean(1989, Proc.R.Soc.Lond. 236:125-140 and 141-162)のように特定のタンパク質と相互作用性の薬物のコンピュータモデリングを、そして核酸成分のモデル受容体に関して、Askew et al.,(1989, J.Am.Chem.Soc. 111:1082-1090)概説している。化学物質をスクリーニングし且つグラフで示す他のコンピュータプログラムは、BioDesign,Inc.(Pasadena, CA)、Allelix,Inc.(Mississauga, Ontario, Canade)及び Hypercube,Inc.(Cambridge, Ontario)などの会社から入手可能である。これらは、主に、特定のタンパク質に特異的な薬物への適用のために設計されているが、DNA又はRNAの領域がいったん識別されると、その領域に特異的な薬物の設計に応用することもできる。
【0103】
CCR7タンパク質、ポリペプチド及びペプチドフラグメント、突然変異した、切断された又は欠失した形のCCR7及び/又はCCR7融合タンパク質は、抗体の産生、診断検定における試薬として、SLC(又はMIP−3β)関連障害の調節に関与する他の細胞遺伝子産物の識別、及びSLC(又はMIP−3β)関連障害の処置における医薬用試薬として用いることができる化合物についてのスクリーニング検定での試薬としてを含めた種々の使用のために製造することができるが、これに制限されるわけではない。更に、相互作用するCCR7及びSLC(又はMIP−3β)によって得られる情報に基づいて、CCR7のペプチドフラグメントを誘導することができるが、これは、in vivo の治療的使用のために、CCR7受容体分子への循環性SLC(又はMIP−3β)の正常な結合を阻害する。
【0104】
CCR7ペプチド、ポリペプチド及び融合タンパク質は、組換えDNA技術によって製造することができる。例えば、CCR7の一つ又はそれ以上の細胞外ドメイン(“ECD”)をコードしているヌクレオチド配列は、合成され又はクローン化され、そして互いに連結されて、CCR7の可溶性ECDをコードすることができる。ECDの一つ又はそれ以上の小区域部分領域をコードしているDNA配列は、互いに直接的に、又はペプチドスペーサーをコードするリンカーオリゴヌクレオチドによって連結することができる。このようなリンカーは、可撓性のグリシンの多いアミノ酸配列をコードし、それによって、互いに連なっているドメインを、CCR7リガンドを結合しうる立体配置をとるようにさせることができる。或いは、ECD中の個々のドメインをコードしているヌクレオチド配列を用いて、CCR7ペプチドを発現させることができる。
【0105】
種々の宿主発現ベクター系を利用して、CCR7の適当な領域をコードしているヌクレオチド配列を発現させて、このようなポリペプチドを生じることができる。得られたペプチド又はポリペプチドが可溶性誘導体(例えば、ECDに該当するペプチド)であり、そして典型的には、膜貫通ドメイン又は細胞ドメインに関して切断されている又は欠失している場合、そのペプチド又はポリペプチドは、培地から回収することができる。
【0106】
宿主発現ベクター系は、CCR7又は現場の、すなわち、細胞膜中に固定された機能性均等物を発現する遺伝子操作された宿主細胞も包含する。このような発現系からのCCR7の精製又は富化は、当業者に周知の適当なデタージェント及び脂質ミセル及び方法を用いて行うことができる。更に、このような遺伝子操作された宿主細胞は、CCR7の構造的及び機能的特徴を保持することのみならず、生物学的活性を、例えば、薬物スクリーニング検定で評価することも重要である場合に用いることができる。
【0107】
本発明の目的に用いることができる宿主発現ベクター系には、CCR7ヌクレオチド配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA又はコスミドDNA発現ベクターを用いて形質転換された細菌(例えば、大腸菌(E.coli)、枯草菌(B.subtilis))のような微生物;CCR7ヌクレオチド配列を含有する組換え酵母発現ベクターを用いて形質転換された酵母(例えば、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ピキア属(Pichia));CCR7配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス,CaMV;タバコモザイクウイルス,TMV)に感染した又はCCR7ヌクレオチド配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)を用いて形質転換された植物細胞系;又は哺乳動物細胞のゲノムに由来する(例えば、メタロチオネインプロモーター)又は哺乳動物ウイルスに由来する(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)プロモーターを含有する組換え体発現構築物を含有する哺乳動物細胞系(例えば、COS,CHO,BHK,293,3T3)が含まれるが、これに制限されるわけではない。
【0108】
細菌系の場合、多数の発現ベクターを、発現されるCCR7遺伝子産物に予定される使用に依って好都合に選択することができる。例えば、多量のこのようなタンパク質を、CCR7タンパク質の医薬組成物の生成のために又はCCR7タンパク質への抗体を生じさせるために製造する場合、例えば、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を支配するベクターが望まれることがありうる。このようなベクターには、E.coli 発現ベクターpUR278(Ruther et al., 1983, EMBO J. 2:1791)、この場合、CCR7コーディング配列は、融合タンパク質が生じるように、lacZコーディング領域と一緒にインフレームでベクター中に個々に連結されていてよい;pINベクター(Inouye & Inouye, 1985, Nucleic Acids Res. 13:3101-3109; Van Heeke & Schuster, 1989, J.Biol.Chem. 264:5503-5509)等が含まれるが、これに制限されるわけではない。pGEXベクターも、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)を用いて異種ポリペプチドを融合タンパク質として発現させるのに用いることができる。概して、このような融合タンパク質は可溶性であり、グルタチオン−アガロースビーズへの吸着後、遊離グルタチオンの存在下での溶離によって、溶解した細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、トロンビン又はXa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計されるので、クローン化標的遺伝子産物をGST部分から放出することができる。
【0109】
或いは、融合タンパク質はいずれも、発現される融合タンパク質に特異的な抗体を利用することによって容易に精製することができる。例えば、Janknecht et al. によって記載された系は、ヒト細胞系で発現される非変性融合タンパク質の容易な精製を可能にする(Janknecht et al., 1991, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8972-8976)。この系の場合、目的の遺伝子は、遺伝子の読み取り枠が、6個のヒスチジン残基から成るアミノ末端標識に翻訳によって融合するように、ワクシニア組換えプラスミド中にサブクローン化される。組換えワクシニアウイルスに感染した細胞からの抽出物を、Ni2+・ニトリロ酢酸−アガロースカラムに充填し、ヒスチジンで標識されたタンパク質を、イミダゾール含有緩衝液を用いて選択的に溶離する。
【0110】
昆虫系の場合、オートグラファ・カリホルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)をベクターとして用いて、異種遺伝子を発現させる。ウイルスは、スポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞中で増殖する。CCR7コーディング配列は、ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)中に個々にクローン化され、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置かれてよい。CCR7遺伝子コーディング配列の成功した挿入は、ポリヘドリン遺伝子の失活及び非閉塞(non-occluded)組換えウイルス(すなわち、ポリヘドリン遺伝子によってコードされるタンパク質性コートを欠いたウイルス)の生産を引き起こすであろう。次に、組換えウイルスを用いて、挿入される遺伝子を発現する細胞に感染させる(例えば、Smith et al., 1983, J.Virol. 46:584; Smith, 米国特許第4,215,051号を参照されたい)。
【0111】
哺乳動物宿主細胞の場合、多数のウイルス基剤発現系を利用することができる。アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合、目的のCCR7ヌクレオチド配列を、アデノウイルス転写/翻訳調節複合体、例えば、後期プロモーター及び三部分リーダー配列に連結することができる。次に、このキメラ遺伝子を、in vitro 又は in vivo 組換えによってアデノウイルスゲノム中に挿入することができる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1又はE3)中の挿入は、生存可能で且つ感染した宿主中のCCR7遺伝子産物を発現することができる組換えウイルスを生じるであろう(例えば、Logan & Shenk, 1984, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3655-3659 を参照されたい)。具体的な開始シグナルも、挿入されるCCR7ヌクレオチド配列の有効な翻訳に必要でありうる。これらシグナルには、ATG開始コドン及び隣接する配列が含まれる。それ自体の開始コドン及び隣接する配列を含めたCCR7遺伝子全体又はcDNAを適当な発現ベクター中に挿入する場合、追加の翻訳調節シグナルは必要とされないことがありうる。しかしながら、CCR7コーディング配列の一部分だけが挿入される場合、おそらくはATG開始コドンを含めた外因性翻訳調節シグナルが与えられる必要がある。これら外因性翻訳調節シグナル及び開始コドンは、天然及び合成両方の種々の起源に由来しうる。発現の効率は、適当な転写エンハンサー要素、転写ターミネーター等の包含によって増加しうる(Bittner et al., 1987, Methods in Enzymol. 153:516-544 を参照されたい)。
【0112】
更に、宿主細胞株を選択することができるが、これは、挿入される配列の発現を調節する、又は望まれる具体的な様式で遺伝子産物を修飾し且つプロセシングする。タンパク質産物のこのような修飾(例えば、グリコシル化)及びプロセシング(例えば、切断)は、タンパク質の機能に重要でありうる。異なった宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び修飾に特徴的な且つ特異的な機構を有する。適当な細胞系又は宿主系を、発現される異種タンパク質の正しい修飾及びプロセシングを確実にするように選択することができる。したがって、転写一次産物の適当なプロセシング、グリコシル化、及び遺伝子産物のリン酸化の細胞機構を有する真核宿主細胞を用いることができる。このような哺乳動物宿主細胞には、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3及びW138細胞系が含まれるが、これに制限されるわけではない。
【0113】
組換えタンパク質の長期高収率生産のためには、安定な発現が好適である。例えば、上記のCCR7配列を安定して発現する細胞系を遺伝子操作することができる。ウイルス複製起点を含有する発現ベクターを用いるよりもむしろ、適当な発現調節要素(例えば、プロモーター、エンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)によって制御されるDNA及び選択可能マーカーを用いて、宿主細胞を形質転換することができる。異種DNAの導入後、遺伝子操作された細胞は、富化培地中で1〜2日間成長させた後、選択培地へと切り換えることができる。組換えプラスミド中の選択可能マーカーは、選択への耐性を与えるので、プラスミドをそれら染色体中に安定して組み込む細胞の単離を容易にすることもできるし、そして順次に、これを、細胞系中にクローン化し且つ増殖させることができる。この方法は、CCR7遺伝子産物を発現する細胞系を遺伝子操作するのに好都合に用いることができる。このような遺伝子操作された細胞系は、CCR7遺伝子産物の固有の活性に影響を与える化合物のスクリーニング及び評価において特に有用でありうる。
【0114】
単純ヘルペスウイルスが含まれるがこれに制限されるわけではない多数の選択系を用いることができ、チミジンキナーゼ(Wigler et al., 1977, Cell 11:223)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, 1962, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48:2026)及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., 1980, Cell 22:817)遺伝子を、tk-、hgprt-又はaprt-細胞中でそれぞれ用いることができる。更に、代謝拮抗物質耐性を、次の遺伝子に関する選択の基準として用いることができる。すなわち、メトトレキセートへの耐性を与えるdhfr(Wigler et al., 1980, Natl.Acad.Sci.USA 77:3567; O'Hare et al., 1981, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1527);ミコフェノール酸への耐性を与えるgpt(Mulligan & Berg, 1981, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072);アミノグリコシドG−418への耐性を与えるneo(Colberre-Garapin et al, 1981, J.Mol.Biol. 150:1);及びハイグロマイシンへの耐性を与えるhygro(Santerre et al., 1984, Gene 30:147)。
【0115】
CCR7の一つ又はそれ以上のエピトープ、又はCCR7の保存的変異体のエピトープ、又はCCR7のペプチドフラグメントを特異的に認識する抗体も、本発明によって包含される。このような抗体には、多クローン性抗体、単クローン性抗体(mAb)、ヒト化又はキメラ抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fab発現ライブラリーによって生産されるフラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、及び上のいずれかのエピトープ結合フラグメントが含まれるが、これに制限されるわけではない。
【0116】
本発明の抗体は、例えば、生物試料中のCCR7の検出において用いることができるので、患者の異常なCCR7の量を調べることができる診断技術の一部分として利用することができる。突然変異型のCCR7を特異的に認識する抗体は、診断技術の一部分として特に有用でありうる。このような抗体は、例えば、CCR7遺伝子産物の発現及び/又は活性への試験化合物の作用の評価に関して上に記載のような化合物スクリーニングスキームと連結して利用することもできる。更に、このような抗体は、下記の遺伝子治療技術と連結して用いられて、例えば、正常な及び/又は遺伝子操作されたCCR7発現性細胞を、患者にそれらを導入する前に評価することができる。このような抗体は、更に、異常なCCR7活性の阻害方法として用いることができる。したがって、このような抗体は、SLC(又はMIP−3β)関連障害処置法の一部分として利用することができる。
【0117】
抗体の産生に関して、種々の宿主動物は、CCR7、CCR7ペプチド(例えば、受容体の機能性ドメインに該当するもの)、切断されたCCR7ポリペプチド(一つ又はそれ以上のドメインが欠失しているCCR7)、CCR7の機能性均等物又はCCR7の突然変異体を用いた注射によって免疫感作されてよい。このような宿主動物には、僅かながら名前を挙げると、ウサギ、マウス、ハムスター及びラットが含まれるが、これに制限されるわけではない。宿主の種に依って免疫学的応答を高めるには、フロイント(完全及び不完全)、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、リゾレシチンのような界面活性剤、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、及びBCG(カルメット・ゲラン桿菌(bacille Calmette-Guerin))及びコリネバクテリウム・パルヴム(Corynebacterium parvum)のような潜在的に有用なヒトアジュバントを含めた種々のアジュバントを用いることができるが、これに制限されるわけではない。
【0118】
特定の抗原への同一抗体の均一集団である単クローン性抗体は、培養中の連続細胞系によって抗体分子を産生する任意の技法によって得ることができる。これらには、Kohler 及び Milstein のハイブリドーマ技術(1975, Nature 256:495-497 及び米国特許第4,376,110号)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosbor et al., 1983, Immunology Today 4:72; Cole et al., 1983, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:2026-2030)及びEBVハイブリドーマ技術(Cole et al., 1985, Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Alan R. Liss,Inc., pp.77-96)が含まれるが、これに制限されるわけではない。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDを含めた任意の免疫グロブリンクラス及びそれらの任意のサブクラスを有していてよい。本発明のmAbを産生するハイブリドーマは、in vitro 又は in vivo で培養することができる。in vivo でのmAbの高力価の産生により、これが、現在好ましい産生法になっている。
【0119】
更に、適当な抗原特異性を有するマウス抗体分子からの遺伝子を、適当な生物学的活性を有するヒト抗体分子からの遺伝子と一緒にスプライシングすることによる“キメラ抗体”の産生のために開発された技法(Morrison et al., 1984, Proc.Natl.Acad.Sci., 81:6851-6855; Neuberger et al., 1984, Nature, 312:604-608; Takeda et al., 1985, Nature, 314:452-454)を用いることができる。キメラ抗体とは、ネズミmAbに由来する可変領域及びヒト免疫グロブリン定常領域を有するものなどの、異なった部分が別々の動物種に由来する分子である。
【0120】
或いは、一本鎖抗体の産生について記載された技法(米国特許第4,946,778号;Bird, 1988, Science 242:423-426; Huston et al., 1988, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883; 及び Ward et al., 1989, Nature 334:544-546)を、CCR7遺伝子産物に対して一本鎖抗体を生じるのに応用することができる。一本鎖抗体は、Fv領域の重鎖及び軽鎖フラグメントをアミノ酸架橋によって連結して、一本鎖ポリペプチドを生じることによって形成される。
【0121】
特定のエピトープを認識する抗体フラグメントは、既知の技法によって生じることができる。例えば、このようなフラグメントには、抗体分子のペプシン消化によって生じることができるF(ab’)2フラグメント、及びF(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって生じることができるFabフラグメントが含まれるが、これに制限されるわけではない。或いは、Fab発現ライブラリーを構築して(Huse et al., 1989, Science, 246:1275-1281)、所望の特異性を有する単クローン性Fabフラグメントの迅速且つ容易な識別を可能にすることができる。
【0122】
CCR7への抗体は、順次、当業者に周知の技法を用いて、CCR7を“模擬する”抗イディオタイプ抗体を生じるのに利用することができる(例えば、Greenspan & Bona, 1993, FASEB J 7(5):437-444; 及び Nissinoff, 1991, J.Immunol. 147(8):2429-2438 を参照されたい)。例えば、CCR7細胞外ドメイン(“ECD”)に結合し、そしてCCRへのリガンドの結合を競合的に阻害する抗体は、ECDを“模擬する”、したがって、リガンドを結合し且つ中和する抗イディオタイプを生じるのに用いることができる。このような中和性抗イディオタイプ又はこのような抗イディオタイプのFabフラグメントは、治療方式において用いられて、天然のリガンドを中和し、そしていずれも前記のアレルギー性疾患及び喘息のようなCCR7関連障害を処置することができる。
【0123】
或いは、CCR7活性のアゴニストとして作用しうる、CCR7への抗体を生じることができる。このような抗体は、CCR7に結合し、その受容体のシグナル伝達活性を活性化するであろう。更に、CCR7活性のアンタゴニストとして作用する、すなわち、CCR7受容体の活性化を阻害する抗体も、アレルギー性疾患、喘息及び炎症性疾患のようなSLC(又はMIP−3β)関連障害を処置するのに特に有用であると考えられる。
【0124】
可溶性CCR7 ECD又は融合タンパク質、例えば、融合Ig分子を発現する遺伝子操作された細胞は、それらが、可溶性分子の供給を与える“バイオリアクター”として機能しうる場合、in vivo で投与することができる。このような可溶性CCR7ポリペプチド及び融合タンパク質は、適当な濃度で発現される場合、CCR7の天然のリガンドを中和する又は“除去する(mop up)”ので、CCR7活性の阻害剤として作用するはずであり、したがって、いずれも上記のアレルギー性疾患、喘息及び炎症性疾患のようなSLC(又はMIP−3β)関連障害を処置するのに用いることができる。
【0125】
用いることができるイムノアッセイには、僅かながら名前を挙げると、ウェスタンブロット、免疫組織化学ラジオイムノアッセイ、ELISA(固相酵素免疫検定法)、“サンドイッチ”型イムノアッセイ、免疫沈降検定法、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散検定法、凝集検定法、補体結合検定法、イムノラジオメトリックアッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイのような技法を用いた競合的及び非競合的検定システムが含まれるが、これに制限されるわけではない。
【0126】
更に別の態様において、CCR7タンパク質、CCR7 RNA又はCCR7機能活性(例えば、SLCへの結合、抗CCR7抗体結合活性等)の低下したレベルを検出することによって、又はCCR7の低下した発現又は活性を生じるCCR7 RNA、DNA又はCCR7タンパク質中の突然変異(CCR7核酸中のトランスロケーション、CCR7遺伝子又はタンパク質中の切断、野生型CCR7に相対するヌクレオチド又はアミノ酸配列の変化)を検出することによって、感染の際の低下した免疫応答性を伴う疾患及び障害を診断することができるし、又はそれらの疑わしい存在についてスクリーニングすることができるし、又はこのような障害を発生する素因を検出することができる。このような疾患及び障害には、アレルギー及び喘息性障害(例えば、アレルギー性鼻炎、アレルギー性喘息、気管支収縮、炎症性疾患、移植片拒絶及び自己免疫疾患が含まれるが、これに制限されるわけではない。
【0127】
例として、CCR7のレベルは、イムノアッセイによって検出することができ、CCR7 RNAのレベルは、ハイブリダイゼーション検定(例えば、ノーザンブロット、in situ ハイブリダイゼーション)によって検出することができ、そしてCCR7活性は、in vivo 又は in vitro での結合活性を測定することによって検定することができる。CCR7核酸中のトランスロケーション、欠失及び点突然変異は、サザンブロッティング、FISH、RFLP分析、SSCP、好ましくは、CCR7遺伝子の少なくとも大部分にわたるフラグメントを生じるプライマーを用いたPCR、患者から得られるCCR7ゲノムDNA又はcDNAの配列決定等によって検出することができる。
【0128】
好ましい態様において、患者試料中のCCR7mRNA又はタンパク質のレベルは、アレルギー性疾患、喘息又は炎症性疾患のようなSLC又はMIP−3β関連障害のない被験者からの同様の試料中に存在するレベルに相対して検出される又は測定される。低下したレベルは、その被験者が、アレルギー性疾患、喘息、炎症性疾患又は上記の他の状態を発生する又は発生する素因を有することがありうるということを示している。
【0129】
具体的な態様において、患者試料中のmRNA又はタンパク質のレベルは、障害のない被験者からの同様の試料中に存在するレベルに相対して検出され又は測定され、この場合、増加したレベルは、その被験者が、自己免疫疾患を有する又はその素因を有するということを示している。
【0130】
診断使用のためのキットも提供するが、これは、一つ又はそれ以上の容器中に、抗CCR7抗体、及び場合により、その抗体への標識された結合パートナーを含む。或いは、抗CCR7抗体を標識することができる(検出可能マーカー、例えば、化学発光、酵素、蛍光又は放射性の残基を用いて)。一つ又はそれ以上の容器中に、CCR7 RNAにハイブリッド形成することができる核酸プローブを含むキットも提供する。具体的な態様において、キットは、一つ又はそれ以上の容器中に、CCR7核酸の少なくとも一部分の適当な反応条件下での増幅[例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(例えば、Innis et al., 1990, PCR Protocols, Academic Press,Inc., San Diego, CAを参照されたい)、リガーゼ連鎖反応(EP320,308号を参照されたい)Qβレプリカーゼの使用、循環的プローブ反応、又は当該技術分野において知られている他の方法による]を開始することができる1対のプライマー(例えば、それぞれ、6〜30ヌクレオチドのサイズ範囲の)を含むことができる。場合により、キットは、所定量の精製されたSLC又はMIP−3β、又はCCR7核酸、タンパク質、誘導体、類似体又はそれらのフラグメントを、又は例えば、標準又は対照として用いるために、更に含むことができる。
【0131】
本発明は、SLC又はMIP−3βとCCR7との相互作用を調節するための、及びアレルギー、喘息及び炎症が含まれるがこれに制限されるわけではないSLC又はMIP−3β関連障害を治療するための方法及び組成物を包含する。正常なCCR7遺伝子産物機能の欠損は、SLC又はMIP−3β関連障害表現型の発生を引き起こすことがありうるので、CCR7遺伝子産物活性の増加又はCCR7経路の活性化(例えば、下流活性化)は、欠損したレベルのCCR7遺伝子発現及び/又はCCR7活性を示す個体の正常なSLC又はMIP−3β関連状態への進行を容易にすると考えられる。
【0132】
或いは、若干のSLC又はMIP−3β関連障害の症状は、CCR7遺伝子発現、及び/又はCCR7遺伝子活性、及び/又はCCR7経路のダウンレギュレーション活性のレベルを低下させることによって(例えば、下流シグナリングイベントを標的とすることによって)改善されうる。
【0133】
CCR7アンタゴニストは、喘息又は炎症のような状態を処置するのに用いることができる。CCR7のアゴニストは、CCR7活性を刺激する処置を必要としている哺乳動物においてこのように刺激するのに用いることができる。
【0134】
このような化合物の毒性及び治療的効力は、標準的な薬学的方法によって、例えば、LD50(集団の50%への致死用量)及びED50(集団の50%における治療的有効量)を決定するための細胞培養物又は実験動物中で決定することができる。毒性作用と治療的作用との間の用量比は、治療指数であり、それは、LD50/ED50比として表すことができる。大きい治療指数示す化合物が好適である。毒性副作用を示す化合物を用いることがありうるが、感染していない細胞への起こりうる損傷を最小限にし、それによって副作用を減少させるためには、このような化合物を罹患組織部位に集中させるデリバリーシステムを設計するように注意する必要がある。
【0135】
細胞培養検定及び動物実験から得られるデータは、ヒトで使用するための一定範囲の用量を製剤化する場合に用いることができる。このような化合物の投与量は、好ましくは、ほとんど又は全く毒性を伴うことなく、ED50を含む循環濃度の範囲内である。この投与量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に依ってこの範囲内で変化しうる。本発明の方法で用いられるいずれの化合物についても、治療的有効量は、細胞培養検定から最初に推定することができる。一定用量を、動物モデルにおいて、細胞培養物中で決定されるIC50(すなわち、症状の半最大阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲に達するように製剤化することができる。このような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中レベルは、例えば、高性能液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0136】
医薬組成物:
本発明によって用いるための医薬組成物は、1種類又はそれ以上の生理学的に許容しうる担体又は賦形剤を用いて慣用法で製剤することができる。
【0137】
したがって、これら化合物及びそれらの生理学的に許容しうる塩、水和物及び溶媒を化合物は、吸入又は吹入による投与(口か又は鼻を介する)又は経口、口腔内、非経口又は直腸投与のために製剤化することができる。
【0138】
経口投与用には、医薬組成物は、例えば、結合剤(例えば、プレゲル化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース又はリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、バレイショデンプン又はナトリウムデンプングリコラート);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)のような薬学的に許容しうる賦形剤を用いて慣用的な手段によって製造される錠剤又はカプセル剤の形をとることができる。錠剤は、当該技術分野において周知の方法によってコーティングされていてよい。経口投与用液体製剤は、例えば、液剤、シロップ剤又は懸濁剤の形をとることができ、又はそれらは、水又は他の適当なビヒクルを使用前に用いて構成するための乾燥製品として与えられてよい。このような液体製剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は水素化食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチン又はアラビアゴム);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油状エステル、エチルアルコール又は分別化植物油);及び保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル又はプロピル、又はソルビン酸)のような薬学的に許容しうる添加剤を用いて慣用的な手段によって製造することができる。これら製剤は、緩衝塩、着香剤、着色剤及び甘味剤も適宜含有してよい。
【0139】
経口投与用製剤は、活性化合物を制御放出させるように適当に製剤化されていてよい。
口腔内投与用には、組成物は、慣用法で製剤化される錠剤又は口中錠の形をとることができる。
【0140】
吸入による投与用には、本発明によって用いるための化合物は、便宜上、適当な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適当なガスの使用を伴って、加圧パック又はネブライザーからのエアゾールスプレー組成の形で供給される。加圧エアゾールの場合、その用量単位は、一定の計測量を供給するバルブを与えることによって決定することができる。吸入器又は吹入器で用いるための、例えば、ゼラチンのカプセル剤及びカートリッジは、ラクトース又はデンプンのような適当な粉末基剤及び化合物の粉末配合物を含有して製剤化することができる。
【0141】
これら化合物は、注射による、例えば、ボーラス注射又は連続注入による非経口投与用に製剤化することができる。注射用製剤は、単位剤形で、例えば、アンプル中又はバイアルビン中で、添加される保存剤と一緒に与えられてよい。これら組成物は、油状又は水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤又は乳剤のような形をとることができ、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散助剤のような配合剤を含有してよい。或いは、活性成分は、適当なビヒクル、例えば、滅菌発熱物質不含水を使用前に用いて構成するための粉末の形であってよい。
【0142】
化合物は、坐剤又は停留浣腸のような、例えば、カカオ脂又は他のグリセリドなどの慣用的な坐剤基剤を含有する直腸用組成物中で製剤化されてもよい。
前記の製剤に加えて、化合物は、デポー製剤として製剤化されてもよい。このような長期作用性製剤は、植込(例えば、皮下又は筋内)によって又は筋内注射によって投与されてよい。したがって、例えば、化合物は、適当なポリマー性又は疎水性の物質(例えば、許容しうる油中のエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂を用いて、又はあまり可溶性でない誘導体として、例えば、あまり可溶性でない塩として製剤化することができる。
【0143】
これら組成物は、所望ならば、活性成分を含有する一つ又はそれ以上の単位剤形を含有しうるパック又はディスペンサー装置中で与えられてよい。このパックは、例えば、ブリスターパックのような金属箔又はプラスチック箔を含んでいてよい。このパック又はディスペンサー装置には、投与のための取扱説明書が添付されうる。
【実施例】
【0144】
実施例1(結合検定):
膜調製:HUT−78細胞を、10%FBS、pen−strep(100u/ml)、L−グルタミン(2mM)、HEPES(10mM)及び非必須アミノ酸(0.1mM)を含むRPMI培地中で培養した。細胞を、170xgで5分間の遠心分離によって集め、そして8mg/lアプロチニンを含有するダルベッコのCa2+及びMg2+不含培地中に4℃で再懸濁させて50x106個細胞/mlとした。次に、Polytron ホモジナイザーを用いて細胞を破壊し、30,000xgで10分間遠心分離した。ペレットを6回洗浄し、−80℃で貯蔵した。
【0145】
結合検定:結合検定は、HEPES(50mM)、CaCl2(1mM)、MgCl2(5mM)、NaCl(150mM)及びBSA(0.5mg/ml)を含有する緩衝液pH7.2中で行った。ペレットを再懸濁させて8x106個細胞均等物/mlとし、50μlを、種々の濃度の化合物を含む130μlの緩衝液及び0.5mgのPEI処理されたコムギ胚芽凝集素で被覆されたシンチレーション近接ビーズ(Amersham)が入っているマイクロタイタープレートウェルに加えた。結合は、20μlの600pM125I−MIP−3β(New England Nuclear)の添加によって開始した。マイクロタイタープレートを混合後、ビーズを一晩沈降させた後、液体シンチレーションカウンターを加えた Microbeta(Wallac)で計数した。
【0146】
当該技術分野において理解されるように、ハイスループットスクリーニング法に応用可能な結合検定。
実施例2(in vitro 走化性検定):
適当なケモカインへのリンパ球及びPHA芽球走化性を、48ウェル Boyden チャンバー(Neuro Probe Inc., Cabin John, MD)を用いて測定した。アゴニストを、0.1%ウシ血清アルブミン(Invitrogen, Carlsbad, CA)を含有するRPMI培地(BioWhittaker, Walkersville, MD)中で希釈し、走化性チャンバーの底部ウェルに加えた。末梢単核血液細胞を、RPMI/BSA培地中に2.5x106個細胞/mlの濃度で再懸濁させた。次に、この細胞懸濁液から50μlを上方のチャンバーに加えた。10マイクログラム/mlのヒトIV型コラーゲン(Neuro Probe Inc.)を用いて底部を被覆した5μm PVP不含ポリカーボネートフィルターを用いて、チャンバーのウェルを隔てた。
【0147】
チャンバーを、5%CO2給湿雰囲気中において37℃で60分間インキュベートした。インキュベーション時間後、フィルターを取り出し、上側を掻き取って、非移動細胞を除去し、そしてフィルターを、Diff-Quik 染色を用いて染色した(Dade Behring AG,Dudingen, Switzerland)。PMBC細胞移動数は、光学顕微鏡によって計数した。次に、三つの強力なフィールドの平均を決定した。移動するPMBC細胞の数は、アゴニストを全く含有しないウェル中の強力なフィールドあたりの細胞数からこの数を差し引くことによって計算した。
【0148】
実施例3:
次の化合物を、CCR7へのMIP−3βの結合を阻害すると同定した。実施例1の結合検定において、それは、1.5μMのIC50値を与えた。
【0149】
【化1】

【0150】
実施例4:
次の化合物を、CCR7へのMIP−3βの結合を阻害すると同定した。実施例1の結合検定において、それは、2.2μMのIC50値を与えた。
【0151】
【化2】

【0152】
実施例5(カルシウム動態化検定):
T細胞芽球を、フラックス緩衝液(1X Hanks,10mM Hepes,1.6mM CaCl2,pH7.3)中に採取し、INDO−1−AM(20μg/ml)を37℃で30分間加え、フラックス緩衝液中で再度洗浄した。細胞(0.25x106個/mlフラックス緩衝液)を、蛍光計(fluorimager)(Photon Technology Inc., South Brunswick, NJ)中において37℃で絶えず撹拌されるキュベット中に入れた。SLC又はMIP−3βを用いて細胞を刺激し、カルシウムに関連する蛍光変化を記録した。次に、Ca+2イオンの細胞内濃度を決定した。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】図1は、組織中への白血球移動に関与する段階を概括的に示す。
【図2】図2は、SLC及びMIP−3βが、Hut−78細胞の強力なChemoattractantであることを示す。
【図3】図3は、SLC及びMIP−3βが、PHA活性ヒトT細胞の強力なChemoattractantであることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験化合物が、CCR7受容体への二次リンパケモカイン(SLC)又はマクロファージ炎症性タンパク質3β(MIP−3β)の結合に影響を与えるか否かを検出する、人体以外の動物モデルにおけるin vivoの方法であって:
(a)CCR7の試料とSLC又はMIP−3βとを接触させ、SLC又はMIP−3βのそれへの結合を測定し;
(b)同様のCCR7の試料と、SLC又はMIP−3β及び更に、一定量の該化合物とを接触させ、該CCR7への該SLC又はMIP−3βの結合を測定し;そして
(c)(a)及び(b)の結果を比較して、SLC又はMIP−3βの結合が該化合物の存在によって影響されるか否かを決定する
ことを含む方法。
【請求項2】
試験化合物が、SLC又はMIP−3βの結合に通常は依存するCCR7受容体の活性に影響を与えるか否かを決定する、人体以外の動物モデルにおけるin vivoの方法であって:
(a)CCR7の試料とSLC又はMIP−3βとを接触させ、該CCR7の得られた活性を測定し;
(b)同様のCCR7の試料とSLC又はMIP−3βとを、一定量の該化合物の存在下で接触させ、該得られたCCR7活性を測定し;そして
(c)(a)及び(b)の結果を比較して、CCR7のSLC依存性又はMIP−3β依存性活性が該化合物の存在によって影響されるか否かを決定する
工程を含む方法。
【請求項3】
試験化合物を、CCR7のSLC依存性又はMIP−3β依存性活性を妨げるアンタゴニストとして同定する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
試験化合物が、CCR7に特異的な抗体又は抗体フラグメントである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
試験化合物が、SLC又はMIP−3βに特異的な抗体又は抗体フラグメントである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
試験化合物が、CCR7のSLC依存性又はMIP−3β依存性活性を高めるアゴニストである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
CCR7のSLC依存性又はMIP−3β依存性活性が、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患、移植片拒絶、再灌流障害、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、コレセプター使用によって媒介される増加したHIV感染性、肉芽種性疾患、炎症関連感染、及び癌細胞の転移から成る群より選択される疾患状態と関連している、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記自己免疫疾患が、慢性関節リウマチ、I型糖尿病、狼瘡、炎症性腸疾患、原発性硬化性胆管炎、視神経炎、乾癬、多発性硬化症、多発性筋痛、ブドウ膜炎及び脈管炎から成る群より選択される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記炎症性疾患が、変形性関節症、成人呼吸窮迫症候群、幼児呼吸窮迫症候群、虚血性再灌流障害及び糸球体腎炎から成る群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記アレルギー性疾患が、喘息、アレルギー性鼻炎及びアトピー性皮膚炎から成る群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記拒絶される移植片が、その拒絶が慢性であれ急性であれ、器官又は組織移植片、又は細胞の移植片から成る群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記拒絶される移植片が異種移植片である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記肉芽種性疾患が、サルコイドーシス、らい病及び結核から成る群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記炎症関連感染が、肝炎、インフルエンザ及びギラン・バレーウイルス感染から成る群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
測定されるCCR7活性が、SLC又はMIP−3βに結合する能力である、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記CCR7が、哺乳動物細胞、その膜フラグメント又は脂質小胞の表面上に存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
CCR7受容体が、哺乳動物細胞の表面上に存在し、そしてCCR7によって媒介される該細胞のSLC依存性活性が、炎症部位への移動、抗原提示部位への移動、細胞活性化、細胞増殖、及びサイトカインの分泌から成る群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
CCR7受容体が、哺乳動物細胞の表面上に存在し、そしてCCR7によって媒介される該細胞のMIP−3β依存性活性が、炎症部位への移動、抗原提示部位への移動、細胞活性化、細胞増殖、及びサイトカインの分泌から成る群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
CCR7受容体が、哺乳動物細胞の表面上に存在し、そしてCCR7のSLC依存性又はMIP−3β依存性活性が、炎症部位への移動、抗原提示部位への移動、細胞活性化、細胞増殖、及びサイトカインの分泌から成る群より選択される該細胞への作用である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
CCR7のSLC依存性又はMIP−3β依存性活性が、慢性気管支炎、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、及びコレセプター使用によって媒介される増加したHIV感染性から成る群より選択される疾患状態と関連している、請求項2に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−17737(P2006−17737A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214761(P2005−214761)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【分割の表示】特願2002−125366(P2002−125366)の分割
【原出願日】平成14年4月26日(2002.4.26)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】