説明

Tb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体、及びその製造方法、並びに該蛍光体を用いたバックライト用蛍光ランプおよび液晶表示装置

【課題】寿命特性に優れたバックライト用蛍光体と、該蛍光体を用いた蛍光ランプ、及び画像表示装置を提供する。
【解決手段】波長170nm以上300nm以下の真空紫外線ないし紫外線により蛍光膜を発光させる蛍光ランプにおいて、
前記蛍光膜が、下記式[1]で表されるTb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体を含む
ことを特徴とする、バックライト用蛍光ランプ。
(LCeTb1−x―y3・zMgO・nAl23 ・・・ [1]
(ただし、前記式[1]中、Lは、La、Gd、およびYからなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、x、y、z、およびnは、それぞれ0<x<0.95、0≦y<0.95、0.1<z<4.0、および7≦nなる条件を満たす数である)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空紫外線ないし紫外線による励起下で、従来のTb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体に比べ同等以上の明るさを有しながら寿命特性に優れた、蛍光ランプ用Tb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体、およびその製造方法、並びに該蛍光体を含むバックライト用蛍光ランプ、及びカラー液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)に用いられるバックライトには、コストや省エネルギーの観点から、例えば、冷陰極蛍光ランプ(CCFL)や外部電極蛍光ランプ(EEFL)などの蛍光ランプが主として用いられている。これらバックライト用蛍光ランプは、省エネルギーのためにも明るさの向上が常に求められている。そのために最近では、蛍光ランプの低ガス圧化、高電流化の傾向が強まってきている。もともと管径の小さいバックライト用蛍光ランプは管壁負荷が高く、用いる蛍光体に対するダメージが大きく、それに加え蛍光ランプの低ガス圧化、高電流化は管壁負荷をさらに高めることになり、バックライト用蛍光ランプに用いる蛍光体としては、明るさのみならず寿命特性の高い蛍光体がより一層求められるようになってきている。
【0003】
従来、LCDに用いられるバックライト用蛍光ランプ(たとえば、CCFLやEEFL)用の緑色蛍光体としては、CeおよびTb共付活のリン酸ランタン蛍光体(以下、「LAP蛍光体」と称する場合がある。)や、EuおよびMn共付活のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体(以下、「BAM蛍光体」と称する場合がある。)が実用に供されてきた。しかし、LAP蛍光体は、輝度は高いものの、Tbの含有量が高いことによるコストの問題や、Tbの副発光の影響による色再現範囲の低下や残光時間が長いことによる動画性能の低下という多くの課題を抱えている。また、BAM蛍光体は広い色再現範囲を実現することができるが、輝度が低く残光時間が長いことに加え寿命が悪いなどの課題を抱えている。
【0004】
このように市場では、常に従来の蛍光体よりも安価で高輝度で寿命特性に優れたバックライト用蛍光ランプの開発が望まれており、従来の蛍光体よりTb含有量が少なくても高輝度の緑色発光を呈する、寿命特性に優れた蛍光体の開発が要望されている。
上述したLAP蛍光体やBAM蛍光体以外の紫外線励起により高輝度の緑色発光を呈するTb付活の蛍光体の1つとして、Tb付活のセリウム・マグネシウム・アルミン酸塩蛍光体(代表的な組成は、(Ce,Tb)MgAl1119で表される。以下、「CAT蛍光体」と称する場合がある。)が知られている。このCAT蛍光体はTb含有量が少ないにもかかわらず、LAP蛍光体と同等の明るさを得ることができるため、例えば、特許文献2等のように一般照明用蛍光ランプに用いられたり、特許文献4等のようにPDP用として検討されたりしている。
【0005】
上記のCAT蛍光体は、もともとTbを加えない場合にはCe由来の近紫外線(350nm付近)の発光をするが、これにTbを加えることでTbがCeからエネルギーを受け取って励起され、3価のTb由来の緑色波長域(540nm付近)の発光を呈する。そのため、このTb付活のセリウム・マグネシウム・アルミン酸塩系蛍光体が紫外線(特に170nm〜300nm)励起により高輝度の緑色発光を得るためには、3価のCeが吸収したエネルギーを効率よくTbに再吸収(すなわちエネルギー伝達)させる必要がある。
【0006】
CAT蛍光体に第3成分を追加してコストの節減や特性を向上させる技術として、特許
文献1〜3のように、CAT蛍光体においてエネルギーの吸収とTbへの伝達に重要な役割を果たすCeの一部をLaに置換したTb付活のランタン・セリウム・マグネシウム・アルミン酸塩系蛍光体(以下、「LAT蛍光体」と称する場合がある。)に関する技術が知られている。
【0007】
特許文献1は、CAT蛍光体を備えた蛍光スクリーンに関するものであり、CAT蛍光体のAlを増加させても大きな光束の低下がなく、費用の節約になるという技術に関するものである。Ceの一部をLaで置換できることが記載されている。
特許文献2には、254nmの紫外線で蛍光膜中の蛍光体を励起する一般的な照明用蛍光ランプ用緑色発光蛍光体として、(La0.2Ce0.5Tb0.3・MgO・7Al、(La0.2Ce0.5Tb0.3MgAl2846、(La0.2Ce0.5Tb0.3MgAl1628、(La0.2Ce0.5Tb0.3MgAl2034、(La0.2Ce0.5Tb0.3MgAl2440、(La0.2Ce0.5Tb0.3MgAl2846、(La0.2Ce0.5Tb0.3MgAl3252、(La0.7Ce0.2Tb0.1Mg0.5Al3657.5が例示され、その発光強度について検討がなされている。即ち、Al等の添加量を変化させた場合の発光強度の変化等の検討がなされており、また、La/(La+Ce)比が0.29と、0.78のTb付活のランタン・セリウム・マグネシウム・アルミン酸塩蛍光体が開示されている。そして、特許文献2には、一般的な照明用蛍光ランプにおいては、La/(La+Ce)比が0.29のLAT蛍光体が、従来のCAT蛍光体より明るいこと、及び、La/(La+Ce)比が0.78のLAT蛍光体が、従来のCAT蛍光体より発光強度が低いことが示されている。
【0008】
特許文献3は、CAT蛍光体を有する低圧水銀蒸気放電灯に関するものであり、セリウムの一部をランタンによって置換することができるとの記載がある。
また、特許文献4に、147nm、および172nmの真空紫外線で蛍光体を励起するガス放電装置用緑色発光蛍光体に関して、Mn共付活のCAT蛍光体のCeの一部をLaに置換することが記載されている。より具体的には、La/(La+Ce)比が0.846のMn共付活のLAT蛍光体{組成(La0.55Tb0.35Ce0.1)(Mg0.97Mn0.03)Al1119}が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭52−68084号公報
【特許文献2】特開平6−240252号公報
【特許文献3】特開昭50−61887号公報
【特許文献4】特開2005−89692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
CAT蛍光体は、寿命特性の点においてLAP蛍光体に劣るため、CAT蛍光体をバックライト用蛍光ランプに適用するには寿命特性を改善することが求められる。
しかしながら、特許文献1〜4に記載の蛍光体では、特にバックライト用蛍光体に用いる場合において、寿命特性の点で問題があった。
特許文献1〜3については、Ceの一部をLaで置換し得ることが記載されていたとしても、Laに置換する場合の具体的な組成と、寿命特性に関する検討はなされていない。特に、特許文献3には、Ceの一部をLaで置換することは、利点をもたらさないと記載されている。
【0011】
また、特許文献4に記載の蛍光体は、2価のMnに由来する緑色発光蛍光体であり、本
質的に本発明の蛍光体とは異なる蛍光体である。
そこで、本発明は、紫外線ないし真空紫外線励起下において、特にバックライト用蛍光ランプに用いられる蛍光体に関し、寿命特性の優れたTb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体、及び該蛍光体を用いたバックライト用蛍光ランプ、並びに該蛍光体を使用したカラー液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために、従来から知られているCAT蛍光体に着目し、蛍光体を構成する元素の種類やその組成比率等、例えばCeの一部をLa、Gd、Yで置換するなど、蛍光体の組成に関して広範囲にわたって検討し、その組成の違いによるベーキング劣化や冷陰極蛍光ランプとした時の蛍光ランプの寿命特性への影響について詳細に解析した。
【0013】
その結果、一般的な照明用蛍光ランプに用いるCAT蛍光体においては、紫外線のエネルギーを効率よく吸収しTbにエネルギー伝達させるのに必須であるセリウムの一部をLa、Gd、Yに置換したTb付活の希土類・セリウム・マグネシウム・アルミン酸塩蛍光体において、意外にもこの蛍光体を冷陰極蛍光ランプの蛍光膜として用いると、寿命特性の大幅な改善が図れるとの知見を得た。
【0014】
さらに、Tb付活の希土類・セリウム・マグネシウム・アルミン酸塩蛍光体において、Ba、Sr、Ca等のアルカリ土類金属元素の酸化物との複合酸化物とすることによっても、La、Gd、Y置換と同様のベーキング劣化改善効果があることを見出した。このベーキング劣化改善の理由は、Ba、Sr、Ca等は、Mgと同じ2価のアルカリ土類金属元素であるために、従来は結晶中のMgサイトを置換するものと考えられていたが、La、Gd、Yの場合と同様に、Mgサイトでなく、Ce、Tbサイトを置換し、その結果と
して酸化されやすいCeの比率が相対的に小さくなるためと考えられる。
【0015】
本発明は、このような知見をもとになし得たものであり、以下を要旨とする。
(1)波長170nm以上300nm以下の真空紫外線ないし紫外線により蛍光膜を発光させる蛍光ランプにおいて、前記蛍光膜が、下記式[1]で表されるTb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体を含むことを特徴とする、バックライト用蛍光ランプ。
(LCeTb1−x―y3・zMgO・nAl23 ・・・ [1]
(ただし、前記式[1]中、Lは、La、Gd、およびYからなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、x、y、z、およびnは、それぞれ0<x<0.95、0≦y<0.95、0.1<z<4.0、および7≦nなる条件を満たす数である)
(2)前記バックライト用蛍光ランプの管壁負荷が0.03W/cm以上であることを特徴とする、(1)に記載のバックライト用蛍光ランプ。
(3)前記式[1]において、x、およびyが、0.35≦x/(x+y)≦0.75なる条件を満たす数であることを特徴とする、(1)、または(2)に記載のバックライト用蛍光ランプ。
(4)前記Tb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体の発光強度の1/10残光時間が7.1ms以下であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載のバックライト用蛍光ランプ。
(5)前記蛍光膜中に430nm以上470nm以下の波長域に発光ピークを有する青色系発光蛍光体を含むことを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載のバックライト用蛍光ランプ。
(6)前記蛍光膜中に600nm以上660nm以下の波長域に発光ピークを有する赤色系発光蛍光体を含むことを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載のバックライト用蛍光ランプ。
(7)蛍光ランプに用いる蛍光体であって、その化学組成が下記式[2]で表されること
を特徴とする、Tb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体。
(LCeTb1−x―y3・zMgO・nAl23 ・・・[2]
(ただし、前記式[2]中、Lは、La、Gd、およびYからなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、x、y、z、およびnは、それぞれ0<x<0.95、0≦y<0.95、0.1<z<4.0、7≦n、および0.35≦x/(x+y)≦0.75なる条件を満たす数である)
(8)発光強度の1/10残光時間が7.1ms以下であることを特徴とする、(7)に記載のTb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体。
(9)加熱によりセリウム(Ce)の酸化物に変わりうるCe化合物、加熱によりLの酸化物に変わりうるL化合物(ここで、Lはランタン(La)、ガドリニウム(Gd)、およびイットリウム(Y)からなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表す)、加熱によりテルビウム(Tb)の酸化物に変わりうるTb化合物、加熱によりマグネシウム(Mg)の酸化物に変わりうるMg化合物、及び加熱によりアルミニウム(Al)の酸化物に変わりうるAl化合物を混合し、焼成することを特徴とする、(7)、または(8)に記載のTb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体の製造方法。
(10)波長170nm以上300nm以下の真空紫外線ないし紫外線により蛍光膜を発光させる蛍光ランプにおいて、前記蛍光膜が、下記式[3]で表されるTb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体を含むことを特徴とする、バックライト用蛍光ランプ。
(L’x’Cey’Tb1−x’―y’3・mDO・z’MgO・n’Al23
・・・[3]
(ただし、前記式[3]中、L’はLa、Gd、およびYからなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、Dは、Ba、Sr、およびCaからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属元素を表し、x’、y’、m、z’、およびn’は、そ
れぞれ0≦x’<0.95、0≦y’<0.95、0<m<0.95、0.1<z’<4.0、および7≦n’なる条件を満たす数である)
【発明の効果】
【0016】
本発明の蛍光体は、ベーキングによる劣化が小さく、蛍光ランプ製造時における輝度低下を抑制することができ、また、寿命特性を大幅に向上することができる。
さらに、本発明の蛍光体は、従来のCAT蛍光体に比較して同等以上のランプ光束を有するものであるから、従来のCAT蛍光体に比較して同等以上のランプ光束を維持しながら、ランプ点灯時の光束の経時的な低下を抑制することができる。
【0017】
上記のような本発明の蛍光体は、バックライト用蛍光ランプに用いることができ、特に、管壁負荷の大きな真空紫外線の放射比率の高い蛍光ランプに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のLa置換率と加熱処理後の輝度維持率との相関を例示するグラフである。
【図2】Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のLa置換率と相対輝度との相関を例示するグラフである。
【図3】Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のLa置換率と該蛍光体を用いた緑色単色冷陰極蛍光ランプの光束との相関を例示するグラフである。
【図4】Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のLa置換率と該蛍光体を用いた緑色単色冷陰極蛍光ランプの光束維持率との相関を例示するグラフである。
【図5】Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のTb含有量と1/10残光時間との相関を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の特徴は、組成式(LCeTb1−x―y3・zMgO・nAl23
(ただし、式中、Lは、La、Gd、およびYからなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、x、y、z、およびnはそれぞれ0<x<0.95、0≦y<0.95、0.1<z<4.0、および7≦nなる条件を満たす数である)で表され、x=0であるCAT蛍光体において、セリウムの一部を特定の比率で希土類元素L(ただし、LはLa、Gd、およびYからなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表す。)で置き換えた緑色系発光のTb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体を開発したことにあり、これにより管壁負荷の大きなバックライト用蛍光ランプ、特に管壁負荷が0.03W/cm以上のバックライト用蛍光ランプに使用する際に、高光束で非常にすぐれた寿命特性が得られるというものである。
【0020】
[1.蛍光体]
(蛍光体の組成)
本発明の蛍光体は、バックライト用蛍光ランプに用いる蛍光体であって、その化学組成が下記式[2]で表されることを特徴とする、Tb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体である。
(LCeTb1−x―y3・zMgO・nAl23 ・・・[2]
(ただし、前記式[2]中、Lは、La、Gd、およびYからなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、x、y、z、およびnは、それぞれ0<x<0.95、0≦y<0.95、0.1<z<4.0、7≦n、および0.35≦x/(x+y)≦0.75なる条件を満たす数である)
前記式[2]において、Lは、La、Gd、およびYからなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素であるが、中でも、Laが好ましい。Laで置換すると、他の元素で置換した場合に比べ、172nmの真空紫外線及び254nmの紫外線で励起したときの相対輝度及び緑単色冷陰極蛍光ランプの光束が特に高いからである。
【0021】
前記式[2]において、本発明の蛍光体の特性に影響を与えない範囲内でAlの一部が、Gaおよび/またはScにより置換されていてもよい。
前記式[2]において、xは、通常0より大きく、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上であり、また、通常0.95未満、好ましくは0.5以下である。
前記式[2]において、yは、通常0以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上であり、また、通常0.95未満、好ましくは0.6以下である。
【0022】
前記式[2]において、「1−x−y」(L+Ce+Tb中のTbの比率)は、通常0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上であり、また、通常0.95未満、好ましくは0.6以下より好ましくは0.45以下である。「1−x−y」が小さすぎても、大きすぎても、蛍光体の輝度が低下する傾向にあるためである。
前記式[2]において、zは、通常0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは1.1以上であり、また、通常4.0以下、好ましくは1.9以下、より好ましくは1.7以下である。zの値を化学量論組成である2.0以上とするとベーキング工程時の輝度低下が少なくなるので、短残光を求めない通常のCCFL用途には有効である。
【0023】
前記式[2]において、n{蛍光体におけるCe23、Tb23及びL23(ただし、LはLa、Gd、Yの中の少なくとも1種の希土類元素を表す)との総和に対するAl2
3の比率}は、通常7以上である。本発明の蛍光体では、化学量論組成からAl23
含有量を増加させても輝度の変化が小さいことに着目し、Al23の量を増加させることができる。一方で、このnの値が7未満であると、輝度特性が低下する傾向にある。nの値が11以上になると、結晶の形状が丸みを帯びて、塗布した際の蛍光膜の膜質を向上させることが容易になるため好ましく、一方、20を超えると、輝度が下がり始めるため、
発光輝度の点でn値としては、11≦n≦20がより好ましい。
【0024】
前記式[2]において、x/(x+y)は、通常0.35以上、好ましくは0.45以上であり、また、通常0.75以下、好ましくは0.65以下である。
本発明の蛍光体は、Mg/(L+Ce+Tb)(ただし、Lは、La、Gd、およびYからなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表す。)の値(即ち、前記式[2]における「z」の値と同義である。)が、化学量論組成である2.0より小さいことが好ましい。z値を2.0より小さくすると蛍光体の残光時間が短くなるので、動画特性が求められる液晶表示装置のバックライト用蛍光ランプに使用する際に特に有効であるからである。
【0025】
さらに、Tb量が少なくなると残光時間が短くなるので、優れた動画特性が求められる液晶表示装置用のバックライト用蛍光ランプにおいて所望される輝度と残光時間に応じて、組成式中の「x+y」の値(蛍光体中に含まれる希土類元素中のCe+Laの総モル比率)を、通常0.68以上、好ましくは0.7以上、また、通常0.95以下、好ましくは0.85以下、さらに好ましくは0.68以下とすることが好ましい。
【0026】
本発明のTb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体のMg量(z)、およびTb量(1−x−y)によって、残光時間および輝度特性は変わってくるが、いずれの場合においても、Ceの一部をL(ただし、LはLa、Gd、Yの中の少なくとも1種の希土類元素を表す)により特定の比率で置換することにより、寿命特性およびベーキング劣化を改善することができる。
【0027】
以下、後述の実施例、及び比較例の実験結果をもとに説明する。
本発明の好ましい態様である、組成式が(LaCeTb1−x―y3・zM
gO・nAl23で表されるTb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体を例に、この蛍光体のLaによるCeの置換率{x/(x+y)}と加熱処理後の輝度維持率との相関および254nmの紫外線および真空紫外線で励起した時の輝度との相関について検討した結果について示す。
【0028】
図1はTb含有量が0.66モル(1−x−y=0.33)、酸化マグネシウムの含有量が1.3モル(z=1.3)、酸化アルミニウムの含有量が13モル(n=13)である、Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体{(LaCeTb0.333・1.3MgO・13Al23}とTb含有量が0.50モル(1−x−
y=0.25)、酸化マグネシウムの含有量が0.4モル(z=0.4)、酸化アルミニウムの含有量が13モル(n=13)である、Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体{(LaCeTb0.253・0.4MgO・13Al23
}を例に、この蛍光体のLaによるCeの置換率{x/(x+y)}をパラメーターとして、この蛍光体の加熱処理後の輝度維持率との関係を例示したグラフである。図1において縦軸の輝度維持率とは、800℃で20分間加熱処理した後の発光輝度を該加熱処理が施される前の発光輝度に対する相対値で示した値である。横軸は該蛍光体のLaによるCeの置換率{x/(x+y)}である。また、図1中のAが{(LaCeTb0.333・1.3MgO・13Al23}の輝度維持率で、図1中のBが{(La
Tb0.253・0.4MgO・13Al23}の輝度維持率である。
【0029】
なお、この800℃で20分間の加熱処理後の輝度維持率は、蛍光ランプ製造工程、特に管曲げ工程を経る異形の蛍光ランプにおける管曲げ後の発光効率の良し悪しの尺度を示す評価量であり、この800℃で20分間の加熱処理後の輝度維持率が高いほど、蛍光ランプ、特に管曲げされた異形の蛍光ランプにおいても光束が高く、明るくて美しい映像が表示できることを意味する。
【0030】
図1からわかるように、Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体の800℃で20分間の加熱処理後の輝度維持率は、セリウムの一部をLaで置換する比率{x/(x+y)}が高く、つまりLa含有量(x)が多くなるほど高くなる。特に図1のBに例示した、Mg含有量(z)が小さいTb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体{(LaCeTb0.253・0.4MgO・13Al23
においては、セリウムの一部をLaで置換することによる輝度維持率の改善の効果が絶大である。
【0031】
図1には示していないが、イットリウム(Y)やガドリニウム(Gd)でTb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のセリウム(Ce)を置換したTb付活イットリウム・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体あるいはTb付活ガドリニウム・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体の800℃で20分間の加熱処理後の輝度維持率は、ランタン(La)同様、イットリウム(Y)あるいはガドリニウム(Gd)でのセリウム(Ce)の置換率が高くなるほど高くなり、その効果はMg含有量(z)が小さいセリウムの一部をL(ただし、LはLa、Gd、Yの中の少なくとも1種の希土類元素を表す)で置換したTb付活希土類・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体においては、輝度維持率の改善の効果が絶大である。
【0032】
ところで、加熱処理によるTb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体の輝度の低下は、Ceが酸化(Ceが酸化されると、Ce3+がCe4+となる。)されることに由来するものである。そのため、Tb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のCeの一部を安定なLaに置換することで、酸化劣化の防止が可能になり、加熱処理による輝度の低下を防止できるものと考えられる。
【0033】
加熱処理後の輝度維持率は、先にも記載したように、蛍光ランプの発光効率の良し悪しの尺度を示す評価量で、この加熱処理後の輝度維持率が高いほど、蛍光ランプにおいても光束が高く、明るくて美しい映像が表示できる。このような加熱処理後の輝度維持率の観点からはTb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のセリウムの一部をLaで置換する比率{x/(x+y)}は0.35以上であることが望ましい。
【0034】
図2は、Tb含有量が0.66モル(1−x−y=0.33)、酸化マグネシウムの含有量が1.3モル(z=1.3)、酸化アルミニウムの含有量が13モル(n=13)である、Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体{(LaCeTb0.333・1.3MgO・13Al23}を例に、この蛍光体のLaによるCe
の置換率{x/(x+y)}をパラメーターとして、254nmの紫外線で励起した時の相対輝度との関係および172nmの真空紫外線で励起した時の相対輝度との関係を例示したグラフである。図2において縦軸は相対輝度であり、横軸は、該蛍光体のLaによるCeの置換率{x/(x+y)}である。また、図2中のAが254nmの紫外線で励起した時の相対輝度で、図2中のBが172nmの真空紫外線で励起した時の相対輝度である。
【0035】
なお、以下に示す254nmの紫外線および172nmの真空紫外線で励起した時の相対輝度とは、それぞれ組成式が(La0.55Ce0.30Tb0.15PO)で表される蛍光ランプ用緑色蛍光体(LAP蛍光体;後述の比較例1の蛍光体である。)の発光輝度(発光スペクトルのピーク波長が543nm)を100としたときの各蛍光体の発光輝度の相対値である。
【0036】
図2のAからわかるように、Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体の254nmの紫外線で励起した時の相対輝度は、セリウムの一部をLaで置換する比
率{x/(x+y)}が高く、つまりLa含有量(x)が多くなるほど低くなる。254nmの紫外線で励起したときの輝度は、La置換率が{x/(x+y)}が0.85以下ではその低下が緩やかであるが、0.85を超えると輝度は急激に低下する。
【0037】
ところで、254nmの紫外線で励起する場合、Tb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体はCeからエネルギー伝達された3価のTbが緑色の発光を呈する。一般にCeとTbで共付活された蛍光体を254nmの紫外線で励起する場合には、254nmの紫外線のエネルギーを吸収するCeの濃度が少なくなると輝度が低下する。しかし本発明のTb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体では、Ceの含有量を低下させると輝度は低下するものの、驚くべきことにその低下率は小さい。図2には示していないが、Laに類似したイットリウム(Y)やガドリニウム(Gd)でTb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のセリウム(Ce)を置換したTb付活イットリウム・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体あるいはTb付活ガドリニウム・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体を254nmの紫外線で励起する場合には、Ceの含有量を低下させると輝度は低下するものの、La置換した本発明の蛍光体ほどではないが、その低下率は小さい。つまりCeを置換したL(ただし、LはLa、Gd、Yの中の少なくとも1種の希土類元素を表す)がTbへのエネルギー伝達の役割を果たすことは、予想できない驚くべき効果である。
【0038】
図2のBからわかるように、Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体の172nmの真空紫外線で励起した時の相対輝度は、セリウムの一部をLaで置換する比率{x/(x+y)}が高く、つまりLa含有量(x)が多くなるほど高くなる。
ところで、172nmの真空紫外線で励起する場合、Tb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体は、3価のTbが直接励起され緑色の発光を呈する。そのため一般にTbで付活された蛍光体を172nmの真空紫外線で励起する場合には、Ceの有無にかかわらずCeとTbで共付活された蛍光体と同程度の輝度の緑色の発光を呈するものと考えられる。
【0039】
本発明のセリウムの一部をLa(ランタン)で置換したCeの含有量が少ないTb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体において、172nmの真空紫外線で励起した場合の輝度は大きく低下せず、逆にLaの含有量を増加させると輝度が高くなることは驚くべきことである。図2には示していないが、イットリウム(Y)やガドリニウム(Gd)でTb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のセリウム(Ce)を置換したTb付活イットリウム・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体あるいはTb付活ガドリニウム・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体を172nmの真空紫外線で励起する場合には、イットリウム(Y)あるいはガドリニウム(Gd)でのセリウム(Ce)の置換率が高くなると輝度はやや低下することから、LaによるCeの置換による172nm真空紫外線で励起したときの輝度の向上は、La置換特有の現象であり、予想できない驚くべき効果である。
【0040】
つまり、前記式[2]で表されるTb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体は、セリウムの一部をL(ただし、Lは、La、Gd、Yの中の少なくとも1種の希土類元素を表す)により特定の比率で置き換えたものであり、これにより、254nmの紫外線で励起したときの輝度をほぼ維持しながら、加熱処理後の輝度維持率高めることができる。前記式[2]中のx/(x+y)の比率を0.35よりも小さくすると、L(ただし、Lは、La、Gd、Yの中の少なくとも1種の希土類元素を表す)での置換の効果が不十分な傾向にあり、加熱処理後の輝度維持率の向上が見られにくく、一方、x/(x+y)の比率を0.75より大きくすると、254nmの紫外線で励起したときの輝度が大幅に低下してしまう傾向にある。
【0041】
つまり、本発明のTb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のセリウムの一部をL(ただし、LはLa、Gd、Yの中の少なくとも1種の希土類元素を表す)で置換する比率{x/(x+y)}は、通常0.35〜0.75、好ましくは0.4〜0.7、より好ましくは0.45〜0.65である。
また、セリウムの一部をLaで置換したTb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体ではLaで特定の比率置き換えると172nmの真空紫外線で励起したときの輝度を大幅に高めることができる。
【0042】
次に、本発明のもう一つの好ましい態様である、組成式が(LCeTb1−x―y3・zMgO・nAl23(ただし、組成式中、LはLa、Gd、Yの中の少なく
とも1種の希土類元素を表す)で表されるTb付活希土類・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体を例に、この蛍光体を172nmの真空紫外線で励起した時の残光時間と該蛍光体のMg含有量(z)およびTb含有量(1−x−y)との相関について検討した結果について説明する。
【0043】
図5は、Ce含有量が0.6モル(y=0.3)、酸化アルミニウムの含有量が13モル(n=13)である、Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体{(LaCe0.3Tb0.7−x3・zMgO・13Al23}を例に、この蛍光
体のTb含有量(1−x−y)をパラメーターとして、該蛍光体を172nmの真空紫外線で励起した時の輝度の1/10残光時間との関係を例示したグラフである。図5において、縦軸の1/10残光時間とは、該蛍光体を172nmの真空紫外線で励起した時の輝度が、前記172nmの真空紫外線を遮断した直後からその輝度が1/10になるまでの時間である。横軸は、該蛍光体のTb含有量(1−x−y)である。また、図5のAが{(LaCe0.30Tb0.7-x3・1.3MgO・13Al23}の1/10残光時間であり、また、図5のBが{(LaCe0.30Tb0.7-x3・0.8MgO・13Al23}の1/10残光時間であり、また、図5のCが{(LaCe0.30Tb0.7-x3・0.4MgO・13Al23}の1/10残光時間である。
【0044】
なお、この1/10残光時間は、その蛍光体の応答特性、あるいはLCDにおける動画特性の良し悪しの尺度を示す評価量で、この1/10残光時間が短いほど、残像感や輪郭のぼけが低減された明るくて美しい映像、特に激しい動きのある映像が表示できることを意味する。
図5からからわかるように、Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のTb含有量が少なくなると、1/10残光時間は短くなる傾向にある。さらに図5のA、BおよびCから明らかなように、Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のMg含有量が少なくなると、1/10残光時間は短くなる。Mg含有量を少なくした場合の1/10残光時間短縮効果は、Tb含有量を少なくした場合に比べより顕著であることがわかる。
【0045】
なお図5には示していないが、Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のTb含有量を一定にして、Ce含有量とLa含有量の比率を変更しても1/10残光時間は変化しない。このことから、本発明のTb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体は、Tb含有量(1−x−y)およびMg含有量(z)が少なくなると1/10残光時間が短くなる。
【0046】
図5には示していないが、イットリウム(Y)やガドリニウム(Gd)でTb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のセリウム(Ce)を置換したTb付活イットリウム・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体{(Y0.45Ce0.30Tb0.253・0.8MgO・13Al23}あるいはTb付活ガドリニウム・セリウムアルミン
酸マグネシウム蛍光体{(Gd0.45Ce0.30Tb0.253・0.8Mg
O・13Al23}の1/10残光時間はいずれも5.9msと短くなっている。
【0047】
(式[3]で表される蛍光体)
本発明の蛍光体は、下記式[3]で表される組成を有していてもよい。
(L’x’Cey’Tb1−x’―y’3・mDO・z’MgO・n’Al23
・・・[3]
(ただし、前記式[3]において、L’は、La、Gd、およびYからなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、Dは、Ba、Sr、およびCaからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属元素を表す。また、x’、y’、m、z’、お
よびn’は、それぞれ0≦x’<0.95、0≦y’<0.95、0<m<0.95、0.1<z’<4.0および7≦n’なる条件を満たす数である。)
なお、前記式[3]で表される蛍光体は、下記式[4]で表すこともできる。
(L’’x’’Cey’’m’Tb1−x’’―y’’-m’(3−m’)・z
’’MgO・n’’Al23 ・・・[4]
(ただし、前記式[4]において、L’’は、La、Gd、およびYからなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、D’は、Ba、Sr、およびCaからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属元素を表す。また、x’’、y’’、m’
、z’’、およびn’’は、それぞれ0≦x’’<0.95、0≦y’’<0.95、0<m’<0.95、0.1<z’’<4.0および7≦n’’なる条件を満たす数である。)
ここで、前記式[3]におけるD、および前記式[4]におけるD’は、いずれも発光輝度の面からはBaが好ましい。また、前記式[3]におけるm、および前記式[4]におけるm’は、いずれも通常0より大きく、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上であり、また、通常0.95未満、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.07以下である。
【0048】
本発明の前記式[3]または[4]で表される蛍光体は、前記式[1]または[2]で表される蛍光体と同様の特性を有し、寿命特性の良好な蛍光体である。
(蛍光体の特性)
本発明の蛍光体は、緑色系に発光する。より具体的には、紫外領域の波長の光(例えば、254nm)を照射した場合に、発光ピーク波長が、通常520nm以上、好ましくは540nm以上、また、通常570nm以下、好ましくは550nm以下の範囲である。
【0049】
本発明の蛍光体は、通常170nm以上、好ましくは180nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは280nm以下の範囲の光で励起することができる。
本発明の蛍光体の粒径は、特に限定されないが、本発明のバックライト用蛍光ランプの蛍光膜などに適用する場合には、取り扱いや色の均一性の点から、FSSS粒度で1〜20程度の範囲から任意に選択すればよく、好ましくは2〜8である。
【0050】
本発明の蛍光体の残光時間は、バックライト用蛍光ランプの光束の1/10残光時間が3.7ms以下、好ましくは3.5ms以下であり、発光強度の1/10残光時間が7.1ms以下、好ましくは6.5ms以下である。なお、本明細書において、1/10残光時間とは、蛍光体に紫外線を照射して発光させて、該励起光を遮断した直後の発光強度が1/10の明るさに減衰するまでに要する時間である。
【0051】
(蛍光体の製造方法)
前記式[2]で表される本発明のTb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体の原料としては、以下のものを用いることができる。
(i) 酸化セリウム、または炭酸セリウム、硝酸セリウムなどの加熱によりセリウム(
Ce)の酸化物に変わりうるCe化合物、
(ii)酸化ランタン、または炭酸ランタン、硝酸ランタン、酸化ガドリニウム、または炭酸ガドリニウム、硝酸ガドリニウム、酸化イットリウム、炭酸イットリウム、硝酸イットリウムなどの加熱によりLの酸化物に変わりうるL化合物(ここでLはランタン(La)、ガドリニウム(Gd)、イットリウム(Y)の中の少なくとも1種の希土類元素を表す)、
(iii)酸化テルビウム、または炭酸テルビウム、硝酸テルビウム、塩化テルビウムなどの加熱によりテルビウム(Tb)の酸化物に変わりうるTb化合物、
(iv)酸化マグネシウム、または炭酸マグネシウムなどの加熱によりマグネシウム(Mg)の酸化物に変わりうるMg化合物、及び
(v)酸化アルミニウム、または硫酸アルミニウムなど加熱によりアルミニウム(Al)の酸化物に変わりうるAl化合物。
【0052】
上述した各原料化合物を、化学量論的に前記式[2]となる割合で混合し、得られた蛍光体原料混合物を、焼成することにより、本発明の蛍光体を製造することができる。
なお、本発明では、焼成に供される蛍光体原料化合物の混合物中に、公知のアルミン酸塩蛍光体を得る場合と同様に、反応促進のためにフッ化アルミニウムなどのフッ化物、ホウ酸、酸化ホウ素等をフラックスとして添加してもよい。
【0053】
すなわち、本発明の製造方法は、例えば、以下のような手順で行うことができる。1)上記のような原料を所定量秤取し、ボールミル、V型混合機などの混合手段により十分に混合して、蛍光体原料混合物を調製する。2)得られた蛍光体原料混合物をアルミナ坩堝等の耐熱容器に充填して、還元雰囲気において1400℃〜1600℃で、高温炉中において炉の昇降温に要する時間も含めて10時間〜26時間焼成する。3)得られた焼成物に、通常の蛍光体製造時に適用される後処理工程と同様の分散、洗浄、乾燥の諸処理を施す。
【0054】
なお、輝度の経時劣化抑制や寿命特性の向上などを目的とし、必要に応じて蛍光体表面を無機化合物や有機化合物からなる被覆物質により、コート処理することもできる。コート処理を行う場合は、洗浄後に行うと、表面洗浄時に剥離することもなく、乾燥時の凝集等の影響も受けにくいので好ましい。
コート処理の方法としては、特に限定されず、例えば、微粒子にしたコート物質を、被覆される蛍光体と混合し、乾燥させて付着させる方法、コート物質が被覆される蛍光体の表面に析出するよう、pH等の調整を行う方法、電位を利用して被覆される蛍光体の表面に吸着させる方法、あるいは別にバインダーとなる物質を混合して被覆する方法など、被覆される蛍光体とコート物質の特性に応じて任意に選択することができる。
【0055】
被覆物質の具体例としては、例えば酸化マグネシウム、酸化ランタン、酸化イットリウムなど、各種の酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩および希土類金属炭酸塩などの炭酸塩、水酸化イットリウム等の水酸化物などが挙げられるが、中でも、特許4199530号に記載された希土類金属の炭酸塩による被覆が、ランプ用として用いる場合、寿命の改善効果が大きい点で、好ましい。
【0056】
希土類炭酸塩の炭酸塩として好ましいのは、炭酸イットリウム、炭酸ランタンなどであり、また、被覆量は蛍光体に対し0.05重量%〜5重量%とすることが望ましい。
[2.蛍光ランプ]
本発明の蛍光ランプは、波長170nm以上300nm以下の真空紫外線ないし紫外線により前記蛍光膜を発光させる蛍光ランプにおいて、前記蛍光膜が、下記式[1]で表されるTb付活希土類アルミン酸マグネシウ蛍光体を含むことを特徴とする。
(LCeTb1−x―y3・zMgO・nAl23 ・・・ [1]
(ただし、前記式[1]中、Lは、La、Gd、およびYからなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、x、y、z、およびnは、それぞれ0<x<0.95、0≦y<0.95、0.1<z<4.0、および7≦nなる条件を満たす数である)
本発明の蛍光ランプは、光に対して透明な管状の外囲器の内側に蛍光膜を形成すると共に、該外囲器に希ガスあるいは水銀を封入してなることが好ましい。
【0057】
(励起源)
本発明の蛍光ランプの励起源は、真空紫外線ないし紫外線であり、具体的には、通常170nm以上、好ましくは180nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは280nm以下の真空紫外線ないし紫外線である。
励起源としては、通常、水銀、および/または希ガスの放電が用いられる。
【0058】
(蛍光体)
本発明の蛍光ランプが備える蛍光体は、前記式[1]で表される組成を有するものであり、前記式[2]で表される組成を有するものであることが好ましい。各元素の説明、及びx、y、z、およびnの説明は、前述の[1.蛍光体]の項でした説明が援用される。
なお、前記式[1]で表される組成を有する蛍光体に代え、あるいは加えて、前記式[3]または[4]で表される組成を有する蛍光体を用いることもできる。
【0059】
(管壁負荷)
本発明の蛍光ランプは、バックライト用であり、その管壁負荷が、通常0.03W/cm以上、好ましくは0.10W/cm以上、より好ましくは0.20W/cm以上であり、また、通常0.50W/cm以下である。本発明の蛍光体は、このように管壁負荷の高い蛍光ランプに用いて好適である。
【0060】
(蛍光ランプの特性)
前記の本発明の蛍光体をバックライト用蛍光ランプの蛍光膜として使用する場合、色温度の高いバックライト用蛍光ランプでは青色の発光成分の比率が比較的高いためにバックライト用蛍光ランプの特性は緑色蛍光体よりむしろ青色蛍光体によって決定され、逆に色温度の低い冷陰極蛍光ランプでは赤色の発光成分の比率が高いためにバックライト用蛍光ランプの特性は緑色蛍光体よりむしろ赤色蛍光体によって決定される。そのため、白色に占める青色の発光成分の比率が比較的高い色温度の高いバックライト用蛍光ランプや、白色に占める赤色の発光成分の比率が比較的高い色温度の低いバックライト用蛍光ランプでは緑色蛍光体の効果を充分発揮することが出来ない傾向にある。
【0061】
従って、本発明の蛍光体を用いるバックライト用蛍光ランプとしては、本発明の冷陰極蛍光ランプの中でも、例えば、発光色のCIE表色系の発光色度がx=0.23〜0.35、y=0.18〜0.35である冷陰極蛍光ランプに用いることが、得られる冷陰極蛍光ランプの残光時間の点で特に好ましい。
また、本発明のバックライト用蛍光ランプを本発明の液晶表示装置のバックライトとして使用する場合、従来から使用されているバックライト用蛍光ランプを用いた場合より長寿命で、明るく鮮やかな映像を再現することができ、さらに残像感や輪郭のぼやけを低減した応答特性の速い液晶表示装置が得られる。本発明のバックライト用蛍光ランプの中でも、発光色のCIE表色系の発光色度がx=0.23〜0.35、y=0.18〜0.35であるバックライト用蛍光ランプを液晶表示装置に用いるとその効果を充分発揮することができる。
【0062】
以下、本発明の好ましい態様である、組成式が(LaCeTb1−x―y3
・zMgO・nAl23で表されるTb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体を例に、この蛍光体のLaによるCeの置換率{x/(x+y)}と該蛍光体を蛍
光膜とした緑色発光の単色冷陰極蛍光ランプの光束、および光束維持率との相関について検討した結果について説明する。
【0063】
なお、本発明の蛍光ランプは、希ガスあるいは水銀の放電により紫外線あるいは真空紫外線を放射し、放射された紫外線あるいは真空紫外線により蛍光膜を形成する蛍光体を励起させ可視光を得るものであることが好ましい。蛍光ランプにおいて放射される紫外線と真空紫外線の比率は蛍光ランプの管壁負荷により変化し、管壁負荷の高い蛍光ランプ、例えばバックライト用蛍光ランプなどでは真空紫外線の比率が高くなる。
【0064】
管壁負荷の高いバックライト用蛍光ランプにおいては、使用するTb付活希土類・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体は、紫外線で励起したときの輝度が高いことに加え、真空紫外線で励起したときの輝度が高いことも重要である。その観点から、Ceを置換する希土類元素としてはLaが望ましく、Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のセリウムの一部をLaで置換する比率{x/(x+y)}は、0.35〜0.75が望ましい。
【0065】
図3は、Tb含有量が0.66モル(1−x−y=0.33)、酸化マグネシウムの含有量が1.3モル(z=1.3)、酸化アルミニウムの含有量が13モル(n=13)である、Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体{(LaCeTb0.333・1.3MgO・13Al23}とTb含有量が0.66モル(1−x
−y=0.33)、酸化マグネシウムの含有量が2モル(z=2)、酸化アルミニウムの含有量が13モル(n=13)である、Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体{(LaCeTb0.333・2MgO・13Al23}を例に、
この蛍光体のLaによるCeの置換率{x/(x+y)}をパラメーターとして、該蛍光体を蛍光膜とした緑色発光の単色冷陰極蛍光ランプの相対光束との関係を例示したグラフである。図3において縦軸は相対光束であり、横軸は、該冷陰極ランプの蛍光膜に含まれるTb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のLaによるCeの置換率{x/(x+y)}である。また、図3中のAが{(LaCeTb0.333
・1.3MgO・13Al23}の相対光束で、図3中のBが{(LaCeTb0.333・2MgO・13Al23}の相対光束である。
【0066】
なお、以下に示す相対光束とは、組成式が(La0.55Ce0.30Tb0.15PO)で表される蛍光ランプ用緑色蛍光体(後述する比較例1のLAP蛍光体)を蛍光膜とした緑色発光の単色冷陰極蛍光ランプの光束を100としたときの各冷陰極蛍光ランプの光束の相対値である。
図3のAからわかるように、Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体を蛍光膜とした緑色発光の単色冷陰極蛍光ランプの相対光束は、セリウムの一部をLaで置換する比率{x/(x+y)}を高く、つまりLa含有量(x)が多くなっても、{x/(x+y)}が0〜0.55の範囲で光束が同等であり、La置換率が{x/(x+y)}が0.55を超えると相対光束は緩やかに低下し、0.85を超えると急激に低下する傾向にある。
【0067】
本発明の希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体においてはCeの一部をLaにより置換すると、紫外線(254nm)での励起効率は僅かに低下するものの、真空紫外線(185nm)での励起効率が大幅に高まるので、紫外線(254nm)が主体である一般照明用ランプの場合に光束が低下してしまうのと異なり、放射される真空紫外線の比率が高いバックライト用蛍光ランプでは、より蛍光ランプの光束が低下しないものと考えられる。
【0068】
冷陰極蛍光ランプにおいて、254nmのみの紫外線が蛍光膜を構成する蛍光体を励起するのであれば、図2のAから容易に推定できるように、冷陰極蛍光ランプに光束はさら
に低下するはずであるが、図3のAから明らかなように、冷陰極蛍光ランプの相対光束は蛍光体の輝度低下した分ほど光束の低下はない。図3に示したLa置換率による冷陰極蛍光ランプの相対光束の変化と図1に示したLa置換率による254nmの紫外線および、172nmの真空紫外線で励起したときの希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体の相対輝度の変化から、冷陰極蛍光ランプにおいて185nmの真空紫外線の光束への寄与が大きいことが明らかである。つまり、冷陰極蛍光ランプのような管壁負荷の高いバックライト用蛍光ランプにおいては、185nmの真空紫外線の比率がより高くなるので、今回、図3で示した冷陰極蛍光ランプの相対光束の変化が低くても、管壁負荷が高いバックライト用蛍光ランプでは185nmの真空紫外線の比率が高くなり、La置換率の高い希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体を用いたバックライト用蛍光ランプにおいて光束がアップすることは言うまでもない。
【0069】
図3のBからわかるように、Mg含有量(z)の多いTb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体を蛍光膜とした緑色発光の単色冷陰極蛍光ランプの相対光束においても同様に、セリウムの一部をLaで置換する比率{x/(x+y)}が0〜0.55の範囲で光束がほぼ同等であることがわかる。また図3のAとBを比較すると明らかなように、Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体を蛍光膜とした緑色発光の単色冷陰極蛍光ランプの相対光束は、Mg含有量(z)の少ないTb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体を蛍光膜に用いることにより、より高い光束が得られることがわかる。
【0070】
図4は、Tb含有量が0.66モル(1−x−y=0.33)、酸化マグネシウムの含有量が1.3モル(z=1.3)、酸化アルミニウムの含有量が13モル(n=13)である、Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体{(LaCeTb0.333・1.3MgO・13Al23}とTb含有量が0.66モル(1−x
−y=0.33)、酸化マグネシウムの含有量が2モル(z=2)、酸化アルミニウムの含有量が13モル(n=13)である、Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体{(LaCeTb0.333・2MgO・13Al23}を例に、
この蛍光体のLaによるCeの置換率{x/(x+y)}をパラメーターとして、該蛍光体を蛍光膜とした緑色発光の単色冷陰極蛍光ランプの光束維持率との関係を例示したグラフである。図4において、縦軸の光束維持率とは、冷陰極ランプ作製後3時間のエージング点灯を行った時点を0時間として、その後500時間の連続点灯を行った後の光束を該冷陰極蛍光ランプの0時間における光束に対する相対値で示した値である。横軸は、該冷陰極ランプの蛍光膜に含まれるTb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のLaによるCeの置換率{x/(x+y)}である。また、図4中のAが{(LaCeTb0.333・1.3MgO・13Al23}の光束維持率であり、図4
中のBが{(LaCeTb0.333・2MgO・13Al23}の光束維持
率である。
【0071】
図4のAからからわかるように、Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のセリウムの一部をLaで置換する比率{x/(x+y)}を高く(即ち、La含有量(x)が多く)していくと、光束維持率は、La置換率{x/(x+y)}が0.7になるまで向上し、0.7を超えると光束維持率はやや低下する傾向にあるが、{x/(x+y)}が0.3〜0.85の範囲では、CeをLaで置換していないTb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体の光束維持率より高くなっている。La置換率が{x/(x+y)}が0.85を超えると光束維持率は低下する。
【0072】
次に説明する図4のBと比べると、Tb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のセリウムの一部をLaで置換することによる光束維持率の改善効果は、Tb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のMg含有量(z)により大きく変化することがわかる。
特に図4のAに例示した、Mg含有量(z)が小さいTb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体においては、セリウムの一部をLaで置換することによる光束維持率の改善の効果が絶大である。
【0073】
Tb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体を蛍光膜とした緑色発光の単色冷陰極蛍光ランプの光束維持率の低下は、加熱処理によるTb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体の輝度の低下と同じく、Ceが酸化(Ce3+⇒Ce4+)されることに由来するものである。そのためTb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のCeの一部を安定なLaに置換することで、酸化劣化の防止が可能になり、ランプ点灯中の経時的な光束の低下を防止できるものと考えられる。
【0074】
蛍光ランプ製造工程におけるベーキング工程や蛍光ランプの長時間点灯による光束低下は、ともにTb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のCeが酸化(Ce3+⇒Ce4+)されることに由来するものである。この蛍光体の加熱処理後の輝度維持率と蛍光ランプの長時間点灯による光束維持率は、それぞれ別の事象で生ずる現象に思われるが、その由来するところはTb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体中のCe3+の酸化であり、加熱処理による輝度維持率は蛍光ランプの長時間点灯における光束維持率の良し悪しの尺度を示す評価量でもある。
【0075】
一方、図4のBから明らかなように、Mg含有量(z)が大きいTb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体{(LaCeTb0.333・2.0M
gO・13Al23}においても、セリウムの一部をLaで置換する、つまり比率{x/(x+y)}を高めることにより、光束維持率はLa置換しないTb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体と同等かやや高くなる。Mg含有量(z)が大きいTb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体の光束維持率は、高い光束維持率であるので、Ceの一部をLaで置換する効果が圧縮されてしまう。バックライト用蛍光ランプのような高負荷蛍光ランプでは、管壁負荷が高くなると、より蛍光体のダメージが大きくなるので、Mg含有量が高くてもCeの一部をLaで置換することにより、高負荷の蛍光ランプでは図4のAに示したと同様の寿命の改善が可能となる。
【0076】
図4には示していないが、イットリウム(Y)やガドリニウム(Gd)でTb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のセリウム(Ce)を置換したTb付活イットリウム・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体{(YCeTb0.333・1.3
MgO・13Al23}あるいはTb付活ガドリニウム・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体{(GdCeTb0.333・1.3MgO・13Al23}を蛍光
膜とした緑色発光の単色冷陰極蛍光ランプの光束維持率は、Tb付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のセリウムの一部をYやGdで置換する比率{x/(x+y)}、つまり、YやGdの含有量(x)が0.3〜0.85の範囲ではTb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体{(Ce0.67Tb0.333・1.3MgO
・13Al23}の光束維持率より高くなっている。
【0077】
つまり、前記組成式で表されるTb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体は、セリウムの一部をL(ただし、LはLa、Gd、Yの中の少なくとも1種の希土類元素を表す)により特定の比率で置き換えると、バックライト用蛍光ランプの光束維持率を大幅に高めることができる。前記式[1]中のx/(x+y)の比率を0.3よりも小さくすると、La置換の効果が不十分となる傾向であり、寿命特性の向上が見られにくく、一方、x/(x+y)の比率を0.85より大きくすると、ランプ光束の低下が大きくなってしまう。つまり、前記Lで置換することの効果が得られるようなTb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のセリウムの一部をLで置換する比率は、0.3〜0.85であり、好ましくは0.35〜0.75、さらに好ましくは0.4〜0.7、より好ましくは0.
45〜0.65である。
【0078】
また、セリウムの一部をLaで置換したTb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体ではLaで特定の比率置き換えると、バックライト用蛍光ランプ、特に管壁負荷の高いバックライト用蛍光ランプ、より好ましくは完璧負荷が0.03W/cm以上のバックライト用蛍光ランプの光束を高めることができる。
さらに、前記式[1]で表されるTb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体の、蛍光体中の希土類(Ce+Tb+La)に対するMg量の比率zは、0.1から4.0をとりうるが、Mg/(La+Ce+La)(z値)を化学量論組成の2.0より小さくすることによりランプ光束を高めることができる。しかも、La置換による寿命改善効果がより顕著になることから、Mg/(La+Ce+La)(z値)は、より好ましくは0.2〜1.9、さらに好ましくは1.1〜1.7である。
【0079】
なお、従来のCAT蛍光体の組成は、前記式[1]におけるx値が0であり、y値は任意であり、z値は2であり、n値は11である。
蛍光ランプの製造工程におけるベーキング工程や蛍光ランプの長時間点灯による光束低下は、Ceが酸化(Ce3+⇒Ce4+)されることに由来するものである。本発明の希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体はCeの一部を安定なLaやYやGdにより置換することにより、酸化劣化の防止が可能になり、ベーキング劣化や長時間点灯による光束の低下を防止できる。更に、Laによる置換では、紫外線(254nm)での励起効率は僅かに低下するが、真空紫外線(185nm)での励起効率を大幅に高めることができるので、一般の照明用蛍光ランプとは異なり、放射される真空紫外線の比率が高いバックライト用蛍光ランプでは、蛍光ランプの光束が低下しないものと考えられる。
【0080】
本発明のTb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体を用いるバックライト用蛍光ランプとしては、放射される真空紫外線の比率が高くかつ蛍光体に対するダメージがより大きく蛍光体の耐性がより求められる管壁負荷が0.03W/cm以上であるバックライト用蛍光ランプが特に有効である。
その観点から、適用するバックライト用蛍光ランプの管壁負荷に応じて放射される真空紫外線の比率が変化することから、前記式[1]中のx/(x+y)の比は、より好ましくは0.4〜0.7、更に好ましくは0.45〜0.65である。
【0081】
(蛍光ランプの製造方法)
本発明の冷陰極蛍光ランプは、波長170nm〜300nmの真空紫外線ないし紫外線により前記蛍光膜を発光させるものであり、ガラス管の内壁に形成される蛍光膜が前記式[1]で表される蛍光体を含有すること以外は従来のバックライト用蛍光ランプと同様にして製造される。
【0082】
すなわち、本発明のTb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体に、必要に応じて他色の蛍光体を加え、例えば、低融点ガラス粉末、微粒子金属酸化物、あるいは微粒子金属硼酸塩または燐酸塩等の結着剤とともに水または酢酸ブチル、イソプロピルアルコール等有機溶媒の溶媒中にポリエチレンオキサイド、ニトロセルロースなどのバインダーとともに分散させてなる蛍光体塗布スラリーを調製する。得られたスラリーを光透過性の細管中に吸い上げて、管の内壁に塗布した後、温風などで乾燥させ蛍光膜を形成した後、これをベーキングしてから管内にアルゴン - ネオン、あるいはキセノンなどの希ガス、あるい
は水銀を封入してから管の両端を封ずることによって製造される。電極は従来のバックライト用蛍光ランプと同様に管の両端または管表面に取り付けられる。
【0083】
上述のように製造された本発明のバックライト用蛍光ランプ、特に管壁負荷が高いバックライト用蛍光ランプにおいては、高輝度で継続して点灯しても経時的に高輝度を維持す
ることができる。
(蛍光体の組み合わせ)
本発明の緑色蛍光体を本発明の冷陰極蛍光ランプの蛍光膜に使用する場合、蛍光膜にこれと同時に使用する青色蛍光体として、430nm〜470nmの波長域に発光ピークを有する青色系発光蛍光体を用いると、明るくて液晶表示装置のバックライトとして使用した時に色再現範囲の広いバックライト用蛍光ランプが得られる。特に、青色蛍光体としてはEu付活アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体、あるいはEu付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体との組み合わせは、高い光束が得られ、継続して点灯しても経時的に高輝度を維持することができる。さらに、該青色蛍光体の1/10残光時間が1.0ms以下であることがら残光時間の短いバックライト用蛍光ランプが得られ、本発明の緑色蛍光体を用いる効果が絶大となる。なお、青色蛍光体として当然これらの蛍光体を混合して組み合わせてもよい。
【0084】
さらに、本発明の緑色蛍光体を本発明の冷陰極蛍光ランプの蛍光膜に使用する場合、蛍光膜にこれと同時に使用する赤色蛍光体として、600nm〜660nmの波長域に発光ピークを有する赤色系発光蛍光体を用いると、明るくて液晶表示装置のバックライトとして使用した時に色再現範囲の広いバックライト用蛍光ランプが得られる。特に、赤色蛍光体としては、Eu3+付活希土類酸化物蛍光体、Eu3+付活希土類バナジン酸塩蛍光体、Eu3+付活希土類燐バナジン酸塩蛍光体、及びMn4+付活マグネシウムフロロゲルマン酸塩蛍光体からなる群から選ばれる少なくとも一種との組み合わせは、高い光束が得られ、継続して点灯しても経時的に高輝度を維持することができるので好ましい。Eu3+付活希土類酸化物蛍光体、Eu3+付活希土類バナジン酸塩蛍光体、及びEu3+付活希土類燐バナジン酸塩蛍光体は、1/10残光時間が3.0ms以下であることから残光時間の短いバックライト用蛍光ランプが得られ、本発明の緑色蛍光体を用いる効果が絶大となる。なお、赤色蛍光体として当然これら蛍光体を混合して組み合わせてもよい。
【0085】
また、本発明の緑色蛍光体を本発明の冷陰極蛍光ランプの蛍光膜に使用する場合、蛍光膜に使用する緑色蛍光体として、セリウムテルビウム共付活燐酸ランタン蛍光体や、テルビウム付活あるいはセリウムテルビウム共付活の珪酸イットリウム蛍光体と混合して用いてもよい。
(カラー液晶表示装置)
本発明のバックライト用蛍光ランプは残光時間が短いため、残像感や輪郭のぼやけを低減した応答特性の速い液晶表示装置のバックライトとして好適に使用することができる。本発明のカラー液晶表示装置は、光シャッターとして機能する液晶からなる複数の液晶素子と、該複数の液晶素子のそれぞれに対応する少なくとも赤、緑、青の3色の色素を有するカラーフィルターと、透過照明用のバックライトとを組み合わせて構成され、該バックライトが本発明のバックライト用蛍光ランプを備えてなることを特徴とするものである。
【0086】
本発明の液晶表示装置は、経時的に高輝度を維持することができ、残像感や輪郭のぼやけを低減した応答特性の速い色再現範囲の広い液晶表示装置となる。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[物性値の測定方法]
後述する各実施例、比較例及び参考例で得られた蛍光体の物性値は、以下の方法で測定
、及び算出した。
【0088】
<緑単色冷陰極蛍光ランプの光束>
蛍光体(緑色発光成分蛍光体)100重量部を、1.1%ニトロセルロースを含む酢酸
ブチル200重量部と0.7重量部の硼酸塩系結合剤とともに十分に混合して蛍光体スラリーを調製した。得られた蛍光体スラリーを管径が外径2.6mm、内径2.0mmで管長が300mmのガラスバルブ内面に塗布し乾燥させ、650℃で15分間ベーキング処理をして、内部に水銀5mgとNe−Arの混合ガスをおよそ10kPaの封入圧で封入して電極を取り付けた。ランプ電流6mAにおける冷陰極蛍光ランプの光束を、後述する比較例1のLAP蛍光体を使用した冷陰極蛍光ランプの光束との相対比で表した。
【0089】
<緑単色冷陰極蛍光ランプの光束維持率>
前記緑単色冷陰極蛍光ランプを、ランプ電流8mAで500時間連続点灯させた。そして、連続点灯させる前の光束に対する、500時間連続点灯させた後の光束の比率で表した。
<相対輝度、および色度座標>
相対輝度は、波長172nmの真空紫外線、又は254nmの紫外線を照射して測定し、それぞれ後述する比較例1のLAP蛍光体との相対値で表した。
【0090】
また、色度座標は波長254nmの紫外線を照射して測定した。
<加熱処理後の輝度維持率>
蛍光体を空気雰囲気中において800℃で20分間加熱処理する前の発光輝度に対する加熱処理後の発光輝度の比率で表した。なお、発光輝度は波長254nmの紫外線を照射して測定した。
【0091】
<FSSS>
蛍光体の粒径(FSSS)をフィッシャーサブシーブサイザー(フィッシャー社)にて測定した。
[実施例1]
Tb 0.1075 mol
CeO 0.3 mol
La 0.135 mol
MgCO 0.65 mol
Al 6.5 mol
BO 0.01 mol
AlF 0.01 mol
上記各化合物からなる蛍光体原料を十分に混合し、坩堝に充填し、蓋をして水蒸気を含んだ窒素雰囲気中において最高温度1550℃として、昇降温時間を含めて12時間かけて焼成した。
【0092】
次いで、焼成粉を分散、洗浄、乾燥、篩の処理を行い、フィッシャーサブシーズサイザーで測定した時の平均粒径が5.8(μm)であり、その組成式が(La0.27Ce0.30Tb0.433・1.3MgO・13Al23で表される、実施例1のTb
付活ランタン・セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体を得た。なおAlF3およびH3BO3は蛍光体の製造にしばしば用いられるフラックスである。
【0093】
この実施例1の蛍光体の発光スペクトルは波長545nmに発光のピークを有しており、発光色のCIE表色系による発光色(x,y)は、x=0.339、y=0.604であり、緑色蛍光体として実用的な発光色であった。
この実施例1の蛍光体に254nmの紫外線を照射してそのときの発光輝度を測定したところ、これと同一の条件で測定した比較例1のLa0.55Ce0.30Tb0.15PO蛍光体(LAP蛍光体)の105%であり、172nmの真空紫外線を照射してそのときの発光輝度を測定したところ、これと同一の条件で測定した比較例1のLAP蛍光体の99%であった。
【0094】
さらにこの実施例1の緑色蛍光体を空気雰囲気中において800℃で20分間加熱処理した後、同様に波長254nmの紫外線を照射してその発光輝度を測定したところ、加熱処理がなされる前の98%の発光輝度を示し、加熱処理による熱劣化は比較例2の蛍光体と比較すると小さかった。
次に、実施例1の蛍光体(緑色発光成分蛍光体)100重量部を、1.1%ニトロセルロースを含む酢酸ブチル200重量部と0.7重量部の硼酸塩系結合剤とともに十分に混合して蛍光体スラリーを調製し、この蛍光体スラリーを管径が外径2.6mm、内径2.0mmで管長が300mmのガラスバルブ内面に塗布し乾燥させ、650℃で15分間ベーキング処理をして、内部に水銀5mgとNe−Arの混合ガスをおよそ10kPaの封入圧で封入して電極を取り付け、ランプ電流6mAの実施例1の緑単色の冷陰極蛍光ランプを製造した。
【0095】
この実施例1の緑単色の冷陰極蛍光ランプの光束は、緑色発光成分蛍光体として実施例1の蛍光体に代えて比較例1のLAP蛍光体を使用した以外はこれと同様にして製造された比較例1の冷陰極蛍光ランプの光束の105%であり、ランプ電流8mAで500時間連続点灯させた後に光束を測定したところ、連続点灯させる前の96%の光束を示し、長時間点灯による光束の低下は小さかった。
【0096】
さらに、実施例1の蛍光体(緑色発光成分蛍光体)、Eu付活酸化イットリウム蛍光体(赤色発光成分蛍光体)及びEu付活アルミン酸バリウムマグネシウム蛍光体(青色発光成分蛍光体)を所定混合比で混合してなる混合物100重量部を、1.1%ニトロセルロースを含む酢酸ブチル200重量部と0.7重量部の硼酸塩系結合剤とともに十分に混合して蛍光体スラリーを調製し、この蛍光体スラリーを管径が外径2.6mm、内径2.0mmで管長が300mmのガラスバルブ内面に塗布し乾燥させ、650℃で15分間ベーキング処理をして、内部に水銀5mgとNe−Arの混合ガスをおよそ10kPaの封入圧で封入して電極を取り付け、ランプ電流6mAの実施例1の白色の冷陰極蛍光ランプを製造した。なおこの白色の冷陰極蛍光ランプはその発光色度がx=0.270、y=0.240になるように、実施例1の蛍光体とEu付活酸化イットリウム蛍光体とEu付活アルミン酸バリウムマグネシウム蛍光体蛍光体との混合比を調整した。
【0097】
この実施例1の白色の冷陰極蛍光ランプの光束は、緑色発光成分蛍光体として実施例1の蛍光体に代えて比較例1のLAP蛍光体を使用した以外はこれと同様にして製造された比較例1の白色の冷陰極蛍光ランプの光束の99%であった。
[比較例1]
実施例1の蛍光体に代えて、1/10残光時間は7.4msで、蛍光ランプ用蛍光体の緑色成分蛍光体として代表的なLAP蛍光体{組成式が(La0.55Ce0.3T b
0.15)POであるLAP蛍光体}を用いたこと以外は実施例1の冷陰極蛍光ランプと同様にして発光色度がx=0.270、y=0.240である、比較例1の冷陰極蛍光ランプを製造して、本発明の冷陰極蛍光ランプとの発光特性の比較に供した。
【0098】
なお、比較例1の冷陰極蛍光ランプの1/10残光時間は4.0msであり、この比較例1の冷陰極蛍光ランプをバックライトの光源として用いて赤、緑、青のカラーフィルターを有する液晶表示装置を製造し、液晶画面においてバックライトの間欠点灯を行ったところ、1/10残光時間は4.3msであった。
[比較例2]
Tb 0.0825 mol
CeO 0.67 mol
MgCO 0.65 mol
Al 6.5 mol
BO 0.01 mol
AlF 0.01 mol
蛍光体原料として上記原料を用いる以外は実施例1と同様にして、蛍光体原料を焼成し、次いで、焼成粉を分散、洗浄、乾燥、篩の処理を行い、フィッシャーサブシーズサイザーで測定した時の平均粒径が4.6(μm)であり、その組成式が(Ce0.67Tb0.333・1.3MgO・13Al23で表される、比較例2のTb付活セリウム
アルミン酸マグネシウム蛍光体を得た。
【0099】
この比較例2の蛍光体の発光スペクトルは波長545nmに発光のピークを有しており、発光色のCIE表色系による発光色(x,y)は、x=0.337、y=0.601であり、緑色蛍光体として実用的な発光色であった。
この比較例2の蛍光体に254nmの紫外線を照射してそのときの発光輝度を測定したところ、これと同一の条件で測定した比較例1のLAP蛍光体の106%であり、172nmの真空紫外線を照射してそのときの発光輝度を測定したところ、これと同一の条件で測定した比較例1のLAP蛍光体の92%であり、実施例1の蛍光体と比較して低かった。
【0100】
さらにこの比較例2の緑色蛍光体を実施例1と同一の条件で加熱処理した後の発光輝度を測定したところ、加熱処理がなされる前の94%の発光輝度を示し、実施例1の蛍光体と比較して加熱処理による熱劣化は大きかった。
次に、実施例1の蛍光体に代えて、比較例2の蛍光体を用いた以外は実施例1の緑単色の冷陰極蛍光ランプと同様にして比較例2の緑単色の冷陰極蛍光ランプを製造した。この比較例2の緑単色の冷陰極蛍光ランプの光束は、比較例1の冷陰極蛍光ランプの光束の99%であり、ランプ電流8mAで500時間連続点灯させた後の光束は、連続点灯させる前の94%を示し、実施例1の冷陰極蛍光ランプと比較して長時間点灯による光束の低下は大きかった。
【0101】
次に、実施例1の蛍光体に代えて、比較例2の蛍光体を用いた以外は実施例1の冷陰極蛍光ランプと同様にして製造した、発光色のCIE表色系の発光色度がx=0.270、y=0.240である比較例2の白色の冷陰極蛍光ランプの光束は比較例1の白色の冷陰極蛍光ランプの光束の97%であった。
[実施例2〜8、および比較例3]
蛍光体原料として、表1に示す組成比になるように調合比率を変えたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2〜8、および比較例3の蛍光体および冷陰極蛍光ランプを製造し、得られた各蛍光体の254nm紫外線で励起したときの輝度、172nm真空紫外線で励起したときの輝度、加熱処理後の輝度維持率および緑単色の冷陰極蛍光ランプの光束と光束維持率を測定した。その結果を実施例1、および比較例2の蛍光体および冷陰極蛍光ランプの特性とともに表1に示す。
【0102】
本発明の特徴は、Tb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のセリウムの一部を特定の比率でランタン(La)に置き換えることにより、高光束で非常にすぐれた寿命特性が得られるというものであるが、図1および図4からも明らかなように、この寿命特性は本発明の蛍光体中のMg含有量にも依存する傾向にある。Mg含有量が同じ蛍光体どうしで比較すると、実施例2〜5の蛍光体の加熱処理後の輝度維持率は、比較例2と比較して高かった。同様に、実施例7、および8の蛍光体の加熱処理後の輝度維持率は、比較例3と比較しても高かった。ここで、加熱処理による輝度維持率は、前述のように蛍光ランプの長時間点灯における光束維持率の尺度を示す評価量でもあるので、実施例の蛍光ランプは比較例の蛍光ランプに比べ光束維持率も高くなる。
【0103】
[実施例9〜11]
蛍光体原料として、表2に示す組成比になるように調合比率を変えたこと以外は、実施例1と同様にして実施例9〜11の蛍光体を製造し、さらに実施例9、10については実施例1と同様にして冷陰極蛍光ランプを製造した。得られた各蛍光体の254nm紫外線で励起したときの輝度、172nm真空紫外線で励起したときの輝度、及び加熱処理後の輝度維持率、並びに実施例9、10については緑単色の冷陰極蛍光ランプの光束と光束維持率を測定した。その結果を、実施例2、及び比較例2の蛍光体および冷陰極蛍光ランプの特性とともに表2に示す。
【0104】
これら実施例9〜11の蛍光体の加熱処理後の輝度維持率は、比較例2の加熱処理後の輝度維持率と比較して高かった。
また、実施例9、10の蛍光体の冷陰極蛍光ランプの光束維持率は、比較例2の蛍光体の冷陰極蛍光ランプの光束維持率と比較して高かった。
[実施例12]
Tb 0.0625 mol
CeO 0.3 mol
La 0.225 mol
MgCO 0.2 mol
Al 6.5 mol
BO 0.01 mol
AlF 0.01 mol
蛍光体原料として上記原料を用いたこと以外は実施例1と同様にして、蛍光体原料を焼成し、次いで、焼成粉を分散、洗浄、乾燥、篩の処理を行い、フィッシャーサブシーズサイザーで測定した時の平均粒径が5.0(μm)であり、その組成式が(La0.45Ce0.30Tb0.253・0.4MgO・13Al23で表される、実施例12
の蛍光体を得た。
【0105】
この実施例12の蛍光体の発光スペクトルは、波長545nmに発光のピークを有しており、発光色のCIE表色系による発光色(x,y)は、x=0.337、y=0.570であり、緑色蛍光体として実用的な発光色であった。
この実施例12の蛍光体に254nmの紫外線を照射してそのときの発光輝度を測定したところ、これと同一の条件で測定した比較例1のLAP蛍光体の75%であり、172nmの真空紫外線を照射してそのときの発光輝度を測定したところ、これと同一の条件で測定した比較例1のLAP蛍光体の74%であり、1/10残光時間は5.6msで非常に短かった。
【0106】
さらに、この実施例12の緑色蛍光体を実施例1と同一の条件で加熱処理した後の発光輝度を測定したところ、加熱処理がなされる前の83%の発光輝度を示した。
[比較例4]
Tb 0.0625 mol
CeO 0.75 mol
MgCO 0.2 mol
Al 6.5 mol
BO 0.01 mol
AlF 0.01 mol
蛍光体原料として上記原料を用いる以外は実施例1と同様にして、蛍光体原料を焼成し、次いで、焼成粉を分散、洗浄、乾燥、篩の処理を行い、フィッシャーサブシーズサイザーで測定した時の平均粒径が5.4(μm)であり、その組成式が(Ce0.75Tb0.253・0.4MgO・13Al23で表される、比較例4のTb付活セリウム
アルミン酸マグネシウム蛍光体を得た。
【0107】
この比較例4の蛍光体の発光スペクトルは波長545nmに発光のピークを有しており、発光色のCIE表色系による発光色(x,y)は、x=0.342、y=0.578であり、緑色蛍光体として実用的な発光色であった。
この比較例4の蛍光体に254nmの紫外線を照射してそのときの発光輝度を測定したところ、これと同一の条件で測定した比較例1のLa0.55Ce0.30Tb0.15PO蛍光体(LAP蛍光体)の80%であり、172nmの真空紫外線を照射してそのときの発光輝度を測定したところ、これと同一の条件で測定した比較例1のLa0.55Ce0.30Tb0.15PO蛍光体(LAP蛍光体)の65%であり、1/10残光時間は5.3msであった。
【0108】
さらにこの比較例4の緑色蛍光体を実施例1と同一の条件で加熱処理した後の発光輝度を測定したところ、加熱処理がなされる前の62%の発光輝度を示し、実施例12の蛍光体と比較すると加熱処理による熱劣化は大きかった。
[実施例13、14、及び比較例5、6]
蛍光体原料として、表3に示す組成比になるように調合比率を変えたこと以外は、実施例1と同様にして実施例13、14、および比較例5、6の蛍光体を製造し、得られた各蛍光体の254nm紫外線で励起したときの輝度、172nm真空紫外線で励起したときの輝度、1/10残光時間、及び加熱処理後の輝度維持率を測定した。その結果を実施例12、および比較例4の蛍光体の特性とともに表3に示す。
【0109】
本発明の特徴は、特定のMg含有量のTb付活セリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体のセリウムの一部を特定の比率でランタン(La)、ガドリニウム(Gd)、イットリウム(Y)に置き換えることにより、1/10残光時間が短くて、非常にすぐれた寿命特性が得られるというものであるが、図5からも明らかなように、この蛍光体の1/10残光時間は本発明の蛍光体中のMg含有量にも依存するので、実施例12〜14の特性は、それぞれ比較例4〜6の特性と比較しなければならない。これら12〜14の蛍光体の加熱処理後の輝度維持率を、ほぼ1/10残光時間が同じである比較例4〜6の特性と比較すると高かった。
【0110】
【表1】

【0111】
【表2】

【0112】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、光を用いる任意の分野において用いることができ、特に、画像表示装置などに好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長170nm以上300nm以下の真空紫外線ないし紫外線により蛍光膜を発光させる蛍光ランプにおいて、
前記蛍光膜が、下記式[1]で表されるTb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体を含む
ことを特徴とする、バックライト用蛍光ランプ。
(LCeTb1−x―y3・zMgO・nAl23 ・・・ [1]
(ただし、前記式[1]中、Lは、La、Gd、およびYからなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、x、y、z、およびnは、それぞれ0<x<0.95、0≦y<0.95、0.1<z<4.0、および7≦nなる条件を満たす数である)
【請求項2】
前記バックライト用蛍光ランプの管壁負荷が0.03W/cm以上である
ことを特徴とする、請求項1に記載のバックライト用蛍光ランプ。
【請求項3】
前記式[1]において、x、およびyが、0.35≦x/(x+y)≦0.75なる条件を満たす数である
ことを特徴とする、請求項1、または請求項2に記載のバックライト用蛍光ランプ。
【請求項4】
前記Tb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体の発光強度の1/10残光時間が7.1ms以下である
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のバックライト用蛍光ランプ。
【請求項5】
前記蛍光膜中に430nm以上470nm以下の波長域に発光ピークを有する青色系発光蛍光体を含む
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のバックライト用蛍光ランプ。
【請求項6】
前記蛍光膜中に600nm以上660nm以下の波長域に発光ピークを有する赤色系発光蛍光体を含む
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のバックライト用蛍光ランプ。
【請求項7】
蛍光ランプに用いる蛍光体であって、
その化学組成が下記式[2]で表される
ことを特徴とする、Tb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体。
(LCeTb1−x―y3・zMgO・nAl23 ・・・[2]
(ただし、前記式[2]中、Lは、La、Gd、およびYからなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、x、y、z、およびnは、それぞれ0<x<0.95、0≦y<0.95、0.1<z<4.0、7≦n、および0.35≦x/(x+y)≦0.75なる条件を満たす数である)
【請求項8】
発光強度の1/10残光時間が7.1ms以下である
ことを特徴とする、請求項7に記載のTb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体。
【請求項9】
加熱によりセリウム(Ce)の酸化物に変わりうるCe化合物、加熱によりLの酸化物に変わりうるL化合物(ここで、Lはランタン(La)、ガドリニウム(Gd)、およびイットリウム(Y)からなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表す)、加熱によりテルビウム(Tb)の酸化物に変わりうるTb化合物、加熱によりマグネシウム(Mg)の酸化物に変わりうるMg化合物、及び加熱によりアルミニウム(Al)の酸化物に変わりうるAl化合物を混合し、焼成する
ことを特徴とする、請求項7、または請求項8に記載のTb付活希土類アルミン酸マグネ
シウム蛍光体の製造方法。
【請求項10】
波長170nm以上300nm以下の真空紫外線ないし紫外線により蛍光膜を発光させる蛍光ランプにおいて、
前記蛍光膜が、下記式[3]で表されるTb付活希土類アルミン酸マグネシウム蛍光体を含む
ことを特徴とする、バックライト用蛍光ランプ。
(L’x’Cey’Tb1−x’―y’3・mDO・z’MgO・n’Al23
・・・[3]
(ただし、前記式[3]中、L’はLa、Gd、およびYからなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、Dは、Ba、Sr、およびCaからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属元素を表し、x’、y’、m、z’、およびn’はそれ
ぞれ0≦x’<0.95、0≦y’<0.95、0<m<0.95、0.1<z’<4.0、および7≦n’なる条件を満たす数である)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−74268(P2011−74268A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228441(P2009−228441)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】