説明

TiWアンダーバンプ層のエッチング方法

【課題】薬液を用いた湿式のエッチングであるにもかかわらずアンダーカットが生じることのないTiWアンダーバンプ層のエッチング方法を提供する。
【解決手段】金バンプ電極3が存在しない領域では、UVエキシマ光の照射によって薬液Y(過酸化水素水)が活性化されるためにTiWアンダーバンプ層2aのエッチング反応が早く進行するが、金バンプ電極3が存在する領域では、UVエキシマ光が金バンプ電極によって遮られるために薬液Yが活性化されることはなく、エッチング反応は殆ど進行しない。つまり、金バンプ電極3の下方領域ではTiWアンダーバンプ層2aのエッチング反応が非常に遅いので、アンダーカットの生じないTiWアンダーバンプ層2aのエッチングを実現することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、アンダーカットが生じないTiWアンダーバンプ層のエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子は、その微細化の度合いを一段と強めているが、これに合わせて基板上の電極や配線(これらは、半導体素子同士を電気的に接続するためのものである。以下、単に「電極」という。)も微細化することが求められている。そして、かかる要請に応える技術として、基板の表面にバンプと呼ばれる突起物を形成し、これを電極として使用する技術が再注目されている。とりわけ、金を材料とする金バンプ電極は、電気伝導性および加工性に優れているため、特に重要視されている。
【0003】
ここで、基板の表面に金バンプ電極を形成する方法について図6を参照しつつ簡単に説明すると、まず、基板(1)の表面にアンダーバンプ層(2)と呼ばれる金属薄膜層をスパッタリングにより形成する(図6(a))。アンダーバンプ層(2)は、チタンタングステン(TiW)からなるTiWアンダーバンプ層(2a)、および金からなる金アンダーバンプ層(2b)の二層構造となっており、各アンダーバンプ層(2a)(2b)の膜厚は約0.3μmである。なお、基板(1)の上面にTiWアンダーバンプ層(2a)を形成しているのは、TiWが基板(1)の構成材料であるSiO2と金との双方に対する親和性に優れているからである。また、TiWアンダーバンプ層(2a)の上面に金アンダーバンプ層(2b)をスパッタリングにより形成しているのは、TiW層を下地材とした場合には金を直接メッキ処理することができないからである。
【0004】
次に、アンダーバンプ層(2)(金アンダーバンプ層(2b))の上面に点状或いは線状の金バンプ電極(3)をメッキ処理により形成する(図6(b))。なお、アンダーバンプ層(2)の上面に金バンプ電極(3)を形成する方法としては、例えば、メタルマスクを用いてメッキ処理する方法や、レジスト層を形成してからメッキ処理する方法などが考えられる。
【0005】
次に、アンダーバンプ層(2)の不要な部分(金バンプ電極(3)が形成されていない領域)を除去する。すなわち、金アンダーバンプ層(2b)のうち金バンプ電極(3)が形成されていない領域(r1)を薬液にて除去し(図6(c))、然る後、TiWアンダーバンプ層(2a)のうち金バンプ電極(3)が形成されていない領域(r2)(即ち、金アンダーバンプ層(2b)の不要部分(r1)を除去した後に露出するTiWアンダーバンプ層(2a))を別の薬液を用いて除去する。これにより、図6(d)に示すような基板(1)の表面に金バンプ電極(3)が形成された回路基板(A)を得ることができる。
【0006】
ここで、金アンダーバンプ層(2b)を除去するための薬液としては、たとえばヨウ素を含む溶液を主体としたものが一般的であり(例えば、特許文献1参照)、TiWアンダーバンプ層(2a)を除去するための薬液としては、過酸化水素水を主体としたものが一般的である(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
なお、金アンダーバンプ層(2b)の不要部分(r1)を除去する前の基板を金層除去前被処理体(B1)と呼び、金アンダーバンプ層(2b)の不要部分(r1)を除去した後であってTiWアンダーバンプ層(2a)の不要部分(r2)を除去する前の基板をTiW層除去前被処理体(B2)と呼ぶことにする。
【特許文献2】特開平9−125300号公報
【特許文献1】特開平8−91108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した薬液による湿式エッチングは、最も安価で簡便な方法であるが、この方法では、薬液との接触部分が全てエッチングの対象となるため、選択的なエッチングを行うことが困難である。例えば、TiW層除去前被処理体(B2)におけるTiWアンダーバンプ層(2a)の不要部分(r2)を除去する場合には、TiWアンダーバンプ層(2a)における金バンプ電極(3)の下方領域部分までもがエッチングされてしまい、いわゆるアンダーカットの発生が避けられない(図6(d)および図7の図面代用写真を参照)。
【0009】
上述したような金バンプ電極(3)の微細化の流れにあっては、TiWアンダーバンプ層(2a)のアンダーカットが製品に与える影響(電流損失等)をもはや無視できなくなっており、アンダーカットが生じることのないTiWアンダーバンプ層(2a)のエッチング技術が待望されていた。
【0010】
なお、プラズマなどを用いる乾式エッチングによれば、TiW層除去前被処理体(B2)におけるTiWアンダーバンプ層(2a)の選択的なエッチングが可能であるためアンダーカットの形成は防止できるが、装置が大型化・高コスト化してしまうという問題がある。
【0011】
本願発明の目的は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、薬液を用いた湿式のエッチングであるにもかかわらずTiWアンダーバンプ層のアンダーカットが生じることのないエッチング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載のエッチング方法は、「基板(1)と、基板(1)の表面に形成されているTiWアンダーバンプ層(2a)と、TiWアンダーバンプ層(2a)の上面に形成されている金アンダーバンプ層(2b)と、金アンダーバンプ層(2b)の上面に形成されている点状或いは線状の金バンプ電極(3)とを有する被処理体(B)のうち、金アンダーバンプ層(2b)の不要部分(r1)を除去した後に現れるTiWアンダーバンプ層(2a)を薬液(Y)によってエッチングする方法であって、薬液(Y)は過酸化水素水であり、エッチング時には、220nm以下のUVエキシマ光をTiWアンダーバンプ層(2a)に向けて照射する」ことを特徴とする。
【0013】
この発明では、TiWアンダーバンプ層(2a)を除去するための薬液(Y)として酸化力の弱い過酸化水素水を用いているので、TiWアンダーバンプ層(2a)が薬液(Y)と接触しても当該接触部分においてエッチング反応が早く進行することはない。
【0014】
一方、薬液(Y)である過酸化水素水にUVエキシマ光を照射すると、当該UVエキシマ光照射部分の薬液(Y)が活性化され、TiWアンダーバンプ層(2a)との接触部分においてエッチング反応が早く進行することになる。
【0015】
なお、金バンプ電極(3)や金アンダーバンプ層(2b)の構成材料である金は化学的に非常に安定であるため、薬液(Y)のUVエキシマ光による活性化の有無に拘わらずエッチング反応が進行することは殆どなく、結果、余裕のあるエッチングレシピを作成することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、「薬液(Y)は30〜60℃に加温されている」ことを特徴とするものであり、この発明によれば、UVエキシマ光による薬液(Y)のエッチング速度を促進させることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、「UVエキシマ光の照射時には、薬液(Y)の表面に沿って気流を形成する」ことを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載した発明のように薬液(Y)を加温した場合には、薬液(Y)から湯気が発生し、これが薬液(Y)の表面と光源(20)との間に滞留する。すると、波長の非常に小さいUVエキシマ光は滞留した湯気の粒に当たって乱反射してしまい、薬液(Y)を活性化させるのに十分な光量のUVエキシマ光がTiWアンダーバンプ層(2a)近辺にまで届かないという問題がある。この点、請求項3に記載の発明によれば、UVエキシマ光の照射時に薬液(Y)の表面に沿って気流を形成しているので、薬液(Y)の液面上に湯気が滞留することはなく、上記問題が生じることはない。
【発明の効果】
【0019】
本願発明によれば、金バンプ電極が存在しない領域では、UVエキシマ光の照射によって薬液が活性化されるためにTiWアンダーバンプ層のエッチング反応が早く進行するが、金バンプ電極の下方領域では、UVエキシマ光が金バンプ電極の存在によって遮られるために薬液が活性化されることはなく、エッチング反応は殆ど進行しない。つまり、金バンプ電極の下方領域においてTiWアンダーバンプ層のエッチング反応が進行することはなく、結果、アンダーカットが生じることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本願発明にかかるTiWアンダーバンプ層(2a)のエッチング方法は、種々の湿式エッチング装置(たとえば、浸漬タイプのものやスピンナータイプのものなど)を用いて実施することが可能であるが、ここでは、図1に示す浸漬タイプのエッチング装置(10)を用いて本願発明のエッチング方法を実施する方法について説明する。
【0021】
[実施例1]
まず、エッチング装置(10)の構成について簡単に説明すると、エッチング装置(10)は、図1〜図2から分かるように、ケーシング(12)、薬液槽昇降装置(14)、薬液槽(16)、湯気滞留防止機構(18)および光源(20)により大略構成されている。
【0022】
ケーシング(12)は、水平方向に広がるプレート(12a)をベースとした箱状のユニットであり、ケーシング(12)の内部には、薬液槽昇降装置(14)を介して薬液槽(16)が設けられている。
【0023】
薬液槽昇降装置(14)は、薬液槽(16)を後述する光源(20)に対して近接離間させるためのものであり、本実施例では周知のシリンダ機構によって薬液槽(16)を昇降できるようになっている。
【0024】
薬液槽(16)は、薬液(Y)を貯留するためのものであり、その内部が仕切板(22)によって薬液貯留部(16a)と余剰薬液受容部(16b)とに分割されている。仕切板(22)の上部には水位調整用孔(22a)が穿設されており、薬液貯留部(16a)内の薬液(Y)の水位が水位調整用孔(22a)を超えたときに、水位調整用孔(22a)を超えた分の薬液(Y)が薬液貯留部(16a)から余剰薬液受容部(16b)に向けて移動できるようになっている。なお、水位調整用孔(22a)の位置は、TiW層除去前被処理体(B2)を後述する被処理体載置用ピン(29)の上に載置したときに、薬液(Y)の液面がTiW層除去前被処理体(B2)よりも上方に位置するように適宜設定される(つまり、少なくともTiWアンダーバンプ層(2a)が薬液(Y)と接触するようになっていればよい)。
【0025】
薬液貯留部(16a)の底面中央には、薬液供給用孔(24)が穿設されており、この薬液供給用孔(24)に薬液供給管(26)が接続されている。薬液供給用孔(24)には、断面略T字状の逆流防止弁(28)がはめ込まれており、薬液供給管(26)から薬液槽(16)(より詳しくは、薬液貯留部(16a))に向けて薬液(Y)が供給されないときには、薬液貯留部(16a)内の薬液(Y)が薬液供給管(26)に向かって逆流するのを防止できるようになっている。
【0026】
薬液貯留部(16a)の底面であって薬液供給用孔(24)の周囲には、被処理体載置用ピン(29)が複数本突設されており、薬液貯留部(16a)の中央付近にてTiW層除去前被処理体(B2)を支持できるようになっている。
【0027】
また、薬液槽(16)には、図示しないヒーターが取り付けられており、薬液貯留部(16a)内の薬液(Y)を加温できるようになっている。なお、本実施例では、薬液(Y)が30〜60℃となるようにヒーターの温度が適宜設定される。薬液(Y)の温度が30℃以下の場合には、後述するUVエキシマ光の照射によって薬液(Y)を十分に活性化させることができず、十分なエッチング速度を確保することができない。一方、薬液(Y)の温度が60℃以上の場合には、薬液(Y)からの湯気の発生量が多くなりすぎるために後述するUVエキシマ光が湯気で反射されてしまい、十分な光量のUVエキシマ光がTiWアンダーバンプ層(2a)の表面近くにまで届かないという問題がある(この点については後述する)。
【0028】
ケーシング(12)の側方には、湯気滞留防止機構(18)が必要に応じて設けられている。湯気滞留防止機構(18)は、薬液(Y)を加温することによって発生した湯気が薬液(Y)の液面と後述する光源(20)との間に滞留するのを防止するためのものであり、気流発生機構(18a)と気流回収機構(18b)とで構成されている。
【0029】
気流発生機構(18a)は、気流を薬液(Y)の液面に沿って発生させるためのものであり、これにより、薬液(Y)から発生した湯気が薬液槽(16)と後述する光源(20)との間に滞留するのを防止できる。なお、気流発生用のガスとしては、例えば窒素などの不活性ガスが用いられる。
【0030】
気流回収機構(18b)は、前記気流発生機構(18a)によって形成された気流(この気流は、薬液(Y)から発生した湯気を含んでいる)を吸引回収するものである。
【0031】
ケーシング(12)の上部には、光源(20)が配置されている。光源(20)は、薬液貯留部(16a)に貯留されている薬液(Y)を活性化させるためのものであり、これにより、薬液(Y)によるTiWアンダーバンプ層(2a)のエッチング反応を促進させることができる。
【0032】
光源(20)から照射される光は、220nm以下のUVエキシマ光であり、本実施例では、波長が220nmまたは172nmのUVエキシマ光を選択的に照射できるようになっている。なお、UVエキシマ光は、放電ガスの種類によって波長が異なり、中には波長が220nmよりも大きなものも存在する。しかしながら、本願発明では、波長が220nmよりも大きいと薬液(Y)である過酸化水素水を活性化させることができず、実用に供さない(勿論、波長が220nm以下のUVエキシマ光であれば、採用は可能である。)。
【0033】
次に、エッチング装置(10)を用いてTiW層除去前被処理体(B2)をエッチングする方法について説明する。なお、ケーシング(12)内は予め不活性雰囲気とされているものとする。
【0034】
まず、ロボットアームのような搬送手段(27)によってTiW層除去前被処理体(B2)をケーシング(12)の開口部(25)からケーシング(12)内に搬送し、薬液槽(16)内の被処理体載置用ピン(29)上に載置する。次いで、薬液(Y)が薬液供給管(26)から薬液供給用孔(24)を通って薬液槽(16)(より詳しくは、薬液貯留部(16a))内に供給・貯留される。なお、水位調整用孔(22a)の水位を超えた薬液(Y)については薬液貯留部(16a)から余剰薬液受容部(16b)に向かって移動するので、薬液貯留部(16a)の水位は常に一定であり、このとき、TiW層除去前被処理体(B2)のTiWアンダーバンプ層(2a)は、薬液(Y)に完全に浸漬された状態である。
【0035】
ここで、薬液(Y)である過酸化水素水は、上述したように酸化力が弱いため、TiWアンダーバンプ層(2a)と接触しただけでエッチング反応が早く進行することはないし、また、金アンダーバンプ層(2b)や金バンプ電極(3)と接触してエッチング反応が進行することもない。
【0036】
次に、薬液槽昇降装置(14)を作動させ、薬液槽(16)を光源(20)に向かって近接させる(図3参照)。このとき、光源(20)からTiW層除去前被処理体(B2)のTiWアンダーバンプ層(2a)までの距離が5mm以下となるように薬液槽(16)を位置決めする必要がある。当該距離が5mmよりも大きい場合には、光源(20)から照射されるUVエキシマ光がTiWアンダーバンプ層(2a)付近の薬液(Y)にまで届かず、当該部分の薬液(Y)を活性化させることができないからである。
【0037】
なお、薬液槽(16)内の薬液(Y)は上述したように30〜60℃に加温されているため、薬液(Y)の一部が気化して湯気となり、この発生した湯気が薬液槽(16)と光源(20)との間に滞留することになる。光源(20)から照射されるUVエキシマ光は、その波長が220nm以下と非常に短いものであるから、薬液槽(16)と光源(20)との間に湯気が滞留すると、UVエキシマ光は当該湯気に反射してしまい、TiWアンダーバンプ層(2a)付近の薬液(Y)にまで十分にエキシマ光が届かない結果となる。そこで、本実施例では、湯気滞留防止機構(18)を設けることにより薬液(Y)から発生した湯気を吸引回収して上記問題が生じるのを防止しているのである。
【0038】
薬液槽(16)の位置決めが完了すると、次に光源(20)を所定時間点灯させる。すると、光源(20)からは波長が220nm(又は172nm)のUVエキシマ光が薬液(Y)に向けて照射され(UVエキシマ光は、加工面、即ちTiWアンダーバンプ層(2a)に対して略垂直な角度で照射される)、当該UVエキシマ光が照射された部分の薬液(Y)が活性化されることになる。
【0039】
ここで、TiWアンダーバンプ層(2a)の構成材料であるTiWは、UVエキシマ光によって活性化された薬液(Y)によって早くエッチングされるが、金バンプ電極(3)および金アンダーバンプ層(2b)の構成材料である金は化学的に非常に安定であるため、活性化された薬液(Y)によってエッチングされることはない。
【0040】
また、UVエキシマ光は、TiWアンダーバンプ層(2a)に対して略垂直な角度で照射されるので、金バンプ電極(3)の下側領域にUVエキシマ光が直接照射されることはない。つまり、金バンプ電極(3)の下側領域において薬液(Y)が活性化されることはなく、結果、TiWアンダーバンプ層(2a)のエッチング反応が早く進行することはない(このことは、金バンプ電極(3)の下側領域においてアンダーカットが生じないことを意味する)。
【0041】
所定時間が経過してTiW層除去前被処理体(B2)のエッチングが完了すると、光源(20)を消灯し、薬液(Y)を排液する。そして、搬送手段(27)によってエッチング後のTiW層除去前被処理体(B2)(すなわち、回路基板(A))を薬液槽(16)から取り出し、開口部(25)からケーシング(12)外に搬送する。
【0042】
なお、図4は、回路基板(A)の表面状態を示したSEM写真である。これによれば、金バンプ電極(3)の下側領域においてTiWアンダーバンプ層(2a)のアンダーカットが全く生じていないことが分かる。
【0043】
以上述べたように、薬液(Y)が過酸化水素水であり、TiWアンダーバンプ層(2a)のエッチング時には、薬液(Y)の上方からTiWアンダーバンプ層(2a)に向けて220nm以下のUVエキシマ光を照射することにより、アンダーカットが生じないTiWアンダーバンプ層(2a)のエッチングを行うことができた。
【0044】
なお、上述の実施例では、薬液槽(16)が光源(20)に対して近接離間するように構成されていたが、これとは反対に光源(20)を薬液槽(16)に対して近接離間するように構成してもよい。
【0045】
[実施例2]
次に、図5に示すスピンナータイプのエッチング装置(30)を用いて本願発明を実施する方法について説明する。
【0046】
まず、エッチング装置(30)の構成について簡単に説明すると、エッチング装置(30)は、ケーシング(32)、被処理体チャック部(34)、薬液供給ノズル(36)、薬液等回収用リング(38)および光源(20)により大略構成されている。
【0047】
ケーシング(32)は、縦方向に長く延びた略箱状のものであり、その側方(図5における右側)には、開口部(32a)が設けられている。開口部(32a)の近傍には、開口部(32a)を塞ぐようにしてシャッター(42)が設けられており、このシャッター(42)が昇降装置(44)を介して上下方向に移動することにより開口部(32a)の開閉ができるようになっている。
【0048】
ケーシング(32)の底面は、その中央部分が最も高くなるよう山形に盛り上がって形成されており、この突出部分には、被処理体チャック部(34)が設けられている。
【0049】
被処理体チャック部(34)は、TiW層除去前被処理体(B2)を載置する載置部(46)と、前記載置部(46)の下端に一体的に形成されている回転軸(48)とで構成されており、この回転軸(48)がケーシング(32)の突出部分に回転自在に取り付けられて載置部(46)と共に回転できるようになっている。
【0050】
載置部(46)の上面には、載置部(46)の上面に開口する複数の吸着孔(46a)が穿設されている。各吸着孔(46a)は、回転軸(48)の中心を貫通して形成されている吸引孔(48a)に連通しており、その端部が図示しない例えば真空ポンプのような真空吸引源に接続されている。
【0051】
ケーシング(32)の底部中央の突出部分であって、前記被処理体チャック部(34)の近傍には、薬液供給ノズル(36)が設けられている。薬液供給ノズル(36)は、被処理体チャック部(34)にチャックされたTiW層除去前被処理体(B2)の上面に薬液(Y)(過酸化水素水)を供給するものである。
【0052】
被処理体チャック部(34)の周囲には、薬液等回収用リング(38)が被処理体チャック部(34)を取り囲むように設けられている。薬液等回収用リング(38)は、TiW層除去前被処理体(B2)の表面に塗布された薬液(Y)や洗浄液等を回収するためのものであり、上側回収用リング(38a)と下側回収用リング(38b)とを有する。
【0053】
各回収用リング(38a)(38b)は、その内径が被処理体チャック部(34)の外形(或いは、本実施例のように、TiW層除去前被処理体(B2)の外形が被処理体チャック部(34)の外形よりも大きい場合には、TiW層除去前被処理体(B2)の外形)よりも大きく設定されたリング状の板状部材であり、その断面形状は、中央部分に向かうに従って上方に傾斜するように形成されている。
【0054】
なお、上側回収用リング(38a)と下側回収用リング(38b)とは一体的に形成されており、ケーシング(32)の側方(図5における左側)に設けられた昇降装置(50)によって上下方向に移動できるようになっている。
【0055】
被処理体チャック部(34)の上方には、光源(20)が配置されている。なお、光源(20)は、ケーシング(32)の上端部に設けられた昇降装置(52)の下端に接続されており、昇降装置(52)を作動させることによって光源(20)を被処理体チャック部(34)に対して近接離間できるようになっている。
【0056】
次に、エッチング装置(30)を用いてTiW層除去前被処理体(B2)をエッチングする方法について説明する。まず、ロボットアームのような搬送手段(図示省略)によってTiW層除去前被処理体(B2)を開口部(32a)からケーシング(32)内に搬送し、被処理体チャック部(34)の載置部(46)上に載置し、ケーシング(32)内を不活性雰囲気にする。
【0057】
その後、図示しない真空吸引源を作動させると、吸引孔(48a)および吸着孔(46a)内の気体が吸引されて減圧状態となり、これにより、TiW層除去前被処理体(B2)が載置部(46)に吸着固定(チャック)されることになる。
【0058】
TiW層除去前被処理体(B2)が載置部(46)にチャックされると、次に、薬液供給ノズル(36)の先端がTiW層除去前被処理体(B2)の上方に移動してTiW層除去前被処理体(B2)の上面に薬液(Y)を所定量供給する。なお、薬液(Y)の供給量としては、後述するように、TiW層除去前被処理体(B2)の表面全体を塗布できる程度の量が必要である。
【0059】
薬液(Y)の供給が終わると、回転軸(48)を軸として被処理体チャック部(34)を数回回転させる。これにより、TiW層除去前被処理体(B2)の表面全体に薬液(Y)が塗布され、不要なアンダーバンプ層(2)が薬液(Y)と接触することになる。なお、このとき、薬液(Y)の一部は遠心力で飛ばされるが、この飛ばされた薬液(Y)は、薬液等回収用リング(38)(より詳しくは、上側回収用リング(38a))によって回収される。
【0060】
薬液(Y)のTiW層除去前被処理体(B2)全面への塗布が完了すると、被処理体チャック部(34)の回転を停止し、光源(20)をTiW層除去前被処理体(B2)に対して近接させる。このとき、光源(20)からTiW層除去前被処理体(B2)のTiWアンダーバンプ層(2a)までの距離が上述実施例と同様5mm以下となるように光源(20)が位置決めされることになる。そして、光源(20)の位置決めが完了すると、光源(20)を点灯し、TiW層除去前被処理体(B2)のエッチングを開始する。なお、TiW層除去前被処理体(B2)のエッチングについては、上述実施例と同様であるので、その説明は上述の記載を援用する。
【0061】
光源(20)を所定時間点灯してTiW層除去前被処理体(B2)のエッチングが完了すると、光源(20)を消灯し、昇降装置(52)を作動して光源(20)を上方に移動させる。
【0062】
そして、図示しない洗浄用ノズルから洗浄液(通常は純水が用いられる)をエッチング後のTiW層除去前被処理体(B2)(すなわち、回路基板(A))の表裏面に供給し、回路基板(A)を洗浄する。
【0063】
回路基板(A)の洗浄が完了すると、被処理体チャック部(34)を回転させ、回路基板(A)の表裏面に付着している洗浄液を遠心力で吹き飛ばす。なお、このとき吹き飛ばされる洗浄液は、薬液等回収用リング(38)(より詳しくは、下側回収用リング(38b))の裏面に当たり、ドレン配管(54)から排液される。
【0064】
そして、最後に、回路基板(A)をロボットアームなどの搬送手段によってケーシング(32)外に搬出する。
【0065】
本実施例においても、薬液(Y)が過酸化水素水であり、エッチング時には、薬液(Y)の上方からTiWアンダーバンプ層(2a)に向けて220nm以下のUVエキシマ光を照射しているので、アンダーカットが生じないTiWアンダーバンプ層(2a)のエッチングを行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本願発明にかかるエッチング方法を実施するためのエッチング装置の一例を示す図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】図1実施例において被処理体をエッチングする方法を示す図である。
【図4】エッチング後の被処理体の表面状態を示す図面代用写真である。
【図5】本願発明にかかるエッチング方法を実施するための他のエッチング装置の例を示す図である。
【図6】金バンプ電極を形成する方法を示す図である。
【図7】従来のエッチング方法により被処理体をエッチングした表面状態を示す図面代用写真である。
【符号の説明】
【0067】
1 基板
2 アンダーバンプ層
2a TiWアンダーバンプ層
2b 金アンダーバンプ層
3 金バンプ電極
10、30 エッチング装置
B 被処理体
B1 金層除去前被処理体
B2 TiW層除去前被処理体
Y 薬液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の表面に形成されているTiWアンダーバンプ層と、前記TiWアンダーバンプ層の上面に形成されている金アンダーバンプ層と、前記金アンダーバンプ層の上面に形成されている点状或いは線状の金バンプ電極とを有する被処理体のうち、前記金アンダーバンプ層の不要部分を除去した後に露出したTiWアンダーバンプ層を薬液によってエッチングする方法であって、
前記薬液は過酸化水素水であり、
エッチング時には、220nm以下のUVエキシマ光を前記TiWアンダーバンプ層に向けて照射することを特徴とするTiWアンダーバンプ層のエッチング方法。
【請求項2】
前記薬液は30〜60℃に加温されていることを特徴とする請求項1に記載のTiWアンダーバンプ層のエッチング方法。
【請求項3】
前記UVエキシマ光の照射時には、前記薬液の表面に沿って気流を形成することを特徴とする請求項2に記載のTiWアンダーバンプ層のエッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−109889(P2007−109889A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299307(P2005−299307)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(591153813)エム・セテック株式会社 (11)
【Fターム(参考)】