説明

VII因子ポリペプチドの液状水性医薬組成物

【課題】VII因子ポリペプチドの液状水性医薬組成物
【解決手段】本発明は、VII因子ポリペプチド(例えば、ヒトVIIa因子)及びバッファー剤を含む液状水性医薬組成物に関し;ここにおいて、非錯体カルシウムイオン(Ca2+)とVII因子ポリペプチドのモル比が、0.5より低い。該組成物は、さらに、安定化剤(例えば、銅又はマグネシウムイオン、ベンズアミジン、又はグアニジン)、非イオン界面活性剤、張度変更剤、抗酸化剤及び保存剤を含み得る。該組成物は、VII因子-応答性症候群、例えば、凝固因子欠損(例えば、血友病 A、血友病 B、凝固因子XI欠損、凝固因子VII欠損)によって;血小板減少症又はフォンウィルブランド病によって、或いは凝固因子阻害剤によって引き起こされたもの、及び脳内出血、又は何らかの原因による過剰出血を含む出血性障害の治療に有用である。また該製剤は、手術又は他の外傷を有する患者、或いは抗凝固治療を受けている患者にも投与されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VII因子ポリペプチドを含む液状水性の医薬組成物に向けられ、また、該組成物の精製方法及び使用方法、並びに、該組成物を含むコンテナ、及びVII因子応答性症候群の治療における該組成物の使用に関する。さらに、本発明は、化学的及び/又は物理的分解に対して安定化された液体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固過程に関与する種々の因子が同定されており、これはVII因子(FVII)、血漿糖タンパク質を含む。凝固は、血管壁の損傷に続いて、循環している血液に曝露された組織因子(TF)と、総FVIIタンパク質量の約1%に相当する量で循環中に存在しているFVIIaとの間の複合体の形成によって開始される。FVIIは血漿中に主に単一鎖チモーゲンとして存在し、これはFXaによって切断されて、二本鎖の活性化形態、FVIIaになる。組換え活性化VIIa因子(rFVIIa)は、前止血剤として開発された。rFVIIaの投与は、
抗体形成のために他の凝固因子産物による治療が不可能な、出血している血友病患者において、迅速且つ極めて有効な前止血応答を与える。また、VII因子欠損症の患者、又は正常な凝固系を有するが過剰な出血をしている患者における出血も、FVIIaでうまく治療可能である。
【0003】
VIIa因子は、貯蔵と送達の何れにも適した投与形態を有することが望ましい。薬物製品は、液体状態で貯蔵され投与されることが理想的である。或いは、薬物産物は、凍結乾燥される、即ち、フリーズドライされ、患者が使用する前に適切な希釈液を加えることで再構成される。薬物産物は、長期間の貯蔵、即ち、6ヶ月以上の貯蔵で保たれる十分な安定性を有することが理想的である。
【0004】
最終的な薬物産物を液体で又は凍結乾燥させて維持するかの判断は、通常、それらの形態中のタンパク質薬の安定性に基づく。タンパク質安定性は、特に、イオン強度、pH、温度、凍結/解凍の繰り返しサイクル、及び剪断力への曝露などのような要因によって影響され得る。活性タンパク質は、変性及び凝集(可溶性及び不溶性凝集体形成のいずれも)を含む物理的な不安定性、並びに、例えばほんの数例を挙げると、加水分解、アミド分解、異性化、及び酸化を含む化学的な不安定性の結果として失われる。タンパク質製薬の安定性の一般的な概説には、例えば、マニングら(Manning, et al., Pharmaceutical Research 6:903-918 (1989))を参照されたい。
【0005】
タンパク質の不安定性が起こる可能性は広く認識されている一方、特定のタンパク質の特定の不安定性の問題を予測することは不可能である。これらの不安定性のいずれも、タンパク質副産物又は誘導体の形成、活性の低下、毒性の上昇、及び/又は免疫原性の上昇という結果になり得る。実際、タンパク質の沈殿は、血栓症、投与形態及び量の非均一性、並びに、シリンジの詰まりをもたらし得る。さらにその上、翻訳後修飾、例えば、N-末端のグルタミン酸残基のガンマカルボキシル化及び糖側鎖の付加は、貯蔵の際に変態に感受性の高い潜在的なサイトを提供する。また、VIIa因子に特異的であるセリンプロテアーゼは、自触反応による断片化が生じ得る(酵素的分解)。よって、いずれのタンパク質組成物の安全性及び有効性も、直接その安定性に関連する。液体形態中での安定性の維持は、分子の動きが極めて高い可能性があり、これによって、分子の相互作用が高い可能性があるため、一般に、凍結乾燥形態での安定性の維持とは異なる。濃縮形態中での安定性の維持もまた、上昇されたタンパク質濃度における凝集体の形成のために、上記と異なる。
【0006】
液体組成物を開発する場合、多くの要因が考慮に入れられる。短期間、即ち、6ヶ月未満では、液体の安定性は一般に、変性及び凝集のような全体の構造変化を避けることに依存している。これらの過程は、多数のタンパク質について文献に記載されており、また、安定化剤の多くの例が存在する。あるタンパク質の安定化に有効な薬剤が、実際に他の不安定化に作用することも良く知られている。一度、タンパク質が全体の構造変化に対して安定化されると、長期間の安定性(例えば、6ヶ月以上)の液体組成物の開発は、タンパク質に特異的な分解のタイプから、該タンパク質を安定化することに依存する。より特異的な分解のタイプは、例えば、ジスルフィド結合スクランブル、ある残基の酸化、アミド分解、環化などを含む。個々の分解種を正確に指摘するのはいつも可能であるわけではないが、目的のタンパク質の独特な安定性に対する特定の受容者の能力をモニターするために、微妙な変化をモニターするためのアッセイが開発される。
【0007】
組成物のpHが、注射/注入の際に生理学的に適切な範囲であることが望ましく、さもなければ、痛み及び不快感を患者に与えるであろう。
【0008】
タンパク質組成物の一般的な概説には、例えば、クレランドら(Cleland et al.: The development of stable protein 組成物: A closer look at protein aggregation, アミド分解 and oxidation, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 1993, 10(4): 307-377);及びワンら(Wang et al., Parenteral 組成物 of proteins and peptides: Sta-bility and stabilizers, Journal of Parenteral Science and Technology 1988 (Supplement), 42 (2S))を参照されたい。
【0009】
VIIa因子は、幾つかの経路、特に、凝集(二量体化)、酸化、及び自己分解切断(ペプチド主鎖の切り取り)を経て分解する。さらにその上、沈殿が生じうる。これらの反応の多くは、タンパク質から水を除去することによって、著しく遅くすることができる。しかしながら、VIIa因子のための水性組成物の開発は、再形成の間違いを排除するという利点を有し、それ故、投薬精度を上昇させ、並びに、産物の臨床的な使用を単純にし、それによって患者の服薬率を上昇させるVIIa因子の組成物は、広範なタンパク質濃度で、6ヶ月以上安定であることが理想的である。これは、投与の方法を柔軟にすることを可能にする。一般に、より高い濃度の形態は、より少量の投与を可能にし、これは、患者の観点から大変望ましいことである。液体組成物は、投与及び使用の容易さに関し、凍結乾燥産物よりも多くの利点を有することができる。
【0010】
今日、組換え的に製造されたVII因子ポリペプチド組成物で商業的に入手可能な唯一のものは、使用前に再構成される凍結乾燥FVIIa因子産物であり;これは、例えば約0.6 mg/mLという、比較的低いVIIa因子濃度を有する。ノボセブン(NovoSeven:登録商標)(Novo Nordisk A/S, Denmark)のバイアル(1.2 mg)は、1.2 mg 組換えヒトVIIa因子、5.84 mg NaCl、2.94 mg CaCl2、2 H2O、2.64 mg GlyGly、0.14 mg ポリソルベート80、及び 60.0 mg マンニトールを含む;これは、2.0 mL の注射(WFI)のための水(WFI)でpH5.5に再構成される。再構成されたとき、タンパク質溶液は、24時間の使用に安定である。従ってすぐ使用できる液体又は濃縮されたVII因子製品は、現在のところ商業的に入手可能なものはない。
【0011】
WO 03/055512は、VII因子ポリペプチド、バッファー及び、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びそれらの混合物から選択される薬剤、特にカルシウム塩を、少なくとも15 mMの濃度で含む、液状水性医薬組成物を開示している。カルシウム/マグネシウム塩は、該液体水性組成物に安定性を与える。
【0012】
上記の観点から、本発明の目的は、さらなる液体水性VII因子ポリペプチド医薬組成物を提供することであり、これは化学的及び/又は物理的な、例えば酵素的分解又は自己触媒的分解のような分解産物の許容される制御を提供する。
【発明の開示】
【発明の概要】
【0013】
本発明者らは、多くの従来技術の参考文献が、精製工程で及びVII因子ポリペプチドの貯蔵のための水溶性液体で、比較的高い濃度のカルシウムイオンを使用することを推奨しているにも関わらず、カルシウムイオン(Ca2+)とVII因子ポリペプチドの間の相対比が非常に低いことを確実にすることによって、VII因子ポリペプチドの液状水性医薬組成物の優れた貯蔵安定性を得ることが可能である、ということを発見した。
【0014】
従って、本発明の一つの側面は、VII因子ポリペプチド(i)及びpHを約5.0〜約9.0の範囲に維持するのに適したバッファー剤(ii)を含み;非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比が、0.5より低いことを特徴とする、液状水性医薬組成物に関する。
【0015】
本発明の第2の側面は、pHを約5.0〜約9.0の範囲に維持するのに適したバッファー剤(ii)を含む溶液中のVII因子ポリペプチド(i)を準備する工程を具備し;同時に、最終的な組成物中で、非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比が0.5より低いことを保証する、VII因子ポリペプチドの液状水性医薬組成物の製造方法に関する。
【0016】
本発明の第3の側面は、薬剤として使用するための、上記で定義された液状水性医薬組成物に関する。
【0017】
本発明の第4の側面は、VII因子応答性症候群を治療する薬剤の調製のための、上記で定義された液状水性医薬組成物の使用に関する。
【0018】
本発明の第5の側面は、VII因子応答性症候群を治療する方法であって、該方法は、上記で定義された液状水性医薬組成物の有効量を、それらを必要とする被験者に投与することを含む方法に関する
本発明の第6の側面は、上記で定義された液状水性医薬組成物、及び任意に不活性ガスを含む、気密な、少なくとも部分的に充填されたコンテナであって、(i) 壁部、及び(ii)前記壁部の部分を構成しない一以上の閉鎖手段、を具備するコンテナに関する。
【発明の詳細な説明】
【0019】
上記で述べたように、本発明は、VII因子ポリペプチドを含む、新規の安定化された液体水生医薬組成物の開発に存する。より詳細には、該液状水性医薬組成物は、VII因子ポリペプチド(i)及びpHを約5.0〜約9.0の範囲に維持するのに適したバッファー剤(ii)
を含み;非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比が、0.5より低いことを特徴とする。
【0020】
本明細書で用いる場合、「非錯体カルシウムイオンの濃度」という語は、カルシウムイオンの総濃度とカルシウムキレート剤に結合したカルシウムの濃度との間の相違を意味するよう意図される。これに関して、ある条件下でVII因子ポリペプチドに、カルシウムが結合すること、或いは、会合することが予想されるが、VII因子ポリペプチドは、「カルシウムキレート剤」とは見なされない。
【0021】
好ましくは、非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比は、0.5より小さく、例えば0.001〜0.499の範囲であり、例えば0.005〜0.050、又は0.000〜0.499の範囲であり、例えば0.000〜0.050の範囲、又は約0.000である。
【0022】
カルシウムイオン(Ca2+)とVII因子ポリペプチドとの間の相対比を低くするために、(複合)過剰カルシウムイオンを結合するためのカルシウムキレート剤を加えることが必要であるか又は望まれる。これは特に、処方工程に先行する方法工程の溶液中のカルシウムイオンとVII因子ポリペプチドの比が上記制限状態を超える場合に関連する。「カルシウムキレート剤」の例は、EDTA、クエン酸、NTA、DTPA、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、HIMDA、ADA 及び類似の化合物を含む。
【0023】
VII因子ポリペプチド(i)
医薬組成物の生物学的効果有効性は、他の活性成分がVII因子ポリペプチドと組み合わせて含まれていたとしても、主に、VII因子ポリペプチドの存在に起因する。
【0024】
本明細書で用いられるように、「VII因子ポリペプチド」という語は、野生型VII因子(即ち、米国特許第4,784,950号に開示されているアミノ酸配列を有するポリペプチド)、並びに、野生型VII因子と比較して実質的に同じか又は改良された生物学的活性を示すVII因子の変異体を包含する。「VII因子」という語は、それらの未切断(チモーゲン)形態のVII因子ポリペプチド、並びに、タンパク分解的に処理されて、VIIa因子と命名されるそれらのそれぞれの生物活性形態を生じるものを包含するよう意図される。典型的には、VII因子は残基152と153の間で切断されてVIIa因子を生じる。「VII因子ポリペプチド」という語もまた、VIIa因子の生物学的活性が、野生型VIIa因子の活性と比較して実質的に改変されたか又は幾分減じられた変異体を含むポリペプチドを包含する。これらのポリペプチドは、これらに限定されないが、それらの特異的なアミノ酸配列変化が導入されてポリペプチドの生物活性が改変されたか又は減じられた、VII因子又はVIIa因子を含む。
【0025】
血液凝固におけるVIIa因子の生物学的活性は、(i)組織因子(TF)への結合、及び(ii)
IX因子又はX因子のタンパク分解的切断を触媒して、活性化IX因子又はX因子(それぞれIXa因子又はXa因子)を生成する能力に由来する。
【0026】
本発明の目的のために、VII因子ポリペプチドの生物学的活性(「VII因子生物学的活性」)は、血液凝固を促進する製剤の能力を測定することによって定量され得る。本明細書に記載されたアッセイ4を参照されたい。このアッセイにおいて、生物学的活性は、対照サンプルに対する凝固時間の減少として表され、1ユニット/mLのFVII活性を含む貯蔵されたヒト血清標準と比較して「VII因子ユニット」に転換される。或いは、VIIa因子の生物学的活性は、(i)脂質膜中に包埋されたTF及びX因子を含む系において、活性化X因子(Xa因子)を生成するVIIa因子又はVII因子-関連ポリペプチドの能力を測定すること(Persson et al., J. Biol. Chem. 272:19919-19924, 1997);(ii)水系におけるX因子の加水分解を測定すること(「インビトロタンパク分解アッセイ」下記アッセイ2参照);(iii)VIIa因子又はVII因子-関連ポリペプチドのTFに対する物理的結合を、表面プラスモン共鳴に基づいた機器を用いて測定すること(Persson, FEBS Letts. 413:359-363, 1997);(iv)VIIa因子及び/又はVII因子-関連ポリペプチドによる、合成基質の加水分解を測定すること(「インビトロ加水分解アッセイ」下記アッセイ1参照);又は(v)インビトロ系におけるTF-非依存性トロンビン生成を測定すること(下記アッセイ3参照)によって定量され得る。
【0027】
野生型VIIa因子と比較して実質的に同じか又は改良された生物学的活性を有するVII因子変異体は、上記のような凝固アッセイ(アッセイ4), タンパク分解アッセイ(アッセイ2), 又はTF結合アッセイの一以上で試験したとき、同じ細胞型において生成されたVIIa因子の比活性の、少なくとも約25%, 例えば少なくとも約50%, 少なくとも約75%, 又は少なくとも約90% を示すものを包含する。野生型VIIa因子と比較して実質的に減少した生物学的活性を有するVII因子変異体は、上記のような 凝固アッセイ(アッセイ4), タンパク分解アッセイ(アッセイ2),又はTF結合アッセイの一以上で試験したとき、同じ細胞型において生成された野生型VIIa因子の比活性の、約25%より低い、 例えば約10%より低い、又は約5%より低い比活性を示すものである。野生型VII因子と比較して実質的に改変された生物学的活性を有するVII因子変異体は、これらに限定されないが、TF-非依存性X因子 タンパク分解活性を示すVII因子変異体及びTFに結合するがX因子を切断しないものを含む。
【0028】
VII因子の変異体は、野生型VII因子と実質的に同じか又はより良い生物活性を示すか、また或いは、野生型VII因子と比較して実質的に改変されたか又は減少された生物活性を示すかに関わらず、これらに限定されないが、一以上のアミノ酸の挿入、欠失、又は置換によって、野生型VII因子の配列と異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0029】
野生型VII因子と実質的に同じ生物学的活性を有するVII因子変異体の非限定的な例は、S52A-FVIIa, S60A-FVIIa (Lino et al., Arch. Biochem. Biophys. 352: 182-192, 1998); 米国特許第5,580,560に開示された、上昇したタンパク分解性安定性を示すFVIIa変異体; 残基290と291の間で、又は残基315と316の間で、タンパク分解的に切断されたVIIa因子(Mollerup et al., Biotechnol. Bioeng. 48:501-505, 1995); VIIa因子の酸化型形態(Kornfelt et al., Arch. Biochem. Biophys. 363:43-54, 1999); PCT/DK02/00189に開示されたFVII 変異体; 及びWO 02/38162に開示された、上昇したタンパク分解性安定性を示すFVII変異体(Scripps Research Institute); WO 99/20767に開示された、改変されたGla-ドメインを有し、増強された膜結合を示すFVII変異体(University of Minnesota); 及びWO 01/58935 に開示されたFVII変異体(Maxygen ApS)を含む。
【0030】
野生型FVIIaと比較して上昇された生物学的活性を有するVII因子変異体の非限定的な例は、WO 01/83725、WO 02/22776, WO 02/077218, WO 03/27147, WO 03/37932; WO 02/38162 に開示されたFVII変異体(Scripps Re-search Institute); 及びJP 2001061479に開示された、増強された活性を有するFVIIa変異体(Chemo-Sero-Therapeutic Res Inst.)を含む。
【0031】
野生型VII因子と比較して実質的に減少されたか又は改変された生物学的活性を有するVII因子変異体の非限定的な例は、R152E-FVIIa (Wildgoose et al., Biochem 29:3413-3420, 1990), S344A-FVIIa (Kazama et al., J. Biol. Chem. 270:66-72, 1995), FFR-FVIIa (Holst et al., Eur. J. Vasc. Endovasc. Surg. 15:515-520, 1998), 及びGla ドメイン欠失VIIa因子(Nicolaisen et al., FEBS Letts. 317:245-249, 1993)を含む。
【0032】
VII因子ポリペプチドの例は、これらに限定されないが、野生型VII因子, L305V-FVII, L305V/M306D/D309S-FVII, L305I-FVII, L305T-FVII, F374P-FVII, V158T/M298Q-FVII, V158D/E296V/M298Q-FVII, K337A-FVII, M298Q-FVII, V158D/M298Q-FVII, L305V/K337A-FVII, V158D/E296V/M298Q/L305V-FVII, V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A-FVII, K157A-FVII, E296V-FVII, E296V/M298Q-FVII, V158D/E296V-FVII, V158D/M298K-FVII, 及び S336G-FVII, L305V/K337A-FVII, L305V/V158D-FVII, L305V/E296V-FVII, L305V/M298Q-FVII, L305V/V158T-FVII, L305V/K337A/V158T-FVII, L305V/K337A/M298Q-FVII, L305V/K337A/E296V-FVII, L305V/K337A/V158D-FVII, L305V/V158D/M298Q-FVII, L305V/V158D/E296V-FVII, L305V/V158T/M298Q-FVII, L305V/V158T/E296V-FVII, L305V/E296V/M298Q-FVII, L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII, L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII, L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII, L305V/V158T/E296V/K337A-FVII, L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII, L305V/V158D/E296V/K337A-FVII, L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII, S314E/K316H-FVII, S314E/K316Q-FVII, S314E/L305V-FVII, S314E/K337A-FVII, S314E/V158D-FVII, S314E/E296V-FVII, S314E/M298Q-FVII, S314E/V158T-FVII, K316H/L305V-FVII, K316H/K337A-FVII, K316H/V158D-FVII, K316H/E296V-FVII, K316H/M298Q-FVII, K316H/V158T-FVII, K316Q/L305V-FVII, K316Q/K337A-FVII, K316Q/V158D-FVII, K316Q/E296V-FVII, K316Q/M298Q-FVII, K316Q/V158T-FVII, S314E/L305V/K337A-FVII, S314E/L305V/V158D-FVII, S314E/L305V/E296V-FVII, S314E/L305V/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158T-FVII, S314E/L305V/K337A/V158T-FVII, S314E/L305V/K337A/M298Q-FVII, S314E/L305V/K337A/E296V-FVII, S314E/L305V/K337A/V158D-FVII, S314E/L305V/V158D/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158D/E296V-FVII, S314E/L305V/V158T/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158T/E296V-FVII, S314E/L305V/E296V/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII, S314E/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII, S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII, K316H/L305V/K337A-FVII, K316H/L305V/V158D-FVII, K316H/L305V/E296V-FVII, K316H/L305V/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158T-FVII, K316H/L305V/K337A/V158T-FVII, K316H/L305V/K337A/M298Q-FVII, K316H/L305V/K337A/E296V-FVII, K316H/L305V/K337A/V158D-FVII, K316H/L305V/V158D/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158D/E296V-FVII, K316H/L305V/V158T/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158T/E296V-FVII, K316H/L305V/E296V/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII, K316H/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII, K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII, K316Q/L305V/K337A-FVII, K316Q/L305V/V158D-FVII, K316Q/L305V/E296V-FVII, K316Q/L305V/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158T-FVII, K316Q/L305V/K337A/V158T-FVII, K316Q/L305V/K337A/M298Q-FVII, K316Q/L305V/K337A/E296V-FVII, K316Q/L305V/K337A/V158D-FVII, K316Q/L305V/V158D/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158D/E296V-FVII, K316Q/L305V/V158T/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158T/E296V-FVII, K316Q/L305V/E296V/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII, K316Q/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII, K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII, F374Y/K337A-FVII, F374Y/V158D-FVII, F374Y/E296V-FVII, F374Y/M298Q-FVII, F374Y/V158T-FVII, F374Y/S314E-FVII, F374Y/L305V-FVII, F374Y/L305V/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158D-FVII, F374Y/L305V/E296V-FVII, F374Y/L305V/M298Q-FVII, F374Y/L305V/V158T-FVII, F374Y/L305V/S314E-FVII, F374Y/K337A/S314E-FVII, F374Y/K337A/V158T-FVII, F374Y/K337A/M298Q-FVII, F374Y/K337A/E296V-FVII, F374Y/K337A/V158D-FVII, F374Y/V158D/S314E-FVII, F374Y/V158D/M298Q-FVII, F374Y/V158D/E296V-FVII, F374Y/V158T/S314E-FVII, F374Y/V158T/M298Q-FVII, F374Y/V158T/E296V-FVII, 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F374Y/L305V/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/K337A/S314E-FVII, F374Y/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q/S314E-FVII, F374Y/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, F374Y/V158D/E296V/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/K337A/S314E-FVII, F374Y/V158D/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/V158D/E296V/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII, F374Y/L305V/V158D/M298Q/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158D/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/S314E-FVII, F374Y/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII, F374Y/V158T/E296V/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158T/K337A/S314E-FVII, F374Y/V158T/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/V158T/E296V/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII, F374Y/L305V/V158T/M298Q/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158T/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158T/E296V/S314E-FVII, F374Y/E296V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII, F374Y/V158D/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q/V158T/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A/V158T-FVII, F374Y/L305V/E296V/K337A/V158T/S314E-FVII, F374Y/L305V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII, S52A-VII因子, S60A-VII因子; R152E-VII因子, S344A-VII因子, Glaドメイン欠失VIIa因子; 及び P11Q/K33E-FVII, T106N-FVII, K143N/N145T-FVII, V253N-FVII, R290N/A292T-FVII, G291N-FVII, R315N/V317T-FVII, K143N/N145T/R315N/V317T-FVII; 及び 233Thrから240Asnまでのアミノ酸配列において、置換、付加又は欠失を有するFVII、304Argから329Cysまでのアミノ酸配列において、置換、付加又は欠失を有するFVII、及びIle153からArg223までのアミノ酸配列において、置換、付加又は欠失を有するFVIIを含む。
【0033】
ある態様において、VII因子ポリペプチドはヒトVIIa因子(hFVIIa)であり、好ましくは組換えにより製造されたヒトVIIa因子 (rhVIIa)である。
【0034】
他の態様において、VII因子ポリペプチドは、VII因子配列変異体である。
【0035】
ある態様において、VII因子ポリペプチドは、野生型ヒトVII因子と異なる糖修飾 を有する。
【0036】
種々の態様において、例えば、VII因子ポリペプチドがVII因子-関連ポリペプチド又はVII因子配列変異体である場合、VII因子ポリペプチドの活性と天然のヒトVIIa因子(野生型FVIIa)の活性との間の比が、本明細書において記載される「インビトロタンパク分解アッセイ」(アッセイ2)で試験したとき、少なくとも約1.25であり、好ましくは少なくとも約2.0であり、又は4.0であり、最も好ましくは少なくとも約8.0である。
【0037】
ある態様において、VII因子ポリペプチドは、VII因子-関連ポリペプチドの、特に変異体であり、ここにおいて、前記VII因子ポリペプチドの活性と天然のヒトVIIa因子(野生型FVIIa)の活性との間の比が、「インビトロ加水分解アッセイ」(下記アッセイ1参照)で試験したとき、少なくとも約1.25であり;他の態様において、該比は少なくとも約2.0であり;さらなる態様において、該比は少なくとも約4.0である。
【0038】
医薬組成物において、ユニット投与量の施用が患者に無用な不快感を与えないような活性成分の濃縮がしばしば望まれる。よって、約2〜10 mLより多いユニット投与量は、しばしば望ましくない。それ故、本発明の目的のVII因子ポリペプチドの濃度は、少なくとも0.01 mg/mLである。異なる態様において、VII因子ポリペプチドは、0.01-20 mg/mL; 0.1-10 mg/mL; 0.5-5.0 mg/mL; 0.6-4.0 mg/mL; 1.0-4.0 mg/mL; 0.1-5 mg/mL; 0.1-4.0 mg/mL; 0.1-2 mg/mL; 又は0.1-1.5 mg/mLの濃度で存在する。
【0039】
VIIa因子濃度は、mg/mL又はIU/mLとして都合よく表され、1 mgは通常43,000〜56,000 IUまたはそれ以上に相当する。
【0040】
バッファー剤(ii)
ヒトのような哺乳類への直接的な非経口投与に有用な液状水性医薬組成物を与えるために、組成物のpH値を合理的な制限、例えば約5.0〜約9.0に保持することが通常必要である。与えられた条件下で、適切なpH値を保証するために、医薬組成物は、約5.0〜約9.0の範囲にpHを維持するのに適切なバッファー剤(ii)をも含む。
【0041】
「バッファー剤」という語は、溶液のpHを約5.0〜約9.0の許容される範囲に維持する薬剤又は薬剤の組合せを包含する。
【0042】
一つの態様において、バッファー剤(ii)は、MES、PIPES、ACES、BES、TES、HEPES、TRIS、ヒスチジン、イミダゾール、グリシン、グリシルグリシン、グリシンアミド、リン酸、酢酸 (例えば酢酸ナトリウム)、乳酸、グルタール酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、及びコハク酸の酸及び塩から成る群から選択される少なくとも一つの成分である。該バッファー剤が、二以上の成分の混合物を含み得、該混合物がpH値を指定された範囲に提供することができることは理解されるであろう。例として、酢酸及び酢酸ナトリウム等を言及することができる。
【0043】
該組成物が非常に少量のカルシウムを含むという事実のために、リン酸に基づくバッファー系、即ちリン酸バッファーを、望ましくないリン酸カルシウムの沈殿なしに利用することが可能である。従って、一つの興味深い態様において、該バッファーはリン酸バッファーである。
【0044】
バッファー剤の濃度は、溶液のpHを好ましく維持するように選択される。種々の態様において、バッファー剤の濃度は、1〜100 mM; 1〜50 mM; 1〜25 mM;又は2〜20 mMである。
【0045】
一つの態様において、該組成物のpHは、約5.0〜約8.0に維持され; 例えば約5.0〜約7.5; 約5.0〜約7.0; 約5.0〜約6.5, 約5.0〜約6.0, 約5.5〜約7.0; 約5.5〜約6.5, 約6.0〜約7.0, 約6.4〜約6.6,又は約5.2〜約5.7に維持される。
【0046】
本明細書において、「約」として特定されるpH値は±0.1であるように理解され、例えば約pH8.0はpH8.0±0.1を含む。
【0047】
安定化剤(iii)
現在好ましい態様において、該組成物はさらに安定化剤(iii)を含む。
【0048】
安定化剤(iii)は、含まれる場合、典型的には、少なくとも5 μM、少なくとも25μM、少なくとも50 μM、少なくとも100 μM、少なくとも200 μM、少なくとも400 μM、少なくとも500 μM、少なくとも800 μM、少なくとも900 μM、少なくとも1000 μM、少なくとも5 mM、such as 20-2000 μM、50-5000 μM、0.1-10 mM、0.2-20 mM、又は0.5-50 mMの濃度で存在する。
【0049】
二価金属型安定化剤(iiia)
一つの態様において、安定化剤(iii)は、少なくとも一つの金属含有剤(iiia)を含み、ここにおいて、該金属は、酸化状態が+IIの第一遷移系金属から成る群から選択される。
【0050】
本発明者らは、酸化状態が+IIの第一遷移系金属は、すぐ使用できる医薬組成物に関連して安定化剤として従来利用されてこなかったとの印象を有している。
【0051】
本明細書で用いる場合、「酸化状態が+IIの第一遷移系金属」という語は、金属チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、及び 亜鉛を包含するよう意図される。
【0052】
チタン及びバナジウムは水性環境において酸化状態+IIで存在し得るが、より典型的には、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅,及び亜鉛の中から金属が選択される。これらの金属に対応する金属含有剤(iiia)の説明のための例は、塩化クロム(II)、塩化マンガン(II)、塩化鉄(II)、塩化コバルト(II)、塩化ニッケル(II)、及び塩化銅(II)である。金属含有剤(iiia)は、二以上の金属を含んでよく、例えば二以上の第一遷移系金属を含み得ることは理解されるであろう。従って、ある場合においては、二以上の上記薬剤が組み合わせて用いられる。
【0053】
従来、最も有望な金属は銅及びマンガンである。対応する金属含有剤(iiia)の説明のための例は、塩化銅(II)及び塩化マンガン(II)である。
【0054】
金属含有剤(又は薬剤)(iiia)の濃度は、典型的には少なくとも1μMである。望ましい(又は必要な)濃度は、典型的には選択された金属含有剤(又は薬剤群)に依存し、より特異的には、酸化状態+IIの選択された金属のVII因子ポリペプチドに対する結合親和力に依存する。
【0055】
異なる態様において、金属含有剤(iiia)は、少なくとも5 μM、少なくとも25 μM、少なくとも50 μM、少なくとも100 μM、少なくとも200 μM、少なくとも400 μM、少なくとも500 μM、少なくとも800 μM、少なくとも900 μM、少なくとも1000 μM、少なくとも5 mM、少なくとも25 mM、少なくとも50 mM、少なくとも100 mM、少なくとも200 mM、少なくとも400 mM、少なくとも800 mM、少なくとも900 mM、又は少なくとも1000 mMの濃度で存在する。
【0056】
一つの特定の態様において、該金属含有剤(iiia)の金属は銅であり、該剤の濃度は少なくとも5 μMであり、例えば少なくとも10 μMであり,又は少なくとも15 μMである。
【0057】
他の特定の態様において、該金属含有剤(iiia)の金属はマンガンであり、該剤の濃度は少なくとも100 μMであり、例えば少なくとも500 μMであり、又は少なくとも1 mMである。
【0058】
ベンズアミジン/アルギニン型安定化剤(iiib)
他の態様において、安定化剤は、-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2モチーフを含む少なくとも一つの剤(iiib)を含み、ここで、
Z1及びZ2は、-O-、-S-、-NRH- 及び 単結合から成る群から独立的に選択され、ここでRH は水素、C1-4-アルキル、アリール 及びアリールメチルから成る群から選択され、及びR1及びR2は、水素、任意に置換されたC1-6-アルキル、任意に置換されたC2-6-アルケニル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたヘテロシクリルから成る群から独立的に選択され、或いは、
Z2及びR2 は、上記定義の通りであり、-C=N-Z1-R1は複素環の一部を形成し、或いは、
Z1及びR1は上記定義の通りであり、-C-NH-Z2-R2は複素環の一部を形成し、或いは、
-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2は複素環を形成し、ここにおいて、-Z1-R1-R2-Z2- はビラジカルである。
【0059】
「C1-6-アルキル」という語は、1-6の炭素原子を有し、直鎖又は分枝鎖である非環式の及び環式の飽和された炭化水素残基を包含するよう意図される。特定の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、シクロプロピルメチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル等である。同様に、「C1-4アルキル」という語は、1-4の炭素原子を有し、直鎖又は分枝鎖である非環式の及び環式の飽和された炭化水素残基を包含する。
【0060】
同様に、「C2-6-アルケニル」という語は、2-6の炭素原子を有し、一つの不飽和結合を含み、直鎖又は分枝鎖である非環式の及び環式の炭化水素残基を包含するよう意図される。C2-6アルケニル基の例は、ビニル、アリル、ブタ(but)-1-エン-1-イル、ブタ(but)-2-エン-1-イル、ペンタ(pent)-1-エン-1-イル、及びヘキサ(hex)-1-エン-1-イルである。
【0061】
C1-6-アルキル及びC2-6-アルケニル基と関連して「任意に置換された」という語は、問題の基が、ヒドロキシ、C1-6-アルコキシ(即ち、C1-6-アルキル-オキシ)、C2-6-アルケニルオキシ、オキソ(ケト又はアルデヒド官能基を形成)、アリール、アリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルカルボニル、アミノ、モノ-及びジ(C1-6-アルキル)アミノ、ハロゲン、から成る群から選択される基によって、1回又は数回、好ましくは1〜3回置換されていることを意味するように意図され、ここで、任意のアリール及びヘテロシクリルは、任意に置換されたアリール及びヘテロシクリルについての下記の具体的な記載のように置換される。
【0062】
「ハロゲン」は、フロロ、クロロ、ブロモ、及びヨードを含む。
【0063】
本明細書で用いる場合、「アリール」という語は、完全な又は部分的な芳香族の環状炭素又は環状系、例えばフェニル、ナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、アントラシル(anthracyl)、フェナントラシル(phenanthracyl)、ピレニル、ベンゾピレニル、フルオレニル及びキサンテニル、を意味するように意図され、とりわけフェニルが好ましい例である。
【0064】
「ヘテロシクリル」という語は、飽和された、部分的に不飽和の、部分的に芳香族の、又は完全に芳香族の環状炭素又は環系を意味するように意図され、ここで、一以上の炭素原子がヘテロ原子、例えば窒素(=N-又は-NH)、硫黄(-S-)、及び/又は酸素(-O-)原子で置換される。ここで、そのようなヘテロシクリル基の例は、オキサゾリル、 オキサゾリニル、オキサゾリジニル、イソキサゾリル、イソキサゾリニル、イソキサゾリジニル、オキサジアゾリル、オキサジアゾリニル、オキサジアゾリジニル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、 ピロリニル、ピロリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピペリジニル、コウマリル(coumaryl)、フリル、キノリル、 ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾジアゾリル、ベンゾキソゾリル、ジア-ゾリル、ジアゾリニル、ジアゾリジニル、トリアゾリル、トリアゾリニル、トリアゾリジニル、テトラゾール等である。好ましいヘテロシクリル基は、5-、6- 又は 7-員の一環基、例えばイソキサゾリル、イソキサゾリニル、オキサジアゾリル、オキサジアゾリニル、ピロリル,ピロリニル、ジアゾリル、ジアゾリニル、トリアゾリル、トリアゾリニル、イミダゾリル、イミダゾリニル等である。
【0065】
「複素環」という語は、「ヘテロシクリル」において定義されたものに相当する環を意味するように意図される。
【0066】
「アリール」、「ヘテロシクリル」及び「複素環」という語に関して、「任意に置換された」という語は、問題の基が、一回又は数回、好ましくは1-3回、ヒドロキシ(エノール系で存在する場合、互変異性のケト型で表される)、C1-6-アルキル、C2-6-アルケニル、フェニル、ベンジル、C1-6-アルコキシ、オキソ(互変異性のエノール型であらわされる)、カルボキシ、C1-6-アルコキシカルボニル、 C1-6-アルキルカルボニル、アミノ、モノ-及びジ(C1-6-アルキル)アミノ、ジハロゲン-C1-4-アルキル、トリハロゲン-C1-4-アルキル、及びハロゲンから選択される基で置換され得ることを意味するように意図される。
【0067】
最も典型的な置換基の例は、ヒドロキシル、C1-4-アルキル、フェニル、ベンジル、C1-4-アルコキシ、オキソ、アミノ、モノ-及びジメチルアミノ及びハロゲンである。
【0068】
R1及びR2が水素、任意に置換されたC1-6-アルキル、任意に置換されたC2-6-アルケニル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたヘテロシクリルから成る群から独立的に選択され得るという事実の他に、-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2モチーフの一部が複素環の一部であることも可能であり、一方で、該モチーフの他の部分がZ1、Z2、R1及びR2のそれぞれで定義された意味を有していてもよい。幾つかの興味深い態様において、-C=N-Z1-R1は、1,2-ジアゾール環、イソキサゾール環、1,2,4-トリアゾール環、及び1,2,4-オキサジアゾール環から成る群から選択される複素環の一部を形成することもでき、或いは、-C-NH-Z2-R2は、1,2-ジアゾリン環、イソキサゾリン環、1,2,4-トリアゾリン環、及び1,2,4-オキサジアゾリン環から成る群から選択される複素環の一部を形成することもできる。そのような複素環は、上記定義のように置換されることもできる。
【0069】
ある態様において、少なくともR1及びR2の一つは水素であり、例えば、何れも水素である。さらに、ある態様において、前述の態様を併用し、少なくともZ1及びZ2の一つが単結合であり、例えば何れも単結合である。特別な態様において、R1及びR2は、何れも水素であり、Z1及びZ2は何れも単結合である。
【0070】
-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2モチーフが、安定化剤(iiib)の安定化効果に特に重要であると考えられている。特に、-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2モチーフは、VII因子ポリペプチドの基質のアルギニン部分に似ていると考えられている。
【0071】
より特定な態様において、安定化剤(iiib)は、-C-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2モチーフを含むアミジン化合物及び>N-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2モチーフを含むグアニジン化合物から成る群から選択される少なくとも一つである。ある態様において、安定化剤(iiib)は、モチーフ-C6H4-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2を含むベンズアミジンから成る群から選択される少なくとも一つのアミジン化合物であり、ここでC6H4は任意に置換されたベンゼン環を意味し、そのベンズアミジン (R1及びR2が水素であり、Z1及びZ2が単結合である)は特定の態様を構成する。
【0072】
それらの他の特定の態様において、ベンズアミジンはモチーフ>N-C6H4-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2を含み、ここでC6H4は任意に置換されたベンゼン環を意味し、即ち、o-アミノ-ベンズアミジン、m-アミノ-ベンズアミジン又はp-アミノ-ベンズアミジンを意味し、そのp-アミノ-ベンズアミジン類、例えばp-アミノ-ベンズアミジンは、現在最も見込みがある。
【0073】
p-アミノ-ベンズアミジンのさらなる説明のための例は、アベンティス(Aventis)によってEP 1 162 194 A1で開示されているもので、特に請求項1-6及び段落[0009]-[0052]の定義を参照されたい。また、EP 1 270 551 A1、特に請求項1及び2及び段落[0010]-[0032]を参照されたい。
【0074】
他の態様において、安定化剤(iiib)は、-CH2-NH-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2モチーフを含むグアニジン化合物から成る群から選択される少なくとも一つのグアニジン化合物である。グアニジン化合物の例は、アルギニン, アルギニン誘導体 及び 少なくとも一つのアルギニン残基を含む2-5アミノ酸残基のペプチド、から成る群から選択される化合物である。アルギニンは、特定の態様を構成する。
【0075】
「アルギニン誘導体」という語は、アルギニン 相同体、N-末端に官能性付与されたアルギニン(例えば、N-メチル化された及びN-アシル化された(例えばアセチル化された)誘導体)、C-末端に官能性付与されたアルギニン(例えばC-アミド化された、C-アルキルアミド化された、及びC-アルキル化された誘導体)、及びそれらの組合せを包含するよう意図される。
【0076】
上記のように、安定化剤の重要な一つのモチーフは、-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2である。安定化剤の他の部分も、特に安定化効果の最適化、及び患者の耐性に関して重要である。典型的には、安定化剤は、式Y-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2を有し、ここでYは、有機ラジカルである。ラジカルYは、典型的には、安定化効果の有効性を改良するために選択される。また、ラジカルYは、一以上のさらなる式-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2のモチーフを含むことが出来る。
【0077】
安定化剤の分子量は、典型的には最大で1000 Daであり、例えば最大で500 Daである。
【0078】
安定化剤(又は剤群)(iiib)の濃度は、典型的には少なくとも1 μMである。望ましい(又は必要な)濃度は、典型的には選択された安定化剤(又は剤群)に依存し、より具体的には、選択された安定化剤の、VII因子ポリペプチドに対する結合親和力に依存する。
【0079】
異なる態様において、該安定化剤(iiib)は、少なくとも5 μM、少なくとも10 μM、少なくとも20 μM、少なくとも50 μM、少なくとも100 μM、少なくとも150 μM、少なくとも250 μM、少なくとも500 μM、少なくとも1 mM、少なくとも2 mM、少なくとも4 mM、少なくとも5 mM、少なくとも8 mM、少なくとも9 mM、少なくとも10 mM、少なくとも15 mM、少なくとも20 mM,例えば20-2000 μM、50-5000 μM、0.1-10 mM、0.2-20 mM,又は0.5-50 mMの濃度で存在する。
【0080】
一つの態様において、該安定化剤(iiib)はベンズアミジンであり、該剤の濃度は少なくとも0.5 mM,例えば少なくとも2 mMであり、或いは、置換されたベンズアミジンがより強力であるために、より低濃度で加えられ得ることが把握される。
【0081】
一つの態様において、該安定化剤(iiib)はアルギニンであり、該剤の濃度は少なくとも2 mM,例えば少なくとも10 mMである。
【0082】
一以上の金属含有剤(iiia)及び一以上の安定化剤(iiib)が、組み合わせて用いられ得ることが理解されるであろう。
【0083】
非イオン界面活性剤(iv)
他の態様において、安定化剤(iii)(例えば金属含有剤(iiia)又は剤(iiib))の存在に関する上記態様と組み合わせて、該組成物は非イオン界面活性剤(iv)を含む。界面活性剤(界面活性剤(detergent)としても知られる)は一般に、気/液相互作用誘導ストレス及び溶液/表面誘導ストレス(例えば、タンパク質の凝集をもたらす)からタンパク質を保護する剤を含む。
【0084】
典型的には、非イオン界面活性剤(iv)は、ポリソルベート, ポロキサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレン/ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレンステアラート、及びポリオキシエチレンヒマシ油から選択される少なくとも一つである。
【0085】
非イオン界面活性剤の説明のための例は、Tween(登録商標)、ポリソルベート20、ポリソルベート80、Brij-35 (ポリオキシエチレンドデシルエーテル)、ポロキサマー188、ポロキサマー407、PEG8000、プルロニック(Pluronic)(登録商標)ポリオール、ポリオキシ-23-ラウリルエーテル、Myrj 49、ソルトール HS15、及びクレオモフォル(Cremophor)Aである。
【0086】
一つの態様において、非イオン界面活性剤は0.005-2.0重量%の量で存在する。
【0087】
張度変更剤−高イオン強度
安定化剤(iii) (例えば、金属含有剤(iiia)又は剤(iiib)) 及び/又は非イオン界面活性剤(iv),の存在に関する上記態様と併用されるさらなる態様において、該組成物は張度変更剤(v)を含む。
【0088】
本明細書で用いられるように、「張度変更剤」は溶液の浸透圧重量モル濃度に寄与する剤を含む。張度変更剤(v)は、中性塩、アミノ酸、2-5アミノ酸残基のペプチド、モノサッカリド、ジサッカリド、ポリサッカリド、及び糖アルコールから成る群から選択される少なくとも一つの剤を含む。ある態様において、該組成物は二以上のそのような剤を組み合わせて含む。
【0089】
「中性塩」とは、水溶液に溶解したとき、酸にも塩基にもならない塩を意味する。
【0090】
一つの態様において、少なくとも一つの張度変更剤(v)は、ナトリウム塩、カリウム塩、及びマグネシウム塩、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、及びマグネシウムラエブレート(laevulate)から成る群から選択される中性塩である。
【0091】
さらなる態様において、張度変更剤(v)は、塩化マグネシウム及び酢酸マグネシウムから成る群から選択される少なくとも一つと組み合わせて塩化ナトリウムを含む。
【0092】
さらなる態様において、張度変更剤(v)は、塩化ナトリウム、スクロース、グルコース、及びマンニトールからなる群から選択される少なくとも一つである。
【0093】
異なる態様において、張度変更剤(v)は、少なくとも1 mM、少なくとも5 mM、少なくとも10 mM、少なくとも20 mM、少なくとも50 mM、少なくとも100 mM、少なくとも200 mM、少なくとも400 mM、少なくとも800 mM、少なくとも1000 mM、少なくとも1200 mM、少なくとも1500 mM、少なくとも1800 mM、少なくとも2000 mM、又は少なくとも2200 mMの濃度で存在する。
【0094】
一連の態様において、張度変更剤(v)は、5〜2200 mMの濃度で存在し、例えば25〜2200 mM、50〜2200 mM、100〜2200 mM、200〜2200 mM、400〜2200 mM、600〜2200 mM、800〜2200 mM、1000〜2200 mM、1200〜2200 mM、1400〜2200 mM、1600〜2200 mM、1800〜2200 mM、又は 2000〜2200 mM; 5〜1800 mM、25〜1800 mM、50〜1800 mM、100〜1800 mM、200〜1800 mM、400〜1800 mM、600〜1800 mM、800〜1800 mM、1000〜1800 mM、1200〜1800 mM、1400〜1800 mM、1600〜1800 mM; 5〜1500 mM、25〜1400 mM、50〜1500 mM、100〜1500 mM、200〜1500 mM、400〜1500 mM、600〜1500 mM、800〜1500 mM、1000〜1500 mM、1200〜1500 mM; 5〜1200 mM、25〜1200 mM、50〜1200 mM、100〜1200 mM、200〜1200 mM、400〜1200 mM、600〜1200 mM、又は 800〜1200 mMの濃度で存在する。
【0095】
本発明の好ましい態様において、少なくとも一つの張度変更剤(v)は、イオン強度変更剤(v/a)である。
【0096】
本明細書で用いられるように、「イオン強度変更剤」という語は、溶液のイオン強度に寄与する剤を含む。該剤は、これらに限定されないが、中性塩、アミノ酸、2〜5アミノ酸残基のペプチドを含む。ある態様において、該組成物は二以上のそのような剤を組み合わせて含む。
【0097】
イオン強度変更剤(v/a)の好ましい例は、中性塩、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化マグネシウムである。好ましい剤(v/a)は、塩化ナトリウムである。
【0098】
「イオン強度」という語は、等式:μ=1/2Σ([i](Zi2))で定義される溶液のイオン強度(μ)であり、ここで、μはイオン強度であり、[i]はイオンのミリモーラー濃度であり、Ziはそのイオンの電荷(+又は-)である(例えば、Solomon, Journal of Chemical Education, 78(12):1691-92, 2001; James Fritz and George Schenk: Quantitative Analytical Chemistry, 1979を参照)。
【0099】
本発明の異なる態様において、該組成物のイオン強度は、少なくとも50、例えば少なくとも75、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも650、少なくとも800、少なくとも1000、少なくとも1200、少なくとも1600、少なくとも2000、少なくとも2400, 少なくとも2800, 又は少なくとも3200である。
【0100】
ある特定の態様において、張度変更剤(v)及びイオン強度変更剤(v/a)の総濃度は、任意の他の成分が張度及びイオン強度に及ぼす影響に依存して、1-500 mMの範囲であり、例えば1-300 mM、又は10-200 mM、又は20-150 mMの範囲である。
【0101】
一つの態様において、該組成物は等張性である;或いは、高張性である。「等張性」という語は、「血清と等張」を意味し、即ち、約300±50ミリオスモル/kgである。張度は、
投与の前の溶液の浸透圧重量モル濃度を測定することを意味する。「高張性」は、血清の生理学的なレベル以上の浸透圧重量モル濃度のレベル、例えば300±50ミリオスモル/kg以上のレベルを指定することを意味する。
【0102】
また、本発明の特定の態様は、安定化剤(iii)と、ナトリウム塩及びマグネシウム塩から成る群から選択されるかなり高い濃度のイオン強度変更剤(v/a)との組合せに関する。この態様において、イオン強度変更剤(v/a)、即ちナトリウム塩及び/又はマグネシウム塩は、15〜1000 mM、例えば 25〜1000 mM、50〜1000 mM、100〜1000 mM、200〜1000 mM、300〜1000 mM、400〜1000 mM、500〜1000 mM、600〜1000 mM、700〜1000 mM; 15〜800 mM、25〜800 mM、50〜800 mM、100〜800 mM、200〜800 mM、300〜800 mM、400〜800 mM、500〜800 mM; 15〜600 mM、25〜600 mM、50〜600 mM、100〜600 mM、200〜600 mM、300〜600 mM; 15〜400 mM、25〜400 mM、50〜400 mM、又は100〜400 mMの濃度で存在する。
【0103】
これらの態様の中で、ナトリウム塩は塩化ナトリウムであってよく、マグネシウム塩は、
塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、マグネシウムラエブレート(マグネシウムlaevulate)、及び強酸のマグネシウム塩から成る群から選択されてよい。さらに特異的な態様において、マグネシウム塩は、塩化ナトリウムと組み合わせて用いられる。
【0104】
一つの現在好ましい態様において、該組成物は、マグネシウム(Mg3+)塩から選択される一以上のイオン強度変更剤を含み、例えば、塩化マグネシウム, 酢酸マグネシウム, 硫酸マグネシウム, グルコン酸マグネシウム, マグネシウムラエブレート(laevulate),強酸のマグネシウム塩から成る群から選択される一以上の塩を含む。これの一つの態様において、マグネシウム(Mg3+)塩(群)の濃度は、少なくとも2 mMであり、例えば少なくとも5 mM 又は約10 mMである。
【0105】
他の成分
上記成分に加えて、液状水性医薬組成物は、調製、処方、安定性、又は該組成物の投与において有益なさらなる成分を含み得る。
【0106】
従って、該組成物は、さらに抗酸化剤(vi)を含むことが出来る。異なる態様において、該抗酸化剤は、L-メチオニン、D-メチオニン、メチオニンアナログ、メチオニン-含有ペプチド、メチオニン-相同体、アスコルビン酸、システイン、ホモシステイン、グルタチオン、シスチン、及びシスタチオニンから成る群から選択される。好ましい態様において、抗酸化剤はL-メチオニンである。
【0107】
抗酸化剤の濃度は、典型的には、0.1〜5.0 mg/mLであり、例えば0.1〜4.0 mg/mL、0.1〜3.0 mg/mL、0.1〜2.0 mg/ml、又は0.5〜2.0 mg/mLである。
【0108】
特定の態様において、該組成物は抗酸化剤を含まない;その代わりとしてVII因子ポリペプチドの酸化に対する感受性は、大気の空気を排除することによって制御される。抗酸化剤の使用は、もちろん大気の空気の除外と組み合わせてもよい。
【0109】
従って、本発明はまた、本明細書で定義される液状水性医薬組成物、及び任意に不活性ガスを含む、気密コンテナ(例えば、バイアル又はカートリッジ(例えばペンアプリケーターのためのカートリッジ))をも提供する。この側面は下記でさらに説明する。
【0110】
必須の成分、安定化剤(iii)、非イオン界面活性剤(iv)、張度変更剤(v)及び任意の抗酸化剤(vi)に加えて、該医薬組成物はさらに保存剤(vii)を含んでも良い。
【0111】
保存剤は、該組成物中において、微生物の増殖を遅らせるために含まれることができ、これによって、VII因子ポリペプチドの「複数使用(multiple use)」パッキングを可能にする。保存剤の例は、フェノール、ベンジルアルコール、オルト-クレゾール、メタ-クレゾール、パラ-クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンズアルコニウムクロリド、及びベンゼトニウム(benzethonium)クロリドを含む。保存剤は通常、pHの範囲及び保存剤のタイプに依存して0.1-20 mg/mLの濃度で含まれる。
【0112】
さらに、該組成物は、アミド分解及び異性化を抑制することのできる薬剤を含むこともできる。
【0113】
特定の態様
本発明者らは、現在、以下の態様を特に有利なものと確認している:
以下を含む液状水性医薬組成物:
0.1-10 mg/mLのVII因子ポリペプチド(i);
pHを約5.0〜約9.0の範囲に維持するのに適したバッファー剤(ii);及び
少なくとも5 mM濃度の張度変更剤(v)、
ここで、非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比は0.5より低い。
【0114】
以下を含む液状水性医薬組成物:
0.1-10 mg/mLのVII因子ポリペプチド(i);
pHを約5.0〜約9.0の範囲に維持するのに適したバッファー剤(ii);
非イオン界面活性剤(iv);及び
少なくとも5 mM濃度の張度変更剤(v)、
ここで、非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比は、0.5より低い。
【0115】
以下を含む液状水性医薬組成物:
0.1-10 mg/mLのVII因子ポリペプチド(i);
pHを約5.0〜約9.0の範囲に維持するのに適したバッファー剤(ii);
安定化剤(iii);
非イオン界面活性剤(iv);及び
少なくとも5 mM濃度の張度変更剤(v)、
ここで、非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比は、0.5より低い。
【0116】
以下を含む液状水性医薬組成物:
0.1-10 mg/mL of a VII因子ポリペプチド(i);
pHを約5.0〜約9.0の範囲に維持するのに適したバッファー剤(ii);
少なくとも5 μM濃度の銅-含有剤(iiia)及び/又は少なくとも100 μM濃度のマンガン-含有剤(iiia);
非イオン界面活性剤(iv);及び
少なくとも5 mM濃度の張度変更剤(v)、
ここで、非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比は、0.5より低い。
【0117】
以下を含む液状水性医薬組成物:
0.1-10 mg/mLのVII因子ポリペプチド(i);
pHを約5.0〜約9.0の範囲に維持するのに適したバッファー剤(ii);
モチーフ-C6H4-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2を少なくとも5 μMの濃度で含む少なくとも一つの安定化剤(iiib)及び/又はモチーフ-CH2-NH-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2を少なくとも500 μMの濃度で含む少なくとも一つの安定化剤(iiib);
非イオン界面活性剤(iv);及び
少なくとも5 mM濃度の張度変更剤(v)、
ここで、非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比は、0.5より低い。
【0118】
上記の態様において、バッファー剤は好ましくはリン酸を含む。
【0119】
本発明の組成物の性質
本発明の組成物は、VII因子ポリペプチドの安定な、好ましくはすぐ使用できる組成物として有用である。さらにその上、ここで与えられた特定の原理、指針及び態様は、必要な変更を加えれば、VII因子ポリペプチドの大量貯蔵にも等しく適用可能であると考えられる。
【0120】
該組成物は、2℃〜8℃の温度範囲で貯蔵された場合、典型的には少なくとも六ヶ月安定であり、好ましくは36ヶ月まで安定である。該組成物は、化学的及び/又は物理的に安定であり、特に、2℃〜8℃で少なくとも6ヶ月は化学的に安定である。
【0121】
「安定」という語は、(i)2℃〜8℃で6ヶ月貯蔵した後、一段階凝血アッセイ(アッセイ4)で測定されたとき、該組成物が、最初の生物学的活性の少なくとも50%を保持すること、或いは、(ii)2℃〜8℃で6ヶ月貯蔵した後、初期のサンプルが重鎖分解産物を含まないと仮定して(即ち、VII因子ポリペプチドのみが割合の算出に入れられる)、重鎖分解産物の含有量が最大で40%(w/w)であること、を意味するように意図される。
【0122】
一段階凝血アッセイ(アッセイ4)によって測定されるように生物学的活性を測定することを目的として、試験されるサンプルは、50 mM Tris (pH 7.5), 0.1% BSAに希釈され、100 μlが100 μlのVII因子欠損血漿及び10 mM Ca2+を含む200 μlのトロンボプラスチンCと共にインキュベートされる。凝固時間が測定され、参照基準またはクエン酸正常ヒト血漿のプールの段階希釈を用いた標準曲線と比較される。
【0123】
好ましくは、安定な組成物は、その最初の活性の少なくとも70%,例えば少なくとも80%,又は少なくとも85%, 又は少なくとも90%, 又は少なくとも95%を、2℃〜8℃で6ヶ月の貯蔵の後に保持する。
【0124】
重鎖分解産物の含有量を測定する目的で、逆相HPLCを専有の4.5×250 mm ブチル結合シリカカラム、粒径5 μm、孔サイズ300Åで行った。カラム温度:70℃。A-バッファー: 0.1% v/v トリフルオロ酢酸。B-バッファー: 0.09% v/v トリフルオロ酢酸, 80% v/v アセトニトリル。該カラムは、直線勾配Xから(X+13)% B、30分で溶出した。Xは、FVIIaの溶出が約26分の保持時間を有するように調整した。流速: 1.0 mL/分。検出: 214 nm。ロード: 25 μg FVIIa。
【0125】
「物理的に安定」という語は、視覚的に清澄なままである組成物を示すように意図される。該組成物の物理的安定性は、異なる温度で種々の期間の組成物の貯蔵の後に、視覚的検査及び濁度によって評価される。該組成物の視覚的検査は、暗い背景と鋭い焦点光で行われる。組成物は、視覚的濁度が示された場合、物理的不安定として分類される。
【0126】
VII因子ポリペプチドの「物理的安定性」という語は、VII因子ポリペプチドの、ダイマー、オリゴマー及びポリマーの形態での、不溶性及び/又は溶解性の凝集の形成、並びに分子の任意の構造的な変形及び変性に関する。
【0127】
「化学的安定」という語は、2〜8℃で6ヶ月貯蔵した後に、一段階凝血アッセイ(アッセイ4)で測定したとき、その最初の生物学的活性の少なくとも50%を保持する組成物を示すように意図される。
【0128】
「化学的安定性」という語は、促進される条件で、溶液で貯蔵したときのVII因子ポリペプチドの何らかの化学的変化の形成に関するよう意図される。その例には、加水分解、アミド分解、異性化及び酸化、並びに結果としてVII因子ポリペプチドの断片を形成する酵素的分解である。特に、硫黄含有アミノ酸は、スルホキシド(sulphoxides)に相当するフォーメーションを伴う酸化を起こしやすい。
【0129】
本発明の組成物の調製
さらなる側面において、本発明は、本発明の液状水性医薬組成物の調製方法を提供する。
【0130】
従って一つの態様において、VII因子ポリペプチドの液状水性医薬組成物を調製する方法は、pHを約5.0〜約9.0の範囲に維持するのに適したバッファー剤(ii)を含む溶液中のVII因子ポリペプチド(i)を準備する工程を具備し;同時に、最終的な組成物中で、非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比が0.5より低いことを保証する。
【0131】
他の態様において、VII因子ポリペプチドの液状水性医薬組成物を調製する方法は、pHを約5.0〜約9.0の範囲に維持するのに適したバッファー剤(ii)を含む溶液中のVII因子ポリペプチド(i);少なくとも一つの金属含有剤(iii)、ここにおいて、該金属は、酸化状態が+IIの第一遷移系列金属から成る群から選択される;及び非イオン界面活性剤(iv);を準備する工程を具備し、同時に、最終的な組成物中で、非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比が0.5より低いことを保証する。
【0132】
またさらに他の態様において、VII因子ポリペプチドの液状水性医薬組成物を調製する方法は、
pHを約5.0〜約9.0の範囲に維持するのに適したバッファー剤(ii)を含む溶液中の少なくとも0.01 mg/mL濃度のVII因子ポリペプチド(i);及び、-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2モチーフを含む少なくとも一つの安定化剤(iiib)
ここにおいて
Z1及びZ2は、-O-、-S-、-NRH-及び単結合から成る群から独立的に選択され、ここで、RH は、水素、C1-4-アルキル、アリール及びアリールメチルから成る群から選択され、及び、R1及びR2は、水素、任意に置換されたC1-6-アルキル、任意に置換されたC2-6-アルケニル、任意に置換されたアリール、任意に置換された複素環から成る群から独立的に選択され、或いは、
Z2及びR2は上記定義の通りであり、-C=N-Z1-R1は複素環の一部を形成し、或いは、
Z1及びR1は上記定義の通りであり、-C-NH-Z2-R2は複素環の一部を形成し、或いは、
-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2は複素環を形成し、ここで、-Z1-R1-R2-Z2-はビラジカルである;
を準備する工程を具備し、同時に、最終的な組成物中で、非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比が0.5より低いことを保証する。
【0133】
非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比を、0.5より低く維持することは、適切な開始物質を選択することによって達成され得ることが理解されるであろう。ここで、濃度「フリー」の(即ち非錯体)カルシウムイオンは、極めて低いか、或いはカルシウムイオンを結合するためにカルシウムキレート剤を添加することによる。後者の場合、カルシウムキレート剤は、典型的には濃度「フリー」のカルシウムイオンに略相当する量で添加される。
【0134】
使用方法
本明細書において定義された液状水性医薬組成物は、すぐ使用できる組成物又はすぐ使用できる組成物の調製のための原体溶液の何れの医薬の分野でも用いられることができる。よって、本発明は特に、医薬として、特にはVII因子応答性症候群の治療のための医薬として、使用するための本明細書で定義された液状水性医薬組成物を提供する。
【0135】
結果的に、本発明は、本明細書で定義された液状水性医薬組成物の使用、VII因子-応答性症候群の治療のための医薬の調製のため、並びにVII因子-応答性症候群の治療のための方法、本明細書で定義された液状水性医薬組成物の有効量を、それらを必要とする被験者に投与することを含む方法を提供する。本発明の製剤は、VII因子応答性症候群、例えば、凝固因子欠損(例えば、血友病 A, 血友病 B, 凝固因子XI欠損, 凝固因子VII欠損); 血小板減少症 又はフォンウィルブランド病、又は凝固因子阻害剤によって引き起こされる物を含む出血性疾患のような何れかの症候群、及び脳内出血、又は何らかの原因による過剰出血の治療に用いられ得る。該製剤は、外科的又は他の外傷に関する患者に、或いは抗凝固治療を受けている患者に投与されることができる。
【0136】
「有効量」という語は、有資格医師によって決定されるべき有効な投与量であり、所望の反応を達成するための滴定投薬量(titrate dosages)である。投与量について考慮される要因は、効力、生物学的利用能、所望の薬物動態学的/薬力学的プロフィール、治療の状況、患者に関連する要因(例えば、体重、健康、年齢など)、同時に投与される医薬の存在(例えば、抗凝固剤)、投与時間、又は薬剤医師には周知の他の要因を含む。
【0137】
「治療」という語は、疾患、状態、又は疾病と闘う目的で、被験者、例えば哺乳類、特にヒトの管理及び看護として定義され、病徴又は合併症の発症の阻止、或いは該症徴又は合併症の軽減、或いは該疾患、状態、又は疾病の排除のために、VII因子ポリペプチドを投与することを含む。VII因子ポリペプチドを含む本発明の医薬組成物は、そのような治療を必要とする被験者に非経口的に投与されうる。非経口投与は、シリンジ、任意にペン様シリンジを用いて、皮下注射、筋肉内注射又は静脈内注射によって行うことができる。或いは、非経口投与は、注入ポンプによって行うこともできる。
【0138】
重要な態様において、該医薬組成物は、当該分野で周知の方法に従って、皮下注射、筋肉内注射又は静脈内注射に適用される。本明細書で定義された医薬組成物中の高濃度の金属イオン(特に、金属含有剤(iiia)の二価金属イオン)は、ある群の患者には不利益であり得る。本発明はそれ故、液状水性医薬組成物中の金属イオン濃度を低下させるための、使用前の方法をも提供する。ここにおいて、前記方法は、本明細書で定義された液状水性医薬組成物を陽イオン交換物質と接触させる工程を含む。
【0139】
陽イオン交換物質の例は、Chelex-100 (Fluka-Riedel/Sigma-Aldrich)を含む。陽イオン交換物質、例えばChelex-100は、無菌コンテナ、例えばガラス又はプラスチックカートリッジに含まれることが好ましい。
【0140】
液状水性医薬組成物は、使用する直前に、例えば該陽イオン交換物質を含むカートリッジを通すことによって、陽イオン交換物質と接触されると思われる。特別な態様において、該カートリッジはシリンジ構築の不可欠な部分であると想像できる。
【0141】
医薬組成物のための適切なコンテナ
上記のように、本発明は、本明細書で定義された液状水性医薬組成物、及び任意に不活性ガスを含む気密コンテナ(例えば、バイアル又はカートリッジ(例えばペンアプリケーターのためのカートリッジ))を提供する。不活性ガスは、窒素、アルゴンなどから成る群から選択される。該コンテナ(例えば、バイアル又はカートリッジ)は、典型的にはガラス又はプラスチックから成り、特にガラス、任意にゴム隔壁又は医薬組成物を完全に保存しながらも、貫通を可能にする他の閉鎖手段によって閉じられる。これの特別な態様において、該組成物は、保存剤(vii)を含まない。さらなる態様において、該コンテナは、密封されたバッグ、例えば、薄層からなる(例えば、金属(例えばアルミニウム)薄層からなるプラスチックバッグ)ような、密封されたプラスチックバッグ中に封入されたバイアル又はカートリッジである。より好ましくは、気密、少なくとも部分的に充填されたコンテナは、本明細書で定義された液状水性医薬組成物、及び任意に不活性ガスを含み、該コンテナは、(i)壁部及び(ii)前記壁部の部分を構成しない一以上の閉鎖手段を具備する。好ましくは、該医薬組成物は保存剤(vii)を含まない。
【0142】
特に、該コンテナの内壁物質は、シリカコーティングガラス、シリコーンコーティングガラス、非環式オレフィンのポリマー、シクロオレフィンポリマー、及びシクロオレフィン/直鎖オレフィンコポリマーから成る群から選択される物質である。
【0143】
一つの変異形において、該コンテナの内壁は、シリカ(シリコンジオキシドSiO2)のコーティングに適用されるための種々のグレード/タイプのガラスを含む;非常に良好に適したそのような物質の一つは、シリカでコーティングされたいわゆる「I型」ガラス(欧州薬局方, Ph. Eur.で定義されたとおり)である。I型ガラス及び他の型の医薬適用ガラス(II型、III型及びIV型)の定義及び性質決定試験には、例えば次のワールドワードウェブアドレスの欧州薬局方の3.2.1節を参照されたい:http://online.pheur.org/ 404TER/ep404.dll?f=templates&fn=main-h.htm&2.0。
【0144】
I型ガラスコンテナは、欧州薬局方(4th Edition, on-line)の3.2.1節には「中性ガラスであり、ガラス自体の化学的組成のために高い加水分解耐性を有する」のように記載されており、ここで中性ガラスとは次のように定義されている「中性ガラスは、三酸化二硼素、アルミニウム又はアルカリ土類酸化物の有意な量を含むホウケイ酸ガラスである。その組成のために、中性ガラスは、高い熱衝撃耐性及び非常に高い加水分解耐性を有する。」
約0.1 μmから約0.2 μmの範囲の実質的に均一な厚さが、一般には望ましいと考えられているにも関わらず、このタイプのコンテナの内壁上のシリカコーティングは、好ましくは、少なくとも約0.05 μmの実質的に均一な厚さを有する。化学蒸着法(CVD)は、そのようなガラス表面に対するシリカの実質的に均一な厚さのコーティングに適用するのに極めて適していると思われ、そして、
シリカコーティングが該コンテナの内表面にCVD技術によって堆積され、本発明の内容において使用するのに極めて適したI型ガラスコンテナ(例えばバイアル)は、例えばスコットグラスコンター(Schott Glaskontor)(Mullheim/Baden, Germany)のスコット(Schott)I型プラス(登録商標)コンテナが商業的に入手可能である。例えば、CVD技術を詳述しているワールドワイドウェブ上の次の記事が参考になり得る:http://www.azom.com/details.asp?ArticleID=1552。
【0145】
上記のように、コンテナの内壁のためのさらに好ましい物質は、通常、水-浸出可能(leachable)物質又は種-を除去するために内表面を洗浄するか又は水又は他の水性媒体に浸漬した後、シリコンでコーティングされた種々のグレード/タイプのガラスを含む。先述のように、これに関してガラスの好ましい型はI型ガラス(欧州薬局方)である。
【0146】
「シリコン」という語は、シリコンそれ自体のみならず、本明細書では広く用いられ、典型的には、重合体のジアルキル化、ジアリール化又はモノアルキル化+モノアリール化シロキサン、また、コポリマー、典型的には、シリコン断片及び例えばポリスチレン、ポリオレフィン、ポリアミド又はポリウレタンのような他のポリマー物質を含む、ブロック及びグラフトコポリマーである。
【0147】
コーティング物質は、適切にはポリ(ジアルキル-シロキサン)オイル又はコポリマーであり、これに関してポリ(ジアルキル-シロキサン)の適切なタイプは、ポリ(ジメチル-シロキサン)(PDMS)、ポリ(ジプロピル-シロキサン)及びポリ(ジヘキシル-シロキサン)を含む。
【0148】
該組成物に適用する場合、該オイルの粘度が重要であり、例えば問題のコンテナが、該コンテナから液体(タンパク質製剤)を排出するために用いられる置換可能なプランジャーを含むカートリッジなどである場合に生じるスリップ-スティック減少の排除のために、特に重要である。より粘稠であるほど、プランジャーの滑らかな動きが妨げられるために、スリップ-スティック減少の危険性はより少ない。一つの態様において、コーティングは直鎖又は分枝鎖の親水性化されたポリ(ジアルキル-シロキサン)オイルを含む。該組成物に適用される場合、オイルの粘度は、好ましくは200,000 センチストークス以上であり、例えば500,000 センチストークス以上である。
【0149】
シリコンコーティングは、架橋結合されたか又はゲル化されたシリコンオイル、例えば親水性化されたポリ(ジアルキル-シロキサン)オイル、又は架橋結合された、及び架橋結合されていないオイルの混合物を含むこともできる。架橋結合又はゲル化されたオイルを用いることによって、該オイルの遊走能力が著しく減少され、コーティングが固体物質と見なされる。
【0150】
架橋結合された、又は硬化された、シリコンオイルは、典型的には、後の工程においてコーティングを架橋するために用いられる反応基を有する、直鎖、又は分枝鎖のシリコンオイルを投与することによって得られる。多数の異なる利用可能な架橋結合方法があり、その例は、UV光の照射による硬化、上昇温度での加熱による硬化、及び水の存在下における硬化である。架橋結合されたシリコンオイルは、最初に、直鎖又は分枝鎖のシリコンオイルを添加し、次いで、オイルを高エネルギー放射源、例えば電子源又はX線源で照射することによっても得られる。架橋結合可能な医薬グレードのシリコンオイルの一つは、Dow Corning (MDX4-4159 Fluid)から供給されるMDX(登録商標)であり;他の適切なタイプは、約35% 水性エマルジョンとして供給される、Wacker E2 シリコンオイルを含む。
【0151】
他の態様において、シリコンコーティングは親水性化されたポリ(ジアルキル-シロキサン)ブロック及びグラフトコポリマーを含む。コポリマーは、ポリ(ジアルキル-シロキサン)の重合体セグメント、例えばPDMSを含む、任意のブロック及びグラフトコポリマーであってよい。該重合体のセグメントは、例えば、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリアミド又はポリウレタンの重合体セグメントと組み合わされて、所望のコポリマーを形成することができる。該コポリマーは、任意の適切な周知の方法で、例えば、系列的陰イオン重合体化、又は種々のグラフト方法によって調製される。
【0152】
シリコンコーティングの親水性化は、任意の適切な方法によって達成され、例えば、ガラス表面に適用された後に、該コーティングを酸化処理、例えばプラズマ処理又はコロナ処理に供することによって達成される。親水性化は、親水基又は鎖セグメントによるコポリマーのエンド-キャッピングによって達成されることもできる。該親水基は、例えば、負電荷の化学基又はホスホリルコリン(PC)基であってよく、及び、該鎖セグメントは、例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)又はポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(pHEMA)であってよい。
【0153】
プラズマ処理された表面は、親水性ポリマーセグメント又は官能基のカップリングによって、タンパク質吸着を減少させるために改変される。これらのポリマーセグメント又は官能基は、上記のものと同種であってよく、また、プラズマ処理の間に発生した官能基とさらに結合されてもよい。
【0154】
シリコンコーティングの厚さは、特定のコーティングに依存し、0.005〜10 μmが好ましく、0.01〜1 μmがより好ましい。最適な厚さは、寸法、形状及びコンテナのタイプに依存し、当該分野の技術者には容易に決定できる。例えば、置換可能なプランジャー又はピストン部分を備えたカートリッジの場合、コーティングが薄すぎると、使用中に破れる可能性があり、それ故、プランジャーと壁部の間の摩擦が上昇される。コーティングの厚さがあるプラトー値に達した時、たとえその厚さがさらに上昇しても、摩擦力は略一定になる。何れのコーティング組成物であっても、該コーティングは、コストを減少させるためにできる限り薄いことが好ましいであろう。そのような薄いコーティングは、適切には、0.005〜0.4 μmの厚さを有し、例えば0.015〜0.25 μm、より好ましくは約0.2 μmの厚さを有する。
【0155】
シリコンコーティングの移動能力に依存して、コーティングにおける親水性基は、周囲の空気の疎水性のために、表面の疎水性を残したコーティングを求める傾向がある。VII因子ポリペプチドの液状水性医薬組成物で充填されるべきコンテナの場合、それ故、−それらの水性液体製剤中のタンパク質がコンテナの内表面に吸着される傾向のために−液体タンパク質製剤が該コンテナ中に導入されるまでの貯蔵期間の間は、コーティングが親水性を残すことが望まれる。これは、コンテナを、コーティング過程が行われてすぐにタンパク質製剤で満たすことによって、最も簡単に達成される。
【0156】
上記表示の通り、本発明の内容におけるコンテナの内壁のためのさらに好ましい物質は、非-環式(即ち、直鎖-又は分枝鎖)オレフィンのポリマー、即ちポリアルケンを含む。そのような物質の中で、単一モノマーに由来する有用なポリマーは、構造中の部分結晶がおびただしい程度の、ポリエチレン及びポリプロピレンを含む。非環式オレフィンのコポリマー[例えば、エチレン(エテン) 及びプロピレン(プロペン)のコポリマー]は、本発明の内容における内壁物質として同様に興味深い。
【0157】
上記の表示の通り、コンテナの内壁のためにさらに好ましい物質は、シクロオレフィンポリマーを含み、それらの適切なタイプには、実質的に100%の5〜7員の脂環式炭化水素環が含まれる。適切な商業的入手可能コンテナは、シクロオレフィンポリマー物質から成り、CZ(登録商標)樹脂から製造された、ダイキョーセイコーLtd.(Tokyo, Japan.)から入手可能なコンテナを含む。このタイプの他の関連するポリマー物質は、ゼオノール(Zeonor)(登録商標)及びゼオネックス(Zeonex)(登録商標)(何れもNippon Zeon Co. Ltd. Tokyo, Japanによる)を含む。
【0158】
シクロオレフィン/直鎖オレフィンコポリマーの適切なタイプには、アモルファス構造を有する物質が含まれ、例えば、トパス(Topas)(登録商標)型(Ticona GmbH, Frankfurt am Main, Germanyから得られる)の極めて透明なコポリマーであり、これは、種々のグレードで入手可能である(例えば、Topas 8007, Topas 5013, Topas 6013, Topas 6015 及び Topas 6017)。
【0159】
一つの変異形において、コンテナ内壁物質として固相物質を有するコンテナは、約3〜約8のpHを有する水又は水溶液と接触して、40℃を超えない温度で、少なくとも24ヶ月インキュベートされたとき、最大で約3μMの三価の金属イオンを溶液中に放出する;該コンテナは、(i)壁部及び(ii)該壁部の部分を構成しない一以上の閉鎖手段を具備する。
【0160】
放出レベル/三価金属イオン濃度の許容される上限が約3μM(即ち、放出レベル≦約3 μM)であると考えられている(上記のように)にも関わらず、最大放出レベルが約2.5μM(即ち、≦約2.5 μM)、より望ましくは最大で約1μM(即ち、≦約1 μM)、例えば最大で約0.5μM(即ち、≦約0.5 μM)が有利であることが明らかにされている。
【0161】
本発明の後者の二つの側面の内容における三価金属イオンに関して、Al3+の放出が特に望ましくないことが明らかにされている;Fe3+は、その溶液中への放出を避けるべき三価金属イオンのさらなる例を構成する。三価金属イオンの溶液中への放出の回避に加えて、さらに、ある種の二価金属イオン、特にZn2+の溶液中への放出をさけることが望ましいと考えられる。これに関して、放出されたレベルは恐らく約3μM(即ち、放出レベル≦ 約3μM)、さらに好ましくは約1μM(即ち、放出レベル≦ 約1μM)、例えば最大で約0.5μM(すなわち、≦ 約0.5μM)であるべきである。
【0162】
この点に関して、コーティングされたガラス物質、特にシリカコーティングガラス(特にシリカコーティングI型ガラス)及びシリコンコーティングガラス(特にシリコンコーティングI型ガラス)が、本発明の種々の側面の内容においてとりわけ好ましい内壁物質であるからと言って、−三価又は二価イオンの溶液中への放出に関して避けることを設定する基準に従うために−ガラス表面に/で存在する抽出三価及び二価金属イオンのレベルを減少させる洗浄又は抽出処理に供される、ガラス、特にI型ガラス(欧州薬局方)を利用するのに十分な他の態様が存在することが可能であるといえるであろう。そのような処理は、熱水(好ましくは少なくとも90℃)又は他の水溶性媒体、例えば硫酸アンモニウム溶液への浸漬(それによる抽出)を含む。
【0163】
さらなる態様において、前記コンテナは、針で貫通できる、自己封着エラストマー隔膜を具備する閉鎖手段を含む、バイアル又はカートリッジである。特に、該コンテナは、それによってコンテナ中に存在する液体が前記コンテナから排出される置換可能なピストン手段をさらに具備するカートリッジである。
【実施例】
【0164】
一般の方法
割合は、溶液に溶解した固体及び溶液に混合した液体の何れも(重量/重量)である。例えば、トゥイーンは、100%ストック/溶液の重量である。
【0165】
VII因子ポリペプチドの生物活性を測定するのに適したアッセイ
本発明に従った有用なVII因子ポリペプチドは、単純な予備的インビトロ試験として行える適切なアッセイによって選択されうる。従ってこの詳細は、VII因子ポリペプチドの活性のための単純な試験(「インビトロ加水分解アッセイ」と題する)を開示する。
【0166】
インビトロ加水分解アッセイ(アッセイ1)
天然の(野生型)VIIa因子及びVII因子ポリペプチド(以降、何れも「VIIa因子」と称す)は比活性をアッセイされる。それらはまた、それらの比活性を直接比較するために、同時にアッセイされ得る。該アッセイは、マイクロタイタープレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark)上で行うことができる。色素生産性基質D-Ile-Pro-Arg-p-ニトロアニリド(S-2288, Chromogenix, Sweden)、最終濃度1 mMが、0.1 M NaCl, 5 mM CaCl2 及び 1 mg/mL ウシ血清アルブミンを含むpH 7.4の50 mM HEPES中のVIIa因子に加えられる(最終濃度100 nM)。405 nmでの吸光度が、SpectraMax(登録商標)340 プレートリーダー(Molecular Devices, USA)で連続的に測定される。20分間のインキュベーションの間に発生した吸光度を、酵素を含まないブランクウェルでの吸光度を減算した後、VII因子ポリペプチドと野生型VIIa因子の活性の間の比を算出するのに用いる:
比=(A405 nm VII因子ポリpeptide)/(A405 nm VIIa因子 野生型)。
【0167】
それらに基づいて、天然のVIIa因子と比較して、低い活性又は高い活性を有するVII因子ポリペプチドを同定する、例えば、VII因子ポリペプチドの活性と、天然のVII因子(野生型FVII)の活性の間の比が、約1.0対1.0以上であるようなVII因子ポリペプチドを同定する。
【0168】
VII因子ポリペプチドの活性は、例えばX因子(「インビトロタンパク分解アッセイ」)のような生理学的な基質を、適切には100〜1000 nMの濃度で用いて測定されることもでき、ここでXa因子の発生は、適切な色素生産性基質(例えば、S-2765)の添加の後に測定される。加えて、アッセイは、生理学的温度で行われる。
【0169】
インビトロタンパク分解アッセイ(アッセイ2)
天然の(野生型)VIIa因子及びVII因子ポリペプチド(以降、何れも「VIIa因子」と称す)それらの比活性を直接比較するために同時にアッセイされる。該アッセイは、マイクロタイタープレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark)上で行われる。0.1 M NaCl, 5 mM CaCl2を含む 100 μL 50 mM HEPES, pH 7.4中のVIIa因子(10 nM)及びX因子(0.8 マイクロM)及び1 mg/mL ウシ血清アルブミンを、15分インキュベートする。次いで、X因子の切断は、0.1 M NaCl, 20 mM EDTA及び1 mg/mL ウシ血清アルブミンを含む50 μL 50 mM HEPES, pH 7.4を添加することによって停止される。Xa因子発生量は、色素生産性基質Z-D-Arg-Gly-Arg-p-ニトロアニリド(S-2765, Chromogenix, Sweden)を最終濃度0.5 mMで加えることによって測定される。405 nmでの吸光度をSpectraMax 340 プレートリーダー(Molecular Devices, USA)で連続的に測定する。10分間に発生した吸光度を、FVIIaを含まないブランクウェルでの吸光度を減算した後、VII因子ポリペプチドと野生型VIIa因子のタンパク分解活性との間の比を算出するのに用いる:
比=(A405 nm VII因子ポリペプチド)/(A405 nm VIIa因子野生型)。
【0170】
それらに基づいて、天然のVIIa因子と比較して、低い活性又は高い活性を有するVII因子ポリペプチドを同定する、例えば、VII因子ポリペプチドの活性と、天然のVII因子(野生型FVII)の活性の間の比が、約1.0対1.0以上であるようなVII因子ポリペプチドを同定する。
【0171】
トロンビン生成アッセイ(アッセイ3)
VIIa因子又はVII因子ポリペプチドのトロンビン生成能力を、関連する全ての凝固因子及び生理学的濃度の阻害剤(血友病Aを模倣する場合はマイナスVIII因子)及び活性化血小板(p. 543 in Monroe et al. (1997) Brit. J. Haematol. 99, 542-547に記載されており、本明細書で参考として援用される)を含むアッセイ(アッセイ3)で測定することもできる。
【0172】
一段階凝固アッセイ(アッセイ4)
VII因子ポリペプチドの生物学的活性を、一段階凝固アッセイ(アッセイ4)を用いて測定することもできる。この目的で、試験されるべきサンプルは、50 mM PIPES-バッファー(pH 7.5), 0.1% BSA中に希釈され、そして40 μlが、40 μlのVII因子欠損血漿、及び、10 mM Ca2+ 及び合成リン脂質を含む80 μlのヒト組換え組織因子と共にインキュベートされる。凝固時間が測定され、類似系列のアッセイにおける参照基準を用いた標準曲線と比較される。
【0173】
VII因子ポリペプチドの調製と精製
本発明で用いるのに適したヒト精製VIIa因子は、好ましくはDNA組換え技術、例えば、ハーゲンら(Hagen et al., Proc.Natl.Acad.Sci. USA 83: 2412-2416, 1986)によって記載された、又は欧州特許第0 200 421号(ZymoGenetics, Inc.)に開示された技術によって製造される。
【0174】
VII因子はまた、ブロンゼ及びマジェラス(Broze and Majerus, J.Biol.Chem. 255 (4): 1242-1247, 1980)並びにヘンダー及びキシエル(Hedner and Kisiel, J.Clin.Invest. 71: 1836-1841, 1983)によって開示された方法によっても生産され得る。これらの方法は、検出可能な量の他の血液凝固因子なしでVII因子を産する。さらに精製されたVII因子製剤は、最終精製工程として追加のゲルろ過を含むことによって得られる。次いで、VII因子は、周知の方法、例えば、幾つかの異なる血漿タンパク質、例えばXIIa因子、IX因子又はXa因子によって活性型VIIa因子に転換される。或いは、ビョーエルンら(Bjoern et al. Research Disclosure, 269 September 1986, pp. 564-565)によって開示されたように、VII因子は、イオン交換クロマトグラフィーカラム、例えばMono Q(登録商標)(Pharmacia fine Chemicals)などを通過させることによって、或いは溶液中での自己活性化によって活性化され得る。
【0175】
VII因子-関連ポリペプチドは、野生型VII因子の改変によって、又は組換え技術によって生成され得る。野生型VII因子と比較して改変されたアミノ酸配列を有するVII因子-関連ポリペプチドは、アミノ酸コドンの改変によって、或いは、天然のVII因子をコードする核酸においてアミノ酸コドンの幾つかを、周知の方法、例えば、部位特異的突然変異によって除去することのいずれかによって、野生型VII因子をコードする核酸配列を改変することによって生産され得る。
【0176】
置換が、VIIa因子分子の機能の重要な領域の外で行われ、なお活性なポリペプチドになり得ることは、当該分野の技術者には明らかである。VII因子ポリペプチドの活性に必須で、それ故に置換を受けることが望ましくないアミノ酸残基は当該分野で周知の方法、例えば、部位直接的突然変異又はアラニン-スキャニング突然変異(Cunningham and Wells, 1989, Science 244: 1081-1085を参照)に従って同定され得る。後者の技術において、分子中の全ての正の電荷をもつ残基に突然変異が導入され、結果として生じる分子の凝固性、それぞれ、分子の活性に重大な意味を持つアミノ酸残基を同定するための架橋結合活性が試験される。基質部位-酵素の相互作用もまた、核磁気共鳴分析、結晶学又は光親和性ラベリング(de Vos et al., 1992, Science 255: 306-312; Smith et al., 1992, Journal of Molecular Biology 224: 899-904; Wlodaver et al., 1992, FEBS Letters 309: 59-64を参照)のような技術によって測定される三次元構造分析によって決定され得る。
【0177】
一つのヌクレオチドを他のヌクレオチドに交換するための、核酸配列への突然変異の導入は、当該分野で周知の任意の方法に用いられる部位直接的突然変異誘発によって達成され得る。特に有用な方法は、所望の挿入を有するスーパーコイルの二重鎖DNAベクター及び所望の突然変異を含む二つの合成プライマーの利用である。ベクターの逆の鎖にそれぞれ相補的なオリゴヌクレオチドプライマーは、Pfu DNAポリメラーゼによって温度サイクルの間に伸長する。プライマーの取り込みにより、ねじれ型のニックを含有する突然変異プラスミドが生成される。温度サイクルに続いて、親DNAテンプレートを消化し、突然変異含有合成DNAを選択するために、メチル化及びヘミ-メチル化されたDNAに特異的なDpnIで産物を処理する。変異体を創造、同定及び単離するために当該分野で周知の他の方法、例えば遺伝子シャッフリング又はファージ・ディスプレイ技術も使用され得る。
【0178】
それらの起源細胞からのポリペプチドの分離は、当該分野で周知の任意の方法によって達成され得、これらに限定されないが、接着細胞培養物からの所望の産物を含む細胞培養培地の除去;非接着細胞を除去するための遠心分離又はろ過などを含む。
【0179】
任意に、VII因子ポリペプチドはさらに精製されてもよい。精製は、当該分野で周知の任意の方法を用いて達成されることができ、これらに限定されないが、例えば抗VII因子抗体カラム(Wakabaya-shi et al., J. Biol. Chem. 261:11097, 1986; and Thim et al., Biochem. 27:7785, 1988を参照)での親和性クロマトグラフィー;疎水性相互作用クロマトグラフィー;イオン交換クロマトグラフィー;サイズ排除クロマトグラフィー;電気泳動的な方法(例えば、分取等電点電気泳動(IEF))、示差溶解度(differential solubility)(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、又は抽出などを含む。
【0180】
一般的には、スプリンガー-バーラッグ(Springer-Verlag, New York, 1982)のタンパク質精製;及びJ.C. ジャンソン及びラルス・リーデン(J.C.Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989.)のタンパク質精製の範囲を参照されたい。精製の後で、製剤は、宿主細胞に由来する非VII因子ポリペプチドを、10重量%より少なく含むことが好ましく、さらには5%より少なく含むことが好ましく、1%より少なく含むことが最も好ましい。
【0181】
VII因子ポリペプチドは、XIIa因子、又は、例えば、IXa因子、カリクレイン、Xa因子、及びトロンビンのようなトリプシン様特異性を有する他のプロテアーゼを用いたタンパク分解的切断によって活性化され得る。例えば、オステルードら(Osterud et al., Biochem. 11:2853 (1972));トーマス、米国特許第4,456,591;及びヘンダーら(Hedner et al., J. Clin. Invest. 71:1836 (1983))を参照されたい。或いは、VII因子ポリペプチドは、例えばMono Q(登録商標)(Pharmacia)などのような、イオン交換クロマトグラフィーカラムを通すことによって、又は、溶液中での自己活性化によって、活性化され得る。得られた活性化VII因子ポリペプチドは、次いで、本願で開示されたように処方及び投与されうる。
【0182】
以下の例は、本発明のプラクティスを説明する。それらの例は、説明の目的のみを含み、何れの意味においても本発明の請求の範囲を制限するよう意図するものではない。
【0183】
[実施例]
例1-水性rFVIIa溶液中のカルシウム含量の、重鎖分解に及ぼす影響(自己触媒的切断)
カルシウムイオンがrFVIIaに及ぼす影響を調査するために、次の方法を続けた:
rFVIIa(分子量約50,000)を、PD-10カラム(Amersham Biosciences)で脱塩することによって続く溶液中に移行させた:
製剤1-1:
rFVIIa 1.0 mg/mL
PIPES-di-Na 17.32 mg/mL (50 mM)
1 M NaOH又は1 M HCl pH 6.5に添加
Ca2+/FVII比 0
製剤1-2:
rFVIIa 1.0 mg/mL
塩化カルシウム2 H2O 1.47 mg/mL (10 mM)
塩化ナトリウム 2.92 mg/mL (50 mM)
グリシルグリシン 1.32 mg/mL (10 mM)
酢酸ナトリウム 0.82 mg/mL (10 mM)
ヒスチジン 1.55 mg/mL (10 mM)
1 M NaOH又は1 M HCl pH 6.5に添加
Ca2+/FVII比 500
製剤は、それぞれ5℃又は25℃の温度で貯蔵し、分析を表1に示したように行った。
【表1】

【0184】
表1から分かるように、製剤1-2における重鎖分解産物の含有量の上昇は、製剤1-1の上昇よりもかなり高い。
【0185】
重鎖分解産物の含有量は、以下に記載したようにRP-HPLCによって測定した:
逆相HPLCは、専売の4.5×250 mm ブチルが結合したシリカカラム、粒径5 μm及び孔経300Åで行った。カラム温度:70℃。A-バッファー: 0.1% v/v トリフルオロ酢酸。B-バッファー: 0.09% v/v トリフルオロ酢酸、80% v/vアセトニトリル。カラムは、Xから(X+13)% B、30分の直線勾配で溶出した。FVIIaが保持時間約26分で溶出するようにXを調整した。流速: 1.0 mL/分。検出: 214 nm。ロード: 25 μg FVIIa。
【0186】
例2 -水性rFVIIa溶液中のカルシウム及び二価金属イオンの含量の、重鎖分解に及ぼす影響(自己触媒的切断)
カルシウムイオン及び二価金属イオンがrFVIIaに及ぼす影響を調査するために、次の方法を続けた:
rFVIIaを、PD-10カラム(Amersham Biosciences)で脱塩することによって続く溶液中に移行させた:
全ての製剤(2-1から2-8)が含む
rFVIIa 1.0 mg/mL
塩化カルシウム2 H2O 1.47 mg/mL (10 mM)
塩化ナトリウム 2.92 mg/mL (50 mM)
グリシルグリシン 1.32 mg/mL (10 mM)
ヒスチジン 1.55 mg/mL (10 mM)
1 M NaOH又は1 M HCl pH 6.5に添加
及び、さらにベンズアミジン及びEDTAを表2に示したように含む。
【表2】

【0187】
製剤は、温度5°Cで貯蔵し、分析は表3に示したように行った。
【表3】

【0188】
表2から分かるように、非錯体カルシウムイオンの含有量は、rFVIIの重鎖分解にかなりの影響を有した。この結果はまた、安定化剤(ベンズアミジン)は、非錯体カルシウムイオンの濃度がより低い場合に、より有効な安定化剤であることを示した。従って、ベンズアミジンの濃度及び非錯体カルシウムイオンの濃度の同時発生的な減少において、略同じ安定性が得られることが推定された(製剤2-3及び2-6の比較)。
【0189】
重鎖分解産物の含有量は、例1で記載したRP-HPLCによって測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VII因子ポリペプチド(i)及び
pHを約5.0〜約9.0の範囲に維持するのに適したバッファー剤(ii)
を含み;
非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比が、0.5より低いことを特徴とする、液状水性医薬組成物。
【請求項2】
前記非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比が、0.001〜0.499の範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに安定化剤(iii)を含む、請求項1〜2の何れか一項に記載の組成物。
【請求項4】
前記安定化剤(iii)は、少なくとも一つの金属含有剤(iiia)を含み、ここで、該金属は、酸化状態+IIの第一遷移系金属からなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記金属含有剤の金属は、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、及び亜鉛から成る群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記金属含有剤(iiia)は、塩化クロム(II)、塩化マンガン(II)、塩化鉄(II)、塩化コバルト(II)、塩化ニッケル(II)、及び塩化銅(II)から成る群から選択される少なくとも一つである、請求項4〜5の何れか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記金属含有剤中の金属(iiia)は、銅及びマンガンから成る群から選択される、請求項4〜6の何れか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記金属含有剤(iiia)は、塩化銅(II)及び塩化マンガン(II)からなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記金属含有剤(iiia)の濃度が、少なくとも1 μMであることを特徴とする、請求項4〜8の何れか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記金属含有剤(iiia)の金属が銅であり、該剤の濃度が少なくとも5 μMである、請求項4〜9の何れか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記金属含有剤(iiia)の金属がマンガンであり、該剤の濃度が少なくとも100 μMである、請求項4〜9の何れか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項3〜11の何れか一項に記載の組成物であって、前記安定化剤が-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2モチーフを具備する少なくとも一つの剤(iiib)を含み、ここにおいて、
Z1及びZ2は、-O-、-S-、-NRH-及び単結合から成る群から独立的に選択され、ここでRH は、水素、C1-4-アルキル、アリール及びアリールメチルから成る群から選択され、
R1及びR2は、水素、任意に置換されたC1-6-アルキル、任意に置換されたC2-6-アルケニル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたヘテロシクリル(heterocyclyl)から成る群から独立的に選択され、或いは、
Z2及びR2は上記定義の通りであり、-C=N-Z1-R1は複素環の一部を形成するか、又は、
Z1及びR1は上記定義の通りであり、-C-NH-Z2-R2は複素環の一部を形成するか、又は、
-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2は複素環を形成し、ここで-Z1-R1-R2-Z2-はビラジカルである。
【請求項13】
R1及びR2の少なくとも一つが水素である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
Z1及びZ2の少なくとも一つが単結合である、請求項12〜13の何れか一項に記載の組成物。
【請求項15】
R1及びR2が何れも水素であり、また、Z1及びZ2が何れも単結合である、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
前記安定化剤(iiib)が、-C-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2モチーフを具備するアミジン化合物及び>N-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2モチーフを具備するグアニジン化合物から成る群から選択される少なくとも一つである、請求項12〜15の何れか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記安定化剤(iiib)が、モチーフ-C6H4-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2を具備するベンズアミジンから成る群から選択される少なくとも一つのアミジン化合物であり、ここにおいて、C6H4は、任意に置換されたベンゼン環を意味する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記ベンズアミジンが、モチーフ>N-C6H4-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2を具備し、ここで、C6H4は任意に置換されたベンゼン環を意味する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記安定化剤(iiib)が、-CH2-NH-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2モチーフを具備するグアニジン化合物から成る群から選択される少なくとも一つのグアニジン化合物である、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
前記グアニジン化合物は、アルギニン、アルギニン誘導体、及び、少なくとも一つのアルギニン残基を含む2〜5アミノ酸残基のペプチドから成る群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記安定化剤が、式Y-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2を有し、ここでYは有機ラジカルである、請求項12〜20の何れか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記安定化剤の分子量が、最大で1000 Daである、請求項12〜21の何れか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記安定化剤(iiib)の濃度が、少なくとも1 μMである、請求項12〜22の何れか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記安定化剤(iiib)がベンズアミジンであり、該剤の濃度が少なくとも0.5 mMである、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記安定化剤(iiib)がアルギニンであり、該剤の濃度が少なくとも2 mMである、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
さらに、非イオン界面活性剤(iv)を具備する、請求項1〜25の何れか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記非イオン界面活性剤(iv)が、ポリソルベート, ポロキサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレン/ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレンステアレート、及びポリオキシエチレンヒマシ油から成る群から選択される少なくとも一つである、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記非イオン界面活性剤が、0.005〜2.0重量%の量で存在する、請求項26〜27の何れか一項に記載の組成物。
【請求項29】
さらに、張度変更剤(v)を具備する、請求項1〜28の何れか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記張度変更剤(v)が、中性塩、アミノ酸、2〜5アミノ酸残基のペプチド、モノサッカリド、ジサッカリド、ポリサッカリド、及び糖アルコールから成る群から選択される少なくとも一つである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
少なくとも一つの張度変更剤(v)が、ナトリウム塩、カリウム塩、及びマグネシウム塩から成る群から選択される中性塩である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記張度変更剤(v)が、塩化マグネシウム及び酢酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一つと併せた塩化ナトリウムである、請求項30〜31の何れか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記張度変更剤(v)が、少なくとも1 mMの濃度で存在する、請求項29〜32の何れか一項に記載の組成物。
【請求項34】
少なくとも一つの張度変更剤(v)が、イオン強度変更剤(v/a)である、請求項29〜33の何れか一項に記載の組成物。
【請求項35】
少なくとも50のイオン強度を有する請求項1〜34の何れか一項に記載の組成物。
【請求項36】
少なくとも200のイオン強度を有する、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
少なくとも400のイオン強度を有する、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
300±50ミリオスモル/kgの浸透圧重量モル濃度を有する、請求項1〜37の何れか一項に記載の組成物。
【請求項39】
前記バッファー剤(ii)が、MES、PIPES、ACES、BES、TES、HEPES、TRIS、ヒスチジン、イミダゾール、グリシン、グリシルグリシン、グリシンアミド、リン酸、酢酸、乳酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、及びコハク酸の酸及び塩から成る群から選択される少なくとも一つの成分を含む、請求項1〜38の何れか一項に記載の組成物。
【請求項40】
前記バッファー剤(ii)の濃度が、1〜100 mMである、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
約5.0〜約8.0の範囲内のpHを有する、請求項1〜40の何れか一項に記載の組成物。
【請求項42】
さらに抗酸化剤(vi)を具備する、請求項1〜41の何れか一項に記載の組成物。
【請求項43】
前記抗酸化剤(vi)が、L-メチオニン、D-メチオニン、メチオニン アナログ、メチオニン-含有ペプチド、メチオニン-相同体、アスコルビン酸、システイン、ホモシステイン、グルタチオン(gluthatione)、シスチン、及びシスタチオニンから選択される、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記抗酸化剤(vi)が0.1〜5.0 mg/mLの濃度で存在する、請求項42〜43の何れか一項に記載の組成物。
【請求項45】
さらに、保存剤(vii)を具備する、請求項1〜44の何れか一項に記載の組成物。
【請求項46】
前記保存剤(vii)が、フェノール、ベンジルアルコール、オルト-クレゾール、メタ-クレゾール、パラ-クレゾール、メチルパラベン,プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、及び 塩化ベンズアセトニウム(benzaethonium)から成る群から選択される、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記VII因子ポリペプチドが、ヒトVIIa因子である、請求項1〜46の何れか一項に記載の組成物。
【請求項48】
前記VII因子ポリペプチドが、VII因子配列変異体である、請求項1〜47の何れか一項に記載の組成物。
【請求項49】
VII因子ポリペプチドの活性と天然のヒトVIIa因子(野生型FVIIa)の活性との間の比が、本明細書に記載した「インビトロタンパク分解アッセイ」で試験されたとき、少なくとも1.25である、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
VII因子ポリペプチドが、0.1〜10 mg/mLの濃度で存在する、請求項1〜49の何れか一項に記載の組成物。
【請求項51】
請求項1〜50の何れか一項に記載の液状水性医薬組成物であって、
0.1〜10 mg/mL のVII因子ポリペプチド(i);
pHを約5.0〜約9.0の範囲に維持するのに適したバッファー剤(ii);及び
少なくとも5 mM濃度の張度変更剤(v)、
を具備し、
非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比が、0.5より低いことを特徴とする組成物。
【請求項52】
請求項1〜50の何れか一項に記載の液状水性医薬組成物であって、
0.1〜10 mg/mL のVII因子ポリペプチド(i);
pHを約5.0〜約9.0の範囲に維持するのに適したバッファー剤(ii);
非イオン界面活性剤(iv);及び
少なくとも5 mM濃度の張度変更剤(v)、
を具備し、
非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比が、0.5より低いことを特徴とする組成物。
【請求項53】
請求項1〜50の何れか一項に記載の液状水性医薬組成物であって、
0.1〜10 mg/mL のVII因子ポリペプチド(i);
pHを約5.0〜約9.0の範囲に維持するのに適したバッファー剤(ii);
少なくとも5μM濃度の銅-含有剤(iiia)及び/又は少なくとも100μM濃度のマンガン-含有剤(iiia);
非イオン界面活性剤(iv);及び
少なくとも5 mM濃度の張度変更剤(v)、
を具備し、
非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比が、0.5より低いことを特徴とする組成物。
【請求項54】
請求項1〜50の何れか一項に記載の液状水性医薬組成物であって、
0.1〜10 mg/mL のVII因子ポリペプチド(i);
pHを約5.0〜約9.0の範囲に維持するのに適したバッファー剤(ii);
少なくとも5μMの濃度のモチーフ-C6H4-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2を具備する少なくとも一つの安定化剤(iiib)及び/又は少なくとも500μMの濃度のモチーフ-CH2-NH-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2を具備する少なくとも一つの安定化剤(iiib);
非イオン界面活性剤(iv);及び
少なくとも5 mM濃度の張度変更剤(v)、
を具備し、
非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比が、0.5より低いことを特徴とする組成物。
【請求項55】
非経口投与に適応する、請求項1〜54の何れか一項に記載の組成物。
【請求項56】
皮下注射、筋肉内注射、又は静脈内注射に適応する、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
pHを約5.0〜約9.0の範囲に維持するのに適したバッファー剤(ii)を含む溶液中のVII因子ポリペプチド(i)を準備する工程を具備し;最終的な組成物中で、非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比が0.5より低いことを保証する、VII因子ポリペプチドの液状水性医薬組成物の製造方法。
【請求項58】
pHを約5.0〜約9.0の範囲に維持するのに適したバッファー剤(ii);少なくとも一つの金属含有剤(iii)、ここにおいて、該金属は、酸化状態が+IIの第一遷移系列金属から成る群から選択される;及び非イオン界面活性剤(iv);を含む溶液中のVII因子ポリペプチド(i)を準備する工程を具備し、最終的な組成物中で、非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比が0.5より低いことを保証する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
pHを約5.0〜約9.0の範囲に維持するのに適したバッファー剤(ii);及び、-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2モチーフを含む少なくとも一つの安定化剤(iiib)
ここにおいて
Z1及びZ2は、-O-、-S-、-NRH-及び単結合から成る群から独立的に選択され、ここで、RH は、水素、C1-4-アルキル、アリール及びアリールメチルから成る群から選択され、及び、R1及びR2は、水素、任意に置換されたC1-6-アルキル、任意に置換されたC2-6-アルケニル、任意に置換されたアリール、任意に置換された複素環から成る群から独立的に選択され、或いは、
Z2及びR2は上記定義の通りであり、-C=N-Z1-R1は複素環の一部を形成し、或いは、
Z1及びR1は上記定義の通りであり、-C-NH-Z2-R2は複素環の一部を形成し、或いは、
-C(=N-Z1-R1)-NH-Z2-R2は複素環を形成し、ここで、-Z1-R1-R2-Z2-はビラジカルである;
を含む溶液中の少なくとも0.01 mg/mL濃度のVII因子ポリペプチド(i)を準備する工程を具備し、最終的な組成物中で、非錯体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比が0.5より低いことを保証する、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
薬剤として使用するための、請求項1〜56の何れか一項で定義された液状水性医薬組成物。
【請求項61】
VII因子応答性症候群を治療する薬剤の調製のための、請求項1〜56の何れか一項で定義された液状水性医薬組成物の使用。
【請求項62】
VII因子応答性症候群を治療する方法であって、該方法は、請求項1〜56の何れかで定義された液状水性医薬組成物の有効量を、それらを必要とする被験者に投与することを含む方法。
【請求項63】
請求項1〜56の何れかで定義された液状水性医薬組成物、及び任意に不活性ガスを含む、気密な、少なくとも部分的に充填されたコンテナであって、(i) 壁部、及び(ii)前記壁部の部分を構成しない一以上の閉鎖手段、を具備するコンテナ。
【請求項64】
前記組成物が保存剤(vii)を含まないことを特徴とする、請求項63に記載のコンテナ。
【請求項65】
前記コンテナの内壁物質が、シリカコーティングガラス、シリコーンコーティングガラス、非環式オレフィンのポリマー、シクロオレフィンポリマー、及びシクロオレフィン/直鎖オレフィンコポリマーから成る群から選択される物質である、請求項63〜64の何れか一項に記載のコンテナ。
【請求項66】
前記コンテナが、針貫通可能、自己-封着エラストマー隔膜を含む閉鎖手段を具備するバイアル又はカートリッジである、請求項63〜65の何れか一項に記載のコンテナ。
【請求項67】
前記コンテナが、該コンテナ中に存在する液体を前記コンテナから排出し得る、置換可能なピストン手段をさらに具備するカートリッジである、請求項66に記載のコンテナ。

【公表番号】特表2006−524195(P2006−524195A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504328(P2006−504328)
【出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000181
【国際公開番号】WO2004/082708
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(501497563)ノボ ノルディスク ヘルス ケア アクチェンゲゼルシャフト (58)
【Fターム(参考)】