説明

X線撮像装置、これに用いるX線源、及び、X線撮像方法

【課題】発生したX線の利用効率が高い、タルボ・ロー干渉計方式の高感度X線撮像装置を提供する。
【解決手段】電子源11により、ターゲット12に向けて電子線111を照射する。ターゲット12は、電子線111の照射によってX線8を発生する。制御部13は、電子線111を、ターゲット12上において走査させる。これにより、ターゲット12を縞状に励起して、X線8を発生させることができる。第一格子3は、ターゲット12から発生したX線8を回折する。第二格子4は、第一格子3で回折したX線8をさらに回折する。X線画像検出器5は、第二格子4で回折したX線8を検出する。これにより、X線8の位相情報を利用した撮像が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線の位相を利用して被写体の内部構造を高感度で観察するためのX線撮像装置、これに用いるX線源、及びX線撮像方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線は透過力が高いゆえに、物体内部を透視するためのプローブとして、医用画像診断、非破壊検査、セキュリティチェックなどにおいて、広く利用されている。X線透視画像のコントラストは、X線減衰率の違いによっており、X線を強く吸収する物体はX線の影として描出される。X線吸収能は原子番号が大きい元素を多く含むほど強くなる。逆に原子番号が小さい元素から成る物質についてはコントラストがつきにくいことも指摘でき、これがX線透視画像の原理的欠点でもある。したがって、生体軟部組織やソフトマテリアルなどに対しては、十分な感度を得ることができない。
【0003】
一方、X線の位相情報を利用すれば、一般的な従来のX線透視画像に比べて最高で約3桁の高感度化が実現することが知られている。X線をあまり吸収しない軽元素からなる物質(生体軟組織や有機材料など)の観察に適用できることから、その実用が期待される。
【0004】
このX線位相情報を利用した高感度撮像法の研究は、10年ほど前から興った分野であるが、通常は高度なX線源が必要となるために、現実的にはその実用は進んでいない。すなわち、単色平面波のX線を使うX線光学系がその主流としてこれまで研究されてきており、それゆえに極めて高い輝度のX線源の使用を前提としている。これは、実質的に巨大なシンクロトロン放射光施設の利用を前提とせざるを得ず、実用を検討する場合には大きな障害になっている。
【0005】
広いバンド幅のコーンビームで機能する位相利用撮像法が実現すれば、シンクロトロン放射光以外のコンパクトX線源との組み合わせによる装置化が期待される。その候補として、X線タルボ干渉計によるX線位相撮像法が期待されている(下記特許文献1参照)。
【0006】
ただし、ある程度の空間的可干渉性がX線に求められるため、コンパクトなX線源といっても、該当するものは実質的にマイクロフォーカスX線源ということになってくる。すなわち、必要な空間的可干渉性を確保するためには、X線発生源のサイズがある程度小さくなくてはならず、通常フォーカスのX線源は該当しない。しかしながら、長い露光時間が許されるケースを除いて、マイクロフォーカスX線源のパワーはX線撮像に適用するには不十分であるという問題がある。
【0007】
その解決策として、通常フォーカスX線源とマルチスリット部を使うタルボ・ロー干渉計の利用がある(例えば下記特許文献2参照)。
【0008】
このような干渉計の一例を図1に基づいて説明する。この干渉計は、X線源1と、マルチスリット部2と、第一格子3と、第二格子4と、X線画像検出器5とを備えている。X線源1からのX線8は、マルチスリット部2におけるスリットを通過して、第一格子3に向けて放射される。この干渉計では、マルチスリット部2と第二格子4との間に配置された物体7に、X線8を照射することができる。この干渉計によれば、物体7を透過したX線を、X線画像検出器5で検出することによって、物体7が弱吸収体であってもその形状を測定することが可能になる。
【0009】
マルチスリット部2に形成された各々のスリットは、仮想的に、マイクロフォーカスX線源に対応する。各スリットからのX線は、それぞれ独立にX線タルボ干渉計を機能させる。マルチスリット部2に形成されたスリットの幅とピッチを所定のサイズに設定すれば、各スリットによる画像が常にコントラストを強めあうように重なり合う。すなわち、X線タルボ干渉計の機能を保ったまま、スリットの数だけX線強度を増やすことができる。しかも、通常フォーカスの高出力X線源が使用できる。
【0010】
しかし、X線源1とマルチスリット部2とは、励起ビーム(電子線やレーザー光)のパスを確保するために、あまり接近させることができず、両者の間には、少なくとも数ミリメートルの間隔ができてしまう。まして、マルチスリット部2を大気中に配置する場合は、X線源1からX線窓(限定された方向のみにX線を放射させるための窓)までの距離(通常数センチメートル)以上はあけなくてはならない。X線は発生源から球面波状に広がるので、この距離の制約条件はX線強度の低下をもたらし、タルボ・ロー干渉計の利点が十分に生かされないことになってしまう。
【0011】
マルチスリット部2におけるスリット幅は、空間的可干渉性を確保できるように十分に狭い必要がある。すなわち、マルチスリット部2におけるスリット幅ws

を満たすことが望ましい。ここで、
λ:X線の波長
:マルチスリット部から第一格子までの距離
:第一格子におけるラインの周期
である。同時に、マルチスリット部2は、不必要なX線を遮蔽するために、十分に厚い必要がある。
【0012】
例えば、λ=0.04nm、R=1m、d=5μmとすると、wsは8μm以下が望ましい。その厚さは、0.1mm以上は必要である。そのような条件を満たすマルチスリット部を製作することは一般に容易ではないという問題もある。
【0013】
さらに、X線の波長や、第一および第二格子の配置を変更した場合、マルチスリット部のそれにあった寸法のものにその都度置き換える必要がある。
【特許文献1】国際公開WO2004/058070号公報
【特許文献2】米国特許第5812629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前記した事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、X線タルボ・ロー干渉計による高感度X線撮像法において、マルチスリット部の機能をX線発生装置に組み込み、より高性能のX線撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
項目1に係るX線撮像装置は、X線源と、第一格子と、第二格子と、X線画像検出器とを備えている。前記X線源は、ターゲット励起ビーム源と、ターゲットと、制御部とを備えている。前記ターゲット励起ビーム源は、前記ターゲットに向けて励起ビームを照射するものである。前記ターゲットは、前記励起ビームの照射によってX線を発生するものである。前記制御部は、前記励起ビームを、前記ターゲット上において走査するものである。前記第一格子は、前記ターゲットから発生したX線を回折する構成となっている。前記第二格子は、前記第一格子で回折したX線を回折する構成となっている。前記X線画像検出器は、前記第二格子で回折したX線を検出する構成となっている。
【0016】
項目2に係るX線撮像装置は、項目1に記載のものにおいて、第二格子が、この第二格子を回折したX線によって周期的強度パターンを発生できる構成となっている。この装置によれば、第一格子と第二格子の組み合わせにより、第二格子を回折したX線によって周期的強度パターンが発生する。この周期的強度パターンの形状から、X線の波面の形状を得ることができる。
【0017】
項目3に係るX線撮像装置は、項目1又は2に記載のものにおいて、前記ターゲット上における前記励起ビームの走査を、前記ターゲット上において、互いに一定の周期で離間した複数の線分を描くように行う構成となっている。
【0018】
項目4に係るX線源は、X線撮像装置に用いられるX線源である。このX線源は、励起ビーム源と、ターゲットと、制御部とを備えている。前記励起ビーム源は、前記ターゲットに向けて励起ビームを照射するものである。前記ターゲットは、前記励起ビームの照射によってX線を発生するものである。前記制御部は、前記励起ビームを、前記ターゲット上において走査するものである。
【0019】
項目5に係るX線撮像方法は、X線源と、第一格子と、第二格子と、X線画像検出器とを備えたX線撮像装置を用いる。前記X線源は、ターゲット励起ビーム源と、ターゲットと、制御部とを備えている。前記ターゲット励起ビーム源は、前記ターゲットに向けて励起ビームを照射するものである。前記ターゲットは、前記励起ビームの照射によってX線を発生するものである。前記制御部は、前記励起ビームを、前記ターゲット上において走査するものである。前記第一格子は、前記ターゲットから発生したX線を回折する構成となっている。前記第二格子は、前記第一格子で回折したX線を回折する構成となっている。前記X線画像検出器は、前記第二格子で回折したX線を検出する構成となっている。
【0020】
この方法は、さらに、以下のステップを備えている:
(1)前記ターゲット上において、前記励起ビーム源からの励起ビームを走査させるステップ;
(2)前記ターゲットから生じたX線を前記第一格子により回折させるステップ;
(3)前記第一格子で回折したX線を前記第二格子により回折させるステップ;
(4)前記第二格子で回折したX線を前記X線画像検出器で検出するステップ。
【0021】
項目6に係るX線撮像方法は、項目5に記載のものにおいて、さらに以下ステップを備えている:
(5)前記ターゲットから前記第二格子までの間に配置された物体に、前記ターゲットから発生した前記X線を照射するステップ。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電子線やレーザー光などの励起ビームの走査によってタルボ・ロー干渉計に必要なX線を発生しているので、マルチスリット部を用いる場合に比較して、(1)製作に高度な技術を必要とするマルチスリット部を省略でき、(2)X線の利用効率を高められ、さらに、(3)X線の波長や格子配置の変更に対する柔軟性を増すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施形態の構成)
以下、本発明の一実施形態に係るX線撮像装置を、図2〜図4に基づいて説明する。なお、本実施形態の説明に於いては、従来のX線撮像装置と共通の構成については、同一の符号を付することで説明を簡略化する。
【0024】
本実施形態に係るX線撮像装置は、X線源10と、第一格子3と、第二格子4と、X線画像検出器5と主要な構成として備えている(図2参照)。
【0025】
X線源10は、励起ビーム源である電子源11と、ターゲット12と、制御部13と、電源部14とを備えている(図3参照)。
【0026】
電子源11は、ターゲット12に向けて電子線111を照射するものである。電子源11としては、電界放射型の電子源(高電界により固体表面近傍のポテンシャルバリアを薄くすることにより空間に電子を取り出すもの)が好適である。ただし、電子源11としては、熱エネルギーにより電子放出を行う熱電子放出型のものを用いる事も可能である。
【0027】
ターゲット12は、電子線111の照射によってX線を発生するものである。ターゲット12としては、例えば、X線発生効率の高い重元素のタングステン(W)又はモリブデン(Mo)により構成される。ただし、ターゲット12としては、電子線111の照射によりX線を発生するものであれば利用可能である。本実施形態では、ターゲット12は、円柱状に形成されている。このターゲット12は、図示しない回転機構により軸周りに回転可能となっており、かつ、その外周面に電子線111を照射することでX線を発生するようになっている。
【0028】
制御部13は、電子源11から生じる電子線111を、ターゲット12上において走査させるものである。走査は、電子源11から生じた電子線111の方向を、電界や磁界で制御することで行うことができる。本実施形態の制御部13は、電子線111をターゲット12上に収束させ、電子線111の方向と、電子線111の照射タイミングとを制御できるようになっている。制御部13は、ターゲット12を励起させる部分にのみ電子線111を照射し、復帰時(つまり帰線)においては照射しないように、その照射タイミングを制御している。電子線111の発生機構、方向制御機構、走査タイミングの制御機構については、既に従来からよく知られている技術を用いることができるので、これ以上詳細な説明は省略する。
【0029】
制御部13は、ターゲット12上における電子線11の走査を、ターゲット12上において、互いに離間した複数の線分Lを描くように行う(図4参照)。線分Lどうしは、周期dで互いに離間されている。この線分Lの部分が、ターゲット12における励起部位121となる。したがって、複数の励起部位121どうしは、一定の周期dで離間されたものとなっている。
【0030】
第一格子3は、ターゲット12から発生したX線8を回折する構成となっている。第一格子3は、周期dで配置された複数のライン31を有している。この構造はX線タルボ干渉計(特許文献1参照)で使用する格子と同様である。なお、励起部位121の第一格子3上への投影は、ライン31とほぼ平行になるように第一格子3を配置する。
【0031】
第二格子4は、第一格子3で回折したX線8を回折する構成となっている。第二格子4は、第一格子3と同様に、周期dで配置された複数のライン41を有している。この構造も従来のX線タルボ干渉計(特許文献1参照)と同様である。
【0032】
励起部位121から第一格子3までの距離をR、第一格子3から第二格子4までの距離をR2とする(図2参照)。ここで、物体(被写体)7は、第一格子3の直前に置くのが一般的であるが、原理的には励起部位121と第二格子4の間にあればよい。
【0033】
第一格子3と第二格子4とにおける、ピッチd1、d2と距離R1, R2との関係は、


で表せる。ここでmは、第一格子3が位相格子である場合は半整数、吸収格子である場合は整数である。ただし、実際のR2は、前記の条件で与えられる値に対して数%の誤差程度に近い値であれば問題ない。式(1)および式(2)は、マルチスリット部を使う従来の技術においても共通に成り立つものである。
【0034】
図4における励起部位121の縞状パターンの周期dsは、

を満たしていればよい。nは正の整数である。図1のマルチスリット部におけるスリットの周期も、同様にして与えられる。
【0035】
X線画像検出器5は、第二格子4で回折したX線8を検出する構成となっている。画像検出器5は、第二格子4のすぐ背後に設置されている。X線画像検出器5についても、従来と同様の構成でよいので、詳細な説明は省略する。
【0036】
(本実施形態に係るX線撮像装置の作用)
つぎに、本実施形態に係るX線撮像装置の動作について説明する。
【0037】
まず、電子源11からの電子線111をターゲット12に照射し、ターゲット12を励起して、X線8を発生させる。このとき、X線はあらゆる方向に発生するが、図では実際に利用する特定の方向のみのX線を描いている。
【0038】
ここで、本実施形態では、電子線111の径を数ミクロン程度に絞り、それを走査することにより、励起部位121の形状を縞状にパターン化する。発生したX線8は、ターゲット12の表面から約6度仰ぎ見る方向に取り出して使われる。このとき、線状の励起部位121は、X線の取り出し側から見ると近似的に点とみなすことができる。すなわち、本実施形態では、擬似的に、マイクロフォーカスX線源の配列が形成されることになる(図4参照)。ここで、励起部位121どうしは、周期dで互いに離間された状態で形成される。
【0039】
X線源10で発生したX線8は、物体7を透過した後、第一格子3及び第二格子4で回折され、X線画像検出器5により検出される。検出されたX線を解析することにより、物体7が弱吸収物体であっても、その構造を観察することができる。本実施形態においてX線画像を解析する手法は、従来と同様なので、詳細な説明は省略する。ここで、本実施形態では、電子線照射を素早く行うことにより、X線発生が各励起箇所で同時に生じていると見なすことができる。
【0040】
なお、X線を発生させるためにターゲットに照射する励起ビームとして、高強度のレーザー光とすることも可能である。その場合は、レーザー光源からミラーやファイバを用いて光を導くことになるが、照射部位を走査するためには、傾き角を高速で制御できる振動ミラーを用いればよい。
【0041】
本実施形態の装置によれば、以下の利点を得ることができる。
(1)本実施形態では、電子線111の走査によって、ターゲット12上に、擬似的なマイクロフォーカスX線源を形成することができる(図4参照)。ここから生じるX線により、マルチスリット部を設けた場合と同様のX線源を得ることができる。
したがって、本実施形態の装置によれば、従来の技術におけるマルチスリット部を省略することができる。
【0042】
(2)また、従来の技術では、マルチスリット部を用いると、励起部位とマルチスリット部との間に間隙を生じ、これによってX線の利用効率が低下するという問題があった。本実施形態の装置では、ターゲット12の励起部位121が直ちに擬似的なマルチスリットとなるので、従来のような隙間は原理的に存在しない。下記に計算による詳しい根拠を示しているが、本実施形態によれば、X線の利用効率を向上させることができる。
【0043】
(3)本実施形態においては、ターゲット12上における励起部位121のパターンを電子線111の走査で描くので、必要に応じてそのピッチや太さを容易に変更することができる。
【0044】
次に、本実施形態の装置の場合と、従来のマルチスリット部と使う装置の場合とで、最終的にX線タルボ・ロー干渉計において使うことができるX線強度を比較する(図5参照)。
【0045】
まず、従来のマルチスリット部2(幅w)が従来の線源1(図1参照)から距離lだけ隔てて配置されているとする。このとき、マルチスリット部2に形成されたスリットを通るX線の強度は、w2I/l2に比例することが、幾何的考察からわかる。Iは電子ビームの電流値である(図5(a)参照)。なお、図5(a)においては、ターゲット12が回転するようになっている。またこの図において符号Pは、電子線の照射領域(直径a)を示している。
【0046】
一方、図5(b)に示す本実施形態の場合、図5(a)に対応する領域を電子線で走査する。対応するX線の強度(すなわち励起部位121から発生するX線の強度)は、同じく幾何学的考察からdswI’/a2となる。dsは電子による走査線の間隔であり、wはその太さである。I’は走査する電子ビームの電流値である。
【0047】
従来の技術においても、強いX線を得るためには、より多くの電流を流せばよい。しかし、このことは、同時に、ターゲットに対する熱負荷を増すことになる。そこで、ターゲットには、熱負荷を逃がすために、通常水冷機構が設けられている。この水冷機構については、従来のものも本実施形態のものも同等の構成にすることができる。すなわち、両技術において、単位面積あたりの許容熱負荷が等しいと仮定できる。この場合は、ターゲットへの単位面積あたりの電流が等しいことになる。すなわち、I = I’がいえる。これに基づけば、図5(a)に示した従来方式と、同図(b)に示した本本実施形態による走査方式でのX線強度の比は

で与えられることになる。例えば、l = 5 cm、a = 1 mm、d = 50 μm、w = 10 μmの場合、本実施形態によれば、従来の技術に対して約一万倍の利得が得られることがわかる。
【0048】
上でI = I’を仮定したが、正確にはI > I’であることは予想される。すなわち、熱伝達率は有限であるので、平均的な熱負荷よりも局所的な熱負荷による制限が厳しいからである。しかしながら、ターゲットは熱負荷を分散させるために一般に回転式になっており、走査式の場合も適度の熱負荷を分散させることが可能である。したがって、I と I’の差は一桁以上違うとは考えがたい。このため、上記の試算の結果(一万倍の利得)に近い利点を発揮できると考えられる。
【0049】
なお、前記実施形態および実施例の記載は単なる一例に過ぎず、本発明に必須の構成を示したものではない。各部の構成は、本発明の趣旨を達成できるものであれば、上記に限らない。
【0050】
たとえば、前記した各実施形態における構成要素は、機能要素として存在していればよく、装置または部品としては、他の要素と統合されていてもよく、また、複数の部品によって一つの要素が実現されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】タルボ・ロー干渉計を用いる従来のX線撮像装置の概略的な構成を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るX線撮像装置の概略的な構成を示す説明図である。
【図3】図2のX線撮像装置に用いるX線源の概略的な説明図である。
【図4】電子線が照射されたターゲットにおける励起部位の配列状態を示す説明図である。
【図5】X線発生の効率を説明するための説明図であって、図(a)は従来方式の説明図、図(b)は本実施形態による方式の説明図である。
【符号の説明】
【0052】
3 第一格子
31 ライン
第一格子のラインにおける周期
4 第二格子
41 ライン
第二格子のラインにおける周期
5 X線画像検出器
7 物体(被写体)
8 X線
10 X線源
11 電子源
111 電子線
12 ターゲット
121 励起部位
13 制御部
14 電源部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源と、第一格子と、第二格子と、X線画像検出器とを備えており、
前記X線源は、ターゲット励起ビーム源と、ターゲットと、制御部とを備えており、
前記ターゲット励起ビーム源は、前記ターゲットに向けて励起ビームを照射するものであり、
前記ターゲットは、前記励起ビームの照射によってX線を発生するものであり、
前記制御部は、前記励起ビームを、前記ターゲット上において走査するものであり、
前記第一格子は、前記ターゲットから発生したX線を回折する構成となっており、
前記第二格子は、前記第一格子で回折したX線を回折する構成となっており、
前記X線画像検出器は、前記第二格子で回折したX線を検出する構成となっている
ことを特徴とするX線撮像装置。
【請求項2】
前記第二格子は、この第二格子を回折したX線によって周期的強度パターンを発生できる構成となっている
ことを特徴とする請求項1に記載のX線撮像装置。
【請求項3】
前記ターゲット上における前記励起ビームの走査は、前記ターゲット上において、互いに一定の周期で離間した複数の線分を描くように行われることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線撮像装置。
【請求項4】
X線撮像装置に用いられるX線源であって、
前記X線源は、励起ビーム源と、ターゲットと、制御部とを備えており、
前記励起ビーム源は、前記ターゲットに向けて励起ビームを照射するものであり、
前記ターゲットは、前記励起ビームの照射によってX線を発生するものであり、
前記制御部は、前記励起ビームを、前記ターゲット上において走査するものである
ことを特徴とするX線源。
【請求項5】
X線源と、第一格子と、第二格子と、X線画像検出器とを備えており、
前記X線源は、ターゲット励起ビーム源と、ターゲットと、制御部とを備えており、
前記ターゲット励起ビーム源は、前記ターゲットに向けて励起ビームを照射するものであり、
前記ターゲットは、前記励起ビームの照射によってX線を発生するものであり、
前記制御部は、前記励起ビームを、前記ターゲット上において走査するものであり、
前記第一格子は、前記ターゲットから発生したX線を回折する構成となっており、
前記第二格子は、前記第一格子で回折したX線を回折する構成となっており、
前記X線画像検出器は、前記第二格子で回折したX線を検出する構成となっているX線撮像装置を用い、
さらに、以下のステップを備えているX線撮像方法:
(1)前記ターゲット上において、前記励起ビーム源からの励起ビームを走査させるステップ;
(2)前記ターゲットから生じたX線を前記第一格子により回折させるステップ;
(3)前記第一格子で回折したX線を前記第二格子により回折させるステップ;
(4)前記第二格子で回折したX線を前記X線画像検出器で検出するステップ。
【請求項6】
さらに以下ステップを備えている、請求項5に記載のX線撮像方法:
(5)前記ターゲットから前記第二格子までの間に配置された物体に、前記ターゲットから発生した前記X線を照射するステップ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−145111(P2008−145111A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328965(P2006−328965)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】