X線撮影装置
【課題】造影剤注入前後の画像間でサブトラクション処理を行う際に生じる、被検体の体動に起因する位置ずれアーチファクトを軽減する。
【解決手段】被検体に取り付けたマーカの位置を位置計測装置により測定し、得られた位置情報を用いて体動による移動を検出する。そして、その結果に基づいて回転駆動部22によりC形アーム60を2軸周りに回転駆動させ、X線撮影機構10の撮影方向を被検体の体動に追従させる。
【解決手段】被検体に取り付けたマーカの位置を位置計測装置により測定し、得られた位置情報を用いて体動による移動を検出する。そして、その結果に基づいて回転駆動部22によりC形アーム60を2軸周りに回転駆動させ、X線撮影機構10の撮影方向を被検体の体動に追従させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばX線サブトラクションアンギオグラフィに適用可能なX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線サブトラクションアンギオグラフィは造影剤を用いて血管を観察する検査であり、特に頭頚部の検査で用いられることが多い。この検査は血管内に造影剤を投与する前のX線画像(マスク画像)と造影剤を投与した後のX線画像(コントラスト画像)とを撮影し、両像を減算して得られる像(サブトラクション画像)を算出することによって、造影剤で造影された血管の像を描出するものである。骨などの像は造影剤の投与前後で変化しないが、血管の像は造影剤投与後にだけ現れるので、サブトラクション画像には血管だけが抽出されて現れる。
【0003】
またX線サブトラクションアンギオグラフィでは、マスク画像の撮影後に血管内に造影剤を持続的に投与している過程での一連の画像を動画像として撮影し、これら一連の画像からマスク画像を減算することにより血管に造影剤が流入してゆく過程を表す一連の画像を描出する検査も行われる。
【0004】
これら一連の画像は、そのまま観察に供されるだけでなく種々の機能画像(functional image)を算出するのにも利用される。機能画像としては、画像上の各画素位置における画素値の最大値を取り出して作った最大値画像、画像上の各画素位置において画素値が最大になった時刻を表すピーク時刻画像、画像上の各画素位置において造影効果が最初に現れた時刻を表す到達時刻画像、などがある。
【0005】
ところで、造影剤が投与されると患者(以下、被検体と称する)が僅かに動くことが多い。これは投与された造影剤により血管に熱感を生じるからで、被検体に意識があるか否かに係わらず起こり得る。このような被検体の動き(体動)が生じると、造影剤の投与前後で血管の像だけでなく骨などの像にも変化が生じることになり、コントラスト画像からマスク画像を減算しても骨の像を消去できなくなる。その結果、サブトラクション画像には血管の他に骨などの像がアーチファクトとして現れてしまい、血管の観察が難しくなる。さらに機能画像の算出にも悪影響が及び、誤った機能画像が算出されてしまう。
【0006】
図27は造影剤を投与した際にしばしば見られる典型的な体動を示す図である。注意深く観察しないと分からない程度の僅かな動きであるが、造影剤投与に伴って顎が上がり(図27(a)→図27(b))、左右への首の捻転(図27(b)→図27(c))も生じることがある。
【0007】
図28(a)はマスク画像の一例を示し、図28(b)は同じ被検体のコントラスト画像の一例を示す。この例では片方の頸動脈に挿入したカテーテル先端から造影剤を投与するケースを示す。図28(a)のマスク画像には骨などが写っているが血管は写っていない。造影剤が投与されると片側半球の血管が造影され、画像に現れる。図28(b)のコントラスト画像には骨などのほか、造影された血管が写っている。
【0008】
図29(a)は被検体が全く動かない理想的な状態で得られるサブトラクション画像の模式図を示す。図29(b)は造影剤投与の際に被検体が動いた場合に得られるサブトラクション画像の模式図を示す。図29(a)の理想的なサブトラクション画像では血管だけが描出されているのに対し、被検体が体動を起こした場合のサブトラクション画像(図29(b))では、血管の他に、骨などの組織が複雑な像を形成しており、血管を見分けることが難しくなる。機能画像(functional image)を算出した場合にも、本来画像に現れるべきでない骨などの像が重なっているために正しい結果が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−199279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のように既存のX線撮影装置では、図30に示すように被検体の体動の有無にかかわらず同じ方向から撮影を行っているので、被検体に体動が生じるとマスク画像とコントラスト画像との間に位置ずれが生じ、鮮明なサブトラクション画像を得られないという不具合がある。
この発明の目的は、造影剤注入前後の画像間でサブトラクション処理を行う際に生じる、被検体の体動に起因する位置ずれアーチファクトを軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するためにこの発明の一態様によれば、被検体を撮影して複数のX線画像を発生するX線撮影部と、前記X線撮影部の撮影方向を変更する駆動部と、前記複数のX線画像のうち、造影剤注入後のコントラスト画像と造影剤注入前のマスク画像とをサブトラクションしてサブトラクション画像を求めるサブトラクション画像発生部とを備えたX線診断装置において、前記被検体の体動を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づき、検出された体動に追従して前記X線撮影部を移動するように前記駆動部を制御する制御部とを具備することを特徴とするX線撮影装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、造影剤注入前後の画像間でサブトラクション処理を行う際に生じる、被検体の体動に起因する位置ずれアーチファクトを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明に関わるX線撮影装置の実施の形態を示す機能ブロック図。
【図2】図1のX線撮影機構の外観図。
【図3】この発明の実施の形態における撮影の様子を示す模式図。
【図4】被検体の頭部に複数のマーカを取り付けた状態を示す図。
【図5】被検体の体動により画像に生じる変化に含まれる成分を示す模式図。
【図6】ステレオ撮影機能を持つX線管を用いて体動を検出する例を示す模式図。
【図7】X線撮影用マーカを被検体に取り付けた状態を示す模式図。
【図8】X線画像に現れたマーカを示す図。
【図9】複数の画像フレームにわたるマーカ像を示す図。
【図10】複数の画像フレームにわたるマーカ像が一致しないことを説明するための図。
【図11】図10の直線Lの延長上から被検体を見た際のマーカの位置を示す概念図。
【図12】ステレオペア画像を用いてマーカの3次元的位置を算出する一例を示す図。
【図13】X線画像に現れるマーカと被検体の輪郭とを示す模式図。
【図14】複数の画像フレームにわたるマーカ像と被検体の輪郭を示す図。
【図15】図14のマーカの部分を拡大して示す図。
【図16】X線画像に設定されたROIの一例を示す図。
【図17】計算された2次元ベクトル場の一例を示す模式図。
【図18】図17からは打ち消されずに残ったベクトル成分を示す図。
【図19】被検体の回旋方向を表すベクトル(向きは不明)を示す図。
【図20】第5の実施形態における演算により得られたベクトルaの一例を示す図。
【図21】バイプレーン装置の一例を示す図。
【図22】マーカの形状の例を示す図。
【図23】体動の前後でマーカ位置の変化する様子を示す図。
【図24】耳の画像パターンをトレースする状態を示す図。
【図25】X線撮影機構10の移動に制限を設ける一例を示す図。
【図26】X線撮影機構10の移動に制限を設ける他の例を示す図。
【図27】造影剤の投与時における典型的な体動を示す図。
【図28】マスク画像とコントラスト画像の一例を示す図。
【図29】理想的なサブトラクション画像と体動の有る状態で撮影されたサブトラクション画像とを示す図。
【図30】既存技術における撮影を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係るX線撮影装置を好ましい実施形態により説明する。 図1に示すように、X線撮影装置は、X線撮影機構10を有する。X線撮影機構10は、図2に示すように、X線管12(X線発生手段)とX線検出器14とを有する。X線検出器14は、イメージインテンシファイア15とTVカメラ16とから構成される。または、検出器14は、マトリクス状に配列された半導体検出素子を有するフラットパネルディテクタ(FPD:平面型X線検出器)で構成される。
【0015】
X線管12は、X線検出器14とともに、互いに対向する向きでC形アーム60に搭載される。寝台の天板50上の被検体Pは、X線管12と検出器14との間に配置される。C形アーム60は、天井ベース63から吊り下げられる支柱64、または床置きスタンドに支持される。天井ベース63は、天井に対して、直交する2方向に沿って個別に平行移動可能に構成されている。C形アーム60は、アイソセンタを中心に直交する軸A,Bに関して回転可能に、支柱64に取り付けられている。この回転自由度を用いてX線管12とX線検出器14とを結ぶ撮影方向を変更することが可能である。
【0016】
回転駆動部22は支柱64の内部に収容される。回転駆動部22は、C形アーム60を軸A,Bまわりに個別に回転して移動するための2つの動力源を有する。C形アーム60は、回転駆動部22で回転することにより、X線管12とX線検出器14とを結ぶ撮影方向撮影方向を変更することができる。すなわち回転駆動部22はC形アーム60を支持し、回転コントローラ23の制御のもとにC形アーム60をA軸、B軸周りに回転駆動して上記撮影方向を変更する。
【0017】
X線撮影装置は、X線撮影機構10とともに、画像を処理してマーカ検出などの種々の処理を行うシステムコントローラ20、カメラコントローラ21、回転コントローラ23、画像メモリ25、感度補正部26、対応画像選択部19、サブトラクション部27、高周波強調フィルタリングなどを行うフィルタリング部31、画像拡大移動などを行うアフィン変換部32、D/A変換部36、表示部37を有する。撮影されたX線画像は、カメラコントローラ21内のアナログディジタル変換器(A/D変換器)でディジタル信号に変換される。
【0018】
画像メモリ25は、造影前に撮影されたマスク画像に関するデータ、および造影後に撮影されたコントラスト画像に関するデータを記憶するために設けられる。サブトラクション部27は、マスク画像とコントラスト画像とを差分(引き算)することにより差分画像(DSA(Digital Subtraction Angiography)画像ともいう)を生成する。次に、この発明の実施の形態につき詳細に説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
この実施形態では被検体の位置を位置計測装置などで測定し、得られた位置情報を用いて体動による移動量を検出し、その結果に基づいてX線撮影機構10の撮影方向を制御するようにする。すなわち図3に示すように、被検体の体動を自動的に検出し、その検出結果を利用して撮影方向を変更することで、骨などの像がマスク画像と概ね一致するような方向から撮影を行えるようにする。
【0020】
この実施形態では例えば赤外線反射型マーカを被検体の皮膚などに取り付け、赤外線光学式位置計測装置を用いてこれらマーカの3次元的位置を測定する。一連のX線撮影を行うあいだ、マーカの3次元的位置の測定を少なくとも毎秒数回程度継続的に行う。尚、赤外線以外の光反射型マーカを用いるようにしても良い。
【0021】
マーカは図4に示すように、同じ被検体に3個以上取り付けることが望ましい。以下の説明では被検体の頭部にマーカを取り付け、頭部の動きを検出することを考える。複数のマーカを区別するために番号を付し、マーカ1,マーカ2,...のように表記することにする。
【0022】
マスク画像を撮影した時点でのマーカjの位置ベクトルをm(j,0)とする。その後、第nフレームの画像を撮影しようとする直前に測定したマーカjの位置ベクトルをm(j,n)とする。これらの位置ベクトルは同次座標表現を用いて次式(1)のように表せる。
【数1】
【0023】
m(j,n)とm(j,0)とは次式に示すように拡大・縮小を伴わないアフィン変換T(4行4列の行列)によって結ばれる。
m(j,n)=T・m(j,0)
現実には位置計測に係わる誤差のために両辺は完全には一致しないが、ベクトルm(j,n)−T・m(j,0)のノルムが最小になるようにTを定めることにより、最適なTを算出することができる。Tの演算には最小二乗法などを用いることができる。
【0024】
行列Tは、第nフレームの撮影直前に、マスク画像の撮影時に比べて被検体の頭部が3次元的にどれだけどの方向に回旋したかを示す。そこでこの実施形態では、X線撮影機構10をA軸、B軸周りの回転の自由度を利用して駆動し、この回旋を打ち消すように撮影方向を変化させる。
【0025】
撮影を継続している間に、撮影方向を変えるためにX線撮影機構10が機械的に運動している状態で第nフレームを撮影すべき時刻が来る可能性がある。このような場合には、撮影方向の変化が足りていなくてもその方向から撮影を行う一方で、第n+1フレームの撮影に備えてX線撮影機構10の撮影方向を変える駆動を継続して実施する。
【0026】
被検体の体動による画像の変化は、図5(a)に示すようにX線撮影機構10の撮影方向を変えることによっても打ち消せない成分を含むことがある。しかしそのような成分は、図5(b)に示すように、画像処理手段により、撮影されたX線画像の平行移動と、画面に垂直な軸のまわりでの回転を行なうことによって打ち消すことが可能である。このときの画像の平行移動量及び画像の回転量は、体動による移動のうちX線撮影機構10の撮影方向の変更で打ち消せない成分の量に基づいて求めるようにすれば良い。このように回転駆動部22は、検出された体動に追従するようにX線撮影機構10を回転駆動する。
【0027】
上記構成によれば、被検体が体動を起こしてもX線撮影機構10の撮影方向が体動による回旋を常に打ち消すように、回転駆動部22により回転駆動される。従ってサブトラクション画像に現れる回旋の影響を小さくすることができる。例えば体動が継続的に続いても、X線撮影機構10はそれに追従するように移動するので、一定の効果を得ることができる。さらに、体動を起こした後に被検体が静止している場合には、撮影方向を変えるためにX線撮影機構10を動かす動作がすぐに完了するので、体動による回旋をほぼ完全に打ち消したサブトラクション画像を得ることができる。
【0028】
図6は、ステレオ撮影機能を持つX線管を用いて体動を検出する例を示す模式図である。図6(a)に示すように、ステレオ撮影機能を持つX線管は複数の焦点を備え、焦点を切り替えてX線を曝射可能なX線管である。この種のX線管を用いて体動を検出するには、X線撮影に写るマーカを被検体に複数取り付け、随時ステレオ撮影を行って一対の画像を得る。そうして図6(b)に示すように一対の画像上でマーカの像を自動認識することによって、マーカの3次元的位置を計測することができる。
【0029】
以上述べたようにこの実施形態では、被検体に取り付けたマーカの位置を位置計測装置により測定し、得られた位置情報を用いて体動による移動を検出する。そして、その結果に基づいて回転駆動部22によりC形アーム60を2つの軸周りで回転駆動させ、X線撮影機構10の撮影方向を被検体の体動に追従させて、被検体に取り付けられたマーカの位置がX線画像上でほぼ同じ位置になるように駆動する。このようにしたので、造影剤注入前後の画像間でサブトラクション処理を行う際に生じる、被検体の体動に起因する位置ずれアーチファクトを軽減することが可能になる。
【0030】
[第2の実施形態]
この実施形態では、X線撮影で得た画像に基づいて被検体の体動と移動量を検出し、その結果を用いてX線撮影機構10を制御する。特にこの実施形態では、X線撮影に写るX線マーカを被検体に取り付ける形態につき説明する。
この実施形態では、図7に示すようにX線撮影に写るマーカを被検体に複数取り付け、X線撮影で得た画像上でマーカの像をシステムコントローラ20が検出する。システムコントローラ20は各マーカの像の画像上での相互位置関係が常に一定になるように、回転コントローラ23を介してX線撮影機構10の撮影方向を制御する。
【0031】
マーカはX線を透過しにくい物質、例えば金属やヨードなどを含む材料で作られ、例えば体表に貼付することによって取り付ければ良い。この実施形態においても3個以上のマーカを取り付けることが望ましい。また、マーカ像が血管像と重なることを避けるためには、造影検査を行わない側の半球に取り付けるのが望ましい。
【0032】
体動の検出にあたっては、図8に示すように、第n回目の撮影で得た画像(第nフレームの画像)と、それよりもk回前の撮影で得た画像(第n−kフレームの画像)とを比較する。その際、システムコントローラ20は画像処理を行って各画像からマーカの像を抽出し、認識する(図8(a)、(b))。
【0033】
図9(a)は第n−kフレームの画像から抽出したマーカを示す。図9(b)は第nフレームの画像から抽出したマーカを示す。これらの情報から両者のマーカが最も良く一致するように、両者を位置あわせする。すなわち、2次元のアフィン変換であって、拡大・縮小を伴わないような変換Tを考えると、Tは2次元の平行移動と回転角度の3つのパラメータを持っている。これら3つのパラメータを調節して、両画像に含まれるマーカの輪郭が最も良く一致するようなTを見いだす。このような計算は非線形最小二乗法を応用することにより可能である。図9(c)は、そのような変換Tによって位置合わせを行った結果の一例を示す。
【0034】
もしこの変換Tによって両画像のマーカの位置が完全に一致したとすると、被検体の体動が画面に対して平行な移動と、画面に垂直な軸のまわりでの回転だけであったことになる。しかし一般には、被検体の体動は3次元的な動きであるので、変換Tによって両者のマーカの位置が一致することはない。この不一致が、被検体の3次元的体動を推定する情報となる。
【0035】
すなわち図10に示すように第n−kフレームの画像上のマーカ像と第nフレームの画像上のマーカ像とは、変換Tによっても解消されないずれを持つ。このずれは、フレーム中に図示する直線Lを軸とする回転によって良く説明できる。図11は図10の直線Lの延長上から被検体を見た際のマーカの位置を示す概念図である。マーカは顔面と後頭部に取り付けてあり、その間隔が頭部サイズであるおおよそ200mmほど離れていることが分かっているので、直線Lのまわりにどれだけ回転すれば両者のマーカが最も良く一致するかを推算することができる。直線Lおよび回転角度は、最小二乗法を用いた計算により容易に算出できる。そうしてシステムコントローラは、推算結果を用いて、その動きを打ち消すようにX線撮影機構10の撮影方向を変更する。
【0036】
なお、以下のようにして、マーカ相互の相対的な3次元位置関係を計測することができる。この手法を用いれば、顔面に付けたマーカと後頭部に付けたマーカとの間のおよその距離(例えば200mm)が不明であっても、体動を正確に把握することが可能になる。
【0037】
図12(a)に示すように、造影を開始する前に、まず第1の撮影を行い、X線撮影機構10の撮影方向を少し変えて、その方向からも第2の撮影を行う。その間、被検体は動かないものとする。
第1と第2の撮影で得られた一対の画像はいわゆるステレオペアであり、これらの画像中のマーカ像を同定することにより各マーカの三次元的位置を算出できる。ステレオペアから点状の物体の空間位置を算出する方法は既に知られており、その方法を利用すれば各マーカの3次元的位置を計測できる。
【0038】
なお、複数のフレームの画像を比較するのではなく、ステレオペア画像から点状の物体の空間位置を算出して各マーカの3次元的位置を計測する上記手法では、各マーカの3次元的位置の情報と、X線撮影で得られた画像上のマーカ像の位置を比較するだけで、X線撮影機構10の撮影方向の修正が可能であることは明らかである。
【0039】
以上述べたように第2の実施形態では、X線撮影に写るマーカを被検体に複数取り付け、X線撮影により取得した画像上でマーカの像を自動認識し、これらのマーカの像の画像上での相互位置関係が常に概ね一定になるようにX線撮影機構10の撮影方向を制御するようにしている。このようにすることでもX線撮影機構10を被検体の体動に追従して駆動することが可能になり、体動による位置ずれアーチファクトを軽減することができる。
【0040】
[第3の実施形態]
この実施形態では、X線マーカにより取得した位置情報と被検体の輪郭情報とを用いて体動による位置ずれを検出する手法につき説明する。図13(a)に示すように、被検体にX線撮影に写るマーカを取り付け、X線撮影で得た画像上でマーカの像を自動認識する(図13(b))。さらにX線画像に写る被検体の骨、あるいは体表の輪郭を自動認識して画像上で輪郭に対するマーカの像が常に概ね一定の場所に来るようにX線撮影機構10の撮影方向を制御する。
【0041】
体動の検出にあたっては、図14に示すように、第n回目の撮影で得た画像(第nフレームの画像)と、それよりもk回前の撮影で得た画像(第n−kフレームの画像)とを比較する。その際、システムコントローラ20は画像処理を行って各画像からマーカの像と被検体の骨あるいは体表の輪郭を抽出し、認識する(図14(a)、(b))。マーカの像、および、被検体の骨あるいは体表の輪郭を抽出するには既存の画像処理技術を用いればよい。
【0042】
それぞれ抽出した輪郭が最も良く一致するように、各画像を位置あわせする。すなわち、2次元のアフィン変換であって、拡大・縮小を伴わないような変換Tを考えると、Tは2次元の平行移動と回転角度の3つのパラメータを持っている。これら3つのパラメータを調節して、両者の輪郭が最も良く一致するようなTを見いだす。このような計算は非線形最小二乗法を応用することにより可能である。図14(c)は、そのような変換Tによって位置合わせを行った結果の一例を示す。
【0043】
変換Tによりマーカの像の位置も変換される。図15はマーカの部分を拡大して示すもので、矢印はマーカの位置ずれを示すベクトルである。このベクトルは、第n−kフレームが撮影された時刻から第nフレームが撮影された時刻に至る時間に、顎が僅かに上がると共に首が回旋したことを示す。
【0044】
その回転は図15のベクトルに直交する平面内に軸を持つ単一の3次元の微小回転であるが、画像の平面に垂直な回転成分は、輪郭を合わせることによって既に打ち消されている。よって体動による回旋は、図15のx軸のまわりでの微小回転と、y軸のまわりでの微小回転だけで表現されることになる。
【0045】
また、マーカが顔面に貼付されており、頭部の直径は概ね200mm程度(これをDとする)であることから、画像上でh[mm:ミリメートル]のずれが生じた場合、頭部の回転角度はほぼ h/D [radian:ラジアン]であることが推定される。このようにして、被検体がどれだけ回転したかが推算できる。この推算結果を用いて、その動きを打ち消すようにX線撮影機構10の撮影方向を変更する。
【0046】
以上述べたようにこの実施形態では、X線撮影に写るマーカを被検体に単数、または複数個取り付け、X線撮影で得た画像上でマーカの像を自動認識し、さらに被検体の骨あるいは体表の輪郭を自動認識して、画像上で輪郭に対するマーカの像が常に概ね一定の場所に来るようにX線撮影機構10の撮影方向を制御するようにする。このようにしたので、造影剤注入前後の画像間でサブトラクション処理を行う際に生じる、被検体の体動に起因する位置ずれアーチファクトを軽減することが可能になる。
【0047】
[第4の実施形態]
この実施形態では、マーカを用いず、X線撮影で得た画像に基づいて被検体がどちらにどれだけ動いたかを推定し、その結果をもとにX線撮影機構10を制御する手法につき説明する。
この実施形態では、第nフレームで撮影した画像(画像n)と、第n+kフレームで撮影した画像(画像n+k)を比較する。以下、画像nをQ(n,x,y)と表す。ここにx,yは画像上の画素の位置を表す座標であり、Q(n,x,y)はその画素の画素値である。
【0048】
図16に示すように画像上に多数(図16では36個)の対象領域(ROI(Region of Interest))を決めておき、個々のROI内の部分画像を比較する。あるROI jについて、画像nの部分画像をp(n,j,x,y)と表記することにする。なおjはインデックスであり、x,yはこの部分画像内の画素の位置をあらわす座標である。
【0049】
(ステップ1) p(n,j,x,y)とp(n+k,j,x−h,y−v)とが最大限に合致するような平行移動量(h,v)を算出する。そのためには、例えば次式(2)の指標が最小になるh,vを算出すれば良い。
【数2】
【0050】
高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)を利用することでこの種の数値を効率よく計算できる。こうして、各ROIについて、部分画像をどちらにどれだけ平行移動すべきかを示す2次元ベクトル(hj,vj)が得られる。図17は、計算された2次元ベクトル場の一例を示す模式図である。
【0051】
なお、個々のベクトルには、重要性(あるいは信用性)を表す重み係数wjを付与することができる。wjは例えば、Rj(hjj,vj)の最小値RminjとRj(0,0)との差を用いて、次式により計算しても良い。
wj = Rj(0,0)−Rminj
このほか、様々なバリエーションが考えられる。
【0052】
(ステップ2) 次に、画面全体にひとつの(拡大縮小を伴わない)アフィン変換、すなわち2次元的平行移動と2次元的回転を適用して、これらのベクトルを最大限打ち消す処理を行う。
【0053】
すなわち、ROI jの中心の画像上での位置をベクトルXjであらわすと、平行移動(mx,my)と回転θにより、各ベクトルは次式(3)に示す変換を受ける。
【数3】
【0054】
そこで、次式(4)に示す、ノルムの重み付き総和が最小になるようなアフィン変換を決定すればよい。
【数4】
【0055】
以上の処理は最小二乗法の問題であり、容易に計算することができる。この変換を画像n+k全体に施して得られる画像をQ′(n+k,x,y)とする。画像Q(n,x,y)と画像Q′(n+k,x,y)との総合的不一致度を次式(5)以下のように定義する。
【数5】
【0056】
以上の処理によって打ち消されずに残った成分(h′j,v′j)が、X線撮影の方向を修正することによって打ち消されるべき体動成分(およびノイズ)を表す。図18は打ち消されずに残ったベクトル成分を示す。
【0057】
(ステップ3) 次に、図18の各ベクトルの矢の向きを無視し、その方向だけを考慮してこれら全てのベクトルの平均ベクトルaを計算する。そうすると例えば図19に示すような結果を得る。これが、被検体の回旋方向を表すベクトルである。ただし向きは不明である。
【0058】
(ステップ4) 被写体は概ね直径200mmの球内に存在しているという知識を利用すれば、X線撮影方向を何度回せばよいかは、おおよそ推定できる。そこで、X線撮影方向を、どちらかの向きに少し動かして撮影を行う。こうして得られた画像をQ(n+k+1,x,y)とする。
【0059】
式(5)に示す不一致度R(n,n+k)に比べてR(n,n+k+1)が大きくなった場合には、X線撮影機構10を動かす向きが逆だったのであり、その結果を元に正しい方向にX線撮影方向を修正する。
【0060】
また、R(n,n+k)に比べてR(n,n+k+1)が小さくなった場合には、X線撮影方向を動かす向きが正しかったのであり、さらにもう少し同じ方向にX線撮影方向を動かして撮影する。こうして得た画像をQ(n+k+2,x,y)とする。そして、R(n,n+k+1)に比べてR(n,n+k+2)が大きくなるか、小さくなるかを判定する。以下、同様にしてRを算出し、その値を小さくする方向にX線撮影機構10を移動させることで、被検体の体動に追従した撮影方向の変更を実現することができる。
【0061】
[第5の実施形態]
この実施形態では、第4の実施形態の応答性を改善し急激な体動にも対応することの可能な制御手順につき説明する。
この実施形態では、造影開始前(すなわち、被検体が静止している時)に、まずX線撮影を行ってQ(0,x,y)を得ておき、次にX線撮影方向を作為的に少し動かして撮影を行ってQ(1,x,y)を得る。これは被検体の体動に相当する動きを作為的に模擬するものである。
【0062】
作為的にX線撮影方向を動かしたことで、アイソセンターから例えば100mm検出器に近い側の点の像が画像上でどれだけ動くかは、X線撮影方向を動かした量が分かっているので直ちに計算できる。これをベクトルbとする。
【0063】
そして、第4の実施形態と同様の処理を行って(h′j,v′j)のベクトル場を算出し、さらに平均ベクトルa(図19)を算出する。当然、aはbとほぼ平行なベクトルとなる。次に、次式(6)の計算を行う。
【数6】
【0064】
スカラー量gjは、各ベクトル(h′j,v′j)と、X線撮影方向bとの関係を表す「ゲイン」であり、負の値も取り得る。ひとたびgjを算出しておけば、第4の実施形態の(ステップ4)において、X線撮影方向を動かすべき向きを決定すること、およびX線撮影機構10の移動量を決定することが容易にできるようになる。すなわち以下の手順を実施する。
【0065】
(ステップ4′) ステップ3までの画像Q′(n+k,x,y)とQ(n,x,y)との比較によって得られた各ベクトル(h′j, v′j)について次式(7)を計算する。
【数7】
【0066】
次に、式(7)の全てのベクトルの平均ベクトルaを計算する。ベクトルaが、被検体の回旋方向と回旋量を向きまで含めて表すベクトルである。図20に、このようにして得られるベクトルaを示す。ここで旋回量はアイソセンターから100mmの位置における移動量として表現される。
【0067】
ベクトルaが得られればその大きさ及び向きが分かるので、X線撮影機構10をベクトルaに沿って動かして撮影を行う。このようにして得られた画像をQ(n+k+1,x,y)とする。なお、撮影を繰り返す過程でゲイン係数gjを何度か計算し直すことにより、被検体の体動による回旋をより正確に推算できるように改良していくことができる。
【0068】
[第6の実施形態]
この実施形態では、バイプレーン装置を用いた構成につき説明する。バイプレーン装置は、2式のX線撮影機構10を同時に使用できるX線撮影装置であり、典型的には例えば図21に示すように2式のCアーム撮影装置を組み合わせて構成される。2式のCアーム撮影装置のアイソセンターが一致するように、かつ、両者の撮影方向が直交するように組み合わせて用いられることが多い。
【0069】
一方の撮影装置で得た画像を用いて被検体の体動を検出し、撮影方向の修正量を決定できれば、他方の撮影装置にもそれを反映して撮影方向を修正させることは明らかに容易である。また、両方の撮影装置で得た画像からそれぞれ被検体の体動を検出した結果を平均するなどして、両方の撮影装置で得た画像を使って被検体の体動をより正確に推定するように構成することも、容易に実現できる。
【0070】
以上述べたように本願発明によれば、被検体の体動に追従してX線撮影機構を移動させることが可能になり、造影剤注入前後の画像間でサブトラクション処理を行う際に生じる、被検体の体動に起因する位置ずれアーチファクトを軽減することが可能になる。
【0071】
なおこの発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態にて述べた体動の検知に係わる手法は、サブトラクションアンギオグラフィーのほか、血管構造を示すロードマップにも用いることができる。
【0072】
また、体動に係わる制御として、例えば検出された体動量がある閾値以上となれば、その直後のX線撮像においては照射X線線量を落とすようにすることが考えられる。被検体が動いている間の画像は観察に用いる可能性が低いからである。これによりトータルでの被曝量を低減することができる。
【0073】
また、X線照射中であることを報知するパルス音を、体動の有無に応じて変化させることも考えられる。これにより術者も患者さん(被検体)も、動いたことを容易に認識できるようになる。
【0074】
また、複数のX線マーカの形状や大きさ、あるいは材質を変化させても良い。例えば図22に示すように一方のマーカを○型、他方を+型とし、X線像上で容易に区別できるようにする。またこれらのマーカをそれぞれ被検体の前面と背面に配置するようにする。このようにすれば画像上で○のマーカ像と+のマーカ像の距離の変化、および変化した方向(符号)によって、被検体の顎が上がったのか下がったのかを容易に区別できるようになる。例えば図23(a)および図23(b)に示すように、区別可能なマーカの間隔が体動の前後で変化している。この事実から、図23においては体動により被検体の顎が上がったと結論付けることができる。
【0075】
また、マーカを用いない場合には、X線検出器14の近傍に光学カメラを取り付け、被検体の外観を撮影して得られた光学像中の特定の画像パターンを追跡することにより体動を検出するようにしても良い。例えば被検体を側方から撮影している状態で被検体の顎が上がるが下がるかした場合には、X線画像を2次元回転するだけで位置合わせが可能である。よって被検体の首の左右の捻転を計測することが専ら必要となる。
【0076】
例えば耳は光学像中で容易に検出できる画像パターンであり、パターン認識技術を応用すれば容易に検出可能である。そこで図24(a)、(b)に示すように耳の画像パターンを継続的にトレースし、そのパターンがどちらに動いているかを追跡するようにすれば被検体が首を左右どちら向きに、どれだけの角度捻転したかを判定することができる。
【0077】
また本発明では、被検体の体動に追従してX線撮影機構10を物理的に動かすようにしている。よって被検体が急に首を振るなどした場合、X線撮影機構10の撮影方向が自動的に急激かつ大きく動くために、近くで作業している医療従事者などにX線撮影機構10が衝突するおそれがある。また、被検体に装着された点滴などのチューブや心電計などのケーブルをX線撮影機構10が引っかけて、事故を起こすおそれもある。
【0078】
そこで、X線撮影機構10の動きに関し次のような制限を設けることもできる。以下に示す制限事項は複数組み合わせることも可能である。
(A) 被検体の体動に追従する動作をX線撮影機構10が行うかどうかを、例えばスイッチなどの機構によりシステムに指示するようにする。そして、このスイッチがオンになっているときに限り、X線撮影機構10に被検体の体動に追従する動作を行わせるようにする。
(B) X線撮影機構10の回旋動作の角速度(単位 radian/sec)に上限を設ける。
(C) ある基準となるX線撮影機構10の撮影方向、例えば、ある時点(例えば撮影を開始した時点)におけるX線撮影機構10の撮影方向、過去から現在までの一定期間(例えば10秒前)までのX線撮影機構10の撮影方向の平均値、を定め、この基準方向から一定の上限値(例えば3度)以上の角度の回旋が必要となった場合には、回旋動作を上限値までしか行わない。
【0079】
例えば図25に示すように、体動の計測結果から所定の閾値以上の角度に動かす必要が生じた場合、閾値を超えた移動を禁止する。(1)例えば画像から計測された、X線撮影方向を動かすべき量xに閾値を設ける。あるいは、(2)X線撮影機構10に対してX線撮影機構10をどれだけ動かすかを命令する量をyとし、yが閾値を越える場合には、X線撮影方向をそれ以上動かさない。
【0080】
(D) ある基準となるX線撮影機構10の撮影方向、例えば、ある時点(例えば撮影を開始した時点)におけるX線撮影機構10の撮影方向、過去から現在までの一定期間(例えば10秒前)までのX線撮影機構10の撮影方向の角度の平均値によって定まる撮影方向、などを定め、この基準方向から一定の上限値(例えば5度)以上の角度の回旋が必要となった場合には、(A)でいう「被検体の体動に追従する動作をX線撮影装置が行うかどうか」の指示を自動的にオフにする。
【0081】
例えば図26に示すように、体動の計測結果により閾値以上の角度に動く必要が生じた場合、追跡しない。すなわち(1)画像などから計測された、X線撮影方向を動かすべき量をxとし、(2)X線撮影装置に対して、X線撮影方向をどれだけ動かすかを命令する量をyとしたとき、xが閾値を越えた場合には、X線撮影方向を変更しない。
【0082】
さらに、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10…X線撮影機構、12…X線管、14…X線検出器、20…システムコントローラ、21…カメラコントーラ、22…回転駆動部、23…回転コントローラ、24…第1画像メモリ、25…第2画像メモリ、26…感度補正部、27…サブトラクション部、31…フィルタリング部、32…アフィン変換部、33…画像合成部、36…D/A変換部、37…表示部、60…C形アーム
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばX線サブトラクションアンギオグラフィに適用可能なX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線サブトラクションアンギオグラフィは造影剤を用いて血管を観察する検査であり、特に頭頚部の検査で用いられることが多い。この検査は血管内に造影剤を投与する前のX線画像(マスク画像)と造影剤を投与した後のX線画像(コントラスト画像)とを撮影し、両像を減算して得られる像(サブトラクション画像)を算出することによって、造影剤で造影された血管の像を描出するものである。骨などの像は造影剤の投与前後で変化しないが、血管の像は造影剤投与後にだけ現れるので、サブトラクション画像には血管だけが抽出されて現れる。
【0003】
またX線サブトラクションアンギオグラフィでは、マスク画像の撮影後に血管内に造影剤を持続的に投与している過程での一連の画像を動画像として撮影し、これら一連の画像からマスク画像を減算することにより血管に造影剤が流入してゆく過程を表す一連の画像を描出する検査も行われる。
【0004】
これら一連の画像は、そのまま観察に供されるだけでなく種々の機能画像(functional image)を算出するのにも利用される。機能画像としては、画像上の各画素位置における画素値の最大値を取り出して作った最大値画像、画像上の各画素位置において画素値が最大になった時刻を表すピーク時刻画像、画像上の各画素位置において造影効果が最初に現れた時刻を表す到達時刻画像、などがある。
【0005】
ところで、造影剤が投与されると患者(以下、被検体と称する)が僅かに動くことが多い。これは投与された造影剤により血管に熱感を生じるからで、被検体に意識があるか否かに係わらず起こり得る。このような被検体の動き(体動)が生じると、造影剤の投与前後で血管の像だけでなく骨などの像にも変化が生じることになり、コントラスト画像からマスク画像を減算しても骨の像を消去できなくなる。その結果、サブトラクション画像には血管の他に骨などの像がアーチファクトとして現れてしまい、血管の観察が難しくなる。さらに機能画像の算出にも悪影響が及び、誤った機能画像が算出されてしまう。
【0006】
図27は造影剤を投与した際にしばしば見られる典型的な体動を示す図である。注意深く観察しないと分からない程度の僅かな動きであるが、造影剤投与に伴って顎が上がり(図27(a)→図27(b))、左右への首の捻転(図27(b)→図27(c))も生じることがある。
【0007】
図28(a)はマスク画像の一例を示し、図28(b)は同じ被検体のコントラスト画像の一例を示す。この例では片方の頸動脈に挿入したカテーテル先端から造影剤を投与するケースを示す。図28(a)のマスク画像には骨などが写っているが血管は写っていない。造影剤が投与されると片側半球の血管が造影され、画像に現れる。図28(b)のコントラスト画像には骨などのほか、造影された血管が写っている。
【0008】
図29(a)は被検体が全く動かない理想的な状態で得られるサブトラクション画像の模式図を示す。図29(b)は造影剤投与の際に被検体が動いた場合に得られるサブトラクション画像の模式図を示す。図29(a)の理想的なサブトラクション画像では血管だけが描出されているのに対し、被検体が体動を起こした場合のサブトラクション画像(図29(b))では、血管の他に、骨などの組織が複雑な像を形成しており、血管を見分けることが難しくなる。機能画像(functional image)を算出した場合にも、本来画像に現れるべきでない骨などの像が重なっているために正しい結果が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−199279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のように既存のX線撮影装置では、図30に示すように被検体の体動の有無にかかわらず同じ方向から撮影を行っているので、被検体に体動が生じるとマスク画像とコントラスト画像との間に位置ずれが生じ、鮮明なサブトラクション画像を得られないという不具合がある。
この発明の目的は、造影剤注入前後の画像間でサブトラクション処理を行う際に生じる、被検体の体動に起因する位置ずれアーチファクトを軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するためにこの発明の一態様によれば、被検体を撮影して複数のX線画像を発生するX線撮影部と、前記X線撮影部の撮影方向を変更する駆動部と、前記複数のX線画像のうち、造影剤注入後のコントラスト画像と造影剤注入前のマスク画像とをサブトラクションしてサブトラクション画像を求めるサブトラクション画像発生部とを備えたX線診断装置において、前記被検体の体動を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づき、検出された体動に追従して前記X線撮影部を移動するように前記駆動部を制御する制御部とを具備することを特徴とするX線撮影装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、造影剤注入前後の画像間でサブトラクション処理を行う際に生じる、被検体の体動に起因する位置ずれアーチファクトを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明に関わるX線撮影装置の実施の形態を示す機能ブロック図。
【図2】図1のX線撮影機構の外観図。
【図3】この発明の実施の形態における撮影の様子を示す模式図。
【図4】被検体の頭部に複数のマーカを取り付けた状態を示す図。
【図5】被検体の体動により画像に生じる変化に含まれる成分を示す模式図。
【図6】ステレオ撮影機能を持つX線管を用いて体動を検出する例を示す模式図。
【図7】X線撮影用マーカを被検体に取り付けた状態を示す模式図。
【図8】X線画像に現れたマーカを示す図。
【図9】複数の画像フレームにわたるマーカ像を示す図。
【図10】複数の画像フレームにわたるマーカ像が一致しないことを説明するための図。
【図11】図10の直線Lの延長上から被検体を見た際のマーカの位置を示す概念図。
【図12】ステレオペア画像を用いてマーカの3次元的位置を算出する一例を示す図。
【図13】X線画像に現れるマーカと被検体の輪郭とを示す模式図。
【図14】複数の画像フレームにわたるマーカ像と被検体の輪郭を示す図。
【図15】図14のマーカの部分を拡大して示す図。
【図16】X線画像に設定されたROIの一例を示す図。
【図17】計算された2次元ベクトル場の一例を示す模式図。
【図18】図17からは打ち消されずに残ったベクトル成分を示す図。
【図19】被検体の回旋方向を表すベクトル(向きは不明)を示す図。
【図20】第5の実施形態における演算により得られたベクトルaの一例を示す図。
【図21】バイプレーン装置の一例を示す図。
【図22】マーカの形状の例を示す図。
【図23】体動の前後でマーカ位置の変化する様子を示す図。
【図24】耳の画像パターンをトレースする状態を示す図。
【図25】X線撮影機構10の移動に制限を設ける一例を示す図。
【図26】X線撮影機構10の移動に制限を設ける他の例を示す図。
【図27】造影剤の投与時における典型的な体動を示す図。
【図28】マスク画像とコントラスト画像の一例を示す図。
【図29】理想的なサブトラクション画像と体動の有る状態で撮影されたサブトラクション画像とを示す図。
【図30】既存技術における撮影を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係るX線撮影装置を好ましい実施形態により説明する。 図1に示すように、X線撮影装置は、X線撮影機構10を有する。X線撮影機構10は、図2に示すように、X線管12(X線発生手段)とX線検出器14とを有する。X線検出器14は、イメージインテンシファイア15とTVカメラ16とから構成される。または、検出器14は、マトリクス状に配列された半導体検出素子を有するフラットパネルディテクタ(FPD:平面型X線検出器)で構成される。
【0015】
X線管12は、X線検出器14とともに、互いに対向する向きでC形アーム60に搭載される。寝台の天板50上の被検体Pは、X線管12と検出器14との間に配置される。C形アーム60は、天井ベース63から吊り下げられる支柱64、または床置きスタンドに支持される。天井ベース63は、天井に対して、直交する2方向に沿って個別に平行移動可能に構成されている。C形アーム60は、アイソセンタを中心に直交する軸A,Bに関して回転可能に、支柱64に取り付けられている。この回転自由度を用いてX線管12とX線検出器14とを結ぶ撮影方向を変更することが可能である。
【0016】
回転駆動部22は支柱64の内部に収容される。回転駆動部22は、C形アーム60を軸A,Bまわりに個別に回転して移動するための2つの動力源を有する。C形アーム60は、回転駆動部22で回転することにより、X線管12とX線検出器14とを結ぶ撮影方向撮影方向を変更することができる。すなわち回転駆動部22はC形アーム60を支持し、回転コントローラ23の制御のもとにC形アーム60をA軸、B軸周りに回転駆動して上記撮影方向を変更する。
【0017】
X線撮影装置は、X線撮影機構10とともに、画像を処理してマーカ検出などの種々の処理を行うシステムコントローラ20、カメラコントローラ21、回転コントローラ23、画像メモリ25、感度補正部26、対応画像選択部19、サブトラクション部27、高周波強調フィルタリングなどを行うフィルタリング部31、画像拡大移動などを行うアフィン変換部32、D/A変換部36、表示部37を有する。撮影されたX線画像は、カメラコントローラ21内のアナログディジタル変換器(A/D変換器)でディジタル信号に変換される。
【0018】
画像メモリ25は、造影前に撮影されたマスク画像に関するデータ、および造影後に撮影されたコントラスト画像に関するデータを記憶するために設けられる。サブトラクション部27は、マスク画像とコントラスト画像とを差分(引き算)することにより差分画像(DSA(Digital Subtraction Angiography)画像ともいう)を生成する。次に、この発明の実施の形態につき詳細に説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
この実施形態では被検体の位置を位置計測装置などで測定し、得られた位置情報を用いて体動による移動量を検出し、その結果に基づいてX線撮影機構10の撮影方向を制御するようにする。すなわち図3に示すように、被検体の体動を自動的に検出し、その検出結果を利用して撮影方向を変更することで、骨などの像がマスク画像と概ね一致するような方向から撮影を行えるようにする。
【0020】
この実施形態では例えば赤外線反射型マーカを被検体の皮膚などに取り付け、赤外線光学式位置計測装置を用いてこれらマーカの3次元的位置を測定する。一連のX線撮影を行うあいだ、マーカの3次元的位置の測定を少なくとも毎秒数回程度継続的に行う。尚、赤外線以外の光反射型マーカを用いるようにしても良い。
【0021】
マーカは図4に示すように、同じ被検体に3個以上取り付けることが望ましい。以下の説明では被検体の頭部にマーカを取り付け、頭部の動きを検出することを考える。複数のマーカを区別するために番号を付し、マーカ1,マーカ2,...のように表記することにする。
【0022】
マスク画像を撮影した時点でのマーカjの位置ベクトルをm(j,0)とする。その後、第nフレームの画像を撮影しようとする直前に測定したマーカjの位置ベクトルをm(j,n)とする。これらの位置ベクトルは同次座標表現を用いて次式(1)のように表せる。
【数1】
【0023】
m(j,n)とm(j,0)とは次式に示すように拡大・縮小を伴わないアフィン変換T(4行4列の行列)によって結ばれる。
m(j,n)=T・m(j,0)
現実には位置計測に係わる誤差のために両辺は完全には一致しないが、ベクトルm(j,n)−T・m(j,0)のノルムが最小になるようにTを定めることにより、最適なTを算出することができる。Tの演算には最小二乗法などを用いることができる。
【0024】
行列Tは、第nフレームの撮影直前に、マスク画像の撮影時に比べて被検体の頭部が3次元的にどれだけどの方向に回旋したかを示す。そこでこの実施形態では、X線撮影機構10をA軸、B軸周りの回転の自由度を利用して駆動し、この回旋を打ち消すように撮影方向を変化させる。
【0025】
撮影を継続している間に、撮影方向を変えるためにX線撮影機構10が機械的に運動している状態で第nフレームを撮影すべき時刻が来る可能性がある。このような場合には、撮影方向の変化が足りていなくてもその方向から撮影を行う一方で、第n+1フレームの撮影に備えてX線撮影機構10の撮影方向を変える駆動を継続して実施する。
【0026】
被検体の体動による画像の変化は、図5(a)に示すようにX線撮影機構10の撮影方向を変えることによっても打ち消せない成分を含むことがある。しかしそのような成分は、図5(b)に示すように、画像処理手段により、撮影されたX線画像の平行移動と、画面に垂直な軸のまわりでの回転を行なうことによって打ち消すことが可能である。このときの画像の平行移動量及び画像の回転量は、体動による移動のうちX線撮影機構10の撮影方向の変更で打ち消せない成分の量に基づいて求めるようにすれば良い。このように回転駆動部22は、検出された体動に追従するようにX線撮影機構10を回転駆動する。
【0027】
上記構成によれば、被検体が体動を起こしてもX線撮影機構10の撮影方向が体動による回旋を常に打ち消すように、回転駆動部22により回転駆動される。従ってサブトラクション画像に現れる回旋の影響を小さくすることができる。例えば体動が継続的に続いても、X線撮影機構10はそれに追従するように移動するので、一定の効果を得ることができる。さらに、体動を起こした後に被検体が静止している場合には、撮影方向を変えるためにX線撮影機構10を動かす動作がすぐに完了するので、体動による回旋をほぼ完全に打ち消したサブトラクション画像を得ることができる。
【0028】
図6は、ステレオ撮影機能を持つX線管を用いて体動を検出する例を示す模式図である。図6(a)に示すように、ステレオ撮影機能を持つX線管は複数の焦点を備え、焦点を切り替えてX線を曝射可能なX線管である。この種のX線管を用いて体動を検出するには、X線撮影に写るマーカを被検体に複数取り付け、随時ステレオ撮影を行って一対の画像を得る。そうして図6(b)に示すように一対の画像上でマーカの像を自動認識することによって、マーカの3次元的位置を計測することができる。
【0029】
以上述べたようにこの実施形態では、被検体に取り付けたマーカの位置を位置計測装置により測定し、得られた位置情報を用いて体動による移動を検出する。そして、その結果に基づいて回転駆動部22によりC形アーム60を2つの軸周りで回転駆動させ、X線撮影機構10の撮影方向を被検体の体動に追従させて、被検体に取り付けられたマーカの位置がX線画像上でほぼ同じ位置になるように駆動する。このようにしたので、造影剤注入前後の画像間でサブトラクション処理を行う際に生じる、被検体の体動に起因する位置ずれアーチファクトを軽減することが可能になる。
【0030】
[第2の実施形態]
この実施形態では、X線撮影で得た画像に基づいて被検体の体動と移動量を検出し、その結果を用いてX線撮影機構10を制御する。特にこの実施形態では、X線撮影に写るX線マーカを被検体に取り付ける形態につき説明する。
この実施形態では、図7に示すようにX線撮影に写るマーカを被検体に複数取り付け、X線撮影で得た画像上でマーカの像をシステムコントローラ20が検出する。システムコントローラ20は各マーカの像の画像上での相互位置関係が常に一定になるように、回転コントローラ23を介してX線撮影機構10の撮影方向を制御する。
【0031】
マーカはX線を透過しにくい物質、例えば金属やヨードなどを含む材料で作られ、例えば体表に貼付することによって取り付ければ良い。この実施形態においても3個以上のマーカを取り付けることが望ましい。また、マーカ像が血管像と重なることを避けるためには、造影検査を行わない側の半球に取り付けるのが望ましい。
【0032】
体動の検出にあたっては、図8に示すように、第n回目の撮影で得た画像(第nフレームの画像)と、それよりもk回前の撮影で得た画像(第n−kフレームの画像)とを比較する。その際、システムコントローラ20は画像処理を行って各画像からマーカの像を抽出し、認識する(図8(a)、(b))。
【0033】
図9(a)は第n−kフレームの画像から抽出したマーカを示す。図9(b)は第nフレームの画像から抽出したマーカを示す。これらの情報から両者のマーカが最も良く一致するように、両者を位置あわせする。すなわち、2次元のアフィン変換であって、拡大・縮小を伴わないような変換Tを考えると、Tは2次元の平行移動と回転角度の3つのパラメータを持っている。これら3つのパラメータを調節して、両画像に含まれるマーカの輪郭が最も良く一致するようなTを見いだす。このような計算は非線形最小二乗法を応用することにより可能である。図9(c)は、そのような変換Tによって位置合わせを行った結果の一例を示す。
【0034】
もしこの変換Tによって両画像のマーカの位置が完全に一致したとすると、被検体の体動が画面に対して平行な移動と、画面に垂直な軸のまわりでの回転だけであったことになる。しかし一般には、被検体の体動は3次元的な動きであるので、変換Tによって両者のマーカの位置が一致することはない。この不一致が、被検体の3次元的体動を推定する情報となる。
【0035】
すなわち図10に示すように第n−kフレームの画像上のマーカ像と第nフレームの画像上のマーカ像とは、変換Tによっても解消されないずれを持つ。このずれは、フレーム中に図示する直線Lを軸とする回転によって良く説明できる。図11は図10の直線Lの延長上から被検体を見た際のマーカの位置を示す概念図である。マーカは顔面と後頭部に取り付けてあり、その間隔が頭部サイズであるおおよそ200mmほど離れていることが分かっているので、直線Lのまわりにどれだけ回転すれば両者のマーカが最も良く一致するかを推算することができる。直線Lおよび回転角度は、最小二乗法を用いた計算により容易に算出できる。そうしてシステムコントローラは、推算結果を用いて、その動きを打ち消すようにX線撮影機構10の撮影方向を変更する。
【0036】
なお、以下のようにして、マーカ相互の相対的な3次元位置関係を計測することができる。この手法を用いれば、顔面に付けたマーカと後頭部に付けたマーカとの間のおよその距離(例えば200mm)が不明であっても、体動を正確に把握することが可能になる。
【0037】
図12(a)に示すように、造影を開始する前に、まず第1の撮影を行い、X線撮影機構10の撮影方向を少し変えて、その方向からも第2の撮影を行う。その間、被検体は動かないものとする。
第1と第2の撮影で得られた一対の画像はいわゆるステレオペアであり、これらの画像中のマーカ像を同定することにより各マーカの三次元的位置を算出できる。ステレオペアから点状の物体の空間位置を算出する方法は既に知られており、その方法を利用すれば各マーカの3次元的位置を計測できる。
【0038】
なお、複数のフレームの画像を比較するのではなく、ステレオペア画像から点状の物体の空間位置を算出して各マーカの3次元的位置を計測する上記手法では、各マーカの3次元的位置の情報と、X線撮影で得られた画像上のマーカ像の位置を比較するだけで、X線撮影機構10の撮影方向の修正が可能であることは明らかである。
【0039】
以上述べたように第2の実施形態では、X線撮影に写るマーカを被検体に複数取り付け、X線撮影により取得した画像上でマーカの像を自動認識し、これらのマーカの像の画像上での相互位置関係が常に概ね一定になるようにX線撮影機構10の撮影方向を制御するようにしている。このようにすることでもX線撮影機構10を被検体の体動に追従して駆動することが可能になり、体動による位置ずれアーチファクトを軽減することができる。
【0040】
[第3の実施形態]
この実施形態では、X線マーカにより取得した位置情報と被検体の輪郭情報とを用いて体動による位置ずれを検出する手法につき説明する。図13(a)に示すように、被検体にX線撮影に写るマーカを取り付け、X線撮影で得た画像上でマーカの像を自動認識する(図13(b))。さらにX線画像に写る被検体の骨、あるいは体表の輪郭を自動認識して画像上で輪郭に対するマーカの像が常に概ね一定の場所に来るようにX線撮影機構10の撮影方向を制御する。
【0041】
体動の検出にあたっては、図14に示すように、第n回目の撮影で得た画像(第nフレームの画像)と、それよりもk回前の撮影で得た画像(第n−kフレームの画像)とを比較する。その際、システムコントローラ20は画像処理を行って各画像からマーカの像と被検体の骨あるいは体表の輪郭を抽出し、認識する(図14(a)、(b))。マーカの像、および、被検体の骨あるいは体表の輪郭を抽出するには既存の画像処理技術を用いればよい。
【0042】
それぞれ抽出した輪郭が最も良く一致するように、各画像を位置あわせする。すなわち、2次元のアフィン変換であって、拡大・縮小を伴わないような変換Tを考えると、Tは2次元の平行移動と回転角度の3つのパラメータを持っている。これら3つのパラメータを調節して、両者の輪郭が最も良く一致するようなTを見いだす。このような計算は非線形最小二乗法を応用することにより可能である。図14(c)は、そのような変換Tによって位置合わせを行った結果の一例を示す。
【0043】
変換Tによりマーカの像の位置も変換される。図15はマーカの部分を拡大して示すもので、矢印はマーカの位置ずれを示すベクトルである。このベクトルは、第n−kフレームが撮影された時刻から第nフレームが撮影された時刻に至る時間に、顎が僅かに上がると共に首が回旋したことを示す。
【0044】
その回転は図15のベクトルに直交する平面内に軸を持つ単一の3次元の微小回転であるが、画像の平面に垂直な回転成分は、輪郭を合わせることによって既に打ち消されている。よって体動による回旋は、図15のx軸のまわりでの微小回転と、y軸のまわりでの微小回転だけで表現されることになる。
【0045】
また、マーカが顔面に貼付されており、頭部の直径は概ね200mm程度(これをDとする)であることから、画像上でh[mm:ミリメートル]のずれが生じた場合、頭部の回転角度はほぼ h/D [radian:ラジアン]であることが推定される。このようにして、被検体がどれだけ回転したかが推算できる。この推算結果を用いて、その動きを打ち消すようにX線撮影機構10の撮影方向を変更する。
【0046】
以上述べたようにこの実施形態では、X線撮影に写るマーカを被検体に単数、または複数個取り付け、X線撮影で得た画像上でマーカの像を自動認識し、さらに被検体の骨あるいは体表の輪郭を自動認識して、画像上で輪郭に対するマーカの像が常に概ね一定の場所に来るようにX線撮影機構10の撮影方向を制御するようにする。このようにしたので、造影剤注入前後の画像間でサブトラクション処理を行う際に生じる、被検体の体動に起因する位置ずれアーチファクトを軽減することが可能になる。
【0047】
[第4の実施形態]
この実施形態では、マーカを用いず、X線撮影で得た画像に基づいて被検体がどちらにどれだけ動いたかを推定し、その結果をもとにX線撮影機構10を制御する手法につき説明する。
この実施形態では、第nフレームで撮影した画像(画像n)と、第n+kフレームで撮影した画像(画像n+k)を比較する。以下、画像nをQ(n,x,y)と表す。ここにx,yは画像上の画素の位置を表す座標であり、Q(n,x,y)はその画素の画素値である。
【0048】
図16に示すように画像上に多数(図16では36個)の対象領域(ROI(Region of Interest))を決めておき、個々のROI内の部分画像を比較する。あるROI jについて、画像nの部分画像をp(n,j,x,y)と表記することにする。なおjはインデックスであり、x,yはこの部分画像内の画素の位置をあらわす座標である。
【0049】
(ステップ1) p(n,j,x,y)とp(n+k,j,x−h,y−v)とが最大限に合致するような平行移動量(h,v)を算出する。そのためには、例えば次式(2)の指標が最小になるh,vを算出すれば良い。
【数2】
【0050】
高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)を利用することでこの種の数値を効率よく計算できる。こうして、各ROIについて、部分画像をどちらにどれだけ平行移動すべきかを示す2次元ベクトル(hj,vj)が得られる。図17は、計算された2次元ベクトル場の一例を示す模式図である。
【0051】
なお、個々のベクトルには、重要性(あるいは信用性)を表す重み係数wjを付与することができる。wjは例えば、Rj(hjj,vj)の最小値RminjとRj(0,0)との差を用いて、次式により計算しても良い。
wj = Rj(0,0)−Rminj
このほか、様々なバリエーションが考えられる。
【0052】
(ステップ2) 次に、画面全体にひとつの(拡大縮小を伴わない)アフィン変換、すなわち2次元的平行移動と2次元的回転を適用して、これらのベクトルを最大限打ち消す処理を行う。
【0053】
すなわち、ROI jの中心の画像上での位置をベクトルXjであらわすと、平行移動(mx,my)と回転θにより、各ベクトルは次式(3)に示す変換を受ける。
【数3】
【0054】
そこで、次式(4)に示す、ノルムの重み付き総和が最小になるようなアフィン変換を決定すればよい。
【数4】
【0055】
以上の処理は最小二乗法の問題であり、容易に計算することができる。この変換を画像n+k全体に施して得られる画像をQ′(n+k,x,y)とする。画像Q(n,x,y)と画像Q′(n+k,x,y)との総合的不一致度を次式(5)以下のように定義する。
【数5】
【0056】
以上の処理によって打ち消されずに残った成分(h′j,v′j)が、X線撮影の方向を修正することによって打ち消されるべき体動成分(およびノイズ)を表す。図18は打ち消されずに残ったベクトル成分を示す。
【0057】
(ステップ3) 次に、図18の各ベクトルの矢の向きを無視し、その方向だけを考慮してこれら全てのベクトルの平均ベクトルaを計算する。そうすると例えば図19に示すような結果を得る。これが、被検体の回旋方向を表すベクトルである。ただし向きは不明である。
【0058】
(ステップ4) 被写体は概ね直径200mmの球内に存在しているという知識を利用すれば、X線撮影方向を何度回せばよいかは、おおよそ推定できる。そこで、X線撮影方向を、どちらかの向きに少し動かして撮影を行う。こうして得られた画像をQ(n+k+1,x,y)とする。
【0059】
式(5)に示す不一致度R(n,n+k)に比べてR(n,n+k+1)が大きくなった場合には、X線撮影機構10を動かす向きが逆だったのであり、その結果を元に正しい方向にX線撮影方向を修正する。
【0060】
また、R(n,n+k)に比べてR(n,n+k+1)が小さくなった場合には、X線撮影方向を動かす向きが正しかったのであり、さらにもう少し同じ方向にX線撮影方向を動かして撮影する。こうして得た画像をQ(n+k+2,x,y)とする。そして、R(n,n+k+1)に比べてR(n,n+k+2)が大きくなるか、小さくなるかを判定する。以下、同様にしてRを算出し、その値を小さくする方向にX線撮影機構10を移動させることで、被検体の体動に追従した撮影方向の変更を実現することができる。
【0061】
[第5の実施形態]
この実施形態では、第4の実施形態の応答性を改善し急激な体動にも対応することの可能な制御手順につき説明する。
この実施形態では、造影開始前(すなわち、被検体が静止している時)に、まずX線撮影を行ってQ(0,x,y)を得ておき、次にX線撮影方向を作為的に少し動かして撮影を行ってQ(1,x,y)を得る。これは被検体の体動に相当する動きを作為的に模擬するものである。
【0062】
作為的にX線撮影方向を動かしたことで、アイソセンターから例えば100mm検出器に近い側の点の像が画像上でどれだけ動くかは、X線撮影方向を動かした量が分かっているので直ちに計算できる。これをベクトルbとする。
【0063】
そして、第4の実施形態と同様の処理を行って(h′j,v′j)のベクトル場を算出し、さらに平均ベクトルa(図19)を算出する。当然、aはbとほぼ平行なベクトルとなる。次に、次式(6)の計算を行う。
【数6】
【0064】
スカラー量gjは、各ベクトル(h′j,v′j)と、X線撮影方向bとの関係を表す「ゲイン」であり、負の値も取り得る。ひとたびgjを算出しておけば、第4の実施形態の(ステップ4)において、X線撮影方向を動かすべき向きを決定すること、およびX線撮影機構10の移動量を決定することが容易にできるようになる。すなわち以下の手順を実施する。
【0065】
(ステップ4′) ステップ3までの画像Q′(n+k,x,y)とQ(n,x,y)との比較によって得られた各ベクトル(h′j, v′j)について次式(7)を計算する。
【数7】
【0066】
次に、式(7)の全てのベクトルの平均ベクトルaを計算する。ベクトルaが、被検体の回旋方向と回旋量を向きまで含めて表すベクトルである。図20に、このようにして得られるベクトルaを示す。ここで旋回量はアイソセンターから100mmの位置における移動量として表現される。
【0067】
ベクトルaが得られればその大きさ及び向きが分かるので、X線撮影機構10をベクトルaに沿って動かして撮影を行う。このようにして得られた画像をQ(n+k+1,x,y)とする。なお、撮影を繰り返す過程でゲイン係数gjを何度か計算し直すことにより、被検体の体動による回旋をより正確に推算できるように改良していくことができる。
【0068】
[第6の実施形態]
この実施形態では、バイプレーン装置を用いた構成につき説明する。バイプレーン装置は、2式のX線撮影機構10を同時に使用できるX線撮影装置であり、典型的には例えば図21に示すように2式のCアーム撮影装置を組み合わせて構成される。2式のCアーム撮影装置のアイソセンターが一致するように、かつ、両者の撮影方向が直交するように組み合わせて用いられることが多い。
【0069】
一方の撮影装置で得た画像を用いて被検体の体動を検出し、撮影方向の修正量を決定できれば、他方の撮影装置にもそれを反映して撮影方向を修正させることは明らかに容易である。また、両方の撮影装置で得た画像からそれぞれ被検体の体動を検出した結果を平均するなどして、両方の撮影装置で得た画像を使って被検体の体動をより正確に推定するように構成することも、容易に実現できる。
【0070】
以上述べたように本願発明によれば、被検体の体動に追従してX線撮影機構を移動させることが可能になり、造影剤注入前後の画像間でサブトラクション処理を行う際に生じる、被検体の体動に起因する位置ずれアーチファクトを軽減することが可能になる。
【0071】
なおこの発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態にて述べた体動の検知に係わる手法は、サブトラクションアンギオグラフィーのほか、血管構造を示すロードマップにも用いることができる。
【0072】
また、体動に係わる制御として、例えば検出された体動量がある閾値以上となれば、その直後のX線撮像においては照射X線線量を落とすようにすることが考えられる。被検体が動いている間の画像は観察に用いる可能性が低いからである。これによりトータルでの被曝量を低減することができる。
【0073】
また、X線照射中であることを報知するパルス音を、体動の有無に応じて変化させることも考えられる。これにより術者も患者さん(被検体)も、動いたことを容易に認識できるようになる。
【0074】
また、複数のX線マーカの形状や大きさ、あるいは材質を変化させても良い。例えば図22に示すように一方のマーカを○型、他方を+型とし、X線像上で容易に区別できるようにする。またこれらのマーカをそれぞれ被検体の前面と背面に配置するようにする。このようにすれば画像上で○のマーカ像と+のマーカ像の距離の変化、および変化した方向(符号)によって、被検体の顎が上がったのか下がったのかを容易に区別できるようになる。例えば図23(a)および図23(b)に示すように、区別可能なマーカの間隔が体動の前後で変化している。この事実から、図23においては体動により被検体の顎が上がったと結論付けることができる。
【0075】
また、マーカを用いない場合には、X線検出器14の近傍に光学カメラを取り付け、被検体の外観を撮影して得られた光学像中の特定の画像パターンを追跡することにより体動を検出するようにしても良い。例えば被検体を側方から撮影している状態で被検体の顎が上がるが下がるかした場合には、X線画像を2次元回転するだけで位置合わせが可能である。よって被検体の首の左右の捻転を計測することが専ら必要となる。
【0076】
例えば耳は光学像中で容易に検出できる画像パターンであり、パターン認識技術を応用すれば容易に検出可能である。そこで図24(a)、(b)に示すように耳の画像パターンを継続的にトレースし、そのパターンがどちらに動いているかを追跡するようにすれば被検体が首を左右どちら向きに、どれだけの角度捻転したかを判定することができる。
【0077】
また本発明では、被検体の体動に追従してX線撮影機構10を物理的に動かすようにしている。よって被検体が急に首を振るなどした場合、X線撮影機構10の撮影方向が自動的に急激かつ大きく動くために、近くで作業している医療従事者などにX線撮影機構10が衝突するおそれがある。また、被検体に装着された点滴などのチューブや心電計などのケーブルをX線撮影機構10が引っかけて、事故を起こすおそれもある。
【0078】
そこで、X線撮影機構10の動きに関し次のような制限を設けることもできる。以下に示す制限事項は複数組み合わせることも可能である。
(A) 被検体の体動に追従する動作をX線撮影機構10が行うかどうかを、例えばスイッチなどの機構によりシステムに指示するようにする。そして、このスイッチがオンになっているときに限り、X線撮影機構10に被検体の体動に追従する動作を行わせるようにする。
(B) X線撮影機構10の回旋動作の角速度(単位 radian/sec)に上限を設ける。
(C) ある基準となるX線撮影機構10の撮影方向、例えば、ある時点(例えば撮影を開始した時点)におけるX線撮影機構10の撮影方向、過去から現在までの一定期間(例えば10秒前)までのX線撮影機構10の撮影方向の平均値、を定め、この基準方向から一定の上限値(例えば3度)以上の角度の回旋が必要となった場合には、回旋動作を上限値までしか行わない。
【0079】
例えば図25に示すように、体動の計測結果から所定の閾値以上の角度に動かす必要が生じた場合、閾値を超えた移動を禁止する。(1)例えば画像から計測された、X線撮影方向を動かすべき量xに閾値を設ける。あるいは、(2)X線撮影機構10に対してX線撮影機構10をどれだけ動かすかを命令する量をyとし、yが閾値を越える場合には、X線撮影方向をそれ以上動かさない。
【0080】
(D) ある基準となるX線撮影機構10の撮影方向、例えば、ある時点(例えば撮影を開始した時点)におけるX線撮影機構10の撮影方向、過去から現在までの一定期間(例えば10秒前)までのX線撮影機構10の撮影方向の角度の平均値によって定まる撮影方向、などを定め、この基準方向から一定の上限値(例えば5度)以上の角度の回旋が必要となった場合には、(A)でいう「被検体の体動に追従する動作をX線撮影装置が行うかどうか」の指示を自動的にオフにする。
【0081】
例えば図26に示すように、体動の計測結果により閾値以上の角度に動く必要が生じた場合、追跡しない。すなわち(1)画像などから計測された、X線撮影方向を動かすべき量をxとし、(2)X線撮影装置に対して、X線撮影方向をどれだけ動かすかを命令する量をyとしたとき、xが閾値を越えた場合には、X線撮影方向を変更しない。
【0082】
さらに、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10…X線撮影機構、12…X線管、14…X線検出器、20…システムコントローラ、21…カメラコントーラ、22…回転駆動部、23…回転コントローラ、24…第1画像メモリ、25…第2画像メモリ、26…感度補正部、27…サブトラクション部、31…フィルタリング部、32…アフィン変換部、33…画像合成部、36…D/A変換部、37…表示部、60…C形アーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を撮影して複数のX線画像を発生するX線撮影部と、
前記X線撮影部の撮影方向を変更する駆動部と、
前記複数のX線画像のうち、造影剤注入後のコントラスト画像と造影剤注入前のマスク画像とをサブトラクションしてサブトラクション画像を求めるサブトラクション画像発生部とを備えたX線診断装置において、
前記被検体の体動を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づき、検出された体動に追従して前記X線撮影部を移動するように前記駆動部を制御する制御部とを具備することを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記被検体に取り付けられたマーカに基づいて前記被検体の体動を検出し、
前記制御部は、前記マーカの位置が前記X線画像上でほぼ同じ位置になるように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
さらに、前記検出部の検出結果に基づき、前記X線画像の回転又は平行移動を行なう画像処理部を備え、
前記サブトラクション画像発生部は、前記画像処理部により処理された前記X線画像を用いて前記サブトラクション画像を求めることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線撮影装置。
【請求項4】
前記X線撮影部は、
X線発生部と、
前記X線発生部に対向して設けられるX線検出器と、
前記X線発生部およびX線検出器を支持するアームとを備え、
前記駆動部は、前記X線撮影部を互いに直交する第1軸および第2軸のまわりで回転可能に前記アームを支持することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のX線撮影装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記被検体に取り付けられた光反射型マーカの位置に基づいて前記被検体の体動を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のX線撮影装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記被検体に取り付けられたX線マーカのX線画像における位置に基づいて前記被検体の体動を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のX線撮影装置。
【請求項7】
前記検出部は、前記被検体に取り付けられたマーカの位置と、前記被検体の輪郭情報とに基づいて前記被検体の体動を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項8】
前記検出部は、前記被検体の撮影画像に設定される複数の対象領域の比較から得られるベクトルに基づいて前記被検体の体動を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のX線撮影装置。
【請求項9】
前記X線撮影部は、X線管とX線検出器とを2式備えるバイプレーン構造であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載のX線撮影装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記体動に対する前記X線撮影部の移動又は回転の少なくとも一方による移動量が所定の閾値以下になるように制御すること特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載のX線撮影装置。
【請求項1】
被検体を撮影して複数のX線画像を発生するX線撮影部と、
前記X線撮影部の撮影方向を変更する駆動部と、
前記複数のX線画像のうち、造影剤注入後のコントラスト画像と造影剤注入前のマスク画像とをサブトラクションしてサブトラクション画像を求めるサブトラクション画像発生部とを備えたX線診断装置において、
前記被検体の体動を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づき、検出された体動に追従して前記X線撮影部を移動するように前記駆動部を制御する制御部とを具備することを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記被検体に取り付けられたマーカに基づいて前記被検体の体動を検出し、
前記制御部は、前記マーカの位置が前記X線画像上でほぼ同じ位置になるように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
さらに、前記検出部の検出結果に基づき、前記X線画像の回転又は平行移動を行なう画像処理部を備え、
前記サブトラクション画像発生部は、前記画像処理部により処理された前記X線画像を用いて前記サブトラクション画像を求めることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線撮影装置。
【請求項4】
前記X線撮影部は、
X線発生部と、
前記X線発生部に対向して設けられるX線検出器と、
前記X線発生部およびX線検出器を支持するアームとを備え、
前記駆動部は、前記X線撮影部を互いに直交する第1軸および第2軸のまわりで回転可能に前記アームを支持することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のX線撮影装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記被検体に取り付けられた光反射型マーカの位置に基づいて前記被検体の体動を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のX線撮影装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記被検体に取り付けられたX線マーカのX線画像における位置に基づいて前記被検体の体動を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のX線撮影装置。
【請求項7】
前記検出部は、前記被検体に取り付けられたマーカの位置と、前記被検体の輪郭情報とに基づいて前記被検体の体動を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項8】
前記検出部は、前記被検体の撮影画像に設定される複数の対象領域の比較から得られるベクトルに基づいて前記被検体の体動を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のX線撮影装置。
【請求項9】
前記X線撮影部は、X線管とX線検出器とを2式備えるバイプレーン構造であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載のX線撮影装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記体動に対する前記X線撮影部の移動又は回転の少なくとも一方による移動量が所定の閾値以下になるように制御すること特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載のX線撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
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【図10】
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【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2011−160978(P2011−160978A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26886(P2010−26886)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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