説明

X線検査装置

【課題】薄膜包材内に物品を内包する商品であっても、薄膜包材内を漏れなく検査領域として設定し、高精度な検査を実施することが可能なX線検査装置を提供する。
【解決手段】X線検査装置10は、コンベア12によって搬送される商品Gに対して、X線照射器13からX線を照射し、X線ラインセンサ14において検出されたX線量に基づいてX線画像を作成して異物混入の検査を行う装置であって、X線ラインセンサ14において商品Gの袋B内のパンG1を検出すると、制御コンピュータ20が、パンG1の上流側および下流側に隣接する領域を、検査領域A1,A2として加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品に対して照射されたX線を検出して各種検査を行うX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品等の商品の生産ラインにおいては、商品への異物混入や商品の割れ欠けがある場合にその不良商品が出荷されることを防止するために、X線検査装置を用いた商品不良検査が行われている。
【0003】
このようなX線検査装置では、搬送コンベアによって連続搬送されてくる被検査物に対してX線を照射し、そのX線の透過状態をラインセンサ等のX線受光部において検出して、被検査物中に異物が混入していないか、あるいは被検査物に割れ欠けが生じていたり被検査物内の単位内容物の数量が不足していたりしないかを判別する。
【0004】
例えば、特許文献1には、ガイド部によって遮蔽されるX線の影響を排除してマスク領域の設定を行い、常に適正な検査を行うことが可能なX線検査装置について開示されている。
【特許文献1】特開2005−351794号公報(平成17年12月22日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のX線検査装置では、以下に示すような問題点を有している。
【0006】
すなわち、上記公報に開示されたX線検査装置では、例えば、透明なフィルムによって形成された袋(薄膜包材)の中にパン等の物品が入れられた商品について異物検出等の検査を実施する際には、袋だけの部分についてはほとんどX線が遮蔽されないため、ラインセンサ等において検査領域として認識することができない。よって、袋の中の物品の部分がX線の照射領域に入ってくるまでは検査領域外として、X線の検出データを破棄する、あるいはその部分について検出データを取得しないといった制御を行っていた。この結果、例えば、袋内に物品以外の異物が混入した場合には、ラインセンサにおいて物品を検出するまでの領域(物品の下流側領域)に異物が混入している場合には検査領域外となってしまうため、袋内の全域において高精度に検査を実施することができない。
【0007】
本発明の課題は、薄膜包材内に物品を内包する商品であっても、薄膜包材内を漏れなく検査領域として設定し、高精度な検査を実施することが可能なX線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係るX線検査装置は、薄膜包材内に物品が内包された商品を搬送しながらX線を照射して各種検査を行うX線検査装置であって、搬送部と、照射部と、X線検出部と、物品検出部と、検査領域設定部と、を備えている。
搬送部は、商品を所定の方向へ搬送する。照射部は、搬送される商品に対してX線を照射する。X線検出部は、商品に対して照射されたX線を検出する。物品検出部は、搬送部によって搬送される薄膜包材内の物品を検出する。検査領域設定部は、物品検出部における検出結果に基づいて、薄膜包材内の物品の上流側および下流側の少なくとも一方に隣接する領域を検査領域として加える。
【0009】
ここでは、例えば、搬送コンベア等の搬送部上において商品を搬送しながら、照射部からX線を照射し、商品を透過したX線をラインセンサ等のX線検出部において検出して商品の各種検査を行うX線検査装置において、X線がほとんど透過してしまう薄膜包材に内包された物品を検出すると、その上流側および下流側の少なくとも一方に隣接した領域を検査領域として加えて異物検査等の検査を行う。つまり、従来の装置では検査領域から漏れていた薄膜包材内の領域を検査領域として加えて、X線検査装置による検査を実施する。
【0010】
ここで、薄膜包材内に物品が内包された商品には、例えば、透明なプラスチックフィルムの袋の中に入れられた状態で販売されるパンやお菓子類を含む食品が含まれる。また、商品内の物品を検出する物品検出部としては、X線を検出するラインセンサや搬送経路に沿って設置された光電管等のセンサが含まれる。さらに、各種検査の内容としては、例えば、薄膜包材内に混入した異物検査や、薄膜包材内に内包された物品の個数確認検査等が含まれる。
【0011】
これにより、X線を透過してしまうために従来は検査領域として認識できなかった薄膜包材内における物品の上流側および下流側の少なくとも一方に隣接する領域を、物品を含む従来の検査領域に加えることができる。この結果、薄膜包材内の全域を検査対象として設定することで、従来の装置と比較して検査領域を適正化して高精度な異物検査等を実施することができる。
【0012】
第2の発明に係るX線検査装置は、第1の発明に係るX線検査装置であって、X線検出部は、物品検出部としての機能も有するラインセンサである。
【0013】
ここでは、薄膜包材内の物品を検出する物品検出部として、ラインセンサを用いている。
【0014】
ここで、ラインセンサは、商品に対して照射されたX線を検出するX線検出器であって、例えば、搬送部に対してX線を照射する照射部と対向する位置に配置されている。通常、薄膜包材の中の物品(パン等)は、X線が透過する際にX線を遮蔽あるいは吸収するため、ラインセンサにおいて物品の検出を容易に行うことができる。
【0015】
これにより、ラインセンサにおける検出結果に基づいて、この物品の下流側に隣接する所定の領域を、通常の検査領域に加えて設定することができる。つまり、従来は検査領域外として破棄されていたラインセンサにおける検出結果を、破棄せずに検査領域の一部として加えることができる。よって、物品の前後を含む薄膜包材内全域について、漏れなく検査を実施することができる。
【0016】
第3の発明に係るX線検査装置は、第2の発明に係るX線検査装置であって、X線検出部において検出されたX線に基づく検出データを格納する記憶部をさらに備えている。検査領域設定部は、X線検出部において物品を検出すると、記憶部に格納された検出データの中から検査領域として追加する検出データを取り出して、検査領域として設定する。
【0017】
ここでは、商品に対して照射されたX線を検出するX線検出部を用いて物品を検出した際に、過去に取得して記憶部に格納された検出データを取り出して、検査領域として設定する。
【0018】
これにより、光電センサ等を別途設けることなく、X線検査を行う基本的な構成のみによって、薄膜包材内における全域を精度よく検査することができる。
【0019】
第4の発明に係るX線検査装置は、第1の発明に係るX線検査装置であって、物品検出部は、搬送部によって形成される搬送経路に沿って配置された光電センサである。
【0020】
ここでは、薄膜包材内の物品を検出する物品検出部として、例えば、搬送経路における検査領域の上流側に配置された光電センサを用いている。
【0021】
これにより、光電センサにおいて薄膜包材内の物品を検出すると、その検出したタイミングと搬送部による商品の搬送速度とに基づいて、物品の下流側の所定領域を検査領域として加えることができる。具体的には、光電センサにおいて物品を検出すると、商品の搬送速度に基づいて、例えば、X線の照射領域内に物品が搬送されるより所定時間分だけ早めにX線の検出を開始して検査領域として設定する。あるいは、従来は検査領域外としてデータを破棄していた物品の下流側領域のデータを破棄せずに、検査領域として加えることができる。この結果、光電センサによって物品の位置を検出した場合でも、薄膜包材内における物品の下流側領域を検査領域として設定することができる。
【0022】
第5の発明に係るX線検査装置は、第4の発明に係るX線検査装置であって、検査領域設定部は、光電センサにおいて物品を検出すると、搬送部の搬送速度に基づいて算出された所定時間経過後、あるいは所定時間前に遡ってX線検出部において取得された検出データを用いて検査領域として設定する。
【0023】
ここでは、搬送経路上における検査領域の上流側あるいは下流側に配置された光電センサを用いて物品を検出した際に、所定時間経過後、あるいは所定時間前に遡って、追加すべき検査領域に相当する検出データを取得する。
【0024】
つまり、X線が照射される領域の上流側に光電センサが配置された構成では、商品の搬送速度に基づいて所定時間経過後にX線照射領域を通過することを認識することができる。よって、所定時間経過後からX線検出部において検出されたX線の検出データを検査領域のデータに加えることができる。
【0025】
一方、X線が照射される領域の下流側に光電センサが配置された構成では、商品の搬送速度に基づいて所定時間前に遡ってX線照射領域を通過したことを認識することができる。よって、所定時間経過前に取得された検出データを検査領域のデータに加えることができる。
【0026】
これにより、X線が照射される領域の上流側、下流側のどちら側に光電センサが設置されている場合でも、薄膜包材内における全域を漏れなく検査領域として検査を行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のX線検査装置によれば、薄膜包材内の全域を検査対象として設定することで、従来の装置と比較して検査領域を適正化して高精度な異物検査等を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の一実施形態に係るX線検査装置について、図1〜図8を用いて説明すれば以下の通りである。
【0029】
[X線検査装置10全体の構成]
本実施形態のX線検査装置10は、図1に示すように、食品等の商品の生産ラインにおいて品質検査を行う装置の1つである。X線検査装置10は、連続的に搬送されてくる商品G(図2等参照)に対してX線を照射し、商品を透過したX線量に基づいて商品に異物が混入しているか否かの検査を行う。
【0030】
本実施形態では、被検査物として、透明なプラスチックフィルム(薄膜包材)によって形成された袋B内にパンG1を内包した商品G(図5参照)を用いた場合について説明する。ここで、このような透明なプラスチックフィルムによって形成された袋Bの部分は、X線検査において用いられるX線画像上、袋Bがない背景部分と識別することが困難である。このような商品Gの場合には、従来のX線検査装置では、X線画像上識別可能な内容物であるパンG1の部分についての検査は実施できるものの、袋B内の全域にわたって検査を行うことは困難であった。
【0031】
商品Gは、図2に示すように、前段コンベア60からX線検査装置10に運ばれてきて、X線検査装置10において異物混入の有無が判断される。このX線検査装置10での判断結果は、X線検査装置10の下流側に配置される振分機構70に送信される。振分機構70は、商品GがX線検査装置10において良品と判断された場合には商品Gをそのまま正規のラインコンベア80へと送る。一方、商品GがX線検査装置10において不良品と判断された場合には、下流側の端部を回転軸とするアーム70aが搬送路を遮るように回動する。これにより、不良品と判断された商品Gを、搬送路から外れた位置に配置された不良品回収箱90において回収することができる。
【0032】
X線検査装置10は、図1に示すように、主として、シールドボックス11と、コンベア(搬送部)12と、遮蔽ノレン16と、タッチパネル機能付きのモニタ26と、を備えている。そして、シールドボックス11の内部には、図3に示すように、コンベア12、X線照射器(照射部)13、X線ラインセンサ(X線検出部、物品検出部)14、および制御コンピュータ(検査領域設定部)20(図4参照)を備えている。
【0033】
(シールドボックス11)
シールドボックス11は、商品Gの入口側と出口側の双方の面に、商品を搬出入するための搬入口11aと搬出口11bとを有している。このシールドボックス11の中に、コンベア12、X線照射器13、X線ラインセンサ14、制御コンピュータ20(図4参照)等が収容されている。
【0034】
搬入口11aおよび搬出口11bは、図1に示すように、シールドボックス11の外部へのX線の漏洩を防止するために、遮蔽ノレン16によって塞がれている。この遮蔽ノレン16は、鉛を含むゴム製のノレン部分を有しており、商品が搬出入されるときには商品によって押しのけられる。
【0035】
また、シールドボックス11の正面上部には、モニタ26の他、キーの差し込み口や電源スイッチが配置されている。
【0036】
(コンベア12)
コンベア12は、シールドボックス11内において商品Gを所定の方向(図3に示す矢印参照)に搬送するものであって、図4に示す制御ブロックに含まれるコンベアモータ12fによって駆動される。コンベア12の搬送速度は、作業者が入力した設定速度になるように、制御コンピュータ20がコンベアモータ12fをインバータ制御することによって細かく制御される。
【0037】
また、コンベア12は、図3に示すように、搬送ベルト12a、コンベアフレーム12b、開口部12cおよびコンベアガイド12dを有している。また、コンベア12は、シールドボックス11に対して取り外し可能な状態で取り付けられている。これにより、例えば、検査対象として食品を取り扱う場合でも、シールドボックス11内を清潔に保つためにコンベアを取り外して頻繁に洗浄することができる。
【0038】
搬送ベルト12aは、その内側をコンベアフレーム12bによって支持されている。そして、コンベアモータ12fの駆動力を受けて回転することで、搬送ベルト12a上に載置された物体を所定の方向に搬送する。
【0039】
コンベアフレーム12bは、回転する搬送ベルト12aを、その内周側から支持しており、搬送ベルト12aの内周側の面に対向する位置に搬送方向に対して直交する方向に長い開口部12cを有している。
【0040】
開口部12cは、コンベアフレーム12bにおける、X線照射器13とX線ラインセンサ14とを結ぶ線上に形成されている。換言すれば、開口部12cは、コンベアフレーム12bにおけるX線照射器13からのX線照射領域に形成されている。これにより、商品Gを透過したX線は、搬送ベルト12aあるいはその間の隙間を透過し、コンベアフレーム12bによって遮蔽されることなくX線ラインセンサ14において検出される。
【0041】
コンベアガイド12dは、商品Gの搬送路を形成する搬送ベルト12aの両側に配置されており、コンベア12上を移動する物品を搬送路から逸脱しないように誘導する。また、コンベアガイド12dは、コンベア12ごとシールドボックス11から着脱可能な状態で取り付けられている。このため、検査対象として食品等を取り扱う場合でも、コンベア12ごと取り外して洗浄することでシールドボックス11内を常に清潔に保つことができる。
【0042】
(X線照射器13)
X線照射器13は、図3に示すように、コンベア12の上方に配置されており、コンベアフレーム12bに形成された開口部12cを介して、コンベア12の下方に配置されたX線ラインセンサ14に向かって扇形状にX線を照射する(図3の斜線部参照)。これにより、X線ラインセンサ14上を搬送される商品Gを透過したX線量をX線ラインセンサ14において検出することができる。
【0043】
(X線ラインセンサ14)
X線ラインセンサ14は、コンベア12の下方に配置されており、商品Gや搬送ベルト12aを透過してくるX線を検出する。このX線ラインセンサ14は、コンベア12による搬送方向に直交する向きに一直線に水平配置された複数の画素14aを含んでいる。
【0044】
また、X線ラインセンサ14は、平面視における商品GのX線画像を形成するための各画素14aにおけるX線透過量のデータを制御コンピュータ20に対して送信する。そして、制御コンピュータ20では、上記X線透過量によって形成されるX線画像に基づいて、商品Gの異物混入検査等を行う。
【0045】
(モニタ26)
モニタ26は、フルドット表示の液晶ディスプレイである。また、モニタ26は、タッチパネル機能を有しており、初期設定や不良判断に関するパラメータ入力などを促す画面や、商品Gの検査結果等を表示する。
【0046】
(制御コンピュータ20)
制御コンピュータ20は、図4に示すように、CPU21とともに、このCPU21によって制御される主記憶部としてROM22、RAM23、およびCF(コンパクトフラッシュ(登録商標)、記憶部)25を搭載している。
【0047】
また、制御コンピュータ20は、モニタ26に対するデータ表示を制御する表示制御回路、モニタ26のタッチパネルからのキー入力データを取り込むキー入力回路、図示しないプリンタにおけるデータ印字の制御等を行うためのI/Oポート、USB等の外部接続端子24を備えている。
【0048】
CPU21、ROM22、RAM23、CF25等の記憶部は、アドレスバスやデータバス等のバスラインを介して相互に接続されている。
【0049】
特に、CF25には、商品Gのサイズ(袋Bの長さL1、パンG1の長さL2)に関するデータ25aや、検査結果(X線画像)のデータ25b、後述する処理を経て設定された検査領域のデータ25cが格納されている。
【0050】
また、制御コンピュータ20は、コンベアモータ12f、ロータリーエンコーダ12g、X線照射器13、X線ラインセンサ14等と接続されている。
【0051】
ロータリーエンコーダ12gは、コンベアモータ12fに装着されており、コンベア12の搬送速度を検出して制御コンピュータ20に対して送信する。
【0052】
X線照射器13は、制御コンピュータ20によって、X線の照射タイミングやX線照射量、X線照射の禁止等を制御される。
【0053】
X線ラインセンサ14は、各画素14aにおいて検出されたX線量に応じたデータを制御コンピュータ20に対して送信する。制御コンピュータ20では、X線ラインセンサ14から連続的に受信したデータに基づいて異物混入検査用のX線画像を形成し、後述する検査領域の設定処理によって商品G周辺を検査領域A(図7参照)として設定する。
【0054】
<商品G周辺の検査領域の設定処理>
本実施形態のX線検査装置10では、上述したX線ラインセンサ14におけるX線の検出結果に基づいて、制御コンピュータ20が異物混入検査用のX線画像を形成する。そして、以下の工程により商品G周辺の検査領域Aの設定を行う。
【0055】
すなわち、コンベア12上において所定の方向へ搬送される商品Gは、図5および図6に示すように、透明なプラスチックフィルムからなる袋Bに内包されたパンG1によって構成されている。通常、袋B内におけるパンG1は、袋Bの後端部分から距離d1、先頭部分から距離d2だけ離れた袋Bのほぼ中央部付近に位置しているものと推測される。ここで、距離d1,d2の大きさとしては、パンG1が袋の端に位置している場合を想定すれば、0<(d1,d2)<L1−L2という範囲となる。これは、搬送方向における、袋Bの長さL1に対するパンG1の長さL2の差が、d1,d2の最大値となることを意味する。
【0056】
本実施形態では、以上の条件を踏まえて、従来のX線検査装置では検査領域として識別することが困難であった袋B内全域を含む検査領域A(図7参照)の設定を、図8のフローチャートに従って行う。
【0057】
具体的には、図8に示すように、まず、ステップS1では、X線検査装置10において、制御コンピュータ20がコンベア12を起動して、商品Gの搬送を開始する。
【0058】
ステップS2では、制御コンピュータ20がX線照射器13を起動して、図3に示すように、X線の照射を開始する。
【0059】
ステップS3では、制御コンピュータ20が、X線ラインセンサ14において検出されたX線検出データを受信して、異物検出用のX線画像を作成する。
【0060】
ステップS4では、制御コンピュータ20が、X線ラインセンサ14から商品G内のパンG1の検知信号を受信する。つまり、制御コンピュータ20は、X線ラインセンサ14におけるパンG1の検知結果に基づいて、商品G内に含まれるパンG1の位置だけを認識することができる。
【0061】
ステップS5では、図7に示すように、パンG1の先頭部分から後端部分を含む領域を検査領域A3として設定する。
【0062】
ステップS6では、図7に示すように、パンG1の先頭部分の下流側に隣接する距離D2の領域を、検査領域A2として設定する。ここで、距離D2=L1−L2である。つまり、商品Gについて、袋B内においてパンG1が片寄った位置にあることを想定して、距離D2、すなわちパンG1の下流側に隣接する検査領域A2を設定している。これにより、袋B内においてパンG1が最も端に寄っている状態であっても、パンG1の下流側については、確実に袋Bの端まで検査領域とすることができる。
【0063】
ステップS7では、図7に示すように、パンG1の後端部分の上流側に隣接する距離D1の領域を、検査領域A1として設定する。ここで、距離D2と同様に、距離D1=L1−L2である。つまり、商品Gについて、袋B内においてパンG1が片寄った位置にあることを想定して、距離D1、すなわちパンG1の上流側に隣接する検査領域A1を設定している。これにより、袋B内においてパンG1が最も端に寄っている状態であっても、パンG1の上流側については、確実に袋Bの端まで検査領域とすることができる。
【0064】
ステップS8では、ステップS5〜ステップS7において設定された検査領域A1〜A3を加算して、検査領域Aを設定する。これにより、パンG1を含む検査領域A3に対して上流側、下流側に隣接する検査領域A1,A2を加えた検査領域Aを設定することで、袋B内におけるパンG1の位置に関係なく、袋B全域を検査領域Aとすることができる。
【0065】
ステップS9では、ステップS8において設定された検査領域Aについて、異物混入の検査を行い、検査の結果を示すデータを記憶部(CF25)に格納した後、処理を終了する。
【0066】
[本X線検査装置10の特徴]
(1)
本実施形態のX線検査装置10は、図1および図3に示すように、コンベア12によって搬送される商品Gに対して、X線照射器13からX線を照射し、X線ラインセンサ14において検出されたX線量に基づいてX線画像を作成して異物混入の検査を行う装置であって、X線ラインセンサ14において商品Gの袋B内のパンG1を検出すると、制御コンピュータ20が、図7に示すように、パンG1の上流側および下流側に隣接する領域を、検査領域A1,A2として加える。
【0067】
これにより、透明なプラスチックフィルムの袋B内にパンG1を内包した商品Gについても、商品G全域、つまり袋Bの全体を検査領域とすることができる。この結果、X線画像上、背景との区別がつきにくい部分についても確実に検査領域として設定することで、高精度な検査を実施することができる。
【0068】
(2)
本実施形態のX線検査装置10では、図3および図8に示すように、商品Gの袋B内の物品としてのパンG1を検出する物品検出部として、X線ラインセンサ14を用いている。
【0069】
これにより、X線検査装置10の基本的な構成のみで、袋B内にあるパンG1を容易に検出することができる。
【0070】
(3)
本実施形態のX線検査装置10では、図4に示すように、X線ラインセンサ14において検出されたX線検出データを格納する記憶部としてCF25等を備えている。制御コンピュータ20は、X線ラインセンサ14においてパンG1を検出すると、CF25内に格納されたX線検出データの中からパンG1を含む検査領域A3の上流側、下流側に隣接する所望のデータを取り出して、検査領域A1,A2として設定する。
【0071】
これにより、袋B内の商品G1の位置に関係なく、商品G全体を検査領域Aの中に含めることができる。よって、商品G全体を高精度に検査することができる。
【0072】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0073】
(A)
上記実施形態では、袋B内のパンG1を検出する物品検出部として、X線ラインセンサ14を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0074】
例えば、図9に示すように、物品検出部として、コンベア12の側方に配置された受発光素子31a,31bを含む光電センサ31を用いてもよい。
【0075】
この場合には、光電センサ31において袋B内のパンG1を検知すると、光電センサ31による検知位置からX線照射領域までに至る時間を、コンベア12の搬送速度から算出する。そして、その時間に応じて、X線ラインセンサ14において既に取得されたX線画像、あるいは今から取得するX線画像の中から、パンG1に隣接する上流側、下流側それぞれの領域を、検査領域として設定すればよい。
【0076】
より具体的には、光電センサ31がX線照射領域(X線ラインセンサ14によるX線検出領域)よりも上流側に配置されている場合には、搬送速度から算出される所定時間経過後からX線ラインセンサ14においてパンG1が検知されるまでの間、およびX線ラインセンサ14においてパンG1が検出されなくなってから上記所定時間経過までの間で取得されたX線検出量によって作成されたX線画像の領域を検査領域として加えればよい。
【0077】
一方、光電センサ31がX線照射領域(X線ラインセンサ14によるX線検出領域)よりも下流側に配置されている場合には、搬送速度から算出される所定時間前に遡ってX線ラインセンサ14においてパンG1が検知されるまでの間、およびX線ラインセンサ14においてパンG1が検出されなくなってから上記所定時間経過までの間で取得されたX線検出量によって作成されたX線画像の領域を検査領域として加えればよい。
【0078】
これにより、X線ラインセンサ14を用いることなく光電センサ31を用いてパンG1の検知を行った場合でも、上記実施形態と同様に、パンG1に隣接する領域を検査領域として加えて、商品G全体の検査を実施することができる。
【0079】
なお、光電センサ31を、搬送方向におけるX線ラインセンサ14の検出領域付近に設置してもよい。この場合には、上記実施形態と同様の工程によって、商品G全体を含む検査領域を設定することができる。
【0080】
(B)
上記実施形態では、商品Gについて、袋B内のパンG1の上流側、下流側に隣接するそれぞれの領域を、検査領域として加える例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0081】
例えば、袋内における物品の位置が常に片側に片寄っている商品の場合には、上流側あるいは下流側の一方のみについて検査領域として加えるような制御であってもよい。
【0082】
(C)
上記実施形態では、商品Gとして、パンG1入りの袋Bを例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0083】
例えば、本発明の商品として、薄膜包材に内包されるお菓子や野菜、果物等を用いた場合でも、袋全体を検査領域として設定し、高精度な検査を実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のX線検査装置は、薄膜包材内の全域を検査対象として設定することで、従来の装置と比較して検査領域を適正化して高精度な異物検査等を実施することができるという効果を奏することから、異物混入検査だけでなく、X線検査装置を用いた各種検査に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態に係るX線検査装置の外観斜視図。
【図2】図1のX線検査装置を含む検査システムの構成を示す平面図。
【図3】図1のX線検査装置のシールドボックス内部の簡易構成図。
【図4】図1のX線検査装置に搭載された制御コンピュータ周辺の構成を示す制御ブロック図。
【図5】図1のX線検査装置における異物混入検査の対象となる商品の構成を示す側面図。
【図6】図1のX線検査装置において搬送される商品の状態を示す平面図。
【図7】図1のX線検査装置において作成されるX線画像と、設定された検査領域を示す平面図。
【図8】図1のX線検査装置における検査領域の設定の流れを示すフローチャート。
【図9】本発明の他の実施形態に係るX線検査装置の構成を示す平面図。
【符号の説明】
【0086】
10 X線検査装置
11 シールドボックス
11a 搬入口
11b 搬出口
12 コンベア(搬送部)
12a 搬送ベルト
12b コンベアフレーム
12c 開口部
12d コンベアガイド
12f コンベアモータ
12g ロータリーエンコーダ
13 X線照射器(照射部)
14 X線ラインセンサ(X線検出部、物品検出部)
14a 画素
16 遮蔽ノレン
20 制御コンピュータ(検査領域設定部)
21 CPU
22 ROM(記憶部)
23 RAM(記憶部)
24 外部接続端子
25 CF(コンパクトフラッシュ(登録商標)、記憶部)
25a 商品のサイズに関するデータ
25b 検査結果(X線画像)のデータ
25c 検査領域のデータ
26 モニタ
31 光電センサ
31a 発光素子
31b 受光素子
60 前段コンベア
70 振分機構
70a アーム
80 ラインコンベア
90 不良品回収箱
A,A1〜A3 検査領域
B 袋(薄膜包材)
d1,d2 距離
D1,D2 距離
G 商品
G1 パン(物品)
L1 袋の長さ
L2 パンの長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜包材内に物品が内包された商品を搬送しながらX線を照射して各種検査を行うX線検査装置であって、
前記商品を所定の方向へ搬送する搬送部と、
搬送される前記商品に対してX線を照射する照射部と、
前記商品に対して照射されたX線を検出するX線検出部と、
前記搬送部によって搬送される前記薄膜包材内の前記物品を検出する物品検出部と、
前記物品検出部における検出結果に基づいて、前記薄膜包材内の前記物品の上流側および下流側の少なくとも一方に隣接する領域を検査領域として加える検査領域設定部と、
を備えているX線検査装置。
【請求項2】
前記X線検出部は、前記物品検出部としての機能も有するラインセンサである、
請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記X線検出部において検出されたX線に基づく検出データを格納する記憶部をさらに備えており、
前記検査領域設定部は、前記X線検出部において前記物品を検出すると、前記記憶部に格納された前記検出データの中から検査領域として追加する検出データを取り出して、前記検査領域として設定する、
請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記物品検出部は、前記搬送部によって形成される搬送経路に沿って配置された光電センサである、
請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記検査領域設定部は、前記光電センサにおいて前記物品を検出すると、前記搬送部の搬送速度に基づいて算出された所定時間経過後、あるいは所定時間前に遡って前記X線検出部において取得された検出データを用いて前記検査領域として設定する、
請求項4に記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−264837(P2009−264837A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112895(P2008−112895)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】