説明

X線検査装置

【課題】 ビニング処理を実行するか否かの選択等によって、画像データの画素数を切り替えても、所望の画像処理を実行し続けることができるX線検査装置を提供する。
【解決手段】 標準画像データを作成する標準画像データ作成部31と、複数個のブロック画素からなる画像を示すビニング画像データを作成するビニング処理制御部32と、標準画像データかビニング画像データのいずれを作成させるかを決定する画像データ決定部35と、コンボリューションフィルタを用いて所望の画像処理を実行するコンボリューションフィルタリング処理制御部36とを備えるX線検査装置1であって、コンボリューションフィルタリング処理制御部36は、画像データ決定部35で標準画像データを作成させると決定されるに伴い、標準画像データ用コンボリューションフィルタに切り替え、一方、ビニング画像データを作成させると決定されるに伴い、ビニング画像データ用コンボリューションフィルタに切り替えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置に関し、特に工業製品等の透視検査やCT検査等を行うためのX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なX線検査装置には、X線発生装置と、当該X線発生装置に対向するように、イメージインテンシファイア(以下、IIと略す)とCCDカメラとを組み合わせたX線検出器とが配置されている。なお、最近では、IIとCCDカメラとを組み合わせたX線検出器に代えて、フラットパネルX線検出器を使用したものも利用されている。
これらのX線検査装置は、X線発生装置とX線検出器との間に、ステージを配置し、この上に被測定物を載置して透視X線像を撮影する。
【0003】
このようなX線検査装置では、透視X線像から作成されるX線画像によって、例えば、外観検査から判断できない基板と部品とのハンダ接合箇所の状態や、アルミ鋳物の空洞欠陥等を観察することができるため、半導体基板やアルミ鋳物を検査することに利用されている。
そこで、X線検査装置による検査では、通常、ハンダ接合箇所やアルミ鋳物の空洞欠陥等の検査位置との位置合わせや、測定倍率調整や、測定角度調整のために、被測定物に対して測定視野を変動させる。測定視野の変動は、ステージを移動しつつX線画像を観察するようにし、これにより被測定物中の検査位置を探す。そして、検査位置が見つかると測定視野の変動を停止する。
【0004】
ところで、X線画像において、できるだけ画素数を多くすることが画質向上の観点からは好ましいが、画素数の増大とともに、画像データの更新速度は遅くなる。このことは、X線検出器としてフラットパネルX線検出器を用いた場合に顕著となる。
また、最近のX線検査装置では、ステージの移動速度が高速化しているため、画像データの更新速度が遅いと、被測定物中の検査位置を探す際に検査位置が見つかっても、検査位置と測定視野とを一致させた状態でステージをきちんと停止させることができないという問題が生じてきた。
【0005】
そこで、画像データの更新速度を改善するために、隣接する複数個の画素を1個の画素(以下、「ブロック画素」ともいう)とみなして画像データ(以下、「ビニング画像データ」ともいう)の作成を行うビニング処理を実行する機能を有するX線検査装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
例えば、図3(a)に示すような1000行1000列の100万画素の画像データ(以下、「標準画像データ」ともいう)に代えて、2行2列の画素を1個のブロック画素とみなして、図3(b)に示すような500行500列の25万画素のビニング画像データを作成する。これにより、100万画素の標準画像データでなく、25万画素のビニング画像データを用いることになり、その結果、後に実行される画像データの画像処理や転送の時間を短くしている。
【0006】
さらに、ビニング処理を実行しないビニング機能無効モードと、ビニング処理を実行するビニング機能有効モードとを切替可能に設けたX線検査装置も開発されている。これにより、高解像力が必要なX線画像の観察や保存等のときにはビニング機能無効モードが選択され、一方、被測定物中の検査位置を探すような比較的解像力が低くてもよいが、画像データの画像処理や転送の時間が短いことが要求されるX線画像の撮影のときにはビニング機能有効モードが選択されている。
【特許文献1】特開2001−231779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、X線検査装置では、さらに半導体基板やアルミ鋳物等を検査しやすくするために、作成した画像データにコンボリューションフィルタを用いてエッジ強調やぼかし等の画像処理(以下、「コンボリューションフィルタリング処理」や「畳み込み積分」ともいう)を行うことがある。
例えば、行方向と列方向とに配列された複数個の画素からなる画像上の座標(x,y)に位置する画素の画素値をI(x,y)で表すとすると、コンボリューションフィルタ対象領域が注目画素を中心とする正方形の領域((2m+1)×(2m+1))である場合、座標(i,j)の画素に対するコンボリューションフィルタリング処理実行後の画素値I’(i,j)は、下記計算式(1)により算出される。
【0008】
【数1】

【0009】
なお、Pnは、所望のコンボリューションフィルタリング処理の内容を表す重み係数である。また、所望のコンボリューションフィルタリング処理の内容を表す重み係数は、例えば、周波数分析等を行うことにより決められる。
【0010】
一例として、コンボリューションフィルタ対象領域が3行3列の正方形で表され、コンボリューションフィルタ対象領域のそれぞれの画素に対する重み係数が図7(a)に示すような値である場合において、注目画素とその周辺の画素値とがそれぞれ図7(b)に示すような値を持つとき、注目画素のコンボリューションフィルタリング処理後の画素値は、
X5’=X1P1+X2P2+・・・+X8P8+X9P9
となる。
このようにして、所望のコンボリューションフィルタリング処理の内容を表す重み係数が決められたコンボリューションフィルタを用いて、画像データ中の全ての画素にコンボリューションフィルタリング処理を実行することにより、図7(c)に示すような新たな画像データ(以下、「加工画像データ」ともいう)を作成している。
【0011】
しかしながら、このようなコンボリューションフィルタリング処理を、ビニング機能無効モードとビニング機能有効モードとを切替可能に設けたX線検査装置で行った場合、ビニング機能無効モードで表示されていたX線画像では、図9(a)に示すような所望のコンボリューションフィルタリング処理が実行されていたが、ビニング機能無効モードに切り替えた瞬間に、図9(b)に示すような全く異なった印象のX線画像が表示されることになっていた。この原因は、コンボリューションフィルタにおけるコンボリューションフィルタリング処理の内容を表す重み係数は、画像データの画素数に対応して周波数分析して予め決められた値であり、ビニング処理を実行しなくなったことにより画像データの画素数が異なってしまうと、コンボリューションフィルタリング処理により得られる効果も全く異なってしまうからである。
そこで、本発明は、ビニング処理を実行するか否かの選択等によって、画像データの画素数を切り替えても、所望の画像処理を実行し続けることができるX線検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明では、被測定物に透視用X線を照射するX線発生装置と、当該被測定物の透視X線像を撮影するX線検出器とからなるX線測定光学系と、前記X線検出器により撮影された映像信号に基づいて、行方向と列方向とに配列された複数個の画素からなる画像を示す標準画像データを作成する標準画像データ作成部と、前記X線検出器により撮影された映像信号に基づいて、行方向及び/又は列方向で隣接する数個の画素を1個のブロック画素とみなすことにより、行方向と列方向とに配列された複数個のブロック画素からなる画像を示すビニング画像データを作成するビニング処理制御部と、前記標準画像データかビニング画像データのいずれを作成させるかを決定する画像データ決定部と、前記画像データ決定部で決定された画像データに対して、コンボリューションフィルタを用いて所望の画像処理を実行することにより、加工画像データを作成するコンボリューションフィルタリング処理制御部と、前記加工画像データに基づいてX線画像を表示する表示制御部とを備えるX線検査装置であって、前記コンボリューションフィルタは、所望の画像処理を行うために、前記標準画像データに用いられる標準画像データ用コンボリューションフィルタと、前記ビニング画像データに用いられるビニング画像データ用コンボリューションフィルタとを1組としてコンボリューションフィルタ記憶部に記憶され、前記コンボリューションフィルタリング処理制御部は、前記画像データ決定部で標準画像データを作成させると決定されるに伴い、前記標準画像データ用コンボリューションフィルタに切り替えて用い、一方、前記ビニング画像データを作成させると決定されるに伴い、前記ビニング画像データ用コンボリューションフィルタに切り替えて用いるようにしている。
【0013】
ここで、X線検出器としては、透視X線像を映像信号として出力することができるものであれば何でもよいが、特に、フレームレートがさほど大きくないフラットパネルX線検出器を用いた場合に本発明の有効性が顕著になる。
また、「標準画像データ」とは、「ビニング画像データ」よりも画素数が多くなる画像を示す画像データのことをいい、ビニング処理が実行されない画像データであってもよく、ビニング処理が実行された画像データであってもよい。
この発明によれば、標準画像データ作成部は、X線検出器により撮影された映像信号に基づいて、行方向と列方向とに配列された複数個の画素からなる画像を示す標準画像データを作成する。標準画像データは、ビニング画像データに比べて画素数が多いので、高解像力であるが画像処理や転送の時間が長くなる。
一方、ビニング処理制御部は、X線検出器により撮影された映像信号に基づいて、行方向や列方向で隣接する数個の画素を1個のブロック画素とみなすことにより、行方向と列方向とに配列された複数個のブロック画素からなる画像を示すビニング画像データを作成する。ビニング画像データは、標準画像データに比べて画素数が少ないので、解像力が低いが画像処理や転送の時間が短くなる。
画像データ決定部は、標準画像データかビニング画像データのいずれを作成させるかを決定する。例えば、高解像力が必要なX線画像の観察や保存等のときには、標準画像データを標準画像データ作成部に作成させ、一方、被測定物中の検査位置を探すような比較的解像力が低くてもよいが、画像データの画像処理や転送の時間が短いことが要求されるX線画像の撮影のときには、ビニング画像データをビニング処理制御部に作成させる。
そして、画像データ決定部で決定された画像データに対して、コンボリューションフィルタリング処理制御部が、コンボリューションフィルタを用いて所望の画像処理を実行することにより、加工画像データを作成する。このとき、コンボリューションフィルタリング処理制御部は、画像データ決定部で標準画像データを作成させると決定されるに伴い、標準画像データ用コンボリューションフィルタに切り替え、一方、ビニング画像データを作成させると決定されるに伴い、ビニング画像データ用コンボリューションフィルタに切り替える。つまり、画素数が異なる標準画像データとビニング画像データとに同一のコンボリューションフィルタを用いず、標準画像データには標準画像データ用コンボリューションフィルタを用いるように自動的に設定し、ビニング画像データにはビニング画像データ用コンボリューションフィルタを用いるように自動的に設定する。
【発明の効果】
【0014】
したがって、本発明によれば、標準画像データには標準画像データ用コンボリューションフィルタを用いるように自動的に設定し、ビニング画像データにはビニング画像データ用コンボリューションフィルタを用いるように自動的に設定するので、ビニング処理を実行したり、ビニング処理を実行しない等のように画像データの画素数を切り替えても、所望の画像処理を実行し続けることができる。
【0015】
(その他の課題を解決するための手段および効果)
上記発明において、さらに、入力装置を備え、前記画像データ決定部は、前記入力装置で入力された操作信号に基づいて、前記標準画像データかビニング画像データのいずれを作成させるかを決定するようにしてもよい。
これによれば、操作者が入力装置によりビニング処理を実行するか否かを自由に切り替えることができる。
【0016】
上記発明において、さらに、前記被測定物とX線測定光学系との位置関係を調整して、前記被測定物に対して測定視野を変動させる視野調整部と、前記測定視野が変動しているか否かを判定して、前記測定視野が変動していないと判定したときにはビニング機能無効モードとし、一方、前記測定視野が変動していると判定したときにはビニング機能有効モードとする視野変動判定部とを備え、前記画像データ決定部は、前記ビニング機能無効モードとなるに伴い、前記標準画像データを作成させると決定し、一方、前記ビニング機能有効モードとなるに伴い、前記ビニング画像データを作成させると決定するようにしてもよい。
ここで、視野調整部は、被測定物とX線測定光学系との相対的な位置関係を変動することで測定視野を調整することができるので、被測定物、X線発生装置、X線検出器の少なくともいずれかを移動する機構であればよい。
また、視野変動判定部は、測定視野を変動させるときに送信される視野調整部からの駆動信号に基づいて測定視野の変動の有無を判定してもよいし、視野調整部自体の変動を検出することができるセンサ(例えば、ステージの位置センサ)を用いて測定視野の変動の有無を判定してもよい。
【0017】
これによれば、視野変動判定部が、測定視野の変動の有無を判定して、測定視野が変動していないと判定したときにはビニング機能無効モードとし、一方、測定視野が変動していると判定したときにはビニング機能有効モードとする。
その結果、画像データ決定部は、ビニング機能無効モードとなるに伴い、標準画像データを作成させる。すなわち、測定視野が固定された状態では、測定視野の追従性は不要であるので、画質のよい画像データを作成させる。
一方、画像データ決定部は、ビニング機能有効モードとなるに伴い、ビニング画像データを作成させる。すなわち、測定視野の変動中は操作者が観察箇所を特定するのに最低限の画質があれば充分であるので、検査位置を見失わないように測定視野の移動に対する追従性をよくする必要があることから、更新速度が速いビニング画像データを作成させる。
したがって、これによれば、測定視野の変動中か測定視野の固定中かの状況に応じて、ビニング処理を実行するか否かを自動で切り替えることができる。
【0018】
上記発明において、前記標準画像データ用コンボリューションフィルタは、m行n列のフィルタサイズのデータであり、かつ、前記ビニング画像データ用コンボリューションフィルタは、s行t列のフィルタサイズのデータであり、m>s、n>tを満たすようにしてもよい。
これによれば、画素数の少ないビニング画像データに対して、コンボリューションフィルタリング処理制御部が、s行t列のフィルタサイズのデータを用いて所望の画像処理を実行することにより、加工画像データを作成する。つまり、標準画像データから加工画像データを作成する時間に比べて、画素数が少ない上に、m>s、n>tを満たすので、画像処理の計算時間をより短くすることができる。
上記発明において、前記所望の画像処理は、エッジ強調かぼかしのいずれかの処理であるようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0020】
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施形態であるX線検査装置の構成を示すブロック図である。X線検査装置1は、X線発生装置11とX線検出器12とで構成されるX線測定光学系13と、被測定物Sに対する測定視野を変動させる視野調整機構14と、装置全体の制御を行う制御系15とにより構成される。
【0021】
X線発生装置11は、透視用X線の照射用のX線管を備える。また、X線検出器12には、X線変換層とTFT回路付基板とからなるフラットパネルX線検出器が用いられてあり、X線変換層で撮影した透視X線像を、TFT回路に形成された画素電極ごとに読み出し、映像信号として出力するようにしてある。
視野調整機構14は、被測定物Sを載置するステージ16と、ステージ16をステージ面方向である二次元XY方向に移動することにより測定視野を調整するとともに、ステージ16をステージ面に垂直な方向であるZ方向に移動することにより測定倍率を調整する三次元駆動機構17とからなる。これにより、ステージ16の移動により被測定物Sに対する測定視野の調整が行われることになる。そして、視野調整機構14は、後述する視野調整制御部33によって制御される。すなわち、視野調整機構14と視野調整制御部33とが視野調整部として機能する。
【0022】
制御系15は、汎用のコンピュータ装置により構成され、そのハードウェアをブロック化して説明すると、CPU21と、キーボードやマウス等の入力装置22と、液晶パネル等の表示装置23と、コンボリューションフィルタを記憶するメモリ(コンボリューションフィルタ記憶部)24とにより構成される。
また、CPU21が処理する機能をブロック化して説明すると、標準画像データ作成部31と、ビニング処理制御部32と、視野調整制御部33と、画像データ決定部35と、コンボリューションフィルタリング処理制御部36と、表示制御部37とを有する。
【0023】
メモリ24には、1個の標準画像データ用コンボリューションフィルタと1個のビニング画像データ用コンボリューションフィルタとの合計2個のコンボリューションフィルタが1組となるように記憶されている。例えば、エッジ強調の画像処理を行うために1個の標準画像データ用コンボリューションフィルタと1個のビニング画像データ用コンボリューションフィルタとの1組と、ぼかしの画像処理を行うために1個の標準画像データ用コンボリューションフィルタと1個のビニング画像データ用コンボリューションフィルタとの1組との合計2組が記憶されている。
図2は、エッジ強調の画像処理を行うための1個の標準画像データ用コンボリューションフィルタと1個のビニング画像データ用コンボリューションフィルタとの一例を示す図である。
ビニング画像データ用コンボリューションフィルタは、コンボリューションフィルタ対象領域が3行3列の正方形で表され、500行500列方向の画素からなる画像を示すビニング画像データに対して、エッジ強調の画像処理を行うために周波数分析等して決められた重み係数が図2(a)に示すような値となっている。
また、標準画像データ用コンボリューションフィルタは、コンボリューションフィルタ対象領域が5行5列の正方形で表され、1000行1000列の画素からなる画像を示す標準画像データに対して、エッジ強調の画像処理を行うために周波数分析等して決められた重み係数が図2(b)に示すような値となっている。
【0024】
入力装置22は、操作者がビニング処理を実行するか否かを決めたり、エッジ強調の画像処理を行うかぼかしの画像処理を行うかを決めたり、ステージ16をXY方向或いはZ方向に移動させたりするための操作が行われるものである。
例えば、操作者がビニング機能無効モード用ボタン(図示せず)を押圧することで、画像データ決定部35にビニング処理を実行しない制御信号を出力し、一方、操作者がビニング機能有効モード用ボタン(図示せず)を押圧することにで、画像データ決定部35にビニング処理を実行する制御信号を出力する。
また、操作者がエッジ強調用ボタン(図示せず)を押圧することで、コンボリューションフィルタリング処理制御部36にエッジ強調の画像処理を行う操作信号を出力し、一方、操作者がぼかし用ボタン(図示せず)を押圧することにで、コンボリューションフィルタリング処理制御部36にエッジ強調の画像処理を行う操作信号を出力する。
【0025】
標準画像データ作成部31は、X線検出器12から送られてきた透視X線像の映像信号に基づいて、1000行1000列の画素からなる画像を示す標準画像データを作成する制御を行う(図3(a)参照)。なお、標準画像データは、ビニング画像データに比べて画素数が多いので、高解像力であるが画像処理や転送の時間が長くなる。
ビニング処理制御部32は、X線検出器12から送られてきた透視X線像の映像信号に基づいて、2行2列の画素を1個のブロック画素とみなすことにより、500行500列のブロック画素からなる画像を示すビニング画像データを作成する制御を行う(図3(b)参照)。なお、ビニング画像データは、標準画像データに比べて画素数が少ないので、解像力が低いが画像処理や転送の時間が短くなる。
【0026】
視野調整制御部33は、操作者が入力装置22によりステージ16をXY方向あるいはZ方向に移動させる駆動信号を入力したときに、三次元駆動機構17に駆動信号を出力して、ステージ16を所望の位置に移動する制御を行う。
画像データ決定部35は、操作者が入力装置22によりビニング処理を実行しない操作信号を入力したときには、標準画像データを標準画像データ作成部31に作成させるように決定し(「ビニング機能無効モード」となる)、一方、操作者が入力装置22によりビニング処理を実行する操作信号を入力したときには、ビニング画像データをビニング処理制御部32に作成させるように決定する(「ビニング機能有効モード」となる)制御を行う。
【0027】
コンボリューションフィルタリング処理制御部36は、画像データ決定部35で標準画像データを作成させると決定されるに伴い、標準画像データ用コンボリューションフィルタの設定に切り替え、一方、ビニング画像データを作成させると決定されるに伴い、ビニング画像データ用コンボリューションフィルタの設定に切り替えるとともに、画像データ決定部35で決定された画像データに対して、設定したコンボリューションフィルタを用いて所望の画像処理を実行することにより、加工画像データを作成する制御を行う。
つまり、標準画像データには標準画像データ用コンボリューションフィルタを用いるように自動的に設定し、ビニング画像データにはビニング画像データ用コンボリューションフィルタを用いるように自動的に設定する。
また、コンボリューションフィルタリング処理制御部36は、操作者が入力装置22によりエッジ強調の画像処理を行う操作信号を入力したときに、エッジ強調の画像処理を行うためのコンボリューションフィルタの設定に切り替え、一方、操作者が入力装置22によりぼかしの画像処理を行う操作信号を入力したときに、ぼかしの画像処理を行うためのコンボリューションフィルタの設定に切り替える制御を行う。
つまり、ビニング機能無効モードとビニング機能有効モードとの切り替えでは、自動的にコンボリューションフィルタが切り替わったが、画像処理の種類を変更する切り替えでは、入力装置22によりコンボリューションフィルタを切り替えて用いることになる。
表示制御部37は、加工画像データに基づいて、表示装置23にX線画像を表示する制御を行う。
【0028】
次に、X線検査装置1による測定動作(表示処理動作)について説明する。図4は、X線検査装置1による測定動作を示すフローチャートである。なお、メモリ24には、エッジ強調の画像処理を行うためのコンボリューションフィルタと、ぼかしの画像処理を行うためのコンボリューションフィルタとの合計2組のコンボリューションフィルタが記憶されているが、ここでは、すでに操作者が入力装置22によりエッジ強調の画像処理を行う操作信号を入力したものとする。つまり、本フローチャートでは、画像処理の種類を変更する切り替えは実行されず、エッジ強調の画像処理のみが実行されることとする。
まず、ステップS101の処理において、被測定物Sをステージ16上に載置して測定を開始する。
次に、ステップS102の処理において、画像データ決定部35は、ビニング画像データをビニング処理制御部32に作成させるように決定する(ビニング機能有効モードとなる)。なお、初期設定として、画像データ決定部35は、ビニング画像データをビニング画像データ作成部32に作成させるように決定させるものとする。
【0029】
次に、ステップS103の処理において、コンボリューションフィルタリング処理制御部36は、ビニング画像データを作成させると決定されたので、ビニング画像データ用コンボリューションフィルタに設定する(図2(a)参照)。
次に、ステップS104の処理において、ビニング処理制御部32は、X線検出器12から送られてきた透視X線像の映像信号に基づいて、2行2列の画素を1個のブロック画素とみなすことにより、500行500列のブロック画素からなる画像を示すビニング画像データを作成する(図3(b)参照)。
次に、ステップS105の処理において、コンボリューションフィルタリング処理制御部36は、ビニング画像データに対して、ビニング画像データ用コンボリューションフィルタを用いてエッジ強調の画像処理を実行することにより、加工画像データを作成する。
【0030】
次に、ステップS106の処理において、表示制御部37は、加工画像データに基づいて、表示装置23にX線画像を表示する。
次に、ステップS107の処理において、画像データ決定部35は、操作者が入力装置22によりビニング処理を実行しない操作信号を入力したか否かを判定する。
操作者が入力装置22によりビニング処理を実行しない操作信号を入力していないと判定したときには、ステップS104の処理に戻る。
一方、操作者が入力装置22によりビニング処理を実行しない操作信号を入力したと判定したときには、ステップS108の処理において、画像データ決定部35は、標準画像データを標準画像データ作成部31に作成させるように決定する(ビニング機能無効モードとなる)。
【0031】
次に、ステップS109の処理において、コンボリューションフィルタリング処理制御部36は、標準画像データを作成させると決定されたので、標準画像データ用コンボリューションフィルタに設定する(図2(b)参照)。
次に、ステップS110の処理において、標準画像データ作成部31は、X線検出器12から送られてきた透視X線像の映像信号に基づいて、1000行1000列の画素からなる画像を示す標準画像データを作成する(図3(a)参照)。
次に、ステップS111の処理において、コンボリューションフィルタリング処理制御部36は、標準画像データに対して、標準画像データ用コンボリューションフィルタを用いてエッジ強調の画像処理を実行することにより、加工画像データを作成する。
【0032】
次に、ステップS112の処理において、表示制御部37は、加工画像データに基づいて、表示装置23にX線画像を表示する。
次に、ステップS113の処理において、画像データ決定部35は、操作者が入力装置22によりビニング処理を実行する操作信号を入力したか否かを判定する。
操作者が入力装置22によりビニング処理を実行する操作信号を入力していないと判定したときには、ステップS110の処理に戻る。
一方、操作者が入力装置22によりビニング処理を実行する操作信号を入力したと判定したときには、ステップS102の処理に戻る。
【0033】
以上のように、本発明によれば、標準画像データには標準画像データ用コンボリューションフィルタを用いるように自動的に設定し、ビニング画像データにはビニング画像データ用コンボリューションフィルタを用いるように自動的に設定するので、ビニング処理を実行するか否かを切り替えても、所望の画像処理を実行し続けることができる。
なお、図8(a)は、X線検査装置1において、ビニング機能有効モードでビニング画像データにビニング画像データ用コンボリューションを用いて画像処理を行ったときのX線画像であり、図8(b)は、X線検査装置1において、ビニング機能無効モードで画像データに標準画像データ用コンボリューションを用いて画像処理を行ったときのX線画像である。
上述した従来のX線検査装置で画像処理を行ったときの図9に示すようなX線画像と比較すると、ビニング機能無効モードのX線画像とビニング機能有効モードのX線画像とで同じような印象を受けることがわかる。
【0034】
(実施形態2)
上述したX線検査装置1では、操作者が、入力装置22を用いてビニング処理を実行するか否かを決めたが、これに代えて、装置自体によって、測定視野の変動の有無を判定して、測定視野が変動していないと判定したときにはビニング機能無効モードとし、一方、測定視野が変動していると判定したときにはビニング機能有効モードとするようにしてもよい。
図5は、本発明の他の一実施形態であるX線検査装置の構成を示すブロック図である。なお、図5において、図1と同じものは同符号を付すことにより、説明を省略する。
【0035】
X線検査装置51におけるCPU21が処理する機能は、X線検査装置1の機能に加えて視野変動判定部41を有し、さらに、入力装置22を用いてビニング処理を実行するか否かを決めた画像データ決定部35に変えて、測定視野の変動の有無を判定してビニング処理を実行するか否かを決める画像データ決定部42を有する。
視野変動判定部41は、視野調整制御部33から三次元駆動機構17に送信された駆動信号に基づいて、測定視野の変動の有無を判定する制御を行う。
すなわち、駆動信号が送信されているときには、ステージ16が移動することになるので、測定視野の変動中と判定し、一方、駆動信号が送信されていないときには、測定視野の固定中と判定する。
画像データ決定部42は、視野変動判定部41が測定視野の固定中と判定したときには、標準画像データを標準画像データ作成部31に作成させるように決定し(「ビニング機能無効モード」となる)、一方、視野変動判定部41が測定視野の変動中と判定したときには、ビニング画像データをビニング処理制御部32に作成させるように決定する(「ビニング機能有効モード」となる)制御を行う。
【0036】
次に、X線検査装置51による測定動作(表示処理動作)について説明する。図6は、X線検査装置51による測定動作を示すフローチャートである。なお、メモリ24には、エッジ強調の画像処理を行うためのコンボリューションフィルタと、ぼかしの画像処理を行うためのコンボリューションフィルタとの合計2組のコンボリューションフィルタが記憶されているが、ここでは、すでに操作者が入力装置22によりエッジ強調の画像処理を行う操作信号を入力したものとする。つまり、本フローチャートでは、画像処理の種類を変更する切り替えは実行されず、エッジ強調の画像処理のみが実行されることとする。
【0037】
まず、ステップS201の処理において、被測定物Sをステージ16上に載置して測定を開始する。
次に、ステップS202の処理において、画像データ決定部42は、標準画像データを標準画像データ作成部31に作成させるように決定する(ビニング機能無効モードとなる)。
次に、ステップS203の処理において、コンボリューションフィルタリング処理制御部36は、標準画像データを作成させると決定されたので、標準画像データ用コンボリューションフィルタに設定する(図2(b)参照)。
次に、ステップS204の処理において、標準画像データ作成部31は、X線検出器12から送られてきた透視X線像の映像信号に基づいて、1000行1000列の画素からなる画像を示す標準画像データを作成する(図3(a)参照)。
次に、ステップS205の処理において、コンボリューションフィルタリング処理制御部36は、標準画像データに対して、標準画像データ用コンボリューションフィルタを用いてエッジ強調の画像処理を実行することにより、加工画像データを作成する。
【0038】
次に、ステップS206の処理において、表示制御部37は、加工画像データに基づいて、表示装置23にX線画像を表示する。
次に、ステップS207の処理において、視野変動判定部41は、視野調整制御部33から三次元駆動機構17に送信される駆動信号に基づいて、測定視野の変動の有無を判定する。
測定視野の固定中であると判定したときには、ステップS204の処理に戻る。
一方、測定視野の変動中であると判定したときには、ステップS208の処理において、画像データ決定部41は、ビニング画像データをビニング処理制御部32に作成させるように決定する(ビニング機能有効モードとなる)。
【0039】
次に、ステップS209の処理において、コンボリューションフィルタリング処理制御部36は、ビニング画像データを作成させると決定されたので、ビニング画像データ用コンボリューションフィルタに設定する(図2(a)参照)。
次に、ステップS210の処理において、ビニング処理制御部32は、X線検出器12から送られてきた透視X線像の映像信号に基づいて、2行2列の画素を1個のブロック画素とみなすことにより、500行500列のブロック画素からなる画像を示すビニング画像データを作成する(図3(b)参照)。
次に、ステップS211の処理において、コンボリューションフィルタリング処理制御部36は、ビニング画像データに対して、ビニング画像データ用コンボリューションフィルタを用いてエッジ強調の画像処理を実行することにより、加工画像データを作成する。
【0040】
次に、ステップS212の処理において、表示制御部37は、加工画像データに基づいて、表示装置23にX線画像を表示する。
次に、ステップS213の処理において、視野変動判定部41は、視野調整制御部33から三次元駆動機構17に送信される駆動信号に基づいて、測定視野の変動の有無を判定する。
測定視野の変動中であると判定したときには、ステップS210の処理に戻る。
一方、測定視野の固定中であると判定したときには、ステップS202の処理に戻る。
【0041】
以上のように、本発明によれば、実施形態1の効果に加えて、測定視野の変動中か測定視野の固定中かの状況に応じて、ビニング処理を実行するか否かを自動で切り替えることができる。
【0042】
(他の実施形態)
(1)上述したX線検査装置1において、メモリ24には、1個の標準画像データ用コンボリューションフィルタと1個のビニング画像データ用コンボリューションフィルタとの合計2個のコンボリューションフィルタが1組となるように記憶させる構成としたが、メモリ24には、1個の標準画像データ用コンボリューションフィルタと1個のビニング画像データ用コンボリューションフィルタと1個の第二ビニング画像データ用コンボリューションフィルタとの合計3個のコンボリューションフィルタが1組となるように記憶させるとともに、さらに第二ビニング処理制御部が、250行250列のブロック画素からなる画像を示す第二ビニング画像データを作成する構成としてもよい。これにより、第二ビニング画像データが作成されるように決定されるに伴い、第二ビニング画像データに第二ビニング画像データ用コンボリューションフィルタを用いるように自動的に設定することになる。
(2)なお、上述したX線検査装置1において、フラットパネルX線検出器を用いたが、IIとCCDカメラとを組み合わせたX線検出器等を用いた場合にも適用できる。また、X線透視装置を説明したが、この発明はX線CT装置にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、ビニング処理を実行するか否かの選択等によって、画像データの画素数を切り替えることができるX線検査装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態であるX線検査装置の構成を示すブロック図である。
【図2】エッジ強調の画像処理を行うための1個の標準画像データ用コンボリューションフィルタと1個のビニング画像データ用コンボリューションフィルタとの一例を示す図である。
【図3】100万画素の標準画像データと25万画素のビニング画像データとを示す図である。
【図4】図1のX線検査装置による測定動作(表示処理動作)のフローチャートである。
【図5】本発明の他の一実施形態であるX線検査装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図5のX線検査装置による測定動作(表示処理動作)のフローチャートである。
【図7】画像データにコンボリューションフィルタを用いて画像処理を行うことについて説明する図である。
【図8】本発明に係るX線検査装置で、画像データにコンボリューションフィルタを用いて画像処理を行ったときのX線画像を示す図である。
【図9】従来のX線検査装置で、画像データにコンボリューションフィルタを用いて画像処理を行ったときのX線画像を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1、51: X線検査装置
11: X線発生装置
12: X線検出器
13: X線測定光学系
14: 視野調整機構
16: ステージ
17: 三次元駆動機構
22: 入力装置
23: 表示装置
24: メモリ(コンボリューションフィルタ記憶部)
31: 標準画像データ作成部
32: ビニング処理制御部
33: 視野調整制御部
35、41: 画像データ決定部
36: コンボリューションフィルタリング処理制御部
37: 表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に透視用X線を照射するX線発生装置と、当該被測定物の透視X線像を撮影するX線検出器とからなるX線測定光学系と、
前記X線検出器により撮影された映像信号に基づいて、行方向と列方向とに配列された複数個の画素からなる画像を示す標準画像データを作成する標準画像データ作成部と、
前記X線検出器により撮影された映像信号に基づいて、行方向及び/又は列方向で隣接する数個の画素を1個のブロック画素とみなすことにより、行方向と列方向とに配列された複数個のブロック画素からなる画像を示すビニング画像データを作成するビニング処理制御部と、
前記標準画像データかビニング画像データのいずれを作成させるかを決定する画像データ決定部と、
前記画像データ決定部で決定された画像データに対して、コンボリューションフィルタを用いて所望の画像処理を実行することにより、加工画像データを作成するコンボリューションフィルタリング処理制御部と、
前記加工画像データに基づいてX線画像を表示する表示制御部とを備えるX線検査装置であって、
前記コンボリューションフィルタは、所望の画像処理を行うために、前記標準画像データに用いられる標準画像データ用コンボリューションフィルタと、前記ビニング画像データに用いられるビニング画像データ用コンボリューションフィルタとを1組としてコンボリューションフィルタ記憶部に記憶され、
前記コンボリューションフィルタリング処理制御部は、前記画像データ決定部で標準画像データを作成させると決定されるに伴い、前記標準画像データ用コンボリューションフィルタに切り替えて用い、一方、前記ビニング画像データを作成させると決定されるに伴い、前記ビニング画像データ用コンボリューションフィルタに切り替えて用いることを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
さらに、入力装置を備え、
前記画像データ決定部は、前記入力装置で入力された操作信号に基づいて、前記標準画像データか前記ビニング画像データのいずれを作成させるかを決定することを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
さらに、前記被測定物と前記X線測定光学系との位置関係を調整して、前記被測定物に対して測定視野を変動させる視野調整部と、
前記測定視野が変動しているか否かを判定して、前記測定視野が変動していないと判定したときにはビニング機能無効モードとし、一方、前記測定視野が変動していると判定したときにはビニング機能有効モードとする視野変動判定部とを備え、
前記画像データ決定部は、前記ビニング機能無効モードとなるに伴い、前記標準画像データを作成させると決定し、一方、前記ビニング機能有効モードとなるに伴い、前記ビニング画像データを作成させると決定することを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記標準画像データ用コンボリューションフィルタは、m行n列のフィルタサイズのデータであり、かつ、
前記ビニング画像データ用コンボリューションフィルタは、s行t列のフィルタサイズのデータであり、
m>s、n>tを満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記所望の画像処理は、エッジ強調かぼかしのいずれかの処理であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−79949(P2009−79949A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248339(P2007−248339)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】