説明

X線検査装置

【課題】X線透過量に基づいて生成する透過画像から仕切り部材の位置を正確に検知するとともに、検査性能の低下を防止する。
【解決手段】被検査物Wを搬送方向Yに搬送するベルトコンベア5と、ベルトコンベア5の搬送面5aに近接して設けられ、搬送面5aを搬送方向Yと直交する方向Zに分割して複数の検査レーン14を形成する仕切り部材11と、検査レーン14に搬送されている被検査物WにX線を照射するX線発生器21と、被検査物Wを透過してくるX線を検出するX線検出器22とを備え、X線透過量に基づいて透過画像を生成し、この透過画像から被検査物Wの品質を検査するX線検査装置1において、仕切り部材11を、搬送手段5の搬送方向Yに延在する略板状のX線易透過部12と、X線易透過部12の搬送手段5の搬送面5aに近接する底部に設けられているX線難透過部13とから構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物にX線を照射したときのX線透過量に基づいて透過画像を生成し、この透過画像から被検査物の品質を検査するX線検査装置に係り、複数の検査レーンを備えているX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品などの被検査物にX線を照射し、そのX線透過量に基づいて透過画像を生成し、その透過画像から判断して、被検査物に混入している異物の検出や、被検査物の形状などが品質規格に適合するか否かなどを検査するX線検査装置が知られている。X線検査装置には、搬送手段の搬送面上に搬送方向に沿って長い略板状の仕切り部材が設けられ、仕切り部材によって搬送面を搬送方向と直交する方向(搬送面の幅方向)に分割して複数の検査レーンを形成しているものがある。このX線検査装置によれば、ウィンナーソーセージやチキンナゲットなどのようなばら状の被検査物を各検査レーンごとに検査するため、一つの検査レーンにて検査する被検査物の数量が減少し、不良品として排出される検査済みの被検査物に混ざって排出されてしまう良品の割合が低下して歩留りが向上する。また、複数の検査レーンのうちのいくつかを再検査レーンとして使用することもできる。
【0003】
仕切り部材によって検査レーンを形成しているX線検査装置として、下記特許文献1に開示されているX線検査装置がある。このX線検査装置は、仕切り部材(樹脂板)の位置を変更することで二つの検査レーンの領域(検査領域)の割合が変更可能なものである。一方の検査領域と他方の検査領域の割合の変更設定は、樹脂板の位置を変更した後に、被検査物を通過させないでX線を照射し、このときのX線透過量に基づいて生成された透過画像から樹脂板を検知することで自動的になされる。
【特許文献1】特開2007−139802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、仕切り部材によって複数の検査レーンを形成しているX線検査装置では、図9に示すように、X線発生部101からX線検出部102に向けて照射されるX線の態様が搬送手段103の搬送面104の搬送方向と直交して下向きに広がる略三角面状となるため、仕切り部材105に対して斜めにX線が照射され、仕切り部材105の実際の幅Lよりも幅方向Zに長い影領域L1 ,L2 が発生してしまう。そのため、透過画像から仕切り部材105の正確な位置を検知することができなかった。
【0005】
また、仕切り部材105に近接して搬送されている被検査物の透過画像がこの影領域L1 ,L2 と重なってしまい、金属などの異物を検出する検査の性能が低下していた。
【0006】
さらに、図10(a)に示すように、搬送面104の幅方向Zの両端側ほど影領域L1 ,L2 が幅方向Zに長くなるため(L1 <L2 )、例えば、多数の検査レーン106があることで検査領域が狭くなっているものや、図10(b)のように、仕切り部材205の高さが高いものには、検査領域全体に影領域L1 ,L2 が写り込むようになり、異物検出などの検査性能が低下していた。
【0007】
そこで本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、X線透過量に基づいて生成する透過画像から仕切り部材の位置を正確に検知するとともに、検査性能の低下を防止するX線検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のX線検査装置は、被検査物Wを所定の搬送方向Yに搬送する搬送手段5と、
前記搬送手段5の搬送面5aに近接して設けられ、前記搬送面5aを前記搬送方向Yと直交する方向Zに分割して複数の検査レーン14を形成する仕切り部材11と、
前記搬送手段5によって前記検査レーン14に搬送されている前記被検査物WにX線を照射するX線発生手段21と、
前記X線発生手段21からのX線照射に伴って前記被検査物Wを透過してくるX線を検出するX線検出手段22とを備え、前記X線検出手段22によって検出されたX線透過量に基づいて透過画像を生成し、該透過画像から前記被検査物Wの品質を検査するX線検査装置1において、
前記仕切り部材11が、前記搬送手段5の前記搬送方向Yに延在する略板状のX線易透過部12と、前記X線易透過部12の前記搬送手段5の前記搬送面5aに近接する部分に設けられているX線難透過部13(13a,13b)とから構成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項2記載のX線検査装置は、前記X線易透過部12が樹脂によって形成されており、前記X線難透過部13が重金属によって形成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項3記載のX線検査装置は、前記X線難透過部13が前記X線易透過部12の長手方向に沿って設けられていることを特徴としている。
【0011】
請求項4記載のX線検査装置は、前記X線難透過部13が前記X線発生手段21からのX線照射位置に設けられているとともに、前記X線易透過部12には前記X線難透過部13の位置を識別するためのマークが付されていることを特徴としている。
【0012】
請求項5記載のX線検査装置は、前記被検査物Wを搬送していない状態で前記X線発生手段21からX線を照射したときのX線透過量に基づいて前記仕切り部材11の透過画像を生成し、該透過画像の濃淡に基づいて検知した前記仕切り部材11に対応する部分を検査対象外領域としてマスク設定する仕切り部材の位置検知モードを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1記載のX線検査装置によれば、仕切り部材が、搬送方向に延在する略板状のX線透過性を有するX線易透過部と、X線易透過部の搬送面に近接する部分に設けられているX線非透過性を有するX線難透過部とから構成されていることにより、その透過画像に濃くあらわれるX線難透過部から仕切り部材の正確な位置を検知することができる。また、仕切り部材の略全体がX線易透過部であることにより、各検査レーンの検査領域に影領域が発生することを抑えることができる。
【0014】
請求項2記載のX線検査装置によれば、X線易透過部がX線透過性を有する樹脂によって形成されているため、X線が透過しやすいものとなり、X線難透過部がX線非透過性を有する重金属によって形成されているため、X線が透過しにくいものとなる。
【0015】
請求項3記載のX線検査装置によれば、X線易透過部(仕切り部材の略全体)にはX線難透過部がX線易透過部の長手方向に沿って設けられているため、X線難透過部の位置とX線検出手段の位置とを気にしながら仕切り部材の位置を変更するような手間がなくなり、各検査レーンの領域(検査領域)の変更が容易となる。
【0016】
請求項4記載のX線検査装置によれば、X線非透過性の材料を必要最低限にして仕切り部材を製造することができる。また、X線難透過部の位置にマークが付されていることでその位置を容易に認識することができる。
【0017】
請求項5記載のX線検査装置によれば、仕切り部材の透過画像を生成するときに、この透過画像に濃くあらわれる部分(X線難透過部に相当する部分)を検査対象外領域としてマスク設定することにより、仕切り部材を異物として検出することなく被検査物の検査が可能となる。さらに、このような仕切り部材の位置検知モードを備えていることにより、仕切り部材の位置検知の自動化が可能となり、これにより、各検査レーンの領域(検査領域)の割合を変更したときなどの仕切り部材の位置検知が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。
図1は本発明のX線検査装置の実施の形態を示す斜視図、図2は同実施の形態が備えている仕切り部材を示す拡大斜視図である。
【0019】
このX線検査装置は、生産ラインに設けられ、例えばウィンナーソーセージやチキンナゲットなどのようなばら状の被検査物にX線を照射し、そのX線透過量に基づいて透過画像を生成し、その透過画像から判断して、被検査物に混入している異物の検出や、被検査物の形状などが品質規格に適合するか否かなどの種々の検査を行うものである。
【0020】
図1に示すように、X線検査装置1は、床面上に脚部を介して設置される略箱型の遮蔽構造の筐体2を備えている。筐体2は、その内部から有害な量のX線が漏洩しないように放射線防護材料によって形成されている。筐体2の両側面には、被検査物Wが搬入される搬入口と、被検査物Wが搬出される搬出口とが設けられている。
【0021】
筐体2の内部には、被検査物Wを搬入口から搬出口までの所定の搬送方向Yに搬送する搬送手段としてのベルトコンベア3が筐体2を貫通するように設けられている。ベルトコンベア3は、両端部にそれぞれローラ4,4を備えており、ローラ4,4の間に無端状の搬送ベルト5が掛け回されている。そして、いずれか一方のローラ4が図示しない駆動モータに接続されており、駆動モータの駆動力によって搬送ベルト5が回転する。このとき、搬送ベルト5のベルト面5aが被検査物Wの搬送面となる。
【0022】
また、ベルトコンベア3の搬送面5a上には、搬送方向Yに延在する略矩形板状の仕切り部材11が搬送面5aに近接して複数(四つ)設けられている。
【0023】
図2(a)に示すように、仕切り部材11は、その略全体となる板状部分がポリカーボネートやアクリルなどの樹脂によって形成されている。仕切り部材11の板状部分は、X線透過性を有するX線易透過部12となる。X線易透過部12における搬送面5aと近接している部分、つまり、X線易透過部12の底部には、その長手方向(搬送方向Y)に沿って鉄線などの重金属によって形成されているX線難透過部13(13a)が埋め込まれて設けられている。なお、X線難透過部13aは、異物検出などにおける検出対象(異物)と略同等のX線非透過性を有するものである。
【0024】
図2(b)には仕切り部材11の他の例を示している。同図の仕切り部材11は、図2(a)と同様に、その略全体となる板状部分がポリカーボネートやアクリルなどの樹脂によって形成されている。板状部分は、X線透過性を有するX線易透過部12となる。X線易透過部12における搬送面5aと最も近接している部分となるX線易透過部12の底面には、その長手方向(搬送方向Y)に沿ってSUS板などの重金属によって形成されているX線難透過部13(13b)が設けられている。なお、X線難透過部13bは、上述したX線難透過部13aと同様に、異物検出などにおける検出対象(異物)と略同等のX線非透過性を有するものである。
【0025】
図1に示すように、仕切り部材11は、搬送面5aを搬送方向Yと直交する方向(搬送面5aの幅方向Z)に分割して複数(五つ)の検査レーン14を形成するものである。
【0026】
図1のX線検査装置1のように、ばら状の被検査物Wが搬送される搬送面5aをその幅方向Zに分割して複数の検査レーン14を形成することは、各検査レーン1にて検査する良品の中に混入している不良品の割合が低下して検査効率が向上する。また、複数の検査レーン14のうちのいくつかを再検査レーンとして使用することもできる。
【0027】
図1に示すように、X線検査装置1の光学系は、筐体2の内部に設けられているX線発生手段21とX線検出手段22とから略構成されている。X線発生手段としてのX線発生器21は、筐体2の内部における上部に設けられている。X線検出手段としてのX線検出器22は、ベルトコンベア3の搬送ベルト5に囲まれるように設けられている。また、X線発生器21とX線検出器22とは対向している。
【0028】
X線発生器21は、金属製の箱内にX線を発生させるX線管が絶縁油に浸漬されてなり、各検査レーン14において、ベルトコンベア3によって搬送されている被検査物WにX線を照射する。このとき、X線発生器21から照射されるX線の態様は、搬送方向Xと直交する面状となり、その面は下向きに広がる略三角形状をなしている。
【0029】
X線検出器22は、フォトダイオードと、フォトダイオード上に配設されたシンチレータからなる多数の受光素子23が、搬送方向Yと直交する方向、すなわち、搬送面5aの幅方向Zに直線状に配設されてなるラインセンサを備えている。
【0030】
上述した光学系では、まず、ベルトコンベア3によって搬送面5a上に搬送されている被検査物WにX線発生器21からX線を照射し、被検査物Wを透過したX線をX線検出器22のシンチレータによって光信号に変換する。次に、シンチレータで変換された光信号をフォトダイオードによって受光した後、電気信号に変換して外部コンピュータなどに出力する。そして、外部コンピュータは、X線検出器22から出力された信号を所定のタイミングで取り込んで処理し、X線透過量に基づいて濃淡分布の透過画像を生成することにより、被検査物Wの様々な検査を行う。
【0031】
なお、X線検出器22の受光素子23の幅方向Zのサイズ(分解能)は0.2〜0.8mm程度である。そして、仕切り部材11のX線易透過部12の幅は十分な強度を有する程度とされており、仕切り部材11のX線難透過部13の幅は受光素子23の一つ以上二つ未満に相当するサイズ(この実施の形態では、X線易透過部12の幅が10mm程度、X線難透過部13の幅が0.5〜1.0mm程度)に形成されている。
【0032】
さらに、図1に示すように、X線発生器21とX線検出器22の間における各検査レーン14の領域はX線検査装置1の検査領域Pとなる。
【0033】
また、X線検査装置1は、各検査レーン14の検査領域Pの割合を変更可能としている。検査領域Pの割合の変更とは、仕切り部材11の幅方向Zの位置を変更するとともに、各仕切り部材11の位置に応じてX線検出器22の受光素子23の領域を変更することである。検査領域Pの割合の変更は、仕切り部材11の位置を検知することで自動的になされる。
【0034】
ここから、図3〜7を参照して検査領域の割合の変更について説明する。
図3はX線検査装置の起動から運転開始までの一連の処理動作を示すフローチャート、図4は仕切り部材の位置検知モードの処理動作を示すフローチャート、図5は仕切り部材の位置検知モードの確認画面を示す図、図6は同設定画面を示す図、図7は同画面におけるUP/DOWNキーの機能を示す説明図である。
【0035】
X線検査装置1を起動して実際にこの装置1が運転を開始するまでの一連の処理動作を説明する。なお、この間に仕切り部材の位置検知モードによって検査領域Pの割合の変更がなされる。
図3に示すように、X線検査装置1を起動すると、検査の対象となる被検査物Wの種類に応じて設定された検査条件を表す品種パラメータを読み込む(ST1)。そして、この検査に仕切り部材11が必要か否かを判別する(仕切り部材設定済みフラグがON又はOFF、もしくは該当しないN/Aかを判別する)(ST2)。
【0036】
ONのときには、図4の仕切り部材の位置検知モードが処理動作を開始する。
図4に示すように、仕切り部材の位置検知モードでは、まず、検査パラメータを設定する(ST11)。ここでは、例えば金属などの異物検出をする場合、被検査物Wの特性に応じたX線の照射量などをST1で読み込んだ品種パラメータに基づいて設定する。次に、被検査物Wを搬送させない状態でX線発生器21からX線を照射する(ST12)。次に、X線検出器22によって検出されたX線の透過量に基づいて透過画像を生成する(ST13)。なお、この透過画像とは位置変更された仕切り部材11の透過画像である。次に、仕切り部材11の透過画像上で濃淡を検知したか否かを判別する(ST14)。
【0037】
ST14において、透過画像上で濃淡を検知したとき(YESのとき)は、図5に示す確認画面31に仕切り部材11の検知位置を表示する(ST15)。次に、透過画像を確認画面31の透過画像の表示部32とマスク領域設定の表示部33に表示する(ST16)。次に、マスク領域設定の表示部33において、マスク領域が正しく設定されているか否かをオペレータが確認する(ST17)。正しく設定されていれば(YESであれば)、確認画面31の操作ボタン34の中の「はい」を押下する(ST18)と仕切り部材11の位置検知が終了する。ST17において、正しく設定されていなければ(NOであれば)、後述するST20のNOへと移行する。なお、図5における符号35は透過画像の表示部31にあらわれる仕切り部材11のX線難透過部13の画像で所定時間分継続して生成した画像を波形として表示しており、符号36はマスク領域設定の表示部32にあらわれる仕切り部材11のX線難透過部13に対応して設定されたマスク領域であり、符号37はメッセージ表示部である。
【0038】
また、ST14において、透過画像上の濃淡を検知しなかったとき(NOのとき)は、透過画像上に濃淡が検知されなかった旨のメッセージと位置検知モードを終了してよいかとを確認する確認画面(不図示)を表示する(ST19)。「終了してよい」が選択されれば、仕切り部材11の位置検知が終了する。「終了しない」が選択されれば、図6に示す設定画面41へと画面が切り替わる(ST20)。そして、設定画面41からマスク領域設定の表示部33にあらわれる仕切り部材36のマスク領域を設定し(ST21)、仕切り部材11の位置検知が終了する。
【0039】
ここでは、設定画面41におけるマスク領域設定及び、この画面41の各種設定機能を説明する。また、ここでは、仕切り部材11の自動検知が正常に動作せず、オペレータが仕切り部材11の位置を設定する手順を説明する。仕切り部材11の自動検知が正常に動作しないのは、例えば、透過画像上の濃淡の度合いや検知位置に時間的な変動がある場合などには確実な検知が保証できないと判定されるようになっているためである。なお、図6において、図5と同じ部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図6に示すように、設定画面41は、図中の左半部が透過画像の表示部32とマスク領域設定の表示部33であり、右半部が設定表示部42である。設定表示部42には、領域設定部42a、領域サイズ設定部42b、位置設定部42cがある。各設定部42a〜42cは、UPキー43とDOWNキー44を備えている。
【0040】
領域設定部42aには、「追加」と「削除」の操作ボタン45a,45bを備えている。マスク領域設定の表示部33にあらわれる仕切り部材を追加する場合には「追加」ボタン45aを押下し、削除する場合には「削除」ボタン45bを押下する。また、領域設定部42aのUPキー43とDOWNキー44を操作することで、図7に示すように、マスク領域設定の表示部33にて選択する仕切り部材のマスク領域36を変更することができる。
【0041】
領域サイズ設定部42bは、UPキー43とDOWNキー44を操作することで、図7に示すように、マスク領域設定の表示部33の仕切り部材のマスク領域36を拡大、縮小することができる。
【0042】
位置設定部42cは、UPキー43とDOWNキー44を操作することで、図7に示すように、マスク領域設定の表示部33のマスク領域36を上下に移動することができる。
【0043】
図3に示すように、仕切り部材の位置検知モードの処理動作が全て完了すると、仕切り部材設定済みフラグがONとなり(ST4)、X線検査装置1の運転を開示する。
【0044】
また、図3におけるST2がOFFのときには、仕切り部材があるか否かを判別する(ST5)。仕切り部材があれば(YESであれば)、自動設定か否かを判別する(ST6)。自動設定であれば(YESであれば)、上述した仕切り部材の位置検知モード(図4参照)へと移行する。
【0045】
ST5がNOであれば、仕切り部材設定済みフラグは該当しないN/A(ST7)ため、無視してX線検査装置1の運転を開始する。
【0046】
ST6がNOであれば、上述した設定画面41を表示し(ST8)、手動によってマスク領域を設定する。
【0047】
さらに、図3におけるST2が該当しないN/Aのときには、無視してX線検査装置1の運転を開始する。
【0048】
ここでは、図8を参照して仕切り部材11のX線透過率について説明する。
図8は鉄とアクリル樹脂との線吸収係数μの比較表である(出典:"Table of X-Ray Mass Attenuation Coefficients and Energy-Absorption Coefficients from 1keV to 20MeV for Elements Z=1 to 92 and 48 Additional Substances of Dosimetric Interest"(J.H.Hubbell and S.M.Seltzer, NISTIR 5632, Web version online, 1996)Table1-Table4)。
【0049】
入射強度I0 のX線が物体を透過して出射される強度Iは、物体の線吸収係数μ、厚さtを用いて下記式(1)から得られる。また、線吸収係数μは、質量吸収係数μm、密度ρとして下記式(2)から得られる。
【数1】

【0050】
被検査物Wが食品である場合、被検査物Wに混入している異物検出に好適に用いられる数十keV〜数百keVに着目したとき、鉄線φ1.0mmとアクリル樹脂66mm(厚さ)とが同等の透過度となるため、アクリル樹脂の厚さを10mmとしたとき、鉄線とのコントラスト(濃淡差)は6.6となる。これは十分に検知可能な濃度である。さらに、被検査物Wが肉類である場合、透過度が同等であり、これらの検査性能に与える影響も小さい。そのため、必要に応じて検査領域P(マスク領域以外)にあらわれる仕切り部材11の影(濃淡)をオフセットとして補正してもダイナミックレンジが縮小しないため、実質的な検査性能は低下しないことになる。
【0051】
上述した実施の形態によれば、仕切り部材11が、搬送方向Yに延在する略板状のX線透過性を有するX線易透過部21と、X線易透過部12の搬送面5aに近接する底部に設けられているX線非透過性を有するX線難透過部13とから構成されていることにより、その透過画像に濃くあらわれるX線難透過部13から仕切り部材11の正確な位置を検知することができる。また、仕切り部材11の略全体がアクリルなどの樹脂(X線易透過部12)であることにより、各検査レーン14の検査領域Pに仕切り部材11の影領域が発生することを抑えることができる。
【0052】
また、仕切り部材11の略全体には鉄線やSUS板などのX線難透過部13が仕切り部材11の長手方向に沿って設けられているため、X線難透過部13の設けられている位置を気にしながら仕切り部材11の位置を変更するような手間がなくなり、検査領域Pの変更が容易となる。
【0053】
さらに、仕切り部材11の透過画像を生成するときに、この透過画像に濃くあらわれる部分(X線難透過部13に相当する部分)を検査対象外領域としてマスク設定することにより、仕切り部材11を異物として検出することなく被検査物Wの検査が可能となる。そして、このような仕切り部材の位置検知モードを備えていることにより、仕切り部材11の位置検知の自動化が可能となり、これにより、検査領域Pの割合を変更したときなどの仕切り部材11の位置検知が容易となる。
【0054】
なお、上述した実施の形態では、仕切り部材11の長手方向に沿って鉄線やSUS板などのX線難透過部13(13a,13b)が設けられた構成としているが、X線難透過部13がX線が当たる位置、すなわち、X線検出器22の受光素子23を横切る位置にだけ設けられ、その位置に識別のためのマークが付されている構成としてもよい。このような構成によれば、鉄線やSUS板などのX線非透過性の材料を必要最低限にして仕切り部材11を製造することができる。また、X線難透過部13の位置にマークが付されていることでその位置を容易に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のX線検査装置の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】(a),(b)同実施の形態が備えている仕切り部材を示す拡大斜視図である。
【図3】同実施の形態の起動から運転開始までの一連の処理動作を示すフローチャートである。
【図4】仕切り部材の位置検知モードの処理動作を示すフローチャートである。
【図5】仕切り部材の位置検知モードの確認画面を示す図である。
【図6】仕切り部材の位置検知モードの設定画面を示す図である。
【図7】仕切り部材の位置検知モードの設定画面におけるUP/DOWNキーの機能を示す説明図である。
【図8】鉄とアクリル樹脂との線吸収係数μの比較表である("Table of X-Ray Mass Attenuation Coefficients and Energy-Absorption Coefficients from 1keV to 20MeV for Elements Z=1 to 92 and 48 Additional Substances of Dosimetric Interest" )。
【図9】従来のX線検査装置の問題点を示す説明図である。
【図10】(a),(b)従来のX線検査装置の問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1…X線検査装置
5…搬送手段としてのベルトコンベア
5a…搬送面(ベルト面)
11…仕切り部材
12…X線易透過部
13…X線難透過部
14…検査レーン
21…X線発生手段としてのX線発生器
22…X線検出手段としてのX線検出器
W…被検査物
Y…搬送方向
Z…搬送方向と直交する方向(幅方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物(W)を所定の搬送方向(Y)に搬送する搬送手段(5)と、
前記搬送手段の搬送面(5a)に近接して設けられ、前記搬送面を前記搬送方向と直交する方向(Z)に分割して複数の検査レーン(14)を形成する仕切り部材(11)と、
前記搬送手段によって前記検査レーンに搬送されている前記被検査物にX線を照射するX線発生手段(21)と、
前記X線発生手段からのX線照射に伴って前記被検査物を透過してくるX線を検出するX線検出手段(22)とを備え、前記X線検出手段によって検出されたX線透過量に基づいて透過画像を生成し、該透過画像から前記被検査物の品質を検査するX線検査装置(1)において、
前記仕切り部材が、前記搬送手段の前記搬送方向に延在する略板状のX線易透過部(12)と、前記X線易透過部の前記搬送手段の前記搬送面に近接する部分に設けられているX線難透過部(13)とから構成されていることを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記X線易透過部(12)が樹脂によって形成されており、前記X線難透過部(13)が重金属によって形成されていることを特徴とする請求項1記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記X線難透過部(13)が前記X線易透過部(12)の長手方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記X線難透過部(13)が前記X線発生手段(21)からのX線照射位置に設けられているとともに、前記X線易透過部(12)には前記X線難透過部の位置を識別するためのマークが付されていることを特徴とする請求項1又は2記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記被検査物(W)を搬送していない状態で前記X線発生手段(21)からX線を照射したときのX線透過量に基づいて前記仕切り部材(11)の透過画像を生成し、該透過画像の濃淡に基づいて検知した前記仕切り部材に対応する部分を検査対象外領域としてマスク設定する仕切り部材の位置検知モードを備えていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−139425(P2010−139425A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317136(P2008−317136)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】