説明

X線検査装置

【課題】検査対象物の端部付近に小さな異物が混入している場合においても、該異物を検出可能なX線検査装置を得る。
【解決手段】搬送コンベア10によってY軸方向へ搬送されている検査対象物1に対してX線を照射するX線源11、12と、X線源11、12のそれぞれに対応し、X線源11、12から検査対象物1に照射され透過したX線を検出するX線検出器13、14とを備えている。X線源11は、図1のZ軸方向であって検査対象物1の上方から、検査対象物1の幅方向の一端部を中心として扇状にX線を照射できるように配設されている。X線源12は、図1のZ軸方向であって検査対象物1の上方から、検査対象物1の幅方向の他端部を中心として扇状にX線を照射できるように配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物に対してX線を照射する複数のX線源と、前記複数のX線源のそれぞれに対応し、前記複数のX線源から前記検査対象物に照射され透過したX線を検出する複数のX線検出器とを備えたX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、検査対象物に対してX線を照射する複数のX線源と、前記複数のX線源のそれぞれに対応し、前記複数のX線源から前記検査対象物に照射され透過したX線を検出する複数のX線検出器とを備えたX線検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−241368号公報
【特許文献2】特開2004−61479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、X線源とX線検出器との位置関係及び検査対象物の形状などによって、検査対象物の端部付近とその他の部位とのX線透過率が大きく異なってしまうことがあり、特許文献1、2を含む従来のX線検査装置においては、検査対象物の端部付近に混入している小さな異物を検出することが困難な場合があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、検査対象物の端部付近に小さな異物が混入している場合においても、該異物を従来に比べて高精度で検出可能なX線検査装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、検査対象物に対してX線を照射する複数のX線源と、前記複数のX線源のそれぞれに対応し、前記複数のX線源から前記検査対象物に照射され透過したX線を検出する複数のX線検出器とを備えたX線検査装置であって、前記複数のX線源のうち少なくとも1つが、前記検査対象物の厚み方向から、前記検査対象物の幅方向の一端部にX線を照射できるように配設され、前記複数のX線源のうち他の少なくとも1つが、前記検査対象物の厚み方向から、前記検査対象物の幅方向の一端部と対向する他端部にX線を照射できるように配設されているものである。
【0007】
上記(1)の構成によれば、検査対象物の端部付近に小さな異物が混入している場合においても、該異物を従来に比べて高精度で検出可能なX線検査装置を提供できる。
【0008】
(2) 上記(1)のX線検査装置においては、前記複数のX線源のそれぞれを、前記検査対象物の幅に応じて自動的に移動させる移動部を備えていることが好ましい。
【0009】
上記(2)の構成によれば、例えば、複数のX線源のそれぞれを検査対象物の端部付近を検査できる位置にまで移動させることができる。その結果として、検査対象物の端部付近を従来に比べて高精度で検査できるX線検査装置を提供できる。
【0010】
(3) 上記(1)又は(2)のX線検査装置においては、前記複数のX線源と前記複数のX線検出器との間を通過するように前記検査対象物を搬送する搬送部と、前記搬送部上に設けられ、前記検査対象物を所定のX線照射位置に案内する案内部材とを備えていることが好ましい。
【0011】
上記(3)の構成によれば、例えば、検査対象物の端部付近を検査できるように、X線源からのX線照射位置に案内することができる。その結果として、検査対象物の端部付近を従来に比べて高精度で容易に検査できるX線検査装置を提供できる。
【0012】
(4) 上記(1)〜(3)のX線検査装置においては、前記複数のX線検出器において検出したX線の情報を基に得た各検査画像のうちいずれを検査結果として選択するかを、各検査画像を得た際の前記複数のX線源の位置と前記検査対象物それぞれの位置との関係から判定する判定部を備えていることが好ましい。
【0013】
上記(4)の構成によれば、前記複数のX線源の位置と前記検査対象物それぞれの位置との関係から、検査結果としてどの情報(検査画像)を用いるかを判定できるので、従来よりも検査精度の高いX線検査装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係るX線検査装置の要部を示した概略構成図である。
【図2】図1に示したX線検査装置におけるX線源とX線検出器との位置関係を示す正面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るX線検査装置におけるX線源とX線検出器との位置関係を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、図1及び図2を参照して、本発明の第1実施形態に係るX線検査装置を説明する。
【0016】
図1に示したように、本実施形態に係るX線検査装置は、図1及び図2に示すように、搬送コンベア10によってY軸方向へ搬送されている検査対象物1に対してX線を照射するX線源11、12と、X線源11、12のそれぞれに対応し、X線源11、12から検査対象物1に照射され透過したX線(図1及び図2における点線又は一点鎖線)を検出するX線検出器13、14とを備えている。また、本実施形態に係るX線検査装置は、検査対象物の形状又は大きさに合わせて、X線源11、12を、適宜、自動的に移動する移動機構(図示せず)と、X線検出器13、14において検出したX線の情報を基に得た各検査画像のうちいずれを検査結果として選択するかを判定する判定部15(図2参照)とを備えている。なお、検査対象物1の厚み方向は図1におけるZ軸方向であり、検査対象物1の幅方向は図1におけるX軸方向である。また、検査対象物1の例としては、ブロックバターなどの固形物が挙げられる。
【0017】
X線源11は、図1のZ軸方向であって検査対象物1の上方から、検査対象物1の幅方向の一端部を中心として扇状にX線を照射できるように配設されている。X線源12は、図1のZ軸方向であって検査対象物1の上方から、検査対象物1の幅方向の他端部を中心として扇状にX線を照射できるように配設されている。また、X線源11とX線源12とは、X軸、Y軸方向に所定距離ずらして配設されているとともに、図2に示すように、搬送コンベア10の上面に対してZ軸方向に略同距離となるように配設されている。
【0018】
なお、X線源11、12の周囲には、外部にX線が漏れないようにするために、X線源11、12を覆うカバー(図示せず)が設けられ、搬送コンベア10のY軸方向前後には、検査対象物1が出入りするための開口部(図示せず)がそれぞれ設けられている。
【0019】
X線検出器13、14は、図2に示すように、搬送コンベア10の下部において、X軸、Y軸方向に所定距離ずらして並設されているとともに、X線検出器13−X線源11間とX線検出器14−X線源12間とが、Z軸方向に略同距離となるように配設されている。
【0020】
上記移動機構としては、例えば、検査対象物の幅に応じて、X線源11を検査対象物の一端部にX線を照射できるように、且つ、X線源12を検査対象物の他端部にX線を照射できるように、X、Y、Z軸方向にスライド移動させるスライド機構、又は、部品の自動組み立てなどに使用されている産業用ロボットアームのような移動機構などが挙げられる。
【0021】
判定部15は、X線検出器13、14において検出したX線の情報を基に得た各検査画像のうちいずれを検査結果として選択するかを、各検査画像を得た際のX線源11、12の位置と検査対象物1それぞれの位置との関係から判定するものである。なお、各検査画像を得た際のX線源11、12の位置は、上記移動機構から送信される情報を基に検出し、検査対象物1の位置は、判定部15に接続されている位置センサ(図示せず)又はCCDカメラ(図示せず)による撮像によって得られた情報を基に検出する。以下に、判定部15における判定の具体例を示す。
【0022】
まず、検査対象物1がX線源11、12両方のX線照射を受けている場合に、X線検出器13、14において検出したX線の情報を基に各検査画像を画像処理部(図示せず)で得る。次に、各検査画像を得た際のX線源11、12の位置と検査対象物1それぞれの位置との関係について予め設定していたプログラムにしたがって、各検査画像のうちいずれを検査結果として選択するか判定する。そして、予め登録しておいた問題のない検査対象物を検査して得た各位置における画像と、検査結果として選択した各位置における検査画像とを比較して、最終的な異物検査の結果を得る。この最終的な異物検査の結果は、ディスプレイなどの表示部(図示せず)に出力され、表示される。
【0023】
ここで、上述した「予め設定していたプログラム」としては、例えば、X線照射範囲が検査対象物1幅方向全体までは照射していないもの(例:図1及び図2)であって、検査対象物1が、X線源11からのX線照射しか受けていない位置にある場合(X線源12までまだ搬送されていない場合)には、X線検出器13で検出したX線の情報から得た検査画像を検査結果とし、X線源12からのX線照射しか受けていない位置にある場合(X線源11をすでに通り越して搬送されている場合)には、X線検出器14で検出したX線の情報から得た検査画像を検査結果とし、検査対象物1が、X線源11、12両方からX線照射を受けている位置にある場合(図1又及び図2参照)には、各検査画像を結果として用いるとするようなものが挙げられる。他に、図示しないが、X線照射範囲が図1又は図2に示したものより広く、X線源11、12のそれぞれが、検査対象物1幅方向全体以上にX線を広角照射するものである場合、X線照射の扇状部分の両端においては中央に比べて検査精度が劣ることから、X線源11、12に対して検査対象物1がX軸方向に許容範囲以上の位置ずれがあった場合には、ずれている方向のX線検出器で検出したX線の情報から得た検査画像を検査結果として用いることとするようなものも挙げられる。なお、当然ではあるが、判定部15における上記プログラムは適宜、設計変更して用いることができる。
【0024】
なお、判定部15には、上記プログラムを格納したROM(図示せず)が設けられており、判定部15に接続されているCPU(図示せず)によってROM内のプログラムが実行されるようになっている。また、画像処理部、表示部などの各構成部位も上記CPUによって各機能を発揮できるように、上述したようにX線検出器から得られた情報を画像処理する画像処理プログラム、表示部に結果を表示させる表示プログラムなどの各種プログラムが実行されるようになっている。
【0025】
本実施形態によれば、検査対象物の端部付近に小さな異物が混入している場合においても、該異物を従来に比べて高精度で検出可能なX線検査装置を提供できる。
【0026】
また、X線源11、12のそれぞれを検査対象物1の端部付近を検査できる位置にまで移動させることができる。その結果として、検査対象物1の端部付近を従来に比べて高精度で検査できるX線検査装置を提供できる。
【0027】
また、X線源11、12の位置と前記検査対象物それぞれの位置との関係から、検査結果としてどの情報(検査画像)を用いるかを判定できるので、従来よりも検査精度の高いX線検査装置を提供できる。
【0028】
<第2実施形態>
以下、図3を参照して、本発明の第2実施形態に係るX線検査装置を説明する。なお、符号20〜25の部位は、第1実施形態の符号10〜15の部位と同様であるので、説明を省略することがある。また、その他の部位も特に説明がない限り、第1実施形態と同様である。
【0029】
本実施形態のX線検査装置は、X線源21、22からの検査に必要のないX線(図3における点線又は一点鎖線)の一部を遮断する遮断板41、42が設けられている点と、図3に示したような筒状(円筒状又は角筒状など)の容器30中の検査対象物31(例:粉ミルクなどの粉粒体)を検査している点とが、第1実施形態と異なっている。
【0030】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、検査対象物31上部から検査対象物31端部付近に向けて且つ筒状の容器30側壁に沿ってX線を照射しているので、検査対象物31の端部付近(筒状の容器30側壁付近)の異物検査の精度を従来よりも向上させたX線検査装置を提供できる。特に、(1)容器30が磁化しやすい金属製のもの、(2)検査対象物31が粉粒体、(3)検査対象物31中に磁化しやすい異物が混入しているという条件下において、容器30及び該異物が何らかの理由で磁化され、容器30に運搬などによって振動が与えられたことによって、X線検査装置による検査時に、該異物が検査対象物31の端部付近(容器30の側壁付近)に近接していることがあるが、このようなときでも、本実施形態のX線検査装置によれば、検査対象物31の端部付近(筒状の容器30側壁付近)の異物検査を従来よりも高精度で検出することができる。
【0031】
<変形例>
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施形態などに限定されるものではない。例えば、上記第1及び第2実施形態においては、検査対象物の形状又は大きさに合わせて、各X線源を、適宜、自動的に移動する移動機構を用いたが、この代わりに、以下のようなものとしてもよい。すなわち、上記各実施形態において、各X線源を搬送コンベアの上方において固定し、搬送コンベア上に案内部材を設けて、検査対象物を搬送中に所定方向に向けるとともに、上記第1及び第2実施形態と同様、検査対象物の端部付近を検査できるように、各X線源からのX線照射位置に案内するように構成してもよい。なお、案内部材の具体例としては、一対の対向する板状部材又は一対の対向する棒状部材であって、搬送方向に徐々に一定幅まで狭くなっていくように配設されているものが挙げられる。これにより、検査対象物の端部付近を検査できるように、各X線源からのX線照射位置に案内することができるので、検査対象物の端部付近を従来に比べて高精度で容易に検査できるX線検査装置を提供できる。
【0032】
また、第1実施形態において、第2実施形態における検査対象物31が入った筒状の容器30を検査することも可能であるし、第2実施形態において、第1実施形態における検査対象物1を検査することも可能である。
【0033】
また、上記第1及び第2実施形態において、さらに1以上のX線源を設けて、検査対象物の端部以外も十分に検査できるように構成してもよい。
【0034】
また、検査対象物が円筒状の容器に入っているものである場合、X線源とX線検出器との間に搬送されてきた検査対象物が入った前記円筒状の容器を、前記円筒状の容器の中心軸を中心として一周回転させて、検査対象物の全周囲の端部付近(該容器の側壁付近)を検査するように構成していてもよい。
【0035】
また、検査対象物が角筒状の容器に入っているものである場合、X線源とX線検出器との間に搬送されてきた検査対象物が入った前記角筒状の容器を、前記角筒状の容器の中心軸を中心として所定角度回転させて、検査対象物の全周囲の端部付近(該容器の各辺ごとの側壁付近)を検査するように構成していてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1、31 検査対象物
10、20 搬送コンベア
11、12、21、22 X線源
13、14、23、24 X線検出器
15 判定部
30 容器
41、42 遮断板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物に対してX線を照射する複数のX線源と、前記複数のX線源のそれぞれに対応し、前記複数のX線源から前記検査対象物に照射され透過したX線を検出する複数のX線検出器とを備えたX線検査装置であって、
前記複数のX線源のうち少なくとも1つが、前記検査対象物の厚み方向から、前記検査対象物の幅方向の一端部にX線を照射できるように配設され、
前記複数のX線源のうち他の少なくとも1つが、前記検査対象物の厚み方向から、前記検査対象物の幅方向の一端部と対向する他端部にX線を照射できるように配設されていることを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記複数のX線源のそれぞれを、前記検査対象物の幅に応じて自動的に移動させる移動部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記複数のX線源と前記複数のX線検出器との間を通過するように前記検査対象物を搬送する搬送部と、
前記搬送部上に設けられ、前記検査対象物を所定のX線照射位置に案内する案内部材とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記複数のX線検出器において検出したX線の情報を基に得た各検査画像のうちいずれを検査結果として選択するかを、各検査画像を得た際の前記複数のX線源の位置と前記検査対象物それぞれの位置との関係から判定する判定部を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のX線検査装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−230559(P2010−230559A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79744(P2009−79744)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】