説明

X線検査装置

【課題】 被検査物品の内容物の過不足の有無の判定精度を向上することができるX線検査装置を提供する。
【解決手段】 順々に搬送されてくる被検査物品WにX線を照射するX線照射器22と、被検査物品Wを透過したX線の透過量を検出するX線検出器23と、制御装置24とを備え、制御装置24は、X線検出器23で検出されるX線の透過量に基づいて被検査物品Wの内容物の体積値を算出する体積値算出手段と、体積値算出手段により算出される体積値が許容体積範囲内にあるか否かに基づいて被検査物品Wがその内容物に過不足のない良品であるか否かを判定する過不足判定手段と、過不足判定手段の判定結果が良品であるものの中から直近に搬送されてきた所定個数の被検査物品の各々に対して体積値算出手段により算出された内容物の体積値に基づいて、許容体積範囲を変更する許容範囲変更手段として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物品の異物の検出等を行うX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加工食品等の生産ラインにおいて、食品等の被検査物品に対し異物が混入していないかを検査するために、X線検査装置が用いられている。このX線検査装置は、例えば、連続して搬送されてくる被検査物品にX線を照射し、該X線の透過状態をX線ラインセンサで検出して、2次元の濃淡画像を作成し、画像処理手段によって、被検査物品内の異物を検出するものである。
【0003】
このようなX線検査装置では、異物の検出以外に欠品の有無の検査等の機能を有するものがある(例えば、特許文献1,2参照)。このような欠品の有無を判定する機能を有したX線検査装置では、X線検出器で検出されるX線の透過量に基づくデータが例えば所定範囲内にあるか否かに基づいて欠品の有無が判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−183200号公報
【特許文献2】特開2005−106640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
同一の被検査物品であっても、湿度等の影響により被検査物品内に含まれる水分の変動によりX線透過量は変動する。また、キャンデー等を内容物としてパッケージした商品の場合、良品であっても、製造時の温度変化により内容物の密度が変動するとX線透過量は変動する。しかし、上記従来のX線検査装置では、被検査物品内に含まれる水分の変動や被検査物品の内容物の密度の変動などによるX線透過量の変動を考慮していない。このように同一物品に対するX線透過量が変動しているのに、欠品の有無等を判定するための所定範囲を予め設定された範囲に固定したままであると、欠品の有無等の判定に誤りが生じる虞がある。
【0006】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、欠品等、被検査物品の内容物の過不足の有無の判定精度を向上することができるX線検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のX線検査装置は、順々に搬送されてくる被検査物品にX線を照射するX線照射器と、前記被検査物品を透過したX線の透過量を検出するX線検出器と、前記X線検出器で検出されるX線の透過量に基づいて前記被検査物品の内容物の体積値を算出する体積値算出手段と、前記体積値算出手段により算出される前記体積値が許容体積範囲内にあるか否かに基づいて前記被検査物品がその内容物に過不足のない良品であるか否かを判定する過不足判定手段と、前記過不足判定手段の判定結果が良品であるものの中から直近に搬送されてきた所定個数の被検査物品の各々に対して前記体積値算出手段により算出された内容物の体積値に基づいて、前記許容体積範囲を変更する許容範囲変更手段とを備えている。
【0008】
この構成によれば、内容物の過不足の有無の判定基準となる許容体積範囲を、直近に良品と判定された所定個数の被検査物品の内容物の体積値に基づいて変更し、これら所定個数の体積値はX線透過量に基づいて算出されているため、被検査物品内に含まれる水分の変動や被検査物品の内容物の密度の変動などによるX線透過量の変動を反映して、内容物の過不足の有無の判定基準となる許容体積範囲を変更することができる。したがって、被検査物品の内容物の過不足の有無の判定精度を向上することができる。
【0009】
また、前記許容体積範囲は、その上限値が基準値より所定値だけ大きな値として定められ、下限値が前記基準値より所定値だけ小さな値として定められる範囲であり、前記許容範囲変更手段は、前記所定個数の被検査物品の内容物の体積値の平均値を算出し、この算出した平均値に前記基準値を変更することにより前記許容体積範囲を変更するように構成されていてもよい。
【0010】
また、前記許容体積範囲は、上限値と下限値とによって定められる範囲であり、前記許容範囲変更手段は、前記所定個数の被検査物品の内容物の体積値の最大値を求め、この最大値に基づいて前記上限値を変更し、前記所定個数の被検査物品の内容物の体積値の最小値を求め、この最小値に基づいて前記下限値を変更することにより前記許容体積範囲を変更するように構成されていてもよい。
【0011】
また、前記許容範囲変更手段は、前記所定個数の被検査物品の各々に対して前記体積値算出手段により算出された体積値に基づいて前記許容体積範囲を変更する第1の動作モードと、前記X線検査装置の上流側に配設され、順々に搬送されてくる被検査物品の重量を測定し、この測定した重量が所定重量範囲内にあるか否かに基づいて良品であるか否かを判定する重量検査装置によって良品と判定された被検査物品の内容物の重量値を前記重量検査装置から取得し、前記重量検査装置において良品であると判定されかつ前記過不足判定手段の判定結果が良品であるものの中から直近に搬送されてきた所定個数の被検査物品の内容物の重量値に基づいて、前記許容体積範囲を変更する第2の動作モードとを有するように構成されていてもよい。
【0012】
この構成によれば、許容範囲変更手段は、第1の動作モードと第2の動作モードとのいずれかを選択して動作することができ、いずれの動作モードにおいても、被検査物品の内容物の過不足の有無の判定精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上に説明した構成を有し、被検査物品の内容物の過不足の有無の判定精度を向上することができるX線検査装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態のX線検査装置が用いられている生産ラインの一例を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施形態のX線検査装置の概略の構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態のX線検査装置における欠品等の内容物の過不足の検査を行う場合の動作を示すフローチャートである。
【図4】X線透過量と被検査物品の内容物の厚さとの関係を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態において操作表示器に表示される許容体積範囲設定画面の一例を示す図である。
【図6】重量値を体積値へ換算するための換算テーブルの一例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態において操作表示器に表示される許容体積範囲設定画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態のX線検査装置が用いられている生産ラインの一例を示す概略図である。
【0017】
この生産ラインでは、被検査物品Wは、重量検査装置1、X線検査装置2、振分装置3の順に搬送される。すなわち、X線検査装置2の上流側に重量検査装置1が配設され、下流側には良品と不良品とを振り分ける振分装置3が配設されている。なお、重量検査装置1とX線検査装置2との間、及びX線検査装置2と振分装置3との間には図示しないコンベアが設けられてあってもよい。
【0018】
被検査物品Wは、1または複数の内容物を有する物品であり、例えば所定個数のチョコレート(内容物)をパッケージした物品である。
【0019】
重量検査装置1は、ロードセル等からなる重量センサ12により支持され、被検査物品Wを矢印sの方向へ搬送するコンベア11を備えている。重量センサ12の計量信号はA/D変換器13でデジタル信号に変換されて制御装置14に入力される。また、コンベア11の上流側に被検査物品Wを検出するための光電センサ16が配設され、光電センサ16の検出信号は制御装置14に入力される。
【0020】
制御装置14は、例えばマイクロコンピュータ等によって構成され、コンベア11等の重量検査装置全体の制御を行う。また、制御装置14は、光電センサ16の検出信号に基づいて、被検査物品Wがコンベア11上の所定位置に移送されてきたときに重量センサ12によって計量される被検査物品Wの重量値を取得し、この重量センサ12によって計量された被検査物品Wの重量値が、予め設定された所定重量範囲内であると「良品」と判定し、所定重量範囲外であると「不良品」と判定する。そして、この判定信号N1を振分装置3の制御装置33へ送信する。
【0021】
操作表示器15は、例えばタッチパネルディスプレイ等を用いて構成され、重量検査装置の操作およびその運転条件情報の設定等を行うための入力手段と、この入力手段や物品の重量値、集計データ等をスクリーン(ディスプレイ画面)に表示する表示手段とを備えている。
【0022】
また、制御装置14は、操作表示器15からの信号を入力するとともに、操作表示器15へ表示するデータ等の信号を出力する。また、操作表示器15を用いて、コンベア運転速度等の重量検査装置の運転条件情報が設定され、設定された運転条件情報は制御装置14内の記憶部に記憶されている。
【0023】
図2は、X線検査装置2の概略の構成を示す図である。なお、図1では、コンベア21を簡易的に2本のローラとベルトによって示しているが、本実施形態におけるコンベア21は、図2のように3本のローラとベルトを有している。
【0024】
このX線検査装置2は、異物検査及び内容物の過不足検査を含む複数の検査項目の各々について、被検査物品Wが良品であるか否かの判定を行うX線検査装置である。
【0025】
X線検査装置2は、X線を遮蔽する筐体26内に、矢印sで示す水平方向に被検査物品Wを搬送するコンベア21と、X線を照射するX線照射器22と、X線を検出する例えばX線ラインセンサからなるX線検出器23と、制御装置24とを備えている。さらに、筐体26の前面側に、画面に透過X線画像等を表示するとともにX線検査装置2を操作するための操作表示器25を備えている。コンベア21とX線照射器22とX線検出器23と操作表示器25とは、制御装置24によって制御される。また、コンベア21の上流側に被検査物品Wを検出するための光電センサ29が配設され、光電センサ29の検出信号は制御装置24に入力される。光電センサ29は、被検査物品WがX線の照射範囲を通過するタイミングを制御装置24が検知するために設けられ、コンベア21を挟んで水平に配置された一対の投光器及び受光器から構成されている。
【0026】
筐体26には、被検査物品Wの入口及び出口となる例えば矩形の開口が形成されている。コンベア21は、被検査物品Wを筐体26の入口から出口まで水平方向に搬送し、その搬入端部と搬出端部とが筐体26から突出するように配設されている。入口側ののれん27及び出口側ののれん28は、入口および出口の方向へX線が漏洩することを防止するために設けられている。
【0027】
X線照射器22は、筐体26内の上部に配置され、下方に向けてスリットを介してX線を照射する。スリットを介したX線は、扇状に照射され、コンベア21上では、所定の幅及び長さを有するライン状に照射される。
【0028】
X線検出器23は、コンベア21のベルトの間で、かつ、搬送面の直下に配設され、被検査物品W及びコンベア21の搬送面となるベルトを透過したX線を検出する。X線検出器23は、多数のX線検出素子がコンベア21による被検査物品の搬送方向と直交する方向に一直線上に一定ピッチで水平配置されている。各X線検出素子においてX線の透過量が検出される。X線検出素子は周知のようにシンチレータ及びフォトダイオードによって構成されている。X線検出器23に設けられている全てのX線検出素子を1ラインとして、この1ラインを構成する各X線検出素子において検出されたX線透過量はX線検出器23からX線透過量信号として順次出力される。そして被検査物品Wの搬送に伴って前述の1ラインからの順次出力が繰り返される。この1ラインの出力の繰り返し速度(単位時間当たりの繰り返し回数)を、以下では、スキャン速度という。
【0029】
このX線検出器23から順次出力されるX線透過量信号は図示しないA/D変換部を介してデジタル信号に変換されて制御装置24へ入力される。
【0030】
制御装置24は、例えばマイクロコンピュータ等によって構成され、CPUと、RAM及びCPUの実行プログラム等が記憶された不揮発性メモリ等を有する記憶部とを有し、X線検査装置の全体の動作制御を行う。また、動作中において記憶すべき情報は全て上記の記憶部に記憶される。制御装置24では、順次入力されるX線透過量信号から2次元のX線画像を作成し、所定の検査項目について、良品であるか不良品であるかの判定を行い、その総合判定結果(図3のステップS6の結果)を示す判定信号N2を振分装置3の制御装置33へ送信する。制御装置24は、体積値算出手段、過不足判定手段及び許容範囲変更手段等としても機能する。
【0031】
操作表示器25は、例えばタッチパネルディスプレイ等を用いて構成され、X線検査装置の操作およびその運転条件情報の設定等を行うための入力手段と、X線画像や判定結果等をスクリーン(ディスプレイ画面)に表示する表示手段とを備えている。
【0032】
また、制御装置24は、操作表示器25からの信号を入力するとともに、操作表示器25へ表示するデータ等の信号を出力する。また、操作表示器25を用いて、コンベア運転速度等のX線検査装置の運転条件情報が設定され、設定された運転条件情報は制御装置24内の記憶部に記憶されている。
【0033】
図1に示される振分装置3は、例えば、コンベア31と、コンベア31上の物品を振り分けるためにコンベア31の側方に配設された振分アーム32と、コンベア31と振分アーム32とを制御する制御装置33とを備えている。
【0034】
また、制御装置33は、例えば、重量検査装置1の制御装置14からの判定信号N1とX線検査装置2の制御装置24からの判定信号N2とに基づいて、それぞれで不良品と判定された被検査物品Wについては振分アーム32を水平に回動させてコンベア31上から排除し、重量検査装置1及びX線検査装置2のいずれでも良品と判定された被検査物品Wのみが、コンベア31を通過して下流側の図示しない装置、例えば箱詰め装置へ搬送される。
【0035】
つぎに、本実施形態のX線検査装置2における欠品等の内容物の過不足の検査を行う場合の動作について説明する。この動作を示すフローチャートを図3に示す。この動作は制御装置24によって実現される。
【0036】
まず、大略を説明すると、制御装置24は、X線検出器23から得られるX線の透過量に基づいて2次元のX線画像を生成する。次に、X線画像の領域を2値化処理により背景領域と背景以外の領域(すなわち内容物の領域)とに切り分ける。次に、内容物の領域の各画素についてX線透過量に基づいて内容物の厚さを求め、さらに各画素について求めた厚さに基づいて内容物の体積値を算出する。次に内容物の体積値に基づいて被検査物品Wが良品であるか不良品(欠品及び過量品)であるかを判定する。
【0037】
まず、ステップS1では、X線検出器23で検出される1ライン分のX線透過量信号を所定時間間隔で取得し、それらのX線透過量信号に基づいて被検査物品Wとその背景部分とを含む2次元のX線画像を作成する。このとき、被検査物品Wが扇状のX線の照射範囲を通過するタイミングは、光電センサ29からの信号により判断される。すなわち、ステップS1では、X線検出器23から所定時間間隔で1ライン分のX線透過量に関するデータを取得し、それらの各時刻のデータを時間経過順につなぎ合わせることにより、被検査物品Wとその背景部分とを含む2次元のX線画像(X線画像データ)を作成する。
【0038】
次に、ステップS2では、ステップS1で生成したX線画像の領域を2値化処理により背景領域と背景以外の領域である内容物の領域とに切り分ける。2値化処理では、X線画像を構成する各画素についてその画素に対応するX線の透過量の値と所定の閾値とが比較され、それらの値の大小関係により背景領域と内容物の領域とを抽出する。この2値化処理で用いられる閾値は、事前に試験等を行うことにより、検体である被検査物品Wに合わせて予め適切に定められている。
【0039】
そして次のステップS3、S4により、被検査物品Wの内容物の体積値を算出する。まず、ステップS3では、X線画像上の内容物の領域に対応する各画素Pi(i=1,2,・・・,n、nは、X線画像上の内容物を構成する画素数)について、各画素Piに対応するX線透過量(すなわち各X線検出素子で検出されたX線透過量)に基づいて、各画素Piに対応する内容物の厚さDiを算出する。この厚さDiは、X線透過量と被検査物品Wの内容物の厚さとの関係を示すテーブルあるいは数式に基づいて算出される。このテーブルあるいは数式は、図4に示されるような関係を満足するものであり、予め試験等を行うことにより作成されて記憶されている。図4は、X線透過量と被検査物品Wの内容物の厚さとの関係を示す図であり、Xoは、コンベア21上に被検査物品Wが無い場合のX線透過量である。
【0040】
続いて、ステップS4では、X線画像上の内容物の領域に対応する全ての画素P1,P2,・・・,Pnについて算出された厚さD1,D2,・・・,Dnを合算(合計)し、その合算値に1画素の面積を乗算することにより、内容物の体積値を算出する。1画素の面積は、例えば、コンベア21の搬送速度を前述のスキャン速度で除算した値に、X線検出素子の配置ピッチを乗算した値aとする。なお、X線は扇状に照射されるので、X線検出器23とコンベア21の搬送面との距離が長い場合には、上記の値aに予め設定した1未満の比率を乗算した値を1画素の面積としてもよい。
【0041】
次に、ステップS5では、ステップS4で算出した内容物の体積値に基づいて、被検査物品Wが良品であるか不良品であるかを判定する。具体的には、内容物の体積値が許容体積範囲内であれば内容物に過不足のない良品であると判定し、許容体積範囲外であれば内容物に過不足がある不良品であると判定する。ここで、内容物の体積値が許容体積範囲外の場合に、許容体積範囲の下限値より小さければ、内容物の欠落等による欠品であると判定し、許容体積範囲の上限値より大きければ、内容物の個数が所定個数より多い等による過量品であると判定するようにしてもよい。
【0042】
次に、ステップS6では、ステップS5での判定結果及び異物検査等の他の検査項目における判定結果に基づいて、被検査物品Wが良品であるか否かを総合判定する。全ての検査項目において良品(すなわち総合判定が良品)と判定された場合のみ、ステップS7へ進み、許容体積範囲を更新する。
【0043】
上記のステップS1〜S7の処理は、被検査物品Wが搬送されてくるたびに行われる。なお、図示していないが、制御装置24は、異物検査を行う場合、ステップS1で作成したX線画像に基づいて被検査物品Wに異物が含まれるか否かの判定を行い、異物が含まれない場合はその被検査物品Wを良品と判定し、含まれる場合には不良品と判定する。この異物検査は公知の方法によって行われる。
【0044】
本実施形態では、ステップS5での良否判定で用いる許容体積範囲が最初に設定されてからステップS7によって更新(変更)される。以下、これについて説明する。
【0045】
図5は、操作表示器25に表示される許容体積範囲設定画面41の一例を示す図である。この許容体積範囲設定画面41は、図示しない所定の表示画面から呼び出され、復帰キー49をタッチすると呼び出した表示画面に戻る。許容体積範囲設定画面41では、基準値設定キー42、上限決定値設定キー43、下限決定値設定キー44及び過修正限度値設定キー46が表示され、これらのタッチキーをタッチすると図示しないテンキーが表示され、テンキーをタッチ操作することによりそれぞれの値を設定することができる。この設定された値がそれぞれのタッチキーに表示される。
【0046】
ここで、許容体積範囲は、(基準値+上限決定値)を上限値とし、(基準値−下限決定値)を下限値とする範囲である。また、基準値が後述のように修正(変更)された場合には、許容体積範囲は、(修正基準値+上限決定値)を上限値とし、(修正基準値−下限決定値)を下限値とする範囲に変更される。
【0047】
また、自己基準値修正キー47及び重量信号による基準値修正キー48は、それぞれタッチされるたびに、その表示が「ON」と「OFF」に切替えられる。ただし、自己基準値修正キー47及び重量信号による基準値修正キー48が同時に「ON」になることはなく、一方が「ON」で、他方が「OFF」のときに、他方をタッチして「ON」にすると一方が「OFF」に切り替わる。
【0048】
自己基準値修正キー47及び重量信号による基準値修正キー48のいずれか一方が「ON」の状態のときは、X線検査装置2の運転中に基準値が自動的に修正される。そして修正された現在の基準値が修正基準値としてその表示エリア45に表示されている。過修正限度値は運転中に基準値が自動的に修正される範囲の限界を示す値である。図5のように、設定された基準値が22340で、過修正限度値が100の場合には、22340プラスマイナス100の範囲内(22240〜22440の範囲内)で、自動的に修正されることが可能である。
【0049】
なお、許容体積範囲設定画面41で表示されている数値(基準値、上限決定値、下限決定値、修正基準値及び過修正限度値)の単位は、〔mm〕である。
【0050】
つぎに、ステップS7の許容体積範囲の更新方法について、まず、自己基準値修正キー47を「ON」にして運転した場合(許容範囲変更手段が第1の動作モードの場合)について説明する。この場合、制御装置24は、重量検査装置1の制御装置14から重量値D1(図1)を取得する必要はない。
【0051】
制御装置24は、ステップS4で算出した被検査物品Wの内容物の体積値を、ステップS6で全ての検査項目の判定結果が良品のものについて記憶している。そして、直近に記憶された所定のm個(mは複数)、例えば10個の体積値の平均値を算出し、その平均値を修正基準値とする。このように基準値が修正(変更)されることにより、許容体積範囲も前述のように変更される。なお、運転開始時において、該当する体積値が上記m個に満たない場合には、許容体積範囲の更新は行わなくてよい。
【0052】
次に、重量信号による基準値修正キー48を「ON」にして運転した場合(許容範囲変更手段が第2の動作モードの場合)の許容体積範囲の更新方法について説明する。重量信号による基準値修正キー48が「ON」の状態の間、制御装置24は重量検査装置1の制御装置14へ重量値要求信号を送信し続ける。重量検査装置1の制御装置14は、重量値要求信号を受信している間、良品と判定した被検査物品Wについて、その被検査物品Wの全重量からパッケージ(内容物以外の包装袋あるいは包装箱などの包装容器)の重量を減算して内容物の重量値を算出し、その重量値D1を制御装置24へ送信する。制御装置24では、送信されてきた重量値D1を記憶している。
【0053】
そして、制御装置24は、ステップS6での全ての検査項目の判定結果が良品である被検査物品Wであって、かつX線検査装置2に直近に搬送されてきた被検査物品Wについて記憶されている所定のm個の重量値の平均重量値を算出し、この平均重量値を体積値に換算し、換算した体積値を修正基準値とする。このように基準値が修正されることにより、許容体積範囲も変更される。ここで、平均重量値を体積値に換算するために、制御装置24は、例えば、図6に示すような重量値を体積値へ換算するための換算テーブルT1を記憶しており、この換算テーブルT1に基づいて平均重量値を体積値に換算する。なお、平均重量値が換算テーブルT1に記憶されていない重量値である場合には、補間(例えば線形補間)して体積値を算出する。なお、運転開始時において、該当する重量値が上記m個に満たない場合には、許容体積範囲の更新は行わなくてよい。
【0054】
このように、重量検査装置1がX線検査装置2の上流側に配置されている場合には、重量検査装置1で求められた被検査物品Wの重量値から修正基準値を算出し、許容体積範囲を更新するようにしてもよい。
【0055】
ここで、制御装置24は、重量検査装置1から取得した被検査物品Wの内容物の重量値D1を記憶するようにしたが、予め体積値に換算して記憶しておき、ステップS6での全ての検査項目の判定結果が良品である被検査物品Wであって、かつX線検査装置2に直近に搬送されてきた被検査物品Wについて記憶されているm個の体積値の平均値を算出し、その平均値を修正基準値とするようにしてもよい。
【0056】
本実施形態では、自己基準値修正キー47を「ON」にして運転した場合、内容物の過不足の検査において判定基準となる許容体積範囲を、直近に良品と判定された所定のm個の被検査物品の内容物の体積値に基づいて変更し、これらm個の体積値はX線透過量に基づいて算出されているため、被検査物品内に含まれる水分の変動や被検査物品の内容物の密度の変動などによるX線透過量の変動を反映して、内容物の過不足の有無の判定基準となる許容体積範囲を変更することができる。したがって、被検査物品の内容物の過不足の有無の判定精度を向上することができる。
【0057】
被検査物品内に含まれる水分の増加(減少)及び被検査物品の内容物の密度の増加(減少)により、X線透過量が小さく(大きく)なると、X線透過量に基づいて算出される厚さが増加(減少)し(図4参照)、体積値も増加(減少)する。一方、上記水分の増加(減少)及び密度の増加(減少)により、重量値は増加(減少)する。すなわち、上記水分の増加(減少)及び密度の増加(減少)により、体積値の増加(減少)と同様、重量値が増加(減少)するので、重量信号による基準値修正キー48を「ON」にして運転した場合も、重量値に基づいて許容体積範囲が変更されることにより、被検査物品の内容物の過不足の有無の判定精度を向上することができる。
【0058】
(第2の実施形態)
第2の実施形態における構成は、第1の実施形態の図1、図2に示す構成と同様であり、その説明を省略する。この第2の実施形態では、許容体積範囲の設定及び変更方法が第1の実施形態とは異なる。
【0059】
図7は、第2の実施形態において、操作表示器25に表示される許容体積範囲設定画面51の一例を示す図である。この許容体積範囲設定画面51は、図示しない所定の表示画面から呼び出され、復帰キー60をタッチすると呼び出した表示画面に戻る。許容体積範囲設定画面51では、上限値設定キー52、下限値設定キー53、上限値過修正限度値設定キー55及び下限値過修正限度値設定キー57が表示され、これらのタッチキーをタッチすると図示しないテンキーが表示され、テンキーをタッチ操作することによりそれぞれの値を設定することができる。この設定された値がそれぞれのタッチキーに表示される。
【0060】
ここで、許容体積範囲は、下限値以上で上限値以下の範囲である。また、下限値及び上限値が後述のように修正(変更)された場合には、許容体積範囲は、修正下限値以上で修正上限値以下の範囲に変更される。
【0061】
また、自己上下限値修正キー58及び重量信号による上下限値修正キー59は、それぞれタッチされるたびに、その表示が「ON」と「OFF」に切替えられる。ただし、自己上下限値修正キー58及び重量信号による上下限値修正キー59が同時に「ON」になることはなく、一方が「ON」で、他方が「OFF」のときに、他方をタッチして「ON」にすると一方が「OFF」に切り替わる。
【0062】
自己上下限値修正キー58及び重量信号による上下限値修正キー59のいずれか一方が「ON」の状態のときは、X線検査装置2の運転中に上限値及び下限値が自動的に修正される。そして修正された現在の上限値が修正上限値としてその表示エリア54に表示され、修正された現在の下限値が修正下限値としてその表示エリア56に表示されている。上限値過修正限度値は運転中に上限値が自動的に修正される範囲の限界を示す値であり、下限値過修正限度値は運転中に下限値が自動的に修正される範囲の限界を示す値である。図7のように、設定された上限値が22600で、上限値過修正限度値が100の場合には、22600プラスマイナス100の範囲内(22500〜22700の範囲内)で、上限値が自動的に修正されることが可能である。同様に、設定された下限値が22250で、下限値過修正限度値が100の場合には、22250プラスマイナス100の範囲内(22150〜22350の範囲内)で、下限値が自動的に修正されることが可能である。
【0063】
なお、許容体積範囲設定画面51で表示されている数値(上限値、下限値、修正上限値、修正下限値、上限値過修正限度値及び下限値過修正限度値)の単位は、〔mm〕である。
【0064】
つぎに、ステップS7(図3)の許容体積範囲の更新方法について、まず、自己上下限値修正キー58を「ON」にして運転した場合(許容範囲変更手段が第1の動作モードの場合)について説明する。この場合、制御装置24は、重量検査装置1の制御装置14から重量値D1(図1)を取得する必要はない。
【0065】
制御装置24は、ステップS4で算出した被検査物品Wの内容物の体積値を、ステップS6で全ての検査項目の判定結果が良品のものについて記憶している。そして、直近に記憶された所定のk個(kは複数)、例えば10個の体積値の中から最大値と最小値を選択し、(最大値+b)を修正上限値とし、(最小値−b)を修正下限値とする(bは、予め定められた所定値)。このように上限値及び下限値が修正されることにより、前述のように許容体積範囲が変更される。なお、運転開始時において、該当する体積値が上記k個に満たない場合には、許容体積範囲の更新は行わなくてよい。
【0066】
次に、重量信号による上下限値修正キー59を「ON」にして運転した場合(許容範囲変更手段が第2の動作モードの場合)の許容体積範囲の更新方法について説明する。重量信号による上下限値修正キー59が「ON」の状態の間、制御装置24は重量検査装置1の制御装置14へ重量値要求信号を送信し続ける。重量検査装置1の制御装置14は、重量値要求信号を受信している間、良品と判定した被検査物品Wについて、前述のように内容物の重量値を算出し、その重量値D1を制御装置24へ送信する。制御装置24では、送信されてきた重量値D1を記憶している。
【0067】
そして、制御装置24は、ステップS6での全ての検査項目の判定結果が良品である被検査物品Wであって、かつX線検査装置2に直近に搬送されてきた被検査物品Wについて記憶されている所定のk個の重量値の中から最大重量値と最小重量値を選択する。そして選択した最大重量値を体積値(この体積値をxとする)に換算し、(x+b)を修正上限値にするとともに、最小重量値を体積値(この体積値をyとする)に換算し、(y−b)を修正下限値にする(bは、予め定められた所定値)。このように上限値及び下限値が修正されることにより、前述のように許容体積範囲が変更される。最大重量値及び最小重量値を体積値に換算する方法は、第1の実施形態において平均重量値を体積値に換算する場合と同様であり、例えば図6に示す換算テーブルT1に基づいて行う。なお、運転開始時において、該当する重量値が上記k個に満たない場合には、許容体積範囲の更新は行わなくてよい。
【0068】
このように、重量検査装置1がX線検査装置2の上流側に配置されている場合には、重量検査装置1で求められた被検査物品Wの重量値から許容体積範囲を定める修正上限値及び修正下限値を算出し、許容体積範囲を更新するようにしてもよい。
【0069】
ここで、制御装置24は、重量検査装置1から取得した被検査物品Wの内容物の重量値D1を記憶するようにしたが、予め体積値に換算して記憶しておき、ステップS6での全ての検査項目の判定結果が良品である被検査物品Wであって、かつX線検査装置2に直近に搬送されてきた被検査物品Wについて記憶されているk個の体積値の中から最大値と最小値を選択し、修正上限値及び修正下限値とするようにしてもよい。
【0070】
本実施形態では、自己上下限値修正キー58を「ON」にして運転した場合、第1の実施形態において自己基準値修正キー47を「ON」にして運転した場合と同様、被検査物品内に含まれる水分の変動や被検査物品の内容物の密度の変動などによるX線透過量の変動を反映して、内容物の過不足の有無の判定基準となる許容体積範囲を変更することができるので、被検査物品の内容物の過不足の有無の判定精度を向上することができる。
【0071】
また、重量信号による上下限値修正キー59を「ON」にして運転した場合、第1の実施形態において重量信号による基準値修正キー48を「ON」にして運転した場合と同様、重量値に基づいて許容体積範囲が変更されることにより、被検査物品の内容物の過不足の有無の判定精度を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、欠品等の検査の判定精度を向上することができるX線検査装置等として有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 重量検査装置
2 X線検査装置
3 振分装置
21 コンベア
22 X線照射器
23 X線検出器
24 制御装置
25 操作表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
順々に搬送されてくる被検査物品にX線を照射するX線照射器と、
前記被検査物品を透過したX線の透過量を検出するX線検出器と、
前記X線検出器で検出されるX線の透過量に基づいて前記被検査物品の内容物の体積値を算出する体積値算出手段と、
前記体積値算出手段により算出される前記体積値が許容体積範囲内にあるか否かに基づいて前記被検査物品がその内容物に過不足のない良品であるか否かを判定する過不足判定手段と、
前記過不足判定手段の判定結果が良品であるものの中から直近に搬送されてきた所定個数の被検査物品の各々に対して前記体積値算出手段により算出された内容物の体積値に基づいて、前記許容体積範囲を変更する許容範囲変更手段と
を備えたX線検査装置。
【請求項2】
前記許容体積範囲は、その上限値が基準値より所定値だけ大きな値として定められ、下限値が前記基準値より所定値だけ小さな値として定められる範囲であり、
前記許容範囲変更手段は、前記所定個数の被検査物品の内容物の体積値の平均値を算出し、この算出した平均値に前記基準値を変更することにより前記許容体積範囲を変更するように構成された、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記許容体積範囲は、上限値と下限値とによって定められる範囲であり、
前記許容範囲変更手段は、前記所定個数の被検査物品の内容物の体積値の最大値を求め、この最大値に基づいて前記上限値を変更し、前記所定個数の被検査物品の内容物の体積値の最小値を求め、この最小値に基づいて前記下限値を変更することにより前記許容体積範囲を変更するように構成された、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記許容範囲変更手段は、
前記所定個数の被検査物品の各々に対して前記体積値算出手段により算出された体積値に基づいて前記許容体積範囲を変更する第1の動作モードと、
前記X線検査装置の上流側に配設され、順々に搬送されてくる被検査物品の重量を測定し、この測定した重量が所定重量範囲内にあるか否かに基づいて良品であるか否かを判定する重量検査装置によって良品と判定された被検査物品の内容物の重量値を前記重量検査装置から取得し、前記重量検査装置において良品であると判定されかつ前記過不足判定手段の判定結果が良品であるものの中から直近に搬送されてきた所定個数の被検査物品の内容物の重量値に基づいて、前記許容体積範囲を変更する第2の動作モードとを有するように構成された、請求項1〜3のいずれかに記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−232120(P2011−232120A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101645(P2010−101645)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000208444)大和製衡株式会社 (535)
【Fターム(参考)】