説明

X線検査装置

【課題】X線検査装置において、検査対象領域を広くしつつ、対象物を確実に保持できるようにする。
【解決手段】X線検査装置において、クランプ50は上方から基板10を支持する。クランプ50の上記端面は傾斜を有する。これにより、クランプ50に確実に基板10を支持させつつ、X線源2から放射されるX線(符号XRで示されている)の基板10による透過光がクランプ50によって遮蔽されることを極力回避できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置に関し、特に、X線断層画像を生成することにより検査対象物に関する検査を行なうX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板などの工業製品をX線を用いて検査をする検査装置が知られている。
たとえば、特許文献1(特開2010−160070号公報)には、焦点固定型のX線源と、検出器と、対象物移動機構とを備えたX線検査装置が開示されている。当該X線検査装置では、X線源に対して、対象物と検出器の位置が変更される。これにより、検出器は、対象物を複数の照射角度で透過したX線を受光する。そして、検出器が受光した、複数の照射角度での画像を再構成することにより、対象物のX線CT(Computed Tomography)画像が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−160070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような検査装置では、上記のように検査の際に対象物の位置を変更する必要があり、このため、検査対象物をより確実に保持する必要がある。したがって、対象物を保持するための領域をより大きく確保する必要が生じる。
【0005】
その一方で、このような検査装置において、検査対象領域をより広くすることが求められている。特に、装置の小型化が進む現代では、基板上の、より広範囲に部品が実装されることが想定される。このため、基板における検査対象領域を広くすることについての要求も高まっている。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、X線検査装置において、検査対象領域を広くしつつ、対象物を確実に保持できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従ったX線検査装置は、X線源と、X線検出部と、検査対象物を保持する保持機構とを備え、保持機構によって保持された検査対象物に対して複数方向から照射されたX線によって撮像するX線検査装置であって、保持機構は、検査対象物に対して第1の方向の一方側からX線源によりX線が照射され、他方側からX線検出部により検査対象物のX線透視画像を撮像させるように、検査対象物を保持し、一方側から検査対象物を支持する第1の部材と、他方側から検査対象物を支持する第2の部材とを含み、第1の方向と交わる第2の方向についての第1の部材および第2の部材の検査対象物側の端面は、第1の方向について検査対象物から離れるほど、第2の方向について検査対象物から離れるような傾斜を有する。
【0008】
好ましくは、第2の部材は、第2の方向に交わる第3の方向について、連続してまたは複数の箇所で、検査対象物を支持し、第3の方向において少なくとも一部が検査対象物を支持する領域が少なくなるように切り欠きを設けられている。
【0009】
好ましくは、第2の部材は、第2の方向に交わる第3の方向に延設される支持用部材と、支持用部材に対して、第3の方向について位置を変更可能に固定され、検査対象物を押圧することにより支持するための押圧用部材とを含み、押圧用部材は、第1の方向の他方側に位置する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、検査対象物に対して、第1の方向の一方側からX線が照射し他方側からX線を検出するX線検査装置において、検査対象物を支持する部材の検査対象物側の端面の形状が工夫されている。具体的には、当該端面は、第1の方向について検査対象物から離れるほど、第2の方向について検査対象物から離れるように傾斜している。
【0011】
これにより、第2の方向について上記支持する部材によって長い距離にわたって検査対象物を支持しながら、X線検出部において、より検査対象物の端部側を透過したX線を、支持する部材の上記端面によって遮られることなく、検出することができる。したがって、X線検査装置において、検査対象領域を広くしつつ、検査対象物を確実に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態であるX線検査装置を含む、基板の製造ラインの一部の構成を模式的に示す図である。
【図2】図1のX線検査装置の概略構成を説明するための図である。
【図3】図1のX線検査装置の概略構成を説明するための図である。
【図4】基板ステージにおいて基板を支持する部材の構造を説明するための図である。
【図5】基板ステージにおいて基板を支持する部材の構造を説明するための図である。
【図6】図5のクランプとベースプレートの構造の特徴を説明するための図である。
【図7】図5のクランプとベースプレートの構造の特徴を説明するための図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態のX線検査装置におけるクランプの形状を説明するための図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態のX線検査装置におけるクランプの形状を説明するための図である。
【図10】図9の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の検査装置の一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、同一の構成要素には各図において同一の符号を付し、詳細な説明は繰返さない。
【0014】
[第1の実施の形態]
<製造ラインの概略構成>
図1は、本実施の形態の検査装置を含む、基板の製造ラインの一部の構成を模式的に示す図である。本実施の形態では、検査対象物の一例として、図1に示される製造ラインで製造される基板が挙げられる。
【0015】
図1を参照して、製造ラインは、本発明の一実施の形態であるX線検査装置100と、X線検査装置100に対して製造ライン中の上流側に隣接して設置された装置(上流側装置1000)と、下流側に隣接して設置された装置(下流側装置2000)とを含む。
【0016】
X線検査装置100は、基板(後述する基板10等)をX線検査装置100内で搬送するためのコンベアベース90、および、コンベアベース90上に載置されているベースプレート91を含む。ベースプレート91は、基板を送るためのベルト92を含む。また、X線検査装置100は、ベルト92上の基板を上方から支持するクランプ50を含む。
【0017】
X線検査装置100では、コンベアベース90が移動することにより、当該コンベアベース90上に搬送された基板が、X線検査装置100内を移動する。図1では、コンベアベース90の3つの異なる位置が、コンベアベース90、コンベアベース90A、および、コンベアベース90Bとして示されている。コンベアベース90の移動に伴い、ベースプレート91、ベルト92、および、クランプ50も移動する。図1では、コンベアベース90,90A,90Bのそれぞれに位置に対応させて、ベースプレート91,91A,91B、ベルト92,92A,92B、および、クランプ50,50A,50Bが示されている。
【0018】
X線検査装置100では、コンベアベースは、起動時にはコンベアベース90で示す位置に配置され、上流側装置1000から搬送される基板を受ける時にはコンベアベース90Aで示す位置に配置され、受け取った基板を検査する時にはコンベアベース90Bで示す位置に配置され、検査後の基板を下流側装置2000に受け渡す時にはコンベアベース90Bで示す位置に配置され、そして、次の基板を上流側装置1000から受ける時には再度コンベアベース90Aで示す位置に配置され、以降、同様の配置の変更が繰り返される。
【0019】
製造ラインは、上流側装置1000と、符号90Aで示された位置にあるコンベアベース90Aとの間に設けられた、基板を搬送するための搬送レール1001を含む。また、製造ラインは、符号90Bで示された位置にあるコンベアベース90Bと、下流側装置2000との間に設けられた、基板を搬送するための搬送レール2001を含む。また、図1では、基板10Aは、上流側装置1000から矢印R11の向きにコンベアベース90Aへと送られる基板を示し、基板10Bは、ベルト92A上に配置されクランプ50Aに上方から支持される基板を示し、そして、基板10Cは、ベルト92Bから、矢印R12の向きに、搬送レール2001を通って下流側装置2000へと送られる基板を示している。
【0020】
<検査装置の構成>
本実施の形態のX線検査装置100は、IC(Integrated Circuit)のリードに形成されたパックフィレットや、BGA(Ball Grid Array)を構成するはんだ電極など、外観検査が困難な箇所を対象に、X線による断層画像を再構成し、生成された断層画像を用いて検査を行なうものである。また、本実施の形態の検査装置は、断層画像として、X線CT画像を生成する機能とトモシンセシスによる断層画像を生成する機能を具備する。
【0021】
図2および図3は、X線検査装置100の概略構成を説明するための図である。
図2を参照して、X線検査装置100は、検査対象物である基板10を支持する基板ステージ1と、その下方に配置されたX線源2と、基板ステージ1の上方に設けられたディテクタステージ4と、当該検査装置の動作を全体的に制御する制御装置7とを含む。
【0022】
図2では、基板10に部品11が実装された状態が示されている。なお、図2では、基板10の搬送機構の構成要素の一部が省略されて記載されている。一方、図3では、制御装置7が省略されている。
【0023】
基板ステージ1は、基板10を長さ方向(図2中の左右方向。以下、これをX方向とする)に沿う各端縁部で支持する1対のコンベア15A,15B、各コンベア15A,15Bを固定支持する1対のコンベア支持部16A,16Bを具備する。コンベア15A,15Bは、図示しない上流機構から基板10の搬入を受付けて、この基板10をコンベア15Aまたはコンベア15Bに設けられたストッパ(クランプ50)によって支持される位置まで搬入して停止する。コンベア15A,15Bは、ストッパによる支持の終了後、基板10を外部(下流側装置2000)に搬出する。
【0024】
コンベア支持部16A,16Bは、各コンベア15A,15Bを支持した状態で、基板制御機構78によって駆動制御されることにより、図2中のX方向およびY方向に移動可能に支持されている。コンベア支持部16A,16Bの動きによって、基板10が水平移動する(水平な仮想平面上を移動する)ことになる。
【0025】
X線検査装置100では、クランプ50は、基板制御機構78によって変位されることにより、基板20を支持する状態と、支持を解除する状態とをとる。
【0026】
X線検査装置100には、コンベア支持部16A,16Bを図2のX方向およびY方向に移動させる機構として、X軸方向に沿うスライドレール61、および、Y軸方向に沿うスライドレール66が設けられている。
【0027】
スライドレール61は、スライダ62を介してコンベア支持部16A,16Bに連結されている。なお、X線検査装置100には、スライドレール61と対をなすX軸方向に沿うスライドレール(図示略)が設けられている。当該スライドレールは、スライダ63を介して、コンベア支持部16A,16Bに連結されている。
【0028】
スライドレール66は、スライダ67を介して支持部64,65に連結されている。支持部64,65は、スライダ62,63に連結されている。これにより、スライドレール66は、スライダ67、支持部64,65、スライダ62,63を介して、コンベア支持部16A,16Bに連結されている。また、X線検査装置100には、スライドレール66と対をなすY軸方向に沿うスライドレール(図示略)および当該スライドレールを支持部64,65に連結させる支持部が設けられている。
【0029】
X線検査装置100では、コンベア支持部16A,16BをX軸方向およびY軸方向に駆動させるために、基板制御機構78によって、スライダ62、スライダ63、スライダ67、および、スライダ67と対をなすスライダ(図示略)が駆動制御される。
【0030】
図2のコンベア支持部16A,16Bおよび支持部64,65は、図1のコンベアベース90に対応する。また、図2のコンベア15A,15Bは、図1のベースプレート91に対応する。図1と図2では、対応する部材の形状が異なっているが、これらの機能としては同様である。
【0031】
ディテクタステージ4には、Y軸方向に沿う1対のスライドレール41A,41B(以下、「Y軸レール41A,41B」という。)と、X軸方向に沿うスライドレール42(以下、「X軸レール42」という。)とが設けられる。各Y軸レール41A,41Bには、1対のスライダ43が設けられる。X軸レール42は、各Y軸レール41A,41Bのスライダ43,43により両端部が連結されて支持される。
【0032】
X軸レール42には、大型のスライダ45が設けられる。スライダ45には、接続部材46を介して、二次元X線検出器としてフラットパネルディテクタ3(以下、「FPD3」と略す。)が取付けられている。
【0033】
X線検査装置100では、大型スライダ45は矢印R3および矢印R4の向きに移動され、また、スライダ43は、矢印R1および矢印R2の向きに移動される。
【0034】
X線検査装置100には、さらに、基板10のXY平面内の位置およびこの平面に垂直な高さ方向の位置を検出するためのCCDカメラ5および変位センサ6が設けられている。CCD(Charge Coupled Device)カメラ5の検出出力は、画像処理機構77Bによって処理され、また、変位センサ6の検出出力は、変位計制御機構77Aによって処理される。
【0035】
スライダ43,45は、図示しない駆動モータをディテクタ制御機構75によって駆動制御されることにより、FPD3を移動させる。具体的には、FPD3は、スライダ45の動きに従ってX軸方向に沿って移動するとともに、Y軸レール41A,41Bのスライダ43の動きに従ってY軸方向に沿って移動する。
【0036】
FPD3は、図示せぬケーブルを介して、制御装置7に接続される。また、X線源2、CCDカメラ5、変位センサ6、および各ステージ1,4の駆動部も同様に、制御装置7にケーブル接続される。
【0037】
CCDカメラ5および変位センサ6は、検査前に基板10の状態をチェックする目的で使用される。具体的には、CCDカメラ5は、基板10を正確な位置に位置合わせするために基板10のフィデューシャルマーク19を撮像する。この撮像により生成された画像は、制御装置7の画像処理機構77Bに入力されて、基板10の位置ずれ量の計測に用いられ、その計測値に基づき各ステージ1,4の位置関係が調整される。
【0038】
変位センサ6は、基板10の上面までの距離を測定する。測定された距離データは、制御装置7の変位計制御機構77Aに入力され、X線透視撮影の際に、後述する基準平面Tの高さを調整する目的に使用される。
【0039】
図2には、また、本実施の形態のX線検査装置100の制御装置7の主要部分のブロック図が示されている。
【0040】
制御装置7は、X線透視撮影に関する制御を実行し、また、断層画像の再構成処理や検査を実行する。制御装置7は、たとえば、専用のプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータにより構成される。当該プログラムは、その出荷時に、制御装置7の主記憶部71にインストールされていてもよいし、制御装置7に対して着脱可能な記録媒体に記録されていて適宜制御装置7にインストールされてもよいし、ネットワーク上のサーバからネットワークを通じて制御装置7にダウンロードされてもよい。
【0041】
制御装置7は、CPU(Central Processing Unit)を含む演算部70、補助記憶装置からなる補助記憶部72、キーボードや操作ボタンなどからなり外部からの情報の入力を受付ける入力部73、画像情報や音声などを出力する出力部74、およびX線源2のX線出力動作などを制御するX線源制御機構79を含む。
【0042】
演算部70は、ディテクタ制御機構75等の各機構の動作を制御することにより、X線源2およびFPD3ならびに基板10の位置関係を種々に変更しながら基板10に対するX線透視撮影(プロジェクション)を実行する。また、演算部70は、CCDカメラ5、変位センサ6、コンベア15A,15Bの動作を制御する機能や、CCDカメラ5からの入力に基づき上記した基板10の位置調整を行なう機能や、変位センサ6からの入力に基づいて撮影時の基準平面Tの高さの設定値を変更し、その変更に併せて基板10やFPD3の移動量を調整する機能も有する。
【0043】
X線検査装置100では、後述するように、基板10の複数の検査領域について、検査領域ごとに、FPD3の位置を変えて、複数回のX線透視撮影が行なわれる。毎時のX線透視撮影により生成されたX線透視画像は、補助記憶部72に蓄積される。演算部70は、これらの画像に付加情報として、対応する検査領域や撮影時のFPD3の位置を識別する情報を設定し、これらの付加情報を画像に対応付けて補助記憶部72に保存する。演算部70は、再構成によって得られたデータに基づいて、基板10の被検査部位の適否を判定する。判定結果は、たとえばモニタなどの出力部74や外部機器などに出力される。
【0044】
X線検査装置100において、ディテクタ制御機構75、画像取得機構76、変位計制御機構77A、画像処理機構77B、基板制御機構78、および、X線源制御機構79のすべてまたは少なくとも一部は、専用のハードウェア資源(LSI(Large Scale Integration)等)によって実現されても良いし、演算部70が主記憶部71に記憶されるプログラムを実行することによってソフトウェア的に実現されても良い。
【0045】
図3では、トモシンセシス用の撮影を行なう場合のX線源2、FPD3、および、基板10の位置関係が模式的に示されている。
【0046】
図3では、画像取得機構76が、FPD3を、当該FPD3が存在するXY平面上で矢印R0方向に旋回させたときの、X線画像の撮影が行なわれるFPD3の複数の位置が示されている。当該複数の位置は、FPD3,3A,3B,3Cを含む。基板10のX線画像の撮影の際には、FPD3の位置は、X線源2の光軸を中心とする仮想円に沿って順に移動する。図3のFPD3,3A,3B,3Cのそれぞれの内部に示された球形状は、基板10上に実装された部材の画像を模式的に示している。なお、FPD3の旋回は、大型スライダ45が矢印R3,R4の向きに適宜移動され、また、スライダ43が矢印R1,R2の向きに適宜移動されることにより、実現される。
【0047】
X線検査装置100では、FPD3,3A,3B,3Cを含む複数の位置で撮影された画像が適宜再構成されて、基板10の検査(実装されるべき部品が実装されているか否か、等)が行なわれる。なお、撮影されたX線画像の再構成や当該再構成画像を用いた基板10の検査については、公知の技術(たとえば、特許文献1(特開2010−160070号公報))を採用することができるため、ここでは説明を繰り返さない。
【0048】
<保持機構の構成>
上記したように、X線検査装置100では、基板ステージ1上の基板10は、クランプ50によって上方から支持され、また、ベースプレート91によって下方から支持されている。以下、図4および図5を参照して、基板ステージ1における、基板10を支持する部材の構造を説明する。
【0049】
まず、図4を参照して、ベースプレート91の、基板10と当接する側の端部には、ベルト92が設けられている。ベルト92は、基板10の搬送方向(図4の左右方向)に回転することにより基板10を搬送する。
【0050】
クランプ50は、ガイド51に連結されている。ガイド51は、スプリング用シャフト53によって軸支されている。ガイド51の上方にはローラ52が位置している。ローラ52には、シャフト82を介して、エアスライドテーブル81が連結されている。ローラ52は、エアスライドテーブル81に供給される空気量に応じて、シャフト82を軸とした回転位置が変化し、これにより、ローラ52の、図4における、矢印R21,R22で示される方向の位置が変化する。
【0051】
スプリング用シャフト53には、スプリング用シャフト83が連結されている。スプリング用シャフト83には、スプリング84が固定されている。スプリング用シャフト83は、スプリング84によって、後述するように所定の回動方向に付勢され、また、スプリング用シャフト83に連結されるスプリング用シャフト53、および、スプリング用シャフト53に連結されたガイド51も同様に付勢される。そして、ガイド51は、その上方からローラ52によって押圧されることにより、基板10を上方から下方に向けて押圧するように支持する位置に固定される。
【0052】
図5は、図4に示された各要素を側方から見た状態を示す図である。
図5において、矢印R24は、スプリング用シャフト53に対する、上記したような付勢方向を示している。図5において実線で示された状態から、エアスライドテーブル81に供給される空気量が変更されることにより、ローラ52が矢印R22の向きに回転してローラ52Xで示される位置まで移動すると、スプリング用シャフト53に対する矢印R24の向きの付勢によって、クランプ50およびガイド51が矢印R23の向きに回転する。クランプ50Xおよびガイド51Xは、ローラ52Xに対応するクランプとガイドの位置を示している。
【0053】
なお、エアスライドテーブル81に対する供給量が調整されることにより、ローラ52Xが矢印R21の向きに回転移動されて、ローラ52で示される位置に移動すると、ローラ52に押圧されることにより、ガイド51Xで示される位置からガイド51で示される位置に、シャフトが移動する。また、シャフトに固定されているクランプも、同様に、クランプ50Xで示される位置からクランプ50で示される位置に、移動する。これにより、クランプ50は、基板10を、上方から押圧するように固定する。本実施の形態では、ガイド51の上面が、水平ではなく、水平方向に対して傾斜を有するように構成されている。これにより、ローラ52の回転による変位によって、ガイド51は図5を参照して説明したように回転移動し、これにより、クランプ50が上下に移動する。
【0054】
なお、クランプ50を上下移動させる方法としては、エアスライドテーブル81に供給される空気量を変更されるような、エアシリンジを用いたものに限定されない。たとえば、モータで、直接的に、上下方向に移動されても良い。ただし、本実施の形態のように、モータではなくエアシリンジによって上下方向に移動されることにより、モータの駆動により生じると考えられるノイズの発生を抑制(回避)でき、これにより、撮影されるX線画像が当該ノイズの影響を受けることを極力回避できる。
【0055】
X線検査装置100では、基板10が基板ステージ1に固定される場合、上方からクランプ50によって押圧されるうように支持され、また、下方からは、ベースプレート91によって指示される。なお、ベースプレート91では、主にベルト92が、基板10に当接している。そして、基板ステージ1に基板10が固定された状態で、図1を参照して説明したようにコンベアベース90が旋回等することにより、コンベアベース90に固定された状態で、基板10がX線検査装置100内を旋回等する。
【0056】
図6は、クランプ50とベースプレート91の構造の特徴を説明するための図である。
図6には、クランプ50とベースプレート91によって基板10が固定されている状態が示されている。
【0057】
本実施の形態では、基板10(検査対象物)に対して、上下方向の下側から、X線源2によりX線が照射される。そして、上側からFPD3(X線検出部)により検査対象物のX線透視画像が撮像される。そして、検査対象物は、上方からはクランプ50により支持され、下方からはベースプレート91(ベルト92)により支持されることにより、保持される。本実施の形態では、ベースプレート91(ベルト92)により、一方側から検査対象物を支持する第1の部材が構成され、そして、クランプ50により、他方側から検査対象物を支持する第2の部材が構成される。
【0058】
そして、ベースプレート91とクランプ50の水平方向の端面は、それぞれ、垂直方向に対して傾斜を有している。具体的には、図6に主に示されるように、ベースプレート91の上記端面は、垂直方向に対してθ2の角度を有し、また、クランプ50の上記端面は、垂直方向に対してθ1の角度を有する。このような傾斜を有することにより、ベースプレート91の上記端面は、下側ほど、左右方向について検査対象物から離れるような形状となっている。また、クランプ50の上記端面は、上側ほど、左右方向について検査対象物から離れるような形状となっている。
【0059】
クランプ50の上記端面が上記したような傾斜を有することにより、クランプ50に確実に基板10を支持させつつ、X線源2から放射されるX線(符号XRで示されている)の基板10による透過光がクランプ50によって遮蔽されることを極力回避できる。なお、図6中の角度θ3は、X線源2のX線の照射角度である。
【0060】
また、図7に示されるように、ベースプレート91の上記端面が上記したような傾斜を有することにより、ベースプレート91を左右方向により遠くまで基板10側に延在させつつ、X線源2から放射されるX線がベースプレート91によって遮蔽されることを極力回避できる。
【0061】
クランプ50の端面の傾斜角度θ1は、大きくなるほど、より基板10のクランプ50側の端部を通過した透過光をFPD3へ送ることができ、基板10において検査対象領域となる領域を広くすることができる。なお、傾斜角度θ1は、たとえばθ3の半分の角度以上であることが好ましい。上限としては特に制限されないものと考えられるが、クランプ50が基板10を十分に支持(押圧)できる程度の強度が保証される程度にとどめられることが好ましい。
【0062】
また、ベースプレート91に端面の傾斜角度θ2についても、同様に、大きくなるほど、より基板10のベースプレート91側の端部までX線を透過させることができ、基板10において検査対象領域となる領域を広くすることができる。なお、傾斜角度θ2は、たとえばθ3の半分の角度以上であることが好ましい。上限としては特に制限されないものと考えられるが、基板10を十分に支持できる程度の強度が保証される程度にとどめられることが好ましい。
【0063】
[第2の実施の形態]
以下、本実施の形態のX線検査装置100における、第1の実施のX線検査装置100に対する変更点について、主に説明する。
【0064】
図8は、本実施の形態のX線検査装置100におけるクランプの形状を説明するための図である。
【0065】
上記したように、第1の実施の形態に係るX線検査装置100では、クランプ50およびベースプレート91は、基板10の搬送方向に寸法を有し、そして、当該搬送方向を含む面、つまり、当該搬送方向に交わる方向についての端面に、図6および図7を参照して説明したような傾斜が設けられている。そして、上記傾斜が設けられることにより、より確実に基板10が保持(支持)されるとともに検査対象領域が広げられている。
【0066】
本実施の形態のX線検査装置100では、図8に示されるように、クランプ50には、基板10の搬送方向において一部切り欠き501が形成されている。なお、図8のX方向およびY方向は、図2のX方向と同様である。つまり、X方向は、基板10の搬送方向を示し、Y方向は、当該搬送方向に直行する方向を示している。そして、本実施の形態のクランプ50において、切り欠き501が形成された部分は、搬送方向(X方向)の他の部分と比較して、Y方向について、基板10を支持する領域が少なくなる。これにより、X線源2から照射され、基板10を透過した光を遮る領域がより少なくなる。
【0067】
以上説明したように、本実施の形態のクランプ50のように、一部が切り欠かれることにより、より基板10の検査対象領域を広げることができる。
【0068】
なお、クランプ50において切り欠きを形成する割合としては、クランプ50が基板10を十分な強度で支持できる範囲内で適宜決定することができる。
【0069】
[第3の実施の形態]
以下、本実施の形態のX線検査装置100における、第1の実施のX線検査装置100に対する変更点について、主に説明する。
【0070】
図9は、本実施の形態のX線検査装置100におけるクランプの形状を説明するための図である。図9では、矢印Xは、図2のX方向と同様に、基板10の搬送方向を示している。図10は、図9の側面図である。
【0071】
本実施の形態のクランプは、第1の実施の形態のクランプ50の代わりに、レール部510、爪部511〜513、および、固定部材511A〜513Aを含む。レール部510は、X方向に延設される、上下一対の長細い部材を含む。固定部材511A〜513Aを当該部材にねじ止めされることにより、爪部511〜513は、それぞれ、レール部510に固定される。本実施の形態では、爪部511〜513が、基板10を上方から支持する。
【0072】
爪部511〜513のX方向における固定位置は、変更可能である。つまり、固定部材511A〜513Aのそれぞれのレール部510における固定位置を変更することにより、X方向における爪部511〜513の固定位置を変更することができる。
【0073】
X方向における爪部511〜513の固定位置を変更することにより、基板10上に実装される部品の配置に応じて、基板10の上方からの固定位置を変更することができる。
【0074】
近年、市場変化に対応できる柔軟性のある多品種少量生産を実現するためには、検査対象物の多様化が想定される。本実施の形態のX線検査装置100では、検査対象物の種類に応じて、爪部511〜513の固定位置を変更できる。これにより、本実施の形態のX線検査装置100は、多様な検査対象物に対応できる。
【0075】
本実施の形態では、爪部511〜513により押圧用部材が構成され、レール部510により支持用部材が構成されている。
【0076】
なお、図9では、基板10を上方から支持する爪部の数が「3」とされているが、これは例示である。基板10を十分な力で支持できる範囲であれば、その本数は、適宜変更される。
【0077】
また、各爪部の寸法(特に、基板10の搬送方向であるX方向についての寸法)についても、基板10を十分な力で支持できる寸法であれば、適宜設定される。
【0078】
[その他の変形例等]
以上説明した各実施の形態では、X線検査装置の一例として、製造ライン中で検査対象物(基板10)の検査を行なう、いわゆるインライン検査に利用される検査装置が例示された。したがって、当該検査の際の、検査対象物の搬送を、安全にかつ高速に行なうことが求められる。各実施の形態のX線検査装置では、検査対象物においてより広い被検査領域を確保しつつ、より安定して検査対象物を固定することができる。ただし、本発明に従うX線検査装置は、インライン検査に用いられるものに限定されない。本発明は、製造ラインに対して独立して利用されるX線検査装置においても、実施されることが意図される。
【0079】
また、以上説明した各実施の形態では、基板10の保持/解除の変更が、図5を参照して説明したように、基板10を上方から支持するクランプ50を移動させることによって行なわれる。基板10は、クランプ50に上方から下方に押圧されることにより、クランプ50とベースプレート91(ベルト92)の間で保持される。
【0080】
なお、本発明に従った検査装置における検査対象物の保持態様は、このような態様に限定されない。つまり、たとえば、下方から上方に検査対象物を押圧して保持されても良い。ただし、下方から上方に検査対象物を押圧し、別途設けられている部材の下面に検査対象物を押し当てて検査対象物を保持する場合、当該部材が定常的に下方から突き上げられることにより破損するおそれが予測される。本実施の形態では、検査対象物を下方に向けて押圧して保持することにより、上記のような部材の破損のおそれを極力回避できる。
【0081】
また、以上説明した各実施の形態では、基板10の保持/解除を変更する機構(エアスライドテーブル81、ローラ52等)が基板10の上方側に設けられ、基板10に対してX線を照射する装置(X線源2)が基板10の下方側に設けられている。つまり、保持/解除を変更する機構とX線照射装置が、基板10を挟んで反対側に設けられている。このように配置されることにより、両者が基板10に対して同じ側に設けられる場合と比較して、X線照射装置をより基板10に近い位置まで接近させることができる。これにより、X線検査装置100では、基板10について、より拡大倍率の高い画像を撮影できる。また、上記機構がX線照射装置と基板10を挟んで、つまり、両者が極力離されて、設置されることにより、上記機構がX線照射装置によって出力されるX線の干渉材料となることを寄り確実に回避することができる。
【0082】
なお、各実施の形態において、第1の方向は上下方向に対応し、第2の方向はY方向、第3の方向はX方向に対応するが、これは単なる一例である。第1〜第3の方向が互いに交わっていれば、X線の照射は、たとえば上方から下方に向けて行なわれても良いし、また、水平方向に行なわれても良い。
【0083】
今回開示された各実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0084】
また、各実施の形態およびその変形例は、単独でも、また必要に応じて適宜組み合わされて、実施されることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
1 基板ステージ、2 X線源、3 フラットパネルディテクタ、4 ディテクタステージ、5 カメラ、6 変位センサ、7 制御装置、10 基板、50 クランプ、70 演算部、71 主記憶部、72 補助記憶部、73 入力部、74 出力部、75 ディテクタ制御機構、76 画像取得機構、77A 制御機構、77B 画像処理機構、78 基板制御機構、79 線源制御機構、81 エアスライドテーブル、82 シャフト、84 スプリング、90 コンベアベース、92 ベルト、100 X線検査装置、510 レール部、511〜513 爪部、511A〜513A 固定部材、1000 上流側装置、2000 下流側装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源と、X線検出部と、検査対象物を保持する保持機構とを備え、前記保持機構によって保持された検査対象物に対して複数方向から照射されたX線によって撮像するX線検査装置であって、
前記保持機構は、
検査対象物に対して第1の方向の一方側からX線源によりX線が照射され、他方側から前記X線検出部により前記検査対象物のX線透視画像を撮像させるように、検査対象物を保持し、
前記一方側から前記検査対象物を支持する第1の部材と、前記他方側から前記検査対象物を支持する第2の部材とを含み、
前記第1の方向と交わる第2の方向についての前記第1の部材および前記第2の部材の前記検査対象物側の端面は、前記第1の方向について前記検査対象物から離れるほど、前記第2の方向について前記検査対象物から離れるような傾斜を有する、X線検査装置。
【請求項2】
前記第2の部材は、
前記第2の方向に交わる第3の方向について、連続してまたは複数の箇所で、前記検査対象物を支持し、
前記第3の方向において少なくとも一部が前記検査対象物を支持する領域が少なくなるように切り欠きを設けられている、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記第2の部材は、
前記第2の方向に交わる第3の方向に延設される支持用部材と、
前記支持用部材に対して、前記第3の方向について位置を変更可能に固定され、前記検査対象物を押圧することにより支持するための押圧用部材とを含み、
前記押圧用部材は、前記第1の方向の前記他方側に位置する、請求項1に記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−237708(P2012−237708A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108166(P2011−108166)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】