説明

X線異物検査装置

【課題】テストピースを被検査物が流れるパイプの中に投入しなくても、簡単にX線の検
出感度を調整することができるX線異物検査装置を提供することを課題とする。
【解決手段】パイプ内を流れる被検査物にX線を照射し、透過したX線を被検査物の流れ
方向と直交する方向に配置されたラインセンサでもって検出するその検出領域のパイプの
外側に、被検査物の流れ方向に沿って延びるテスト用の線材を設け、その線材を被検査物
の流れ方向と直行する方向に前記ラインセンサと平行を保って移動させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される被検査物にX線を照射し、そのX線の透過量に基づいて被検査物
内の異物混入を検査するX線異物検査装置に関するもので、特に、テストピースによって
X線の検出感度を調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ドレッシングや焼肉のタレ等の液状物、或いは、練り製品等の流動物を容器に充填する
製造ラインでは、その前工程でパイプ内を流れる液状物や流動物にX線を照射して混入異
物を検出するようにしているが、このような検査装置では、特に、X線の連続照射によっ
てX線管やX線検出センサの劣化が進行するので、検出感度の定期的な確認や調整が必要
となる。
【0003】
そのため、X線検査領域に被検査物と共に種々の大きさのテストピースを流して感度の
確認や調整を行うが、被検査物がパイプラインで搬送される液状物の場合には、テスト
ピースをパイプに流し込んだり取り出したりすることが困難になるので、パイプのX線照
射領域の外側に複数個のテストピースを載せた台を設置し、その台を被検査物の流速と同
じ速度で搬送するようにしたものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4588707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に開示された発明では、テストピースをパイプ内の流速に一致さ
せねばならないので、速度制御が複雑になるという問題がある。また、速度制御を自動化
するには、流速センサを設けねばならないので、コスト高になるという問題もある。
本発明は、このような問題を解決することのできる新たなX線異物検査装置を提供する
ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係るX線異物検査装置は、搬送される被検査物にX線を照射し、透過
したX線を被検査物の搬送方向と直交する方向に配置されたラインセンサでもって検出し
て、被検査物中の混入異物の有無を検査するようにしたX線異物検査装置であって、前記
X線の照射領域にある被検査物の搬送経路の外側に、被検査物の搬送方向に沿って延びる
テスト用の線材を設け、その線材を被検査物の搬送経路の側方からX線照射領域に進退さ
せるようにしたことを特徴とする。
【0007】
テスト用の線材は、被検査物の搬送方向に沿って張設されているから、線材を搬送方向
に移動させなくても、ラインセンサで検出される線材は、あたかも被検査物と一体となっ
て流れているように検出される。また、線材のX線照射領域への進退は、被検査物の搬送
方向と直行する方向に、前記ラインセンサと平行を保って移動させるようにする。これに
より、線材は、ラインセンサの全域に亘って移動するから、ラインセンサの全域に亘る検
出感度を確認することができる。或いは、この平行移動に代えて、線材を垂直姿勢と水平
姿勢とに切り替え可能とし、線材を垂直姿勢に保持すると、X線照射領域から退避し、線
材を水平姿勢に切り替えると、X線照射領域に進出するようにしてもよい。そうすれば、
線材をラインセンサの全域に亘って移動させる必要がなくなるので、線材を退避させたと
きの水平方向のスペースが省略でき、装置サイズをコンパクトにすることができる。
【0008】
請求項2の発明は、パイプ内を流れる被検査物にX線を照射し、透過したX線を被検査
物の流れ方向と直交する方向に配置されたラインセンサでもって検出して、被検査物中の
混入異物の有無を検査するようにしたX線異物検査装置であって、前記X線の照射領域に
あるパイプの外側に、被検査物の流れ方向に沿って延びるテスト用の線材を設け、その線
材を被検査物の流れ方向と直行する方向に、前記ラインセンサと平行を保って移動させる
ようにしたことを特徴とする。
【0009】
テスト用の線材は、パイプ内の被検査物の流れ方向に沿って張設されているから、線材
を流れ方向に移動させなくても、ラインセンサで検出される線材は、あたかも被検査物と
一体となって流れているように検出される。したがって、特に、パイプ内を流れる被検査
物のX線異物検査装置として好適となる。それに加えて、線材は、被検査物の流れ方向と
直行する方向にラインセンサと平行を保って移動するから、ラインセンサの全域に亘る検
出感度を確認することができる。
【0010】
請求項1又は2に記載のX線異物検査装置であって、前記線材が前記ラインセンサの長
手方向に複数条並設されているとともに、それぞれの太さが異なっていることを特徴とす
る。
【0011】
太さの異なる線材がラインセンサの長手方向に複数条並設されているから、種々の太さ
の線材で検出感度を一度に調整することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、テストピースとしての線材を、被検査物の搬送方向に沿って移動させ
る必要がないから、テストピースのX線照射領域への進退機構をより簡易なものにするこ
とができる。また、線材をX線照射領域へ進出させる際に、それをラインセンサの長手方
向に移動させると、ラインセンサの全域に亘って検出感度を調整することができる。加え
て、テストピースとしての線材の進退や水平移動には、速度制御を必要としないから、安
価な装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るX線異物検査装置の一実施形態の要部構成図
【図2】前記要部構成図のX線照射領域を上から見た平面図
【図3】前記平面図の要部を側面から見た一部断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るX線異物検査装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
図1から図3において、被検査物を搬送するパイプ1の一部分は、X線の漏洩を防止す
る遮蔽室10に収納され、そこに収納されたパイプ1は、X線照射領域Rにおいて扁平に
され、その扁平部位2の上方には、X線3を照射するX線管4が配置され、それと対向す
る扁平部位2の下方には、被検査物の流れ方向F1とは直行する方向にラインセンサ5が
設けられている。
【0015】
X線管4からは、図示しない絞り機構を介して扇状に広がるX線3がラインセンサ5の
全幅に亘って照射される。また、ラインセンサ5は、被検査物の流れ方向F1とは直行す
る方向に密に配列された多数のX線検出素子で構成される。
【0016】
前記パイプ1は、SUSで形成され、前記扁平部位2は、X線3の透過性が高い合成樹
脂で成形されている。そして、前記扁平部位2の直上には、X線照射領域Rを避けるよう
に逆U字形の保持部材6が設けられ、その保持部材6のX線照射領域Rを挟む両側のアー
ム部7には、X線照射領域Rを横断するように設けられた太さの違う線材8が複数条並行
に取り付けられている。
【0017】
各線材8は、一様な太さのワイヤーや針金で形成されるが、必要に応じて、ガラス棒や
樹脂材からなる各種素材の線材も使用される。そして、それぞれは、所定間隔を開けて互
いに平行に配置される。また、保持部材6は、エアーシリンダやラックピニオン等の図示
しない往復運動機構に連結されて、ラインセンサ5の長手方向F2に、それと平行を保っ
て水平移動するように構成されている。移動する線材8とラインセンサ5とを平行に保つ
のは、線材8のラインセンサ5による検出画像を一定サイズに保つためである。
【0018】
各図に示す実施形態では、線材8を扁平部位2の上方で移動させるようにしているが、
これに代えて、線材8を扁平部位2とラインセンサ5との間で移動させるようにしてもよ
い。その場合には、線材8のラインセンサ5による検出画像をより一定サイズに保つこと
ができる。
【0019】
次に、上記実施形態の使用について説明すると、通常使用時には、図2に示すように、
各線材8をX線照射領域Rから後退させた位置で待機させておく。そして、パイプ1の扁
平部位2にX線3を連続照射して混入異物の有無を検査する。そして、異物が検出されれ
ば、遮蔽室10の下流側に設けられた図示しない三方バルブを作動させて異物がある箇所
の被検査物をパイプ1の外へ排出する。
【0020】
一方、検出感度の確認や調整を行うときは、保持部材6の移動機構を働かせて、それを
一定速度でラインセンサ5の長手方向F2に移動させ、その間に出力されるラインセンサ
5の検出信号を2次元画像に展開して、画像に表れた線材8の濃度から検出感度を確認す
る。そして、検出感度が適正でなければ、X線管4の出力を調整したり、画像処理の処理
条件を変えたりして、感度レベルを適正値に合わせる。
その際、保持部材6をラインセンサ5の全幅に亘って移動させると、線材8の2次元に
展開された検出画像は、斜めの直線として現れる。その直線に濃淡変化が見られれば、濃
度の違う部位のX線検出素子に劣化が生じていると判断することができる。
【0021】
<第2の実施形態>
以上の実施形態では、パイプ1が水平に配置されている場合を示したが、本発明は、こ
れに限定されるものではなく、パイプ1の配管状況に応じて、垂直や斜めに配管された部
位に対しても適用することができる。その場合には、X線管4からラインセンサ5に照射
されるX線3が、パイプ1に垂直に入射されるようにこれらを配置し、線材8を保持する
保持部材6も、X線照射領域Rのパイプ1とラインセンサ5とに対して平行移動するよう
に構成する。
【0022】
<第3の実施形態>
さらに、上記実施形態では、線材8をラインセンサ5に沿って平行移動させるようにし
たが、これに代えて、線材8の保持部材6を跳ね上げ式とすることもできる。即ち、保持
部材6を跳ね上げて垂直姿勢に保持すると、線材8がX線照射領域Rから退避し、保持部
材6を水平姿勢に戻すと、線材8がX線照射領域Rへ進出して検出感度の調整ができるよ
うにする。このようにすれば、保持部材6の水平移動機構を省略することができるだけで
なく、保持部材6を退避させておくための水平方向のスペースを省略することができる。
さらに、こうした跳ね上げ式にすると、保持部材6を跳ね上げるための回動レバーを遮蔽
室10の外に設けて、手動で保持部材6の跳ね上げが可能となるので、さらに簡易でコン
パクトな装置とすることができる。
【0023】
<第4の実施形態>
また、以上の実施形態では、パイプ内を流れる被検査物について説明したが、本発明は、
これに限定されるものではなく、被検査物がベルトコンベアで搬送されるタイプのものに
も適用可能である。その場合には、例えば、線材8を保持する保持部材6を被検査物と接
触しない高さにベルトコンベアから浮かせるようにする。そうすれば、テストピースを被
検査物に乗せた場合と同等な検出感度調整ができる。
また、ベルトコンベアで搬送される被検査物に対し、前記保持部材6を被検査物と直交
する方向に移動させる場合は、その保持部材6を搬送ベルトとラインセンサ5との間に挿
入して水平移動させるようにしてもよい。或いは、保持部材6を被検査物と接触しない程
度の高さに浮かせて、水平移動させるようにしてもよい。この場合も、テストピースを被
検査物に乗せた場合と同等な検出感度調整ができる。
【符号の説明】
【0024】
1 パイプ
2 扁平部位
3 X線
4 X線管
5 ラインセンサ
6 保持部材
7 アーム部
8 線材
10 遮蔽室
R X線照射領域
F1 被検査物の流れ方向
F2 ラインセンサの長手方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される被検査物にX線を照射し、透過したX線を被検査物の搬送方向と直交する方
向に配置されたラインセンサでもって検出して、被検査物中の混入異物の有無を検査する
ようにしたX線異物検査装置であって、前記X線の照射領域にある被検査物の搬送経路の
外側に、被検査物の搬送方向に沿って延びるテスト用の線材を設け、その線材を被検査物
の搬送経路の側方からX線照射領域に進退させるようにしたことを特徴とするX線異物検
査装置。
【請求項2】
パイプ内を流れる被検査物にX線を照射し、透過したX線を被検査物の流れ方向と直交
する方向に配置されたラインセンサでもって検出して、被検査物中の混入異物の有無を検
査するようにしたX線異物検査装置であって、前記X線の照射領域にあるパイプの外側に、
被検査物の流れ方向に沿って延びるテスト用の線材を設け、その線材を被検査物の流れ方
向と直行する方向に、前記ラインセンサと平行を保って移動させるようにしたことを特徴
とするX線異物検査装置。
【請求項3】
前記線材が前記ラインセンサの長手方向に複数条並設されているとともに、それぞれの
太さが異なっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線異物検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−198074(P2012−198074A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61704(P2011−61704)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】