説明

X線発生方法及びX線発生装置

【課題】広範囲な医療用途に対して適用することが可能な、高出力(高輝度)で平行性に優れたX線を発生させることが可能なX線発生方法及びX線発生装置を提供する。
【解決手段】ターゲットの表面に所定のエネルギー線源からエネルギー線を照射し、被写体に対する照射面積とほぼ同一の大きさとなるように前記ターゲットからX線を発生させる。次いで、前記X線を分光器に入射させ、前記X線から波長及び波長幅が選択されるとともに、平行光となった平行X線を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線発生方法及びX線発生装置に関し、特に医療用として好適に用いることが可能なX線発生方法及びX線発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用のX線撮影においては、所定のX線管球が用いられ、このX線管球から発せられるX線を被写体に照射するとともに、前記被写体を透過したX線をフィルムなどの所定の検出部において撮像あるいは検出し、その撮像あるいは検出した映像を解析することにより医療用に供していた。
【0003】
例えば、従来のX線管においては、実効焦点1mm×1mmから出たX線が広がって10cm×10cmまで拡大して被写体に照射されるとすると、そのX線の輝度は(1mm×1mm)/(100mm×100mm)の割合だけ弱くなる。すなわち、被写体に照射されるX線の輝度は、照射直後の輝度に比較して10−4まで減衰してしまう。
【0004】
また、従来のX線管を医療用などに用いる場合においては、不要な成分をフィルターによりカットして使用する場合が大部分であった。しかし、この方法では目的とする波長成分を有効に取り出すには不十分であった。
【0005】
一方、医療用、たとえば冠状動脈のように動いている被写体を高分解能で撮像するためには、平行性の良い高出力かつ高輝度X線を短時間露光する必要がある。しかしながら、従来のX線管球においては、被写体に照射される段階でのX線輝度は格段に減少してしまうとともに、前記X線の平行性も十分なものを得ることができないでいた。かかる観点より、従来のX線管球を特に医療用として使用するには、その使用態様が限定されてしまい、十分広範囲な医療に対して適用することができないでいた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の背景のもとでなされたものであり、広範囲な医療用途に対して適用することが可能な、高出力かつ高輝度で平行性に優れたX線を発生させることが可能なX線発生方法及びX線発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明は、
ターゲットの表面に所定のエネルギー線源からエネルギー線を照射し、被写体に対する照射面積とほぼ同一の大きさとなるように前記ターゲットからX線を発生させる工程と、
前記X線を分光器に入射させ、前記X線から波長及び波長幅を選択されるとともに、平行光となった平行X線を生成する工程と、
を具えることを特徴とする、X線発生方法に関する。
【0008】
また、本発明は、
エネルギー線照射によりX線を発生させるためのターゲットと、
前記X線が被写体に対する照射面積とほぼ同一の大きさとなるように前記エネルギー線を生成し、このエネルギー線を前記ターゲットに対して照射するためのエネルギー線源と、
前記X線を入射させ、前記X線から波長及び波長幅を選択するとともに、平行X線を生成するための分光器と、
を具えることを特徴とする、X線発生装置に関する。
【0009】
本発明においては、従来のようなX線管球に代えてX線発生のためのターゲットを用い、このターゲットに対してエネルギー線を照射するようにしている。したがって、前記ターゲットに対する前記エネルギー線の照射強度及び照射面積を適宜制御することにより、従来のX線管球では実現できなかったような高出力かつ高輝度であって、被写体に対する所望の大きさのX線を生成することができる。
【0010】
また、本発明においては、前記ターゲットから発生したX線を分光器に入射させるようにしている。したがって、前記X線から前記被写体に対する照射面積とほぼ同一の面積を有する平行成分のX線のみを簡易に取り出すようにすることができる。さらに、前記X線を分光器に入射させることによって、取り出されたX線の波長成分は所定の範囲に限定されるようになる。
【0011】
なお、前記分光器は結晶板を含むようにすることができる。この場合、前記結晶板を2以上組み合わせて用い、前記結晶板の内少なくとも一つは、X線表面反射型結晶板として機能するようにすることができる。また、前記結晶板の内少なくとも一つは、X線透過型結晶板として機能するようにすることができる。これによって、目的とする平行X線を簡易に得ることができる。さらに、これら結晶板の組み合わせ方法を適宜に設定することにより、平行のみならず単色のX線を得ることができる。
【0012】
さらに、前記結晶板をLiFなどの立方晶から構成し、X線表面反射型結晶板及びX線透過型結晶板の双方として機能するようにすることができる。この場合、単一の結晶板に互いに直交する反射面が存在するので、反射角をαとすると、「両方の反射面からもαになる方向からX線を入射することにより、結晶板2枚分の機能を付加せしめることができるので、使用する結晶板の数を減少させた状態で目的とする平行X線を取り出すことができ、さらに次の結晶板で単色X線を得るようにすることができる。
【0013】
また、上述した複数の結晶板の総てをX線表面反射型結晶板とすることもできるし、その総てをX線透過型結晶板とすることもできる。さらに、これらの結晶板を組み合わせて用いることができる。
【0014】
前記結晶板は、例えば本発明のように断面積の大きいX線を用いる場合は、上述したリチウムフルオライド(LiF)に加えて、シリコン、グラファイト、ゲルマニウム及び水晶からなる群より選ばれる材料から構成することができる。これによって、ターゲットから発生したX線を入射させることによって、上述したような平行X線を簡易に形成することができる。
【0015】
さらに、上記結晶板はX線用多層膜反射板を含むようにすることができる。このような多層膜反射板は、例えば本発明のような高輝度のX線を用いる場合は、2種以上の物質を周期的に層状に重ねた膜として構成することができ、X線の回折現象を利用して単色或いは一定幅のX線を取り出しうる多層膜を意味する。この場合、前記多層膜反射板の周期により取り出される波長と反射角の関係が決まる。また、層の数や周期を微少量変化させることによって反射X線幅を変えることが出来る。本態様によれば、ターゲットから発生したX線を入射させることによって、上述したような平行X線を簡易に形成することができる。
【0016】
以上から、本発明によれば、所定の波長成分の平行X線を高出力かつ高輝度で得ることができるとともに、被写体の照射面積とほぼ同一の大きさの平行X線を得ることができるので、前記平行X線を例えば医療用として用いることにより、従来のX線管球に代わる高出力及び高分解能の医療用のX線源を提供することができる。したがって、従来のX線管球では撮像が困難であった、冠状動脈のように動いている被写体のX線撮影も、前記高出力に起因した短時間露光が可能となるとともに、その高分解能に起因して高い解像度で得ることができるようになる。
【0017】
具体的には、例えば非イオン性沃素を造影剤として静脈より注入し、沃素吸収端(エネルギー表現では33.17KeV、波長に換算すると0.3738Å)の前後のイメージを同時刻的に撮影し、差分法により血管を明瞭に浮かび上がらせる事が出来る。この技術は、高エネルギー放射光(日本ではKEKにある6GeVリングの放射光及び8GeVのSPring-8放射光)を用いて、完成されているが、医療現場にかかる高エネルギー放射光リングを建設することは難しいことから、実用化されていない。したがって、本発明によれば、このような撮像を可能とすることができる。
【0018】
なお、上記X線を分光器に入射することにより平行成分のX線が得られる理由は、結晶やX線用多層膜などの分光器にX線を照射すると2dsinθ= nλ(braggの式)に従ってX線が回折される。ここでdは結晶或いはX線用多層膜の面間隔、θは面に対するX線の入射角、λはX線の波長、nは整数である。dは結晶及びその面指数に固有の数値であり入射角;θが決まると波長λが決まる、但し、n倍の倍音を含む。波長λが単色X線で有ればθも一定となるので、その方向のX線は平行になる、然しその方向以外は平行ではない、従ってもう一枚の結晶を反射面が最初の結晶と直角になるように置き、その面で前記と同様に反射させることにより全方位で平行なX線を得ることができる。
【0019】
さらに、本発明の一態様においては、上記ターゲットから発生したX線を上記分光器に入射させる以前に、不要な長波長成分を除去するための吸収板及びスリットの少なくとも一方を透過させるようにすることができる。これによって、すなわち低エネルギーのX線成分を効果的かつ効率的に除去するようにすることができる。例えば、前記吸収板はアルミ板から構成することができる。また、前記吸収板を用いる場合については、分光器に対する不必要な熱負荷を減らすことができるようになる。
【0020】
なお、前記アルミ板は、ターゲットから発生したX線の強度に依存してその厚さを決定するが、本発明の場合、1〜10mmのオーダに決定することができる。
【0021】
また、上述したように、2つの反射面が互いに直角になるように結晶板を組み合わせて用いることにより平行X線を選択でき、更にもう一枚の結晶板で、余分な波長成分を効果的に取り除くことができるようになる。この場合、2以上の結晶板は互いに異なる結晶板とすることもできるが、同一の結晶板を2以上組み合わせることによっても、前記目的を達成することができる。
【0022】
また、本発明の他の態様においては、前記エネルギー線を好ましくは前記ターゲットの、前記エネルギー線の照射部の少なくとも一部、若しくは全体が溶解するようにして照射することが好ましい。前者の場合、前記エネルギー線を、前記ターゲットを構成する材料の温度がその融点近傍にまで上昇することを許容するような強度で、前記ターゲットに照射することができるので、前記ターゲットから高強度のX線を発生させることができる。なお、この際にはターゲット表面に被膜を形成し、前記ターゲット表面からの蒸発速度を低減するようにすることができる。前記被膜は、BN、グラファイト、ダイヤモンド、Beなどからなる群から選ばれる材料から構成することができる。
【0023】
後者の場合、前記同様に、前記エネルギー線を、前記ターゲットを構成する材料の温度がその融点近傍にまで上昇することを許容するとともに、前記ターゲット表面の前記エネルギー線が照射された部分を逐次溶解するようにしているので、前記ターゲット表面は前記溶解に伴って逐次平坦化処理がなされることになり、前記ターゲット表面は前記エネルギー線照射中において常に平坦な状態を保持するようになる。したがって、前記ターゲット表面の荒れに起因したX線の吸収などが生じることがない。この結果、高輝度のX線を長時間安定的に生成することができるようになる。
【0024】
さらに、本発明のその他の態様においては、前記ターゲットは回転式対陰極を構成し、
前記エネルギー線は前記回転式対陰極の回転による遠心力に抗して存在する部分に照射するようにする。これによって、前記ターゲットの、前記エネルギー線が照射された部分が溶解した場合においても、この溶解部分が外方へ飛散するのを効果的に抑制することができるようになる。また、前記ターゲット上の前記エネルギー線の照射位置を回転軸方向に沿って簡易にシフトさせることができるので、高輝度のX線をより長時間安定的に発生させることができる。
【0025】
但し、上述した回転式対陰極は構造が複雑となり、装置自体が高価となるので、本発明においては、安価な固定式のターゲットを用いることもできる。
【0026】
前記回転式対陰極は、前記回転式対陰極の外縁に沿って設けた筒状部分を有し、前記エネルギー線は前記筒状部分の内壁表面に照射するようにすることもできる。この場合、前記筒状部分において溶解が生じることになるので、このような溶解部分が外方へ飛散するのをより効果的に抑制することができる。
【0027】
また、前記筒状部材の側壁を前記中心軸側へ向けて傾斜させ、前記回転式対陰極の、前記電子線を照射した前記部分の、溶解に伴う飛散をさらに抑制するようにすることもできる。一方、前記筒状部材の側壁を前記中心軸から外方へ向けて傾斜させ、溶解部分の外方への飛散を抑制した状態で、前記回転式対陰極から発生した前記X線の取り出しを容易にすることもできる。
【0028】
さらに、前記回転式対陰極の、前記エネルギー線が照射される前記部分をV字溝状又はU字溝状に形成し、エネルギー線照射による溶解部分の飛散をより効果的に抑制するようにすることもできる。この際、前記V字溝状又は前記U字溝状に形成された前記部分は、前記エネルギー線照射による溶解後の、前記遠心力が作用した場合の形状と略同形状に形成することができる。これによって、前記ターゲットの表面荒れをより効果的に抑制することができ、高輝度のX線を長時間安定的に発生するようにすることができる。
【0029】
また、本発明の他の態様においては、前記ターゲットの、前記エネルギー線が照射される前記部分の周囲を、前記ターゲットの、前記X線発生に寄与するターゲット材料よりも高融点及び/又は高熱伝導度の物質で構成する。これによって、ターゲット全体の冷却効率の向上が図れるとともに、ターゲット全体の変形を防止することができるようになり、高輝度のX線を長時間安定的に発生させるようにすることができる。
【0030】
具体的に、X線発生のためのターゲットは、そのターゲット材料の、前記エネルギー線を照射する側に対する裏面において冷却水を流し、前記ターゲット材料、すなわち前記ターゲットを逐次冷却するようにしている。しかしながら、前記エネルギー線の強度をあまりに高くし過ぎたり、所定の箇所への照射時間が長時間化したりすると、前記ターゲット材料、すなわちターゲット自体が前記エネルギー線によって貫通し、前記冷却水がX線発生側に漏洩したりして、実質上装置の使用を不可能にしてしまう場合がある。
【0031】
したがって、前記ターゲットを特に、前記ターゲット材と、このターゲット材の裏面に設けた前記高融点及び/又は高熱伝導度の物質との2重構造とし、前記エネルギー線を前記ターゲット材に照射して前記X線を発生させるとともに、前記物質の裏面側に前記ターゲット材に対する冷媒を流すように構成することによって、前記物質の高融点の効果による高耐熱性の効果及び/又は高熱伝導性の効果による高冷却性の効果とによって、前記ターゲットが前記エネルギー線照射によって貫通するのを抑制し、前記冷媒の漏洩を効果的に抑制することができるようになる。
【0032】
但し、上述した回転式対陰極は構造が複雑となり、装置自体が高価となるので、本発明においては、安価な固定式のターゲットを用いることもできる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明によれば、広範囲な医療用途に対して適用することが可能な、高出力かつ高輝度で平行性に優れたX線を発生させることが可能なX線発生方法及びX線発生装置を提供することができる。また、本発明は工業用としてナノマシーンの製作や集積回路の製作などに使用することが出来、更に一般研究室ではトポグラフィーやイメージングなど大面積、平行X線を必要とするあらゆる分野で使用することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明のその他の特徴及び利点について、発明を実施するための最良の形態に基づいて説明する。
【0035】
図1は本発明の一実施の形態に係るX線発生装置の構成を示す断面図であり、図2は図1の一部拡大図である。以下、これらの図を参照にしながら一実施の形態を説明する。
【0036】
図に示すX線発生装置においては、回転式対陰極1が収納される対陰極室2と、電子線源3が収納される電子線源室4と、回転式対陰極1を回転駆動する駆動モータ5が設けられた回転駆動部6とが、互いに隣接するとともに気密構造部材2a、4a及び6aによって隔離されて形成されている。また、対陰極室2と電子線源室4とを仕切る隔壁部2bには、電子線源3から射出される電子線30を通過させるに必要な大きさの貫通孔2cが設けられている。さらに、対陰極室2及び電子線源室4の各々には図示しない真空排気装置が接続される真空排気□2d及び4dが設けられている。なお、貫通孔2cの部分に管を設けるようにすることもできる。
【0037】
なお、図においては、電子線30は線状に描かれているが、電子線源3としては、以下に示すように、広照射面積の2極管式又は3極管式などを用いることができ、これらから発せられる電子線30は比較的広い照射面積を有する。したがって、電子線30は実際には所定の幅を有するものであるが、ここでは簡略化して線状に記載しているものである。したがって、貫通孔2cもこのような電子線30を通過させるように、所定の大きさを有していることが必要となる。
【0038】
回転式対陰極1は、W(タングステン)等からなる筒状部11と、この筒状部11の筒の一方の開口部を塞ぐように形成された円板状部12と、筒状部11及び円板状部12の共通の中心軸をその中心軸とする回転軸部13とが連続して一体に形成され、かつ内部は冷却水を流すことができるように空洞に形成されており、筒状部11の筒の内壁表面11aを電子線照射部とするものである。
【0039】
回転対陰極1の回転軸部13は、回転駆動部6内に設けられた1対の軸受け部材13a、13bによって回転自在に支持されている。また、回転軸部13の外周部には上記駆動モータ5の回転子5bが取付けられ、この回転子5bを回転駆動する固定子5aが上記回転駆動部6内において気密構造部材6aに取付けられている。
【0040】
回転軸部13の円板状部12寄りの根元部には、回転軸部13と気密構造部材6aとの間を気密に保持して対陰極室2の真空を維持する回転軸シール部材13cが設けられている。
【0041】
さらに、回転対陰極1の内部には、電子線照射部11aの内壁面に冷却水を流通させるための固定隔壁部材14が挿入設定されている。この固定隔壁部材14は、回転軸部13の内部においては筒状をなしており、円板状部12に至ってその筒の端部を円板状に拡げ、筒状部11の内部の右端部内壁の手前で延長されている。
【0042】
すなわち、この固定隔壁14は、回転式対陰極1の内部の空洞部分をいわば二重管構造に仕切っている。この二重管の外側管部14aは冷却水の導入口16に連通されている。なお、冷却水の導入口16から導入された冷却水は軸受け部材13bや駆動モータ5が設けられた収納スペース内に洩れ出ないようにしつつ二重管の外側管部14a内に導入されるようになっている。
【0043】
したがって、冷却水導入口16から導入された冷却水は、二重管の外側管部14aを進行し、上記筒状部11の内部の右端部内壁で折り返して二重管の内側管部14bに進行して電子線照射部11aの内壁面を冷却した後、内側管部14b内をさらに進行して冷却水の排出□17を通じて外部に排出される。
【0044】
回転式対陰極1の電子線照射部11aの近傍の気密構造部材2aには、電子線照射部11aに電子線30が照射されたときに発生するX線20を外部に取り出すためのX線窓21が形成されている。このX線窓21にはべリリウム膜、アルミニウム膜、等のX線透過性の材料からなるX線透過膜22が形成されており、対陰極室2の真空を維持しながらX線を取り出せるようになっている。なお、本例において、X線20は被写体に対する実効的な照射面積とほぼ同じような大きさを有するため、X線窓21の大きさも、前記X線の大きさに対応したようなものとする。
【0045】
また、X線窓21の外方には、X線20を入射させ平行X線40とするための分光器20が設けられている。分光器20は、例えばシリコン、リチウムフルオライド(LiF)、グラファイト、ゲルマニウム及び水晶からなる群より選ばれる材料からなる結晶板や、X線用多層膜反射板から構成する。
【0046】
さらに、これら結晶板には、以下に詳述するように、X線表面反射型結晶板として機能せしめることができ、X線透過型結晶板として機能せしめることができる。また、前記結晶板をLiFなどの立方晶から構成することにより、X線表面反射型結晶板及びX線透過型結晶板双方の機能を生ぜしめることができ、1枚の結晶板で平行化を達成することができる。そして、これらの機能を単独であるいは適宜に組み合わせて用いることにより、目的とする平行X線さらには単色X線を生成する。
【0047】
なお、X線用多層膜反射板は、上述したように、2種以上の物質を周期的に層状に重ねた膜として構成することができ、X線の回折現象を利用して単色或いは一定幅のX線を取り出しうる多層膜を意味する。この場合、前記多層膜反射板の周期により取り出される波長と反射角の関係が決まる。また、層の数や周期を変化させることによって反射X線幅を変えることが出来る。
【0048】
また、結晶板は2以上を組み合わせて用いることができる。これによって、余分な波長成分を効果的に取り除くことができるようになる。この場合、2以上の結晶板は互いに異なる結晶板とすることもできるが、同一の結晶板を2以上組み合わせることによっても、前記目的を達成することができる。
【0049】
電子線源3は用途に応じて任意の照射領域を有する電子線源から構成することができる。例えば、図1及び2に示すX線発生装置を医療用として使用する場合は、以下に詳述するような工程を経て最終的に得る平行X線40は数センチから数十センチのオーダの照射領域を有することが要求されるので、電子線源3としては比較的大きな照射領域を有する2極管式や3極管式のものを用いることが好ましい。なお、電子線源3には、高圧導入部31から所定の電力が供給されるように構成されている。
【0050】
次に、図1及び2に示すX線発生装置を用いたX線発生方法について説明する。上述の構成において、冷却水導入口16から冷却水を導入し、騒動モータ5によって回転式対陰極1を高速回転させ、電子線源3から回転式対陰極1の電子線照射部11aに電子線30を照射し、X線20を発生させる。この際、電子線30の強度は電子線照射部11aの少なくとも一部あるいは全部が溶解するような強度とする。
【0051】
電子線照射部11aの少なくとも一部が溶解するような強度の電子線30を照射することにより、回転式対陰極1を構成する材料(例えばWなど)の温度をその融点近傍にまで上昇することができるようになる。したがって、回転式対陰極1(電子線照射部11a)から高強度のX線を発生させることができるようになる。
【0052】
また、電子線照射部11aの総てが溶解するような強度の電子線30を照射することにより、前記同様に、回転式対陰極1を構成する材料(例えばWなど)の温度をその融点近傍にまで上昇することができるようになるとともに、電子線照射部11aが回転式対陰極1の回転に伴って逐次溶解するようになるので、回転式対陰極1(電子線照射部11a)の溶解に伴って逐次平坦化処理がなされることになり、回転式対陰極1(筒状部11)の表面は電子線30照射中において常に平坦な状態を保持するようになる。したがって、回転式対陰極1(筒状部11)の荒れに起因したX線の吸収などが生じることがない。この結果、高輝度のX線20を長時間安定的に生成することができるようになる。
【0053】
なお、本例においては、回転式対陰極1(筒状部11)の表面における電子線照射部11aの溶解に伴って、その表面荒れを表面平均粗さで1μm以下、さらには100nm以下にまですることができる。すなわち、回転式対陰極1(筒状部11)の表面を長時間に亘って極めて平坦に維持することができる。一方、従来の方法では、例えば回転式対陰極1の表面荒れは表面平均粗さで2〜10μm程度である。したがって、本発明では、このような対陰極1の表面荒れの相違に基づいて、高輝度のX線を安定的に生成することができることが分かる。
【0054】
また、本例では、電子線照射部11aは回転式対陰極1の筒状部11の内壁面に設定しているので、この場合、筒状部11の前記内壁面において溶解が生じることになる。したがって、電子線照射部11aは回転式対陰極1の回転に伴う遠心力に抗して存在するようになり、外方への飛散を効果的に抑制することができる。
【0055】
なお、本例においては、回転式対陰極1の筒状部11に対して特に変形加工を加えることなく、すなわち、筒状部11の側壁が回転軸線(中心軸)に平行となる状態のままで、前記内壁面を電子線照射部11aとしている。しかしながら、電子線照射部11aの表面をその断面の表面輪郭線が回転軸線に対して、コンマ数度ないし十数度傾斜するようにすることもできる。
【0056】
具体的には、筒状部11の前記側壁を前記回転軸線に向けてコンマ数度ないし数十度の角度で傾斜するようにすることができる。この場合、電子線照射部11aは筒状部11の内壁面上において遠心力に抗してより安定的に存在することができるようになる。したがって、電子線照射部11aの溶解による外方への飛散をさらに効果的に抑制することができるようになる。
【0057】
一方、筒状部11の前記側壁を前記中心軸から外方へ向けて傾斜させるようにすることもできる。この場合、電子線照射部11aの外方への飛散を抑制した状態で、回転式対陰極1から発生したX線の取り出しを容易にすることができる。
【0058】
さらに、電子線照射部11aの部分を断面がV字溝状又はU字構状に形成すれば、電子照射部11aの溶解による外方への飛散を効果的に防止できる。この場合には、V宇状又はU字状の溝巾やその傾斜角度もしくは溝深さ等は、X線取り出しが可能な寸法にすることは勿論である。さらには、上記溝形状を、前記表面部分が溶解して液状になった場合に遠心力の作用によって形成される液状部の表面形状と同一の表面形状に予め形成しておけば、電子線照射部11aの電子線照射による表面変形を軽減することが可能になる。
【0059】
また、電子線照射部11aの部分だけを、発生させるX線の種類で決まるターゲット物質で構成し、その周囲をより高融点の物質及び/又は熱伝導度のより高い物質で構成すれば、回転式対陰極1全体の冷却効率の向上が図れるとともに、回転式対陰極1全体の変形を防止することができるようになり、高輝度のX線を長時間安定的に発生させるようにすることができる。
【0060】
さらに、回転対陰極1、特に電子線が照射される筒状部11をターゲット材と、このターゲット材の裏面に設けた高融点及び/又は高熱伝導度の物質との2重構造とし、電子線30を前記ターゲット材に照射してX線30を発生させるとともに、前記物質の裏面側に前記ターゲット材に対する冷媒を流すように構成することによって、前記物質の高融点の効果による高耐熱性の効果及び/又は高熱伝導性の効果による高冷却性の効果とによって、回転対陰極1の筒状部11が前記電子線照射によって貫通するのを抑制し、前記冷媒の漏洩を効果的に抑制することができるようになる。
【0061】
なお、前記冷媒としては、冷却水、不凍液や冷却オイルなどの液体状のものを用いることができる。
【0062】
以上のようにして回転式対陰極1(筒状部11)から発生したX線20は分光器41に入射することにより、平行な成分のみが取り出されるようになり、平行X線40が形成されるようになる。また、分光器41により、平行X線40は所定の波長成分のX線のみを含むようになる。したがって、平行X線40を医療用などに用いた場合には、余分な波長成分を含まずかつ平行性が良いため、低被曝量かつ高分解能で所定の患部などの撮像を行うことができる。また、上述したように、X線20は極めて高出力(高輝度)の状態で得ることができるので、平行X線40も高い出力(輝度)状態で得ることができる。したがって、前述した平行X線40の高分解能と効果と相伴って、冠状動脈などの被写体の動きを、短時間露光を通じて高分解能で撮像することができるようになる。
【0063】
なお、本発明においては、電子線照射部11aを溶解させるようにしているので、対陰極室2内において、電子線照射部11aを構成する金属の蒸気圧が上昇し、X線透過膜22が汚染される場合がある。これを防止するために、対陰極室2内のX線透過膜22の前面に交換可能なX線透過性の保護膜を設けることが望ましい。この保護膜としては、例えば、反跳電子に耐えられるNi膜、BN膜、Al膜、マイラー膜等の長尺状の保護膜をロールに巻いた供給ロールと、この供給ロールの保護膜を巻き取る巻取ロールとをX線窓21の内側に設け、供給ロールと巻取ロールとの間に張られた保護膜がX線透過膜1aの前面に配置されるようにすればよい。なお、前記保護膜の厚さは、前記反跳電子のエネルギーやX線の吸収などを考慮して適宜に設定する。
【0064】
また、上記具体例においては、エネルギー線として電子線を用いているが、その他のエネルギー線、例えばレーザ光線やイオンなどのエネルギー線を適宜に用いるようにすることができる。
【0065】
また、本例では、回転式対陰極1の、電子線30の照射部分であって実際のターゲットとして機能する筒状部11をWから構成しているが、当然にその他の材料、例えばMo、Cuなどから構成するようにすることもできる。
【0066】
さらに、本例では、回転式対陰極を用いているが、さほど高出力(高輝度)を要求しないような用途においては、電子線照射部を溶解させる必要がないので、通常の平板状の対陰極を用いることもできる。
【0067】
図3は、平板状の固定式ターゲットを用いた場合のX線発生装置の一例を示す概略図である。なお、図1及び2と類似の構成要素に対しては同じ参照符号を用いて表している。この場合、特に大面積のX線が得られるようになり、分光器の構成が重要となるので、本例においては、分光器の構成についても詳述するようにしている。
【0068】
図3に示すX線発生装置においては、真空容器50内に、対陰極51が配置されているとともに、これと対向するようにして陰極52が設けられている。陰極52はウエーネルト53の内側にセラミックなどの絶縁体で固定され、通常陰極とウエーネルトには電位差が与えられ、ウエーネルトが電子線用のレンズとして機能している。
【0069】
対陰極51と陰極52との間にはアパチャーグリッド54及び陽極55が設けられている。アパチャーグリッド54は陰極に対し条件により異なるが概ね±7kV変化でき、負電位の時は電子を遮断し、正電位の時は陰極の空間電荷を中和し、多量の電子を効果的に引き出すのに用いられる。即ち、3極管ではアパチャーグリッドにより任意の幅のパルスを容易に発生させることが出来る。陽極55は陰極52から発せられた電子線30を加速するため及びその後の電位差をなくし高温になったターゲットの影響を減らすために設けられているものであって、本例においては必要に応じて省略することができる。また、真空容器50にはX線取り出し窓56が設けられており、対陰極51から発生したX線20を外部に取り出させるように構成されている。
【0070】
なお、通常グリッドは効率を良くするため網目状のものが多いが、それでは電子線束に編み目状の濃淡が出来るため、敢えて円筒形のグリッドを用いる、即ち電子線は円筒の中を通るため陰が出来ない。このようなグリッドをアパチュアーグリッドという。
【0071】
なお、本例においては、対陰極51及び真空容器50即ちX線取り出し窓56以外を全て絶縁性オイルで冷却するようにしているが、冷却を必要とする場所、特に対陰極51にパイプを取り付け、所定の冷媒を循環させて冷却するようにすることもできる。
【0072】
また、真空容器50の外方の、X線取り出し窓56の近傍には第1の結晶板61及び第2の結晶板62が所定の角度をなすようにして配置されている。
【0073】
図3に示す装置においては、陰極52から発生した電子線30をグリッド54で電流を制御し、陽極55で加速して対陰極51の表面に照射し、所定の面積(大面積)を有する(白色かつ非平行)X線20を生成させる。次いで、X線20をX線取り出し窓56から外部に取り出し、LiFなど立方晶系の結晶からなる第1の結晶板61及び任意の結晶からなる第2の結晶板62で反射させることによって平行な単色X線41とする。なお、61は結晶板1枚で平行化を完成させるため、透過型結晶板である。
【0074】
本例では、第1の結晶板61及び第2の結晶板62を用いているので、不要な波長成分を除去することができる。例えば平行なX線41は入射角、反射角が第1の結晶板61、第2の結晶板62で共にαであるから第2の結晶板62でも反射を起こしその後は直進して被写体に届く。しかし第1の結晶板61で平行になった目的の波長とは異なるX線40の第1の結晶板61での入射角と反射角はβであるが、第2の結晶板62での入射角はγとなりβとは異なるため反射しない。
【0075】
なお、LiFなどの立方晶系を用いる代わりに、2枚の結晶板を互いの反射面が略直交するように張り合わせることによっても実施することができる。
【0076】
なお、これらの結晶板は、図1及び2に関連して説明した結晶板と同じシリコン、リチウムフルオライド(LiF)、グラファイト、ゲルマニウム及び水晶からなる群より選ばれる材料から構成することができる。
【0077】
次に、図3に示す平板状の固定式ターゲットを用いた場合のX線発生装置の変形例について説明する。図4は、前記変形例の概略図である。なお、図1〜3と類似の構成要素に対しては同じ参照符号を用いて表している。本例においては、X線発生装置本体は図3と同じ構成を有し、分光器の構成のみが図3に示す例と異なる。
【0078】
図3に示すX線発生装置では、分光器は2枚の反射型結晶板61及び62によって構成されていたが、本例のX線発生装置では、分光器は2枚のX線透過型(ラウエ型)結晶板71及び73と、1枚のX線表面反射型結晶板72とから構成されている。図4に示すように、これらの結晶板は、X線発生装置の本体から第1の結晶板71、第2の結晶板72及び第3の結晶板73の順に配列されている。
【0079】
なお、第2の結晶板72は、反射面(主面)が紙面と略平行となっており、X線の反射は紙面の手前側に向かって行われることになる。また、第1の結晶板71及び第3の結晶板73の回折面(主面)は、紙面と略垂直となっている。したがって、第2の結晶板72の反射面(主面)と、第1の結晶板71及び第3の結晶板73の回折面(主面)とは互いに略垂直の関係となる。また、例えば第一結晶板71及び第二結晶板72にシリコンのd(111)反射面を用い、第三結晶板73にグラファイトのd’(200)反射面を用いた場合、面間隔dとd’とが異なるため、第一結晶板に対する入射角δと第三結晶板に対する入射角δ’は異なるが、共に目的とする波長λに対して2dsinδ=λ、2d’sinδ’=λを満たすよう結晶を配置する。
【0080】
図4に示す例では、図3に示す例と同様にして、対陰極51から発生した所定の面積(大面積)を有する(白色かつ非平行)X線20を、X線取り出し窓56を介して外部に取り出した後、第1の結晶板71に対して角度δで入射させる。この際、X線20はブラックの回折式2dsinδ= nλに従って回折し、第1の結晶板71内を通過する。この際、特に明示していないが、異なる波長λ’のX線が角度δ’’で入射した際に上記ブラックの回折式を満足すれば、同じく第1の結晶板71を通過することができる。したがって、第1の結晶板71を通過したのみでは、X線20は未だ白色かつ非平行なX線のままである。
【0081】
なお、X線20が大面積X線として生成されているので、第一結晶板71を通過した段階では波長λのX線は紙面に略平行な面に沿った平行成分を有するようになるが、その他の非平行成分も残存する。また、波長λ’のX線は波長λのX線とは異なる方向に回折するので、これらは互いに平行とはならない。
【0082】
次いで、第1の結晶板71を通過したX線20は第2の結晶板72に入射し、紙面手前側に反射されるようになる。そして、このようにして得た反射光を第3の結晶板73に対して角度δ’で入射するようにすることによって、前記反射光の内、平行成分のみが第3の結晶板73に対してブラッグの回折式を満足し、平行単色X線41として取り出される。
【0083】
なお、平行X線は、上述した要件を満足しさえすれば、波長λ及びλ’のX線、すなわち波長の異なるX線毎に平行X線として生成することができる。即ち、第3結晶板を変化するだけで任意の波長の平行X線を選び出すことが出来る。ただし、大きな波長変化に対しては、出射X線の断面積が狭くなることがある。その場合には第1結晶、第2結晶共に入射角を調整することにより上記電面積を元に戻すことが出来る。
【0084】
以上、本発明を具体例を挙げながら詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【0085】
具体的には、図1及び2に関する具体例、並びに図3及び4に関する具体例において、対陰極の電子線照射部からの蒸発速度を低減させるべく、その表面に被膜を形成することができる。この被膜は、BN、グラファイト、ダイヤモンド、Beからなる群から選ばれる材料から構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施形態に係るX線発生装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1の一部拡大図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係るX線発生装置の構成を示す図である。
【図4】図3に示すX線発生装置の変形例の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
1 回転式対陰極
2 対陰極室
3 電子線源
4 電子線源室、
5 駆動モータ
6 回転駆動部
11 筒状部
11a 電子線照射部、
20 X線
30 電子線
40 平行X線
41 平行X線
50 真空容器
51 対陰極
52 陰極
53 ウエーネルト
54 グリッド
55 陽極
56 X線取り出し窓
61 第1の(X線表面反射型)結晶板
62 第2の(X線表面反射型)結晶板
71 第1の(X線透過型)結晶板
72 第2の(X線表面反射型)結晶板
73 第3の(X線透過型)結晶板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットの表面に所定のエネルギー線源からエネルギー線を照射し、被写体に対する照射面積とほぼ同一の大きさとなるように前記ターゲットからX線を発生させる工程と、
前記X線を分光器に入射させ、前記X線から波長及び波長幅を選択するとともに、平行光となった平行X線を生成する工程と、
を具えることを特徴とする、X線発生方法。
【請求項2】
前記分光器は結晶板を含むことを特徴とする、請求項1に記載のX線発生方法。
【請求項3】
前記結晶板は、シリコン、リチウムフルオライド(LiF)、グラファイト、ゲルマニウム及び水晶からなる群より選ばれる材料からなる結晶板であることを特徴とする、請求項2に記載のX線発生方法。
【請求項4】
前記結晶板を2以上組み合わせて用いることを特徴とする、請求項2又は3に記載のX線発生方法。
【請求項5】
前記結晶板の少なくとも一つは、X線表面反射型結晶板として機能することを特徴とする、請求項4に記載のX線発生方法。
【請求項6】
前記結晶板の少なくとも一つは、X線透過型(ラウエ型)結晶板として機能することを特徴とする、請求項4又は5に記載のX線発生方法。
【請求項7】
前記結晶板はLiFからなり、X線表面反射型結晶板及びX線透過型結晶板の双方として機能することを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一に記載のX線発生方法。
【請求項8】
前記結晶板はX線用多層膜反射板を含むことを特徴とする、請求項2〜6のいずれか一に記載のX線発生方法。
【請求項9】
前記X線を前記分光器に入射させる以前に、不要な長波長成分を除去するための吸収板及びスリットの少なくとも一方を透過させることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一に記載のX線発生方法。
【請求項10】
前記吸収板はアルミ板であることを特徴とする、請求項9に記載のX線発生方法。
【請求項11】
前記エネルギー線により、前記ターゲット表面の、前記エネルギー線照射部の少なくとも一部を溶解することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一に記載のX線発生方法。
【請求項12】
前記エネルギー線により、前記ターゲット表面の、前記エネルギー線照射部を溶解することを特徴とする、請求項11に記載のX線発生方法。
【請求項13】
前記ターゲットの表面に被膜を形成し、前記ターゲット表面からの蒸発速度を低減する工程を具えることを特徴とする、請求項11又は12に記載のX線発生方法。
【請求項14】
前記被膜は、BN、グラファイト、ダイヤモンド、Beからなる群から選ばれる材料から構成することを特徴とする、請求項13に記載のX線発生方法。
【請求項15】
前記ターゲットは固定式であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一に記載のX線発生方法。
【請求項16】
前記ターゲットは回転式対陰極を構成し、前記エネルギー線は前記回転式対陰極の回転による遠心力に抗して存在する部分に照射することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一に記載のX線発生方法。
【請求項17】
前記回転式対陰極は、前記回転式対陰極の外縁に沿って設けた筒状部分を有し、前記エネルギー線は前記筒状部分の内壁表面に照射することを特徴とする、請求項16に記載のX線発生方法。
【請求項18】
前記筒状部材の側壁を前記中心軸側へ向けて傾斜させ、前記回転式対陰極の、前記エネルギー線を照射した前記部分の、溶解に伴う飛散を抑制することを特徴とする、請求項17に記載のX線発生方法。
【請求項19】
前記筒状部材の側壁を前記中心軸から外方へ向けて傾斜させ、前記回転式対陰極から発生した前記X線の取り出しを容易にすることを特徴とする、請求項17に記載のX線発生方法。
【請求項20】
前記回転式対陰極の、前記エネルギー線が照射される前記部分をV字溝状又はU字溝状に形成することを特徴とする、請求項16〜19のいずれか一に記載のX線発生方法。
【請求項21】
前記回転式対陰極の、前記エネルギー線が照射される前記V字溝状又は前記U字溝状に形成された前記部分は、前記エネルギー線照射による溶解後の、前記遠心力が作用した場合の形状と略同形状に形成することを特徴とする、請求項20に記載のX線発生方法。
【請求項22】
前記ターゲットの、前記エネルギー線が照射される前記部分の周囲を、前記ターゲットの、前記X線発生に寄与するターゲット材料よりも高融点及び/又は高熱伝導度の物質で構成することを特徴とする、請求項1〜21のいずれか一に記載のX線発生方法。
【請求項23】
前記ターゲットを前記ターゲット材と、このターゲット材の裏面に設けた前記高融点及び/又は高熱伝導度の物質との2重構造とし、前記エネルギー線を前記ターゲット材に照射して前記X線を発生させるとともに、前記物質の裏面側に前記ターゲット材に対する冷媒を流すことを特徴とする、請求項22に記載のX線発生方法。
【請求項24】
前記エネルギー線源は電子線源であり、前記エネルギー線は電子線であることを特徴とする、請求項1〜23のいずれか一に記載のX線発生方法。
【請求項25】
前記電子線源は、2極管式又は3極管式の電子線源であることを特徴とする、請求項24に記載のX線発生方法。
【請求項26】
前記平行X線は医療用として使用することを特徴とする、請求項1〜25のいずれか一に記載のX線発生方法。
【請求項27】
エネルギー線照射によりX線を発生させるためのターゲットと、
前記X線が被写体に対する照射面積とほぼ同一の大きさとなるように前記エネルギー線を生成し、このエネルギー線を前記ターゲットに対して照射するためのエネルギー線源と、
前記X線を入射させ、前記X線から波長及び波長幅を選択するとともに、平行光となった平行X線を生成するための分光器と、
を具えることを特徴とする、X線発生装置。
【請求項28】
前記分光器は結晶板を含むことを特徴とする、請求項27に記載のX線発生装置。
【請求項29】
前記結晶板は、シリコン、リチウムフルオライド(LiF)、グラファイト、ゲルマニウム及び水晶からなる群より選ばれる材料からなる結晶板であることを特徴とする、請求項28に記載のX線発生装置。
【請求項30】
前記結晶板を2以上組み合わせて用いることを特徴とする、請求項28又は29に記載のX線発生方装置。
【請求項31】
前記結晶板の少なくとも一つは、X線表面反射型結晶板として機能することを特徴とする、請求項30に記載のX線発生装置。
【請求項32】
前記結晶板の少なくとも一つは、X線透過型結晶板として機能することを特徴とする、請求項30又は31に記載のX線発生装置。
【請求項33】
前記結晶板はLiFからなり、X線表面反射板及びX線透過型結晶板双方として機能することを特徴とする、請求項30〜32のいずれか一に記載のX線発生装置。
【請求項34】
前記結晶板はX線用多層膜反射板を含むことを特徴とする、請求項27に記載のX線発生装置。
【請求項35】
前記X線を前記分光器に入射させる以前に、不要な長波長成分を除去するべく前記X線を透過させるための吸収板及びスリットの少なくとも一方を具えることを特徴とする、請求項27〜34のいずれか一に記載のX線発生装置。
【請求項36】
前記吸収板はアルミ板であることを特徴とする、請求項35に記載のX線発生装置。
【請求項37】
前記エネルギー線により、前記ターゲット表面の、前記エネルギー線照射部の少なくとも一部を溶解することを特徴とする、請求項27〜36のいずれか一に記載のX線発生装置。
【請求項38】
前記エネルギー線により、前記ターゲット表面の、前記エネルギー線照射部を溶解することを特徴とする、請求項37に記載のX線発生装置。
【請求項39】
前記ターゲットの表面に被膜を形成し、前記ターゲット表面からの蒸発速度を低減するために前記ターゲットの表面に被膜を具えることを特徴とする、請求項37又は38に記載のX線発生装置。
【請求項40】
前記被膜は、BN、グラファイト、ダイヤモンド、Beからなる群から選ばれる材料から構成することを特徴とする、請求項39に記載のX線発生装置。
【請求項41】
前記ターゲットは固定式であることを特徴とする、請求項27〜40のいずれか一に記載のX線発生装置。
【請求項42】
前記ターゲットは回転式対陰極を構成し、前記エネルギー線は前記回転式対陰極の回転による遠心力に抗して存在する部分に照射するように構成したことを特徴とする、請求項27〜40のいずれか一に記載のX線発生装置。
【請求項43】
前記回転式対陰極は、前記回転式対陰極の外縁に沿って設けた筒状部分を有し、前記エネルギー線は前記筒状部分の内壁表面に照射するように構成したことを特徴とする、請求項42に記載のX線発生装置。
【請求項44】
前記筒状部材の側壁を前記中心軸側へ向けて傾斜させ、前記回転式対陰極の、前記電子線を照射した前記部分の、溶解に伴う飛散を抑制するように構成したことを特徴とする、請求項43に記載のX線発生装置。
【請求項45】
前記筒状部材の側壁を前記中心軸から外方へ向けて傾斜させ、前記回転式対陰極から発生した前記X線の取り出しを容易にするように構成したことを特徴とする、請求項43に記載のX線発生装置。
【請求項46】
前記回転式対陰極の、前記エネルギー線が照射される前記部分をV字溝状又はU字溝状に形成したことを特徴とする、請求項42〜45のいずれか一に記載のX線発生装置。
【請求項47】
前記回転式対陰極の、前記エネルギー線が照射される前記V字溝状又は前記U字溝状に形成された前記部分は、前記エネルギー線照射による溶解後の、前記遠心力が作用した場合の形状と略同形状に形成したことを特徴とする、請求項46に記載のX線発生装置。
【請求項48】
前記ターゲットの、前記エネルギー線が照射される前記部分の周囲を、前記ターゲットの、前記X線発生に寄与するターゲット材料よりも高融点及び/又は高熱伝導度の物質で構成したことを特徴とする、請求項27〜47のいずれか一に記載のX線発生装置。
【請求項49】
前記ターゲットを前記ターゲット材と、このターゲット材の裏面に設けた前記高融点及び/又は高熱伝導度の物質との2重構造とし、前記エネルギー線を前記ターゲット材に照射して前記X線を発生させるとともに、前記物質の裏面側に前記ターゲット材に対する冷媒を流すように構成したことを特徴とする、請求項48に記載のX線発生装置。
【請求項50】
前記エネルギー線源は電子線源であり、前記エネルギー線は電子線であることを特徴とする、請求項27〜49のいずれか一に記載のX線発生装置。
【請求項51】
前記電子線源は、2極管式又は3極管式の電子線源であることを特徴とする、請求項50に記載のX線発生装置。
【請求項52】
前記平行X線は医療用として使用することを特徴とする、請求項27〜51のいずれか一に記載のX線発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−287643(P2007−287643A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160780(P2006−160780)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(598070588)
【出願人】(505332613)
【Fターム(参考)】