説明

X線診断装置及び画像処理方法

【課題】アブレーション治療の精度及び効率向上を実現するX線診断装置及びX線診断装置に関する画像処理方法の提供。
【解決手段】X線管12は、X線を発生する。X線検出器14は、X線管12から発生され被検体を透過したX線を検出する。記憶部28は、被検体の食道に関する食道画像のデータを記憶する。X線画像発生部24は、カテーテル術中において、X線検出器14からの出力に基づいて解剖学的に食道の近傍にある左心房に関するX線画像のデータを発生する。表示制御部34は、X線画像に含まれるカテーテル領域の先端部分が視認可能なように、食道画像に含まれる食道領域をX線画像に重ね合わせて表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アブレーション治療に用いられるX線診断装置及びX線診断装置に関する画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アブレーション治療において操作者は、X線診断装置によりアブレーションカテーテルの位置を把握する。左心房のアブレーション治療の場合、アブレーションカテーテルの位置だけでなく、食道の位置及び形状を把握することが重要である。それは、患者正面方向から見た場合、左心房の裏には食道が位置するため、アブレーションカテーテルから発生される熱により食道に損傷を与える危険性があるためである。しかし、食道は、造影剤により造影することができない。
【0003】
ところで、X線コンピュータ断層撮影装置により発生されたボリュームデータをX線診断装置に取り込む技術がある。従って、術前にX線コンピュータ断層撮影装置により発生された食道に関するボリュームデータをX線診断装置に取り込めば、アブレーション治療中に食道の位置及び形状を操作者に知らせることができる。
【0004】
しかし、単にボリュームデータを取り込んで表示するだけでは、食道は塗りつぶされて表示される。そのため、表示画像上で食道に重なる位置にあるカテーテルは、画面上見えなくなってしまう。従って、食道を表示させることでかえってアブレーション治療の効率が下がってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、アブレーション治療の精度及び効率向上を実現するX線診断装置及びX線診断装置に関する画像処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の局面に係るX線診断装置は、X線を発生するX線管と、前記X線管から発生され被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記被検体の食道に関する食道画像のデータを記憶する記憶部と、カテーテル術中において、前記X線検出器からの出力に基づいて解剖学的に前記食道の近傍にある左心房に関するX線画像のデータを発生する発生部と、前記X線画像に含まれるカテーテル領域の先端部分が視認可能なように、前記食道画像に含まれる食道領域を前記X線画像に重ね合わせて表示する表示部と、を具備する。
【0007】
本発明の第2の局面に係るX線診断装置に関する画像処理方法は、X線を発生するX線管と、前記X線管から発生され被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、を具備するX線診断装置に関する画像処理方法において、カテーテル術中において、前記X線検出器からの出力に基づいて解剖学的に前記食道の近傍にある左心房に関するX線画像のデータを発生し、前記X線画像に含まれるカテーテル領域の先端部分が視認可能なように、前記被検体の食道に関する食道画像に含まれる食道領域を前記X線画像に重ね合わせて表示する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アブレーション治療の精度及び効率向上を実現するX線診断装置及びX線診断装置に関する画像処理方法を提供することが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るX線診断装置の構成を示す図。
【図2】心臓と食道との位置関係を示す図。
【図3】図1の表示制御部による、食道領域のエッジのみをX線画像に重ねて表示する例を示す図。
【図4】図1のシステム制御部の制御により行なわれるアブレーションカテーテル操作の支援処理の典型的な流れを示す図。
【図5】図4のステップS7における、アブレーションカテーテルが食道に接近している旨の報知例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係るX線診断装置及びX線診断装置に関する画像処理方法を説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るX線診断装置1の構成を示す図である。図1に示すように、X線診断装置1は、LAN(Local Area Network)を介してX線コンピュータ断層撮影装置100に接続される。X線診断装置1とX線コンピュータ断層撮影装置100とにより、アブレーション治療の支援システムが構成される。
【0012】
X線コンピュータ断層撮影装置100は、アブレーション治療前に、被検体に関するボリュームデータを発生する。X線コンピュータ断層撮影装置100は、発生されたボリュームデータから食道領域と特定部位領域とをそれぞれ抽出する。特定部位領域は、位置合わせのために利用される。食道領域のボリュームデータと特定部位領域のボリュームデータとは、DICOM(Digital Imaging and COmmunications in Medicine)規格に準拠したフォーマット(format)に変換されて、患者データとしてX線診断装置1に送信される。なお、食道領域のボリュームデータの座標系と特定部位領域のボリュームデータの座標系とは、一致しているものとする。
【0013】
X線診断装置1は、アブレーション治療中に用いられる。X線診断装置1は、主にアブレーションカテーテルや電極カテーテルの位置を把握するために用いられる。アブレーション治療中、X線診断装置1は、被検体の胸部をX線透視することにより、被検体の左心房に関するX線画像のデータを連続的に発生する。発生されるX線画像には、アブレーションカテーテル領域や電極カテーテル領域が含まれる。
【0014】
アブレーション治療は、頻脈性不整脈のための治療方法である。アブレーション治療において操作者は、一般的には、足の付け根等にある太い血管からアブレーションカテーテルを挿入し、心臓内部の不整脈の原因となっている部分を高周波電流で焼ききる。この方法は、心筋焼灼術と呼ばれている。不整脈の原因部分が心臓の左心房の一部分に出現する場合がある。図2に示すように、患者正面方向から見て食道は、左心房の裏に位置する。そのため、左心房を焼ききる際、アブレーションカテーテルから発生される熱により食道に損傷を与える危険性がある。
【0015】
そこで、本実施形態に係るX線診断装置1は、X線画像上においてカテーテルが食道に重なる場合にも、カテーテルの先端部分と食道との間の位置関係を術者が把握可能な表示態様でX線画像と食道画像とを重ね合わせて表示する。なお、上述のようにX線画像は、アブレーション治療中にX線診断装置1により発生される。食道画像は、X線コンピュータ断層撮影装置100から供給された食道領域のボリュームデータに基づいてX線診断装置1により発生される。
【0016】
以下、図1を参照しながら、X線診断装置1の構成について説明する。
【0017】
図1に示すように、X線診断装置1は、撮影装置10と画像処理装置20とを備える。撮影装置10は、X線管12とX線検出器14とを搭載するアーム16を備える。X線管12は、図示しない高電圧発生装置からの高電圧の印加を受けてX線を発生する。X線検出器14は、X線管12から発生され被検体を透過するX線を検出する。X線検出器14は、マトリクス状に配置された複数の半導体検出素子を有するフラットパネルディテクタ(FPD:flat panel detector)で構成される。なおFPDに代えて、X線検出器14は、イメージインテンシファイアとTVカメラとの組み合わせから構成されてもよい。X線診断装置1は、撮影装置10を制御することにより、X線撮影又はX線透視を行う。X線透視は、X線撮影に比して線量の少ないX線を連続して被検体に照射する方法である。
【0018】
画像処理装置20は、システム制御部22を中枢として、X線画像発生部24、ネットワークインターフェース部26、記憶部28、位置ずれ量算出部30、3次元画像処理部32、表示制御部34、表示デバイス36、操作部38、及びDICOMファイル変換部40を備える。
【0019】
X線画像発生部24は、X線検出器14から出力される透過X線の強度に応じた電気信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号を前処理してX線画像のデータを発生する。X線画像は、アブレーションカテーテル領域と電極カテーテル領域とを含む。アブレーションカテーテル領域は、左心房に挿入されたアブレーションカテーテルに対応する画素領域である。電極カテーテル領域は、左心房に挿入された電極カテーテルに対応する画素領域である。左心房は、造影されていても、造影されていなくてもよい。造影されていない場合、左心房は、X線画像上において視認不可能である。X線透視の場合、X線画像のデータは、秒間30〜60枚程度発生される。
【0020】
ネットワークインターフェース部26は、LANに接続される。LANには、X線コンピュータ断層撮影装置100が接続されている。ネットワークインターフェース部26は、LANに接続されたX線コンピュータ断層撮影装置100と通信する。ネットワークインターフェース部26は、X線コンピュータ断層撮影装置100から患者データを読み出す。
【0021】
記憶部28は、X線画像のデータ、患者データ、及び食道画像のデータ等を記憶する。上述したように患者データは、食道領域のボリュームデータと特定部位領域のボリュームデータとを含む。
【0022】
位置ずれ量算出部30は、特定部位領域のボリュームデータに基づいて、X線診断装置1における実座標系と食道領域のボリュームデータの座標系との間の位置ずれ量を算出する。具体的には、位置ずれ量算出部30は、特定部位領域と特定部位領域に解剖学上同一なX線画像上の画素領域との間の位置ずれ量を算出する。特定部位領域としては、位置合わせのしやすいコントラストの強い画素領域、例えば、背骨にある椎体に対応する画素領域がよい。位置ずれ量は、発生される全てのX線画像に対して算出する必要はなく、一つの撮影角度につき一回算出されればよい。
【0023】
3次元画像処理部32は、算出された位置ずれ量に基づく投影角度で食道領域のボリュームデータを投影処理して食道画像のデータを発生する。食道画像は、食道に対応する画素領域である食道領域を含む。発生される食道画像とX線画像との間には、位置ずれがない。なお、投影処理は、最大値投影処理、最小値投影処理、平均値投影処理等の画素値投影処理だけでなく、ボリュームレンダリング処理やサーフェスレンダリング処理等を含むとする。
【0024】
表示制御部34は、カテーテル領域の先端部分が視認可能なように、食道画像とX線画像とを所定の表示方法で表示デバイス36に表示する。カテーテル領域は、アブレーションカテーテル領域や電極カテーテル領域等を含む。具体的な表示方法としては、食道画像に含まれる食道領域のエッジのみをX線画像に重ね合わせて表示する方法、食道領域を点滅させてX線画像に重ね合わせて表示する方法、又は、食道領域を半透明にしてX線画像に重ね合わせて表示する方法がある。表示デバイス36は、例えばCRT(Cathode-Ray Tube)等により構成される。このように表示制御部34と表示デバイス36とは、表示部を構成する。
【0025】
操作部38は、操作者からの各種指令や情報入力を受け付ける。操作部38としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切り替えスイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスが適宜利用可能である。具体的には、操作部38は、操作者からの指示に従って、上述の表示方法の何れかを選択する。すなわち、操作部38は、食道領域のエッジのみをX線画像に重ね合わせて表示する方法、食道領域を点滅させてX線画像に重ね合わせて表示する方法、又は、食道領域を半透明にしてX線画像に重ね合わせて表示する方法のいずれかを選択する。
【0026】
DICOMファイル変換部40は、X線画像のデータファイルと食道画像のデータファイルとのフォーマットをDICOMフォーマットに変換する。DICOMフォーマットに変換されたデータファイルは、ネットワークインターフェース部26によりLANを介してX線コンピュータ断層撮影装置100や図示しないPACS(Picture Archiving and Communication System)へ送信される。
【0027】
また、画像処理装置20は、アブレーション治療の精度及び効率をより向上するために曲率算出部42と距離算出部44とをさらに備える。
【0028】
曲率算出部42は、アブレーションカテーテル領域又は電極カテーテル領域の曲率を算出する。算出された曲率のデータは、表示制御部34に供給される。表示制御部34は、算出された曲率と予め設定された閾値とを比較する。そして表示制御部34は、算出された曲率が閾値より大きい場合、上述の表示方法で食道領域をX線画像に重ねて表示する。
【0029】
距離算出部44は、アブレーションカテーテル領域又は電極カテーテル領域の先端部分と食道領域との間の距離を算出する。算出された距離のデータは、表示制御部34に供給される。表示制御部34は、算出された距離と予め設定された閾値とを比較する。そして表示制御部34は、算出された距離が閾値より大きい場合、上述の表示方法で食道領域をX線画像に重ねて表示する。また、表示制御部34は、算出された距離が閾値より大きい場合、カテーテルが食道に近すぎる旨を報知する。このように表示制御部34は、報知部としても機能する。
【0030】
次に、表示制御部34による食道画像とX線画像との表示処理を詳細に説明する。なお以下の説明においてアブレーションカテーテルと電極カテーテルとを区別する必要がない場合、アブレーションカテーテルと電極カテーテルとをまとめてカテーテルと呼ぶことにする。上述のように、表示制御部34は、カテーテル領域の先端部分が視認可能なように、操作部38を介して選択された所定の表示方法で食道領域をX線画像に重ね合わせて表示する。すなわち、表示制御部34は、食道領域のエッジのみを表示する、食道領域を点滅させて表示する、又は、食道領域を半透明にして表示する。図3は、食道領域のエッジのみをX線画像に重ねて表示する例を示す図である。図3に示すように、X線画像は、左心房内に挿入されたアブレーションカテーテル領域と電極カテーテル領域とを含む。X線画像には、食道領域のエッジがアブレーションカテーテル領域と電極カテーテル領域とに重ねられている。このように食道領域のエッジのみが重ねられることで、操作者は、食道の位置及び形状をX線画像上で把握することができる。すなわち操作者は、X線画像上でカテーテル領域と食道領域とが重なる場合にも、カテーテル領域の先端部分の位置を把握できる。
【0031】
また、食道領域を半透明にして表示する場合、表示制御部34は、食道領域と重なるX線画像上の画素領域が視認可能な透明度で食道領域を表示する。また、食道領域を点滅させて表示する場合、表示制御部34は、例えば、1秒間隔で食道領域を点滅させる。
【0032】
次に、システム制御部22の制御により行なわれるアブレーション治療の支援処理の典型的な動作を説明する。図4は、支援処理の典型的な流れを示す図である。なお、支援処理の開始時点において食道画像のデータは、既に発生されているものとする。また、支援処理中においては、X線画像のデータがX線画像発生部24により繰り返し発生されているものとする。食道画像とX線画像との表示方法は、食道領域のエッジをX線画像に重ねて表示する方法であるとする。
【0033】
図4に示すように、X線画像のデータが発生されるとシステム制御部22は、曲率算出部42に算出処理を行なわせる(ステップS1)。ステップS1において曲率算出部42は、アブレーションカテーテル領域の画素値又は形状に基づいてX線画像からアブレーションカテーテル領域を抽出する。そして、曲率算出部42は、抽出されたアブレーションカテーテル領域の曲率を算出する。曲率は、アブレーションカテーテルの進行度合いの他、心臓の拍動によっても変化する。従って、曲率算出部42は、図示しない心電計からの心電図データに同期して、所定の心位相毎に曲率を算出してもよい。所定の心位相毎に曲率を算出することで、心臓の拍動による曲率の変動を抑えることができる。
【0034】
ステップS1が行なわれるとシステム制御部22は、表示制御部34に判定処理を行なわせる(ステップS2)。ステップS2において表示制御部34は、ステップS1において算出されたアブレーションカテーテル領域の曲率が第1閾値より大きいか否かを判定する。アブレーションカテーテルは、カテーテル術中、左心房内に挿入される。アブレーションカテーテルの先端部分は、左心房内の内壁にぶつかると屈曲する。すなわち、アブレーションカテーテルの先端部分が内壁にぶつかると、ぶつからない時に比べてアブレーションカテーテルの曲率が大きくなる。適切な値に第1閾値が設定された場合、アブレーションカテーテルの曲率が第1閾値より大きいとうことは、アブレーションカテーテルが左心房に挿入されたということと同義である。第1閾値は、操作者により操作部38を介して任意に設定可能である。
【0035】
ステップS2において曲率が第1閾値よりも大きくないと判定された場合(ステップS2:NO)、システム制御部22は、ステップS1に戻る。そして再びステップS1とステップS2とが繰り返される。
【0036】
そして、アブレーションカテーテルが左心房に進入された、すなわちアブレーションカテーテル領域が第1閾値よりも大きいと判定された場合(ステップS2:YES)、システム制御部22は、表示制御部34に抽出処理を行なわせる(ステップS3)。ステップS3において表示制御部34は、予め発生されている食道画像から食道領域のエッジを抽出する。
【0037】
ステップS3が行なわれるとシステム制御部22は、表示制御部34に表示処理を行なわせる(ステップS4)。ステップS4において表示制御部34は、抽出されたエッジをX線画像に重ね合わせて表示する。さらに表示制御部34は、ステップS1において算出された曲率を表示してもよい。このようにして表示制御部34は、アブレーションカテーテルが左心房に挿入されたことを契機としてX線画像と食道画像とを表示する。
【0038】
ステップS4が行なわれるとシステム制御部22は、距離算出部44に算出処理を行なわせる(ステップS5)。ステップS5において距離算出部44は、まず、アブレーションカテーテル領域の先端部分の画素値又は形状に基づいてX線画像上のアブレーションカテーテル領域の先端部分を特定する。次に距離算出部44は、特定された先端部分と食道領域との間のX線画像上における距離を算出する。算出される距離は、例えば、アブレーションカテーテル領域の先端部分と食道領域との間の最短距離である。算出される距離は、アブレーションカテーテルの進行度合いの他、心臓の拍動によっても変化してしまう。従って、距離算出部44は、図示しない心電計からの心電図データに同期して、所定の心位相毎に距離を算出する。所定の心位相毎に距離を算出することで、心臓の拍動による距離の変動を抑えることができる。
【0039】
ステップS5が行なわれるとシステム制御部22は、表示制御部34に判定処理を行なわせる(ステップS6)。ステップS6において表示制御部34は、ステップS5において算出された距離が第2閾値より小さいか否かを判定する。上述のようにカテーテル術中、アブレーションカテーテルの先端部分が食道に近接していると危険である。第2閾値が適切な値に設定された場合、ステップS5において算出された距離が第2閾値よりも小さいということは、アブレーションカテーテルの先端部分が食道に近接している危険性が高い、ということと同義である。第2閾値は、操作者により操作部38を介して任意に設定可能である。
【0040】
ステップS6において距離が第2閾値より小さくないと判定された場合(ステップS6:NO)、システム制御部22は、ステップS5に戻る。そして再びステップS5とステップS6とが繰り返される。
【0041】
そしてステップS6において距離が第2閾値よりも小さいと判定された場合(ステップS6:YES)、システム制御部22は、表示制御部34に表示処理を行なわせる(ステップS7)。ステップS7において表示制御部34は、アブレーションカテーテルの先端部分が食道に近接している旨の警告を報知する。警告の報知方法は、例えば、図5に示すような、警告メッセージ「アブレーションカテーテルの先端部分が食道に近接しています」を表示デバイス36に表示するとよい。この際、表示制御部34は、ステップS5において算出された距離を表示デバイス36に表示してもよい。また、表示制御部34は、図示しないスピーカを介して警告音を発生してもよい。このようにして表示制御部34は、アブレーションカテーテルが食道に接近しすぎたことを契機として、操作者にその旨の警告を発する。
【0042】
ステップS7が行なわれるとシステム制御部22は、アブレーション治療の支援処理を終了する。
【0043】
なお、上述の支援処理は典型的な流れに沿って説明された。すなわち、本実施形態に係る支援処理は上述の流れのみに限定されない。例えば、アブレーションカテーテル領域の先端部分と食道領域との間の距離が第2閾値よりも小さいことを契機として、表示制御部34は、食道領域のエッジを表示してもよい。
【0044】
アブレーションカテーテルの先端がX線管12に離反する方向に屈曲している場合、アブレーションカテーテルの先端部分が食道に近接している危険性がある。ステップS7において表示制御部34は、先端部分の屈曲方向に応じて警告メッセージの警告度合を変更してもよい。以下、この処理について説明する。なおX線照射方向は、患者正面方向(患者の胸から背中への方向)であるとする。
【0045】
表示制御部34は、先端部分の画素値又は形状に基づいてアブレーションカテーテルの先端部分の実空間上における屈曲方向を特定する。より簡便には、屈曲方向は、アブレーションカテーテルの先端部分がX線管12に接近又は離反するか否かにより規定される。例えば、アブレーションカテーテルの曲率が第1閾値よりも小さい場合、表示制御部34は、先端部分がX線管12に接近又は離反する方向に屈曲していないと特定する。一方、アブレーションカテーテルの曲率が第1閾値よりも大きい場合、表示制御部34は、先端部分がX線管12に接近又は離反する方向に屈曲していると特定する。この場合、表示制御部34は、先端部分がX線管12に接近する方向に屈曲しているのか、あるいはX線管12に離反する方向に屈曲しているのかを特定できない。しかしながら、アブレーションカテーテルの操作者は、自身の感覚で先端部分がX線管12に接近する方向に屈曲しているのか、X線管12に離反する方向に屈曲しているのかを判断できる場合がある。従ってX線管12に接近又は離反する方向に屈曲しているか否かを知ることは、アブレーション治療におけるカテーテル操作上有益なことである。
【0046】
表示制御部34は、アブレーションカテーテルの先端部分がX線管12に接近又は離反する方向に屈曲している場合、屈曲していない場合よりも、警告メッセージの警告度合を高める。このように先端部分の屈曲方向がX線管12に接近又は離反する方向の場合に警告度合を高めることにより、表示制御部34は、アブレーション治療の支援精度を向上する。
【0047】
また、X線診断装置1は、バイプレーン撮影法を行なうX線診断装置であってもよい。この場合、X線画像発生部24からは、2方向に関する2つのX線画像のデータが発生される。2方向は、例えば、患者正面方向と患者側面方向(患者の左腕から右腕への方向、又は患者の右腕から左腕への方向)とである。2方向に関する2つのX線画像により、アブレーションカテーテル操作の支援精度が向上する。
【0048】
例えば、2方向に関する2つのX線画像に基づいて表示制御部34は、アブレーションカテーテルの先端部分が患者正面方向のX線撮影のためのX線管(以下、患者正面方向用のX線管と呼ぶことにする)に接近する方向(X線画像の手前から奥へ向かう方向)に屈曲しているのか、あるいは患者正面方向用のX線管に離反する方向(X線画像の奥から手前へ向かう方向)に屈曲しているのかを特定する。換言すれば、表示制御部34は、アブレーションカテーテルの先端部分が食道に向けて屈曲しているのか、あるいは食道から遠ざかる方向に屈曲しているのかを特定できる。具体的には、まず表示制御部34は、患者正面方向に関するX線画像上において、アブレーションカテーテル領域の先端部分の屈曲方向を特定する。同様に表示制御部34は、患者側面方向に関するX線画像上において、アブレーションカテーテル領域の先端部分の屈曲方向を特定する。患者正面方向のX線画像に関する屈曲方向が患者正面方向用のX線管に接近又は離反する方向であり、患者側面方向のX線画像に関する屈曲方向が患者正面方向用のX線管に接近する方向である場合、表示制御部34は、アブレーションカテーテルの先端部分が実空間上において食道に向けて屈曲していると特定する。そして表示制御部34は、アブレーションカテーテルの先端が食道に近すぎる旨の警告を報知する。報知方法としては、例えば、表示デバイス36に警告メッセージ「アブレーションカテーテルの先端部分が食道に近すぎます」を表示する等が考えられる。
【0049】
バイプレーン撮影法を行うX線診断装置1の場合、X線画像と食道領域との位置合わせの精度が向上する。これに伴い、アブレーションカテーテル領域の先端部分と食道との間の距離の精度も向上する。
【0050】
上述のように、本実施形態に係るX線診断装置1は、食道画像とX線画像との特徴的な表示方法を実現する。この特徴的な表示方法は、食道領域のエッジのみを、食道領域を点滅させて、又は、食道領域を半透明にしてX線画像に重ねて表示する方法である。そのため、操作者は、アブレーションカテーテルがX線画像上食道に重なる位置にある場合にも、アブレーションカテーテルの先端部分と食道との位置関係を把握することができる。また、アブレーションカテーテルの位置を把握するためにアームの撮影角度を変える必要もなくなり、そのための時間や手間が削減される。かくして、本実施形態によれば、アブレーション治療の精度及び効率向上を実現するX線診断装置及びX線診断装置に関する画像処理方法を提供することが可能となる。
【0051】
なお、X線コンピュータ断層撮影装置100は、食道領域に関するボリュームデータをX線診断装置1に送信するとした。しかしながらこれに限定する必要はなく、X線コンピュータ断層撮影装置100は、食道画像のデータを送信してもよい。この場合、3次元画像処理部32は不要となる。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上本発明によれば、アブレーション治療の精度及び効率向上を実現するX線診断装置及びX線診断装置に関する画像処理方法の提供を実現することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…X線診断装置、10…撮影装置、12…X線管、14…X線検出器、16…アーム、20…画像処理装置、22…システム制御部、24…X線画像発生部、26…ネットワークインターフェース部、28…記憶部、30…位置ずれ量算出部、32…3次元画像処理部、34…表示制御部、36…表示デバイス、38…操作部、40…DICOMファイル変換部、42…曲率算出部、44…距離算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生するX線管と、
前記X線管から発生され被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記被検体の食道に関する食道画像のデータを記憶する記憶部と、
カテーテル術中において、前記X線検出器からの出力に基づいて解剖学的に前記食道の近傍にある左心房に関するX線画像のデータを発生する発生部と、
前記X線画像に含まれるカテーテル領域の先端部分が視認可能なように、前記食道画像に含まれる食道領域を前記X線画像に重ね合わせて表示する表示部と、
を具備するX線診断装置。
【請求項2】
前記表示部は、前記食道領域のエッジのみを前記X線画像に重ねて表示する、前記食道領域を点滅させて前記X線画像に重ねて表示する、又は、前記食道領域を半透明にして前記X線画像に重ねて表示する、請求項1記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記カテーテル領域の曲率を算出する曲率算出部をさらに備え、
前記表示部は、前記算出された曲率が第1閾値を超えた場合、前記先端部分が視認可能なように前記食道領域を前記X線画像に重ねて表示する、請求項1記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記先端部分と前記食道領域の特定部分との間の距離を算出する距離算出部と、
前記算出された距離が第2閾値を越えた場合に、前記距離が前記第2閾値を超えた旨を報知する報知部と、
をさらに備える請求項1記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記表示部は、前記算出された距離を表示する、請求項4記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記先端部分の画素値又は形状に基づいて、前記カテーテルの先端の実空間上における屈曲方向を特定する特定部と、
前記屈曲方向に応じた情報を操作者に報知する報知部と、
をさらに備える請求項1記載のX線診断装置。
【請求項7】
X線を発生するX線管と、前記X線管から発生され被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、を具備するX線診断装置に関する画像処理方法において、
カテーテル術中において、前記X線検出器からの出力に基づいて解剖学的に前記食道の近傍にある左心房に関するX線画像のデータを発生し、
前記X線画像に含まれるカテーテル領域の先端部分が視認可能なように、前記被検体の食道に関する食道画像に含まれる食道領域を前記X線画像に重ね合わせて表示する、
ことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−167213(P2011−167213A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23303(P2010−23303)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】