説明

X線CT装置

【課題】投影データがX線曝射状態で収集されたか否かを、より正確に判断することが可能なX線CT装置を提供する。
【解決手段】架台制御部10は、データ収集部15に継続的に投影データを収集させる。架台制御部10は、X線管球13に実際に供給した電圧値及び電流値と、X線曝射のON/OFFを示す情報とを、データ収集部15によって収集された各ビューの投影データに付帯させる。再構成処理部24は、X線が曝射中に収集された投影データであって、付帯された電圧値及び電流値が所定範囲内の値に含まれる投影データを再構成することで、画像データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検体にX線を曝射して投影データを収集し、投影データに基づいて画像を生成するX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、被検体を間にして対向して配置されたX線管球とX線検出器とを有する。X線CT装置は、X線管球とX線検出器とを被検体の周囲で回転させながら、X線管球からX線を曝射し、被検体を透過したX線をX線検出器で検出する。X線検出器によって検出されたデータをデータ収集装置(DAS)にて投影データとして収集し、収集された投影データを用いて被検体の画像を生成する。例えば、X線管球とX線検出器とを360°、又は(180°+ファン角)回転させて投影データを収集し、360°分、又は(180°+ファン角)分の投影データに基づいて画像を生成する。
【0003】
被検体に対するある角度において、複数の検出素子を有するX線検出器で検出された検出データの集合をビュー(view)と称する。X線管球とX線検出器とを被検体の周りに1回転させて、画像を再構成するために必要な複数ビューの投影データを収集することをスキャン(scan)と称する。例えば1°ごとに1ビュー(view)の投影データを収集する場合には、1スキャンに360ビューの投影データを得て、この360ビューの投影データを用いて画像を再構成する。
【0004】
データ収集装置(DAS)による投影データの収集を継続的に行いながら、X線管球からX線を間欠的に曝射する場合がある。この撮影で収集された投影データを用いて画像を再構成する場合には、X線が実際に曝射された期間に収集された投影データを用いて画像を再構成する必要がある。例えば、心臓の検査においては、心拍に応じてX線曝射のON/OFFを切り替えて撮影を行う場合がある(Prospective Gating Scan)(例えば特許文献1)。この場合には、X線が実際に曝射された期間にデータ収集装置(DAS)によって収集された投影データを用いて画像を再構成する必要がある。
【0005】
従来技術においては、レファレンスとなるX線検出器(Ref検出器)をX線CT装置に設けて、Ref検出器で検出された検出値(カウント値)を、各ビューの投影データに付帯させている。そして、1ビューの投影データごとに付帯されているRef検出器のカウント値に基づいて、X線が曝射されていたか否かを判断することで、X線が曝射された期間に収集された投影データであるか否かを判断している。また、実際の撮影における被検体の被曝量を求める場合にも、X線が曝射されているビュー(view)をカウントすることで線量を計算している。
【0006】
また、X線を曝射しながらX線出力(mA)を変調(モジュレーション)するスキャンモードにおいては、Ref検出器で検出された検出値によってX線出力(mA)の高低は判別できるが、実際のX線出力値(mA値)までは判別できない。そのため、撮影計画時にX線CT装置に設定されたX線出力値を用いて、線量の計算を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−28065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術においては、Ref検出器の検出値(カウント値)に対して閾値を設定することで、各ビューの投影データが、X線が曝射された期間に収集された投影データであるか否かを判断している。しかしながら、Ref検出器のカウント値は、Ref検出器個々によりばらつきがある。また、Ref検出器のカウント値は、X線の曝射条件によってもばらつきがある。そのため、X線曝射の有無を判断するための適切な閾値を設定することは困難である。例えば、Ref検出器の個体差やX線管球の個体差のばらつきを考慮する必要がある。また、管電圧によってもRef検出器のカウント値は異なる。そのため、適切な閾値を設定することは困難である。さらに、Ref検出器及びデータ収集装置(DAS)のオフセット値も考慮したうえで、X線曝射OFF状態とX線曝射ON状態とを判断するための閾値を決定する必要がある。また、撮影中に、X線管球が瞬時的に放電を起こしたり、管電流が揺らいでいたりするなど不安定であった場合、X線曝射のON/OFF状態の判断を誤るおそれがある。
【0009】
X線曝射のON/OFF状態の判断を誤った場合に、再構成に必要なビュー(view)数を満たさない場合や、X線OFF状態に収集されたビュー(view)の投影データを使用して画像を再構成してしまう場合がある。
【0010】
また、Ref検出器の検出値(カウント値)からでは、X線曝射のON/OFF状態の判断のみが可能である。X線出力(mA)を変化(モジュレーション)させるようなスキャンモードにおいては、実際のX線出力値は判別できないため、実際の被曝線量を正確に計算することは困難である。
【0011】
この発明は上記の問題を解決するものであり、投影データがX線曝射状態で収集されたか否かを、より正確に判断することが可能なX線CT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、X線発生手段と、被検体を挟んで前記X線発生手段と対向して配置されて、前記X線発生手段から曝射されて前記被検体を透過したX線を所定の収集タイミングで投影データとして収集するX線検出手段と、を有し、前記X線発生手段及び前記X線検出手段が前記被検体の周りに回転可能に構成されたX線CT装置であって、前記X線発生手段による前記X線の曝射のタイミングを制御し、前記X線発生手段に前記X線を曝射させるタイミングでは、前記X線発生手段に電圧及び電流を供給して前記X線発生手段から前記X線を曝射させ、前記X線検出手段による前記投影データの収集タイミングを制御して、前記所定の収集タイミングで継続的に前記X線検出手段に前記投影データを収集させ、前記X線の曝射の状態を示す付帯情報を、前記X線検出手段によって前記所定の収集タイミングで収集された各投影データに付帯させる制御手段を有することを特徴とするX線CT装置である。
【発明の効果】
【0013】
この発明によると、X線の曝射の状態を示す付帯情報を各投影データに付帯させているため、各投影データがX線曝射状態で収集されたデータであるか否かをより正確に判断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施形態に係るX線CT装置を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施形態に係るX線CT装置による動作を示すタイミングチャートである。
【図3】異なる管電圧で得られる投影データの構造を示す図である。
【図4】心電信号に同期させて撮影を行った場合に得られる投影データの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照して、この発明の実施形態に係るX線CT装置について説明する。
【0016】
この発明の実施形態に係るX線CT装置は、架台装置1、コンソール部2、及び寝台装置3を備えている。架台装置1は、X線管球13及びX線検出器14を格納した図示しない回転架台(ガントリ)を備え、投影データを収集する。投影データはコンソール部2に出力され、再構成処理が施される。寝台装置3は、被検体を載置するための寝台30を備えている。
【0017】
架台装置1には、X線管球13と、X線管球13と対になるX線検出器14とが設けられている。X線検出器14は、互いに直交する2方向(スライス方向(体軸方向)とチャンネル方向(円周方向))それぞれに配列された複数の検出素子を有して、2次元のX線検出器をなしている。X線検出器14には、チャンネル方向(円周方向)に複数の検出素子が配列されたX線検出器を用いても良い。
【0018】
高電圧発生部12は、架台制御部10の制御の下、X線を曝射させるための管電圧及び管電流をX線管球13に供給する。これにより、X線管球13からX線が発生する。なお、X線管球13と高電圧発生部12とによって、この発明の「X線発生手段」の1例を構成する。
【0019】
X線検出器14にはデータ収集部(DAS)15が接続されている。データ収集部15は、X線検出器14の各検出素子と同様に配列されたデータ収集素子を有する。データ収集部15は、X線検出器14により検出されたX線(検出信号)を、架台制御部10から出力されたデータ収集制御信号(View Trigger信号(VT信号))に対応させて収集する。データ収集部15によって収集されたデータが投影データである。なお、X線検出器14とデータ収集部15とによって、この発明の「X線検出手段」の1例を構成する。
【0020】
X線管球13から曝射されたX線ビームは、所定幅のスリット(開口部)が設けられた図示しないX線コリメータを介して、寝台30に載置された被検体に照射される。被検体を透過したX線ビームはX線検出器14で検出される。X線検出器14で検出された信号は、データ収集部15によって投影データとして収集される。
【0021】
架台駆動部16は、スキャン制御部20から出力された架台制御信号に基づいて、図示しない回転架台を回転させる。これにより、回転架台は回転中心を中心として回転させられる。
【0022】
コンソール部2のスキャン制御部20は、制御データを架台装置1の架台制御部10に出力する。制御データには、X線の曝射条件を示す情報と曝射タイミングを示す情報とが含まれる。曝射条件には、X線管球13に供給する管電流値と管電圧値とが含まれる。照射タイミングは、X線管球13によるX線曝射のON/OFFのタイミングを示している。照射タイミングを示す情報は、X線曝射を示すON信号と、X線曝射の停止を示すOFF信号とを含んでいる。また、スキャン制御部20は、回転架台を一定の速度で安定的に回転させるために、架台制御信号を架台駆動部16に出力する。
【0023】
架台制御部10は、X線の曝射条件を示す情報と曝射タイミングを示す情報とを含む制御データを高電圧発生部12に出力する。また、架台制御部10は、データ収集部15による投影データの収集タイミングを示すデータ収集制御信号(View Trigger信号(VT信号))を生成して、データ収集制御信号をデータ収集部15と高電圧発生部12とに出力する。また、架台制御部10は、投影データの収集開始を示すデータ収集開始信号(BGN)を生成して、データ収集開始信号をデータ収集部15に出力する。
【0024】
高電圧発生部12は、VT信号と制御データ(曝射条件及び照射タイミング)とを架台制御部10から受ける。高電圧発生部12は、照射タイミングを示す情報(X線曝射のON/OFF信号)に従って、曝射条件が示す管電流及び管電圧をX線管球13に供給する。すなわち、高電圧発生部12は、照射タイミングがX線曝射ON状態を示す期間中、管電流及び管電圧をX線管球13に供給し、X線管球13からX線を曝射させる。一方、高電圧発生部12は、照射タイミングがX線曝射OFF状態を示す期間中、X線管球13への管電流及び管電圧の供給を停止し、X線管球13からのX線曝射を停止させる。また、高電圧発生部12は、X線曝射のON/OFF信号に従って、X線管球13に実際に供給した管電流値(mA)及び管電圧値(kV)を示すX線出力情報(X線ステータス情報)を生成し、X線ステータス情報を架台制御部10に出力する。すなわち、高電圧発生部12は、X線曝射のON/OFF信号に従って、X線管球13が実際にX線を曝射した時の管電流値と管電圧値とを示すX線ステータス情報を生成し、X線ステータス情報を架台制御部10に出力する。高電圧発生部12は、データ収集部15による投影データの収集タイミングを示すVT信号に同期して、X線ステータス情報をサンプリングして架台制御部10に出力する。
【0025】
高電圧発生部12は、管電流値及び管電圧値のいずれか一方の値をX線ステータス情報に含ませても良いし、両方の値をX線ステータス情報に含ませても良い。すなわち、高電圧発生部12は、管電流値のみをX線ステータス情報に含ませても良いし、管電圧値のみをX線ステータス情報に含ませても良いし、管電流値及び管電圧値をX線ステータス情報に含ませても良い。
【0026】
データ収集部15は、架台制御部10から出力されたVT信号に同期して、X線検出器14によって検出されたX線(X線信号)を投影データとして収集する。データ収集部15は、投影データを架台制御部10に出力する。データ収集部15は、データ収集開始信号(BGN)を架台制御部10から受けると、投影データの収集を開始し、VT信号に同期して投影データを収集する。なお、VT信号に同期した投影データの収集タイミングが、この発明の「所定の収集タイミング」の1例に相当する。
【0027】
(データ付帯部11)
架台制御部10は、データ付帯部11を備えている。データ付帯部11は、データ収集部15から出力された各ビューの投影データに、高電圧発生部12から出力されたX線ステータス情報と、X線曝射のON/OFF信号(X線制御データ)とを、エクストラデータ(付帯情報)として付帯させる。データ付帯部11は、各ビューの投影データに、各ビューの投影データの収集タイミングを示すVT信号と同じVT信号に起因して生成されたX線ステータス情報と、X線制御データとを付帯させる。例えば、データ付帯部11は、X線曝射がON状態のタイミングで収集された投影データには、X線曝射のON信号(X線制御データ)と、X線ステータス情報とを付帯させる。また、データ付帯部11は、X線曝射がOFF状態のタイミングで収集された投影データには、X線曝射のOFF信号(X線制御データ)を付帯させる。架台制御部10は、エクストラデータが付帯された各投影データを、コンソール部2の前処理部21に出力する。なお、スキャン制御部20及び架台制御部10が、この発明の「制御手段」の1例に相当する。また、X線曝射のON/OFF信号(X線制御データ)が、この発明の「X線曝射の有無を示す曝射情報」の1例に相当する。
【0028】
(前処理部21)
前処理部21は、第1確認部22を備えている。第1確認部22は、エクストラデータが付帯された各投影データを架台制御部10から受ける。第1確認部22は、エクストラデータに含まれるX線ステータス情報(X線出力情報)とX線制御データ(X線曝射のON/OFF信号)とを確認する。まず、第1確認部22は、X線制御データが示すX線曝射のON/OFF信号に基づいて、各投影データが、X線の曝射中に収集されたデータであるか否かを判断する。具体的には、第1確認部22は、X線制御データとしてX線曝射のON信号が投影データに付帯されている場合には、その投影データは、X線の曝射中に収集されたデータであると判断する。また、第1確認部22は、X線制御データとしてX線曝射のOFF信号が投影データに付帯されている場合には、その投影データは、X線の曝射が停止中に収集されたデータであると判断する。
【0029】
さらに、第1確認部22は、X線曝射のON信号が付帯されている投影データ(X線曝射中に収集された投影データ)については、X線ステータス情報が示す管電流値及び管電圧値が、予め設定された所定範囲内の値に含まれているか否かを判断する。この所定範囲は、管電流値及び管電圧値がX線曝射において正常値であるか否かを判断するための基準である。操作者が図示しない操作部を用いて、この所定範囲の値を任意に変更できるようにしても良い。第1確認部22は、管電流値及び管電圧値がその所定範囲内の値に含まれている場合は、正常な管電流値及び管電圧値でX線曝射が行われたと判断する。すなわち、第1確認部22は、管電流値及び管電圧値が所定範囲内の値に含まれている投影データを、正常なX線曝射で収集された投影データであると判断する。また、第1確認部22は、管電流値及び管電圧値が所定範囲内の値に含まれていない投影データを、正常なX線曝射で収集されていない投影データであると判断する。
【0030】
そして、前処理部21は、管電流値及び管電圧値が所定範囲内の値に含まれている投影データに対して、感度補正やX線強度補正などの前処理を施す。すなわち、前処理部21は、正常な管電流値及び管電圧値によるX線曝射で収集された投影データに対して前処理を施す。前処理部21は、前処理が施された投影データを、投影データ記憶部23に記憶させる。
【0031】
また、前処理部21は、前処理が施されなかった投影データを削除しても良い。すなわち、前処理部21は、X線制御データとしてX線曝射のOFF信号が付帯されている投影データ(X線曝射がOFF状態で収集された投影データ)を削除しても良い。また、前処理部21は、X線制御データとしてX線曝射のON信号が付帯されている投影データ(X線曝射がON状態で収集された投影データ)であっても、管電流値及び管電圧値が所定範囲内の値に含まれない投影データ(正常な管電流値及び管電圧値によるX線曝射で収集されていない投影データ)を削除しても良い。すなわち、前処理部21は、X線曝射がON状態(X線曝射中)で収集された投影データであって、正常な管電流値及び管電圧値によるX線曝射で収集された投影データのみを対象にして前処理を施し、その前処理が施された投影データを投影データ記憶部23に記憶させる。
【0032】
なお、第1確認部22は、管電流値のみを用いて、正常なX線曝射で収集された投影データか否かの判断を行っても良い。すなわち、第1確認部22は、管電流値が所定範囲内の値に含まれている場合は、正常なX線曝射で収集された投影データであると判断しても良い。また、第1確認部22は、X線制御データ(X線曝射のON/OFF信号)を用いずに、管電流値を用いて、正常なX線曝射で収集された投影データであるか否かの判断を行っても良い。すなわち、第1確認部22は、X線制御データを用いた判断を行わずに、管電流値が所定範囲内の値に含まれている場合は、正常なX線曝射で収集された投影データであると判断しても良い。
【0033】
(エラー検知)
また、前処理部21は、X線曝射のON信号が付帯されている投影データ(X線曝射がON状態で収集された投影データ)であっても、X線ステータス情報が示す管電流値が、所定範囲内の値に含まれていない投影データ(正常な管電流値によるX線曝射で収集されていない投影データ)を確認した場合、エラーを示すエラー信号をスキャン制御部20に出力しても良い。例えば、X線曝射がON状態(X線曝射中)であっても、放電などによる管電流不足などの異常が発生した場合、X線ステータス情報が示す管電流値は、予め設定された所定範囲内の値に含まれない場合がある。この場合、前処理部21は、管電流値の異常を検知して、エラー信号をスキャン制御部20に出力する。スキャン制御部20は、エラー信号を前処理部21から受けると、スキャン中止の指示を架台制御部10に与える。架台制御部10は、スキャン中止の指示をスキャン制御部20から受けると、その指示に従って、X線曝射の中止の指示を高電圧発生部12に与え、データ収集中止の指示をデータ収集部15に与える。これにより、スキャン(撮影)が中止される。また、X線ステータスの異常を操作者に報知するようにしても良い。例えば、スキャン制御部20は、エラー信号を表示制御部27に出力する。表示制御部27は、エラー信号をスキャン制御部20から受けると、X線ステータスの異常を示すメッセージや図形などを表示部29に表示させる。また、X線CT装置にスピーカを設けて、X線ステータスの異常を示す音をそのスピーカから発生するようにしても良い。なお、表示制御部27やスピーカが、この発明の「報知手段」の1例に相当する。
【0034】
(再構成処理部24)
再構成処理部24は、前処理が施された投影データを投影データ記憶部23から読み込んで、前処理が施された投影データを逆投影処理することにより画像データを再構成する。再構成処理部24は、再構成された画像データを画像データ記憶部26に出力する。画像データ記憶部26は、再構成された画像データを記憶する。
【0035】
投影データ記憶部23には、X線曝射がON状態(X線曝射中)で収集された投影データであって、正常な管電流値及び管電圧値によるX線曝射で収集された投影データが記憶されている。従って、再構成処理部24は、投影データ記憶部23に記憶されている投影データを読み込んで画像データを再構成することで、X線が曝射中に収集された投影データのみを用いて再構成することが可能となる。
【0036】
(第2確認部25)
上述した例では、前処理部21の第1確認部22が、各ビューの投影データに付帯されたエクストラデータに含まれるX線ステータス情報とX線制御データ(X線制御のON/OFF信号)とを確認する。第1確認部22がこの確認を行わずに、再構成処理部24の第2確認部25がこの確認を行っても良い。この場合、前処理部21はエクストラデータの確認を行わずに、すべてのビューの投影データに対して、感度補正やX線強度補正などの前処理を施す。前処理部21によって前処理が施されたすべてのビューの投影データは、投影データ記憶部23に記憶される。
【0037】
再構成処理部24の第2確認部25は、前処理が施された各投影データを投影データ記憶部23から読み込み、各投影データに付帯されたエクストラデータに含まれるX線ステータス情報とX線制御データ(X線曝射のON/OFF信号)とを確認する。まず、第2確認部25は、X線制御データが示すX線曝射のON/OFF信号に基づいて、各投影データが、X線が曝射中に収集されたデータであるか否かを判断する。第2確認部25は、上述した第1確認部22と同様に、X線曝射のON信号が投影データに付帯されている場合には、その投影データは、X線曝射中に収集されたデータであると判断する。一方、第2確認部25は、X線曝射のOFF信号が投影データに付帯されている場合には、その投影データは、X線曝射が停止中に収集されたデータであると判断する。
【0038】
さらに、第2確認部25は、X線曝射のON信号が付帯された投影データ(X線曝射中に収集された投影データ)については、X線ステータス情報が示す管電流値及び管電圧値が、予め設定された所定範囲内の値に含まれているか否かを判断する。上述したように、この所定範囲は、管電流値及び管電圧値がX線曝射において正常値であるか否かを判断するための基準である。第2確認部25は、X線ステータス情報が示す管電流値及び管電圧値が、その所定範囲内の値に含まれている場合は、正常な管電流値及び管電圧値でX線曝射が行われたと判断する。すなわち、第2確認部25は、管電流値及び管電圧値が所定範囲内の値に含まれている投影データを、正常なX線曝射で収集された投影データであると判断する。また、第2確認部25は、管電流値及び管電圧値が所定範囲内の値に含まれていない投影データを、正常なX線曝射で収集されていない投影データであると判断する。
【0039】
そして、再構成処理部24は、管電流値及び管電圧値が所定範囲内の値に含まれている投影データを逆投影処理することにより、画像データを再構成する。すなわち、再構成処理部24は、正常な管電流値及び管電圧値によるX線曝射で収集された投影データを逆投影処理することにより、画像データを再構成する。再構成処理部24は、再構成された画像データを画像データ記憶部26に出力する。画像データ記憶部26は、再構成された画像データを記憶する。
【0040】
第2確認部25は、第1確認部22と同様に、管電流値のみを用いて、正常なX線曝射で収集された投影データか否かの判断を行っても良い。また、第2確認部25は、第1確認部22と同様に、X線制御データを用いずに、管電流値を用いて、正常なX線曝射で収集された投影データであるか否かの判断を行っても良い。
【0041】
なお、前処理部21及び再構成処理部24が、この発明の「画像生成手段」の1例に相当する。
【0042】
(エラー検知)
また、再構成処理部24は、X線曝射のON信号が付帯されている投影データ(X線曝射がON状態で収集された投影データ)であっても、X線ステータス情報が示す管電流値及び管電圧値が、所定範囲内の値に含まれていない投影データ(正常な管電流値及び管電圧値によるX線曝射で収集されていない投影データ)を確認した場合、エラーを示すエラー信号をスキャン制御部20に出力しても良い。スキャン制御部20は、エラー信号を再構成処理部24から受けると、スキャン中止の指示を架台制御部10に与える。架台制御部10は、スキャン中止の指示をスキャン制御部20から受けると、その指示に従って、X線曝射の中止の指示を高電圧発生部12に与え、データ収集中止の指示をデータ収集部15に与える。これにより、スキャン(撮影)が中止される。また、X線ステータスの異常を操作者に報知するようにしても良い。例えば、スキャン制御部20は、エラー信号を表示制御部27に出力する。表示制御部27は、エラー信号をスキャン制御部20から受けると、X線ステータスの異常を示すメッセージや図形などを表示部29に表示させる。
【0043】
この実施形態においては、第1確認部22又は第2確認部25のいずれか1つをX線CT装置に設けておけば良い。すなわち、第1確認部22を前処理部21に設けている場合には、第2確認部25を再構成処理部24に設けなくても良い。また、第2確認部25を再構成処理部24に設けている場合には、第1確認部22を前処理部21に設けなくても良い。なお、第1確認部22及び第2確認部25が、この発明の「特定手段」の1例に相当する。
【0044】
(表示制御部27)
表示制御部27は、画像データ記憶部26から画像データを読み込み、その画像データに基づく画像を表示部29に表示させる。
【0045】
(演算部28)
演算部28は、再構成処理に使用した各ビューの管電流値(mA)を用いて、線量を計算する。例えば、再構成処理部24は、再構成に使用した各投影データに付帯されているX線ステータス情報が示す管電流値(mA)を演算部28に出力する。演算部28は、管電流値(mA)を再構成処理部24から受けて、線量を計算する。具体的には、演算部28は、各ビューの投影データについての管電流値(mA)と撮影時間とに基づいて、線量(mAs=mA×撮影時間)を求める。演算部28は、線量(mAs)を示す線量情報を表示制御部27に出力する。表示制御部27は、演算部28によって求められた線量(mAs)の値を表示部29に表示させる。なお、演算部28が、この発明の「演算手段」の1例に相当する。
【0046】
(寝台装置3)
寝台装置3は、寝台30と寝台駆動部31とを備えている。寝台30は、被検体を載置するための寝台天板と、寝台天板を支持する寝台基台とを備えている。寝台天板は、寝台駆動部31により被検体の体軸方向(スライス方向)に移動可能となっている。寝台基台は、寝台駆動部31により寝台天板を上下方向に移動させることが可能となっている。
【0047】
なお、架台制御部10、スキャン制御部20、前処理部21、再構成処理部24、表示制御部27、及び演算部28は、1例として、図示しないCPUなどの処理装置と、ROM、RAM、HDDなどの図示しない記憶装置とによって構成されていても良い。記憶装置には、架台制御部10の機能を実行するための架台制御プログラム、スキャン制御部20の機能を実行するためのスキャン制御プログラム、前処理部21の機能を実行するための前処理プログラム、再構成処理部24の機能を実行するための再構成処理プログラム、表示制御部27の機能を実行するための表示制御プログラム、及び演算部28の機能を実行するための演算プログラムが記憶されている。また、架台制御プログラムには、データ付帯部11の機能を実行するためのデータ付帯プログラムが含まれている。また、前処理プログラムには、第1確認部22の機能を実行するための第1確認プログラムが含まれている。また、再構成処理プログラムには、第2確認部25の機能を実行するための第2確認プログラムが含まれている。そして、CPUなどの処理装置が、各プログラムを実行することで、各部の機能が実行される。
【0048】
次に、この実施形態に係るX線CT装置による一連の動作について、図2のタイミングチャートを参照して説明する。
【0049】
架台制御部10は、データ収集部15による投影データの収集タイミングを示すVT信号を生成し、VT信号をデータ収集部15と高電圧発生部12とに出力する(図2、VT:データ収集トリガ信号)。また、架台制御部10は、投影データの収集開始を示すデータ収集開始信号(BGN)を生成し、データ収集開始信号(BGN)をデータ収集部15に出力する。また、架台制御部10は、制御データを高電圧発生部12に出力する。制御データには、X線の曝射条件(管電流値及び管電圧値)を示す情報と照射タイミング(X線曝射のON/OFF信号)を示す情報とが含まれる。この実施形態では、X線曝射ONの期間の長さよりも、短いタイミングでデータ収集部15に投影データを収集させる。すなわち、X線管球13にX線を曝射させている期間(X線曝射ON期間)の長さよりも短い収集タイミングで、継続的にデータ収集部15に投影データを収集させる。
【0050】
データ収集部15は、データ収集開始信号(BGN)を架台制御部10から受けると、投影データの収集を開始し、VT信号に同期して投影データを継続的に収集する(図2、ON:データ収集中)。
【0051】
高電圧発生部12は、照射タイミングが示す情報(X線曝射のON/OFF信号)に従って、曝射条件が示す管電流及び管電圧をX線管球13に供給し、X線管球13からX線を曝射させる。高電圧発生部12は、照射タイミングがX線曝射ON状態を示す期間中(図2、曝射ON)、管電流及び管電圧をX線管球13に供給し、X線管球13からX線を曝射させる。また、高電圧発生部12は、照射タイミングがX線曝射OFF状態を示す期間中(図2、曝射OFF)、X線管球13への管電流及び管電圧の供給を停止する。
【0052】
データ収集部15は、架台制御部10から出力されたVT信号に同期して、X線検出器14によって検出されたX線を投影データとして収集し、投影データを架台制御部10に出力する。図2においては1例として、データ収集部15は、投影データD1、投影データD2、投影データD3、投影データD4、・・・を収集し、それら投影データを架台制御部10に出力する(図2、データ収集、及び収集データ転送)。図2に示す例では、投影データD1、D2、D3、D7、D8、及びD9は、X線曝射がON状態のタイミングで収集されたデータである。一方、投影データD4、D5、及びD6は、X曝射がOFF状態のタイミングで収集されたデータである。
【0053】
一方、高電圧発生部12は、X線管球13が実際にX線を曝射した時の管電流値(mA)及び管電圧値(kV)を示すX線ステータス情報を、VT信号に同期して生成して、X線ステータス情報を架台制御部10に出力する。図2において、1例として、高電圧発生部12は、X線ステータス情報X1、X線ステータス情報X2、X線ステータス情報X3、・・・を生成し、それらX線ステータス情報を架台制御部10に出力する(図2、X線ステータスサンプリング、X線ステータス転送)。
【0054】
データ付帯部11は、各ビューの投影データに、各ビューの投影データの収集タイミングを示すVT信号と同じVT信号に起因して生成されたX線ステータス情報と、X線制御データとを、エクストラデータとして付帯させる。図2においては1例として、データ付帯部11は、投影データD1の収集タイミングを示すVT信号と同じVT信号で生成されたX線ステータス情報X1を、投影データD1に付帯させる。また、投影データD1は、X線曝射がON状態のタイミングで収集されたデータであるため、データ付帯部11は、X線曝射のON信号を投影データD1に付帯させる。同様に、データ付帯部11は、X線ステータス情報X2とX線曝射のON信号とを、投影データD2に付帯させる。また、データ付帯部11は、X線ステータス情報X3とX線曝射のON信号とを、投影データD3に付帯させる。また、データ付帯部11は、X線ステータス情報X4を、投影データD4に付帯させる。投影データD4は、X線曝射がOFF状態のタイミングで収集されたデータであるため、データ付帯部11は、X線曝射のOFF信号を投影データD4に付帯させる。同様に、データ付帯部11は、X線ステータス情報X5とX線曝射のOFF信号とを、投影データD5に付帯させ、X線ステータス情報X6とX線曝射のOFF信号とを、投影データD6に付帯させる。そして、架台制御部10は、エクストラデータが付帯された各投影データを、コンソール部2の前処理部21に出力する(図2、エクストラデータ付帯、データ+エクストラデータ転送)。
【0055】
前処理部21の第1確認部22は、エクストラデータが付帯された各投影データを架台制御部10から受ける。第1確認部22は、エクストラデータに含まれるX線ステータス情報(管電流値及び管電圧値)とX線制御データ(X線曝射のON/OFF信号)とを確認する。まず、第1確認部22は、X線制御データが示すX線曝射のON/OFF信号に基づいて、投影データが、X線が曝射中に収集されたデータであるか否かを判断する。図2に示す例では、投影データD1、D2及びD3には、X線曝射のON信号が付帯されているため、第1確認部22は、投影データD1、D2及びD3を、X線曝射中に収集されたデータであると判断する(図2、エクストラデータチェック)。一方、投影データD4、D5及びD6には、X線曝射のOFF信号が付帯されているため、第1確認部22は、投影データD4、D5及びD6を、X線曝射が停止中に収集されたデータであると判断する(図2、エクストラデータチェック)。
【0056】
さらに、第1確認部22は、X線曝射のON信号が付帯された投影データについては、X線ステータス情報が示す管電流値及び管電圧値が、予め設定された所定範囲内の値に含まれているか否かを判断する。図2に示す例では、第1確認部22は、投影データD1及び投影データD2については、管電流値及び管電圧値が所定範囲内の値に含まれていると判断する。一方、第1確認部22は、投影データD3については、管電流値及び管電圧値が所定範囲内の値に含まれていないと判断する(図2、エクストラデータチェック)。
【0057】
そして、前処理部21は、管電流値及び管電圧値が所定範囲内の値に含まれている投影データに対して、感度補正やX線強度補正などの前処理を施す。図2に示す例では、前処理部21は、投影データD1及びD2に対して前処理を施す。前処理部21は、前処理が施された投影データを、投影データ記憶部23に記憶させる。図2に示す例では、前処理部21は、投影データD1及びD2を投影データ記憶部23に記憶させる。前処理部21は、前処理が施されなかった投影データD3〜D6を削除しても良い。
【0058】
再構成処理部24は、前処理が施された投影データを投影データ記憶部23から読み込んで、投影データを逆投影処理することにより画像データを再構成する。表示制御部27は、再構成された画像データに基づく画像を表示部29に表示させる。
【0059】
前処理部21は、X線曝射のON信号が付帯されている投影データであっても、管電流値及び管電圧値が、所定範囲内の値に含まれていない投影データを確認した場合、エラー信号をスキャン制御部20に出力しても良い。図2に示す例では、投影データD3について、管電流値及び管電圧値が所定範囲内の値に含まれていない。そのため、前処理部21は、投影データD3を確認すると、エラー信号をスキャン制御部20に出力する。スキャン制御部20は、スキャン中止の指示を架台制御部10に与え、エラー信号を表示制御部27に出力する。これにより、スキャン(撮影)が中止され、表示部29にエラー情報が表示される。
【0060】
以上のように、この実施形態に係るX線CT装置によると、各投影データに、X線曝射のON/OFF信号を付帯させているため、再構成に用いることが可能な投影データの判別をより正確に行うことが可能となる。例えば、心電同期のProspective Gating Scanのように、X線曝射のONとOFFとを切り替えてX線曝射のON/OFFを繰り返して撮影を行う場合に、X線曝射がON状態で収集された投影データのみを用いて画像を再構成することが可能となる。すなわち、データ収集部15によるデータ収集を継続的に行い、X線管球13からのX線曝射を間欠的に行う場合に、再構成に用いることが可能な投影データ(X線曝射がON状態で収集された投影データ)をより正確に判別することが可能となる。その結果、X線曝射がON状態で収集された投影データのみを用いて、画像を再構成することが可能となる。
【0061】
また、この実施形態では、X線管球13に実際に供給した管電流値及び管電圧値を、各投影データに付帯させる。そのことにより、間欠的なX線曝射の指示に対して、高電圧発生部12とX線管球13とが、正確に応答して出力しているか否かを確認することが可能となる。また、X線管球13からX線を曝射しながらX線出力(mA)を変調(モジュレーション)させる場合にも、各ビューの投影データごとに実際の出力値(mA)を特定することができるため、より正確な線量を求めることが可能となる。
【0062】
(変形例1)
図3を参照して、変形例1に係るX線CT装置について説明する。変形例1では、所定の切替タイミングで管電圧値を変えて、X線管球13に管電圧を供給する。例えば1ビューごとに管電圧値を変えてX線を曝射する。または、X線管球13及びX線検出器14が被検体の周りを1回転するたびに管電圧値を変えてX線を曝射しても良い。
【0063】
例えば1ビューごとに、高電圧値(第1の電圧値)と低電圧値(第2の電圧値)とを切り替えてX線管球13に管電圧を供給する。管電圧値を変えて撮影を行うことで、投影データ(CT値)に差が生じる箇所がある。例えば、動脈硬化が生じている箇所にはカルシウム(Ca)が沈着している。管電圧値を変えて撮影を行うことで、カルシウムが沈着している箇所の投影データ(CT値)に差が生じる。具体的には、高電圧値で撮影することで得られた投影データと、低電圧値で撮影することで得られた投影データとでは、カルシウムが沈着している箇所のデータに差が生じる。データに差が生じているため、これらのデータを比較することで、動脈硬化の有無を確認することができ、また、動脈硬化が生じている箇所を特定することが可能となる。
【0064】
管電圧値の切り替えは、スキャン制御部20から出力される制御データに基づいて行われる。例えば、スキャン制御部20は、1ビューごとに曝射条件に含まれる管電圧値を高電圧値と低電圧値とで切り替えて、制御データを架台制御部10に出力する。架台制御部10は、制御データを高電圧発生部12に出力する。高電圧発生部12は制御データに従い、1ビューごとに管電圧値を高電圧値と低電圧値とで切り替えて、X線管球13に管電圧を供給する。これにより、X線管球13は、1ビューごとに管電圧値を高電圧値と低電圧値とで切り替えて、X線を曝射する。
【0065】
なお、操作者は図示しない操作部を用いて、管電圧値を任意に変更することができる。具体的には、操作者が操作部を用いて、高電圧の値と低電圧の値とを入力することで、高電圧値と低電圧値とがスキャン制御部20に出力される。また、操作者は操作部を用いて、管電圧値の切替タイミングを任意に変更することができる。操作者は操作部を用いて、切替タイミングを1ビューごとにしても良いし、1回転ごとにしても良い。操作者が操作部を用いて切替タイミングを入力することで、切替タイミングを示す情報がスキャン制御部20に出力される。
【0066】
高電圧発生部12は、管電圧値として高電圧値又は低電圧値をX線ステータス情報に含ませて、X線ステータス情報を架台制御部10に出力する。データ付帯部11は、各ビューの投影データに、X線ステータス情報とX線制御データとをエクストラデータとして付帯させる。
【0067】
図3に、1ビューごとに管電圧値を切り替えることで得られた投影データの1例を示す。投影データ110は高電圧値で得られたデータであり、投影データ120は低電圧値で得られたデータである。それぞれの投影データには、付帯情報としてのエクストラデータ100が付帯されている。
【0068】
第1確認部22は、ステータス情報に含まれる管電圧値に従って、高電圧値で得られた投影データと、低電圧値で得られた投影データとを区別する。図3に示す例では、第1確認部22は、投影データ110及び投影データ120にそれぞれ付帯されているエクストラデータ100を参照することで、高電圧値で得られた投影データ110と、低電圧値で得られた投影データ120とを区別する。なお、第2確認部25が、この処理を行っても良い。
【0069】
投影データ110と投影データ120とは、動脈硬化の有無の確認や動脈硬化の発生箇所の特定に用いることができる。すなわち、動脈硬化が発生している場合、高電圧値で得られた投影データ110と、低電圧値で得られた投影データ120とをでは、動脈硬化が発生している箇所でデータに差が生じる。このデータの差によって、動脈硬化の有無を確認したり、動脈硬化の発生箇所を特定したりすることが可能となる。例えば、図示しない処理部が、投影データに差が生じている箇所を自動的に特定しても良い。すなわち、処理部は、投影データ110と投影データ120とを比較することで、データに差が生じている箇所を動脈硬化の発生箇所として特定しても良い。表示制御部27は、動脈硬化の有無を示す情報を表示部29に表示させても良い。また、表示制御部27は、動脈硬化が発生している箇所を画像上で特定して表示部29に表示させても良い。
【0070】
再構成処理部24は、高電圧値で得られた投影データを用いて第1の画像データを再構成しても良い。また、再構成処理部24は、低電圧値で得られた投影データを用いて第2の画像データを再構成しても良い。図3に示す例では、再構成処理部24は、投影データ110を用いて第1の画像データを再構成し、投影データ120を用いて第2の画像データを再構成する。
【0071】
第1の画像と第2の画像とは、動脈硬化の有無の確認や動脈硬化の発生箇所の特定に用いることができる。すなわち、動脈硬化が発生している場合、高電圧値で得られた第1の画像と低電圧値で得られた第2の画像とでは、動脈硬化が発生している箇所でCT値に差が生じる。CT値の差によって、動脈硬化の有無を確認したり、動脈硬化の発生箇所を特定したりすることが可能となる。例えば、画像においては、CT値の差は濃淡の差として表されるため、その濃淡の差に基づいて動脈硬化の有無を確認することができる。図示しない処理部が、画像データに差が生じている箇所を自動的に特定しても良い。すなわち、処理部は、第1の画像データと第2の画像データとを比較することで、CT値に差が生じている箇所を動脈硬化の発生箇所として特定しても良い。
【0072】
表示制御部27は、例えば、第1の画像データに基づく第1の画像と、第2の画像データに基づく第2の画像とを並べて表示部29に表示させても良い。また、表示制御部27は、動脈硬化が発生している箇所を画像上で特定して表示部29に表示させても良い。
【0073】
以上のように、管電圧値を付帯情報として各投影データに付帯させることで、所定の切替タイミングで管電圧値を変えて撮影を行う場合であっても、個々の投影データを区別して抽出することが可能となる。また、再構成処理を行う場合にも、個々の投影データを区別して抽出し、画像データを再構成することが可能となる。すなわち、異なる管電圧値を用いて撮影を行った場合であっても、同じ管電圧値で得られた投影データを特定することが可能となる。
【0074】
(変形例2)
図4を参照して、変形例2に係るX線CT装置について説明する。変形例2では、被検体の心電信号に基づいてX線の曝射を制御する。
【0075】
心電信号を用いる場合、図1に示す心電計4によって被検体の心電信号(ECG信号)を取得する。なお、心電信号を用いたX線曝射の制御を行わない場合は、心電計4を設けなくても良い。
【0076】
心電計4は被検体の心電信号(ECG信号)を取得して、心電信号をスキャン制御部20に出力する。スキャン制御部20は、心電信号に基づいて、予め設定された期間(撮影期間)、X線が曝射されるように高電圧発生部12を制御する。X線を曝射する期間(撮影期間)は、予め決定されてスキャン制御部20に設定されていても良いし、操作者が任意に指定できるようにしても良い。例えば、操作者が図示しない操作部を用いて、X線を曝射する期間を指定すると、指定された期間を示す情報が、操作部からスキャン制御部20に出力される。例えば、心臓の拡張期や収縮期が撮影期間として指定されると、スキャン制御部20は、心電信号に基づいて拡張期や収縮期などの期間を特定して、撮影期間、X線が曝射されるように高電圧発生部12を制御する。
【0077】
高電圧発生部12は、上述したように管電流値をX線ステータス情報に含ませて、X線ステータス情報を架台制御部10に出力する。データ付帯部11は、各ビューの投影データに、X線ステータス情報とX線制御データとをエクストラデータとして付帯させる。
【0078】
図4に、X線曝射のタイミングと投影データの1例を示す。投影データ300は、X線が曝射されていない期間に収集されたデータである。図4においては、投影データ300を無効データとして示している。投影データ400は、X線が曝射された期間に収集されたデータである。図4においては、投影データ400を有効データとして示している。投影データ500は、X線曝射のON/OFFの切替タイミングで収集されたデータである。投影データ300、400、500には、それぞれ付帯情報としてのエクストラデータが付帯されている。
【0079】
第1確認部22は、ステータス情報に含まれる管電流値に従って、X線が曝射された期間に収集された投影データを有効データとして特定する。例えば、第1確認部22は、管電流値が、予め設定された所定範囲内の値に含まれる投影データを、有効データとして特定する。この所定範囲は、管電流値がX線曝射において正常値であるか否かを判断するための基準である。第1確認部22は、管電流値が所定範囲内の値に含まれる場合は、正常な管電流値でX線曝射が行われたと判断する。すなわち、第1確認部22は、管電流値が所定範囲内の値に含まれている投影データを、正常なX線曝射で収集された投影データであると判断する。図4に示す例では、第1確認部22は、投影データ300、400、500にそれぞれ付帯されているエクストラデータを参照することで、管電流値が所定範囲内の値に含まれる投影データ400を有効データとして特定する。なお、第2確認部25が、この処理を行っても良い。
【0080】
再構成処理部24は、有効データとして特定された投影データを用いて画像データを再構成する。図4に示す例では、再構成処理部24は、投影データ400を用いて画像データを再構成する。表示制御部27は、画像データに基づく画像を表示部29に表示させる。
【0081】
心電信号に基づいてX線曝射のON/OFFを切り替える場合、X線曝射のON/OFFの切替タイミングで収集された投影データは、X線が不安定な状態で収集されたデータとなる。すなわち、X線の立ち上がり(OFF状態からON状態)のタイミング、又は立ち下がり(ON状態からOFF状態)のタイミングでは、X線管球13から曝射されるX線は不安定になる。そのため、X線曝射のON/OFFの切替タイミングで収集された投影データは、X線が不安定な状態で収集されたデータになってしまう。図4に示す例では、投影データ500は、X線曝射のON/OFFの切替タイミングで収集されているため、X線が不安定な状態で収集されたデータである。
【0082】
この変形例2によると、管電流値を付帯情報として各投影データに付帯させているため、X線が不安定なタイミングで収集された投影データを避けて、有効な投影データを特定することが可能となる。そのことにより、有効な投影データを用いて、画像データを再構成することが可能となる。
【0083】
従来においては、Ref検出器の検出値に対して閾値を設定することで、X線が曝射された期間に収集された投影データを特定していた。しかしながら、Ref検出器を用いた方法では、X線曝射のON/OFFの切替タイミングで収集された投影データを抽出して再構成処理に用いてしまうおそれがある。
【0084】
これに対して、この変形例2に係るX線CT装置によると、管電流値を付帯情報として投影データに付帯させているため、その管電流値に基づいて有効な投影データを特定して、画像データを再構成することが可能となる。
【符号の説明】
【0085】
1 架台装置
2 コンソール部
3 寝台装置
4 心電計
10 架台制御部
11 データ付帯部
12 高電圧発生部
13 X線管球
14 X線検出器
15 データ収集部
16 架台駆動部
20 スキャン制御部
21 前処理部
22 第1確認部
23 投影データ記憶部
24 再構成処理部
25 第2確認部
26 画像データ記憶部
27 表示制御部
28 演算部
29 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線発生手段と、
被検体を挟んで前記X線発生手段と対向して配置されて、前記X線発生手段から曝射されて前記被検体を透過したX線を所定の収集タイミングで投影データとして収集するX線検出手段と、
を有し、前記X線発生手段及び前記X線検出手段が前記被検体の周りに回転可能に構成されたX線CT装置であって、
前記X線発生手段による前記X線の曝射のタイミングを制御し、前記X線発生手段に前記X線を曝射させるタイミングでは、前記X線発生手段に電圧及び電流を供給して前記X線発生手段から前記X線を曝射させ、前記X線検出手段による前記投影データの収集タイミングを制御して、前記所定の収集タイミングで継続的に前記X線検出手段に前記投影データを収集させ、前記X線の曝射の状態を示す付帯情報を、前記X線検出手段によって前記所定の収集タイミングで収集された各投影データに付帯させる制御手段を有することを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記付帯情報が付帯された前記各投影データを受けて、前記付帯情報に基づいて、画像データの生成に用いられる投影データを特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された前記投影データを用いて画像データを生成する画像生成手段と、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記X線発生手段による前記X線の曝射の有無を示す曝射情報を前記付帯情報として前記各投影データに付帯させ、
前記特定手段は、前記曝射情報が付帯された前記各投影データを受けて、前記曝射情報に基づいて、前記X線が曝射されたタイミングで前記X線検出手段によって収集された投影データを特定することを特徴とする請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記X線発生手段に供給された前記電圧及び前記電流の値を前記付帯情報として前記各投影データに付帯させ、
前記特定手段は、前記電圧及び前記電流の値が付帯された前記各投影データを受けて、前記電圧及び前記流の値に基づいて、前記画像データの生成に用いられる前記投影データを特定することを特徴とする請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記X線発生手段による前記X線の曝射の有無を示す曝射情報と、前記X線発生手段に供給された前記電圧及び前記電流の値とを、前記付帯情報として前記各投影データに付帯させ、
前記特定手段は、前記付帯情報が付帯された前記各投影データを受けて、前記曝射情報に基づいて、前記X線が曝射されたタイミングで前記X線検出手段によって収集された投影データを特定し、前記X線が曝射されたタイミングで前記X線検出手段によって収集された前記投影データのうち、前記電圧及び前記電流の値が予め設定された所定範囲内の値に含まれる投影データを特定することを特徴とする請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記特定手段が、前記電圧及び前記電流の値が前記所定範囲内の値に含まれない投影データを特定した場合に、前記X線発生手段への前記電圧及び前記電流の供給を停止し、前記X線検出手段による前記投影データの収集を停止させることを特徴とする請求項5に記載のX線CT装置。
【請求項7】
特定手段を更に有し、
前記制御手段は、前記X線発生手段による前記X線の曝射の有無を示す曝射情報と、前記X線発生手段に供給された前記電圧及び前記電流の値とを、前記付帯情報として前記各投影データに付帯させ、
前記特定手段は、前記付帯情報が付帯された前記各投影データを受けて、前記曝射情報に基づいて、前記X線が曝射されたタイミングで前記X線検出手段によって収集された投影データを特定し、前記X線が曝射されたタイミングで前記X線検出手段によって収集された前記投影データに、前記電圧及び前記電流の値が予め設定された所定範囲内の値に含まれない投影データがあるか否かを特定し、
前記制御手段は、前記特定手段が、前記電圧及び前記電流の値が前記所定範囲内の値に含まれない前記投影データを特定した場合に、前記X線発生手段への前記電圧及び前記電流の供給を停止し、前記X線検出手段による前記投影データの収集を停止させることを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記電圧及び前記電流の値が前記所定範囲内の値に含まれない前記投影データが特定されたことを報知する報知手段を更に有することを特徴とする請求項6又は請求項7のいずれかに記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記電圧及び前記電流の値が付帯された前記各投影データを受けて、前記付帯された前記電流の値に基づいて、前記X線検出手段が検出したX線の線量を求める演算手段を更に有することを特徴とする請求項4から請求項8のいずれかに記載のX線CT装置。
【請求項10】
特定手段を更に有し、
前記制御手段は、第1の電圧と前記第1の電圧よりも低い第2の電圧とを、所定の切替タイミングで切り替えて前記X線発生部に供給して、前記X線発生部から前記X線を曝射させ、前記X線発生部に供給された前記第1の電圧又は前記第2の電圧の値を、前記付帯情報として前記各投影データに付帯させ、
前記特定手段は、前記付帯情報が付帯された前記各投影データを受けて、前記第1の電圧で収集された投影データと前記第2の電圧で収集された投影データとを特定することを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記被検体の心電信号を受けて、前記心電信号に基づいて前記X線発生手段による前記X線の曝射のタイミングを制御し、前記付帯情報を前記各投影データに付帯させ、
前記特定手段は、前記付帯情報が付帯された前記各投影データを受けて、前記付帯情報に基づいて、前記X線が曝射されたタイミングで前記X線検出手段によって収集された投影データを特定することを特徴とする請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記X線発生手段に供給された前記電流の値を、前記付帯情報として前記各投影データに付帯させ、
前記特定手段は、前記電流の値が付帯された前記各投影データを受けて、前記電流の値に基づいて、前記X線が曝射されたタイミングで前記X線検出手段によって収集された前記投影データを特定することを特徴とする請求項11に記載のX線CT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−221009(P2010−221009A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293700(P2009−293700)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】