説明

Y型ゼオライトアルキル化触媒

【課題】制御された大細孔構造を持つY型ゼオライト触媒を提供する。
【解決手段】本発明は、制御された大細孔構造を持つY型ゼオライト触媒に関する。また、本発明は、Y型ゼオライト触媒複合体および触媒複合体の製造方法にも関する。触媒複合体はアルキル化工程において失活速度の低減を示し、それにより触媒の寿命が増加する。また、本発明は、芳香族炭化水素を一種以上のオレフィンでアルキル化、炭酸塩化することからなる炭酸塩化した過塩基性芳香族スルホネートの製造方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御された大細孔構造を持つY型ゼオライト触媒に関するものである。また、本発明は、Y型ゼオライトからなる触媒複合体および触媒複合体の製造方法にも関する。また、本発明は、本発明の触媒および触媒複合体を用いた芳香族炭化水素のアルキル化、並びにアルキル化芳香族炭化水素のスルホン化および炭酸塩化にも関する。触媒および触媒複合体はアルキル化工程において失活速度の低減を示し、それにより触媒の寿命が増加する。
【背景技術】
【0002】
種々のルイス酸またはブレンステッド酸触媒を用いて、芳香族炭化水素の接触アルキル化反応を行うことはよく知られている。代表的な市販の触媒としては、リン酸/珪藻土、ハロゲン化アルミニウム、三フッ化ホウ素、塩化アンチモン、塩化第二スズ、塩化亜鉛、ポリ(フッ化水素)オニウム、およびフッ化水素を挙げることができる。プロピレンなどの低分子量オレフィンを用いるアルキル化は、液相または蒸気相で実施することができる。C16オレフィンなどの高分子量オレフィンを用いるアルキル化では、液相にて通常はフッ化水素を存在させてアルキル化を行う。高分子量オレフィンを用いたベンゼンのアルキル化はとりわけ困難であり、フッ化水素処理を必要とする。しかしながら、フッ化水素は環境上魅力的とは言い難い。
【0003】
上記に挙げた酸を使用した場合には極めて腐食が起こり易く、よって特別な取扱いと装置が必要になる。また、これらの酸の使用では環境上の問題を抱えることがある。別の問題は、これら酸の使用によって、生成する生成物の精密な化学組成に対する所望の制御が困難になることにある。よって、もっと安全でもっと簡易で、好ましくは固体状態の触媒を使用することが好ましい。この簡易な方法は、結果的に少ない資本投資を必要とするのみで、その結果、相対的に安価な生成物をもたらすことになる。
【0004】
固体結晶性アルミノケイ酸塩のゼオライト触媒は、芳香族炭化水素をオレフィンでアルキル化するのに有効であることが知られている。触媒として有用なゼオライト材料は通常、直径が20オングストローム未満の微細孔範囲にある均一な細孔を持つ無機結晶性物質である。ゼオライトは、天然でも産出されるし、また合成でも製造できる。合成のゼオライトとしては例えば、A、X、Y、L及びオメガ型ゼオライトが挙げられる。金属アルミノリン酸塩や金属ケイリン酸塩を生成させることも可能である。ホウ素やガリウム、鉄、ゲルマニウムなど他の物質も、構造骨格のアルミニウムまたはケイ素を置換するのに使用することができる。
【0005】
これらのゼオライト触媒材料は、特定の用途に向けてその触媒特性を増大させるべく更に改良するために、微結晶粉末として市販されている。結晶性ゼオライト触媒の触媒特性を増大させる更なる改良の方法も、当該分野ではよく知られていて、例えばゼオライト触媒を成形した粒子にすること、触媒母体の陽イオンを交換すること等がある。
【0006】
ゼオライト粉末を成形した粒子にすることは、クレー、無機化合物または有機化合物などの好適な結合剤物質の添加により触媒粉末のゲルまたはペーストを作り、次いでゲルまたはペーストを所望の形状に押し出すことによって行なうことができる。結合剤を使用しないでゼオライト粉末を粒子にすることもできる。代表的な触媒粒子としては、断面が円形であるか、あるいは触媒粒子の中心部から外に向かって広がった複数の弓形の丸い突出部がある押出物が挙げられる。
【0007】
固定床反応器で使用される触媒粒子に伴う一つの問題は、触媒失活である。アルキル化を含む大部分の炭化水素転換法において、主な触媒失活はコークスの生成により引き起こされる。この触媒失活は、アルキル化反応にゼオライト触媒を使用する際の重大な問題である。この失活問題についても当該分野ではよく知られていて、失活のメカニズムには、オレフィンが重合して、ゼオライト材料の活性部位を含む細孔から外に拡散できない大分子種になることが含まれることもよく分かっている。
【0008】
アルキル芳香族炭化水素の製造におけるゼオライト触媒の使用は一般に、ノルマルアルファオレフィンまたは分枝鎖オレフィンおよび任意に促進剤を用いて、芳香族炭化水素を接触アルキル化することにより行われる。
【0009】
ゼオライト触媒の製造方法、並びに結合剤を使用して又は使用しないで触媒粒子や押出物に更に成形、形成する方法については、多数の特許文献に記述されている。また、芳香族炭化水素のアルキル化にゼオライト触媒を使用することについても、多数の特許文献に開示されている。
【0010】
特許文献1には、合成ゼオライト材料の製造であって、水和により制御された有効孔径を持つ吸着体を生成させ、そして吸着体およびそのゼオライト前駆体を直接凝結体の形で与える製造が開示されている。
【0011】
特許文献2には、シリカとアルミナとの比が3より大きく約3.9までの範囲にあるY型ナトリウムゼオライトの製造方法が開示されている。
【0012】
特許文献3には、結晶性ゼオライトの塊状体又は成形物の製造方法が開示されている。また、この特許文献には、化学分析と共にX線粉末回折パターンを用いた触媒材料の同定方法も開示されている。
【0013】
特許文献4には、アルキル化工程でアルキル化芳香族生成物の高度の「重質分」の生成を制御でき、所望の分子量を得るのにアルキル化芳香族生成物を蒸留するよりも有利であることが開示されている。
【0014】
特許文献5及び6には、ゼオライト触媒からナトリウム又は他のアルカリ金属イオンを除去する技術が開示されている。また、特許文献5には、そのようなナトリウムまたは他のアルカリ金属イオンの除去が、液相反応でのオレフィンによる芳香族炭化水素のアルキル化の際にゼオライト触媒を活性化することも開示されている。
【0015】
特許文献7、8及び9には、「重質アルキレート」分が、中性スルホネートおよび過塩基性スルホネートに影響を及ぼすことが開示されている。特許文献9には、分子量分布または「重質アルキレート」の影響が、中性及びHOBスルホネート両方の性能に及ぶことが明らかにされ、そして特許文献7では、ジアルキレート含量が対応するスルホネートのさび性能に影響することが明らかにされている。特許文献8では、モノアルキレートスルホネートが好ましいとされている。特許文献4、7、8及び9は、如何なる目的であれ参照すべき内容として本明細書の記載とする。
【0016】
特許文献10には、大きさが200ミクロンを越え、高い強度と優れた吸着特性に特徴がある結晶性アルミノケイ酸塩ゼオライトを結晶化するのに、核生成中心を使用することが開示されている。
【0017】
特許文献11には、C2〜C4オレフィンで芳香族炭化水素をアルキル化するための非常に安定で活性な触媒の製造が開示されている。触媒は、失活速度が非常に改善された酸性
の結晶性アルミノケイ酸塩ゼオライトである。
【0018】
特許文献12には、ベンゼンおよび低分子量オレフィンを二酸化硫黄の存在下で希土類交換XまたはY型ゼオライト触媒と接触させることからなる、ベンゼンをアルキル化するアルキル化法が開示されている。
【0019】
特許文献13には、アルキル芳香族炭化水素を製造するのに低結晶度の部分崩壊ゼオライト触媒を使用することが開示されている。アルキル化反応には、アルキル化反応を行う前に触媒床を水素で状態調節することも含まれる。
【0020】
特許文献14、15、16及び17には、押出物に捕捉されて蒸熱されたシリカ対アルミナ比の低いY型ゼオライトを使用して触媒を改質する、炭化水素転換触媒の製造が開示されている。
【0021】
特許文献18には、消泡性の清浄分散潤滑油添加剤の製造方法が開示されている。その方法には更に、生成物をもっと塩基性にするための炭酸塩化も含まれる。
【0022】
特許文献19には、モノアルキル化の選択度が増したアンモニウム交換、蒸気安定化Y型ゼオライト触媒を使用するアルキル化法が開示されている。その方法には、充分な量の炭質材料がアルキル化触媒上に均一に堆積してそのアルキル化活性度を実質的に抑えるような条件下で、少なくとも一種の有機化合物を存在させることが含まれる。
【0023】
特許文献20には、水素化するのにY型ゼオライト触媒を使用することが開示されている。Y型ゼオライト触媒は、変性した結晶性アルミノケイ酸塩Y型ゼオライト、結合剤、そして少なくとも一種の水素添加成分であるVI族またはVIII族金属から構成される。
【0024】
特許文献21には、ナフタレンまたはモノ−イソプロピルナフタレンのアルキル化に、シリカの対アルミナモル比が15乃至110のY型ゼオライト触媒を使用することが開示されている。
【0025】
特許文献22には、芳香族炭化水素供給物を液相のアルキル化条件下で、シリカを含有する大細孔で小粒子径のゼオライト触媒を存在させて、アルキル化剤と接触させる工程を含む芳香族のアルキル化法が開示されていて、触媒の孔容積は半径450オングストロームの細孔で約0.25乃至0.50cc/gであり、触媒の粒子径は1/32インチ以下である。
【0026】
特許文献23には、ナフタレンから長鎖アルキル置換芳香族化合物を製造する方法が開示されていて、その方法は0.5乃至3.0重量%の水の存在下でゼオライトアルキル化触媒を使用している。水の存在により、モノアルキル化生成物が製造される選択度が高くなる。
【0027】
特許文献24及び25には、アルキル化及び/又はアルキル交換反応活性度を有する触媒組成物であって、水を触媒組成物の全重量に基づき3.5重量%より多く含有する触媒組成物の製造方法、および該触媒組成物と炭素原子2個乃至25個を含むオレフィンを使用する芳香族のアルキル化法が開示されている。
【0028】
特許文献26には、10乃至90%の変性Y型ゼオライトから形成された変性Y型ゼオライト触媒と、10乃至90%の結合剤とからなる触媒組成物の製造方法であって、変性Y型ゼオライトと結合剤のスラリを使用して、IRスペクトルの波長3602センチメー
トル分の1に明確な吸収ピークを示す触媒組成物を形成する方法が開示されている。また、この特許文献には、Y型ゼオライト構造のアルミナを鉄で置換することも開示されている。
【0029】
特許文献27には、一次元の細孔構造を持つ酸性触媒の存在下でノルマルアルファオレフィンを異性化し、次いで異性化したオレフィンを使用して第二の酸性触媒の存在下で芳香族炭化水素をアルキル化する方法が開示されていて、第二の酸性触媒は、シリカとアルミナとの比が少なくとも40:1のY型ゼオライトであってよいとされている。
【0030】
特許文献28には、超アルカリ性のアルカリ土類金属アルキルアリールスルホネートの製造が開示されている。アルキルアリールスルホネートのアルキル基は炭素原子を14〜40個含み、そしてアルカリ土類金属のアリールスルホネート基は線状アルキル鎖の1又は2位に0〜13%を占めるモル比で固定されている。
【0031】
特許文献29には、非アルキル化単環芳香族炭化水素の少なくとも一部を除去し、次いで残っているアルキル化反応生成物を分子篩またはクレーなどの酸性触媒の存在下で反応させることにより、アルキル化反応生成物の残留オレフィン含量を低減する方法が開示されている。
【0032】
特許文献30には、TBNが3〜500の範囲にある低過塩基性及び高過塩基性スルホネートを製造するために、予備異性化ノルマルアルファオレフィンからアルキルベンゼンを製造することが開示されている。この方法では、触媒としてHF、もしくは平均孔径が少なくとも6オングストロームのゼオライトなどの固体酸性アルキル化触媒が使用されている。
【0033】
アルファ−オレフィンでアルキル化すると、殆どの固体酸性触媒は多量の2−アリール結合を生じさせることが知られており、非特許文献1に記載がある。
【0034】
ゼオライトに関する二つの概括的な論文として次のものがある:非特許文献2及び非特許文献3。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】米国特許第3094383号明細書
【特許文献2】米国特許第3130007号明細書
【特許文献3】米国特許第3119660号明細書
【特許文献4】米国特許第3288716号明細書
【特許文献5】米国特許第3641177号明細書
【特許文献6】米国特許第3929672号明細書
【特許文献7】米国特許第3764533号明細書
【特許文献8】米国特許第4259193号明細書
【特許文献9】米国特許第5112506号明細書
【特許文献10】米国特許第3777006号明細書
【特許文献11】米国特許第4185040号明細書
【特許文献12】米国特許第4395372号明細書
【特許文献13】米国特許第4570027号明細書
【特許文献14】米国特許第4762813号明細書
【特許文献15】米国特許第4767734号明細書
【特許文献16】米国特許第4879019号明細書
【特許文献17】米国特許第5111792号明細書
【特許文献18】米国特許第4764295号明細書
【特許文献19】米国特許第4876408号明細書
【特許文献20】米国特許第4916096号明細書
【特許文献21】米国特許第5026941号明細書
【特許文献22】米国特許第5118896号明細書
【特許文献23】米国特許第5191135号明細書
【特許文献24】米国特許第5240889号明細書
【特許文献25】米国特許第5324877号明細書
【特許文献26】米国特許第5506182号明細書
【特許文献27】米国特許第5922922号明細書
【特許文献28】米国特許第5939594号明細書
【特許文献29】米国特許第6031144号明細書
【特許文献30】米国特許第6337310号明細書
【非特許文献】
【0036】
【非特許文献1】S.シバサンカー、A.サンガラジ(S. Sivasanker, A. Thangaraj)著、「固体酸触媒上での長鎖オレフィンによるベンゼンのアルキル化における異性体分布(Distribution of Isomers in the Alkylation of Benzene with Long-Chain Olefins over Solid Acid Catalysts)」、ジャーナル・オブ・カタリシス(Journal of Catalysis)、1992年、第138号、p.386−390
【非特許文献2】ローズマリー・ツォスタク(Rosemarie Szostak)著、「分子篩便覧(Handbook of Molecular Sieves)」、ニューヨーク、ヴァン・ノストランド・ラインホルド(Van Nostrand Reinhold)、1992年
【非特許文献3】ローズマリー・ツォスタク(Rosemarie Szostak)著、「分子篩:合成及び同定の原理(Molecular Sieves: Principles of Synthesis and Identification)」、英国、ロンドン、第2版、チャップマン・アンド・ホール(Chapman and Hall)、1999年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
本発明は、制御された大細孔構造を持つY型ゼオライト触媒に関する。また、本発明は、Y型ゼオライトからなる触媒複合体および触媒複合体の製造方法にも関する。触媒および触媒複合体はアルキル化工程において失活速度の低減を示し、それにより触媒および触媒複合体の寿命が増加する。また、本発明は、本発明の触媒および触媒複合体の存在下でアルキル化し、そしてアルキル化芳香族炭化水素を更にスルホン化し、炭酸塩化して過塩基性にすることからなる炭酸塩化した過塩基性アルキル化芳香族スルホネートの製造方法にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明は特には、Y型ゼオライトからなる大細孔構造を持つ触媒であって、ピーク孔径がASTM試験第D4284−03による測定値として約2000オングストローム以下であり、そして約500オングストローム以下の孔径の細孔の累積孔容積が、ASTM試験第D4284−03による測定値としてグラム当り約0.30ミリリットル以下であり、好ましくは約400オングストローム以下の孔径の細孔の累積孔容積がグラム当り約0.30ミリリットル以下であり、より好ましくは約400オングストローム以下の孔径の細孔の累積孔容積がグラム当り約0.05ミリリットル乃至約0.18ミリリットルの範囲にある触媒に関する。
【0039】
Y型ゼオライト触媒の累積孔容積は、約300オングストローム以下の孔径の細孔ではグラム当り約0.25ミリリットル未満であることが好ましく、より好ましくは、約300オングストローム以下の孔径の細孔においてグラム当り約0.20ミリリットル未満であり、そして最も好ましくは、約300オングストローム以下の孔径の細孔においてグラム当り約0.08ミリリットル乃至約0.16ミリリットルの範囲にある。
【0040】
Y型ゼオライト触媒のピーク孔径は、約700オングストローム乃至約1800オングストロームの範囲にあることが好ましく、より好ましくは、ピーク孔径は約750オングストローム乃至約1600オングストロームの範囲にあり、そして最も好ましくは、ピーク孔径は約800オングストローム乃至約1400オングストロームの範囲にある。
【0041】
本発明のY型ゼオライト触媒のシリカとアルミナとの比は、約5:1乃至約100:1であってよく、好ましくは、シリカとアルミナとの比は約30:1乃至約80:1であり、そして最も好ましくは、シリカとアルミナとの比は約50:1乃至約70:1である。
【0042】
本発明のY型ゼオライト触媒の一態様では、触媒はタブレットの形状にある。タブレットは、結合剤を含んでいてもよいし、あるいは含まなくてもよい。Y型ゼオライト触媒タブレットのピーク孔径は、約500オングストローム乃至約1500オングストロームの範囲にあり、そして約500オングストローム以下の孔径の細孔の累積孔容積は、グラム当り約0.05ミリリットル乃至約0.15ミリリットルの範囲にあることが好ましい。
【0043】
本発明の一態様は、下記の成分からなる触媒複合体に関する:
(a)上記本発明のY型ゼオライト触媒、および(b)結合剤。
【0044】
上記の(b)工程において、結合剤は無機物質であり、好ましくは結合剤はアルミナである。
【0045】
上記態様の触媒複合体においてY型ゼオライトは、触媒複合体の全乾量に基づき約40重量%乃至約99重量%の範囲にある。好ましくは、触媒複合体中のY型ゼオライトは触媒複合体の全乾量に基づき約50重量%乃至約85重量%の範囲にある。
【0046】
本発明の別の態様は、下記の工程からなる触媒複合体の製造方法に関する:
(a)Y型ゼオライトを揮発物の存在下で結合剤と接触させて、Y型ゼオライトの重量%が得られる触媒複合体の全乾量に基づき約40乃至約99%の範囲にあり、そして混合物の揮発分が混合物の約30重量%乃至約70重量%の範囲にある混合物を形成する工程、
(b)混合物を成形して複合体を形成する工程、
(c)複合体を乾燥する工程、そして
(d)複合体を実質的に乾燥した環境下で焼成する工程。
【0047】
上記方法の(b)工程において、成形は押出し成形であることが好ましい。
【0048】
上記方法は更に、(a)工程において成形助剤を添加することを含んでいてもよい。成形助剤は多糖であることが好ましい。
【0049】
上記(a)工程において、結合剤は無機物質であることが好ましく、さらに好ましくは結合剤はアルミナである。
【0050】
Y型ゼオライト複合体の製造方法の(a)工程において、揮発物は水と酸からなることが好ましく、さらに好ましくは酸は硝酸である。
【0051】
Y型ゼオライト複合体の上記製造方法の(a)工程において、揮発物は更に多糖類を含むことが好ましい。
【0052】
Y型ゼオライト複合体の製造方法の(a)工程において、混合物の揮発分は、混合物の約40重量%乃至約60重量%の範囲にあることが好ましい。
【0053】
上記方法の(a)工程において、Y型ゼオライトの重量%は混合物の約50乃至約85の範囲にあることが好ましい。
【0054】
本発明の別の態様は、上記の方法により製造された触媒複合体に関する。
【0055】
本発明の別の態様は、アルキル化芳香族組成物を製造する方法であって、Y型ゼオライトからなり、ピーク孔径がASTM試験第D4284−03による測定値として約2000オングストローム以下であり、そして約500オングストローム以下の孔径の細孔の累積孔容積が、ASTM試験第D4284−03による測定値としてグラム当り約0.30ミリリットル以下である大細孔構造を持つ触媒を存在させて、少なくとも一種の芳香族炭化水素を、アルキル化条件下で少なくとも一種のオレフィンと接触させることからなる方法に関する。
【0056】
上記のアルキル化法は、水を添加しないで乾燥した芳香族炭化水素とオレフィン供給物を用いて行われることが好ましい。アルキル化過程における水の存在は本発明の触媒の失活速度を増大させると考えられる。
【0057】
上記のアルキル化法は更に、好ましくはアルキル化芳香族組成物をスルホン化してアルキル化芳香族スルホン酸を生成させることを含む。
【0058】
上記の方法は更に、好ましくはアルキル化芳香族スルホン酸をアルカリ土類金属および二酸化炭素と反応させて、炭酸塩化した過塩基性アルキル化芳香族スルホネートを生成させることを含む。
【0059】
本発明の更に別の態様は、少なくとも一種の芳香族炭化水素を、Y型ゼオライトを含み、上記の方法により製造された触媒複合体を存在させて、アルキル化条件下で少なくとも一種のオレフィンと接触させることからなるアルキル化芳香族組成物の製造方法に関する。
【0060】
上記方法の芳香族炭化水素は、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンまたはそれらの混合物であることが好ましい。さらに好ましくは、芳香族はトルエンまたはベンゼンである。
【0061】
上記方法のオレフィンは、アルファオレフィン、異性化オレフィン、分枝鎖オレフィンまたはそれらの混合物であってもよい。オレフィンは、炭素原子約4個乃至約80個を有していてもよい。アルファオレフィンまたは異性化オレフィンは、炭素原子約6個乃至約40個を有していてもよく、好ましくは炭素原子約20個乃至約40個を有する。分枝鎖オレフィンは、炭素原子約6個乃至約70個を有していてもよく、好ましくは炭素原子約8個乃至約50個を有し、そしてより好ましくは炭素原子約12個乃至約18個を有する。
【0062】
上記方法のオレフィンは、炭素原子約6個乃至約40個、好ましくは炭素原子約20個乃至約40個を含む部分分枝鎖オレフィンであってもよい。
【0063】
上記のアルキル化法は更に、アルキル化芳香族組成物をスルホン化してアルキル化芳香族スルホン酸を生成させることを含むこともできる。
【0064】
上記の方法は更に、アルキル化芳香族スルホン酸をアルカリ土類金属および二酸化炭素と反応させて、炭酸塩化した過塩基性アルキル化芳香族スルホネートを生成させることを
含むこともできる。
【0065】
本発明の更に別の態様は、少なくとも一種の芳香族炭化水素を、Y型ゼオライトを含み、上記の方法により製造された触媒複合体を存在させて、アルキル化条件下で少なくとも一種のオレフィンと接触させることからなるアルキル化芳香族組成物の製造方法に関する。
【0066】
上記方法の芳香族炭化水素は、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンまたはそれらの混合物であることが好ましく。さらに好ましくは、芳香族はトルエンまたはベンゼンである。
【0067】
上記方法のオレフィンは、アルファオレフィン、異性化オレフィン、分枝鎖オレフィンまたはそれらの混合物であってもよい。オレフィンは、炭素原子約4個乃至約80個を有していてもよい。アルファオレフィンまたは異性化オレフィンは、炭素原子約6個乃至約40個を有していてもよく、好ましくは炭素原子約20個乃至約40個を有する。分枝鎖オレフィンは、炭素原子約6個乃至約70個を有していてもよく、好ましくは炭素原子約8個乃至約50個を有し、そしてより好ましくは炭素原子約12個乃至約18個を有する。
【0068】
上記方法のオレフィンは、炭素原子約6個乃至約40個、好ましくは炭素原子約20個乃至約40個を含む部分分枝鎖オレフィンであってもよい。
【0069】
上記のアルキル化法は、水を添加しないで、好ましくは乾燥した芳香族炭化水素とオレフィン供給物を用いて行われる。アルキル化過程における水の存在は本発明の触媒の失活速度を増大させると考えられる。
【0070】
上記のアルキル化法は更に、好ましくはアルキル化芳香族組成物をスルホン化してアルキル化芳香族スルホン酸を生成させることを含む。
【0071】
上記の方法は更に、好ましくはアルキル化芳香族スルホン酸をアルカリ土類金属および二酸化炭素と反応させて、炭酸塩化した過塩基性アルキル化芳香族スルホネートを生成させることを含む。
【0072】
本発明の上記態様のアルキル化芳香族組成物の製造方法は更に、好ましくは芳香族をオレフィンと接触させてアルキル芳香族生成物を製造する前に、ノルマルアルファオレフィンを異性化酸性触媒を用いて異性化する工程を含む。ただし、好ましくは、アルキル化芳香族炭化水素の40重量%未満が2−アリールであり、そしてアルキル化芳香族炭化水素の少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも約75重量%がモノアルキレートである。
【0073】
異性化工程の酸性触媒は、少なくとも一種の金属酸化物を有し、平均孔径が5.5オングストローム未満である固体触媒であることが好ましい。より好ましくは、固体触媒は一次元の細孔構造を持つ分子篩である。
【発明の効果】
【0074】
本発明の触媒および触媒複合体はアルキル化工程において失活速度の低減を示し、それにより触媒および触媒複合体の寿命が増加する。
【発明を実施するための形態】
【0075】
[定義]
「アルキレート」は、アルキル化芳香族炭化水素を意味する。
【0076】
「2−アリール含量」は、アルキレート(本発明のアルキル化法に用いたオレフィンから誘導されたアルキル鎖が、芳香環に結合しているアルキレート種)であって、芳香環へのアルキル鎖の結合がアルキル鎖に沿って2位にあるような化学種からなるもの全部のパーセントとして定義される。
【0077】
「結合剤」は、ゼオライト粒子と結び付いて更に有益な形状になる母材又は多孔質母材として作用することができる、任意の好適な無機物質を意味する。
【0078】
「分枝鎖オレフィン」は、エチレンよりも高級なオレフィン単量体の重合から誘導され、相当な数の分枝を含むオレフィンを意味する、ただし、分枝は炭素原子約1個乃至約30個を持つアルキル基である。エチレンと高分子量オレフィンの混合物も考慮される。
【0079】
「焼成」は、本明細書で使用するとき、触媒を実質的に乾燥した環境下で約400℃乃至約1000℃に加熱することを意味する。
【0080】
「炭酸塩化・過塩基性」は、アルカリ土類金属アルカリ芳香族スルホネートのようなものを記述するのに使用され、芳香族スルホン酸部の当量の数に対するアルカリ土類金属部の当量の数の比率が1より大きく、通常は10より大きく、おそらくは20かそれ以上ほど大きい。
【0081】
「収集物」は、本発明のスルホン酸と同様のアルキルベンゼンスルホン酸の以前の炭酸塩化・過塩基性化の際に集めたスラッジ部分の混合物を意味する。収集物は、炭酸塩化・過塩基性化反応の最後に高TBNの炭酸塩化した過塩基性合成スルホネートを、遠心分離およびデカンテーションにより精製する過程で生成した。収集物の内容物を再循環させるために、本特許出願の実施例11のアルキルベンゼンスルホン酸反応混合物の炭酸塩化・過塩基性化の際に収集物を添加した。実施例11の反応混合物に添加する前に、収集物は、そのTBN、並びにキシレン溶媒、活性スルホン酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、二酸化カルシウムおよび100ニュートラル希釈油の量を決定することによって特徴づけられた。
【0082】
水銀圧入式ポロシメトリにより得られる「累積孔容積」は、本明細書で使用するとき、ASTM D4284−03の第14.1.6項で測定したグラフの累積孔容積分布から
導き出した、グラム当りのミリリットルで表した全容積の該当部分、もしくは規定した上限と下限の孔径間の同じデータの対応する表で表現した値を意味する。孔径の下限を規定しないときは、下限は、最小検出限界、またはASTM D4284−03の第14.1
.6項で測定した最小半径である。
【0083】
「乾量基準」、「無水基準」および「無揮発分基準」は、触媒複合体、またはNa2
・Al23・xSiO2などの金属酸化物に基づいて表した原料の乾燥重量を意味する。
【0084】
「灼熱減量(LOI)」は、本明細書で使用するとき、ゼオライト複合体または原料試料を538℃で1時間加熱したときのそのパーセント重量損失を意味する。温度が約538℃以上であると、「灼熱減量」はパーセント揮発分に近似する。
【0085】
「大細孔」、「中細孔」および「微細孔」は、本明細書で使用するとき、純正・応用化学国際連合(IUPAC)、物理化学部により、1971年7月23日のIUPAC評議会(米国、ワシントンD.C.)で採用された、物理化学の量と単位の記号及び用語マニュアル、付録II定義、コロイド界面化学第1部の用語及び記号に示された定義に従う。幅
又は直径が〜50ナノメートル(500オングストローム)を越える細孔を「大細孔」と呼ぶ。幅又は直径が〜2.0ナノメートル(20オングストローム)を越えない細孔を「微細孔」と呼ぶ。中間の大きさ(2.0ナノメートル<幅又は直径≦50ナノメートル)の細孔を「中細孔」と呼ぶ。
【0086】
「水銀圧入式ポロシメトリ」は、触媒の孔容積分布を水銀圧入式ポロシメトリにより決定するのに使用されるASTM試験第D4284−03の方法を意味する。水銀細孔分布は、カンタクローム走査型水銀ポロシメータSP−100型を用いて測定した。装置で使用したソフトウェアのバージョンは、V2.11(日付1993年10/27)である。計算に用いた界面張力はセンチメートル当り473ダインであり、接触角は140度である。
【0087】
「ノルマルアルファオレフィン」および「線状アルファオレフィン」は、炭素−炭素二重結合が主として炭素鎖の末端又は「アルファ」位置、すなわちC1とC2の間に存在して、アルキル分枝の率が高くはないような直鎖オレフィンを意味する。ノルマルアルファオレフィンはエチレンの重合から誘導される。
【0088】
「ノルマルアルファオレフィン異性化」は、ノルマルアルファオレフィンを、低いアルファオレフィン含量(二重結合がC1とC2の間にある)と、高い内部オレフィン含量(二重結合がC1とC2の間以外の位置にある)と、任意に高率の分枝とを有する異性化オレフィンに転換することを意味する。
【0089】
「部分分枝鎖オレフィン」は、分枝の率が出発ノルマルアルファオレフィンよりも高い、ノルマルアルファオレフィンの異性化のオレフィン生成物として定義される。
【0090】
「ピーク孔径」は、本明細書で使用するとき、本発明の触媒の細孔ピークについて、ASTM試験第D4284−03の方法により測定された大細孔範囲におけるピーク孔径(すなわち、14.2項に規定されているように、大細孔領域内で孔径分布の微分プロットが最大になる孔径)を意味する。
【0091】
「解凝固」は、水和アルミナを含む結合剤粒子の大凝結体を、酸の添加によりずっと小さな一次粒子に分散することを意味する。
【0092】
「パーセント揮発分」は、本明細書で使用するとき、触媒複合体または原料の実際の重量と、実質乾燥、無水又は無揮発分基準での物質の重量との差で、実際の試料重量のパーセントとして表した差を意味する。
【0093】
「SAR」または「シリカとアルミナとの比」は、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとのモル比、SiO2モル:Al23モルを意味する。
【0094】
「触媒材料を成形するのに充分な水」は、ゼオライト粉末とアルミナ粉末との酸による解凝固混合物を押出し可能な素材にするのに必要な水の量を意味する。
【0095】
「タブレット化」は、本明細書で使用するとき、ゼオライト粉末またはゼオライト粉末と結合剤粉末の混合物から、粉末をダイで圧縮することにより触媒凝結体を形成する方法を意味する。
【0096】
「全塩基価」又は「TBN」は、試料1グラム中のKOHのミリグラムと等価な塩基の量を意味する。従って、TBNの数値が高いほど、生成物のアルカリ性が強く、よって保有するアルカリ度が大きいことを反映している。試料のTBNは、ASTM試験第D28
96またはその他任意の同様の方法により決定することができる。
【0097】
水銀圧入式ポロシメトリで得られる「全孔容積」は、本明細書で使用するとき、グラフの累積孔容積分布(ASTM D4284−03の第14.1.6項)から導き出した、
グラム当りのミリリットルで表した全孔容積、もしくは同一データの対応する表により表現した値を意味する。
【0098】
本明細書で使用するとき、特に断わらない限りはパーセントは全て重量%である。
【0099】
前述したように、本発明は、Y型ゼオライトからなる制御された大細孔構造を持つ触媒に関する。本発明の触媒の特徴は、水銀圧入式ポロシメトリ、ASTM試験第D4284−03により得られる孔容積分布にある。水銀圧入式ポロシメトリは、累積孔容積(pv)対孔径(pd)のグラフを与える。また、水銀圧入式ポロシメトリは、導関数、デルタpd(Δpd)分のデルタpv(Δpv)から大細孔のピーク孔径を決定するためにも使用される。グラフは、本発明の触媒を特徴づけるために用いられる。
【0100】
本発明のY型ゼオライト触媒及び触媒組成物は、芳香族炭化水素のオレフィンによるアルキル化に使用すると、先行技術で公知のゼオライト触媒に比べて失活速度の実質的な低減を示した。これまで、触媒の表面積の増加はその活性度を増大させるが、失活速度も増大させがちであると考えられていたので、この結果は予期し得ないものであった。本発明の触媒については、標準的なアルキル化反応条件下で相対失活速度を決定した。表2に、失活実験の結果を記す。これらのY型ゼオライト触媒及びY型ゼオライト触媒複合体を用いたアルキル化反応過程では、75%までかそれ以上の失活速度の低減を観察した。
【0101】
Y型ゼオライト触媒及び触媒複合体は、ゼオリスト・インターナショナル社より入手できるY型ゼオライト、商品名CBV760又はCBV600を用いて製造することができる。本発明の触媒及び触媒複合体を製造することができたこれらY型ゼオライト材料の試料はそれぞれ、シリカとアルミナとの比が公称で〜60:1と〜6.7:1であった。ただし、本発明のY型ゼオライト触媒及び触媒複合体の製造には、シリカとアルミナとの比が5:1から120:1の間にあるY型ゼオライトが使用できる。
【0102】
本発明のY型ゼオライト触媒は、当該分野では公知の操作を用いてタブレット、押出物またはその他任意の形状に成形または形成することができる。押出物の製造にはアルミナなどの結合剤の存在を必要とする。タブレット化した触媒には結合剤の存在は不要であるが、タブレット化したゼオライト触媒中に結合剤が存在してもよい。結晶性ゼオライト粉末も圧縮してタブレットにすることができる。本発明のタブレット化した触媒は、アルキル化反応において例外的に遅い失活速度を示す。
【0103】
アルキル化反応は、従来より公知の任意の方法により、水を添加しないで乾燥した芳香族炭化水素とオレフィン供給物を用いて実施することができる。アルキル化過程における水の存在は本発明の触媒の失活速度を増大させると考えられる。芳香族炭化水素を、本発明の触媒を存在させてアルキル化反応条件下で一種以上のオレフィンと反応させる。芳香族炭化水素は単環であっても二環であってもよいが、好ましくは、芳香族炭化水素は単環の芳香族炭化水素である。芳香族炭化水素は、アルキル化芳香族炭化水素、例えばアルキル基が炭素原子約4個乃至約80個を持つモノアルキル化芳香族炭化水素であってもよい。使用する芳香族炭化水素がモノアルキル化芳香族であるとき、アルキル化反応の生成物はジアルキル化芳香族である。
【0104】
芳香族炭化水素のアルキル化に使用できるオレフィンは、炭素原子約4個乃至約80個を持つ線状鎖オレフィンまたは分枝鎖オレフィンであってよい。さらに、本発明のアルキ
ル化反応に使用するために、ノルマルアルファオレフィンを異性化して部分分枝鎖オレフィンを得ることもできる。このようにして得られる部分分枝鎖オレフィンは、アルファ−オレフィン、ベータ−オレフィン、内部−オレフィン、三置換オレフィンおよびビニリデンオレフィンであってもよい。
【0105】
本発明のアルキル化芳香族炭化水素のアルキル化芳香族炭化水素スルホン酸は、公知の任意のスルホン化反応により製造することができる。さらに、アルキル化芳香族スルホン酸をアルカリ土類金属および二酸化炭素と反応させて、潤滑油に清浄剤として有用な炭酸塩化した過塩基性アルキル化芳香族スルホネートを得ることもできる。炭酸塩化は、従来より公知の任意の方法により行うことができる。過塩基性の程度は、炭酸塩化工程に使用する反応条件およびアルカリ土類金属と二酸化炭素の量を変えることによって制御することができる。
【0106】
[ノルマルアルファオレフィンの異性化操作]
異性化工程は、バッチ式または連続式で実施することができる。工程温度は50℃乃至250℃の範囲であってよい。バッチ式では、一般的な方法は撹拌下にあるオートクレーブまたはガラス製フラスコを使用することであり、所望の反応温度に加熱してもよい。連続法は、固定床法で最も効率良く行われる。固定床法の空間速度は、0.1乃至10またはもっと高い時間当り重量の空間速度範囲とすることができる。
【0107】
固定床法では、異性化触媒を反応器に充填し、真空下または不活性乾燥ガスが流れる中で少なくとも150℃の温度で活性化するか、あるいは乾燥する。活性化した後、異性化触媒の温度を所望の反応温度に調整し、そしてオレフィン流を反応器に導入する。部分分枝鎖の異性化オレフィンを含む反応器からの流出液を集める。得られた部分分枝鎖異性化オレフィンは、非異性化オレフィンとは異なるオレフィン分布(アルファオレフィン、ベータオレフィン、内部オレフィン、三置換オレフィンおよびビニリデンオレフィン)と分枝含量からなっている。
【0108】
[芳香族炭化水素のアルキル化操作]
ノルマルアルファオレフィン、部分分枝鎖異性化オレフィンおよび分枝鎖オレフィンによる芳香族炭化水素のアルキル化は、当該分野の熟練者には知られている任意の方法で実施することができる。
【0109】
アルキル化反応は一般に、芳香族炭化水素とオレフィンを用いて1:15乃至25:1のモル比で行う。工程温度は、約100℃乃至約250℃の範囲であってよい。この工程は水を添加しないで行う。オレフィンの沸点が高いので、液相でこの工程を行うことが好ましい。アルキル化工程はバッチ式で行っても連続式で行ってもよい。バッチ式では、一般的な方法は撹拌下にあるオートクレーブまたはガラス製フラスコを使用することであり、所望の反応温度に加熱してもよい。連続法は、固定床法で最も効率良く行われる。固定床法の空間速度は、0.01乃至10又はもっと高い時間当り重量の空間速度範囲とすることができる。
【0110】
固定床法では、アルキル化触媒を反応器に充填し、真空下または不活性乾燥ガスが流れる中で少なくとも150℃の温度で活性化するか、あるいは乾燥する。活性化した後、アルキル化触媒を周囲温度まで冷やし、芳香族炭化水素化合物流を導入し、任意にトルエンを導入する。圧力が所望の反応温度で芳香族炭化水素供給組成物の泡立ち点の圧力より高くなるように、背圧弁により圧力を上げる。反応系を所望の圧力まで加圧した後、温度を所望の反応温度まで上げる。次いで、オレフィン流を芳香族炭化水素に混合して触媒の上を流れるようにする。アルキル化芳香族炭化水素と未反応オレフィンと余分な芳香族炭化水素化合物とからなる反応器流出物を集める。次に、余分な芳香族炭化水素化合物を、減
圧下での蒸留、ストリッピング、蒸発、もしくは当該分野の熟練者には公知のその他任意の手段により取り除く。
【0111】
[アルキル化芳香族炭化水素のスルホン化操作]
アルキル化炭化水素のスルホン化は、当該分野の熟練者には公知の任意の方法により実施することができる。
【0112】
スルホン化反応は一般には、約65℃に維持した落下フィルム式チューブ反応器内で行う。アルキル化芳香族炭化水素をチューブに入れ、窒素で希釈した三酸化硫黄をアルキル化芳香族炭化水素に加える。アルキル化芳香族炭化水素と三酸化硫黄とのモル比を約1.05:1に維持する。得られたアルキル化芳香族スルホン酸は、約10%の100ニュートラル油で希釈した後、所望の残留スルホン酸含量(最大で約0.5%)になるまで温度を約85℃に維持しながら、生成物キログラム当り約10リットルの速度で窒素を吹き込んで撹拌することで熱処理してもよい。
【0113】
[アルキル化芳香族スルホン酸の炭酸塩化・過塩基性化操作]
アルキル芳香族スルホン酸の炭酸塩化・過塩基性化は、当該分野の熟練者には公知の任意の方法により実施することができ、アルキル芳香族スルホネートが生成する。
【0114】
一般に炭酸塩化・過塩基性化反応は、反応器内でアルキル化芳香族スルホン酸、希釈油、芳香族溶媒およびアルコールを存在させて行う。温度を約20℃から80℃の間に維持しながら反応混合物を撹拌し、アルカリ土類金属と二酸化炭素を反応物に加える。
【0115】
炭酸塩化・過塩基性化の程度は、反応混合物に添加するアルカリ土類金属と二酸化炭素の量、炭酸塩化工程で用いる反応体および反応条件によって制御することができる。
【実施例】
【0116】
(Y型ゼオライトアルキル化触媒複合体の製造)
[実施例1] 触媒複合体1の製造
Y型ゼオライトアルキル化触媒複合体を下記の方法により製造した。
【0117】
ゼオリスト・インターナショナル社より入手した市販のY型ゼオライト、CBV760(商品名)の試料について、試料を538℃で1時間加熱することにより灼熱減量(LOI)を求めた。得られたLOIは14.65重量%で、これから使用するY型ゼオライトのバッチのパーセント揮発分が判明した。カイザー・ラロシュ・ハイドレート・パートナーズ社より入手した市販試料のバーサル(商品名)、水和酸化アルミニウムのLOIも、試料を538℃で1時間加熱することにより求めたところ、24.87重量%であった。次に、LOIから得られた結果に基づいて、Y型ゼオライト粉末1875グラムとアルミナ粉末532グラムを量り分けて、無揮発分基準で全部でゼオライト粉末1600グラムとアルミナ粉末400グラムとした。ダウ・コーニング社より入手した押出助剤、メソセル(商品名)60グラムを、二種類の粉末の混合物に添加した。
【0118】
二種類の乾燥粉末をベーカー・パーキンス混合機に入れて4分間乾式混合をした。ゼオライト粉末とアルミナ粉末の乾燥重量の0.7重量%(100%硝酸に基づき)になる濃硝酸(70.7%)の量は、計算して19.8グラムであった。この70.7%硝酸の量を量り分けて、脱イオン水200グラムに溶解した。
【0119】
全揮発分およそ50%の最終濃度を得るのに必要な水と70.7%硝酸の全量を次のようにして計算した。Y型ゼオライト粉末の揮発分は274.67グラム(全重量1874.67グラム−乾量1600グラム)である。アルミナ粉末の揮発分は232.40グラ
ム(全重量532.4グラム−乾量400グラム)である。硝酸溶液およびメソセル(商品名)押出助剤は揮発分100%であるとみなす。よって、上記の原料全部を一緒にすれば、揮発分は786.87グラムになる。乾燥粉末2000グラム(ゼオライト1600グラムとアルミナ400グラム)と揮発分50%との混合物にするには、混合物の全重量は4000グラムとしなければならない。よって、脱イオン水1213.13グラムを追加しなければならない。
【0120】
混合機内の粉末に、脱イオン水1250グラムをぜん動ポンプを用いて5分かけて添加した。次いで、混合機の壁の汚れを落とすことができるように混合機を止めた。次に、混合を再開し、硝酸水溶液をぜん動ポンプを用いて5分かけて添加した。酸添加の終了後に、混合を全部で40分間続け、時折混合を差し控えて混合機の側面の汚れを落とせるようにした。混合時間の終了後、混合物はまだ粉末状であり、揮発分は48.83重量%と測定した。混合物が押出可能な様相を示すまで追加量の脱イオン水を一度に10グラムずつ添加し、各添加毎に5分間混合した。全部で追加の水85グラムを1時間45分かけて加えた。この時点で、揮発分は48.36重量%であった。
【0121】
湿潤混合物を、ボンノット押出機の1.27ミリメートル、不整四組ローブのダイインサートから押し出した。湿潤した長い円筒状ストランドを121℃で8時間乾燥した。次に、長い円筒状ストランドを破砕して長さと直径の比が2:6の押出成形物にした。押出成形物を篩いにかけて1ミリメートルより長い部分を残した。
【0122】
次に、押出成形物をマッフル炉内で実質的に乾燥した環境下で、次のような温度プログラムを使用して焼成した。
【0123】
押出成形物を2時間かけて593℃まで加熱した後、593℃で1/2時間維持し、次いで204℃まで冷却した。押出成形物全部で1681グラムを得た。
【0124】
水銀圧入式ポロシメトリは、押出成形物のピーク孔径が1167オングストロームで、300オングストローム未満の孔径の細孔の累積孔容積が0.1400mL/グラムであることを示した。
【0125】
[実施例2] 触媒複合体2の製造
次のようにしたことを除いては、上記実施例1で使用した操作に従ってY型ゼオライト触媒を製造した。
【0126】
バーサル(商品名)アルミナの代わりに、ビスタ・ケミカル・カンパニーより入手したカタパルB(商品名)アルミナを使用した。Y型ゼオライトとアルミナ粉末の全量を計量して乾量で1300グラムとした。メソセル(商品名)押出助剤は添加しなかった。ゼオライト粉末とアルミナ粉末の揮発分はそれぞれ、9.72重量%と24.82重量%であった。濃硝酸12.9グラムを脱イオン水300グラムに溶解した。ベーカー・パーキンス混合機内で、脱イオン水671.7グラムを10分で添加した後、酸溶液を10分で添加した。40分間混合した後、揮発分は47.18重量%であったが、混合物は押し出すには濃密過ぎた。更に3時間混合しても、混合物はまだ押出可能ではなかった。もう30分かけて脱イオン水10グラムを追加した。次いで、混合物を押し出し、乾燥し、そして実質的に乾燥した環境下で焼成した。
【0127】
水銀圧入式ポロシメトリは、ピーク孔径が878オングストロームで、300オングストローム未満の孔径の細孔の累積孔容積が0.1424mL/グラムであることを示した。
【0128】
[実施例3] 触媒複合体3の製造
次のようにしたことを除いては、上記実施例2に記載した操作によりこの触媒を製造した。
【0129】
Y型ゼオライト粉末とアルミナ粉末の揮発分はそれぞれ、12.24重量%と23.89重量%であった。対応するゼオライトとアルミナ粉末の量はそれぞれ、1185グラムと342グラムであった。添加した脱イオン水は580グラムであった。50分間混合した後、混合物はまだ粒状であった。1時間30分混合した後、良好なペーストを得た。押出し時点で、揮発分は46.8重量%であった。押し出し、乾燥し、サイジングし、そして実質的に乾燥した環境下で焼成した後、水銀圧入式ポロシメトリは、ピーク孔径が1006オングストロームで、300オングストローム未満の孔径の細孔の累積孔容積が0.1400mL/グラムであることを示した。
【0130】
[実施例4] 触媒複合体4の製造
次のようにしたことを除いては、実施例2に記載した操作によりこの触媒を製造した。
【0131】
Y型ゼオライト粉末とアルミナ粉末の揮発分はそれぞれ、14.36重量%と27.54重量%であった。対応するゼオライトとアルミナ粉末の量はそれぞれ、747.4グラムと220.8グラムであった。この製造においてゼオライトとアルミナの乾量に対する硝酸の最終重量%は、0.75%であった。酸を脱イオン水655.8グラムに溶解した。粉末をプラスチックの袋内で3分間混合し、次いでベーカー・パーキンス混合機内で3分間混合した。混合を続けながら、酸溶液を8分かけてポンプで注入した。酸添加が完了して10分後に、混合物はペースト状になった。混合を更に30分間続けた。揮発分は49.0重量%であった。湿潤混合物を押し出し、乾燥し、そしてサイズの調整をした。
【0132】
押出成形物をマッフル炉内で実質的に乾燥した環境下で、次のような温度プログラムに従って焼成した。
【0133】
押出成形物を出力全開で593℃まで加熱した。温度の上がり過ぎは避けた。次に、押出成形物を593℃で1時間維持し、そして149℃まで冷却した。水銀圧入式ポロシメトリは、ピーク孔径が1486オングストロームで、300オングストローム未満の孔径の細孔の累積孔容積が0.1494mL/グラムであることを示した。
【0134】
[実施例5] 触媒5の製造
ゼオリスト・インターナショナル社より入手したY型ゼオライト、CBV760(商品名)の試料を用いて、受注触媒製造業者の手によりタブレット状Y型ゼオライト触媒を製造した。タブレットは、円筒状で直径1/8インチ、長さおよそ1/8インチであった。水銀圧入式ポロシメトリは、ピーク孔径が815オングストロームで、300オングストローム未満の孔径の細孔の累積孔容積が0.0844mL/グラムであることを示した。
【0135】
[実施例6] 触媒10の製造
次のようにしたことを除いては、実施例2に記載した操作によりこの触媒を製造した。
【0136】
Y型ゼオライト粉末とアルミナ粉末の揮発分はそれぞれ、18.7重量%と26.5重量%であった。対応するゼオライトとアルミナ粉末の量はそれぞれ、639.6グラムと276.9グラムであった。この製造においてゼオライトとアルミナの乾量に対する硝酸の最終重量%は0.75%であり、硝酸6.44グラムを脱イオン水150グラムに溶解した。粉末をプラスチックの袋内で15分間混合し、次いでベーカー・パーキンス混合機内で10分間混合した。混合しながら、追加の脱イオン水276.9グラムを20分かけてポンプで注入した。混合を続けながら、酸溶液を8分かけてポンプで注入した。混合を
更に30分間続けた。揮発分は46.40重量%であった。湿潤混合物を押し出し、乾燥し、そしてサイズの調整をした。
【0137】
押出物をマッフル炉内で実質的に乾燥した環境下で、次のような温度プログラムに従って焼成した。
【0138】
押出物を出力全開で593℃まで加熱した。温度の上がり過ぎは避けた。次に、押出物を593℃で1時間維持し、そして149℃まで冷却した。水銀圧入式ポロシメトリは、ピーク孔径が941オングストロームで、300オングストローム未満の孔径の細孔の累積孔容積が0.155mL/グラムであることを示した。
【0139】
[実施例7] 触媒12の製造
次のようにしたことを除いては、実施例2に記載した操作によりこの触媒を製造した。
【0140】
ゼオライト粉末とアルミナ粉末の揮発分はそれぞれ、12.24重量%と23.89重量%であった。対応するゼオライトとアルミナ粉末の量はそれぞれ、1185.1グラムと341.6グラムであった。この製造においてゼオライトとアルミナの乾量に対する硝酸の最終重量%は0.75%であり、硝酸12.9グラムを脱イオン水300グラムに溶解した。粉末をプラスチックの袋内で5分間混合し、次いでベーカー・パーキンス混合機内で5分間混合した。追加の脱イオン水619.7グラムを20分かけて混合物に加えた。混合を続けながら、酸溶液を8分かけてポンプで注入した。混合を更に40分間続けた。この時点で、混合物はまだ粉末であった。3時間混合した後、追加の脱イオン水50グラムを混合物に加えた。3と1/2時間混合した後、追加の脱イオン水25グラムを混合物に加え、そして4時間及び4と1/4時間混合した後、脱イオン水もう15グラムを混合物に加えた。4時間55分混合した後、揮発分は45.2重量%であった。湿潤混合物を押し出し、乾燥し、そしてサイズの調整をした。
【0141】
押出成形物をマッフル炉内で実質的に乾燥した環境下で、次のような温度プログラムに従って焼成した。
【0142】
押出成形物を出力全開で593℃まで加熱した。温度の上がり過ぎは避けた。次に、押出成形物を593℃で1時間維持し、そして149℃まで冷却した。水銀圧入式ポロシメトリは、ピーク孔径が900オングストロームで、300オングストローム未満の孔径の細孔の累積孔容積が0.144mL/グラムであることを示した。
【0143】
下記表1に、実施例1〜7のY型ゼオライト触媒(触媒複合体1−5、10及び12)について水銀圧入式ポロシメトリの結果を記す。
【0144】
表 1
────────────────────────────────────
水銀圧入式ポロシメトリ特性
触媒 全PV* PV<300オングスト 細孔ピーク孔径
複合体 (mL/グラム) ローム**(mL/グラム) (オングストローム)
────────────────────────────────────
1 0.4612 0.140 1167
2 0.4207 0.142 878
3 0.4208 0.140 1006
4 0.4492 0.149 1486
*** 0.3914 0.084 815
10 0.403 0.155 941
12 0.399 0.144 900
────────────────────────────────────
*全孔容積
**300オングストローム以下の孔径の細孔の全孔容積
***触媒5は複合体ではない。触媒5は、上記実施例5に記載したようにして
製造したタブレット状のY型ゼオライト粉末である。
【0145】
[実施例8] 異性化ノルマルアルファオレフィンの製造
一般に、ノルマルアルファオレフィンの異性化は以下に記載するようにして実施する。
【0146】
この実施例には、次のような組成のC20〜C24ノルマルアルファオレフィンを用いた。
アルファオレフィン 89.1%
ベータオレフィン 0.5%
内部オレフィン 1.4%
三置換オレフィン 0.2%
ビニリデンオレフィン 9.5%(炭素核磁気共鳴分光法により測定)
分枝鎖オレフィン 11%(赤外分光法により測定)
【0147】
ノルマルアルファオレフィンをポンプで吸い上げて、固体オレフィン異性化65グラムを含む固定床反応器(高さ570ミリメートル、内径22.3ミリメートル)に通して流した。反応器を160℃の等温で、液体で、時間当り空間速度毎時0.5で、大気圧で操作した。
【0148】
部分的に分枝した異性化オレフィンを含む反応器流出液を集める。得られた部分分枝異性化オレフィンは、非異性化オレフィンとは異なるオレフィン分布(アルファ−オレフィン、ベータ−オレフィン、内部−オレフィン、三置換−オレフィンおよびビニリデン−オレフィン)と分枝含量を含んでいる。
【0149】
[実施例9] アルキルベンゼン組成物の製造
ノルマルアルファオレフィン、部分分枝鎖異性化オレフィンおよび分枝鎖オレフィンによる芳香族炭化水素のアルキル化を以下のようにして実施した。
【0150】
このアルキル化試験には、内径15.54ミリメートルのスケジュール160ステンレス鋼製パイプで組み立てた固定床反応器を使用した。反応器の圧力を適当な背圧弁により維持した。アルキル化実施過程で断熱温度制御を維持できるように、反応器および加熱器を組み立てた。反応器の底部に、850マイクロメートル乃至2ミリメートルのアランダム粒子192グラムの床を充填して、予備加熱区域とした。次に、固定床反応器に、触媒複合体12を100グラム充填した。充填の間反応器を穏やかに振動させて反応器内の触媒が最大充填かさ密度となるようにした。最後に、間隙充填として触媒床の空隙を150マイクロメートルのアランダム粒子351グラムで満たした。
【0151】
次に、反応器を閉め、密封し、そして窒素下で圧力を調べた。次いで、アルキル化触媒を、周囲温度及び圧力で測定して毎時20リットルの窒素流下で200℃で15時間脱水した後、窒素下で100℃まで冷却した。触媒床には次に、ベンゼンを逆流で毎時195グラムの流速で導入した。温度を(断熱温度制御下で)182℃の実施開始温度まで上げ(触媒床の直前で測定)、圧力を14.6気圧まで上げた。
【0152】
温度および圧力が所望の実施開始条件である182℃と14.6気圧になったときに、モル比が10:1のベンゼンとC20-24NAOおよび充分に乾燥した活性アルミナからな
る供給混合物を逆流で導入した。供給物が反応器内の触媒に達するにつれて、反応が起こ
り始めて内部の触媒床温度が入口温度よりも高くなった。約8時間の操業後、反応器の発熱量は20℃であった。26時間の操業では、生成物のオレフィン転換は99.1%であった。実施408時間の操業後に実施を止めたが、実施を続けることも可能であった。この時点で、オレフィン転換は99.45%であった。
【0153】
実施過程で、余分なベンゼンを含むアルキル化芳香族炭化水素生成物を集めた。蒸留により余分な芳香族炭化水素を除去した後、分析は、実施過程で99%より高いオレフィンの転換が達成されたことを示した。
【0154】
[実施例10] アルキルベンゼンスルホン酸の製造
上記実施例9のようにして製造したアルキルベンゼンアルキレートを、下記の条件を用いて、チューブ状反応器(長さ2メートル、内径1センチメートル)内に三酸化硫黄(SO3)と空気を順流で同時に流すことによりスルホン化した。
【0155】
反応器温度は60℃であり、SO3流速は毎時73グラムであり、そしてアルキレート
流速は、SO3の対アルキレートモル比が1.05で毎時327グラムであった。酸素と
二酸化硫黄(SO2)の混合物を酸化バナジウム(V25)を含む触媒炉に通すことによ
り、SO3を発生させた。
【0156】
得られた粗製アルキルベンゼンスルホン酸は、生成物の全重量に基づき次のような性状を示した:HSO3の重量%は16.1であり、H2SO4の重量%は1.35であった。
【0157】
粗製アルキルベンゼンスルホン酸を、粗製アルキルベンゼンスルホン酸の全重量に基づき10重量%の100ニュートラル希釈油で希釈し、そして300から350rpmの間で回転するステンレス鋼製機械撹拌器、冷却器および撹拌翼の真上に位置する窒素導入用のガス導入管(内径2ミリメートル)を備えた4リットル四つ口ガラス製反応器に入れた。反応器の内容物を撹拌しながら85℃まで加熱し、そしてH2SO4の重量%が生成物の全重量に基づき約0.3重量%未満になるまで約4乃至6時間、窒素を毎時30−40リットルで混合物に吹き込んだ。この物質が最終アルキルベンゼンスルホン酸である。
【0158】
最終アルキルベンゼンスルホン酸は、生成物の全重量に基づき次のような性状を示した:HSO3の重量%は15.76であり、H2SO4の重量%は0.15であった。
【0159】
[実施例11] 炭酸塩化した過塩基性アルキル化ベンゼンスルホネートの製造
加熱及び冷却能力を備え、300から350rpmの間で回転するステンレス鋼製機械撹拌器、撹拌翼の真上に位置するCO2添加用のガス導入管(内径2ミリメートル)、窒
素ガス下にある蒸留カラムと冷却器を備えた5リットル四つ口反応器に、収集物123.7グラムを入れた。
【0160】
収集物は、前もって高TBNの炭酸塩化した過塩基性合成スルホネートを遠心分離およびデカンテーションにより精製する過程で生じたスラッジ部分の混合物であり、収集物の内容物を再循環させるためにこの実施例の反応混合物に加えた。収集物は、TBNが206であり、そして単離によりキシレン溶媒およそ68グラム、活性スルホン酸カルシウム11グラム、水酸化カルシウムと炭酸カルシウム8グラム、二酸化炭素8グラム、および100ニュートラル希釈油22グラムを含有していた。
【0161】
次に、メタノール40グラム、キシレン溶媒207グラム、上記実施例10のアルキルベンゼンスルホン酸(HSO3は反応混合物の全重量に基づき15.8重量%であった)
281グラム(0.59モル)を、室温で15分かけて反応器に入れた。水酸化カルシウム160グラム(2.16モル)、キシレン溶媒365グラム及びメタノール94.2グ
ラムのスラリを反応器に加え、そして反応器を25℃まで冷やした。次に、反応器の温度を約32℃まで上げながら、CO235グラム(0.79モル)を39分かけてガス導入
管より反応混合物に加えた。次いで、水酸化カルシウム160グラム(2.16モル)、キシレン溶媒384グラムおよびメタノール131グラムからなる第二のスラリを、CO20.9グラムと同時に約1分かけて反応器に加えた。次に、反応器の温度を約30℃か
ら41℃に上げながら、CO292グラムを64分かけて反応器に添加した。次に、水酸
化カルシウム82グラムとキシレン溶媒298グラムからなる第三のスラリを、CO2
.4グラムと同時に約1分かけて反応器に加えた。次に、反応器温度をおよそ38℃に保ちながら、CO255グラム(1.25モル)をおよそ60分かけて反応器に添加した。
【0162】
次に、反応器をまず大気圧で40分かけて65℃まで加熱し、次いで大気圧で60分かけて93℃にし、次に大気圧で30分かけて130℃にすることによって、反応器から水とメタノールを蒸留した。その後、反応器の温度を大気圧で60分かけて110℃まで下げ、次いで大気圧で110℃で30分間維持した。次に、反応器の内容物をおよそ30℃まで冷却し、そして600ニュートラル希釈油510グラム、続いてキシレン溶媒413グラムを反応器に加えた。次に、遠心分離により生成物中の沈降物を取り除いた。生成物を30ミリメートルHgの減圧下でおよそ45分かけて204℃まで加熱し、そして生成物を30ミリメートルHgの減圧下、204℃で10分間維持することにより、生成物中のキシレン溶媒を蒸留した。減圧の代わりに窒素ガスを導入し、内容物を室温まで冷却して、生成物の全重量に基づき下記の性状を有する炭酸塩化した過塩基性スルホネートを得た。
【0163】
カルシウムの重量%は16.1であり、TBNは424であり、硫黄の重量%は1.81であり、スルホン酸カルシウムの重量%は0.87であり、そして粘度は100℃で101cStであった。
【0164】
[実施例12] アルキル化反応における触媒の失活速度の測定操作
上記実施例9のアルキル化反応と同様のアルキル化反応において、アルキル化触媒の失活速度を測定した。
【0165】
上述したようにして断熱温度制御下でアルキル化反応を実施した。アルキル化反応が発熱であるので、触媒床の適当な位置に配置した熱電対により温度発熱量を測定した。触媒実施の温度分布データを用いて、床の温度発熱量の位置を時間で表した時間の関数としてプロットした。触媒の失活速度は、センチメートル毎時で表されるこの線の傾きである。触媒全てについて温度、圧力および空間速度の標準条件で評価を行い、失活速度を求めた。
【0166】
触媒複合体1、2、4、5、10及び12は、表2の触媒複合体2が表1の触媒複合体2のバッチの混合物であることを除いては、上記実施例1〜7で製造して表1に示した触媒複合体である。
【0167】
試験1は、異性化C20〜C24低アルファ含量オレフィンによるトルエンのアルキル化工程で170℃の温度で行った。トルエンの対オレフィンモル比は6であった。
【0168】
試験2は、異性化C20〜C24ノルマルアルファオレフィンによるベンゼンのアルキル化工程で180℃の温度で行った。トルエンの対オレフィンモル比は10であった。
【0169】
失活速度を、触媒複合体8と触媒複合体11の失活速度の相対値として示し、下記表2に記す。
【0170】
【表2】

【0171】
(シリカ対アルミナ比の失活速度の低減に対する影響)
如何なる理論にも結び付かないが、本発明の触媒複合体に関して相対失活速度を大きく低減させるには、触媒のシリカ対アルミナ比とパーセントゼオライトが高いことが重要であると思われる。表3において、触媒6及び8は同じような細孔のピーク孔径と累積孔容積を有するものの、シリカ対アルミナ比は非常に違っている。シリカ対アルミナ比が6.7から60に増加し、パーセントゼオライトが70%から80%に増加することによって、触媒8では100の相対失活速度が触媒6では67に低減する。
【0172】
【表3】

【0173】
(ピーク孔径の失活速度の低減に対する影響)
如何なる理論にも結び付かないが、ピーク孔径が本発明の触媒複合体の失活速度に影響を及ぼすと思われる。ピーク孔径が大きいほど相対失活速度は速くなる。表4において、
触媒複合体9及び10の比較を行う、というのは、両者は累積孔容積が174対155で僅かしか違わないのに、触媒複合体10のピーク孔径941、相対失活速度35に比べて、触媒複合体9はピーク孔径が1513でずっと大きく、そして相対失活速度が73でずっと速いからである。
【0174】
【表4】

【0175】
(累積孔容積の失活速度に対する影響)
如何なる理論にも結び付かないが、300オングストローム以下の孔径の細孔の累積孔容積を減らすことが失活速度の低減をもたらすと思われる。表5において、触媒複合体16及び18は累積孔容積だけが違っていてそれぞれ162と136であるが、触媒複合体18の相対失活速度38に比べて、触媒複合体16は相対失活速度が54で速い。
【0176】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Y型ゼオライトからなり、ピーク孔径がASTM試験第D4284−03による測定値として約2000オングストローム未満であり、そして約500オングストローム以下の孔径の細孔の累積孔容積が、ASTM試験第D4284−03による測定値としてグラム当り約0.30ミリリットル以下である大細孔構造を持つ触媒。
【請求項2】
約400オングストローム以下の孔径の細孔の累積孔容積が、グラム当り約0.30ミリリットル未満である請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
約300オングストローム以下の孔径の細孔の累積孔容積が、グラム当り約0.25ミリリットル未満である請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
約300オングストローム以下の孔径の細孔の累積孔容積が、グラム当り約0.20ミリリットル未満である請求項3に記載の触媒。
【請求項5】
約400オングストローム以下の孔径の細孔の累積孔容積が、グラム当り約0.05ミリリットル乃至約0.18ミリリットルの範囲にある請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
約300オングストローム以下の孔径の細孔の累積孔容積が、グラム当り約0.08ミリリットル乃至約0.16ミリリットルの範囲にある請求項5に記載の触媒。
【請求項7】
ピーク孔径が、約700オングストローム乃至約1800オングストロームの範囲にある請求項1に記載の触媒。
【請求項8】
ピーク孔径が、約750オングストローム乃至約1600オングストロームの範囲にある請求項7に記載の触媒。
【請求項9】
触媒のピーク孔径が、約900オングストローム乃至約1400オングストロームの範囲にある請求項8に記載の触媒。
【請求項10】
Y型ゼオライトのシリカとアルミナとの比が、約5:1乃至約100:1の範囲にある請求項1に記載の触媒。
【請求項11】
Y型ゼオライトのシリカとアルミナとの比が、約30:1乃至約80:1の範囲にある請求項10に記載の触媒。
【請求項12】
Y型ゼオライトのシリカとアルミナとの比が、約50:1乃至約70:1の範囲にある請求項11に記載の触媒。
【請求項13】
触媒がタブレットの形状にある請求項1に記載の触媒。
【請求項14】
ピーク孔径が約500オングストローム乃至約1500オングストロームの範囲にあり、そして約500オングストローム以下の孔径の細孔の累積孔容積が、グラム当り約0.05ミリリットル乃至約0.15ミリリットルの範囲にある請求項13に記載の触媒。
【請求項15】
下記の成分からなる触媒複合体:
(a)請求項1に記載の触媒、および(b)結合剤。
【請求項16】
結合剤が無機物質である請求項15に記載の触媒複合体。
【請求項17】
結合剤がアルミナである請求項16に記載の触媒複合体。
【請求項18】
Y型ゼオライトが、触媒複合体の全乾量に基づき約40重量%乃至約99重量%の範囲の量で存在する請求項15に記載の触媒複合体。
【請求項19】
Y型ゼオライトが、触媒複合体の全乾量に基づき約50重量%乃至約85重量%の範囲の量で存在する請求項18に記載の触媒複合体。
【請求項20】
下記の工程からなる触媒複合体の製造方法:
(a)Y型ゼオライトを揮発物の存在下で結合剤と接触させて、得られる触媒複合体の全乾量に基づいてY型ゼオライトの重量%が約40乃至約99%の範囲にあり、そして混合物の揮発分が混合物の約30重量%乃至約70重量%の範囲にある混合物を形成する工程、
(b)混合物を成形して複合体を形成する工程、
(c)複合体を乾燥する工程、そして
(d)複合体を実質的に乾燥した環境下で焼成する工程。
【請求項21】
(b)工程において成形が押出し成形である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
(a)工程においてY型ゼオライトの重量%が、約50乃至約85の範囲にある請求項20に記載の方法。
【請求項23】
(a)工程において結合剤が無機物質である請求項20に記載の方法。
【請求項24】
結合剤がアルミナである請求項23に記載の方法。
【請求項25】
(a)工程において混合物の揮発分が混合物の約40重量%乃至約60重量%の範囲にある請求項20に記載の方法。
【請求項26】
揮発分が水と酸とからなる請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項20に記載の方法により製造された触媒複合体。
【請求項28】
Y型ゼオライトからなり、ピーク孔径がASTM試験第D4284−03による測定値として約2000オングストローム未満であり、そして約500オングストローム以下の孔径の細孔の累積孔容積が、ASTM試験第D4284−03による測定値としてグラム当り約0.30ミリリットル以下である大細孔構造を持つ触媒の存在下に、少なくとも一種の芳香族炭化水素を、アルキル化条件下で少なくとも一種のオレフィンと接触させることからなるアルキル化芳香族組成物の製造方法。
【請求項29】
さらに、アルキル化芳香族組成物をスルホン化してアルキル化芳香族スルホン酸を生成させることを含む請求項28に記載の方法。
【請求項30】
さらに、アルキル化芳香族スルホン酸をアルカリ土類金属および二酸化炭素と反応させて、炭酸塩化した過塩基性アルキル化芳香族スルホネートを生成させることを含む請求項29に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも一種の芳香族炭化水素を、請求項20に記載の触媒複合体を存在下に、アルキル化条件下で少なくとも一種のオレフィンと接触させることからなるアルキル化芳香族
組成物の製造方法。
【請求項32】
芳香族炭化水素がベンゼンまたはトルエンである請求項31に記載の方法。
【請求項33】
オレフィンが、アルファオレフィン、異性化オレフィン、分枝鎖オレフィンまたはそれらの混合物である請求項31に記載の方法。
【請求項34】
オレフィンが炭素原子約4個乃至約80個を有する請求項33に記載の方法。
【請求項35】
アルファオレフィンまたは異性化オレフィンが炭素原子約6個乃至約40個を有する請求項33に記載の方法。
【請求項36】
アルファオレフィンまたは異性化オレフィンが炭素原子約20個乃至約40個を有する請求項35に記載の方法。
【請求項37】
分枝鎖オレフィンが炭素原子約6個乃至約70個を有する請求項33に記載の方法。
【請求項38】
分枝鎖オレフィンが炭素原子約8個乃至約50個を有する請求項37に記載の方法。
【請求項39】
分枝鎖オレフィンが炭素原子約12個乃至約18個を有する請求項38に記載の方法。
【請求項40】
オレフィンが、炭素原子約6個乃至約40個を持つ部分分枝鎖異性化オレフィンである請求項33に記載の方法。
【請求項41】
部分分枝鎖異性化オレフィンが炭素原子約20個乃至約40個を有する請求項40に記載の方法。
【請求項42】
さらに、アルキル化芳香族組成物をスルホン化してアルキル化芳香族スルホン酸を生成させることを含む請求項31に記載の方法。
【請求項43】
さらに、アルキル化芳香族スルホン酸をアルカリ土類金属および二酸化炭素と反応させて、炭酸塩化した過塩基性アルキル化芳香族スルホネートを生成させることを含む請求項42に記載の方法。

【公開番号】特開2012−24766(P2012−24766A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233198(P2011−233198)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【分割の表示】特願2005−71799(P2005−71799)の分割
【原出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【出願人】(598066514)シェブロン・オロナイト・エス.アー. (20)
【Fターム(参考)】