説明

α−オレフィン重合用触媒

【課題】高立体規則性のα−オレフィン重合体の製造方法、および該製造方法に適用し得る、水素による分子量制御性に優れた高活性のα−オレフィン重合触媒の製造方法を提供すること。
【解決手段】下記工程(1)〜(3)からなるα−オレフィン重合触媒の製造方法。
(1)Si−O結合を有するケイ素化合物の存在下において、下式(I)で表されるチタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元し、固体触媒成分前駆体を生成させる工程;
(2)該固体触媒成分前駆体とハロゲン化化合物と内部電子供与体とを接触させて、チタン原子、マグネシウム原子およびハロゲン原子を含有する固体触媒成分を生成させる工程;
(3)該固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、下式(II)で表される外部電子供与体と、下式(III)で表される外部電子供与体とを接触させる工程;

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−オレフィン重合触媒の製造方法、およびα−オレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高立体規則性のα−オレフィン重合体を製造し得る重合触媒として特許文献1には、ケイ素化合物およびエステル化合物の存在下、チタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元して得られるマグネシウム原子、チタン原子およびハイドロカルビルオキシ基を含有する固体成分をエステル化合物で処理したのち、ハロゲン化化合物(例えば四塩化チタン)および電子供与体(例えば、エーテル化合物、エーテル化合物とエステル化合物の混合物)と接触処理することにより得られる3価のチタン化合物含有固体触媒成分と、助触媒の有機アルミニウム化合物と、第三成分の電子供与性化合物との組み合わせで得られる重合触媒が記載されている。また、特許文献2には、上記固体成分を、ハロゲン化化合物(例えば四塩化チタン)、電子供与体(例えば、エーテル化合物、エーテル化合物とエステル化合物の混合物)、および有機酸ハライドと接触処理することにより得られる3価のチタン化合物含有固体触媒成分と、助触媒の有機アルミニウム化合物と、第三成分の電子供与性化合物との組み合わせで得られる重合触媒が記載されている。
【0003】
上記のように、重合触媒の立体規則性重合能は飛躍的に向上したが、これらの重合触媒は、製造されるα−オレフィン重合体の分子量調節剤であって工業的に有利な水素に対する応答性が十分でないことがあり、その場合にはより高い剛性を発現する低分子量ポリプロピレンの製造において大量の水素が必要となるなど、様々なプロセス上の制約を受けるという問題があった。このような問題を解決するために、特許文献3には、第三成分として特定のケイ素化合物を使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−216017号明細書
【特許文献2】特開平10−212319号明細書
【特許文献3】特開2006−096936号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の重合触媒は、水素による分子量制御性と、重合活性と、得られる重合体の立体規則性とのバランスにおいて、十分に満足できるものではなかった。
【0006】
かかる現状において、本発明の解決すべき課題、即ち本発明の目的は、高立体規則性のα−オレフィン重合体の製造方法、および該製造方法に適用し得る、水素による分子量制御性に優れた高活性のα−オレフィン重合触媒の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の工程からなるα−オレフィン重合触媒の製造方法である:
(1)Si−O結合を有するケイ素化合物の存在下において、下式(I)で表されるチタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元し、固体触媒成分前駆体を生成させる工程;
(2)該固体触媒成分前駆体とハロゲン化化合物と内部電子供与体とを接触させて、チタン原子、マグネシウム原子およびハロゲン原子を含有する固体触媒成分を生成させる工程;
(3)該固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、下式(II)で表される外部電子供与体と、下式(III)で表される外部電子供与体とを接触させる工程;


式(I)中、R1は炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基を表し;X1はハロゲン原子または炭素原子数1〜20のハイドロカルビルオキシ基を表し、全てのX1は同一か異なり;aは1〜20の数を表す;
2Si(OC (II)
式(II)中、R2はSiに結合する炭素原子が2級炭素原子である炭素原子数3〜20のハイドロカルビル基を表す。
Si(OC4−n・・・(III)
式(III)中、RはSiに結合する炭素原子が1級炭素である炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基を表し、nは0あるいは1の数を表す。
【0008】
また本発明は、上記の製造方法で製造されたα−オレフィン重合触媒の存在下にα−オレフィンを単独重合または共重合させる工程からなるα−オレフィン重合体の製造方法である。
【0009】
上記の「Si−O結合を有するケイ素化合物」および「式(I)で表されるチタン化合物」を以下それぞれ、単に「ケイ素化合物」および「チタン化合物」と言う。
【発明を実施するための形態】
【0010】
工程(1)におけるケイ素化合物を、任意成分としてのエステル化合物と組合せることが、得られる重合触媒の重合活性や立体規則性重合能をさらに向上させる観点から、好ましい。
【0011】
Si−O結合を有するケイ素化合物として、下式で表わされる化合物を例示することができる:
Si(OR4−t
(RSiO)SiR、および
(R10SiO)
式中、Rは炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基を表し;R、R、R、RおよびR10はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基または水素原子を表し;tは0<t≦4を満足する数を表し;uは1〜1000の数を表し;vは2〜1000の数を表す。
【0012】
中でも、好ましくは上記第一の式で表わされるアルコキシシラン、より好ましくはtが1≦t≦4を満足する数であるアルコキシシラン、最も好ましくはtが4であるテトラアルコキシシラン、特に好ましくはテトラエトキシシランである。
【0013】
ケイ素化合物として、テトラメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシエチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、エトキシトリエチルシラン、テトラiso−プロポキシシラン、ジ(iso−プロポキシ)−ジ(iso−プロピル)シラン、テトラプロポキシシラン、ジプロポキシジプロピルシラン、テトラブトキシシラン、ジブトキシジブチルシラン、ジシクロペントキシジエチルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、シクロヘキシロキシトリメチルシラン、フェノキシトリメチルシラン、テトラフェノキシシラン、トリエトキシフェニルシラン、ヘキサメチルジシロヘキサン、ヘキサエチルジシロヘキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、オクタエチルトリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、メチルヒドロポリシロキサン、およびフェニルヒドロポリシロキサンを例示することができる。
上式(I)におけるRとして、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、アミル基、iso−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、およびドデシル基のようなアルキル基;フェニル基、クレジル基、キシリル基、およびナフチル基のようなアリール基;シクロヘキシル基およびシクロペンチル基のようなシクロアルキル基;プロペニル基およびアリル基のようなアルケニル基;ならびにベンジル基のようなアラルキル基を例示することができる。
【0014】
は好ましくは、炭素原子数2〜18のアルキル基または炭素原子数6〜18のアリール基であり、特に好ましくは炭素原子数2〜18の直鎖状アルキル基である。
上式(I) におけるXのハロゲン原子として、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子を例示することができる。特に好ましくは塩素原子である。
上式(I) におけるXのハロゲン原子として、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子を例示することができる。特に好ましくは塩素原子である。
上式(I) におけるXの炭素原子数1〜20のハイドロカルビルオキシ基は、上記Rのハイドロカルビル基から誘導されるハイドロカルビルオキシ基であり、特に好ましくは炭素原子数2〜18の直鎖状アルコキシキ基である。
【0015】
チタン化合物として、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−iso−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−iso−ブトキシチタン、n−ブトキシチタントリクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド、テトラ−iso−プロピルポリチタネート(a=2〜10の範囲の混合物)、テトラ−n−ブチルポリチタネート(a=2〜10の範囲の混合物)、テトラ−n−ヘキシルポリチタネート(a=2〜10の範囲の混合物)、テトラ−n−オクチルポリチタネート(a=2〜10の範囲の混合物)、およびテトラアルコキシチタンに少量の水を反応して得られるテトラアルコキシチタンの縮合物、ならびにこれらの2以上の組合せを例示することができる。
【0016】
チタン化合物は好ましくは、aが1、2または4であるチタン化合物であり、特に好ましくは、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−n−ブチルチタニウムダイマーまたはテトラ−n−ブチルチタニウムテトラマーである。
【0017】
有機マグネシウム化合物は、マグネシウム原子−炭素原子の結合を有する任意の化合物である。好ましい有機マグネシウム化合物として、下記第一式で表わされるグリニャール化合物と、第二式で表わされるジハイドロカルビルマグネシウムとを例示することができ、得られる重合触媒の活性および立体規則性の観点から、グリニャール化合物が好ましく、グリニャール化合物のエーテル溶液が特に好ましい:
11MgX
1213Mg
式中、R11、R12およびR13は炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基を表し、R12とR13とは同一か異なり;Xはハロゲン原子を表わす。
上式におけるR11〜R13として、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、iso−アミル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、フェニル基、およびベンジル基のような、炭素原子数1〜20の、アルキル基、アリール基、アラルキル基およびアルケニル基を例示することができる。
【0018】
上式におけるXとして、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子を例示することができる。特に好ましくは塩素原子である。
有機マグネシウム化合物は、有機金属化合物との組合せによって形成される、ハイドロカルビル溶媒に可溶な錯体として用いてもよい。有機金属化合物として、リチウム、ベリリウム、ホウ素、アルミニウムまたは亜鉛の化合物を例示することができる。
上記のエステル化合物として、モノまたは多価のカルボン酸エステルを例示することができ、より具体的には飽和脂肪族カルボン酸エステル、不飽和脂肪族カルボン酸エステル、脂環式カルボン酸エステル、および芳香族カルボン酸エステルを例示することができる。更に具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、吉草酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、アニス酸エチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、フタル酸モノエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸メチルエチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジ−iso−プロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−iso−ブチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジ−n−ヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジ−iso−デシル、フタル酸ジシクロヘキシル、およびフタル酸ジフェニルを例示することができる。中でも、好ましくはメタクリル酸エステルおよびマレイン酸エステルのような不飽和脂肪族カルボン酸エステル、または安息香酸エステルおよびフタル酸エステルのような芳香族カルボン酸エステルであり、特に好ましくはフタル酸のジアルキルエステルである。
【0019】
工程(1)は好ましくは、ケイ素化合物とチタン化合物と任意にエステル化合物との混合物中に、有機マグネシウム化合物を添加する。それによって、有機マグネシウム化合物によるチタン化合物の還元反応が進行し、チタン化合物中のチタン原子は4価から3価に還元される。本発明においては、4価のチタン原子の実質上全てが3価に還元されるのが好ましい。
【0020】
ケイ素化合物、チタン化合物および任意のエステル化合物は、好ましくは溶媒に溶解またはスラリー状にして使用する。
【0021】
該溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、オクタンおよびデカンのような脂肪族ハイドロカルビル;トルエンおよびキシレンのような芳香族ハイドロカルビル;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカリンのような脂環式ハイドロカルビル;およびジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジ−iso−アミルエーテルおよびテトラヒドロフランのようなエーテル;ならびに、これらの2種以上の組合せを例示することができる。
上記還元反応の温度は、通常−50〜70℃、好ましくは−30〜50℃、特に好ましくは−25〜35℃である。有機マグネシウム化合物の添加時間は特に制限されず、通常30分〜10時間程度の時間をかけて添加される。添加後、還元反応をさらに進めるために、20〜120℃の温度で後反応を行ってもよい。
【0022】
上記の還元反応において、多孔質の、無機酸化物および有機ポリマーのような担体を共存させて、生成される固体触媒成分前駆体を担体に担持させてもよい。担体は、公知の担体であってもよい。担体として、SiO、Al、MgO、TiO、およびZrOのような無機酸化物;ならびにポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−エチレングリコール−ジメタクリル酸メチル共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、アクリル酸メチル−ジビニルベンゼン共重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−ジビニルベンゼン共重合体、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−ジビニルベンゼン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、およびポリプロピレンのようなポリマーを例示することができる。中でも、有機ポリマーが好ましく、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、またはアクリロニトリル−ジビニルベンゼン共重合体が特に好ましい。
【0023】
固体触媒成分前駆体を担体に有効に担持させる観点から、担体の、細孔半径20〜200nmにおける細孔容量は、好ましくは0.3cm/g以上、より好ましくは0.4cm/g以上であり、該細孔容量の割合は、細孔半径3.5〜7500nmにおける細孔容量を100%として、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上である。
【0024】
ケイ素化合物の使用量は、使用されるチタン化合物中の総チタン原子1モルあたり、ケイ素原子が通常1〜500モル、好ましくは1.5〜300モル、特に好ましくは3〜100モルとなる量である。
【0025】
有機マグネシウム化合物の使用量は、使用される有機マグネシウム化合物中の総マグネシウム原子1モルあたり、上記チタン原子と上記ケイ素原子との和が通常0.1〜10モル、好ましくは0.2〜5.0モル、特に好ましくは0.5〜2.0モルとなる量である。
【0026】
チタン化合物、ケイ素化合物および有機マグネシウム化合物の使用量はまた、得られる固体触媒成分前駆体中のマグネシウム原子の量が、該前駆体中のチタン原子1モルあたり、通常1〜51モル、好ましくは2〜31モル、特に好ましくは4〜26モルとなるように決定してもよい。
【0027】
エステル化合物の使用量は、使用されるチタン化合物中の総チタン原子1モルあたり、通常0.05〜100モル、好ましくは0.1〜60モル、特に好ましくは0.2〜30モルである。
【0028】
還元反応混合物は通常、固液分離して固体触媒成分前駆体を得、ヘキサン、ヘプタンおよびトルエンのような不活性ハイドロカルビル溶媒で数回洗浄される。
【0029】
得られたオレフィン重合用固体触媒成分前駆体は、3価のチタン原子、マグネシウム原子およびハイドロカルビルオキシ基を含有し、一般に非晶性または極めて弱い結晶性を有する。得られる重合触媒の重合活性および立体規則性の観点から、非晶性の構造が特に好ましい。
【0030】
ハロゲン化化合物は、固体触媒成分前駆体中のハイドロカルビルオキシ基をハロゲン原子に置換し得る化合物である。中でも、好ましくは第4族元素のハロゲン化合物、第13族元素のハロゲン化合物、もしくは第14族元素のハロゲン化合物、またはこれら化合物の組合せであり、特に好ましくは第4族元素のハロゲン化合物または第14族元素のハロゲン化合物である。
【0031】
第4族元素のハロゲン化合物は、好ましくは下式で表される化合物である:
(OR144−b
式中、Mは第4族の原子を表し;R14は炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基を表し、R14が複数のとき、それらは同一か異なる;Xはハロゲン原子を表し;bは0≦b<4を満足する数を表す。
【0032】
として、チタン原子、ジルコニウム原およびハフニウム原子を例示することができる。中でも、チタン原子が好ましい。
14として、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、アミル基、iso−アミル基、tert−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、およびドデシル基のようなアルキル基;フェニル基、クレジル基、キシリル基およびナフチル基のようなアリール基;プロペニル基およびアリル基のようなアルケニル基;ならびにベンジル基のようなアラルキル基を例示することができる。中でも、炭素原子数2〜18のアルキル基または炭素原子数6〜18のアリール基が好ましく、炭素原子数2〜18の直鎖状アルキル基が特に好ましい。
【0033】
として、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子を例示することができる。この中で、特に塩素原子が好ましい。
【0034】
上式中のbは好ましくは0≦b≦2を満足する数であり、特に好ましくは0である。
【0035】
上式で表されるハロゲン化合物として、四塩化チタン、四臭化チタンおよび四ヨウ化チタンのようなテトラハロゲン化チタン;メトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、ブトキシチタントリクロライド、フェノキシチタントリクロライド、およびエトキシチタントリブロマイドのようなトリハロゲン化アルコキシチタン;ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジブトキシチタンジクロライド、ジフェノキシチタンジクロライド、およびジエトキシチタンジブロマイドのようなジハロゲン化ジアルコキシチタン;ならびにこれら化合物のチタン原子をジルコニウム原子またはハフニウム原子に置換した化合物を例示することができる。中でも、最も好ましくは四塩化チタンである
【0036】
上記の、第13族元素のハロゲン化合物または第14族元素のハロゲン化合物は、好ましくは下式で表される化合物である:
15m−cX
式中、Mは第13族または第14族の原子を表わし;R15は炭素原子数が1〜20のハイドロカルビル基を表わし;Xはハロゲン原子を表わし;mはMの原子価に相当する数を表わし、Mが例えばケイ素原子のときmは4である;cは0<c≦mを満足する数を表し、Mが例えばケイ素原子のときcは好ましくは3または4である。
【0037】
第13族の原子として、ホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子およびタリウム原子を例示することができる。中でも、ホウ素原子またはアルミニウム原子が好ましく、アルミニウム原子がより好ましい。第14族の原子として、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、錫原子および鉛原子を例示することができる。中でも、ケイ素原子、ゲルマニウム原子または錫原子が好ましく、ケイ素原子または錫原子がより好ましい。
【0038】
としてフッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子を例示することができ、塩素原子が好ましい。
【0039】
15として、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、iso−プロピル基、ノルマルブチル基、iso−ブチル基、アミル基、iso−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、およびドデシル基のようなアルキル基;フェニル基、トリル基、クレジル基、キシリル基、およびナフチル基のようなアリール基;シクロヘキシル基およびシクロペンチル基のようなシクロアルキル基;プロペニル基のようなアルケニル基;ならびにベンジル基のようなアラルキル基等が挙げられる。中でも、好ましくはアルキル基またはアリール基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、フェニル基またはパラトリル基である。
【0040】
第13族元素のハロゲン化合物として、トリクロロボラン、メチルジクロロボラン、エチルジクロロボラン、フェニルジクロロボラン、シクロヘキシルジクロロボラン、ジメチルクロロボラン、メチルエチルクロロボラン、トリクロロアルミニウム、メチルジクロロアルミニウム、エチルジクロロアルミニウム、フェニルジクロロアルミニウム、シクロヘキシルジクロロアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、ジエチルクロロアルミニウム、メチルエチルクロロアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロライド、ガリウムクロライド、ガリウムジクロライド、トリクロロガリウム、メチルジクロロガリウム、エチルジクロロガリウム、フェニルジクロロガリウム、シクロヘキシルジクロロガリウム、ジメチルクロロガリウム、メチルエチルクロロガリウム、インジウムクロライド、インジウムトリクロライド、メチルインジウムジクロライド、フェニルインジウムジクロライド、ジメチルインジウムクロライド、タリウムクロライド、タリウムトリクロライド、メチルタリウムジクロライド、フェニルタリウムジクロライド、およびジメチルタリウムクロライド;ならびにこれら化合物名のクロロを、フルオロ、ブロモまたはヨードに置き換えた化合物を例示することができる。
【0041】
第14族元素のハロゲン化合物として、テトラクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロメタン、モノクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、テトラクロロシラン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ノルマルプロピルトリクロロシラン、ノルマルブチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ベンジルトリクロロシラン、パラトリルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、ジクロロシラン、メチルジクロロシラン、エチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルエチルジクロロシラン、モノクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、テトラクロロゲルマン、トリクロロゲルマン、メチルトリクロロゲルマン、エチルトリクロロゲルマン、フェニルトリクロロゲルマン、ジクロロゲルマン、ジメチルジクロロゲルマン、ジエチルジクロロゲルマン、ジフェニルジクロロゲルマン、モノクロロゲルマン、トリメチルクロロゲルマン、トリエチルクロロゲルマン、トリノルマルブチルクロロゲルマン、テトラクロロ錫、メチルトリクロロ錫、ノルマルブチルトリクロロ錫、ジメチルジクロロ錫、ジノルマルブチルジクロロ錫、ジ−iso−ブチルジクロロ錫、ジフェニルジクロロ錫、ジビニルジクロロ錫、メチルトリクロロ錫、フェニルトリクロロ錫、ジクロロ鉛、メチルクロロ鉛、およびフェニルクロロ鉛;ならびに、これら化合物名のクロロを、フルオロ、ブロモまたはヨードに置き換えた化合物を例示することができる。中でも、好ましくは、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ノルマルプロピルトリクロロシラン、ノルマルブチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、テトラクロロ錫、メチルトリクロロ錫またはノルマルブチルトリクロロ錫である。
【0042】
ハロゲン化化合物として、テトラクロロチタン、メチルジクロロアルミニウム、エチルジクロロアルミニウム、テトラクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ノルマルプロピルトリクロロシランまたはテトラクロロ錫が、重合活性の観点から、特に好ましい。
【0043】
内部電子供与体として、酸素原子、窒素原子、リン原子または硫黄原子を有する化合物が好ましく、酸素原子または窒素原子を有する化合物がより好ましい。酸素原子を有する化合物として、エーテル類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸または無機酸のエステル類、有機酸または無機酸の酸アミド類、酸ハロゲン化物類、および酸無水物類を例示することができる。窒素原子を有する化合物として、アンモニア類、アミン類、ニトリル類、およびイソシアネート類を例示することができる。中でも、好ましくはフタル酸誘導体、1,3−ジエーテル化合物、またはジアルキルエーテル化合物であり、より好ましくはフタル酸誘導体である。
【0044】
該フタル酸誘導体として、下式で表される化合物を例示することができる:

式中、R16〜R19はそれぞれ独立に水素原子またはハイドロカルビル基であり;SおよびSはそれぞれ独立に、ハロゲン原子であるか、または、水素原子、炭素原子、酸素原子およびハロゲン原子のうちの複数を任意に組み合わせて形成される置換基である。
【0045】
16〜R19としては、水素原子、または炭素原子数1〜10のハイドロカルビル基が好ましく、R16〜R19の任意の組み合わせは互いに結合して環を形成していてもよい。SおよびSとしては、それぞれ独立に塩素原子、水酸基、または炭素原子数1〜20のアルコキシ基が好ましい。
【0046】
フタル酸誘導体として、フタル酸、フタル酸モノエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸メチルエチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジノルマルプロピル、フタル酸ジ−iso−プロピル、フタル酸ジノルマルブチル、フタル酸ジ−iso−ブチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジノルマルヘキシル、フタル酸ジノルマルヘプチル、フタル酸ジ−iso−ヘプチル、フタル酸ジノルマルオクチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジノルマルデシル、フタル酸ジ−iso−デシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジフェニル、およびフタル酸ジクロライドを例示することができる。
上式で表わされるフタル酸誘導体の中、SおよびSが炭素原子数6以下のアルコキシ基であるフタル酸エステルが好ましく、フタル酸ジエチル、フタル酸ジノルマルプロピル、フタル酸ジ−iso−プロピル、フタル酸ジノルマルブチルまたはフタル酸ジ−iso−ブチルがより好ましい。
【0047】
上記の1,3−ジエーテル化合物として、下式で表される化合物を例示することができる:

式中、R20〜R23はそれぞれ独立に炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは脂環式のアルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、R21およびR22はそれぞれ独立に水素原子であってもよい。
【0048】
1,3−ジエーテル化合物として、2,2−(ジ−iso−ブチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(iso−プロピル)−2−(iso−ペンチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(iso−プロピル)−2−ジメチルオクチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ(iso−プロピル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(iso−プロピル)−2−シクロヘキシルメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−(iso−プロピル)−2−(iso−ブチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−(iso−プロピル)−2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−(iso−プロピル)−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、および2−ノルマルヘプチル−2−(iso−ペンチル)−1,3−ジメトキシプロパンを例示することができる。中でも、2−(iso−プロピル)−2−(iso−ブチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(iso−プロピル)−2−(iso−ペンチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ(iso−ブチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ(iso−プロピル)−1,3−ジメトキシプロパン好ましい。
【0049】
上記のジアルキルエーテル化合物として、下式で表される化合物を例示することができる:
24−O−R25
式中、R24およびR25はそれぞれ独立に炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは脂環式のアルキル基である。
【0050】
ジアルキルエーテル化合物、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジn−プロピルエーテル、ジiso−プロピルエーテル、ジn−ブチルエーテル、ジiso−ブチルエーテル、ジn−アミルエーテル、ジiso−アミルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルn−ブチルエーテル、およびメチルシクロヘキシルエーテルを例示することができる。中でも、ジn−ブチルエーテルが好ましい。
【0051】
工程(2)は、任意成分として有機酸ハライドを用いることができる。有機酸ハライドとして、モノおよび多価のカルボン酸ハライドを例示することができ、具体例として脂肪族カルボン酸ハライド、脂環式カルボン酸ハライド、および芳香族カルボン酸ハライドを例示することができる。より具体的な例として、アセチルクロライド、プロピオン酸クロライド、酪酸クロライド、吉草酸クロライド、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、塩化ベンゾイル、トルイル酸クロライド、アニス酸クロライド、コハク酸クロライド、マロン酸クロライド、マレイン酸クロライド、イタコン酸クロライド、およびフタル酸クロライドを例示することができる。中でも、安息香酸クロライド、トルイル酸クロライドおよびフタル酸クロライドのような芳香族カルボン酸クロライドが好ましく、芳香族ジカルボン酸ジクロライドがさらに好ましく、フタル酸クロライドが特に好ましい。
【0052】
工程(2)の接触は全て、通常、窒素ガスおよびアルゴンガスのような不活性気体雰囲気下で行われる。接触させる方法として、以下の方法を例示することができる;
(1)固体触媒成分前駆体に、ハロゲン化化合物および内部電子供与体を任意の順序で加える方法;
(2)固体触媒成分前駆体に、ハロゲン化化合物と内部電子供与体と有機酸ハライドの混合物を加える方法;
(3)固体触媒成分前駆体に、ハロゲン化化合物および内部電子供与体の混合物と、有機酸ハライドとを、任意の順序で加える方法;
(4)固体触媒成分前駆体に内部電子供与体を加え、次いでハロゲン化化合物を加える方法;
(5)固体触媒成分前駆体に内部電子供与体を加え、次いでハロゲン化化合物およびさらなる内部電子供与体を任意の順序で加える方法;
(6)固体触媒成分前駆体に内部電子供与体を加え、次いでハロゲン化化合物とさらなる内部電子供与体との混合物を加える方法;
(7)ハロゲン化化合物に、固体触媒成分前駆体および内部電子供与体を任意の順序で加える方法;
(8)ハロゲン化化合物に、固体触媒成分前駆体、内部電子供与体および有機酸ハライドを任意の順序で加える方法。
【0053】
また、上記方法(1)〜(8)の最後の添加の後さらに、ハロゲン化化合物と1回以上接触させる方法や、ハロゲン化化合物と内部電子供与体との混合物と1回以上接触させる方法を例示することができる。
【0054】
中でも、好ましくは、方法(3);方法(3)の最後の添加の後さらに、ハロゲン化化合物と内部電子供与体との混合物を少なくとも1回加える方法;方法(6);または方法(6)において、ハロゲン化化合物とさらなる内部電子供与体との混合物を2回以上加える方法である。より好ましくは、方法(3)において、上記の順序で加える方法; 方法(3)において、上記の順序で加えた後さらに、ハロゲン化化合物と内部電子供与体との混合物を少なくとも1回加える方法;方法(6);または方法(6)において、ハロゲン化化合物とさらなる内部電子供与体との混合物を2回以上加える方法である。特に好ましくは、方法(3)において、固体触媒成分前駆体に、ハロゲン化化合物およびジアルキルエーテル化合物(内部電子供与体)の混合物と、有機酸ハライドとを、この順序で加えて接触させ、次いで、ハロゲン化化合物とフタル酸誘導体(内部電子供与体)とジアルキルエーテル化合物(内部電子供与体)との混合物を加えて接触させ、さらに、ハロゲン化化合物とジアルキルエーテル化合物(内部電子供与体)との混合物を少なくとも1回加える方法;または、方法(6)において、固体触媒成分前駆体にフタル酸誘導体(内部電子供与体)を加えて接触させ、次いで、ハロゲン化化合物とフタル酸誘導体(内部電子供与体)とジアルキルエーテル化合物(内部電子供与体)との混合物を加えて接触させ、さらに、ハロゲン化化合物とジアルキルエーテル化合物(内部電子供与体)との混合物を少なくとも1回加える方法である。
【0055】
工程(2)の接触の方法は特に限定されない。該方法として、スラリー法や機械的粉砕法(例えばボールミルによる方法)のような公知の方法を例示することができる。機械的粉砕法は、得られる固体触媒成分の微粉含有量やその粒度分布の広がりを抑制するために、好ましくは溶媒の存在下で行われる。
【0056】
工程(2)で得られる固体触媒成分は、不要物を除去するために、溶媒によって洗浄するのが好ましい。溶媒は、固体触媒成分に対して不活性であることが好ましく、溶媒としてペンタン、ヘキサン、ヘプタン、およびオクタンのような脂肪族ハイドロカルビル;ベンゼン、トルエンおよびキシレンのような芳香族ハイドロカルビル;シクロヘキサンおよびシクロペンタンのような脂環式ハイドロカルビル;ならびに1,2−ジクロルエタンおよびモノクロルベンゼンのようなハロゲン化ハイドロカルビルを例示することができる。中でも、芳香族ハイドロカルビルまたはハロゲン化ハイドロカルビルが特に好ましい。
【0057】
工程(2)における溶媒の使用量は、一段階の接触につき、固体触媒成分前駆体1gあたり通常0.1ミリリットル〜1000ミリリットルである。好ましくは1gあたり1ミリリットル〜100ミリリットルである。また、固体触媒成分の一回の洗浄における溶媒の使用量も同程度である。洗浄は、一段階の接触につき通常、1〜5回行われる。
【0058】
工程(2)の接触および洗浄の温度はそれぞれ通常−50〜150℃、好ましくは0〜140℃、さらに好ましくは60〜135℃である。接触の時間は特に制限されず、好ましくは0.5〜8時間であり、さらに好ましくは1〜6時間である。洗浄の時間は特に限定されず、好ましくは1〜120分であり、さらに好ましくは2〜60分である。
【0059】
内部電子供与体の使用量は、固体触媒成分前駆体1gに対し、通常0.01〜100ミリモル、好ましくは0.05〜50ミリモル、さらに好ましくは0.1〜20ミリモルである。使用量が100ミリモルを超えると、固体触媒成分前駆体の粒子の崩壊が起こることがある。
【0060】
特にフタル酸誘導体(内部電子供与体)の使用量は、固体触媒成分中におけるフタル酸誘導体の含有量が、固体触媒成分全体を100重量%としたときに1〜25重量%となるように用いることが好ましく、2〜20重量%となるように用いることがより好ましい。また、フタル酸誘導体の使用量は、固体触媒成分前駆体1gに対し、通常0.1〜100ミリモル、好ましくは0.3〜50ミリモル、さらに好ましくは0.5〜20ミリモルである。さらにまた、フタル酸誘導体の使用量は、固体触媒成分前駆体中のマグネシウム原子1モルあたり、通常0.01〜1.0モル、好ましくは0.03〜0.5モルである。
【0061】
1,3−ジエーテル化合物(内部電子供与体)の使用量は、固体触媒成分中における1,3−ジエーテル化合物の含有量が、固体触媒成分全体を100重量%としたときに0.5〜20重量%となるように用いることが好ましく、0.8〜15重量%となるように用いることがより好ましい。1,3−ジエーテル化合物の使用量は、固体触媒成分前駆体1gに対し、通常0.01〜100ミリモル、好ましくは0.015〜50ミリモル、さらに好ましくは0.02〜10ミリモルである。また、固体触媒成分前駆体中のマグネシウム原子1モルあたりの1,3−ジエーテル化合物の使用量は、通常0.001〜1.0モル、好ましくは0.002〜0.5モルである。
【0062】
内部電子供与体としてフタル酸誘導体と1,3−ジエーテル化合物との組合せを用いる場合、それぞれの使用量は、固体触媒成分中のフタル酸誘導体に対する1,3−ジエーテル化合物のモル比が0.1以上、3以下となるように調整されることが好ましい。より好ましくは0.13以上、2以下であり、さらに好ましくは0.15以上、1.5以下である。またこの場合、固体触媒成分中のフタル酸誘導体と1,3−ジエーテル化合物の含有量の合計は、固体触媒成分全体を100重量%としたときに5〜30重量%であることが、立体規則性重合能の観点から好ましく、6〜25重量%であることがより好ましい。
【0063】
ハロゲン化化合物の使用量は、固体触媒成分前駆体1gに対し、通常0.5〜1000ミリモル、好ましくは1〜200ミリモル、さらに好ましくは2〜100ミリモルである。ハロゲン化化合物はジアルキルエーテル化合物と組合せて用いることが好ましく、ジアルキルエーテル化合物の使用量は、ハロゲン化化合物1モルあたり、通常1〜100モル、好ましくは1.5〜75モル、さらに好ましくは2〜50モルである。
【0064】
有機酸ハライドの使用量は、固体触媒成分前駆体1gに対し、通常0.1〜100ミリモル、好ましくは0.3〜50ミリモル、さらに好ましくは0.5〜20ミリモルである。また、固体触媒成分前駆体中のマグネシウム原子1モル当たりの有機酸ハライドの使用量は、通常0.01〜1.0モル、好ましくは0.03〜0.5モルである。有機酸ハライドの使用量が固体触媒成分前駆体1gに対して100ミリモルを超えたり、固体触媒成分前駆体中のマグネシウム原子1モル当たり1.0モルを超えたりする場合には、粒子の崩壊が起こることがある。
【0065】
上記化合物のそれぞれの使用量は接触1回あたりの使用量であって、接触が複数回行われる場合、上記使用量は各接触に適用される。
【0066】
工程(2)で得られる固体触媒成分は、不活性な溶媒と組合せてスラリー状で重合に使用してもよいし、乾燥して得られる流動性の粉末として重合に使用してもよい。乾燥方法として、減圧条件下揮発成分を除去する方法、窒素ガスやアルゴンガスのような不活性気体の流通下で揮発成分を除去する方法を例示することができる。乾燥時の温度は0〜200℃であることが好ましく、50〜100℃であることがより好ましい。乾燥時間は、0.01〜20時間であることが好ましく、0.5〜10時間であることがより好ましい。
【0067】
固体触媒成分は、工業的観点からその重量平均粒子径が13〜100μmであることが好ましく、15〜80μmであることがより好ましく、17〜60μmであることがさらに好ましい。特に微細粉子の割合が多い場合は、気相重合等における塊等の発生や、飛散粒子によるライン閉塞を引き起こし、生産を不安定にすることがあるため、10μm以下の粒子の割合が6重量%以下であることが好ましく、4重量%以下であることがより好ましい。
【0068】
上記の固体触媒成分を用いることによって、剛性の高いα−オレフィン重合体を効率良く得ることができる。
【0069】
工程(3)における有機アルミニウム化合物とは、分子内に少なくとも一つのAl−炭素結合を有する化合物である。有機アルミニウム化合物として、下式で表される化合物を例示することができる:
24AlY3‐w
2526Al−O−AlR2728
式中、R24〜R28は炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基を表し;Yはハロゲン原子、水素原子又はアルコキシ基を表し;wは2≦w≦3を満足する数である。
【0070】
上式で表される化合物として、トリエチルアルミニウム、トリiso−ブチルアルミニウム、およびトリヘキシルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムハイドライドおよびジiso−ブチルアルミニウムハイドライドのようなジアルキルアルミニウムハイドライド;ジエチルアルミニウムクロライドのようなジアルキルアルミニウムハライド;トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドとの混合物のようなトリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドとの混合物;ならびにテトラエチルジアルモキサンおよびテトラブチルジアルモキサンのようなアルキルアルモキサンを例示することができる。
【0071】
有機アルミニウム化合物は、重合活性と重合体の立体規則性の観点からは、トリアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドとの混合物、または、アルキルアルモキサンが好ましく、とりわけトリエチルアルミニウム、トリiso−ブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドとの混合物またはテトラエチルジアルモキサンであることが好ましい。
【0072】
工程(3)における式(II)で表される外部電子供与体は、下式で表される化合物である。
2Si(OC (II)
式(II)中、R2はSiに結合する炭素原子が2級炭素原子である炭素原子数3〜20、好ましくは炭素原子数3〜10のハイドロカルビル基を表す。Rとして、iso−プロピル基、sec−ブチル基、sec−ヘキシル基およびsec−イソアミル基のような分岐鎖状アルキル基;シクロペンチル基およびシクロヘキシル基のようなシクロアルキル基;ならびにシクロペンテニル基のようなシクロアルケニル基を例示することができる。
【0073】
式(II)で表される外部電子供与体として、iso−プロピルトリエトキシシラン、sec−ブチルトリエトキシシラン、sec−ヘキシルトリエトキシシラン、sec−アミルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2−メチルシクロヘキシルトリエトキシシラン、2−エチルシクロヘキシルトリエトキシシラン、2,6−ジメチルシクロヘキシルトリエトキシシラン、2,6−ジエチルシクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、2−メチルシクロペンチルトリエトキシシラン、2−エチルシクロペンチルトリエトキシシラン、2,5−ジメチルシクロペンチルトリエトキシシラン、および2,5−ジエチルシクロペンチルトリエトキシシラン、を例示することができる。中でも、好ましくは、sec−ブチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシランである。
【0074】
工程(3)における式(III)で表される外部電子供与体は、下式で表される化合物である。
Si(OC4−n・・・(III)
式(III)中、Rは、Siに結合する炭素原子が1級炭素である炭素原子数1〜20、好ましくは炭素原子数1〜7、より好ましくは1〜3のハイドロカルビル基を表し、nは0あるいは1の数を表す。Rとして、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、ノルマルブチル基のような直鎖状アルキル基;ならびにiso−ブチル基、iso−アミル基、iso−ヘキシル基のような分岐鎖状アルキル基を例示することができる。
【0075】
式(III)で表される外部電子供与体としては、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ノルマルプロピルトリエトキシシラン、ノルマルブチルトリエトキシシラン、iso−ブチルトリエトキシシラン、ノルマルアミルトリエトキシシラン、iso−アミルトリエトキシシラン、ノルマルヘキシルトリエトキシシラン、2−メチルペンチルトリエトキシシラン、3−メチルペンチルトリエトキシシラン、4−メチルペンチルトリエトキシシラン、ノルマルヘプチルトリエトキシシラン、およびノルマルオクチルトリエトキシシラン、を例示することができる。中でも、好ましくは、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ノルマルプロピルトリエトキシシラン、iso−ブチルトリエトキシシランであり、より好ましくはテトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ノルマルプロピルトリエトキシシランである。
【0076】
工程(3)における成分を接触させる方法として、以下の方法を例示することができる:
(1)それら成分を混合して接触させた後、重合槽に供給する方法;
(2)それら成分を別々に重合槽に供給して重合槽中で接触させる方法;
(3)それら成分の一部を混合して接触させ、それと残りの成分とを接触させた後、重合槽に供給する方法;
(4)それら成分の一部を混合して接触させ、それと残りの成分を別々に重合槽に供給する方法。
【0077】
接触に供される固体触媒成分、有機アルミニウム化合物、外部電子供与体および任意成分のそれぞれは、溶媒と組合せてもよい。
上記の重合槽への供給は通常、窒素やアルゴンのような不活性ガス雰囲気下、かつ、水分のない状態で実施される。
本発明の重合触媒の製造方法は、良好な粉体性状を有するα−オレフィン重合体を製造する観点から、上記の方法より、以下の工程からなる方法の方が好ましい場合がある:
(1)固体触媒成分および有機アルミニウム化合物の存在下、少量のオレフィン(本来の重合(通常、本重合と言われる)で使用されるα−オレフィンと同一または異なる)を重合させ(生成される重合体の分子量を調節するために水素のような連鎖移動剤を用いてもよいし、外部電子供与体を用いてもよい)、該オレフィンの重合体で表面が覆われた触媒成分を生成させる工程(該重合は通常、予備重合と言われ、したがって該触媒成分は通常、予備重合触媒成分と言われる);
(2)予備重合触媒成分と、有機アルミニウム化合物および外部電子供与体とを接触させる工程。
すなわち上記の方法は、工程(2)と(3)との間に、以下の工程(2−1)および(2−2)を有するα―オレフィン重合触媒の製造方法である:
(2−1)該固体触媒成分と有機アルミニウム化合物と外部電子供与体とを接触させて、接触生成物を生成させる工程;および
(2−2)該接触生成物の存在下にα―オレフィンを重合させて、予備重合された固体触媒成分を生成させる工程。
【0078】
工程(3)で用いられる「固体触媒成分」という用語は、予備重合されていない固体触媒成分のみならず、予備重合された触媒成分も意味する。
【0079】
予備重合は好ましくは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン及びトルエンのような不活性ハイドロカルビルを溶媒とするスラリー重合である。
【0080】
上記工程(1)で用いられる有機アルミニウム化合物の量は、工程(1)で用いられる固体触媒成分中のチタン原子1モル当たり、通常0.5〜700モル、好ましくは0.8〜500モル、特に好ましくは1〜200モルである。
【0081】
予備重合されるオレフィンの量は、工程(1)で用いられる固体触媒成分1g当たり通常0.01〜1000g、好ましくは0.05〜500g、特に好ましくは0.1〜200gである。
【0082】
上記工程(1)のスラリー重合における固体触媒成分のスラリー濃度は、好ましくは1〜500g−固体触媒成分/リットル−溶媒、特に好ましくは3〜300g−固体触媒成分/リットル−溶媒である。
【0083】
予備重合の温度は、好ましくは−20〜100℃、特に好ましくは0〜80℃である。予備重合における気相部のオレフィンの分圧は、好ましくは0.01〜2MPa、特に好ましくは0.1〜1MPaであるが、予備重合の圧力や温度において液状であるオレフィンについては、この限りではない。予備重合の時間は特に制限されず、好ましくは2分間から15時間である
予備重合における、固体触媒成分、有機アルミニウム化合物及びオレフィンを重合槽へ供給する方法として、以下の方法(1)および(2)を例示することができる:
(1)固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とを供給した後、オレフィンを供給する方法;および
(2)固体触媒成分とオレフィンとを供給した後、有機アルミニウム化合物を供給する方法。
【0084】
予備重合における、オレフィンを重合槽へ供給する方法として、以下の方法(1)および(2)を例示することができる:
(1)重合槽内の圧力を所定の圧力に維持するようにオレフィンを順次供給する方法;および
(2)オレフィンの所定量の全量を一括して供給する方法。
【0085】
予備重合では外部電子供与体を使用することが好ましい。
【0086】
予備重合で用いられる外部電子供与体の量は、固体触媒成分中に含まれるチタン原子1モルに対して、通常0.01〜400モル、好ましくは0.02〜200モル、特に好ましくは、0.03〜100モルであり、有機アルミニウム化合物1モルに対して、通常0.003〜5モル、好ましくは0.005〜3モル、特に好ましくは0.01〜2モルである。
【0087】
予備重合における、外部電子供与体を重合槽へ供給する方法として、以下の方法(1)および(2)を例示することができる:
(1) 外部電子供与体を単独で供給する方法;および
(2) 外部電子供与体と有機アルミニウム化合物との接触物を供給する方法。
【0088】
本重合で使用されるα−オレフィンとして、炭素原子数3〜20のα−オレフィンを例示することができる。α−オレフィンとして、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、および4−メチル−1−ペンテン;ならびにこれらの2以上の組合せを例示することができる。
【0089】
α−オレフィンは、それと共重合しうるコモノマーと組合せてもよい。該コモノマーとして、エチレンやジオレフィン化合物を例示することができる。ジオレフィン化合物として、共役ジエンおよび非共役ジエンを例示することができる。共役ジエンとして、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロオクタジエン、および1,3−シクロヘキサジエンを例示することができる。非共役ジエンとして、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,10−ウンデカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、ジビニルベンゼン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、1,5−シクロオクタジエン、5,8−エンドメチレンヘキサヒドロナフタレン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンを例示することができる。
【0090】
本発明におけるα−オレフィン重合体として、プロピレンの単独重合体、1−ブテンの単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、およびプロピレン−1−オクテン共重合体を例示することができる。
【0091】
本発明のα−オレフィン重合体の製造方法は、アイソタクチック立体規則性α−オレフィン重合体の製造方法として好適であり、アイソタクチック立体規則性プロピレン重合体の製造方法として特に好適である。
【0092】
該アイソタクチック立体規則性プロピレン重合体として、プロピレンの単独重合体;プロピレンと、得られる共重合体の結晶性を失わない程度の量のエチレンおよび/または炭素原子数4〜12のα−オレフィンのようなコモノマーとのランダム共重合体;ならびに、プロピレンを単独重合させ、またはプロピレンとエチレンもしくは炭素原子数4〜12のα−オレフィンとを共重合させ(これを「前段重合」と称する)、次いで、前段重合で生成した重合体の存在下に、炭素原子数3〜12のα−オレフィンとエチレンとを1段もしくは多段で重合させ(これを「後段重合」と称する)て得られるプロピレン系重合体を例示することができる。上記の「結晶性を失わない程度の量」はコモノマーの種類によって異なる。コモノマーが例えばエチレンの場合、得られるランダム共重合体中のエチレンから誘導される繰り返し単位の量が通常10重量%以下に相当する量であり、コモノマーが例えば1−ブテンのようなα−オレフィンの場合、得られる共重合体中のα−オレフィンから誘導される繰り返し単位の量が通常30重量%以下、好ましくは10重量%以下に相当する量である。プロピレン系重合体において、前段重合の場合は、コモノマーが例えばエチレンのときは、エチレン単位の量は通常10重量%以下、好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下であり、コモノマーが例えばα−オレフィンのときは、α−オレフィン単位の量は通常15重量%以下、好ましくは10重量%以下であり、後段重合の場合は、エチレン単位の量は通常20〜80重量%、好ましくは30〜50重量%である。
【0093】
アイソタクチック立体規則性の尺度として通常、アイソタクチック・ペンタッド分率が用いられる。ここでいうアイソタクチック・ペンタッド分率とは、A.ZambelliらによってMacromolecules、1973年、6号,925ページ〜926ページに発表されている方法、すなわち13C−NMRを使用して測定される結晶性ポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。ただし、NMR吸収ピークの帰属に関しては、その後発刊されたMacromolecules、1975年、8号、687ページ〜689ページに基づいて行うものである。アイソタクチック・ペンタッド分率は「mmmm%」と略記することがある。理論的なmmmm%の上限値は1.000である。本発明のα−オレフィン重合体の製造方法は、mmmm%が0.900以上(より好ましくは0.940以上、さらに好ましくは0.955以上)のアイソタクチック立体規則性α−オレフィン重合体の製造方法として好ましい。
【0094】
本発明のα−オレフィン重合用触媒は、分子量分布(Aw/An)が3.0〜6.5と狭いアイソタクチック立体規則性α−オレフィン重合体の製造方法として好適であり、外部電子供与体(III)を使用しないα―オレフィン重合用触媒を用いて生成するホモポリプロピレンの分子量分布に対する、同一条件下で生成するホモプロピレンの分子量分布の比が1.1以下のアイソタクチック立体規則性α−オレフィン重合体の製造方法として好ましい。
【0095】
本重合時の有機アルミニウム化合物の使用量は、固体触媒成分中のチタン原子1molあたり、通常1〜10000mol、特に好ましくは5〜6000molである。
【0096】
本重合時の外部電子供与体の使用量は、固体触媒成分中に含まれるチタン原子1molあたり、通常0.1〜2000mol、好ましくは0.3〜1000mol、特に好ましくは0.5〜800molであり、有機アルミニウム化合物1molあたり、通常0.001〜5mol、好ましくは0.005〜3mol、特に好ましくは0.01〜1molである。式(II)で表される外部電子供与体の使用量に対する、式(III)で表される外部電子供与体の使用量は、通常0.01〜10、好ましくは0.05〜7、特に好ましくは0.1〜5.0(モル比)である。
【0097】
本重合の温度は、通常−30〜300℃、好ましくは20〜180℃、より好ましくは40〜100℃である。重合圧力は特に制限されず、工業的かつ経済的であるという点で、一般に常圧〜10MPa、好ましくは200kPa〜5MPa程度である。
本重合はバッチ式または連続式であり、重合方法としてプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびオクタンのような不活性ハイドロカルビルを溶媒とするスラリー重合法または溶液重合法や、重合温度において液状であるオレフィンを媒体とするバルク重合法や、気相重合法を例示することができる。
【0098】
本重合はまた、重合条件の異なる複数の重合反応工程を含んでいてもよい。用いられる重合反応器は、1基でもよいし、2基以上を直列に配列した形式でもよい。更に、一つの反応器内で重合条件を連続的に変化させる形式でもよい。
【0099】
本重合で得られる重合体の分子量を調節するために、連鎖移動剤(例えば、水素や、ジメチル亜鉛およびジエチル亜鉛のようなアルキル亜鉛)を用いてもよい。
【0100】
本発明によれば、高立体規則性のα−オレフィン重合体、および該重合体の製造に適用し得る、水素による分子量制御性に優れた高活性のα−オレフィン重合触媒を得ることができる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0102】
[実施例1]
内容積3リットルの撹拌機付きステンレス製オートクレーブを減圧乾燥させた後、アルゴン置換を行い、冷却した。その後、当該オートクレーブ内を真空とした。
トリエチルアルミニウム(有機アルミニウム化合物)2.6ミリモルと、シクロヘキシルトリエトキシシラン(外部電子供与体(II))0.52ミリモル、テトラエトキシシラン(外部電子供与体(III))0.13ミリモルと、特開2004−182981号公報の実施例1(2)に記載の固体触媒成分5.10ミリグラムとを、この順番に、予めヘプタンを入れたガラスチャージャーへ供給して接触させ、重合触媒を含む混合物を得た。
該混合物をオートクレーブ内に一括で投入した。次に、液化プロピレン(α−オレフィン)780gをオートクレーブ内に供給し、更に、水素15.4NLを供給した。その後、オートクレーブを70℃まで昇温し重合を開始した。
【0103】
重合開始1時間後、未反応プロピレンを重合系外へパージして重合を終了し、生成した重合体を60℃で1時間減圧乾燥してプロピレンの単独重合体のパウダー119gを得た。固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=23,300(g/g)であった。また、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合は、CXS=1.0(重量%)、重合体の極限粘度は、[η]=0.73(dl/g)、分子量分布(Aw/An)は6.5、テトラエトキシシラン(外部電子供与体(III))を使用しない(比較例1)で得られるプロピレンの単独重合体の分子量分布(Aw/An=6.0)に対する分子量分布比(Aw/An比)は1.1であった。結果を表1及び2に示す。
【0104】
上記の20℃キシレン可溶部量(CXS、単位:重量%)は、20℃の冷キシレンに可溶な分量を百分率(wt%)で表した。通常、CXSは値が小さいほど、無定形重合体が少なく、高立体規則性であることを示す。
【0105】
上記の極限粘度([η]、単位:dl/g)は、ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1、0.2及び0.5g/dlの3点について還元粘度を測定した。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法、すなわち、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって推算した。なお、溶媒としてはテトラリンを用い、温度は135℃で測定した。
【0106】
上記の分子量分布(Aw/An)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、下記の条件で測定した。検量線は標準ポリスチレンを用いて作成した。分子量分布は重量平均分子鎖長(Aw)と数平均分子鎖長(An)との比(Aw/An)で評価した。
【0107】
機種:ウオーターズ社製 150C型
カラム:TSK−GEL GMH6−HT 7.5φmm×300mm×3本
測定温度:140℃
溶媒:オルトジクロロベンゼン
測定濃度:5mg/5ml
【0108】
[実施例2]
固体触媒成分の量を6.36ミリグラムへ変更したこと、テトラエトキシシランの添加量を0.26ミリモルへ変更したこと以外は実施例1と同様に行いプロピレンの単独重合体のパウダーを得た。固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=20,600(g/g)であった。また、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合は、CXS=1.0(重量%)、重合体の極限粘度は、[η]=0.70(dl/g)、分子量分布(Aw/An)は5.3、テトラエトキシシラン(外部電子供与体(III))を使用しない(比較例1)で得られるプロピレンの単独重合体の分子量分布(Aw/An=6.0)に対する分子量分布比(Aw/An比)は0.88であった。結果を表1及び2に示す。
【0109】
[実施例3]
固体触媒成分の量を8.88ミリグラムに変更したこと、テトラエトキシシランの添加量を0.78ミリモルに変更したこと以外は実施例1と同様に行いプロピレンの単独重合体のパウダーを得た。固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=18,400(g/g)であった。また、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合は、CXS=1.1(重量%)、重合体の極限粘度は、[η]=0.66(dl/g)、分子量分布(Aw/An)は4.9、テトラエトキシシラン(外部電子供与体(III))を使用しない(比較例1)で得られるプロピレンの単独重合体の分子量分布(Aw/An=6.0)に対する分子量分布比(Aw/An比)は0.82であった。結果を表1及び2に示す。
【0110】
[比較例1]
固体触媒成分の量を9.08ミリグラムに変更したこと、テトラエトキシシラン(外部電子供与体(III))を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に行いプロピレンの単独重合体のパウダーを得た。固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=24,500(g/g)であった。また、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合は、CXS=1.0(重量%)、重合体の極限粘度は、[η]=0.80(dl/g)、分子量分布(Aw/An)は6.0であった。結果を表1及び2に示す。
【0111】
[比較例2]
固体触媒成分の量を8.08ミリグラムに変更したこと、シクロヘキシルトリエトキシシラン(外部電子供与体(II))を添加しなかったこと、テトラエトキシシラン(外部電子供与体(III))の添加量を0.52ミリモルとした以外は実施例1と同様に行いプロピレンの単独重合体のパウダーを得た。固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=18,400(g/g)であった。また、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合は、CXS=1.4(重量%)、重合体の極限粘度は、[η]=0.48(dl/g)、分子量分布(Aw/An)は5.9であった。結果を表1及び2に示す。
【0112】
[比較例3]
固体触媒成分の量を7.48ミリグラムに変更したこと、外部電子供与体(II)をシクロヘキシルエチルジメトキシシランへ変更したこと、テトラエトキシシラン(外部電子供与体(III))を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に行いプロピレンの単独重合体のパウダーを得た。固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=26,500(g/g)であった。また、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合は、CXS=0.90(重量%)、重合体の極限粘度は、[η]=1.1(dl/g)、分子量分布(Aw/An)は6.8であった。結果を表1及び2に示す。
【0113】
[比較例4]
固体触媒成分の量を6.53ミリグラムに変更したこと、外部電子供与体(II)をシクロヘキシルエチルジメトキシシランへ変更したこと以外は実施例1と同様に行いプロピレンの単独重合体のパウダーを得た。固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=23,300(g/g)であった。また、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合は、CXS=0.75(重量%)、重合体の極限粘度は、[η]=1.0(dl/g)、分子量分布(Aw/An)は8.0、テトラエトキシシラン(外部電子供与体(III))を使用しない(比較例3)で得られるプロピレンの単独重合体の分子量分布(Aw/An=6.8)に対する分子量分布比(Aw/An比)は1.2であった。結果を表1及び2に示す。
【0114】
[比較例5]
固体触媒成分の量を9.39ミリグラムへ変更したこと、外部電子供与体(II)をシクロヘキシルエチルジメトキシシランへ変更したこと、テトラエトキシシランの添加量を0.26ミリモルへ変更したこと以外は実施例1と同様に行いプロピレンの単独重合体のパウダーを得た。固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=18,500(g/g)であった。また、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合は、CXS=0.77(重量%)、重合体の極限粘度は、[η]=1.0(dl/g)、分子量分布(Aw/An)は9.2、テトラエトキシシラン(外部電子供与体(III))を使用しない(比較例3)で得られるプロピレンの単独重合体の分子量分布(Aw/An=6.8)に対する分子量分布比(Aw/An比)は1.4であった。であった。結果を表1及び2に示す。
【0115】
[比較例6]
固体触媒成分の量を7.43ミリグラムに変更したこと、外部電子供与体(II)をシクロヘキシルエチルジメトキシシランへ変更したこと、テトラエトキシシランの添加量を0.78ミリモルに変更したこと以外は実施例1と同様に行いプロピレンの単独重合体のパウダーを得た。固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=18,600(g/g)であった。また、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合は、CXS=0.69(重量%)、重合体の極限粘度は、[η]=0.93(dl/g)、分子量分布(Aw/An)は8.6、テトラエトキシシラン(外部電子供与体(III))を使用しない(比較例3)で得られるプロピレンの単独重合体の分子量分布(Aw/An=6.8)に対する分子量分布比(Aw/An比)は1.3であった。であった。結果を表1及び2に示す。
【0116】
[実施例4]
固体触媒成分の量を6.20ミリグラムに変更したこと、外部電子供与体(III)をiso−ブチルトリエトキシシランへ変更したこと以外は実施例1と同様に行いプロピレンの単独重合体のパウダーを得た。固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=24,000(g/g)であった。また、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合は、CXS=0.85(重量%)、重合体の極限粘度は、[η]=0.78(dl/g)、分子量分布(Aw/An)は5.8、iso−ブチルトリエトキシシラン(外部電子供与体(III))を使用しない(比較例1)で得られるプロピレンの単独重合体の分子量分布(Aw/An=6.0)に対する分子量分布比(Aw/An比)は0.97であった。結果を表1及び2に示す。
【0117】
[実施例5]
固体触媒成分の量を6.91ミリグラムに変更したこと、外部電子供与体(III)をiso−ブチルトリエトキシシラン0.26ミリモルに変更したこと、以外は実施例1と同様に行いプロピレンの単独重合体のパウダーを得た。固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=22,700(g/g)であった。また、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合は、CXS=0.87(重量%)、重合体の極限粘度は、[η]=0.77(dl/g)、分子量分布(Aw/An)は4.7、iso−ブチルトリエトキシシラン(外部電子供与体(III))を使用しない(比較例1)で得られるプロピレンの単独重合体の分子量分布(Aw/An=6.0)に対する分子量分布比(Aw/An比)は0.78であった。結果を表1及び2に示す。
【0118】
[実施例6]
固体触媒成分の量を8.11ミリグラムに変更したこと、外部電子供与体(III)をiso−ブチルトリエトキシシラン0.78ミリモルに変更したこと、以外は実施例1と同様に行いプロピレンの単独重合体のパウダーを得た。固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=24,000(g/g)であった。また、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合は、CXS=0.94(重量%)、重合体の極限粘度は、[η]=0.74(dl/g)、分子量分布(Aw/An)は4.9、iso−ブチルトリエトキシシラン(外部電子供与体(III))を使用しない(比較例1)で得られるプロピレンの単独重合体の分子量分布(Aw/An=6.0)に対する分子量分布比(Aw/An比)は0.82であった。結果を表1及び2に示す。
【0119】
[実施例7]
固体触媒成分の量を8.41ミリグラムに変更したこと、外部電子供与体(III)をメチルトリエトキシシランへ変更したこと以外は実施例1と同様に行いプロピレンの単独重合体のパウダーを得た。固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=20,800(g/g)であった。また、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合は、CXS=1.0(重量%)、重合体の極限粘度は、[η]=0.73(dl/g)、分子量分布(Aw/An)は5.8、メチルトリエトキシシラン(外部電子供与体(III))を使用しない(比較例1)で得られるプロピレンの単独重合体の分子量分布(Aw/An=6.0)に対する分子量分布比(Aw/An比)は0.97であった。結果を表1及び2に示す。
【0120】
[実施例8]
固体触媒成分の量を8.83ミリグラムに変更したこと、外部電子供与体(III)をメチルトリエトキシシラン0.26ミリモルに変更したこと、以外は実施例1と同様に行いプロピレンの単独重合体のパウダーを得た。固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=16,800(g/g)であった。また、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合は、CXS=1.0(重量%)、重合体の極限粘度は、[η]=0.66(dl/g)、分子量分布(Aw/An)は4.8、メチルトリエトキシシラン(外部電子供与体(III))を使用しない(比較例1)で得られるプロピレンの単独重合体の分子量分布(Aw/An=6.0)に対する分子量分布比(Aw/An比)は0.80であった。結果を表1及び2に示す。
【0121】
[実施例9]
固体触媒成分の量を6.50ミリグラムに変更したこと、シクロヘキシルトリエトキシシランの添加量を0.15ミリモルに変更したこと、テトラエトキシシランの添加量を0.05ミリモルに変更したこと、以外は実施例1と同様に行いプロピレンの単独重合体のパウダーを得た。固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=22,500(g/g)であった。また、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合は、CXS=1.1(重量%)、重合体の極限粘度は、[η]=0.73(dl/g)、分子量分布(Aw/An)は5.4、テトラエトキシシラン(外部電子供与体(III))を使用しない(比較例1)で得られるプロピレンの単独重合体の分子量分布(Aw/An=6.0)に対する分子量分布比(Aw/An比)は0.90であった。結果を表1及び2に示す。
【0122】
[実施例10]
固体触媒成分の量を8.43ミリグラムに変更したこと、シクロヘキシルトリエトキシシランの添加量を0.10ミリモルに変更したこと、テトラエトキシシランの添加量を0.10ミリモルに変更したこと、以外は実施例1と同様に行いプロピレンの単独重合体のパウダーを得た。固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=18,700(g/g)であった。また、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合は、CXS=1.2(重量%)、重合体の極限粘度は、[η]=0.74(dl/g)、分子量分布(Aw/An)は4.2、テトラエトキシシラン(外部電子供与体(III))を使用しない(比較例1)で得られるプロピレンの単独重合体の分子量分布(Aw/An=6.0)に対する分子量分布比(Aw/An比)は0.70であった。結果を表1及び2に示す。
【0123】
[実施例11]
固体触媒成分の量を7.63ミリグラムに変更したこと、シクロヘキシルトリエトキシシランの添加量を0.05ミリモルに変更したこと、テトラエトキシシランの添加量を0.15ミリモルに変更したこと、以外は実施例1と同様に行いプロピレンの単独重合体のパウダーを得た。固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=19,700(g/g)であった。また、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合は、CXS=1.2(重量%)、重合体の極限粘度は、[η]=0.55(dl/g)、分子量分布(Aw/An)は5.2、テトラエトキシシラン(外部電子供与体(III))を使用しない(比較例1)で得られるプロピレンの単独重合体の分子量分布(Aw/An=6.0)に対する分子量分布比(Aw/An比)は0.87であった。結果を表1及び2に示す。
【0124】
[比較例7]
固体触媒成分の量を7.24ミリグラムに変更したこと、外部電子供与体(II)をシクロヘキシルエチルジメトキシシラン0.15ミリモルへ変更したこと、テトラエトキシシランの添加量を0.05ミリモルへ変更したこと、以外は実施例1と同様に行いプロピレンの単独重合体のパウダーを得た。固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=21,700(g/g)であった。また、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合は、CXS=0.81(重量%)、重合体の極限粘度は、[η]=0.99(dl/g)、分子量分布(Aw/An)は9.9、テトラエトキシシラン(外部電子供与体(III))を使用しない(比較例3)で得られるプロピレンの単独重合体の分子量分布(Aw/An=6.8)に対する分子量分布比(Aw/An比)は1.46であった。結果を表1及び2に示す。
【0125】
[比較例8]
固体触媒成分の量を5.27ミリグラムに変更したこと、外部電子供与体(II)をシクロヘキシルエチルジメトキシシラン0.10ミリモルへ変更したこと、テトラエトキシシランの添加量を0.10ミリモルへ変更したこと、以外は実施例1と同様に行いプロピレンの単独重合体のパウダーを得た。固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=24,900(g/g)であった。また、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合は、CXS=0.89(重量%)、重合体の極限粘度は、[η]=0.94(dl/g)、分子量分布(Aw/An)は8.6、テトラエトキシシラン(外部電子供与体(III))を使用しない(比較例3)で得られるプロピレンの単独重合体の分子量分布(Aw/An=6.8)に対する分子量分布比(Aw/An比)は1.26であった。結果を表1及び2に示す。
【0126】
[実施例12]
固体触媒成分の量を7.66ミリグラムに変更したこと、シクロヘキシルトリエトキシシランの添加量を0.15ミリモルに変更したこと、外部電子供与体(III)をメチルトリエトキシシラン0.05ミリモルに変更したこと、以外は実施例1と同様に行いプロピレンの単独重合体のパウダーを得た。固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=19,100(g/g)であった。また、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合は、CXS=1.1(重量%)、重合体の極限粘度は、[η]=0.68(dl/g)、分子量分布(Aw/An)は6.0、メチルトリエトキシシラン(外部電子供与体(III))を使用しない(比較例1)で得られるプロピレンの単独重合体の分子量分布(Aw/An=6.0)に対する分子量分布比(Aw/An比)は1.00であった。結果を表1及び2に示す。
【0127】
[実施例13]
固体触媒成分の量を7.66ミリグラムに変更したこと、シクロヘキシルトリエトキシシランの添加量を0.10ミリモルに変更したこと、外部電子供与体(III)をメチルトリエトキシシラン0.10ミリモルに変更したこと、以外は実施例1と同様に行いプロピレンの単独重合体のパウダーを得た。固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=16,700(g/g)であった。また、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合は、CXS=1.1(重量%)、重合体の極限粘度は、[η]=0.61(dl/g)、分子量分布(Aw/An)は6.5、メチルトリエトキシシラン(外部電子供与体(III))を使用しない(比較例1)で得られるプロピレンの単独重合体の分子量分布(Aw/An=6.0)に対する分子量分布比(Aw/An比)は1.08であった。結果を表1及び2に示す。
【0128】
以上のように、実施例1〜13で使用されたα−オレフィン重合触媒は、比較例1〜8で使用されたα−オレフィン重合触媒よりも、同一水素添加量で[η]の低いポリプロピレンを生成し、また、重合活性と立体規則性のバランスに優れていた。すなわち、本発明のα−オレフィン重合触媒およびα−オレフィン重合体の製造方法によれば、水素による分子量制御性に優れた高活性のα−オレフィン重合触媒が得られ、高立体規則性のα−オレフィン重合体が得られる。
【0129】
【表1】

【0130】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(1)〜(3)からなるα−オレフィン重合触媒の製造方法。
(1)Si−O結合を有するケイ素化合物の存在下において、下式(I)で表されるチタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元し、固体触媒成分前駆体を生成させる工程;
(2)該固体触媒成分前駆体とハロゲン化化合物と内部電子供与体とを接触させて、チタン原子、マグネシウム原子およびハロゲン原子を含有する固体触媒成分を生成させる工程;
(3)該固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、下式(II)で表される外部電子供与体と、下式(III)で表される外部電子供与体とを接触させる工程;


式(I)中、R1は炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基を表し;X1はハロゲン原子または炭素原子数1〜20のハイドロカルビルオキシ基を表し、全てのX1は同一か異なり;aは1〜20の数を表す;
2Si(OC (II)
式(II)中、R2はSiに結合する炭素原子が2級炭素原子である炭素原子数3〜20のハイドロカルビル基を表す。
Si(OC4−n・・・(III)
式(III)中、RはSiに結合する炭素原子が1級炭素である炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基を表し、nは0あるいは1の数を表す。
【請求項2】
式(II)で表される外部電子供与体の使用量に対する、式(III)で表される外部電子供与体の使用量が0.1〜5.0(モル比)である請求項1記載のα―オレフィン重合用触媒。
【請求項3】
は、Siに結合する炭素原子が1級炭素である炭素原子数1〜3のハイドロカルビル基である請求項1または2記載のα―オレフィン重合用触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のα―オレフィン重合用触媒を用いるα−オレフィン重合体の製造方法。
【請求項5】
(3)において外部電子供与体(III)を使用しないα―オレフィン重合用触媒を用いて生成するホモポリプロピレンの分子量分布に対する、同一条件下で生成するホモプロピレンの分子量分布の比が1.1以下である請求項4記載のα―オレフィン重合体の製造方法。

【公開番号】特開2011−184537(P2011−184537A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50297(P2010−50297)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】