α−2アドレナリン受容体アゴニスト含有生分解性眼内インプラント
【課題】 長期間にわたって、かつ負の副作用をほとんどまたは全く生じずに、治療薬を持続的または制御的速度で放出することができる眼内移植可能な眼内インプラントを提供する。
【解決手段】 ブリモニジン又は酒石酸ブリモニジンと生分解性ポリマーマトリックスとを含む、ロッド状又はウエハ状の生分解性眼内インプラントであって、生分解性ポリマーマトリックスは、ブリモニジン又は酒石酸ブリモニジンを眼内インプラントから持続的に放出し、ブリモニジン又は酒石酸ブリモニジンはインプラントの重量の20〜40%を占め、ポリマーマトリックスは、第一生分解性ポリマーと、第二生分解性ポリマーとの重量比1:1の混合物を含む生分解性眼内インプラント。
【解決手段】 ブリモニジン又は酒石酸ブリモニジンと生分解性ポリマーマトリックスとを含む、ロッド状又はウエハ状の生分解性眼内インプラントであって、生分解性ポリマーマトリックスは、ブリモニジン又は酒石酸ブリモニジンを眼内インプラントから持続的に放出し、ブリモニジン又は酒石酸ブリモニジンはインプラントの重量の20〜40%を占め、ポリマーマトリックスは、第一生分解性ポリマーと、第二生分解性ポリマーとの重量比1:1の混合物を含む生分解性眼内インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、患者の眼を治療する器具および方法、特に、インプラントを配置した眼に治療薬の長時間放出を与える眼内インプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
ブリモニジン、5−ブロモ−6−(2−イミダゾリジニリデンアミノ)キノキサリンは、α−2選択性アドレナリン受容体アゴニストであり、房水生成を減少し、ブドウ膜強膜房水流出を増すことにより、開放隅角緑内障を処置するのに有効である。ブリモニジンは、2つの化合物形、酒石酸ブリモニジンおよびブリモニジン遊離塩基として、入手できる。酒石酸ブリモニジン(Alphagan P(登録商標))は、緑内障治療用にAllergan から市販されている。局所投与眼用ブリモニジン製剤、0.15%Alphagan P(登録商標)(カリフォルニア州Irvine、Allergan)は、開放隅角緑内障の治療のために、現在市販されている。酒石酸ブリモニジンの水への溶解度は、34mg/mLであり、ブリモニジン遊離塩基の水への溶解度は、非常に小さい。
【0003】
最近の研究によれば、ブリモニジンは、網膜および/または視神経においてα−2アドレナリン受容体を活性化することにより、損傷された網膜神経節神経細胞の生存を促進することができるとされている。例えば、ブリモニジンは、虚血および緑内障の数種のモデルにおいて、損傷されたニューロンを更なる損傷から保護できる。例えば、米国特許第5856329号、同第6194415号、同第6248741号および同第6465464号を参照されたい。
【0004】
緑内障誘発神経節細胞変性は、失明の主要な原因である。このことは、ブリモニジンが、神経防護作用および眼圧低下が治療計画の重要な成果である緑内障管理に対する新しい治療手段に使用できることを示している。しかしながら、ブリモニジンにより視神経を保護するためには、ブリモニジンが、眼の後部領域に治療レベルで接近する必要がある。ブリモニジンを後眼房に投与するのに現在使用できる技術は、この問題に対しては十分でない。
【0005】
眼への配置用の生体適合性インプラントは、下記のような多くの特許に開示されている:米国特許第4521210号、第4853224号、第4997652号、第5164188号、第5443505号、第5501856号、第5766242号、第5824072号、第5869079号、第6074661号、第6331313号、第6369116号および第6699493号。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5856329号
【特許文献2】米国特許第6194415号
【特許文献3】米国特許第6248741号
【特許文献4】米国特許第6465464号
【特許文献5】米国特許第4521210号
【特許文献6】米国特許第4853224号
【特許文献7】米国特許第4997652号
【特許文献8】米国特許第5164188号
【特許文献9】米国特許第5443505号
【特許文献10】米国特許第5501856号
【特許文献11】米国特許第5766242号
【特許文献12】米国特許第5824072号
【特許文献13】米国特許第5869079号
【特許文献14】米国特許第6074661号
【特許文献15】米国特許第6331313号
【特許文献16】米国特許第6369116号
【特許文献17】米国特許第6699493号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
長期間にわたって、かつ負の副作用をほとんどまたは全く生じずに、治療薬を持続的または制御的速度で放出することができる眼内移植可能な薬剤送達システム、例えば眼内インプラント、およびそのようなシステムを使用する方法を提供することが好都合である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、例えば1つまたはそれ以上の所望の治療効果を得るための、眼への長期間または持続的薬物放出用の新規薬剤送達システムを提供する。該薬剤送達システムは、眼に配置しうるインプラントまたはインプラント要素の形態である。本発明のシステムは、好都合にも、1つまたはそれ以上の治療薬の長い放出時間を与える。従って、眼にインプラントを配置された患者は、薬剤の付加的投与を必要とせずに、長期間または延長された期間にわたって、治療量の薬剤を受ける。例えば、患者は、比較的長い期間にわたって、例えば、インプラントを配置されてから、少なくとも約1週間程度、例えば約2ヶ月〜約6ヶ月間にわたって、実質的に一貫したレベルの治療的活性剤を、一貫した眼の治療のために得ることができる。そのような長い放出時間は、優れた治療効果を得ることを促進する。
【0009】
本明細書の開示に従った眼内インプラントは、治療成分と、治療成分に付随する薬剤放出持続成分とを含む。本発明によれば、治療成分は、α−2アドレナリン受容体アゴニストを含む、またはそれから本質的に成る、またはそれのみから成る。α−2アドレナリン受容体アゴニストは、例えば、他のタイプのアドレナリン受容体(例えば、α−1アドレナリン受容体)に比べ、α−2アドレナリン受容体と結合することにより、α−2アドレナリン受容体を選択的に活性化するアゴニストまたは薬剤であり得る。選択的活性化は、異なる条件下で達成されるが、好ましくは、選択的活性化は、生理学的条件下、例えば、ヒトまたは動物患者の眼に関連する条件下で、決定される。薬剤放出持続成分が、インプラントが配置された眼へのα−2アドレナリン受容体アゴニストの放出を持続させるために、治療成分に付随する。α−2アドレナリン受容体アゴニストは、インプラントが眼に配置された後、約1週間よりも長い期間、眼に放出され、眼の血管障害、例えば血管閉塞を防止または軽減するのに有効である。
【0010】
1つの態様において、眼内インプラントは、α−2アドレナリン受容体アゴニストおよび生分解性ポリマーマトリックスを含む。α−2アドレナリン受容体アゴニストは、眼の血管閉塞を軽減または防止するのに十分な期間、インプラントからのアゴニストの放出を持続するのに有効な速度で分解する生分解性ポリマーマトリックスに付随される。眼内インプラントは、生分解性または生体分解性であり、1週間を超える長期間、例えば、約3ヶ月間、または約6ヶ月以上の期間、α−2アドレナリン受容体アゴニストの持続的放出を可能にする。あるインプラントでは、α−2アドレナリン受容体アゴニストは、約30〜35日間またはそれより短い期間、放出される。別のインプラントでは、α−2アドレナリン受容体アゴニストは、約40日間またはそれより長い期間、放出される。
【0011】
上記インプラントの生分解性ポリマー成分は、少なくとも1種の生分解性ポリマーが64キロダルトン(kD)未満の分子量を有するポリ乳酸ポリマーである生分解性ポリマーの混合物であってよい。加えてまたは代えて、上記インプラントは、ポリ乳酸の第一生分解性ポリマーと、異なるポリ乳酸の第二生分解性ポリマーとの混合物を含んでもよい。更に、上記インプラントは、各生分解性ポリマーが約0.3dl/g〜約1.0dl/gの範囲の固有粘度を有する異なる生分解性ポリマーの混合物を含んでもよい。
【0012】
本発明のインプラントのα−2アドレナリン受容体アゴニストは、キノキサリン誘導体、または眼症状を治療するのに有効である他のアゴニストを包含する。適当なキノキサリン誘導体の例は、ブリモニジンまたは酒石酸ブリモニジンである。加えて。本発明のインプラントの治療成分は、眼症状を治療するのに有効であり得る付加的な異なる1種以上の治療剤を含み得る。
【0013】
本発明のインプラントの製造法は、α−2アドレナリン受容体アゴニストと、1つまたはそれ以上の生分解性ポリマーとを組み合わすかまたは混合することを含む。次に、該混合物を押し出すかまたは圧縮して、単一組成物を形成しうる。次に、単一組成物を処理して、患者の眼に配置するのに好適な個々のインプラントを形成しうる。
【0014】
インプラントは、眼の前部域または後部域に影響する眼の血管障害のような症状を含む種々の眼症状を治療するために、眼の領域に配置され得る。例えば、インプラントは、血管閉塞に関連する症状(これに限定されない)を含む多数の眼症状を治療するのに使用できる。
【0015】
本発明のキットは、1つまたはそれ以上の本発明のインプラント、およびインプラントの使用説明書を含んで成ってよい。例えば、使用説明書は、患者へのインプラントの投与の仕方、およびインプラントで治療しうる症状のタイプを説明しうる。
【0016】
また、本発明は、視力を向上するための生分解性眼内インプラントも包含する。このインプラントは、α−2アドレナリン受容体アゴニストおよび生分解性ポリマーを含む。インプラントは、インプラントを眼の硝子体内に配置すると、インプラントが配置された眼の視力を向上するのに有効な量で、ポリマーからα−2アドレナリン受容体アゴニストを放出する。α−2アドレナリン受容体アゴニストは、キノキサリン、例えば、(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリン、5−ブロモ−6−(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリン、これらの誘導体またはこれらの混合物であってよい。従って、α−2アドレナリン受容体アゴニストは、ブリモニジンまたはその塩若しくはそれらの混合物であり得る。例えば、α−2アドレナリン受容体アゴニストは、酒石酸ブリモニジンであり得る。
【0017】
α−2アドレナリン受容体アゴニストは、インプラントの生分解性ポリマー内に分散され得る。生分解性ポリマーは、ポリ乳酸の第一生分解性ポリマーと、異なるポリ乳酸の第二生分解性ポリマーとを含むことができる。ポリマーは、インプラントが眼の硝子体に配置された時点から、1ヶ月を超える、または40日を超える、または35日より短い期間、インプラントからのα−2アドレナリン受容体アゴニストの放出を維持するのに有効な速度で、薬剤を放出する。
【0018】
本発明の態様は、α−2アドレナリン受容体アゴニストおよび生分解性ポリマー成分の混合物を押出して、インプラントが配置されている眼の視力を向上するのに有効な期間、インプラントからα−2アドレナリン受容体アゴニストの放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する、生分解性物質を形成する工程を含んで成る生分解性眼内インプラントの製造方法である。
【0019】
本発明の更なる態様は、眼の硝子体内に、生分解性ポリマーに付随したα−2アドレナリン受容体アゴニストを含む生分解性眼内インプラントを配置することにより、視力を向上または維持する方法である。この方法は、以下のような眼症状を治療するのに使用することができる:
黄斑変性症、黄斑浮腫、網膜動脈閉塞性疾患、網膜中心静脈閉塞、播種性血管内凝固障害、網膜静脈分枝閉塞、高血圧性眼底変化、眼球虚血症候群、網膜動脈微小動脈瘤、半網膜静脈閉塞、網膜中心動脈閉塞、網膜動脈分岐閉塞、頚動脈疾患(cad)、イールズ病、糖尿病関連脈管障害、非滲出性加齢性黄斑変性症、滲出性加齢性黄斑変性症、脈絡膜新生血管形成、糖尿病性網膜症、急性黄斑性視神経網膜障害、中心性漿液性脈絡網膜症、嚢胞様黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、急性多発性小板状色素上皮症、ベーチェット病、散弾網脈絡膜症、梅毒、ライム病、結核、トキソプラスマ症、中間部ブドウ膜炎、多病巣性脈絡膜炎、多発一過性白点症候群(MEWDS)、眼サルコイドーシス、後部強膜炎、ほ行性脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、フォークト・小柳・原田症候群、コーツ病、傍中心窩毛細血管拡張症、乳頭静脈炎、霜状分枝血管炎、鎌状赤血球網膜症および他の異常血色素症、血管線条、家族性滲出性硝子体網膜症、交感性眼炎、ブドウ膜炎の網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー、光線力学療法、光凝固、手術時低灌流、放射線網膜症、骨髄移植網膜症、増殖性硝子体網膜症および網膜前膜、増殖性糖尿病性網膜症、眼ヒストプラスマ症、眼トキソカラ症、推定眼ヒストプラスマ症候群、眼内炎、トキソプラスマ症、HIV感染症関連網膜疾患、HIV感染症関連脈絡膜疾患、HIV感染症関連ブドウ膜炎疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性網膜外層壊死、真菌類網膜疾患、眼球梅毒、眼球結核、びまん性片側性亜急性神経網膜炎、ハエウジ病、色素性網膜炎、網膜障害関連系統的障害、先天性静止夜盲症、コーンジストロフィー、シュタルガルト病および眼底黄点症、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー、X染色体網膜分離症、ソーズビー眼底ジストロフィー、良性中心性黄斑症、Bietti結晶質ジストロフィー、弾性線維偽黄色腫、網膜剥離、黄斑性円孔、巨大網膜裂孔、腫瘍関連網膜疾患、RPEの先天性肥大、後部ブドウ膜メラノーマ、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜腫瘍転移、網膜と網膜色素上皮との混合型過誤腫、網膜芽細胞腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜アストロチトーム、眼内リンパ系腫瘍、斑点状内脈絡膜症、急性後極部多発性小板状色素上皮症、近視性網膜変質および急性網膜色素上皮症。
【0020】
明らかに、上記方法は、正常な眼の視力を向上できる。正常な眼は、罹患していないまたは損傷を受けていない眼である。例えば、この方法は、正常な眼において、視力を(視覚の鋭敏さを改良することによって)約56%まで向上できる。この方法は、眼症状を有する眼においても、視力を向上できる。例えば、この方法は、眼症状を有する眼の視力を約23%まで向上できる。眼症状は、血管障害であり得る。あるいは、眼症状は、高眼圧によるもの、および/または網膜虚血性障害であり得る。
【0021】
インプラントは、インプラントを硝子体内に配置すると、約90日間、ポリマーからα−2アドレナリン受容体アゴニストを放出することができる。重要なことは、α−2アドレナリン受容体アゴニストが、硝子体に保持されるよりも長い期間、網膜に保持されることである。本発明の1つの態様は、視力を向上、維持、回復または矯正する方法であって、生分解性ポリマーに付随したブロモニジンを含む生分解性眼内インプラントを眼の硝子体内に配置することにより、視力を向上、維持、回復または矯正する方法である。
【0022】
本明細書に記載する個々のおよび全ての特徴、ならびにそのような特徴の2つまたはそれ以上の個々のおよび全ての組合せは、そのような組合せに含まれる特徴が互いに矛盾しないことを条件として、本発明の範囲に含まれる。さらに、任意の特徴または特徴の組合せは、本発明の任意の態様から特に除外しうる。
【0023】
本発明の付加的局面および利点は、特に添付の図面に関連して考慮する場合に、以下の説明および請求の範囲に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】0.9%リン酸塩緩衝化塩水中、37℃で測定した、酒石酸ブリモニジン含有生分解性インプラントについての累積放出プロフィールを示すグラフである。
【図2】生分解性ポリマーの異なる組み合わせを使用した遊離ブリモニジン含有生分解性インプラントについての累積放出プロフィールを示す、図1と類似のグラフである。
【図3】異なる濃度の酒石酸ブリモニジンを有する酒石酸ブリモニジン含有生分解性インプラントについての累積放出プロフィールを示す、図1と類似のグラフである。
【図4】異なる濃度の酒石酸ブリモニジンおよびポリマーブレンドを有する酒石酸ブリモニジン含有生分解性インプラントについての累積放出プロフィールを示す、図3と類似のグラフである。
【図5】異なる濃度の酒石酸ブリモニジンおよびポリマーブレンドを有するブリモニジン遊離塩基含有生分解性インプラントについての累積放出プロフィールを示す、図4と類似のグラフである。
【図6】異なる濃度の酒石酸ブリモニジンおよびポリマーブレンドを有する酒石酸ブリモニジン含有インプラント(ウエハ)についての累積放出プロフィールを示すグラフである。
【図7】異なる濃度の酒石酸ブリモニジンおよびポリマーブレンドを有するブリモニジン遊離塩基含有生分解性インプラントについての累積放出プロフィールを示す、図6と類似のグラフである。
【図8】異なる濃度の酒石酸ブリモニジンおよびポリマーブレンドを有するブリモニジン遊離塩基含有生分解性インプラントについての累積放出プロフィールを示す、図4と類似のグラフである。
【図9】ブリモニジン遊離塩基含有ウエハインプラントについての累積放出プロフィールを示す、図5と類似のグラフである。
【図10】酒石酸ブリモニジン含有生分解性インプラントまたは偽薬インプラントを投与したサルにおける、時間に対する、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)後の血管造影中のナトリウムフルオレセインの充填における遅延を示すグラフである。
【図11】酒石酸ブリモニジン含有生分解性インプラントまたは偽薬インプラントを投与したBRVOを罹患しているサルにおける、時間の関数としての中心窩厚さのグラフである。
【図12】酒石酸ブリモニジン含有生分解性インプラントまたは偽薬インプラントを投与したBRVOを罹患しているサルにおける、時間の関数としての眼圧のグラフである。
【図13】酒石酸ブリモニジン含有生分解性インプラントまたは偽薬インプラントを投与したBRVOを罹患しているサルにおける、時間の関数としての多発性ERGに対する優性/劣性応答割合のグラフである。
【図14】酒石酸ブリモニジン含有生分解性インプラントまたは偽薬インプラントを投与したBRVOを罹患しているサルにおける、時間の関数としての血流量のグラフである。
【図15】ブリモニジンインプラントまたは偽薬インプラント(X軸)のいずれかを硝子体内投与した後2週間での、正常なウサギの右目における視力に対する効果を(未処置(対照)左目の視力に対する割合として)示すロッドグラフである。
【図16】右目へのVEGF誘起損傷後1週間で同じ右目にブリモニジンインプラントまたは偽薬インプラント(X軸)のいずれかを投与してから3週間後の視力に対する効果を(未処置(対照)左目の視力に対する割合として)示すロッドグラフである。
【図17】右目への虚血性損傷誘発後11ヶ月で同じ右目にブリモニジンインプラントまたは偽薬インプラント(X軸)のいずれかを投与してから12週間後の視力に対する効果を(未処置(対照)左目の視力に対する割合として)示すロッドグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書に記載するように、1つまたはそれ以上の眼内インプラントの使用による治療薬の制御および持続投与は、望ましくない眼症状の治療を向上させることができる。インプラントは、医薬的に許容されるポリマー組成物を含んで成り、1つまたはそれ以上の医薬的に活性な薬剤、例えばα−2アドレナリン受容体アゴニストを、長期間にわたって放出するように配合される。インプラントは、1つまたはそれ以上の望ましくない眼症状を、治療または予防するために、眼の領域に直接的に、治療有効量の1つまたはそれ以上の薬剤を与えるのに有効である。従って、患者を、繰り返しの注入、または自己投与点眼剤の場合の、単に限定されたバーストの活性剤への暴露による非効率的な治療に付すのではなく、単一投与によって、治療薬が、それらを必要とする部位で使用され、しかも長期間にわたって維持される。
【0026】
本明細書の開示による眼内インプラントは、治療成分、および治療成分に付随する薬剤放出持続成分を含んで成る。本発明によれば、治療成分は、α−2アドレナリン受容体アゴニストを含んで成るか、またはそれから本質的に成るか、またはそれのみから成る。薬剤放出持続成分は、インプラントを配置した眼への治療有効量のα−2アドレナリン受容体アゴニストの放出を持続させるために、治療成分に付随している。治療有効量のα−2アドレナリン受容体アゴニストは、インプラントを眼に配置してから約1週間より長い期間にわたって放出される。
【0027】
定義
本発明の説明のために、用語の文脈が異なる意味を示す場合を除いて、このセクションで定義されるように以下の用語を使用する。
【0028】
本明細書において使用する場合、「眼内インプラント」は、眼に配置されるように構成され、サイズ設定され、またはその他の設計を施された器具または要素を意味する。眼内インプラントは、一般に、眼の生理学的条件に生体適合性であり、不利な副作用を生じない。眼内インプラントは、視覚を損なわずに眼に配置しうる。
【0029】
本明細書において使用する場合、「治療成分」は、眼の医学的症状を治療するのに使用される1つまたはそれ以上の治療薬または物質を含んで成る眼内インプラントの部分を意味する。治療成分は、眼内インプラントの個別の領域であってもよく、またはインプラント全体に均一に分布させてもよい。治療成分の治療薬は、一般に、眼科的に許容され、インプラントを眼に配置した際に不利な反応を生じない形態で使用される。
【0030】
本明細書において使用する場合、「薬剤放出持続成分」は、インプラントの治療薬の持続放出を与えるのに有効な、眼内インプラントの部分を意味する。薬剤放出持続成分は、生分解性ポリマーマトリックスであってもよく、または治療成分を含んで成るインプラントのコア領域を覆う被覆物であってもよい。
【0031】
本明細書において使用する場合、「付随する」は、混合するか、分散するか、結合するか、覆うか、または包囲することを意味する。
【0032】
本明細書において使用する場合、「眼の領域」または「眼の部位」は、眼の前区および後区を含む眼球の任意領域を一般に意味し、かつ、眼球に見出される任意の機能的(例えば、視覚用)または構造的組織、または眼球の内部または外部に部分的にまたは完全に並んだ組織または細胞層を一般に包含するが、それらに限定されない。眼領域における眼球領域の特定の例は、前眼房、後眼房、硝子体腔、脈絡膜、脈絡膜上腔、結膜、結膜下腔、強膜外隙、角膜内隙、角膜上隙、強膜、毛様体輪、外科的誘導無血管領域、網膜黄斑および網膜である。
【0033】
本明細書において使用する場合、「眼の症状」は、眼、または眼の部分または領域の1つを冒しているか、またはそれに関係している疾患、不快または症状である。一般的に言えば、眼は、眼球、および眼球を構成している組織および流体(体液)、眼周囲筋(例えば、斜筋および直筋)、ならびに眼球の中かまたは眼球に近接した視神経の部分を包含する。
【0034】
前眼症状は、水晶体包の後壁または毛様体筋の前方に位置する、前眼(即ち、眼の前方)領域または部位、例えば、眼周囲筋、眼瞼または眼球組織または流体を冒しているか、またはそれに関係している疾患、不快または症状である。従って、前眼症状は、結膜、角膜、前眼房、虹彩、後眼房(網膜の後ろであるが、水晶体包の後壁の前)、水晶体または水晶体包、および前眼領域または部位を血管新生化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒しているかまたはそれに関係している。
【0035】
従って、前眼症状は、下記のような疾患、不快または症状を包含しうる:無水晶体;偽水晶体;乱視;眼瞼痙攣;白内障;結膜疾患;結膜炎;角膜疾患;角膜潰瘍;眼乾燥症候群;眼瞼疾患;涙器疾患;涙管閉塞;近視;老眼;瞳孔障害;屈折障害および斜視。緑内障も前眼症状と考えられるが、その理由は、緑内障治療の臨床目的が、前眼房における水性液の高圧を減少させる(即ち、眼内圧を減少させる)ことでありうるからである。
【0036】
後眼症状は、後眼領域または部位、例えば、脈絡膜または強膜(水晶体包の後壁全体にわたる平面の後方位置)、硝子体、硝子体腔、網膜、視神経(即ち、視神経円板)、ならびに後眼領域または部位を血管新生化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒しているかまたはそれに関係している疾患、不快または症状である。
【0037】
従って、後眼症状は、下記のような疾患、不快または症状を包含しうる:急性斑状視神経網膜疾患;ベーチェット病;脈絡膜新生血管形成;糖尿病性ブドウ膜炎;ヒストプラスマ症;感染症、例えば、真菌またはウイルスによる感染症;黄斑変性、例えば、急性黄斑変性、非滲出性老化関連黄斑変性および滲出性老化関連黄斑変性;浮腫、例えば、黄斑浮腫、類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫;多病巣性脈絡膜炎;後眼部位または領域を冒す眼の外傷;眼腫瘍;網膜障害、例えば、網膜中心静脈閉鎖、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜動脈閉鎖性疾患、網膜剥離、ブドウ膜炎網膜疾患;交感性眼炎;フォークト−コヤナギ−ハラダ(VKH)症候群;ブドウ膜拡散;眼のレーザー治療によって生じたかまたは影響を受けた後眼症状;光ダイナミック療法によって生じたかまたは影響を受けた後眼症状;光凝固、放射線網膜症、網膜上膜疾患、網膜枝静脈閉鎖、前虚血性視神経症(anterior ischemic optic neuropathy)、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、色素性網膜炎および緑内障。緑内障は、その治療目標が、網膜細胞または視神経細胞の損傷または欠損による視力低下を予防するか、または視力低下の発生を減少させること(即ち、神経保護)であるので、後眼症状と考えることができる。
【0038】
「生分解性ポリマー」という用語は、生体内で分解する1つまたはそれ以上のポリマーを意味し、1つまたはそれ以上のポリマーの侵食は、治療薬の放出と同時かまたはそれに続いて、経時的に起こる。厳密に言えば、ポリマーの膨潤によって薬剤を放出する作用をするメチルセルロースのようなヒドロゲルは、「生分解性ポリマー」という用語から特に除外される。「生分解性」および「生体内分解性」という用語は、同意義であり、本明細書において互換的に使用される。生分解性ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、または3種類以上のポリマー単位を有するポリマーであってよい。
【0039】
本明細書において使用する場合、「治療する」、「治療すること」または「治療」という用語は、眼症状、眼の傷害または損傷の減少または回復または予防、または傷害または損傷を受けた眼組織の治癒を促進することを意味する。
【0040】
本明細書において使用する場合、「治療有効量」という用語は、眼または眼領域に有意な負のまたは不利な副作用を生じずに、眼症状を治療するか、眼傷害または損傷を減少させるかまたは予防するのに必要とされる薬剤のレベルまたは量を意味する。
【0041】
様々な期間にわたって薬剤装入量を放出することができる眼内インプラントが開発されている。これらのインプラントは、眼、例えば眼の硝子体に挿入された場合に、治療レベルのα−2アドレナリン受容体アゴニストを、長期間にわたって(例えば、約1週間またはそれ以上)与える。開示されるインプラントは、眼症状、例えば後眼症状を治療するのに有効である。
【0042】
本発明の1つの態様において、眼内インプラントは、生分解性ポリマーマトリックスを含んで成る。生分解性ポリマーマトリックスは、薬剤放出持続成分の1つのタイプである。生分解性ポリマーマトリックスは、生分解性眼内インプラントを形成するのに有効である。生分解性眼内インプラントは、生分解性ポリマーマトリックスを伴うα−2アドレナリン受容体アゴニストを含んで成る。マトリックスは、インプラントを眼の領域または眼の部位、例えば眼の硝子体に配置してから約1週間より長い期間にわたって、所定量のα−2アドレナリン受容体アゴニストの放出を持続させるのに有効な速度で分解する。
【0043】
インプラントのα−2アドレナリン受容体アゴニストは、典型的には、α−1アドレナリン受容体に比べ、α−2アドレナリン受容体を選択的に活性化する薬剤である。あるインプラントでは、α−2アドレナリン受容体アゴニストは、α−2アドレナリン受容体のサブタイプを選択的に活性化する。例えば、アゴニストは、ある条件下、例えば生理学的条件下で、α−2a、α−2b、またはα−2c受容体の1つ以上を選択的に活性化し得る。他の条件では、インプラントのアゴニストは、α−2アドレナリン受容体サブタイプに対して選択的ではないことがある。アゴニストは、受容体への結合または他のメカニズムにより、受容体を活性化できる。
【0044】
あるインプラントでは、α−2アドレナリン受容体アゴニストは、キノキサリン誘導体である。本発明のインプラントにおいて有用なキノキサリン誘導体は、以下の式を有するキノキサリン誘導体またはその医薬的に許容される酸付加塩、およびそれらの混合物である:
【化1】
(R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、1〜4個の炭素原子を含むアルキル基および1〜4個の炭素原子を含むアルコキシ基からなる群から選択される。R2は、好ましくはメチル基である。2−イミダゾリン−2−イルアミノ基は、キノキサリン環の5-、6-、7-および8-位のいずれか、好ましくは6-位に存在する。R3、R4およびR5は、それぞれ、残りのキノキサリン環の5-、6-、7-または8-位に存在し、独立して、Cl、Br、水素および1〜3個の炭素原子を含むアルキル基からなる群から選択される。R3は、好ましくはキノキサリン環の5-位に存在し、R4およびR5は、好ましくは共に水素である。特に有用な態様では、R3はBrである。)
【0045】
少なくとも1つのインプラントでは、R1は水素であり、R2は1〜4個の炭素原子を含むアルキル基から選択される。R3は、有利には、キノキサリン環の5-位に存在し、水素及び1〜3個の炭素原子を含むアルキル基から選択される。本発明で有用な化合物の1つまたはそれ以上の制約に従う全ての立体異性体、互変異性体およびそれらの混合物が、本発明の範囲に包含される。
【0046】
本発明化合物の医薬的に許容される酸付加塩は、医薬的に許容される陰イオンを含有する非毒性付加塩を形成する酸から形成される酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、沃化水素酸塩、硫酸塩または二硫酸塩、燐酸塩または酸性燐酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、蓚酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、糖酸塩およびp−トルエンスルホン酸塩である。
【0047】
より特別なインプラントでは、キノキサリン誘導体は、以下の式を有する:
【化2】
【0048】
さらなるインプラントでは、α−2アドレナリン受容体アゴニストは、下記の式を有する塩として供給される:
【化3】
【0049】
上記の塩は、酒石酸ブリモニジン(AGN 190342-F, 酒石酸5−ブロモ−6−(2−イミダゾリジニリデンアミノ)キノキサリン)として知られており、商品名Alphagan P(登録商標)でAllergan から市販されている。ブリモニジン(有機塩基)は、ブリモニジン酒石酸塩またはブリモニジン遊離塩基のいずれかで、入手できる。酒石酸塩は、種々の液体媒体に、遊離塩基よりもよく溶解する。酒石酸塩および遊離塩基は両方とも、化学的に安定であり、200℃より高い融点を有しているので、両方とも、本発明のインプラントを製造するのに適している。
【0050】
従って、インプラントは、酒石酸ブリモニジンのようなブリモニジン塩、ブリモニジン遊離塩基、またはこれらの混合物を含む、またはそれから本質的に成る、またはそれのみから成る治療成分を含み得る。
【0051】
α−2アドレナリン受容体アゴニストは、粒状または粉末形態であってよく、生分解性ポリマーマトリックスに閉じ込めうる。一般に、α−2アドレナリン受容体アゴニスト粒子は、約3000ナノメートル未満の有効平均粒度を有する。あるインプラントにおいて、粒子は、約3000ナノメートル未満のオーダーの有効平均粒度を有しうる。例えば、粒子は、約500ナノメートル未満の有効平均粒度を有しうる。他のインプラントにおいて、粒子は、約400ナノメートル未満の有効平均粒度、さらに他の態様においては、約200ナノメートル未満の粒度を有しうる。
【0052】
インプラントのα−2アドレナリン受容体アゴニストは、好ましくは、インプラントの重量に対して約10%〜90%である。より好ましくは、α−2アドレナリン受容体アゴニストは、インプラントの重量に対して約20%〜約80%である。好ましい態様において、α−2アドレナリン受容体アゴニストは、インプラントの重量の約20%(例えば、15%〜25%)を占める。他の態様において、α−2アドレナリン受容体アゴニストは、インプラントの重量の約50%を占める。
【0053】
インプラントに使用される好適なポリマー材料または組成物は、眼に適合性、即ち生体適合性であり、それによって、眼の機能または生理機能に実質的障害を生じない材料を包含する。そのような材料は、好ましくは少なくとも部分的に、より好ましくは実質的に完全に生分解性または生体内分解性である。
【0054】
有用なポリマー材料の例は、有機エステルおよび有機エーテルから誘導され、かつ/またはそれらを含有する材料であって、分解した際に、生理学的に許容される分解生成物を生じる材料(モノマーを含む)であるが、それらに限定されない。無水物、アミド、オルトエスエル等から誘導され、かつ/またはそれらを含有するポリマー材料を、単独で、または他のモノマーと組み合わせて、使用してもよい。ポリマー材料は、付加または縮合重合体、好都合には縮合重合体であってよい。ポリマー材料は、架橋または非架橋、例えば軽架橋以下であってよく、例えば、ポリマー材料の約5%未満または約1%未満が架橋されている。多くの場合、炭素および水素の他に、ポリマーは、酸素および窒素の少なくとも1つ、好都合には酸素を含有する。酸素は、オキシ、例えばヒドロキシまたはエーテル、カルボニル、例えば非オキソ−カルボニル、例えばカルボン酸エステル等として存在しうる。窒素は、アミド、シアノおよびアミノとして存在しうる。制御薬剤送達のための被包形成を記載しているHeller, Biodegradable Polymers in Controlled Drug Delivery, CRC Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 第1巻, CRC Press, Boca Raton, FL 1987, p.39-90に示されているポリマーを、本発明のインプラントに使用しうる。
【0055】
他に関心がもたれるものは、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)、および多糖類である。関心がもたれるポリエステルは、D−乳酸、L−乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸、ポリカプロラクトンおよびそれらの組合せのポリマーを包含する。一般に、L−ラクテートまたはD−ラクテートを使用することによって、ゆっくり侵食されるポリマーまたはポリマー材料が得られ、一方、ラクテートラセミ体を使用することによって、侵食が実質的に促進される。
【0056】
有用な多糖類の例は、アルギン酸カルシウム、および官能化セルロース、特に、水不溶性であることを特徴とし、分子量が例えば約5kD〜500kDの、カルボキシメチルセルロースエステルであるが、それらに限定されない。
【0057】
関心がもたれる他のポリマーは、生体適合性であり、かつ生分解性および/または生体内分解性の場合もある、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエーテルおよびそれらの組合せであるが、それらに限定されない
【0058】
本発明に使用されるポリマーまたはポリマー材料のいくつかの好ましい特徴は、生体適合性、治療成分との適合性、本発明の薬剤送達システムの製造におけるポリマーの使い易さ、少なくとも約6時間の、好ましくは約1日より長い、生理環境における半減期、硝子体の粘度を有意に増加させないこと、および水不溶性を包含しうる。
【0059】
マトリックスの形成のために含有される生分解性ポリマー材料は、酵素的または加水分解的に不安定になりやすいことが望ましい。水溶性ポリマーを、加水分解的または生分解的に不安定な架橋で架橋させて、有用な水不溶性ポリマーが得られる。安定性の程度は、モノマーの選択、ホモポリマーまたはコポリマーを使用するか、ポリマー混合物の使用、ポリマーが末端酸根を有するか、に依存して広く変化させることができる。
【0060】
インプラントに使用されるポリマー組成物の相対平均分子量も、ポリマーの生分解性、従ってインプラントの長時間放出プロフィールを調節するのに同じく重要である。種々の分子量の同じかまたは異なるポリマーの組成物を、インプラントに含有させて、放出プロフィールを調節しうる。特定のインプラントにおいて、ポリマーの相対平均分子量は、約9〜約64kD、一般に約10〜約54kD、より一般的には約12〜約45kDである。
【0061】
いくつかのインプラントにおいて、グリコール酸と乳酸のコポリマーを使用し、生分解速度をグリコール酸/乳酸の比率によって調節する。最も急速に分解されるコポリマーは、ほぼ同量のグリコール酸および乳酸を含有する。ホモポリマー、または等しくない比率を有するコポリマーは、分解に対してより抵抗性である。グリコール酸/乳酸の比率は、インプラントの脆性にも影響を与え、より大きい形状には、より柔軟性のインプラントが望ましい。ポリ乳酸ポリグリコール酸(PLGA)コポリマーにおけるポリ乳酸のパーセントは、0〜100%、好ましくは約15〜85%、より好ましくは約35〜65%にすることができる。いくつかのインプラントにおいて、50/50 PLGAコポリマーが使用される。
【0062】
眼内インプラントの生分解性ポリマーマトリックスは、2つまたはそれ以上の生分解性ポリマーの混合物を含有しうる。例えば、インプラントは、第一生分解性ポリマーおよび異なる第二生分解性ポリマーの混合物を含有しうる。1つまたはそれ以上の生分解性ポリマーは、末端酸根を有してよい。
【0063】
分解性ポリマーからの薬剤放出は、いくつかのメカニズム、またはメカニズムの組合せの結果である。これらのメカニズムのいくつかは、インプラント表面からの脱離、溶解、水和ポリマーの多孔流路からの拡散、および侵食である。侵食は、本体または表面、またはその両方の組合せであることができる。本明細書に記載するように、眼内インプラントのマトリックスは、眼への移植から1週間より長い期間にわたって、所定量のα−2アドレナリン受容体アゴニストの放出を持続させるのに有効な速度で、薬剤を放出しうる。あるインプラントでは、治療有効量のα−2アドレナリン受容体アゴニストが、移植後約30〜35日を超えない期間、放出される。例えば、インプラントは、酒石酸ブリモニジンを含んでなり、インプラントのマトリックスは、眼に配置された後、約1ヶ月間、治療有効量の酒石酸ブリモニジンの放出を維持するのに有効な速度で分解する。他の例として、インプラントは、酒石酸ブリモニジンを含んでなり、マトリックスは、40日を超える期間、例えば約6ヶ月間、治療有効量の酒石酸ブリモニジンの放出を維持するのに有効な速度で薬剤を放出する。
【0064】
生分解性眼内インプラントの一例は、異なる生分解性ポリマーの混合物からなる生分解性ポリマーマトリックスに付随したα−2アドレナリン受容体アゴニストを含む。生分解性ポリマーの少なくとも1種は、約63.3kDの分子量を有するポリラクチドである。第二生分解性ポリマーは、約14kDの分子量を有するポリラクチドである。そのような混合物は、インプラントが眼に配置された時点から約1ヶ月を超える期間、治療有効量のα−2アドレナリン受容体アゴニストの放出を維持するのに効果的である。
【0065】
生分解性眼内インプラントの別の例は、各生分解性ポリマーが約0.16dl/g〜約1.0kDの固有粘度を有する異なる生分解性ポリマーの混合物からなる生分解性ポリマーマトリックスに付随したα−2アドレナリン受容体アゴニストを含む。例えば、生分解性ポリマーの1つは、約0.3dl/gの固有粘度を有し得る。第二生分解性ポリマーは、約1.0dl/gの固有粘度を有し得る。上記の固有粘度は、25℃において、0.1%クロロホルム溶液で測定することができる。
【0066】
ある種のインプラントは、2種の異なるポリラクチドポリマーの組み合わせに付随した酒石酸ブリモニジンを含む。酒石酸ブリモニジンは、インプラントの約20重量%の量で存在する。1つのポリラクチドポリマーは約14kDの分子量と約0.3dl/gの固有粘度を有し、他方のポリラクチドポリマーは約63.3kDの分子量と約1.0dl/gの固有粘度を有する。2種のポリラクチドポリマーは、1:1の比でインプラント中に存在する。そのようなインプラントは、本明細書に記載されているように、インビトロで2ヶ月を超える期間、ブリモニジンを放出することができる。インプラントは、押出法で製造されたロッドまたはフィラメントの形状で供給される。
【0067】
生分解性ポリマーマトリックスを含有する眼内インプラントからのα−2アドレナリン受容体アゴニストの放出は、初期放出バースト、次に、放出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストの量の漸増を含む場合があり、または該放出は、α−2アドレナリン受容体アゴニストの初期放出遅延、次に、放出増加を含む場合もある。インプラントが実質的に完全に分解した場合、放出されたα−2アドレナリン受容体アゴニストのパーセントは、約100である。既存のインプラントと比較して、本明細書に開示するインプラントは、眼に配置してから約1週間後までは、α−2アドレナリン受容体アゴニストを完全には放出しないか、または約100%を放出しない。
【0068】
インプラントの寿命にわたって、インプラントからのα−2アドレナリン受容体アゴニストの比較的定速の放出を与えることが望ましい場合がある。例えば、α−2アドレナリン受容体アゴニストが、インプラントの寿命にわたって、1日当たり約0.01μg〜約2μgの量で放出されることが望ましい場合がある。しかし、放出速度は、生分解性ポリマーマトリックスの配合に依存して変化して、増加するかまたは減少する場合もある。さらに、α−2アドレナリン受容体アゴニストの放出プロフィールは、1つまたはそれ以上の直線部分および/または1つまたはそれ以上の非直線部分を含みうる。一旦、インプラントが分解または侵食しはじめたら、放出速度はゼロより大きいことが好ましい。
【0069】
インプラントは、モノリシックである(即ち、1つまたはそれ以上の活性剤がポリマーマトリックス全体に均一に分散されている)か、または被包され、その場合、活性剤の貯留部がポリマーマトリックスによって被包されている。製造容易性により、モノリシックインプラントが、被包形態より一般に好ましい。しかし、被包された貯留部型インプラントによって得られるより優れた調節は、薬剤の治療レベルが狭い幅内にあるいくつかの状況において有利な場合もある。さらに、α−2アドレナリン受容体アゴニストを含有する治療成分を、マトリックス中に不均質に分散させてもよい。例えば、インプラントは、インプラントの第二部分に対してより高い濃度のα−2アドレナリン受容体アゴニストを有する部分を含有してよい。
【0070】
本明細書に開示する眼内インプラントは、針での投与用に、約5μm〜約2mm、または約10μm〜約1mmの大きさ、外科的移植による投与用に、1mmより大、または2mmより大、例えば3mm〜10mmの大きさであってよい。ヒトの硝子体腔は、例えば1〜10mmの長さを有する種々の形状の比較的大きいインプラントを収容することができる。インプラントは約2mm×0.75mm直径の寸法を有する円筒形ペレット(例えばロッド)であってよい。または、インプラントは、長さ約7mm〜約10mm、直径約0.75mm〜約1.5mmの円筒形ペレットであってもよい。
【0071】
インプラントは、眼、例えば硝子体へのインプラントの挿入、およびインプラントの収容の両方を容易にするように、少なくとも幾分柔軟性であってもよい。インプラントの全重量は、一般に約250〜5000μg、より好ましくは約500〜1000μgである。例えば、インプラントは約500μg、または約1000μgであってよい。非ヒト個体に関しては、インプラントの寸法および全重量は、個体の種類に依存してより大きいかまたはより小さくてよい。例えば、ウマの約30mLおよびゾウの約60〜100mLと比較して、ヒトは約3.8mLの硝子体容量を有する。ヒトに使用される大きさのインプラントを、他の動物に応じて大きくするかまたは小さくし、例えばウマ用のインプラントは約8倍大きくし、または、例えばゾウ用のインプラントは26倍大きくしうる。
【0072】
例えば、中心が1つの材料で形成され、表面が同じかまたは異なる組成物の1つまたはそれ以上の層を有し、層が架橋しているか、または異なる分子量、異なる密度または多孔率等であるインプラントを製造することができる。例えば、薬剤の初期ボーラスを急速に放出することが望ましい場合、中心が、ポリラクテート−ポリグリコレートコポリマーで被覆されたポリラクテートであってよく、それによって初期分解速度を増加しうる。または、中心が、ポリラクテートで被覆されたポリビニルアルコールであってもよく、それによって、外側のポリラクテートの分解時に、中心が溶解し、眼から急速に流れ出るようにしうる。
【0073】
インプラントは、繊維、シート、フィルム、微小球、球体、円板、プラク等を包含する任意の形状であってよい。インプラントの大きさの上限は、インプラントに関する許容性(toleration for the implant)、挿入時の大きさ制限、取扱い容易性等のような要因によって決定される。シートまたはフィルムを使用する場合、シートまたはフィルムは、取扱い容易性のために、少なくとも約0.5mm×0.5mm、一般に約3〜10mm×5〜10mm、厚さ約0.1〜1.0mmである。繊維を使用する場合、繊維の直径は、一般に約0.05〜3mmであり、繊維の長さは一般に約0.5〜10mmである。球体は、直径約0.5μm〜4mmであり、他の形状の粒子に匹敵する容量を有しうる。
【0074】
インプラントの大きさおよび形は、放出速度、治療期間、および移植部位における薬剤濃度を調節するために使用することもできる。より大きいインプラントは、比例的により高い投与量を送達するが、表面積/質量比に依存して、より遅い放出速度を有する場合もある。移植部位に適合させるために、インプラントの特定の大きさおよび形状を選択する。
【0075】
α−2アドレナリン受容体アゴニスト、ポリマーおよび任意の他の調節剤の比率は、変化する比率においていくつかのインプラントを処方することによって経験的に決定しうる。USP承認の溶解または放出試験方法を使用して、放出速度を測定することができる(USP 23;NF 18(1995), p.1790-1798)。例えば、無限沈下法(infinite sink method)を使用して、秤量したインプラント試料を、水中に0.9%NaClを含有する測定容量の溶液に添加すると、該溶液容量は、放出後の薬剤濃度が飽和の5%未満であるような容量になる。混合物を37℃に維持し、ゆっくり撹拌して、インプラントを懸濁状態に維持する。時間の関数としての溶解薬剤の外観を、当分野で既知の種々方法、例えば、分光光度的に、HPLC、質量分析等によって、吸収が一定になるまでか、または90%を超える薬剤が放出されるまで、追跡しうる。
【0076】
本明細書に開示される眼内インプラントに含有されるα−2アドレナリン受容体アゴニストに加えて、眼内インプラントは、1つまたはそれ以上の付加的な眼科的に許容される治療剤も含有しうる。例えば、インプラントは、1つまたはそれ以上の抗ヒスタミン薬、1つまたはそれ以上の抗生物質、1つまたはそれ以上のβ遮断薬、1つまたはそれ以上のステロイド、1つまたはそれ以上の抗新生物薬、1つまたはそれ以上の免疫抑制薬、1つまたはそれ以上の抗ウイルス薬、1つまたはそれ以上の酸化防止剤、およびそれらの混合物を含有しうる。
【0077】
本発明のシステムに使用しうる薬理学的または治療的薬剤は、米国特許第4474451号第4〜6欄、および同第4327725号第7〜8欄に開示されている薬剤を包含するが、それらに限定されない。
【0078】
抗ヒスタミン薬の例は、ロラダチン、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、ブロムフェニルアミン、シプロヘプタジン、テルフェナジン、クレマスチン、トリプロリジン、カルビノキサミン、ジフェニルピラリン、フェニンダミン、アザタジン、トリペレナミン、デクスクロルフェニラミン、デクスブロムフェニラミン、メトジラジン、およびトリメプラジン、ドキシラミン、フェニラミン、ピリラミン、キオルシクリジン、トンジラミン、ならびにそれらの誘導体であるが、それらに限定されない。
【0079】
抗生物質の例は、セファゾリン、セフラジン、セファクロール、セファピリン、セフチゾキシム、セフォペラゾン、セフォテタン、セフトキシム(cefutoxime)、セフォタキシム、セファドロキシル、セフタジジム、セファレキシン、セファロチン、セファマンドール、セフォキシチン、セフォニシド、セフォラニド、セフトリアキソン、セファドロキシル、セフラジン、セフロキシム、アンピシリン、アモキシリン、シクラシリン、アンピリシン、ペニシリンG、ペニシリンVカリウム、ピペラシリン、オキサシリン、バカンピシリン、クロキサシリン、チカルシリン、アズロシリン、カルベニシリン、メチシリン、ナフシリン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、アズトレオナム、クロラムフェニコール、塩酸シプロフロキサシン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、ゲンタマイシン、リンコマイシン、トブラマイシン、バンコマイシン、硫酸ポリミキシンB、コリスチメテート、コリスチン、アジスロマイシン、オーグメンチン、スルファメトキサゾール、トリメトプリム、およびそれらの誘導体であるがそれらに限定されない。
【0080】
β遮断薬の例は、アセブトロール、アテノロール、ラベタロール、メトプロロール、プロプラノロール、チモロール、およびそれらの誘導体である。
【0081】
ステロイドの例は、コルチコステロイド、例えば、コルチゾン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、デキサメタゾン、メドリゾン、ロテプレドノール(loteprednol)、フルアザコート、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、ベタメタゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、リアムシノロンヘキサカトニド、酢酸パラメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノニド、フルオシノロン、トリアムシノロン、それらの誘導体、ならびにそれらの混合物である。
【0082】
抗新生物薬の例は、アドリアマイシン、シクロホスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ジュアノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、メトトレキサート、フルオロウラシル、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、メチル−CCNU、シスプラチン、エトポシド、インターフェロン、カンプトテシンおよびその誘導体、フェネステリン、タキソールおよびその誘導体、タキソテールおよびその誘導体、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タモキシフェン、エトポシド、ピポスルファン、シクロホスファミド、およびフルタミド、ならびにそれらの誘導体である。
【0083】
免疫抑制薬の例は、シクロスポリン、アザチオプリン、タクロリムスおよびそれらの誘導体である。
【0084】
抗ウイルス薬の例は、インターフェロンガンマ、ジドブジン、塩酸アマンタジン、リバビリン、アシクロビル、バルシクロビル、ジデオキシシチジン、ホスホノ蟻酸、ガンシクロビルおよびそれらの誘導体である。
【0085】
酸化防止剤の例は、アスコルベート、α−トコフェロール、マンニトール、還元型グルタチオン、種々のカロテノイド、システイン、尿酸、タウリン、チロシン、スーパーオキシドジスムターゼ、ルテイン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、アスタザンチン(astazanthin)、リコペン、N−アセチル−システイン、カルノシン、γ−グルタミルシステイン、ケルセチン、ラクトフェリン、ジヒドロリポ酸、シトレート、イチョウエキス、茶カテキン、ビルベリーエキス、ビタミンEまたはビタミンEのエステル、レチニルパルミテート、およびそれらの誘導体である。
【0086】
他の治療薬は、スクアラミン、炭酸脱水酵素阻害薬、αアゴニスト、プロスタミド、プロスタグランジン、駆虫薬、抗真菌薬、およびそれらの誘導体を包含する。
【0087】
個々にまたは組み合わせてインプラントに使用される1つまたはそれ以上の活性剤の量は、必要とされる有効投与量、およびインプラントからの所望放出速度に依存して広く変化する。通常、薬剤は、インプラントの少なくとも約1wt%、より一般的には少なくとも約10wt%であり、かつ、一般に約80wt%以下、より一般的には約40wt%以下である。
【0088】
本明細書に開示する眼内インプラントは、治療成分に加えて、有効量の緩衝剤、防腐剤等も含有しうる。好適な水溶性緩衝剤は、アルカリおよびアルカリ土類炭酸塩、燐酸塩、炭酸水素塩、クエン酸塩、硼酸塩、酢酸塩、琥珀酸塩等、例えば、燐酸、クエン酸、硼酸、酢酸、炭酸水素、炭酸等を包含するが、それらに限定されない。これらの緩衝剤は、システムのpHを約2〜約9、より好ましくは約4〜約8に維持するのに充分な量で存在するのが好都合である。従って、緩衝剤は、全インプラントの約5wt%もの量で存在する場合もある。好適な水溶性防腐剤は、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルベート、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硼酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、パラベン、メチルパラベン、ポリビニルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール等、およびそれらの混合物を包含する。これらの防腐剤は、0.001〜約5wt%、好ましくは0.01〜約2wt%の量で存在しうる。本発明のインプラントの少なくとも1つにおいて、例えばα−2アドレナリン受容体アゴニストがブリモニジンである場合に、purite 防腐剤がインプラントに供給される。すなわち、そのようなインプラントは、治療有効量のAlphagan P(登録商標)を含み得る。
【0089】
ある場合には、同じかまたは異なる薬理学的物質を使用して、インプラントの混合物を使用しうる。この場合、単一投与によって二相または三相放出を与える放出プロフィールの組み合わせが得られ、放出のパターンがかなり変化しうる。
【0090】
さらに、米国特許第5869079号に記載されているような放出調節剤もインプラントに含有させてよい。使用される放出調節剤の量は、所望の放出プロフィール、調節剤の活性、および調節剤の不存在下のα−2アドレナリン受容体アゴニストの放出プロフィールに依存する。電解質、例えば塩化ナトリウムおよび塩化カリウムも、インプラントに含有させてよい。緩衝剤または促進剤が親水性である場合、それは放出促進剤としても作用しうる。親水性添加剤は、薬剤粒子を囲んでいる材料のより速い溶解(これは、露出した薬剤の表面積を増加させ、それによって薬剤の生体内分解速度を増加させる)によって、放出速度を増加させる作用をする。同様に、疎水性緩衝剤または促進剤は、よりゆっくり溶解し、薬剤粒子の露出を遅くし、それによって薬剤の生体内分解速度を遅くする。
【0091】
あるインプラントでは、インプラントはブリモニジンまたは酒石酸ブリモニジンを含み、生分解性ポリマーマトリックスは、眼へのインプラントの移植後、約3〜6ヶ月にわたり、約0.1mg〜約0.5mgの間の量のブリモニジンを放出または送達することができる。インプラントは、ロッドまたはウエハの形状にされる。ロッド状インプラントは、720μmのノズルから押し出したフィラメントを1mgに切断して、得ることができる。ウエハ状インプラントは、約2.5mmの直径、約0.127mmの厚さおよび約1mgの重さを有する円板であってよい。
【0092】
提案される3ヶ月放出製剤は、PLAマトリックスまたはPOEマトリックス内に酒石酸ブリモニジンを含むロッド、ウエハまたは微小球の形状で、滅菌され、生体分解性であり得る。インプラントは、薬剤の消費を遅延し、繰り返し移植の必要性を3ヶ月間抑制し、それにより合併症の危険を小さくするように、設計される。
【0093】
種々の方法を使用して、本明細書に開示するインプラントを製造しうる。有用な方法は、溶媒蒸発法、相分離法、界面法、成形法、射出成形法、押出法、同時押出法、カーバープレス(carver press)法、ダイ打抜き法、熱圧縮法、それらの組合せ等であるが、必ずしもそれらに限定されない。
【0094】
特定の方法が、米国特許第4997652号に記載されている。押出法を使用して、製造における溶媒の必要性を回避しうる。押出法を使用する場合、ポリマーおよび薬剤は、製造に必要とされる温度(一般に、低くとも約85℃)において安定であるように選択される。押出法は、約25℃〜約150℃、より好ましくは約65℃〜約130℃の温度を使用する。インプラントは、薬剤/ポリマー混合のために、約0〜1時間、0〜30分間、または5〜15分間にわたって、温度を約60℃〜約150℃、例えば約130℃にすることによって製造しうる。例えば、時間は、約10分間、好ましくは約0〜5分間であってよい。次に、インプラントを、約60℃〜約130℃、例えば約75℃の温度で押し出す。
【0095】
さらに、インプラントを同時押出してもよく、それによってインプラントの製造の間に、コア領域に被膜を形成しうる。
【0096】
圧縮法を使用してインプラントを製造してもよく、圧縮法は、一般に、押出法より速い放出速度のインプラントを生じる。圧縮法は、約50〜150psi、より好ましくは約70〜80psi、さらに好ましくは約76psiの圧力を使用し、約0℃〜約115℃、より好ましくは約25℃の温度を使用する。
【0097】
本発明のインプラントは、2〜3mmの強膜切開後の鉗子またはトロカールによる配置を包含する種々の方法によって、眼、例えば眼の硝子体腔に挿入しうる。インプラントを眼に挿入するのに使用しうる器具の1つの例は、米国特許出願公開第2004/0054374号に開示されている。配置方法は、治療成分または薬剤放出速度論に影響を与えうる。例えば、トロカールでのインプラントの送達は、鉗子による配置より、硝子体内に深くインプラントを配置し、それによって、インプラントを硝子体の縁により近づけうる。インプラントの位置は、要素の周囲の治療成分または薬剤の濃度勾配に影響を与える場合があり、従って、放出速度に影響を与えうる(例えば、硝子体の縁の近くに配置するほど、より遅い放出速度を生じうる)。
【0098】
本発明のインプラントは、眼の血管閉塞、例えば網膜血管閉塞を軽減するために、ある期間、眼にα−2アドレナリン受容体アゴニストを放出するように構成される。網膜血管閉塞は、種々の疾病、例えば網膜動脈閉塞疾患、網膜中心静脈閉塞、播種性血管内凝固障害、網膜静脈分枝閉塞、高血圧性眼底変化、眼球虚血症候群、網膜動脈微小動脈瘤、半網膜静脈閉塞、網膜中心動脈閉塞、網膜動脈分岐閉塞、頚動脈疾患(cad)、イールズ病および糖尿病関連脈管障害に起因する。α−2アドレナリン受容体アゴニスト含有インプラントを眼の硝子体に移植することにより、アゴニストが眼にある血管内の閉塞を減少させるのに効果的であると考えられる。
【0099】
加えて、本発明のインプラントは、患者の緑内障を治療するのに有効な期間、治療有効量でα−2アドレナリン受容体アゴニストを放出するように構成され得る。
【0100】
本明細書に開示するインプラントは、下記のような疾患または症状の治療に有効でありうる、前記の他の治療薬を放出するように構成してもよい。
【0101】
黄斑症/網膜変性:
非滲出性老化関連黄斑変性(ARMD)、滲出性老化関連黄斑変性(ARMD)、脈絡膜新生血管形成、糖尿病性網膜症、急性斑状視神経網膜疾患、中心性漿液性脈絡網膜症、類嚢胞黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫。
【0102】
ブドウ膜炎/網膜炎/脈絡膜炎:
急性多発性斑状色素上皮症、ベーチェット病、バードショット(Birdshot)網膜脈絡膜症、感染症(梅毒、ライム病、結核、トキソプラズマ症)、中間部ブドウ膜炎(扁平部炎)、多病巣性脈絡膜炎、多発性一過性白点症候群(Multiple Evanescent White Dot Syndrome)(MEWDS)、眼類肉腫症、後強膜炎、ほ行性脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、フォークト−コヤナギ−ハラダ(VKH)症候群。
【0103】
血管疾患/滲出性疾患:
コーツ病、傍中心窩(parafoveal)毛細管拡張症、乳頭静脈炎、霜状分岐血管炎、鎌状赤血球網膜症および他の異常ヘモグロビン症、網膜色素線条症、家族性滲出性硝子体網膜症。
【0104】
外傷性/外科性:
交感神経性眼炎、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー、PDT、光凝固、手術時低灌流、放射線性網膜症、骨髄移植性網膜症。
【0105】
増殖性疾患:
増殖性硝子体網膜症および網膜上膜、増殖性糖尿病性網膜症。
【0106】
感染性疾患:
眼ヒストプラスマ症候群、眼トキソカラ症、推定眼ヒストプラスマ症候群(POHS)、眼内炎、トキソプラスマ症、HIV感染関連網膜疾患、HIV感染関連脈絡膜疾患、HIV感染関連ブドウ膜炎疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性外網膜壊死、真菌性網膜疾患、眼梅毒、眼結核、広汎性片側性亜急性視神経網膜炎、ハエウジ病。
【0107】
遺伝性疾患:
網膜色素変性、網膜ジストロフィー関連全身性疾患、先天性停在夜盲症、錐体ジストロフィー、スタルガルト病、黄色斑眼底、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー(Pattern Dystrophy of the Retinal Pigmented Epithelium)、X染色体性網膜分離、ソーズビー眼底ジストロフィー、良性同心性黄斑症、ビエッティ結晶性ジストロフィー(Bietti’s Crystalline Dystrophy)、弾性線維性仮性黄色腫。
【0108】
網膜断裂/円孔:
網膜剥離、斑状円孔、巨大網膜断裂。
【0109】
腫瘍:
腫瘍、RPEの先天性肥大、後部ブドウ膜黒色腫、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜転移、網膜および網膜色素上皮の複合過誤腫、網膜芽細胞腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜星状細胞腫、眼内リンパ系腫瘍。
【0110】
その他:
点状内脈絡膜症、急性後多発性斑状色素上皮症、近視性網膜変性、急性網膜色素上皮炎等。
【0111】
1つの態様において、インプラント、例えば、本明細書に開示するインプラントを、ヒトまたは動物患者、好ましくは生体ヒトまたは動物の、眼の後区に投与する。少なくとも1つの態様において、眼の網膜下腔に接近せずに、インプラントを投与する。例えば、患者の治療法は、後眼房に直接的にインプラントを配置することを含みうる。他の態様において、患者の治療法は、硝子体内注入、結膜下注入、テノン下注入、眼球後注入および脈絡膜上注入の少なくとも1つによって、患者にインプラントを投与することを含みうる。
【0112】
少なくとも1つの態様において、患者における網膜血管閉塞を減少させる方法は、本明細書に開示する1つまたはそれ以上のα−2アドレナリン受容体アゴニストを含有する1つまたはそれ以上のインプラントを、硝子体内注入、結膜下注入、テノン下注入、眼球後注入および脈絡膜上注入の少なくとも1つによって、患者に投与することを含んで成る。適切な太さの針、例えば、27ゲージ針または30ゲージ針を含む注入器具を効果的に使用して、ヒトまたは動物の眼の後区に組成物を注入することができる。インプラントからのα−2アドレナリン受容体アゴニストの長期間放出により、繰り返しの注入が必要でない場合が多い。
【0113】
本発明の他の局面において、下記を含んで成る眼疾患治療用キットを提供する:a)α−2アドレナリン受容体アゴニスト、例えばブリモニジン遊離塩基または酒石酸ブリモニジン(例えばAlphagan-P)を含有する治療成分および薬剤放出持続成分を含んで成る長期間放出インプラントを含有する容器、およびb)使用説明書。使用説明書は、インプラントの取扱い方法、眼領域へのインプラントの挿入方法、およびインプラントの使用により予期される事柄を含みうる。
【実施例】
【0114】
実施例1
ブリモニジンおよび生分解性ポリマーマトリックスを含有するインプラントの製造および試験
酒石酸ブリモニジンまたはブリモニジン遊離塩基を、生分解性ポリマー組成物と、ステンレス鋼乳鉢において合わすことによって、生分解性インプラントを製造する。その組合せを、96RPMに設定したTurbulaシェーカーで15分間混合する。粉末ブレンドを、乳鉢の壁からこすり取り、次に、さらに15分間再混合する。混合した粉末ブレンドを、所定の温度で合計30分間にわたって半溶融状態に加熱し、ポリマー/薬剤メルトを形成する。
【0115】
9ゲージのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)管を使用してポリマー/薬剤メルトをペレット化し、ペレットをバレルに装填し、材料を所定コア押出温度でフィラメントに押し出すことによって、ロッドを製造する。次に、フィラメントを、約1mgサイズのインプラントまたは薬剤送達システムに切る。ロッドは、約2mm長さ×0.72mm直径の寸法を有する。ロッドインプラントは、約900μg〜1100μgの重さである。
【0116】
所定温度においてCarverプレスでポリマーメルトを平板化し、該平板材料を、それぞれ約1mgのウエハに切ることによって、ウエハを形成する。ウエハは、直径約2.5mm、厚さ約0.13mmである。ウエハインプラントは、約900μg〜約1100μgの重さである。
【0117】
生体外放出試験を、最初に6回、後に4回、インプラント(ロッドまたはウエハ)の各ロットについて行った。各インプラントを、37℃において、燐酸緩衝生理食塩水10mLと共に、24mLのネジ蓋バイアルに入れ、第1、4、7、14、28日およびその後2週間ごとに、1mLアリコートを取り、等容量の新しい媒質と交換した。
【0118】
薬剤アッセイは、HPLC(Waters 2690 Separation Module(または2696)、およびWaters 2996 Photodiode Array Detectorから成る)によって行ってよい。30℃に加熱したUltrasphere, C-18(2), 5μm;4.6×150mmカラムを分離に使用し、検出器は264nmに設定した。移動相は、流速1mL/分および合計実行時間12分/試料の(10:90)MeOH緩衝移動相であった。緩衝移動相は、(68:0.75:0.25:31)13mM 1−ヘプタンスルホン酸、ナトリウム塩−氷酢酸−トリエチルアミン−メタノールを含んで成ってよい。放出速度は、時間の経過に伴って、所定容量の媒質に放出された薬剤量(μg/日)を算出することによって求めた。
【0119】
インプラント用に選択されるポリマーは、例えば、Boehringer Ingelheimから得ることができる。ポリマーは、RG502、RG752、R202H、R203およびR206、ならびにPurac PDLG(50/50)である。RG502は、(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、RG752は、(75:25)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、R202Hは、酸末端基または末端酸根を有する100%ポリ(D,L−ラクチド)であり、R203およびR206は両方とも100%ポリ(D,L−ラクチド)である。Purac PDLG(50/50)は、(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)である。RG502、RG752、R202H、R203およびR206、ならびにPurac PDLGの固有粘度は、それぞれ、0.2、0.2、0.2、0.3、1.0および0.2dL/gである。RG502、RG752、R202H、R203、R206およびPurac PDLGの平均分子量は、それぞれ、11700、11200、6500、14000、63300および9700ダルトンである。
【0120】
合計53個の製剤を調製した。31個はロッドであり、22個はウエハであった。ロッド製剤の内、4個は、3ヶ月を超える期間放出し、3個は、6ヶ月を超える期間放出した。ウエハ製剤の内、7個は、3ヶ月を超える期間放出し、4個は、6ヶ月を超える期間放出した。
【0121】
ロッド製剤のリストを表1に示し、ウエハ製剤のリストを表2に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
ロッド製剤
5種の異なるポリマーRG752、RG502、R203、R206およびR202Hを用い、それぞれ、酒石酸ブリモニジンおよびブリモニジン遊離塩基を50%w/wの薬剤用量で、最初の10個の製剤を調製した。放出プロフィールを、酒石酸ブリモニジンに関しては図1に、ブリモニジン遊離塩基に関しては図2に示す。
【0125】
殆どの場合、酒石酸ブリモニジンを用いて調製した製剤は、RG502を除いて、同じポリマーを用いてブリモニジン遊離塩基から調製したものより初期バーストが速かった。また、データによれば、ポリ(D,L−ラクチド)マトリックス(R203、R206およびR202H)の製剤の場合、ブリモニジン遊離塩基は、約30日間の遅延時間があったが、酒石酸ブリモニジンは、第1日目(F5およびF7)に完全に放出したことが示された。これは、インプラントの表面上での酒石酸ブリモニジンの溶解が速いためであろう。
【0126】
R203およびR206を用いて、50%未満の薬剤用量の数種の製剤を調製した。その放出プロフィールを図3に示す。薬剤用量が50%から25%に減少した時、劇的な効果が観察された。例えば、製剤#9をR206中の25%酒石酸ブリモニジンで調製すると、安定状態になる前の105日後の総放出量が89%であった。R206中50%酒石酸ブリモニジンである製剤#7と比較すると、後者は1日で100%放出した。同様に、製剤#10をR203中25%酒石酸ブリモニジンで調製すると、安定状態になる前の105日後の総放出量が90%であった。これを製剤#5と比較すると、後者は1日で74%放出した。
【0127】
R206(F24)中の20%酒石酸ブリモニジンについては、放出し始める前に14日の遅延期間が存在し、最終的に134日後に89.5%の放出に達した。R206(F16)中の15%酒石酸ブリモニジンで、放出を開始する前に遅延期間が28日に延び、最終的に175日後に97.6%に達した。
【0128】
製剤#9および#10の放出プロフィールは、1つのポリマーが早期放出をするともう1つは遅延放出するが、両方とも同じ時間で同じ終点に達するという、正反対ではあるが相補的な挙動を示した。両ポリマーをより低い薬剤用量で組合せた場合、図4に示すように、より直線的でより長い放出プロフィールが得られるであろう。
【0129】
データにより、製剤#17、20%酒石酸ブリモニジン/(1:1)R203/R206が、6ヶ月放出インプラント用の所望のインビトロ放出プロフィールを持つことが示された。これは、175日後に約90%の酒石酸ブリモニジンを放出した。また、R203およびR206の割合を変化させることによって、同じ薬剤用量(製剤#17、#18および#53)であっても、異なる放出プロフィールを得られるであろうことが示された。
【0130】
より直線的な放出プロフィールを得ることができるかどうか確かめるために、ブリモニジン遊離塩基とポリマーブレンドとの製剤も調製した。各ポリマーにおける、水性媒体での低溶解度およびその放出特徴がわかって、RG502-RG752およびRG502-R203の異なる組合せを調製した。放出プロフィールを図5に示す。
【0131】
3種全ての製剤の放出期間は約2ヶ月であったが、3種全て、1〜2週間の間の遅延期間を示した。2種の製剤(F32およびF33)を、ピューラックポリマー、PDLG(50/50)-Mw9700を用い、1つは酒石酸ブリモニジンと、もう1つはブリモニジン遊離塩基とで調製した。
両製剤とも高い標準偏差の高速放出であった。したがって、放出試験は、7日後に中止した。
【0132】
ウエハ製剤
3種の既存のロッド製剤からウエハ製剤の第一セットを調製した。具体的には、それぞれ、105日後の放出が89.4%に達するもの、175日後の放出が89.2%に達するもの、および175日後の放出が102%に達するものである、製剤#9、#17および#18である。第一の3種ウエハ製剤の放出プロフィールを図6に示す。
【0133】
これらに相当するロッドの放出期間は3〜4ヶ月であったが、これら3種の製剤の放出期間は2〜3週間しかなかった。これは、ウエハの表面積がロッドに比べて増えていることによるのであろう。ウエハ形状では、薬剤用量も薬剤放出期間を決定する。したがって、薬剤用量を20〜25%から15%および10%に減少し、放出プロフィールを図7および8に示す。
【0134】
15%の薬剤用量では、製剤#7の35日後の累積放出が51.4%であり、一方製剤#47、49および52の99日後の累積放出は、それぞれ、93.2%、92.8%および88.5%であった。後者の3種の製剤は、4ヶ月薬剤送達システムとして、有効であり得る。
【0135】
10%の薬剤用量では、製剤#46、#48、#50および#51の133日後の累積放出が、それぞれ、83.8%、98.0%、92.7%および89.2%であった。これら4種の製剤は、5ヶ月薬剤送達システムとして有効であり得る。図7および8は、全ての製剤に関して、薬剤用量の減少により、より長い放出期間だけでなく、より直線的な放出プロフィールが得られることを実証している。また、これらの図は、R206のように単一のポリマーに代えてポリマーブレンドを使用することにより、より低い標準偏差を持つ、より直線的な放出プロフィールが得られるはずであることも示している。
【0136】
3種のウエハ製剤を、先の3種のロッド製剤#26、#27および#28から調製した。放出プロフィールを図9に示す。3種のウエハ製剤は、28日で、これらに相当するロッド製剤より若干速く放出し、31〜55日の間で完全に放出することが予想された。
【0137】
結論
酒石酸ブリモニジンから調製された15種のロッド製剤のうち、3種の製剤の放出期間は3ヶ月を超え(F9、F10およびF53)、2種の製剤の放出期間は4ヶ月を超え(F24およびF25)、3種の製剤の放出期間は6ヶ月に近かった(F16、F17およびF18)。ブリモニジン遊離塩基から調製された8種のロッド製剤のうち、3種の放出期間が2ヶ月を超えていた(F26、F27およびF28)。
【0138】
22種のウエハ製剤のうち、11種は酒石酸ブリモニジンから調製され、11種はブリモニジン遊離塩基から調製された。酒石酸ブリモニジンから調製された11種のウエハ製剤のうち、3種の放出期間は約4ヶ月(F47、F49およびF52)であり、4種の放出期間は4ヶ月と5ヶ月との間(F46、F48、F50およびF51)であった。ブリモニジン遊離塩基から調製された11種のウエハのうち、4種の放出期間は3ヶ月と4ヶ月との間(F35、F36、F38およびF39)であり、5種の放出期間は1ヶ月と2ヶ月との間(F34、F37、F41、F42およびF43)であった。
【0139】
一般的に、酒石酸ブリモニジンまたはブリモニジン遊離塩基から調製されたウエハ製剤は、それらに相当するロッド製剤より早く放出した。
【0140】
実施例2
ブリモニジンおよび生分解性ポリマーマトリックスを含有する眼内インプラントのインビボ試験
カニクイザルを無作為に選び、偽薬(n=2)あるいはブリモニジン(n=2)を処方した硝子体内インプラントを与えた。ベースライン測定を移植の3日前に行い、移植から10日後、眼圧(IOP)、mfERG、レーザードップラースキャントポグラフィ/血流計測(HRT/HRF)、光干渉トポグラフィ(OCT)、インドシアニングリーンによる血管造影(ICG)および蛍光眼底血管造影(FA)を測定した。
【0141】
それぞれ、200μgのブリモニジンまたは偽薬を処方した、3種のインプラント(実施例1で記載した製剤#17)を、MVRブレード(OS)で作った孔を介して眼内の硝子体内に移植し、孔は縫合して閉じた。広角コンタクトレンズ眼底撮影によって、インプラント数および配置を検証した。
【0142】
網膜静脈分枝閉塞(BRVO)を1mlの20mg/kgローズベンガルの静脈内投与によって起こし、次いで、Omni Coherent Diode レーザーを用い、532nm、600mW、スポットサイズ50μm、1.6×インバージョンコンタクトレンズでのパルスモード0.01秒で熱照射した。レーザーパルスは、静脈部が閉じるまで送った。ブリモニジンで処置された1匹のサルは235パルス受け、他のサルは78パルス受けた。偽薬で処理された1匹のサルは43パルス受け、他のサルは31パルス受けた。静脈の血管閉塞が視神経頭から約1ディスク直径の上方の弧中に誘発された。閉塞は、眼底撮影によるポストレーザーで検証した。
【0143】
BRVO後1日目の眼底観察において、偽薬インプラントを受けた2匹のサルは、ひどい網膜浮腫、および点状、斑状出血、血管蛇行、綿花状白斑を伴う、劇的な網膜症および血管障害を示した。蛍光眼底血管造影によって静脈閉塞を検証し、レーザーが照射された領域から上流に行く血流を止め、遅延相フルオロセインリークおよび網膜毛細血管からの貯留を明らかにした。ブリモニジンインプラントを受けたサルには、5個未満の小さい点状、斑状出血と、上網膜に位置する網膜浮腫があった。ブリモニジンサルにおける蛍光眼底血管造影によって、最小の血流うっ血を伴う、一度閉塞した静脈の血流の再開が示された。
【0144】
ブリモニジン含有インプラントは、図10に示すように、血管閉塞の持続時間は減少した。閉塞静脈のフルオロセイン充填の遅延時間は、Metamorph 6.0ソフトウエアを使用して定量した。強度測定は、所定の興味領域で蛍光眼底血管造影の初期相と遅延相に関し測定し、充填時間における遅延時間およびフルオロセインのクリアランスにおける観察遅延時間を定量化した。ベースライン蛍光眼底血管造影充填から閉塞静脈におけるフルオロセイン(秒)の初期相の遅延時間を図10に示す。
【0145】
OCTシングルラインスキャン(6mm)からの中心窩厚測定により、偽薬群における血管閉塞の結果、網膜浮腫の増加が示されている。ブリモニジン含有インプラントは、血管閉塞関連網膜浮腫の規模を減少させた。一連のラインスキャン(3mm2をカバー)で、閉塞静脈を取り巻く上位領域内の網膜の厚さにおける変化を下位網膜中の厚さ変化と直接比較する。偽薬サルにおける網膜浮腫は、液体蓄積が網膜の下方領域で起きるほど顕著であった。これに対しブリモニジン群は、図11に示すように、ベースラインと比べ下方の網膜浮腫において、有意な変化が起きなかった。
【0146】
全追跡電気生理学的および網膜イメージング法の前に、3通りのポストインプラントにおいて、各群について、眼圧(IOP)を記録(ODおよびOS)した。図12に示すように、ブリモニジンインプラントは、BRVOの前あるいはその間に、眼内のIOPを有意に減少させなかった。
【0147】
VERIS5.0システムを用い、多焦点ERGを行った。241個の六角形の刺激フィールドを位置づけ、上網膜および網膜中心窩の応答を記録した。偽薬群では、中心窩応答がBRVO誘発後3〜4週間の間なかった。一方、ブリモニジン群の中心窩応答は僅かに下がったが、実験の残りではBRVOの後1日目に回復および/または高い中心窩応答で発現した。図13のグラフは、両群に関する上方/下方%応答を示す。偽薬で処置されたサルにおけるBRVOは、応答網膜機能は殆どなく、実験では回復が遅れる傾向にあったが、ブリモニジンインプラントを使用するものは比較的一貫した網膜機能があった。
【0148】
レーザードプラー血流計測(HRF)を使用して、中心窩、上方および下方網膜領域の血流を測定した。図14のグラフは、中心窩を中心とした10〜20度ゾーンで獲得した血流測定の結果を示す。中心窩での血流は、BRVO後のブリモニジン群では変化しなかったようであるが、偽薬群では、BRVOの後、1日目に急激に上昇した。
【0149】
3種のブリモニジン眼内インプラントの硝子体内への適用により、サルにおいて、局在した血管閉塞の規模および持続時間ならびに関連する血管障害および網膜症が小さくなった。
【0150】
さらに、静脈の近くで必要なレーザー焼成の量は、ブリモニジン群が偽薬に比べて多かった(ブリモニジン:157±79、n=2、偽薬:37±6、n=2)。総合すると、これらのデータは、ブリモニジンが存在することで、網膜血管の閉塞を起きにくくし、閉塞の持続時間が短縮されることを示す。
【0151】
実施例3
ブリモニジンおよび生分解性ポリマーマトリックスを含む眼内インプラントでの緑内障の治療
68歳の女性は担当医に見えづらくなってきたと訴えている。担当医は、患者の眼圧レベルが上がってきていると判断し、彼女は緑内障であると診断する。200μgの酒石酸ブリモニジンと、800μgの生分解性ポリマーの混合物(先の実施例1に記載したような、R203およびR206、比1:1)とを含むインプラントを、トロカールを使用して、女性の両目の硝子体中に配置する。約2日後、おそらく眼圧の低下により、女性は自分の目に変化が起きていることに気づき始め、インプラント施術後、約5ヶ月で、視力を失うことは避けられる。
【0152】
実施例4
種々の活性剤を使用する眼症状の治療
上述の実施例における手順に従って、本明細書に記載する剤を含む種々の活性剤でインプラントを処方することができる。これらのインプラントは、眼症状の長期の治療処置、すなわち、インプラントから活性剤が放出されている期間あるいは活性剤全てが放出された後であって、もはや治療量の活性剤がインプラントの配置された眼部位に存在しない間も、有効な治療を提供することができる。すなわち、インプラントは、クロニジン、アプラクロニジンまたはブリモニジン(Allergan(カリフォルニア州Irvine)から、酒石酸ブリモニジン点眼剤として、商品名 Alphagan-P(登録商標)として入手可能)のようなα−2アドレナリン受容体アゴニストを含んで、調製することができる。よって、例えば、ブリモニジン長期治療処置インプラントは、所望の長期治療効果のために、眼症状のある患者の眼球部位(すなわち硝子体内)に移植することができる。インプラントは、インプラントのサイズにより、約50μg〜約500μgのAlphaganまたはAlphagan-Pを含んでもよい。ブリモニジン長期治療処置インプラントは、所望の治療効果のために、眼症状のある患者の眼球領域または部位(すなわち、硝子体内)に移植することができる。眼症状とは、ブドウ膜炎のような炎症性状態でもよく、または患者は、下記の疾病の1以上を罹患していてもよい:黄斑変性(非滲出性加齢性黄斑変性症および滲出性加齢性黄斑変性症を含む);脈絡膜新生血管形成;急性黄斑性視神経網膜障害;黄斑性浮腫(嚢胞様黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫を含む);ベーチェット病、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む);網膜動脈閉塞疾患;網膜中心静脈閉塞;ブドウ膜炎の網膜疾患;網膜剥離;網膜症;網膜上膜障害;網膜静脈分枝閉塞;前部乏血性視神経症;非網膜症糖尿病網膜機能障害、色素性網膜および緑内障。インプラントは、トロカール移植のような手段で、硝子体に挿入することもできる。インプラントは、治療量の活性剤を放出して、治療効果を長期間にわたって提供および維持し、それによって眼症状を治療することができる。例えば、インプラントは、視力、視覚的なコントラスト感度、あるいは両方を改善するのに有効であり得る。
【0153】
実施例5
眼内α−2アドレナリン受容体アゴニストインプラントの視力の回復および/または改善を強化するための使用
実験は、哺乳動物の目の中の眼内インプラントを使用して行った。つまり、活性剤として、眼内α−2アドレナリン受容体アゴニストを含む分解性ポリマーインプラントを、正常および障害または疾患のある(モデルシステム)ウサギの眼の硝子体内に置いた。実験の結果は、眼内α−2アドレナリン受容体アゴニストインプラントは、(1)正常な眼の視力を強化することができ、(2)疾患あるいは障害のある眼の視力を回復することができることを示した。
【0154】
実施例1の製剤#17を、実施例5のこれらの実験において使用した。すなわち、使用したインプラントは、固体生分解性ロッド(重さ約1mg)として製剤化されたα−2アゴニスト酒石酸ブリモニジンを含み、持続性放出薬剤送達デバイス(すなわちインプラント)を形成した。インプラントは、200μgの酒石酸ブリモニジンと、800μgの生分解性ポリマーR203およびR206 1:1(重量比)のポリラクチド共重合体混合物とから構成した。偽薬インプラントは、生分解性ポリマーR203およびR206 1:1(重量比)のポリラクチド共重合体混合物から製造した、1mgロッド状インプラントであった。
【0155】
インプラントをウサギの硝子体内に投与した時、得られた視力は、強化あるいは正常化されたことがわかった。視力は、スイープ視覚誘発閾値電位として測定した。改善された視力は、3つの異なる眼症状の各症状について測定した。
1)正常なウサギの眼について。
2)VEGF障害ウサギの眼について。これらのウサギの眼は、VEGFで硝子体を処置し、視神経頭腫れ、網膜管漏出、拡張およびねじれを誘発し、それによって、黄斑性浮腫、視神経頭浮腫、糖尿病性網膜症および血管新生のような眼症状に共通している疾患の状況を刺激した。
3)インプラントの使用前、8ヶ月の高IOPで一過性虚血症状によって誘発された、網膜の周辺に損傷のあるウサギの眼について。
【0156】
有意性:(a)上述の眼症状2)において、インプラントは、VEGF治療に伴う血管障害(ねじれ、漏出、拡張)を軽減することなく視力を改善し、(b)上述の眼症状3)において、インプラントは、カラー眼底撮影に伴う、これら虚血損傷のある眼の中の網膜の臨床上の発現を変化させることなく、視力を改善した。これは、インプラントによって放出されたα−2アゴニスト活性剤が、眼症状2)および3)で誘発された損傷または疾患状態の後に残る、機能性網膜神経細胞の緊張活性を増大させたことを示唆している。たとえ疾患状態がまだ存在することになっても、残存する正常な細胞が良好に機能し、視力を回復するために相殺されるという仮説をたてることができる。
【0157】
網膜虚血性損傷を誘発する処置
ウサギをイソフルオランで麻酔し、120mmHgで45分間、OD眼中のIOPを上昇させることによって、片側急性網膜虚血症を発症させた。これを完成するために、PBSの貯留部を眼の65インチ上方にぶら下げ、角膜を介して前眼房に挿入された30ゲージの針に接続した。針を挿入する前に、表面麻酔薬(プロパラカイン)を1摘、角膜上に置き、針を抜いた直後に抗炎症性剤(Pred-G)を1滴、角膜上に置いた。
【0158】
視力の測定方法
視力は、意識のあるウサギで、スイープ視覚誘発電位(swVEP)を使用して測定した。swVEPは、普通、スネレン視力検査表を読むことができない小さな子供たちに使用される、視力分析の電気生理学的手法である。増加する空間周波数のパターン反転像を、黄斑上に投射し、同時に頭皮からの電気活性度(VEP)を記録する。より低い空間周波数の像は、大きな信号を生み出し、これは信号=ノイズとなるまで、空間周波数が増えるにつれ、より小さくなる。この閾値が視力である。ウサギにおけるこの方法では、先ず、頭皮に永久電極を移植して、信号の強度を増加し、追跡検査において同じ位置で記録できるようにすることが必要である。治癒を待って2週間後、視力測定を行うことができる。
【0159】
移植処置のため、ウサギをケタミンおよびキシラジンで麻酔した。頭皮を無菌的に処置し、4個のステンレス鋼ネジ(#0-80×-3/8)を移植した。2個の活性電極を正中線から両側6mm、前頂の6mm上の所に配置し、1個の接地電極を正中線上、活性電極の6mm上に配置し、1個の参照電極を正中線上、接地電極の6mm上に配置した。
【0160】
視力検査では、眼を1%トロピカミドおよび10%フェニレフリンで充分拡張させた。パターン反転像をビジュアルストリーク上に投影させるステンレス鋼保持装置中にウサギを置いた。ウサギは完全に意識があった。PowerDivaソフト、バージョン1.8.5のコントロール下、特別に設計された眼底カメラスティミュレーターを使用して、像を投影した。各ウサギは、その眼がカメラの前50mmに位置する(21インチCRTモニターから50cmのところになる)ように置かれた。記録電極を、以下の仕様でGrass Neurodata取得システム(12CAモデル)に接続した。
OD眼はチャンネル1およびOS眼はチャンネル2
フィルター領域:3〜100Hz
増幅:50K
ライン周期フィルター=オフ
【0161】
空間周波数範囲0.1〜5cpd、時間周波数7.5Hzの垂直安定状態のパターン反転スイープ刺激を、平均輝度600cd/m2およびコントラスト80%で眼に与えた。10秒毎に5〜40個のトライアルを各眼から集めた。トライアルの数は、ノイズに対する信号の比に基づいた。トライアルを平均化し、ノイズに対する信号の比が2.5未満に合致するソフトあるいは手動によって、その閾値(視力)を測定した。次いで、閾値を対側性眼に対する割合として正規化した。
【0162】
以下に説明するように、ブリモニジンンプラント対偽薬の視力に対する効果を、6つの異なるウサギの眼の群に関し、3つの異なる状態で検討した。ウサギの3つの群の各群に関し、インプラントを硝子体内に置いた。インプラントは、米国特許出願第11/021,947号(2004年12月23日出願)に記載されたアプリケーター(22ゲージ針を持つ)を使用して硝子体内に挿入する。
【0163】
(A)最初の研究では、正常(処置していない)眼を持つウサギの2つの群を使用した。1個のブリモニジンインプラントを、群1(N=7)の各ウサギの左眼の硝子体内に移植した。1個の偽薬インプラントを、群2(N=7)の各ウサギの左眼の硝子体内に同じように移植した。両群1および2の各ウサギの右眼は処置せず、コントロールとして利用し、得られたデータを正規化した。両群のウサギの両眼の視力を測定した。図15に対側性(右目)正常眼の視力に対する割合で表す。
【0164】
図15は、ウサギの正常眼の視力へのブリモニジンインプラントおよび偽薬インプラントの効果を示す。図15の結果は、ブリモニジンインプラントまたは偽薬インプラントの移植から2週間記録し、偽薬インプラントは有意な視力変化を起こさなかったことを示す。つまり、偽薬インプラントでは、視力を1.5%±6%しか変化させなかった。しかし、ブリモニジンインプラントを使用すると、正常なウサギの眼に、明らかに有意な視力の増強を起こしていた。つまり、ブリモニジンインプラントでは、視力を44%±12%改善していた(正常な目で56%の視力改善)。スチューデントの片側T検定を用いた、偽薬インプラントに対する応答と、ブリモニジンインプラントに対する応答との比較は、p値0.003の統計差を示した。
【0165】
(B)第二の研究では、ウサギの眼の2群を使用した。1個のブリモニジンインプラントを群1(N=7)の各ウサギの左眼の硝子体内に移植した。1個の偽薬インプラントを、群2(N=7)の各ウサギの左眼に、同じ毛様体扁平部挿入処置を使用して、硝子体内に移植した。両群1および2の各ウサギの右眼は処置せず、コントロールとして利用し、得られたデータを正規化した。移植から2週間後、移植された各目の硝子体内に、500ngの血管内皮細胞因子(VEGF)(R&D Systemsから製品番号293-VE-50として得た)を、50μlボーラスとして投与した。両群のウサギの両眼の視力を測定した。図16に対側性(右)眼の視力に対する割合で表す。
【0166】
図16は、VEGFで処置されたウサギの眼の視力へのブリモニジンインプラントおよび偽薬インプラントの効果を示す。図16の結果は、ブリモニジンインプラントまたは偽薬インプラント移植の3週間後およびVEGF投与の1週間後に記録した。図16の結果は、偽薬インプラントおよびVEGF処置された眼は、視力障害が約25%±4%であったことを示す。また、図16の結果は、ブリモニジンインプラントおよびVEGF処置された眼は、視力の改善が約14%±8%(血管障害のある眼で22%までの視力改善)であったことも示す。つまり、ブリモニジンインプラントの使用で、血管障害があるにも関わらず、VEGFで処置した眼の視力が標準化された。ブリモニジンインプラントは、VEGFで誘発された血管障害を減少させなかったが、VEGF治療によって誘発された経感覚上皮網膜障害を減少させた。スチューデントの片側T検定を用いた、偽薬インプラントに対する応答と、ブリモニジンインプラントに対する応答との比較は、p値0.0007の統計差を示した。
【0167】
(C)第三の研究では、ウサギの眼の2群を用いた。1個のブリモニジンインプラントを、群1(N=5)の各ウサギの左眼の硝子体内に移植した。1個の偽薬インプラントを、群2(N=5)の各ウサギの左眼の硝子体内に同じように移植した。両群1および2の各ウサギの右眼は処置せず、コントロールとして利用し、得られたデータを標準化した。0日目に、両群の各ウサギの左眼に虚血性損傷が誘発された。32週後、群1の各ウサギの虚血性損傷のある左眼に、偽薬インプラントを移植し、群2の各ウサギ虚血性損傷のある左眼にブリモニジンインプラントを移植した。44週目に、両群のウサギの両眼の視力を測定した。図17に対側性正常または未処理眼(右目)の視力に対する割合で表す。
【0168】
図17は、虚血症状からの既存の損傷を持つウサギの眼へのブリモニジンインプラントおよび偽薬インプラントの効果を示す。組織構造は、この処置が、光受容細胞、RPEおよび周囲の組織への外側網膜損傷となったことを示す。一過性虚血性処置のため左目の視力に障害のあるウサギを2群に無作為化する。データは対側性正常眼に対する割合で表す。図17の結果は、ブリモニジンインプラントまたは偽薬インプラントの移植の12週間後、移植された各目に虚血症状が誘発されて11ヶ月後に記録した。図17の結果は、偽薬インプラントおよび虚血性損傷の眼は、視力が37%±8%減少したことを示す。また、図17は、ブリモニジンインプラントおよび虚血性損傷の眼は、視力が14%±9%改善したことも示す。したがって、ブリモニジンインプラントを使用することで、外側網膜(誘発された虚血性)損傷を患うウサギの眼の視力を回復または改善した。スチューデントの片側T検定を用いた、偽薬インプラントに対する応答と、ブリモニジンインプラントに対する応答との比較は、p値0.001の統計差を示した。
【0169】
これらの実験は、局所的(すなわち硝子体内に)に投与されたα−2アドレナリン受容体アゴニストが、正常眼において、視力を改善(視力を増強)するために使用することができることを示した。また、これらの実験は、局所的(すなわち硝子体内)に投与されたα−2アドレナリン受容体アゴニストが、炎症、血管新生、腫瘍、血管閉塞および/または視神経疾患または緑内障を含む症状のような眼症状のある眼の視力を改善、修復または回復するために使用することができることも示す。
【0170】
薬物動態データを得るために、ウサギの別の群を検討した。これらのウサギに、硝子体内の外科移植手術を使用して、以下のようにしてインプラントを挿入した。20ゲージMVRブレードを用い、結膜切開し、強膜切開術を行った。強膜切開術は、角膜輪部から3mm、背部直筋の側方に位置する、右目では10〜12時の間の位置、左目では12〜2時の間の位置であった。滅菌鉗子を使用し、試験物を強膜切開術によって挿入した。強膜切開は9-0Prolene縫合材で閉じた。移植術後、無菌眼球潤滑剤を眼に施した。安楽死/死体解剖の前に、8日目、31日目、58日目、91日目、136日目または184日目にウサギから血液を採取した。ウサギの房水、硝子体液、水晶体、網膜およびリンパ漿試料を、液クロマトグラフィー−マススペクトル/マススペクトル(LC-MS/MS)法により分析した。
【0171】
表3に、この薬物動態の検討で得られたデータを示す。白ウサギの眼に200μgのブリモニジンインプラント(製剤#17)を硝子体内(中央硝子体内)に移植した後、種々の時間(表3の左手の「日にち」の欄)に、房水、虹彩−毛様体、水晶体、網膜、硝子体液およびリンパ漿中の眼内ブリモニジン濃度を測定した。表3に示すように、製剤#17ブリモニジンインプラントの硝子体内への移植の後、以下の状態を示した。
1. ブリモニジンインプラントを移植されたウサギの房水中には、どの時点でもブリモニジンは検出されなかった。
2. 網膜での濃度がより高かったことが示すように、硝子体内のインプラントからの放出後、ブリモニジンは、前クリアランスに対向する後クリアランスを有していた。
3. 検出可能な濃度のブリモニジンが、少なくとも90日間、インプラントから硝子体内へ放出された。
4. 約91日〜約120日後、全てのブリモニジンがインプラントから放出されたが、インプラントがブリモニジンを放出するとき、治療濃度のブリモニジンが、約2倍の長さで網膜中に存在した、すなわち、ブリモニジンは網膜内に少なくとも184日間は存在した。
5. インプラントは、形成すべきブリモニジンの網膜内滞留を可能にした。
【0172】
【表3】
【0173】
・NC、平均値に寄与する>50%の濃度がBLQ(評価限界未満)であるので計算不能(not calculatable)
・データは、平均±SEM(1回のサンプリング時当たりN=4個の眼およびN=2つのリンパ漿)として表した。
・BLQ=評価限界未満(房水および硝子体液:<10ng/mL;水晶体、網膜および虹彩−毛様体:<0.5ng;リンパ漿:<0.05ng/mL)。
a. N=4: 1試料がBLQであった(平均計算が0を含む)。
b. N=4: 2試料がBLQであった(平均計算が0を含む)。
c. N=3: 1試料が、測定できなかった(平均計算を含まず)。
d. N=2: 2試料がALQ(軽量化の上限を超える)(カッコ内の平均値を評価)。
【0174】
結論すると、上記結果は、α−2アゴニスト(非選択的または受容体サブタイプ選択的)硝子体内インプラントは、哺乳動物の眼の視力を増強し、修復し、回復し、改善するために使用することができることを示す。
【0175】
実験は、硝子体内へのブリモニジンインプラントは、正常な眼および疾患のある眼の両方の視力を改善するために使用することができることを有意に示した。本明細書に挙げた結果は、VEGF処置された眼において、インプラントが将来の視力喪失を防ぐための予防薬として使用することができることを示す。本明細書に挙げた結果は、損傷を受けた/疾患のある(すなわち虚血性)眼において、インプラントが、眼損傷/疾患の緩和または非発現を伴わずに視力を改善させるために使用することができることを示す。すなわち、該インプラントは、網膜内の物理的範囲に関し、たとえ眼損傷/疾患が減少しなくても、残った正常な網膜細胞が相殺し視力を改善するように良好に機能するようにさせるようである。
【0176】
本発明の範囲内に入るインプラントは、以下のように使用することができる。
1. 網膜障害に対する素因または網膜障害に関与する危険因子を持つ患者における網膜障害を含む、種々の眼症状における切迫した網膜経感覚上皮機能障害を緩和する予防治療。
2. 黄斑変性(例えば、加齢性黄斑変性症)のような、網膜の退化に関連する網膜疾患のような、後部眼症状、黄斑性浮腫、血管閉塞状態、視神経症または網膜神経症、および/または網膜腫瘍のような眼球浮腫を処置するための治療法(単独であるいは1種以上の他の活性剤と組み合わせて)。例えば、インプラントは、IOPを低下させるためおよび/または視力を改善するためのα−2アゴニストと、炎症を低下させるためのステロイド(例えば、デキサメサゾンまたはトリアムシノロン)とを含むものとすることができる。
3. 網膜疾患においておよび網膜剥離を伴う障害において有用な治療法(単独であるいは1種以上の他の活性剤と組み合わせて)。
4. 硝子体摘出術および網膜の悪影響を持つ可能性のある触診が要求される、網膜外科手術において有用な治療法(単独であるいは1種以上の他の活性剤と組み合わせて)。
5. ビタミンA欠乏症のような栄養欠乏症のある網膜疾患を治療する治療法(単独であるいは1種以上の他の活性剤と組み合わせて)。
6. 光学顕微鏡または工業レーザーの運転中の事故による光曝露からの網膜損傷を治療する治療法(単独であるいは1種以上の他の活性剤と組み合わせて)。
7. ステロイドが、眼球炎症および黄斑性または視神経浮腫を低下させるために使用されている、網膜疾患を治療するためのステロイドの補助手段。
8. 網膜からの漏出物を伴う網膜状態および組織管関連網膜状態を治療するために使用される、光線力学療法(PDT)の補助手段。
9. 黄斑浮腫または新生血管を治療するために使用されるレーザー光凝固および脈絡膜新生血管(CNV)を治療するために使用される伝統的温熱治療(TTT)などの他のタイプの電磁波照射の補助手段。
10. 黄斑性網膜芽細胞腫および脈絡膜骨腫のような眼球腫瘍の治療のために使用される時、黄斑症および乳頭症を起こす、放射線治療または化学療法の補助手段として。
11. 目の浮腫および新生血管異常状態を治療するために使用される電磁波照射およびステロイドの補助手段。
【0177】
実施例6
黄斑剥離を伴う急性裂孔原性網膜剥離を治療するための、2種の異なる硝子体内ブリモニジンインプラントの用途
黄斑剥離を伴う急性裂孔原性網膜剥離を治療するために、患者に、50μgまたは200μgのブリモニジン後部(すなわち硝子体内)インプラントを移植する。患者は、早期治療糖尿病性網膜症測定(ETDRS)法を使用した研究対象の目において、ベースラインから少なくとも15レター増加を経験する。最高矯正視力(BCVA)における改善の達成(早期治療糖尿病性網膜症測定(ETDRS)法を使用した研究対象の目において、ベースラインから少なくとも15レター増加を経験する患者の比率によって測定した)において、200μgブリモニジン後部インプラントは、50μgブリモニジン後部インプラントより効果的である。50μgおよび200μgブリモニジン後部インプラントは、許容しうる安全プロフィールを有している。
【0178】
患者は、ベースラインおよび無作為来院で、0日目、および1、3、6、9、12ヶ月(マスク化期間)および15、18および24ヶ月(延長期間)に来院する。再治療後1日目および7日目の付加的な来院が、安全性のための来院として指定される。55名の患者が参加する。各患者は少なくとも1個の目が、強膜バックルおよびレーザー光凝固による改善に適格な黄斑剥離を伴う急性裂孔原性網膜剥離を患っている。
【0179】
患者の採択基準は、18歳以上;最高矯正E-ETDRS視力スコア>=20レター(すなわち約20/400またはそれより良)で、<=65レター(すなわち約20/50またはそれより悪い);1つの眼に黄斑剥離を伴う急性裂孔原性網膜剥離ありと診断。剥離が表示の12時間以内に起こり、研究者の意見によれば、これは、予測される硝子体摘出術または気体網膜復位の必要なく、強膜折込配置および網膜切断の外部レーザー光凝固によって、修復することができる。外科的修復は、剥離の48時間以内に、媒体の透明性、瞳孔拡張、および適切な眼底撮影を満足する患者の協力が計画される。
【0180】
検討製剤は、(1)実施例1の製剤#17(固体状の生分解性ロッド(酒石酸ブリモニジン200μgおよび生分解性ポリマーR203およびR206(重量比1:1)のポリラクチド共重合体混合物800μgからなる、重さ約1mgのインプラント)および(2)固体状の生分解性ロッド(酒石酸ブリモニジン50μgおよび生分解性ポリマーR203およびR206(重量比1:1)のポリラクチドコポリマー混合物950μgからなる、重さ1mgのインプラント)である。有意な患者数が、目の検討において、6ヶ月でETDRS方法を使用する、BCVAのベースラインから15レターまたはそれ以上の増加を示した。したがって、生体内ブリモニジンインプラントは、黄斑剥離を伴う急性裂孔原性網膜剥離の治療に使用することができる。
【0181】
実施例7
慢性網膜障害を治療するための2種の異なる硝子体内のブリモニジンインプラントの使用
慢性網膜損傷を治療するために、患者に50μgおよび200μgのどちらかのブリモニジン後部部位(すなわち硝子体内)インプラントを移植する。患者は、最高矯正視力(BCVA)の改善を経験する(検討眼において、早期治療糖尿病性網膜症検討(ETDRS)方法を使用して、ベースラインから少なくとも15レター増加を経験した患者の割合を測定)。200μgのブリモニジン後部部位インプラントは、最高矯正視力(BCVA)の改善の達成において、50μgのブリモニジン後部部位インプラントより効果的である(検討眼において、早期治療糖尿病性網膜症検討(ETDRS)方法を使用して、ベースラインから少なくとも15レター増加を経験した患者の割合を測定)。50μgと200μgのブリモニジン後部部位インプラントは、許容しうる安全プロフィールを有する。
【0182】
患者は、その日(第0日目)、および1ヶ月目、3ヶ月目、6ヶ月目、9ヶ月目、12ヶ月目(潜在期間)および15ヶ月目、18ヶ月目および24ヶ月目(開放期間)に無作為来院し、ベースラインを見せる。付加的な来院として、任意の再治療後第1日目および第7日目が安全のための来院として設定される。各患者の少なくとも1個の眼が、下記のタイプの1以上のベースラインに網膜損傷を有する。糖尿病黄斑症または黄斑のない破裂性網膜剥離の前歴による障板網膜変性、黄斑性虚血症。
【0183】
患者の採択基準は、18歳以上;少なくとも1個の眼(検討眼)において、糖尿病黄斑症または黄斑剥離を伴う裂孔原性網膜剥離による障板網膜変性、黄斑性虚血症に関連する慢性網膜損傷と診断される。障板網膜変性を患う患者に関しては、診断は、臨床視野と網膜電図検査所見の両方に基づき、視野喪失は、中心10度以内であり、糖尿病黄斑症による黄斑性虚血症を患う患者に関しては、最高矯正E-ETDRS視力スコアが>=35レター(すなわち約20/200またはそれより良、および<=65レター(すなわち約20/50またはそれより悪い)、減少した視力は、直接虚血症に関連し、黄斑性浮腫や先のレーザー光凝固には依らない;黄斑のない剥離を患う患者に関しては、黄斑剥離は修復の48時間を超える前には存在せず、剥離の修復は、ベースライン来院の少なくとも6ヶ月前に起こり、最高矯正E-ETDRS視力スコアは>=35レター(すなわち約20/200またはこれより良)および<=65レター(すなわち約20/50より悪い)であり、視力は、少なくとも3ヶ月間は安定(スネレン視力の1ライン以内)であり、剥離の修復は、解剖学的な成功、培地の透明性、瞳孔拡張および適切な眼底撮影を満足する患者の協力が求められた。
【0184】
検討製剤は、(1)実施例1の製剤#17(固体状の生分解性ロッド(酒石酸ブリモニジン200μgおよび生分解性ポリマーR203およびR206(重量比1:1)のポリラクチド共重合体混合物800μgからなる、重さ約1mgのインプラント)および(2)固体状の生分解性ロッド(酒石酸ブリモニジン50μgおよび生分解性ポリマーR203およびR206(重量比1:1)のポリラクチドコポリマー混合物950μgからなる、重さ1mgのインプラント)である。
【0185】
有意な患者数が、目の検討において、12ヶ月でETDRS方法を使用する、BCVAのベースラインから15レターまたはそれ以上の増加を示す。したがって、生体内ブリモニジンインプラントは、慢性網膜損傷の治療に使用することができる。
【0186】
本明細書に引用されている全ての文献、論文、刊行物、特許および特許出願は、参照により全体として本明細書に組み入れられる。
【0187】
本発明を、種々の特定の実施例および態様に関して記載したが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲内において様々に実施しうるものと理解される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、患者の眼を治療する器具および方法、特に、インプラントを配置した眼に治療薬の長時間放出を与える眼内インプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
ブリモニジン、5−ブロモ−6−(2−イミダゾリジニリデンアミノ)キノキサリンは、α−2選択性アドレナリン受容体アゴニストであり、房水生成を減少し、ブドウ膜強膜房水流出を増すことにより、開放隅角緑内障を処置するのに有効である。ブリモニジンは、2つの化合物形、酒石酸ブリモニジンおよびブリモニジン遊離塩基として、入手できる。酒石酸ブリモニジン(Alphagan P(登録商標))は、緑内障治療用にAllergan から市販されている。局所投与眼用ブリモニジン製剤、0.15%Alphagan P(登録商標)(カリフォルニア州Irvine、Allergan)は、開放隅角緑内障の治療のために、現在市販されている。酒石酸ブリモニジンの水への溶解度は、34mg/mLであり、ブリモニジン遊離塩基の水への溶解度は、非常に小さい。
【0003】
最近の研究によれば、ブリモニジンは、網膜および/または視神経においてα−2アドレナリン受容体を活性化することにより、損傷された網膜神経節神経細胞の生存を促進することができるとされている。例えば、ブリモニジンは、虚血および緑内障の数種のモデルにおいて、損傷されたニューロンを更なる損傷から保護できる。例えば、米国特許第5856329号、同第6194415号、同第6248741号および同第6465464号を参照されたい。
【0004】
緑内障誘発神経節細胞変性は、失明の主要な原因である。このことは、ブリモニジンが、神経防護作用および眼圧低下が治療計画の重要な成果である緑内障管理に対する新しい治療手段に使用できることを示している。しかしながら、ブリモニジンにより視神経を保護するためには、ブリモニジンが、眼の後部領域に治療レベルで接近する必要がある。ブリモニジンを後眼房に投与するのに現在使用できる技術は、この問題に対しては十分でない。
【0005】
眼への配置用の生体適合性インプラントは、下記のような多くの特許に開示されている:米国特許第4521210号、第4853224号、第4997652号、第5164188号、第5443505号、第5501856号、第5766242号、第5824072号、第5869079号、第6074661号、第6331313号、第6369116号および第6699493号。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5856329号
【特許文献2】米国特許第6194415号
【特許文献3】米国特許第6248741号
【特許文献4】米国特許第6465464号
【特許文献5】米国特許第4521210号
【特許文献6】米国特許第4853224号
【特許文献7】米国特許第4997652号
【特許文献8】米国特許第5164188号
【特許文献9】米国特許第5443505号
【特許文献10】米国特許第5501856号
【特許文献11】米国特許第5766242号
【特許文献12】米国特許第5824072号
【特許文献13】米国特許第5869079号
【特許文献14】米国特許第6074661号
【特許文献15】米国特許第6331313号
【特許文献16】米国特許第6369116号
【特許文献17】米国特許第6699493号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
長期間にわたって、かつ負の副作用をほとんどまたは全く生じずに、治療薬を持続的または制御的速度で放出することができる眼内移植可能な薬剤送達システム、例えば眼内インプラント、およびそのようなシステムを使用する方法を提供することが好都合である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、例えば1つまたはそれ以上の所望の治療効果を得るための、眼への長期間または持続的薬物放出用の新規薬剤送達システムを提供する。該薬剤送達システムは、眼に配置しうるインプラントまたはインプラント要素の形態である。本発明のシステムは、好都合にも、1つまたはそれ以上の治療薬の長い放出時間を与える。従って、眼にインプラントを配置された患者は、薬剤の付加的投与を必要とせずに、長期間または延長された期間にわたって、治療量の薬剤を受ける。例えば、患者は、比較的長い期間にわたって、例えば、インプラントを配置されてから、少なくとも約1週間程度、例えば約2ヶ月〜約6ヶ月間にわたって、実質的に一貫したレベルの治療的活性剤を、一貫した眼の治療のために得ることができる。そのような長い放出時間は、優れた治療効果を得ることを促進する。
【0009】
本明細書の開示に従った眼内インプラントは、治療成分と、治療成分に付随する薬剤放出持続成分とを含む。本発明によれば、治療成分は、α−2アドレナリン受容体アゴニストを含む、またはそれから本質的に成る、またはそれのみから成る。α−2アドレナリン受容体アゴニストは、例えば、他のタイプのアドレナリン受容体(例えば、α−1アドレナリン受容体)に比べ、α−2アドレナリン受容体と結合することにより、α−2アドレナリン受容体を選択的に活性化するアゴニストまたは薬剤であり得る。選択的活性化は、異なる条件下で達成されるが、好ましくは、選択的活性化は、生理学的条件下、例えば、ヒトまたは動物患者の眼に関連する条件下で、決定される。薬剤放出持続成分が、インプラントが配置された眼へのα−2アドレナリン受容体アゴニストの放出を持続させるために、治療成分に付随する。α−2アドレナリン受容体アゴニストは、インプラントが眼に配置された後、約1週間よりも長い期間、眼に放出され、眼の血管障害、例えば血管閉塞を防止または軽減するのに有効である。
【0010】
1つの態様において、眼内インプラントは、α−2アドレナリン受容体アゴニストおよび生分解性ポリマーマトリックスを含む。α−2アドレナリン受容体アゴニストは、眼の血管閉塞を軽減または防止するのに十分な期間、インプラントからのアゴニストの放出を持続するのに有効な速度で分解する生分解性ポリマーマトリックスに付随される。眼内インプラントは、生分解性または生体分解性であり、1週間を超える長期間、例えば、約3ヶ月間、または約6ヶ月以上の期間、α−2アドレナリン受容体アゴニストの持続的放出を可能にする。あるインプラントでは、α−2アドレナリン受容体アゴニストは、約30〜35日間またはそれより短い期間、放出される。別のインプラントでは、α−2アドレナリン受容体アゴニストは、約40日間またはそれより長い期間、放出される。
【0011】
上記インプラントの生分解性ポリマー成分は、少なくとも1種の生分解性ポリマーが64キロダルトン(kD)未満の分子量を有するポリ乳酸ポリマーである生分解性ポリマーの混合物であってよい。加えてまたは代えて、上記インプラントは、ポリ乳酸の第一生分解性ポリマーと、異なるポリ乳酸の第二生分解性ポリマーとの混合物を含んでもよい。更に、上記インプラントは、各生分解性ポリマーが約0.3dl/g〜約1.0dl/gの範囲の固有粘度を有する異なる生分解性ポリマーの混合物を含んでもよい。
【0012】
本発明のインプラントのα−2アドレナリン受容体アゴニストは、キノキサリン誘導体、または眼症状を治療するのに有効である他のアゴニストを包含する。適当なキノキサリン誘導体の例は、ブリモニジンまたは酒石酸ブリモニジンである。加えて。本発明のインプラントの治療成分は、眼症状を治療するのに有効であり得る付加的な異なる1種以上の治療剤を含み得る。
【0013】
本発明のインプラントの製造法は、α−2アドレナリン受容体アゴニストと、1つまたはそれ以上の生分解性ポリマーとを組み合わすかまたは混合することを含む。次に、該混合物を押し出すかまたは圧縮して、単一組成物を形成しうる。次に、単一組成物を処理して、患者の眼に配置するのに好適な個々のインプラントを形成しうる。
【0014】
インプラントは、眼の前部域または後部域に影響する眼の血管障害のような症状を含む種々の眼症状を治療するために、眼の領域に配置され得る。例えば、インプラントは、血管閉塞に関連する症状(これに限定されない)を含む多数の眼症状を治療するのに使用できる。
【0015】
本発明のキットは、1つまたはそれ以上の本発明のインプラント、およびインプラントの使用説明書を含んで成ってよい。例えば、使用説明書は、患者へのインプラントの投与の仕方、およびインプラントで治療しうる症状のタイプを説明しうる。
【0016】
また、本発明は、視力を向上するための生分解性眼内インプラントも包含する。このインプラントは、α−2アドレナリン受容体アゴニストおよび生分解性ポリマーを含む。インプラントは、インプラントを眼の硝子体内に配置すると、インプラントが配置された眼の視力を向上するのに有効な量で、ポリマーからα−2アドレナリン受容体アゴニストを放出する。α−2アドレナリン受容体アゴニストは、キノキサリン、例えば、(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリン、5−ブロモ−6−(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリン、これらの誘導体またはこれらの混合物であってよい。従って、α−2アドレナリン受容体アゴニストは、ブリモニジンまたはその塩若しくはそれらの混合物であり得る。例えば、α−2アドレナリン受容体アゴニストは、酒石酸ブリモニジンであり得る。
【0017】
α−2アドレナリン受容体アゴニストは、インプラントの生分解性ポリマー内に分散され得る。生分解性ポリマーは、ポリ乳酸の第一生分解性ポリマーと、異なるポリ乳酸の第二生分解性ポリマーとを含むことができる。ポリマーは、インプラントが眼の硝子体に配置された時点から、1ヶ月を超える、または40日を超える、または35日より短い期間、インプラントからのα−2アドレナリン受容体アゴニストの放出を維持するのに有効な速度で、薬剤を放出する。
【0018】
本発明の態様は、α−2アドレナリン受容体アゴニストおよび生分解性ポリマー成分の混合物を押出して、インプラントが配置されている眼の視力を向上するのに有効な期間、インプラントからα−2アドレナリン受容体アゴニストの放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する、生分解性物質を形成する工程を含んで成る生分解性眼内インプラントの製造方法である。
【0019】
本発明の更なる態様は、眼の硝子体内に、生分解性ポリマーに付随したα−2アドレナリン受容体アゴニストを含む生分解性眼内インプラントを配置することにより、視力を向上または維持する方法である。この方法は、以下のような眼症状を治療するのに使用することができる:
黄斑変性症、黄斑浮腫、網膜動脈閉塞性疾患、網膜中心静脈閉塞、播種性血管内凝固障害、網膜静脈分枝閉塞、高血圧性眼底変化、眼球虚血症候群、網膜動脈微小動脈瘤、半網膜静脈閉塞、網膜中心動脈閉塞、網膜動脈分岐閉塞、頚動脈疾患(cad)、イールズ病、糖尿病関連脈管障害、非滲出性加齢性黄斑変性症、滲出性加齢性黄斑変性症、脈絡膜新生血管形成、糖尿病性網膜症、急性黄斑性視神経網膜障害、中心性漿液性脈絡網膜症、嚢胞様黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、急性多発性小板状色素上皮症、ベーチェット病、散弾網脈絡膜症、梅毒、ライム病、結核、トキソプラスマ症、中間部ブドウ膜炎、多病巣性脈絡膜炎、多発一過性白点症候群(MEWDS)、眼サルコイドーシス、後部強膜炎、ほ行性脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、フォークト・小柳・原田症候群、コーツ病、傍中心窩毛細血管拡張症、乳頭静脈炎、霜状分枝血管炎、鎌状赤血球網膜症および他の異常血色素症、血管線条、家族性滲出性硝子体網膜症、交感性眼炎、ブドウ膜炎の網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー、光線力学療法、光凝固、手術時低灌流、放射線網膜症、骨髄移植網膜症、増殖性硝子体網膜症および網膜前膜、増殖性糖尿病性網膜症、眼ヒストプラスマ症、眼トキソカラ症、推定眼ヒストプラスマ症候群、眼内炎、トキソプラスマ症、HIV感染症関連網膜疾患、HIV感染症関連脈絡膜疾患、HIV感染症関連ブドウ膜炎疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性網膜外層壊死、真菌類網膜疾患、眼球梅毒、眼球結核、びまん性片側性亜急性神経網膜炎、ハエウジ病、色素性網膜炎、網膜障害関連系統的障害、先天性静止夜盲症、コーンジストロフィー、シュタルガルト病および眼底黄点症、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー、X染色体網膜分離症、ソーズビー眼底ジストロフィー、良性中心性黄斑症、Bietti結晶質ジストロフィー、弾性線維偽黄色腫、網膜剥離、黄斑性円孔、巨大網膜裂孔、腫瘍関連網膜疾患、RPEの先天性肥大、後部ブドウ膜メラノーマ、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜腫瘍転移、網膜と網膜色素上皮との混合型過誤腫、網膜芽細胞腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜アストロチトーム、眼内リンパ系腫瘍、斑点状内脈絡膜症、急性後極部多発性小板状色素上皮症、近視性網膜変質および急性網膜色素上皮症。
【0020】
明らかに、上記方法は、正常な眼の視力を向上できる。正常な眼は、罹患していないまたは損傷を受けていない眼である。例えば、この方法は、正常な眼において、視力を(視覚の鋭敏さを改良することによって)約56%まで向上できる。この方法は、眼症状を有する眼においても、視力を向上できる。例えば、この方法は、眼症状を有する眼の視力を約23%まで向上できる。眼症状は、血管障害であり得る。あるいは、眼症状は、高眼圧によるもの、および/または網膜虚血性障害であり得る。
【0021】
インプラントは、インプラントを硝子体内に配置すると、約90日間、ポリマーからα−2アドレナリン受容体アゴニストを放出することができる。重要なことは、α−2アドレナリン受容体アゴニストが、硝子体に保持されるよりも長い期間、網膜に保持されることである。本発明の1つの態様は、視力を向上、維持、回復または矯正する方法であって、生分解性ポリマーに付随したブロモニジンを含む生分解性眼内インプラントを眼の硝子体内に配置することにより、視力を向上、維持、回復または矯正する方法である。
【0022】
本明細書に記載する個々のおよび全ての特徴、ならびにそのような特徴の2つまたはそれ以上の個々のおよび全ての組合せは、そのような組合せに含まれる特徴が互いに矛盾しないことを条件として、本発明の範囲に含まれる。さらに、任意の特徴または特徴の組合せは、本発明の任意の態様から特に除外しうる。
【0023】
本発明の付加的局面および利点は、特に添付の図面に関連して考慮する場合に、以下の説明および請求の範囲に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】0.9%リン酸塩緩衝化塩水中、37℃で測定した、酒石酸ブリモニジン含有生分解性インプラントについての累積放出プロフィールを示すグラフである。
【図2】生分解性ポリマーの異なる組み合わせを使用した遊離ブリモニジン含有生分解性インプラントについての累積放出プロフィールを示す、図1と類似のグラフである。
【図3】異なる濃度の酒石酸ブリモニジンを有する酒石酸ブリモニジン含有生分解性インプラントについての累積放出プロフィールを示す、図1と類似のグラフである。
【図4】異なる濃度の酒石酸ブリモニジンおよびポリマーブレンドを有する酒石酸ブリモニジン含有生分解性インプラントについての累積放出プロフィールを示す、図3と類似のグラフである。
【図5】異なる濃度の酒石酸ブリモニジンおよびポリマーブレンドを有するブリモニジン遊離塩基含有生分解性インプラントについての累積放出プロフィールを示す、図4と類似のグラフである。
【図6】異なる濃度の酒石酸ブリモニジンおよびポリマーブレンドを有する酒石酸ブリモニジン含有インプラント(ウエハ)についての累積放出プロフィールを示すグラフである。
【図7】異なる濃度の酒石酸ブリモニジンおよびポリマーブレンドを有するブリモニジン遊離塩基含有生分解性インプラントについての累積放出プロフィールを示す、図6と類似のグラフである。
【図8】異なる濃度の酒石酸ブリモニジンおよびポリマーブレンドを有するブリモニジン遊離塩基含有生分解性インプラントについての累積放出プロフィールを示す、図4と類似のグラフである。
【図9】ブリモニジン遊離塩基含有ウエハインプラントについての累積放出プロフィールを示す、図5と類似のグラフである。
【図10】酒石酸ブリモニジン含有生分解性インプラントまたは偽薬インプラントを投与したサルにおける、時間に対する、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)後の血管造影中のナトリウムフルオレセインの充填における遅延を示すグラフである。
【図11】酒石酸ブリモニジン含有生分解性インプラントまたは偽薬インプラントを投与したBRVOを罹患しているサルにおける、時間の関数としての中心窩厚さのグラフである。
【図12】酒石酸ブリモニジン含有生分解性インプラントまたは偽薬インプラントを投与したBRVOを罹患しているサルにおける、時間の関数としての眼圧のグラフである。
【図13】酒石酸ブリモニジン含有生分解性インプラントまたは偽薬インプラントを投与したBRVOを罹患しているサルにおける、時間の関数としての多発性ERGに対する優性/劣性応答割合のグラフである。
【図14】酒石酸ブリモニジン含有生分解性インプラントまたは偽薬インプラントを投与したBRVOを罹患しているサルにおける、時間の関数としての血流量のグラフである。
【図15】ブリモニジンインプラントまたは偽薬インプラント(X軸)のいずれかを硝子体内投与した後2週間での、正常なウサギの右目における視力に対する効果を(未処置(対照)左目の視力に対する割合として)示すロッドグラフである。
【図16】右目へのVEGF誘起損傷後1週間で同じ右目にブリモニジンインプラントまたは偽薬インプラント(X軸)のいずれかを投与してから3週間後の視力に対する効果を(未処置(対照)左目の視力に対する割合として)示すロッドグラフである。
【図17】右目への虚血性損傷誘発後11ヶ月で同じ右目にブリモニジンインプラントまたは偽薬インプラント(X軸)のいずれかを投与してから12週間後の視力に対する効果を(未処置(対照)左目の視力に対する割合として)示すロッドグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書に記載するように、1つまたはそれ以上の眼内インプラントの使用による治療薬の制御および持続投与は、望ましくない眼症状の治療を向上させることができる。インプラントは、医薬的に許容されるポリマー組成物を含んで成り、1つまたはそれ以上の医薬的に活性な薬剤、例えばα−2アドレナリン受容体アゴニストを、長期間にわたって放出するように配合される。インプラントは、1つまたはそれ以上の望ましくない眼症状を、治療または予防するために、眼の領域に直接的に、治療有効量の1つまたはそれ以上の薬剤を与えるのに有効である。従って、患者を、繰り返しの注入、または自己投与点眼剤の場合の、単に限定されたバーストの活性剤への暴露による非効率的な治療に付すのではなく、単一投与によって、治療薬が、それらを必要とする部位で使用され、しかも長期間にわたって維持される。
【0026】
本明細書の開示による眼内インプラントは、治療成分、および治療成分に付随する薬剤放出持続成分を含んで成る。本発明によれば、治療成分は、α−2アドレナリン受容体アゴニストを含んで成るか、またはそれから本質的に成るか、またはそれのみから成る。薬剤放出持続成分は、インプラントを配置した眼への治療有効量のα−2アドレナリン受容体アゴニストの放出を持続させるために、治療成分に付随している。治療有効量のα−2アドレナリン受容体アゴニストは、インプラントを眼に配置してから約1週間より長い期間にわたって放出される。
【0027】
定義
本発明の説明のために、用語の文脈が異なる意味を示す場合を除いて、このセクションで定義されるように以下の用語を使用する。
【0028】
本明細書において使用する場合、「眼内インプラント」は、眼に配置されるように構成され、サイズ設定され、またはその他の設計を施された器具または要素を意味する。眼内インプラントは、一般に、眼の生理学的条件に生体適合性であり、不利な副作用を生じない。眼内インプラントは、視覚を損なわずに眼に配置しうる。
【0029】
本明細書において使用する場合、「治療成分」は、眼の医学的症状を治療するのに使用される1つまたはそれ以上の治療薬または物質を含んで成る眼内インプラントの部分を意味する。治療成分は、眼内インプラントの個別の領域であってもよく、またはインプラント全体に均一に分布させてもよい。治療成分の治療薬は、一般に、眼科的に許容され、インプラントを眼に配置した際に不利な反応を生じない形態で使用される。
【0030】
本明細書において使用する場合、「薬剤放出持続成分」は、インプラントの治療薬の持続放出を与えるのに有効な、眼内インプラントの部分を意味する。薬剤放出持続成分は、生分解性ポリマーマトリックスであってもよく、または治療成分を含んで成るインプラントのコア領域を覆う被覆物であってもよい。
【0031】
本明細書において使用する場合、「付随する」は、混合するか、分散するか、結合するか、覆うか、または包囲することを意味する。
【0032】
本明細書において使用する場合、「眼の領域」または「眼の部位」は、眼の前区および後区を含む眼球の任意領域を一般に意味し、かつ、眼球に見出される任意の機能的(例えば、視覚用)または構造的組織、または眼球の内部または外部に部分的にまたは完全に並んだ組織または細胞層を一般に包含するが、それらに限定されない。眼領域における眼球領域の特定の例は、前眼房、後眼房、硝子体腔、脈絡膜、脈絡膜上腔、結膜、結膜下腔、強膜外隙、角膜内隙、角膜上隙、強膜、毛様体輪、外科的誘導無血管領域、網膜黄斑および網膜である。
【0033】
本明細書において使用する場合、「眼の症状」は、眼、または眼の部分または領域の1つを冒しているか、またはそれに関係している疾患、不快または症状である。一般的に言えば、眼は、眼球、および眼球を構成している組織および流体(体液)、眼周囲筋(例えば、斜筋および直筋)、ならびに眼球の中かまたは眼球に近接した視神経の部分を包含する。
【0034】
前眼症状は、水晶体包の後壁または毛様体筋の前方に位置する、前眼(即ち、眼の前方)領域または部位、例えば、眼周囲筋、眼瞼または眼球組織または流体を冒しているか、またはそれに関係している疾患、不快または症状である。従って、前眼症状は、結膜、角膜、前眼房、虹彩、後眼房(網膜の後ろであるが、水晶体包の後壁の前)、水晶体または水晶体包、および前眼領域または部位を血管新生化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒しているかまたはそれに関係している。
【0035】
従って、前眼症状は、下記のような疾患、不快または症状を包含しうる:無水晶体;偽水晶体;乱視;眼瞼痙攣;白内障;結膜疾患;結膜炎;角膜疾患;角膜潰瘍;眼乾燥症候群;眼瞼疾患;涙器疾患;涙管閉塞;近視;老眼;瞳孔障害;屈折障害および斜視。緑内障も前眼症状と考えられるが、その理由は、緑内障治療の臨床目的が、前眼房における水性液の高圧を減少させる(即ち、眼内圧を減少させる)ことでありうるからである。
【0036】
後眼症状は、後眼領域または部位、例えば、脈絡膜または強膜(水晶体包の後壁全体にわたる平面の後方位置)、硝子体、硝子体腔、網膜、視神経(即ち、視神経円板)、ならびに後眼領域または部位を血管新生化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒しているかまたはそれに関係している疾患、不快または症状である。
【0037】
従って、後眼症状は、下記のような疾患、不快または症状を包含しうる:急性斑状視神経網膜疾患;ベーチェット病;脈絡膜新生血管形成;糖尿病性ブドウ膜炎;ヒストプラスマ症;感染症、例えば、真菌またはウイルスによる感染症;黄斑変性、例えば、急性黄斑変性、非滲出性老化関連黄斑変性および滲出性老化関連黄斑変性;浮腫、例えば、黄斑浮腫、類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫;多病巣性脈絡膜炎;後眼部位または領域を冒す眼の外傷;眼腫瘍;網膜障害、例えば、網膜中心静脈閉鎖、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜動脈閉鎖性疾患、網膜剥離、ブドウ膜炎網膜疾患;交感性眼炎;フォークト−コヤナギ−ハラダ(VKH)症候群;ブドウ膜拡散;眼のレーザー治療によって生じたかまたは影響を受けた後眼症状;光ダイナミック療法によって生じたかまたは影響を受けた後眼症状;光凝固、放射線網膜症、網膜上膜疾患、網膜枝静脈閉鎖、前虚血性視神経症(anterior ischemic optic neuropathy)、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、色素性網膜炎および緑内障。緑内障は、その治療目標が、網膜細胞または視神経細胞の損傷または欠損による視力低下を予防するか、または視力低下の発生を減少させること(即ち、神経保護)であるので、後眼症状と考えることができる。
【0038】
「生分解性ポリマー」という用語は、生体内で分解する1つまたはそれ以上のポリマーを意味し、1つまたはそれ以上のポリマーの侵食は、治療薬の放出と同時かまたはそれに続いて、経時的に起こる。厳密に言えば、ポリマーの膨潤によって薬剤を放出する作用をするメチルセルロースのようなヒドロゲルは、「生分解性ポリマー」という用語から特に除外される。「生分解性」および「生体内分解性」という用語は、同意義であり、本明細書において互換的に使用される。生分解性ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、または3種類以上のポリマー単位を有するポリマーであってよい。
【0039】
本明細書において使用する場合、「治療する」、「治療すること」または「治療」という用語は、眼症状、眼の傷害または損傷の減少または回復または予防、または傷害または損傷を受けた眼組織の治癒を促進することを意味する。
【0040】
本明細書において使用する場合、「治療有効量」という用語は、眼または眼領域に有意な負のまたは不利な副作用を生じずに、眼症状を治療するか、眼傷害または損傷を減少させるかまたは予防するのに必要とされる薬剤のレベルまたは量を意味する。
【0041】
様々な期間にわたって薬剤装入量を放出することができる眼内インプラントが開発されている。これらのインプラントは、眼、例えば眼の硝子体に挿入された場合に、治療レベルのα−2アドレナリン受容体アゴニストを、長期間にわたって(例えば、約1週間またはそれ以上)与える。開示されるインプラントは、眼症状、例えば後眼症状を治療するのに有効である。
【0042】
本発明の1つの態様において、眼内インプラントは、生分解性ポリマーマトリックスを含んで成る。生分解性ポリマーマトリックスは、薬剤放出持続成分の1つのタイプである。生分解性ポリマーマトリックスは、生分解性眼内インプラントを形成するのに有効である。生分解性眼内インプラントは、生分解性ポリマーマトリックスを伴うα−2アドレナリン受容体アゴニストを含んで成る。マトリックスは、インプラントを眼の領域または眼の部位、例えば眼の硝子体に配置してから約1週間より長い期間にわたって、所定量のα−2アドレナリン受容体アゴニストの放出を持続させるのに有効な速度で分解する。
【0043】
インプラントのα−2アドレナリン受容体アゴニストは、典型的には、α−1アドレナリン受容体に比べ、α−2アドレナリン受容体を選択的に活性化する薬剤である。あるインプラントでは、α−2アドレナリン受容体アゴニストは、α−2アドレナリン受容体のサブタイプを選択的に活性化する。例えば、アゴニストは、ある条件下、例えば生理学的条件下で、α−2a、α−2b、またはα−2c受容体の1つ以上を選択的に活性化し得る。他の条件では、インプラントのアゴニストは、α−2アドレナリン受容体サブタイプに対して選択的ではないことがある。アゴニストは、受容体への結合または他のメカニズムにより、受容体を活性化できる。
【0044】
あるインプラントでは、α−2アドレナリン受容体アゴニストは、キノキサリン誘導体である。本発明のインプラントにおいて有用なキノキサリン誘導体は、以下の式を有するキノキサリン誘導体またはその医薬的に許容される酸付加塩、およびそれらの混合物である:
【化1】
(R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、1〜4個の炭素原子を含むアルキル基および1〜4個の炭素原子を含むアルコキシ基からなる群から選択される。R2は、好ましくはメチル基である。2−イミダゾリン−2−イルアミノ基は、キノキサリン環の5-、6-、7-および8-位のいずれか、好ましくは6-位に存在する。R3、R4およびR5は、それぞれ、残りのキノキサリン環の5-、6-、7-または8-位に存在し、独立して、Cl、Br、水素および1〜3個の炭素原子を含むアルキル基からなる群から選択される。R3は、好ましくはキノキサリン環の5-位に存在し、R4およびR5は、好ましくは共に水素である。特に有用な態様では、R3はBrである。)
【0045】
少なくとも1つのインプラントでは、R1は水素であり、R2は1〜4個の炭素原子を含むアルキル基から選択される。R3は、有利には、キノキサリン環の5-位に存在し、水素及び1〜3個の炭素原子を含むアルキル基から選択される。本発明で有用な化合物の1つまたはそれ以上の制約に従う全ての立体異性体、互変異性体およびそれらの混合物が、本発明の範囲に包含される。
【0046】
本発明化合物の医薬的に許容される酸付加塩は、医薬的に許容される陰イオンを含有する非毒性付加塩を形成する酸から形成される酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、沃化水素酸塩、硫酸塩または二硫酸塩、燐酸塩または酸性燐酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、蓚酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、糖酸塩およびp−トルエンスルホン酸塩である。
【0047】
より特別なインプラントでは、キノキサリン誘導体は、以下の式を有する:
【化2】
【0048】
さらなるインプラントでは、α−2アドレナリン受容体アゴニストは、下記の式を有する塩として供給される:
【化3】
【0049】
上記の塩は、酒石酸ブリモニジン(AGN 190342-F, 酒石酸5−ブロモ−6−(2−イミダゾリジニリデンアミノ)キノキサリン)として知られており、商品名Alphagan P(登録商標)でAllergan から市販されている。ブリモニジン(有機塩基)は、ブリモニジン酒石酸塩またはブリモニジン遊離塩基のいずれかで、入手できる。酒石酸塩は、種々の液体媒体に、遊離塩基よりもよく溶解する。酒石酸塩および遊離塩基は両方とも、化学的に安定であり、200℃より高い融点を有しているので、両方とも、本発明のインプラントを製造するのに適している。
【0050】
従って、インプラントは、酒石酸ブリモニジンのようなブリモニジン塩、ブリモニジン遊離塩基、またはこれらの混合物を含む、またはそれから本質的に成る、またはそれのみから成る治療成分を含み得る。
【0051】
α−2アドレナリン受容体アゴニストは、粒状または粉末形態であってよく、生分解性ポリマーマトリックスに閉じ込めうる。一般に、α−2アドレナリン受容体アゴニスト粒子は、約3000ナノメートル未満の有効平均粒度を有する。あるインプラントにおいて、粒子は、約3000ナノメートル未満のオーダーの有効平均粒度を有しうる。例えば、粒子は、約500ナノメートル未満の有効平均粒度を有しうる。他のインプラントにおいて、粒子は、約400ナノメートル未満の有効平均粒度、さらに他の態様においては、約200ナノメートル未満の粒度を有しうる。
【0052】
インプラントのα−2アドレナリン受容体アゴニストは、好ましくは、インプラントの重量に対して約10%〜90%である。より好ましくは、α−2アドレナリン受容体アゴニストは、インプラントの重量に対して約20%〜約80%である。好ましい態様において、α−2アドレナリン受容体アゴニストは、インプラントの重量の約20%(例えば、15%〜25%)を占める。他の態様において、α−2アドレナリン受容体アゴニストは、インプラントの重量の約50%を占める。
【0053】
インプラントに使用される好適なポリマー材料または組成物は、眼に適合性、即ち生体適合性であり、それによって、眼の機能または生理機能に実質的障害を生じない材料を包含する。そのような材料は、好ましくは少なくとも部分的に、より好ましくは実質的に完全に生分解性または生体内分解性である。
【0054】
有用なポリマー材料の例は、有機エステルおよび有機エーテルから誘導され、かつ/またはそれらを含有する材料であって、分解した際に、生理学的に許容される分解生成物を生じる材料(モノマーを含む)であるが、それらに限定されない。無水物、アミド、オルトエスエル等から誘導され、かつ/またはそれらを含有するポリマー材料を、単独で、または他のモノマーと組み合わせて、使用してもよい。ポリマー材料は、付加または縮合重合体、好都合には縮合重合体であってよい。ポリマー材料は、架橋または非架橋、例えば軽架橋以下であってよく、例えば、ポリマー材料の約5%未満または約1%未満が架橋されている。多くの場合、炭素および水素の他に、ポリマーは、酸素および窒素の少なくとも1つ、好都合には酸素を含有する。酸素は、オキシ、例えばヒドロキシまたはエーテル、カルボニル、例えば非オキソ−カルボニル、例えばカルボン酸エステル等として存在しうる。窒素は、アミド、シアノおよびアミノとして存在しうる。制御薬剤送達のための被包形成を記載しているHeller, Biodegradable Polymers in Controlled Drug Delivery, CRC Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 第1巻, CRC Press, Boca Raton, FL 1987, p.39-90に示されているポリマーを、本発明のインプラントに使用しうる。
【0055】
他に関心がもたれるものは、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)、および多糖類である。関心がもたれるポリエステルは、D−乳酸、L−乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸、ポリカプロラクトンおよびそれらの組合せのポリマーを包含する。一般に、L−ラクテートまたはD−ラクテートを使用することによって、ゆっくり侵食されるポリマーまたはポリマー材料が得られ、一方、ラクテートラセミ体を使用することによって、侵食が実質的に促進される。
【0056】
有用な多糖類の例は、アルギン酸カルシウム、および官能化セルロース、特に、水不溶性であることを特徴とし、分子量が例えば約5kD〜500kDの、カルボキシメチルセルロースエステルであるが、それらに限定されない。
【0057】
関心がもたれる他のポリマーは、生体適合性であり、かつ生分解性および/または生体内分解性の場合もある、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエーテルおよびそれらの組合せであるが、それらに限定されない
【0058】
本発明に使用されるポリマーまたはポリマー材料のいくつかの好ましい特徴は、生体適合性、治療成分との適合性、本発明の薬剤送達システムの製造におけるポリマーの使い易さ、少なくとも約6時間の、好ましくは約1日より長い、生理環境における半減期、硝子体の粘度を有意に増加させないこと、および水不溶性を包含しうる。
【0059】
マトリックスの形成のために含有される生分解性ポリマー材料は、酵素的または加水分解的に不安定になりやすいことが望ましい。水溶性ポリマーを、加水分解的または生分解的に不安定な架橋で架橋させて、有用な水不溶性ポリマーが得られる。安定性の程度は、モノマーの選択、ホモポリマーまたはコポリマーを使用するか、ポリマー混合物の使用、ポリマーが末端酸根を有するか、に依存して広く変化させることができる。
【0060】
インプラントに使用されるポリマー組成物の相対平均分子量も、ポリマーの生分解性、従ってインプラントの長時間放出プロフィールを調節するのに同じく重要である。種々の分子量の同じかまたは異なるポリマーの組成物を、インプラントに含有させて、放出プロフィールを調節しうる。特定のインプラントにおいて、ポリマーの相対平均分子量は、約9〜約64kD、一般に約10〜約54kD、より一般的には約12〜約45kDである。
【0061】
いくつかのインプラントにおいて、グリコール酸と乳酸のコポリマーを使用し、生分解速度をグリコール酸/乳酸の比率によって調節する。最も急速に分解されるコポリマーは、ほぼ同量のグリコール酸および乳酸を含有する。ホモポリマー、または等しくない比率を有するコポリマーは、分解に対してより抵抗性である。グリコール酸/乳酸の比率は、インプラントの脆性にも影響を与え、より大きい形状には、より柔軟性のインプラントが望ましい。ポリ乳酸ポリグリコール酸(PLGA)コポリマーにおけるポリ乳酸のパーセントは、0〜100%、好ましくは約15〜85%、より好ましくは約35〜65%にすることができる。いくつかのインプラントにおいて、50/50 PLGAコポリマーが使用される。
【0062】
眼内インプラントの生分解性ポリマーマトリックスは、2つまたはそれ以上の生分解性ポリマーの混合物を含有しうる。例えば、インプラントは、第一生分解性ポリマーおよび異なる第二生分解性ポリマーの混合物を含有しうる。1つまたはそれ以上の生分解性ポリマーは、末端酸根を有してよい。
【0063】
分解性ポリマーからの薬剤放出は、いくつかのメカニズム、またはメカニズムの組合せの結果である。これらのメカニズムのいくつかは、インプラント表面からの脱離、溶解、水和ポリマーの多孔流路からの拡散、および侵食である。侵食は、本体または表面、またはその両方の組合せであることができる。本明細書に記載するように、眼内インプラントのマトリックスは、眼への移植から1週間より長い期間にわたって、所定量のα−2アドレナリン受容体アゴニストの放出を持続させるのに有効な速度で、薬剤を放出しうる。あるインプラントでは、治療有効量のα−2アドレナリン受容体アゴニストが、移植後約30〜35日を超えない期間、放出される。例えば、インプラントは、酒石酸ブリモニジンを含んでなり、インプラントのマトリックスは、眼に配置された後、約1ヶ月間、治療有効量の酒石酸ブリモニジンの放出を維持するのに有効な速度で分解する。他の例として、インプラントは、酒石酸ブリモニジンを含んでなり、マトリックスは、40日を超える期間、例えば約6ヶ月間、治療有効量の酒石酸ブリモニジンの放出を維持するのに有効な速度で薬剤を放出する。
【0064】
生分解性眼内インプラントの一例は、異なる生分解性ポリマーの混合物からなる生分解性ポリマーマトリックスに付随したα−2アドレナリン受容体アゴニストを含む。生分解性ポリマーの少なくとも1種は、約63.3kDの分子量を有するポリラクチドである。第二生分解性ポリマーは、約14kDの分子量を有するポリラクチドである。そのような混合物は、インプラントが眼に配置された時点から約1ヶ月を超える期間、治療有効量のα−2アドレナリン受容体アゴニストの放出を維持するのに効果的である。
【0065】
生分解性眼内インプラントの別の例は、各生分解性ポリマーが約0.16dl/g〜約1.0kDの固有粘度を有する異なる生分解性ポリマーの混合物からなる生分解性ポリマーマトリックスに付随したα−2アドレナリン受容体アゴニストを含む。例えば、生分解性ポリマーの1つは、約0.3dl/gの固有粘度を有し得る。第二生分解性ポリマーは、約1.0dl/gの固有粘度を有し得る。上記の固有粘度は、25℃において、0.1%クロロホルム溶液で測定することができる。
【0066】
ある種のインプラントは、2種の異なるポリラクチドポリマーの組み合わせに付随した酒石酸ブリモニジンを含む。酒石酸ブリモニジンは、インプラントの約20重量%の量で存在する。1つのポリラクチドポリマーは約14kDの分子量と約0.3dl/gの固有粘度を有し、他方のポリラクチドポリマーは約63.3kDの分子量と約1.0dl/gの固有粘度を有する。2種のポリラクチドポリマーは、1:1の比でインプラント中に存在する。そのようなインプラントは、本明細書に記載されているように、インビトロで2ヶ月を超える期間、ブリモニジンを放出することができる。インプラントは、押出法で製造されたロッドまたはフィラメントの形状で供給される。
【0067】
生分解性ポリマーマトリックスを含有する眼内インプラントからのα−2アドレナリン受容体アゴニストの放出は、初期放出バースト、次に、放出されるα−2アドレナリン受容体アゴニストの量の漸増を含む場合があり、または該放出は、α−2アドレナリン受容体アゴニストの初期放出遅延、次に、放出増加を含む場合もある。インプラントが実質的に完全に分解した場合、放出されたα−2アドレナリン受容体アゴニストのパーセントは、約100である。既存のインプラントと比較して、本明細書に開示するインプラントは、眼に配置してから約1週間後までは、α−2アドレナリン受容体アゴニストを完全には放出しないか、または約100%を放出しない。
【0068】
インプラントの寿命にわたって、インプラントからのα−2アドレナリン受容体アゴニストの比較的定速の放出を与えることが望ましい場合がある。例えば、α−2アドレナリン受容体アゴニストが、インプラントの寿命にわたって、1日当たり約0.01μg〜約2μgの量で放出されることが望ましい場合がある。しかし、放出速度は、生分解性ポリマーマトリックスの配合に依存して変化して、増加するかまたは減少する場合もある。さらに、α−2アドレナリン受容体アゴニストの放出プロフィールは、1つまたはそれ以上の直線部分および/または1つまたはそれ以上の非直線部分を含みうる。一旦、インプラントが分解または侵食しはじめたら、放出速度はゼロより大きいことが好ましい。
【0069】
インプラントは、モノリシックである(即ち、1つまたはそれ以上の活性剤がポリマーマトリックス全体に均一に分散されている)か、または被包され、その場合、活性剤の貯留部がポリマーマトリックスによって被包されている。製造容易性により、モノリシックインプラントが、被包形態より一般に好ましい。しかし、被包された貯留部型インプラントによって得られるより優れた調節は、薬剤の治療レベルが狭い幅内にあるいくつかの状況において有利な場合もある。さらに、α−2アドレナリン受容体アゴニストを含有する治療成分を、マトリックス中に不均質に分散させてもよい。例えば、インプラントは、インプラントの第二部分に対してより高い濃度のα−2アドレナリン受容体アゴニストを有する部分を含有してよい。
【0070】
本明細書に開示する眼内インプラントは、針での投与用に、約5μm〜約2mm、または約10μm〜約1mmの大きさ、外科的移植による投与用に、1mmより大、または2mmより大、例えば3mm〜10mmの大きさであってよい。ヒトの硝子体腔は、例えば1〜10mmの長さを有する種々の形状の比較的大きいインプラントを収容することができる。インプラントは約2mm×0.75mm直径の寸法を有する円筒形ペレット(例えばロッド)であってよい。または、インプラントは、長さ約7mm〜約10mm、直径約0.75mm〜約1.5mmの円筒形ペレットであってもよい。
【0071】
インプラントは、眼、例えば硝子体へのインプラントの挿入、およびインプラントの収容の両方を容易にするように、少なくとも幾分柔軟性であってもよい。インプラントの全重量は、一般に約250〜5000μg、より好ましくは約500〜1000μgである。例えば、インプラントは約500μg、または約1000μgであってよい。非ヒト個体に関しては、インプラントの寸法および全重量は、個体の種類に依存してより大きいかまたはより小さくてよい。例えば、ウマの約30mLおよびゾウの約60〜100mLと比較して、ヒトは約3.8mLの硝子体容量を有する。ヒトに使用される大きさのインプラントを、他の動物に応じて大きくするかまたは小さくし、例えばウマ用のインプラントは約8倍大きくし、または、例えばゾウ用のインプラントは26倍大きくしうる。
【0072】
例えば、中心が1つの材料で形成され、表面が同じかまたは異なる組成物の1つまたはそれ以上の層を有し、層が架橋しているか、または異なる分子量、異なる密度または多孔率等であるインプラントを製造することができる。例えば、薬剤の初期ボーラスを急速に放出することが望ましい場合、中心が、ポリラクテート−ポリグリコレートコポリマーで被覆されたポリラクテートであってよく、それによって初期分解速度を増加しうる。または、中心が、ポリラクテートで被覆されたポリビニルアルコールであってもよく、それによって、外側のポリラクテートの分解時に、中心が溶解し、眼から急速に流れ出るようにしうる。
【0073】
インプラントは、繊維、シート、フィルム、微小球、球体、円板、プラク等を包含する任意の形状であってよい。インプラントの大きさの上限は、インプラントに関する許容性(toleration for the implant)、挿入時の大きさ制限、取扱い容易性等のような要因によって決定される。シートまたはフィルムを使用する場合、シートまたはフィルムは、取扱い容易性のために、少なくとも約0.5mm×0.5mm、一般に約3〜10mm×5〜10mm、厚さ約0.1〜1.0mmである。繊維を使用する場合、繊維の直径は、一般に約0.05〜3mmであり、繊維の長さは一般に約0.5〜10mmである。球体は、直径約0.5μm〜4mmであり、他の形状の粒子に匹敵する容量を有しうる。
【0074】
インプラントの大きさおよび形は、放出速度、治療期間、および移植部位における薬剤濃度を調節するために使用することもできる。より大きいインプラントは、比例的により高い投与量を送達するが、表面積/質量比に依存して、より遅い放出速度を有する場合もある。移植部位に適合させるために、インプラントの特定の大きさおよび形状を選択する。
【0075】
α−2アドレナリン受容体アゴニスト、ポリマーおよび任意の他の調節剤の比率は、変化する比率においていくつかのインプラントを処方することによって経験的に決定しうる。USP承認の溶解または放出試験方法を使用して、放出速度を測定することができる(USP 23;NF 18(1995), p.1790-1798)。例えば、無限沈下法(infinite sink method)を使用して、秤量したインプラント試料を、水中に0.9%NaClを含有する測定容量の溶液に添加すると、該溶液容量は、放出後の薬剤濃度が飽和の5%未満であるような容量になる。混合物を37℃に維持し、ゆっくり撹拌して、インプラントを懸濁状態に維持する。時間の関数としての溶解薬剤の外観を、当分野で既知の種々方法、例えば、分光光度的に、HPLC、質量分析等によって、吸収が一定になるまでか、または90%を超える薬剤が放出されるまで、追跡しうる。
【0076】
本明細書に開示される眼内インプラントに含有されるα−2アドレナリン受容体アゴニストに加えて、眼内インプラントは、1つまたはそれ以上の付加的な眼科的に許容される治療剤も含有しうる。例えば、インプラントは、1つまたはそれ以上の抗ヒスタミン薬、1つまたはそれ以上の抗生物質、1つまたはそれ以上のβ遮断薬、1つまたはそれ以上のステロイド、1つまたはそれ以上の抗新生物薬、1つまたはそれ以上の免疫抑制薬、1つまたはそれ以上の抗ウイルス薬、1つまたはそれ以上の酸化防止剤、およびそれらの混合物を含有しうる。
【0077】
本発明のシステムに使用しうる薬理学的または治療的薬剤は、米国特許第4474451号第4〜6欄、および同第4327725号第7〜8欄に開示されている薬剤を包含するが、それらに限定されない。
【0078】
抗ヒスタミン薬の例は、ロラダチン、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、ブロムフェニルアミン、シプロヘプタジン、テルフェナジン、クレマスチン、トリプロリジン、カルビノキサミン、ジフェニルピラリン、フェニンダミン、アザタジン、トリペレナミン、デクスクロルフェニラミン、デクスブロムフェニラミン、メトジラジン、およびトリメプラジン、ドキシラミン、フェニラミン、ピリラミン、キオルシクリジン、トンジラミン、ならびにそれらの誘導体であるが、それらに限定されない。
【0079】
抗生物質の例は、セファゾリン、セフラジン、セファクロール、セファピリン、セフチゾキシム、セフォペラゾン、セフォテタン、セフトキシム(cefutoxime)、セフォタキシム、セファドロキシル、セフタジジム、セファレキシン、セファロチン、セファマンドール、セフォキシチン、セフォニシド、セフォラニド、セフトリアキソン、セファドロキシル、セフラジン、セフロキシム、アンピシリン、アモキシリン、シクラシリン、アンピリシン、ペニシリンG、ペニシリンVカリウム、ピペラシリン、オキサシリン、バカンピシリン、クロキサシリン、チカルシリン、アズロシリン、カルベニシリン、メチシリン、ナフシリン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、アズトレオナム、クロラムフェニコール、塩酸シプロフロキサシン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、ゲンタマイシン、リンコマイシン、トブラマイシン、バンコマイシン、硫酸ポリミキシンB、コリスチメテート、コリスチン、アジスロマイシン、オーグメンチン、スルファメトキサゾール、トリメトプリム、およびそれらの誘導体であるがそれらに限定されない。
【0080】
β遮断薬の例は、アセブトロール、アテノロール、ラベタロール、メトプロロール、プロプラノロール、チモロール、およびそれらの誘導体である。
【0081】
ステロイドの例は、コルチコステロイド、例えば、コルチゾン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、デキサメタゾン、メドリゾン、ロテプレドノール(loteprednol)、フルアザコート、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、ベタメタゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、リアムシノロンヘキサカトニド、酢酸パラメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノニド、フルオシノロン、トリアムシノロン、それらの誘導体、ならびにそれらの混合物である。
【0082】
抗新生物薬の例は、アドリアマイシン、シクロホスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ジュアノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、メトトレキサート、フルオロウラシル、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、メチル−CCNU、シスプラチン、エトポシド、インターフェロン、カンプトテシンおよびその誘導体、フェネステリン、タキソールおよびその誘導体、タキソテールおよびその誘導体、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タモキシフェン、エトポシド、ピポスルファン、シクロホスファミド、およびフルタミド、ならびにそれらの誘導体である。
【0083】
免疫抑制薬の例は、シクロスポリン、アザチオプリン、タクロリムスおよびそれらの誘導体である。
【0084】
抗ウイルス薬の例は、インターフェロンガンマ、ジドブジン、塩酸アマンタジン、リバビリン、アシクロビル、バルシクロビル、ジデオキシシチジン、ホスホノ蟻酸、ガンシクロビルおよびそれらの誘導体である。
【0085】
酸化防止剤の例は、アスコルベート、α−トコフェロール、マンニトール、還元型グルタチオン、種々のカロテノイド、システイン、尿酸、タウリン、チロシン、スーパーオキシドジスムターゼ、ルテイン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、アスタザンチン(astazanthin)、リコペン、N−アセチル−システイン、カルノシン、γ−グルタミルシステイン、ケルセチン、ラクトフェリン、ジヒドロリポ酸、シトレート、イチョウエキス、茶カテキン、ビルベリーエキス、ビタミンEまたはビタミンEのエステル、レチニルパルミテート、およびそれらの誘導体である。
【0086】
他の治療薬は、スクアラミン、炭酸脱水酵素阻害薬、αアゴニスト、プロスタミド、プロスタグランジン、駆虫薬、抗真菌薬、およびそれらの誘導体を包含する。
【0087】
個々にまたは組み合わせてインプラントに使用される1つまたはそれ以上の活性剤の量は、必要とされる有効投与量、およびインプラントからの所望放出速度に依存して広く変化する。通常、薬剤は、インプラントの少なくとも約1wt%、より一般的には少なくとも約10wt%であり、かつ、一般に約80wt%以下、より一般的には約40wt%以下である。
【0088】
本明細書に開示する眼内インプラントは、治療成分に加えて、有効量の緩衝剤、防腐剤等も含有しうる。好適な水溶性緩衝剤は、アルカリおよびアルカリ土類炭酸塩、燐酸塩、炭酸水素塩、クエン酸塩、硼酸塩、酢酸塩、琥珀酸塩等、例えば、燐酸、クエン酸、硼酸、酢酸、炭酸水素、炭酸等を包含するが、それらに限定されない。これらの緩衝剤は、システムのpHを約2〜約9、より好ましくは約4〜約8に維持するのに充分な量で存在するのが好都合である。従って、緩衝剤は、全インプラントの約5wt%もの量で存在する場合もある。好適な水溶性防腐剤は、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルベート、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硼酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、パラベン、メチルパラベン、ポリビニルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール等、およびそれらの混合物を包含する。これらの防腐剤は、0.001〜約5wt%、好ましくは0.01〜約2wt%の量で存在しうる。本発明のインプラントの少なくとも1つにおいて、例えばα−2アドレナリン受容体アゴニストがブリモニジンである場合に、purite 防腐剤がインプラントに供給される。すなわち、そのようなインプラントは、治療有効量のAlphagan P(登録商標)を含み得る。
【0089】
ある場合には、同じかまたは異なる薬理学的物質を使用して、インプラントの混合物を使用しうる。この場合、単一投与によって二相または三相放出を与える放出プロフィールの組み合わせが得られ、放出のパターンがかなり変化しうる。
【0090】
さらに、米国特許第5869079号に記載されているような放出調節剤もインプラントに含有させてよい。使用される放出調節剤の量は、所望の放出プロフィール、調節剤の活性、および調節剤の不存在下のα−2アドレナリン受容体アゴニストの放出プロフィールに依存する。電解質、例えば塩化ナトリウムおよび塩化カリウムも、インプラントに含有させてよい。緩衝剤または促進剤が親水性である場合、それは放出促進剤としても作用しうる。親水性添加剤は、薬剤粒子を囲んでいる材料のより速い溶解(これは、露出した薬剤の表面積を増加させ、それによって薬剤の生体内分解速度を増加させる)によって、放出速度を増加させる作用をする。同様に、疎水性緩衝剤または促進剤は、よりゆっくり溶解し、薬剤粒子の露出を遅くし、それによって薬剤の生体内分解速度を遅くする。
【0091】
あるインプラントでは、インプラントはブリモニジンまたは酒石酸ブリモニジンを含み、生分解性ポリマーマトリックスは、眼へのインプラントの移植後、約3〜6ヶ月にわたり、約0.1mg〜約0.5mgの間の量のブリモニジンを放出または送達することができる。インプラントは、ロッドまたはウエハの形状にされる。ロッド状インプラントは、720μmのノズルから押し出したフィラメントを1mgに切断して、得ることができる。ウエハ状インプラントは、約2.5mmの直径、約0.127mmの厚さおよび約1mgの重さを有する円板であってよい。
【0092】
提案される3ヶ月放出製剤は、PLAマトリックスまたはPOEマトリックス内に酒石酸ブリモニジンを含むロッド、ウエハまたは微小球の形状で、滅菌され、生体分解性であり得る。インプラントは、薬剤の消費を遅延し、繰り返し移植の必要性を3ヶ月間抑制し、それにより合併症の危険を小さくするように、設計される。
【0093】
種々の方法を使用して、本明細書に開示するインプラントを製造しうる。有用な方法は、溶媒蒸発法、相分離法、界面法、成形法、射出成形法、押出法、同時押出法、カーバープレス(carver press)法、ダイ打抜き法、熱圧縮法、それらの組合せ等であるが、必ずしもそれらに限定されない。
【0094】
特定の方法が、米国特許第4997652号に記載されている。押出法を使用して、製造における溶媒の必要性を回避しうる。押出法を使用する場合、ポリマーおよび薬剤は、製造に必要とされる温度(一般に、低くとも約85℃)において安定であるように選択される。押出法は、約25℃〜約150℃、より好ましくは約65℃〜約130℃の温度を使用する。インプラントは、薬剤/ポリマー混合のために、約0〜1時間、0〜30分間、または5〜15分間にわたって、温度を約60℃〜約150℃、例えば約130℃にすることによって製造しうる。例えば、時間は、約10分間、好ましくは約0〜5分間であってよい。次に、インプラントを、約60℃〜約130℃、例えば約75℃の温度で押し出す。
【0095】
さらに、インプラントを同時押出してもよく、それによってインプラントの製造の間に、コア領域に被膜を形成しうる。
【0096】
圧縮法を使用してインプラントを製造してもよく、圧縮法は、一般に、押出法より速い放出速度のインプラントを生じる。圧縮法は、約50〜150psi、より好ましくは約70〜80psi、さらに好ましくは約76psiの圧力を使用し、約0℃〜約115℃、より好ましくは約25℃の温度を使用する。
【0097】
本発明のインプラントは、2〜3mmの強膜切開後の鉗子またはトロカールによる配置を包含する種々の方法によって、眼、例えば眼の硝子体腔に挿入しうる。インプラントを眼に挿入するのに使用しうる器具の1つの例は、米国特許出願公開第2004/0054374号に開示されている。配置方法は、治療成分または薬剤放出速度論に影響を与えうる。例えば、トロカールでのインプラントの送達は、鉗子による配置より、硝子体内に深くインプラントを配置し、それによって、インプラントを硝子体の縁により近づけうる。インプラントの位置は、要素の周囲の治療成分または薬剤の濃度勾配に影響を与える場合があり、従って、放出速度に影響を与えうる(例えば、硝子体の縁の近くに配置するほど、より遅い放出速度を生じうる)。
【0098】
本発明のインプラントは、眼の血管閉塞、例えば網膜血管閉塞を軽減するために、ある期間、眼にα−2アドレナリン受容体アゴニストを放出するように構成される。網膜血管閉塞は、種々の疾病、例えば網膜動脈閉塞疾患、網膜中心静脈閉塞、播種性血管内凝固障害、網膜静脈分枝閉塞、高血圧性眼底変化、眼球虚血症候群、網膜動脈微小動脈瘤、半網膜静脈閉塞、網膜中心動脈閉塞、網膜動脈分岐閉塞、頚動脈疾患(cad)、イールズ病および糖尿病関連脈管障害に起因する。α−2アドレナリン受容体アゴニスト含有インプラントを眼の硝子体に移植することにより、アゴニストが眼にある血管内の閉塞を減少させるのに効果的であると考えられる。
【0099】
加えて、本発明のインプラントは、患者の緑内障を治療するのに有効な期間、治療有効量でα−2アドレナリン受容体アゴニストを放出するように構成され得る。
【0100】
本明細書に開示するインプラントは、下記のような疾患または症状の治療に有効でありうる、前記の他の治療薬を放出するように構成してもよい。
【0101】
黄斑症/網膜変性:
非滲出性老化関連黄斑変性(ARMD)、滲出性老化関連黄斑変性(ARMD)、脈絡膜新生血管形成、糖尿病性網膜症、急性斑状視神経網膜疾患、中心性漿液性脈絡網膜症、類嚢胞黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫。
【0102】
ブドウ膜炎/網膜炎/脈絡膜炎:
急性多発性斑状色素上皮症、ベーチェット病、バードショット(Birdshot)網膜脈絡膜症、感染症(梅毒、ライム病、結核、トキソプラズマ症)、中間部ブドウ膜炎(扁平部炎)、多病巣性脈絡膜炎、多発性一過性白点症候群(Multiple Evanescent White Dot Syndrome)(MEWDS)、眼類肉腫症、後強膜炎、ほ行性脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、フォークト−コヤナギ−ハラダ(VKH)症候群。
【0103】
血管疾患/滲出性疾患:
コーツ病、傍中心窩(parafoveal)毛細管拡張症、乳頭静脈炎、霜状分岐血管炎、鎌状赤血球網膜症および他の異常ヘモグロビン症、網膜色素線条症、家族性滲出性硝子体網膜症。
【0104】
外傷性/外科性:
交感神経性眼炎、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー、PDT、光凝固、手術時低灌流、放射線性網膜症、骨髄移植性網膜症。
【0105】
増殖性疾患:
増殖性硝子体網膜症および網膜上膜、増殖性糖尿病性網膜症。
【0106】
感染性疾患:
眼ヒストプラスマ症候群、眼トキソカラ症、推定眼ヒストプラスマ症候群(POHS)、眼内炎、トキソプラスマ症、HIV感染関連網膜疾患、HIV感染関連脈絡膜疾患、HIV感染関連ブドウ膜炎疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性外網膜壊死、真菌性網膜疾患、眼梅毒、眼結核、広汎性片側性亜急性視神経網膜炎、ハエウジ病。
【0107】
遺伝性疾患:
網膜色素変性、網膜ジストロフィー関連全身性疾患、先天性停在夜盲症、錐体ジストロフィー、スタルガルト病、黄色斑眼底、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー(Pattern Dystrophy of the Retinal Pigmented Epithelium)、X染色体性網膜分離、ソーズビー眼底ジストロフィー、良性同心性黄斑症、ビエッティ結晶性ジストロフィー(Bietti’s Crystalline Dystrophy)、弾性線維性仮性黄色腫。
【0108】
網膜断裂/円孔:
網膜剥離、斑状円孔、巨大網膜断裂。
【0109】
腫瘍:
腫瘍、RPEの先天性肥大、後部ブドウ膜黒色腫、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜転移、網膜および網膜色素上皮の複合過誤腫、網膜芽細胞腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜星状細胞腫、眼内リンパ系腫瘍。
【0110】
その他:
点状内脈絡膜症、急性後多発性斑状色素上皮症、近視性網膜変性、急性網膜色素上皮炎等。
【0111】
1つの態様において、インプラント、例えば、本明細書に開示するインプラントを、ヒトまたは動物患者、好ましくは生体ヒトまたは動物の、眼の後区に投与する。少なくとも1つの態様において、眼の網膜下腔に接近せずに、インプラントを投与する。例えば、患者の治療法は、後眼房に直接的にインプラントを配置することを含みうる。他の態様において、患者の治療法は、硝子体内注入、結膜下注入、テノン下注入、眼球後注入および脈絡膜上注入の少なくとも1つによって、患者にインプラントを投与することを含みうる。
【0112】
少なくとも1つの態様において、患者における網膜血管閉塞を減少させる方法は、本明細書に開示する1つまたはそれ以上のα−2アドレナリン受容体アゴニストを含有する1つまたはそれ以上のインプラントを、硝子体内注入、結膜下注入、テノン下注入、眼球後注入および脈絡膜上注入の少なくとも1つによって、患者に投与することを含んで成る。適切な太さの針、例えば、27ゲージ針または30ゲージ針を含む注入器具を効果的に使用して、ヒトまたは動物の眼の後区に組成物を注入することができる。インプラントからのα−2アドレナリン受容体アゴニストの長期間放出により、繰り返しの注入が必要でない場合が多い。
【0113】
本発明の他の局面において、下記を含んで成る眼疾患治療用キットを提供する:a)α−2アドレナリン受容体アゴニスト、例えばブリモニジン遊離塩基または酒石酸ブリモニジン(例えばAlphagan-P)を含有する治療成分および薬剤放出持続成分を含んで成る長期間放出インプラントを含有する容器、およびb)使用説明書。使用説明書は、インプラントの取扱い方法、眼領域へのインプラントの挿入方法、およびインプラントの使用により予期される事柄を含みうる。
【実施例】
【0114】
実施例1
ブリモニジンおよび生分解性ポリマーマトリックスを含有するインプラントの製造および試験
酒石酸ブリモニジンまたはブリモニジン遊離塩基を、生分解性ポリマー組成物と、ステンレス鋼乳鉢において合わすことによって、生分解性インプラントを製造する。その組合せを、96RPMに設定したTurbulaシェーカーで15分間混合する。粉末ブレンドを、乳鉢の壁からこすり取り、次に、さらに15分間再混合する。混合した粉末ブレンドを、所定の温度で合計30分間にわたって半溶融状態に加熱し、ポリマー/薬剤メルトを形成する。
【0115】
9ゲージのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)管を使用してポリマー/薬剤メルトをペレット化し、ペレットをバレルに装填し、材料を所定コア押出温度でフィラメントに押し出すことによって、ロッドを製造する。次に、フィラメントを、約1mgサイズのインプラントまたは薬剤送達システムに切る。ロッドは、約2mm長さ×0.72mm直径の寸法を有する。ロッドインプラントは、約900μg〜1100μgの重さである。
【0116】
所定温度においてCarverプレスでポリマーメルトを平板化し、該平板材料を、それぞれ約1mgのウエハに切ることによって、ウエハを形成する。ウエハは、直径約2.5mm、厚さ約0.13mmである。ウエハインプラントは、約900μg〜約1100μgの重さである。
【0117】
生体外放出試験を、最初に6回、後に4回、インプラント(ロッドまたはウエハ)の各ロットについて行った。各インプラントを、37℃において、燐酸緩衝生理食塩水10mLと共に、24mLのネジ蓋バイアルに入れ、第1、4、7、14、28日およびその後2週間ごとに、1mLアリコートを取り、等容量の新しい媒質と交換した。
【0118】
薬剤アッセイは、HPLC(Waters 2690 Separation Module(または2696)、およびWaters 2996 Photodiode Array Detectorから成る)によって行ってよい。30℃に加熱したUltrasphere, C-18(2), 5μm;4.6×150mmカラムを分離に使用し、検出器は264nmに設定した。移動相は、流速1mL/分および合計実行時間12分/試料の(10:90)MeOH緩衝移動相であった。緩衝移動相は、(68:0.75:0.25:31)13mM 1−ヘプタンスルホン酸、ナトリウム塩−氷酢酸−トリエチルアミン−メタノールを含んで成ってよい。放出速度は、時間の経過に伴って、所定容量の媒質に放出された薬剤量(μg/日)を算出することによって求めた。
【0119】
インプラント用に選択されるポリマーは、例えば、Boehringer Ingelheimから得ることができる。ポリマーは、RG502、RG752、R202H、R203およびR206、ならびにPurac PDLG(50/50)である。RG502は、(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、RG752は、(75:25)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、R202Hは、酸末端基または末端酸根を有する100%ポリ(D,L−ラクチド)であり、R203およびR206は両方とも100%ポリ(D,L−ラクチド)である。Purac PDLG(50/50)は、(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)である。RG502、RG752、R202H、R203およびR206、ならびにPurac PDLGの固有粘度は、それぞれ、0.2、0.2、0.2、0.3、1.0および0.2dL/gである。RG502、RG752、R202H、R203、R206およびPurac PDLGの平均分子量は、それぞれ、11700、11200、6500、14000、63300および9700ダルトンである。
【0120】
合計53個の製剤を調製した。31個はロッドであり、22個はウエハであった。ロッド製剤の内、4個は、3ヶ月を超える期間放出し、3個は、6ヶ月を超える期間放出した。ウエハ製剤の内、7個は、3ヶ月を超える期間放出し、4個は、6ヶ月を超える期間放出した。
【0121】
ロッド製剤のリストを表1に示し、ウエハ製剤のリストを表2に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
ロッド製剤
5種の異なるポリマーRG752、RG502、R203、R206およびR202Hを用い、それぞれ、酒石酸ブリモニジンおよびブリモニジン遊離塩基を50%w/wの薬剤用量で、最初の10個の製剤を調製した。放出プロフィールを、酒石酸ブリモニジンに関しては図1に、ブリモニジン遊離塩基に関しては図2に示す。
【0125】
殆どの場合、酒石酸ブリモニジンを用いて調製した製剤は、RG502を除いて、同じポリマーを用いてブリモニジン遊離塩基から調製したものより初期バーストが速かった。また、データによれば、ポリ(D,L−ラクチド)マトリックス(R203、R206およびR202H)の製剤の場合、ブリモニジン遊離塩基は、約30日間の遅延時間があったが、酒石酸ブリモニジンは、第1日目(F5およびF7)に完全に放出したことが示された。これは、インプラントの表面上での酒石酸ブリモニジンの溶解が速いためであろう。
【0126】
R203およびR206を用いて、50%未満の薬剤用量の数種の製剤を調製した。その放出プロフィールを図3に示す。薬剤用量が50%から25%に減少した時、劇的な効果が観察された。例えば、製剤#9をR206中の25%酒石酸ブリモニジンで調製すると、安定状態になる前の105日後の総放出量が89%であった。R206中50%酒石酸ブリモニジンである製剤#7と比較すると、後者は1日で100%放出した。同様に、製剤#10をR203中25%酒石酸ブリモニジンで調製すると、安定状態になる前の105日後の総放出量が90%であった。これを製剤#5と比較すると、後者は1日で74%放出した。
【0127】
R206(F24)中の20%酒石酸ブリモニジンについては、放出し始める前に14日の遅延期間が存在し、最終的に134日後に89.5%の放出に達した。R206(F16)中の15%酒石酸ブリモニジンで、放出を開始する前に遅延期間が28日に延び、最終的に175日後に97.6%に達した。
【0128】
製剤#9および#10の放出プロフィールは、1つのポリマーが早期放出をするともう1つは遅延放出するが、両方とも同じ時間で同じ終点に達するという、正反対ではあるが相補的な挙動を示した。両ポリマーをより低い薬剤用量で組合せた場合、図4に示すように、より直線的でより長い放出プロフィールが得られるであろう。
【0129】
データにより、製剤#17、20%酒石酸ブリモニジン/(1:1)R203/R206が、6ヶ月放出インプラント用の所望のインビトロ放出プロフィールを持つことが示された。これは、175日後に約90%の酒石酸ブリモニジンを放出した。また、R203およびR206の割合を変化させることによって、同じ薬剤用量(製剤#17、#18および#53)であっても、異なる放出プロフィールを得られるであろうことが示された。
【0130】
より直線的な放出プロフィールを得ることができるかどうか確かめるために、ブリモニジン遊離塩基とポリマーブレンドとの製剤も調製した。各ポリマーにおける、水性媒体での低溶解度およびその放出特徴がわかって、RG502-RG752およびRG502-R203の異なる組合せを調製した。放出プロフィールを図5に示す。
【0131】
3種全ての製剤の放出期間は約2ヶ月であったが、3種全て、1〜2週間の間の遅延期間を示した。2種の製剤(F32およびF33)を、ピューラックポリマー、PDLG(50/50)-Mw9700を用い、1つは酒石酸ブリモニジンと、もう1つはブリモニジン遊離塩基とで調製した。
両製剤とも高い標準偏差の高速放出であった。したがって、放出試験は、7日後に中止した。
【0132】
ウエハ製剤
3種の既存のロッド製剤からウエハ製剤の第一セットを調製した。具体的には、それぞれ、105日後の放出が89.4%に達するもの、175日後の放出が89.2%に達するもの、および175日後の放出が102%に達するものである、製剤#9、#17および#18である。第一の3種ウエハ製剤の放出プロフィールを図6に示す。
【0133】
これらに相当するロッドの放出期間は3〜4ヶ月であったが、これら3種の製剤の放出期間は2〜3週間しかなかった。これは、ウエハの表面積がロッドに比べて増えていることによるのであろう。ウエハ形状では、薬剤用量も薬剤放出期間を決定する。したがって、薬剤用量を20〜25%から15%および10%に減少し、放出プロフィールを図7および8に示す。
【0134】
15%の薬剤用量では、製剤#7の35日後の累積放出が51.4%であり、一方製剤#47、49および52の99日後の累積放出は、それぞれ、93.2%、92.8%および88.5%であった。後者の3種の製剤は、4ヶ月薬剤送達システムとして、有効であり得る。
【0135】
10%の薬剤用量では、製剤#46、#48、#50および#51の133日後の累積放出が、それぞれ、83.8%、98.0%、92.7%および89.2%であった。これら4種の製剤は、5ヶ月薬剤送達システムとして有効であり得る。図7および8は、全ての製剤に関して、薬剤用量の減少により、より長い放出期間だけでなく、より直線的な放出プロフィールが得られることを実証している。また、これらの図は、R206のように単一のポリマーに代えてポリマーブレンドを使用することにより、より低い標準偏差を持つ、より直線的な放出プロフィールが得られるはずであることも示している。
【0136】
3種のウエハ製剤を、先の3種のロッド製剤#26、#27および#28から調製した。放出プロフィールを図9に示す。3種のウエハ製剤は、28日で、これらに相当するロッド製剤より若干速く放出し、31〜55日の間で完全に放出することが予想された。
【0137】
結論
酒石酸ブリモニジンから調製された15種のロッド製剤のうち、3種の製剤の放出期間は3ヶ月を超え(F9、F10およびF53)、2種の製剤の放出期間は4ヶ月を超え(F24およびF25)、3種の製剤の放出期間は6ヶ月に近かった(F16、F17およびF18)。ブリモニジン遊離塩基から調製された8種のロッド製剤のうち、3種の放出期間が2ヶ月を超えていた(F26、F27およびF28)。
【0138】
22種のウエハ製剤のうち、11種は酒石酸ブリモニジンから調製され、11種はブリモニジン遊離塩基から調製された。酒石酸ブリモニジンから調製された11種のウエハ製剤のうち、3種の放出期間は約4ヶ月(F47、F49およびF52)であり、4種の放出期間は4ヶ月と5ヶ月との間(F46、F48、F50およびF51)であった。ブリモニジン遊離塩基から調製された11種のウエハのうち、4種の放出期間は3ヶ月と4ヶ月との間(F35、F36、F38およびF39)であり、5種の放出期間は1ヶ月と2ヶ月との間(F34、F37、F41、F42およびF43)であった。
【0139】
一般的に、酒石酸ブリモニジンまたはブリモニジン遊離塩基から調製されたウエハ製剤は、それらに相当するロッド製剤より早く放出した。
【0140】
実施例2
ブリモニジンおよび生分解性ポリマーマトリックスを含有する眼内インプラントのインビボ試験
カニクイザルを無作為に選び、偽薬(n=2)あるいはブリモニジン(n=2)を処方した硝子体内インプラントを与えた。ベースライン測定を移植の3日前に行い、移植から10日後、眼圧(IOP)、mfERG、レーザードップラースキャントポグラフィ/血流計測(HRT/HRF)、光干渉トポグラフィ(OCT)、インドシアニングリーンによる血管造影(ICG)および蛍光眼底血管造影(FA)を測定した。
【0141】
それぞれ、200μgのブリモニジンまたは偽薬を処方した、3種のインプラント(実施例1で記載した製剤#17)を、MVRブレード(OS)で作った孔を介して眼内の硝子体内に移植し、孔は縫合して閉じた。広角コンタクトレンズ眼底撮影によって、インプラント数および配置を検証した。
【0142】
網膜静脈分枝閉塞(BRVO)を1mlの20mg/kgローズベンガルの静脈内投与によって起こし、次いで、Omni Coherent Diode レーザーを用い、532nm、600mW、スポットサイズ50μm、1.6×インバージョンコンタクトレンズでのパルスモード0.01秒で熱照射した。レーザーパルスは、静脈部が閉じるまで送った。ブリモニジンで処置された1匹のサルは235パルス受け、他のサルは78パルス受けた。偽薬で処理された1匹のサルは43パルス受け、他のサルは31パルス受けた。静脈の血管閉塞が視神経頭から約1ディスク直径の上方の弧中に誘発された。閉塞は、眼底撮影によるポストレーザーで検証した。
【0143】
BRVO後1日目の眼底観察において、偽薬インプラントを受けた2匹のサルは、ひどい網膜浮腫、および点状、斑状出血、血管蛇行、綿花状白斑を伴う、劇的な網膜症および血管障害を示した。蛍光眼底血管造影によって静脈閉塞を検証し、レーザーが照射された領域から上流に行く血流を止め、遅延相フルオロセインリークおよび網膜毛細血管からの貯留を明らかにした。ブリモニジンインプラントを受けたサルには、5個未満の小さい点状、斑状出血と、上網膜に位置する網膜浮腫があった。ブリモニジンサルにおける蛍光眼底血管造影によって、最小の血流うっ血を伴う、一度閉塞した静脈の血流の再開が示された。
【0144】
ブリモニジン含有インプラントは、図10に示すように、血管閉塞の持続時間は減少した。閉塞静脈のフルオロセイン充填の遅延時間は、Metamorph 6.0ソフトウエアを使用して定量した。強度測定は、所定の興味領域で蛍光眼底血管造影の初期相と遅延相に関し測定し、充填時間における遅延時間およびフルオロセインのクリアランスにおける観察遅延時間を定量化した。ベースライン蛍光眼底血管造影充填から閉塞静脈におけるフルオロセイン(秒)の初期相の遅延時間を図10に示す。
【0145】
OCTシングルラインスキャン(6mm)からの中心窩厚測定により、偽薬群における血管閉塞の結果、網膜浮腫の増加が示されている。ブリモニジン含有インプラントは、血管閉塞関連網膜浮腫の規模を減少させた。一連のラインスキャン(3mm2をカバー)で、閉塞静脈を取り巻く上位領域内の網膜の厚さにおける変化を下位網膜中の厚さ変化と直接比較する。偽薬サルにおける網膜浮腫は、液体蓄積が網膜の下方領域で起きるほど顕著であった。これに対しブリモニジン群は、図11に示すように、ベースラインと比べ下方の網膜浮腫において、有意な変化が起きなかった。
【0146】
全追跡電気生理学的および網膜イメージング法の前に、3通りのポストインプラントにおいて、各群について、眼圧(IOP)を記録(ODおよびOS)した。図12に示すように、ブリモニジンインプラントは、BRVOの前あるいはその間に、眼内のIOPを有意に減少させなかった。
【0147】
VERIS5.0システムを用い、多焦点ERGを行った。241個の六角形の刺激フィールドを位置づけ、上網膜および網膜中心窩の応答を記録した。偽薬群では、中心窩応答がBRVO誘発後3〜4週間の間なかった。一方、ブリモニジン群の中心窩応答は僅かに下がったが、実験の残りではBRVOの後1日目に回復および/または高い中心窩応答で発現した。図13のグラフは、両群に関する上方/下方%応答を示す。偽薬で処置されたサルにおけるBRVOは、応答網膜機能は殆どなく、実験では回復が遅れる傾向にあったが、ブリモニジンインプラントを使用するものは比較的一貫した網膜機能があった。
【0148】
レーザードプラー血流計測(HRF)を使用して、中心窩、上方および下方網膜領域の血流を測定した。図14のグラフは、中心窩を中心とした10〜20度ゾーンで獲得した血流測定の結果を示す。中心窩での血流は、BRVO後のブリモニジン群では変化しなかったようであるが、偽薬群では、BRVOの後、1日目に急激に上昇した。
【0149】
3種のブリモニジン眼内インプラントの硝子体内への適用により、サルにおいて、局在した血管閉塞の規模および持続時間ならびに関連する血管障害および網膜症が小さくなった。
【0150】
さらに、静脈の近くで必要なレーザー焼成の量は、ブリモニジン群が偽薬に比べて多かった(ブリモニジン:157±79、n=2、偽薬:37±6、n=2)。総合すると、これらのデータは、ブリモニジンが存在することで、網膜血管の閉塞を起きにくくし、閉塞の持続時間が短縮されることを示す。
【0151】
実施例3
ブリモニジンおよび生分解性ポリマーマトリックスを含む眼内インプラントでの緑内障の治療
68歳の女性は担当医に見えづらくなってきたと訴えている。担当医は、患者の眼圧レベルが上がってきていると判断し、彼女は緑内障であると診断する。200μgの酒石酸ブリモニジンと、800μgの生分解性ポリマーの混合物(先の実施例1に記載したような、R203およびR206、比1:1)とを含むインプラントを、トロカールを使用して、女性の両目の硝子体中に配置する。約2日後、おそらく眼圧の低下により、女性は自分の目に変化が起きていることに気づき始め、インプラント施術後、約5ヶ月で、視力を失うことは避けられる。
【0152】
実施例4
種々の活性剤を使用する眼症状の治療
上述の実施例における手順に従って、本明細書に記載する剤を含む種々の活性剤でインプラントを処方することができる。これらのインプラントは、眼症状の長期の治療処置、すなわち、インプラントから活性剤が放出されている期間あるいは活性剤全てが放出された後であって、もはや治療量の活性剤がインプラントの配置された眼部位に存在しない間も、有効な治療を提供することができる。すなわち、インプラントは、クロニジン、アプラクロニジンまたはブリモニジン(Allergan(カリフォルニア州Irvine)から、酒石酸ブリモニジン点眼剤として、商品名 Alphagan-P(登録商標)として入手可能)のようなα−2アドレナリン受容体アゴニストを含んで、調製することができる。よって、例えば、ブリモニジン長期治療処置インプラントは、所望の長期治療効果のために、眼症状のある患者の眼球部位(すなわち硝子体内)に移植することができる。インプラントは、インプラントのサイズにより、約50μg〜約500μgのAlphaganまたはAlphagan-Pを含んでもよい。ブリモニジン長期治療処置インプラントは、所望の治療効果のために、眼症状のある患者の眼球領域または部位(すなわち、硝子体内)に移植することができる。眼症状とは、ブドウ膜炎のような炎症性状態でもよく、または患者は、下記の疾病の1以上を罹患していてもよい:黄斑変性(非滲出性加齢性黄斑変性症および滲出性加齢性黄斑変性症を含む);脈絡膜新生血管形成;急性黄斑性視神経網膜障害;黄斑性浮腫(嚢胞様黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫を含む);ベーチェット病、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む);網膜動脈閉塞疾患;網膜中心静脈閉塞;ブドウ膜炎の網膜疾患;網膜剥離;網膜症;網膜上膜障害;網膜静脈分枝閉塞;前部乏血性視神経症;非網膜症糖尿病網膜機能障害、色素性網膜および緑内障。インプラントは、トロカール移植のような手段で、硝子体に挿入することもできる。インプラントは、治療量の活性剤を放出して、治療効果を長期間にわたって提供および維持し、それによって眼症状を治療することができる。例えば、インプラントは、視力、視覚的なコントラスト感度、あるいは両方を改善するのに有効であり得る。
【0153】
実施例5
眼内α−2アドレナリン受容体アゴニストインプラントの視力の回復および/または改善を強化するための使用
実験は、哺乳動物の目の中の眼内インプラントを使用して行った。つまり、活性剤として、眼内α−2アドレナリン受容体アゴニストを含む分解性ポリマーインプラントを、正常および障害または疾患のある(モデルシステム)ウサギの眼の硝子体内に置いた。実験の結果は、眼内α−2アドレナリン受容体アゴニストインプラントは、(1)正常な眼の視力を強化することができ、(2)疾患あるいは障害のある眼の視力を回復することができることを示した。
【0154】
実施例1の製剤#17を、実施例5のこれらの実験において使用した。すなわち、使用したインプラントは、固体生分解性ロッド(重さ約1mg)として製剤化されたα−2アゴニスト酒石酸ブリモニジンを含み、持続性放出薬剤送達デバイス(すなわちインプラント)を形成した。インプラントは、200μgの酒石酸ブリモニジンと、800μgの生分解性ポリマーR203およびR206 1:1(重量比)のポリラクチド共重合体混合物とから構成した。偽薬インプラントは、生分解性ポリマーR203およびR206 1:1(重量比)のポリラクチド共重合体混合物から製造した、1mgロッド状インプラントであった。
【0155】
インプラントをウサギの硝子体内に投与した時、得られた視力は、強化あるいは正常化されたことがわかった。視力は、スイープ視覚誘発閾値電位として測定した。改善された視力は、3つの異なる眼症状の各症状について測定した。
1)正常なウサギの眼について。
2)VEGF障害ウサギの眼について。これらのウサギの眼は、VEGFで硝子体を処置し、視神経頭腫れ、網膜管漏出、拡張およびねじれを誘発し、それによって、黄斑性浮腫、視神経頭浮腫、糖尿病性網膜症および血管新生のような眼症状に共通している疾患の状況を刺激した。
3)インプラントの使用前、8ヶ月の高IOPで一過性虚血症状によって誘発された、網膜の周辺に損傷のあるウサギの眼について。
【0156】
有意性:(a)上述の眼症状2)において、インプラントは、VEGF治療に伴う血管障害(ねじれ、漏出、拡張)を軽減することなく視力を改善し、(b)上述の眼症状3)において、インプラントは、カラー眼底撮影に伴う、これら虚血損傷のある眼の中の網膜の臨床上の発現を変化させることなく、視力を改善した。これは、インプラントによって放出されたα−2アゴニスト活性剤が、眼症状2)および3)で誘発された損傷または疾患状態の後に残る、機能性網膜神経細胞の緊張活性を増大させたことを示唆している。たとえ疾患状態がまだ存在することになっても、残存する正常な細胞が良好に機能し、視力を回復するために相殺されるという仮説をたてることができる。
【0157】
網膜虚血性損傷を誘発する処置
ウサギをイソフルオランで麻酔し、120mmHgで45分間、OD眼中のIOPを上昇させることによって、片側急性網膜虚血症を発症させた。これを完成するために、PBSの貯留部を眼の65インチ上方にぶら下げ、角膜を介して前眼房に挿入された30ゲージの針に接続した。針を挿入する前に、表面麻酔薬(プロパラカイン)を1摘、角膜上に置き、針を抜いた直後に抗炎症性剤(Pred-G)を1滴、角膜上に置いた。
【0158】
視力の測定方法
視力は、意識のあるウサギで、スイープ視覚誘発電位(swVEP)を使用して測定した。swVEPは、普通、スネレン視力検査表を読むことができない小さな子供たちに使用される、視力分析の電気生理学的手法である。増加する空間周波数のパターン反転像を、黄斑上に投射し、同時に頭皮からの電気活性度(VEP)を記録する。より低い空間周波数の像は、大きな信号を生み出し、これは信号=ノイズとなるまで、空間周波数が増えるにつれ、より小さくなる。この閾値が視力である。ウサギにおけるこの方法では、先ず、頭皮に永久電極を移植して、信号の強度を増加し、追跡検査において同じ位置で記録できるようにすることが必要である。治癒を待って2週間後、視力測定を行うことができる。
【0159】
移植処置のため、ウサギをケタミンおよびキシラジンで麻酔した。頭皮を無菌的に処置し、4個のステンレス鋼ネジ(#0-80×-3/8)を移植した。2個の活性電極を正中線から両側6mm、前頂の6mm上の所に配置し、1個の接地電極を正中線上、活性電極の6mm上に配置し、1個の参照電極を正中線上、接地電極の6mm上に配置した。
【0160】
視力検査では、眼を1%トロピカミドおよび10%フェニレフリンで充分拡張させた。パターン反転像をビジュアルストリーク上に投影させるステンレス鋼保持装置中にウサギを置いた。ウサギは完全に意識があった。PowerDivaソフト、バージョン1.8.5のコントロール下、特別に設計された眼底カメラスティミュレーターを使用して、像を投影した。各ウサギは、その眼がカメラの前50mmに位置する(21インチCRTモニターから50cmのところになる)ように置かれた。記録電極を、以下の仕様でGrass Neurodata取得システム(12CAモデル)に接続した。
OD眼はチャンネル1およびOS眼はチャンネル2
フィルター領域:3〜100Hz
増幅:50K
ライン周期フィルター=オフ
【0161】
空間周波数範囲0.1〜5cpd、時間周波数7.5Hzの垂直安定状態のパターン反転スイープ刺激を、平均輝度600cd/m2およびコントラスト80%で眼に与えた。10秒毎に5〜40個のトライアルを各眼から集めた。トライアルの数は、ノイズに対する信号の比に基づいた。トライアルを平均化し、ノイズに対する信号の比が2.5未満に合致するソフトあるいは手動によって、その閾値(視力)を測定した。次いで、閾値を対側性眼に対する割合として正規化した。
【0162】
以下に説明するように、ブリモニジンンプラント対偽薬の視力に対する効果を、6つの異なるウサギの眼の群に関し、3つの異なる状態で検討した。ウサギの3つの群の各群に関し、インプラントを硝子体内に置いた。インプラントは、米国特許出願第11/021,947号(2004年12月23日出願)に記載されたアプリケーター(22ゲージ針を持つ)を使用して硝子体内に挿入する。
【0163】
(A)最初の研究では、正常(処置していない)眼を持つウサギの2つの群を使用した。1個のブリモニジンインプラントを、群1(N=7)の各ウサギの左眼の硝子体内に移植した。1個の偽薬インプラントを、群2(N=7)の各ウサギの左眼の硝子体内に同じように移植した。両群1および2の各ウサギの右眼は処置せず、コントロールとして利用し、得られたデータを正規化した。両群のウサギの両眼の視力を測定した。図15に対側性(右目)正常眼の視力に対する割合で表す。
【0164】
図15は、ウサギの正常眼の視力へのブリモニジンインプラントおよび偽薬インプラントの効果を示す。図15の結果は、ブリモニジンインプラントまたは偽薬インプラントの移植から2週間記録し、偽薬インプラントは有意な視力変化を起こさなかったことを示す。つまり、偽薬インプラントでは、視力を1.5%±6%しか変化させなかった。しかし、ブリモニジンインプラントを使用すると、正常なウサギの眼に、明らかに有意な視力の増強を起こしていた。つまり、ブリモニジンインプラントでは、視力を44%±12%改善していた(正常な目で56%の視力改善)。スチューデントの片側T検定を用いた、偽薬インプラントに対する応答と、ブリモニジンインプラントに対する応答との比較は、p値0.003の統計差を示した。
【0165】
(B)第二の研究では、ウサギの眼の2群を使用した。1個のブリモニジンインプラントを群1(N=7)の各ウサギの左眼の硝子体内に移植した。1個の偽薬インプラントを、群2(N=7)の各ウサギの左眼に、同じ毛様体扁平部挿入処置を使用して、硝子体内に移植した。両群1および2の各ウサギの右眼は処置せず、コントロールとして利用し、得られたデータを正規化した。移植から2週間後、移植された各目の硝子体内に、500ngの血管内皮細胞因子(VEGF)(R&D Systemsから製品番号293-VE-50として得た)を、50μlボーラスとして投与した。両群のウサギの両眼の視力を測定した。図16に対側性(右)眼の視力に対する割合で表す。
【0166】
図16は、VEGFで処置されたウサギの眼の視力へのブリモニジンインプラントおよび偽薬インプラントの効果を示す。図16の結果は、ブリモニジンインプラントまたは偽薬インプラント移植の3週間後およびVEGF投与の1週間後に記録した。図16の結果は、偽薬インプラントおよびVEGF処置された眼は、視力障害が約25%±4%であったことを示す。また、図16の結果は、ブリモニジンインプラントおよびVEGF処置された眼は、視力の改善が約14%±8%(血管障害のある眼で22%までの視力改善)であったことも示す。つまり、ブリモニジンインプラントの使用で、血管障害があるにも関わらず、VEGFで処置した眼の視力が標準化された。ブリモニジンインプラントは、VEGFで誘発された血管障害を減少させなかったが、VEGF治療によって誘発された経感覚上皮網膜障害を減少させた。スチューデントの片側T検定を用いた、偽薬インプラントに対する応答と、ブリモニジンインプラントに対する応答との比較は、p値0.0007の統計差を示した。
【0167】
(C)第三の研究では、ウサギの眼の2群を用いた。1個のブリモニジンインプラントを、群1(N=5)の各ウサギの左眼の硝子体内に移植した。1個の偽薬インプラントを、群2(N=5)の各ウサギの左眼の硝子体内に同じように移植した。両群1および2の各ウサギの右眼は処置せず、コントロールとして利用し、得られたデータを標準化した。0日目に、両群の各ウサギの左眼に虚血性損傷が誘発された。32週後、群1の各ウサギの虚血性損傷のある左眼に、偽薬インプラントを移植し、群2の各ウサギ虚血性損傷のある左眼にブリモニジンインプラントを移植した。44週目に、両群のウサギの両眼の視力を測定した。図17に対側性正常または未処理眼(右目)の視力に対する割合で表す。
【0168】
図17は、虚血症状からの既存の損傷を持つウサギの眼へのブリモニジンインプラントおよび偽薬インプラントの効果を示す。組織構造は、この処置が、光受容細胞、RPEおよび周囲の組織への外側網膜損傷となったことを示す。一過性虚血性処置のため左目の視力に障害のあるウサギを2群に無作為化する。データは対側性正常眼に対する割合で表す。図17の結果は、ブリモニジンインプラントまたは偽薬インプラントの移植の12週間後、移植された各目に虚血症状が誘発されて11ヶ月後に記録した。図17の結果は、偽薬インプラントおよび虚血性損傷の眼は、視力が37%±8%減少したことを示す。また、図17は、ブリモニジンインプラントおよび虚血性損傷の眼は、視力が14%±9%改善したことも示す。したがって、ブリモニジンインプラントを使用することで、外側網膜(誘発された虚血性)損傷を患うウサギの眼の視力を回復または改善した。スチューデントの片側T検定を用いた、偽薬インプラントに対する応答と、ブリモニジンインプラントに対する応答との比較は、p値0.001の統計差を示した。
【0169】
これらの実験は、局所的(すなわち硝子体内に)に投与されたα−2アドレナリン受容体アゴニストが、正常眼において、視力を改善(視力を増強)するために使用することができることを示した。また、これらの実験は、局所的(すなわち硝子体内)に投与されたα−2アドレナリン受容体アゴニストが、炎症、血管新生、腫瘍、血管閉塞および/または視神経疾患または緑内障を含む症状のような眼症状のある眼の視力を改善、修復または回復するために使用することができることも示す。
【0170】
薬物動態データを得るために、ウサギの別の群を検討した。これらのウサギに、硝子体内の外科移植手術を使用して、以下のようにしてインプラントを挿入した。20ゲージMVRブレードを用い、結膜切開し、強膜切開術を行った。強膜切開術は、角膜輪部から3mm、背部直筋の側方に位置する、右目では10〜12時の間の位置、左目では12〜2時の間の位置であった。滅菌鉗子を使用し、試験物を強膜切開術によって挿入した。強膜切開は9-0Prolene縫合材で閉じた。移植術後、無菌眼球潤滑剤を眼に施した。安楽死/死体解剖の前に、8日目、31日目、58日目、91日目、136日目または184日目にウサギから血液を採取した。ウサギの房水、硝子体液、水晶体、網膜およびリンパ漿試料を、液クロマトグラフィー−マススペクトル/マススペクトル(LC-MS/MS)法により分析した。
【0171】
表3に、この薬物動態の検討で得られたデータを示す。白ウサギの眼に200μgのブリモニジンインプラント(製剤#17)を硝子体内(中央硝子体内)に移植した後、種々の時間(表3の左手の「日にち」の欄)に、房水、虹彩−毛様体、水晶体、網膜、硝子体液およびリンパ漿中の眼内ブリモニジン濃度を測定した。表3に示すように、製剤#17ブリモニジンインプラントの硝子体内への移植の後、以下の状態を示した。
1. ブリモニジンインプラントを移植されたウサギの房水中には、どの時点でもブリモニジンは検出されなかった。
2. 網膜での濃度がより高かったことが示すように、硝子体内のインプラントからの放出後、ブリモニジンは、前クリアランスに対向する後クリアランスを有していた。
3. 検出可能な濃度のブリモニジンが、少なくとも90日間、インプラントから硝子体内へ放出された。
4. 約91日〜約120日後、全てのブリモニジンがインプラントから放出されたが、インプラントがブリモニジンを放出するとき、治療濃度のブリモニジンが、約2倍の長さで網膜中に存在した、すなわち、ブリモニジンは網膜内に少なくとも184日間は存在した。
5. インプラントは、形成すべきブリモニジンの網膜内滞留を可能にした。
【0172】
【表3】
【0173】
・NC、平均値に寄与する>50%の濃度がBLQ(評価限界未満)であるので計算不能(not calculatable)
・データは、平均±SEM(1回のサンプリング時当たりN=4個の眼およびN=2つのリンパ漿)として表した。
・BLQ=評価限界未満(房水および硝子体液:<10ng/mL;水晶体、網膜および虹彩−毛様体:<0.5ng;リンパ漿:<0.05ng/mL)。
a. N=4: 1試料がBLQであった(平均計算が0を含む)。
b. N=4: 2試料がBLQであった(平均計算が0を含む)。
c. N=3: 1試料が、測定できなかった(平均計算を含まず)。
d. N=2: 2試料がALQ(軽量化の上限を超える)(カッコ内の平均値を評価)。
【0174】
結論すると、上記結果は、α−2アゴニスト(非選択的または受容体サブタイプ選択的)硝子体内インプラントは、哺乳動物の眼の視力を増強し、修復し、回復し、改善するために使用することができることを示す。
【0175】
実験は、硝子体内へのブリモニジンインプラントは、正常な眼および疾患のある眼の両方の視力を改善するために使用することができることを有意に示した。本明細書に挙げた結果は、VEGF処置された眼において、インプラントが将来の視力喪失を防ぐための予防薬として使用することができることを示す。本明細書に挙げた結果は、損傷を受けた/疾患のある(すなわち虚血性)眼において、インプラントが、眼損傷/疾患の緩和または非発現を伴わずに視力を改善させるために使用することができることを示す。すなわち、該インプラントは、網膜内の物理的範囲に関し、たとえ眼損傷/疾患が減少しなくても、残った正常な網膜細胞が相殺し視力を改善するように良好に機能するようにさせるようである。
【0176】
本発明の範囲内に入るインプラントは、以下のように使用することができる。
1. 網膜障害に対する素因または網膜障害に関与する危険因子を持つ患者における網膜障害を含む、種々の眼症状における切迫した網膜経感覚上皮機能障害を緩和する予防治療。
2. 黄斑変性(例えば、加齢性黄斑変性症)のような、網膜の退化に関連する網膜疾患のような、後部眼症状、黄斑性浮腫、血管閉塞状態、視神経症または網膜神経症、および/または網膜腫瘍のような眼球浮腫を処置するための治療法(単独であるいは1種以上の他の活性剤と組み合わせて)。例えば、インプラントは、IOPを低下させるためおよび/または視力を改善するためのα−2アゴニストと、炎症を低下させるためのステロイド(例えば、デキサメサゾンまたはトリアムシノロン)とを含むものとすることができる。
3. 網膜疾患においておよび網膜剥離を伴う障害において有用な治療法(単独であるいは1種以上の他の活性剤と組み合わせて)。
4. 硝子体摘出術および網膜の悪影響を持つ可能性のある触診が要求される、網膜外科手術において有用な治療法(単独であるいは1種以上の他の活性剤と組み合わせて)。
5. ビタミンA欠乏症のような栄養欠乏症のある網膜疾患を治療する治療法(単独であるいは1種以上の他の活性剤と組み合わせて)。
6. 光学顕微鏡または工業レーザーの運転中の事故による光曝露からの網膜損傷を治療する治療法(単独であるいは1種以上の他の活性剤と組み合わせて)。
7. ステロイドが、眼球炎症および黄斑性または視神経浮腫を低下させるために使用されている、網膜疾患を治療するためのステロイドの補助手段。
8. 網膜からの漏出物を伴う網膜状態および組織管関連網膜状態を治療するために使用される、光線力学療法(PDT)の補助手段。
9. 黄斑浮腫または新生血管を治療するために使用されるレーザー光凝固および脈絡膜新生血管(CNV)を治療するために使用される伝統的温熱治療(TTT)などの他のタイプの電磁波照射の補助手段。
10. 黄斑性網膜芽細胞腫および脈絡膜骨腫のような眼球腫瘍の治療のために使用される時、黄斑症および乳頭症を起こす、放射線治療または化学療法の補助手段として。
11. 目の浮腫および新生血管異常状態を治療するために使用される電磁波照射およびステロイドの補助手段。
【0177】
実施例6
黄斑剥離を伴う急性裂孔原性網膜剥離を治療するための、2種の異なる硝子体内ブリモニジンインプラントの用途
黄斑剥離を伴う急性裂孔原性網膜剥離を治療するために、患者に、50μgまたは200μgのブリモニジン後部(すなわち硝子体内)インプラントを移植する。患者は、早期治療糖尿病性網膜症測定(ETDRS)法を使用した研究対象の目において、ベースラインから少なくとも15レター増加を経験する。最高矯正視力(BCVA)における改善の達成(早期治療糖尿病性網膜症測定(ETDRS)法を使用した研究対象の目において、ベースラインから少なくとも15レター増加を経験する患者の比率によって測定した)において、200μgブリモニジン後部インプラントは、50μgブリモニジン後部インプラントより効果的である。50μgおよび200μgブリモニジン後部インプラントは、許容しうる安全プロフィールを有している。
【0178】
患者は、ベースラインおよび無作為来院で、0日目、および1、3、6、9、12ヶ月(マスク化期間)および15、18および24ヶ月(延長期間)に来院する。再治療後1日目および7日目の付加的な来院が、安全性のための来院として指定される。55名の患者が参加する。各患者は少なくとも1個の目が、強膜バックルおよびレーザー光凝固による改善に適格な黄斑剥離を伴う急性裂孔原性網膜剥離を患っている。
【0179】
患者の採択基準は、18歳以上;最高矯正E-ETDRS視力スコア>=20レター(すなわち約20/400またはそれより良)で、<=65レター(すなわち約20/50またはそれより悪い);1つの眼に黄斑剥離を伴う急性裂孔原性網膜剥離ありと診断。剥離が表示の12時間以内に起こり、研究者の意見によれば、これは、予測される硝子体摘出術または気体網膜復位の必要なく、強膜折込配置および網膜切断の外部レーザー光凝固によって、修復することができる。外科的修復は、剥離の48時間以内に、媒体の透明性、瞳孔拡張、および適切な眼底撮影を満足する患者の協力が計画される。
【0180】
検討製剤は、(1)実施例1の製剤#17(固体状の生分解性ロッド(酒石酸ブリモニジン200μgおよび生分解性ポリマーR203およびR206(重量比1:1)のポリラクチド共重合体混合物800μgからなる、重さ約1mgのインプラント)および(2)固体状の生分解性ロッド(酒石酸ブリモニジン50μgおよび生分解性ポリマーR203およびR206(重量比1:1)のポリラクチドコポリマー混合物950μgからなる、重さ1mgのインプラント)である。有意な患者数が、目の検討において、6ヶ月でETDRS方法を使用する、BCVAのベースラインから15レターまたはそれ以上の増加を示した。したがって、生体内ブリモニジンインプラントは、黄斑剥離を伴う急性裂孔原性網膜剥離の治療に使用することができる。
【0181】
実施例7
慢性網膜障害を治療するための2種の異なる硝子体内のブリモニジンインプラントの使用
慢性網膜損傷を治療するために、患者に50μgおよび200μgのどちらかのブリモニジン後部部位(すなわち硝子体内)インプラントを移植する。患者は、最高矯正視力(BCVA)の改善を経験する(検討眼において、早期治療糖尿病性網膜症検討(ETDRS)方法を使用して、ベースラインから少なくとも15レター増加を経験した患者の割合を測定)。200μgのブリモニジン後部部位インプラントは、最高矯正視力(BCVA)の改善の達成において、50μgのブリモニジン後部部位インプラントより効果的である(検討眼において、早期治療糖尿病性網膜症検討(ETDRS)方法を使用して、ベースラインから少なくとも15レター増加を経験した患者の割合を測定)。50μgと200μgのブリモニジン後部部位インプラントは、許容しうる安全プロフィールを有する。
【0182】
患者は、その日(第0日目)、および1ヶ月目、3ヶ月目、6ヶ月目、9ヶ月目、12ヶ月目(潜在期間)および15ヶ月目、18ヶ月目および24ヶ月目(開放期間)に無作為来院し、ベースラインを見せる。付加的な来院として、任意の再治療後第1日目および第7日目が安全のための来院として設定される。各患者の少なくとも1個の眼が、下記のタイプの1以上のベースラインに網膜損傷を有する。糖尿病黄斑症または黄斑のない破裂性網膜剥離の前歴による障板網膜変性、黄斑性虚血症。
【0183】
患者の採択基準は、18歳以上;少なくとも1個の眼(検討眼)において、糖尿病黄斑症または黄斑剥離を伴う裂孔原性網膜剥離による障板網膜変性、黄斑性虚血症に関連する慢性網膜損傷と診断される。障板網膜変性を患う患者に関しては、診断は、臨床視野と網膜電図検査所見の両方に基づき、視野喪失は、中心10度以内であり、糖尿病黄斑症による黄斑性虚血症を患う患者に関しては、最高矯正E-ETDRS視力スコアが>=35レター(すなわち約20/200またはそれより良、および<=65レター(すなわち約20/50またはそれより悪い)、減少した視力は、直接虚血症に関連し、黄斑性浮腫や先のレーザー光凝固には依らない;黄斑のない剥離を患う患者に関しては、黄斑剥離は修復の48時間を超える前には存在せず、剥離の修復は、ベースライン来院の少なくとも6ヶ月前に起こり、最高矯正E-ETDRS視力スコアは>=35レター(すなわち約20/200またはこれより良)および<=65レター(すなわち約20/50より悪い)であり、視力は、少なくとも3ヶ月間は安定(スネレン視力の1ライン以内)であり、剥離の修復は、解剖学的な成功、培地の透明性、瞳孔拡張および適切な眼底撮影を満足する患者の協力が求められた。
【0184】
検討製剤は、(1)実施例1の製剤#17(固体状の生分解性ロッド(酒石酸ブリモニジン200μgおよび生分解性ポリマーR203およびR206(重量比1:1)のポリラクチド共重合体混合物800μgからなる、重さ約1mgのインプラント)および(2)固体状の生分解性ロッド(酒石酸ブリモニジン50μgおよび生分解性ポリマーR203およびR206(重量比1:1)のポリラクチドコポリマー混合物950μgからなる、重さ1mgのインプラント)である。
【0185】
有意な患者数が、目の検討において、12ヶ月でETDRS方法を使用する、BCVAのベースラインから15レターまたはそれ以上の増加を示す。したがって、生体内ブリモニジンインプラントは、慢性網膜損傷の治療に使用することができる。
【0186】
本明細書に引用されている全ての文献、論文、刊行物、特許および特許出願は、参照により全体として本明細書に組み入れられる。
【0187】
本発明を、種々の特定の実施例および態様に関して記載したが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲内において様々に実施しうるものと理解される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−2アドレナリン受容体アゴニストと生分解性ポリマーマトリックスとを含む、ロッド状又はウエハ状の生分解性眼内インプラントであって、前記生分解性ポリマーマトリックスは、眼内インプラントが配置されている眼内の眼血管閉塞を軽減するのに有効な量のα−2アドレナリン受容体アゴニストを眼内インプラントから持続的に放出し、前記α−2アドレナリン受容体アゴニストは、ブリモニジン又は酒石酸ブリモニジンであって、インプラントの重量の20〜40%を占め、前記ポリマーマトリックスは、第一生分解性ポリマーと、第二生分解性ポリマーとの重量比1:1の混合物を含み、第一生分解性ポリマーは、100%ポリ(D,L−ラクチド)であり、第二生分解性ポリマーは、(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)又は第一生分解性ポリマーとしての100%ポリ(D,L−ラクチド)とは異なる平均分子量を有する100%ポリ(D,L−ラクチド)である生分解性眼内インプラント。
【請求項2】
α−2アドレナリン受容体アゴニストと生分解性ポリマーマトリックスとを含む、ロッド状又はウエハ状の生分解性眼内インプラントであって、前記生分解性ポリマーマトリックスは、インプラントが配置されている眼の視力を向上、維持、回復または矯正するのに有効な量のα−2アドレナリン受容体アゴニストを眼内インプラントから持続的に放出し、前記α−2アドレナリン受容体アゴニストは、ブリモニジン又は酒石酸ブリモニジンであって、インプラントの重量の20〜40%を占め、前記ポリマーマトリックスは、第一生分解性ポリマーと、第二生分解性ポリマーとの重量比1:1の混合物を含み、第一生分解性ポリマーは、100%ポリ(D,L−ラクチド)であり、第二生分解性ポリマーは、(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)又は第一生分解性ポリマーとしての100%ポリ(D,L−ラクチド)とは異なる平均分子量を有する100%ポリ(D,L−ラクチド)である生分解性眼内インプラント。
【請求項3】
さらに防腐剤を含む1または2に記載の眼内インプラント。
【請求項4】
さらに、付加的な眼科的に許容しうる治療剤を含む、請求項1または2に記載の眼内インプラント。
【請求項5】
前記α−2アドレナリン受容体アゴニストが、生分解性ポリマーマトリックス内に分散されている請求項1または2に記載の眼内インプラント。
【請求項6】
前記第一生分解性ポリマーの固有粘度が0.3dl/gである請求項1または2に記載の眼内インプラント。
【請求項7】
前記第二生分解性ポリマーの固有粘度が1.0dl/gである請求項1または2に記載の眼内インプラント。
【請求項8】
前記第一生分解性ポリマーが、14kDの分子量を有する請求項1に記載の眼内インプラント。
【請求項9】
押出法により形成された請求項1または2に記載の眼内インプラント。
【請求項10】
α−2アドレナリン受容体アゴニストおよび生分解性ポリマー成分の混合物を押出して、請求項1または2に記載の眼内インプラントを形成する工程を含んで成る生分解性眼内インプラントの製造方法。
【請求項11】
さらに、押出工程の前に、前記α−2アドレナリン受容体アゴニストと前記生分解性ポリマー成分とを混合する工程を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記α−2アドレナリン受容体アゴニストおよび前記生分解性ポリマー成分が粉末状である請求項10に記載の方法。
【請求項13】
治療有効量のα−2アドレナリン受容体アゴニストを患者に投与するために、患者の眼内に請求項1のインプラントを配置することにより、患者の眼内の眼血管閉塞を軽減するためのインプラントである医薬品。
【請求項14】
前記医薬品が、網膜動脈閉塞疾患、網膜中心静脈閉塞、播種性血管内凝固障害、網膜静脈分枝閉塞、高血圧性眼底変化、眼球虚血症候群、網膜動脈微小動脈瘤、半網膜静脈閉塞、網膜中心動脈閉塞、網膜動脈分岐閉塞、頚動脈疾患(cad)、イールズ病および糖尿病関連脈管障害からなる群から選択される眼症状を予防するのに有効である、請求項13に記載の医薬品。
【請求項15】
前記インプラントが、眼の後部に配置される、請求項13に記載の医薬品。
【請求項16】
前記インプラントが、眼内にトロカールで配置される請求項13に記載の医薬品。
【請求項17】
前記インプラントが、眼内にシリンジで配置される請求項13に記載の医薬品。
【請求項18】
α−2アドレナリン受容体アゴニストの他に、治療剤を投与する工程をさらに含む請求項13に記載の医薬品。
【請求項19】
有効量のα−2アドレナリン受容体アゴニストを患者に投与するために、患者の眼内に請求項2のインプラントを配置することにより、患者の眼の視力を向上、維持、回復または矯正するためのインプラントである医薬品。
【請求項20】
眼内のインプラントの配置が、非滲出性加齢性黄斑変性症、滲出性加齢性黄斑変性症、脈絡膜新生血管形成、糖尿病性網膜症、急性黄斑性視神経網膜障害、中心性漿液性脈絡網膜症、嚢胞様黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、急性多発性小板状色素上皮症、ベーチェット病、散弾網脈絡膜症、梅毒、ライム病、結核、トキソプラスマ症、中間部ブドウ膜炎、多病巣性脈絡膜炎、多発一過性白点症候群(MEWDS)、眼サルコイドーシス、後部強膜炎、ほ行性脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、フォークト・小柳・原田症候群、コーツ病、傍中心窩毛細血管拡張症、乳頭静脈炎、霜状分枝血管炎、鎌状赤血球網膜症および他の異常血色素症、血管線条、家族性滲出性硝子体網膜症、交感性眼炎、ブドウ膜炎の網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー、光線力学療法、光凝固、手術時低灌流、放射線網膜症、骨髄移植網膜症、増殖性硝子体網膜症および網膜前膜、増殖性糖尿病性網膜症、眼ヒストプラスマ症、眼トキソカラ症、推定眼ヒストプラスマ症候群、眼内炎、トキソプラスマ症、HIV感染症関連網膜疾患、HIV感染症関連脈絡膜疾患、HIV感染症関連ブドウ膜炎疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性網膜外層壊死、真菌類網膜疾患、眼球梅毒、眼球結核、びまん性片側性亜急性神経網膜炎、ハエウジ病、色素性網膜炎、網膜障害関連系統的障害、先天性静止夜盲症、コーンジストロフィー、シュタルガルト病および眼底黄点症、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー、X染色体網膜分離症、ソーズビー眼底ジストロフィー、良性中心性黄斑症、Bietti結晶質ジストロフィー、弾性線維偽黄色腫、網膜剥離、黄斑性円孔、巨大網膜裂孔、腫瘍関連網膜疾患、RPEの先天性肥大、後部ブドウ膜メラノーマ、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜腫瘍転移、網膜と網膜色素上皮との混合型過誤腫、網膜芽細胞腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜アストロチトーム、眼内リンパ系腫瘍、斑点状内脈絡膜症、急性後極部多発性小板状色素上皮症、近視性網膜変質および急性網膜色素上皮症からなる群から選択される少なくとも1つの症状を治療するのに有効である、請求項19に記載の医薬品。
【請求項21】
前記医薬品が、黄斑変性症、黄斑浮腫、網膜動脈閉塞性疾患、網膜中心静脈閉塞、播種性血管内凝固障害、網膜静脈分枝閉塞、高血圧性眼底変化、眼球虚血症候群、網膜動脈微小動脈瘤、半網膜静脈閉塞、網膜中心動脈閉塞、網膜動脈分岐閉塞、頚動脈疾患(cad)、イールズ病、糖尿病関連脈管障害、非滲出性加齢性黄斑変性症、滲出性加齢性黄斑変性症、脈絡膜新生血管形成、糖尿病性網膜症、急性黄斑性視神経網膜障害、中心性漿液性脈絡網膜症、嚢胞様黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、急性多発性小板状色素上皮症、ベーチェット病、散弾網脈絡膜症、梅毒、ライム病、結核、トキソプラスマ症、中間部ブドウ膜炎、多病巣性脈絡膜炎、多発一過性白点症候群(MEWDS)、眼サルコイドーシス、後部強膜炎、ほ行性脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、フォークト・小柳・原田症候群、コーツ病、傍中心窩毛細血管拡張症、乳頭静脈炎、霜状分枝血管炎、鎌状赤血球網膜症および他の異常血色素症、血管線条、家族性滲出性硝子体網膜症、交感性眼炎、ブドウ膜炎の網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー、光線力学療法、光凝固、手術時低灌流、放射線網膜症、骨髄移植網膜症、増殖性硝子体網膜症および網膜前膜、増殖性糖尿病性網膜症、眼ヒストプラスマ症、眼トキソカラ症、推定眼ヒストプラスマ症候群、眼内炎、トキソプラスマ症、HIV感染症関連網膜疾患、HIV感染症関連脈絡膜疾患、HIV感染症関連ブドウ膜炎疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性網膜外層壊死、真菌類網膜疾患、眼球梅毒、眼球結核、びまん性片側性亜急性神経網膜炎、ハエウジ病、色素性網膜炎、網膜障害関連系統的障害、先天性静止夜盲症、コーンジストロフィー、シュタルガルト病および眼底黄点症、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー、X染色体網膜分離症、ソーズビー眼底ジストロフィー、良性中心性黄斑症、Bietti結晶質ジストロフィー、弾性線維偽黄色腫、網膜剥離、黄斑性円孔、巨大網膜裂孔、腫瘍関連網膜疾患、RPEの先天性肥大、後部ブドウ膜メラノーマ、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜腫瘍転移、網膜と網膜色素上皮との混合型過誤腫、網膜芽細胞腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜アストロチトーム、眼内リンパ系腫瘍、斑点状内脈絡膜症、急性後極部多発性小板状色素上皮症、近視性網膜変質および急性網膜色素上皮症からなる群から選択される眼症状を治療するのに有効である請求項19に記載の医薬品。
【請求項1】
α−2アドレナリン受容体アゴニストと生分解性ポリマーマトリックスとを含む、ロッド状又はウエハ状の生分解性眼内インプラントであって、前記生分解性ポリマーマトリックスは、眼内インプラントが配置されている眼内の眼血管閉塞を軽減するのに有効な量のα−2アドレナリン受容体アゴニストを眼内インプラントから持続的に放出し、前記α−2アドレナリン受容体アゴニストは、ブリモニジン又は酒石酸ブリモニジンであって、インプラントの重量の20〜40%を占め、前記ポリマーマトリックスは、第一生分解性ポリマーと、第二生分解性ポリマーとの重量比1:1の混合物を含み、第一生分解性ポリマーは、100%ポリ(D,L−ラクチド)であり、第二生分解性ポリマーは、(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)又は第一生分解性ポリマーとしての100%ポリ(D,L−ラクチド)とは異なる平均分子量を有する100%ポリ(D,L−ラクチド)である生分解性眼内インプラント。
【請求項2】
α−2アドレナリン受容体アゴニストと生分解性ポリマーマトリックスとを含む、ロッド状又はウエハ状の生分解性眼内インプラントであって、前記生分解性ポリマーマトリックスは、インプラントが配置されている眼の視力を向上、維持、回復または矯正するのに有効な量のα−2アドレナリン受容体アゴニストを眼内インプラントから持続的に放出し、前記α−2アドレナリン受容体アゴニストは、ブリモニジン又は酒石酸ブリモニジンであって、インプラントの重量の20〜40%を占め、前記ポリマーマトリックスは、第一生分解性ポリマーと、第二生分解性ポリマーとの重量比1:1の混合物を含み、第一生分解性ポリマーは、100%ポリ(D,L−ラクチド)であり、第二生分解性ポリマーは、(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)又は第一生分解性ポリマーとしての100%ポリ(D,L−ラクチド)とは異なる平均分子量を有する100%ポリ(D,L−ラクチド)である生分解性眼内インプラント。
【請求項3】
さらに防腐剤を含む1または2に記載の眼内インプラント。
【請求項4】
さらに、付加的な眼科的に許容しうる治療剤を含む、請求項1または2に記載の眼内インプラント。
【請求項5】
前記α−2アドレナリン受容体アゴニストが、生分解性ポリマーマトリックス内に分散されている請求項1または2に記載の眼内インプラント。
【請求項6】
前記第一生分解性ポリマーの固有粘度が0.3dl/gである請求項1または2に記載の眼内インプラント。
【請求項7】
前記第二生分解性ポリマーの固有粘度が1.0dl/gである請求項1または2に記載の眼内インプラント。
【請求項8】
前記第一生分解性ポリマーが、14kDの分子量を有する請求項1に記載の眼内インプラント。
【請求項9】
押出法により形成された請求項1または2に記載の眼内インプラント。
【請求項10】
α−2アドレナリン受容体アゴニストおよび生分解性ポリマー成分の混合物を押出して、請求項1または2に記載の眼内インプラントを形成する工程を含んで成る生分解性眼内インプラントの製造方法。
【請求項11】
さらに、押出工程の前に、前記α−2アドレナリン受容体アゴニストと前記生分解性ポリマー成分とを混合する工程を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記α−2アドレナリン受容体アゴニストおよび前記生分解性ポリマー成分が粉末状である請求項10に記載の方法。
【請求項13】
治療有効量のα−2アドレナリン受容体アゴニストを患者に投与するために、患者の眼内に請求項1のインプラントを配置することにより、患者の眼内の眼血管閉塞を軽減するためのインプラントである医薬品。
【請求項14】
前記医薬品が、網膜動脈閉塞疾患、網膜中心静脈閉塞、播種性血管内凝固障害、網膜静脈分枝閉塞、高血圧性眼底変化、眼球虚血症候群、網膜動脈微小動脈瘤、半網膜静脈閉塞、網膜中心動脈閉塞、網膜動脈分岐閉塞、頚動脈疾患(cad)、イールズ病および糖尿病関連脈管障害からなる群から選択される眼症状を予防するのに有効である、請求項13に記載の医薬品。
【請求項15】
前記インプラントが、眼の後部に配置される、請求項13に記載の医薬品。
【請求項16】
前記インプラントが、眼内にトロカールで配置される請求項13に記載の医薬品。
【請求項17】
前記インプラントが、眼内にシリンジで配置される請求項13に記載の医薬品。
【請求項18】
α−2アドレナリン受容体アゴニストの他に、治療剤を投与する工程をさらに含む請求項13に記載の医薬品。
【請求項19】
有効量のα−2アドレナリン受容体アゴニストを患者に投与するために、患者の眼内に請求項2のインプラントを配置することにより、患者の眼の視力を向上、維持、回復または矯正するためのインプラントである医薬品。
【請求項20】
眼内のインプラントの配置が、非滲出性加齢性黄斑変性症、滲出性加齢性黄斑変性症、脈絡膜新生血管形成、糖尿病性網膜症、急性黄斑性視神経網膜障害、中心性漿液性脈絡網膜症、嚢胞様黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、急性多発性小板状色素上皮症、ベーチェット病、散弾網脈絡膜症、梅毒、ライム病、結核、トキソプラスマ症、中間部ブドウ膜炎、多病巣性脈絡膜炎、多発一過性白点症候群(MEWDS)、眼サルコイドーシス、後部強膜炎、ほ行性脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、フォークト・小柳・原田症候群、コーツ病、傍中心窩毛細血管拡張症、乳頭静脈炎、霜状分枝血管炎、鎌状赤血球網膜症および他の異常血色素症、血管線条、家族性滲出性硝子体網膜症、交感性眼炎、ブドウ膜炎の網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー、光線力学療法、光凝固、手術時低灌流、放射線網膜症、骨髄移植網膜症、増殖性硝子体網膜症および網膜前膜、増殖性糖尿病性網膜症、眼ヒストプラスマ症、眼トキソカラ症、推定眼ヒストプラスマ症候群、眼内炎、トキソプラスマ症、HIV感染症関連網膜疾患、HIV感染症関連脈絡膜疾患、HIV感染症関連ブドウ膜炎疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性網膜外層壊死、真菌類網膜疾患、眼球梅毒、眼球結核、びまん性片側性亜急性神経網膜炎、ハエウジ病、色素性網膜炎、網膜障害関連系統的障害、先天性静止夜盲症、コーンジストロフィー、シュタルガルト病および眼底黄点症、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー、X染色体網膜分離症、ソーズビー眼底ジストロフィー、良性中心性黄斑症、Bietti結晶質ジストロフィー、弾性線維偽黄色腫、網膜剥離、黄斑性円孔、巨大網膜裂孔、腫瘍関連網膜疾患、RPEの先天性肥大、後部ブドウ膜メラノーマ、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜腫瘍転移、網膜と網膜色素上皮との混合型過誤腫、網膜芽細胞腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜アストロチトーム、眼内リンパ系腫瘍、斑点状内脈絡膜症、急性後極部多発性小板状色素上皮症、近視性網膜変質および急性網膜色素上皮症からなる群から選択される少なくとも1つの症状を治療するのに有効である、請求項19に記載の医薬品。
【請求項21】
前記医薬品が、黄斑変性症、黄斑浮腫、網膜動脈閉塞性疾患、網膜中心静脈閉塞、播種性血管内凝固障害、網膜静脈分枝閉塞、高血圧性眼底変化、眼球虚血症候群、網膜動脈微小動脈瘤、半網膜静脈閉塞、網膜中心動脈閉塞、網膜動脈分岐閉塞、頚動脈疾患(cad)、イールズ病、糖尿病関連脈管障害、非滲出性加齢性黄斑変性症、滲出性加齢性黄斑変性症、脈絡膜新生血管形成、糖尿病性網膜症、急性黄斑性視神経網膜障害、中心性漿液性脈絡網膜症、嚢胞様黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、急性多発性小板状色素上皮症、ベーチェット病、散弾網脈絡膜症、梅毒、ライム病、結核、トキソプラスマ症、中間部ブドウ膜炎、多病巣性脈絡膜炎、多発一過性白点症候群(MEWDS)、眼サルコイドーシス、後部強膜炎、ほ行性脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、フォークト・小柳・原田症候群、コーツ病、傍中心窩毛細血管拡張症、乳頭静脈炎、霜状分枝血管炎、鎌状赤血球網膜症および他の異常血色素症、血管線条、家族性滲出性硝子体網膜症、交感性眼炎、ブドウ膜炎の網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー、光線力学療法、光凝固、手術時低灌流、放射線網膜症、骨髄移植網膜症、増殖性硝子体網膜症および網膜前膜、増殖性糖尿病性網膜症、眼ヒストプラスマ症、眼トキソカラ症、推定眼ヒストプラスマ症候群、眼内炎、トキソプラスマ症、HIV感染症関連網膜疾患、HIV感染症関連脈絡膜疾患、HIV感染症関連ブドウ膜炎疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性網膜外層壊死、真菌類網膜疾患、眼球梅毒、眼球結核、びまん性片側性亜急性神経網膜炎、ハエウジ病、色素性網膜炎、網膜障害関連系統的障害、先天性静止夜盲症、コーンジストロフィー、シュタルガルト病および眼底黄点症、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー、X染色体網膜分離症、ソーズビー眼底ジストロフィー、良性中心性黄斑症、Bietti結晶質ジストロフィー、弾性線維偽黄色腫、網膜剥離、黄斑性円孔、巨大網膜裂孔、腫瘍関連網膜疾患、RPEの先天性肥大、後部ブドウ膜メラノーマ、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜腫瘍転移、網膜と網膜色素上皮との混合型過誤腫、網膜芽細胞腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜アストロチトーム、眼内リンパ系腫瘍、斑点状内脈絡膜症、急性後極部多発性小板状色素上皮症、近視性網膜変質および急性網膜色素上皮症からなる群から選択される眼症状を治療するのに有効である請求項19に記載の医薬品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−35874(P2013−35874A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−228958(P2012−228958)
【出願日】平成24年10月16日(2012.10.16)
【分割の表示】特願2007−510974(P2007−510974)の分割
【原出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月16日(2012.10.16)
【分割の表示】特願2007−510974(P2007−510974)の分割
【原出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】
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