説明

β−カルボリン製薬組成物

【課題】 β−カルボリンを経口投与するための製薬組成物を提供する。
【解決手段】 cGMP特異的ホスホジエステラーゼ5型(PDE5)阻害剤を含み、かつ遊離薬剤として提供されるβ−カルボリン製薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、cGMP特異的ホスホジエステラーゼ5型を阻害すると望ましいさまざまな医療適用状態を治療する際に有用なβ−カルボリン化合物が関与する製薬化学および有機化学の分野に関する。 特に、均一な力価および所望の安定性および生物学的利用能の特徴が得られるような方法でβ−カルボリン化合物を製薬化する。
【背景技術】
【0002】
環状グアノシン3’,5’-一リン酸特異的ホスホジエステラーゼ(cGMP特異的PDE)インヒビターには、その生化学的、生理学的および臨床的な効果からみて、平滑筋、腎臓、止血、炎症および/または内分泌機能の調節が必要なさまざまな疾患状態における有用性があるのではないかと考えられる。 脈管平滑筋での主なcGMP加水分解酵素にcGMP特異的ホスホジエステラーゼ5型(PDE5)があり、そのペニス海綿体における発現について報告がなされている(A.Taher et al., J.Urol., 149, pp.285A (1993))。このように、PDE5は性的機能障害を治療する上での魅力的な標的なのである(K.J.Murray, DN&P 6(3), pp.150-56(1993))。
【0003】
Dauganに付与された米国特許第5,859,006号には、PDE5を阻害することが望ましい状態の治療に役立つ、特定クラスのβ−カルボリンおよびその製薬組成物が開示されている。 また、このようなβ−カルボリンを性的機能障害の治療に用いることについて開示した国際特許出願公開第WO97/03675号を参照のこと。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Butlerに付与された米国特許第5,985,326号に開示されているように、PDE5インヒビターとして有用な多くのβ−カルボリンは可溶性が低いため、共沈調製物が開発されている。 簡単に説明すると、β−カルボリンとヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどのポリマーとの共沈物を調製し、製粉し、賦形剤と混合し、圧縮して経口投与用の錠剤を形成する。 しかしながら、共沈生成物の正確に再現可能なロットを生成し、理想とは言えない共沈物を製薬製剤に利用すると、いくつか問題があることが研究から明らかになった。
【0005】
また、治療効果が得られるまでの平均時間が正確には求められていない状態で、まず第一歩として、3〜4時間でβ−カルボリンの最大血中濃度に達することが、かかる共沈物を含有する錠剤を投与しての臨床研究から明らかになった。 男性の勃起不全または女性の興奮の障害などの性的機能障害を治療するために使用する場合、速効性であることを好む患者にとって、できるだけ短時間で最大血中濃度に達すると同時に、短時間で治療効果の得られる見込みができるだけ高いことが望ましい。 したがって、従来技術においては、PDE5を阻害すると有益である状態の治療時に役立つβ−カルボリンの経口剤形およびその製薬組成物に対する需要が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、構造式(I)
【0007】
【化1】

【0008】
で表され、(6R-trans)-6-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2,3,6,7,12,l2a-ヘキサヒドロ-2-メチルピラジノ-[1’,2’:1,6]ピリド[3,4-b]インドール-1,4-ジオン、あるいは、(6R,l2aR)-2,3,6,7,12,12a-ヘキサヒドロ-2-メチル-6-(3,4-メチレンジオキシフェニル)ピラジノ-[2’,1’:6,1]ピリド[3,4-b]インドール-1,4-ジオンと呼ばれる化合物と、その薬学的に許容される塩ならびに溶媒和物と、を含む製薬製剤であって、希釈剤、潤滑剤、セルロース誘導体と、ポビドンと、これらの混合物と、からなる群から選択される親水性結合剤、クロスポビドンと、クロスカルメロースナトリウムと、これらの混合物と、からなる群から選択される崩壊剤、任意に、微結晶セルロースおよび/または湿潤剤との混合物で、上記の化合物が遊離薬剤として提供されると好ましい製薬製剤が得られる。 任意に、この製剤がさらに第2の希釈剤を含むものであってもよい。
【0009】
本発明の最も好ましい製薬製剤は、(a)遊離薬剤として提供される構造式(I)で表される化合物約1重量%〜約5重量%、一層好ましくは約2重量%〜約4重量%と、(b)ラクトース約50重量%〜約85重量%、好ましくは約50重量%〜約75重量%と、(c)ステアリン酸マグネシウム約0.25重量%〜約2重量%と、(d)ヒドロキシプロピルセルロース約1重量%〜約5重量%と、(e)クロスカルメロースナトリウム約3重量%〜約15重量%と、(f)微結晶セルロース0重量%〜約40重量%と、(g)ラウリル硫酸ナトリウム0重量%〜約5重量%と、を含む。
【0010】
本発明はさらに、男性の勃起不全および女性の興奮の障害などの性的機能障害の治療にかかる製剤を使用することに関するものである。 この製剤は、圧縮錠剤や、ゼラチンシェルなどのハードシェルに封入された乾燥自由流動粒子として、経口的に投与可能なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本願明細書に開示および記載する、権利請求の対象となる発明の目的で、以下の用語および略語を以下のとおり定義する。
【0012】
「治療」という用語は、治療対象となる状態または症状の進行または重篤化を防止、低減、停止または逆転することを含む。 したがって、本発明は、医学治療的な投与および/または予防的な投与の両方を適宜含むべく定義される。
【0013】
「有効量」という用語は、所望の状態または症状を治療する際に有効な製薬製剤の量である。 男性の性的機能障害を治療する上での構造式(I)で表される化合物の有効量は、パートナーに挿入可能な程度に勃起させてこれを持続できるだけの量である。女性の性的機能障害、特に女性の興奮の障害を治療する上での構造式(I)で表される化合物の有効量は、性的に興奮した状態を達成または持続する患者の機能を高めることができるだけの量である。
【0014】
「遊離薬剤」という用語は、各々がポリマー共沈物に密に埋入されている化合物との対比で、本質的に構造式(I)で表される化合物からなる固形粒子を意味する。
【0015】
「潤滑剤」という用語は、従来技術において固形製薬製剤調製時に潤滑剤または流動促進剤として一般に用いられている、薬学的に許容される薬剤を意味する。 代表的な潤滑剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、コロイド状二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、スターチ、鉱物油、ワックス、ベヘン酸グリセリル、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、硬化植物油などの薬剤があげられるが、これに限定されるものではない。 好ましくは、潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウムと、ステアリルフマル酸ナトリウムと、ステアリン酸と、からなる群から選択されるものである。 最も好ましくは、潤滑剤はステアリン酸マグネシウムである。
【0016】
「溶媒和物」という用語は、水または酢酸の分子と会合した構造式(I)で表される化合物などの化合物の分子と会合する、溶質の1つまたはそれ以上の分子を意味する。
【0017】
「固形経口剤形」という用語は、経口的に投与される固形製剤を示す一般的な意味で用いられる。 当業者らは、固形経口剤形には、錠剤、カプセルおよびエアロゾルなどの形態を含むものと認識している。 当業者らは、固形経口剤形には、錠剤およびカプセルなどの形態を含むものと認識している。
【0018】
「水溶性希釈剤」という用語は、特定サイズの錠剤を製造するための原末を与えるために調合薬の製剤において一般に用いられる化合物を意味する。 水溶性希釈剤としては、糖質(ラクトース、スクロースおよびデキストロースを含む)、多糖(デキストレートおよびマルトデキストリンを含む)、ポリオール(マンニトール、キシリトールおよびソルビトールを含む)、シクロデキストリンがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0019】
「湿潤剤」という用語は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤を意味する。 代表的な湿潤剤の非限定的な例として、ラウリル硫酸ナトリウム、ドクセートナトリウム(すなわち、ビス(2-エチルヘキシル)ナトリウムスルホスクシネート)、エトキシル化ひまし油、ポリグリコール化ジグリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポロクサマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体、モノグリセリドおよびそのエトキシル化誘導体、ジグリセリドおよびそのエトキシル化誘導体があげられる。 好ましくは、界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムまたはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、特に、ポリソルベート80である。
【0020】
粒度を説明する場合については一般に「d90」と表現される。 d90が40であるとは、粒子の少なくとも90%が粒度40ミクロン未満であることを意味する。
【0021】
上述したように、本発明は、Dauganに付与された米国特許第5,859,006号に開示されているような、構造式(I)で表される化合物を含有する製薬製剤と、その薬学的に許容される溶媒和物とを提供するものである。 構造式(I)で表される化合物を調製するのに適した好ましい溶媒としては、酢酸があげられる。
【0022】
本願発明者らは、(6R-trans)-6-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2,3,6,7,12,l2a-ヘキサヒドロ-2-メチルピラジノ-[1’,2’:1,6]ピリド[3,4-b]インドール-1,4-ジオン(すなわち、本願明細書では化合物Aとも呼ぶ、構造式(I)で表される化合物)を、特定の製剤用賦形剤の組み合わせを含む活性化合物として製剤化することによって、用量均一性、安定性および生物学的利用能が高まるということを見出した。
【0023】
本発明の製剤は、活性化合物と、水溶性希釈剤、潤滑剤、親水性結合剤の他、崩壊剤としてのクロスカルメロースナトリウムまたはクロスポビドン、さらには、任意に微結晶セルロースおよび/または湿潤剤との混合物を含む。
【0024】
製薬製剤中の活性化合物Aの総量は、製剤に対して約0.1重量%〜約45重量%、好ましくは約0.5重量%〜約10重量%である。 一層好ましい実施形態では、活性化合物は、製剤に対して約1重量%〜約4重量%、最も好ましくは、約2重量%〜約4重量%の量で含まれる。 構造式(I)で表される化合物については、本願明細書に援用するDauganの米国特許第5,859,006号に開示されている方法など、すでに確立された方法によって生成可能なものである。
【0025】
活性化合物の粒度も本製剤の生物学的利用能および取扱性を高めることが明らかになっている。 したがって、粒子の少なくとも90%が粒度約40ミクロン未満(d90=40)、好ましくは約30ミクロン未満になるように未加工の化合物(結晶質、非晶質沈殿物またはこれらの混合物)を製粉することによって、製剤化前の構造式(I)で表される化合物の粒度を制御する。 一層好ましくは、粒子の少なくとも90%が粒度約25ミクロン未満であり、さらに好ましくは、約15ミクロン未満、最も好ましくは約10ミクロン未満である。
【0026】
粒子の粒度を判定する方法は従来技術において周知である。 本願明細書に援用する米国特許第4,605,517号に開示された、以下の非限定的な方法を用いることが可能である。 特に、小さくした材料からなる小さな試料を分散剤溶液約180mlに懸濁させたものについて、レーザ散乱式粒度分布測定を実施する。 許容可能なレーザ光遮蔽レベルが得られるまで上記の試料を分散剤溶液に加え、このレベルに達した時点で粒度分布を測定する。 試料を懸濁させる前に、SPAN 80(オレイン酸ソルビタン)の0.1%シクロヘキサン溶液を調製することによって、分散剤溶液を調製し、上記の化合物を用いてこれを予備飽和させる。 この分散剤溶液を0.2ミクロンの微小孔濾膜で濾過し、必要な粒子−遊離懸濁分散剤を得る。 (a)信頼度の高い測定値を得、かつ、(b)懸濁された物質が等しくサンプリングされていることを確認するために、最低でも3回の測定を実施する。 結果を自動的に記録してグラフ表示し、その試料についての累積%篩下vs.直径および度数比率vs.直径グラフを得る。 このデータから、上記のようにして算出した分散の標準偏差と一緒に、等体積の球のメジアン直径値およびd90を導き出す(90%篩下値)。
【0027】
水溶性希釈剤は、製剤に対する適当な原末を得て、かつ、錠剤を製造するのに十分な量で製剤中に含まれる。 好ましい水溶性希釈剤は、約50重量%〜約85重量%、好ましくは約50重量%〜約75重量%の量で含まれるラクトースである。
【0028】
親水性結合剤は、化合物Aと賦形剤とを錠剤中で一緒に保持する接着剤として作用するのに十分な量で提供される。 また、親水性結合剤は、ゼラチン製のハードシェルに導入される粉末製剤中にも含まれる。 乾燥粉末製剤の場合、親水性結合剤を用いることで、粉末の製造と取扱が容易になり、活性化合物の安定性が増す。
【0029】
好ましい親水性結合剤は、たとえば、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースをはじめとするセルロース誘導体である。 他の親水性セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシブチルメチルセルロースがあげられるが、これに限定されるものではない。 もう1つの非限定的な親水性結合剤がポビドンである。 好ましくは、製剤中に含まれる親水性結合剤の量が、製剤に対して約1重量%〜約5重量%である。
【0030】
ポビドンなどの結合剤を用いると好適な接着特性を得ることができるが、β−カルボリン化合物の安定性について見た場合に結合剤が重要であることが見出されている。 ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースでは、ポビドンが原因の酸化による不安定さを回避しつつ、相応の接着性が得られるため、好ましい結合剤である。
【0031】
クロスカルメロースナトリウムおよびクロスポビドンは、投与後に水と接触すると、製剤、特に錠剤の剤形の解離を促進する。 クロスカルメロースナトリウムおよびクロスポビドンは、製剤に対して約3重量%〜約15重量%、特に、約3重量%〜約10重量%の量で使用すると特に都合がよい。 架橋したカルボキシメチルセルロースナトリウムとしても知られる、クロスカルメロースナトリウムが好ましい崩壊剤である。 クロスポビドンは架橋したポビドンである。
【0032】
潤滑剤については、製剤を圧縮して錠剤にする過程での金型壁との摩擦を低減するのに十分な量で含有させる。 好ましくは、潤滑剤は、製剤に対して約0.25重量%〜約2.0重量%の量で含まれるステアリン酸マグネシウムである。 また、潤滑剤を用いることで、乾燥粉末形態での製剤の取扱が容易になる。
【0033】
微結晶セルロースは、本組成物中に0〜約40重量%で含まれる。 微結晶セルロースは、水溶性希釈剤に加えて、崩壊剤および/または第2の希釈剤などの製剤中で複数の機能を果たすことができる。
【0034】
必要があれば、薬剤粒子と溶解用媒質(胃液など)との間の界面張力を小さくするのに十分な量で湿潤剤を含ませることによって、薬剤の溶解性および吸収性を高めるようにする。 界面活性剤は製剤に対して0重量%〜約5重量%のラウリル硫酸ナトリウムまたはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、特に、ポリソルベート80であると好ましく、さらに好ましくは上記の成分が約0.1重量%〜約5重量%である。
【0035】
粉末製剤またはかかる製剤を用いて製造する錠剤に悪影響をおよぼすことなく意図した機能を発揮するのに十分な量で、着色料または香味料などの他の任意の成分を製剤に混合してもよい。
【0036】
好ましい実施形態において、製剤成分の相対比率(重量比)は以下のとおりである。
【0037】
【表1】

【0038】
本発明の製剤は、当業者間で周知のさまざまな技法で調製可能なものである。 このような技法としては、たとえば、湿式造粒に続いて、乾燥、製粉を行い、圧縮して錠剤(フィルムコーティングを使用するか、あるいはフィルムコーティング未使用)を得る方法、乾式造粒に続いて製粉を行い、圧縮して錠剤(フィルムコーティングを使用するか、あるいはフィルムコーティング未使用)を得る方法、ドライブレンド後に圧縮して錠剤(フィルムコーティングを使用するか、あるいはフィルムコーティング未使用)を得る方法、成形錠剤、湿式造粒、乾燥後にゼラチンカプセルに充填する方法、ドライブレンドをゼラチンカプセルに充填する方法、懸濁液または溶液をゼラチンカプセルに充填する方法があげられる。 通常、この組成物には、表面に沈み彫りまたは刻印する形で識別記号が付されている。
【0039】
溶解性およびin vivoでの吸収が改善されることに加え、もう1つの重要な物性が安定性である。 本発明は、従来の製剤に比べて安定性の高い製剤を提供するものである。
【0040】
本発明に従って投与される化合物Aの具体的な用量は、投与経路、剤形、患者の状態および治療対象となる病理状態などをはじめとする、事例ごとに個別の事情に応じて定められるものである。 一般的な日用量では、構造式(I)で表される化合物を約1〜約20mg/日の用量濃度で含有する。 好ましい日用量は通常、約1〜約10mg/日であり、特に約5mgまたは約10mgの錠剤またはカプセルを、1日1回投与する形である。 最も好ましい剤形が錠剤である。 複数回投与を採用して、構造式(I)で表される化合物の合計用量最大20mg/日を達成するようにすることも可能である。 どの程度の用量濃度にするかは担当医師が決定する。
【0041】
有用な剤形のひとつに、硬く可溶性のシェルに製剤の粉末形態を封入したハードカプセルがある。 本発明によれば、ハードカプセルは、薬剤製剤の乾燥させた自由流動粒子を、ゼラチン、スターチまたは当業者間で周知の他のカプセル材料を含む硬い容器またはシェルに充填した、固形の剤形である。 ゼラチンには独特の特性があるため、ゼラチンはハードカプセルシェルの製造に最も多く用いられる材料となっている。 有用なカプセル材料のもう1つの例がジャガイモのデンプンである。
【0042】
ハードカプセルには、錠剤などの他の固形の剤形に比べていくつか利点がある。 たとえば、カプセルの方が嚥下しやすいため多くの患者はカプセルの方を好む。 したがって、錠剤形態だけでなくカプセル形態の薬剤も利用できるようになっていることが多い。
【0043】
ハードカプセルには、乾燥製剤を完全に包み込むハードシェルがある。 一般に、薬剤の乾燥製剤をカプセルの第1の部分に入れ、続いてカプセルの第2の部分を第1の部分の開放端の上に滑り込ませ、薬剤の製剤を包み込む。 ハードシェルの大きさや形状は可変であるが、一般に端の丸い円筒形である。 カプセルの大きさは、シェルに封入される薬剤の用量濃度と、薬剤の特定の製剤とに関係している。
【0044】
ハードカプセルの経口剤形は一般に、摂取後5〜10分以内にシェルが破れるまたは溶解して封入された薬剤の製剤が放出されるように調製される。 ハードシェルおよびカプセルについては、従来技術において周知の方法に従って製造する。
【実施例】
【0045】
以下の製剤例は一例にすぎず、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0046】
特に、以下の実施例は錠剤について述べたものであるが、乾燥させた自由流動微粒子または粉末形態などの同等の製剤をハードカプセルに封入して用いることも可能である。
【0047】
実施例1
化合物Aのロット1を作成した。 供給速度28〜30kg/時の12インチのパンケーキスタイルのジェットミルを十分な細砕圧力で使用し、d90が4ミクロンの材料を生成した。
【0048】
以下の調合を用いて、ロット1の材料から最終剤形すなわち化合物Aを10.0mg提供する錠剤を調製した。
【0049】
【表2】

【0050】
錠剤の製造時にはUSP規格の純水を用いた。 加工時に水分を除去し、最終錠剤には最低限の量しか残らないようにした。
【0051】
湿式造粒プロセスを用いて錠剤を製造した。 このプロセスを段階ごとに説明する。 化合物Aおよび賦形剤を安全ふるいにかけた。 選択的なPDE5インヒビター(すなわち化合物A)を、ラクトース一水和物(噴霧乾燥)、ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびラクトース一水和物とドライブレンドした。 ヒドロキシプロピルセルロースおよびラウリル硫酸ナトリウムの水溶液を用いて、上記にて得られた粉末ブレンドをPowrexまたは他の好適な高剪断造粒機によって造粒した。 所望のエンドポイントを達成すべく水を追加してもよい。 ミルを用いて、湿式造粒物の塊を崩し、乾燥を容易にすることが可能である。 流動床乾燥機または乾燥用オーブンを用いて湿式造粒物を乾燥させた。 材料の乾燥後、材料のサイジングを行い、大きな凝集塊をすべて除去してもよい。
【0052】
微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウムを安全ふるいにかけ、サイジング後の乾燥顆粒に加えた。 転倒回転ミキサー、リボンミキサーまたは他の好適な混合装置を用いて、これらの賦形剤と乾式造粒物とを均一になるまで混合した。 この混合プロセスについては、(a)微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウムおよび乾燥造粒物をミキサーに加えてブレンドし、続いて、(b)上記の造粒物にステアリン酸マグネシウムを加えて第2の混合フェーズを実施するという2つのフェーズに分けることが可能である。
【0053】
次に、回転圧縮装置を用いて混合後の造粒物を圧縮して錠剤にした。 核の錠剤が必要である場合は、コーティングパン(Accela Cotaなど)の中で錠剤に適当な着色混合物の懸濁液をフィルムコーティングすることが可能である。 コーティングを施した錠剤に対して、タルクを軽く散布し、錠剤の取扱特性を改善してもよい。
【0054】
これらの錠剤を、化合物の安全性および薬効について説明した能書を添えてプラスチック製の容器に詰める(30錠/容器)ことが可能である。
【0055】
実施例2
同様の方法によって、以下の調合を用いて、ロット1の化合物Aを5mg提供する錠剤の最終剤形を調製した。
【0056】
【表3】

【0057】
実施例3
同様の方法によって、以下の調合を用いて、化合物Aを2.5mg提供する錠剤の最終剤形を調製した。
【0058】
【表4】

【0059】
実施例4
同様の方法によって、以下の調合を用いて、化合物Aを10mg提供する錠剤の最終剤形をフィルムコーティングなしで調製した。
【0060】
【表5】

【0061】
実施例5
同様の方法によって、以下の調合を用いて、化合物Aを10mg提供する錠剤の最終剤形をフィルムコーティングなしで調製した。
【0062】
【表6】

【0063】
実施例6
同様の方法によって、以下の調合を用いて、化合物Aを10mg提供する錠剤の最終剤形をフィルムコーティングなしで調製した。
【0064】
【表7】

【0065】
実施例7
同様の方法によって、以下の調合を用いて、化合物Aを10mg提供する錠剤の最終剤形をフィルムコーティングなしで調製した。
【0066】
【表8】

【0067】
実施例8
同様の方法によって、以下の調合を用いて、化合物Aを10mg提供する錠剤の最終剤形をフィルムコーティングなしで調製した。
【0068】
【表9】

【0069】
実施例9
同様の方法によって、以下の調合を用いて、化合物Aを10mg提供する錠剤の最終剤形をフィルムコーティングなしで調製した。
【0070】
【表10】

【0071】
実施例10
同様の方法によって、以下の調合を用いて、化合物Aを10mg提供する錠剤の最終剤形をフィルムコーティングなしで調製した。
【0072】
【表11】

【0073】
実施例11
同様の方法によって、以下の調合を用いて、化合物Aを10mg提供する錠剤の最終剤形をフィルムコーティングなしで調製した。
【0074】
【表12】

【0075】
実施例12
同様の方法によって、以下の調合を用いて、化合物Aを10mg提供する錠剤の最終剤形をフィルムコーティングなしで調製した。
【0076】
【表13】

【0077】
実施例13
同様の方法によって、以下の調合を用いて、化合物Aを10mg提供する錠剤の最終剤形をフィルムコーティングなしで調製した。
【0078】
【表14】

【0079】
上記の明細書にて、本発明の原理、好ましい実施形態および作用について説明したが、本願による権利保護を想定している本発明は、ここに開示する特定の形態に限定されるものではない。 これらの形態は限定的なものではなく、一例にすぎないためである。 当業者であれば、本発明の趣旨から逸脱することなく、さまざまな変更および改変を施すことができるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の要素(A)〜(E)を含む製薬製剤、すなわち;
(A) その少なくとも90%が、粒度40ミクロン未満である粒子を含み、かつ、以下の構造式、すなわち、
【化A】

の構造式で表される遊離薬剤として提供される活性化合物;
(B) 50重量%〜85重量%の量の水溶性希釈剤;
(C) 潤滑剤;
(D) セルロース誘導体、ポビドン、および、これらの混合物からなる群から選択される親水性結合剤;および、
(E) クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、および、これらの混合物からなる群から選択される崩壊剤、
を含む、ことを特徴とする製薬製剤。
【請求項2】
微結晶セルロースをさらに含む請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
湿潤剤をさらに含む請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
0.5重量%〜10重量%の前記活性化合物を含む請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
前記水溶性希釈剤が、糖類、多糖、ポリオール、シクロデキストリン、および、これらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
前記水溶性希釈剤が、ラクトース、スクロース、デキストロース、デキストレート、マルトデキストリン、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、シクロデキストリン、および、これらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
0.25重量%〜2重量%の前記潤滑剤を含む請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
前記潤滑剤が、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、コロイド状二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、スターチ、鉱物油、ワックス、ベヘン酸グリセリル、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、硬化植物油、および、これらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
1重量%〜5重量%の前記親水性結合剤を含む請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
前記セルロース誘導体が、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および、これらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の製剤。
【請求項11】
3重量%〜10重量%の前記崩壊剤を含む請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
5重量%〜40重量%の前記微結晶セルロースを含む請求項2に記載の製剤。
【請求項13】
0.1重量%〜5重量%の前記湿潤剤を含む請求項3に記載の製剤。
【請求項14】
前記湿潤剤が、ラウリル硫酸ナトリウム、ドクセートナトリウム、エトキシル化ひまし油、ポリグリコール化グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポロクサマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン、モノグリセリドおよびそのエトキシル化誘導体、ジグリセリドおよびそのエトキシル化誘導体、および、これらの混合物からなる群から選択される請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
前記湿潤剤が、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、および、これらの混合物からなる群から選択される請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
前記粒子の少なくとも90%が、粒度10ミクロン未満である請求項1に記載の製剤。
【請求項17】
以下の要素(a)〜(e)を含む製薬製剤、すなわち;
(a) 1重量%〜4重量%の前記活性化合物;
(b) 50重量%〜75重量%のラクトース;
(c) 0.25重量%〜2重量%のステアリン酸マグネシウム;
(d) 1重量%〜5重量%のヒドロキシプロピルセルロース;および、
(e) 3重量%〜10重量%のクロスカルメロースナトリウム;
を含む請求項1に記載の製剤。
【請求項18】
5重量%〜40重量%の微結晶セルロースをさらに含む請求項16に記載の製剤。
【請求項19】
0.1重量%〜5重量%のラウリル硫酸ナトリウムをさらに含む請求項16に記載の製剤。
【請求項20】
1mg〜20mgの前記活性化合物を含有する請求項1に記載の製剤を含む錠剤。
【請求項21】
5mg〜15mgの前記活性化合物を含有する請求項1に記載の製剤を含む錠剤。
【請求項22】
5mgの前記活性化合物を含有する請求項1に記載の製剤を含む錠剤。
【請求項23】
1mg〜20mgの前記活性化合物を含有する請求項1に記載の製剤を乾燥自由流動粒子として包み込んでなるハードシェルを含むカプセル。
【請求項24】
前記粒子の少なくとも90%が、粒度30ミクロン未満である請求項1に記載の製剤。
【請求項25】
前記粒子の少なくとも90%が、粒度25ミクロン未満である請求項1に記載の製剤。
【請求項26】
前記粒子の少なくとも90%が、粒度15ミクロン未満である請求項1に記載の製剤。
【請求項27】
10mgの前記活性化合物を含有する請求項1に記載の製剤を含む錠剤。
【請求項28】
1mg〜5mgの前記活性化合物を含有する請求項1に記載の製剤を含む錠剤。
【請求項29】
2.5mgの前記活性化合物を含有する請求項1に記載の製剤を含む錠剤。
【請求項30】
20mgの前記活性化合物を含有する請求項1に記載の製剤を含む錠剤。
【請求項31】
性的機能障害の治療方法であって、ヒト以外の動物に対して、請求項1乃至4、5乃至15、16乃至23、または、28乃至30のいずれかに記載の製剤または錠剤の有効量を投与する工程を含む、ことを特徴とする治療方法。
【請求項32】
前記性的機能障害が、ヒト以外の雄性動物での勃起不全である請求項31に記載の方法。

【公開番号】特開2010−163464(P2010−163464A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106264(P2010−106264)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【分割の表示】特願2001−513416(P2001−513416)の分割
【原出願日】平成12年4月26日(2000.4.26)
【出願人】(500195172)リリー アイコス リミテッド ライアビリティ カンパニー (2)
【Fターム(参考)】