説明

γ−アミノ酪酸含有食品

【課題】この発明は、血圧の上昇に関係する自律神経活動を抑える効果が即効で得られるγ−アミノ酪酸含有食品の提供を目的とする。
【解決手段】血圧の上昇に関係する自律神経活動を抑える効果が即効で得られる量のγ−アミノ酪酸が含まれるγ−アミノ酪酸含有食品である。つまり、有機栽培されたケールからなる野菜粒1Aを経口投与して、γ−アミノ酪酸を少なくとも30mg摂取することにより、血圧の上昇に関係する自律神経活動(交感神経及び副交感神経を含む)を抑える効果が即効で得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、血圧の上昇に関係する自律神経活動を抑える際に摂取されるγ−アミノ酪酸含有食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記γ−アミノ酪酸含有食品としては、例えばもろみ酢原液に、パパイヤ汁を濃縮したパパイヤ汁濃縮物を配合して、従来よりもγ−アミノ酪酸含有量を高くした特許文献1のもろみ酢加工品とその製造方法と、また、トマト、ニンジン又はホウレンソウから選ばれる1種以上の野菜搾汁物及び発芽ソバ搾汁物を有効成分とする特許文献2の血圧上昇抑制組成物がある。
【0003】
しかし、これまで血圧上昇抑制組成物を長期に渡って摂取しなければ血圧の変化が見られず、短期間の血圧に関する効果が得られなかった。
そこで本発明は、急性期の血圧上昇抑制組成物の摂取から自律神経活動の結果を通して将来血圧低下の可能性を示すことが可能となるγ−アミノ酪酸含有食品の提供にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−40
【特許文献2】特開2008−214221
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、血圧の上昇に関係する自律神経活動を抑える効果が即効で得られるγ−アミノ酪酸含有食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、血圧の上昇に関係する自律神経活動を抑える効果が即効で得られる量のγ−アミノ酪酸が含まれるγ−アミノ酪酸含有食品であることを特徴とする。
【0007】
この発明の態様として、前記自律神経活動以外に、血圧、心拍数、拍出量、心拍出量、心拍変動性を抑える効果が得られることを特徴とする。
【0008】
また、この発明の態様として、前記食品は、有機栽培されたケールから作られていることを特徴とする。
【0009】
また、この発明の態様として、前記食品の総摂取量に対しγ−アミノ酪酸が0.3%含まれていることを特徴とする。
【0010】
また、この発明の態様として、前記食品には、前記γ−アミノ酪酸以外に、炭水化物、プロテイン、脂肪、ビタミン、カリウム、食物繊維、カルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、β−カロチン、クロロフィル、ルテインが含まれていることを特徴とする。
【0011】
本発明は、血圧の上昇に関係する自律神経活動の交感成分を抑える効果が即効で得られるγ−アミノ酪酸(GABA=ギャバ)が含まれる食品の提供にある。
【0012】
つまり、人間は雑食であり、特に肉系の食べ物だけからは得られないような栄養物を必要としている。それらの栄養素を得るために消費されるほとんどの食べ物は、肉系の食べ物ではなく、植物系の食べ物に含まれていると思われる。これは、膨大な量のフルーツや野菜類を日々摂取することで対応できる。
【0013】
しかしながら、比較的先進国である国に住むほとんどの人が、十分な量の様々な食べ物を得ることができると同時に、生理学的、社会的、心理学的、科学技術的なストレスに関係する慢性病の流行が広がる可能性も増えてきている。
【0014】
植物系の食べ物である野菜を摂取することで、心臓血管病のような年齢に関係する病気に有益な効果が得られることが、疫学研究で明らかになってきている。
【0015】
実際に、野菜の消費は高血圧患者の血清トリグリセリドや全ての血管コレステロール、LDLコレステロール値を減らすことができる。
【0016】
介入研究では、食物繊維、マグネシウム、カリウム、カルシウム、プロテインを多く含む野菜食の摂取量と血圧の間で有意な逆相関が報告されている。そして、野菜ジュースの摂取が酸化的ストレスを抑えることも報告されている。
また、ストレスと同じくらい食習慣の変化によって影響される高血圧は、心臓の自律神経系の活動にアンバランスに関連している。
【0017】
前記γ−アミノ酪酸(GABA=ギャバ)は、自然界の至るところに広く分布するアミノ酸の一種である。また、γ−アミノ酪酸は、毎日の生活の中で消費される野菜やフルーツに含まれている。
【0018】
γ−アミノ酪酸は血圧を下げ、ストレスを緩和する効果があると報告されている。しかし、以前のほとんどの研究が、γ−アミノ酪酸を長期に渡って摂取することに焦点を置いているので、短期間の効果や、特に急性期のγ−アミノ酪酸を含む野菜組成物摂取の効果の研究はほとんどなかった。
【0019】
一方で、近代社会に生きるほとんどの人が、都市化社会からの様々なストレスに苦しんでいる。つまり、身体的或いは精神的に影響を受けるストレスは、自律神経活動に影響していて、心拍変動性は自律神経活動を図る有力な指標として使われている。
【0020】
血圧の減少に帰するγ−アミノ酪酸の長期摂取の結果から、γ−アミノ酪酸単体の摂取もまた、血圧を調整するのに関与している自律神経活動に影響する可能性が高まってきている。しかし、γ−アミノ酪酸が含まれる野菜の単体摂取から、自律神経活動に及ぼす急激な効果を報告するレポートはほとんどない。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、従来例のようにγ−アミノ酪酸が含まれる加工品や組成物を長期に渡って摂取する必要がなく、有機栽培されたケールからなる食品を経口投与して、γ−アミノ酪酸を少なくとも30mg摂取するだけで、血圧の上昇に関係する自律神経活動の交感成分を抑える効果が即効で得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】錠剤製造装置にて製造された野菜粒の外観形状を示す斜視図。
【図2】野菜粒と偽錠剤を摂取した際の血圧の変化を示す説明図。
【図3】野菜粒と偽錠剤を摂取した際の心拍数の変化を示す説明図。
【図4】R−R間隔による心拍変動成分から求めた低周波成分と高周波成分の変化と低周波成分/高周波成分の割合の変化を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0023】
図1は、錠剤製造装置にて製造された野菜粒の外観形状を示す斜視図、図2は、野菜剤1Aと偽錠剤2Aを摂取した際の血圧の変化を示す説明図、図3は、野菜剤1Aと偽錠剤2Aを摂取した際の心拍数の変化を示す説明図、図4は、R−R間隔による心拍変動成分から求めた低周波成分と高周波成分の変化と低周波成分/高周波成分の割合の変化を示す説明図である。
【0024】
本実施例のγ−アミノ酪酸(GABA=ギャバ)が含まれるタブレット状の野菜粒1Aは、有機栽培されたケール(アブラナ科の多年草)からなる粉末状や顆粒状の原料を主原料として、図示しない錠剤製造装置により製造されている。
【0025】
つまり、有機栽培されたケールを主成分とする野菜粒1Aを経口投与して、γ−アミノ酪酸を少なくとも30mg摂取することにより、血圧の上昇に関係する自律神経活動の交感成分を抑える効果が即効で得られる。
【0026】
また、野菜粒1Aの総摂取量中(総重量が10g或いは50錠)に含まれるγ−アミノ酪酸の割合は、野菜粒1Aの総摂取量に対し少なくとも0.3%含まれている。なお、γ−アミノ酪酸が0.3%以上含まれていてもよい。
【0027】
図1の(a)に示す野菜粒1Aは、明るい緑色で平面から見て丸形状で、側面から見て楕円形状に形成されている。かつ、直径8mmで、厚さ3.8mmに形成されている。
なお、前記野菜粒1Aの直径、厚さを、前記数値以下又は数値以上の値に変更してもよい。
【0028】
図1の(b)に示す野菜粒1Bは、平面から見て三角形状に形成された他の例の錠剤である。また、図1の(c)に示す野菜粒1Cは、平面から見て正方形に形成されたその他の例の錠剤である。
なお、野菜粒1A,1B,1Cの形状以外に、例えば菱形状、星形状、球形状等の所望する形状に形成してもよい。
【0029】
前記γ−アミノ酪酸が含まれる野菜粒1Aを摂取した際に、自律神経活動や心臓血管反応に与える効果を明らかにするため、本実施例では、7人の健常者からなる被験者が、野菜剤1Aか偽錠剤2Aのいずれか一方を10gずつ摂取した際の無作為化した二重盲検臨床試験を、後述する試験方法によって実施した。
【0030】
つまり、野菜剤1A又は偽錠剤2Aを摂取した被験者の心拍数(HR)、心臓収縮期の血圧(SBP)、心臓拡張期の血圧(DBP)、1回の拍出量(SV)、心拍出量(CO)、全末梢血管抵抗値(SVRI)、心拍変動成分(HRV)の低周波成分と高周波成分、低周波成分/高周波成分を測定した。
【0031】
心拍変動成分を示すために低周波成分(LF:0.04−0.15Hz)と高周波成分(HF:0.15−0.4Hz)で2個の主要なスペクトル成分を周波数解析した結果、統計的に重要な交互作用が心拍数(HR)(p<0.01)と、心拍変動成分(HRV)(p<0.05)の低周波成分/高周波成分(LF/HF)の割合にあることが解った。
【0032】
心拍数は、偽錠剤2Aの摂取後に増加したが、野菜粒1Aの摂取後は増加が認められなかった。また、心拍変動を示す低周波成分/高周波成分は、偽錠剤2Aの摂取後に急速に増加し、野菜粒1Aの摂取後はわずかに上昇しただけであった。
【0033】
しかし、心拍出量(CO)と、全末梢血管抵抗(TPR)、心臓収縮期の血圧(SBP)、心臓拡張期の血圧(DBP)、心拍変動(HRV)を示す低周波成分/高周波成分(LF/HF)に関しては、野菜粒1Aと偽錠剤2Aの間に著しい違いは認められなかった。
【0034】
結論として、前記試験の結果から、有機栽培されたケールからなる野菜剤1Aを経口投与して、γ−アミノ酪酸を少なくとも30mg摂取することにより、血圧の上昇に関係する自律神経活動の交感成分を抑える効果がある。
【0035】
前記試験から得られた自律神経活動に対するγ−アミノ酪酸を豊富に含んだ野菜粒1Aの摂取による効果と、独特のストレスに苦しむ人に対するγ−アミノ酪酸を豊富に含んだ野菜粒1Aの摂取による効果を検証するため、後述する測定を被験者に対し独特のストレスを引き出さないような状況下で実施した。
【0036】
前記野菜剤1Aの摂取による効果を検証するための測定方法を以下説明する。
先ず、被験者には、喫煙者ではなく、行動異常、薬物、アルコール乱用、糖尿病歴がなく、また他の現存する病状がない7人の健康な男性を選んだ。
【0037】
平均年齢は22.7歳±1歳(21歳〜24歳)、平均体重は58.9±4.4kg、平均身長171.9±40cm、体格指数(BMI)は19.9±1.2kg/m2である。また、インフォームド・コンセントが全ての被験者から得られている。さらに、全ての手順が静岡大学にある電子科学研究科の大学院の倫理委員会によって承認されている。
【0038】
全ての被験者が実験的セッションに参加し、二重盲検法(ダブルブラインドテスト)におけるクロスオーバーの設定を無作為化した。また、第1セッションから季節的な効果と繰越効果の両方を避けるために、セッション間のwashout期間は1年とした。
【0039】
第1セッションの間、被験者たちは二つの試験的グループ、vegetable trial(n=3)と、Control
trial(n=4)とに無作為に分けた。また、第2セッションは、Control trial(n=3)と、vegetable trial(n=4)とを逆にした。
【0040】
実験が開始される数週間前から、刺激的な食べ物や飲み物を消費することをやめることや規則正しい生活をすることを指示した。
実験期間中は、集めたデータに昼食の影響が出ないように、被験者たちは12時に同じ昼食を食べた。
【0041】
つまり、76.8gの炭水化物、9.7gのプロテイン、1.5gの脂肪を含んだ二つのおにぎりと一杯の味噌汁で、トータルの熱エネルギーは369kcalだった。昼食後、被験者たちは食べ物も飲み物も取らず、14時半から15時の間で実験を開始した。
【0042】
実験は、温度24℃〜26℃、湿度約42%に設定された実験室で行った。また、被験者たちが実験室に入った後すぐに、CM5誘導法による心電図(ECG)の電極配置で、脈波センサーを左の人差し指に、血圧センサーを左の二の腕にそれぞれ装着した。
【0043】
それから、被験者は、リクライニングチェアーで1時間休息した。休憩が終了した後、30分経過した際に、それぞれの被験者が50個の野菜粒1A(10g)又は50個の偽錠剤2A(10g)を、3分間の間に200mlの水で経口投与して摂取した。
【0044】
前記摂取時間は、50個の錠剤を摂取するのに使われる実際の時間をもとに決められた。また、摂取30分前と、摂取後の20分、40分、60分に、心電図、脈波を6分間記録し、同時に心臓血行動態を記録した。
【0045】
前記測定に使用される野菜粒1Aと偽錠剤2Aには、直径8mmで厚さ3.8mmに形成され、明るい緑色で平面から見て丸形状に打錠された野菜粒1Aと偽錠剤2Aを使用した。
また、摂取ごとのそれぞれの錠剤の総重量は10g(50錠)とした。その摂取量は、予備研究の結果を参照して決められた。
【0046】
なお、予備研究は、急性試験の設定で、自律神経活動がγ−アミノ酪酸を少なくとも30mg摂取することによって変化したものを確認させるものであった。
【0047】
野菜粒1Aは、有機栽培されたケールから作られており、その摂取に含まれている成分は次の通りである。
炭水化物=1.93g、プロテイン=2.41g、脂肪=0.47g、ビタミンE=1.49mg、ビタミンB1=0.041mg、ビタミンB2=0.154mg、カリウム=520mg、食物繊維=306g、カルシウム=232mg、鉄=0.605mg、マグネシウム=50mg、亜鉛=0.296mg、ビタミンA=1870IU、β−カロチン=3.36mg、ビタミンC=43.7mg、γ−アミノ酪酸=31.8mg、クロロフィル=50mg、ルテイン=3.46mgである。また、総エネルギーは1回の摂取につき21.6kcalである。
【0048】
一方、偽錠剤2Aは、ジャガイモデンプン、マルトデキシトリン、クチナシから作られており、それぞれの摂取に含まれている成分は次の通りである。
炭水化物=9.39g、プロテイン=0.01g弱、脂肪=0.03g、ビタミンE=0.01mg弱、ビタミンB1=0.01mg弱、ビタミンB2=0.01mg弱、カリウム=3.4mg、食物繊維=0g、カルシウム=1mg、鉄=0.06mg、マグネシウム=0.6mg、亜鉛=0mg、ビタミンA=0IU、β−カロチン=0mg、ビタミンC=0mg、γ−アミノ酪酸=0mg、クロロフィル=0mg、ルテイン=0mgである。また、総エネルギーは、1回の摂取につき330kcalである。
【0049】
全ての被験者が問題なく野菜粒1Aと偽錠剤2Aを摂取したが、摂取後において、吐き気や嫌悪感、体調不良、その他の症状等がいずれの被験者からも報告されることはなかった。
【0050】
次に、SVは、水銀柱血圧計を用いて得られた上腕動脈圧脈波からの波形より計算して求めた。
心拍出量は、1回の拍出量と心拍数(heart rate:HR)の積によって求めた。この方法によって得られた心拍出量は、インピーダンス法によって測定した心拍出量の結果と有意に正相関を示す。また、総末梢血管抵抗は、平均血圧を心拍出量で割って求めた。
【0051】
自律神経活動を評価するために、被験者の心電図のR−R間隔からパワースペクトル密度解析を行った。そのECG信号と脈波は、1Hzのサンプリング周波数で16ビットの分解能をもち、計測データをアナログからデジタルへ変換した後に数値化した。
【0052】
また、記録した心電図のデータは、QRSスパイクを除去した後に心電図のR波を検出し、R−R間隔データを抽出し、そのR−R間隔データのみコンピュータのハードディスク上に連続して記録した。さらに記録したR−R間隔データは、コンピュータ画面上に表示し、R−R間隔データが時間的に等間隔になるように補間し、2Hzで再サンプリングした。R−R間隔データの補間方法は、3次スプライン補間を用いた。
【0053】
また、最大エントロピー法によるパワースペクトル密度解析は、セッション毎に連続して得られた360秒(6分間)のR−R間隔データを対象として行った。ここで使用したMEM法のモデル次数の決定は、赤池情報量基準(AIC)による方法を用いた。
【0054】
自律神経活動を評価するためには、交感・副交感神経活動に反映される低周波成分(LF:0.04−0.15Hz)と、副交感神経活動に反映される高周波成分(HF:0.15−0.4Hz)を分析した。また、心臓血管の交感神経迷走神経バランスの測定値として、LF/HF割合を算出した。
【0055】
全データの結果は、平均±標準誤差(S.E.M)で示す。野菜錠剤摂取グループと偽錠剤摂取グループにおける基準データの比較には、対応のないt検定を用いて統計解析を行った。
【0056】
また、時間、錠剤摂取物(野菜錠剤摂取グループと偽錠剤摂取グループ)を要因とする繰り返しのある二元配置の分散分析(two-way repeated ANOVA)による統計解析を行った。
【0057】
交互作用があった場合は、後に多重比較を行った。多重比較は、錠剤摂取30分前、錠剤摂取20分後、40分後、60分後をBonferroni法で検定した。
【0058】
そして、対応のあるt検定は、2つの錠剤摂取物間(野菜錠剤摂取と偽錠剤摂取)の摂取時刻に対応して統計解析を行った。この統計解析には、Windows(登録商標)対応のソフトウェアSPSSR 12.0J(SPSS社、シカゴ市、イリノイ州)を用いて行った。すべての統計処理において、危険率5%を有意水準とした。
【0059】
図2は、前記測定から得られたデータに基づいて、野菜粒1Aと偽錠剤2Aを摂取した際の血圧の変化を示す説明図である。
野菜粒1Aでの実験(vegetable;n=7)と、偽錠剤2Aでの実験(Control;n=7)において、心臓収縮期の血圧(SBP)の変化を図に示している。
分散分析検定法による分析結果から、心臓収縮期の血圧(SBP)の重要な影響が示された。
【0060】
心臓収縮期の血圧(SBP)の間の重要な相互関係は認められなかった。また、心臓収縮期の血圧において、食物試験下で、摂取40分後のp<0.05と摂取30分前と、摂取20分後を比較し、摂取60分後のp<0.05と摂取40分後を比較した。
【0061】
つまり、時間が、心臓収縮期の血圧(SBP)に重要で主要な影響を持っていることを示しているが、平均血圧(MBP)や心臓拡張期の血圧(DBP)に対してはそうではない。また、両方の実験下において、心臓収縮期の血圧、平均血圧と心臓拡張期の血圧の間での重要な相互作用(時間と摂取)は認められなかった。
【0062】
多重比較検定の後、心臓収縮期の血圧は、摂取30分前と摂取20分後と比べて、その摂取40分後で下がり、それから摂取40分後と比べて、摂取60分後でかなり上昇した。
【0063】
図3の(A)、(B)、(C)は、野菜粒1Aと偽錠剤2Aを摂取した際の心拍数(HR)、拍出量(SV)、心拍出量(CO)の変化を示す説明図である。
野菜粒1Aでの実験(vegetable;n=7)と、偽錠剤2Aでの実験(Control;n=7)において、心拍数(HR)の変化を図中の(A)に示し、1回の拍出量(SV)を図中の(B)に示し、心拍出量(CO)を図中の(C)に示している。
【0064】
分散分析検定法による分析結果から、心拍数、拍出量、心拍出量での時間の重要な影響が示されている。また、心拍数では重要な相互作用が認められる。
多重比較検定の後、心拍数(HR)は、摂取30分前と比較された摂取20分後、摂取40分後で上がり、摂取30分前と摂取20分後とを比較された摂取40分後で下がった(図3のA参照)。
【0065】
しかし、摂取30分前と比較した摂取60分後で示された重要な変化はなかった。これにより、ボンフェローニテストによると重要な変化は認められなかった。
【0066】
拍出量(SV)は、摂取20分後と摂取30分前とを比較された摂取40分後でp<0.05である(図3のB参照)。
【0067】
心拍出量(CO)は、摂取20分後と比較された摂取40分後でp<0.05である。つまり、心拍出量は摂取20分後と比べて、摂取40分後ではっきりと低下が認められた(図3のC参照)。
つまり、時間が全末梢血管抵抗にではなく、心拍数、拍出量、心拍出量に重要な影響があることを示し、心拍数に重要な相互作用があった。
【0068】
多重比較検定の後、心拍数は摂取30分前と比べて、摂取20分後と摂取40分後にはっきりと上昇し、摂取30分前と摂取20分後と比べて、摂取40分後に下がった。
【0069】
摂取60分後で、摂取20分後と比べて心拍数は下がったが、摂取30分前と比べて摂取60分後では重要な変化は認められなかった。これにより、多重比較検定では重要な変化は認められなかった(図3のA参照)。
【0070】
多重比較検定の後、心拍出量は、摂取30分前と摂取20分後と比べて、摂取40分後で低下した(図3のB参照)。また、心拍出量は摂取20分後と比べて、摂取40分後ではっきりと低下が認められた(図3のC参照)。
【0071】
図4の(D)、(E)、(F)は、低周波成分(LF)と高周波成分(HF)の変化と、心臓血管間隔の変異性(パワー)と低周波成分/高周波成分(LF/HF)の割合の変化を示す説明図である。
野菜粒1Aでの実験(vegetable;n=7)と、偽錠剤2Aでの実験(Control;n=7)において、低周波成分(LF)の変化を図中の(D)に示し、高周波成分(HF)の変化を図中の(E)に示している。また、心臓血管間隔の変異性と低周波成分/高周波成分(LF/HF)の割合の変化を図中の(F)に示している。
【0072】
分散分析検定法による分析結果から、低周波成分と低周波成分/高周波成分の割合で時間の重要な影響を示したが、高周波成分では重要な影響が認められなかった(図4のE参照)。
しかし、低周波成分/高周波成分の割合では重要な相互関係が認められたが、低周波成分では重要な相互関係が認められなかった。
【0073】
ボンフェローニテストの後、低周波成分は、摂取30分前と比較された摂取20分後でp<0.01となる。また、摂取20分後と摂取30分前と比較された摂取60分後でp<0.05となる(図4のD参照)。
【0074】
また、摂取30分前と比較された摂取20分後でp<0.05となり、摂取30分前と比較された摂取60分後でp<0.05となる(図4のD参照)。
低周波成分/高周波成分の割合は、摂取30分前と比較された摂取20分後、40分後、60分後でかなり上がった(図4のF参照)。
【0075】
また、低周波成分/高周波成分の割合は、摂取30分前と比較された摂取40分後がかなり上がった。加えて、摂取20分後と摂取40分後では、2つの実験の間で大きな違いが認められた(図4のF参照)。
つまり、低周波成分/高周波成分の割合に重要な相互作用があったが、低周波成分/高周波成分ではそうではなかった。
【0076】
多重比較検定で、低周波成分/高周波成分の割合は摂取30分前と比較して、偽錠剤2Aの摂取20、40、60分後ではっきりと上昇した。
また、低周波成分/高周波成分の割合は、摂取30分前と比較して、摂取40分後ではっきりと上昇が認められた。加えて、摂取20分後と摂取40分後で、2つの実験の間には重要な違いが出た(図4のF参照)。
【0077】
さらに、時間が低周波成分と低周波成分/高周波成分の割合に重要な影響を示した。また、低周波成分は摂取20分後ではっきりと上昇し、摂取30分前と摂取20分後と比較して、摂取60分後で低下が認められた。
【0078】
一方で、低周波成分は、摂取30分前と比較して、摂取20分後と摂取60分後において重要な変化を示した(図4のD参照)。2つの実験での高周波成分は摂取20分後で上昇する傾向にあり、摂取60分後まで低下したが、時間は重要な影響を持っていなかった(図4のE参照)。
【0079】
前記試験の結果が示すように、従来例のようにγ−アミノ酪酸が含まれる加工品や組成物を長期に渡って摂取する必要がなく、有機栽培されたケールからなる食品を経口投与して、γ−アミノ酪酸を少なくとも30mg摂取するだけで、血圧の上昇に関係する自律神経活動(交感神経及び副交感神経を含む)を抑える効果が即効で得られる。
【0080】
前記試験及び測定の結果から考察して、自律神経活動において、γ−アミノ酪酸を多く含んでいる野菜粒1Aの摂取後の影響について評価した。
これまで血圧の変化において、γ−アミノ酪酸の長期摂取の影響の報告は多数あったが、短期期間の影響や、心拍変動や血圧における植物の単独摂取についてのものはあまり知られていない。
知る限りでは、これはよくコントロールされた調査でのγ−アミノ酪酸を豊富に含んだ植物粒1Aを摂取した際の影響についての最初の実験に基づく報告である。
【0081】
本発明の主要な成果は、偽錠剤2Aを摂取した際の心拍数と低周波成分/高周波成分の割合が、野菜粒1Aを摂取した際より非常に高くなったことである。
【0082】
試験結果において、偽錠剤2Aの摂取は、心拍数と交感神経迷走神経バランスをはっきりと上昇させたが、野菜粒1Aの摂取は、交感神経迷走神経バランスでは微増に留まった。
また、野菜粒1A又は偽錠剤2Aの摂取の後、高周波成分は20分で増加され、ベースラインに戻った。さらに、野菜粒1Aの摂取と自律神経系の急激な影響との間の関係の報告はなかった。
【0083】
しかし、長期間のベジタリアンが低血圧で低脂質濃度、心拍変動の迷走神経の調整を促進し、ベジタリアンではない健康的な更年期以降の女性と比べて、どちらのグループでも心臓血管機能の交感調節が増加しないで圧反射感受性が増加したことを示す報告がある。
この結果は、本発明の発明者と意見が一致しなかった。この違いは観察期間の違いや調査方法の違いにより影響されていると推測される。
【0084】
一方で、自律神経系の報告で、食事摂取後、高周波成分は減少し、低周波成分は増加したと報告がある。また、高周波成分と低周波成分の両方が水摂取後、増加したという報告もある。
これらの結果は、必ずしも本発明の結果と一致しているものではない。また、相違理由ははっきりしていないが、栄養素やミリカロリー、水、野菜粒の量の違いが原因であるだろう推測される。
【0085】
この調査は、偽錠剤2Aの摂取後の交感神経活性を明らかにした。従来、交感神経系の緊張は、食物摂取後、人間の体を通して活性化されると考えられていた。確かに、体全体、前腕、腎臓、骨格筋の食後のノルアドレナリン増加によって証明されるように、交感神経活動は人間や動物で食物摂取後に活性化されると報告されている。
加えて、食物の熱の影響の30%は、交感神経活性のための信頼できるものだったと報告がある。また、熱影響は食後の血圧維持を助けるという報告もある。
【0086】
一方で、野菜粒1Aの摂取は、偽錠剤2Aに含まれた全体のエネルギーが、それぞれ21.6kcalか330kcalで、上記で述べた調査よりかなり小さい。
また、昼食の全体エネルギーは369kcalだったが、昼食から実験が始まるまでに90分以上要したので、熱影響の可能性は低くなっているように思われる。
【0087】
現在の調査方法で、交感神経迷走神経バランスの結果における対比は、野菜粒1Aの摂取実験と偽錠剤2Aの摂取実験との間で示された。
具体的にいうと、2つの実験の間で副交感神経活動に違いは無かったが、偽錠剤2Aの摂取実験と比べて、心拍数は減少し、低周波成分要素と心拍変動の低周波成分/高周波成分の割合は野菜粒1Aの摂取実験よりわずかに増加した。
【0088】
根本的なメカニズムは現在の調査ではクリアにできなかったが、野菜の栄養素と自律神経活動の間の関係には、いくつかの可能性があるかもしれない。本発明の調査で使用した野菜粒1Aは、多くのγ−アミノ酪酸を含んでいた。
【0089】
人類にとってγ−アミノ酪酸の摂取は、血圧を下げ、自律神経系の影響を間接的に基礎としている。加えて、人類にはリラックス状態でγ−アミノ酪酸が投与された急性効果が調査されている。脳は記録でγ−アミノ酪酸投与後60分でアルファー波とベータ波はそれぞれ増えたり減ったりしたことが、急性試験によって得られた。
【0090】
中枢神経系でのこれらの結果は、自律神経系で本発明のγ−アミノ酪酸の急性効果を間接的にサポートしている。また、γ−アミノ酪酸単体の量は本発明で使用した野菜粒1Aの中に含まれる2倍以上だった。この違いの詳細なメカニズムは調査されるべきである。
【0091】
本発明における発見は、偽錠剤2Aの摂取実験と比較された野菜粒1Aの摂取実験によって、心拍数が減少したこと、また低周波成分要素と心拍変動の低周波成分/高周波成分の割合が少し増加したことである。
【0092】
しかし、この時2つの実験の間で副交感神経の応答に違いは無かった。これらの実験から、血圧を減少させアルファー波を増加させるγ−アミノ酪酸は、γ−アミノ酪酸を豊富に含んだ野菜粒1Aの急性摂取によって交感神経系活動の抑制に何らかの役割を持っていると推測される。
【0093】
野菜粒1Aと偽錠剤2Aの間では、ビタミンEやカリウム、マグネシウム、カルシウムのようなビタミン・ミネラルの量に違いがあった。この相違は、野菜粒1Aと偽錠剤2Aの摂取実験の間で心拍変動の結果を比較することに寄与していると思われる。
【0094】
心臓収縮期の血圧(SBP)、平均血圧(MBP)、心臓拡張期の血圧(DBP)、拍出量(SV)、心拍出量(CO)、全末梢血管抵抗(TPR)では、重要な相互作用(時間と錠剤の摂取)は認められなかった。
一方で心臓収縮期の血圧(SBP)、拍出量(SV)、心拍出量(CO)では、時間は重要な影響を示している。
【0095】
現時点において、これらの影響のメカニズムは明確でないため、これらの反応の詳細なメカニズムを解明するために、さらなる調査が必要とされている。
【0096】
最近の研究では、1番目と2番目のセッションの間のwashout期間を、季節の影響と第1セッションの影響を避けるために、1年とした。どの測定変数にもセッション間のベースラインで、統計上重要な点はなかった。
【0097】
しかしながら、この1年の間に変化する生活様式、特に食習慣が、現在の結果にいくつかの影響を与えている可能性も残っている。
【0098】
以上の評価に基づいて結論を述べると、γ−アミノ酪酸が含まれる野菜粒1Aを摂取した際に起こる様々な身体的機能の変化について調査した結果、被験者の心拍数は、偽錠剤2Aの摂取実験において増加を示したが、野菜粒1Aの摂取実験では変化が無かった。また、心拍変動を示す低周波成分/高周波成分は、偽錠剤2Aの摂取実験では増加したが、野菜粒1Aの摂取実験ではわずかな増加だった。
【0099】
心拍変動を示す低周波成分/高周波成分では、時間と摂取の間に重要な相互作用は見つからなかった。これらの結果は、有機栽培されたケールからなる野菜粒1Aを経口投与して、γ−アミノ酪酸を少なくとも30mg摂取するだけで、血圧の上昇に関係する自律神経活動を抑える効果が即効で得られることを示唆している。
【0100】
この発明の構成と、前記実施形態との対応において、
この発明のγ−アミノ酪酸含有食品は、実施例のタブレット状の野菜粒1A或いは粉末状の食品に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0101】
前記実施例では、50錠の野菜粒1Aを経口投与して30mgのγ−アミノ酪酸を摂取する方法を説明したが、1錠又は数錠の野菜粒1Aを経口投与するだけで、30mgのγ−アミノ酪酸を摂取できるようにしてもよい。
【0102】
また、食品の一例として、γ−アミノ酪酸が含まれるタブレット状の野菜粒1Aを摂取する例を説明したが、γ−アミノ酪酸が含まれる粉末状の食品を摂取してもよく、前記実施例と略同等の作用及び効果が得られる。
【符号の説明】
【0103】
1A,1B,1C…野菜粒
2A…偽錠剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧の上昇に関係する自律神経活動を抑える効果が即効で得られる量のγ−アミノ酪酸が含まれる
γ−アミノ酪酸含有食品。
【請求項2】
前記自律神経活動以外に、血圧、心拍数、拍出量、心拍出量、心拍変動性を抑える効果が得られることを特徴とする
請求項1に記載のγ−アミノ酪酸含有食品。
【請求項3】
前記食品は、有機栽培されたケールから作られていることを特徴とする
請求項1又は2に記載のγ−アミノ酪酸含有食品。
【請求項4】
前記食品の総摂取量に対しγ−アミノ酪酸が0.3%含まれていることを特徴とする
請求項1〜3のいずれか一つに記載のγ−アミノ酪酸含有食品。
【請求項5】
前記食品には、
前記γ−アミノ酪酸以外に、炭水化物、プロテイン、脂肪、ビタミン、カリウム、食物繊維、カルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、β−カロチン、クロロフィル、ルテインが含まれていることを特徴とする
請求項1〜4のいずれか一つに記載のγ−アミノ酪酸含有食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−103857(P2011−103857A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265556(P2009−265556)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年5月31日 日本生理人類学会発行の「Journal of PHYSIOLOGICAL ANTHROPOLOGY Vol.28(2009),No.3」に発表
【出願人】(593008494)遠赤青汁株式会社 (11)
【Fターム(参考)】