説明

‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)に対する天然アンチセンス転写産物の阻害によるCHIP関連疾患の治療

本発明は、特に‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)の天然アンチセンスポリヌクレオチドを標的化することにより、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)の発現および/または機能を調節する、アンチセンスオリゴヌクレオチドに関する。本発明はまた、上記アンチセンスオリゴヌクレオチドの同定、ならびにCHIP発現に関連した疾患および障害の治療におけるその使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2009年8月21日に出願された米国特許仮出願第61/235,885号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明の実施形態は、CHIPおよび関連分子の発現および/または機能を調節するオリゴヌクレオチドを含む。
【背景技術】
【0003】
DNA−RNAおよびRNA−RNAハイブリダイゼーションは、DNAの複製、転写および翻訳を含めた数多くの核酸機能の側面にとって重要である。またハイブリダイゼーションも特定の核酸を検出する、またはその発現を変化させる様々な技術の中心となっている。例えば、アンチセンスヌクレオチドは、標的RNAとハイブリダイズしてRNAのスプライシング、転写、翻訳および複製を阻害することにより、遺伝子発現を妨害する。アンチセンスDNAは、DNA−RNAハイブリッドが、ほとんどの細胞型に存在する活性である、リボヌクレアーゼHによる消化のための基質として働くという、さらなる特徴を有する。アンチセンス分子は、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)の場合と同様に細胞内に送達するか、またはそれを内因性遺伝子からRNA分子として発現させることができる。最近、FDAはアンチセンス薬物であるVITRAVENE(商標)(サイトメガロウイルス網膜炎の治療用)を認可したが、このことはアンチセンスの治療的有用性を反映している。
【発明の概要】
【0004】
本概要は、本発明の概要を記載して本発明の特質および内容を簡潔に示すために提供される。これは、特許請求の範囲および意味を解釈または限定するために用いられるものではないという理解の下で提出される。
【0005】
一実施形態では、本発明は、天然アンチセンス転写産物の任意の領域を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド(1つまたは複数)を用いることにより、天然アンチセンス転写産物の作用を阻害し、対応するセンス遺伝子の上方制御をもたらすための方法を提供する。また本明細書においては、天然アンチセンス転写産物の阻害が、本発明の範囲内にあると考えられるsiRNA、リボザイムおよび小分子により達成され得ることも意図される。
【0006】
一実施形態は、インビボまたはインビトロで患者細胞または組織におけるCHIPポリヌクレオチドの機能および/または発現を調節する方法を提供し、この方法は、上記細胞または組織を、配列番号2のヌクレオチド1〜2074および配列番号3のヌクレオチド1〜1237の中の5〜30個の連続したヌクレオチドを含むポリヌクレオチドの逆相補鎖に対して少なくとも50%の配列同一性を有する、5〜30ヌクレオチド長のアンチセンスオリゴヌクレオチドと接触させることにより、インビボまたはインビトロで患者細胞または組織におけるCHIPポリヌクレオチドの機能および/または発現を調節することを含む。
【0007】
別の好適な実施形態では、オリゴヌクレオチドはCHIPポリヌクレオチドの天然アンチセンス配列、例えば、配列番号2および3に記載されるヌクレオチド、ならびにそれに対するバリアント、対立遺伝子、相同体、変異体、誘導体、フラグメントおよび相補配列を標的とする。アンチセンスオリゴヌクレオチドの例は、配列番号4〜11として記載されている。
【0008】
別の実施形態では、インビボまたはインビトロで患者細胞または組織におけるCHIPポリヌクレオチドの機能および/または発現を調節する方法を提供し、この方法は、上記細胞または組織を、CHIPポリヌクレオチドのアンチセンスの逆相補鎖に対して少なくとも50%配列同一性を有する、5〜30ヌクレオチド長のアンチセンスオリゴヌクレオチドと接触させ;それによりインビボまたはインビトロで患者細胞または組織におけるCHIPポリヌクレオチドの機能および/または発現を調節することを含む。
【0009】
別の実施形態は、インビボまたはインビトロで患者細胞または組織におけるCHIPポリヌクレオチドの機能および/または発現を調節する方法を提供し、この方法は、上記細胞または組織を、CHIPアンチセンスポリヌクレオチドに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドに対して少なくとも50%の配列同一性を有する、5〜30ヌクレオチド長のアンチセンスオリゴヌクレオチドと接触させ;それによりインビボまたはインビトロで患者細胞または組織におけるCHIPポリヌクレオチドの機能および/または発現を調節することを含む。
【0010】
好適な一実施形態では、組成物は、センスおよび/またはアンチセンスCHIPポリヌクレオチドと結合する1つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0011】
別の好適な実施形態では、オリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾されたまたは置換されたヌクレオチドを含む。
【0012】
別の好適な実施形態では、オリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾された結合を含む。
【0013】
さらに別の実施形態では、修飾ヌクレオチドは、ホスホロチオアート、メチルホスホナートを含む修飾塩基、ペプチド核酸、2’−O−メチル、フルオロまたは炭素、メチレンまたはその他のロックト核酸(LNA)分子を含む。好ましくは、修飾ヌクレオチドは、α−L−LNAを含めたロックト核酸分子である。
【0014】
別の好適な実施形態では、オリゴヌクレオチドを皮下、筋肉内、静脈内または腹腔内で患者に投与する。
【0015】
別の好適な実施形態では、オリゴヌクレオチドを医薬組成物で投与する。治療レジメンは、アンチセンス化合物を患者に少なくとも1回投与するが;この治療は、一定期間にわたる複数回投与を含むように改変し得る。治療は、1つ以上の他のタイプの治療と組み合わせ得る。
【0016】
別の好適な実施形態では、オリゴヌクレオチドをリポソーム内に封入するか、担体分子(例えば、コレステロール、TATペプチド)と結合させる。
【0017】
その他の態様は以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】リポフェクタミン2000を用いて導入したホスホロチオアートオリゴヌクレオチドによるZR75−1細胞処置後の、対照と比較したCHIP mRNAの倍数変化+標準偏差を示すリアルタイムPCRの結果のグラフである。リアルタイムPCRの結果は、BX088969.1に対して設計された2つのsiRNA(CUR−0314およびCUR−0316)による処置の48時間後に、ZR75−1細胞におけるCHIP1 mRNAのレベルが有意に増加することを示している。Hs.5337715に対して設計された3つのホスホロチオアートアンチセンスオリゴ(CUR−0879〜CUR−0883)もCHIP1 mRNAレベルを有意に上方制御した。CUR−0314、CUR−0316、CUR−0879、CUR−0880およびCUR−0883として表されるバーは、それぞれ配列番号4〜7および9で処置した試料に対応する。
【図2】リポフェクタミン2000を用いて導入したホスホロチオアートオリゴヌクレオチドによるZR75−1細胞処置後の、対照と比較したCHIP mRNAの倍数変化+標準偏差を示すリアルタイムPCRの結果のグラフである。リアルタイムPCRの結果は、Hs.5337715に対して設計されたホスホロチオアートアンチセンスの1つによる処置の48時間後に、ZR75−1細胞におけるCHIP1 mRNAのレベルが有意に増加することを示している。CUR−0314、CUR−0316、CUR−0879、CUR−0880、CUR−0883、CUR−0882およびCUR−0884として表されるバーは、それぞれ配列番号6〜11で処置した試料に対応する。
【0019】
配列表の説明:
配列番号1:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)STIP1相同体およびU−ボックス含有タンパク質1(STUB1)、mRNA(NCBIアクセッション番号:NM_005861);配列番号2:天然CHIPアンチセンス配列(Hs.533771);配列番号3:天然CHIPアンチセンス配列(BX088969);配列番号4〜11:アンチセンスオリゴヌクレオチド。はホスホチオアート結合を表し、「r」はRNAを表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のいくつかの態様を、説明のための適用例に言及しながら以下に記載する。本発明を十分に理解するために、数多くの具体的詳細、関係および方法が記載されることを理解するべきである。しかし、本発明は1つ以上の具体的詳細なしで、またはその他の方法で実施され得ることを、当業者は容易に理解するであろう。いくつかの操作は異なる順序で、および/または他の操作もしくは事象と同時に生じ得るため、本発明は操作または事象の順序により限定されない。さらに、説明されたすべての操作または事象が本発明による方法論の実施を必要とするわけではない。
【0021】
本明細書に開示されるすべての遺伝子、遺伝子名および遺伝子産物は、本明細書に開示される組成物および方法が適用可能な任意の種由来の相同体に対応することが意図される。したがって、これらの用語は、ヒトおよびマウス由来の遺伝子および遺伝子産物を含むが、これらに限定されない。特定の種由来の遺伝子または遺伝子産物が開示される場合、この開示は単に典型的なものであることが意図され、またそれが記載される文脈により明示されない限り、限定するものとして解釈されるべきではないことが理解される。したがって、例えば、いくつかの実施形態において哺乳動物に関連する本明細書に開示の遺伝子では、核酸およびアミノ酸配列は他の哺乳動物、魚類、両生類、爬虫類および鳥類を含むがこれらに限定されない、その他の動物由来の相同なおよび/またはオーソロガスな遺伝子および遺伝子産物を包含することが意図される。好適な実施形態では、遺伝子または核酸配列はヒトである。
【0022】
定義
本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明することを目的とし、本発明の限定を意図するものではない。本明細書で使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈により別途明示されない限り、複数形も包含する。さらに、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」またはその変化形が、詳細な説明および/または特許請求の範囲において使用され使用される限り、これらの用語は「含む(comprising)」という用語と同様に包含的であることが意図される。
【0023】
「約(about)」または「約(approximately)」という用語は、当業者により決定される特定の数値に対して許容される誤差範囲内を意味し、これは、部分的にはその数値の測定または決定方法、すなわち、測定システムの限界によって決まる。例えば、「約(about)」は、当該技術分野における実施ごとに、1標準偏差以上の範囲内を意味し得る。あるいは、「約(about)」は、所与の数値の20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらにより好ましくは1%以下の範囲である。あるいは、特に生体系またはプロセスに関しては、この用語は、ある数値の一桁差以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。適用および特許請求の範囲において特定の数値が記載されている場合、別途記述がない限り、その特定の数値に対して許容される誤差の範囲内を意味する「約(about)」という用語を想定するべきである。
【0024】
本明細書で使用される「mRNA」という用語は、標的遺伝子の現在知られているmRNA転写産物(1つまたは複数)および解明され得る任意のさらなる転写産物を意味する。
【0025】
「アンチセンスオリゴヌクレオチド」または「アンチセンス化合物」は、別のRNAまたはDNA(標的RNA、DNA)と結合するRNAまたはDNA分子を意味する。例えば、RNAオリゴヌクレオチドである場合、それはRNA−RNA相互作用により別のRNA標的と結合して、その標的RNAの活性を変化させる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、特定のポリヌクレオチドの発現および/または機能を上方制御または下方制御し得る。この定義は、治療的、診断的またはその他の観点から有用である任意の外来RNAまたはDNA分子を包含することが意図される。このような分子としては、例えば、アンチセンスRNAまたはDNA分子、干渉RNA(RNAi)、マイクロRNA、デコイRNA分子、siRNA、酵素RNA、治療用の編集RNAならびにアゴニストおよびアンタゴニストRNA、アンチセンスオリゴマー化合物、アンチセンスオリゴヌクレオチド、外部ガイド配列(EGS)オリゴヌクレオチド、選択的スプライサー、プライマー、プローブ、ならびに標的核酸の少なくとも一部分とハイブリダイズする他のオリゴマー化合物が挙げられる。したがって、上記化合物は、一本鎖、二本鎖、部分的一本鎖または環状のオリゴマー化合物の形態で導入し得る。
【0026】
本発明との関連における「オリゴヌクレオチド」という用語は、リボ核酸(RNA)もしくはデオキシリボ核酸(DNA)またはその模倣体のオリゴマーまたはポリマーを指す。また「オリゴヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、それらの置換およびアルファ−アノマー型、ペプチド核酸(PNA)、ロックト核酸(LNA)、ホスホロチオアート、メチルホスホナートなどを含めた、天然および/または修飾モノマーまたは連鎖の直線状または環状オリゴマーも包含する。オリゴヌクレオチドは、Watson−Crick型の塩基対形成、Hoogsteen(2つ目の「o」にウムラウト有り)型または逆Hoogsteen(2つ目の「o」にウムラウト有り)型の塩基対形成などのような規則的なモノマー対モノマー相互作用により、標的ポリヌクレオチドと特異的に結合することができる。
【0027】
オリゴヌクレオチドは、異なる領域からなる「キメラ」であり得る。本発明との関連における「キメラ」化合物は、2つ以上の化学領域、例えば、DNA領域(1つまたは複数)、RNA(1つまたは複数)、PNA(1つまたは複数)などを含むオリゴヌクレオチドである。各化学領域は少なくとも1つのモノマー単位、すなわち、オリゴヌクレオチド化合物の場合はヌクレオチドからなる。こうしたオリゴヌクレオチドは通常、1つ以上の所望の特性を示すようにオリゴヌクレオチドが修飾されている、少なくとも1つの領域を含む。オリゴヌクレオチドの所望の特性としては、例えば、ヌクレアーゼ分解に対する増強された耐性、増加した細胞内取り込みおよび/または標的核酸との増加した結合親和性が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、オリゴヌクレオチドの異なる領域は異なる特性を有し得る。本発明のキメラオリゴヌクレオチドは、2つ以上の上記のようなオリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシドおよび/またはオリゴヌクレオチド類似体の混合構造体として形成され得る。
【0028】
オリゴヌクレオチドは、「正しい位置」で連結され得る、すなわち、モノマーが連続的に連結さている場合、天然DNAのように連結され得る、またはスペーサーを介して連結され得る部分からなり得る。スペーサーは領域間の共有結合「架橋」を構成するためのものであり、好適な場合には長さが約100炭素原子長を超えない。スペーサーは、例えば、正または負電荷を有する、特別な核酸結合特性(インターカレーター、溝結合剤、毒素、蛍光物質など)を有する、脂溶性である、例えばアルファ−へリックスを生じるアラニン含有ペプチドのような特別な二次構造を生じるといった、異なる機能性を有し得る。
【0029】
本明細書で使用される「CHIP」および「‘HSP70相互作用タンパク質C末端’」は、すべてのファミリーメンバー、変異体、対立遺伝子、フラグメント、種、コードおよび非コード配列、センスおよびアンチセンスポリヌクレオチド鎖などを含む。
【0030】
本明細書で使用される‘HSP70相互作用タンパク質C末端’、抗原NY−CO−7、Hsp70相互作用タンパク質カルボキシ末端、CHIP、CLL関連抗原KW−8、E3ユビキチン−タンパク質リガーゼCHIP、HSPABP2、NY−CO−7、PP1131、SDCCAG7、STIP1相同体およびUボックス含有タンパク質1、UBOX1という語は、文献中では同じであると見なされ、本願において互換的に使用される。
【0031】
本明細書で使用される「〜に特異的なオリゴヌクレオチド」または「〜を標的とするオリゴヌクレオチド」という用語は、(i)標的遺伝子の一部分と安定な複合体を形成することができるまたは(ii)標的遺伝子のmRNA転写産物の一部分と安定な二重鎖を形成することができる配列を有する、オリゴヌクレオチドを指す。複合体および二重鎖の安定性は、理論的計算および/またはインビトロアッセイにより判定し得る。ハイブリダイゼーション複合体および二重鎖の安定性を判定するための典型的なアッセイは、以下の実施例に記載されている。
【0032】
本明細書で使用される「標的核酸」という用語は、DNA、このようなDNAから転写されるRNA(プレRNAおよびmRNAを含む)、またこのようなRNAに由来するcDNA、コード配列、非コード配列、センスまたはアンチセンスポリヌクレオチドも包含する。オリゴマー化合物とその標的核酸との特異的ハイブリダイゼーションは、核酸の正常な機能に干渉する。標的核酸と特異的にハイブリダイズする化合物による標的核酸のこの機能調節は、一般に「アンチセンス」と呼ばれる。干渉されるDNAの機能としては、例えば、複製および転写を挙げることができる。干渉されるRNAの機能としては、生命維持に必要なすべての機能、例えば、タンパク質翻訳部位へのRNAの転移、RNAからのタンパク質翻訳、1つ以上のmRNAスプライス産物を生じるRNAスプライシング、およびRNAが関与し得るまたはRNAにより促進され得る触媒活性などが挙げられる。このような標的核酸機能に対する干渉の全体的な効果は、コードされた産物またはオリゴヌクレオチドの発現の調節である。
【0033】
RNA干渉「RNAi」は、その「標的」核酸配列に対して配列特異的な相同性を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子により仲介される。本発明の特定の実施形態では、メディエーターは5〜25ヌクレオチドの「小分子干渉」RNA二重鎖(siRNA)である。siRNAは、ダイサーとして知られるRNアーゼ酵素によるdsRNAのプロセシングから生じる。siRNA二重鎖産物は、RISC(RNA誘導型サイレンシング複合体)と呼ばれる多タンパク質siRNA複合体内に動員される。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、次いでRISCは、標的核酸(適切にはmRNA)まで導かれ、そこでsiRNA二重鎖が配列特異的に相互作用して、触媒のように切断を仲介すると考えられている。本発明に従って使用し得る低分子干渉RNAは、当該技術分野で公知であり当業者にはよく知られている手順に従って、合成および使用することができる。本発明の方法で使用する低分子干渉RNAは、約1〜約50の間のヌクレオチド(nt)を含むのが適切である。非限定的な実施形態の例では、siRNAは、約5〜約40nt、約5〜約30nt、約10〜約30nt、約15〜約25ntまたは約20〜25ヌクレオチドを含み得る。
【0034】
適当なオリゴヌクレオチドの選択は、自動的に核酸配列を整列させて同一性または相同性の領域を示すコンピュータプログラムを用いることにより容易になる。このようなプログラムを用いて、例えば、GenBankのようなデータベースを検索することにより、またはPCR産物を配列決定することにより、得られた核酸配列を比較する。様々な種に由来する核酸配列の比較により、種間で適度な同一性を示す核酸配列の選択が可能となる。配列決定されていない遺伝子の場合、サザンブロットを行って、標的種と他の種の遺伝子間の同一性の程度を決定することができる。当該技術分野で公知の様々な程度のストリンジェンシーでサザンブロットを行うことにより、同一性の近似測定値を得ることが可能である。上記手順により、制御するべき被検体の標的核酸配列に対する高度な相補性および他の種の対応する核酸配列に対して低度な相補性を示すオリゴヌクレオチドの選択が可能となる。本発明での使用に適した遺伝子領域の選択において大きな許容度があることを、当業者は理解するであろう。
【0035】
「酵素的RNA」は、酵素活性を有するRNA分子を意味する(Cech,(1988)J.American.Med.Assoc.260,3030−3035)。酵素的核酸(リボザイム)は、最初に標的RNAと結合することにより作用する。この結合は、標的RNAを切断するように作用する分子の酵素部分と非常に近接して保持されている、酵素的核酸の標的結合部分を介して生じる。したがって、酵素的核酸は塩基対形成により、最初に標的RNAを認識してからこれと結合し、的確な部分に結合すると、酵素的に作用して標的RNAを切断する。
【0036】
「デコイRNA」は、リガンドに対する天然の結合ドメインを模倣するRNA分子を意味する。したがって、デコイRNAは、特定のリガンドの結合に関して、天然の結合標的と競合する。例えば、HIVトランス活性化応答(TAR)RNAの過剰発現は「デコイ」として作用することができ、HIV tatタンパク質と効果的に結合することにより、HIV RNA内でコードされているTAR配列とそれが結合することを妨げることが示されている。これは特定の例として意図されるものである。当業者は、これが単なる一例に過ぎず、他の実施形態が当該技術分野で一般に公知の技術を用いて容易にもたらされ得ることを理解するであろう。
【0037】
本明細書で使用される「モノマー」という用語は通常、ホスホジエステル結合またはその類似体により連結されて、サイズが数モノマー単位、例えば約3〜4から、約数百モノマー単位までの範囲のオリゴヌクレオチドを形成するモノマーを指す。ホスホジエステル結合の類似体としては、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、メチルホスホナート、ホスホロセレノアート、ホスホルアミダートなどが挙げられるが、以下でより詳細に記載する。
【0038】
「ヌクレオチド」という用語は、天然のヌクレオチドのみならず、非天然のヌクレオチドも包含する。以前は「非天然」であると見なされていた様々なヌクレオチドが、後に天然において見出されていることが、当業者には明らかなはずである。したがって、「ヌクレオチド」は、既知のプリンおよびピリミジン複素環含有分子のみならず、その複素環式類似体および互変異性体も包含する。他のタイプのヌクレオチドの典型的な例は、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、ウラシル、プリン、キサンチン、ジアミノプリン、8−オキソ−N6−メチルアデニン、7−デアザキサンチン、7−デアザグアニン、N4,N4−エタノシトシン、N6,N6−エタノ−2,6−ジアミノプリン、5−メチルシトシン、5−(C3−C6)−アルキニルシトシン、5‐フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、プソイドイソシトシン、2−ヒドロキシ−5−メチル−4−トリアゾロピリジン、イソシトシン、イソグアニン、イノシンおよびBennerら,米国特許第5,432,272号に記載されている「非天然」ヌクレオチドを含有する分子である。「ヌクレオチド」という用語は、上記すべての例のみならず、その類似体および互変異性体も包含することが意図される。特に対象となるヌクレオチドは、ヒトにおける治療および診断適用との関連において天然のヌクレオチドであると見なされているアデニン、グアニン、チミン、シトシンおよびウラシルを含有するヌクレオチドである。ヌクレオチドは、例えば、KornbergおよびBaker,DNA Replication,第2版(Freeman,San Francisco,1992)に記載のような天然の2’−デオキシおよび2’−ヒドロキシル糖ならびにその類似体を包含する。
【0039】
ヌクレオチドに関連した「類似体」は、修飾塩基部分および/または修飾糖部分を有する合成ヌクレオチド(例えば、Scheit,Nucleotide Analogs,John Wiley,New York,1980;Freier & Altmann,(1997)Nucl.Acid.Res.,25(22),4429−4443,Toulme,J.J.(「e」の上にアクサンテギュ有り),(2001)Nature Biotechnology 19:17−18;Manoharan M.,(1999)Biochemica et Biophysica Acta 1489:117−139;Freier S.M.,(1997)Nucleic Acid Research,25:4429−4443,Uhlman,E.,(2000)Drug Discovery & Development,3:203−213,Herdewin P.,(2000)Antisense & Nucleic Acid Drug Dev.,10:297−310により概略的に記載されているものを参照されたい);2’−O,3`−C−連結[3.2.0]ビシクロアラビノヌクレオシドを包含する。このような類似体は、結合特性、例えば、二重鎖または三重鎖安定性、特異性などを増強するために設計させた合成ヌクレオチドを包含する。
【0040】
本明細書で使用される「ハイブリダイゼーション」は、オリゴマー化合物の実質的に相補的な鎖の対形成を意味する。対形成の1つの機序は水素結合を含み、これはオリゴマー化合物鎖の相補的なヌクレオシドまたはヌクレオチド塩基(ヌクレオチド)間のWatson−Crick、Hoogsteen(2つ目の「o」にウムラウト有り)または逆Hoogsteen(2つ目の「o」にウムラウト有り)水素結合であり得る。例えば、アデニンとチミンは、水素結合の形成を介して対形成する相補的なヌクレオチドである。ハイブリダイゼーションは様々な条件下で生じ得る。
【0041】
アンチセンス化合物は、その化合物と標的核酸との結合が標的核酸の正常な機能に干渉して機能および/または活性の調節を引き起こし、かつ特異的な結合が望まれる条件下で、すなわち、インビボアッセイまたは治療処置の場合は生理的条件下で、およびインビトロアッセイの場合はアッセイが行われる条件下で、アンチセンス化合物と非標的核酸配列との非特異的結合を回避するに十分な程度の相補性がある場合、「特異的にハイブリダイズ可能」である。
【0042】
本明細書で使用される「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」または「ストリンジェントな条件」という語句は、本発明の化合物がその標的配列とハイブリダイズし、最小限の他の配列とハイブリダイズする条件を指す。ストリンジェントな条件は配列に依存し、異なる状況においては異なり、本発明との関連においては、オリゴマー化合物が標的配列と結合する「ストリンジェントな条件」は、オリゴマー化合物の性質および組成ならびにそれらを調べるアッセイにより決定される。一般に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、Na++またはK++のような無機陽イオンを含む低濃度の塩(<0.15M)(すなわち、低イオン強度)、20℃〜25℃よりも高くオリゴマー化合物:標的配列複合体のTmよりも低い温度、および変性剤、例えばホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたは界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの存在を含む。例えば、ホルムアミド1%ごとにハイブリダイゼーション速度が1.1%低下する。高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の例は、60℃で0.1×塩化ナトリウム−クエン酸ナトリウム緩衝剤(SSC)/0.1%(w/v)SDS、30分間である。
【0043】
本明細書で使用される「相補的」は、1つ以上のオリゴマー鎖上の2ヌクレオチド間の正確な対形成能を指す。例えば、アンチセンス化合物の特定位置の核酸塩基が、DNA、RNAまたはオリゴヌクレオチド分子である標的核酸の特定位置の核酸塩基と水素結合することが可能であれば、オリゴヌクレオチドと標的核酸間の水素結合の位置は相補的な位置であると見なされる。オリゴマー化合物、さらにはDNA、RNAまたはオリゴヌクレオチド分子は、各分子中の十分な数の相補的位置が、互いに水素結合可能なヌクレオチドにより占められている場合、互いに相補的である。したがって、「特異的にハイブリダイズ可能」および「相補的」は、オリゴマー化合物と標的核酸との間に安定かつ特異的な結合が生じるのに十分な数のヌクレオチドにわたる十分な程度の正確な対形成または相補性を示すために使用される用語である。
【0044】
オリゴマー化合物の配列は、特異的にハイブリダイズ可能なその標的核酸の配列と100%相補的である必要はないことが当該技術分野において理解されている。さらに、オリゴヌクレオチドは、介在または隣接するセグメントがハイブリダイゼーション事象に関与しないように1つ以上のセグメントを越えてハイブリダイズし得る(例えば、ループ構造、ミスマッチまたはヘアピン構造)。本発明のオリゴマー化合物は、それが標的とする標的核酸配列内の標的領域に対して少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約99%の配列相補性を含む。例えば、アンチセンス化合物の20ヌクレオチドのうち18ヌクレオチドが標的領域に対して相補的であるアンチセンス化合物であれば、特異的にハイブリダイズし、90パーセントの相補性を示すことになる。この例では、残りの非相補的ヌクレオチドは、クラスターを形成するか、または相補的なヌクレオチドの中に散在していてもよく、互いにまたは相補的なヌクレオチドと連続している必要はない。したがって、標的核酸と完全に相補的な2つの領域に隣接する4つの非相補的ヌクレオチドを有する、18ヌクレオチド長のアンチセンス化合物は、標的核酸と全体で77.8%の相補性を有し、したがって、本発明の範囲内に含まれることになる。アンチセンス化合物と標的核酸のある領域とのパーセント相補性は、当該技術分野で公知のBLASTプログラム(basic local alignment search tools)およびPowerBLASTプログラムを用いて日常的に決定し得る。パーセント相同性、配列同一性または相補性は、例えば、SmithおよびWatermanのアルゴリズム(Adv.Appl.Math.,(1981)2,482−489)を使用するGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix,Genetics Computer Group,University Research Park,Madison Wis.)により、初期設定を用いて決定し得る。
【0045】
本明細書で使用される「熱融解点(Tm)」は、標的配列に相補的なオリゴヌクレオチドの50%が平衡状態で標的配列とハイブリダイズする、規定のイオン強度、pHおよび核酸濃度下での温度を指す。通常、ストリンジェントな条件は、短いオリゴヌクレオチド(例えば、10〜50ヌクレオチド)では、pH7.0〜8.3において塩濃度が少なくとも約0.01〜1.0MのNaイオン濃度(または他の塩)であり、かつ温度が少なくとも約30℃の条件である。またストリンジェントな条件は、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によっても達成し得る。
【0046】
本明細書で使用される「調節」は、遺伝子発現の増加(刺激)または減少(阻害)のいずれかを意味する。
【0047】
ポリヌクレオチド配列に関連して使用される「バリアント」という用語は、野生型遺伝子に関連したポリヌクレオチド配列を包含し得る。またこの定義は、例えば、「対立遺伝子」、「スプライス」、「種」または「多型」バリアントも包含する。スプライスバリアントは、参照分子に対して有意な同一性を有し得るが、mRNAプロセシングにおけるエクソンの選択的スプライシングにより、一般にポリヌクレオチドの数が比較的多いかまたは少ない。対応するポリペプチドは、追加の機能的ドメインを有するか、またはドメインを有さない。種バリアントとは、種によって異なるポリヌクレオチド配列のことである。本発明において特に有用であるのが野生型遺伝子産物のバリアントである。バリアントは核酸配列内の少なくとも1つの変異から生じ、mRNAの変化、または構造もしくは機能が変化し得るもしくは変化し得ないポリペプチドを生じ得る。任意の天然または組み換え遺伝子は、対立形質を有さないか、または1つもしくは多数有し得る。バリアントを生じる一般的な突然変異変化は、一般にヌクレオチドの自然な欠失、付加または置換によるものとされる。上記各タイプの変化は、所与の配列において1回以上、単独で、または他のものと組み合わさって生じ得る。
【0048】
生じたポリペプチドは一般に、互いに対して有意なアミノ酸同一性を有する。多型バリアントとは、所与の種の個体間での特定遺伝子のポリヌクレオチド配列における変異のことである。また多型バリアントは、ポリヌクレオチド配列が1塩基だけ異なる「一塩基多型」(SNP)または一塩基変異も包含し得る。SNPの存在は、例えば、病的状態の傾向有する特定の母集団、すなわち感受性か耐性かの指標となり得る。
【0049】
誘導体ポリヌクレオチドは、化学修飾、例えば、アルキル、アシルまたはアミノ基による水素の置換を受けた核酸を包含する。誘導体、例えば誘導体オリゴヌクレオチドは、改変糖部分または糖間結合のような非天然部分を含み得る。これらのうちで典型的なものが、ホスホロチオアートおよび当該技術分野で公知の他の硫黄含有種である。誘導体核酸は、放射性ヌクレオチド、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤、基質、補助因子、阻害剤、磁性粒子などを含めた標識も含み得る。
【0050】
「誘導体」ポリペプチドまたはペプチドとは、例えば、グリコシル化、PEG化、リン酸化、硫酸化、還元/アルキル化、アシル化、化学的結合または弱いホルマリン処理により修飾されたもののことである。また誘導体は、放射性同位元素、蛍光および酵素標識を含むがこれらに限定されない、検出可能な標識を含有するように直接的または間接的に修飾されていてもよい。
【0051】
本明細書で使用される「動物」または「患者」という用語は、例えば、ヒト、ヒツジ、ヘラジカ、シカ、ミュールジカ、ミンク、哺乳動物、サル、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、鳥類、ニワトリ、爬虫類、魚類、昆虫およびクモ類を包含することが意図される。
【0052】
「哺乳動物」は、通常に医療を受ける温血哺乳動物(例えば、ヒトおよび家畜)を包含する。例としては、ヒトのみならずネコ、イヌ、ウマ、ウシおよびヒトが挙げられる。
【0053】
「治療すること」または「治療」は、哺乳動物における病的状態の治療を包含し、以下のことを含む:(a)特に哺乳動物が病的状態になる素因があるが、それに罹患しているとまだ診断されていない場合に、そのような哺乳動物において病的状態が生じるのを防ぐこと;(b)病的状態を阻害すること、例えば、その発達を停止させること;および/または(c)病的状態を軽減すること、例えば、所望のエンドポイントまで病的状態の退行を引き起こすこと。また治療することは、疾患症状の改善(例えば、疼痛または不快感の低減)も包含し、このような改善は疾患(例えば、原因、伝染、発現など)に直接的に影響を与えても与えなくてもよい。
【0054】
本明細書で使用される「癌」は、哺乳動物において見られるすべてのタイプの癌または新生物または悪性腫瘍を指し、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:白血病、リンパ腫、黒色腫、癌腫および肉腫。癌は、「腫瘍」または癌の悪性細胞を含む組織として発現する。腫瘍の例としては、肉腫および癌腫、例えば:線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウイルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫および網膜芽細胞腫などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明に従って本開示の組成物により治療され得るさらなる癌としては、例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽腫、乳癌、卵巣癌、肺癌、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、小細胞肺腫瘍、原発性脳腫瘍、胃癌、結腸癌、悪性膵臓インスリノーマ、悪性カルチノイド、膀胱癌、前癌性皮膚病変、精巣癌、リンパ腫、甲状腺癌、神経芽腫、食道癌、尿生殖路癌、悪性高カルシウム血症、子宮頸癌、子宮内膜癌、副腎皮質癌および前立腺癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
「神経疾患または障害」は、神経系および/または視覚系の任意の疾患または障害を指す。「神経疾患または障害」は、中枢神経系(脳、脳幹および小脳)、末梢神経系(脳神経を含む)および自律神経系(その一部は中枢神経系および末梢神経系の両方にある)を冒す疾患または障害を包含する。神経障害の例としては、頭痛、昏迷および昏睡、認知症、発作、睡眠障害、外傷、感染、新生物、神経眼科、運動障害、脱髄性疾患、脊髄障害ならびに末梢神経、筋肉および神経筋接合部の障害が挙げられるが、これらに限定されない。耽溺および精神疾患も、双極性障害および統合失調症を含むがこれらに限定されず、神経障害の定義に含まれる。以下のものは、本発明による組成物および方法を用いて治療し得るいくつかの神経障害、症状、兆候および症候群のリストである:後天性てんかん性失語症;急性散在性脳脊髄炎;副腎白質ジストロフィー;加齢黄斑変性症;脳梁無形成;失認;アイカルディ症候群;アレキサンダー病;アルパース病;交代性片麻痺;血管性認知症;筋萎縮性側索硬化症;無脳症;アンジェルマン症候群;血管腫症;無酸素症;失語症;失行;くも膜嚢胞;くも膜炎;アーノルド・キアリ奇形;動静脈奇形;アスペルガー症候群;毛細血管拡張性運動失調症;注意欠陥多動障害;自閉症;自律神経機能不全;背部痛;バッテン病;ベーチェット病;ベル麻痺;良性特発性眼瞼痙攣;良性限局性;筋萎縮症;良性頭蓋内高血圧症昇;ビンスワンガー病;眼瞼痙攣;ブロッホ・ズルツベルガー症候群;腕神経叢損傷;脳膿瘍;脳損傷;脳腫瘍(多形神経膠芽腫を含む);脊髄腫瘍;ブラウン・セカール症候群;カナバン病;手根管症候群;カウザルギー;中枢痛症候群;橋中心髄鞘崩壊症;頭部障害;脳動脈瘤;脳動脈硬化症;大脳萎縮症;脳性巨人症;脳性麻痺;シャルコー・マリー・トゥース病;化学療法による神経障害および神経障害痛;キアリ奇形;舞踏病;慢性炎症脱髄性多発性ニューロパチー;慢性疼痛;慢性局所痛症候群;コフィン・ローリー症候群;遷延性植物状態を含めた昏睡;先天性両側顔面神経麻痺;大脳皮質基底核変性症;頭蓋動脈炎;頭蓋骨癒合症;クロイツフェルト・ヤコブ病;累積外傷性障害;クッシング症候群;巨細胞封入体病;サイトメガロウイルス感染症;ダンシングアイズ−ダンシングフィート(dancing eyes−dancing feet)症候群;ダンディ・ウォーカー症候群;ドーソン病;ド・モルシェ症候群;デジェリン・クルムプケ麻痺;認知症;皮膚筋炎;糖尿病性神経障害;びまん性硬化症;自律神経障害;書字障害;読字障害;ジストニア;早期乳児てんかん性脳症;トルコ鞍空洞症候群;脳炎;脳ヘルニア;脳三叉神経血管腫症;癲癇;エルプ麻痺;本態性振戦;ファブリー病;ファール症候群;失神;家族性痙性麻痺;熱性発作;フィッシャー症候群;フリードライヒ運動失調症;前頭側頭型認知症およびその他の「タウオパチー」;ゴーシェ病;ゲルストマン症候群;巨細胞性動脈炎;巨細胞封入体病;グロボイド細胞白質ジストロフィー;ギラン・バレー症候群;HTLV−1関連脊髄症;ハラーフォルデン・シュパッツ病;頭部損傷;頭痛;片側顔面攣縮;遺伝性痙性対麻痺;遺伝性多発神経炎性失調;耳帯状疱疹;帯状疱疹;平山症候群;HIV関連認知症および神経障害(またはAIDSの神経症状);全前脳胞症;ハンチントン病およびその他のポリグルタミン疾患;水頭無脳症;水頭症;コルチゾール過剰症;低酸素症;免疫仲介性脳脊髄炎;封入体筋炎;色素失調症;乳児フィタン酸蓄積症;乳児レフサム病;乳児攣縮;炎症性ミオパチー;頭蓋内嚢胞;頭蓋内圧亢進症;ジュベール症候群;カーンズ・セイヤー症候群;ケネディ病;キンズボーン症候群;クリッペル・ファイル症候群;クラッベ病;クーゲルベルク・ヴェランダー病;クールー;ラフォラ病;ランバート・イートン筋無力症症候群;ランドウ・クレフナー症候群;延髄外側(ワレンベルグ)症候群;学習障害;リー病;レノックス・ガストー症候群;レッシュ・ナイハン症候群;白質ジストロフィー;レビー小体型認知症;滑脳症;閉込め症候群;ルー・ゲーリック病(例えば、運動ニューロン疾患または筋萎縮性側索硬化症);腰部椎間板症;ライム病−神経後遺症;マシャド・ジョセフ病;巨大脳髄症;巨脳症;メルカーソン・ローゼンタール症候群;メニエール病;髄膜炎;メンケス病;異染性白質ジストロフィー;小頭症;片頭痛;ミラー・フィッシャー症候群;小発作;ミトコンドリア性ミオパチー;メビウス症候群;単肢筋萎縮症;運動ニューロン疾患;もやもや病;ムコ多糖症;多発脳梗塞性認知症;多巣性運動ニューロパチー;多発性硬化症およびその他の脱髄性障害;体位性低血圧を伴う多系統萎縮症;p筋ジストロフィー;重症筋無力症;髄鞘破壊性びまん性硬化症;乳児ミオクローヌス性脳症;ミオクローヌス;ミオパチー;先天性筋強直症;ナルコレプシー;神経線維腫症;悪性症候群;AIDSの神経症状;狼瘡の神経後遺症;神経性筋強直症;神経セロイドリポフスチン症;神経細胞移動障害;ニーマン・ピック病;オサリバン・マクロード症候群;後頭神経痛;潜在性脊椎癒合不全続発(occult spinal dysraphism sequence);大田原症候群;オリーブ橋小脳萎縮症;眼球クローヌス・ミオクローヌス;視神経炎;起立性低血圧症;オーバーユース症候群;異常知覚;神経変性疾患または障害(パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、認知症、多発性硬化症および神経細胞死に関連したその他の疾患および障害);先天性パラミオトニア;傍腫瘍性疾患;発作;ペイリー・ロンベルグ症候群;ペリツェウス・メルツバッヘル病;周期性四肢麻痺;末梢神経障害;有痛性神経障害および神経障害性疼痛;遷延性植物状態;広汎性発達障害;光くしゃみ反射;フィタン酸蓄積症;ピック病;神経圧迫(pinched nerve);下垂体腫瘍;多発性筋炎;孔脳症;ポリオ後症候群;帯状疱疹後神経痛;感染後脳脊髄炎;体位性低血圧;プラダー・ウィリー症候群;原発性側索硬化症;プリオン病;進行性顔面半側萎縮症;進行性多病巣性白質脳症;進行性硬化性灰白質萎縮症;進行性核上性麻痺;偽性脳腫瘍;ラムゼイ・ハント症候群(I型およびII型);ラスムッセン脳炎;反射性交感神経性ジストロフィー症候群;レフサム病;反復性運動障害;反復性ストレス損傷;下肢静止不能症候群;レトロウイルス関連脊髄症;レット症候群;ライ症候群;聖ヴィトゥス舞踏病;サンドホフ病;シルダー病;裂脳症;中隔視神経異形成症;揺さぶられ症候群;帯状疱疹;シャイ・ドレーガー症候群;シェーグレン症候群;睡眠時無呼吸;ソトス症候群;痙攣;二分脊椎症;脊髄損傷;脊髄腫瘍;脊髄性筋萎縮症;全身硬直症候群;脳卒中;スタージ・ウェーバー症候群;亜急性硬化性全脳炎;皮質下動脈硬化性脳症;シデナム舞踏病;失神;脊髄空洞症;遅発性ジスキネジア;テイ・サックス病;側頭動脈炎;脊髄係留症候群;トムゼン病;胸郭出口症候群;三叉神経痛性チック;トッド麻痺;トゥレット症候群;一過性脳虚血発作;伝染性海綿状脳症;横断性脊髄炎;外傷性脳損傷;振戦;三叉神経痛;熱帯性痙性不全対麻痺症;結節性硬化症;血管性認知症(多発脳梗塞性認知症);側頭動脈炎を含めた血管炎;フォンヒッペル・リンダウ病;ワレンベルグ症候群;ウェルドニッヒ・ホフマン病;ウエスト症候群;鞭打ち症;ウイリアムズ症候群;ウィルソン病;およびツェルウェガー症候群。
【0056】
「炎症」は、全身性炎症状態および単球、白血球および/または好中球の遊走および誘引と局所的に関連した状態を指す。炎症の例としては、病原性生物(グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、ウイルス、真菌、ならびに原生動物および蠕虫のような寄生虫を含む)による感染、移植拒絶反応(腎臓、肝臓、心臓、肺または角膜のような固形臓器の拒絶のみならず、移植片対宿主病(GVHD)を含めた骨髄移植の拒絶も含む)、または局所的な慢性もしくは急性の自己免疫反応もしくはアレルギー反応により生じる炎症が挙げられるが、これらに限定されない。自己免疫性疾患としては、急性糸球体腎炎;リウマチ性もしくは反応性関節炎;慢性糸球体腎炎;クローン病、潰瘍性大腸炎および壊死性腸炎のような炎症性腸疾患;肝炎;敗血症;アルコール性肝疾患;非アルコール性脂肪変性;顆粒球輸血関連症候群;接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬のような炎症性皮膚疾患;全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性甲状腺炎、多発性硬化症およびいくつかの形態の糖尿病、または被検体自身の免疫系による攻撃が病理的組織破壊を生じるその他の任意の自己免疫状態が挙げられる。アレルギー反応としては、アレルギー性喘息、慢性気管支炎、急性および遅延型過敏症が挙げられる。全身炎症性疾患状態としては、外傷、熱傷、虚血事象(例えば、心筋梗塞および脳卒中を含めた心臓、脳、腸または抹消血管系における血栓事象)に続く再灌流、敗血症、ARDSまたは多器官不全症候群に関連した炎症が挙げられる。アテローム性動脈硬化プラークでは炎症性細胞動員も生じる。炎症としては、非ホジキンリンパ腫、ウェゲナー肉芽腫症、橋本甲状腺炎、肝細胞癌、胸腺萎縮、慢性膵炎、関節リウマチ、反応性リンパ様過形成、変形性関節症、潰瘍性大腸炎、乳頭癌、クローン病、潰瘍性大腸炎、急性胆嚢炎、慢性胆嚢炎、肝硬変、慢性唾液腺炎、腹膜炎、急性膵炎、慢性膵炎、慢性胃炎、腺筋症、子宮内膜症、急性子宮頸管炎、慢性子宮頸管炎、リンパ組織過形成、多発性硬化症、特発性血小板減少性紫斑病に続発する肥大、原発性IgA腎症、全身性エリテマトーデス、乾癬、肺気腫、慢性腎盂腎炎および慢性膀胱炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
心血管疾患または障害としては、虚血を引き起こし得るか、または心臓の再灌流により引き起こされる障害が挙げられる。例としては、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、肉芽腫性心筋炎、慢性心筋炎(非肉芽腫性)、原発性肥大型心筋症、末梢動脈疾患(PAD)、末梢血管疾患、静脈血栓塞栓症、肺塞栓症、発作、狭心症、心筋梗塞、心停止により引き起こされる心血管組織損傷、心臓バイパスにより引き起こされる心血管組織損傷、心原性ショック、および当業者に公知である関連状態、あるいは心臓もしくは血管系の機能不全、または特にCHIP活性化に関連した組織損傷を含むがこれに限定されない心臓もしくは血管系に対する組織損傷を含む関連状態が挙げられるが、これらに限定されない。CVS疾患としては、アテローム性動脈硬化症、肉芽腫性心筋炎、心筋梗塞、心臓弁膜症に続発する心筋線維症、梗塞を伴わない心筋線維症、原発性肥大型心筋症および慢性心筋炎(非肉芽腫性)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
酸化ストレスに関連した疾患または障害の例としては、アテローム性動脈硬化症、パーキンソン病、心不全、心筋梗塞、アルツハイマー病、慢性疲労症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、多発性硬化症、肝疾患または障害、胃腸管疾患または障害、糖尿病、癌、自己免疫、免疫関連疾患または障害、神経疾患または障害、神経変性疾患または障害、神経修復および麻痺、神経内分泌分化、炎症性疾患、筋疾患または障害、感染性生物に関連した疾患または障害などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドの組成物および分子
標的:一実施形態では、標的は、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)に関連したセンスおよび/またはアンチセンスの非コードおよび/またはコード配列を非限定的に含むCHIPの核酸配列を含む。
【0060】
HSP70相互作用タンパク質のカルボキシ末端(CHIP)は、神経変性疾患に関与する他のタンパク質、例えばtau、A〜、シヌクレインオリゴマーおよび伸長ポリグルタミンリピートを有するタンパク質などのプロテアソーム分解を促進する。CHIPはロイシンリッチリピートキナーゼ2遺伝子(LRRK2)のユビキチン化、分解および毒性を制御する。CHIPは野生型および変異型の両方のLRRK2と結合し、LRRK2のユビキチン化およびプロテアソーム分解を促進する。CHIPがLRRK2と結合するための独立した手段は2つある:Hsp90を介すると思われる、CHIPのN末端テトラトリコペプチドリピート(TPR)とLRRK2のアルマジロ(ARM)ドメインとの間の間接的相互作用、および直接的または共通のアダプタータンパク質を介した間接的な、CHIPの荷電ドメインとLRRK2の複合体(ROC)ドメインのRasとの間の相互作用である。
【0061】
熱ショック同族(Hsc)70相互作用タンパク質のカルボキシル末端(CHIP)は、分子シャペロンと協働してタンパク質の折り畳みを促進し、タンパク質凝集を防ぐことができる、ユビキチンE3リガーゼである。CHIPは熱ショックタンパク質(Hsp)70と共に、細胞培養系においてタウのユビキチン化および分解を制御し得ることが、過去の研究で示された。ユビキチン化されたタウは、アルツハイマー病(AD)の主要な病理組織学的特徴である神経原線維濃縮体(NFT)の一構成要素である。CHIPの増加は、ADの初期段階におけるNFT形成を防ぎ得る。
【0062】
好適な実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、CHIPファミリーメンバーに関連した疾患または障害を予防または治療する。アンチセンス化合物を用いて得られた幹細胞から再生した細胞/組織で治療され得る典型的な‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)仲介による疾患または障害は、以下のものを含む:CHIPの異常な機能および/または発現に関連した疾患または障害、神経疾患または障害、神経炎症性疾患または障害、自己免疫疾患または障害、肥満症、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、癌、AIDS、アテローム性動脈硬化プラーク、膠芽腫、アミロイド沈着に関連した疾患または障害、絨毛癌、星状細胞腫、アミロイドーシス、高脂血症、神経変性、腫瘍性形質転換、AIDS、転移、心筋梗塞、肺線維症、炎症、神経膠腫、血管疾患または障害、細胞損傷、非小細胞肺癌(NSCLC)、高コレステロール血症、脂肪肉腫、心血管疾患または障害、免疫不全、糸球体腎炎、静脈血栓症、病理過程、細胞ストレス、酸化ストレスに関連した疾患または障害、ポリグルタミン病、アグリソーム経路の機能障害に関連した疾患または障害、加齢に関連した疾患または障害、ミスフォールドタンパク質の凝集に関連した疾患または障害、アルファ−シヌクレインのミスフォールディングおよび/または凝集に関連した疾患または障害;ならびにベータ−アミロイド(Abeta)代謝に関連した疾患または障害。
【0063】
一実施形態では、正常対照と比べたCHIPの異常な発現、機能、活性に関連した任意の疾患または障害を予防または治療するために、1つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドによるCHIPの調節を、それを必要とする患者に対して行う。
【0064】
好適な一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、非コード領域を非限定的に含めたCHIPのポリヌクレオチドに対して特異的である。CHIP標的は、CHIPのバリアント;SNPを含めたCHIPの変異体;CHIPの非コード配列;対立遺伝子、フラグメントなどを含む。好ましくは、オリゴヌクレオチドはアンチセンスRNA分子である。
【0065】
本発明の実施形態に従えば、標的核酸分子はCHIPポリヌクレオチドのみに限定されず、CHIPの任意のアイソフォーム、受容体、相同体、非コード領域などにまで及ぶ。
【0066】
別の好適な実施形態では、オリゴヌクレオチドは、バリアント、対立遺伝子、相同体、変異体、誘導体、フラグメントおよびそれらの相補的配列を非限定的に含めた、CHIP標的の天然アンチセンス配列(コードおよび非コード領域に対する天然アンチセンス)を標的とする。好ましくは、オリゴヌクレオチドはアンチセンスRNAまたはDNA分子である。
【0067】
別の好適な実施形態では、本発明のオリゴマー化合物は、化合物中の1つ以上のヌクレオチド位置に異なる塩基が存在するバリアントも含む。例えば、最初のヌクレオチドがアデニンである場合、この位置にチミジン、グアノシン、シチジンまたは他の天然もしくは非天然ヌクレオチドを含むバリアントが生成され得る。このことは、アンチセンス化合物の任意の位置で行われ得る。次いで、上記化合物を本明細書に記載の方法を用いて試験し、その標的核酸の発現を阻害する能力を判定する。
【0068】
いくつかの実施形態では、アンチセンス化合物と標的の間の相同性、配列同一性または相補性は約50%〜約60%である。いくつかの実施形態では、相同性、配列同一性または相補性は約60%〜約70%である。いくつかの実施形態では、相同性、配列同一性または相補性は約70%〜約80%である。いくつかの実施形態では、相同性、配列同一性または相補性は約80%〜約90%である。いくつかの実施形態では、相同性、配列同一性または相補性は約90%、約92%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%である。
【0069】
アンチセンス化合物は、化合物と標的核酸との結合が標的核酸の正常な機能に干渉して活性喪失を引き起こし、かつ特異的結合が望まれる条件下でアンチセンス化合物と非標的配列との非特異的結合を回避するに十分な程度の相補性がある場合、特異的にハイブリダイズ可能である。このような条件としては、すなわち、インビボアッセイまたは治療処置の場合は生理的条件、およびインビトロアッセイの場合はアッセイが行われる条件が挙げられる。
【0070】
DNA、RNA、キメラ、置換などを問わずアンチセンス化合物は、化合物と標的DNAまたはRNA分子との結合が標的DNAまたはRNAの正常な機能に干渉して有用性の喪失を引き起こし、かつ特異的結合が望まれる条件下で、すなわち、インビボアッセイまたは治療処置の場合は生理的条件下で、およびインビトロアッセイの場合はアッセイが行われる条件下で、アンチセンス化合物と非標的配列との非特異的結合を回避するに十分な程度の相補性がある場合、特異的にハイブリダイズ可能である。
【0071】
別の好適な実施形態では、例えばPCR、ハイブリダイゼーションなどを用いて同定および伸長されるアンチセンス配列、配列番号2および3として記載されている1つ以上の配列などを非限定的に含めたCHIPの標的化は、CHIPの発現または機能を調節する。一実施形態では、発現または機能が対照と比べて上方制御される。別の好適な実施形態では、発現または機能が対照と比べて下方制御される。
【0072】
別の好適な実施形態では、オリゴヌクレオチドは、例えばPCR、ハイブリダイゼーションなどを用いて同定および伸長されたアンチセンス配列を含めた、配列番号4〜11として記載されている核酸配列を含む。これらのオリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾ヌクレオチド、短いまたは長いフラグメント、修飾された結合などを含み得る。修飾された結合またはヌクレオチド間結合の例は、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアートなどを含む。別の好適な実施形態では、ヌクレオチドはリン含有誘導体を含む。本発明の修飾オリゴヌクレオチド中の糖または糖類似体と結合し得るリン含有誘導体(または修飾されたリン酸基)は、一リン酸、二リン酸、三リン酸、アルキルホスファート、アルカンホスファート、ホスホロチオアートなどであり得る。上記リン酸類似体の調製ならびにそれらのヌクレオチド、修飾ヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド内への組込みそれ自体も既知であり、本明細書に記載する必要はない。
【0073】
アンチセンスの特異性および感度も当業者により治療用途に利用される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、動物およびヒトにおける病的状態の治療において、治療部分として使用されてきた。アンチセンスオリゴヌクレオチドは安全かつ効果的にヒトへ投与されており、数多くの臨床試験が現在進められている。このようにして、オリゴヌクレオチドが、細胞、組織および動物、特にヒトの治療のための治療レジームにおいて有用であるように構成し得る、有用な治療様式であり得ることが確認される。
【0074】
本発明の実施形態では、オリゴマーアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドは、標的核酸分子と結合して、標的遺伝子によりコードされる分子の発現および/または機能を調節する。干渉されるDNAの機能は、例えば、複製および転写を含む。干渉されるRNAの機能は、生命維持に必要なすべての機能、例えば、タンパク質翻訳部位へのRNAの転移、RNAからのタンパク質翻訳、1つ以上のmRNAスプライス産物を生じるRNAスプライシング、およびRNAが関与し得るまたはRNAにより促進され得る酵素活性などを含む。機能は、所望の機能に応じて上方制御または阻害され得る。
【0075】
アンチセンス化合物としては、アンチセンスオリゴマー化合物、アンチセンスオリゴヌクレオチド、外部ガイド配列(EGS)オリゴヌクレオチド、選択的スプライサー、プライマー、プローブ、ならびに標的核酸の少なくとも一部分とハイブリダイズする他のオリゴマー化合物が挙げられる。したがって、上記化合物は、一本鎖、二本鎖、部分的一本鎖または環状のオリゴマー化合物の形態で導入し得る。
【0076】
特定の核酸分子に対するアンチセンス化合物の標的化は、本発明との関連においては、多段階工程であり得る。この工程は通常、その機能が調節されるべき標的核酸の同定から始まる。この標的核酸は、例えば、その発現が特定の障害もしくは病的状態に関連した細胞内遺伝子(またはその遺伝子から転写されるmRNA)または感染病原体由来の核酸分子である。本発明では、標的核酸は‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)をコードする。
【0077】
標的化工程は通常、アンチセンス相互作用が生じて所望の効果、例えば発現調節が得られる、標的核酸内の少なくとも1つの標的領域、標的セグメントまたは標的部位の決定も含む。本発明との関連においては、「領域」という用語は、少なくとも1つの同定可能な構造、機能または特性を有する標的核酸の一部と定義される。標的核酸の領域内にセグメントがある。「セグメント」は、標的核酸内の領域のより小さな部分またはサブ部分と定義される。本明細書で使用される「部位」は、標的核酸内の位置と定義される。
【0078】
好適な一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)の天然アンチセンス配列と結合し、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)(配列番号1)の発現および/または機能を調節する。アンチセンス配列の例としては、配列番号2〜11が挙げられる。
【0079】
別の好適な実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドの1つ以上のセグメントと結合し、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)の発現および/または機能を調節する。セグメントは、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)センスまたはアンチセンスポリヌクレオチドの少なくとも5つの連続したヌクレオチドを含む。
【0080】
別の好適な実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)の天然アンチセンス配列に対して特異的であり、オリゴヌクレオチドとCHIPの天然アンチセンス配列との結合が、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)の発現および/または機能を調節する。
【0081】
別の好適な実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、例えばPCR、ハイブリダイゼーションなどを用いて同定および伸長されるアンチセンス配列である、配列番号4〜11として記載されている配列を含む。これらのオリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾ヌクレオチド、短いまたは長いフラグメント、修飾された結合などを含み得る。修飾された結合またはヌクレオチド間結合の例は、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアートなどを含む。別の好適な実施形態では、ヌクレオチドはリン含有誘導体を含む。本発明の修飾オリゴヌクレオチド中の糖または糖類似体と結合し得るリン含有誘導体(または修飾されたリン酸基)は、一リン酸、二リン酸、三リン酸、アルキルホスファート、アルカンホスファート、ホスホロチオアートなどであり得る。上記リン酸類似体の調製ならびにそれらのヌクレオチド、修飾ヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド内への組込みそれ自体も既知であり、本明細書に記載する必要はない。
【0082】
当該技術分野で公知のように、翻訳開始コドンは通常、5’−AUG(翻訳されたmRNA分子において;対応するDNA分子においては5’−ATG)であるため、翻訳開始コドンは「AUGコドン」、「開始コドン」または「AUG開始コドン」とも呼ばれる。少数の遺伝子は、5’−GUG、5’−UUGまたは5’−CUGのRNA配列を有する翻訳開始コドンを有し;5’−AUA、5’−ACGおよび5’−CUGはインビボで機能することが示されている。したがって、「翻訳開始コドン」および「開始コドン」は数多くのコドン配列を包含し得るが、各場合における開始アミノ酸は通常、メチオニン(真核生物において)またはホルミルメチオニン(原核生物において)である。真核および原核遺伝子は2つ以上の選択的な開始コドンを有する場合があり、特定の細胞型または組織において、または特定の条件設定の下では、そのいずれか1つが優先的に翻訳開始に利用され得る。本発明との関連では、「開始コドン」および「翻訳開始コドン」は、そのコドンの配列(1つまたは複数)に関係なく、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)をコードする遺伝子から転写されたmRNAの翻訳を開始するためにインビボで使用される、1つまたは複数のコドンを指す。遺伝子の翻訳終止コドン(または「停止コドン」)は、3つの配列、すなわち、5’−UAA、5’−UAGおよび5’−UGA(対応するDNA配列は、それぞれ5’−TAA、5’−TAGおよび5’−TGA)のうちの1つを有し得る。
【0083】
「開始コドン領域」および「翻訳開始コドン領域」という用語は、翻訳開始コドンからいずれかの方向(すなわち、5’または3’)に向かって約25〜約50個の連続するヌクレオチドを包含するmRNAまたは遺伝子の一部分を指す。同様に、「停止コドン領域」および「翻訳終止コドン領域」という用語は、翻訳終止コドンからいずれかの方向(すなわち、5’または3’)に向かって約25〜約50個の連続するヌクレオチドを包含するmRNAまたは遺伝子の一部分を指す。したがって、「開始コドン領域」(または「翻訳開始コドン領域」)および「停止コドン領域」(または「翻訳終止コドン領域)とは、本発明のアンチセンス化合物により効果的に標的化され得るすべての領域のことである。
【0084】
オープンリーディングフレーム(ORF)または「コード領域」は、翻訳開始コドンと翻訳終止コドンの間の領域を指すことが当該技術分野で公知であり、また効果的に標的化され得る領域でもある。本発明との関連においては、標的化領域とは、遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の翻訳開始または翻訳終止コドンを包含する遺伝子内領域のことである。
【0085】
別の標的領域としては、5’非翻訳領域(5’UTR)が挙げられ、これは翻訳開始コドンから5’方向にあるmRNAの部分を指すことが当該技術分野で公知であり、したがって、mRNAの5’キャップ部位と翻訳開始コドンの間のヌクレオチド(または遺伝子上の対応するヌクレオチド)を含む。さらに別の標的領域としては、3’非翻訳領域(3’UTR)が挙げられ、これは翻訳終止コドンから3’方向にあるmRNAの部分を指すことが当該技術分野で公知であり、したがって、mRNAの翻訳終止コドンと3’末端の間のヌクレオチド(または遺伝子上の対応するヌクレオチド)を含む。mRNAの5’キャップ部位は、5’−5’三リン酸結合を介してmRNAの5’−末端残基と連結したN7−メチル化グアノシン残基を含む。mRNAの5’キャップ領域は、5’キャップ構造自体のみならず、キャップ部位に隣接した最初の50ヌクレオチドも含むと考えられる。本発明の別の標的領域は5’キャップ領域である。
【0086】
一部の真核mRNA転写産物は直接転写されるが、多くのものは、翻訳される前に転写産物から除去される「イントロン」として知られる領域を1つ以上含んでいる。残りの(したがって、翻訳される)領域は「エクソン」として知られ、スプライスされて一緒になり、連続したmRNA配列を形成する。一実施形態では、スプライス部位、すなわち、イントロン−エクソン接合部またはエクソン−イントロン接合部を標的化することは、異常なスプライシングが疾患に関与する場合、または特定のスプライス産物の過剰生成が疾患に関与する場合において特に有用である。再配列または欠失による異常な融合接合部は、標的部位のもう一つの実施形態である。異なる遺伝子源から2つ(またはそれ以上)のmRNAをスプライスするプロセスを介して生成されたmRNA転写産物は、「融合転写産物」として知られる。イントロンは、例えば、DNAまたはプレmRNAに対して標的化したアンチセンス化合物を用いて効果的に標的化することができる。
【0087】
別の好適な実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドのコードおよび/または非コード領域と結合して、標的分子の発現および/または機能を調節する。
【0088】
別の好適な実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、天然のアンチセンスポリヌクレオチドと結合して、標的分子の発現および/または機能を調節する。
【0089】
別の好適な実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、センスポリヌクレオチドと結合して、標的分子の発現および/または機能を調節する。
【0090】
DNAの同じゲノム領域から別のRNA転写産物が生成され得る。こうした別の転写産物は一般に、「バリアント」して知られる。より具体的には、「プレmRNAバリアント」は、同じゲノムDNAから生成される他の転写産物とはその開始または停止位置のいずれかにおいて異なり、かつイントロンおよびエクソンの両方の配列を含む、同じゲノムDNAから生成される転写産物である。
【0091】
スプライシングにおける1つ以上のエクソンもしくはイントロン領域またはその一部分の除去の際に、プレmRNAバリアントは、より小型の「mRNAバリアント」を生成する。したがって、mRNAはプロセシングされたプレmRNAバリアントであり、各固有のプレmRNAは、スプライシングの結果として常に固有のmRNAバリアントを生成するはずである。このようなmRNAバリアントは「選択的スプライスバリアント」としても知られる。プレmRNAバリアントのスプライシングが全く生じなければ、プレmRNAバリアントはmRNAバリアントと同一である。
【0092】
バリアントは、転写を開始または停止させる選択的シグナルを用いることにより生成され得る。プレmRNAおよびmRNAは、2つ以上の開始コドンまたは停止コドンを有し得る。選択的開始コドンを用いるプレmRNAまたはmRNAに由来するバリアントは、そのプレmRNAまたはmRNAの「選択的開始バリアント」として知られる。選択的停止コドンを用いる転写産物は、そのプレmRNAまたはmRNAの「選択的停止バリアント」として知られる。選択的停止バリアントの具体的なタイプの1つが「ポリAバリアント」であり、ここでは生成される複数の転写産物は、「ポリA停止シグナル」の1つが転写機構により択一的に選択されて、固有のポリA部位で終止する転写産物が生成される結果生じる。本発明との関連においては、本明細書に記載のバリアントのタイプも標的核酸の実施形態である。
【0093】
アンチセンス化合物がハイブリダイズする標的核酸上の位置は、活性なアンチセンス化合物が標的化される標的部位の少なくとも5ヌクレオチド長の部分と定義される。
【0094】
特定の典型的な標的セグメントの具体的な配列が本明細書に記載されているが、これらは本発明の範囲内の特定の実施形態を説明および記載するために用いられることを、当業者は理解するであろう。さらなる標的セグメントは、本開示を考慮すれば当業者により容易に同定可能である。
【0095】
例示的な好ましい標的セグメントの中から選択される、少なくとも5個にわたる連続するヌクレオチドを含む5〜100ヌクレオチド長の標的セグメントも、標的化に適すると考えられる。
【0096】
標的セグメントは、例示的な好ましい標的セグメントの1つの5’末端から少なくとも5個の連続するヌクレオチド(残りのヌクレオチドは、標的セグメントの5’末端のすぐ上流から始まり、DNAまたはRNAが約5〜約100ヌクレオチドを含むまで続く、同じDNAまたはRNAの連続する部分である)を含むDNAまたはRNA配列を含み得る。同様に好ましい標的セグメントは、例示的な好ましい標的セグメントの1つの3’末端から少なくとも5個の連続するヌクレオチド(残りのヌクレオチドは、標的セグメントの3’末端のすぐ下流から始まり、DNAまたはRNAが約5〜約100ヌクレオチドを含むまで続く、同じDNAまたはRNAの連続する部分である)を含むDNAまたはRNA配列で表される。本明細書において説明される標的セグメント有する当業者は、必要以上の実験を行わずにさらなる好適な標的セグメントを同定することができるであろう。
【0097】
1つ以上の標的領域、標的セグメントまたは標的部位が同定されれば、所望の効果を得るために、標的に対して十分に相補的な、すなわち、十分良好にハイブリダイズし、かつ十分な特異性を有するアンチセンス化合物を選択する。
【0098】
本発明の実施形態では、オリゴヌクレオチドは特定の標的のアンチセンス鎖と結合する。オリゴヌクレオチドは少なくとも5ヌクレオチド長であり、オリゴヌクレオチドが標的ポリヌクレオチドの全長をカバーするよう合成されるように、各オリゴヌクレオチドが重複配列を標的とするように合成することができる。また標的は、コード領域のみならず非コード領域も含む。
【0099】
一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドにより特定の核酸を標的化することが好ましい。特定の核酸に対してアンチセンス化合物を標的化することは、多段階工程である。この工程は通常、その機能が調節されるべき核酸配列の同定から始まる。これは、例えば、その発現が特定の障害もしくは病的状態と関連する細胞内遺伝子(またはその遺伝子から転写されるmRNA)、または例えば非コードRNA(ncRNA)のような非コードポリヌクレオチドであり得る。
【0100】
RNAは、(1)タンパク質に翻訳されるメッセンジャーRNA(mRNA)と(2)タンパク質非コードRNA(ncRNA)に分類することができる。ncRNAは、マイクロRNA、アンチセンス転写産物、および高密度の停止コドンを含み、かつ長い「オープンリーディングフレーム」を一切欠くその他の転写単位(TU)を含む。多くのncRNAは、タンパク質コード遺伝子座の3’非翻訳領域(3’UTR)内の開始部位から始まると思われる。ncRNAは多くの場合、稀であり、FANTOMコンソーシアムにより配列決定されているncRNAの少なくとも半数がポリアデニル化されていないと思われる。研究者の多くは、明白な理由で、プロセシングされて細胞質へ搬出されるポリアデニル化mRNAに頂点を当ててきた。近年、非ポリアデニル化核RNAのセットが非常に大型であり得、多くのそのような転写産物がいわゆる遺伝子間領域から生じることが示された。ncRNAが遺伝子発現を制御し得る機構は、標的転写産物との塩基対形成によるものである。塩基対形成により機能するRNAは、(1)同じ遺伝子位置であるが、それが作用するRNAとは反対の鎖上でコードされているため、その標的に対して完全な相補性を示す、シスコードRNAと(2)それが作用するRNAから離れた染色体位置でコードされ、一般にその標的との完全な塩基対形成能を示さないトランスコードRNAに分類することができる。
【0101】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドによるアンチセンスポリヌクレオチドの攪乱は、対応するセンスメッセンジャーRNAの発現を変化させ得る。しかし、この調節は、不一致性(アンチセンスノックダウンによりメッセンジャーRNAの上昇が起こる)または一致性(アンチセンスノックダウンにより、同時にメッセンジャーRNAの低下が起こる)のいずれかであり得る。このような場合、アンチセンスオリゴヌクレオチドをアンチセンスの重複または非重複部分に対して標的化し、ノックダウンまたは隔離をもたらすことができる。コードアンチセンスのみならず、非コードアンチセンスも同じ方法で標的化することができ、いずれの種類も一致性または不一致性の方法のいずれかで、対応するセンス転写産物を制御することができる。標的に対して使用するための新規オリゴヌクレオチドの同定で使用されるストラテジーは、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは所望の標的を調節する他の任意の手段によるアンチセンスRNA転写産物のノックダウンに基づき得る。
【0102】
ストラテジー1:不一致性の調節の場合、アンチセンス転写産物のノックダウンは、従来の(センス)遺伝子の発現を上昇させる。後者の遺伝子が既知のまたは推定の薬物標的をコードするのであれば、おそらくそのアンチセンス対応物のノックダウンが、受容体アゴニストまたは酵素刺激物質の作用を模倣するであろう。
【0103】
ストラテジー2:一致性の調節の場合、アンチセンスおよびセンス転写産物の両方を同時にノックダウンすることにより、従来の(センス)遺伝子発現の相乗的減少を達成し得る。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてノックダウンを達成するのであれば、このストラテジーを用いて、センス転写産物に対して標的化した1つのアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび対応するアンチセンス転写産物に対して標的化したもう1つのアンチセンスオリゴヌクレオチド、または重複するセンスおよびアンチセンス転写産物を同時に標的とするエネルギー的に対称な単一のアンチセンスオリゴヌクレオチドを適用し得る。
【0104】
本発明によれば、アンチセンス化合物はアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、外部ガイド配列(EGS)オリゴヌクレオチド、siRNA化合物、siRNA化合物のような一本鎖または二本鎖RNA干渉(RNAi)化合物、および標的核酸の少なくとも一部分とハイブリダイズしてその機能を調節するその他のオリゴマー化合物を含む。したがって、これらはDNA、RNA、DNA型、RNA型もしくはそれらの混合物であり得るか、またはそれらの1つ以上の模倣物であり得る。上記化合物は一本鎖、二本鎖、環状またはヘアピンオリゴマー化合物であり得、かつ内部または末端のバルジ、ミスマッチまたはループのような構造的要素を含み得る。アンチセンス化合物は、通常は直線状に調製するが、連結するか、あるいは環状および/または分岐状に調製することができる。アンチセンス化合物は、例えば、ハイブリダイズして完全もしくは部分的二本鎖化合物を形成する2本の鎖、またはハイブリダイゼーションおよび完全もしくは部分的二本鎖化合物の形成が可能となる十分な自己相補性を有する単一鎖などの構築物を含み得る。2本の鎖は、遊離の3’および5’末端を残して内部で連結させ得るか、または連結させて連続的なヘアピン構造またはループを形成させ得る。ヘアピン構造は、5’または3’末端のいずれかにオーバーハングを含んで、一本鎖の性質の拡大をもたらし得る。二本鎖化合物は、末端にオーバーハングを任意に含み得る。さらなる修飾としては、一方の末端、選択されたヌクレオチド位置、糖位置またはヌクレオシド間結合の1つと結合するコンジュゲート基を挙げることができる。あるいは、2本の鎖を非核酸部分またはリンカー基を介して連結し得る。dsRNAは、1本の鎖のみから形成される場合、それ自体が折り返されて二重鎖を形成する、自己相補的なヘアピン型分子の形態をとり得る。したがって、dsRNAは完全または部分的二本鎖であり得る。トランスジェニック細胞系におけるdsRNAヘアピンの安定な発現により、遺伝子発現の特異的調節を達成することができるが、いくつかの実施形態では、遺伝子の発現または機能が上方制御される。2本の鎖またはそれ自体が折り返されて二重鎖を形成する自己相補的なヘアピン型分子の形態をとる単一鎖から形成される場合、2本の鎖(または単一鎖の二重鎖形成領域)は、Watson−Crick式に塩基対を形成する相補的RNA鎖である。
【0105】
本発明の化合物は、系に導入されると、1つ以上の酵素もしくは構造タンパク質が標的核酸の切断もしくはその他の修飾をもたらす作用を誘発し得るか、または占有に基づく機序を介して作用し得る。一般に、核酸(オリゴヌクレオチドを含む)は、「DNA型」(すなわち、一般に1つ以上の2’−デオキシ糖および一般にU塩基ではなくT塩基を有する)または「RNA型」(一般に1つ以上の2’−ヒドロキシルまたは2’−修飾糖および一般にT塩基ではなくU塩基を有する)として記載され得る。核酸らせんは、2つ以上のタイプの構造、最も一般的にはA型およびB型をとり得る。一般に、B型様構造を有するオリゴヌクレオチドは「DNA型」であり、A型様構造を有するオリゴヌクレオチドは「RNA型」であると考えられている。いくつかの(キメラの)実施形態では、アンチセンス化合物はA型およびB型の両方の領域を含み得る。
【0106】
別の好適な実施形態では、所望のオリゴヌクレオチドまたはアンチセンス化合物は:アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、キメラアンチセンスオリゴヌクレオチド、修飾された結合を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド、干渉RNA(RNAi)、短鎖干渉RNA(siRNA);微小な干渉RNA(miRNA);低分子の一時的なRNA(stRNA);もしくは短ヘアピンRNA(shRNA);低分子RNA誘導遺伝子活性化(RNAa);低分子活性化RNA(saRNA)またはそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む。
【0107】
またdsRNAは遺伝子発現も活性化することができ、これは「低分子RNA誘導遺伝子活性化」またはRNAaと呼ばれている機序である。遺伝子プロモーターを標的とするdsRNAは、関連する遺伝子の強力な転写活性化を誘導する。RNAaは、ヒト細胞で「低分子活性化RNA」(saRNA)と呼ばれる合成dsRNAを用いて示された。RNAaが他の生物で保存されているか否かは現在のところ不明である。
【0108】
低分子干渉RNA(siRNA)およびマイクロRNA(miRNA)のような低分子二本鎖RNA(dsRNA)は、RNA干渉(RNAi)として知られる進化的に保存された機序のトリガーであることが見出されている。RNAiは常に、クロマチンの再構築による転写の抑制、相補的mRNAの分解またはタンパク質翻訳のブロック介して、遺伝子サイレンシングを引き起こす。しかし、以下の実施例の節で詳細に記載されている例では、オリゴヌクレオチドは、CHIPポリヌクレオチドおよびそのコード産物の発現および/または機能を増加させることが示されている。またdsRNAは、低分子活性化RNA(saRNA)としても作用し得る。理論に拘束されることを望むものではないが、遺伝子プロモーター内の配列を標的化することにより、saRNAは、dsRNA誘導転写活性化(RNAa)と呼ばれる現象において標的遺伝子発現を誘導するのであろう。
【0109】
さらなる実施形態では、本明細書において同定される「好適な標的セグメント」は、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドの発現を調節するさらなる化合物のスクリーニングにおいて使用し得る。「モジュレーター」は、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)をコードする核酸分子の発現を減少または増加させ、かつ好適な標的セグメントに対して相補的な少なくとも5ヌクレオチド部分を含む化合物である。スクリーニング法は、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)のセンスまたは天然のアンチセンスポリヌクレオチドをコードする核酸分子の好適な標的セグメントを1つ以上の候補モジュレーターと接触させる段階と、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドをコードする核酸分子の発現を減少または増加させる1つ以上の候補モジュレーター、例えば、配列番号4〜11を選択する段階とを含む。1つまたは複数の候補モジュレーターが‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドをコードする核酸分子の発現を調節する(例えば、減少または増加させる)ことが可能であることが示されれば、次にモジュレーターを、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドの機能のさらなる調査研究に使用し得るか、または本発明に従って研究、診断または治療用の薬剤として使用し得る。
【0110】
天然アンチセンス配列の標的化は、好ましくは標的遺伝子の機能を調節する。例えば、CHIP遺伝子(例えば、アクセッション番号NM_005861)。好適な一実施形態では、標的はCHIP遺伝子のアンチセンスポリヌクレオチドである。好適な一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチド(例えば、アクセッション番号NM_005861)、バリアント、対立遺伝子、アイソフォーム、相同体、変異体、誘導体、フラグメントおよびそれらに対する相補的配列のセンスおよび/または天然アンチセンス配列を標的とする。好ましくは、オリゴヌクレオチドはアンチセンス分子であり、かつ標的はアンチセンスおよび/またはセンスCHIPポリヌクレオチドのコードおよび非コード領域を含む。
【0111】
また本発明の好適な標的セグメントは、本発明のそれぞれの相補的アンチセンス化合物と組み合わさって、安定な二本鎖(二重鎖)オリゴヌクレオチドも形成し得る。
【0112】
このような二本鎖オリゴヌクレオチド部分は、アンチセンス機序を介して、標的の発現を調節し、翻訳のみならずRNAプロセシングも制御することが当該技術分野において示されている。さらに、二本鎖部分に化学修飾を施し得る。例えば、このような二本鎖部分は、二重鎖のアンチセンス鎖と標的との古典的なハイブリダイゼーションにより標的を阻害して、標的の酵素的分解を誘発することが示されている。
【0113】
好適な一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチド(例えば、アクセッション番号NM_005861)、バリアント、対立遺伝子、アイソフォーム、相同体、変異体、誘導体、フラグメントおよびそれらに対する相補的配列を標的とする。好ましくは、オリゴヌクレオチドはアンチセンス分子である。
【0114】
本発明の実施形態に従えば、標的核酸分子は‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)のみに限定されず、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)分子の任意のアイソフォーム、受容体、相同体などにまで及ぶ。
【0115】
別の好適な実施形態では、オリゴヌクレオチドは、CHIPポリヌクレオチドの天然アンチセンス配列、例えば、配列番号2および3として記載されているポリヌクレオチド、ならびに任意のバリアント、対立遺伝子、相同体、変異体、誘導体、フラグメントおよびそれらに対する相補的配列を標的とする。アンチセンスオリゴヌクレオチドの例は、配列番号4〜11として記載されている。
【0116】
一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドに関連した非コードセンスおよび/またはアンチセンス配列を非限定的に含めた、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)アンチセンスの核酸配列に対して相補的であるか、またはこれらと結合し、かつ‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)分子の発現および/または機能を調節する。
【0117】
別の好適な実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列番号2および3として記載されている、CHIP天然アンチセンスの核酸配列に対して相補的であるか、またはこれらと結合し、かつ‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)分子の発現および/または機能を調節する。
【0118】
好適な一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列番号4〜11の少なくとも5個の連続するヌクレオチドを含み、かつ‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)分子の発現および/または機能を調節する。
【0119】
ポリヌクレオチド標的は、CHIPのファミリーメンバー含めたCHIP、CHIPのバリアント;SNPを含めたCHIPの変異体;CHIPの非コード配列;CHIPの対立遺伝子;種バリアント、フラグメントなどを含む。好ましくは、オリゴヌクレオチドはアンチセンス分子である。
【0120】
別の好適な実施形態では、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドを標的とするオリゴヌクレオチドは:アンチセンスRNA、干渉RNA(RNAi)、短鎖干渉RNA(siRNA);微小な干渉RNA(miRNA);低分子の一時的なRNA(stRNA);または短ヘアピンRNA(shRNA);低分子RNA誘導遺伝子活性化(RNAa);または低分子活性化RNA(saRNA)を含む。
【0121】
別の好適な実施形態では、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチド、例えば、配列番号2および3の標的化は、これら標的の発現および機能を調節する。一実施形態では、対照と比べて発現または機能が上方制御される。別の好適な実施形態では、対照と比べて発現または機能が下方制御される。
【0122】
別の好適な実施形態では、アンチセンス化合物は、配列番号4〜11として記載されている配列を含む。これらのオリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾ヌクレオチド、より短いまたは長いフラグメント、修飾された結合などを含み得る。
【0123】
別の好適な実施形態では、配列番号4〜11は1つ以上のLNAヌクレオチドを含む。
【0124】
所望の標的核酸の調節は、当該技術分野で公知のいくつかの方法で行い得る。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNAなど。酵素的核酸分子(例えば、リボザイム)は、ヌクレオチド塩基配列特異的な方法で、他の独立した核酸分子を繰り返し切断する能力を含めた、1つ以上の様々な反応を触媒することができる。このような酵素的核酸分子を用いて、例えば、実質的に任意のRNA転写産物を標的とし得る。
【0125】
トランス切断する酵素的核酸分子は、その配列特異性により、ヒト疾患に対する治療剤として有望である(UsmanおよびMcSwiggen,(1995)Ann.Rep.Med.Chem.30,285−294;ChristoffersenおよびMarr,(1995)J.Med.Chem.38,2023−2037)。酵素的核酸分子は、細胞内RNAのバックグラウンド内の特定のRNA標的を切断するように設計し得る。このような切断事象はmRNAを非機能的にして、そのRNAからのタンパク質発現を抑制する。このようにして、病的状態に関連したタンパク質の合成を選択的に阻害することができる。
【0126】
一般に、RNA切断活性を有する酵素的核酸は、最初に標的RNAと結合することにより作用する。このような結合は、標的RNAを切断するように作用する分子の酵素部分に非常に近接して保持されている、酵素的核酸の標的結合部分を介して生じる。したがって、酵素的核酸は塩基対形成により、最初に標的RNAを認識してからこれと結合し、的確な部分に結合すると、酵素的に作用して標的RNAを切断する。こうした標的RNAの戦略的切断は、コードされているタンパク質の合成を指令するその能力を破壊する。酵素的核酸が結合し、そのRNA標的を切断した後、酵素的核酸は別の標的を探すためにそのRNAから放出され、新たな標的と繰り返し結合および切断することができる。
【0127】
インビトロ選択(進化)ストラテジー(Orgel,(1979)Proc.R.Soc.London,B205,435)のようないくつかの方法が、ホスホジエステル結合およびアミド結合の切断および連結のような様々な反応を触媒することができる新規核酸触媒を進化させるために用いられてきた。
【0128】
触媒活性に最適なリボザイムの開発は、遺伝子発現調節を目的としてRNA切断リボザイムを使用する任意のストラテジーに大いに寄与するであろう。例えば、ハンマーヘッド型リボザイムは、飽和(10mM)濃度のMg2+補助因子の存在下で、約1/分の触媒速度(kcat)で機能する。人工「RNAリガーゼ」リボザイムは、対応する自己修正反応を約100/分の速度で触媒することが示されている。さらに、DNAでできた基質結合アームを有する特定の修飾ハンマーヘッド型リボザイムは、ほぼ10/分に等しい複数のターンオーバー速度でRNA切断を触媒する。最終的に、ハンマーヘッドの触媒コア内の特定の残基を特定のヌクレオチド類似体で置き換えることにより、10倍も向上した触媒速度を示す修飾リボザイムが得られる。これらの知見は、リボザイムが、大部分の天然の自己切断リボザイムによりインビトロで示される触媒速度よりも有意の高い触媒速度で化学変換を促進し得ることを示している。そして、特定の自己切断リボザイムの構造を最適化して、最大の触媒活性を得る、またはRNAホスホジエステル切断に関して有意に速い速度を示す全く新しいRNAモチーフを作製し得る可能性がある。
【0129】
「ハンマーヘッド」モデルに当てはまるRNA触媒によるRNA基質の分子間切断は、1987に最初に示された(Uhlenbeck,O.C.(1987)Nature,328:596−600)。RNA触媒が回復して複数のRNA分子と反応し、それが真に触媒的であることを示していた。
【0130】
「ハンマーヘッド」モチーフに基づいて設計された触媒RNAは、必要とされる標的配列との塩基形成を維持するために触媒RNA内の適当な塩基を変化させることにより、特定の標的配列を切断するために用いられてきた。これにより、特定の標的配列を切断するための触媒RNAの使用が可能となったが、このことは、「ハンマーヘッド」モデルに従って設計された触媒RNAが、おそらくインビボで特定の基質RNAを切断し得ることを示している。
【0131】
RNA干渉(RNAi)は、哺乳動物および哺乳動物細胞における遺伝子発現調節のための強力なツールとなっている。この方法は、発現プラスミドまたはウイルスを用いて、RNAそれ自体としてまたはDNAとして低分子干渉RNA(siRNA)を送達すること、およびプロセシングされてsiRNAになる低分子ヘアピンRNAに対するコード配列が必要である。このシステムにより、プレsiRNAが活性となる細胞質へのプレsiRNAの効果的な輸送が可能となり、また遺伝子発現のための制御された組織特異的プロモーターの使用が可能となる。
【0132】
好適な一実施形態では、オリゴヌクレオチドまたはアンチセンス化合物は、リボ核酸(RNA)および/またはデオキシリボ核酸(DNA)のオリゴマーまたはポリマー、あるいはその模倣物、キメラ、類似体または相同体を含む。この用語は、天然のヌクレオチド、糖およびヌクレオシド間(骨格)の共有結合からなるオリゴヌクレオチドのみならず、同様に機能する非天然部分を有するオリゴヌクレオチドも包含する。このような修飾または置換オリゴヌクレオチドは、望ましい特性、例えば増大した細胞内取り込み、標的核酸に対する増強された親和性およびヌクレアーゼ存在下での増加した安定性などにより、天然形態よりも望ましい場合が多い。
【0133】
本発明に従えば、オリゴヌクレオチドまたは「アンチセンス化合物」は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、RNA、DNA、それらの模倣物、類似体または相同体)、リボザイム、外部ガイド配列(EGS)オリゴヌクレオチド、siRNA化合物、siRNA化合物のような一本鎖または二本鎖RNA干渉(RNAi)化合物、saRNA、aRNA、および陽的核酸の少なくとも一部とハイブリダイズしてその機能を調節する他のオリゴマー化合物を包含する。したがって、これらはDNA、RNA、DNA型、RNA型またはそれらの混合物であるか、またはそれらの1つ以上の模倣物であり得る。上記化合物は、一本鎖、二本鎖、環状またはヘアピンオリゴマー化合物であり得、かつ内部または末端のバルジ、ミスマッチまたはループのような構造的要素を含み得る。アンチセンス化合物は、通常は直線状に調製するが、連結するか、あるいは環状および/または分岐状に調製することができる。アンチセンス化合物は、例えば、ハイブリダイズして完全もしくは部分的二本鎖化合物を形成する2本の鎖、またはハイブリダイゼーションおよび完全もしくは部分的二本鎖化合物の形成が可能となる十分な自己相補性を有する単一鎖などの構築物を含み得る。2本の鎖は、遊離の3’および5’末端を残して内部で連結させ得るか、または連結させて連続的なヘアピン構造またはループを形成させ得る。ヘアピン構造は、5’または3’末端のいずれかにオーバーハングを含んで、一本鎖の性質の拡大をもたらし得る。二本鎖化合物は、末端にオーバーハングを任意に含み得る。さらなる修飾としては、一方の末端、選択されたヌクレオチド位置、糖位置またはヌクレオシド間結合の1つと結合するコンジュゲート基を挙げることができる。あるいは、2本の鎖を非核酸部分またはリンカー基を介して連結し得る。dsRNAは、1本の鎖のみから形成される場合、それ自体が折り返されて二重鎖を形成する、自己相補的なヘアピン型分子の形態をとり得る。したがって、dsRNAは完全または部分的二本鎖であり得る。トランスジェニック細胞系におけるdsRNAヘアピンの安定な発現により、遺伝子発現の特異的調節を達成することができる。2本の鎖またはそれ自体が折り返されて二重鎖を形成する自己相補的なヘアピン型分子の形態をとる単一鎖から形成される場合、2本の鎖(または単一鎖の二重鎖形成領域)は、Watson−Crick式に塩基対を形成する相補的RNA鎖である。
【0134】
本発明の化合物は、系に導入されると、1つ以上の酵素もしくは構造タンパク質が標的核酸の切断もしくはその他の修飾をもたらす作用を誘発し得るか、または占有に基づく機序を介して作用し得る。一般に、核酸(オリゴヌクレオチドを含む)は、「DNA型」(すなわち、一般に1つ以上の2’−デオキシ糖および一般にU塩基ではなくT塩基を有する)または「RNA型」(一般に1つ以上の2’−ヒドロキシルまたは2’−修飾糖および一般にT塩基ではなくU塩基を有する)として記述され得る。核酸らせんは、2つ以上のタイプの構造、最も一般的にはA型およびB型をとり得る。一般に、B型様構造を有するオリゴヌクレオチドは「DNA型」であり、A型様構造を有するオリゴヌクレオチドは「RNA型」であると考えられている。いくつかの(キメラの)実施形態では、アンチセンス化合物はA型およびB型の両方の領域を含み得る。
【0135】
本発明によるアンチセンス化合物は、約5〜約80ヌクレオチド(すなわち、約5〜約80の連結されたヌクレオシド)長のアンチセンス部分を含み得る。これは、アンチセンス鎖またはアンチセンス化合物の部分の長さを指す。換言すれば、本発明の一本鎖アンチセンス化合物は、5〜約80ヌクレオチドを含み、本発明の二本鎖アンチセンス化合物(例えば、dsRNAなど)は、5〜約80ヌクレオチド長のセンスおよびアンチセンスの鎖または部分を含む。これは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79もしくは80ヌクレオチド長またはその中の任意の範囲のアンチセンス部分を含むということを、当業者は理解するであろう。
【0136】
一実施形態では、本発明のアンチセンス化合物は、10〜50ヌクレオチド長のアンチセンス部分を有する。これは10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49もしくは50ヌクレオチド長またはその中の任意の範囲のアンチセンス部分を有するオリゴヌクレオチドを具体的に表すということを、当業者は理解するであろう。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは15ヌクレオチド長である。
【0137】
一実施形態では、本発明のアンチセンスまたはオリゴヌクレオチド化合物は、12または13〜30ヌクレオチド長のアンチセンス部分を有するアンチセンス部分を有する。これは12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29もしくは30ヌクレオチド長またはその中の任意の範囲のアンチセンス部分を有するアンチセンス化合物を具体的に表すということを、当業者は理解するであろう。
【0138】
別の好適な実施形態では、本発明のオリゴマー化合物は、化合物中の1つ以上のヌクレオチド位置に異なる塩基が存在するバリアントも含む。例えば、最初のヌクレオチドがアデノシンである場合、この位置にチミジン、グアノシン、シチジンを含むバリアントが生成され得る。このことは、アンチセンスまたはdsRNA化合物の任意の位置で行われ得る。次いで、上記化合物を本明細書に記載の方法を用いて試験し、その標的核酸の発現を阻害する能力を判定する。
【0139】
いくつかの実施形態では、アンチセンス化合物と標的の間の相同性、配列同一性または相補性は約40%〜約60%である。いくつかの実施形態では、相同性、配列同一性または相補性は約60%〜約70%である。いくつかの実施形態では、相同性、配列同一性または相補性は約70%〜約80%である。いくつかの実施形態では、相同性、配列同一性または相補性は約80%〜約90%である。いくつかの実施形態では、相同性、配列同一性または相補性は約90%、約92%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%である。
【0140】
別の好適な実施形態では、例えば配列番号2〜11で記載されている核酸分子のようなアンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上の置換または修飾を含む。一実施形態では、ヌクレオチドはロックト核酸(LNA)で置換されている。
【0141】
別の好適な実施形態では、オリゴヌクレオチドは、CHIPに関連したコードおよび/または非コード配列のセンスおよび/またはアンチセンスである核酸分子の1つ以上の領域、ならびに配列番号1〜3として記載されている配列を標的とする。またオリゴヌクレオチドは、配列番号1〜3の重複領域に対しても標的化される。
【0142】
本発明の特定の好適なオリゴヌクレオチドはキメラオリゴヌクレオチドである。本発明との関連における「キメラオリゴヌクレオチド」または「キメラ」は、それぞれが少なくとも1つのヌクレオチドからなる、2つ以上の化学的に異なる領域を含むオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは通常、1つ以上の有用な特性(例えば、増加したヌクレアーゼ耐性、増加した細胞内への取り込み、標的に対する増加した結合親和性)を付与する少なくとも1つの修飾ヌクレオチド領域、およびRNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断することができる酵素のための基質である領域を含む。例として、RNアーゼHは、RNA:DNA二重鎖のRNA鎖を切断する細胞内エンドヌクレアーゼである。したがって、RNアーゼHの活性化によりRNA標的の切断が生じて、遺伝子発現のアンチセンス調節の効率が大幅に増大する。その結果、キメラオリゴヌクレオチドを用いた場合、同じ標的領域とハイブリダイズするホスホロチオアートデオキシオリゴヌクレオチドと比べて、より短いオリゴヌクレオチドでそれに匹敵する結果を得ることができる場合が多い。RNA標的の切断は、ゲル電気泳動および必要に応じて、当該技術分野で公知の関連する核酸ハイブリダイゼーション技術により日常的に検出し得る。好適な一実施形態では、キメラオリゴヌクレオチドは、標的結合親和性が増加するように修飾された少なくとも1つの領域、および通常は、RNアーゼHに対する基質として働く領域を含む。オリゴヌクレオチドのその標的(この場合、rasをコードする核酸)に対する親和性は、オリゴヌクレオチドと標的が解離する温度であるオリゴヌクレオチド/標的対のTmを測定することにより日常的に決定され;解離は分光測光により検出される。Tmが高いほど、標的に対するオリゴヌクレオチドの親和性が高い。
【0143】
本発明のキメラアンチセンス化合物は、2つ以上の上記オリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシドおよび/またはオリゴヌクレオチド模倣物の複合構造として形成され得る。このような化合物は、当該技術分野においてはハイブリッドまたはギャップマーとも呼ばれている。このようなハイブリッド構造の調製を教示する代表的な米国特許には、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,013,830号;同第5,149,797号;同第5,220,007号;同第5,256,775号;同第5,366,878号;同第5,403,711号;同第5,491,133号;同第5,565,350号;同第5,623,065号;同第5,652,355号;同第5,652,356号;および同第5,700,922号が含まれるが、これらに限定されない。
【0144】
別の好適な実施形態では、修飾されたオリゴヌクレオチドの領域は、糖の2’位で修飾されたヌクレオチド、最も好ましくは2’−O−アルキル、2’−O−アルキル−O−アルキルまたは2’−フルオロ−修飾ヌクレオチドを少なくとも1つ含む。他の好適な実施形態では、RNA修飾は、RNAの3’末端におけるピリミジン、脱塩基残基または逆位塩基のリボース上での2’−フルオロ、2’−アミノおよび2’O−メチル修飾を含む。このような修飾は日常的にオリゴヌクレオチド内に挿入され、こうしたオリゴヌクレオチドは所与の標的に対して2’−デオキシオリゴヌクレオチドよりも高いTm(すなわち、高い標的結合親和性)を有することが示されている。このような親和性増加の効果は、遺伝子発現のRNAiオリゴヌクレオチド阻害を大幅に増強することである。RNアーゼHは、RNA:DNA二重鎖のRNA鎖を切断する細胞内エンドヌクレアーゼであり、したがって、この酵素の活性化はRNA標的の切断を生じるため、RNAi阻害の効率を大幅に増大させ得る。RNA標的の切断は、ゲル電気泳動により日常的に示され得る。別の好適な実施形態では、キメラオリゴヌクレオチドを修飾して、ヌクレアーゼ耐性も増強する。細胞は、核酸を分解することができる様々なエクソヌクレアーゼおよびエンドヌクレアーゼを含有する。数多くのヌクレオチドおよびヌクレオシド修飾が、それが組み込まれるオリゴヌクレオチドを、ヌクレアーゼ消化に対して天然のオリゴデオキシヌクレオチドよりも耐性にすることが示されている。ヌクレアーゼ耐性は、オリゴヌクレオチドを細胞抽出物または単離ヌクレアーゼ溶液と共にインキュベートし、通常はゲル電気泳動により、残っているインタクトのオリゴヌクレオチドの程度を経時的に測定することにより、日常的に測定される。ヌクレアーゼ耐性を増強するように修飾されたオリゴヌクレオチドは、未修飾オリゴヌクレオチドよりも長時間インタクトであり続ける。様々なオリゴヌクレオチド修飾がヌクレアーゼ耐性を増強または付与することが示されている。ホスホロチオアート修飾を少なくとも1つ含むオリゴヌクレオチドが、現在のところより好ましい。いくつかの場合には、標的結合親和性を増大させるオリゴヌクレオチド修飾も、独立してヌクレアーゼ耐性を増強することができる。
【0145】
本発明で想定されるいくつかの好適なオリゴヌクレオチドの特定の例としては、修飾骨格、例えば、ホスホロチオアート、ホスホトリエステル、ホスホン酸メチル、短鎖アルキルもしくはシクロアルキル糖間結合または短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式糖間結合を含むものが挙げられる。最も好ましいのは、ホスホロチオアート骨格を有するオリゴヌクレオチドならびにヘテロ原子骨格、特に、天然のホスホジエステル骨格をO−−P−−O−−CHと表した場合、CH2−−NH−−O−−CH2、CH−−N(CH3)−−O−−CH2[メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として知られる]、CH2−−O−−N(CH3)−−CH2、CH2−−N(CH3)−−N(CH3)−−CH2およびO−−N(CH3)−−CH2−−CH2骨格を有する骨格である。De Mesmaekerら(1995)Acc.Chem.Res.28:366−374により開示されているアミド骨格も好ましい。モルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドも好ましい(SummertonおよびWeller,米国特許第5,034,506号)。ペプチド核酸(PNA)骨格のような他の好適な実施形態では、オリゴヌクレオチドのホスホジエステル骨格がポリアミド骨格で置き換えられ、ヌクレオチドがポリアミド骨格のアザ窒素原子と直接的または間接的に結合している。またオリゴヌクレオチドは、1つ以上の置換された糖部分も含み得る。好適なオリゴヌクレオチドは2’位に以下のうちの1つを含む:OH、SH、SCH3、F、OCN、OCH3 OCH3、OCH3 O(CH2)n CH3、O(CH2)n NH2またはO(CH2)n CH3(式中、nは1〜約10);C1〜C10低級アルキル、アルコキシアルコキシ、置換低級アルキル、アルカリールもしくはアラルキル;Cl;Br;CN;CF3;OCF3;O−−、S−−もしくはN−アルキル;O−−、S−−もしくはN−アルケニル;SOCH3;SO2 CH3;ONO2;NO2;N3;NH2;ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリル;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換シリル;RNA切断基;レポーター基;インターカレーター;オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を向上させるための基;またはオリゴヌクレオチドの薬力学特性を向上させるための基および同様の特性を有する他の置換基。好適な修飾としては、2’−メトキシエトキシ[2’−O−CH2 CH2 OCH3、2’−O−(2−メトキシエチル)としても知られる]が挙げられる。その他の好適な修飾としては、2’−メトキシ(2’−O−−CH3)、2’−プロポキシ(2’−OCH2 CH2CH3)および2’−フルオロ(2’−F)が挙げられる。オリゴヌクレオチド上の他の位置、特に3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位および5’末端ヌクレオチドの5’位に同様の修飾を行ってもよい。またオリゴヌクレオチドは、ペントフラノシル基の代わりにシクロブチルのような糖模倣物を有していてもよい。
【0146】
またオリゴヌクレオチドは、加えてまたは代わりに、核酸塩基(当該技術分野においては単に「塩基」と呼ばれる場合が多い)修飾または置換も含み得る。本明細書で使用される「未修飾」または「天然」ヌクレオチドは、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を包含する。修飾ヌクレオチドとしては、天然核酸においては稀にまたは一時的にしか見られないヌクレオチド、例えば、ヒポキサンチン、6−メチルアデニン、5−Meピリミジン、具体的には、5−メチルシトシン(5−メチル−2’デオキシシトシンとも呼ばれ、当該技術分野においては5−Me−Cと呼ばれることが多い)、5−ヒドロキシメチルシトシン(HMC)、グリコシルHMCおよびゲントビオシルHMC、ならびに合成ヌクレオチド、例えば、2−アミノアデニン、2−(メチルアミノ)アデニン、2−(イミダゾリルアルキル)アデニン、2−(アミノアルキルアミノ)アデニンまたはその他のヘテロ置換アルキルアデニン、2−チオウラシル、2−チオチミン、5−ブロモウラシル、5−ヒドロキシメチルウラシル、8−アザグアニン、7−デアザグアニン、N6(6−アミノヘキシル)アデニンおよび2,6−ジアミノプリンが挙げられる。当該技術分野で公知の「ユニバーサル」塩基、例えばイノシンも挙げ得る。5−Me−C置換は、核酸二重鎖の安定性を0.6〜1.2℃だけ増加させることが示されており、現在のところ好適な塩基置換である。
【0147】
本発明のオリゴヌクレオチドの別の修飾は、オリゴヌクレオチドの活性または細胞内取り込みを増大させる1つ以上の部分またはコンジュゲートをオリゴヌクレオチドと化学的に結合させることを含む。このような部分としては、脂質部分、例えばコレステロール部分、コレステリル部分、脂肪族鎖(例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖またはアダマンタン酢酸などが上げられるが、これらに限定されない。親油性部分を含むオリゴヌクレオチドおよびそのようなオリゴヌクレオチドの調製法は、当該技術分野、例えば、米国特許第5,138,045号、同第5,218,105号および同第5,459,255号において公知である。
【0148】
所与のオリゴヌクレオチド内のすべての位置が一様に修飾されている必要はなく、実際、2つ以上の上記修飾を単一のオリゴヌクレオチド内、またはオリゴヌクレオチド内の単一のヌクレオシド内にさえ組み込み得る。また本発明は、上で定義されたようなキメラオリゴヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドも含む。
【0149】
別の実施形態では、本発明の核酸分子を、脱塩基ヌクレオチド、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物、脂質またはポリ炭水化物化合物を含むがこれらに限定されない別の部分とコンジュゲートする。これらの分子は糖、塩基またはリン酸基上のいくつかの位置に核酸分子を含む1つ以上の任意のヌクレオチドと結合し得るということを、当業者は理解するであろう。
【0150】
本発明に従って使用するオリゴヌクレオチドは、公知の技術である固相合成により好都合かつ日常的に作製し得る。このような合成のための装置は、Applied Biosystemsを含めたいくつかの販売業者により販売されている。このような合成のための他の任意の手段を用いてもよく、オリゴヌクレオチドの実際の合成は、十分に当業者の能力の範囲内にある。同様の技術を用いて、ホスホロチオアートおよびアルキル化誘導体のような他のオリゴヌクレオチドを調製することも公知である。また同様の技術ならびに市販の修飾アミダイトおよび制御細孔ガラス(CPG)製品、例えばビオチン、フルオレセイン、アクリジンもしくはソラレン修飾したアミダイトおよび/またはCPG(Glen Research、Sterling VAから入手可能)などを用いて、蛍光標識された、ビオチン化されたまたはその他の修飾されたオリゴヌクレオチド、例えばコレステロール−修飾オリゴヌクレオチドなどを合成することも公知である。
【0151】
本発明に従えば、修飾の使用、例えば、効力、特異性および作用持続時間を増大させ、オリゴヌクレオチドの投与法を拡大するためのMOE、ANA、FANA、PSなどのような既存の化学からなるLNAモノマーの使用。これは、既存のオリゴヌクレオチド中のいくつかのモノマーをLNAモノマーで置換することにより達成し得る。LNA修飾オリゴヌクレオチドは、親化合物と同様のサイズを有するか、またはそれより大きい、もしくは、好ましくはそれより小さいものであり得る。このようなLNA修飾オリゴヌクレオチドは、約70%未満、より好ましくは約60%未満、最も好ましくは約50%未満のLNAモノマーを含み、そのサイズは約5〜25ヌクレオチドの間、より好ましくは約12〜20ヌクレオチドの間である。
【0152】
好適な修飾オリゴヌクレオチド骨格は、ホスホロチオアート、キラルホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチル、ならびに3’アルキレンホスホン酸およびキラルホスホン酸を含むその他のアルキルホスホン酸、ホスフィナート、3’−アミノホスホルアミダートおよびアミノアルキルホスホルアミダートを含むホスホルアミダート、チオノホスホルアミダート、チオノアルキルホスホナート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびに通常の3’−5’結合を有するボラノホスファート、これらの2’−5’結合類似体、ならびに隣接するヌクレオシド単位の対が3’−5’と5’−3’または2’−5’と5’−2’で結合している逆の極性を有するものを含むが、これらに限定されない。様々な塩、混合塩および遊離酸形態も含まれる。
【0153】
上記リン含有結合の調製を教示する代表的な米国特許には、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第3,687,808号;同第4,469,863号;同第4,476,301号;同第5,023,243号;同第5,177,196号;同第5,188,897号;同第5,264,423号;同第5,276,019号;同第5,278,302号;同第5,286,717号;同第5,321,131号;同第5,399,676号;同第5,405,939号;同第5,453,496号;同第5,455,233号;同第5,466,677号;同第5,476,925号;同第5,519,126号;同第5,536,821号;同第5,541,306号;同第5,550,111号;同第5,563,253号;同第5,571,799号;同第5,587,361号;および同第5,625,050号が含まれるが、これらに限定されない。
【0154】
中にリン原子を含まない好適な修飾オリゴヌクレオチド骨格は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、または1つ以上の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式ヌクレオシド間結合により形成される骨格を有する。これらには、モルホリノ結合(ヌクレオシドの糖部分から部分的に形成される)を有する骨格;シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファミン酸骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホナートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびに混合したN、O、SおよびCH2構成要素部分を有する他の骨格が含まれる。
【0155】
上記オリゴヌクレオチドの調製を教示する代表的な米国特許には、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,034,506号;同第5,166,315号;同第5,185,444号;同第5,214,134号;同第5,216,141号;同第5,235,033号;同第5,264,562号;同第5,264,564号;同第5,405,938号;同第5,434,257号;同第5,466,677号;同第5,470,967号;同第5,489,677号;同第5,541,307号;同第5,561,225号;同第5,596,086号;同第5,602,240号;同第5,610,289号;同第5,602,240号;同第5,608,046号;同第5,610,289号;同第5,618,704号;同第5,623,070号;同第5,663,312号;同第5,633,360号;同第5,677,437号;および同第5,677,439号が含まれるが、これらに限定されない。
【0156】
他の好適なオリゴヌクレオチド模倣物では、ヌクレオチド単位の糖およびヌクレオシド間結合の両方、すなわち骨格が新たな基で置き換えられている。塩基単位は、適当な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持されている。このようなオリゴマー化合物の1つである、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているオリゴヌクレオチド模倣物は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖骨格がアミド含有骨格、具体的にはアミノエチルグリシン骨格で置き換わっている。核酸塩基は保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子と直接的または間接的に結合している。PNA化合物の調製を教示する代表的な米国特許には、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,539,082号;同第5,714,331号;および同第5,719,262号が含まれるが、これらに限定されない。PNA化合物のさらなる教示は、Nielsenら(1991)Science 254,1497−1500において見られる。
【0157】
本発明の別の好適な実施形態では、ホスホロチオアート骨格を有するオリゴヌクレオチド、ならびにヘテロ原子骨格および特に、天然のホスホジエステル骨格を−O−P−O−CH2−で表すと、上で引用した米国特許第5,489,677号の−CH2−NH−O−CH2−、メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として知られる−CH2−N(CH3)−O−CH2−、−CH2−O−N(CH3)−CH2−、−CH2N(CH3)−N(CH3)CH2−および−O−N(CH3)−CH2−CH2−、および上で引用した米国特許第5,602,240号のアミド骨格。上で引用した米国特許第5,034,506号のモルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドも好ましい。
【0158】
修飾オリゴヌクレオチドは、1つ以上の置換糖部分も含み得る。好適なオリゴヌクレオチドは、2’位に以下のうちの1つ:OH;F;O−、S−もしくはN−アルキル;O−、S−もしくはN−アルケニル;O−、S−もしくはN−アルキニル;またはO−アルキル−O−アルキルを含み、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは置換または非置換のC〜COアルキルまたはC2〜COアルケニルおよびアルキニルであり得る。特に好ましいのは、O(CH2)n OmCH3、O(CH2)n、OCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2およびO(CH2nON(CH2)nCH3)2であり、式中、nおよびmは1〜約10であり得る。その他の好適なオリゴヌクレオチドは、2’位に以下のうちの1つを含む:C〜CO(低級アルキル)、置換低級アルキル、アルカリール、アラルキル、O−アルカリールもしくはO−アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を向上させる基またはオリゴヌクレオチドの薬力学特性を向上させる基、および同様の特性を有する他の置換基。好適な修飾は、2’−メトキシエトキシ(2’−O−CH2CH2OCH3、2’−O−(2−メトキシエチル)または2’MOEとしても知られる)、すなわちアルコキシアルコキシ基を含む。さらなる好適な修飾は、2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、本明細書の以下の実施例に記載されている、2’−DMAOEとしても知られるO(CH2)2ON(CH3)2基、および2’−O−ジメチルアミノエトキシエトキシ(当該技術分野において、2’−O−ジメチルアミノエトキシエチルまたは2’−DMAEOEとしても知られる)、すなわち、2’−O−CH2−O−CH2−N(CH2)2を含む。
【0159】
他の好適な修飾は、2’−メトキシ(2’−OCH3)、2’−アミノプロポキシ(2’−OCH2CH2CH2NH2)および2’−フルオロ(2’−F)を含む。オリゴヌクレオチドの他の位置、特に3’末端ヌクレオチド上または2’−5’結合オリゴヌクレオチド中の糖の3’位および5’末端ヌクレオチドの5’位に同様の修飾を行ってもよい。またオリゴヌクレオチドは、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分のような糖模倣物を有していてもよい。このような修飾糖構造の調製を教示する代表的な米国特許には、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,981,957号号;同第5,118,800号;同第5,319,080号;同第5,359,044号;同第5,393,878号;同第5,446,137号;同第5,466,786号;同第5,514,785号;同第5,519,134号;同第5,567,811号;同第5,576,427号;同第5,591,722号;同第5,597,909号;同第5,610,300号;同第5,627,053号;同第5,639,873号;同第5,646,265号;同第5,658,873号;同第5,670,633号;および同第5,700,920号が含まれるが、これらに限定されない。
【0160】
またオリゴヌクレオチドは、核酸塩基(当該技術分野においては単に「塩基」と呼ばれる場合が多い)修飾または置換も含み得る。本明細書で使用される「未修飾」または「天然」ヌクレオチドは、プリン塩基のアデニン(A)とグアニン(G)、およびピリミジン塩基のチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を包含する。修飾ヌクレオチドは、他の合成および天然ヌクレオチド、例えば5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよびその他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよびその他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよびシトシン、5−プロピニルウラシルおよびシトシン、6−アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5−ウラシル(シュード−ウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよびその他の8置換アデニンおよびグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよびその他の5置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニン、および3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンなどを含む。
【0161】
さらに、ヌクレオチドは、米国特許第3,687,808号に開示されているもの、’The Concise Encyclopedia of Polymer Science And Engineering’,p.858−859,Kroschwitz,J.I.編,John Wiley & Sons,1990に開示されているもの、Englischら,’Angewandle Chemie,International Edition’,1991,30,p.613により開示されているもの、ならびにSanghvi,Y.S.,Chapter 15,’Antisense Research and Applications’,p.289−302,Crooke,S.T.およびLebleu,B.編,CRC Press,1993により開示されているものを含む。これらのうちの特定のヌクレオチドは、本発明のオリゴマー化合物の結合親和性の増加に特に有用である。これらは、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンを含めた5−置換ピリミジン、6−アザピリミジンならびにN−2、N−6および0−6置換プリンを含む。5−メチルシトシン置換は、核酸二重鎖の安定性を0.6〜1.2℃だけ増加させることが示されており(Sanghvi,Y.S.,Crooke,S.T.およびLebleu,B.編,’Antisense Research and Applications’,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276−278)、より具体的には2’−Oメトキシエチル糖修飾と組み合わせた場合に、現在のところ好適な塩基置換である。
【0162】
上記修飾ヌクレオチドおよびその他の修飾ヌクレオチドの調製を教示する代表的な米国特許には、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第3,687,808号のみならず、同第4,845,205号;同第5,130,302号;同第5,134,066号;同第5,175,273号;同第5,367,066号;同第5,432,272号;同第5,457,187号;同第5,459,255号;同第5,484,908号;同第5,502,177号;同第5,525,711号;同第5,552,540号;同第5,587,469号;同第5,596,091号;同第5,614,617号;同第5,750,692号および同第5,681,941号が含まれるが、これらに限定されない。
【0163】
本発明のオリゴヌクレオチドの別の修飾は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞内分布または細胞内取り込みを増大させる1つ以上の部分またはコンジュゲートをオリゴヌクレオチドと化学的に結合させることを含む。
【0164】
このような部分は、脂質部分、例えばコレステロール部分、コール酸、チオエーテル(例えば、ヘキシル−S−トリチルチオール)、チオコレステロール、脂肪族鎖(例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基)、リン脂質(例えば、ジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールまたは1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホン酸トリエチルアンモニウム)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖、またはアダマンタン酢酸、パルミチル部分、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ−カルボニル−tオキシコレステロール部分を含むが、これらに限定されない。
【0165】
このようなオリゴヌクレオチドコンジュゲートの調製を教示する代表的な米国特許には、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,828,979号;同第4,948,882号;同第5,218,105号;同第5,525,465号;同第5,541,313号;同第5,545,730号;同第5,552,538号;同第5,578,717号;同第5,580,731号;同第5,580,731号;同第5,591,584号;同第5,109,124号;同第5,118,802号;同第5,138,045号;同第5,414,077号;同第5,486,603号;同第5,512,439号;同第5,578,718号;同第5,608,046号;同第4,587,044号;同第4,605,735号;同第4,667,025号;同第4,762,779号;同第4,789,737号;同第4,824,941号;同第4,835,263号;同第4,876,335号;同第4,904,582号;同第4,958,013号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,245,022号;同第5,254,469号;同第5,258,506号;同第5,262,536号;同第5,272,250号;同第5,292,873号;同第5,317,098号;同第5,371,241号;同第5,391,723号;同第5,416,203号;同第5,451,463号;同第5,510,475号;同第5,512,667号;同第5,514,785号;同第5,565,552号;同第5,567,810号;同第5,574,142号;同第5,585,481号;同第5,587,371号;同第5,595,726号;同第5,597,696号;同第5,599,923号;同第5,599,928号および同第5,688,941号が含まれるが、これらに限定されない。
【0166】
創薬:本発明の化合物は、創薬および標的検証の分野にも応用し得る。本発明は、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドと病的状態、表現型または状態との間に存在する関係を明らかにするための創薬努力において、本明細書で同定された化合物および好適な標的セグメントを使用することを含む。これらの方法は、試料、組織、細胞もしくは生物体を本発明の化合物と接触させること、処置後のある時点における‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドの核酸もしくはタンパク質レベルおよび/または関連する表現型もしくは化学的エンドポイントを測定すること、ならびに任意に、測定値を無処置試料または本発明のさらなる化合物で処置した試料と比較することを含む、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドの検出または調節を含む。またこれらの方法は、標的検証過程のため未知遺伝子の機能を決定するための、または特定の疾患、状態もしくは表現型の治療もしくは予防のための標的としての特定遺伝子産物の妥当性を判定するための他の実験と並行してまたは組み合わせて行ってもよい。
【0167】
遺伝子発現の上方調節または阻害の評価:
外来核酸の宿主細胞または生物体内への移入は、細胞または生物体中の核酸の存在を直接検出することにより評価し得る。このような検出は、当該技術分野で公知のいくつかの方法により達成し得る。例えば、外来核酸の存在を、サザンブロット法により、またはその核酸に関連するヌクレオチド配列を特異的に増幅するプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術により検出し得る。外来核酸の発現も、遺伝子発現解析を含めた従来の方法を用いて測定し得る。例えば、外来核酸から生成されたmRNAを、ノーザンブロット法および逆転写PCR(RT−PCR)を用いて検出および定量化し得る。
【0168】
また外来核酸からのRNAの発現は、酵素活性またはレポータータンパク質活性を測定することによっても検出し得る。例えば、外来核酸がエフェクターRNAを生成していることの指標としての標的核酸発現の減少または増加として間接的に測定し得る。配列保存に基づき、プライマーを設計して、標的遺伝子のコード領域を増幅するために使用し得る。最初に、各遺伝子から最も高度に発現されるコード領域を用いてモデル対照遺伝子を作製し得るが、任意のコードまたは非コード領域を使用し得る。各対照遺伝子は、レポーターコード領域とそのポリ(A)シグナルの間に各コード領域を挿入することにより組み立てる。これらのプラスミドは、遺伝子の上流部分にレポーター遺伝子を、また3’非コード領域に潜在的なRNAi標的を有するmRNAを生成することになる。個々のアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効性は、レポーター遺伝子の調節によりアッセイする。本発明の方法において有用なレポーター遺伝子としては、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)、アルカリホスファターゼ(AP)、ベータガラクトシダーゼ(LacZ)、ベータグルクロニダーゼ(GUS)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、ルシフェラーゼ(Luc)、ノパリンシンターゼ(NOS)、オクトピンシンターゼ(OCS)およびそれらの誘導体が挙げられる。アンピシリン、ブレオマイシン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、ヒグロマイシン、カナマイシン、リンコマイシン、メトトレキサート、ホスフィノスリシン、ピューロマイシンおよびテトラサイクリンに対する耐性を付与する複数の選択マーカーを利用することができる。レポーター遺伝子の調節を判定する方法は当該技術分野で公知であり、蛍光定量的方法(例えば、蛍光分光法、蛍光励起細胞分取(FACS)、蛍光顕微鏡)、抗生物質耐性判定が挙げられるが、これらに限定されない。
【0169】
CHIPタンパク質およびmRNAの発現は、当業者に公知のおよび本明細書の他の箇所に記載されている方法を用いてアッセイし得る。例えば、ELISAのようなイムノアッセイを用いてタンパク質レベルを測定し得る。CHIP ELISAアッセイキットは、例えばR&D Systems(Minneapolis、MN)から購入することができる。
【0170】
実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて処置した試料(例えば、インビボまたはインビトロの細胞または組織)中のCHIP発現(例えば、mRNAまたはタンパク質)を、対照試料中のCHIP発現と比較することにより評価する。例えば、当業者に公知の方法を用いて、タンパク質または核酸の発現を擬似処置または未処置試料のものと比較し得る。あるいは、対照アンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、改変されたまたは異なる配列を有するもの)で処置した試料との比較を、所望の情報に応じて行い得る。別の実施形態では、処理試料中と未処置試料中の間のCHIPタンパク質または核酸の発現の違いを、処置試料中と未処置試料中の間の異なる核酸(研究者により適当であると考えられる任意の標準、例えばハウスキーピング遺伝子を含む)の発現における違いと比較し得る。
【0171】
観察された違いは、対照との比較に使用するために、所望の通りに、例えば比または割合の形で表し得る。実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置した試料中のCHIP mRNAまたはタンパク質のレベルは、未処置試料または対照核酸で処置した試料に比べて、約1.25倍〜約10倍以上増加または減少する。実施形態では、CHIP mRNAまたはタンパク質のレベルは、少なくとも約1.25倍、少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.4倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約1.6倍、少なくとも約1.7倍、少なくとも約1.8倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約5.5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約6.5倍、少なくとも約7倍、少なくとも約7.5倍、少なくとも約8倍、少なくとも約8.5倍、少なくとも約9倍、少なくとも約9.5倍または少なくとも約10倍以上、増加または減少する。
【0172】
キット、研究試薬、診断および治療
本発明の化合物は、診断、治療および予防に、ならびに研究試薬およびキットの成分として使用し得る。さらに、優れた特異性で遺伝子発現を阻害することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドは多くの場合、特定の遺伝子の機能を明らかにするために、または生物学的経路の様々なメンバーの機能を区別するために、当業者により使用される。
【0173】
キットおよび診断ならびに様々な生体系における使用では、本発明の化合物は、単独でまたはその他の化合物もしくは治療法との併用で、細胞および組織内で発現される遺伝子の一部分または全部の発現パターンを明らかにするための差分および/または組合せ解析におけるツールとして有用である。
【0174】
本明細書で使用される「生体系」または「系」という用語は、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)遺伝子の産物を発現する、またはそれを発現する能力を付与された生物体、細胞、細胞培養物または組織と定義される。これらには、ヒト、トランスジェニック動物、細胞、細胞培養物、組織、異種移植片、移植片およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0175】
非限定的な一例としては、1つ以上のアンチセンス化合物で処置した細胞または組織内における発現パターンをアンチセンス化合物で処置しなかった対照細胞または組織と比較し、生じたパターンは例えば、調べた遺伝子の疾患関連性、シグナル伝達経路、細胞内局在、発現レベル、サイズ、構造または機能と関連するため、それらを異なるレベルの遺伝子発現に関して解析する。これらの解析は、刺激または未刺激細胞に関して、および発現パターンに影響を及ぼす他の化合物の存在下または非存在下で行い得る。
【0176】
当該技術分野で公知の遺伝子発現解析の方法の例としては、DNAアレイまたはマイクロアレイ、SAGE(遺伝子発現連続解析)、READS(消化cDNAの制限酵素増幅)、TOGA(全遺伝子発現解析)、タンパク質アレイおよびプロテオミクス、発現配列タグ(EST)配列決定、サブトラクティブRNAフィンガープリンティング(SuRF)、サブトラクティブクローニング、ディファレンシャルディスプレイ(DD)、比較ゲノムハイブリダイゼーション、FISH(蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)技術および質量分析法が挙げられる。
【0177】
本発明の化合物は、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)をコードする核酸とハイブリダイズするため、研究および診断に有用である。例えば、効果的な‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)モジュレーターとして本明細書に開示されるような効率および条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドは、遺伝子の増幅または検出に好都合な条件下でそれぞれ有効なプライマーまたはプローブである。これらのプライマーおよびプローブは、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)をコードする核酸分子の特異的検出が必要な方法において、および‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)の検出のための、またはそのさらなる研究での使用のための上記核酸分子の増幅において有用である。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド、具体的にはプライマーおよびプローブと、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)をコードする核酸とのハイブリダイゼーションは、当該技術分野で公知の手段により検出し得る。このような手段としては、オリゴヌクレオチドへの酵素のコンジュゲーション、オリゴヌクレオチドの放射性標識またはその他の任意の適切な検出手段を挙げ得る。試料中の‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)レベルを検出するためのこうした検出手段を用いたキットも調製し得る。
【0178】
アンチセンスの特異性および感度も当業者により治療用途に利用される。アンチセンス化合物は、ヒトを含めた動物における病的状態の治療において、治療部分として使用されてきた。アンチセンスオリゴヌクレオチド薬は安全かつ効果的にヒトへ投与されており、数多くの臨床試験が現在進められている。このようにして、アンチセンス化合物が、細胞、組織および動物、特にヒトの治療のための治療レジームにおいて有用であるように構成し得る、有用な治療様式であり得ることが確認される。
【0179】
治療では、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドの発現を調節することにより治療され得る疾患または障害を有することが疑われる動物、好ましくはヒトを、本発明に従ってアンチセンス化合物を投与することにより治療する。例えば、非限定的な一実施形態では、この方法は、治療を必要とする動物に治療有効量の‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)モジュレーターを投与する段階を含む。本発明の‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)モジュレーターは効果的に、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)の活性を調節する、または‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)タンパク質の発現を調節する。一実施形態では、動物における‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)の活性または発現が、対照と比べて約10%阻害される。好ましくは、動物における‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)の活性または発現が約30%阻害される。より好ましくは、動物における‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)の活性または発現が50%以上阻害される。したがって、オリゴマー化合物は、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)mRNAの発現を、対照と比べて少なくとも10%、少なくとも50%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%調節する。
【0180】
一実施形態では、動物における‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)の活性または発現が、対照と比べて約10%増加する。好ましくは、動物における‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)の活性または発現が約30%増加する。より好ましくは、動物における‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)の活性または発現が50%以上増加する。したがって、オリゴマー化合物は、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)mRNAの発現を、対照と比べて少なくとも10%、少なくとも50%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%増加させる。
【0181】
例えば、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)発現の減少は、動物の血清、血液、脂肪組織、肝臓、またはその他の任意の体液、組織もしくは器官において測定し得る。好ましくは、分析される上記液体、組織または器官中に含まれる細胞は、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ペプチドをコードする核酸分子および/または‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)タンパク質そのものを含有する。
【0182】
本発明の化合物は、有効量の化合物を適当な薬学的に許容される希釈剤または担体に加えることにより、医薬組成物で使用し得る。また本発明の化合物および方法の使用は予防にも有用である。
【0183】
コンジュゲート
本発明のオリゴヌクレオチドの別の修飾は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞内分布または細胞内取り込みを増大させる1つ以上の部分またはコンジュゲートをオリゴヌクレオチドと化学的に結合させることを含む。これらの部分またはコンジュゲートは、第一級または第二級ヒドロキシル基のような官能基と共有結合しているコンジュゲート基を含む。本発明コンジュゲート基としては、インターカレーター、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学特性を増強する基およびオリゴマーの薬物動態的特性を増強する基が挙げられる。典型的なコンジュゲート基としては、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリンおよび色素が挙げられる。本発明との関連において、薬力学特性を増強する基は、取り込みを向上させる、分解に対する耐性を増強するおよび/または標的核酸との配列特異的ハイブリダイゼーションを強化する基を含む。本発明との関連において、薬物動態的を増強する基は、本発明の化合物の取り込み、分布、代謝または排泄を向上させる基を含む。代表的なコンジュゲート基は、参照により本明細書に組み込まれる、1992年10月23日に出願された国際出願PCT/US92/09196号および米国特許第6,287,860号に開示されている。コンジュゲート部分としては、脂質部分、例えばコレステロール部分、コール酸、チオエーテル(例えば、ヘキシル−5−トリチルチオール)、チオコレステロール、脂肪族鎖(例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基)、リン脂質(例えば、ジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールまたは1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−Hホスホン酸トリエチルアンモニウム)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖、またはアダマンタン酢酸、パルミチル部分、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分などが挙げられるが、これらに限定されない。また本発明のオリゴヌクレオチドは、活性な原薬、例えばアスピリン、ワルファリン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、スプロフェン、フェンブフェン、ケトプロフェン、(S)−(+)−プラノプロフェン、カルプロフェン、ダンシルサルコシン、2,3,5−トリヨード安息香酸、フルフェナム酸、ホリン酸、ベンゾチアジアジド、クロロチアジド、ジアゼピン、インドメチシン(indomethicin)、バルビツール酸、セファロスポリン、サルファ剤、抗糖尿病剤、抗菌剤または抗生物質とコンジュゲートし得る。
【0184】
このようなオリゴヌクレオチドコンジュゲートの調製を教示する代表的な米国特許としては、米国特許第4,828,979号;同第4,948,882号;同第5,218,105号;同第5,525,465号;同第5,541,313号;同第5,545,730号;同第5,552,538号;同第5,578,717号;同第5,580,731号;同第5,580,731号;同第5,591,584号;同第5,109,124号;同第5,118,802号;同第5,138,045号;同第5,414,077号;同第5,486,603号;同第5,512,439号;同第5,578,718号;同第5,608,046号;同第4,587,044号;同第4,605,735号;同第4,667,025号;同第4,762,779号;同第4,789,737号;同第4,824,941号;同第4,835,263号;同第4,876,335号;同第4,904,582号;同第4,958,013号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,245,022号;同第5,254,469号;同第5,258,506号;同第5,262,536号;同第5,272,250号;同第5,292,873号;同第5,317,098号;同第5,371,241号;同第5,391,723号;同第5,416,203号;同第5,451,463号;同第5,510,475号;同第5,512,667号;同第5,514,785号;同第5,565,552号;同第5,567,810号;同第5,574,142号;同第5,585,481号;同第5,587,371号;同第5,595,726号;同第5,597,696号;同第5,599,923号;同第5,599,928号および同第5,688,941号が挙げられるが、これらに限定されない。
【0185】
製剤
また本発明の化合物は、取り込み、分布および/または吸収を補助するための、例えば(forexample)、リポソーム、受容体標的化分子、経口、口腔、直腸内、局所またはその他の製剤として、他の分子、分子構造または化合物の混合物と混合するか、封入するか、コンジュゲートするかまたはその他の方法で一緒にし得る。このような取り込み、分布および/または吸収を補助する製剤の調製を教示する代表的な米国特許としては、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,108,921号;同第5,354,844号;同第5,416,016号;同第5,459,127号;同第5,521,291号;同第5,543,165号;同第5,547,932号;同第5,583,020号;同第5,591,721号;同第4,426,330号;同第4,534,899号;同第5,013,556号;同第5,108,921号;同第5,213,804号;同第5,227,170号;同第5,264,221号;同第5,356,633号;同第5,395,619号;同第5,416,016号;同第5,417,978号;同第5,462,854号;同第5,469,854号;同第5,512,295号;同第5,527,528号;同第5,534,259号;同第5,543,152号;同第5,556,948号;同第5,580,575号;および同第5,595,756号が挙げられるが、これらに限定されない。
【0186】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的の発現および/または機能を調節するためにベクターと関連させて投与する必要はないが、本発明の実施形態は、プロモーターであるハイブリッドプロモーター遺伝子配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドの発現のための発現ベクター構築物に関し、かつ強力な構成的プロモーター活性または所望の場合に誘導し得るプロモーター活性を有する。
【0187】
一実施形態では、本発明の実施は、少なくとも1つの上記アンチセンスオリゴヌクレオチドを適当な核酸送達システムで投与することを含む。一実施形態では、このシステムは、ポリヌクレオチドと作動可能に連結された非ウイルスベクターを含む。このような非ウイルスベクターの例としては、単独のオリゴヌクレオチド(例えば、配列番号4〜11のうちのいずれか1つ以上)または適当なタンパク質、多糖もしくは脂質製剤と組み合わせたオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0188】
さらなる適当な核酸送達システムとしては、ウイルスベクター、典型的にはアデノウイルス、アデノウイルス随伴ウイルス(AAV)、ヘルパー依存性アデノウイルス、レトロウイルスまたはセンダイウイルス(hemagglutinating virus of Japan)−リポソーム(HVJ)複合体の少なくとも1つに由来する配列が挙げられる。好ましくは、ウイルスベクターは、ポリヌクレオチドと作動可能に連結された強力な真核プロモーター、例えばサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを含む。
【0189】
さらなる好適なベクターとしては、ウイルスベクター、融合タンパク質および化学的コンジュゲートが挙げられる。レトロウイルスベクターとしては、モロニーマウス白血病ウイルスおよびHIVベースのウイルスが挙げられる。1つの好適なHIVベースのウイルスは、gagおよびpol遺伝子がHIVゲノム由来であり、かつenv遺伝子が別のウイルス由来である、少なくとも2つのベクターを含む。DNAウイルスベクターが好ましい。このようなベクターとしては、オルソポックスまたはアビポックスベクターのようなポックスベクター、単純ヘルペスウイルス1型(HSV)ベクターのようなヘルペスウイルスベクター、アデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターが挙げられる。
【0190】
本発明のアンチセンス化合物は、任意の薬学的に許容される塩、エステルもしくはそのようなエステルの塩、またはヒトを含めた動物への投与の際に、(直接的または間接的に)生物学的に活性な代謝産物もしくはその残基をもたらすことができるその他の任意の化合物を包含する。
【0191】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の生理的および薬学的に許容される塩、すなわち、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、かつ望ましくない毒性作用をそれに付与しない塩を指す。オリゴヌクレオチドに関して、薬学的に許容される塩およびその使用の好適な例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,287,860号にさらに記載されている。
【0192】
本発明は、本発明のアンチセンス化合物を含む医薬組成物および製剤も含む。本発明の医薬組成物は、局所治療または全身治療のいずれが望まれるのかに応じて、また治療される部位に応じて、数多くの方法で投与し得る。投与は、局所(眼ならびに膣内および直腸内送達を含めた粘膜、肺(例えば、噴霧器吸入によるものを含めた、粉末剤またはエアゾール剤の吸入または吹送による)、気管内、鼻腔内、表皮および経皮)、経口または非経口であり得る。非経口投与としては、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内もしくは筋肉内への注射もしくは注入;または頭蓋内、例えばくも膜下腔内もしくは脳室内投与が挙げられる。
【0193】
中枢神経系内の組織の治療では、例えば脳脊髄液内への注射または注入により、投与を行い得る。脳脊髄液内へのアンチセンスRNAの投与は、例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2007/0117772号「Methods for slowing familial ALS disease progression」に記載されている。
【0194】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを中枢神経系内の細胞に投与しようとする場合、血液脳関門を横切る対象アンチセンスオリゴヌクレオチドの透過を促進することができる1つ以上の薬剤と共に投与し得る。注射を、例えば嗅内皮質または海馬内に行い得る。筋組織内の運動ニューロンへのアデノウイルスベクター投与による神経栄養因子の送達が、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,632,427号、「Adenoviral−vector−mediated gene transfer into medullary motor neurons」に記載されている。脳、例えば、線条体、視床、海馬または黒質への直接的なベクター送達は当該技術分野で公知であり、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,756,523号「Adenovirus vectors for the transfer of foreign genes into cells of the central nervous system particularly in brain」に記載されている。投与は、注射による迅速なものであり得るか、または緩徐注入もしくは徐放製剤の投与により一定期間にわたって行い得る。
【0195】
また対象アンチセンスオリゴヌクレオチドを、所望の薬学的または薬力学的特性をもたらす薬剤と結合またはコンジュゲートさせてもよい。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドを、血液脳関門を横断する透過または輸送を促進することが当該技術分野で公知である任意の物質、例えばトランスフェリン受容体に対する抗体などと結合させて、静脈内注射により投与し得る。アンチセンス化合物を、例えばアンチセンス化合物をより効果的にする、および/または血液脳関門を横断するアンチセンス化合物の輸送を増加させるウイルスベクターと連結し得る。浸透圧による血液脳関門破壊は、例えば、メソエリスリトール、キシリトール、D(+)ガラクトース、D(+)ラクトース、D(+)キシロース、ズルシトール、ミオ−イノシトール、L(−)フルクトース、D(−)マンニトール、D(+)グルコース、D(+)アラビノース、D(−)アラビノース、セロビオース、D(+)マルトース、D(+)ラフィノース、L(+)ラムノース、D(+)メリビオース、D(−)リボース、アドニトール、D(+)アラビトール、L(−)アラビトール、D(+)フコース、L(−)フコース、D(−)リキソース、L(+)リキソースおよびL(−)リキソースを含むがこれらに限定されない糖、またはグルタミン、リジン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、チロシン、バリンおよびタウリンを含むがこれらに限定されないアミノ酸の注入により達成し得る。血液脳関門透過を増大させる方法および材料は、例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,866,042号「Method for the delivery of genetic material across the blood brain barrier」、同第6,294,520号「Material for passage through the blood−brain barrier」および同第6,936,589号「arenteral delivery systems」に記載されている。
【0196】
対象アンチセンス化合物は、取り込み、分布および/または吸収を補助するための他の分子、分子構造または化合物の混合物、例えばリポソーム、受容体標的化分子、経口、口腔、直腸内、局所またはその他の製剤と混合するか、封入するか、コンジュゲートするか、またはその他の方法で一緒にし得る。例えば、オリゴヌクレオチド取り込みを促進するためにカチオン脂質を製剤中に含み得る。取り込みを促進することが示されているこのような組成物の1つは、リポフェクチン(GIBCO−BRL、Bethesda、MDから入手可能)である。
【0197】
少なくとも1つの2’−O−メトキシエチル修飾を有するオリゴヌクレオチドが、特に経口投与に有用であると考えられる。局所投与のための医薬組成物および製剤は、経皮パッチ剤、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、滴剤、坐剤、スプレー剤、液剤および粉末剤を含み得る。従来の医薬担体、水性、粉末または油性の基剤、増粘剤などが必要であるか、または望まれ得る。コーティングしたコンドーム、手袋なども有用であり得る。
【0198】
単位投与剤形で提供されることが好都合であり得る本発明の医薬組成物は、製薬業界で公知の従来技術に従って調製し得る。このような技術は、有効成分を医薬担体(1つまたは複数)または賦形剤(1つまたは複数)と結合させる段階を含む。一般に製剤は、有効成分を液体担体もしくは微粉化した固体担体またはその両方と均一かつ密に結合させ、次いで、必要に応じて生成物を成形することにより調製する。
【0199】
本発明の組成物は、任意の数多くの可能な剤形、限定されるわけではないが、例えば錠剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、液体シロップ剤、軟ゲル剤、坐剤および浣腸剤などに製剤化し得る。また本発明の組成物は、水性、非水性または混合された媒体中の懸濁剤としても製剤化し得る。水性懸濁液は、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを含めた、懸濁剤の粘度を増加させる物質をさらに含有し得る。また懸濁剤は安定化剤も含有し得る。
【0200】
本発明の医薬組成物は、液剤、乳剤、泡状剤およびリポソーム含有製剤を含むが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物および製剤は、1つ以上の浸透促進剤、担体、賦形剤またはその他の活性もしくは不活性成分を含み得る。
【0201】
乳剤は通常、1種類の液体が、通常は直径0.1μmを超える液滴の形態で別の液体中に分散した不均一系である。乳剤は、分散相に加えて追加の成分、および水相、油相中の液体としてまたは分離相としてそれ自体で存在し得る活性な薬物を含有し得る。マイクロエマルション剤は本発明の実施形態として含まれる。乳剤およびその使用は当該技術分野で公知であり、米国特許第6,287,860号においてさらに記載されている。
【0202】
本発明の製剤はリポソーム製剤を含む。本発明において使用される「リポソーム」という用語は、球状の1つまたは複数の二重層で配置された両親媒性脂質からなる小胞を意味する。リポソームは、親油性物質から形成される膜と送達される組成物を含有する水性の内部とを有する単層または多重膜小胞である。カチオン性リポソームは、負荷電DNA分子と相互作用して安定な複合体を形成すると考えられている正荷電リポソームである。pH感受性または負荷電のリポソームは、DNAと複合体を形成するのではなく、DNAを封入すると考えられている。カチオン性および非カチオン性のリポソームは共に、DNAを細胞へ送達するために使用されてきた。
【0203】
またリポソームは、「立体的に安定化された」リポソームも包含し、この用語は、本明細書で使用される場合、1つ以上の特殊な脂質を含むリポソームを指す。これらの特殊な脂質は、リポソーム内に組み込まれると、このような特殊な脂質を欠くリポソームに比べて増大した循環寿命を有するリポソームを生じる。立体的に安定化されたリポソームの例は、リポソームの小胞を形成する脂質部分の一部が1つ以上の糖脂質を含むか、またはポリエチレングリコール(PEG)部分のような1つ以上の親水性ポリマーにより誘導体化されている。リポソームおよびその使用は、米国特許第6,287,860号にさらに記載されている。
【0204】
本発明の医薬製剤および組成物は界面活性剤も含む。薬物製品、製剤および乳剤における界面活性剤の使用は当該技術分野で公知である。界面活性剤およびその使用は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,287,860号にさらに記載されている。
【0205】
一実施形態では、本発明は、核酸、特にオリゴヌクレオチドの効率的な送達をもたらすために様々な浸透促進剤を用いる。浸透促進剤は、細胞膜を横断する非脂溶性薬物の拡散を補助することに加えて、脂溶性薬物の透過性も増大させる。浸透促進剤は、5つの大きな種類、すなわち、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤および非キレート性非界面活性剤のうちの1つに属するものとして分類し得る。浸透促進剤およびその使用は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,287,860号にさらに記載されている。
【0206】
製剤は、その意図される使用、すなわち投与経路に従って日常的に設計されることを、当業者は理解するであろう。
【0207】
局所投与のための好適な製剤としては、本発明のオリゴヌクレオチドが局所送達薬剤、例えば脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート剤および界面活性剤などと混合されている製剤が挙げられる。好適な脂質およびリポソームとしては、中性(例えば、ジオレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン)、陰性(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG))およびカチオン性(例えば、ジオレオイルテトラメチルアミノプロピル(DOTAP(およびジオレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(DOTMA))が挙げられる。
【0208】
局所またはその他の投与では、本発明のオリゴヌクレオチドをリポソーム内に封入するか、またはリポソーム、特にカチオン性リポソームと複合体と形成させ得る。あるいは、オリゴヌクレオチドを脂質、特にカチオン性脂質と複合体を形成させ得る。好適な脂肪酸およびエステル、薬学的に許容されるその塩、ならびにその使用は、米国特許第6,287,860号にさらに記載されている。
【0209】
経口投与のための組成物および製剤としては、粉末剤もしく顆粒剤、微粒子剤、ナノ粒子剤、水もしくは非水性媒体中の懸濁剤もしくは液剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、サシェ剤、錠剤または微小錠剤が挙げられる。増粘剤、着香剤、希釈剤、乳化剤、分散補助剤または結合剤が望ましいものであり得る。好適な経口製剤は、本発明のオリゴヌクレオチドが1つ以上の浸透促進剤である界面活性剤およびキレート剤と共に投与される製剤である。好適な界面活性剤としては、脂肪酸および/またはエステルまたはその塩、胆汁酸および/またはその塩が挙げられる。好適な胆汁酸/塩および脂肪酸、ならびにその使用は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,287,860号にさらに記載されている。浸透促進剤の組合せ、例えば、胆汁酸/塩と組み合わせた脂肪酸/塩も好ましい。特に好適な組合せは、ラウリン酸、カプリン酸およびUDCAのナトリウム塩である。さらなる浸透促進剤としては、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−20−セチルエーテルが挙げられる。本発明オリゴヌクレオチドは、噴霧乾燥粒子を含めた顆粒形態で経口送達するか、または錯体形成して微小もしくはナノ粒子を形成し得る。オリゴヌクレオチド錯化剤およびその使用は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,287,860号にさらに記載されている。
【0210】
非経口、くも膜下腔内または脳室内投与のための組成物および製剤としては、緩衝剤、希釈剤およびその他の適当な添加剤、例えば特に限定されないが、浸透促進剤、担体化合物およびその他の薬学的に許容される担体または賦形剤なども含有し得る、無菌水性液剤を挙げ得る。
【0211】
本発明の特定の実施形態は、1つ以上のオリゴマー化合物と非アンチセンス機序により機能する1つ以上の他の化学療法剤とを含有する医薬組成物を提供する。このような化学療法剤の例としては、癌化学療法薬、例えばダウノルビシン、ダウノマイシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、エソルビシン、ブレオマイシン、マホスファミド、イホスファミド、シトシンアラビノシド、ビスクロロエチル−ニトロソ尿素、ブスルファン、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、ミトラマイシン、プレドニゾン、ヒドロキシプロゲステロン、テストステロン、タモキシフェン、ダカルバジン、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ペンタメチルメラミン、ミトキサントロン、アムサクリン、クロラムブシル、メチルシクロヘキシルニトロソ尿素、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、シクロホスファミド、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−アザシチジン、ヒドロキシウレア、デオキシコホルマイシン、4−ヒドロキシペルオキシシクロ−ホスホラミド、5‐フルオロウラシル(5−FU)、5−フルオロデオキシウリジン(5−FUdR)、メトトレキサート(MTX)、コルヒチン、タキソール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド(VP−16)、トリメトレキサート、イリノテカン、トポテカン、ゲムシタビン、テニポシド、シスプラチンおよびジエチルスチルベストロール(DES)などが挙げられるが、これらに限定されない。上記化学療法剤は、本発明の化合物と共に使用する場合、個別に(例えば、5−FUとオリゴヌクレオチド)、逐次的に(例えば、一定期間の5−FUとオリゴヌクレオチドの後に、MTXとオリゴヌクレオチド)または1つ以上の他の化学療法剤と併用して(例えば、5−FU、MTXおよびオリゴヌクレオチド、または5−FU、放射線療法およびオリゴヌクレオチド)使用し得る。非ステロイド性抗炎症剤および副腎皮質ステロイド剤を含むがこれらに限定されない抗炎症剤、ならびにリビビリン(ribivirin)、ビダラビン、アシクロビルおよびガンシクロビルを含むがこれらに限定されない抗ウイルス剤も本発明の組成物中に混合し得る。アンチセンス化合物と他の非アンチセンス薬物との組み合わせも本発明の範囲内にある。組み合わされた2つ以上の化合物を一緒にまたは逐次的に使用し得る。
【0212】
別の関連する実施形態では、本発明の組成物は、第一の核酸に対して標的化された1つ以上のアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドと、第二の核酸標的に対して標的化された1つ以上の追加のアンチセンス化合物とを含有し得る。例えば、第一の標的は‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)の特定のアンチセンス配列であり得、かつ第二の標的は別のヌクレオチド配列由来の領域であり得る。あるいは、本発明の組成物は、同じ‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)核酸標的の異なる領域に対して標的化された2つ以上のアンチセンス化合物を含有し得る。アンチセンス化合物の数多くの例が本明細書に示され、その他のものは当該技術分野で公知の適当な化合物の中から選択され得る。組み合わされた2つ以上の化合物を一緒にまたは逐次的に使用し得る。
【0213】
投薬:
治療用組成物の製剤化およびそれに続く投与(投薬)は、当業者の技術の範囲内にあると考えられる。投薬は、治療される病的状態の重症度および応答性によって決まり、治療過程は数日〜数ヶ月、または治癒がもたらされるか、もしくは病的状態の減退が達成されるまで続く。最適な投薬計画は、患者体内の薬物蓄積の測定から計算し得る。当業者は、最適用量、投薬方法および反復速度を容易に決定することができる。最適用量は、個々のオリゴヌクレオチドの相対的効力によって異なり得るが、一般的には、インビトロおよびインビボ動物モデルにおいて効果的であることがわかるEC50に基づき推定することができる。一般に用量は、体重1kg当たり0.01μg〜100gであり、また1日、1週間、1ヶ月もしくは1年に1回以上、または2〜20年に1回投与し得る。当業者は、体液または組織中において測定された薬物の滞留時間および濃度に基づき、投薬の反復速度を容易に推定することができる。良好な治療の後、病的状態の再発を予防するために、患者に維持療法を受けさせることが望ましい場合があり、この場合、オリゴヌクレオチドを、1日1回以上〜20年に1回、体重1kg当たり0.01μg〜100gの範囲の維持投与量で投与する。
【0214】
実施形態では、少なくとも約1mg/kg体重、少なくとも約2mg/kg体重、少なくとも約3mg/kg体重、少なくとも約4mg/kg体重、少なくとも約5mg/kg体重、少なくとも約6mg/kg体重、少なくとも約7mg/kg体重、少なくとも約8mg/kg体重、少なくとも約9mg/kg体重、少なくとも約10mg/kg体重、少なくとも約15mg/kg体重、少なくとも約20mg/kg体重、少なくとも約25mg/kg体重、少なくとも約30mg/kg体重、少なくとも約35mg/kg体重、少なくとも約40mg/kg体重、少なくとも約45mg/kg体重、少なくとも約50mg/kg体重、少なくとも約60mg/kg体重、少なくとも約70mg/kg体重、少なくとも約80mg/kg体重、少なくとも約90mg/kg体重または少なくとも約100mg/kg体重の薬物用量で患者を治療する。アンチセンスオリゴヌクレオチドの特定の注射用量が、例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,563,884号「Antisense modulation of PTP1B expression」に記載されている。
【0215】
本発明の様々な実施形態が上に記載されているが、これらは単なる例として提供されるものであり、限定するものではないということが理解されるべきである。本明細書の開示に従って、本発明の精神または範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に数多くの改変が行われ得る。したがって、本発明の広さおよび範囲は、上記実施形態のいずれによっても限定されるべきではない。
【0216】
本明細書で言及される文書はすべて、参照により本明細書に組み込まれる。本願で引用される刊行物および特許文書はすべて、個々の刊行物または特許文書がそれぞれ個別に示された場合と同様に、あらゆる目的で参照により組み込まれる。本明細書に数多くの参考文献を引用することにより、出願人は、特定の参考文献がいずれも出願人の発明の「先行技術」であることを認めない。本発明の組成物および方法の実施形態を以下の実施形態で説明する。
【実施例】
【0217】
以下の非限定的な実施例は、本発明の選択された実施形態を説明するために用いる。示される構成成分要素の割合および代替物における変化は、当業者に明らかであり、かつ本発明の実施形態の範囲内にあることが理解されるであろう。
【0218】
実施例1:‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)にアンチセンスな核酸分子および/または‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドのセンス鎖に特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの設計
上記の通り、「〜に特異的なオリゴヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチドは〜を標的とする」という用語は、(i)標的遺伝子の一部分と安定な複合体を形成することができる、または(ii)標的遺伝子のmRNA転写産物の一部分と安定な二重鎖を形成することができる配列を有する、オリゴヌクレオチドを指す。
【0219】
適当なオリゴヌクレオチドの選択は、自動的に核酸配列を整列させて同一性または相同性の領域を示すコンピュータプログラムを用いることにより容易になる。このようなプログラムを用いて、例えば、GenBankのようなデータベースを検索することにより、またはPCR産物を配列決定することにより得られた核酸配列を比較する。様々な種に由来する核酸配列の比較により、種間で適度な同一性を示す核酸配列の選択が可能となる。配列決定されていない遺伝子の場合、サザンブロットを行って、標的種と他種の遺伝子間の同一性の程度を決定することができる。当該技術分野で公知のように、様々な程度のストリンジェンシーでサザンブロットを行うことにより、同一性の近似測定値を得ることが可能である。上記手順により、制御するべき被検体の標的核酸配列に対する高度な相補性および他種の対応する核酸配列に対して低度な相補性を示すオリゴヌクレオチドの選択が可能となる。本発明での使用に適した遺伝子領域の選択においてかなりの許容度があることを、当業者は理解するであろう。
【0220】
アンチセンス化合物は、その化合物と標的核酸との結合が標的核酸の正常な機能に干渉して機能および/または活性の調節を引き起こし、かつ特異的な結合が望まれる条件下で、すなわち、インビボアッセイまたは治療処置の場合は生理的条件下で、およびインビトロアッセイの場合はアッセイが行われる条件下で、アンチセンス化合物と非標的核酸配列との非特異的結合を回避するに十分な程度の相補性がある場合、「特異的にハイブリダイズ可能」である。
【0221】
本明細書に記載のオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション特性は、当該技術分野で公知の1つ以上のインビトロアッセイにより決定し得る。例えば、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドの特性を、融解曲線アッセイを用いて、標的天然アンチセンスと潜在的な薬物分子との間の結合強度を決定することにより得ることができる。
【0222】
標的天然アンチセンスと潜在的な薬物分子(分子)との間の結合強度は、分子間相互作用の強度を測定する確立された任意の方法、例えば融解曲線アッセイを用いて推定し得る。
【0223】
融解曲線アッセイでは、天然のアンチセンス/分子複合体に対して二本鎖から一本鎖コンホメーションへの急速な遷移が生じる温度を決定する。この温度は、2分子間の相互作用強度の信頼できる測定値として広く認められている。
【0224】
融解曲線アッセイは、分子の結合部位に対応する実際の天然アンチセンスRNA分子または合成DNAもしくはRNAヌクレオチドのcDNAコピーを用いて行い得る。このアッセイを行うために必要な試薬をすべて含む多様なキットが入手可能である(例えば、Applied Biosystems Inc.のMeltDoctorキット)。これらのキットは、二本鎖DNA(dsRNA)結合色素(例えばABI HRM色素、SYBR Green、SYTOなど)の1つを含有する適当な緩衝液を含む。dsRNA色素の特徴は、それらが遊離型ではほとんど蛍光を発しないが、dsRNAと結合したときに非常に蛍光性になるということである。
【0225】
このアッセイを行うために、cDNAまたは対応するオリゴヌクレオチドを、特定の製造者プロトコールにより定められた濃度で分子と混合する。この混合物を95℃まで加熱して、予め形成されたdsRNA複合体をすべて解離させ、次いで、室温またはキット製造者により定められたその他の低い温度まで徐々に冷却して、DNA分子をアニールさせる。次いで、新たに形成された複合体を95℃まで徐々に加熱すると同時に、反応により生じた蛍光量のデータを連続的に収集する。蛍光強度は、反応物中に存在するdsRNAの量に反比例する。データは、キットと適合性のあるリアルタイムPCR機器(例えば、ABIのStepOne Plus Real Time PCR SystemまたはLightTyper機器、Roche Diagnostics、Lewes、UK)を用いて収集し得る。
【0226】
融解ピークは、適当なソフトウェア(例えば、LightTyper(Roche)またはSDS Dissociation Curve、ABI)を用いて、温度(x軸)に対して、温度に関する蛍光の負の導関数(−d(蛍光)/dT)をy軸上にプロットすることにより作成する。データを解析して、dsDNA複合体から一本鎖分子への急速な遷移の温度を特定する。この温度はTmと呼ばれ、2分子間の相互作用の強さに直接比例する。通常、Tmは40℃を超える。
【0227】
実施例2:CHIPポリヌクレオチドの調節
アンチセンスオリゴヌクレオチドによるZR75−1細胞の処置
1.zr−75細胞をRPMI(ATCC番号30−2001)+10%FBS+ペニシリン+ストレプトマイシン中、37℃および5%COで増殖させた。実験の1日前に、細胞を6ウェルプレート中に1.5×10/mlの密度で再び播き、37℃および5%COでインキュベートした。実験日に、6ウェルプレート中の培地を新たな増殖培地に交換した。すべてのアンチセンスオリゴヌクレオチドを20μMの濃度まで希釈した。この溶液2μlを、400μlのOpti−MEM培地(Gibco、カタログ番号31985−070)および4μlのリポフェクタミン2000(Invitrogen、カタログ番号11668019)と共に、室温で20分間インキュベートし、ZR75−1細胞を含む6ウェルプレートの各ウェルに加えた。オリゴヌクレオチド溶液の代わりに2μlの水を含む同様の混合物を擬似トランスフェクト対照に使用した。37℃および5%COで3〜18時間インキュベートした後、培地を新たな増殖培地に交換した。アンチセンスオリゴヌクレオチド添加の48時間後に、培地を除去し、Promega製のSV Total RNA Isolation System(カタログ番号Z3105)またはQiagen製のRNeasy Total RNA Isolationキット(カタログ番号74181)を製造者の説明書に従って用い、細胞からRNAを抽出した。Thermo Scientific製のVerso cDNAキット(カタログ番号AB1453B)またはHigh Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(カタログ番号4368813)を製造者プロトコールに記載されている通りに用いて行う逆転写反応に、600ngのRNAを加えた。この逆転写反応から得られたcDNAを用いて、ABI Taqman Gene Expression Mix(カタログ番号4369510)およびABIにより設計されたプライマー/プローブ(Applied Biosystems Inc.、Foster City CAによるApplied Biosystems Taqman Gene Expression Assay:Hs00195300_m1)を用いたリアルタイムPCRにより遺伝子発現をモニターした。以下のPCRサイクルを使用した:Mx4000サーマルサイクラー(Stratagene)を用いて、50℃で2分間、95℃で10分間、(90℃で15秒間、60℃で1分間)の40サイクル。アンチセンスオリゴヌクレオチドによる処置後の遺伝子発現の倍数変化を、処置試料および擬似トランスフェクト試料の間の18S正規化したdCt値の差に基づいて計算した。
【0228】
結果:
リアルタイムPCRの結果は、ZR75−1細胞中のCHIP1 mRNAのレベルが、BX088969.1に対して設計されたsiRNAのうちの2つ(CUR−0314およびCUR−0316)による処置の48時間後に有意に増加することを示している。Hs.5337715に対して設計された3つのホスホロチオアートアンチセンスオリゴ(CUR−0879〜CUR−0883)もCHIP1 mRNAレベルを有意に上方制御した(図1)。
【0229】
リアルタイムPCRの結果は、ZR75−1細胞中のCHIP1 mRNAのレベルが、Hs.5337715に対して設計されたホスホロチオアートアンチセンスオリゴの1つ(CUR−0880)による処置の48時間後に有意に増加することを示している(図2)。
【0230】
本発明は1つ以上の実施に関して説明および記述されているが、当業者は、本明細書および添付図面を読み理解すれば、等価の代替物および修正が思いつくであろう。さらに、本発明の特定の特性がいくつかの実施のうちの1つに関してのみ開示されているであろうが、このような特性は、任意のまたは特定の適用に対して望まれかつ有利である場合、他の実施の1つ以上の他の特性と組み合わせ得る。
【0231】
本開示の要約により、読者は本技術の開示の性質を速やかに確認することができるであろう。これは、以下の特許請求項の範囲または意味を解釈または限定するために使用されないという理解の下に提出される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者細胞または組織中の‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドの機能および/または発現をインビボまたはインビトロで調節する方法であって、
前記細胞または組織を、少なくとも1つの5〜30ヌクレオチド長のアンチセンスオリゴヌクレオチドと接触させ、前記少なくとも1つのオリゴヌクレオチドが、配列番号2のヌクレオチド1〜2074および配列番号3のヌクレオチド1〜1237の中の5〜30個の連続するヌクレオチドを含むポリヌクレオチドの逆相補鎖に対して少なくとも50%の配列同一性を有することと、
それにより患者細胞または組織中の前記‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチド機能および/または発現をインビボまたはインビトロで調節することと
を含む方法。
【請求項2】
患者細胞または組織中の‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドの機能および/または発現をインビボまたはインビトロで調節する方法であって、
前記細胞または組織を、少なくとも1つの5〜30ヌクレオチド長のアンチセンスオリゴヌクレオチドと接触させ、前記少なくとも1つのオリゴヌクレオチドが、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドの天然アンチセンスの逆相補鎖に対して少なくとも50%の配列同一性を有することと、
それにより患者細胞または組織中の前記‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチド機能および/または発現をインビボまたはインビトロで調節することと
を含む方法。
【請求項3】
患者細胞または組織中の‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドの機能および/または発現をインビボまたはインビトロで調節する方法であって、
前記細胞または組織を、少なくとも1つの5〜30ヌクレオチド長のアンチセンスオリゴヌクレオチドと接触させ、前記少なくとも1つのオリゴヌクレオチドが、前記‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドに対して少なくとも50%の配列同一性を有することと、
それにより患者細胞または組織中の前記‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチド機能および/または発現をインビボまたはインビトロで調節することと
を含む方法。
【請求項4】
患者細胞または組織中の‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドの機能および/または発現をインビボまたはインビトロで調節する方法であって、
前記細胞または組織を、前記‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドの天然アンチセンスオリゴヌクレオチドの領域を標的とする少なくとも1つのアンチセンスオリゴヌクレオチドと接触させることと、
それにより患者細胞または組織中の前記‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチド機能および/または発現をインビボまたはインビトロで調節することと
を含む方法。
【請求項5】
前記‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)の機能および/または発現が、対照に対してインビボまたはインビトロで増加する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのアンチセンスオリゴヌクレオチドが、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドの天然アンチセンス配列を標的とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアンチセンスオリゴヌクレオチドが、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドのコードおよび/または非コード核酸配列を含む核酸配列を標的とする、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのアンチセンスオリゴヌクレオチドが、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドの重複および/または非重複配列を標的とする、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのアンチセンスオリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの修飾糖部分、少なくとも1つの修飾されたヌクレオシド間結合、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドおよびそれらの組合せから選択される1つ以上の修飾を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上の修飾が、2’−O−メトキシエチル修飾糖部分、2’−メトキシ修飾糖部分、2’−O−アルキル修飾糖部分、二環式糖部分およびそれらの組合せから選択される1つ以上の修飾糖部分を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上の修飾が、ホスホロチオアート、2’−O−メトキシエチル(MOE)、2’−フルオロ、アルキルホスホナート、ホスホロジチオアート、アルキルホスホノチオアート、ホスホルアミダート、カルバマート、炭酸エステル、リン酸トリエステル、アセトアミダート、カルボキシメチルエステルおよびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの修飾されたヌクレオシド間結合を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の修飾が、ペプチド核酸(PNA)、ロックト核酸(LNA)、アラビノ核酸(FANA)、類似体、誘導体およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのオリゴヌクレオチドが、配列番号4〜11として記載されている少なくとも1つのオリゴヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
哺乳動物細胞または組織中の‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)遺伝子の機能および/または発現をインビボまたはインビトロで調節する方法であって、
前記細胞または組織を、少なくとも1つの5〜30ヌクレオチド長の短鎖干渉RNA(siRNA)オリゴヌクレオチドと接触させ、前記少なくとも1つのsiRNAオリゴヌクレオチドが‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドのアンチセンスポリヌクレオチドに特異的であり、前記少なくとも1つのsiRNAオリゴヌクレオチドが、前記‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドのアンチセンスおよび/またはセンス核酸分子の少なくとも約5個の連続する核酸の相補的配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有することと、
哺乳動物細胞または組織中の‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)の機能および/または発現をインビボまたはインビトロで調節することと
を含む方法。
【請求項15】
前記オリゴヌクレオチドが、前記‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドのアンチセンスおよび/またはセンス核酸分子と相補的な少なくとも約5個の連続する核酸の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
哺乳動物細胞または組織中の‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)の機能および/または発現をインビボまたはインビトロで調節する方法であって、
前記細胞または組織を、‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドのセンスおよび/または天然アンチセンス鎖の非コードおよび/またはコード配列に特異的な約5〜30ヌクレオチド長の少なくとも1つのアンチセンスオリゴヌクレオチドと接触させ、前記少なくとも1つのアンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号1〜3として記載されている少なくとも1つの核酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有することと、
哺乳動物細胞または組織中の前記‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)の機能および/または発現をインビボまたはインビトロで調節することと
を含む方法。
【請求項17】
少なくとも1つの修飾糖部分、少なくとも1つの修飾されたヌクレオチド間結合、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドおよびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの修飾を含む合成修飾オリゴヌクレオチドであって、前記オリゴヌクレオチドが、インビボまたはインビトロで‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)遺伝子とハイブリダイズし、正常対照と比べてその機能および/または発現を調節するアンチセンス化合物である、合成修飾オリゴヌクレオチド。
【請求項18】
前記少なくとも1つの修飾が、ホスホロチオアート、アルキルホスホナート、ホスホロジチオアート、アルキルホスホノチオアート、ホスホルアミダート、カルバマート、炭酸エステル、リン酸トリエステル、アセトアミダート、カルボキシメチルエステルおよびそれらの組合せからなる群より選択されるヌクレオチド間結合を含む、請求項17に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項19】
少なくとも1つのホスホロチオアートヌクレオチド間結合を含む、請求項17に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項20】
ホスホロチオアートヌクレオチド間結合の骨格を含む、請求項17に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項21】
ペプチド核酸、ロックト核酸(LNA)、類似体、誘導体およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項17に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項22】
ホスホロチオアート、アルキルホスホナート、ホスホロジチオアート、アルキルホスホノチオアート、ホスホルアミダート、カルバマート、炭酸エステル、リン酸トリエステル、アセトアミダート、カルボキシメチルエステルおよびそれらの組合せからなる群より選択される修飾ヌクレオチドを含む複数の修飾を含む、請求項17に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項23】
ペプチド核酸、ロックト核酸(LNA)、類似体、誘導体およびそれらの組合せから選択される修飾ヌクレオチドを含む複数の修飾を含む、請求項17に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項24】
2’−O−メトキシエチル修飾糖部分、2’−メトキシ修飾糖部分、2’−O−アルキル修飾糖部分、二環式糖部分およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの修飾糖部分を含む、請求項17に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項25】
2’−O−メトキシエチル修飾糖部分、2’−メトキシ修飾糖部分、2’−O−アルキル修飾糖部分、二環式糖部分およびそれらの組合せから選択される修飾糖部分を含む複数の修飾を含む、請求項17に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項26】
少なくとも約5〜30ヌクレオチド長であり、かつ‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドのアンチセンスおよび/またはセンス鎖とハイブリダイズし、前記‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドのアンチセンスおよび/またはセンスのコードおよび/また非コード核酸配列の少なくとも約5個の連続する核酸の相補配列に対して少なくとも約20%の配列同一性を有する、請求項17に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項27】
前記‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドのアンチセンスおよび/またはセンスのコードおよび/または非コード核酸配列の少なくとも約5個の連続する核酸の相補配列に対して少なくとも約80%の配列同一性を有する、請求項17に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項28】
インビボまたはインビトロで少なくとも1つの‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドとハイブリダイズし、正常対照と比べてその発現および/または機能を調節する、請求項17に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項29】
配列番号4〜11として記載されている配列を含む、請求項17に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項30】
アンチセンス配列、相補的配列、対立遺伝子、相同体、アイソフォーム、バリアント、誘導体、変異体、フラグメントまたはそれらの組合せを含む1つ以上の‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドに特異的な1つ以上のオリゴヌクレオチドを含む組成物。
【請求項31】
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号4〜11として記載されているヌクレオチド配列のいずれか1つに対して少なくとも約40%の配列同一性を有する、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号4〜11として記載されているヌクレオチド配列を含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項33】
配列番号4〜11として記載されている前記オリゴヌクレオチドが、1つ以上の修飾または置換を含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記1つ以上の修飾が、ホスホロチオアート、メチルホスホナート、ペプチド核酸、ロックト核酸(LNA)分子およびそれらの組合せから選択される、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
少なくとも1つの‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドおよび/または少なくとも1つのそのコード産物に関連した疾患を予防または治療する方法であって、
前記少なくとも1つの‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドの天然アンチセンス配列と結合し、かつ前記少なくとも1つの‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドを調節する少なくとも1つのアンチセンスオリゴヌクレオチドの治療有効量を患者に投与することと、
それにより前記少なくとも1つの‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドおよび/または少なくとも1つのそのコード産物に関連した疾患を予防または治療することと
を含む方法。
【請求項36】
前記少なくとも1つの‘HSP70相互作用タンパク質C末端’(CHIP)ポリヌクレオチドに関連した疾患が、CHIPの異常な機能および/または発現に関連した疾患または障害、神経疾患または障害、神経炎症性疾患または障害、自己免疫疾患または障害、肥満症、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、癌、AIDS、アテローム性動脈硬化プラーク、膠芽腫、アミロイド沈着に関連した疾患または障害、絨毛癌、星状細胞腫、アミロイドーシス、高脂血症、神経変性、腫瘍性形質転換、AIDS、転移、心筋梗塞、肺線維症、炎症、神経膠腫、血管疾患または障害、細胞損傷、非小細胞肺癌(NSCLC)、高コレステロール血症、脂肪肉腫、心血管疾患または障害、免疫不全、糸球体腎炎、静脈血栓症、病理過程、細胞ストレス、酸化ストレスに関連した疾患または障害、ポリグルタミン病、アグリソーム経路の機能障害に関連した疾患または障害、加齢に関連した疾患、障害または状態、ミスフォールドタンパク質の凝集に関連した疾患または障害、アルファ−シヌクレインのミスフォールディングおよび/または凝集に関連した疾患または障害、ならびにベータ−アミロイド(Abeta)代謝に関連した疾患または障害から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
インビボ投与のための少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを同定および選択する方法であって、
病的状態と関連する標的ポリヌクレオチドを選択することと、
前記選択された標的ポリヌクレオチドまたは前記選択されたポリヌクレオチドに対してアンチセンスであるポリヌクレオチドと相補的な少なくとも5個の連続するヌクレオチドを含む、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを同定することと、
アンチセンスオリゴヌクレオチドと、前記標的ポリヌクレオチドまたは前記選択されたポリヌクレオチドに対してアンチセンスであるポリヌクレオチドとのハイブリッドの熱融点を、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で測定することと、
得られた情報に基づいてインビボ投与のための少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを選択することと
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−502224(P2013−502224A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525712(P2012−525712)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/046102
【国際公開番号】WO2011/022606
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(512156578)カッパーアールエヌエー,インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】