説明

かさ歯車装置

【課題】高速回転を伝達できるにも関わらず、振動および騒音が発生せず、発熱もぜず、給油等の維持管理の必要もないため、その使用範囲は、従来に比し、極めて広くなるかさ歯車装置を提供する。
【解決手段】原動かさ歯車1と従動かさ歯車2とを各々の回転伝達部を接近した状態で配置し、原動かさ歯車1から従動かさ歯車2へ回転を伝達するかさ歯車達装置において、前記原動かさ歯車1および前記従動かさ歯車2は、各々、非磁性体の円錐台状ベース11,21を有し、互いに対向する一対の円錐台状ベース11,21の円錐面12,22を各々前記回転伝達部に該当させるとともにこれらの円錐面12,22に互いに吸引する永久磁石14,24を放射状に埋設し、この永久磁石14,24を円錐台状ベース11,21の円錐面12,22に露出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はかさ歯車装置に関し、磁力を利用した非接触の状態で、原動かさ歯車から従動かさ歯車へ回転を伝達する場合に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来におけるこの種のかさ歯車装置は、原動かさ歯車の歯部と従動かさ歯車の歯部とを噛み合わせ、原動かさ歯車の回転を従動かさ歯車へ伝達していた。
一方、原動回転体と従動回転体の各々の外周面に交互の磁極を形成し、これらを接近した状態で配置し、原動回転体から一方向のみに従動回転体に回転を伝達する、所謂、非接触式平歯車装置も既に存在している。
【0003】
【特許文献1】特開平6−51580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のかさ歯車装置にあっては、一対のかさ歯車が噛み合っているため、回転が伝達される際に振動しやすいとともに騒音が発生しやすい結果、その使用範囲は自ずと限定され、且つ、摩擦による発熱およびに磨耗を防止する必要上、給油等の維持管理に手間がかかるという不都合を有した。
【0005】
一方、従来の非接触式平歯車装置は、原動回転体および従動回転体の磁力は、磁極を着磁させていたに過ぎないため、当該回転体が磁化しやすい結果、高速回転を伝達させにくいという不都合を有した。
【0006】
この発明の課題はこれらの不都合を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るかさ歯車装置においては、原動かさ歯車と従動かさ歯車とを各々の回転伝達部を接近した状態で配置し、原動かさ歯車から従動かさ歯車へ回転を伝達するかさ歯車達装置において、前記原動かさ歯車および前記従動かさ歯車は、各々、非磁性体の円錐台状ベースを有し、互いに対向する一対の円錐台状ベースの円錐面を各々前記回転伝達部に該当させるとともにこれらの円錐面に互いに吸引する永久磁石を放射状に埋設し、この永久磁石を円錐台状ベースの円錐面に露出させたものである。
【0008】
この場合、前記円錐台状ベースの円錐面に磁石埋め込み用蟻溝を放射状に形成し、この磁石埋め込み用蟻溝を前記円錐台状ベースの円錐面の下端縁のみに開口させ、この下端開口から永久磁石を挿入することもできる。
【0009】
また、隣合う磁石の磁極を交互になるように配置することもできる。
【0010】
また、前記円錐台状ベースの外周囲に前記下端開口を覆うように磁石固定フランジを外嵌めすることもできる。
【0011】
また、前記円錐台状ベースと前記永久磁石との間に磁力遮蔽板を介在させることもできる。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係るかさ歯車装置は上記のように構成されているため、即ち、原動かさ歯車と従動かさ歯車とを各々の回転伝達部を接近した状態で配置し、原動かさ歯車から従動かさ歯車へ回転を伝達するかさ歯車達装置において、前記原動かさ歯車および前記従動かさ歯車は、各々、非磁性体の円錐台状ベースを有し、互いに対向する一対の円錐台状ベースの円錐面を各々前記回転伝達部に該当させるとともにこれらの円錐面に互いに吸引する永久磁石を放射状に埋設し、この永久磁石を円錐台状ベースの円錐面に露出させたため、
前記円錐台状ベースの回転伝達部に、局所的に放射状の磁力が配置される結果、原動かさ歯車と従動かさ歯車とは非接触の状態であるにも関わらず恰も歯合しているがごとき状態で回転力を伝達することができる。
【0013】
よって、このかさ歯車装置を使用すれば、高速回転を伝達できるにも関わらず、振動および騒音が発生せず、発熱もぜず、給油等の維持管理の必要もないため、その使用範囲は、従来に比し、極めて広くなるものである。
【0014】
この場合、前記円錐台状ベースの円錐面に磁石埋め込み用蟻溝を放射状に形成し、この磁石埋め込み用蟻溝を前記円錐台状ベースの円錐面の下端縁のみに開口させ、この下端開口から永久磁石を挿入すれば、永久磁石を、抜け落ちしない状態で円錐台状ベースに放射状にはめ込みやすいものである。
【0015】
また、隣合う磁石の磁極を交互になるように配置すれば、回転開始時又は回転停止時に隣接する永久磁石からの反発力が作用して、当該永久磁石の抜け落ちが防止できる。
【0016】
また、前記円錐台状ベースの外周囲に前記下端開口を覆うように磁石固定フランジを外嵌めすれば、回転時に遠心力が掛かっても、永久磁石が前記下端開口から抜け落ちることはない。
【0017】
また、前記円錐台状ベースと前記永久磁石との間に磁力遮蔽板を介在させれば、前記円錐台状ベースの裏側方向への磁力飛散を減少させるためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明に係るかさ歯車装置は、原動かさ歯車と従動かさ歯車とを各々の回転伝達部を接近した状態で配置し、原動かさ歯車から従動かさ歯車へ回転を伝達する。前記原動かさ歯車および前記従動かさ歯車は、各々、非磁性体の円錐台状ベースを有し、互いに対向する一対の円錐台状ベースの円錐面を各々前記回転伝達部に該当させる。対向する一対の円錐台状ベースの円錐面に互いに吸引する永久磁石を放射状に埋設し、この永久磁石を円錐台状ベースの円錐面に露出させる。前記円錐台状ベースの円錐面に磁石埋め込み用蟻溝を放射状に形成し、この磁石埋め込み用蟻溝を前記円錐台状ベースの円錐面の下端縁のみに開口させ、この下端開口から永久磁石を挿入する。隣合う磁石の磁極を交互になるように配置する。前記円錐台状ベースの外周囲に前記下端開口を覆うように磁石固定フランジを外嵌めする。前記円錐台状ベースと前記永久磁石との間に磁力遮蔽板を介在させる。
【実施例】
【0019】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1はこの発明に係るかさ歯車装置の正面図、図2は同斜視図、図3は同分解斜視図、図4は永久磁石の斜視図、図5は原動かさ歯車の永久磁石の配置状態説明図、図6は従動かさ歯車の永久磁石の配置状態説明図である。
【0021】
図1,2において、Aはかさ歯車装置であり、原動かさ歯車1と従動かさ歯車2とを備えている。
【0022】
11は円錐台状ベースであり、前記原動かさ歯車1の主要部を構成している。この円錐台状ベース11は非磁性体であり、アルミニウム材によって形成されている。円錐台状ベース11を非磁性体にしたのは円錐台状ベース11本体の磁化を防止するためである。
【0023】
12は円錐台状ベース11の円錐面であり、この発明の回転伝達部に相当する。
13は磁石埋め込み用蟻溝であり、前記円錐台状ベース11の円錐面12に放射状に形成されている(図3を参照のこと)。この磁石埋め込み用蟻溝13の表面口元は約10°の逆テーパ状であり、前記円錐台状ベース11の円錐面の下端縁のみに開口している。14は永久磁石であり、前記磁石埋め込み用蟻溝13に前記下端開口から挿入され、接着剤(例えば、エポキシ系ボンド)により接着固定されている。この永久磁石14は、図4に示すように、前記磁石埋め込み用蟻溝13に隙間無く嵌挿できるように、断面の上端隅部が約10°のテーパ状である蟻溝状に形成されている。また、図5に示すように、隣合う永久磁石14,14,…の露出した部分は磁極が交互になるように配置されている。図3において、15は遮蔽板であり、前記磁石埋め込み用蟻溝13の底面と前記永久磁石14との間に介在している。この遮蔽板15は鉄製であり、前記円錐台状ベース11の裏側方向への磁力飛散を減少させるためのものである。16は磁石固定フランジであり、前記円錐台状ベース11の外周囲に前記下端開口を覆うようにして外嵌め固定されている。この磁石固定フランジ16は、回転時に前記円錐台状ベース11に遠心力が掛かっても、永久磁石14が前記下端開口から抜け落ちないようにしたものである。
【0024】
次に、従動かさ歯車2について説明するが、円錐台状ベース21、その円錐面22、磁石埋め込み用蟻溝23、永久磁石24、遮蔽板(図示せず)の構成は前記原動かさ歯車1の場合と同じである。従動かさ歯車2に、原動かさ歯車1における磁石固定フランジ16に相当するものがないのは従動かさ歯車2のテーパ角度が小さく永久磁石14の飛散方向に遠心力がかかりにくい為である。
【0025】
また、原動かさ歯車1と従動かさ歯車2の各々の円錐台状ベース11,21 に取り付けた永久磁石14,24 の内輪側と外輪側の周速が同じ比率になるように、図1に示すように、対向する従動かさ歯車2円錐面22の角度を26.57°にした。
【0026】
このように構成される原動かさ歯車1と従動かさ歯車2は、図1,2に示すように、各々の前記円錐台状ベース11の円錐面12(回転伝達部)を接近した状態(約 mmの空間)で配置され、放射状に延びた一対の対向する永久磁石14,14,…の吸引力によって、原動かさ歯車1から従動かさ歯車2へ回転を伝達するものである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
この発明は、高速回転を伝達できるにも関わらず、振動および騒音が発生せず、発熱もぜず、給油等の維持管理の必要もないため、その使用範囲を、従来に比し、極めて拡大することができるため、かさ歯車装置としての有効利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1はこの発明に係るかさ歯車装置の正面図である。
【図2】図2は同斜視図である。
【図3】図3は同分解斜視図である。
【図4】図4は永久磁石の斜視図である。
【図5】図5は原動かさ歯車の永久磁石の配置状態説明図である。
【図6】図6は従動かさ歯車の永久磁石の配置状態説明図である。
【符号の説明】
【0029】
A … かさ歯車装置
1 … 原動かさ歯車
11 … 円錐台状ベースで
12 … 円錐面
13 … 磁石埋め込み用蟻溝
14 … 永久磁石
15 … 遮蔽板
16 … 磁石固定フランジ
2 … 従動かさ歯車
21 … 円錐台状ベースで
22 … 円錐面
23 … 磁石埋め込み用蟻溝
24 … 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動かさ歯車と従動かさ歯車とを各々の回転伝達部を接近した状態で配置し、原動かさ歯車から従動かさ歯車へ回転を伝達するかさ歯車達装置において、前記原動かさ歯車および前記従動かさ歯車は、各々、非磁性体の円錐台状ベースを有し、互いに対向する一対の円錐台状ベースの円錐面を各々前記回転伝達部に該当させるとともにこれらの円錐面に互いに吸引する永久磁石を放射状に埋設し、この永久磁石を円錐台状ベースの円錐面に露出させたことを特徴とするかさ歯車装置。
【請求項2】
請求項1のかさ歯車装置において、前記円錐台状ベースの円錐面に磁石埋め込み用蟻溝を放射状に形成し、この磁石埋め込み用蟻溝を前記円錐台状ベースの円錐面の下端縁のみに開口させ、この下端開口から永久磁石を挿入したことを特徴とするかさ歯車装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のかさ歯車装置において、隣合う磁石の磁極を交互になるように配置したことを特徴とするかさ歯車装置。
【請求項4】
請求項1,請求項2又は請求項3のかさ歯車装置において、前記円錐台状ベースの外周囲に前記下端開口を覆うように磁石固定フランジを外嵌めしたことを特徴とするかさ歯車装置。
【請求項5】
請求項1,請求項2,請求項3又は請求項4のかさ歯車装置において、前記円錐台状ベースと前記永久磁石との間に磁力遮蔽板を介在させたことを特徴とするかさ歯車回転伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−203486(P2010−203486A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47459(P2009−47459)
【出願日】平成21年2月28日(2009.2.28)
【出願人】(509060730)株式会社サワイリエンジニアリング (3)
【Fターム(参考)】