説明

くず粉、わらび粉を主原料とする好ましい食感を持つ冷凍食品

【課題】 澱粉成分としてクズ粉、わらび粉を使用した澱粉のみを使用した食品に近いテクスチャー、味覚を有し、かつ冷凍保存してもテクスチャー、味覚を作りたてそのままに維持しうる、好ましい食感を持つ冷凍食品を提供しようとする。
【解決手段】 少なくとも、クズ粉、わらび粉から選択される澱粉と、糖類と、水とを加熱混練した後高電圧電場ブライン冷凍処理を施した食品で、前記糖類の含有比率が該食品の5〜20重量%である冷凍食品であり、前記糖類が、砂糖、トレハオース、オリゴ糖、糖アルコール、水飴、還元水飴から選択される冷凍食品であり、前記高電位電場ブライン冷凍処理が、0℃から−5℃の温度域を15分以内に通過し、−20から−50℃の温度範囲のいずれかに到るまで冷凍する処理である前記冷凍食品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クズ粉、わらび粉から選択される澱粉を含有する食品が冷凍された、好ましい食感を持つ冷凍食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ごま豆腐、くずきり等に使用されるクズ粉はその特有の食感が好まれる。又、わらび餅等に使われるわらび粉もその特有の食感、風味が好まれる。
【0003】
クズ粉、わらび粉は、ごま豆腐やわらび餅等の食品に加工された場合、急速に澱粉が老化し、食感が固くなり、その価値が落ちる。
【0004】
一方、クズ粉、わらび粉の代替品として加工澱粉が使用されている。加工澱粉は、澱粉構成糖のグルコースのフリーな水酸基をエステル化したエステル化澱粉、水酸基の水素原子をアルキル基と置換したエーテル化澱粉及び澱粉の水酸基同士が結合した架橋澱粉等があり、加工食品にはこれらが単独又は併用して用いられる。
【0005】
これらの加工澱粉を用いた加工食品は、風味、食感のうえでは、クズ粉、わらび粉を使用した食品に劣るものの、クズ粉、わらび粉を使用した食品に類似の風味、食感を有しかつ老化性が低いので、クズ粉、わらび粉を使用した食品の類似食品として用いられる。
【0006】
ごま豆腐、わらび餅、くずきり等のクズ粉、わらび粉を使用した食品はその風味、食感により商品の価値が評価されるため、老化防止を目的として加工澱粉を用いたこれらの食品の類似食品においても、クズ粉あるいはわらび粉をできるだけ多い比率で使用する必要がある。しかし、クズ粉あるいはわらび粉の比率が総澱粉の10重量%以上では加工食品に充分な老化防止性が得られないのが現状である。
【0007】
又、ごま豆腐、わらび餅、くずきり等の食品やその他のクズ粉、わらび粉を使用した食品の類似食品を市場に流通させるためには保存性の確保のためにレトルト殺菌や各種保存料の添加が必要となる。
【0008】
しかし、レトルト殺菌を行なうと、ごま豆腐は風味が著しく劣化し、わらび餅はテクスチャーが悪くなり、更に、製品に所謂レトルト臭が付き、品質を劣化させる。又、保存料の添加は、食の安全、安心を考えるとできるだけ避けたい。
【0009】
澱粉の老化を抑制する他の方法として、加工時の加水量を多くすることや、酵素類の導入(例えば特許文献1参照)、糖類、糖アルコール類、乳化剤の添加、不活性ガスとともに封印する(例えば特許文献2参照)、等がある。これらは、各々若干の効果を有するものの、これらの技術のみで澱粉食品の老化を抑えることはできない。又、過剰の糖類の添加は食品の甘味が強すぎて製品として不適なものしか得られない。
【特許文献1】特開2003−189892号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平9−193号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
かかる現状の問題に鑑み、本発明は、澱粉としてクズ粉、わらび粉のみを使用した食品に近いテクスチャー、味覚を有し、かつ冷凍保存してもテクスチャー、味覚を作りたてそのままに維持しうる、好ましい食感を持つ冷凍食品を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨とするところは、
少なくとも、
クズ粉、わらび粉から選択される澱粉と、
糖類と、
水とを加熱混練した後高電圧電場ブライン冷凍処理を施した食品であり、
前記糖類の含有比率が該食品の5〜20重量%である冷凍食品であることにある。
【0012】
又、本発明の要旨とするところは、
前記澱粉80重量部と、
前記糖類と、
前記澱粉以外の20重量部以下の澱粉と、
前記水とを加熱混練した後前記高電圧電場ブライン冷凍処理を施した前記冷凍食品であることにある。
【0013】
前記糖類は、砂糖、トレハオース、オリゴ糖、糖アルコール、水飴、還元水飴から選択され得る。
【0014】
前記高電圧電場ブライン冷凍処理は、0℃から−5℃の温度域を15分以内に通過し、−20から−50℃の温度範囲のいずれかに到るまで冷凍する処理であり得る。
【0015】
前記冷凍食品は、更に、ごま、ピーナッツ、くるみ、ヘーゼルナッツ、くり、ぎんなん、ピスタチオ、松の実、エンドウ、空豆、いんげんまめ、黒豆、小豆、さつまいも、チーズ、コーヒー、緑茶、紅茶、果実、果汁、からなる群から選択される1または2以上の材料を、固形状態、または粉粒状態またはペースト状態として含み得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、澱粉としてくず粉あるいはわらび粉という天然の澱粉のみ、あるいは加えて少ない含有比率の化工澱粉を使用して、従来のごま豆腐とほぼ同等のテクスチャー、味覚を有し、かつ冷凍保存してもテクスチャー、味覚、風味を作りたてそのままに維持しうる、好ましい食感を持つ冷凍食品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、味覚、風味、テクスチャーを作り立てそのままに低温下で保存しうる、クズ粉、わらび粉を使用した食品を冷凍した冷凍食品である。本発明の冷凍食品は、100重量部の、クズ粉、わらび粉から選択される澱粉と、5〜20重量部の糖類とを含む。あるいは、更に、前記澱粉以外の20重量部以下の澱粉を含む。又、本発明の冷凍食品を得るための冷凍方式としては高電圧電場(高電位電場)ブライン冷却方式による冷凍方式が用いられる。
【0018】
本発明の冷凍食品の製造においては、澱粉としてクズ粉あるいはわらび粉に由来の澱粉が用いられ、更に冷凍食品の総重量に対して5重量%以上の糖類が配合されることにより、製品の低温下での保存により堅くなってテクスチャーが損なわれる、ということがほとんどない。又、クズ粉あるいはわらび粉に由来の澱粉が含まれることにより、本発明の冷凍食品はクズ粉あるいはわらび粉に由来の独特な風味を持ち得る。但し、糖分の過剰な含有は食品に強い過ぎる甘味をもたらすので、糖類の配合は冷凍食品の総重量に対して20重量%以下であることが好ましい。
【0019】
糖類としては、砂糖、トレハオース、オリゴ糖、糖アルコール、水飴、還元水飴から選択されるものを用いることが出来るがこれらに限定されない。食品の甘味を抑える場合には水飴、還元水飴が使用されることが好ましい。
【0020】
又、本発明においては、更に、クズ粉あるいはわらび粉に由来の澱粉以外の澱粉を、クズ粉あるいはわらび粉に由来の澱粉100重量部に対して20重量部以下の比率で含有させても低温下での保存により堅くなってテクスチャーが損なわれることがほとんどなく、前述の独特な風味が充分発揮された冷凍食品を得ることが出来る。
【0021】
本発明の冷凍食品の製造においては、澱粉類と水分とを加熱混練するが、加熱温度は、100℃以下、好ましくは、90℃〜96℃の範囲が好ましい。この範囲であれば、加熱後において、風味が飛ばず、テクスチャーも良好な加熱加工品を製造することができる。
【0022】
本発明の冷凍食品の製造においては、澱粉類としてクズ粉あるいはわらび粉に由来の澱粉が単独で用いられてもよい。その両者が混合された混合物が用いられてもよい。この混合物80重量部に対してクズ粉あるいはわらび粉に由来の澱粉以外の澱粉を20重量部以下の比率で含有させて用いてもよい。
【0023】
本発明の冷凍食品の製造においては、クズ粉あるいはわらび粉に由来の澱粉80重量部に対する、クズ粉あるいはわらび粉に由来の澱粉以外の澱粉の比率が、20重量部を超えると、製品の、クズ粉あるいはわらび粉に特有の風味が損なわれる。
【0024】
本発明の冷凍食品は、その他、塩、酒類、だし等調味料を含み得る。更に、本発明の冷凍食品は、上記材料に加えて、ごま、ピーナッツ、くるみ、ヘーゼルナッツ、くり、ぎんなん、ピスタチオ、松の実、エンドウ、空豆、いんげんまめ、黒豆、小豆、さつまいも、チーズ、コーヒー、緑茶、紅茶、果実、果汁等を含み得る。これらは、これらから選択される1または2以上の材料の組み合わせで含まれ得る。これらの材料は、予備加熱され、及び/または乾燥状態のまま、固形状態、または粉粒状態またはペースト状態または液状態として含まれる。果実の例としては、カキ、リンゴ、ナシ、ブドウ、ウメが挙げられるがこれらに限定されない。果汁はこれら等の果実から得られる。
【0025】
さらに、本発明の冷凍食品は、水分として、豆乳、牛乳、練乳、粉乳、ココナッツミルク、だし汁や、にんじん、あしたば、リンゴ、ぶどう、梅等の果汁、等を含み得る。
【0026】
上記材料の組み合わせにより、本発明の冷凍食品の各々の、味、テクスチャー、が決定される。
【0027】
上記材料を混合し、好ましくは100℃以下で加熱混練して、本発明の冷凍食品は、製造される。
【0028】
加熱時間は、澱粉類、およびその他添加する、種子類や、糖類等の食材の加工度により選択しうる。これらの添加量によっても選択され得る。
【0029】
上記加熱方法によれば、ごま、くるみ等のナッツ類や、緑茶、コーヒー等の嗜好品等のように加熱によりテクスチャーの失われやすい食材も、テクスチャーを保持することができる。上記のように加熱加工された冷凍食品は、pH調製剤、酸化防止剤等の食品添加物の添加を必要としない。また、レトルト食品のように、120℃以上の加熱を必要としない。
【0030】
上記加熱加工された冷凍食品は、容器にシール加工され、好ましくは、室温まで自然冷却される。
【0031】
その後、冷却された密封容器中の冷凍食品は、急速冷凍される。具体的には、最大氷結生成帯(0℃〜−5℃)を通過する時間を15分以内に冷却する。例えば、高電圧電場ブライン冷却法が好適に用いられる。「高電圧電場ブライン」とは、電極の1本をブライン内に挿入したブライン冷却装置および高電圧電場発生手段を用いて、ブラインに高電圧電場を与えながら調理食品を冷却する方法をいう。ブラインの温度は−20℃〜−50℃の範囲で、高電圧電場発生手段の電位は5〜50kVを発生させるのが好ましい。このとき用いる冷却装置の概略は、以下のようなものである。すなわち、ブライン冷却装置のブライン内に高電圧電場発生手段の2本ある電極の一方を挿入する。電極のもう一方は、ブライン冷却装置のブライン内に挿入せず、絶縁処理を行い、2本の電極間に電流が流れないようにする。これらの電極は、特公昭38―6106号公報に示されているような高周波電位発生装置の2次側に接続されている。ブラインは、冷却装置に接続した冷凍機を用いて冷却し、駆動モータを使用した循環装置を用いてブラインを循環させることにより、ブラインの入っている槽内の温度を一定に保持する。冷凍装置、高電圧電場発生手段、及び循環装置の駆動モータはそれらの設置に際し、床面と各装置との間は絶縁碍子を支持体として用いる。
【0032】
ブラインに用いる不凍剤は目的の温度で凍結しないものであれば、特に限定はなく、例えば、塩化カルシウム、エチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール等、およびこれらの混合物またはこれらと水との混合物が挙げられる。例えば、水とエタノールの混合液が挙げられる。
【0033】
密封包装は、ブライン冷凍するためと、調味液を共に包装することにより、後の解凍および調理を同時に行うことができるためである。
【0034】
高電圧電場を与えて冷凍する工程により、凍結の際に低下する冷凍食品の温度が、最大氷結晶生成帯である0℃〜−5℃をより速く通過させることができる。このため、澱粉類に含まれる水分によって形成された氷結晶の成長を抑制し、これにより組織破壊を防止し、解凍したとき澱粉類が有する弾力のある状態を保つことができる。
【0035】
以下に、本発明の効果を説明するために実験例を示す。
[実験例1]
次の水準で冷凍ごま豆腐を試作した。
原料(A)配合:
No.1 くず粉8重量部、化工澱粉(タピオカ澱粉のエーテル化品(松谷化学工業(株)製 商品名:松谷やよい))92重量部
No.2 くず粉50重量部、甘藷澱粉50重量部
No.3 くず粉100重量部
No.4 くず粉84重量部、甘藷澱粉16重量部
ごま豆腐用原料配合:
原料(A) 70gr
練りごま((株)大村屋製) 90gr
料理酒 ((株)宝酒造製) 30ml
砂糖 60gr
食塩 8gr
水 550ml
【0036】
冷凍ごま豆腐の試作は次のように行なった。
【0037】
まず、鍋に原料(A)を入れ、水を少しづつ入れながら分散させ、料理酒、食塩を適量加えたのち、やや強火で木のしゃもじでよくかき混ぜながら半透明のペーストになるまで加熱する。そこへ練りごまを加え、中火で充分練り混ぜて、所定形状の耐冷凍容器に入れて室温まで冷却後、シールして冷凍する。得られたごま豆腐の重量は約700grであった。
【0038】
冷凍は20KVの高電圧電場を付した55%アルコールブライン冷凍(−35℃)により行ない、この冷凍品は−35℃で7日間保存後、室温解凍して各々の試料について品質評価を行なった。
【0039】
No.1〜4の原料(A)によるごま豆腐はいずれも商品として充分使えることがわかった。又、これらのごま豆腐はいずれも澱粉の種類による固有の特徴がでているが、No.3によるごま豆腐が3者のうち最も高級感があった。
【0040】
品質評価の結果を表1に示す。品質評価は、各項目につき5点法(1点:最も悪い、2点:悪い、3点:普通、4点:良い、5点:非常に良い;(4´は3と4の中間))により行なった。表1の値はパネラー5名による平均点を示す。
【0041】
【表1】

【0042】
[実験例2]
次の水準で冷凍ごま豆腐を試作した。
原料(B)
(イ)くず粉70gr、砂糖28gr(ごま豆腐全重量に対して約4重量%)
(ロ)くず粉70gr、砂糖49gr(ごま豆腐全重量に対して約7重量%)
(ハ)くず粉70gr、砂糖70gr(ごま豆腐全重量に対して約10重量%)
ごま豆腐用原料配合:
原料(B) 全量
練りごま((株)大村屋製) 90gr
料理酒 ((株)宝酒造製) 30ml
食塩 10gr
水 550ml
冷凍ごま豆腐の試作は実験例1に準じて行なった。得られたごま豆腐の重量は約700grであった。
【0043】
冷凍は20KVの高電圧電場を付した55%アルコールブライン冷凍(−35℃)(BR)により行ない、この冷凍品は−35℃で7日間保存後、15℃冷水で電圧解凍した。なお、対照の従来の一般冷凍方法として−35℃の棚式エアブラスト方式(AR)を用い、上記のアルコールブライン冷凍の実施と併行して試料の冷凍を行なった。この冷凍品も−35℃で7日間保存同様に解凍した。
【0044】
一般冷凍方法による冷凍解凍品は、すべてテクスチャーが硬く、ボソボソとした感じであり、商品としては不可であった。
アルコールブライン冷凍方法による冷凍解凍品は、
水準(ロ)が風味、テクスチャーとも良好であったが、醤油で試食するとやや甘い感じであった。
水準(ハ)はテクスチャーとも良好であった。水準(ロ)よりもやや弾力性がある。
水準(イ)は水準(ロ)、(ハ)に比べて切り口のしわが多く、水準(ロ)、(ハ)に比べてテクスチャーがやや劣る。
【0045】
品質評価の結果を表2に示す。品質評価は、各項目につき5点法(1点:最も悪い、2点:悪い、3点:普通、4点:良い、5点:非常に良い)により行なった。表2の値はパネラー5名による平均点を示す。
【0046】
【表2】

【0047】
[実験例3]
糖の種類と配合比率を変えたほかは実験例2に準じて冷凍ごま豆腐を試作した。
原料(C)
(イ)くず粉70gr、糖28gr(ごま豆腐全重量に対して約4重量%)
(ロ)くず粉70gr、糖56gr(ごま豆腐全重量に対して約8重量%)
ごま豆腐用原料配合:
原料(C) 全量
練りごま((株)大村屋製) 90gr
料理酒 ((株)宝酒造製) 30ml
食塩 10gr
水 550ml
得られたごま豆腐の重量は約700grであった。品質評価の結果を表3に示す。品質評価は各項目につき5点法で行いパネラー5名による平均点を示す。
【0048】
【表3】

【0049】
高電圧電場ブライン冷凍品は
テクスチャーに関しては、
1.還元水飴、水飴は4重量%でもテクスチャー良好である。8重量%では最も良い。
2.トレハロースは4重量%でもテクスチャーが許容出来る。8重量%では良い。
3.砂糖は4〜8重量%の範囲においてテクスチャーが許容出来るが、甘味が強くなるので8重量%ではごま豆腐に不向きである。
4.ソルビトールは4〜8重量%の範囲においてテクスチャーが悪い。
・従って、還元水飴、水飴はテクスチャーに最も優れる。次いでトレハロースが優れる。その次に砂糖が良い。ソルビトールは悪い。
しわに関しては、還元水飴、水飴、ソルビトールが(4〜8重量%の範囲においては)含有率にかかわらず良い。砂糖はやや悪いが、砂糖を同量添加した従来冷凍のものよりは良い。
従来冷凍品は、
テクスチャーに関しては、いずれの糖を用いても砂糖4重量%では悪い。(あるいはやや悪い。)又、8重量%添加しても少しは改良されるが、ごま豆腐特有のプリプリ感は出ない。
しわに関しては、
1.砂糖が4〜8重量%の範囲において悪い。
2.トレハロースが4重量%で悪い。8重量%ではやや悪い。
3.ソルビトールは4〜8重量%の範囲において良く、糖アルコールが良いことを示している。
4.還元水飴は4〜8重量%の範囲において悪い。
5.水飴は4〜8重量%の範囲においてやや悪い。
総合的にみて、高電圧電場ブライン冷凍品では4〜8重量%の範囲において還元水飴、水飴が最も優れる。トレハロース、砂糖が4〜8重量%の範囲において品質が許容できる。ソルビトールは悪い。従来冷凍品はいずれの糖を用いても4〜8重量%の範囲において許容できる品質が得られない。但し、砂糖は甘味質は良いが、甘味質度が強いので、砂糖8重量%ではごま豆腐としては甘すぎるので、他の糖類との併用が望ましい。.
【0050】
実験例1〜3より、澱粉としてくず粉のみを用い、くず粉100重量部に対して糖類を4〜8重量部添加することにより、テリ、ツヤ、色調、テクスチャー、味にすぐれ、従来の出来立てのごま豆腐に比べて遜色のない冷凍ごま豆腐が高電圧電場ブライン冷凍方法により得られることがわかる。しかし、例えば、くず粉100重量部に対して糖(水飴)を7重量部添加し高電圧電場ブライン冷凍方法により得られた冷凍ごま豆腐が、解凍後3日程度で離水が起こることがわかった。もちろん、従来冷凍ではテクスチャーは弱く、豆腐様となり、ツヤもなく、断面に巣が入るのに対し、高電圧電場ブライン冷凍方法ではテリ、ツヤも良く、断面の巣は殆んどない。
【0051】
この離水性に鑑みた実験を実施すべく次の水準で冷凍ごま豆腐を試作した。
[実験例4]
原料(D)
(AA)くず粉70gr、糖49gr
(BB)くず粉84gr、糖49gr
(CC)くず粉70gr、糖70gr
(DD)くず粉84gr、糖70gr
ここで、糖としては水飴とトレハロースを重量比1:1で混合したものを用いた。(水飴の重量は乾燥重量)
ごま豆腐用原料配合:
原料(D) 全量
練りごま((株)大村屋製) 90gr
料理酒 ((株)宝酒造製) 30ml
食塩 7gr
水 550ml
冷凍ごま豆腐の試作は実験例1に準じて行なった。得られたごま豆腐の重量は約700grであった。
冷凍は20KVの高電圧電場を付した55%アルコールブライン冷凍(−35℃)(BR)により行ない、この冷凍品は−20℃で5日間保存後、室温解凍した。
【0052】
品質評価の結果を表4に示す。品質評価は各項目につき5点法(1点:悪い、2点:やや悪い、3点:普通、4点:良い、5点:非常に良い)で行いパネラー5名による平均点を示す。
【0053】
【表4】

【0054】
実験例4の結果から、くず粉70grあるいは84grに対して糖70grにしたもの、と、くず粉84grに対して糖49grにしたものが、離水が少なく、キメの細かさ、テリ、ツヤ及びテクスチャーがよくなることがわかった。
【0055】
水準DDはやや甘味が強いので、糖量は食品の総重量に対して8〜9重量%であることが好ましい。又、テクスチャーではプリプリ感が強いので、原料(D)には、食品700grについてくず粉77gr、食品全重量に対して糖7〜10重量%が配合されることが更に好ましい。
【0056】
次に、わらび粉をくず粉の代わりに用いて、くず粉使用の場合(実験例4)と同様にしてごま豆腐を試作してその評価を行なった。
[実験例5]
原料(E)
(AA´)わらび粉70gr、糖49gr
(BB´)わらび粉84gr、糖49gr
(CC´)わらび粉70r、糖70gr
(DD´)わらび粉84gr、糖70gr
ごま豆腐用原料配合:
原料(E) 全量
練りごま((株)大村屋製) 90gr
料理酒 ((株)宝酒造製) 30ml
食塩 7gr
水 550ml
冷凍ごま豆腐の試作は実験例1に準じて行なった。
冷凍は20KVの高電圧電場を付した55%アルコールブライン冷凍(−35℃)(BR)により行ない、この冷凍品は−20℃で6日間保存後、室温解凍した。又、実験例2におけると同様の従来冷凍も並行して各水準につき実施した。
【0057】
高電圧電場ブライン冷凍品の品質評価の結果を表5に示す。品質評価は各項目につき5点法(1点:悪い、2点:やや悪い、3点:普通、4点:良い、5点:非常に良い(5´は4と5の中間))で行いパネラー5名による平均点を示す。
【0058】
【表5】

【0059】
実験例5の結果から、わらび粉を使用したごま豆腐は、くず粉を使用したごま豆腐に比べて、テリ、ツヤ、キメの細かさ及び離水性において優れ、テクスチャーもよくなることがわかった。
【0060】
これら水準中、ごま豆腐中のわらび粉含有比率が多いものは、プリプリ感が強く、くず粉を使用したごま豆腐に比べてテクスチャーが特徴的である。
【0061】
糖の含有比率はくず粉を使用したごま豆腐におけると同様に大きく品質に影響する。AA´よりCC´が、BB´よりDD´がテリ、ツヤでは良く、テクスチャーではわらび粉のプリプリ感が良く出る。
【0062】
しかし、ごま豆腐中のわらび粉含有比率が多くなると、キメの細かさ及び離水性では糖濃度があまり関与しない。ごま豆腐中のわらび粉含有比率がすくない場合は多い場合よりも糖濃度が大きく品質に影響する。
【0063】
冷凍法による品質の差異はくず粉を使用したごま豆腐の場合ほどではなかったが、差はあり、特にテリ、ツヤ、キメの細かさの点で高電圧電場ブライン冷凍品が従来冷凍品よりすぐれていた。
【0064】
以上本発明の冷凍食品及びその製造方法の態様を説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものであり、これらの態様はいずれも本発明の範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の冷凍食品の製造方法によれば、くず粉、わらび粉のような独特の風味の天然澱粉を主原料とする加工食品を作りたてのテクスチャーそのままに1年間ほどの長期冷凍保存が可能であり、冷水電圧解凍、電子レンジ解凍、自然解凍等の方法により室温に戻すことにより、容易に作り立てそのままの味覚、テクスチャーを味わうことができる。従ってくず粉、わらび粉のような天然澱粉を主原料とする加工食品の流通、保存、保管が容易である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
クズ粉、わらび粉から選択される澱粉と、
糖類と、
水とを加熱混練した後高電圧電場ブライン冷凍処理を施した食品であり、
前記糖類の含有比率が該食品の5〜20重量%である冷凍食品。
【請求項2】
前記澱粉80重量部と、
前記糖類と、
前記澱粉以外の20重量部以下の澱粉と、
前記水とを加熱混練した後前記高電圧電場ブライン冷凍処理を施した請求項1に記載の冷凍食品。
【請求項3】
前記糖類が、砂糖、トレハオース、オリゴ糖、糖アルコール、水飴、還元水飴から選択される請求項1又は2に記載の冷凍食品。
【請求項4】
前記高電圧電場ブライン冷凍処理が、0℃から−5℃の温度域を15分以内に通過し、−20から−50℃の温度範囲のいずれかに到るまで冷凍する処理である請求項1乃至3のいずれかに記載の冷凍食品。
【請求項5】
更に、ごま、ピーナッツ、くるみ、ヘーゼルナッツ、くり、ぎんなん、ピスタチオ、松の実、エンドウ、空豆、いんげんまめ、黒豆、小豆、さつまいも、チーズ、コーヒー、緑茶、紅茶、果実、果汁からなる群から選択される材料を、固形状態、または粉粒状態またはペースト状態として含む、請求項1乃至4のいずれかに記載の冷凍食品。

【公開番号】特開2006−149238(P2006−149238A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341428(P2004−341428)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(502103313)
【出願人】(501376741)有限会社モリタフードテクノ (2)
【Fターム(参考)】