説明

ころ軸受

【課題】ころ軸受の鍔部の摩耗やかじりを抑制する。
【解決手段】本発明のころ軸受5は、外輪軌道面13b1,13b2を有する外輪13と、前記外輪軌道面に対向する内輪軌道面12b1,12b2を有する内輪12と、外輪軌道面と内輪軌道面との間に配置された複数の円筒ころ141,142とを備える。外輪13は、円筒ころ141,142の軸方向一端面に点接触する外輪鍔部13aを外輪軌道面13bに備え、円筒ころ141,142と外輪鍔部13aとの接触位置Poが、円筒ころ141,142の軸心O1,O2上に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば連続鋳造装置のロール支持用として使用されるころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、連続鋳造装置の鋳片搬送経路を構成するサポートロール、ガイドロール、ピンチロール等は、鋳片から受けるラジアル荷重とロールの熱膨張によるアキシアル荷重とを支持可能な転がり軸受によって支持されている。
ロールの固定側端部を支持する転がり軸受として、従来は自動調心ころ軸受が用いられることが多かったが、この自動調心ころ軸受は、ころの差動すべりによって軌道面が偏摩耗するという問題がある。このため、近年は、自動調心ころ軸受に代えて調心輪付き円筒ころ軸受が採用されつつある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−208053号公報(図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記調心輪付き円筒ころ軸受は、内周に凹状の球面を有して軸受ハウジングに取り付けられる調心輪と、内周に外輪軌道面を有しかつ外周に凸状の球面を有して、その外周が調心輪の内周に取り付けられる外輪と、外周に内輪軌道面を有してロール軸の外周面に嵌合する内輪と、外輪軌道面と内輪軌道面との間に転動可能に設けられた円筒ころとを備えており、円筒ころは、外輪軌道面の軸方向両側に設けられた外輪鍔部と、内輪軌道面の軸方向両側に設けられた内輪鍔部とによって軸方向の移動が規制されている。そして、ロールの熱膨張によるアキシアル荷重は、内輪の軸方向一方側の内輪鍔部から円筒ころを介して外輪の軸方向他方側の外輪鍔部に伝達され、軸受ハウジングによって受け持たれている。
【0005】
ロールの固定側端部を調心輪付き円筒ころ軸受で支持した場合、超低速回転や高荷重に起因して潤滑不良が生じると、アキシアル荷重を受ける鍔部において摩耗やかじりといった軸受損傷が発生する。特に、鍔部が径方向に延在する平面で、かつ円筒ころの端面が径方向に延在する平面であり、鍔部と円筒ころとが面接触している場合は潤滑不良が顕著となり、軸受損傷が生じ易くなる。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、効果的に鍔部の摩耗やかじりを抑制することができるころ軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のころ軸受は、第1軌道面を有する第1軌道輪と、前記第1軌道面に対向する第2軌道面を有する第2軌道輪と、前記第1軌道面と前記第2軌道面との間に配置された複数のころと、を備え、前記第1軌道輪が、前記ころの軸方向一端面に点接触する第1鍔部を備え、前記ころと前記第1鍔部との接触位置が、前記ころの軸心上に設定されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、ころの軸方向一端面と第1鍔部とが点接触するので、これらの接触位置の周囲に油を導入しやすくなり、潤滑不良に起因する摩耗やかじりを抑制することが可能となる。
また、鍔部の摩耗やかじりは、ころとの接触位置に生じる面圧(P)と、鍔部ところとの相対的なすべり速度(V)との影響を受けるが、本発明では、第1鍔部ところとの接触位置がころの軸心上に設定されているので、ころの回転(自転)による相対的なすべり速度を小さくすることができ、これによって第1鍔部の摩耗やかじりを抑制することが可能となる。
【0009】
なお、本願発明者は、連続鋳造装置で使用されるような超低速回転下でラジアル荷重及びアキシアル荷重を受けるころ軸受においては、内輪の鍔部よりも早期に外輪の鍔部に摩耗やかじりが生じることを知見した。そのため、上記第1軌道輪をころ軸受の外輪とした場合には、当該外輪ところとの接触位置がころの軸心上に設定されることによって、従来(例えば、特許文献1)よりも外輪の内径側でころが外輪の鍔面(第1鍔面)に点接触することになり、外輪に対するころの回転(公転)による相対的なすべり速度をも小さくすることが可能となる。したがって、外輪ところとのすべり接触に起因する摩耗やかじりをより効果的に抑制することができる。
【0010】
上記構成において、第2軌道輪は、前記ころの軸方向他端面に点接触する第2鍔部を備えていてもよく、前記ころと前記第2鍔部との接触位置は、前記ころの軸心上に設定されていてもよい。
この場合、第2鍔部ところとが点接触するので、両者の接触位置の周囲に油を導入しやすくなり、潤滑不良に起因する摩耗やかじりを抑制することが可能となる。
また、第2鍔部ところとの接触位置がころの軸心上に設定されるので、ころの回転(自転)による相対的なすべり速度が小さくなり、第2鍔部の摩耗やかじりを抑制することが可能となる。
さらに、ころは、第1鍔部及び第2鍔部との双方に対してその軸心上で点接触するので、軸の熱膨張等に起因して付与されるアキシアル荷重は、一方の鍔部から他方の鍔部へところの軸心上において伝達される。このため、当該アキシアル荷重によってころに傾きが生じることが少なくなり、ころの回転を安定させることができるとともに、鍔部やころの摩耗を少なくすることが可能となる。
【0011】
なお、本発明において、「点接触」は、例えば平坦面と球面との接触のように、接触面に対して垂直方向の荷重を受けると楕円接触面を生じるような接触状態を含む。
また、本発明においては、例えば、下記(a)に示す形態のころの端面と、下記(b)又は(c)に示す形態の第1,第2鍔部の鍔面との点接触とすることができる。
(a)ころの軸心を含む断面の形状が、ころの軸心位置において微分可能な凸状の曲線(連続性のある滑らかな凸状の曲線;円弧を含む)であり、かつ、ころの軸心位置における接線方向が、ころの軸心方向に対して垂直である端面(特に、ころの軸心を含む断面の形状が、ころの軸心位置の近傍においてころの軸心に関して線対称な曲線(円弧を含む)となる端面。)
(b)ころの軸心上においてころの端面に接触する部分が、ころの軸心に対して垂直な鍔面。
(c)第1,第2軌道輪の軸心を含む断面の形状が、ころの軸心上でころの端面に接触する部分において微分可能な凸状又は凹状の曲線(連続性のある滑らかな凸状又は凹状の曲線;円弧を含む)であり、かつ、当該部分の接線方向がころの軸心方向に対して垂直である鍔面(特に、第1,第2軌道輪の軸心を含む断面の形状が、ころの端面に接触する部分の近傍においてころの軸心方向に関して線対称な曲線(円弧を含む)となる鍔面)。
すなわち、本発明においては少なくともころの端面が上記(a)のような凸状の曲面(球面を含む)であればよい。また、上記(a)のような凸状の曲面とされる部分は、ころの端面の全体であってもよいし、ころの軸心を含む一部の範囲であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ころ軸受における鍔部の摩耗やかじりを効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るころ軸受を適用した連続鋳造装置の成形用ロール1の端部を示す断面図である。成形用ロール1の固定側端部である軸方向一端部(右端部)1aは、調心輪付きの円筒ころ軸受5によって回転自在に支持され、成形用ロール1の自由側端部である軸方向他端部(左端部)は、図示しない調心輪付きの円筒ころ軸受等によって回転自在で、軸方向移動可能かつ揺動可能に支持されている。
【0014】
この実施形態における円筒ころ軸受5は、保持器を備えない総ころタイプであり、ロール1の端部1aの外周面に嵌合される内輪12と、内輪12に軸方向に隣接して配置された鍔輪11aと、軸受ハウジング15に固定された調心輪17と、この調心輪17の内周面に揺動可能に支持された外輪13と、外輪13と内輪12との間に2列に配置された複数の円筒ころ141,142を備えている。内輪12と鍔輪11aとは、止め輪16によって軸方向の位置決めがなされている。
【0015】
図2は、円筒ころ軸受5を拡大して示す断面図である。なお、円筒ころ軸受5に関する以下の説明において、軸方向外方(軸方向外側)とは、円筒ころ軸受5の軸方向中央位置から軸方向両側へ向かう方向をいい、軸方向内方(軸方向内側)とは、円筒ころ軸受5の軸方向両側から軸方向中央位置に向かう方向をいう。
【0016】
内輪12の外周には2列の内輪軌道面12b1,12b2が形成され、内輪軌道面12b1の軸方向一方(図2の左側)の側部には、径方向外方へ突出する内輪鍔部12aが形成されている。内輪12の軸方向他方(図2の右側)には鍔輪11aが隣接して配置され、この鍔輪11aの径方向外端部は内輪軌道面12b2よりも径方向外方へ突出している。
【0017】
外輪13の内周には2列の外輪軌道面13b1,13b2が形成され、この外輪軌道面13b1,13b2の間には、径方向内方へ突出する外輪鍔部13aが形成されている。また、外輪13の外周には凸円弧状の被案内面13cが形成され、この被案内面13cは、調心輪17の内周に形成された凹円弧状の案内面17aに摺動(揺動)可能に嵌合されている。外輪13及び調心輪17の軸方向中央部には、径方向に貫通する給脂孔18が形成されている。給脂孔18は外輪鍔部13aの径方向内端部において開口している。
【0018】
円筒ころ141は、内輪軌道面12b1と外輪軌道面13b1との間に配置され、内輪軌道面12b1及び外輪軌道面13b1上を転動可能である。円筒ころ141の軸方向両端面141aは凸状の球面に形成され、軸方向外方に円弧状に膨出している。軸方向両側の端面141aの曲率半径は同一であり、これら端面141aの曲率中心はいずれも円筒ころ141の軸心(回転中心)O1上に位置している。
【0019】
円筒ころ141の両端面141aの曲率中心は、それぞれ、図2に示すように当該端面141aから円筒ころ141の軸方向の中心を超えたところに位置している。言い換えると、各端面141aの球面の半径b11,b21は、円筒ころ141の軸方向長さの半分a11,a21(但しa11=a21)よりも大きく形成されている。
【0020】
円筒ころ142は、内輪軌道面12b2と外輪軌道面13b2との間に配置され、内輪軌道面12b2及び外輪軌道面13b2上を転動可能である。円筒ころ142の軸方向両端面142aは凸状の球面に形成され、軸方向外方に円弧状に膨出している。軸方向両側の端面142aの曲率半径は同一であり、これら端面142aの曲率中心はいずれも円筒ころ142の軸心(回転中心)O2上に位置している。円筒ころ142の両端面142aの曲率中心は、それぞれ、図2に示すように当該端面から円筒ころ142の軸方向長さの中心を超えたところに位置している。言い換えると、各端面142aの球面の半径b12,b22は、円筒ころ141の軸方向長さの半分a12,a22(但しa12=a22)よりも大きく形成されている。円筒ころ142は、円筒ころ141と同じ形状に形成されている。
【0021】
円筒ころ141の軸方向各端面141aは、内輪鍔部12aの軸方向内側面12a1及び外輪鍔部13aの軸方向外側面13a1(以下、これらを鍔面という)に接触している。
具体的に、内輪鍔部12aの鍔面(内輪鍔面)12a1及び外輪鍔部13aの鍔面(外輪鍔面)13a1は、円筒ころ141の軸心O1に垂直な平坦面に形成されており、それぞれ位置Pi1及びPo1において円筒ころ141に接触楕円を介して点接触している。そして各位置Pi1及びPo1は、それぞれ円筒ころ141の軸心O1上に配置されるように設定されている。また、内輪鍔部12a及び外輪鍔部13aは、それぞれ接触位置Pi1,Po1よりも径方向外方及び径方向内方に延びている。
【0022】
円筒ころ142の軸方向各端面142aは、鍔輪11aの軸方向内側面11a1及び外輪鍔部13aの軸方向外側面13a2(以下、これらを鍔面という)に接触している。
具体的に、鍔輪11aの鍔面(鍔部鍔面)11a1及び外輪鍔部13aの鍔面(外輪鍔面)13a2は、円筒ころ142の軸心O2に垂直な平坦面に形成されており、それぞれ位置Pi2及びPo2において円筒ころ142に接触楕円を介して点接触している。そして各位置Pi2及びPo2は、それぞれ円筒ころ142の軸心O2上に配置されるように設定されている。また、鍔輪11a及び外輪鍔部13aは、それぞれ接触位置Pi2,Po2よりも径方向外方及び径方向内方に延びている。なお、円筒ころ142の軸心O2から内輪12及び外輪13の軸心までの距離は、円筒ころ141の軸心O1から内輪12及び外輪13の軸心までの距離と同一とされている。
【0023】
連続鋳造装置のロール装置において、成形用ロール1が軸方向に熱膨張すると、内輪12には成形用ロール1から矢印Xで示す方向にアキシアル荷重がかかる。このアキシアル荷重は、内輪鍔部12aから円筒ころ141を介して外輪鍔部13aへと伝わり、調心輪17を介して軸受ハウジング15(図1参照)によって受け持たれる。
内輪鍔面12a1及び外輪鍔面13a1は、円筒ころ141に対してその軸心O1上の位置Pi1,Po1で接触しているので、当該アキシアル荷重は円筒ころ141の軸心O1上において伝達されることになる。そのため、当該アキシアル荷重に起因して円筒ころ141に傾きが生じることが少なくなり、円筒ころ141の回転を安定させることができるとともに、鍔面12a1,13a1や円筒ころ141に摩耗が生じることも少なくなる。
【0024】
また、連続鋳造装置のロール装置において、成形用ロール1が軸方向に熱収縮すると、内輪12には成形用ロールから矢印Xとは反対方向にアキシアル荷重がかかる。このアキシアル荷重は、鍔輪11aから円筒ころ142を介して外輪鍔部13aへと伝わり、調心輪17を介して軸受ハウジング15によって受け持たれる。
鍔輪鍔面11a1及び外輪鍔面13a2は、円筒ころ142に対してその軸心O2上の位置Pi2,Po2で接触しているので、当該アキシアル荷重は円筒ころ142の軸心O2上において伝達されることになる。そのため、当該アキシアル荷重に起因して円筒ころ142に傾きが生じることが少なくなり、円筒ころ142の回転を安定させることができるとともに、鍔面11a1,13a2や円筒ころ142に摩耗が生じることも少なくなる。
【0025】
また、一般に、アキシアル荷重が負荷される内輪鍔面12a1及び外輪鍔面13a1、並びに鍔輪鍔面11a1及び外輪鍔面13a2の摩耗やかじり(焼き付き)は、各鍔面12a1,13a1、11a1,13a2と円筒ころ141,142との間の面圧(P)と両者の相対的なすべり速度(V)との影響を受ける。したがって、この面圧(P)とすべり速度(V)との積(以下、PV値という)を下げれば、鍔面12a1,13a1、11a1,13a2の摩耗やかじりを抑制することができるといえる。
本実施形態では、内輪鍔面12a1及び外輪鍔面13a1、並びに鍔輪鍔面11a1及び外輪鍔面13a2が円筒ころ141,142の端面141a,142aに対して軸心O1,O2上の位置Pi1,Po1、Pi2,Po2で接触しているので、例えば円筒ころ141,142の端面141a,142aの外周側で接触する場合に比べて、円筒ころ141,142の自転による鍔面12a1,13a1、11a1,13a2に対する相対的なすべり速度(V)を小さくすることができる。これによって、PV値を下げることが可能となり、鍔面12a1,13a1、11a1,13a2の摩耗やかじりを抑制することができる。
【0026】
また、本願発明者は、耐久試験等を行うことによって、連続鋳造装置のように超低速回転下でラジアル荷重及びアキシアル荷重を受けるころ軸受においては内輪鍔面12a1や鍔輪鍔面11a1よりも早期に外輪鍔面13a1,13a2に摩耗やかじりが生じることを知見した。このため、本実施形態では、外輪鍔面13a1,13a2と円筒ころ141,142との接触位置Po1,Po2を軸心O1,O2上に設定することによって、当該接触位置Po1,Po2を従来(例えば、特許文献1記載の調心輪付き円筒ころ軸受)よりも外輪鍔面13a1,13a2の内径側に配置し、外輪13に対する円筒ころ141,142の公転による相対的なすべり速度をも低減している。これによって、外輪鍔面13a1,13a2の摩耗等を効果的に抑制することができる。
【0027】
以上によって、円筒ころ軸受5の耐久性を高めることができ、円筒ころ軸受5の交換周期を長くしてメンテナンスコストの低減を図ることが可能となる。
なお、内輪鍔面12a1や鍔輪鍔面11a1は、円筒ころ141,142との接触位置Pi1,Pi2が従来よりも外径側となるため、円筒ころ141,142の公転による相対的なすべり速度が若干増大するが、前述したように円筒ころ141,142の自転によるすべり速度が低減すること、および、外輪鍔面13a1,13a2に比べて摩耗等が生じにくいことによって、円筒ころ軸受5の耐久性に及ぼす影響は少なくなる。
【0028】
また、内輪鍔部12a、鍔輪11a、及び外輪鍔部13aは、それぞれ接触位置Pi1,Pi2,Po1,Po2よりも径方向外方及び径方向内方に延びており、これによって内輪鍔部12a、鍔輪11a、及び外輪鍔部13aの先端エッジが円筒ころ141,142の端面141a,142aに接触することによるエッジロードの発生を抑制することができる。
なお、本実施形態において、外輪13の軸方向両側に外輪鍔部を形成し(一方が鍔輪であってもよい)、内輪12の軸方向中央に内輪鍔部を形成してもよい。
【0029】
図3は、本発明の第2実施形態に係る円筒ころ軸受5の断面図である。本実施形態の円筒ころ軸受5は、軸方向一方側のみにアキシアル荷重を受けることができる構造に形成されている。円筒ころ軸受5は、内輪12及び外輪13が、軸方向に1列の内輪軌道面12b及び外輪軌道面13bを備えており、これら内輪軌道面12b及び外輪軌道面13bの間に1列の円筒ころ14が転動可能に配置されたものである。そして、内輪軌道面12bの軸方向一方側(図3の左側)には径方向外方に突出する内輪鍔部12aが形成されている。また、外輪軌道面13bの軸方向他方側(図3の右側)には径方向内方に突出する外輪鍔部13aが形成されている。外輪13の軸方向中央部には径方向に貫通する給脂孔18が形成されており、この給脂孔18は外輪軌道面13bに開口している。
【0030】
円筒ころ14は、第1の実施形態の円筒ころ141,142と同様に、両端面が球面に形成されている。円筒ころ14の両端面14aの曲率中心は、それぞれ当該端面14aから円筒ころ14の軸方向の中心を超えたところに位置している。言い換えると、各端面14aの球面の半径b1,b2は、円筒ころ14の軸方向長さの半分a1,a2(但し、a1=a2)よりも大きく形成されている。
【0031】
円筒ころ14は、その左端部が左側の内輪鍔部12aの右側面(内輪鍔面12a1)に点接触し、その右端部が外輪鍔部13aの左側面(外輪鍔面13a1)に点接触している。そして、円筒ころ14と内輪鍔面12a1及び外輪鍔面13a1との接触位置Pi,Poは、いずれも円筒ころ14の軸心O1上に配置されている。したがって、本実施形態においても上記と同様の作用効果を奏する。
なお、本実施形態の円筒ころ軸受5は、互いに軸方向反対側に向けて2つ配置することにより、軸方向両側からのアキシアル荷重を受け得る構成とすることができる。
【0032】
本発明は、上記各実施形態に限定されることなく適宜設計変更可能である。
例えば、円筒ころ141,142,14の端面141a,142a,14aは、球面以外の凸状の曲面とすることができる。
内輪鍔部12a、鍔輪11a、及び外輪鍔部13aの各鍔面12a1,11a1,13a1,13a2は、内輪12及び外輪13の軸心を中心とした環状であって、これらの軸心を含むあらゆる断面の形状が凸状又は凹状の曲線(円弧を含む)となるような曲面とすることができる。
【0033】
鍔面12a1,11a1,13a1,13a2の断面形状を凹状の曲線とした場合、円筒ころ141,142,14の端面141a,142a,14aは、円筒ころ141,142,14の軸心上において、鍔面12a1,11a1,13a1,13a2の凹状の曲面に接触可能な形状に形成される。例えば、円筒ころ141,142,14の端面141a,142a,14aが球面であり、鍔面12a1,11a1,13a1,13a2の断面形状が凹状の円弧である場合、当該球面の半径は当該円弧の半径よりも小さくする必要がある。
【0034】
また、このような鍔面12a1,11a1,13a1,13a2に点接触する円筒ころ141,142,14の端面141a,142a,14aは、上記各実施形態のような球面としたり、球面以外の凸状の曲面としたりすることができる。いずれの場合も、円筒ころ141,142,14の端面141a,142a,14aの鍔面12a1、11a1,13a1,13a2に点接触する部分は、その接線方向が円筒ころ141,142,14の軸心に対して垂直になるように形成される。
また、鍔面12a1,11a1,13a1,13a2の円筒ころ141,142,14の端面141a,142a,14aに点接触する部分も、その接線方向が円筒ころ141,142,14の軸心に対して垂直になるように形成される。
【0035】
本発明は、内輪12及び外輪13の一方のみに鍔部を備えた円筒ころ軸受5にも適用することができる。また、本発明は、円すいころ軸受にも適用することができる。本発明は、調心輪無しの、円筒ころ軸受、円すいころ軸受、自動調心ころ軸受にも適用することができる。
さらに、本発明のころ軸受は、連続鋳造装置に限らず他の用途にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る円筒ころ軸受を適用した連続鋳造装置の要部を示す断面図である。
【図2】同円筒ころ軸受の断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る円筒ころ軸受の断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 成形用ロール
12 内輪
12a 内輪鍔部
13 外輪
13a 外輪鍔部
141,142,14 円筒ころ
141a,142a,14a 円筒ころの端面
Pi1,Pi2,Pi 内輪鍔面と円筒ころとの接触位置
Po1,Po2,Po 外輪鍔面と円筒ころとの接触位置
O1,O2 円筒ころの軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軌道面を有する第1軌道輪と、
前記第1軌道面に対向する第2軌道面を有する第2軌道輪と、
前記第1軌道面と前記第2軌道面との間に転動可能に配置された複数のころと、を備え、
前記第1軌道輪が、前記ころの軸方向一端面に点接触する第1鍔部を備え、
前記ころと前記第1鍔部との接触位置が、前記ころの軸心上に設定されていることを特徴とするころ軸受。
【請求項2】
前記第2軌道輪が、前記ころの軸方向他端面に点接触する第2鍔部を備え、
前記ころと前記第2鍔部との接触位置が、前記ころの軸心上に設定されている請求項2に記載のころ軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−151244(P2010−151244A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330394(P2008−330394)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】