説明

さつま芋プレフライ冷凍食品

【課題】さつま芋の酵素の働きを抑えてしまっては、折角のさつま芋の本来の甘さを十分に引き出すことはできない。
【解決手段】本発明に係るさつま芋プレフライ冷凍食品は、スティック状又はスライス状に裁断され、含有するβ−アミラーゼの働きを誘引する配合でかつ水溶き後の粘度が120〜300センチポイズになる小麦粉及びデンプンを主原料としたプレミックス粉をまとってβ−アミラーゼが作用しやすい温度と時間でプレフライされたものを冷凍して成る。食する前に170〜180℃の温度で再フライする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はさつま芋プレフライ冷凍食品に関する。
【背景技術】
【0002】
さつま芋はわが国で、焼き芋・大学芋・芋けんぴ等、様々な加工食品として広く流通し、食されている。じゃがいもと比べて含まれる植物繊維も多く、植物繊維の健康への有用性が注目されている昨今では、より今日的食料といえる。
【0003】
さつま芋は天ぷら料理の材料としても広く使われており、いわゆる天ぷら粉を使い油で揚げて食されている。天ぷら粉で揚げる料理は、料理の例ではあるが、加工し、広く流通する販売食品にはなり得ていない。また、天ぷら料理は、素材の水分が抜けてしまい、パサパサとした食感になってしまうという欠点がある。
【0004】
食品本来の風味をよく発現させ、保存安定性に優れ、食品素材本来の形状や色調がよく保たれる加工食品の製造方法、及び当該方法により製造される加工食品を提供することを意図した発明が、再公表2002−065856号に開示されている。この発明は食品素材をブランチング(水煮)処理することなく、糖類を前処理に用い、ブランチングと同等の効果を得る方法にあり、酵素の働きを抑えることが第一の目的である。
【特許文献1】再公表2002−065856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は酵素の働きを抑えることを目的としているため、折角のサツマイモの本来の甘さを引き出せない。
【0006】
本発明はこの酵素を如何にうまく作用させるかに傾注し、フライ時に、β−アミラーゼの働きを引き出すように配合した、小麦粉、デンプンを主原料とした特殊なプレミックス粉を使用することにより、フライ中にさつま芋本来の甘さを十分に引き出すことを可能とし、水分を逃がさずホクホクとした食感のさつま芋プレフライ冷凍食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るさつま芋プレフライ冷凍食品は、スティック状又はスライス状に裁断されている。この裁断されたさつま芋は、含有するβ−アミラーゼの働きを誘引する配合でかつ水溶き後の粘度が120〜300センチポイズになる小麦粉及びデンプンを主原料としたプレミックス粉をまとっている。そして、β−アミラーゼが作用しやすい温度と時間でプレフライされたものを冷凍して成っており、食する前に170〜180℃の温度で再フライする。ここで使用するさつま芋原料は国産・国外を問わず、また皮付きでも、皮なしの状態でもよい。
【0008】
このプレミックス粉によりさつま芋に含有されているβ−アミラーゼの働きが誘引され、プレフライの温度と時間でβ−アミラーゼが作用しやすくなった状態で冷凍されている。これを170〜180℃の温度で再フライすることにより、さつま芋本来の甘さを十分に引き出すことができる。
【0009】
(請求項2) 該スティック状は幅が2mm〜5cmで長さが1cm〜20cmで、該スライス状は直径が2cm〜12cmで高さが5mm〜5cmであってもよい。
こうすると、フライによる熱のとおりがよく、食にも適した大きさとなる。
更に実用的な範囲は、スティック状の場合が幅7mm〜1cm、長さ7cm〜12cmで、スライス状の場合は、直径が4cm〜10cmで、高さが5mm〜2cmとなる。
【0010】
(請求項3) 該プレフライの温度と時間は100〜200℃で2〜10分間であってもよい。更に実用的なプレフライの温度と時間は140〜170℃の条件で、3〜5分間となる。
こうすると、さつま芋の内部は、該プレミックス粉の使用により、素揚げに比べ、それに含まれるβ−アミラーゼが最も作用する温度である65℃から75℃位まで緩やかに上昇してゆくため、β−アミラーゼを十分に作用させることができ、実用的の場合は更に良好にβ−アミラーゼの作用を引き出せる。
【0011】
(請求項4) 該プレミックス粉には調味料が加えられていてもよい。
こうすると、調味料の選択で消費者の範囲が広がり、輸出も可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、さつま芋はスティック状又はスライス状に裁断されて、含有するβ−アミラーゼの働きを誘引する配合でかつ水溶き後の粘度が120〜300センチポイズになる小麦粉及びデンプンを主原料としたプレミックス粉をまとって、β−アミラーゼが作用しやすい温度と時間でプレフライされたものを冷凍して成っており、食する前に170〜180℃の温度で再フライすることにより、パサつきがなく、さつま芋本来の甘さを十分に引き出せるさつま芋プレフライ冷凍食品を提供することが可能となった。
【0013】
請求項2によれば、該スティック状は幅が2mm〜5cmで長さが1cm〜20cmで、該スライス状は直径が2cm〜12cmで高さが5mm〜5cmとなっているので、フライによる熱のとおりがよく、食にも適した大きさとなり、実用的な範囲のスティック状の場合が幅7mm〜1cm、長さ7cm〜12cmで、スライス状の場合は、直径は4cm〜10cmで。高さが5mm〜2cmとすると、それぞれの効果が一層高まる。
【0014】
請求項3によれば、該プレフライの温度と時間は100〜200℃で2〜10分間となっているので、β−アミラーゼの作用を一層良好に引き出せる。
【0015】
請求項4によれば、該プレミックス粉には調味料が加えられているので、調味料の選択で消費者の範囲が広がり、輸出も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に実施例を示す
(1)さつま芋の甘みを引き出すように配合したプレミックス粉を使用したさつま芋と素揚げしたさつま芋のフライ中の温度上昇の比較結果を表1に表す。
【表1】

【0017】
さつま芋が甘くなるのは、さつま芋に含まれるβ−アミラーゼが、デンプンを分解し、マルトースになるためである。さつま芋の酵素の糖化作用が行われる温度は65〜75℃であり、素揚げは、短時間で急激な温度上昇をするため、さつま芋の甘みを十分に引き出すことができない。特殊なプレミックス粉を使用してフライすることにより、芋の中心温度は、75℃まで徐々に上昇していくため、β−アミラーゼが作用し、さつま芋の甘みを十分に引き出すことができる。
【0018】
(2)水溶きしたプレミックス粉にさつま芋を付け、フライしたさつま芋の甘みを試食し、点数で評価した。その結果を表2に示す。
【表2】

さつま芋の甘みを1〜5段階で評価すると、粘度100センチポイズ以下ではさつま芋の甘味を十分引き出すことができない。
【0019】
(1)、(2)によりさつま芋本来の甘さをもったさつま芋プレフライ冷凍食品を製造するには、水溶き後の粘度が120〜300センチポイズの特殊なプレミックス粉を使用し140〜170℃で3〜5分のフライが必要であることが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スティック状又はスライス状に裁断され、含有するβ−アミラーゼの働きを誘引する配合でかつ水溶き後の粘度が120〜300センチポイズになる小麦粉及びデンプンを主原料としたプレミックス粉をまとってβ−アミラーゼが作用しやすい温度と時間でプレフライされたものを冷凍して成り、食する前に170〜180℃の温度で再フライすることを特徴とするさつま芋プレフライ冷凍食品。
【請求項2】
該スティック状は幅が2mm〜5cmで長さが1cm〜20cmで、該スライス状は直径が2cm〜12cmで高さが5mm〜5cmである請求項1に記載のさつま芋プレフライ冷凍食品。
【請求項3】
該プレフライの温度と時間は100〜200℃で2〜10分間である請求項1に記載のさつま芋プレフライ冷凍食品。
【請求項4】
該プレミックス粉には調味料が加えられている請求項1に記載のさつま芋プレフライ冷凍食品。



【公開番号】特開2008−271898(P2008−271898A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121132(P2007−121132)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【出願人】(397077461)理研農産化工株式会社 (4)
【Fターム(参考)】