説明

そり測定方法及びそり測定装置

【課題】プリント配線板等のそり測定において、測定精度の向上と測定時間の短縮が可能なそり測定方法を提供するとともに、量産機として使用できるそり測定装置を提供する。
【解決手段】平面度が300μm以下である平滑板上に、測定対象物を積載して、測定対象物の平面度を測定するそり測定方法。また、このそり測定方法により、測定対象物の平面度を測定する、好ましくはインライン化されたそり測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そり測定方法及びそり測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板を製造する場合、積層板にレジストを施し、配線形成や穴あけ加工を行う。このような加工において、プリント配線板のそりが大きい場合、チップ実装時のはんだ付け時に、はんだブリッジが出来たり、はんだ未着等の不良が発生する。はんだ付け不良対策のため、そりの小さい製品の製造が必要不可欠である。
このため、プリント配線板の特性を評価する上で、そりの測定の全数検査が求められている。
【0003】
そりの測定方法として現在様々な測定方式、測定機が存在する(例えば、特許文献1等参照)。しかし、そり測定を行う装置においてインライン化し、量産品を全数測定可能にしたものはない。
【0004】
既存のそり測定装置では、コンベアベルトに積載して平面度を測定する方法があるが、コンベアベルトはうねりを持ち、平面度が低い。このため、プリント配線板のような、薄く(厚さ1mm以下)、コシの無い測定対象物をコンベアベルトに置く場合、測定対象物がコンベアベルトのうねりに追従してしまう。そのため、コンベアベルト上に置かれた測定対象物は、本来持つそり形状、そり量と異なる状態となり、精度の高い測定を行うことが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−288343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
薄い測定対象物(厚さ1mm以下)を平面度の低いコンベアベルト上で測定する従来のそり測定方法では、測定対象物は、コンベアベルトの持つうねりに追従し、測定対象物本来の持つそり形状、そり量と異なる状態となってしまい、精度の高い測定を行うことが出来ない。
【0007】
また、従来のそり測定装置は、測定対象物の投入位置と排出位置が同位置であるもの、手で測定対象物をセットするものなどがある。これらの従来のそり測定装置は、連続式ではなく、測定対象物の搬送に時間がかかり、生産性が低いため、量産機としては適用できない。
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決し、プリント配線板等のそり測定において、測定精度の向上と測定時間の短縮が可能なそり測定方法を提供するとともに、量産機として使用できるそり測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)平面度が300μm以下である平滑板上に、測定対象物を積載して、測定対象物の平面度を測定するそり測定方法。
(2)静止した状態で平面度を測定する(1)に記載のそり測定方法。
(3)インラインにて測定対象物の平面度を測定する(1)又は(2)に記載のそり測定方法。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載のそり測定方法により、測定対象物の平面度を測定するそり測定装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、すべてのそり測定において、測定対象物の測定精度向上が可能であるとともに、測定対象物1枚当たりの測定時間の短縮による生産性向上が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のそり測定方法による測定結果を示す図である。
【図2】本発明のそり測定装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の構成について説明する。
【0013】
本発明において、平滑板は、三次元測定装置にて測定した平面度が300μm以下のものを使用する。三次元測定装置で平滑板を測定する場合は、透明な測定物は測定不可のため、色のついた板であることが望ましい。材質は、ガラス、セラミックスや鉄鋼などの変形しにくいものを使用することが好ましい。平滑板のサイズは、測定対象基板よりも大きく、平滑板上に測定対象基板を載置した際に、測定対象基板の端部の外側に、30mm以上の幅の領域があることが好ましい。
【0014】
上記の三次元測定装置とは、様々な形状を持つ物体の寸法を測定する為の、直角座標系を備えた測定装置の総称である。その中の一つである、以下に説明する焦点深度法の原理を用いた測定装置により平滑板の平面度を測定する。焦点距離は、光学系の主点から焦点までの距離である。
測定面を観察・撮影する時、対物レンズと測定面との距離を変えても、ピントが合う範囲を測定する。その範囲からカメラと測定面の距離を計算する。そうすることで、測定点における測定面上の高さを算出できる。
測定を平滑板の一面で複数点について行い、各点におけるカメラと測定面の距離の計算結果の最大値と最小値との差を測定対象物の持つ平面度として算出する。
【0015】
なお、本発明において、そりとは、様々なそり測定方法での平面度測定によって得られる平面度と同意義として用いている。
【0016】
本発明のそり測定方法の測定原理は、特に制限されないが、測定対象物の基板表面の損傷を防止する観点で、焦点深度法、シャドーモアレ法等の非接触法を適用することが好ましい。
【0017】
本発明は、平面度が300μm以下の平滑板を用いて測定対象物の平面度を測定することにより、測定精度の向上、生産性向上が可能である。
【0018】
平滑板の平面度が300μm以下であれば、上に載せる測定対象物に形状変化の影響がなく、測定精度、製造精度が顕著に向上する。また、平滑板の平面度を更に高くしても、そり測定における測定値に顕著な変化は見られないため、製造コストの観点から、本発明に用いる平滑板は、300μm以下の平面度を有していれば充分である。
【0019】
また、平面度の測定においては、プリント配線板のような軽薄な測定対象物が測定時に動くことによる測定誤差の増大を防止する観点で、測定対象物を置いた平滑板が静止した状態で測定することが好ましい。
【0020】
インライン化とは、測定装置を生産ラインに組み込んで、連続で多くの測定対象物を測定することである。インライン化するためには、測定装置が、短時間で多くのサンプルを測定できる装置であることが望ましい。
【0021】
上記の平滑板を使用し、インライン化することで、精度良く、多くの測定対象物のそり測定を行うことが可能となる。
測定対象物の投入と排出を同位置で行い、測定位置まで測定対象物をコンベアベルトで搬送する従来のそり測定装置に対し、本発明のそり測定装置は、コンベアベルトを平滑板に変更し、測定対象物を平滑板上に置き、測定位置に平滑板を移動させ、測定対象物のそりを測定し、測定対象物を投入位置とは異なる位置から排出する機構にすることで、測定精度及び生産性の向上が可能となる。また、この平滑板に無数の微小な穴を開け、測定対象物をエア吸着しながら搬送する機構にすると、測定対象物の位置ズレが起こらずに搬送可能であり、好ましい。
【実施例】
【0022】
以下に本発明について、実施例及び比較例に基づき説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
[実施例1]
図1に、Akrometrix社製の平面度検査装置、商品名:LineMoireXLにて、コンベアベルト上に直接測定対象物(基材材質:樹脂(基材の上面及び下面に各々厚さ:18μmの銅箔を形成したもの)、厚さ:0.41mm、サイズ:450×450mm)を置き、そり測定した結果(比較例)と、ガラス板(平面度:285μm、厚さ:5mm、サイズ:500×500mm)の上に測定対象物を置き、そのガラス板をコンベアベルト上に置き、LineMoireXLにてそり測定した結果及び同様のガラス板上に測定対象物を置き、三次元測定装置(株式会社ミツトヨ製、商品名:QV ACCEL1517 PRO3)にて焦点深度法によりそり測定した結果(実施例)の模式図及び各測定方法でのそり量の測定値を示す。図1中の領域Aがそりの大きい位置、領域Cがそりの小さい位置を示す。
【0024】
コンベアベルト上に直接測定対象物を置いて測定した測定結果は、ガラス板上で測定した結果と全く異なる形状、そりの量となった。コンベアベルトの大きなうねりに追従したため、ガラス板上でそり測定した測定結果と異なったと考えられる。
【0025】
ガラス上に測定対象物を置き、LineMoireXLにてそり測定した結果と、同様のガラス上に測定対象物を置き三次元測定装置で測定した測定結果を比較すると、そり量は同様な結果であり、三次元測定装置(株式会社ミツトヨ製、商品名:QV ACCEL1517 PRO3)で測定したそり量との差は、比較例の場合の約1/10程度と大幅に小さくなることが判った。
よって、LineMoireXLの搬送部分を平面度の高い平滑板にすることで、測定対象物の本来持つそり形状、そり量の状態のまま、そり測定することが可能である。
【0026】
[実施例2]
上記実施例1の結果から、平滑板上に測定対象物を置いた状態でそり測定することで精度の高い測定が可能であることが確認された。この方法を用いるそり測定装置を生産ラインに取り込むことで量産品の測定にも対応が可能となる。
以下、本発明のそり測定装置の一例を、図2を用いて説明する。
図2は、測定対象物搬送機構を有する、インライン化されたそり装置を示す全体概略図である。
測定対象物1を積載可能な投入リフタ3に積層された測定対象物1を、エア吸着などの持ち上げ機構を備える投入機2を用いて1枚ずつ搬送する。測定対象物1は、移動機構を有する平滑板4の上に置かれ、その後、平滑板4が測定装置5の内部に移動、そり測定位置で停止し、そり測定を行う。測定終了後、平滑板4を測定装置5の外部に移動させ、エア吸着機などの持ち上げ機構を備える移載機6用いて測定対象物を移載リフタ7に積層する。
Line MoireXLを用いた従来のシャドーモアレ方式でのそり測定は、20sec/枚かかる。それに対し、図2に示した本発明のそり測定装置の場合、8sec/枚であり、1枚当たりの測定時間を大幅に短縮できる。
【0027】
実施例及び比較例の結果から、本発明によれば、平滑板上に測定対象物を置き、そり測定するため、従来のようなコンベアベルトのうねりの影響を受けず、精度の高いそり測定が可能であることが確認された。また、本発明によれば、インライン化された測定対象物のそり測定装置により、連続測定が可能であることが確認された。
更に、2枚以上の平滑板を使用し、1枚の平滑板Aの上に測定対象物を置いた状態でそり測定をしている間に、もう1枚の平滑板Bの上に他の測定対象物を載置して、排出、投入を同時に行うことで、生産性向上が見込まれる。
【符号の説明】
【0028】
A そりが大きい位置
B そりが中程度である位置
C そりが小さい位置
1 サンプル
2 投入機
3 投入リフタ
4 平滑板
5 そり測定装置
6 移載機
7 移載リフタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面度が300μm以下である平滑板上に、測定対象物を積載して、前記測定対象物の平面度を測定する、そり測定方法。
【請求項2】
静止した状態で平面度を測定する請求項1に記載のそり測定方法。
【請求項3】
インラインにて測定対象物の平面度を測定する請求項1又は2に記載のそり測定方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のそり測定方法により、測定対象物の平面度を測定するそり測定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−3041(P2013−3041A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136214(P2011−136214)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】