説明

たとえばTCOの無機コーティングを有する箔片の製造方法

本発明は、無機コーティングを有する箔片を製造する方法であって、(a)エッチング可能な仮の基体箔(1)を用意する段階、(b)該仮の基体上に無機コーティング(2)を施与する段階、(c)永久キャリア(3)を施与する段階、(d)任意的に、該仮の基体(1)の一部を除去する段階、(e)該箔を切断線に沿って片へと切断する段階において、該切断線が、仮の基体が存在しかつ該切断線の各側に関して少なくとも0.25mmの幅を有するところの該箔の部分に位置している上記段階、および(f)該仮の基体の少なくとも一部を除去する段階、を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機コーティングを有する箔片の製造方法および該製造方法によって得られる箔片に関する。
【背景技術】
【0002】
無機コーティングを有する箔片は従来技術で公知である。たとえば太陽電池装置は、光電池装置または光電池箔としても知られ、一般に、キャリア(担体)と、(箔の表面にある)無機物質、特に透明導電性酸化物(TCO)を含んでいる表面電極および(箔の裏面にある)裏面電極の間に備えられた、半導体物質から構成される光起電(PV)層とを含んでいる。表面電極は透明であり、入射光が該半導体物質に到達することを可能にし、そこで入射輻射は電気エネルギーに変換される。このようにして、光は電流を発生するために使用されることができ、これは、たとえば化石燃料または原子力の興味深い代替物となる。
【0003】
無機物質を含んでいるその他の箔は、OLED、光学層、たとえば反射層または反射防止層、およびディスプレイである。
【0004】
特許文献1および2は、仮の基体を用意する段階、透明導電性酸化物を施与する段階、光起電層を施与する段階、裏面電極層を施与する段階、キャリアを施与する段階、仮の基体を除去する段階、および、好ましくは、透明導電体層の表面側上に透明保護トップコートを施与する段階を含む、光電池箔の製造方法を記載している。この方法は、光電池箔または光電池装置のロールツーロ−ル(roll−to−roll)方式の製造を可能にし、他方で同時に、PV層の電流発生作用を危険にさらすことなく、任意の所望の透明導電体物質および堆積法を使用することを可能にする。特許文献3および4は、この方法についての変更を記載している。無機物質を有するその他の箔は、同様の方法に従って造られることができる。
【0005】
光電池の場合、金属性の仮の基体を使用することが好まれる。というのは、このような物質は一般にさらなる処理の間の最高温度に耐える能力があろうし、蒸発によってほとんど損傷を受けず、そして公知のエッチング手法を使用して比較的容易に除去されることができるからである。金属、特にアルミニウムまたは銅を選択するもう一つの理由は、光電池箔は最終的に「側」電極を有さなければならないことである(「側」電極は、任意の補助装置またはネットへ接続するための、すなわち光電池箔を電力源として実際に使用するための接点を形成する。)。仮の基体の一部を適所に(たとえば、側端部またはストライプとして)残しておくことによって、これらの接点は別途に施与される必要がない。
【0006】
太陽電池装置からの電流の収集を改良するために、太陽電池装置はしばしば電流収集グリッドを設けられる。太陽電池箔装置の場合には、該グリッドは表面電極上に施与され、および/またはこれより低度に普通には、(半)透明太陽電池装置を得るために裏面電極が比較的不十分な導電性のTCOから造られているならば、裏面電極上に施与される。該グリッドは導電性物質の配線のパターンであり、光起電層中で発生され電極を通して流れる電流の容易な収集を可能にするような様式で施与される。
【0007】
グリッドを施与する各種の方法が従来技術で知られている。たとえば、一般的には銀粒子を含有するペーストを使用する印刷手法によって、グリッドを施与することが知られている。このタイプのペーストを使用することの不利点は、その導電性が比較的低いことである。ペーストを燃やすことによって導電性を増加することは可能であるが、これは追加の処理段階を持ち込む。また、燃焼は一般に太陽電池装置の特性、特に光起電層および任意的なポリマー層の特性に有害な影響を与え、しかるにグリッドの得られる導電性は依然として少し不十分である。
【0008】
溶融金属を堆積することによってグリッドを施与することも、従来技術で知られている。これは十分な導電性を有するグリッドをもたらすけれども、溶融金属の高温度は通常、TCO層の特性、特に光起電層の特性に有害な影響を及ぼす。また、表面に金属の堆積のための下処理をするために、多数の追加の段階が要求される。
【0009】
最近の進歩は、金属性層の比較的低い温度における堆積に関わるものであり、該金属性層はその施与後に自然に固化することができる。しかし、現在のところ、これらの方法は満足できる品質の光電池装置を与えない。電気伝導性接着剤によって電気伝導性箔を透明導電性物質の層へと固定することによって、透明導電性物質の層の表面上に電流収集グリッドを形成することを、特許文献5は記載している。この後、該導電性箔の一部がエッチング手法によって除去される。この方法に付随する一つの問題は導電性接着剤にあり、これも該導電性箔が除去された場所から除去されなければならないことである。このことは、たとえば溶媒によって行われることができるが、電流収集グリッドを表面電極に結合している接着剤をも溶媒は溶解することになる危険を招く。この方法に付随するさらなる問題は、接着剤を介した電流収集グリッドとTCO層との接続の導電性能である。
【0010】
これらの太陽電池および対応して無機物質を含んでいるその他の層は、連続シートで製造される。使用前にこれらのシートは、所望のサイズの適当な片へと切断される。はさみ、ナイフおよびカッター等によって、切断は実施されることができる。しかし、無機層、たとえばTCO層は、比較的脆い層である。したがって、切断、切出し等はほとんど常に切断部位の周りのこのような層中に亀裂をもたらす。大きい箔片が造られるならば、このような亀裂は時には許容されるかも知れないが、小片が造られるときは、亀裂の入った範囲は比較的広く、それ故に許容されない。
【特許文献1】国際公開第98/13882号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/49483号パンフレット
【特許文献3】国際公開第01/78156号パンフレット
【特許文献4】国際公開第01/47020号パンフレット
【特許文献5】国際公開第93/00711号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、無機コーティングを有する箔片を製造する方法の必要が存在し、該方法は亀裂の量が有意に低減されまたは完全に防止さえされるような片を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(a)エッチング可能な仮の基体箔を用意すること、
(b)該仮の基体上に無機コーティングを施与すること、
(c)永久キャリアを施与すること、
(d)任意的に、該仮の基体の一部を除去すること、
(e)該箔を切断線に沿って片へと切断すること、その際に該切断線が、仮の基体が存在しかつ該切断線の各側に関して少なくとも0.25mmの幅を有するところの該箔の部分に位置していること、および
(f)該仮の基体の少なくとも一部を除去すること
によって、無機コーティングを有する箔片を製造することによって、これらの問題が解決されることができることが今発見された。
【0013】
本発明は、太陽電池装置、有機発光デバイス、またはディスプレイを調製する方法であって、
(a)エッチング可能な仮の基体箔を用意する段階、
(b)該仮の基体上に透明導電性酸化物(TCO)の表面電極を施与する段階、
(b1)該TCO層上に光起電層、OLED層、または表面パネルラミネート層を施与する段階、
(b2)裏面電極層を施与する段階、
(c)永久キャリアを施与する段階、
(d)任意的に、該仮の基体の一部を除去する段階、
(e)該箔を切断線に沿って片へと切断する段階において、該切断線が、仮の基体が存在しかつ該切断線の各側に関して少なくとも0.25mmの幅を有するところの該箔の部分に位置している上記段階、および
(f)該仮の基体の少なくとも一部を除去する段階
を含む方法にも関する。
【発明の効果】
【0014】
したがって、本発明はとりわけ、仮の基体の少なくとも一部が切断線の位置において保持される方法を提供する。このような仮の基体の幅が切断線まで少なくとも0.25mmの幅を有するならば、無機層に十分な支持が与えられて、その結果、切断工程の際に無機層の亀裂発生が防止されることが発見された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
仮の基体、たとえばおよび好ましくはアルミニウム層を通って箔を切断することは、ポリマー状永久担体および無機層のみを通って切断するよりも困難であることがあるから、仮の担体の関わらない切断線を提供するさらなる改良が発見された。この目的のためには、仮の基体が最初に、たとえばエッチングによって、切断線において除去され、かつできるだけ、切断線の局外では可能な限り少なく除去される。かくてこのようにして切断線は仮の基体から離れており、それ故に容易に切断可能であり、しかるに切断線から少なくとも0.25mm左右においては仮の基体が依然として存在して、箔への支持が与えられ、無機層の亀裂発生が防止される。
【0016】
仮の基体が切断線から左右により大きく広がっていれば広がっているほど、それだけ大きい支持が無機層に与えられることは明らかである。この理由から、切断線に沿って存在する仮の基体の「細片」を使用することが好まれる。このような細片は、好ましくは20cm未満、好ましくは10cm未満、より好ましくは3cm未満の幅を有する。このような細片の最小幅は、少なくとも0.5mmである。切断線が細片の中央に位置するならば、箔から切断される片側(または両側)の端部において20cm〜0.5mmの幅を有する仮の基体の細片を含んでいる箔片が得られる。このような切断された箔片も、本発明の目的を構成する。たとえばプリント配線板を造るときに、または電気接地のための安全手段として、これらの細片は電気回路として機能することもできる。これらの細片は箔および最終製品の端部に施与されると、無機層を損傷から保護する。
【0017】
本明細書の文脈では、エッチングの語は、化学的手段、たとえば溶解によって除去することを意味することが意図される。エッチング可能な基体は、化学的手段によって除去されることができる基体であり、エッチレジストは、仮の基体の除去の際に加えられる条件に抵抗することができる物質である。
【0018】
仮の基体は好ましくは、導電性でありかつ裏面電極の役割をすることができる金属性基体である。仮の基体の一部が除去されるときは、これは普通、局部的なエッチングおよび/または該仮の基体の一部を全体的にエッチングすることによって実施される。さらに、仮の基体の使用は一般にエッチング段階によってその一部または全部の除去を常に必要とすることを考慮すると、本発明に従う方法は、このような除去を実施する特別の様式を提供して、無機層、たとえばTCO層に亀裂を生じさせることなく容易に切断されることができる箔をもたらす。
【0019】
切断線の位置にある細片として使用される部分へのエッチングを防ぐために、エッチレジストが使用されることができる。エッチレジストは、電流収集グリッドの形態をとって仮の基体に施与されることができる任意の物質であることができ、これは該仮の基体をエッチング液の作用から保護するだろう。エッチレジストは仮のものであることができる、すなわちこれは本発明の方法のあるさらなる段階において除去されることができる。あるいは、エッチレジストは永久的なものであってもよい。永久エッチレジストの使用が好まれる。後者が優先されるのには種々の理由がある。まず第一に、永久エッチレジストの使用はエッチレジスト除去段階の必要を省く。さらに、該エッチレジストは外的影響から箔を保護し、封止モジュールの絶縁破壊強度を増加するだろう。
【0020】
本発明に従う方法の任意の段階において、仮の基体上へのエッチレジストの施与は実施されることができる。たとえば本発明の方法の開始前に、すなわち仮の基体の反対面側上へのTCOの施与前に、これは施与されることができる。これは任意の中間の段階において施与されることができ、およびこれは本発明の方法の最後に、すなわち裏面電極または施与可能の場合には永久キャリアの施与後かつ仮の基体のエッチングによる除去の直前に施与されることができる。後者の選択肢が好まれる。何故ならば本発明の方法の先行部分の際にエッチレジストパターンが損傷を受けることが防止されるからである。仮の基体の「裏面」上のエッチレジストパターンの存在がその他の処理段階と干渉することも、これは防止する。本発明に従う方法の好まれるロールツーロールの実施態様において、裏面上にエッチレジストのパターンを施与された仮の基体が1以上のロール上を通されるならば、これらの両方とも生じうることである。
【0021】
本発明に従う方法の好まれる実施態様では、仮の基体は可撓性であり、可撓性の永久キャリアが施与され、および本発明の方法はロールツーロール方式によって実施される。
【0022】
本発明の方法は、添付図面によってさらに説明される。
【実施例1】
【0023】
図1Aにおいて、TCO層2(無機層)がアルミニウム表板(仮の基体)1に施与される。図1Bにおいて、永久基体3が該TCO層に積層される。図1Cにおいて、エッチレジスト4が該アルミニウム層に施与される。図1Dにおいて、アルミニウム層が部分的にエッチングされる(これは任意的な段階である。)。図1Eにおいて、エッチレジストが除去される。図1Fにおいて、アルミニウム基体が無機層に達するまでさらにエッチングされて、その一部が残される。図1Gにおいて、残されたアルミニウム表板の位置において箔が切断される。この結果、脆い無機層が損傷されていない二つの部分が得られる(図1H)。
【0024】
図2において2A〜2Bおよび2D〜2Gは、それぞれ図1の1A〜1Bおよび1D〜1Gと同様である。図2Cにおいてエッチレジスト4の二つの平行な細片がアルミニウム層に施与され、その結果、予備エッチング後および最終エッチング後にアルミニウムの二つの細片が残される。箔は該二つの細片の中間で切断される。切断に続いて結局は発生する脆い無機層中の亀裂は、該アルミニウム細片によって止められる(図2H)。もちろん残留するアルミニウムによって形成されるパターンは、任意の形状をとることができる。無機層はいくつかの層の積み重ねであってもよい。該層は「光起電層」を形成することができ、この語はもっと先で説明される。
【0025】
仮の基体
【0026】
仮の基体は、多数の条件を満たさなければならない。これは、電流収集グリッドの基礎物質としての役割を果たすことができるために十分に導電性でなければならない。これは、箔の製造の際に、特に無機層、たとえばTCO層およびPV層の堆積の際に支配的な条件に耐えることができるために十分に耐熱性でなければならない。これは、該箔装置をその製造の間、担持することができるほど十分に強くなければならない。これは、無機層を損傷することなく無機層からの除去が容易でなければならない。これらの指針に沿って好適な仮の基体を、当業者は選択することができよう。
【0027】
本発明に従う方法に用いられる仮の基体は、好ましくは金属または金属合金の箔である。この主な理由は、このような箔は良好な導電性を示し、一般に高処理温度に耐える能力があり、蒸発するのが遅く、および公知のエッチング手法を使用する除去が比較的容易であることである。金属箔、特にアルミニウムまたは銅の箔を選択するもう一つの理由は、最終的に箔は該箔装置をある装置または電気グリッドに接続する役割をするエッジ電極を備えなければならないことである。仮の基体の残留する片がこの目的に使用されることができ、その結果、エッジ電極を別途に設ける必要がない。
【0028】
好適な金属は、鋼、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、銀、亜鉛、モリブデン、クロム、およびこれらの合金または多層物を包含する。経済的な理由から、とりわけFe、Al、Cu、またはこれらの合金を用いることが好まれる。これらのものの性能を前提とすると(およびコストの問題を考慮に入れると)、鉄および銅が好まれ、最も好まれるのはアルミニウムである。
【0029】
金属を除去するための好適なエッチング剤および手法は公知であり、これらは金属毎に異なるけれども、当業者は適切なものを選択することができよう。好まれるエッチング剤は酸(ルイス酸およびブレンステッド酸の双方)を包含する。したがって、銅の場合には、FeCl、硝酸または硫酸を使用することが好まれる。アルミニウムの好適なエッチング剤は、たとえばNaOH、KOH、およびリン酸と硝酸との混合物である。
【0030】
銅、任意的には電着によって調製された銅が、仮の基体として使用されるならば、該銅に、任意的には電着による該銅に、非還元性の拡散防止層、たとえば耐腐食層、特に酸化亜鉛を付与することが好まれる。これは、銅はTCO層を通ってPV層中へ拡散する傾向を有することがあるためである。このような拡散を防止する能力があるTCO、たとえばSnOまたはZnOを選択することも可能である。たとえば電着によって、または物理蒸着(PVD)によってまたは化学蒸着(CVD)によって抗拡散層が施与されることができる。
【0031】
容易に除去できるように、仮の基体は好ましくは可能な限り薄い。他方、仮の基体から得られた細片が十分な支持を与えることを、および必要であれば、たとえば電極として十分な電流を与えることを確保するために、ある厚さが要求される。さらに、その厚さは、他の層がその上に設けられることができるようなものでなければならず、かつこれらを一緒に保持することができなければならないが、一般にそれが500μm(0.5mm)超の厚さであることは要求されない。該厚さは好ましくは1〜200μm(0.2mm)の範囲にある。弾性率にもよるが、大多数の物質の最小厚さは5μmだろう。したがって、5〜150μm、特に10〜100μmの厚さが好まれる。
【0032】
ちなみに、仮の基体の厚さとの組み合わせでエッチレジストの幅を適切に選択することによって、本発明の亀裂防止特性は調節されることができる。箔の表面上のエッチレジストの幅を変えることによって、該特性は適合されることができる。
【0033】
無機層
【0034】
好適な無機層の例は、金属酸化物、セラミックス、およびガラス等、特に透明導電性酸化物(TCO)、たとえば酸化インジウムスズ、酸化亜鉛、アルミニウム、フッ素、ガリウムまたはホウ素をドープされた酸化亜鉛、硫化カドミウム、酸化カドミウム、酸化スズ、並びに最も好ましくはFをドープされたSnOである。当該最後に挙げられた透明電極物質が好まれる。何故ならば、400℃超、好ましくは500〜600℃の範囲の温度において施与されると、または当該温度において後処理されると、これは柱状の光散乱テクスチャ(表面凹凸)を有する所望の結晶表面を形成することができるからである。このような高温度に耐える能力がある仮の基体の使用が極めて魅力的なのは、まさにこのTCO物質の場合においてである。さらに、該物質はほとんどのエッチング剤に耐性があり、よく用いられている酸化インジウムスズよりも良好な耐化学薬品性を有する。また、これははるかに安価である。
【0035】
当分野で公知の方法によって、たとえば有機金属化学蒸着(MOCVD)、スパッタリング、常圧化学蒸着(APCVD)、PECVD、噴霧熱分解、蒸発(物理蒸着)、電着、無電解めっき、スクリーン印刷、ゾル−ゲル法等またはこれらの方法の組み合わせによって、TCOは施与されることができる。250℃超、好ましくは400℃超、より好ましくは450〜600℃の温度においてTCO層を施与および後処理することが好まれ、その結果、所望の組成、特性および/またはテクスチャのTCO層が得られることができる。
【0036】
バッファ層
【0037】
所望であれば、無機層と光起電層との間にバッファ層が存在することができる。他の層、たとえばPV層の堆積の際に支配的な条件から無機層を保護することを、バッファ層は意図される。バッファ層の種類は、当該他の層の種類に依存するだろう。種々の層に適したバッファ層が従来技術で知られている。テルル化カドミウムの場合、CdS、In(OH、S)およびZn(OH、S)が挙げられることができる。本明細書においてPV層をTCO上に堆積することが言及される場合には、バッファ層は当該TCO層上に存在してもしなくてもよい。
【0038】
光起電(PV)層
【0039】
TCO層が施与された後、PV層は適当な様式で施与されることができる。本明細書において、「PV層」または「光起電層」の語は、光を吸収しそれを電気に変換するのに必要な層の系の全体を含むことが、ここで注記されなければならない。好適な層の配置は公知であり、これらを施与する方法も同様である。当分野における通常の一般的な知識として、Yukinoro Kuwano、「Photovoltaic Cells」、Ullmann’s Encyclopedia、1992年、第A20巻、p.161および「Solar Technology」、Ullmann’s Encyclopedia、1993年、第A24巻、p.369が参照されることができる。
【0040】
種々の薄膜半導体物質が、PV層を製造するのに使用されることができる。その例は非晶質シリコン(a−Si:H)、微結晶シリコン、多結晶非晶質炭化ケイ素(a−SiC)およびa−SiC:H、非晶質シリコン・ゲルマニウム(a−SiGe)、並びにa−SiGe:Hである。さらに、本発明に従う太陽電池装置中のPV層は、CIS(ジセレン化銅インジウム、CuInSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、CIGSS(Cu(In、Ga)(Se、S))、Cu(In、Ga)Se、ZnSe/CIS、ZnO/CIS、および/またはMo/CIS/CdS/ZnO、並びに色素増感太陽電池を含んでいてもよい。
【0041】
TCOがフッ素をドープされた酸化スズを含んでいるときは、PV層は好ましくは非晶質シリコン層である。この場合、一組のまたは複数組のpドープされた、真性の、およびnドープされた非晶質シリコン層を、PV層は一般に含んでおり、該pドープされた層は入射光を受ける面側上に位置している。
【0042】
a−Si:Hの実施態様では、pドープされた非晶質シリコン層(Si−p)、真性非晶質シリコン層(Si−i)、およびnドープされた非晶質シリコン層(Si−n)を、PV層は少なくとも含んでいる。p−i−n層の最初の一組上に、第二のおよびさらなるp−i−n層が施与されることができる。同様に、複数の繰返しp−i−n(「pinpinpin」または「pinpinpinpin」)層が連続的に施与されることができる。複数のp−i−n層を積み重ねることによって、セル当たりの電圧が上げられ、その系の安定性が高められる。光誘導分解、いわゆるStaebler−Wronski効果が軽減される。さらに、種々の層、主にi層、とりわけi層の内に様々なバンドギャップの物質を選ぶことによって、スペクトル感度が最適化されることができる。PV層の全厚さ、より詳細には全てのa−Si層を合わせた厚さは、一般にほぼ100〜2,000nm程度、より典型的には約200〜600nm、好ましくは約300〜500nmであろう。
【0043】
裏面電極
【0044】
本発明に従う薄膜太陽電池シート中の裏面電極は、好ましくは反射体としておよび電極としての両方の役割をするが、無機層のための担体としての役割もすることができて、切断の際の亀裂を防止する。一般に、裏面電極は約50〜500nmの厚さを有し、光反射特性を有する任意の適当な物質、好ましくはアルミニウム、銀、またはこれら双方の層の組み合わせを含んでいることができ、下にある半導体層と良好なオーム接触をしている。好ましくは、比較的低い温度、たとえば250℃未満において、たとえば電着、(真空)物理蒸着またはスパッタリングによって、該金属層を施与することが可能である。銀の場合には、最初に接着促進剤層を施与することが好まれる。TiO、TiN、ZnO、および酸化クロムが、接着促進剤層に適した物質の例であり、適当な厚さ、たとえば50〜100nmで施与されると反射特性も持つ利点を有する。所要の裏面電極は、透明、不透明のいずれであってもよい。
【0045】
永久キャリア
【0046】
本発明に従う方法に必須ではないけれども、概して箔に永久キャリアを付設することが好まれる。というのは、そうしないと箔はかなり薄いのでその脆弱さから取扱いが困難になろう。用いられるときは、永久キャリアは裏面電極の上に施与される。商業的に入手できるポリマー、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、PVDF、PVDC、PPS、PES、PEEK、PEIのフィルム若しくは非常に良好な特性を有するポリマーのフィルム、たとえばアラミド、ポリアミド若しくはポリイミドのフィルムだけでなく、たとえば絶縁性(誘電性)表面層が予め施与されていてもよい金属箔、またはプラスチックと強化繊維とフィラーとの組成物も、好適なキャリア層物質は包含する。基体自体の軟化点より低い軟化点を持つ熱可塑性接着剤層を備えたポリマー状「共押出」フィルムが好まれる。所望であれば、該共押出フィルムは、たとえばポリエステル(PET)、コポリエステルまたはアルミニウムの抗拡散層を付与されていてもよい。該キャリアの厚さは、好ましくは50μm〜10mmである。好まれる範囲は75μm〜3mmおよび100μm〜300μmである。本明細書の文脈の範囲内でN/mm単位での弾性率Eとmm単位での厚さtの3乗との積(E×t)として定義された、キャリアの曲げ剛性は、好ましくは16×10−2Nmmより高く、および一般に15×10Nmmより低いだろう。
【0047】
キャリアは、その最終用途に要求される構造を有することができる。したがって、該基体はタイル、屋根板および屋根要素、建物正面要素、乗用車およびトレーラの屋根等を包含することができる。しかし、一般にキャリアは可撓性であることが好まれる。この場合には、太陽電池箔のロールが得られ、これは直ぐに使用でき、所望の電力および電圧のシートが該ロールから切り出されることができる。次に、これらは(混成の)屋根要素中へ取り込まれ、または所望に従い、タイル、屋根板、乗用車およびトレーラの屋根等の上へ施与されることができる。
【0048】
所望であれば、トップコートまたは表面層が箔の無機物側の上に付与されて、該無機物を外的影響から保護することができる。一般に、表面層は(所望であれば空洞を有する)ポリマーシートまたはポリマーフィルムであろう。表面層は高い透過率を有することが要求され、たとえば以下の物質、すなわち(パー)フルオロポリマー、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)、PET、PENまたは任意の入手可能なクリアコーティング、たとえば自動車産業で使用されるものを含む。所望であれば、付加的な反射防止層または汚染防止層が付与されてもよい。あるいは、所望であれば、太陽電池の全体がこのようなもののカプセル中に封入されてもよい。
【0049】
エッチレジスト
【0050】
エッチレジストは、電流収集グリッドの形態で仮の基体に施与されることができ、エッチング剤の作用から仮の基体を保護することになる任意の物質である。当業者は、ルーチンの試験によって適切な物質を選択することができる。好適なエッチレジストは、熱可塑性および熱硬化性のポリウレタンおよびポリイミド、熱硬化性ポリマー、たとえばEP、UP、VE、SI、(エポキシ)樹脂、およびアクリレート、並びに熱可塑性ポリマー、たとえばPVC、PI、フルオロポリマー等を包含する。エッチレジストは、一般に添加剤、たとえば光開始剤または他の硬化剤、フィラー、可塑剤等を含んでいる。エッチレジストは仮のものであることができる。すなわち、本発明の方法のあるさらに先の段階において除去されることができる。あるいは、および好ましくは、エッチレジストは永久のものであることができる。
【0051】
蒸発または印刷/ライティングによって、エッチレジストは好適に施与される。好ましくは、それ自体公知の印刷法によって、エッチレジストは施与される。好適な印刷法は、シルクスクリーン印刷、輪転スクリーン印刷、インクジェット法、フレキソグラビア印刷、直接押出等を包含する。当業者に知られた適当な顔料または染料を含めることによって、エッチレジストの色は調節されることができる。とりわけ永久エッチレジストの場合には、顔料および紫外線安定剤の存在が好まれることがある。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】仮の基体の残された細片を通って切断された箔を示す図である。
【図2】仮の基体の二つの残された細片の中間にある切断線を通って切断された箔を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機コーティングを有する箔片を製造する方法であって、
(a)エッチング可能な仮の基体箔を用意する段階、
(b)該仮の基体上に無機コーティングを施与する段階、
(c)永久キャリアを施与する段階、
(d)任意的に、該仮の基体の一部を除去する段階、
(e)該箔を切断線に沿って片へと切断する段階において、該切断線が、仮の基体が存在しかつ該切断線の各側に関して少なくとも0.25mmの幅を有するところの該箔の部分に位置している上記段階、および
(f)該仮の基体の少なくとも一部を除去する段階
を含む方法。
【請求項2】
段階(c)と段階(e)との間で、切断線の位置にある仮の基体がエッチングによって除去される、請求項1に従う方法。
【請求項3】
仮の基体が、切断線の各側に関して少なくとも0.25mm、より好ましくは少なくとも1mmの幅を有する、請求項1または2に従う方法。
【請求項4】
切断線が仮の基体の細片上に位置し、該細片が20cm未満、好ましくは10cm未満、より好ましくは3cm未満の幅を有する、請求項1〜3のいずれか1項に従う方法。
【請求項5】
無機コーティングを有する箔が、太陽電池、有機発光デバイス、またはディスプレイであり、方法が、
(a)エッチング可能な仮の基体箔を用意する段階、
(b)該仮の基体上に透明導電性酸化物(TCO)の表面電極を施与する段階、
(b1)該TCO層上に光起電層、OLED層、または表面パネルラミネート層を施与する段階、
(b2)裏面電極層を施与する段階、
(c)永久キャリアを施与する段階、
(d)任意的に、該仮の基体の一部を除去する段階、
(e)該箔を切断線に沿って片へと切断する段階において、該切断線が、仮の基体が存在しかつ該切断線の各側に関して少なくとも0.25mmの幅を有するところの該箔の部分に位置している上記段階、および
(f)該仮の基体の少なくとも一部を除去する段階
を含む、請求項1〜4のいずれか1項に従う方法。
【請求項6】
仮の基体がアルミニウムである、請求項1〜5のいずれか1項に従う方法。
【請求項7】
箔から切断される片側(または両側)の端部において20cm〜0.5mmの幅を有する仮の基体の細片を含んでいる、請求項1〜6のいずれか1項に従う方法によって得ることができる箔片。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−537643(P2008−537643A)
【公表日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504746(P2008−504746)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061206
【国際公開番号】WO2006/106072
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【Fターム(参考)】