説明

はんだ付け方法および装置

【課題】微小な電子部品またはフレキ基板にはんだ付けする方法および装置を提供する。
【解決手段】電子部品にはんだ付けするための方法であって、第1押さえ板、第1網および複数の穴を有するプレートを順に積層する段階と、前記プレートの前記穴に前記電子部品を挿入する段階と、前記電子部品が挿入された前記プレートの上に第2網および第2押さえ板を順に積層して、ワークを形成する段階と、前記ワーク内の前記電子部品に対してはんだ付けを行う段階と、前記はんだ付けを行った後、過剰に付着したはんだを、有機脂肪酸溶液を噴き付けることによって掻き落とす段階と、を有し、前記はんだ付けを行う段階は、前記電子部品が前記プレートの前記穴内で運動する程度の勢いではんだを噴き付けることにより行われることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品又はフレキ基板にはんだ付けするための方法および装置に係り、より詳細には、微細なチップコンデンサやICチップ又はフレキ基板にはんだ付けする際に、複数の非常に微細なチップやフレキ基板に効率よく正確にはんだ付けするための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器はますます高集積高密度小型軽量化され、それに伴い、電子部品もますます小型化されてきている。電子部品のうち、例えば積層セラミックチップコンデンサ(図6参照)では、3216サイズ(3.2mm×1.6mm)、2012サイズ(2.0mm×1.2mm)、1608サイズ(1.6mm×0.8mm)などに分類され、最近では、1005サイズ(1.0mm×0.5mm)、0603サイズ(0.6mm×0.3mm)、0402サイズ(0.4mm×0.2mm)まで小型化されている。現在最も小さいチップサイズは、0402サイズである。
【0003】
これらチップコンデンサの外部電極13は、錫やニッケルによってメッキが施されて形成される。外部電極は、はんだ付けにより形成することもできるが、今現在最小の0402サイズのチップコンデンサでは、はんだ付けはできない。
また、今後さらに小さいチップコンデンサ(例えば0201サイズ)が開発されることが予測され、微小なチップコンデンサの外部電極の正確で効率のよい形成方法が望まれる。
【0004】
フレキ基板(フレキシブルプリント基板)は、非常に薄く柔軟性に富んだプリント基板であるため、折り畳み携帯電話のヒンジ部分を通る配線やデジタルカメラの内部配線等に使用されている。しかしながらフレキ基板は非常に薄いため、ブラブラ動いてしまい、はんだ付けには適していないか非常に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特許第4665071号公報
【特許文献2】日本国特許第4153723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、現時点で最小の0402サイズのチップコンデンサにおいても、はんだ付けで外部電極を形成することができ、かつ、それ以下のサイズ、例えば0201サイズのチップコンデンサが今後開発されても、正確かつ効率の良いはんだ付けにより外部電極を形成することを目的とする。
また、非常に薄いフレキ基板に対するはんだ付けを容易にかつ正確に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電子部品にはんだ付けするための方法であって、第1押さえ板、第1網および複数の穴を有するプレートを順に積層する段階と、前記プレートの前記穴に前記電子部品を挿入する段階と、前記電子部品が挿入された前記プレートの上に第2網および第2押さえ板を順に積層して、ワークを形成する段階と、前記ワーク内の前記電子部品に対して、はんだ付けを行う段階と、前記はんだ付けを行った後、過剰に付着したはんだを有機脂肪酸溶液を噴き付けることによって掻き落とす段階と、を有し、前記はんだ付けを行う段階は、前記電子部品が前記プレートの前記穴内で運動する程度の勢いではんだを噴き付けることにより行われることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、フレキ基板にはんだ付けするための方法であって、前記フレキ基板上に一定の空間を有して網を設けてワークを形成する段階と、前記ワーク内の前記フレキ基板に対して、はんだ付けを行う段階と、前記はんだ付けを行った後、過剰に付着したはんだを機脂肪酸溶液を噴き付けることによって掻き落とす段階と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明はまた、電子部品にはんだ付けするための装置であって、前記電子部品を含むワークと、前記ワーク内の前記電子部品に対してはんだ付けするためのはんだ付け装置とを有し、前記ワークは、前記電子部品を挿入するための穴を複数有するプレートと、前記プレートを上下から挟むための第1網および第2網と、角度が付いた複数の穴を有し、前記第1および第2網を介して前記プレートを上下から挟むための第1押さえ板および第2押さえ板とからなり、前記はんだ付け装置は、前記電子部品が前記プレートの前記穴内で運動する程度の勢いではんだを噴き付けるための手段を有することを特徴とする。
【0010】
さらに本発明は、フレキ基板にはんだ付けするための装置であって、前記フレキ基板を含むワークと、前記ワーク内の前記フレキ基板に対してはんだ付けするためのはんだ付け装置とを有し、前記ワークは、前記フレキ基板と、前記フレキ基板上に一定の空間を有して設けられた網とからなることを特徴とする。
【0011】
本発明によるはんだ付けは、真空中又は窒素雰囲気中で行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、現時点で最小の0402サイズのチップコンデンサにおいても、はんだ付けで外部電極を形成することができ、かつ、それ以下のサイズ、例えば0201サイズのチップコンデンサが今後開発されても、正確かつ効率の良いはんだ付けにより外部電極を形成することができる。さらに、非常に薄いフレキ基板に対しても、容易かつ正確にはんだ付けすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1を説明する図
【図2】本発明の実施例1のワークの断面図
【図3】本発明に採用することのできるはんだ付け装置を示す図
【図4】本発明の実施例3を説明する図
【図5】フレキ基板上の回路パターンに含まれる微細パターンを示す図
【図6】外部電極が形成されたチップコンデンサを示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、特にチップコンデンサやICチップなどの電子部品、およびフレキ基板を対象とする。
【実施例1】
【0015】
実施例1では、チップコンデンサを主な対象として説明する。
まず、図1及び2を参照して本発明の、チップコンデンサの外部電極を形成するためのワーク10について説明する。
【0016】
ワーク10を形成するために、まず、押さえ板4の上に網3を敷き、さらに網3の上にプレート2を敷く。そしてプレート2の複数の穴21内に、これから外部電極を形成するチップコンデンサ1を挿入する。この時点では、チップコンデンサ1には外部電極は形成されておらず、セラミック部分11と両側に導電性樹脂等からなる被はんだ付け部12とを有している。
プレート2および網3は、ステンレスやチタン合金等の、はんだが付着しない、もしくは付着しにくい素材により形成される。
プレート2の穴21にチップコンデンサ1を挿入したら、その上からさらに網3および押さえ板4を積層してワーク10を形成する。
【0017】
押さえ板4には、図2に示すように角度が付いた穴41が複数形成されている。また、網3の網目は、押さえ板4の穴41の直径の約1/2が好ましい。この網目が大きすぎるとチップコンデンサ1は抜けてしまい、逆に小さすぎると、後述するはんだ付け時にチップコンデンサ1が動くための余裕がなくなってしまう。
プレート2の穴21は、図1のように丸穴でもよいし、角穴でもよいが、チップコンデンサ1がはんだ付け時の噴き付け勢いにより自由に動くだけの大きさが必要である。
【0018】
実施例1では、チップコンデンサ1が挿入されたワーク10全体にはんだ溶液を噴き付けることにより、チップコンデンサ1の被はんだ付け部12にはんだ付けを行い、外部電極を形成する。この時、はんだ溶液噴き付け時の勢いにより、プレート2の穴21内のチップコンデンサ1が自由に運動する。チップコンデンサ1が、プレート2の穴21内を自由に動くので、噴射されるはんだ溶液が万遍なく付着する。
押さえ板4は角度が付いた穴41を有するということは前述したが、この穴41の角度によって、プレート2の穴21内での、チップコンデンサ1の動きが異なる。
【0019】
図3は、本発明のはんだ付け装置20の一実施例を示す図である。
はんだ付け装置20は、上層に有機脂肪酸溶液8が、下層に溶融はんだ液7がそれぞれ入った貯槽9と、ワーク10を貯槽9の有機脂肪酸溶液8に入れたり出したりしながら移動させる移送手段5と、溶融はんだ液7を溶融はんだ液移送用ポンプ72で汲み上げ、ノズル73から溶融はんだ液7を噴き付けるはんだ液噴き付け手段74と、有機脂肪酸溶液8を有機脂肪酸溶液移送用ポンプ82で汲み上げ、ノズル83から有機脂肪酸溶液8を噴き付けて過剰なはんだを掻き落とす有機脂肪酸溶液噴き付け手段84とを有する。
なお、図3では貯槽9に入れられる液体が、有機脂肪酸溶液8と溶融はんだ液7との2層からなる例を示したが、有機脂肪酸溶液8と溶融はんだ液7とはそれぞれ別の貯槽に入れておくことも可能である。
【0020】
はんだ付け装置20の動作を以下に説明する。
まず、ワーク10は移送手段5によって有機脂肪酸溶液8の中に浸漬される。これは、有機脂肪酸溶液8の界面活性成分によりワーク10やチップコンデンサ1の汚れを落とし、ワーク10内のチップコンデンサ1に保護被膜を形成するためである。保護被膜を形成することにより、ワーク10やチップコンデンサ1に新たに汚れが付着することを防止する(特許文献1、2)。
【0021】
次に、移送手段5によって、ワーク10を有機脂肪酸溶液8から出すように移動させる。移送手段5はそのままワーク10を移動させるが、この際、はんだ液噴き付け手段74によって溶融はんだ液7をワーク10上に噴き付けながら移動させる。
はんだ液を噴き付ける勢いにより、ワーク10内のチップコンデンサ1は、穴21内を自由に動くので、溶融はんだ液7がチップコンデンサ1の特に被はんだ付け部12に万遍なく塗布される。
【0022】
溶融はんだ液7を噴き付けた後も、移送手段5はワーク10を有機脂肪酸溶液8の外側で移動させる。この際、有機脂肪酸溶液噴き付け手段84によって有機脂肪酸溶液8をワーク10上に噴き付けながら移動させる。
有機脂肪酸溶液8を噴き付けることにより、ワーク10およびチップコンデンサ1に付着した余分なはんだ液が掻き落とされる。
【0023】
はんだ付け装置20によるはんだ付け処理及び掻き落とし処理は、真空中で行うことが好ましい。真空中ではんだ付けを行うことにより、はんだ付け部に気泡が混入することを防止したり、酸化を防止することができる。
または、はんだ付けは窒素雰囲気中で行うことも有用である。
【実施例2】
【0024】
実施例2では、プレート2の穴21に挿入するもの、すなわちはんだ付けの対象物が、ICチップである点以外は、実施例1と同様である。
【実施例3】
【0025】
図4は、本発明の実施例3を示す図である。実施例3では、フレキ基板100の回路をはんだ付けにより形成するためのワーク10´を形成する。
フレキ基板100には、銅等で20μm〜60μmピッチの微細パターンを含むパターンを形成し、その上にはんだ付けを行うことにより、20μm〜60μmピッチの微細パターンを含む回路パターンを形成する(図5参照)。
ワーク10´は、フレキ基板100の端部にスペーサ400等を設け、フレキ基板100上の一定空間離れた位置に網300を設けることにより形成される。スペーサ400は、図4のように基板100の四隅に設けられるようにしてもよいし、網300と一体化した構造でもよい。いずれにしても、ワーク10´は、フレキ基板100と網300との間に一定空間が設けられるように形成される。
【0026】
網300の網目は、実施例1の網3の網目よりも粗いほうが好ましい。これは、はんだ付け処理の際、フレキ基板100の全体に溶融はんだ液7が噴き付けられるようにするためである。
図4ではフレキ基板100の両面に回路をプリントする場合を示しているので、上下に網300を設けているが、片面のみにプリントする場合には、網300は上面又は下面の一方のみに設ければよい。
【0027】
このような構成のワーク10´に対して、実施例1で説明したはんだ付け処理およびはんだ掻き落とし処理を行うことにより、薄くてはんだ付け処理が困難だったフレキ基板に対しても、容易かつ正確にはんだ付けすることが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1:チップコンデンサ
2:プレート
3:網
4:押さえ板
10:ワーク
11:セラミック部
12:被はんだ付け部
21:穴
41:角度付き穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品にはんだ付けするための方法であって、
第1押さえ板、第1網および複数の穴を有するプレートを順に積層する段階と、
前記プレートの前記穴に前記電子部品を挿入する段階と、
前記電子部品が挿入された前記プレートの上に第2網および第2押さえ板を順に積層して、ワークを形成する段階と、
前記ワーク内の前記電子部品に対してはんだ付けを行う段階と、
前記はんだ付けを行った後、過剰に付着したはんだを、有機脂肪酸溶液を噴き付けることによって掻き落とす段階と、を有し、
前記はんだ付けを行う段階は、前記電子部品が前記プレートの前記穴内で運動する程度の勢いではんだを噴き付けることにより行われることを特徴とする方法。
【請求項2】
フレキ基板にはんだ付けするための方法であって、
前記フレキ基板上に一定の空間を有して網を設けてワークを形成する段階と、
前記ワーク内の前記フレキ基板に対して、はんだ付けを行う段階と、
前記はんだ付けを行った後、過剰に付着したはんだを機脂肪酸溶液を噴き付けることによって掻き落とす段階と、を有することを特徴とする方法。
【請求項3】
前記はんだ付けを行う段階および掻き落とす段階は、真空中で行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記はんだ付けを行う段階および掻き落とす段階は、窒素雰囲気中で行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記はんだ付けを行う段階は、
前記ワークを有機脂肪酸溶液に浸漬して、前記ワーク内の前記電子部品または前記フレキ基板に保護被膜を形成する段階と、
前記保護被膜が形成された前記ワークに対して、溶融はんだ液を噴き付ける段階と、からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
電子部品にはんだ付けするための装置であって、
前記電子部品を含むワークと、
前記ワーク内の前記電子部品に対してはんだ付けするためのはんだ付け装置とを有し、
前記ワークは、
前記電子部品を挿入するための穴を複数有するプレートと、
前記プレートを上下から挟むための第1網および第2網と、
角度が付いた複数の穴を有し、前記第1および第2網を介して前記プレートを上下から挟むための第1押さえ板および第2押さえ板とからなり、
前記はんだ付け装置は、前記電子部品が前記プレートの前記穴内で運動する程度の勢いではんだを噴き付けるための手段を有することを特徴とする装置。
【請求項7】
フレキ基板にはんだ付けするための装置であって、
前記フレキ基板を含むワークと、
前記ワーク内の前記フレキ基板に対してはんだ付けするためのはんだ付け装置とを有し、
前記ワークは、
前記フレキ基板と、
前記フレキ基板上に一定の空間を有して設けられた網とからなることを特徴とする装置。
【請求項8】
前記はんだ付け装置によるはんだ付けは、真空中で行われることを特徴とする請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
前記はんだ付け装置によるはんだ付けは、窒素雰囲気中で行われることを特徴とする請求項6又は7に記載の装置。
【請求項10】
前記はんだ付け装置は、
少なくとも有機脂肪酸溶液が入った貯槽と、
前記ワークを前記貯槽の有機脂肪酸溶液に出入りさせるための移送手段と、
前記溶融はんだ液を噴き付ける手段と、
前記有機脂肪酸溶液を噴き付けて過剰に付着したはんだを掻き落とす手段と、を含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の装置。
【請求項11】
前記貯槽は、上層に前記有機脂肪酸溶液が、下層に前記溶融はんだ液が入っていることを特徴とする請求項10に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−69758(P2013−69758A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205921(P2011−205921)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(501307343)日本ジョイント株式会社 (5)
【出願人】(506356450)ホライゾン技術研究所株式会社 (8)
【Fターム(参考)】