説明

はんだ付け装置及びはんだ付け装置の始動方法

【課題】該電磁ポンプのメンテナンスや交換等の作業を容易にすること。また、固化状態のはんだを溶融させてから運転状態に至るまでの時間を大幅かつ安全に短縮すること。
【解決手段】R−ALIP型電磁ポンプ300をはんだ槽101の外側に設け、外部コア301aと移動磁界発生用コイル301bとが一体に形成された駆動体301を挿抜自在に設ける。また、制御装置203が、はんだ槽101内のはんだを固化している状態から溶融した状態へ移行させて始動する際、ヒータ109に電力を供給してはんだ100を加熱すると供に移動磁界発生用コイル301bにも電力を供給して推力パイプ302内のはんだの誘導加熱を併せて行わせ、且つヒータ109への供給電力と移動磁界発生用コイル301bへの供給電力を、はんだ槽101内のはんだが溶融した後又は同時に推力パイプ302内のはんだが溶融する順序となるように制御する構成を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を搭載したプリント配線板のような被はんだ付けワークとはんだの噴流波を接触させてはんだ付けを行い、該電子部品をプリント配線板にはんだ付け実装するためのはんだ付け装置およびはんだ付け装置の始動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送給するべき媒体に直接に電磁力を作用させて推力を発生させ、これをポンプの吐出力および吸い込み力とする電磁ポンプ(LEP:linear electromagnetic pump)には、大別して誘導型(induction type)と伝導型(conduction type)とがある。一般的に、送給するべき媒体への通電が不要な誘導型が多く使用されている例が多い。
【0003】
この誘導型の電磁ポンプには、大別してフラットリニア型(FLIP型:flat linear induction pump)とアニュラリニア型(ALIP型:annular linear induction pump)、そしてヘリカル型(HIP型:helical induction pump)とがあり、それぞれ固有の構成を有している。
【0004】
ALIP型電磁ポンプを使用した電子部品実装用噴流波形成装置の技術として、特許文献1の技術がある。この技術は、ALIP型電磁ポンプそのものを溶融はんだ内で稼働・運転できるように構成し、エネルギー損失を無くしさらに電子部品へのダメージを解消している等々のところに特徴を有している。
【0005】
なお、ALIP型電磁ポンプの例としては、特許文献2が参考になる。
【0006】
誘導型電磁ポンプを使用したはんだ付け装置は、溶融はんだの噴流状態を安定に維持できると供に溶融はんだを送給するパラメータの再現性と安定性が極めて良好で、いつでも同じ条件のはんだ付け実装が可能になって安定したはんだ付け品質を得ることができる特徴を有している。
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、はんだ内にALIP型電磁ポンプを設けているために、該電磁ポンプのメンテナンスや交換の際には、はんだが溶融している状態で電磁ポンプを引き上げなければならないという問題点があった。
【0008】
そこで、特許文献3に開示されるように、このALIP型電磁ポンプをはんだ槽の槽壁の外側に設けることが考えられた。これにより、はんだ槽の槽壁の外側に位置することになった推力発生流路に溶融はんだを吸い込ませ、その後、吐出する溶融はんだをはんだ槽内に送給する構成となり、はんだ槽の外側に位置するALIP型電磁ポンプのメンテナンスや交換が容易になった。
【0009】
一方で、はんだ槽内のはんだを溶融させ予め決めた所定の温度に維持するために、はんだ加熱用のヒータと温度センサ、そして温度制御装置が用いられているが、はんだの融解熱量が大きいために、特許文献3のALIP型電磁ポンプをはんだ槽の槽壁の外側に設ける構成では、はんだ槽内のはんだが溶融しても、前記電磁ポンプの推力発生流路内のはんだの溶融が完了するまでには長時間を要してしまう。
【0010】
そのため、はんだ付け装置の始動を開始してから噴流波を形成することが可能になるまでの始動準備時間が長くなるという問題が生じた。
【0011】
そこで、特許文献3では、吹き口にキャップを設けて該吹き口を閉塞した状態において推力パイプ内のはんだの誘導加熱を行うことが開示されている。また、前記キャップから温度センサを垂れ下げて推力パイプ内のはんだの温度を測定しながら前記の誘導加熱を行い、推力パイプ内のはんだが溶融したことを温度センサで検出したら電磁ポンプへの電力供給を遮断することが開示されている。
【特許文献1】特開2003−142819号公報
【特許文献2】特開平5−260719号公報
【特許文献3】2005−205479号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献3の技術では、はんだ付け装置の運転開始や運転停止の際に、吹き口にキャップを設けたり外したりする作業が必要であり、しかも、キャップの取り外しははんだが溶融して高温(220℃〜260℃)になってから行う必要があるので、その作業は大変に危険である。また、温度センサを垂れ下げたキャップを推力パイプ内に垂れ下げて吹き口を閉塞する作業は、はんだが溶融しているうちに温度センサを推力パイプ内のはんだ内に垂れ下げる必要があるので、はんだ付け作業が終了した直後のはんだが溶融している際に行う必要があり、しかも、この温度センサを垂れ下げたキャップを推力パイプから抜き取り吹き口からキャップを取り外す作業もはんだが溶融して高温の状態において行う必要があり、大変危険な作業を2回も行う必要がある。
【0013】
また、特許文献3の技術では、はんだ槽内のはんだが固化している状態で該はんだ槽内の下方に位置するはんだのみが溶融した際に、この溶融による体積膨張により強大な膨張圧力が溶融はんだに生じることを考慮していない。すなわち、この爆発的圧力を有する高温のはんだが固化したはんだの引け巣(凝固収縮によって発生した巣)等の隙間や推力パイプまたは内部コアと固化したはんだとの間に生じた隙間(凝固収縮によって発生した隙間)から数mにもおよぶジェット噴流となって噴出し、周囲の作業者や装置に吹きかかるという恐ろしい現象を生じることを考慮していない。これは、当業者の良く知るところである。特許文献3には、吹き口にキャップを螺合する等の手段は見当たらないが、これでは前記ジェット噴流によってキャップが吹き飛んでしまうので、意味がない。
【0014】
仮に、螺合等の手段によりキャップを設けるにしても、そのような手段により吹き口を閉塞するキャップを設けておいてはんだ槽の下方のはんだを溶融するという作業は、当業者が行ってはいけない行為なのである。キャップを外す作業の際に、溶融はんだが前記のようなジェット噴流となって作業者に襲いかかる危険性があるからである。
【0015】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、ALIP型電磁ポンプのメンテナンスや交換を容易に行うことができると供に、固化状態のはんだを溶融させてから運転状態に至らせなければならないはんだ付け装置の始動時間を安全に短縮する仕組を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、はんだ槽にALIP型電磁ポンプを設ける構成とその電力供給配分に特徴がある。
【0017】
(1)アニュラリニア型(ALIP型:annular linear induction pump)電磁ポンプの推力パイプの一端を封止してキャップ形状にすると供にこの推力パイプの内側に挿入される内部コアの軸芯に沿って反転流路を設けることで前記推力パイプと前記内部コアとの間に推力発生流路を形成しこの推力発生流路と前記反転流路とで送給流路を形成した流路反転型のアニュラリニア型(R−ALIP型:return through type annular linear induction pump)電磁ポンプの推力パイプがはんだ槽の槽壁に設けられ、また、前記反転流路が形成された内部コアの反転流路と吹き口体の流入口とが連繋され前記吹き口体の吹き口上に溶融はんだの噴流波を形成するはんだ付け装置であって、さらに前記はんだ槽にははんだを加熱し溶融するヒータとはんだの温度を検出する温度センサとが設けられ、他方でこれらヒータと温度センサに接続される温度制御装置と前記電磁ポンプの移動磁界発生用コイルに電力を供給する多相交流電源装置と前記温度制御装置および前記多相交流電源装置を制御する制御装置とを有するはんだ付け装置において、次のように電力配分を制御する。
【0018】
すなわち、はんだ槽内のはんだを固化している状態から溶融した状態へ移行させて始動する際に前記ヒータに電力を供給して溶融はんだを加熱すると供に前記電磁ポンプの移動磁界発生用コイルにも電力を供給して前記推力パイプ内のはんだの誘導加熱を併せて行い、前記ヒータへの供給電力量と前記電磁ポンプの移動磁界発生用コイルへの供給電力量の割合をはんだ槽内のはんだが溶融した後(又は同時)に推力パイプ内のはんだが溶融する順序となる割合に制御するはんだ付け装置の始動方法である。
【0019】
これにより、ヒータからの熱エネルギーの伝導が少ない推力パイプ内のはんだにも熱エネルギーを供給することが可能になり、はんだ付け装置の始動時間を短縮することができるようになる。かつ、はんだの溶融がはんだ槽内のはんだが溶融した後(又は同時)に推力パイプ内のはんだが溶融する順序となるように制御されるため、推力パイプ内のはんだの溶融による体積膨脹によって、この溶融はんだがはんだ槽内の固化したはんだの隙間(引け巣等による隙間)からジェット噴流(数メートルの高さにおよぶ事がある)することも無く、安全に始動することができる。
【0020】
(2)前記(1)のはんだ付け装置の始動方法において、電磁ポンプの移動磁界発生用コイルに電力を供給する際の推力方向が溶融はんだを吹き口体の吹き口から噴流させる方向とは逆方向であるはんだ付け装置の始動方法である。
【0021】
これにより、誘導加熱の際の推力によって送給される溶融はんだが、吹き口体の吹き口方向には向かなくなるので、前記のような溶融はんだのジェット噴流を完全に阻止することができるようになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ALIP型電磁ポンプがはんだ槽の外側に設けられているので、特に移動磁界発生用コイルが挿抜自在に設けられるので、該電磁ポンプのメンテナンスや交換等の作業を容易に行うことができるようになる。
【0023】
また、固化状態のはんだを溶融させてから運転状態に至るまでの時間を大幅かつ安全に短縮することができる。
【0024】
従って、メンテナンス時間や始動時間が短縮されてはんだ付け実装の生産性を大幅に高めることができるようになる等の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
〔第1実施形態〕
以下、本発明におけるはんだ付け装置の構成例と始動方法の例とを説明する。
【0026】
図1は、本発明の第1実施形態を示すはんだ付け装置の構成の一例を説明する図であり、はんだ槽部分は縦断面で示し、制御系の構成をブロック図で示してある。
【0027】
図2は、本発明のはんだ付け装置の全容を説明する斜視図である。
【0028】
図3は、本発明のはんだ付け装置のはんだ槽に設けられる推力パイプと、この推力パイプ内に挿入される内部コアと、推力パイプに挿抜自在に設けられる外部コアおよび移動磁界発生用コイルの挿抜関係を説明する分解斜視図である。なお、図1〜図3では、同一のものには同一の符号を付してある。
【0029】
〔ハードウェア構成〕
まず、図1〜図3を用いて、本発明の第1実施形態を示すはんだ付け装置のハードウェア構成について説明する。
【0030】
101ははんだ槽である。このはんだ槽101内には槽底や槽壁に沿ってヒータ109が設けてあり、該はんだ槽101内に収容されたはんだ100を加熱して溶融させ、目的とする温度に保持するように構成されている。
【0031】
201は温度制御装置であり、はんだ100の温度を制御する。この温度制御装置201は、温度センサ106の温度検出結果を参照し、はんだ100の温度が予め指示された温度になるようにヒータ109に供給する電力を制御する仕組みである。
【0032】
また、はんだ槽101の槽底の推力パイプ取り付け孔108には、ALIP型電磁ポンプ300の推力パイプ302が設けてある。この推力パイプ302は、槽底の推力パイプ取り付け孔108に溶接やねじ込み等の方法で取り付けてある。
【0033】
また、この推力パイプ302内に、その中心軸に反転流路304を設けたパイプ状の内部コア303を挿抜自在に挿入する構成となっている。そして、この内部コア303の反転流路304と吹き口体102の流入口107が連繋するように構成されている。
【0034】
吹き口体102は、その内部に溶融はんだの流れを整える整流板105を有し、その吹き口103がはんだ液面上に位置している。すなわち、この吹き口103から溶融はんだを噴流させると該吹き口上に噴流波110が形成されて、該吹き口103に隣接して設けられた案内板104を流れ下る仕組みとなっている。
【0035】
なお、内部コア303や吹き口体102は、図示しないサポート手段により、はんだ槽101に取り付け/取り外しが可能に固定されている。
【0036】
また、推力パイプ302の外側には、内部コア303との間に移動磁界を発生させる外部コア301aと移動磁界発生用コイル301bとが一体に形成された駆動体301が、回転可能かつ挿抜可能に設けられている。この駆動体301(外部コア301aおよび移動磁界発生コイル301b)により、推力パイプ302と内部コア303との間に推力発生流路305が形成され、この推力発生流路305から送出される溶融はんだ100は、内部コア303の反転流路304を通って吹き口体102へ送給される。
【0037】
なお、駆動体301を回転可能にすることで推力パイプ302への密着性を向上させることができると供に、最適な磁界分布を選択して推力を安定させることができる。この構成のALIP型電磁ポンプ300を、流路反転型のアニュラリニア型(R−ALIP型:return through type annular linear induction pump)電磁ポンプと呼称する。
【0038】
なお、ALIP型電磁ポンプ300は、外部コア301aの形状を円柱状に形成することができるため、通常はその外観も円柱状である。また、その内部コア303も円柱状であり、該外部コア301aと内部コア303との環状の空間すなわち流路に移動磁界を発生させ、該流路のはんだに推力を与えて移動させ、吐出力および吸い込み力を発生させる。なお、〔背景技術〕の欄で示した特許文献1に開示されるALIP型の電磁ポンプは、ポンプ内の流路が直線状であることから、ストレートスルー型と呼称されている。
【0039】
このR−ALIP型電磁ポンプ(以下ALIP型電磁ポンプと総称する)は、多相交流電源装置202(例えば、VVVF型3相インバータ電源装置)と接続され、多相交流電力を電磁ポンプの磁界発生用コイル301bに供給する。
【0040】
このように、本発明では、図1のように、ALIP型電磁ポンプ300を、はんだ槽101の槽壁の外側に設け、はんだ槽101の槽壁の外側に位置することになった推力発生流路305に溶融はんだを吸い込ませ、その後、吐出する溶融はんだをはんだ槽内に送給する構成とした。よって、はんだ槽101の外側に位置するALIP型電磁ポンプ300のメンテナンスや交換が容易になった。
【0041】
なお、この多相交流電源装置202は、制御装置203との通信によりその出力電圧や周波数、電力等々が任意に調節され制御される構成である。
【0042】
制御装置203は、コンピュータシステムで構成され、キーボード等の指示操作部204とLCD等の表示部205と、図示しないCPU,ROM,RAM,ハードディスク等を備えている。そして、制御装置203内のCPUがハードディスクに格納されたプログラムをRAM上に読み込んで実行することにより各種制御を行うことができる。
【0043】
制御装置203は、指示操作部204からの指示により上述の多相交流電源装置202の作動を制御する構成である。また、上述の温度制御装置201も制御装置203との通信によりヒータ109への供給電力や温度またPID等の制御特性が任意に調節され制御される構成である。
【0044】
なお、はんだの融点は、はんだの種類により異なる。例を挙げると、従来から使用されてきた錫−鉛はんだ(例えば鉛37%で残部が錫)では約183℃である。また、鉛フリーはんだの錫−亜鉛はんだ(例えば亜鉛9%で残部が錫)では約199℃である。さらに、錫−銀−銅はんだ(例えば銀約3.5%,銅約0.7%,残部が錫)では約220℃である。
【0045】
そのため、使用されるはんだの種類により、被はんだ付けワークであるプリント配線板のはんだ付け実装に際して使用されるはんだの温度は異なるが、プリント配線板に搭載される電子部品の耐熱温度が考慮されるため、約220℃〜260℃程度の範囲で使用される例が最も多い。
【0046】
〔始動制御構成〕
以下、本発明の第1実施形態におけるはんだ付け装置の始動動作制御について説明する。
【0047】
はんだ槽101内のはんだの容積と、はんだの比熱、およびその融解熱量とから、はんだ槽101内のはんだが溶融するために必要な熱量が求まる。他方で、ヒータ109からの供給熱量は供給電力から求まる。これらから、ヒータ109への電力供給を開始してから、はんだ槽101内のはんだが溶融するまでの時間を求めることができる。なお、必要に応じて大気中への逃散熱量の割合を数%程度に定める。
【0048】
また、推力パイプ302内のはんだの容積と、はんだの比熱、およびその融解熱量、そして内部コア303の体積と比熱とから、この推力パイプ302内のはんだが溶融するために必要な熱量が求まる。他方で、電磁ポンプ300ひいては外部コア301aと移動磁界発生用コイル301bが発生する移動磁界による誘導加熱熱量は、ALIP型電磁ポンプ300に供給される電力量と誘導加熱効率(測定によって求まる既定値で例えば数10%程度)とから求まる。そして、これらからALIP型電磁ポンプ300へ電力を供給開始してから、はんだ100が溶融するまでの時間を求めることができる。なお、必要に応じて大気中への逃散熱量の割合を数%程度に定める。
【0049】
そこで、はんだ槽101内のはんだが溶融するために必要な全熱量ひいては全電力量を、ヒータ109に供給する単位時間当たりの供給電力量で除することにより、はんだ槽101内のはんだが溶融するまでの時間を求めることができる。逆に、はんだ槽101内のはんだ100が溶融するために必要な全熱量ひいては全電力量を、目的とする溶融時間で除することにより、ヒータ109に供給するべき単位時間当たりの電力量を求めることができる。
【0050】
同様に、推力パイプ302内のはんだを溶融させるために必要な全熱量ひいては全電力量を、電磁ポンプに供給する単位時間当たりの供給電力量と誘導加熱効率を乗じた値で除することにより、推力パイプ内のはんだが溶融するまでの時間を求めることができる。逆に、推力パイプ302内のはんだが溶融するために必要な全熱量ひいては全電力量を、目的とする溶融時間で除して、更にそれを誘導加熱効率で除することにより、電磁ポンプ300に供給するべき単位時間当たりの電力量を求めることができる。
【0051】
従って、これらの計算方法を利用して、はんだ槽101内のはんだが溶融した後(又は同時)に、推力パイプ302内のはんだが溶融するように、ヒータ109に供給される電力に関する情報(単位時間当たりの電力量または積算電力量)と電磁ポンプ300に供給される電力に関する情報(単位時間当たりの電力量または積算電力量)とを、予め、指示操作部204から制御装置203に設定し、不図示のハードディスク内にデータテーブルとして格納させておく。
【0052】
そして、はんだ付け装置を始動した際に、制御装置203内のCPUが、これらのデータテーブルを参照してヒータ109および電磁ポンプ300に電力を供給制御するように構成する。
【0053】
なお、はんだ槽101内のはんだの液面に近い領域と、推力パイプ302内に温度センサを設けておいて、実測によって、上述のように算出した理論上の供給電力を補正し、その値を制御装置203に設定するようにしても良い。この測定は、次のように行う。すなわち、はんだ付け装置を始動すると、はんだの温度は、その融点に向かって上昇するが、融点では融解熱を供給する必要から、全てのはんだが溶融するまではんだの温度は融点で一定したままになる。そして、全てのはんだが溶融すると溶融はんだの温度が再び上昇する。
【0054】
したがって、この測定において、はんだの温度が融点から上昇を開始したと、上記はんだ槽101内のはんだの液面に近い領域の温度センサ106が検知した時点が、はんだ槽101内のはんだが全て溶融した時点である。また、はんだの温度が融点から上昇を開始したと、上記推力パイプ302内の温度センサが検知した時点が、推力パイプ302内のはんだが全て溶融した時点である。
【0055】
すなわち、はんだ槽101内のはんだの温度が融点から上昇を開始した後に、推力パイプ302内のはんだの温度が融点から上昇を開始するように、ヒータ109に供給さする電力に関する情報(例えば単位時間当たりの電力量または積算電力量)と電磁ポンプ300に供給される電力に関する情報(例えば単位時間当たりの電力量または積算電力量)とを、制御装置203に設定すればよい。なお、両者の時間差は、10分前後あれば安全であるが、同時であっても構わない。また、両者が同時になるように制御装置203の制御をプログラムすることにより、始動時間を最短にすることができる。なお、推力パイプ302内に設ける温度センサは、前述の補正を行うための上記測定にのみ推力パイプ302内に配置するものであって、被はんだ付けワークのはんだ付けを行う際に設けられる(配置される)ものではない。
【0056】
このように、ヒータ109に供給さする電力に関する情報(例えば単位時間当たりの電力量または積算電力量)と電磁ポンプ300に供給される電力に関する情報(例えば単位時間当たりの電力量または積算電力量)等とを、制御装置203に設定し、制御させることによって、固化したままのはんだの下層部で、はんだが先行溶融して膨脹し、この膨脹圧力によって僅かな隙間から溶融はんだがジェット噴流するという危険な状態が発生することを排除することができる。
【0057】
このようにして、はんだ付け装置が始動した後は、溶融はんだが予め決めた所定の温度に到達して、その温度が維持される。そして、この状態でプリント配線板等の被はんだ付けワークのはんだ付けを開始することができる。
【0058】
そして、ALIP型電磁ポンプ300に電力を供給して推力を発生させれば、図1の矢印Aに示すように、はんだ層101から推力発生流路305に溶融はんだが吸い込まれ、推力パイプ302の先端で流れ方向が反転して、内部コア303内の反転流路304に送出された後に、吹き口体102に送給され、整流板105で流れを整えられた後に、吹き口103から噴流して、噴流波110が形成される。
【0059】
なお、上述した始動の際(即ち、推力パイプ302内の反転流路304を誘導加熱する際)の推力方向を、図1において破線矢印Bで示したように、噴流波110を形成する場合とは逆の方向にすることによって、先に説明した溶融はんだがジェット噴流を生じるという危険な状態をより一層確実に排除することができるようになる。即ち、図1に示すように、吹き口体102が電磁ポンプ300に覆い被さった状態なので、溶融はんだのジェット噴流が吹き口体102の存在によって阻止される。
【0060】
以下、図4のフローチャートを参照して、本発明のはんだ付け装置における始動時の制御処理動作について説明する。
【0061】
図4は、本発明のはんだ付け装置における第1の始動時の制御処理動作の一例を示すフローチャートである。なお、このフローチャートの処理は、制御装置203内のCPUがハードディスクに格納されたプログラムをRAM上に読み込んで実行することにより実現される。また、図4中、S101〜S103は各ステップを示す。
【0062】
まず、始動処理が開始されると、制御装置203のCPUは、ステップS101において、ハードディスク内のデータテーブルから設定データをRAM上に読み込む。なお、この設定データは、予めユーザにより、指示操作部204から設定されたものである。具体的には、この設定データは、ヒータ109に供給される電力に関する情報(例えば単位時間当たりの電力量または積算電力量),電磁ポンプ300の移動磁界発生用コイル301bに供給される電力に関する情報(例えば単位時間当たりの電力量または積算電力量)等を含む。なお、ここでは、設定データとしてヒータ109に供給される積算電力量(第1の積算電力量),電磁ポンプ300の移動磁界発生用コイル301bに供給される積算電力量(第2の積算電力量)が設定されているものとして以下を説明する。なお、この設定データは、例えば、上述したような実測によって予め求めたものである。
【0063】
次に、ステップS102において、制御装置203のCPUは、ステップS101で読み込んだ設定データ内のヒータ109に供給する積算電力量(第1の積算電力量)に基づいて、ヒータ109への電力供給を制御するように温度制御装置201を制御する。さらに、制御装置203のCPUは、ステップS101で読み込んだ設定データ内の電磁ポンプ300の移動磁界発生用コイル301bに供給する積算電力量(第2の積算電力量)に基づいて、電磁ポンプ300の移動磁界発生用コイル301bへの電力供給を制御するように多相交流電源装置202を制御する。
【0064】
なお、この時、制御装置203のCPUは、はんだ槽101内のはんだが溶融した後(又は同時)に推力パイプ302内のはんだが溶融する順序となるように、ヒータ109に供給する電力と電磁ポンプ300の移動磁界発生用コイル301bに供給する電力をそれぞれ制御するものとする。即ち、制御装置203のCPUは、ヒータ109に供給する電力の積算量が上記第1の積算電力量に達した後に、電磁ポンプ300の移動磁界発生用コイル301bに供給する電力の積算量が上記第2の積算電力量に達するように(同時でもよい)制御するものとする。
【0065】
なお、制御装置203のCPUは、ヒータ109に供給される電力と、電磁ポンプ300の移動磁界発生用コイル301bに供給される電力を、それぞれ一定の電力とするように制御してもよいし、時系列で変化し一定とならないように制御してもよい。例えば、最初は大きな電力を供給し、積算電力量に近づくと序所に小さい電力を供給するように制御してもよい。また、ヒータ109への電力供給開始と、電磁ポンプ300の移動磁界発生用コイル301bへの電力供給開始を同時に行ってもよいし、時差を設けて行うように制御してもよい。
【0066】
即ち、制御装置203のCPUは、はんだ槽101内のはんだ100を固化している状態から溶融した状態へ移行させて始動する際に、ヒータ109に電力を供給してはんだを加熱すると供に電磁ポンプ300の移動磁界発生用コイル301bにも電力を供給して推力パイプ302内のはんだの誘導加熱を併せて行い、ヒータ109への電力供給と前記電磁ポンプ300の移動磁界発生用コイル301bへの電力供給を、はんだ槽100内のはんだが溶融した後又は同時に推力パイプ内のはんだが溶融する順序となるように制御する構成であれば、どのような方法で制御してもよく、このような制御は、全て本発明に含まれるものである。
【0067】
次に、ステップS103において、制御装置203のCPUは、電磁ポンプ300の移動磁界発生用コイル301bに供給した電力の積算量が、上記第2の積算電力量に達したか否かを判定する。そして、制御装置203のCPUは、電磁ポンプ300の移動磁界発生用コイル301bに供給した電力の積算量が、上記第2の積算電力量に達するまで、引き続き、ヒータ109及び電磁ポンプ300の移動磁界発生用コイル301bへの電力供給を制御する(S102)。
【0068】
そして、ステップS103で、制御装置203のCPUが、電磁ポンプ300の移動磁界発生用コイル301bに供給した電力の積算量が、上記第2の積算電力量に達したと判定した場合には、制御装置203のCPUは、本フローチャートの始動処理を終了し、はんだ付け装置の状態を始動モードから運転モードに移行させる。
【0069】
なお、本フローチャートでは、設定データとして、上記第1,2の積算電力量等を制御装置203に設定しておき、該第1,2の積算電力量に基づいてヒータ109,電磁ポンプ300への電力供給を制御し、その際、ヒータ109へ供給する電力量が第1の積算電力量を供給した後に(同時でもよい)電磁ポンプ300へ供給する電力量が第2の積算電力量に達するように制御する構成について示した。しかしながら、設定データとしてヒータ109に供給される単位時間あたりの電力量(第1の電力量),電磁ポンプ300に供給される単位時間あたりの電力量(第2の電力量)を制御装置203に設定しておき、制御装置203は単に、前記第1,2の電力量に基づく電力をヒータ109,電磁ポンプ300へそれぞれ供給するだけで、上述したような、ヒータ109へ供給する電力量が第1の積算電力量を供給した後に(同時でもよい)、電磁ポンプ300へ供給する電力量が第2の積算電力量に達するようになる構成であってもよい。
【0070】
以上説明したように、本実施形態のはんだ付け装置によれば、ALIP型電磁ポンプ300が、はんだ槽101の外側に設けられ、特に移動磁界発生用コイル301bが挿抜自在に設けられるので、該電磁ポンプのメンテナンスや交換等の作業を容易に行うことができる。
【0071】
さらに、はんだ槽101内のはんだ100を固化している状態から溶融した状態へ移行させて始動する際に、ヒータ109に電力を供給してはんだを加熱すると供に電磁ポンプ300の移動磁界発生用コイル301bにも電力を供給して推力パイプ302内のはんだの誘導加熱を併せて行い、ヒータ109への電力供給と前記電磁ポンプ300の移動磁界発生用コイル301bへの電力供給を、はんだ槽100内のはんだが溶融した後又は同時に推力パイプ内のはんだが溶融する順序となるように制御するので、固化状態のはんだを溶融させてから運転状態に至るまでの時間を大幅かつ安全に短縮することができる。
【0072】
従って、メンテナンス時間や始動時間が短縮されてはんだ付け実装の生産性を大幅に高めることができるようになる等の効果を奏する。
【0073】
なお、図示はしないが、溶融はんだの流れ方向が反転する推力パイプの先端位置の外側に補助的なヒータを設け、はんだ付け装置を始動する際に推力パイプ内のはんだの誘導加熱と併せてこの補助ヒータによる加熱を行ってもよい。
【0074】
また、はんだ付け装置によるプリント配線板のはんだ付け実装を行う際に、プリント配線板の種類の変更すなわちはんだ付けを行う機種変更が行われたりする際や、生産業務の休憩時間、等において一時的にはんだの噴流を停止する場合がある。このようなはんだ付け装置の一時的な休止の場合においては、推力パイプ内のはんだの温度低下を防止するために、はんだが噴流しない程度の電力を電磁ポンプに供給してはんだの誘導加熱を行うように制御するとよい。あるいは、前記の補助ヒータに電力を供給するようにしてもよい。
【0075】
〔第2実施形態〕
以下、図5を参照して、本発明の第2実施形態を示すはんだ付け装置の構成について説明する。
【0076】
図5は、本発明の第2実施形態を示すはんだ付け装置の構成の一例を説明する図であり、はんだ槽部分は縦断面で示し、制御系の構成をブロック図で示してある。なお、図1と同一のものには同一の符号を付してある。また、本実施形態の構成と図1に示した第1実施形態の構成との相違点は、はんだ付け装置の最大寸法を変えることなくはんだ槽の容積を大きくするために、はんだ槽101の槽底に駆動体301(外部コア301aおよび移動磁界発生用コイル301b)が嵌入され得るように凹部111を設けた点にある。
【0077】
また、このような構成にすると、電磁ポンプ300で発生した熱損失を推力発生流路305からだけではなく駆動体301(外部コア301aおよび移動磁界発生用コイル301b)からはんだ槽101とその内部のはんだ100に直接的に伝導させ、はんだ付け装置全体で見た総合エネルギー効率も高めることができるようになる。
【0078】
なお、はんだ槽101の容積を増大させて、はんだ収容量を大きくすることにより、被はんだ付けワークが噴流波に接触した際の、はんだの温度の低下量を少なくすることが可能になり、大量生産を行う際にはんだ温度を安定に維持できる利点がある。
【0079】
また、本実施形態では、推力パイプ302の下端部にドレン306(ドレン開口307,開閉弁308)を設けている。これは推力パイプ302を通して、はんだ槽内のはんだを排出させるためのものである。ドレン実行時(開閉弁308を開けてドレン開口からはんだを排出する時)に、電磁ポンプ300を作動させせることにより、その推力によってはんだの排出を速めることができる。
【0080】
以上、一実施形態について示したが、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0081】
以上のように、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記録媒体を、システムあるいは装置に供給する。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、本発明の目的が達成されることは言うまでもない。
【0082】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0083】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形(各実施形態の有機的な組合せを含む)が可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。また、上述した各実施形態およびその変形例を組み合わせた構成も全て本発明に含まれるものである。
【0084】
以上説明したように、本発明のはんだ付け装置は、はんだ槽101の槽壁の外側にALIP型電磁ポンプ300を設ける構成とその電力供給配分に特徴がある。
【0085】
まず、アニュラリニア型(ALIP型:annular linear induction pump)電磁ポンプの推力パイプ302の一端を封止してキャップ形状にすると供に、この推力パイプ302の内側に挿入される内部コア303の軸芯に沿って反転流路304を設けることで、前記推力パイプ302と前記内部コア303との間に推力発生流路305を形成し、この推力発生流路305と前記反転流路304とで送給流路を形成した流路反転型のアニュラリニア型(R−ALIP型:return through type annular linear induction pump)電磁ポンプ300の推力パイプ302が、はんだ槽101の槽壁に設けられ、前記反転流路304が形成された内部コア303の反転流路304と吹き口体102の流入口107とが連繋され前記吹き口体102の吹き口103上に溶融はんだの噴流波110を形成するはんだ付け装置であって、さらに前記はんだ槽101に、ははんだを加熱し溶融するヒータ109とはんだの温度を検出する温度センサ106とが設けられ、他方でこれらヒータ109と温度センサ106に接続される温度制御装置201と前記電磁ポンプ300の移動磁界発生用コイル301bに電力を供給する多相交流電源装置202と前記温度制御装置201および前記多相交流電源装置202を制御する制御装置203とを有するはんだ付け装置において、次のように電力配分を制御する。
【0086】
すなわち、はんだ槽101内のはんだを固化している状態から溶融した状態へ移行させて始動する際に、前記ヒータ109に電力を供給して溶融はんだを加熱すると供に前記電磁ポンプ300の移動磁界発生用コイル301bにも電力を供給して前記推力パイプ302内のはんだの誘導加熱を併せて行い、前記ヒータ109への供給電力量と前記電磁ポンプ300の移動磁界発生用コイル301bへの供給電力量の割合をはんだ槽101内のはんだが溶融した後又は同時に推力パイプ302内のはんだが溶融する順序となる割合に制御する構成とする。
【0087】
このはんだ付け装置の始動制御(始動方法)により、ヒータからの熱エネルギーの伝導が少ない推力パイプ内のはんだにも熱エネルギーを供給することが可能になり、はんだ付け装置の始動時間を短縮することができるようになる。かつ、はんだの溶融がはんだ槽内のはんだが溶融した後又は同時に推力パイプ内のはんだが溶融する順序となるように制御されるため、推力パイプ内のはんだの溶融による体積膨脹によって、この溶融はんだがはんだ槽内の固化したはんだの隙間(引け巣等による隙間)からジェット噴流(数メートルの高さにおよぶ事がある)することも無く、安全に始動することができる。
【0088】
さらに、上述の構成のはんだ付け装置の始動制御(始動方法)において、電磁ポンプ300の移動磁界発生用コイル301bに電力を供給する際の推力方向が溶融はんだを吹き口体102の吹き口103から噴流させる方向とは逆方向にする構成とする。これにより、誘導加熱の際の推力によって送給される溶融はんだが、吹き口体102の吹き口103方向には向かなくなるので、前記のような溶融はんだのジェット噴流を完全に阻止することができるようになる。
【0089】
従って、メンテナンス時間や始動時間が短縮され、さらに、安全に始動可能となり、はんだ付け実装の生産性及び安全性を大幅に高めることができる等の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係るはんだ付け装置は、電子部品をプリント配線板にはんだ付け実装する際に使用される。本発明により、はんだ付け装置のメンテナンス休止時間の短縮と始動時間の短縮が可能になり、電磁ポンプ特有の高品質のはんだ付け実装を高い生産性において安全に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第1実施形態を示すはんだ付け装置の構成の一例を説明する図である。
【図2】本発明のはんだ付け装置の全容を説明する斜視図である。
【図3】本発明のはんだ付け装置のはんだ槽に設けられる推力パイプと、この推力パイプ内に挿入される内部コアと、推力パイプに挿抜自在に設けられる外部コアおよび移動磁界発生用コイルの挿抜関係を説明する分解斜視図である。
【図4】本発明のはんだ付け装置における第1の始動時の制御処理動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態を示すはんだ付け装置の構成の一例を説明する図である。
【符号の説明】
【0092】
100 はんだ
101 はんだ槽
106 温度センサ
109 ヒータ
201 温度制御装置
202 多相交流電源装置
203 制御装置
204 指示操作部
300 反転式ALIP型電磁ポンプ
301 駆動体
301a 外部コア
301b 移動磁界発生用コイル
302 推力パイプ
303 内部コア
304 反転流路
305 推力発生流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ槽に収容したはんだをヒータにより加熱溶融し、該溶融はんだにアニュラリニア型電磁ポンプにより吐出力を与えて吹き口体の吹き口から溶融はんだを噴流させて、該吹き口上に形成される噴流波を被はんだ付けワーク接触させてはんだ付けを行うはんだ付け装置であって、
前記アニュラリニア型電磁ポンプは、該アニュラリニア型電磁ポンプの推力パイプの一端を封止してキャップ形状にすると供に、この推力パイプの内側に挿入される内部コアの軸芯に沿って反転流路を設けることで、前記推力パイプと前記内部コアとの間に推力発生流路を形成し、この推力発生流路と前記反転流路とで送給流路を形成した流路反転型のアニュラリニア型電磁ポンプであり、さらに、前記推力パイプは、前記はんだ槽の槽壁に設けられた穴に連繋され、且つ、前記内部コアに設けられた反転流路と前記吹き口体に設けられた流入口とが連繋されたものであり、
また、前記ヒータ及び前記アニュラリニア型電磁ポンプの移動磁界発生用コイルへの電力供給を制御する制御手段を有するものであり、
前記制御手段は、前記はんだ槽内のはんだを固化している状態から溶融した状態へ移行させて始動する際に、前記ヒータに電力を供給して溶融はんだを加熱すると供に前記電磁ポンプの移動磁界発生用コイルにも電力を供給して前記推力パイプ内のはんだの誘導加熱を併せて行わせるものであり、且つ、前記ヒータへの供給電力と前記電磁ポンプの移動磁界発生用コイルへの供給電力を、前記はんだ槽内のはんだが溶融した後又は同時に推力パイプ内のはんだが溶融する順序となるように制御することを特徴とするはんだ付け装置。
【請求項2】
予め設定される、前記はんだ槽内のはんだを固化している状態から溶融した状態へ移行させるために必要な前記ヒータに供給する電力に関する情報を示す第1の供給電力情報と、前記推力パイプ内のはんだを誘導加熱して前記推力パイプ内のはんだを溶融した状態へ移行させるために必要な前記移動磁界発生用コイルに供給する電力に関する情報を示す第2の供給電力情報とを記憶する記憶手段を有し、
前記制御手段は、前記記憶手段に記憶される前記第1の供給電力情報と前記第2の供給電力情報とに基づいて、前記ヒータへの供給電力と前記電磁ポンプの移動磁界発生用コイルへの供給電力を、前記はんだ槽内のはんだが溶融した後又は同時に推力パイプ内のはんだが溶融する順序となるように制御することを特徴とする請求項1記載のはんだ付け装置。
【請求項3】
前記第1の供給電力情報は、前記はんだ槽内のはんだを固化している状態から溶融した状態へ移行させるために必要な前記ヒータに供給する電力の積算電力量を示すものであり、
前記第2の供給電力情報は、前記推力パイプ内のはんだを誘導加熱して前記推力パイプ内のはんだを溶融した状態へさせるために必要な前記移動磁界発生用コイルに供給する電力の積算電力量を示すことを特徴とする請求項2記載のはんだ付け装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記始動の際に、前記移動磁界発生用コイルに電力を供給する際の推力方向を、溶融はんだを吹き口体の吹き口から噴流させる方向とは逆方向に制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のはんだ付け装置。
【請求項5】
はんだ槽に収容したはんだをヒータにより加熱溶融し、該溶融はんだにアニュラリニア型電磁ポンプにより吐出力を与えて吹き口体の吹き口から溶融はんだを噴流させて、該吹き口上に形成される噴流波を被はんだ付けワーク接触させてはんだ付けを行うはんだ付け装置の始動方法であって、
前記アニュラリニア型電磁ポンプは、該アニュラリニア型電磁ポンプの推力パイプの一端を封止してキャップ形状にすると供に、この推力パイプの内側に挿入される内部コアの軸芯に沿って反転流路を設けることで、前記推力パイプと前記内部コアとの間に推力発生流路を形成し、この推力発生流路と前記反転流路とで送給流路を形成した流路反転型のアニュラリニア型電磁ポンプであり、さらに、前記推力パイプは、前記はんだ槽の槽壁に設けられた穴に連繋され、且つ、前記内部コアに設けられた反転流路と前記吹き口体に設けられた流入口とが連繋されたものであり、
前記はんだ槽内のはんだを固化している状態から溶融した状態へ移行させて始動する際に、前記ヒータに電力を供給して溶融はんだを加熱すると供に前記電磁ポンプの移動磁界発生用コイルにも電力を供給して前記推力パイプ内のはんだの誘導加熱を併せて行わせ、且つ、前記はんだ槽内のはんだが溶融した後又は同時に推力パイプ内のはんだが溶融する順序となるように、前記ヒータへの供給電力と前記電磁ポンプの移動磁界発生用コイルへの供給電力を制御するステップを有することを特徴とするはんだ付け装置の始動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−90379(P2007−90379A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282012(P2005−282012)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000232450)日本電熱計器株式会社 (25)
【Fターム(参考)】