説明

ひび割れ深さ計測方法

【課題】セメント硬化物の表面から内部に向かって形成されたひび割れ深さを正確に計測することができるひび割れ深さ計測方法を提供する。
【解決手段】ひび割れ深さ計測方法では、ひび割れ深さが、第1式:d=−α・λ・InFによって算出され、第1式において、dが、ひび割れ深さ(mm)、λが、主要波長(mm)、Fが、セメント硬化物の表面を伝播して第2センサ13に検出された第2表面波のうち、表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第2マイナス側振幅を、セメント硬化物の表面を伝播して第1センサ12に検出された第1表面波のうち、表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第1マイナス側振幅で除した振幅比率であり、αが、縦軸に前記(F)を示し、横軸にひび割れ深さ(d)/主要波長(λ)の比率を示す相関関係図から近似式:y=αebxを導き、その近似式から算出した定数(0.381)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント硬化物に生じたひび割れの深さを計測するひび割れ深さ計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物に生じたひび割れ位置から所定寸法離間した打撃位置を鋼球ハンマーによって打撃し、それによってコンクリート構造物を伝播する表面波を加速度センサを利用して検出しつつ、検出した表面波に基づいてひび割れ深さを計測するひび割れ深さの計測方法がある(特許文献1参照)。この計測方法においてひび割れ深さは、式:H=C1・λ・In(x)+C2で算出される。ここで、(H)はコンクリート構造物の表面からのひび割れ深さ、(λ)は表面波の波長、(x)は振幅比、(C1)および(C2)は理論または試験定数である。振幅比(x)は、ひび割れ後に各センサで検出した信号振幅(補正済み)を、ひび割れ前に各センサで検出した信号振幅(補正済み)で除した値である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−12933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示のひび割れ深さの計測方法は、コンクリート構造物を伝播する弾性波のうちの表面波を検出し、その表面波に基づいてひび割れ深さを計測するが、打撃後のどの時点での表面波を採用するかが明確ではない。表面波は、それ自体が時間の経過とともに減衰するとともに、時間の経過によって表面波に反射波や回析波が含まれるから、表面波の検出時点によって各表面波の波長や波形が相違し、それら相違した表面波を採用すると、それぞれ異なるひび割れ深さが計測され、正確なひび割れ深さを計測することができない場合がある。
【0005】
本発明の目的は、セメント硬化物の表面から内部に向かって形成されたひび割れ深さを正確に計測することができるひび割れ深さ計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の前提は、セメント硬化物の表面から内部に向かって形成されたひび割れ位置から所定寸法離間した打撃位置を所定の直径を有する鋼球ハンマーによって打撃してセメント硬化物に弾性波を発生させ、セメント硬化物を伝播するその弾性波を検出しつつ、検出した弾性波に基づいてセメント硬化物のひび割れ深さを計測するひび割れ深さ計測方法である。
【0007】
前記前提における本発明の第1の特徴は、ひび割れ深さ計測方法が、ひび割れ位置と打撃位置との間の第1設置位置に設置されて打撃位置からセメント硬化物の表面を伝播する第1表面波を検出する第1センサと、ひび割れ位置を挟んで第1設置位置の反対側の第2設置位置に設置されて打撃位置からセメント硬化物の表面を伝播してひび割れ位置を通過した第2表面波を検出する第2センサとを利用し、
【0008】
ひび割れ深さが、第1式
【数1】

によって算出され、
【0009】
第1式において、dが、ひび割れ深さ(mm)、λが、主要波長(mm)、Fが、セメント硬化物の表面を伝播して第2センサに検出された第2表面波のうち、表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第2マイナス側振幅を、セメント硬化物の表面を伝播して第1センサに検出された第1表面波のうち、表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第1マイナス側振幅で除した振幅比率であり、αが、縦軸に(F)を示し、横軸にひび割れ深さ(d)/主要波長(λ)の比率を示す相関関係図から近似式:y=αebxを導き、その近似式から算出した定数(0.381)であることにある。
【0010】
前記前提における本発明の第2の特徴は、ひび割れ深さ計測方法が、ひび割れ位置と打撃位置との間の第1設置位置に設置されて打撃位置からセメント硬化物の表面を伝播する第1表面波を検出する第1センサと、ひび割れ位置を挟んで第1設置位置の反対側の第2設置位置に設置されて打撃位置からセメント硬化物の表面を伝播してひび割れ位置を通過した第2表面波を検出する第2センサとを利用し、
【0011】
ひび割れ深さが、第1式
【数2】

によって算出され、
【0012】
第1式において、dが、ひび割れ深さ(mm)、λが、主要波長(mm)、Fが、セメント硬化物の表面を伝播して第2センサに検出された第2表面波のうち、表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第2プラス側振幅を、セメント硬化物の表面を伝播して第1センサに検出された第1表面波のうち、表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第1プラス側振幅で除した振幅比率であり、αが、縦軸に(F)を示し、横軸にひび割れ深さ(d)/主要波長(λ)の比率を示す相関関係図から近似式:y=αebxを導き、その近似式から算出した定数(0.398)であることにある。
【0013】
前記前提における本発明の第3の特徴は、ひび割れ深さ計測方法が、ひび割れ位置と打撃位置との間の第1設置位置に設置されて打撃位置からセメント硬化物の表面を伝播する第1表面波を検出する第1センサと、ひび割れ位置を挟んで第1設置位置の反対側の第2設置位置に設置されて打撃位置からセメント硬化物の表面を伝播してひび割れ位置を通過した第2表面波を検出する第2センサとを利用し、
【0014】
ひび割れ深さが、第1式
【数3】

によって算出され、
【0015】
第1式において、dが、ひび割れ深さ(mm)、λが、主要波長(mm)、Fが、セメント硬化物の表面を伝播して第2センサに検出された第2表面波のうち、表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第2マイナス側振幅と表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第2プラス側振幅との第2絶対値を、セメント硬化物の表面を伝播して第1センサに検出された第1表面波のうち、表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第1マイナス側振幅と表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第1プラス側振幅との第1絶対値で除した振幅比率であり、αが、縦軸に(F)を示し、横軸にひび割れ深さ(d)/主要波長(λ)の比率を示す相関関係図から近似式:y=αebxを導き、その近似式から算出した定数(0.394)であることにある。
【0016】
前記第1〜第3の特徴を有する本発明の一例としては、(λ)が、第2式
【数4】

によって算出され、第2式において、cが、鋼球ハンマーの直径によって異なる表面波の平均伝搬速度(m/sec)、fが、重心周波数(kHz)であり、
【0017】
(f)が、第3式
【数5】

によって算出され、第3式において、X(f)が、周波数(f)における振幅値、Nが、サンプリング数である。
【0018】
前記第1〜第3の特徴を有する本発明の他の一例として、ひび割れ深さ計測方法では、第1式から第3式による計算がコンピュータを利用して行われ、コンピュータが、第3式に基づいて重心周波数(f)を求める重心周波数算出手段と、第2式に基づいて主要波長(λ)を算出する主要波長算出手段と、第1式に基づいてひび割れ深さ(d)を算出するひび割れ深さ算出手段と、算出した重心周波数(f)と主要波長(λ)とひび割れ深さ(d)とを記憶する算出結果記憶手段とを実行する。
【0019】
前記第1〜第3の特徴を有する本発明の他の一例として、ひび割れ深さ計測方法では、打撃位置と第1設置位置と第2設置位置とが略一直線上に並び、打撃位置から第1設定位置までの離間寸法と第1設定位置からひび割れ位置までの離間寸法とひび割れ位置から第2設置位置までの離間寸法とが同一であり、それら離間寸法が90〜110mmの範囲にある。
【0020】
前記第1〜第3の特徴を有する本発明の他の一例として、ひび割れ深さ計測方法では、第1および第2センサの表面波検出間隔が1〜5μsecの範囲にあり、第1および第2センサの表面波検出時間が0.01〜0.03秒の範囲にある。
【発明の効果】
【0021】
第1の特徴を有する本発明のひび割れ深さ計測方法によれば、ひび割れ深さを算出する第1式において、振幅比率(F)として第2センサに検出された第2表面波のうちの表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第2マイナス側振幅を第1センサに検出された第1表面波のうちの表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第1マイナス側振幅で除した比率が採用されているから、振幅比率(F)を導くための表面波に反射波や回析波等の余分な波が含まれることはない。このひび割れ深さ計測方法は、表面波初動の直後にマイナス側に振れた1種類の表面波のみをひび割れ深さの計測に利用することで、各種複数の表面波や他の波が混合された表面波を利用することによるひび割れ深さの計測誤差を防ぐことができ、セメント硬化物の表面から内部に向かって形成されたひび割れの正確な深さを計測することができる。
【0022】
第2の特徴を有する本発明のひび割れ深さ計測方法によれば、ひび割れ深さを算出する第1式において、振幅比率(F)として第2センサに検出された第2表面波のうちの表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第2プラス側振幅を第1センサに検出された第1表面波のうちの表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第1プラス側振幅で除した比率が採用されているから、振幅比率(F)を導くための表面波に反射波や回析波が含まれることはない。このひび割れ深さ計測方法は、表面波初動の後に最初にプラス側に振れた1種類の表面波のみをひび割れ深さの計測に利用することで、各種複数の表面波や他の波が混合された表面波を利用することによるひび割れ深さの計測誤差を防ぐことができ、セメント硬化物の表面から内部に向かって形成されたひび割れの正確な深さを計測することができる。
【0023】
第3の特徴を有する本発明のひび割れ深さ計測方法によれば、ひび割れ深さを算出する第1式において、振幅比率(F)として第2センサに検出された第2表面波のうちの表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第2マイナス側振幅と表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第2プラス側振幅との第2絶対値を第1センサに検出された第1表面波のうちの表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第1マイナス側振幅と表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第1プラス側振幅との第1絶対値で除した比率が採用されているから、振幅比率(F)を導くための表面波に反射波や回析波が含まれることはない。このひび割れ深さ計測方法は、表面波初動の直後にマイナス側に振れた表面波と表面波初動の後に最初にプラス側に振れた表面波との絶対値をひび割れ深さの計測に利用することになり、各種複数の表面波や他の波が混合された表面波を利用することによるひび割れ深さの計測誤差を防ぐことができ、セメント硬化物の表面から内部に向かって形成されたひび割れの正確な深さを計測することができる。
【0024】
第2式によって主要波長(λ)を算出し、第3式によって重心周波数(f)を算出するひび割れ深さ計測方法は、検出された弾性波の中から第3式を利用して最も影響がある弾性波成分の周波数(重心周波数)を求めることができ、その重心周波数を利用して主要波長を求めるから、弾性波成分に他の不必要な成分が含まれることはなく、弾性波成分に他の不必要な成分が含まれることによるひび割れ深さの計測誤差を防ぐことができ、セメント硬化物の表面から内部に向かって形成されたひび割れの正確な深さを計測することができる。
【0025】
第1式から第3式による計算がコンピュータを利用して行われるひび割れ深さ計測方法は、各計算をコンピュータに行わせることで、第1および第2センサが検出した弾性波のうちの主要波長(λ)や最も影響がある弾性波成分の重心周波数(f)を正確に計算することができ、さらに、算出した主要波長(λ)や重心周波数(f)に基づいてセメント硬化物の表面から内部に向かって形成されたひび割れの正確な深さを計算することができる。
【0026】
打撃位置と第1設置位置と第2設置位置とが略一直線上に並び、打撃位置から第1設定位置までの離間寸法と第1設定位置からひび割れ位置までの離間寸法とひび割れ位置から第2設置位置までの離間寸法とが同一であるひび割れ深さ計測方法は、それらの位置が異なる寸法で離間すると、第1および第2センサによって検出される表面波の整合性がとれないが、打撃位置や第1設置位置、ひび割れ位置、第2設置位置が等間隔で一直線上に並ぶことで、第1および第2センサによって検出される表面波の整合性をとることができるとともに、それらセンサによって検出される表面波の検出誤差を防ぐことができ、セメント硬化物の表面から内部に向かって形成されたひび割れの正確な深さを計測することができる。
【0027】
第1および第2センサの表面波検出間隔が1〜5μsecであり、第1および第2センサの表面波検出時間が0.01〜0.03秒であるひび割れ深さ計測方法は、表面波検出間隔を前記範囲に設定することで、第1および第2センサによって検出された表面波の正確な波形を画くことができ、その表面波の波形に基づいてセメント硬化物の表面から内部に向かって形成されたひび割れの正確な深さを計測することができる。また、表面波検出時間を前記範囲にすることで、検出される波形が反射や回析等の現象による余分なエネルギー成分の積み重ねであることを確認することができるから、波形から表面波の初動振幅を正確に認定することができ、検出される表面波が反射波や回析波等の余分な波の影響を受けることなく、表面波のみを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】一例として示すひび割れ深さ計測システムの概略構成図。
【図2】一例として示す試験用コンクリート構造物の上面図。
【図3】一例として示す試験用コンクリート構造物の上面図。
【図4】試験用コンクリート構造物の側面図。
【図5】試験用コンクリート構造物の配合を示す図。
【図6】一例として示す鋼球ハンマーの斜視図。
【図7】健全部および異なる深さのひび割れ位置において検出した波形の一例を示す図。
【図8】直径15mmの鋼球ハンマーによって発生させた弾性波の検出波形の一例を示す図。
【図9】異なる直径の鋼球ハンマーによる重心周波数および主要波長を表す図。
【図10】第1のケースによって算出した振幅比率(F)とd/λとの相関関係を示す図。
【図11】第2のケースによって算出した振幅比率(F)とd/λとの相関関係を示す図。
【図12】第3のケースによって算出した振幅比率(F)とd/λとの相関関係を示す図。
【図13】初期画面の一例を示す図。
【図14】計算式選択画面の一例を示す図。
【図15】計測開始画面の一例を示す図。
【図16】計測結果画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
一例として示すひび割れ深さ計測システム11の概略構成図である図1等を参照し、本発明に係るひび割れ深さ計測方法の詳細を説明すると、以下のとおりである。ひび割れ深さ計測方法を実行するひび割れ深さ計測システム11は、セメント硬化物の表面から内部に向かって形成されたひび割れ位置の近傍に設置される第1および第2センサ12,13と、それらセンサ12,13が検出した表面波に基づいてセメント硬化物のひび割れ深さ(d)(図4参照)を計算するコンピュータ14とから構成されている。セメント硬化物には、コンクリートによって作られたダムやトンネル、壁等のコンクリート構造物(モルタルで作られた構造物を含む)が含まれる。
【0030】
セメント硬化物は、荷重や乾燥収縮、温度変化、鉄筋腐食等による影響によって劣化し、それによって任意の箇所にひび割れが発生する場合がある。セメント硬化物に生じたひび割れは、その幅や深さ、発生箇所、ひび割れの分布度等によってセメント硬化物の機能を大きく低下させる。セメント硬化物の機能を回復させるためには補修が必要であるが、補修の前にひび割れ深さを計測する必要がある。このシステム11によって実行されるひび割れ深さ計測方法は、セメント硬化物に生じたひび割れ位置から所定寸法離間した打撃位置18A(図2,3参照)を所定の直径を有する鋼球ハンマー17(図6参照)によって打撃し、それによってセメント硬化物に弾性波を発生させ、セメント硬化物を伝播する表面波(Rayleigh波)を検出しつつ、検出した表面波に基づいてひび割れ深さ(d)を計測する。
【0031】
図2,3は、一例として示す試験用コンクリート構造物15,16の上面図であり、図4は、試験用コンクリート構造物15,16の側面図である。図5は、試験用コンクリート構造物15,16の配合を示す図であり、図6は、一例として示す鋼球ハンマー17の斜視図である。第1および第2センサ12,13には、30kHzまで平坦な特性を示す加速度センサが使用されている。第1および第2センサ12,13は、ひび割れ位置20を挟んでコンクリート構造物15,16の表面に対向設置される。それらセンサ12,13は、インターフェイスを介してコンピュータ14に接続されている。第1センサ12は、ひび割れ位置20から所定寸法離間した第1設置位置19に設置される。第2センサ13は、ひび割れ位置20を挟んで第1設置位置19の反対側であってひび割れ位置20から所定寸法離間した第2設置位置21に設置される。
【0032】
打撃位置18Aと第1センサ12を設置する第1設置位置19とひび割れ位置20と第2センサ13を設置する第2設置位置21と打撃位置18Bとは、図2〜4に示すように、略一直線上に並んでいる。なお、打撃位置18Aから第1設定位置19までの離間寸法や第1設定位置19からひび割れ位置20までの離間寸法、ひび割れ位置20から第2設置位置21までの離間寸法、第2設置位置21から打撃位置18Bまでの離間寸法L1は同一であり、それら位置18A,19,20,21,18Bが等間隔で離間している。それら位置18A,19,20,21,18Bの離間寸法L1は、90〜110mmの範囲、好ましくは、100mmである。試験用以外の実際のコンクリート構造物やモルタル構造物に生じたひび割れ深さL1を計測する場合、打撃位置18A,Bや第1および第2設置位置19,21、それら位置18A,19,20,21,18Bどうしの離間寸法は、試験用コンクリート構造物15,16のそれらと同一である。
【0033】
第1センサ12は、打撃位置18Aから試験用コンクリート構造物15,16(ひび割れが生じた実際のセメント硬化物を含む)の表面を伝播する第1表面波を検出し、検出した第1表面波をコンピュータ14に出力する。第2センサは、打撃位置18Aから試験用コンクリート構造物15,16(ひび割れが生じた実際のセメント硬化物を含む)の表面を伝播してひび割れ位置20を通過した第2表面波を検出し、検出した第2表面波をコンピュータ14に出力する。第1および第2センサ12,13の表面波検出間隔は、1〜5μsecの範囲、好ましくは、1〜3μsecの範囲、より好ましくは、1μsecである。第1および第2センサ12,13の表面波検出時間は、0.01〜0.03秒の範囲、好ましくは、0.01秒である。
【0034】
コンピュータ14は、中央処理部(CPUまたはMPU)とメモリとを有し、大容量ハードディスクを内蔵している。コンピュータ14には、マウス22やキーボード23等の入力装置、ディスプレイ24やプリンタ(図示せず)等の出力装置がインターフェイスを介して接続されている。コンピュータ14のメモリには、各種手段(各種プロセス)をコンピュータ14に実行させるためのアプリケーションが格納されている。
【0035】
コンピュータ14のハードディスクには、ひび割れ深さ(d)を算出する第1式、主要周波数(λ)を算出する第2式、重心周波数(f)を算出する第3式、異なる直径の鋼球ハンマー17による重心周波数および主要波長(図8参照)が格納されている。さらに、ハードディスクには、ひび割れが生じた実際のセメント硬化物を特定する特定情報が格納される。特定情報には、セメント硬化物の名称、セメント硬化物が存在する場所の住所、セメント硬化物の画像、計測するひび割れの順番を示す番号、ひび割れを計測した日時がある。それら特定情報には、セメント硬化物を個別に識別する識別子が設定される。第1式から第3式を以下に示す。
(第1式)
【数6】

【0036】
d:ひび割れ深さ(mm)、λ:主要波長(mm)、F:振幅比率、α:定数
(第2式)
【数7】

【0037】
c:表面波の平均伝搬速度(m/sec)、f:重心周波数(kHz)
(第3式)
【数8】

【0038】
X(f):周波数(f)における振幅値、N:サンプリング数
【0039】
コンピュータ14の中央処理部は、オペレーティングシステムによる制御に基づいて、メモリからアプリケーションを起動し、起動したアプリケーションに従って、以下の各手段(各プロセス)を実行する。コンピュータ14の中央処理部は、第1センサ12から所定のサンプリング間隔で出力された表面波に基づいてその表面波の第1連続波形(第1表面波)を作成する第1連続波形作成手段を実行し、第2センサ13から所定のサンプリング間隔で出力された表面波に基づいてその表面波の第2連続波形(第2表面波)を作成する第2連続波形作成手段を実行する。
【0040】
コンピュータ14の中央処理部は、作成した第1および第2連続波形をハードディスクに格納する連続波形記憶手段を実行する。中央処理部は、前記第3式に基づいて重心周波数(f)を求める重心周波数算出手段を実行し、前記第2式に基づいて主要波長(λ)を算出する主要波長算出手段を実行する。中央処理部は、算出した重心周波数(f)および主要波長(λ)を鋼球ハンマー17の直径毎に区分してハードディスクに格納する主要波長および重心周波数記憶手段(計算結果記憶手段)を実行する。
【0041】
コンピュータ14の中央処理部は、記憶した第1連続波形(第1表面波)のうち、表面波初動(表面波初動は図8を参照)の直後にマイナス側に振れた最小第1マイナス側振幅(表面波初動の直後にマイナス側に振れたマイナス側振幅は図8を参照)を抽出する最小第1マイナス側振幅抽出手段を実行し、記憶した第2連続波形(第2表面波)のうち、表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第2マイナス側振幅を抽出する最小第2マイナス側振幅抽出手段を実行する。中央処理部は、抽出した最小第2マイナス側振幅を最小第1マイナス側振幅で除して振幅比率(F)を算出する振幅比率第1算出手段を実行し、前記第1式を使用して所定のセメント硬化物の表面から内部に向かって形成されたひび割れ深さ(d)を算出するひび割れ深さ第1算出手段を実行する。なお、ひび割れ深さ第1算出手段において使用される第1式の定数(α)は、0.381である。中央処理部は、ひび割れ深さ第1算出手段によって算出したひび割れ深さ(d)にセメント硬化物を個別に識別する識別子を設定し、そのひび割れ深さ(d)を識別子とともにハードディスクに格納するひび割れ深さ記憶手段(計算結果記憶手段)を実行し、算出したひび割れ深さ(d)をセメント硬化物の特定情報とともに出力するひび割れ深さ出力手段を実行する。
【0042】
コンピュータ14の中央処理部は、記憶した第1連続波形(第1表面波)のうち、表面波初動(表面波初動は図8を参照)の後に最初にプラス側に振れた最大第1プラス側振幅(表面波初動の後に最初にプラス側に振れたプラス側振幅は図8を参照)を抽出する最大第1プラス側振幅抽出手段を実行し、記憶した第2連続波形(第2表面波)のうち、表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第2プラス側振幅を抽出する最大第2プラス側振幅抽出手段を実行する。中央処理部は、抽出した最大第2プラス側振幅を最大第1プラス側振幅で除して振幅比率(F)を算出する振幅比率第2算出手段を実行し、前記第1式を使用して所定のセメント硬化物の表面から内部に向かって形成されたひび割れ深さ(d)を算出するひび割れ深さ第2算出手段を実行する。なお、ひび割れ深さ第2算出手段において使用される第1式の定数(α)は、0.398である。中央処理部は、ひび割れ深さ第2算出手段によって算出したひび割れ深さ(d)にセメント硬化物を個別に識別する識別子を設定し、そのひび割れ深さ(d)を識別子とともにハードディスクに格納するひび割れ深さ記憶手段(計算結果記憶手段)を実行し、算出したひび割れ深さ(d)をセメント硬化物の特定情報とともに出力するひび割れ深さ出力手段を実行する。
【0043】
コンピュータ14の中央処理部は、記憶した第1連続波形(第1表面波)のうち、表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第1マイナス側振幅を抽出する最小第1マイナス側振幅抽出手段を実行し、記憶した第1連続波形(第1表面波)のうち、表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第1プラス側振幅を抽出する最大第1プラス側振幅抽出手段を実行するとともに、記憶した第2連続波形(第2表面波)のうち、表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第2マイナス側振幅を抽出する最小第2マイナス側振幅抽出手段を実行し、記憶した第2連続波形(第2表面波)のうち、表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第2プラス側振幅を抽出する最大第2プラス側振幅抽出手段を実行する。
【0044】
コンピュータ14の中央処理部は、抽出した最小第1マイナス側振幅と最大第1プラス側振幅とからそれらの第1絶対値を算出し、抽出した最小第2マイナス側振幅と最大第2プラス側振幅とからそれらの第2絶対値を算出する絶対値算出手段を実行する。中央処理部は、第2絶対値を第1絶対値で除して振幅比率(F)を算出する振幅比率第3算出手段を実行し、前記第1式を使用して所定のセメント硬化物の表面から内部に向かって形成されたひび割れ深さ(d)を算出するひび割れ深さ第3算出手段を実行する。なお、ひび割れ深さ第3算出手段において使用される第1式の定数(α)は、0.394である。中央処理部は、ひび割れ深さ第3算出手段によって算出したひび割れ深さ(d)にセメント硬化物を個別に識別する識別子を設定し、そのひび割れ深さ(d)を識別子とともにハードディスクに格納するひび割れ深さ記憶手段(計算結果記憶手段)を実行し、算出したひび割れ深さ(d)をセメント硬化物の特定情報とともに出力するひび割れ深さ出力手段を実行する。
【0045】
振幅比率(F)や定数(α)は、人工的にひび割れを作った図2,3に示す2つの正四角柱状の試験用コンクリート構造物15,16(1000mm×1000mm×1000mm)を使用して求めた。人工ひび割れHは、コンクリートを打設する前に、型枠(図示せず)内に厚さ0.4mm、長さ300mmの複数の鋼板を異なる深さに設置し、コンクリートを打設後であって硬化前にそれら鋼板をコンクリートから引き抜くことで作った。ひび割れHの深さ(d)は、50mm〜500mmまで11種類である。
【0046】
一方の試験用コンクリート構造物15は、一側部に比較のために健全部(ひび割れがない部分)を作り、他の側部に(d)=50mm、80mm、100mm、130mm、150mmの人工ひび割れHを作った。他方の試験用コンクリート構造物16は、各側部に(d)=200mm、250mm、300mm、350mm、400mm、500mmの人工ひび割れHを作った。人工ひび割れHの長さL2は、300mmである。
【0047】
それら試験用コンクリート構造物15,16は、図5に示すように、セメントとして普通ポルトランドを使用し、W/Cが53.5%、s/aが46.8%、粗骨材最大寸法が20mmである。試験用コンクリート構造物15,16の配合は、単位量(kg/m)に対し、水が181、セメントが338、細骨材が819、粗骨材が959、混和剤が3.38である。同配合のφ100mm円柱試験体で材齢28日時における平均圧縮強度が29.1MPa、ヤング係数が26.4GPa、ポアソン比が0.19であった。
【0048】
それら試験用コンクリート構造物15,16における弾性波の計測は、図2〜4に示すセンサ配置において実施した。具体的には、打撃位置18Aと第1設定位置19とひび割れ位置20と第2設置位置21と打撃位置18Bとを等間隔(100mm間隔)で一直線上に設定し、第1設置位置19に第1センサ12を設置するとともに、第2設置位置21に第2センサ13を設置した。それら位置18A,19,20,21,18Bは、一方の側部の側縁から他方の側部に向かって150mmの距離にある。弾性波は、鋼球ハンマー17によって打撃位置18A,18Bを打撃して発生させた。様々な周波数(波長)の弾性波を発生させるため、直径L3(図6参照)が5mm、8mm、11mm、15mm、25mm、35mmの鋼球ハンマー17を使用した。ひび割れ深さ計測方法は、打撃位置18A,18Bや第1設置位置19、ひび割れ位置20、第2設置位置21が等間隔で一直線上に並ぶことで、第1および第2センサ12,13によって検出される表面波の整合性をとることができるとともに、それらセンサ12,13によって検出される表面波の検出誤差を防ぐことができる。
【0049】
打撃位置18A,18Bにおける鋼球ハンマー17の打撃によって発生した弾性波は、試験用コンクリート構造物15,16を伝播して第1センサ12に検出され、さらに、ひび割れ位置20を通過して第2センサ13に検出される。それらセンサ12,13のサンプリング間隔(検出間隔)は5μsec、それらセンサ12,13のサンプリング時間(検出時間)は0.02秒である。
【0050】
周辺雑音を低減させるため、弾性波を5回検出してそれら弾性波の重合処理(スタッキング)を行うとともに、打撃位置を打撃位置18Aから第2センサの側の打撃位置18Bに変更して弾性波をさらに5回検出してそれら弾性波の重合処理(スタッキング)を行った(図4参照)。そのようにして得られた合成波の平均値(F)を以下の式によって算出した。F1-2=a/a、F2-1=a/a、F=√F1-2×F2-1、ここで、F1-2は、打撃位置18Aにおいて鋼球ハンマー17の打撃によって弾性波を発生させ、第2センサ13によって検出された弾性波(a)を第1センサ12によって検出された弾性波(a)で除した値であり、F2-1は、打撃位置18Bにおいて鋼球ハンマー17の打撃によって弾性波を発生させ、第1センサ12によって検出された弾性波(a)を第2センサ13によって検出された弾性波(a)で除した値である。Fは、F1-2とF2-1とを乗算した値の平方根である。データを平均化することで、センサ12,13の設置位置による固有誤差の低減を図った。
【0051】
ひび割れ深さ計測方法では、表面波検出間隔を5μsecに設定することで、第1および第2センサ12,13によって検出された表面波の正確な波形を画くことができる。また、表面波検出時間を0.02秒にすることで、検出される表面波が反射波や回析波等の余分な波の影響を受けることなく、表面波のみを検出することができる。
【0052】
図7は、健全部および異なる深さのひび割れ位置において検出した波形の一例を示す図である。図7では、縦軸にひび割れ深さ(d)が示され、横軸に経過時間(sec)が示されている。健全部の第2センサ13で検出された波形は、第1センサ12で検出された波形に比較し、振幅(エネルギー)が低下していた。このことは、コンクリート構造物15,16の表面を伝播した波が散乱し、波のエネルギーが減衰したからと考えられる。一方、波の伝播経路にひび割れが存在すると、第2センサ13で検出した波形の振幅は、健全部のそれと比較してさらに低下した。また、ひび割れ深さ(d)が大きくなるほど波形の振幅が小さくなる。それは、ひび割れの存在によって波が回析、反射して波のエネルギーが散乱し、自然減衰に加えてさらにエネルギーが低下したからと考えられる。
【0053】
図8は、直径L3が15mmの鋼球ハンマー17によって発生させた弾性波の検出波形の一例を示す図であり、図9は、異なる直径L3の鋼球ハンマー17による重心周波数および主要波長を表す図である。図8では、縦軸に振幅(v)が示され、横軸に経過時間(sec)が示されている。表面波の初動振幅は、図8に示すように、P波(縦波)の初動振幅の後に顕著に増加する。なお、表面波の平均速度は2247m/secであった。
【0054】
弾性波の重心周波数(f)は、前記第3式による高速フーリエ変換(FFT)によって求めた周波数スペクトルから計算する。重心周波数(f)は、コンピュータ14が前記第3式に基づいて算出する(重心周波数算出手段)。表面波の主要波長(λ)は、平均速度と重心周波数とを用いて前記第2式によって計算した。表面波の主要波長(λ)は、コンピュータ14が前記第2式に基づいて算出する(主要波長算出手段)。図9の各種鋼球ハンマー毎に区分された重心周波数および主要波長(計算結果)がコンピュータ14のハードディスクに格納される(計算結果記憶手段)。ひび割れ深さ計測方法は、検出された弾性波の中から第3式を利用して最も影響がある弾性波成分の周波数(重心周波数)を求めることができ、その重心周波数(f)を利用して主要波長(λ)を求めるから、弾性波成分に他の不必要な成分が含まれることはない。
【0055】
図9に示すように、直径L3が5mmのハンマー17では重心周波数が18.08(kHz)、主要波長が124(mm)、直径L3が8mmのハンマー17では重心周波数が11.56(kHz)、主要波長が194(mm)、直径L3が11mmのハンマー17では重心周波数が10.74(kHz)、主要波長が209(mm)、直径L3が15mmのハンマー17では重心周波数が9.48(kHz)、主要波長が237(mm)、直径L3が25mmのハンマー17では重心周波数が6.49(kHz)、主要波長が346(mm)、直径L3が35mmのハンマー17では重心周波数が4.19(kHz)、主要波長が537(mm)であった。
【0056】
表面波の減衰特性を利用してひび割れ深さ(d)を計測し得るように、表面波の振幅比率(F)を以下の3つのケースに基づいて計算した。第1のケースは、試験用コンクリート構造物15,16の表面を伝播して第2センサ13に検出された第2表面波のうち、表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第2マイナス側振幅を、試験用コンクリート構造物15,16の表面を伝播して第1センサ12に検出された第1表面波のうち、表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第1マイナス側振幅で除して振幅比率(F)を計算した。
【0057】
第2のケースは、試験用コンクリート構造物15,16の表面を伝播して第2センサ13に検出された第2表面波のうち、表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第2プラス側振幅を、試験用コンクリート構造物15,16の表面を伝播して第1センサ12に検出された第1表面波のうち、表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第1プラス側振幅で除して振幅比率(F)を計算した。
【0058】
第3のケースは、試験用コンクリート構造物15,16の表面を伝播して第2センサ13に検出された第2表面波のうち、表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第2マイナス側振幅と表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第2プラス側振幅との第2絶対値(最小第2マイナス側振幅×最大第2プラス側振幅の値の平方根)を、試験用コンクリート構造物15,16の表面を伝播して第1センサ13に検出された第1表面波のうち、表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第1マイナス側振幅と表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第1プラス側振幅との第1絶対値(最小第1マイナス側振幅×最大第1プラス側振幅の値の平方根)で除して振幅比率(F)を算出した。
【0059】
図10は、第1のケースによって算出した振幅比率(F)とd/λとの相関関係を示す図であり、図11は、第2のケースによって算出した振幅比率(F)とd/λとの相関関係を示す図である。図12は、第3のケースによって算出した振幅比率(F)とd/λとの相関関係を示す図である。それら図では、縦軸に振幅比率(F)が示され、横軸にひび割れ深さ(d)/主要波長(λ)の比率が示されている。それら相関関係を示す図から、ひび割れ深さ(d)を求める前記第1式を導出することができる。
【0060】
第1のケースにおける定数(α)は、図10の相関関係を示す図から近似式:y=αebxを導き、その近似式から算出した。第1のケースにおける定数(α)は0.381であった。したがって、第1のケースによって導出された第1式は、d=−0.381・λ・InFであり、コンピュータ14のハードディスクに格納される。なお、図10の相関関係では、y=e−2.6265x、R=0.7743である。
【0061】
第2のケースにおける定数(α)は、図11の相関関係を示す図から近似式:y=αebxを導き、その近似式から算出した。第2のケースにおける定数(α)は0.398であった。したがって、第2のケースによって導出された第1式は、d=−0.398・λ・InFであり、コンピュータ14のハードディスクに格納される。なお、図11の相関関係では、y=e−2.5121x、R=0.7231である。
【0062】
第3のケースにおける定数(α)は、図12の相関関係を示す図から近似式:y=αebxを導き、その近似式から算出した。第3のケースにおける定数(α)は0.394であった。したがって、第3のケースによって導出された第1式は、d=−0.394・λ・InFであり、コンピュータの14ハードディスクに格納される。なお、図12の相関関係では、y=e−2.5394x、R=0.8767である。
【0063】
図13は、ディスプレイ24に表示された初期画面の一例を示す図であり、図14は、ディスプレイ24に表示された計算式選択画面の一例を示す図である。図15は、ディスプレイ24に表示された計測開始画面の一例を示す図であり、図16は、ディスプレイ24に表示された計測結果画面の一例を示す図である。なお、それら図では、入力エリアや表示エリアにおける具体的に数値やデータの表示を省略している。また、第1および第2センサ12,13は、ひび割れが生じた実際のセメント硬化物の表面に図2〜図4に示す状態で設置され、すでに表面波の検出ができる状態(電源ON)になっているものとする。
【0064】
コンピュータ14を起動させると、それに接続されたディスプレイ24に初期画面が表示される。初期画面には、図13に示すように、センササンプリング間隔設定入力エリア30、センササンプリング時間設定入力エリア31、ハンマー直径入力エリア32、セメント硬化物の特定情報入力エリアが表示され、実行ボタン、クリアボタン、終了ボタンが表示される。特定情報入力エリアには、名称入力エリア33、住所入力エリア34、画像入力エリア35、番号入力エリア36、日時入力エリア37が表示される。
【0065】
センササンプリング間隔設定入力エリア30にたとえば5(μsec)を入力し、センササンプリング時間設定入力エリア31にたとえば0.02(秒)を入力する。なお、サンプリング間隔やサンプリング時間は、サンプリング間隔設定入力エリア30やサンプリング時間設定入力エリア31に表示されるプルダウンリストから選択することもできる。ハンマー直径入力エリア32にハンマー直径を入力する。ハンマー直径は、ハンマー直径入力エリア32に表示されるプルダウンリストから選択することもできる。
【0066】
次に、名称入力エリア33にたとえばダム名やトンネル名を入力し、住所入力エリア34にそのダムやトンネルの住所を入力する。画像入力エリア35の入力チェックボックスまたは否入力チェックボックスのいずれかにチェックマークを入れ、番号入力エリア36に計測順番を示す番号を入力するとともに、日時入力エリア37に計測日時を入力する。なお、計測順番や計測日時を入力しない場合、コンピュータ14は計測順番や計測日時を自動的に設定する。クリアボタンを押すと、入力された各数値や各データがクリアされ、数値やデータの入力をやり直す。終了ボタンを押すと、システムが終了する。画像入力エリア35の入力チェックボックスにチェックマークを入れると、図示はしていないが、画像の取込画面がディスプレイ24に表示され、その画面の指示に基づいてデジタルカメラで撮影したひび割れ画像を入力する。
【0067】
それら入力エリアに各数値や各データを入力した後、実行ボタンを押すと、コンピュータ14は、所定の識別子を生成し、入力された数値やデータに生成した識別子を設定した後、それら数値やデータを識別子とともにハードディスクに格納する。次に、コンピュータ14は、計算式選択画面をディスプレイ24に表示する。計算式選択画面には、図14に示すように、前記第1のケースにおいて導出された第1式を表示する式表示エリア38、前記第2のケースにおいて導出された第1式を表示する式表示エリア39、前記第3のケースにおいて導出された第1式を表示する式表示エリア40、それら式表示エリア38〜40に対応するチェックボックスが表示され、実行ボタン、クリアボタン、キャンセルボタンが表示される。それらチェックボックスのいずれかにチャックマークを入れ、実行ボタンを押すと、コンピュータ14は、選択された計算式に識別子を設定し、計算式を識別子とともにハードディスクに格納する。
【0068】
計算式を格納した後、コンピュータ14は、計測開始画面をディスプレイ24に表示する。計測開始画面には、図15に示すように、サンプリング間隔表示エリア41に設定したサンプリング間隔、サンプリング時間表示エリア42に設定したサンプリング時間、ハンマー直径表示エリア43にハンマー直径、計算式表示エリア44に選択した計算式、名称表示エリア45に入力した名称、住所表示エリア46に入力した住所、画像表示エリア47に入力した画像、番号表示エリア48に番号、日時表示エリア49に日時が表示される。さらに、開始ボタン、戻るボタン、終了ボタンが表示される。それら表示エリア41〜49に表示された数値やデータを確認し、数値やデータに変更がある場合は戻るボタンを押し、再び初期画面に戻って各数値や各データの入力をやり直す。数値やデータに変更がなければ、開始ボタンを押す。開始ボタンを押すと、コンピュータ14は、第1および第2センサ12,13に表面波の検出指令を出力する。
【0069】
セメント硬化物の打撃位置18Aを鋼球ハンマー17で打撃すると、打撃位置18Aから発生した弾性波がセメント硬化物を伝播する。打撃位置18Aから発生した表面波は、セメント硬化物の表面を伝播する。第1設置位置19に設置された第1センサ12は、打撃位置18Aから伝播して第1設置位置19に達した表面波をサンプリング間隔かつサンプリング時間で検出する。第2設置位置21に設置された第2センサ13は、打撃位置18Aから伝播してひび割れ位置20を通過し、第2設置位置21に達した表面波をサンプリング間隔かつサンプリング時間で検出する。第1および第2センサ12,13は、検出した表面波をコンピュータ14に時系列に出力する。コンピュータ14は、第1センサ12から出力された表面波に基づいて、その表面波の第1連続波形(第1表面波)を作成し(第1連続波形作成手段)、第2センサ13から出力された表面波に基づいて、その表面波の第2連続波形(第2表面波)を作成する(第2連続波形作成手段)。コンピュータ14は、作成した第1および第2連続波形をハードディスクに格納する(連続波形記憶手段)。
【0070】
計算式選択画面において前記第1のケースにおいて導出された第1式を選択した場合、コンピュータ14は、記憶した第1連続波形(第1表面波)のうち、表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第1マイナス側振幅を抽出し(最小第1マイナス側振幅抽出手段)、記憶した第2連続波形(第2表面波)のうち、表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第2マイナス側振幅を抽出する(最小第2マイナス側振幅抽出手段)。コンピュータ14は、入力されたハンマー直径に対応する主要波長(λ)をハードディスクから抽出する。
【0071】
コンピュータ14は、抽出した最小第2マイナス側振幅を最小第1マイナス側振幅で除して振幅比率(F)を算出し(振幅比率第1算出手段)、その振幅比率(F)と主要波長(λ)とを前記第1のケースにおいて導出された第1式(d=−0.381・λ・InF)に当て嵌め、その第1式に基づいてセメント硬化物のひび割れ深さ(d)を算出する(ひび割れ深さ第1算出手段)。コンピュータ14は、ひび割れ深さ第1算出手段によって算出したひび割れ深さ(d)に識別子を設定し、そのひび割れ深さ(d)を識別子とともにハードディスクに格納する(ひび割れ深さ記憶手段)。また、コンピュータ14は、ひび割れ深さ(d)をセメント硬化物の特定情報とともにディスプレイ24に表示する(ひび割れ深さ出力手段)。
【0072】
ディスプレイ24に表示された計測結果画面には、図16に示すように、サンプリング間隔表示エリア50に設定したサンプリング間隔、サンプリング時間表示エリア51に設定したサンプリング時間、ハンマー直径表示エリア52にハンマー直径、重心周波数表示エリア53に重心周波数、主要波長表示エリア54に主要波長、計算式表示エリア55に第1のケースによって導出された第1式、ひび割れ深さ表示エリア56に計測したひび割れ深さ(d)が表示される。さらに、名称表示エリア57に入力した名称、住所表示エリア58に入力した住所、画像表示エリア59に入力した画像、番号表示エリア60に番号、日時表示エリア61に日時が表示され、印刷ボタン、初期画面ボタン、終了ボタンが表示される。印刷ボタンを押すと、コンピュータ14は、計測結果画面に表示されたセメント硬化物の特定情報とひび割れ深さ(d)とを所定の形式でプリンタを介して出力する(ひび割れ深さ出力手段)。
【0073】
前記第1のケースによって導出された第1式を使用するひび割れ深さ計測方法は、ひび割れ深さ(d)を算出する第1式において、振幅比率(F)として第2センサ13に検出された第2表面波のうちの表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第2マイナス側振幅を第1センサ12に検出された第1表面波のうちの表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第1マイナス側振幅で除した比率が採用されているから、振幅比率(F)を導くための表面波に反射波や回析波等の余分な波が含まれることはない。このひび割れ深さ計測方法は、表面波初動の直後にマイナス側に振れた1種類の表面波のみをひび割れ深さ(d)の計測に利用することで、各種複数の表面波や他の波が混合された表面波を利用することによるひび割れ深さ(d)の計測誤差を防ぐことができ、セメント硬化物の表面から内部に向かって形成されたひび割れの正確な深さを計測することができる。
【0074】
計算式選択画面において前記第2のケースにおいて導出された第1式を選択した場合、コンピュータ14は、記憶した第1連続波形(第1表面波)のうち、表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第1プラス側振幅を抽出し(最大第1プラス側振幅抽出手段)、記憶した第2連続波形(第2表面波)のうち、表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第2プラス側振幅抽出手段を抽出する(最大第2プラス側振幅抽出手段抽出手段)。コンピュータ14は、入力されたハンマー直径に対応する主要波長(λ)をハードディスクから抽出する。
【0075】
コンピュータ14は、抽出した最大第2プラス側振幅を最大第1プラス側振幅で除して振幅比率(F)を算出し(振幅比率第2算出手段)、その振幅比率(F)と主要波長(λ)とを前記第2のケースにおいて導出された第1式(d=−0.398・λ・InF)に当て嵌め、その第1式に基づいてセメント硬化物のひび割れ深さ(d)を算出する(ひび割れ深さ第2算出手段)。コンピュータ14は、ひび割れ深さ第2算出手段によって算出したひび割れ深さ(d)に識別子を設定し、そのひび割れ深さ(d)を識別子とともにハードディスクに格納する(ひび割れ深さ記憶手段)。また、コンピュータ14は、算出したひび割れ深さ(d)の出力指示があると、ひび割れ深さ(d)をセメント硬化物の特定情報とともにディスプレイ24に表示し、または、プリンタを介して出力する(ひび割れ深さ出力手段)。ディスプレイ24に表示される計測結果画面は、図16を援用することで、その説明は省略する。
【0076】
前記第2のケースによって導出された第1式を使用するひび割れ深さ計測方法は、ひび割れ深さ(d)を算出する第1式において、振幅比率(F)として第2センサ13に検出された第2表面波のうちの表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第2プラス側振幅を第1センサ12に検出された第1表面波のうちの表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第1プラス側振幅で除した比率が採用されているから、振幅比率(F)を導くための表面波に反射波や回析波が含まれることはない。このひび割れ深さ計測方法は、表面波初動の後に最初にプラス側に振れた1種類の表面波のみをひび割れ深さ(d)の計測に利用することで、各種複数の表面波や他の波が混合された表面波を利用することによるひび割れ深さ(d)の計測誤差を防ぐことができ、セメント硬化物の表面から内部に向かって形成されたひび割れの正確な深さを計測することができる。
【0077】
計算式選択画面において前記第3のケースにおいて導出された第1式を選択した場合、コンピュータ14は、記憶した第1連続波形(第1表面波)のうち、表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第1マイナス側振幅を抽出し(最小第1マイナス側振幅抽出手段)、記憶した第1連続波形(第1表面波)のうち、表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第1プラス側振幅を抽出するとともに(最大第1プラス側振幅抽出手段)、記憶した第2連続波形(第2表面波)のうち、表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第2マイナス側振幅を抽出し(最小第2マイナス側振幅抽出手段)、記憶した第2連続波形(第2表面波)のうち、表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第2プラス側振幅を抽出する(最大第2プラス側振幅抽出手段)。コンピュータ14は、入力されたハンマー直径に対応する主要波長(λ)をハードディスクから抽出する。
【0078】
コンピュータ14は、抽出した最小第1マイナス側振幅と最大第1プラス側振幅とからそれらの第1絶対値を算出し、抽出した最小第2マイナス側振幅と最大第2プラス側振幅とからそれらの第2絶対値を算出する(絶対値算出手段)。次に、コンピュータ14は、第2絶対値を第1絶対値で除して振幅比率(F)を算出し(振幅比率第3算出手段)、その振幅比率(F)と主要波長(λ)とを前記第3のケースにおいて導出された第1式(d=−0.394・λ・InF)に当て嵌め、その第1式に基づいてセメント硬化物のひび割れ深さ(d)を算出する(ひび割れ深さ第2算出手段)。
【0079】
コンピュータ14は、ひび割れ深さ第3算出手段によって算出したひび割れ深さ(d)に識別子を設定し、そのひび割れ深さ(d)を識別子とともにハードディスクに格納する(ひび割れ深さ記憶手段)。また、コンピュータ14は、算出したひび割れ深さ(d)の出力指示があると、ひび割れ深さ(d)をセメント硬化物の特定情報とともにディスプレイ24に表示し、または、プリンタを介して出力する(ひび割れ深さ出力手段)。ディスプレイ24に表示される計測結果画面は、図16を援用することで、その説明は省略する。
【0080】
前記第3のケースによって導出された第1式を使用するひび割れ深さ計測方法は、ひび割れ深さ(d)を算出する第1式において、振幅比率(F)として第2センサ13に検出された第2表面波のうちの表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第2マイナス側振幅と表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第2プラス側振幅との第2絶対値を第1センサ12に検出された第1表面波のうちの表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第1マイナス側振幅と表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第1プラス側振幅との第1絶対値で除した比率が採用されているから、振幅比率(F)を導くための表面波に反射波や回析波が含まれることはない。このひび割れ深さ計測方法は、表面波初動の直後にマイナス側に振れた表面波と表面波初動の後に最初にプラス側に振れた表面波との絶対値をひび割れ深さ(d)の計測に利用することになり、各種複数の表面波や他の波が混合された表面波を利用することによるひび割れ深さ(d)の計測誤差を防ぐことができ、セメント硬化物の表面から内部に向かって形成されたひび割れの正確な深さを計測することができる。
【符号の説明】
【0081】
11 ひび割れ深さ計測システム
12 第1センサ
13 第2センサ
14 コンピュータ
15 試験用コンクリート構造物(セメント硬化物)
16 試験用コンクリート構造物(セメント硬化物)
17 鋼球ハンマー
18A 打撃位置
18B 打撃位置
19 第1設置位置
20 ひび割れ位置
21 第2設置位置
L1 離間寸法
L2 直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント硬化物に形成されたひび割れ位置から所定寸法離間した打撃位置を所定の直径を有する鋼球ハンマーによって打撃して前記セメント硬化物に弾性波を発生させ、前記セメント硬化物からその弾性波を検出しつつ、検出した弾性波に基づいてひび割れ深さを計測するひび割れ深さ計測方法において、
前記ひび割れ深さ計測方法が、前記ひび割れ位置と前記打撃位置との間の第1設置位置に設置されて該打撃位置から前記セメント硬化物の表面を伝播する第1表面波を検出する第1センサと、前記ひび割れ位置を挟んで前記第1設置位置の反対側の第2設置位置に設置されて前記打撃位置から前記セメント硬化物の表面を伝播して該ひび割れ位置を通過した第2表面波を検出する第2センサとを利用し、
前記ひび割れ深さが、第1式
【数1】

によって算出され、
前記第1式において、dが、ひび割れ深さ(mm)、λが、主要波長(mm)、Fが、前記セメント硬化物の表面を伝播して前記第2センサに検出された第2表面波のうち、表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第2マイナス側振幅を、前記セメント硬化物の表面を伝播して前記第1センサに検出された第1表面波のうち、表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第1マイナス側振幅で除した振幅比率であり、αが、縦軸に前記(F)を示し、横軸にひび割れ深さ(d)/主要波長(λ)の比率を示す相関関係図から近似式:y=αebxを導き、その近似式から算出した定数(0.381)であることを特徴とするひび割れ深さ計測方法。
【請求項2】
セメント硬化物に形成されたひび割れ位置から所定寸法離間した打撃位置を所定の直径を有する鋼球ハンマーによって打撃して前記セメント硬化物に弾性波を発生させ、前記セメント硬化物からその弾性波を検出しつつ、検出した弾性波に基づいてひび割れ深さを計測するひび割れ深さ計測方法において、
前記ひび割れ深さ計測方法が、前記ひび割れ位置と前記打撃位置との間の第1設置位置に設置されて該打撃位置から前記セメント硬化物の表面を伝播する第1表面波を検出する第1センサと、前記ひび割れ位置を挟んで前記第1設置位置の反対側の第2設置位置に設置されて前記打撃位置から前記セメント硬化物の表面を伝播して該ひび割れ位置を通過した第2表面波を検出する第2センサとを利用し、
前記ひび割れ深さが、第1式
【数2】

によって算出され、
前記第1式において、dが、ひび割れ深さ(mm)、λが、主要波長(mm)、Fが、前記セメント硬化物の表面を伝播して前記第2センサに検出された第2表面波のうち、表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第2プラス側振幅を、前記セメント硬化物の表面を伝播して前記第1センサに検出された第1表面波のうち、表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第1プラス側振幅で除した振幅比率であり、αが、縦軸に前記(F)を示し、横軸にひび割れ深さ(d)/主要波長(λ)の比率を示す相関関係図から近似式:y=αebxを導き、その近似式から算出した定数(0.398)であることを特徴とするひび割れ深さ計測方法。
【請求項3】
セメント硬化物に形成されたひび割れ位置から所定寸法離間した打撃位置を所定の直径を有する鋼球ハンマーによって打撃して前記セメント硬化物に弾性波を発生させ、前記セメント硬化物からその弾性波を検出しつつ、検出した弾性波に基づいてひび割れ深さを計測するひび割れ深さ計測方法において、
前記ひび割れ深さ計測方法が、前記ひび割れ位置と前記打撃位置との間の第1設置位置に設置されて該打撃位置から前記セメント硬化物の表面を伝播する第1表面波を検出する第1センサと、前記ひび割れ位置を挟んで前記第1設置位置の反対側の第2設置位置に設置されて前記打撃位置から前記セメント硬化物の表面を伝播して該ひび割れ位置を通過した第2表面波を検出する第2センサとを利用し、
前記ひび割れ深さが、第1式
【数3】

によって算出され、
前記第1式において、dが、ひび割れ深さ(mm)、λが、主要波長(mm)、Fが、前記セメント硬化物の表面を伝播して前記第2センサに検出された第2表面波のうち、表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第2マイナス側振幅と表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第2プラス側振幅との第2絶対値を、前記セメント硬化物の表面を伝播して前記第1センサに検出された第1表面波のうち、表面波初動の直後にマイナス側に振れた最小第1マイナス側振幅と表面波初動の後に最初にプラス側に振れた最大第1プラス側振幅との第1絶対値で除した振幅比率であり、αが、縦軸に前記(F)を示し、横軸にひび割れ深さ(d)/主要波長(λ)の比率を示す相関関係図から近似式:y=αebxを導き、その近似式から算出した定数(0.394)であることを特徴とするひび割れ深さ計測方法。
【請求項4】
前記(λ)が、第2式
【数4】

によって算出され、前記第2式において、cが、鋼球ハンマーの直径によって異なる表面波の平均伝搬速度(m/sec)、fが、重心周波数(kHz)であり、
前記(f)が、第3式
【数5】

によって算出され、前記第3式において、X(f)が、周波数(f)における振幅値、Nが、サンプリング数である請求項1ないし請求項3いずれかに記載のひび割れ深さ計測方法。
【請求項5】
前記ひび割れ深さ計測方法では、前記第1式から第3式による計算がコンピュータを利用して行われ、前記コンピュータが、前記第3式に基づいて重心周波数(f)を求める重心周波数算出手段と、前記第2式に基づいて主要波長(λ)を算出する主要波長算出手段と、前記第1式に基づいてひび割れ深さ(d)を算出するひび割れ深さ算出手段と、算出した重心周波数(f)と主要波長(λ)とひび割れ深さ(d)とを記憶する算出結果記憶手段とを実行する請求項4記載のひび割れ深さ計測方法。
【請求項6】
前記ひび割れ深さ計測方法では、前記打撃位置と前記第1設置位置と前記第2設置位置とが略一直線上に並び、前記打撃位置から前記第1設定位置までの離間寸法と前記第1設定位置から前記ひび割れ位置までの離間寸法と前記ひび割れ位置から前記第2設置位置までの離間寸法とが同一であり、それら離間寸法が90〜110mmの範囲にある請求項1ないし請求項5いずれかに記載のひび割れ深さ計測方法。
【請求項7】
前記ひび割れ深さ計測方法では、前記第1および第2センサの表面波検出間隔が1〜5μsecの範囲にあり、前記第1および第2センサの表面波検出時間が0.01〜0.03秒の範囲にある請求項1ないし請求項6いずれかに記載のひび割れ深さ計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−27586(P2011−27586A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174371(P2009−174371)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【Fターム(参考)】