説明

アウトレット

【課題】壁内の光ファイバケーブルを直接アウトレットの光接続口に配線することができ、しかも電源用や電話用の電気接続口に影響を与えることなく複合化させた作業性の良いアウトレットを提供する。
【解決手段】壁面に配設されるアウトレットであって、電気配線及び光配線を収納するアウトレットボックス22と、電気接続口及び光接続口を取付ける取付枠と、該取付枠を覆うカバープレート23を備え、光ファイバケーブル端に直に光コネクタが取付けられ、取付枠の左右いずれか一方の側に光コネクタが装着される接続アダプタ26の光接続口26aが下方を向くように取付けられ、カバープレート23は、前面側に前記の光コネクタ及び接続アダプタを収納する張出し部23bを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に取付けられて電気的及び光学的な接続口を供給するアウトレットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット等による情報通信の高速化、情報量の増大に加え、最近では双方向通信と大容量通信の光ネットワークの構築が進展し、一般家庭においても光ファイバを用いたデータ通信サービスFTTH(Fiber To The Home)が行なわれるようになってきた。このため、従来の導電線を用いた電話回線による情報通信に加えて、光ファイバケーブルを用いた情報通信も多くなっている。
【0003】
従来、電源線、電話線あるいはTV信号線等は、壁面に取付けられたアウトレットを用いて、各種の電子機器を接続する形態がとられている。光ファイバケーブルが新たな通信手段として取入れられた場合においても、このようなアウトレットを用いて、情報機器との接続が簡単に行なえることが要望されている。しかし、光ファイバケーブルの場合は、ガラスファイバを用いているため、曲げ径等に制限があり、また、光ファイバ間の接続部に補強を要するなど、導電線により接続を行なう従来のアウトレットと比べて、その使用形態には大きな差がある。
【0004】
光ファイバケーブルを接続するためのアウトレットの一例として、例えば、特許文献1が知られている。図5は、該特許文献1で開示されているアウトレットの概略を説明する図である。このアウトレットのコンセントプレート1は、合成樹脂等で成形された光ファイバ収納プレート2とカバープレート3からなる。その前面のプレート面6には、電気的接続のための接続口、例えば、電話用ジャック4をコンセント穴5から露出するように取り付けて接続口が形成され、プレート前面方向から電話用プラグ7が接続される。コンセントプレート1の下方側には、光コネクタ接続アダプタ8の光学的接続口が下方に向くように取付けられ、光コネクタプラグ9はプレート面6と平行な下方から接続口に挿入して接続される。
【0005】
図6は、前記光ファイバ収納プレート2の構成例を示し、固定用ねじ10によりアウトレットボックス面等に取付けられる。この状態で、壁内から引き出された単心又は多心の光ファイバケーブルを固定し、光ファイバケーブル内から露出させた光ファイバ心線11を収納処理できるように構成されている。光ファイバ収納プレート2は、底壁13と側壁12を一体成形して形成され、底壁13の中央部に円形状の環状壁13a、13bを一体に設けて、光ファイバ心線11がループ状に収納されるガイド部を形成している。
【0006】
側壁12及び円形状の環状壁13a、13bには、複数の光ファイバ押え片14a,14bが適宜の間隔をおいて一体に設けられている。環状壁13a内には電話用ジャック4用のコンセント穴15が形成され、底壁13の中央部には、光ファイバケーブルを壁内から光ファイバ収納プレート2の前面に引き出す切欠穴16a,16bが形成されている。この切欠穴16a,16bに突き出るように、光ファイバ固定片17a,17bがそれぞれ底壁13と一体に設けられている。光ファイバ固定片17a又は17bで引き留め固定された光ファイバケーブルの露出された光ファイバ心線11は、その余長をループ状にして収納し、端部に光コネクタ18を取付けて、光コネクタ接続アダプタ8に装着するように構成されている。
【特許文献1】特開2004−157263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1に開示のアウトレットでは、屋内に引き込まれたドロップ光ケーブルやインドア光ケーブルなどの光ケーブルを光ファイバ固定片で把持した後、ケーブル内の光ファイバ心線を露出させ、所定長さの余長を確保し、その端部に光コネクタを取付け、光コネクタ接続アダプタを介して外部への光学的接続口としている。このため、光ファイバ収納プレートを用いて、光ファイバ心線の余長や光ファイバ心線の接続部の収納スペース等を確保する必要があった。また、光ファイバ心線を露出させるためのケーブル外被の除去作業、光ファイバ接続作業等も必要であった。
【0008】
一方、近年、屋内配線用の光ケーブルに直接光コネクタを取付ける技術も開発されている。この光コネクタを上述のアウトレットの光配線に用いることにより、光ファイバ収納プレート内に光ケーブルを引き込んで光コネクタを直に取り付けることができるので、光ファイバ心線間を接続する必要がなくなり、また、余長は壁内などの他の個所に収納することが可能となる。このため、アウトレット内における光ファイバの収納スペースは、必要最小限とすることができ、また光配線の作業量も軽減することができる。
【0009】
しかしながら、上述の屋内に敷設されるドロップ光ケーブルやインドア光ケーブルは、通常、光ファイバ心線の両側にテンションメンバを配し、ケーブル外被が矩形断面となる形状のものが用いられる。このため、光ケーブルは腰が強く(剛性が有る)、しかも曲げ方向に指向性があり、そして、その外部光ファイバケーブルとの光接続口は、下向きに形成する必要がある。このため、電源用或いは電話用等の電気接続口を備える複合的なアウトレットを構成するには、形状が大きくなり壁面から突出する形態となり、外部からの損傷を受け易く外観的に見栄えが悪くなるという問題がある。
【0010】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、壁内の光ファイバケーブルを直接アウトレットの光接続口に配線することができ、しかも電源用や電話用の電気接続口に影響を与えることなく複合化させた作業性の良いアウトレットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるアウトレットは、壁面に配設されるアウトレットであって、電気配線及び光配線を収納するアウトレットボックスと、電気接続口及び光接続口を取付ける取付枠と、該取付枠を覆うカバープレートを備え、光ファイバケーブル端に直に光コネクタが取付けられ、前記の取付枠の左右いずれか一方の側に前記光コネクタが装着される接続アダプタの光接続口が下方を向くように取付けられ、カバープレートは、前面側に前記の光コネクタ及び接続アダプタを収納する張出し部を有している。また、この張出し部は、上下端に接続アダプタの光接続口を露出させるための開口を備え、180度回転させて使用できるようにされている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光ファイバケーブルの余長収納のためのスペースを必要とせず、電気配線と電気接続口に影響を与えることなく、光配線と光接続口を設けることができ、全体的に接続のしやすさを損ねないコンパクトな構成とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図により、本発明のアウトレットの概略を説明する。図1は本発明によるアウトレットの外観を示す図で、図中、21はアウトレット、22はアウトレットボックス、23はカバープレート、23aはプレート面、23bは張出し部、24は電話用ジャック、24aは電気接続口、25は電源用コンセント、25aは電気接続口、26は接続アダプタ、26aは光接続口、27,28a,28bは開口を示す。
【0014】
本発明によるアウトレット21は、図1に示すように、壁内に埋め込まれるアウトレットボックス22と、このアウトレットボックスの前部に取付け固定される取付枠(図2参照)と、この取付枠を覆うカバープレート23を備えている。アウトレット21は、例えば、3個の電話用ジャック24がカバープレート23の開口28aから露出するようにし、また、2つの差込口を有する電源用コンセント25が開口28bから露出するようにした2連形状のもので構成することができる。それぞれの電気接続口24a及び25aは、その差込方向がカバープレート23のプレート面23aに直交する方向に設けられ、電話プラグや電源プラグがプレート面23aと直交する方向から差込まれる。
【0015】
他方、カバープレート23の下端に設けた開口27からは、接続アダプタ26の光接続口26aが露出するようにされ、光接続アダプタ26の接続口26aには、光コネクタプラグが、カバープレート23の下方から上方に向けて差込まれる。この構成により、光コネクタプラグの接続部は、カバープレート23の前面から大きく突き出ることなく、また、光コネクタプラグが取付けられたファイバコードは、下方に垂れ下がる状態となって過度の曲がりが生じない形態で接続することができる。
【0016】
しかしながら、後述するように光接続口26aとなる接続アダプタ26及びこれに装着される光コネクタは、取付枠の前面から張出す形態となる。このため、カバープレート23側に光コネクタ及び接続アダプタを収納する張出し部23bが形成される。この張出し部23bは、カバープレート23の開口28a又は8bのいずれか一方の端側で、上下端に達するように形成され、本来のプレート面23aからは多少突き出る形状となる。
【0017】
そして、この張出し部23bの上端と下端には、接続アダプタ26の光接続口26aが露出する開口27が設けられ、接続アダプタを左右入れ替えて使用することが可能な構成とされる。なお、開口27及び28a,28bは、使用されない場合は、カッター等で容易に切断可能な閉塞板27a,29(図3(B)参照)で、閉じられた状態としておくようにしてもよい。
【0018】
また、図1では、電話コード用の3個の電気接続口24aと電源コード用の2つの電気接続口25aを有し、カバープレート23の開口28a,28bを2つ設けた2連形状の構成例を示しているが、さらに多くの電気接続口24a,25aを有する多連形状としてもよい。また、反対に電話用の電気接続口24aか電源用の電気接続口25aのいずれか一方のみ、あるいは、電気接続口24aと25aをそれぞれ1個づつ組付けてカバープレート23の前面の開口を1つのみとした1連形状の構成となるようにしてもよい。
【0019】
図2は、アウトレットの詳細を説明する分解図である。図中、30は取付枠、30aはコンセント取付部、30bはジャック取付部、31は取付金具、32は接続アダプタ取付部、33は光コネクタ、34は光ファイバケーブルを示す。その他の符号は、図1で用いたのと同じ符号を用いることにより説明を省略する。
【0020】
取付枠30は、金属又は樹脂により形成され、例えば、コンセント取付部30aに取付金具31により電源用コンセント25が取付けられ、ジャック取付部30bに電話用ジャック24が直接取付けられる。取付金具31、電源用コンセント25、及び電話用ジャック24は汎用品を用いることができる。また、取付枠30の一方の端部側の上下部に接続アダプタ26を保持するための接続アダプタ取付部32が一体に設けられ、取付時に下方の位置となる側の接続アダプタ取付部32に接続アダプタ26が取付けられる。接続アダプタ26の内側の接続口に光ファイバケーブル34の端部に成端されている光コネクタ33が装着される。
【0021】
アウトレットボックス22は金属又は樹脂で形成され、壁面内に埋めこまれるようにして設置され、壁内から引き出された電源用ケーブルは電源用コンセント25に電気接続できるように、また、電話用ケーブルは電話用ジャック24に電気接続できるように収納される。光ファイバケーブル34も同様に、壁内から引き出されてケーブル端に光コネクタ33を取付け、この光コネクタ33は上記の接続アダプタ26に装着されて光接続口を形成する。アウトレットボックス22の前面開口部分には、前記の取付枠30が取付固定される。
【0022】
なお、取付枠30の背面から突き出る電話用ジャック24、電源用コンセント25の電気接続部分及び接続後の電気ケーブルは、上記のアウトレットボックス22内に収納される。なお、光ファイバケーブル34の余長分は、取付枠30をアウトレットボックス22に固定する際に、壁内に押し込んで壁内の空間部分を利用して収納される。カバープレート23は、化粧板として配線部分を覆い隠すと共に、その開口28a,28bから電話用ジャック24、電源用コンセント25、接続アダプタ26を露出させて、電話用プラグ、電源プラグ、光コネクタプラグの接続ができるようにする。
【0023】
図3は、取付枠に電話用ジャック、電源用コンセント、接続アダプタを支持させた状態を示す図で、前面側から見た図である。図中の符号は、図1及び図2で用いたのと同じ符号を用いることにより説明を省略する。
電源用コンセント25は、例えば、2つの電気接続口25aを有する形状のものが用いられ、取付金具31により取付枠30の背面側から取付けられる。電話用ジャック24は、例えば、3個を上下方向に配列してジャック取付部30bに装着し、保持具等を用いて取付枠30の背面側から取付けられる。
【0024】
接続アダプタ26は、電話用ジャック24の取付部の下側横に隣接するようにして取付けられる。接続アダプタ26の取付は、取付枠30と一体に成形された接続アダプタ取付部32に、フランジ部分を嵌め込むことにより位置決めされ、カバープレート23を取付けることにより所定の位置に収納保持される。
なお、接続アダプタ取付部32は、取付枠30側に設ける例で説明したが、図3(B)に示すように、カバープレート側に設けるようにしてもよい。すなわち、前述したカバープレート23の張出し部23aの内側に接続アダプタ取付部32を一体に成形しておくことで、カバープレート側に接続アダプタ26を取付け、図3(A)と同様に光接続口26aを形成することができる。
【0025】
壁内から引き出された光ファイバケーブル34の端部には、例えば、ロック機能を持つ外被把持型(例えば、SCコネクタ)の光コネクタ33を直接取付けて成端される。この光コネクタ33は、例えば、光ファイバケーブル34の先端部のケーブル外被を除去して、露出した光ファイバを直接フェルールに挿入して接着固定し、ケーブル外被部分をクランプで把持して、光ファイバケーブル34に直接取り付けることができる構成のものが用いられる。また、この他、短尺の光ファイバを内蔵したフェルールに、光ファイバケーブルの光ファイバ心線をメカニカルスプライス部材を用いて光学的に突き合せ、ケーブル外被部分をクランプで把持して、光ファイバケーブル31に直接に取り付けることができる構成のものを用いることもできる。
【0026】
図4は、アウトレットの下端側の形状例を示す図である。図に示すように、光コネクタ接続アダプタ26は、カバープレート23内に完全に収納され外部からは見えないようにして見栄えをよくすることができる。しかし、接続アダプタ26(通常、青色の色彩を有している)の一部を露出させて、外部から光接続口の存在が判るように構成することもできる。いずれを使用するかは、部屋との調和、美観により選択的に用いることができる。また、通常、光接続口26aを、カバープレート23の下部に下向きに設ける場合、覗き込むことは稀であるが、小さい子供が誤って覗き込んだ場合に、光を直視しないように、接続アダプタ26にはシャッター板を有するものを用いることができる。
【0027】
また、光ファイバケーブルによる情報通信とは別に、光ファイバの断線等を監視するために、通信事業者が特定波長(例えば、1.65μmの波長)の光信号を送信することがある。このため、この監視光を遮断するためのフィルタを別に接続する必要があるが、接続アダプタ26に、この特定波長を遮断するフィルタ機能が内蔵されたものを用いることにより、フィルタの収納スペースも特に必要とせず、フィルタ接続のための手間も省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明によるアウトレットの概略を説明する図である。
【図2】本発明によるアウトレットの詳細を説明する分解図である。
【図3】本発明によるアウトレットの組付け状態を説明する図である。
【図4】本発明によるアウトレットの下端側の形状例を示す図である。
【図5】従来技術のアウトレットの例を説明する図である。
【図6】従来技術の光ファイバ収納プレートの例を説明する図である。
【符号の説明】
【0029】
21…アウトレット、22…アウトレットボックス、23…カバープレート、23a…プレート面、23b…張出し部、24…電話用ジャック、24a…電気接続口、25…電源用コンセント、25a…電気接続口、26…接続アダプタ、26a…光接続口、27,28a,28b…開口、27a,29…閉塞板、30…取付枠、31…取付金具、32…接続アダプタ取付部、33…光コネクタ、34…光ファイバケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に配設されるアウトレットであって、電気配線及び光配線を収納するアウトレットボックスと、電気接続口及び光接続口を取付ける取付枠と、該取付枠を覆うカバープレートを備え、光ファイバケーブル端に直に光コネクタが取付けられ、前記取付枠の左右いずれか一方の側に前記光コネクタが装着される接続アダプタの光接続口が下方を向くように取付けられ、前記カバープレートは、前面側に前記光コネクタ及び接続アダプタを収納する張出し部を有していることを特徴とするアウトレット。
【請求項2】
前記カバープレートの張出し部は、上下端に前記接続アダプタの光接続口を露出させるための開口を備えていることを特徴とする請求項1に記載のアウトレット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−176109(P2008−176109A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10151(P2007−10151)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000231936)日本通信電材株式会社 (98)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】