説明

アキシャルギャップ型回転電機及び界磁子

【課題】マグネットトルクとリラクタンストルクとを向上させることができる界磁子を容易に製造できるようにすること。
【解決手段】界磁子20は、複数の永久磁石22と、永久磁石22のうち電機子側を覆う複数の第1磁性体24と、各永久磁石22間に配設された複数の第2磁性体28とを備えている。第1磁性体24は圧粉磁心で形成されており、第2磁性体28は回転軸18aに対して略直行する方向に鋼板が積層された積層鋼板で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転軸に略垂直な面に沿って広がるギャップを介して電機子と界磁子とが対向するアキシャルギャップ型回転電機及び界磁子に関する。
【背景技術】
【0002】
アキシャルギャップ型回転電機は、電機子と界磁子とが回転軸に沿ってギャップを隔てて設けられた構成とされている。
【0003】
電機子は、ヨークとヨークに設けられたティースと、当該ティースに巻回される巻線とを有しており、界磁子を回転させるべく回転磁界を発生させるようになっている。
【0004】
界磁子としては、回転軸周りに複数の永久磁石を配設し、各永久磁石間にリラクタンストルクを発生させるための磁性体を設けたものがある。これにより、マグネットトルクに併せてリラクタンストルクをも有効利用して界磁子を回転させることができるようになっている。
【0005】
本願発明に関連する先行技術としては、例えば特許文献1に記載のものがある。特許文献1では、リラクタンストルクを発生させるための磁性体を含むロータコア全体を圧粉磁心で構成する例と、当該ロータコア全体を径方向に積層した積層鋼板で構成する例が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−94955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、磁束が界磁子内部で回転軸に略直交する平面に沿った方向に流れるラジアルギャップ型モータとは異なり、アキシャルギャップ型回転電機では、例えば、軸方向にも磁束が流れる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示のように、ロータコア全体を圧粉磁心で構成してしまうと、圧粉磁心は比較的透磁率が低く、しかも比較的低周波での鉄損が高いため、磁気抵抗が増加し、効率が悪くなってしまう。特に、リラクタンストルクを発生させるために永久磁石間に設けられる磁性体部分は、永久磁石による磁束のアシストなしに、電機子の巻線に流れる電流により励磁されるため、高透磁率は、リラクタンストルクの発生には重要な条件となる。
【0009】
一方、特許文献1に他の例として開示されているように、ロータコア全体を径方向に積層した積層鋼板で形成すれば、積層される鋼板として外形状、孔形状、孔ピッチ形状等が異なるものを多数準備する必要があり、打抜きが煩雑で、製造が煩雑となる。
【0010】
そこで、本発明は、マグネットトルクとリラクタンストルクとを向上させることができる界磁子を容易に製造できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、第1の態様に係るアキシャルギャップ型回転電機は、電機子(30、40)と、前記電機子に対して回転軸(18a)周りに相対的に回転可能で、前記回転軸方向で前記電機子と対向する界磁子(20,120,320,420,520)と、を備え、前記界磁子は、前記回転軸方向に沿って磁化され、前記電機子に対して前記回転軸周りに交互の磁極を呈するように前記回転軸周りに配設された複数の永久磁石(22,422)と、前記各永久磁石のうち前記電機子側を覆うように配設された第1磁性体(24,224,324,424)と、前記各永久磁石及び前記各第1磁性体間に、第1磁気障壁を隔てて設けられた複数の第2磁性体(28,128,328,428)と、を有し、前記第1磁性体は圧粉磁心で形成されており、前記第2磁性体は前記回転軸に対して略直交する方向に鋼板が積層された積層鋼板で形成されたものである。
【0012】
第2の態様のように、前記回転軸に略直交する平面において、前記各第2磁性体(28,128,328,428)の断面形状が略長方形状であってもよい。
【0013】
第3の態様のように、前記各第2磁性体(128)は、前記回転軸を中心とする円の径方向に対して略直交する方向に鋼板が積層された積層鋼板で形成されたものであってもよい。
【0014】
第4の態様のように、前記各第2磁性体(28)は、前記回転軸を中心とする円の径方向に鋼板が積層された積層鋼板で形成されていてもよい。
【0015】
第5の態様のように、前記各永久磁石(22,422)及び前記各第1磁性体(24,224,324,424)のうち前記各第2磁性体に対して対向する面と、前記各第2磁性体(28,128,328,428)のうち前記各永久磁石及び前記各第1磁性体に対して対向する面とは、略平行であってもよい。
【0016】
第6の態様のように、前記各第2磁性体(28,128,328,428)は、前記回転軸方向に略平行な方向に磁化容易軸を持つ方向性電磁鋼板で形成されていてもよい。
【0017】
第7の態様のように、前記各第1磁性体(224)は、前記永久磁石のうち前記電機子側の面を覆う第1磁性体本体部(224a、224b)とこの反対側の面を覆う反対側磁性体部(224b、224a)とが、前記永久磁石のうち前記各第2磁性体と対向する面を覆う第1磁性体側方部(224c)を介して一体化された構成とされ、前記第1磁性体側方部の厚み寸法は、前記第1磁性体本本体部の厚み寸法よりも小さくてもよい。
【0018】
第8の態様のように、前記各第1磁性体(224)は、前記永久磁石を金型内に配設した状態で金型成形されてもよい。
【0019】
第9の態様のように、前記各第1磁性体(24,324,424)は、前記永久磁石に接着剤で接着されていてもよい。
【0020】
第10の態様のように、前記各永久磁石(22)と前記各第1磁性体(324)と前記各第2磁性体(328)とが、非磁性体ホルダ(350)に固定されていてもよい。
【0021】
第11の態様のように、前記非磁性体ホルダ(350)は、前記各永久磁石(22)と前記各第1磁性体(324)とを前記回転軸方向における両側から挟込むようにして固定する一対の非磁性体分割ホルダ(352)を有し、前記各第2磁性体(328)は、前記各永久磁石間に位置する部分よりも前記電機子に近接して対向する部分で、前記回転軸を中心とする円の周方向に幅広(358a)に形成されており、前記一対の非磁性体分割ホルダのうち前記各永久磁石間に前記各第2磁性体をその外周側から挿入可能な嵌合凹部(354)が形成され、前記各第2磁性体が前記各嵌合凹部にその外周側から挿入されていてもよい。
【0022】
第12の態様のように、前記各第1磁性体の内周部に設けられた環状磁性体部(450a)を有する第3磁性体(450)をさらに備え、前記第3磁性体と前記各第1磁性体(424)とが、それらの間に磁気障壁を設けた態様で圧粉磁心にて一体形成され、前記各第1磁性体に対して前記各永久磁石(422)を挟んで反対側に設けられる反対側磁性体部材(424、450,550)をさらに備え、前記第3磁性体と一体形成された前記各第1磁性体と前記反対側磁性体部材との間に前記各永久磁石を挟込むようにして固定したものであってもよい。
【0023】
第13の態様のように、前記第3磁性体は、前記環状磁性体部から前記各永久磁石間で外周側に向けて延在し、前記各第2磁性体(428)をその外周側から挿入可能な嵌合凹部(454)が形成された嵌合部(450b)を有し、前記各第2磁性体(428)は、前記各永久磁石間に位置する部分よりも前記電機子に近接して対向する部分で、前記回転軸を中心とする円の周方向に幅広(428a)に形成されており、前記各第2磁性体が前記各嵌合凹部にその外周側から挿入されていてもよい。
【0024】
第14の態様のように、前記電機子を1つ備え、前記回転子(520)は、前記電機子とは反対側の部分で前記各永久磁石同士を磁気的に短絡しつつ前記各永久磁石を保持するバックヨーク(550)をさらに有していてもよい。
【0025】
第15の態様のように、前記各永久磁石(422)及び前記各第2磁性体(428)が前記バックヨークに部分的に埋設されて保持されていてもよい。
【0026】
第16の態様のように、前記回転軸方向において前記界磁子の両側に前記電機子(30、40)を2つ備え、前記界磁子(20,120,320,420)は、前記2つの電機子のそれぞれに対する前記各第1磁性体(28,128,328,428)を有していてもよい。
【0027】
第17の態様に係る界磁子は、回転軸方(18a)向で電機子(30、40)と対向する界磁子であって、前記回転軸方向に沿って磁化され、前記電機子に対して前記回転軸周りに交互の磁極を呈するように前記回転軸周りに配設された複数の永久磁石(22,422)と、前記各永久磁石のうち前記電機子側を覆うように配設された第1磁性体(24,224,324,424)と、前記各永久磁石及び前記各第1磁性体間に、第1磁気障壁を隔てて設けられた複数の第2磁性体(28,128,328,428)と、を有し、前記第1磁性体は圧粉磁心で形成されており、前記第2磁性体は前記回転軸に対して略直交する方向に鋼板が積層された積層鋼板で形成されたものである。
【発明の効果】
【0028】
第1の態様に係るアキシャルギャップ型回転電機によると、第2磁性体が、前記回転軸に対して略直交する方向に積層された積層鋼板で形成されているため、回転軸方向における透磁率が高くなり、従って、リラクタンストルクを有効利用できる。また、第1磁性体は圧粉磁心で形成されているので、形状自由度に優れ、容易に第1磁性体及び第2磁性体を高密度に配置することができる。結果的に、マグネットトルクとリラクタンストルクとを向上させることができる界磁子を容易に製造できる。
【0029】
第2の態様によると、前記回転軸に略直交する平面において、前記第2磁性体の断面形状が略長方形状であるので、略同一形状の鋼板を回転軸に対して略直交する方向に積層することで、第2磁性体を容易に製造することができる。
【0030】
第3の態様によると、径方向に長い第2磁性体を比較的少ない鋼板で容易に形成することができる。
【0031】
第4の態様によると、周方向成分を持つ磁束に対する透磁率を高くして、リラクタンストルクをより向上させることができる。
【0032】
第5の態様によると、各永久磁石及び前記各第1磁性体と、前記各第2磁性体間に磁気障壁を設けつつ、それらの設置面積を大きくすることができる。
【0033】
第6の態様によると、回転軸方向に沿った磁束により磁化され易くなるので、リラクタンストルクをより向上させることができる。
【0034】
第7の態様によると、前記第1磁性体は、前記永久磁石のうち前記電機子側の面を覆う第1磁性体本体部とこの反対側の面を覆う反対側磁性体部とが、前記各永久磁石のうち前記各第2磁性体と対向する面を覆う第1磁性体側方部を介して一体化されているので、各永久磁石の寸法誤差を前記第1磁性体で吸収することができる。また、前記第1磁性体側方部の厚み寸法は、前記第1磁性体本本体部の厚み寸法よりも小さいので、第1磁性体本体部と反対側磁性体部との間での磁気的短絡を防止できる。
【0035】
第8の態様によると、永久磁石と第1磁性体との密着度を高めて磁気抵抗を低下させることができると共に、各永久磁石の寸法誤差を前記第1磁性体でより吸収することができる。
【0036】
第9の態様によると、第1磁性体と永久磁石とを接着剤で一体化することができる。
【0037】
第10の態様によると、前記各永久磁石と前記各第1磁性体と前記各第2磁性体とを、非磁性体ホルダで所定箇所に固定保持することができる。
【0038】
第11の態様によると、前記各第2磁性体を前記各嵌合凹部にその外周側から挿入することで、容易に保持できる。また、各第2磁性体の幅広部分で、一対の非磁性体分割ホルダを重ね合せ状に保持することができる。
【0039】
第12の態様によると、前記第3磁性体と一体形成された前記各第1磁性体と前記反対側磁性体部材との間に前記各永久磁石を挟込むようにして固定することができる。そして、各第2磁性体保持部の嵌合凹部に第2磁性体を挿入することで、各永久磁石間に第2磁性体を配設することができる。
【0040】
第13の態様によると、前記各第2磁性体を前記各嵌合凹部にその外周側から挿入することで、容易に保持できる。
【0041】
第14の態様によると、回転子の一方面側に磁極を呈しつつ、各永久磁石及び第2磁性体をバックヨークで保持することができる。
【0042】
第15の態様によると、各永久磁石及び各第2磁性体とバックヨークとの間で磁束のやりとりを円滑にしつつ、それらをしっかりと保持できる。
【0043】
第16の態様によると、2つの電機子によって界磁子に働くスラスト力を低減しつつ回転させることができる。
【0044】
第17の態様に係る界磁子によると、第2磁性体が、前記回転軸に対して略直交する方向に積層された積層鋼板で形成されているため、回転軸方向における透磁率が高くなり、従って、リラクタンストルクを有効利用できる。また、第1磁性体は圧粉磁心で形成されているので、形状自由度に優れ、容易に第1磁性体及び第2磁性体を高密度に配置することができる。結果的に、マグネットトルクとリラクタンストルクとを向上させることができる界磁子を容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
{第1実施形態}
以下、実施形態に係るについて説明する。図1はアキシャルギャップ型回転電機の全体構成を示す分解斜視図であり、図2は界磁子を示す斜視図である。
【0046】
このアキシャルギャップ型回転電機10は、1つの界磁子20を備えると共に、2つの電機子30、40を備えている。界磁子20は略円盤状に形成されており、2つの電機子も略円盤状に形成されている。2つの電機子30、40は、界磁子20の両面側に配設されており、当該界磁子20を回転させるべく磁界を発生させる。
【0047】
各部についてより詳細に説明する。
【0048】
電機子30、40は、回転軸18aの方向において、界磁子20の両側に、当該界磁子20に対してギャップ(ここでは僅かなギャップ)を隔てて対向するように配設されている。これらの電機子30、40は、図示省略のケーシング等に固定されており、本回転電機10において、固定子として機能する。
【0049】
電機子30は、バックヨークコア32と、複数(ここでは12個)のティース34と、各ティース34に巻回された巻線36とを備えている。
【0050】
バックヨークコア32は、略円盤状であり、図示省略のケーシング等に固定されている。複数のティース34は、バックヨークコア32のうち界磁子20側の面に、回転軸18aを中心として略環状に間隔をあけて配設されている。また、各ティース34のそれぞれに1つの巻線36が装着されている。つまり、この電機子30は、いわゆる集中巻の形態で巻線36が設けられている。また、ここでは、U相、V相、W相の3相の巻線36が、回転軸18a周りにその順で、3組設けられており、界磁子20の8つの磁極に対して回転磁界を発生させて、当該界磁子20を回転させるようになっている。
【0051】
電機子40も、上記電機子30と同様構成で、バックヨークコア42と、複数のティース44と、各ティース44に巻回された巻線46とを備えている。
【0052】
なお、上記電機子30、40の構成は一例であり、上記に限定されるものではない。例えば、巻線36,46が分布巻又は波巻されていてもよい。
【0053】
界磁子20は、軸受によって回転自在に支持されたシャフト(共に図示省略)を介して所定の回転軸18a周りに回転自在に配設されており、回転軸18a方向で上記両電機子30、40とギャップを隔てて対向している。つまり、この界磁子20は、本回転電機10において回転子として機能する。
【0054】
この界磁子20は、複数の永久磁石22と、複数の第1磁性体24と、複数の第2磁性体28とを有している。
【0055】
各永久磁石22は、回転軸18a周りに間隔をあけて配設されている。より具体的には、各永久磁石22は、回転軸18aを中心とする円の周方向に沿って延びる弧状かつ帯状の板形状に形成されており、それぞれの間に間隔をあけて回転軸18aを中心とする環状に配設されている。各永久磁石22は、回転軸18aに沿った方向、即ち、永久磁石22の厚み方向に沿って磁化されており、その両面にN極又はS極の磁極を呈する。これらの永久磁石22は、回転軸18aの周りで環状かつ交互の磁極を呈するように配設されており、両電機子30、40に対してそれぞれ回転軸18a周りに交互の磁極を呈する。ここでは、永久磁石22の数は8つであり、本界磁子20は、8極の磁極を呈している。
【0056】
また、各永久磁石22のうち両電機子30、40に対向する磁極面(即ち、回転軸18a方向における両面)に、それぞれ第1磁性体24が設けられている。換言すれば、回転軸18aに沿って両側から、それぞれの永久磁石22を2つの第1磁性体24で挟込む形態となっている。永久磁石22と第1磁性体24とは、例えば接着剤等で接着して一体化される。また、各第1磁性体24は、軟磁性材料によって構成されており、回転軸18aに略直交する平面において、上記永久磁石22と略同形状及び略同じ大きさである、弧状かつ帯状の平面視形状を有する板状部材に形成されている。そして、第1磁性体24が永久磁石22の両面に密着状に配設されて、各永久磁石22のうち電機子30、40側の面を覆っている。この第1磁性体24は、励磁された電機子30、40の外部磁界によって永久磁石22に減磁界が作用した場合に、各永久磁石22に作用する減磁界の影響を緩和し、もって、各永久磁石22が減磁するのを防止している。また、永久磁石22内部の高調波磁束による渦電流を低減する役割をも有している。
【0057】
この第1磁性体24は、圧粉磁心、特に鉄系の圧粉鉄心で形成されている。
【0058】
各第2磁性体28は、各永久磁石22とこれに対応して設けられた各第1磁性体24との回転軸18a周りの各間に、第1磁気障壁を隔てて設けられている。この各第2磁性体28は、各永久磁石22の磁極中心をd軸とすると、当該d軸に対して電気角で略直交するq軸に配設されている。これら各第2磁性体28は、2つの電機子30、40間を磁気的に短絡して、q軸インダクタンスをd軸インダクタンスよりも大きくしている。そして、電流をq軸よりも位相的に進めて制御することで、リラクタンストルクをマグネットトルクに併せて利用することができる。
【0059】
この第2磁性体28は、回転軸18aに対して略直交する方向に鋼板が積層された積層鋼板で形成されている。より具体的には、第2磁性体28は、回転軸18aに略直交する平面において、断面形状が略長方形状である略直方体形状に形成されている。このような第2磁性体28は、略長方形状に打抜いた鋼板を、回転軸18aを中心とする円の径方向に積層することで形成される(図2参照)。
【0060】
この第2磁性体28を構成する鋼板としては、回転軸18a方向に略平行な方向に磁化容易軸を持つ方向性電磁鋼板であることが好ましい。これにより、上記両電機子30、40による回転軸18a方向に沿った磁束により磁化され易くなるので、リラクタンストルクをより向上させることができる。また、第2磁性体28を構成する鋼板として、無方向性電磁鋼板として製造されたものを用いる場合であっても、その圧延方向を回転軸18a方向と略平行にすることが好ましい。無方向性電磁鋼板といえども、圧延方向で磁気的特性が最も優れているからである。
【0061】
なお、上記第1磁気障壁とは、第2磁性体28と、各永久磁石22及びこれに対応して設けられた各第1磁性体24とを磁気的に分離する要素を意味している。ここでは、両者間に設けられた隙間を第1磁気障壁としている。特に、ここでは、永久磁石22及びこれに対応して設けられた第1磁性体24のうち第2磁性体28に対して対向する面と、第2磁性体28のうち永久磁石22及びこれに対応して設けられた第1磁性体24に対向する面とは、略平行であり、これらの間に、第1磁気障壁として、径方向に沿って等幅な隙間が設けられている。この隙間の幅は、上記の2つの間を実質的に磁気的に分離できる最小限の幅に設定されている。第1磁気障壁として、当該構成を採用することで、上記磁気的な分離を図りつつ、磁路や永久磁石22を最大限に、体積効率よく配設することができる。
【0062】
ちなみに、第2磁性体28を略直方体形状にした上で、第1磁気障壁として、径方向に沿って等幅な隙間を設けた構成では、回転軸18aに略直交する方向における第1磁性体24の断面形状は略扇形状になる。そうすると、磁束方向等を考慮すると、当該第1磁性体24を積層鋼板で形成することは困難になってしまう。そこで、第1磁性体24については、上記のように、圧粉磁心で形成することが適しているといえる。
【0063】
上記のように永久磁石22と第1磁性体24とが重ね合せ状に一体化されたもの、及び第2磁性体28とは、例えば、それらを嵌め込み可能な孔や凹部等を形成した非磁性体ホルダ(図示省略)に収容固定されることにより、一定位置に固定される。また、そのような非磁性体ホルダの内周部にシャフトを固定保持することで、当該シャフトと共に一体的に回転する。
【0064】
このアキシャルギャップ型回転電機10では、各巻線36、46に3相交流を流すと、各巻線36、46が巻回された各ティース34、44では、当該巻線36、46に流れる電流に応じた回転磁界が発生し、これらの2つの電機子30、40で発生した回転磁界によって、界磁子20を回転させることができる。これにより、界磁子に働くスラスト力が2つの電機子によってキャンセルされる。
【0065】
この際、第2磁性体28は、永久磁石による磁束のアシスト無しに電機子30、40の巻線36、46に流れる電流によって励磁されるところ、回転軸18aに対して略直行する方向に積層された積層鋼板で形成されているため、回転軸18a方向における透磁率が高くなり、従って、リラクタンストルクを有効利用できる。また、第1磁性体24は、永久磁石22による磁束によってアシストされるため、圧粉磁心で形成しても特に問題はない。そこで、第1磁性体24を比較的形状自由度の高い圧粉磁心で形成することで、容易に第1磁性体24と第2磁性体28とを高密度かつ高効率に配置することができ、マグネットトルクをも向上させることができる。これにより、マグネットトルクとリラクタンストルクとを双方向上させることができる界磁子20を容易に製造することができる。
【0066】
特に、回転軸18aに略直交する平面において、第2磁性体28の断面形状が略長方形状であると、略同一形状の鋼板を回転軸18aに略直交する方向に積層することで、回転軸18a方向における透磁率が高い第2磁性体28を容易に製造することができる。
【0067】
また、上記電機子30、40による磁束の通過方向は、主として回転軸18a方向成分と、部分的な周方向成分とを有している。そこで、第2磁性体28を、回転軸18aを中心とする円の径方向に鋼板が積層された積層鋼板とすることで、電機子30、40による磁束に対する透磁率を高くして、リラクタンストルクをより向上させることができる。
【0068】
図3は界磁子の変形例を示す図である。この変形例に係る界磁子120では、上記第2磁性体28に代えて、第2磁性体128を用いている。なお、上記した界磁子20と同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0069】
この第2磁性体128の外形状は上記第2磁性体28と同様であり、異なる点は、回転軸18aを中心とする円の径方向に対して略直行する方向に鋼板が積層された積層鋼板で本第2磁性体128が形成されている点である。上記電機子30、40による磁束の通過方向は、実際回転軸方向の成分がほとんどとなるからである。
【0070】
この第2磁性体128の場合、径方向に長い第2磁性体128を比較的少ない鋼板で容易に形成できるというメリットがある。
【0071】
図4は第1磁性体の変形例を示す図である。なお、図4では回転軸18aを中心とする円の周方向における永久磁石22と第1磁性体224との断面形状を概念的に示している。
【0072】
この変形例では、第1磁性体224は、永久磁石22の電機子30側の面を覆う第1磁性体本体部224aと、この反対側の面を覆う第1磁性体本体部224bとが、永久磁石22のうち第2磁性体28と対向する面を覆う第1磁性体側方部224cを介して一体化された構成とされている。また、第1磁性体側方部224cの厚み寸法は、第1磁性体本体部224a、224bの厚み寸法よりも小さく、特に、容易に磁気飽和する程度の十分に小さくなっている。
【0073】
なお、上記2つの第1磁性体本体部224a、224bについては、一方を第1磁性体本体部として捉えれば、他方をその反対側の反対側磁性体部であると捉えることもできる。つまり、界磁子20の両側に電機子30、40が存在する場合には、永久磁石22の両面に上記第1磁性体24として機能し得る第1磁性体本体部が存在する。
【0074】
この変形例では、各永久磁石22の寸法誤差、特に厚み寸法誤差を、第1磁性体本体部224a、224bと、第1磁性体側方部224cを含む第1磁性体224で吸収することができる。また、第1磁性体側方部224cの厚み寸法は、第1磁性体本体部224a、224bの厚み寸法よりも十分に小さいので、永久磁石22の両面側の第1磁性体本体部224a、224b間で磁気的短絡を防止できる。
【0075】
かかる変形例は、例えば、永久磁石22を金型内に配設した状態で、第1磁性体本体部224a、224bと、第1磁性体側方部224cを含む第1磁性体224を金型成形(インサート成型)することで製造することができる。
【0076】
かかる製造方法により、永久磁石22と第1磁性体224との密着度を高めて磁気抵抗を低下させることができると共に、各永久磁石22の寸法誤差を第1磁性体224でより効果的に吸収し、ギャップ精度を高めることができる。
【0077】
また、上記変形例は、例えば、永久磁石22挿入用の凹部又は孔部形状を含む態様で、第1磁性体本体部224a、224bと、第1磁性体側方部224cを含む第1磁性体224を成形しておき、前記凹部又は孔部内に永久磁石22を挿入配置することでも製造することができる。この場合でも、各永久磁石22の寸法誤差を第1磁性体224でより効果的に吸収し、ギャップ精度を高めるという効果を得ることができる。
【0078】
なお、ここでは、界磁子20の両方に電機子30、40が存在する場合を前提としているが、界磁子20の片側にだけ電機子30又は40が存在していてもよい。この場合、永久磁石22の一方面に上記第1磁性体24として機能し得る第1磁性体本体部が存在すればよく、永久磁石22の他方面には第1磁性体24として機能し得ない磁性体(例えば、バックヨークとして機能する磁性体)が反対側磁性体部として存在していてもよい。
【0079】
{第2実施形態}
第2実施形態に係る界磁子及びアキシャルギャップ型回転電機について説明する。図5は本実施形態に係る界磁子を示す斜視図であり、図6〜図9は同界磁子の製造工程を示す説明図である。なお、上記実施形態と同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0080】
本実施形態では、永久磁石22と、上記第1磁性体24に対応する第1磁性体324と、第2磁性体28に対応する第2磁性体328とを、非磁性体ホルダ350により所定箇所で固定保持するようにした形態について説明する。
【0081】
すなわち、この界磁子320は、各永久磁石22と、第1磁性体324とを回転軸18a方向における両側から挟み込むようにして固定する一対の非磁性体分割ホルダ352を含む非磁性体ホルダ350を有している。
【0082】
非磁性体分割ホルダ352は、回転軸18aに略直交する平面において、上記各第1磁性体324の周囲を囲む複数の固定枠部353を有している。各固定枠部353は、その内側に設けられた環状部354を介して環状配設形態で連結固定されている。各固定枠部353のうちその周方向両端部の内面には、電機子30、40側に向けて内向き傾斜する傾斜面353aが形成されている。また、第1磁性体324のうちの周方向両端部は、電機子30、40側に向けて内向き傾斜する傾斜面324aを有している。そして、一対の非磁性体分割ホルダ352同士を重ね合わせつつ、永久磁石22の両面に第1磁性体324を重ねたものを、上記各固定枠部353間に配設するようにすると、第1磁性体324の両傾斜面324aが各固定枠部353の傾斜面353aに当接し、各第1磁性体324が両固定枠部353間の所定位置に挟持状に保持されるようになっている(図8及び図9参照)。
【0083】
また、第2磁性体328は、界磁子320の略径方向に沿って細長い形状を有しており、当該径方向に略直行する方向における断面形状が当該径方向において同じになっている。また、第2磁性体328は、各永久磁石22間に位置する部分(つまり、回転軸18a方向で中間部)よりも電機子30、40に近接して対向する部分で(つまり、回転軸18a方向で両端部)、界磁子320の周方向に幅広に形成された幅広部328aを有している。すなわち、第2磁性体328は、界磁子320の径方向に沿って見ると”I”字状を有している。このような第2磁性体328は、例えば、”I”字形状に打ち抜いた鋼板を、界磁子320の径方向に積層して形成することができる。
【0084】
一方、各固定枠部353のうちその周方向両端部の外面には、第2磁性体328の幅広部328aをその径方向に沿って挿入可能な溝部353bが形成されており、これにより、各固定枠部353間、即ち、各永久磁石22間に位置して、第2磁性体328をその外周側から挿入可能な嵌合孔354が形成されている。そして、各嵌合孔354にその外周側から第2磁性体328を挿入すると、第2磁性体328のうち両電機子30、40側の各幅広部328aが一対の非磁性体分割ホルダ352のそれぞれの溝部353bに嵌り込み、一対の非磁性体分割ホルダ352が重ね合せ状態に保持されるようになっている(図8及び図9参照)。
【0085】
また、上記のように第2磁性体328が挿入された状態で、一対の非磁性体分割ホルダ352の外周囲に非磁性体で形成されたリング部材356が外嵌めされる。このリング部材356により、第2磁性体328が挿入状態で固定保持されている。
【0086】
これにより、各永久磁石22、各第1磁性体324及び各第2磁性体328を、接着剤やボルト等を用いずに、容易に保持して、界磁子320を容易に製造することができる。
【0087】
なお、リング部材356を、回転軸18a方向の両端縁部で中心側に延出するように丸める又は屈曲するようにして縁部356aを形成し、この縁部356aを一対の非磁性体分割ホルダ352の縁部に係合させて回転軸18a方向で位置決めするようにするとよい。これにより、リング部材356の抜け止めを図ることができる。この際、縁部356aは、各ティース34、44とは対向しないようにして、界磁子320のうち前記縁部356aを除く部分が電機子30、40のティース34、44と対向するようにするとよい。これにより、界磁子320と電機子30、40とのギャップをなるべく小さくすることができる。
【0088】
{第3実施形態}
第3実施形態に係る界磁子及びアキシャルギャップ型回転電機について説明する。図10は同アキシャルギャップ型回転電機の全体構成を示す分解斜視図であり、図11は同アキシャルギャップ型回転電機の界磁子を示す斜視図であり、図12及び図13は同界磁子の製造工程を示す説明図である。なお、上記実施形態と同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0089】
このアキシャルギャップ型回転電機410は、第1実施形態における界磁子20に代えて、次に説明する界磁子420を備えている。
【0090】
界磁子420は、複数の永久磁石422と、複数の第1磁性体424と、複数の第2磁性体428と、第3磁性体450とを有している。
【0091】
各永久磁石422は、上記永久磁石22と同様構成である。各第1磁性体424は、回転軸18aに対して略直交する平面において、永久磁石422よりも大きな(一回り大きな)板状部材に形成されている。この第1磁性体424の内面には、永久磁石422を嵌め込み可能な位置決め凹部424aが形成されており、永久磁石422の上下両面側部分が当該位置決め凹部424aに嵌め込まれた状態で、永久磁石422が一対の第1磁性体424間に挟持可能に構成されている。
【0092】
また、第2磁性体428は、上記第2実施形態における第2磁性体328と同様に、永久磁石422間に位置する部分よりも電機子30、40に対向する部分で、回転軸18aを中心とする円の周方向に幅広な幅広部428aを有する形状に形成されている。
【0093】
第3磁性体450は、環状磁性体部450aと嵌合部450bとを有しており、ここでは、両方の電機子30、40に対応して2つ設けられている。
【0094】
環状磁性体部450aは、上記各第1磁性体424の内周部に設けられており、嵌合部450bは、環状磁性体部450aの外周部から各永久磁石22間で外周側に向けて延在するように設けられている。
【0095】
この第3磁性体450と上記各第1磁性体424とは、それらの間に磁気障壁を設けた態様で圧粉磁心にて一体形成されている。ここでの磁気障壁とは、第3磁性体450と各第1磁性体424とを磁気的に分離する要素を意味している。ここでは、第3磁性体450と各第1磁性体424との間に隙間を設けると共に、これらを磁気飽和容易な程度に十分に断面積が小さい連結部452aで連結することで、磁気障壁を設けている。
【0096】
嵌合部450bは、第2磁性体428の幅広部428aをその径方向に沿って挿入可能な嵌合凹部454を有している。なお、この嵌合部450bに、第2磁性体428が挿入されると、第2磁性体428は嵌合部450bを介して第3磁性体450に磁気的に連結されることになるが、本第2磁性体428はリラクタンストルクの発生に係る磁性体であり、特に極性がなく、内周部で短絡されていても特に問題は無い。
【0097】
そして、両電機子30、40に対向するそれぞれの第1磁性体424の間に永久磁石422を挟み込んだ状態で、各嵌合凹部454にその外周側から第2磁性体428を挿入すると、第2磁性体428のうち両電機子30、40側の各幅広部428aが一対の第3磁性体450のそれぞれの嵌合凹部454に嵌り込み、第3磁性体450が各第1磁性体424と共に重ね合わせ状態に保持されるようになっている(図11等参照)。これにより、界磁子420が製造される。
【0098】
なお、この後、図14に示すように、上記第2実施形態と同様に、各第1磁性体424及び各第2磁性体428の外周囲に、非磁性体で形成されたリング部材456を外嵌めするとよい。このリング部材456により、第2磁性体428が挿入状態で固定保持されている。この際、第2実施形態で説明したのと同様に、リング部材456の両端縁部に中心側に延出する縁部を形成して、リング部材456の抜け止めを図るとよい。この際、縁部がティース34、44と対向しないようにすることで、界磁子420と電機子30、40とのギャップをなるべく小さくすることができる。
【0099】
このように構成された界磁子420では、接着剤等を用いずに、かつ、磁路にならない部材を最小限にして、各永久磁石422、各第1磁性体424及び各第2磁性体428を、容易に保持して、界磁子420を容易に製造することができる。
【0100】
特に、第2磁性体428を各嵌合凹部454にその外周側から挿入することで、容易に上記保持構造を実現できる。なお、リング部材を外嵌めする以外に、界磁子全体をモールドする等、公知の態様で界磁子の固定ができる。
【0101】
なお、本実施形態の上記説明では、2つの電機子30、40を備えた構成を前提としているため、それぞれに対して第1磁性体424及び第3磁性体450が設けられる。この場合に、いずれか一方の第1磁性体424から見れば、永久磁石22を挟んで反対側に設けられる第1磁性体424は、反対側磁性体部材として捉えることができる。
【0102】
{第4実施形態}
第4実施形態に係る界磁子及びアキシャルギャップ型回転電機について説明する。図15は同アキシャルギャップ型回転電機の界磁子を示す斜視図であり、図16は同界磁子を示す分解斜視図である。なお、上記各実施形態で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0103】
このアキシャルギャップ型回転電機では、電機子(電機子30又は40参照)を一つだけ備える構成とされており、界磁子520がその一方面側だけで電機子に対向する構成とされている。
【0104】
すなわち、界磁子520は、複数の永久磁石422と、電機子と対向する側に設けられる複数の第1磁性体424及び第3磁性体450と、第2磁性体428と、電機子の反対側に設けられる反対側磁性体部としてのバックヨーク部550とを備えている。
【0105】
上記第1磁性体424及び第3磁性体450は、第3実施形態で説明したものと同様構成とされている。
【0106】
また、第2磁性体428も第3実施形態で説明したものと同様構成とされており、各永久磁石422間に配設される。
【0107】
バックヨーク部550は、軟磁性材料によって、界磁子520のうち電機子の反対面側ほぼ全体を覆う略円盤状に形成されており、上記各第1磁性体424に対して各永久磁石422を挟んで反対側に設けられる。つまり、このバックヨーク部550には、上記各第1磁性体424とは異なり磁気障壁が設けられていない。
【0108】
このバックヨーク部550のうち上記各永久磁石422が配設される部分には、当該永久磁石422を部分的に埋込むようにして配設可能な凹部550aが形成されている。凹部550aは、永久磁石422を保持できる程度の十分深い深さを有していてもよいし、また、単に永久磁石422を位置決めできる程度の比較的浅い深さを有していてもよい。いずれの場合も、電機子とは反対側で各第2磁性体428を磁気的に短絡しつつ各永久磁石422を保持する構成といえる。
【0109】
また、バックヨーク部550のうち各第2磁性体428が配設される部分、つまり、各永久磁石422が配設される部分間には、当該バックヨーク部550の径方向に沿って延在する溝状の嵌合凹部552が形成されている。嵌合凹部552は、径方向に沿って略同断面形状を有する溝状であり、回転軸18a方向における奥部で幅広でかつ開口部で幅狭に形成されている。そして、第2磁性体428の幅広部428a近傍部分を当該嵌合凹部552にバックヨーク部550の径方向に沿って挿入すると、当該第2磁性体428がバックヨーク部550から回転軸18a方向に沿って抜けないように埋設状に保持されるようになっている。
【0110】
そして、両電機子に対向するそれぞれの第1磁性体424とバックヨーク部550の凹部550a部分との間に永久磁石422を挟み込んだ状態で、各嵌合凹部454及び各嵌合凹部552にその外周側から第2磁性体428を挿入すると、第1磁性体424及び第3磁性体450とバックヨーク部550とが重ね合わせ状態に保持されるようになっている(図11等参照)。これにより、界磁子520が製造される。
【0111】
なお、この後、上記と同様に、各第1磁性体424及び各第2磁性体428及びバックヨーク部550の外周囲に、非磁性体で形成されたリング部材を外嵌めするとよい。
【0112】
このように構成された界磁子420では、一つの電機子を備えた構成であっても、接着剤等を用いずに、かつ、磁路にならない部材を最小限にして、各永久磁石422、各第1磁性体424及び各第2磁性体428、バックヨーク部550を、容易に保持して、界磁子520を容易に製造することができる。
【0113】
特に、第2磁性体428を各嵌合凹部454及び嵌合凹部552にその外周側から挿入することで、容易に上記保持構造を実現できる。
【0114】
なお、本実施形態では、上記第3実施形態を前提にして、電機子を一つだけ備える構成を説明したが、第1及び第2実施形態を前提しても、電機子を一つだけ備える構成とすることができる。この場合、電機子と反対側については、第1磁性体を省略し、各永久磁石を磁気的に連結するバックヨーク部を設けるとよい。このとき、界磁子は電機子の両側に2つある態様であっても同様である。
【0115】
{変形例}
なお、上記したいずれの構成も互いに相反しない限りにおいて適宜組合わせて構成することができる。
【0116】
また、上記説明では、界磁子が回転子であり、電機子が固定子である場合で説明したが、界磁子が固定子であり、電機子が固定子であってもよい。つまり、界磁子が電機子に対して相対的に回転すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】第1実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機の全体構成を示す分解斜視図である。
【図2】同上のアキシャルギャップ型回転電機における界磁子を示す斜視図である。
【図3】界磁子の変形例を示す図である。
【図4】第1磁性体の変形例を示す図である。
【図5】第2実施形態に係る界磁子を示す斜視図である。
【図6】同上の界磁子の製造工程を示す説明図である。
【図7】同上の界磁子の製造工程を示す説明図である。
【図8】同上の界磁子の製造工程を示す説明図である。
【図9】同上の界磁子の製造工程を示す説明図である。
【図10】第3実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機の全体構成を示す分解斜視図である。
【図11】同上のアキシャルギャップ型回転電機の界磁子を示す斜視図である。
【図12】同上の界磁子の製造工程を示す説明図である。
【図13】同上の界磁子の製造工程を示す説明図である。
【図14】同上の界磁子の製造工程を示す説明図である。
【図15】第4実施形態に係る界磁子を示す斜視図である。
【図16】同上の界磁子を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0118】
10,410 アキシャルギャップ型回転電機
20,120,320,420,520 界磁子
22,422 永久磁石
24,224,324,424 第1磁性体
28,128,328,428 第2磁性体
30,40 電機子
224a,224b 第1磁性体本体部(反対側磁性体部)
224c 第1磁性体側方部
328a,428a 幅広部
353 固定枠部
354 嵌合孔
356 リング部材
424a 位置決め凹部
450 第3磁性体
450a 環状磁性体部
450b 嵌合部
452a 連結部
454 嵌合凹部
550 バックヨーク部
552 嵌合凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電機子(30、40)と、
前記電機子に対して回転軸(18a)周りに相対的に回転可能で、前記回転軸方向で前記電機子と対向する界磁子(20,120,320,420,520)と、
を備え、
前記界磁子は、
前記回転軸方向に沿って磁化され、前記電機子に対して前記回転軸周りに交互の磁極を呈するように前記回転軸周りに配設された複数の永久磁石(22,422)と、
前記各永久磁石のうち前記電機子側を覆うように配設された第1磁性体(24,224,324,424)と、
前記各永久磁石及び前記各第1磁性体間に、第1磁気障壁を隔てて設けられた複数の第2磁性体(28,128,328,428)と、
を有し、
前記第1磁性体は圧粉磁心で形成されており、
前記第2磁性体は前記回転軸に対して略直交する方向に鋼板が積層された積層鋼板で形成された、アキシャルギャップ型回転電機。
【請求項2】
請求項1記載のアキシャルギャップ型回転電機であって、
前記回転軸に略直交する平面において、前記各第2磁性体(28,128,328,428)の断面形状が略長方形状である、アキシャルギャップ型回転電機。
【請求項3】
請求項2記載のアキシャルギャップ型回転電機であって、
前記各第2磁性体(128)は、前記回転軸を中心とする円の径方向に対して略直交する方向に鋼板が積層された積層鋼板で形成された、アキシャルギャップ型回転電機。
【請求項4】
請求項2記載のアキシャルギャップ型回転電機であって、
前記各第2磁性体(28)は、前記回転軸を中心とする円の径方向に鋼板が積層された積層鋼板で形成された、アキシャルギャップ型回転電機。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のアキシャルギャップ型回転電機であって、
前記各永久磁石(22,422)及び前記各第1磁性体(24,224,324,424)のうち前記各第2磁性体に対して対向する面と、前記各第2磁性体(28,128,328,428)のうち前記各永久磁石及び前記各第1磁性体に対して対向する面とは、略平行である、アキシャルギャップ型回転電機。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載のアキシャルギャップ型回転電機であって、
前記各第2磁性体(28,128,328,428)は、前記回転軸方向に略平行な方向に磁化容易軸を持つ方向性電磁鋼板で形成された、アキシャルギャップ型回転電機。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載のアキシャルギャップ型回転電機であって、
前記各第1磁性体(224)は、前記永久磁石のうち前記電機子側の面を覆う第1磁性体本体部(224a、224b)とこの反対側の面を覆う反対側磁性体部(224b、224a)とが、前記永久磁石のうち前記各第2磁性体と対向する面を覆う第1磁性体側方部(224c)を介して一体化された構成とされ、
前記第1磁性体側方部の厚み寸法は、前記第1磁性体本本体部の厚み寸法よりも小さい、アキシャルギャップ型回転電機。
【請求項8】
請求項7記載のアキシャルギャップ型回転電機であって、
前記各第1磁性体(224)は、前記永久磁石を金型内に配設した状態で金型成形された、アキシャルギャップ型回転電機。
【請求項9】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載のアキシャルギャップ型回転電機であって、
前記各第1磁性体(24,324,424)は、前記永久磁石に接着剤で接着されている、アキシャルギャップ型回転電機。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれかに記載のアキシャルギャップ型回転電機であって、
前記各永久磁石(22)と前記各第1磁性体(324)と前記各第2磁性体(328)とが、非磁性体ホルダ(350)に固定された、アキシャルギャップ型回転電機。
【請求項11】
請求項10記載のアキシャルギャップ型回転電機であって、
前記非磁性体ホルダ(350)は、前記各永久磁石(22)と前記各第1磁性体(324)とを前記回転軸方向における両側から挟込むようにして固定する一対の非磁性体分割ホルダ(352)を有し、
前記各第2磁性体(328)は、前記各永久磁石間に位置する部分よりも前記電機子に近接して対向する部分で、前記回転軸を中心とする円の周方向に幅広(358a)に形成されており、
前記一対の非磁性体分割ホルダのうち前記各永久磁石間に前記各第2磁性体をその外周側から挿入可能な嵌合凹部(354)が形成され、前記各第2磁性体が前記各嵌合凹部にその外周側から挿入された、アキシャルギャップ型回転電機。
【請求項12】
請求項1〜請求項9のいずれかに記載のアキシャルギャップ型回転電機であって、
前記各第1磁性体の内周部に設けられた環状磁性体部(450a)を有する第3磁性体(450)をさらに備え、
前記第3磁性体と前記各第1磁性体(424)とが、それらの間に磁気障壁を設けた態様で圧粉磁心にて一体形成され、
前記各第1磁性体に対して前記各永久磁石(422)を挟んで反対側に設けられる反対側磁性体部材(424、450,550)をさらに備え、
前記第3磁性体と一体形成された前記各第1磁性体と前記反対側磁性体部材との間に前記各永久磁石を挟込むようにして固定した、アキシャルギャップ型回転電機。
【請求項13】
請求項12記載のアキシャルギャップ型回転電機であって、
前記第3磁性体は、
前記環状磁性体部から前記各永久磁石間で外周側に向けて延在し、前記各第2磁性体(428)をその外周側から挿入可能な嵌合凹部(454)が形成された嵌合部(450b)を有し、
前記各第2磁性体(428)は、前記各永久磁石間に位置する部分よりも前記電機子に近接して対向する部分で、前記回転軸を中心とする円の周方向に幅広(428a)に形成されており、
前記各第2磁性体が前記各嵌合凹部にその外周側から挿入された、アキシャルギャップ型回転電機。
【請求項14】
請求項1〜請求項13のいずれかに記載のアキシャルギャップ型回転電機であって、
前記電機子を1つ備え、
前記回転子(520)は、前記電機子とは反対側の部分で前記各永久磁石同士を磁気的に短絡しつつ前記各永久磁石を保持するバックヨーク(550)をさらに有する、アキシャルギャップ型回転電機。
【請求項15】
請求項14記載のアキシャルギャップ型回転電機であって、
前記各永久磁石(422)及び前記各第2磁性体(428)が前記バックヨークに部分的に埋設されて保持されている、アキシャルギャップ型回転電機。
【請求項16】
請求項1〜請求項13のいずれかに記載のアキシャルギャップ型回転電機であって、
前記回転軸方向において前記界磁子の両側に前記電機子(30、40)を2つ備え、
前記界磁子(20,120,320,420)は、前記2つの電機子のそれぞれに対する前記各第1磁性体(28,128,328,428)を有する、アキシャルギャップ型回転電機。
【請求項17】
回転軸方(18a)向で電機子(30、40)と対向する界磁子であって、
前記回転軸方向に沿って磁化され、前記電機子に対して前記回転軸周りに交互の磁極を呈するように前記回転軸周りに配設された複数の永久磁石(22,422)と、
前記各永久磁石のうち前記電機子側を覆うように配設された第1磁性体(24,224,324,424)と、
前記各永久磁石及び前記各第1磁性体間に、第1磁気障壁を隔てて設けられた複数の第2磁性体(28,128,328,428)と、
を有し、
前記第1磁性体は圧粉磁心で形成されており、
前記第2磁性体は前記回転軸に対して略直交する方向に鋼板が積層された積層鋼板で形成された、界磁子(20,120,320,420,520)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2008−278649(P2008−278649A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119808(P2007−119808)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】