説明

アキュムレータを備えた液圧回路

【課題】液圧エネルギーを蓄積するためのアキュムレータを備えた液圧回路において、アキュムレータの小型化を図る。
【解決手段】油圧ポンプ1の吐出圧を増圧する増圧器13を設け、該増圧器13で増圧された圧油をアキュムレータ10に蓄積すると共に、アキュムレータライン18の回路圧を、ポンプライン5の回路圧を設定する第一リリーフ弁9の設定圧よりも高く設定する第二リリーフ弁20を設けて、アキュムレータ10に油圧ポンプ1の吐出圧よりも高圧の圧油を蓄積する構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧エネルギーを蓄積するためのアキュムレータを備えた液圧回路の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧式作業機械の油圧回路には、エンジンや電動モータ等の駆動機構により駆動される油圧ポンプや、該油圧ポンプから圧油供給される油圧アクチュエータ回路(油圧シリンダ、油圧モータ等の油圧アクチュエータが配された回路)が設けられるが、さらに、油圧ポンプの吐出ラインにアキュムレータを接続し、該アキュムレータに油圧ポンプの吐出油を蓄圧すると共に、アキュムレータの蓄圧油を、駆動機構の停止時(油圧ポンプの停止時)に油圧アクチュエータ回路の油圧源として用いるように構成した油圧回路が従来から知られている。この様なアキュムレータを備えた油圧回路において、アキュムレータ内の封入ガス圧力をP、最低作動圧力をP、最高作動圧力をP、アキュムレータの容積をVとすると、下記の式(1)によって表される容積Vwがアキュムレータの吐出できる吐出量となる。
=Vw×(P1/n×P1/m)/{P1/m×(P1/n−P1/n)} ・・・(1)
上記式(1)において、m、nはそれぞれアキュムレータの蓄積時、吐出時のポリトロープ指数である。また、アキュムレータの最高作動圧力Pは、アキュムレータが接続される回路の最高圧力、つまり、油圧ポンプの吐出ラインの回路圧を設定するリリーフ弁の設定圧によって決まる。
ところで、前述したようなアキュムレータを備えた油圧回路において、アキュムレータが吐出できる吐出量Vwは、上記式(1)によりアキュムレータの最高作動圧力Pによって増減するが、該最高作動圧力Pは、前述したようにリリーフ弁の設定圧によって決まってしまうため、アキュムレータの最高作動圧力Pを高くしてアキュムレータの吐出量Vwを多くすることはできないことになる。而して、アキュムレータの吐出量Vwを多くしたい場合には、アキュムレータの容積Vを大きくしなければならず、アキュムレータの大型化、高重量化という問題がある。また、アキュムレータの蓄圧油を、前記リリーフ弁の設定圧よりも高圧で作動する油圧アクチュエータ回路に供給しようとしてもできないことになる。
さらに、前記油圧回路において、駆動機構の停止中の油圧アクチュエータ回路の圧力は、駆動機構の停止直後はリリーフ弁の設定圧であるが、油圧アクチュエータ回路の内部漏洩により時間経過と共に徐々に低下していく。このとき、アキュムレータの蓄圧油が油圧アクチュエータ回路に供給されるが、該油圧アクチュエータ回路への供給に伴いアキュムレータの蓄圧圧力も低下していくため、油圧アクチュエータ回路の圧力が徐々に低下していくことを止めることはできない。このため、例えば、油圧アクチュエータがワークを保持する油圧シリンダであるような場合に、駆動機構を停止させたままでは油圧シリンダの保持力を長時間保つことができないという問題もある。
これに対し、油圧ポンプからの吐出油をアキュムレータに蓄圧すると共に、該アキュムレータの蓄圧油を増圧器で増圧することで、アキュムレータの蓄圧油よりも高圧の圧油を油圧アクチュエータに供給できるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−148656号公報
【特許文献1】特開2007−247727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1、2のものでは、増圧器から油圧アクチュエータへの供給量は、アキュムレータから増圧器への供給量に対して、増圧器で増圧された圧力に反比例して少なくなる。つまり、増圧器の出力圧力をアキュムレータの蓄圧圧力のN倍にする場合、増圧器から油圧アクチュエータへの供給量は、アキュムレータから増圧器への供給量の1/Nになる。このため、油圧アクチュエータの要求量に対して充分に大きな容積のアキュムレータを採用する必要があって、アキュムレータの大型化、高重量化を回避することができないという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、駆動機構により駆動される液圧ポンプと、該液圧ポンプの吐出側に接続されるポンプラインの回路圧を設定する第一リリーフ弁と、ポンプラインから作動液が供給される第一アクチュエータ回路と、作動液を蓄圧するアキュムレータとを備えた液圧回路において、該液圧回路に、液圧ポンプの吐出圧を増圧する増圧器を設け、該増圧器により増圧された作動液を前記アキュムレータに蓄圧する構成にすると共に、アキュムレータに接続されるアキュムレータラインの回路圧を前記第一リリーフ弁の設定圧よりも高く設定する第二リリーフ弁と、アキュムレータラインから作動液が供給される第二アクチュエータ回路と、アキュムレータラインの作動液を前記ポンプラインに供給する補充ラインとを設けたことを特徴とするアキュムレータを備えた液圧回路である。
請求項2の発明は、請求項1において、増圧器は、ポンプラインから増圧器に至る増圧器入力ラインに配された切換弁の切換え作動に基づいて増圧作動を行なう構成であると共に、駆動機構が駆動しており、且つ、アキュムレータラインの圧力が第二リリーフ弁の設定圧未満の場合に、増圧器を増圧作動させてアキュムレータに蓄圧するべく前記切換弁に制御信号を出力する制御装置を設けたことを特徴とするアキュムレータを備えた液圧回路である。
請求項3の発明は、請求項1または2において、補充ラインを開閉する補充ライン用制御弁を設けると共に、駆動機構が停止しており、且つ、ポンプラインの圧力が予め設定される第一アクチュエータ回路保持圧未満の場合に、補充ラインを開いてアキュムレータの蓄圧液を第一アクチュエータ回路に供給するべく前記補充ライン用制御弁に制御信号を出力する制御装置を設けたことを特徴とするアキュムレータを備えた液圧回路である。
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか一項において、アキュムレータラインから第二アクチュエータ回路への供給流量を制御する第二アクチュエータ回路用制御弁を設けると共に、第二アクチュエータ回路に配される第二アクチュエータが操作された場合に、アキュムレータの蓄圧液を第二アクチュエータ回路に供給するべく前記第二アクチュエータ回路用制御弁に制御信号を出力する制御装置を設けたことを特徴とするアキュムレータを備えた液圧回路である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、アキュムレータに、液圧ポンプの吐出圧よりも高圧の作動液を蓄積できることになって、アキュムレータの小型化、軽重量化に貢献できる。さらに、アキュムレータラインから作動液が供給される第二アクチュエータ回路には、ポンプラインの回路圧よりも高圧で作動するアクチュエータを配することができる。また、アキュムレータに蓄積された高圧の作動液を、補充ラインを介して第一アクチュエータ回路に供給することもできる。
請求項2の発明とすることにより、駆動機構の駆動中は、アキュムレータの蓄圧圧力が第二リリーフ弁の設定圧を保持するように増圧器の増圧作動が行なわれることになる。
請求項3の発明とすることにより、駆動機構を停止させたままであっても、第一アクチュエータ回路の圧力を予め設定される第一アクチュエータ回路保持圧以上に長期間保持することができる。
請求項4の発明とすることにより、アキュムレータの蓄圧液を、無駄無く効率的に第二アクチュエータ回路に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】作業機械の油圧回路図である。
【図2】アキュムレータ蓄圧制御の制御手順を示すフローチャート図である。
【図3】第一アクチュエータ回路圧力保持制御の制御手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は、作業機械に設けられる油圧回路を示す図であって、該図1において、1は油圧ポンプ(本発明の液圧ポンプに相当する)、2は該油圧ポンプ1を駆動せしめるエンジンや電動機等の駆動機構、3は油タンク、4はサクションフィルター、5は油圧ポンプ1の吐出側に接続されるポンプラインであって、該ポンプライン5には、油圧ポンプ1からポンプライン5への油の流れは許容するが逆方向の流れは阻止する逆止弁6が配されている。
【0009】
さらに、前記ポンプライン5には、該ポンプライン5から圧油が供給される第一アクチュエータ回路7が接続されている。該第一アクチュエータ回路7は、単数或いは複数の第一油圧アクチュエータ(図示しないが、油圧シリンダや油圧モータ等の油圧アクチュエータ)に圧油を供給するための回路である。
【0010】
また、8は前記ポンプライン5から分岐されて油タンク3に至る第一リリーフ油路であって、該第一リリーフ油路8には、ポンプライン5の回路圧を設定する第一リリーフ弁9が配されている。これによりポンプライン5の回路圧は、第一リリーフ弁9の設定圧PR1を越えないように設定されている。
【0011】
さらに、10はアキュムレータ、11は前記油圧ポンプ1の吐出圧を増圧してアキュムレータ10に供給するための増圧回路であって、該増圧回路11には、切換弁12と増速器13と逆止弁14とが配設されている。
【0012】
前記切換弁12は、制御装置15から出力される信号に基づいて切換わる二位置電磁切換弁であって、ポンプライン5から分岐されて増圧器13に至る増圧器入力ライン16に配されている。そして該切換弁12は、制御装置15からの出力信号がOFFの場合には中立位置Nに位置しているが、該中立位置Nでは、前記増圧器入力ライン16を遮断すると共に、増圧器13の大径部側油室13D(該大径部側油室13Dについては後述する)を油タンク3に連通させる。一方、制御装置15からON信号が出力されることにより切換弁12は作動位置Xに切換わるが、該作動位置Xでは増圧器入力ライン16を開き、これによりポンプライン5の圧油が増圧器入力ライン16を経由して増圧器13の大径部側油室13Dに供給されるように構成されている。
【0013】
一方、前記増圧器13は、大径筒部13Aa及び小径筒部13Abを有した二段筒形状のシリンダ筒13A、該シリンダ筒13Aの大径筒部13Aa及び小径筒部13Abにそれぞれ摺動自在に内嵌される大径部13Ba及び小径部13Bbを有した二段形状のピストン13B、シリンダ筒13Aの小径筒部側底面13Adとピストン13Bの小径部側端面13Bdとの間に介装されてピストン13Bをシリンダ筒13Aの大径筒部側底面13Ac方向に向けて押圧するバネ13C等を備えて構成されると共に、シリンダ筒13Aの大径筒部側底面13Acとピストン13Bの大径部側端面13Bcとの間には大径部側油室13Dが形成され、また、シリンダ筒13Aの小径筒部側底面13Adとピストン13Bの小径部側端面13Bdとの間には小径部側油室13Eが形成され、さらにシリンダ筒13Aの大径筒部13Aa、小径筒部13Ab間の段差部13Aeとピストン13Bの大径部13Ba、小径部13Bb間の段差部13Beとの間にはドレン室13Fが形成されている。そして、前記大径部側油室13Dは前述した切換弁12に接続され、また、小径部側油室13Eは逆止弁14を介してアキュムレータ10に接続され、さらにドレン室13Fは油タンク3に接続されている。前記逆止弁14は、増圧器13からアキュムレータ10に至る増圧器出力ライン17に配されていて、増圧器13の小径部側油室13Eからアキュムレータ10への油の流れは許容するが、逆方向の流れは阻止するように構成されている。さらに、前記増圧器13のピストン13Bには、大径部側油室13Dと小径部側油室13Eとを連通する連通路13Gが形成されていると共に、該連通路13Gには、大径部側油室13Dから小径部側油室13Eへの油の流れは許容するが逆方向の流れは阻止する逆止弁13Hが配設されている。また、13Afはシリンダ筒13Aの大径筒部側底面13Acに設けられる大径筒部側ストッパ、13Agは小径筒部側底面13Adに設けられる小径筒部側ストッパであって、これら大径筒部側ストッパ13Af、小径筒部側ストッパ13Agにピストン13Bが当接することによって該ピストン13Bのこれ以上の大径筒部側底面13Ac方向、小径筒部側底面13Ad方向への移動が規制されるようになっている。
【0014】
ここで、前記増圧器13は、ピストン13Bの大径部側端面13Bcに作用する負荷圧がピストン13Bをシリンダ筒13Aの小径筒部側底面13Ad方向(図1における左方向)に移動させる力として作用し、また、ピストン13Bの小径部側端面13Bdに作用する負荷圧及びバネ13Cの付勢力がピストン13Bをシリンダ筒13Aの大径筒部側底面13Ac方向(図1における右方向)に移動させる力として作用すると共に、下記の式(2)、(3)が成立するようになっている。
P2x・S2+Fx≧P1x・S1 ・・・(2)
P2y・S2+Fy≦P1y・S1 ・・・(3)
尚、上記式(2)、(3)及び以下の説明において、S1はピストン13Bの大径部13Baの断面積、S2はピストン13Bの小径部13Bbの断面積である。また、Fx、P1x、P2xはそれぞれピストン13Bがシリンダ筒13Aの大径筒部側端に位置している(大径筒部側ストッパ13Afに当接している)ときのバネ13Cの付勢力、ピストン13Bの大径部側端面13Bcに作用する負荷圧、ピストン13Bの小径部側端面13Bdに作用する負荷圧であり、また、Fy、P1y、P2yはそれぞれピストン13Bがシリンダ筒13Aの小径筒部側端(小径筒部側ストッパ13Agに当接している)に位置しているときのバネ13Cの付勢力、ピストン13Bの大径部側端面13Bcに作用する負荷圧、ピストン13Bの小径部側端面13Bdに作用する負荷圧である。
【0015】
そして、前記増圧器13は、切換弁12の切換え作動に基づき油圧ポンプ1の吐出圧を増圧してアキュムレータ10に供給するが、該増圧器13の作動について以下に説明する。まず、駆動機構2の駆動時(油圧ポンプ1の駆動時)において、切換弁12を中立位置Nから作動位置Xに切換えると、油圧ポンプ1の吐出油がポンプライン5及び増圧器入力ライン16を経由して増圧器13の大径部側油室13Dに供給される。これにより、ピストン13Bの大径部側端面13Bcには油圧ポンプ1の吐出圧Ppが作用するが、該油圧ポンプ1の吐出圧Ppは、ピストン13Bの大径部側端面13Bcに作用する最高圧であって、上記式(3)のP1y以上(Pp≧P1y)であるから、上記式(3)により、ピストン13Bは、シリンダ筒13Aの小径筒部側ストッパ13Agに当接するまで小径筒部側端方向に移動する。そして、該ピストン13Bの移動に伴い小径部側油室13Eから増圧された圧油が出力され、該増圧油が逆止弁14を経由してアキュムレータ10に蓄圧される。この場合、小径部側油室13Eから排出される増圧油の圧力、つまり、アキュムレータ10に供給される圧力は、ピストン13Bの断面積比K(K=S1/S2、小径部13Bbの断面積S2に対する大径部13Baの断面積S1)に比例して高圧になるため、大径部13Baの断面積S1を小径部13Bbの断面積S2よりも充分に大きな値に設定することにより、アキュムレータ10に油圧ポンプ1の吐出圧Ppよりも充分に高圧な圧油を蓄圧することができる。
【0016】
次いで、切換弁12を作動位置Xから中立位置Nに切換えると、油圧ポンプ1から大径部側油室13Dへの圧油供給が断たれると共に、該大径部側油室13Dが油タンク3に連通して、ピストン13Bの大径部側端面13Bcに作用する負荷圧はタンク圧Ptになる。該タンク圧Ptは、ピストン13Bの大径部側端面13Bcに作用する最低圧であって、上記式(2)のP1x以下(Pt≦P1x)であるから、上記式(2)より、ピストン13Bは、シリンダ筒13Aの大径筒部側ストッパ13Afに当接するまで大径筒部側端方向に移動する。このとき、小径部側油圧13Eには、大径部側油室13Dの油が連通路13G及び逆止弁13Hを経由して供給されると共に、アキュムレータ10から小径部側油室13Eへの逆流は、増圧器出力ライン17に配された逆止弁14によって阻止されるようになっている。そして、ピストン13Bがシリンダ筒13Aの大径筒部側端に達した後、再び切換弁12を作動位置Xに切換えると、再びピストン13Bがシリンダ筒13Aの小径筒部側端方向に移動して増圧油がアキュムレータ10に蓄圧され、この様にして、切換弁12の切換え作動に基づいて増圧器13のピストン13Bが往復移動し、これに伴い増圧器13から出力された増圧油が漸次アキュムレータ10に蓄積されていくように構成されている。尚、前記切換弁12の切換え作動は、制御装置15の行なうアキュムレータ蓄圧制御によって制御されるが、該アキュムレータ蓄圧制御については後述する。
【0017】
一方、18は前記アキュムレータ10に接続されるアキュムレータラインであって、該アキュムレータライン18には、油タンク3に至る第二リリーフ油路19が分岐形成されている。該第二リリーフ油路19には、アキュムレータライン18の回路圧を設定する第二リリーフ弁20が配設されており、これによりアキュムレータライン18の回路圧は、第二リリーフ弁20の設定圧PR2を越えないように設定されているが、該第二リリーフ弁20の設定圧PR2は、前記第一リリーフ弁9の設定圧PR1よりも高圧(PR2>PR1)に設定されている。
【0018】
また、22は前記アキュムレータライン18から分岐されて前記ポンプライン5に至る補充ラインであって、該補充ライン22には第一制御弁(本発明の補充ライン用制御弁に相当する)23が配設されている。該第一制御弁23は、電磁比例切換弁を用いて構成されており、制御装置15からの出力信号がOFFの場合には、補充ライン22を閉じる中立位置Nに位置しているが、制御装置15からON信号が出力されることにより作動位置Xに切換わって補充ライン22を開くと共に、その開口面積は、制御装置15からの信号値に応じて可変制御されるようになっている。つまり、制御装置15からの制御信号に基づいて作動する第一制御弁23によって、アキュムレータライン18からポンプライン5への圧油供給流量を制御できるようになっている。
【0019】
さらに、前記アキュムレータライン18には、該アキュムレータライン18から圧油が供給される第二アクチュエータ回路24が第二制御弁(本発明の第二アクチュエータ回路用制御弁に相当する)25を介して接続されている。該第二制御弁25は、前記第一制御弁23と同様に電磁比例切換弁を用いて構成されていて、制御装置15からの出力信号がOFFの場合には、アキュムレータライン18から第二アクチュエータ回路24に至る油路を閉じる中立位置Nに位置しているが、制御装置15からON信号が出力されることにより作動位置Xに切換わって、アキュムレータライン18から第二アクチュエータ回路24に至る油路を開くと共に、その開口面積は、制御装置15からの信号値に応じて可変制御されるようになっている。つまり、制御装置15からの制御信号に基づいて作動する第二制御弁25によって、アキュムレータライン18から第二アクチュエータ回路24への圧油供給流量を制御できるようになっている。尚、前記第二アクチュエータ回路24は、単数或いは複数の第二油圧アクチュエータ(図示しないが、油圧シリンダや油圧モータ等の油圧アクチュエータ)に圧油を供給するための回路である。
【0020】
次いで、制御装置15の行なうアキュムレータ蓄圧制御について説明する。つまり、前述したように、切換弁12の切換え作動に基づいて増圧器13から増圧油が出力され、該増圧油がアキュムレータ10に蓄圧されることになるが、上記切換弁12の切換え作動は、制御装置15の行なうアキュムレータ蓄圧制御によって制御される構成になっており、該アキュムレータ蓄圧制御について、図2に示すフローチャート図に基づいて説明する。まず、制御装置15は、油圧ポンプ1を駆動せしめる駆動機構2の駆動、停止に基づいてON、OFFが切換わるスイッチ26と、アキュムレータライン18の圧力を検出するアキュムレータ用圧力センサ27からの検出信号を入力する(ステップS1)。
【0021】
次いで、制御装置15は、スイッチ26からの入力信号に基づいて、駆動機構2の駆動の有無を判定する(ステップS2)。該ステップS2の判定で、駆動機構2が駆動している(スイッチ26がON)と判定された場合には、続けて、アキュムレータ用圧力センサ27により検出されるアキュムレータライン18の圧力PAが第二リリーフ弁20の設定圧PR2未満であるか否か(PA<PR2?)を判定する(ステップS3)。
【0022】
そして、前記ステップS3の判定で「YES」、つまり、アキュムレータライン18の圧力PAが第二リリーフ弁20の設定圧PR2未満である(PA<PR2)と判定された場合には、制御装置15は切換弁12に対して、予め設定される所定時間T間隔でON信号とOFF信号とを繰返して出力(ON/OFF信号反復出力)する(ステップS4)。これにより、切換弁12は、所定時間T間隔で作動位置Xと中立位置Nとに切換わるが、上記所定時間Tは、切換弁12の切換え作動に基づいて増圧器13のピストン13Bがシリンダ筒13Aの大径筒部側端と小径筒部側端との間を移動することができる時間に設定されている。そして、切換弁12が所定時間T間隔で作動位置Xと中立位置Nとに切換わることにより、前述したように、増圧器13のピストン13Bが往復移動して増圧油を出力し、該増圧油がアキュムレータ10に蓄積される。
【0023】
一方、前記ステップS2の判定で、駆動機構2が停止している(スイッチ26がOFF)と判定された場合、或いは、ステップS3の判定で「NO」、つまり、アキュムレータライン18の圧力PAが第二リリーフ弁20の設定圧PR2以上(PA≧PR2)であると判定された場合には、制御装置15は切換弁12に対してOFF信号を出力する(ステップS5)。これにより、切換弁12は中立位置Nに保持されて、増圧器13のピストン13Bの往復移動は行なわれず、増圧器13からアキュムレータ10への増圧油の供給は停止されるようになっている。尚、前記ストップS4の処理後、或いはステップS5の処理後は、前記ステップS1に戻る。
【0024】
而して、前記制御装置15の行なうアキュムレータ蓄圧制御によって、駆動機構2が駆動しており、且つ、アキュムレータライン18の圧力PAが第二リリーフ弁20の設定圧PR2未満の場合には、切換弁12の切換え作動に基づいて増圧器13から増圧油が出力され、該増圧油がアキュムレータ10に蓄圧される。該アキュムレータ10への蓄圧は、アキュムレータライン18の圧力PAが第二リリーフ弁20の設定圧PR2に達するまで続行される。そして、アキュムレータライン18の圧力PAが第二リリーフ弁20の設定圧PR2に達すると、切換弁12が中立位置Nに保持されることによりアキュムレータ10への蓄圧は停止されるが、アキュムレータ10の蓄圧油が使用されてアキュムレータライン18の圧力PAが再び第二リリーフ弁20の設定圧PR2未満になると、アキュムレータ10への蓄圧が再開される。一方、駆動機構2が停止している場合には、油圧ポンプ1の吐出油が増圧器入力ライン16に供給されないが、この場合には、アキュムレータライン18の圧力PAに関わらず、アキュムレータ10への蓄圧は行なわれないようになっている。
【0025】
さらに、前記制御装置15は、駆動機構2の停止中において、第一アクチュエータ回路7の回路圧を予め設定される第一アクチュエータ回路保持圧PL以上に保持するための第一アクチュエータ回路圧力保持制御を行なう。該第一アクチュエータ回路圧力保持制御について、図3に示すフローチャート図に基づいて説明すると、まず、制御装置15は、前記スイッチ26と、ポンプライン5の圧力を検出するポンプライン用圧力センサ28からの検出信号を入力する(ステップS1)。 尚、前記第一アクチュエータ回路保持圧PLは、駆動機構2の停止時に第一アクチュエータ回路7の内部漏洩により回路圧が低下してしまうことを防止するために、第一アクチュエータ回路7が保持するべき圧力として予め設定される圧力であって、第一リリーフ弁9の設定圧PR1よりも低い値(PL<PR1)に設定されている。
【0026】
次いで、制御装置15は、スイッチ26からの入力信号に基づいて、駆動機構2の駆動の有無を判定する(ステップS2)。該ステップS2の判定で、駆動機構2が停止している(スイッチ26がOFF)と判定された場合には、続けて、ポンプライン用圧力センサ28により検出されるポンプライン5の圧力PSが前記第一アクチュエータ回路保持圧PL未満であるか否か(PS<PL?)を判定する(ステップS3)。
【0027】
そして、前記ステップS3の判定で「YES」、つまり、ポンプライン5の圧力PSが第一アクチュエータ回路保持圧PL未満である(PS<PL)と判定された場合は、制御装置15は第一制御弁23に対してON信号を出力する(ステップS4)。これにより第一制御弁23は、補充ライン22を開く作動位置Xに切換わるが、該作動位置Xの第一制御弁23の開口面積は、制御装置15から出力される信号値によって制御される。
【0028】
前記ステップS4の処理後、制御装置15は、ポンプライン用圧力センサ28により検出されるポンプライン5の圧力PSが第一リリーフ弁9の設定圧PR1以上であるか否か(PS≧PR1?)を判定する(ステップS5)。
【0029】
前記ステップS5の判定で「NO」、つまり、ポンプライン5の圧力PSが第一リリーフ弁9の設定圧PR1未満である(PS<PR1)と判定された場合には、前記ステップS4の処理に戻る。これにより、ポンプライン5の圧力PSが第一リリーフ弁9の設定圧PR1未満のあいだは、第一制御弁23は作動位置Xに保持されるようになっている。
【0030】
一方、前記ステップS5の判定で「YES」、つまり、ポンプライン5の圧力PSが第一リリーフ弁9の設定圧PR1以上である(PS≧PR1)と判定された場合には、制御装置15は第一制御弁23に対してOFF信号を出力する(ステップS6)。これにより第一制御弁23は、補充ライン22を閉じる中立位置Nに切換わる。尚、ステップS6の処理後は、前記ステップS1に戻る。
【0031】
また、前記ステップS2の判定で、駆動機構2が駆動している(スイッチ26がON)と判定された場合、或いは、ステップS3の判定で「NO」、つまり、ポンプライン5の圧力PSが第一アクチュエータ回路保持圧PL以上である(PS≧PL)と判定された場合には、ステップS1に戻る。
【0032】
而して、前記制御装置15の行なう第一アクチュエータ回路圧力保持制御によって、駆動機構2の停止中にポンプライン5の圧力PSが第一アクチュエータ回路保持圧PL未満になった場合には、第一制御弁23が補充ライン22を開く作動位置Xに切換わり、これにより、アキュムレータ10の蓄圧油が補充ライン22及びポンプライン5を経由して第一アクチュエータ回路7に供給される。このアキュムレータ10の蓄圧油の供給は、ポンプライン5の圧力PSが第一リリーフ弁9の設定圧PR1に達するまで続行され、而して、駆動機構2の停止中であっても、第一アクチュエータ回路7の回路圧を第一アクチュエータ回路保持圧PL以上に保持することができるようになっている。
【0033】
さらに、前記制御装置15は、第二油圧アクチュエータの操作を検出する第二油圧アクチュエータ操作検出手段(例えば、第二油圧アクチュエータ用操作具の操作を検出する操作具検出手段や、第二油圧アクチュエータ用操作具の操作に基づいて出力されるパイロット圧を検出する圧力センサ等)29からの検出信号に基づいて、アキュムレータ10から第二アキュムレータ回路24への圧油供給を制御する。つまり、制御装置15は、第二油圧アクチュエータ操作検出手段29により第二油圧アクチュエータの操作が検出された場合に、第二制御弁25に対してON信号を出力する。これにより第二制御弁25は、アキュムレータライン18から第二アクチュエータ回路24に至る油路を開く作動位置Xに切換り、而して、アキュムレータ10の蓄圧油が第二アクチュエータ回路24に供給されるようになっている。この場合の第二制御弁25の開口面積は、第二油圧アクチュエータ操作検出手段29により検出される第二油圧アクチュエータの操作量に基づいて、第二油圧アクチュエータが要求する流量を供給できるように可変制御される構成になっている。尚、第二油圧アクチュエータ操作検出手段29により第二油圧アクチュエータの操作が検出されない場合には、制御装置15は第二制御弁25に対してOFF信号を出力し、これにより第二制御弁25は、アキュムレータライン18から第二アクチュエータ回路24に至る油路を閉じる中立位置Nに位置していて、アキュムレータ10の蓄圧油は第二アクチュエータ回路24に供給されないようになっている。また、アキュムレータ10から第二アクチュエータ回路24への圧油供給制御は、駆動機構2の駆動、停止に拘わらず行なわれるようになっている。
【0034】
叙述の如く構成された本形態において、作業機械の油圧回路には、駆動機構2により駆動される油圧ポンプ1と、該油圧ポンプ1の吐出側に接続されるポンプライン5の回路圧を設定する第一リリーフ弁9と、ポンプライン5から圧油が供給される第一アクチュエータ回路7と、圧油を蓄積するアキュムレータ10とが設けられているが、さらに、油圧ポンプ1の吐出圧を増圧する増圧器13が設けられており、該増圧器13により増圧された圧油が前記アキュムレータ10に蓄積される構成になっていると共に、アキュムレータ10に接続されるアキュムレータライン18の回路圧を前記第一リリーフ弁9の設定圧よりも高く設定する第二リリーフ弁20と、アキュムレータライン18から圧油が供給される第二アクチュエータ回路24と、アキュムレータライン18の圧油をポンプライン5に供給する補充ライン22とが設けられている。
【0035】
この結果、アキュムレータ10に、油圧ポンプ1の吐出圧よりも高圧の圧油を蓄積できることになり、而して、油圧ポンプ1の吐出油をそのまま蓄積する場合と比して、アキュムレータ10の容積を大きくすることなくアキュムレータ10の吐出量を多くすることができて、アキュムレータ10の小型化、軽重量化に貢献できる。さらに、アキュムレータライン18から圧油供給される第二アクチュエータ回路24には、ポンプライン5の回路圧よりも高圧で作動する油圧アクチュエータを配することができる。また、アキュムレータ10に蓄積された高圧の圧油を、補充ライン22を介して第一アクチュエータ回路7に供給することもできる。
【0036】
さらにこのものにおいて、前記増圧器13は、ポンプライン5から増圧器13に至る増圧器入力ライン16に配された切換弁12の切換え作動に基づいて増圧作動を行なうと共に、上記切換弁12は制御装置15からの制御信号に基づいて作動するが、該制御装置15は、駆動機構2が駆動しており、且つ、アキュムレータライン18の圧力が第二リリーフ弁20の設定圧未満の場合に、増圧器13を増圧作動させてアキュムレータ10に蓄圧するべく前記切換弁12に制御信号を出力することになる。而して、駆動機構2の駆動中は、アキュムレータ10の蓄圧圧力が第二リリーフ弁20の設定圧を保持するように増圧器13の増圧作動が行なわれると共に、第二リリーフ弁20の設定圧に達した以降も増圧作動が続行されて増圧油が第二リリーフ弁20からリリーフされてしまうような無駄をなくすことができる。
【0037】
また、前記補充ライン22には、該補充ライン22を開閉する第一制御弁23が設けられていると共に、該第一制御弁23は制御装置15からの制御信号に基づいて作動するが、制御装置15は、駆動機構2が停止しており、且つ、ポンプライン5の圧力が予め設定される第一アクチュエータ回路保持圧PL未満の場合に、補充ライン22を開いてアキュムレータ10の蓄圧油を第一アクチュエータ回路7に供給するべく前記第一制御弁23に制御信号を出力することになる。この場合、アキュムレータ10には油圧ポンプ1の吐出圧を増圧した圧油が蓄積されているから、駆動機構2を停止させたままであっても、第一アクチュエータ回路7の圧力を第一アクチュエータ回路保持圧PL以上に長期間保持することができる。
【0038】
さらにこのものでは、アキュムレータライン18から第二アクチュエータ回路24への供給流量を制御する第二制御弁25が設けられていると共に、該第二制御弁25は制御装置15からの制御信号に基づいて作動するが、該制御装置15は、第二アクチュエータ回路24に配される第二油圧アクチュエータが操作された場合に、アキュムレータ10の蓄圧油を第二アクチュエータ回路24に供給するべく前記第二制御弁25に制御信号を出力することになる。この結果、アキュムレータ10の蓄圧油を、無駄無く効率的に第二アクチュエータ回路24に供給することができる。
【0039】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されないことは勿論であって、例えば、上記実施の形態では、駆動機構の駆動、停止を判別する手段としてスイッチ26を用いたが、これに限らず、エンジンや電動機の回転を検出するセンサ等を用いて駆動機構の駆動、停止を判別する構成にすることもできる。また、本発明は、油圧回路に限定されるものではなく、作動油と等価な作動液により作動する液圧回路に実施できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、液圧エネルギーを蓄積するためのアキュムレータを備えた各種の液圧回路に利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 油圧ポンプ
2 駆動機構
5 ポンプライン
7 第一アクチュエータ回路
9 第一リリーフ弁
10 アキュムレータ
12 切換弁
13 増圧器
15 制御装置
16 増圧器入力ライン
18 アキュムレータライン
20 第二リリーフ弁
22 補充ライン
23 第一制御弁
24 第二アクチュエータ回路
25 第二制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機構により駆動される液圧ポンプと、該液圧ポンプの吐出側に接続されるポンプラインの回路圧を設定する第一リリーフ弁と、ポンプラインから作動液が供給される第一アクチュエータ回路と、作動液を蓄圧するアキュムレータとを備えた液圧回路において、該液圧回路に、液圧ポンプの吐出圧を増圧する増圧器を設け、該増圧器により増圧された作動液を前記アキュムレータに蓄圧する構成にすると共に、アキュムレータに接続されるアキュムレータラインの回路圧を前記第一リリーフ弁の設定圧よりも高く設定する第二リリーフ弁と、アキュムレータラインから作動液が供給される第二アクチュエータ回路と、アキュムレータラインの作動液を前記ポンプラインに供給する補充ラインとを設けたことを特徴とするアキュムレータを備えた液圧回路。
【請求項2】
請求項1において、増圧器は、ポンプラインから増圧器に至る増圧器入力ラインに配された切換弁の切換え作動に基づいて増圧作動を行なう構成であると共に、駆動機構が駆動しており、且つ、アキュムレータラインの圧力が第二リリーフ弁の設定圧未満の場合に、増圧器を増圧作動させてアキュムレータに蓄圧するべく前記切換弁に制御信号を出力する制御装置を設けたことを特徴とするアキュムレータを備えた液圧回路。
【請求項3】
請求項1または2において、補充ラインを開閉する補充ライン用制御弁を設けると共に、駆動機構が停止しており、且つ、ポンプラインの圧力が予め設定される第一アクチュエータ回路保持圧未満の場合に、補充ラインを開いてアキュムレータの蓄圧液を第一アクチュエータ回路に供給するべく前記補充ライン用制御弁に制御信号を出力する制御装置を設けたことを特徴とするアキュムレータを備えた液圧回路。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項において、アキュムレータラインから第二アクチュエータ回路への供給流量を制御する第二アクチュエータ回路用制御弁を設けると共に、第二アクチュエータ回路に配される第二アクチュエータが操作された場合に、アキュムレータの蓄圧液を第二アクチュエータ回路に供給するべく前記第二アクチュエータ回路用制御弁に制御信号を出力する制御装置を設けたことを特徴とするアキュムレータを備えた液圧回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−122495(P2012−122495A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271137(P2010−271137)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(505236469)キャタピラー エス エー アール エル (144)
【Fターム(参考)】