説明

アクセスキー管理装置

【課題】モジュールの使用権限を適切に管理できるようにしつつ、その管理に用いるアクセスキーを、複数の装置の間で容易に移動させられるようにする。
【解決手段】 貸し出すアクセスキー及び貸出先装置を特定した貸出指示があった場合に(S11)、その貸し出すアクセスキーに貸出元装置を示す識別情報が付加されていないことを条件に(S12)、その貸し出すアクセスキーに貸出元装置を示す識別情報を付加して上記貸出先装置に移動させ(S13〜S15)、返却するアクセスキーを特定した返却指示があった場合に、その返却するアクセスキーに貸出元装置を示す識別情報が付加されていることを条件に、その貸出元装置を示す識別情報を削除すると共に、上記返却するアクセスキーを、そのアクセスキーに付加されていた識別情報が示す貸出元装置に移動させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特定のモジュールの利用権限があることを示す電子情報であるアクセスキーを管理するアクセスキー管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、デジタルミキサ等のオーディオ信号処理装置において、基本機能を提供するシステムにユーザの好みに合わせてプラグインエフェクタ等のモジュールを後から追加して機能を追加できるようにすることが行われている。そして、この場合において、モジュールの使用権限があることを示すアクセスキーを用いて、対価を支払って使用権を購入したユーザのみが追加機能を利用できるようにすることも行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、追加エフェクトのプログラムを始めとする種々の追加機能を提供するための音楽データをデジタルミキサに出荷時に記憶させておく一方、初期状態においてはユーザが基本機能のみを利用できる状態にしておき、追加機能を使用したいユーザがその使用権を購入した際に、ユーザが所定の管理サイトにアクセスすることによりアクセスキーを入手できるようにし、ユーザがそのアクセスキーを入手してデジタルミキサに設定した場合に、購入した使用権に係る追加機能を使用できるようにすることが記載されている。
【0004】
また、非特許文献1には、デジタルミキサにアドオンエフェクトをインストールする場合に、所定の認証サーバにアクセスしてアクセスキーを取得することが必要であり、また、一旦インストールしたアドオンエフェクトを他のデジタルミキサに移動したい場合には、再度認証サーバにアクセスしてデオーソライズを行うべきことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−56216号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Add−On Effects インストールガイド」,ヤマハ株式会社,2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような追加機能の使用権について、デジタルミキサを始めとするオーディオ信号処理装置を使用する現場では、機材の入れ替えや設置に応じて簡単かつ柔軟に追加機能を使用する機材を変更できるようにすることが望まれていた。
例えば、機材を貸し出す業者には、自社が有する追加機能の使用権を、顧客の要望に合わせて機材と柔軟に組み合わせて貸し出したいという要望があった。また、ユーザにも、使用権を購入している追加機能を、各現場で使用する機材に応じて、自由に機材と組み合わせて使用したいという要望があった。また、使用権を購入した追加機能を、業者から借り受けた機材と組み合わせて使用したいという要望もあった。
【0008】
しかしながら、上述したような従来の技術では、使用権があることを示すアクセスキーを、機材間で簡単に移動させることができず、このような要望に十分応えることができなかった。
すなわち、特許文献1に記載の技術では、一旦デジタルミキサに設定したアクセスキーを他のデバイスに移動させることができなかった。
【0009】
非特許文献1に記載の技術でも、一旦デジタルミキサに設定したアクセスキーを他のデバイスで使用できるようにするためには、認証サーバにアクセスしてデオーソライズした上で再度他のデバイスで認証サーバにアクセスしてアクセスキーを取得する必要があり、操作に手間がかかっていた。
【0010】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、モジュールの使用権限を適切に管理できるようにしつつ、その管理に用いるアクセスキーを、複数の装置の間で容易に移動させられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、このような目的を達成するため、オーディオ信号処理装置において使用する特定のモジュールの使用権限があることを示す電子情報であるアクセスキーを管理するアクセスキー管理装置において、貸し出すアクセスキー及び貸出先装置を特定した貸出指示があった場合に、その貸し出すアクセスキーに貸出元装置を示す識別情報が付加されていないことを条件に、その貸し出すアクセスキーを記憶している装置の識別情報を、その貸し出すアクセスキーに上記貸出元装置を示す識別情報として付加すると共に、上記貸し出すアクセスキーを上記貸出先装置に移動させるアクセスキー貸出手段と、返却するアクセスキーを特定した返却指示があった場合に、その返却するアクセスキーに貸出元装置を示す識別情報が付加されていることを条件に、その貸出元装置を示す識別情報を上記返却するアクセスキーから削除すると共に、その貸出元装置を示す識別情報が示す貸出元装置へ上記返却するアクセスキーを移動させるアクセスキー返却手段とを設けたものである。
【0012】
また、この発明の別のアクセスキー管理装置は、オーディオ信号処理装置において使用する特定のモジュールの使用権限があることを示す電子情報であるアクセスキーを管理するアクセスキー管理装置において、貸し出すアクセスキー及び貸出先装置を特定した貸出指示があった場合に、その貸し出すアクセスキーに、現在その貸し出すアクセスキーを記憶している装置の識別情報が付加されていることを条件に、その貸し出すアクセスキーを上記貸出先装置に移動させるアクセスキー貸出手段と、返却するアクセスキーを特定した返却指示があった場合に、その返却するアクセスキーに現在その返却するアクセスキーを記憶している装置以外の装置の識別情報が付加されていることを条件に、その返却するアクセスキーに付加されている上記識別情報が示す装置へその返却するアクセスキーを移動させるアクセスキー返却手段とを設けたものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のようなこの発明のアクセスキー管理装置によれば、モジュールの使用権限を適切に管理できるようにしつつ、その管理に用いるアクセスキーを、複数の装置の間で容易に移動させられるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明のアクセスキー管理装置の第1の実施形態であるPCを含むオーディオ信号処理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示したコンソールのハードウェア構成を示す図である。
【図3】図1に示したミキサエンジンのハードウェア構成を示す図である。
【図4】図1に示したオーディオ入出力装置のハードウェア構成を示す図である。
【図5】図1に示したPCのハードウェア構成を示す図である。
【図6】図1に示したドングルのハードウェア構成を示す図である。
【図7】図1に示したミキサエンジンが実行するオーディオ信号処理の構成を示す図である。
【図8】図1に示したドングルに記憶させる、アクセスキーに関連するデータを示す図である。
【図9】図1に示したオーディオ信号処理システムにおいてどのようなアクセスキーの貸し出しが可能であるかについて説明するための図である。
【図10】アクセスキーの貸し出しを行う場合に図1に示したPCのCPUが実行する処理のフローチャートである。
【図11】同じくアクセスキーの返却を行う場合の処理のフローチャートである。
【図12】この発明のアクセスキー管理装置の第2の実施形態であるPCを含むオーディオ信号処理システムにおけるアクセスキーの貸し出しについて説明するための、図9と対応する図である。
【図13】第2の実施形態におけるアクセスキーの貸し出しを行う場合の処理を示す、図10と対応するフローチャートである。
【図14】第2の実施形態におけるアクセスキーの返却を行う場合の処理を示す、図11と対応するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
〔第1の実施形態:図1乃至図11〕
まず、この発明のアクセスキー管理装置の第1の実施形態であるPC(パーソナルコンピュータ)を含むオーディオ信号処理システムの実施形態について説明する。
図1は、そのオーディオ信号処理システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、オーディオ信号処理システム1は、PC10,コンソール100,ミキサエンジン200,オーディオ入出力装置300a,300bを備える。また、PC10にはドングル30が接続されている。
【0016】
このうち、コンソール100、ミキサエンジン200及びオーディオ入出力装置300a,300bが、オーディオ信号(音響信号)を処理するオーディオ信号処理装置である。
図2乃至図4に、これらのコンソール100、ミキサエンジン200及びオーディオ入出力装置300(300aと300bを区別しない場合にこの符号を用いる)のハードウェア構成を示す。
【0017】
図2乃至図4に示す構成のうち、主制御部であるCPU101,201,301、CPUが実行するプログラムや制御に使用するデータ等を格納するROM102,202,302、CPUがワークエリアとして使用するRAM103,203,303及び、これらを接続するシステムバス121,221,321は、コンソール100、ミキサエンジン200及びオーディオ入出力装置300が共通して有する構成である。
【0018】
また、コンソール100、ミキサエンジン200及びオーディオ入出力装置300は、オーディオネットワークI/F(インタフェース)112,212,312も共通して有する。このオーディオネットワークI/F112,212,312は、イーサネット(登録商標)規格のCAT5eケーブルである通信ケーブルCBを接続するためのRJ−45コネクタとして構成することができ、この通信ケーブルCBによって各オーディオ信号処理装置のオーディオネットワークI/Fが図1に示すように順次接続される。
【0019】
そして、このことにより、特開2009−94589号公報に記載のような、オーディオ信号であるデジタル波形データと、IP(インターネットプロトコル)パケット等の制御データとを記録したオーディオネットワークフレームを複数のオーディオ信号処理装置の間に循環させることにより、デジタル波形データと制御データとをそれらのオーディオ信号処理装置の間で相互に伝送可能なオーディオネットワークシステム2を構成することができる。
【0020】
図2乃至図4に示すその他の構成は、各オーディオ信号処理装置が、その機能に応じて備えるものである。
例えば、図3に示すミキサエンジン200は、処理能力の高いDSP(デジタルシグナルプロセッサ)213を備え、オーディオ信号に対するミキシング、イコライジング、エフェクト付与、レベル調整等の種々の処理を行う。また、オーディオネットワーク経由でなく、ミキサエンジン200に直接オーディオ信号を入出力するためのオーディオ入出力端子211も備える。そして、オーディオ入出力端子211、オーディオネットワークI/F212及びDSP213は、相互にデジタルオーディオ信号を伝送するためのオーディオバス222によって接続している。また、ミキサエンジン200に対する操作を受け付けるための簡易UI(ユーザインタフェース)204も備えるが、少数のスイッチとランプ、小型ディスプレイ等による簡単な構成としている。
【0021】
また、図4に示すオーディオ入出力装置300は、多数の入出力端子を備えたオーディオ入出力端子311を備え、外部のマイクや再生装置等からオーディオ信号を、オーディオバス322及びオーディオネットワークI/F312を介してオーディオネットワークシステム2に入力したり、オーディオネットワークシステム2において伝送されるオーディオ信号を外部のスピーカやレコーダ等へ出力したりする。また、オーディオ入出力装置300が備えるUIも、簡単な構成の簡易UI304である。
【0022】
図2に示すコンソール100は、多数の操作子や表示器を備え、ユーザの操作に従って、ミキサエンジン200におけるオーディオ信号処理に使用するパラメータの設定を行う。また、どのオーディオ信号処理装置のどの端子から入力するオーディオ信号をオーディオネットワークシステム2に入力するか、オーディオネットワークシステム2において伝送されるどのオーディオ信号をDSPにおけるどの信号処理チャンネルに入力するか、DSPにおいて処理後のどのオーディオ信号をオーディオネットワークシステム2に伝送させるか、オーディオネットワークシステム2において伝送されるどのオーディオ信号をどのオーディオ信号処理装置のどの端子から出力させるか、等を規定するパッチの設定も行う。
そして、このような設定の操作を受け付けたり、その設定内容を表示したりするために、多数の操作子及びランプや大型のディスプレイ等からなる、パネル表示器105、パネル操作し106及び電動フェーダ107を有する。
【0023】
また、コンソール100も、オーディオ入出力端子111及びオーディオバス122を有し、オーディオ信号を入出力することも可能である。
さらに、コンソール100は、図1に示したPC10との接続に用いるネットワークI/F104も備える。このネットワークI/F104も、イーサネット(登録商標)規格の通信を行うためのI/Fとして構成することができるが、オーディオネットワークへの接続には用いない。そして、このネットワークI/F104に接続されるPC10とは、上述したオーディオネットワークフレームではなく、通常のTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)規格のパケットを用いて通信を行う。従って、このネットワークI/F104に接続されるPC10は、オーディオネットワークシステム2には属さない。
なお、ネットワークI/F104と同様な、PC10と接続するためのインタフェースを、他のオーディオ信号処理装置にも設けることも考えられる。
【0024】
また、図1に示したPC10は、オーディオネットワークシステム2に属するオーディオ信号処理装置の1台であるコンソール100と接続され、オーディオネットワークシステム2のシステム構成についての設定を行ったり、コンソール100が行うものと同様なパラメータやパッチの設定を行ったりすることができる制御装置である。また、以下に説明するアクセスキーの貸し出しや返却を管理するアクセスキー管理装置としても機能する。
【0025】
ここで、図5に、PC10のハードウェア構成を示す。
図5に示すように、PC10は、CPU11,ROM12,RAM13,HDD(ハードディスクドライブ)14,表示器15,入力装置16,ネットワークI/F17,USB_I/F18を備え、これらをシステムバス19により接続している。
そして、CPU11が、RAM13をワークメモリとして、ROM12やHDD14に記憶している所要のプログラムを実行することにより、コンソール100を始めとするオーディオ信号処理装置とドングル30との間でのアクセスキーの貸借を仲介するアクセスキー管理装置としての機能を実現する。
【0026】
表示器15は、ユーザに情報を提示するためのディスプレイ等の表示手段である。
入力装置16は、ユーザからの操作を受け付けるためのキーボードやポインティングデバイス等の入力手段である。
ネットワークI/F17は、コンソール100等のオーディオネットワークシステム2を構成するオーディオ信号処理装置と接続して制御データやオーディオ信号の送受信を行うための通信手段である。ここでは、コンソール100に設けたネットワークI/F104と対応する、イーサネット(登録商標)規格のインタフェースとしている。ただし、オーディオネットワークに接続するためのI/Fとは異なるものである。
【0027】
USB_I/F18は、ドングル30を接続するためのインタフェースである。ここではUSB規格に従ったものとしているが、ドングル30が対応する規格のものを用意すればよい。
これらの構成については、ハードウェアとしては公知のものを適宜採用すればよい。
【0028】
また、図1に示したドングル30は、追加モジュールの使用権限があることを示すアクセスキーを記憶する小型の記憶装置である。
図6に、このドングル30のハードウェア構成を示す。
図6に示すように、ドングル30は、USBコネクタ31,入出力制御部32,暗号処理回路33,メモリユニット34を備える。
このうちUSBコネクタ31は、PC10のUSB_I/Fに接続するためのコネクタである。
【0029】
入出力制御部32は、接続先であるPC10からの要求に基づく、メモリユニット34に対するデータの読み書きの動作を制御するモジュールである。ドングル30においては、メモリユニット34には通常領域35と秘匿領域36を設けており、アクセスキー等の秘匿性の高い情報は秘匿領域36に、比較的秘匿性の低い情報については通常領域35に記憶させるようにしている。
そして、秘匿領域36には、データを暗号化して書き込むようにしており、暗号処理回路33がこの暗号化を行う回路である。
【0030】
そして、ユーザは、以上のようなドングル30をUSB(ユニバーサルシリアルバス)インタフェースによりPC10に接続することにより、PC10のユーザが、ドングル30が記憶しているアクセスキーに係る追加モジュールの使用権限を持つことを証明することができる。そして、この状態では、ドングル30を接続したPC10及びそのPC10が接続されるオーディオネットワークシステム2に属する各オーディオ信号処理装置において、ドングル30が記憶しているアクセスキーと対応する追加モジュールを使用することができる。
【0031】
次に、アクセスキーにより使用権限を確認する追加モジュールの例について説明する。
図7に、この追加モジュールにより実現される機能を含む、ミキサエンジン200が実行するオーディオ信号処理の構成を示す。
図7に示すオーディオ信号処理は、ミキサエンジン200が備えるDSP213が実行するものであり、アクセスキーを用いて使用権限を管理する追加モジュールの例であるプラグインエフェクトを含むものである。
そして、このオーディオ信号処理構成において、DSP213が担当する部分は、入力パッチ231,入力ch232,インサーションエフェクト233,ミキシング(MIX)バス234,MIX出力ch235,出力パッチ236,システムエフェクト237を有する。
【0032】
そして、DSP213においては、128chある入力ch232にそれぞれ、ミキサエンジン200が備えるオーディオ入出力端子211のうちのオーディオ入力端子211aから直接入力するオーディオ信号、オーディオネットワークI/F212を介して読み出した、オーディオネットワークにおいて伝送されるオーディオ信号(他のオーディオ信号処理装置のオーディオ入力端子から入力したオーディオ信号)、システムエフェクト237による処理後のオーディオ信号のいずれかを入力パッチ231によってパッチ(結線)する。
【0033】
入力ch232の各chでは、パッチされたオーディオ信号に対してアッテネータ,イコライザ等によりオーディオ信号処理を行った後、96系統のMIXバス214のうちの任意のバスに対してオーディオ信号処理後の信号を送出する。この送出については、chとバスの組み合わせ毎にオンオフ及びレベル調整を行うことが可能である。また、入力ch232の各chにおいては、アッテネータ,イコライザ等のオーディオ信号処理要素の間に、インサーションエフェクト233によるオーディオ信号処理を挟むことも可能である。
【0034】
また、MIXバス234の各系統のバスでは、入力ch232の各chから入力するオーディオ信号をミキシングし、各系統のバスにおいてミキシングされたオーディオ信号はその各系統に対応して設けられる96chのMIX出力ch235に出力される。そして、MIX出力ch235の各chでは、対応するバスから入力するオーディオ信号に対してイコライザ、コンプレッサ等によりオーディオ信号処理を行い、そのオーディオ信号処理後のオーディオ信号を、出力パッチ236により、オーディオネットワークシステム2、ミキサエンジン200が備えるオーディオ入出力端子211のうちのオーディオ出力端子211b、あるいはシステムエフェクト237にパッチする。
【0035】
そして、オーディオネットワークシステム2にパッチしたオーディオ信号は、オーディオネットワークI/F212によりオーディオネットワークに対して送出する。オーディオ出力端子211bにパッチしたオーディオ信号は、その端子から出力する。システムエフェクト237にパッチしたオーディオ信号は、システムエフェクト237においてオーディオ信号処理した後、入力パッチ231によって結線される入力chに入力する。
【0036】
以上のうち、インサーションエフェクト233及びシステムエフェクト237の機能は、予めミキサエンジン200のメモリに記憶させてあるエフェクタ用プログラムからユーザが選択したものを、DSP213に転送してDSP213の処理能力の範囲内で実行させることにより実現することができる。
【0037】
なお、エフェクタ用プログラムには、使用権限に関する特別な作業(使用権の取得や確認の作業)を行うことなく、ミキサエンジン200の全てのユーザが自由に使えるもの(内蔵エフェクタ)と、追加モジュールとして提供され、所定の方法により使用権を取得した場合に初めて使えるようになるもの(プラグインエフェクタ)とがある。そして、オーディオ信号処理システム1においては、このプラグインエフェクタの使用権を、アクセスキーにより確認する。
【0038】
また、インサーションエフェクト233及びシステムエフェクト237も含めDSP213が実行する図7に示した各部によるオーディオ信号処理の内容は、カレントメモリに記憶されている各種のパラメータの現在値(カレントデータ)により制御される。ユーザは、コンソール100を操作してこのパラメータの現在値を設定することができる。つまり、図7の音響信号処理は広義には、ミキサエンジン200のみではなく、コンソール100あるいはオーディオ入出力装置300などのオーディオネットワークシステム2に属する各種の音響信号処理装置、および、音響信号処理システム1に接続されているPC10やドングル30が協同して実行するものである。
【0039】
ところで、このような追加モジュールの使用権限の確認に使用するアクセスキーは、PC10のようなアクセスキー管理装置を介して、貸出元装置であるドングル30から、貸出先装置であるオーディオネットワークシステム2に属する各種のオーディオ信号処理装置へ、アクセスキーを貸し出すこと、あるいは、返却元装置である各種のオーディオ信号処理装置から、返却先装置であるドングル30へ、アクセスキーを返却することが可能である。
そして、アクセスキーを借り受けたオーディオ信号処理装置と同じオーディオネットワークシステム2に属する各オーディオ信号処理装置においては、そのオーディオネットワークシステム2にドングル30の接続されたPC10が接続されていなくても、借り受けたアクセスキーと対応する追加モジュールを使用することができる。
【0040】
従って、オーディオ信号処理システム1において、オーディオネットワークシステム2に属する各オーディオ信号処理装置に使用権限の取得が必要な追加モジュールを使用させる場合、ドングル30の接続されたPC10をいずれかのオーディオ信号処理装置に接続する他、アクセスキーをドングル30からPC10に接続されたオーディオネットワークシステム2に属するいずれかのオーディオ信号処理装置に貸し出して記憶させればよい。
ただし、ドングル30は、アクセスキーをオーディオ信号処理装置に貸し出している状態では、その貸し出したアクセスキーについては、使用権限を証明する能力を失う。すなわち、アクセスキーを記憶していない場合と同等な状態になる。
【0041】
この実施形態において特徴的な点は、このアクセスキーの貸し出し及び、貸し出したアクセスキーの返却に関する動作である。以下、この点を中心に説明する。
まず、図8に、ドングル30に記憶させる、アクセスキーに関連するデータを示す。
図8に示すように、ドングル30は、ドングル30自身を識別するための識別情報であるシリアル番号Xを1つのみ記憶している。そのシリアル番号Xは、ドングル、あるいは、PCや全オーディオ信号処理装置、すなわち、本発明において活用されるすべてのハードにおいて固有とされる。これに加え、使用権限を管理すべきモジュール又はモジュール群毎に、プロダクトIDと、アクセスキーと、プログラムのセットを記憶している。
これらのうち、プロダクトIDは、追加モジュールの種類(名称)及び個体を識別するための識別情報である。すなわち、同じ製品番号の製品(同じ種類の追加モジュール、あるいは同じ機能の追加モジュール)であっても、パッケージ1つ毎に、あるいはダウンロードやプレインストールによる提供1回毎に、異なる値となる。
【0042】
このプロダクトIDは、プログラムの購入等によりモジュールの使用権を取得したユーザに個別に通知する。通知方法としては、例えば、追加モジュールをパッケージ販売する場合には、1パッケージ毎に異なるプロダクトIDを(印刷物の添付等により)付して、追加モジュールのプログラムを記録したCD−ROMやDVD−ROM等の記録媒体とセットにして販売することが考えられる。また、追加モジュールをダウンロードにより提供する場合には、対価の支払い時や、プログラムをダウンロードさせる際に画面に表示させたり、ユーザが入力したアドレスに電子メールを送信する等により通知することができる。予めプログラムを機器にインストールして提供する場合には、その機器のパッケージに印刷物を添付する、その機器に記憶させておいてユーザの操作により画面に表示させる等が考えられる。
【0043】
また、アクセスキーは、上述のように追加モジュールの使用権限があることを示す情報であるが、少なくとも、どの種類(名称)の追加モジュールの使用を許可するキーであるか、を示す情報を含む。プロダクトIDを通知されたユーザは、追加モジュールのベンダーが提供又は指定する所定の認証サーバにアクセスしてプロダクトIDを送信することにより、使用権を取得した追加モジュールを実際に使用できるようにするためのアクセスキーの発行を受けることができる。このアクセスは、例えばPC10によって行い、PC10は、認証サーバが発行して送信してきたアクセスキーを、プロダクトIDと共に自動的にドングル30に格納する。ここで、認証サーバが発行するアクセスキーをオリジナルのアクセスキーと呼び、認証サーバによってアクセスキーを格納される場所(ここではドングル30)をオリジナルの記憶装置と呼ぶ。
【0044】
プログラムは、追加モジュールの機能を実現するためのプログラム、代表的には、追加モジュールに相当するオーディオ信号処理をミキサエンジン200に実行させるためのプログラム(追加モジュール用のマイクロプログラム)であり、必要なプログラムを追加モジュールを使用するオーディオ信号処理装置にインストールするためのインストーラや、一旦インストールしたプログラムをオーディオ信号処理装置からアンインストールするためのアンインストーラ、コンソール100やPC10を操作して追加モジュールの機能を使用するために必要な設定を行うためのGUI(グラフィカルユーザインタフェース)を提供するためのプログラムも含む。また、オーディオ信号処理装置の機種毎に異なったプログラムが必要な場合には、それら全てのプログラムも含む。
【0045】
なお、このプログラムについては、予め使用するオーディオ信号処理装置やPC10に記憶させておいたり、CD−ROMやDVD−ROM等の記録媒体から読み出させて使用するオーディオ信号処理装置やPC10にインストールさせるようにすることも可能であり、この場合には、ドングル30に記憶させることは必須ではない。
また、以上のデータのうち、プログラムにはあまり秘匿性は要求されないので、データサイズも考慮してプログラムは通常領域35に記憶させるが、その他のデータ、すなわちプロダクトID、アクセスキー及びシリアル番号は、不正に内容を知られることは好ましくないため、秘匿領域36に記憶させる。
【0046】
次に、オーディオ信号処理システム1において、追加モジュールであるプラグインエフェクタを使用するときの動作を説明する。
典型的には、プラグインエフェクタは、コンソール100やPC10においてプラグインエフェクタを起動する指示がユーザによってなされたときに動作を開始する。コンソール100やPC10(のCPU)は、自身が属するオーディオ信号処理システム1内のドングル30あるいは各種のオーディオ信号処理装置のいずれかに、使用しようとするプラグインエフェクタの使用権限があることを示すアクセスキーが記憶されているかを確認する。
【0047】
そして、いずれかにアクセスキーが記憶されていると確認された場合は、その確認されたアクセスキーと共に記憶されているプログラム中のインストーラを使用して、そのアクセスキーを使用して起動する(今回起動を指示された)プラグインエフェクタを実行するための各種のプログラムを、オーディオ信号処理システム1内のPC10や各オーディオ信号処理装置に対して適宜にインストールし(既にインストールが完了しているPC10やオーディオ信号処理装置についてはインストールしない)、PC10および各オーディオ信号処理装置においてそれぞれインストールされたプログラムを実行する。具体的には、PC10やコンソール100にはGUIプログラムがインストールされて実行され、ミキサエンジン200にはマイクロプログラムがインストールされて実行される。
【0048】
また、アクセスキーを記憶したドングル30又はネットワーク内のオーディオ信号処理装置がみつからない場合には、プログラムをインストールしない、インストールしても実行しない、又は実行しても当該プラグインエフェクタによるオーディオ信号処理をバイパスする等により、プラグインエフェクタの機能を有効にしない(機能が実質的に動作しない)ように、つまり、システム内のオーディオ信号に対して当該プラグインエフェクタによるオーディオ信号処理が施されないように制御する。
オーディオ信号処理システム1においては、オーディオネットワークシステム2を構成する各オーディオ信号処理装置に以上のような動作を行わせることにより、追加モジュールを使用しようとするオーディオ信号処理装置(のユーザ)が、その追加モジュールの使用権限を有することをアクセスキーにより証明できる場合のみ、その追加モジュールを使用させることができる。
【0049】
次に、図9を用いて、オーディオ信号処理システム1においてどのようなアクセスキーの貸し出しが可能であるかについて説明する。
ここまでに説明してきたように、オーディオ信号処理システム1においては、PC10がアクセスキー管理装置として機能し、アクセスキーの貸し出し及び返却に関する処理を実行する。そして、PC10自身に接続されているドングル30が記憶するアクセスキーを、PC10に接続されたオーディオネットワークシステム2に属する任意のオーディオ信号処理装置(ここではデバイスA)に貸し出すことができる。そしてこの際に、貸し出したアクセスキーには、貸出元装置を示す識別情報として、ドングル30のシリアル番号Xを付する。
【0050】
しかし、アクセスキーの貸出先装置であるデバイスAから、さらに別のオーディオ信号処理装置(ここではデバイスB)にアクセスキーを貸し出そうとしても、この貸し出しは許可しないようにしている。貸出先装置であるデバイスAからアクセスキーを移動させることができるのは、貸出元装置であるドングル30にアクセスキーを返却する場合のみである。
PC10は、貸出元装置を示すシリアル番号が付されたアクセスキーについては、そのシリアル番号が示すドングル30に対する移動のみを許可するようにすることにより、このような移動の制限を可能としている。
【0051】
次に、図10に、以上のようなアクセスキーの貸し出しを行う場合にPC10のCPU11が実行する処理のフローチャートを示す。
PC10のCPU11は、アクセスキー管理アプリケーションのGUI等により、ユーザからアクセスキーの貸し出しモードの開始指示を受け付けると、図10のフローチャートに示す処理を開始する。
【0052】
そして、まず貸出できるアクセスキーの候補として、貸出元装置となり得るPC10に接続されているドングル30が記憶しているアクセスキーを全てユーザに提示し、その中から貸し出しを希望するアクセスキーの指定を受け付け、また、貸出先装置の候補として、PC10に接続したオーディオネットワークシステム2に属するすべての音響信号処理装置を抽出してユーザへ提示し、その中から1つの貸出先装置の指定も受け付ける(S11)。アクセスキーの選択肢は、アクセスキーにより使用権限を示す追加モジュールの名称やプロダクトID等により表示するとよい。
【0053】
CPU11は次に、ステップS11で指定されたアクセスキーに、シリアル番号が付されていないことを確認する(S12)。
そして、ステップS12でYES(付されていない)であれば、指定されたアクセスキーを貸し出しのため移動してよいことがわかるため、貸出元装置から、指定されたアクセスキーと貸出元装置のシリアル番号とを読み出し(S13)、読み出したアクセスキーに、そのアクセスキーを記憶していたドングル30のシリアル番号を貸出元装置を示す識別情報として付加して、ステップS11で指定された貸出先装置にそのアクセスキーを記憶させる(S14)。このステップS14においてアクセスキーを記憶するときには、そのアクセスキーに付加された識別情報も一緒に記憶されることになる。また、貸出元装置にアクセスキーの削除と貸出履歴の作成を行わせて(S15)、処理を終了する。
【0054】
これらのステップS13乃至S15の処理により、貸出元装置から貸出先装置に、アクセスキーを移動させることができる。なお、ここでは「アクセスキー」と記載したが、図9に示したようにプロダクトIDやプログラムもアクセスキーと共に移動させることが好ましい。
【0055】
また、上記のステップS15においてアクセスキーを削除するための具体的な処理としては、アクセスキーのデータを物理的に消去する処理や、アクセスキーのデータを物理的には残しつつ、そのアクセスキーが貸し出されていることを表すフラグを立てることが考えられる。これらの方法などを採用して、アクセスキーを、そのアクセスキーによって対応する追加モジュールの使用許可を出せない状態にすることが、ステップS15におけるアクセスキーの削除に相当し、必ずしもアクセスキーのデータを物理的に消去することに限定されない。しかしここでは、アクセスキーを削除する際には、容易に復元できないよう、アクセスキーのデータを維持したまま単に存在しないことを示すフラグを立てるような手法ではなく、データ自体を他のデータで上書きしてしまうことが好ましい。以下の説明においても同様である。
【0056】
また、貸出履歴は、貸出先装置のシリアル番号や、貸し出したアクセスキーを識別するための情報である。アクセスキーのデータ自体を、アクセスキーとしては使用できない形式に変換して履歴情報の一部にすることも妨げられない。
また、ステップS12でNOの場合には、指定されたアクセスキーは、又貸しになる等の理由で貸し出しできないものであることがわかるため、ディスプレイにメッセージを表示させる等してユーザにその旨を通知して(S16)、処理を終了する。
【0057】
次に、図11に、アクセスキーの返却を行う場合にPC10のCPU11が実行する処理のフローチャートを示す。
PC10のCPU11は、アクセスキー管理アプリケーションのGUI等により、ユーザからアクセスキーの返却モードの開始指示を受け付けると、図11のフローチャートに示す処理を開始する。
【0058】
そして、まず、返却元装置の候補として、PC10に接続したオーディオネットワークシステム2に属するすべての音響信号処理装置を抽出してユーザへ提示し、その中から、ユーザからアクセスキーの返却元装置の指定を受け付ける(S21)。
その後、ステップS21で指定された返却元装置が記憶しているアクセスキーを全てユーザに提示し、その中から返却を希望するアクセスキーの指定を受け付ける(S22)。
CPU11は次に、ステップS22で指定されたアクセスキーに、貸出元装置を示すシリアル番号が付されているか否か判断する(S23)。そして、付されていれば、そのシリアル番号が返却元装置のものと異なるか(S24)、及びそのシリアル番号の装置(ドングル30)にアクセス可能であるか否かも判断する(S25)。
【0059】
そして、どれもYESであれば、指定されたアクセスキーを返却のため移動してよいことがわかるため、返却元装置から、ステップS22で指定されたアクセスキーを読み出すと共に返却元装置にそのアクセスキーを削除させ(S26)、読み出したアクセスキーに付加されている貸出元装置のシリアル番号を削除して(S27)、シリアル番号削除後のアクセスキーを、そのアクセスキーに付されていたシリアル番号により示される返却先装置(貸し出し時の貸出元装置)に記憶させる(S28)。また、返却先装置に返却したアクセスキーに係る貸出履歴の削除を行わせて(S29)、処理を終了する。なお、ステップS26におけるアクセスキーの削除は、そのアクセスキーのデータを返却元装置から物理的に消去することを意味する。
【0060】
これらのステップS26乃至S29の処理により、返却元装置から返却先装置に、アクセスキーを移動させることができる。プロダクトIDやプログラムもアクセスキーと共に移動させることが好ましいことは、図10の場合と同様である。
【0061】
また、ステップS23乃至S25のいずれかでNOの場合には、指定されたアクセスキーは、貸し出しがなされたものではない、返却先装置にアクセスできない等の理由により、少なくとも現在は返却できないものであることがわかるため、ディスプレイにメッセージを表示させる等してユーザにその旨を通知して(S30)、処理を終了する。
ドングル30に記憶させるアクセスキーにドングル30のシリアル番号を付さない場合には、ステップS24の判断は必ずYESになるので、省略してもよい。
【0062】
オーディオ信号処理システム1においては、PC10のCPU11が以上の図10及び図11の処理を実行することにより、アクセスキー管理装置として機能して、図9を用いて説明したドングル30とオーディオ信号処理装置との間でのアクセスキーの貸し出し及び返却を仲介することができる。
そして、このような手法を用いれば、アクセスキーを、ベンダーが提供する認証サーバを介さずに、インターネット接続環境がない場合でも簡単な操作及び処理でドングル30とオーディオ信号処理装置との間で相互に移動させることができ、アクセスキーの自由な移動というユーザの要望に応えることができる。
【0063】
例えば、オーディオ信号処理装置のレンタル業者は、アクセスキーを顧客の要望に合わせてドングルから機材に移動させた状態で顧客に機材を貸し出せば、顧客に要望に合った追加機能が利用可能な状態で機材を貸し出すことができる。
また、ユーザも、アクセスキーをドングルから各現場で使用する機材に移動させることにより、使用権を購入した追加機能を、自由に機材と組み合わせて使用することができる。業者から借り受けた機材と組み合わせることも、もちろん可能である。
【0064】
一方で、一度貸し出したアクセスキーには返却以外の移動を認めないため、オリジナルの記憶装置から離れてアクセスキーが自由に移転され、点々と流通してしまうようなことはなく、追加モジュールを利用できるユーザがベンダーの意に反して無制限に拡大するような事態を防止できる。
レンタル業者にとっても、機材と共に貸し出したアクセスキーは移動不能であるから、アクセスキーのみ不正に抜き取られるような事態を防止できる。
【0065】
〔第2の実施形態:図12乃至図14〕
次に、この発明のアクセスキー管理装置の第2の実施形態について説明する。この第2の実施形態は、図12に示すように、認証サーバが発行したオリジナルのアクセスキーをオリジナルの記憶装置(実施形態におけるドングル30)へ記録しておく場合においても、そのオリジナルのアクセスキーにそのオリジナルの記憶装置のシリアル番号Xを付すようにした実施形態である。第2の実施形態は、この点が上述した第1の実施形態と異なるのみであるので、この点に関連する部分についてのみ説明する。また、第1の実施形態と対応する構成要素には、同じ符号を用いる。
【0066】
まず、図12と図9を比較するとわかるように、第2の実施形態においては、ドングルからデバイスAにアクセスキーを貸し出す際に、アクセスキーに新たにドングルのシリアル番号を付加する処理が不要となる。また、返却する際にシリアル番号を削除する処理も不要である。また、このためアクセスキーにシリアル番号が付されているか否かを貸し出し可否の判断基準とはできないので、これに代えて、貸し出しを希望するアクセスキーに付されたシリアル番号が、貸出元装置のものと一致するか否か、つまり、そのアクセスキーに付されていたシリアル番号と、そのアクセスキーを現在格納している記憶装置が持つその記憶装置のシリアル番号とが一致するか否かという判断基準を用いる。
【0067】
従って、第2の実施形態においてPC10のCPU11が実行するアクセスキーの貸し出しを行う場合の処理は、図13に示すものとなる。
すなわち、図10に示した処理と比較して、まずステップS12での判断基準が、ステップS12′に示すようにアクセスキーに付されたシリアル番号が貸出元装置のものと一致するか否かに変わる。また、ステップS13とS14から、シリアル番号の付加に係る処理がなくなり、ステップS13′とS14′に示すように、貸出元装置から指定されたアクセスキーを読み出し、そのアクセスキーを貸出先装置に記憶させるものに変わる。この場合において、アクセスキーはシリアル番号とセットで移動され、貸出元装置においても貸出先装置においても、アクセスキーはシリアル番号とセットで記憶される。
【0068】
また、PC10のCPU11が実行するアクセスキーの返却を行う場合の処理は、図14に示すものとなる。
すなわち、図11に示した処理と比較して、シリアル番号の削除に係るステップS27の処理がなくなり、返却元装置には、ステップS26で読み出したアクセスキーをそのまま(シリアル番号が付されているアクセスキーをシリアル番号が付されたまま)記憶させる(S28′)点が異なる。つまり、この返却の際にも、アクセスキーはシリアル番号とセットで移動される。
以上の構成によっても、第1の実施形態の場合と同様なアクセスキーの貸し出し管理を行うことができる。そしてさらに、貸し出し前後でのアクセスキーのデータのフォーマットを統一することができるので、アクセスキーの記憶領域の管理を容易に行うことができる。
【0069】
以上で実施形態の説明を終了するが、システムの構成、装置の構成、各装置に記憶させるデータの構成、具体的な処理内容、操作方法等が上述の実施形態で説明したものに限られないことはもちろんである。
例えば、図10のステップS11において、貸出元装置が記憶しているアクセスキーの中で、ステップS12の判断がYESになるものを予め選択しておき、それらの中から貸し出しを希望するアクセスキーの選択を受け付けるようにしてもよい。この場合、ステップS11の後でステップS12の判断を行う必要はない。
【0070】
同様に、図11のステップS22において、返却元装置が記憶している各アクセスキーの中で、ステップS23及びS24の判断、あるいはステップS25を含む判断が全てYESになるものを予め選択しておき、それらの中から返却を希望するアクセスキーの選択を受け付けるようにしてもよい。これらの場合、ステップS22の後で、ステップS23乃至S25のうち予め行っておいた判断を省略することができる。
また、これら以外にも、アクセスキーの候補を必ずしも全てユーザに提示せず、何らかのフィルタリングを行って提示するようにしてもよい。
【0071】
また、上述した実施形態では、ドングル30をオーディオネットワークシステム2の外部のPC10に接続する例について説明したが、オーディオネットワークシステム2を構成するオーディオ信号処理装置にドングル30を接続するためのI/Fを設け、オーディオ信号処理装置に直接ドングル30を接続できるようにしてもよい。
【0072】
また、第1および第2の実施形態においては、貸出元装置(および返却先装置、あるいはオリジナルの記憶装置)としてPC10(アクセスキー管理装置)にUSB接続されているドングル30のみを説明しているが、PC10に接続されたオーディオネットワークシステム2に属する各オーディオ信号処理装置にUSB接続されたドングル、その各オーディオ信号処理装置に接続された他のPCとUSB接続しているドングル、あるいは、その各オーディオ信号処理装置そのものなどを貸出元装置(および返却先装置、あるいはオリジナルの記憶装置)とすることができる。
【0073】
また、第1および第2の実施形態においては、貸出先装置(および返却元装置)としてPC10(アクセスキー管理装置)に接続されたオーディオネットワークシステム2に属する各オーディオ信号処理装置のみを説明しているが、その各オーディオ信号処理装置にUSB接続されたドングル、あるいは、その各オーディオ信号処理装置に接続されたPCとUSB接続しているドングルなどを貸出先装置(および返却元装置)とすることができる。なお、以上のように、多様なドングルやオーディオ信号処理装置を貸出元装置、返却先装置、貸出先装置、返却元装置として採用する場合には、貸し出し処理(図10、図13)や返却処理(図11、図14)を、PC10のみではなく、各オーディオ信号処理装置(のCPU)においても実行できる構成とする。
【0074】
また、アクセスキーにより使用権限があることを示す対象は、DSP213に実行させるプログラムに限られない。例えば、PC10に実行させるDAW(デジタルオーディオワークステーション)アプリケーションであったり、そのDAWに機能を追加するためのアドオンプログラムであったり、さらには音色データ、音源アルゴリズム、オーディオ信号処理アルゴリズム、パラメータ値のセット、曲データ、リズムデータ、伴奏データ等、プログラム以外のモジュールであってもよい。また、そのモジュールを使用する装置も、どのようなオーディオ信号処理装置であってもよい。
【0075】
また、アクセスキーの配布方法としては、ユーザに認証サーバにアクセスさせる方法だでなく、初めからアクセスキーを記憶したドングルを配布したり、その他の記憶媒体に記憶させて配布し、一度だけドングルにコピーできるようにしたりすることも考えられる。
また、以上述べてきた構成及び変形例は、矛盾しない範囲で適宜組み合わせて適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上の説明から明らかなように、この発明のアクセスキー管理装置によれば、モジュールの使用権限を適切に管理できるようにしつつ、その管理に用いるアクセスキーを、複数の装置の間で容易に移動させられるようにすることができる。
従って、このアクセスキー管理装置をデジタルミキサ等のオーディオ信号処理装置が使用するアクセスキーの管理に用いることにより、アクセスキーを柔軟に運用可能なオーディオ信号処理システムを実現することができる。
【符号の説明】
【0077】
10…PC、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…HDD、15…表示器、16…入力装置、17…ネットワークI/F、18…USB_I/F、19…システムバス、30…ドングル、31…USBコネクタ、32…入出力制御部、33…暗号処理回路、34…メモリユニット、35…通常領域、36…秘匿領域、100…コンソール、200…ミキサエンジン、211a…オーディオ入力端子、211b…オーディオ出力端子、212…オーディオネットワークI/F、213…DSP、231…入力パッチ、232…入力ch、233…インサーションエフェクト、234…MIXバス、235…MIX出力ch、236…出力パッチ、237…システムエフェクト、300a,300b…オーディオ入出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ信号処理装置において使用する特定のモジュールの使用権限があることを示す電子情報であるアクセスキーを管理するアクセスキー管理装置であって、
貸し出すアクセスキー及び貸出先装置を特定した貸出指示があった場合に、該貸し出すアクセスキーに貸出元装置を示す識別情報が付加されていないことを条件に、該貸し出すアクセスキーを記憶している装置の識別情報を、該貸し出すアクセスキーに前記貸出元装置を示す識別情報として付加すると共に、前記貸し出すアクセスキーを前記貸出先装置に移動させるアクセスキー貸出手段と、
返却するアクセスキーを特定した返却指示があった場合に、該返却するアクセスキーに貸出元装置を示す識別情報が付加されていることを条件に、該貸出元装置を示す識別情報を前記返却するアクセスキーから削除すると共に、該貸出元装置を示す識別情報が示す貸出元装置へ前記返却するアクセスキーを移動させるアクセスキー返却手段とを備えたことを特徴とするアクセスキー管理装置。
【請求項2】
オーディオ信号処理装置において使用する特定のモジュールの使用権限があることを示す電子情報であるアクセスキーを管理するアクセスキー管理装置であって、
貸し出すアクセスキー及び貸出先装置を特定した貸出指示があった場合に、該貸し出すアクセスキーに、現在該貸し出すアクセスキーを記憶している装置の識別情報が付加されていることを条件に、該貸し出すアクセスキーを前記貸出先装置に移動させるアクセスキー貸出手段と、
返却するアクセスキーを特定した返却指示があった場合に、該返却するアクセスキーに現在該返却するアクセスキーを記憶している装置以外の装置の識別情報が付加されていることを条件に、該返却するアクセスキーに付加されている前記識別情報が示す装置へ該返却するアクセスキーを移動させるアクセスキー返却手段とを備えたことを特徴とするアクセスキー管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−243144(P2011−243144A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117185(P2010−117185)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】