説明

アクチビン様受容体キナーゼ(ALK4またはALK5)阻害剤としてのイミダゾ−ピリジン誘導体

遊離または塩または溶媒和物形態の、式I:


〔式中、X、R、R、RおよびRは明細書で定義した意味を有する。〕
の化合物は、ALK−5および/またはALK−4受容体が仲介する疾患の処置に有用である。本化合物を含む医薬組成物および本化合物の製造方法も記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物および、特に炎症性または閉塞性気道疾患、例えば肺高血圧、肺線維症、肝臓線維症;癌;筋肉疾患、例えば筋肉萎縮症および筋肉ジストロフィー、および全身性骨格障害、例えば骨粗鬆症の処置用医薬としてのその使用に関する。
【発明の概要】
【0002】
一つの局面において、本発明は、式I:
【化1】

〔式中、
XはCRまたはNであり;
は独立してH、ハロ、OH、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cシクロアルキル、NRおよびZから選択され;
はアリール、ヘテロシクリル、C−Cアルキル、C−C10−シクロアルキル、C−C10シクロアルケニル、C(O)NR、ハロ、C−Cアルコキシ、アルキルチオ、ヒドロキシル、C−Cアルキルカルボニル、カルボキシ、カルボニル、シアノおよびスルホンアミドから選択され、ここで、該アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリールおよびヘテロシクリル基は、所望によりハロゲン、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから選択される1個以上の置換基で置換されていてよく;
はH、ハロ、NR1920およびOR21から選択され;
は独立してH、ハロゲン、アリールおよびヘテロシクリルから選択され、ここで、該アリールおよびヘテロシクリル基は、所望により1個以上のR基で置換されていてよく、ここで、各Rは独立してヒドロキシル、カルボニル、アミノカルボニル、C−Cアルキルアミノカルボニル、アミノ、C−Cアルキルアミノ、C−Cアルキルチオ、スルホニルアミノ、カルボニルアミノ、C−Cアルキルカルボニルアミノ、ハロ、カルボキシル、C−Cアルコキシ、ベンジルオキシ、C−Cアルコキシカルボニル、アミノスルホニル、C−Cアルキル、シアノ、スルホニル、スルファニル、スルホキシド、アリール、ヘテロシクリル、カルボニルオキシ、C−Cアミノアルキル、C−Cアルキルアミノ−C−Cアルキルから選択され、そして2個のR基が存在するとき、それらは一体となってRに縮合する環形を形成してよく、基R自体、所望によりヒドロキシル、C−Cアルキル、アリール、アミノ、C−Cアルキルアミノ、ヘテロシクリル、シアノ、ハロ、スルホニル、スルファニル、スルホキシド、ヒドロキシ−C−Cアルキル、C−CアルコキシおよびC−Cアルキルアミノ−C−Cアルキルから選択される1個以上の基で置換されていてよい。
ただしRがH以外であるとき、RはH、ハロ、OH、C−Cアルキル、C−CアルコキシまたはC−Cシクロアルキルであり;そしてRがHであるとき、Rはハロゲン、NRまたはZであり;
はH、OHおよびC−Cアルコキシから選択され;
【0003】
、RおよびRは各々独立してH、C−Cアルキル、C−CシクロアルキルおよびC−Cアルキル−C−Cシクロアルキルから選択され;
はC−C10シクロアルキルおよび5または6員ヘテロ環式基から選択され、各々所望によりC−Cアルキル、C−Cアルコキシ、OHおよびC−Cアルキル(OHまたはNHで置換されている)から選択される1個以上の基で置換されていてよく;
Zは5または6員ヘテロアリールおよびアリールから選択され、各々所望によりC−Cアルキル、C−Cアルコキシ、OH、CN、ハロ、−C(O)H、−C(O)OC−Cアルキル、−C(O)NR10、−(CH)NR1112、−(CH)het、−NR13C(O)C−Cアルキルおよび−NR14S(O)−Cアルキルから独立して選択される1個以上の基で置換されていてよく;
hetは、所望によりOH、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから選択される1個以上の基で置換されていてよい5または6員ヘテロ環式基であり;
nおよびpは各々独立して0、1または2であり;
、R11、R13およびR14は各々独立してH、C−Cアルキル、C−CシクロアルキルおよびC−Cアルキル−C−Cシクロアルキルから選択され;
10はH、C−Cアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、−(CH)NR1516およびC−Cシクロアルキル(所望によりOH、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから選択される1個以上の基で置換されていてよい)から選択されるか;または
およびR10は、それらが結合している窒素原子と一体となって5または6員ヘテロ環式基を形成し、それは所望によりN、OおよびSから選択されるさらなるヘテロ原子を含んでよく、該ヘテロ環式基は所望によりOH、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから選択される1個以上の基で置換されていてよく;
mは2または3であり;
12はH、C−Cアルキルおよび(CH)NR1718から選択され;
qは2、3または4であり;
15、R16、R17およびR18は各々独立してH、C−Cアルキル、C−CシクロアルキルおよびC−Cアルキル−C−Cシクロアルキルから選択されるか;または
15およびR16は、それらが結合している窒素原子と一体となって5または6員ヘテロ環式基を形成し、それは所望によりN、OおよびSから選択されるさらなるヘテロ原子を含んでよく、該ヘテロ環式基は所望によりOH、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから選択される1個以上の基で置換されていてよいか;または
17およびR18は、それらが結合している窒素原子と一体となって5または6員ヘテロ環式基を形成し、それは所望によりN、OおよびSから選択されるさらなるヘテロ原子を含んでよく、該ヘテロ環式基は所望によりOH、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから選択される1個以上の基で置換されていてよく;そして
19、R20およびR21は各々独立してH、C−CアルキルおよびC−Cシクロアルキルから選択されるか;またはR19およびR20は、それらが結合している窒素原子と一体となって、4、5または6員N含有ヘテロ環式基を形成する。〕
の化合物を提供する。
【0004】
上に定義した本発明のひとつの態様において、RはHであり、そしてRはハロゲン、NRまたはZである。所望により、RはHであり、そしてRはNRまたはZである。適切には、RはHであり、そしてRはNRである。
【0005】
上の何れかの場所で定義した本発明のひとつの態様において、RはC(O)NR、C−Cアルコキシ、C−Cシクロアルケニル、ハロゲン、5または6員ヘテロアリールおよびアリールから選択され、ここで、該シクロアルケニル、ヘテロアリールおよびアリール基は、所望によりハロゲン、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから独立して選択される1個以上の基で置換されていてよい。所望により、Rは5または6員ヘテロアリールまたはアリールであり、各々所望によりハロゲン、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから独立して選択される1個以上の基で置換されていてよい。
上の何れかの場所で定義した本発明の別の態様において、RはHである。
【0006】
上の何れかの場所で定義した本発明の別の態様において、RはH、フェニルまたはピリジニルであり、ここで、該フェニルおよびピリジニル基は、所望によりC−Cアルキル、C−Cアルコキシ、OH、CN、ハロ、−C(O)H、−C(O)OC−Cアルキル、−C(O)NR10、−(CH)NR1112、−(CH)het、−NR13C(O)C−Cアルキルおよび−NR14S(O)−Cアルキルから独立して選択される1個以上の基で置換されていてよく;
、R11、R13およびR14は各々独立してHおよびC−Cアルキルから選択され;
10はH、C−Cアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、−(CH)NR1516およびC−Cシクロアルキル(所望によりOH、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから選択される1個以上の置換基で置換されていてよい)から選択されるか;または
およびR10は、それらが結合している窒素原子と一体となって5または6員ヘテロ環式基を形成し、それは所望によりN、OおよびSから選択されるさらなるヘテロ原子を含んでよく、該ヘテロ環式基は所望によりOH、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから選択される1個以上の基で置換されていてよく;そして
mは2または3である。
【0007】
本発明のさらに別の態様において、次のものから選択される式Iの化合物が提供される:
4−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノール、
(1SR、2SR)−2−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノール、
{(1SR、2SR)−2−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノール、
(1SR、2SR)−3−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノール、
(1SR、3RS)−3−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノール、
(1SR、3SR)−3−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−1−メチル−シクロヘキサノール、
(1SR、3RS)−3−{3−[2−(4−フルオロフェニル)−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ}−シクロヘキサノール、
(1SR、3SR)−3−{3−[2−(4−フルオロフェニル)−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ}−シクロヘキサノール、
(1SR、3RS)−3−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−1−メチル−シクロヘキサノール、
3−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−アダマンタン−1−オール、
シクロヘキシル−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イル]−アミン、
(1SR,3RS)−1−メチル−3−{3−[2−(1−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−ピリジン−4−イル]−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ}−シクロヘキサノール、
(1SR,3RS)−3−{3−[2−(3−メチル−ピラゾール−1−イル)ピリジン−4−イル]−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ}−シクロヘキサノール、
(1RS,3SR)−3−{3−[2−(3−メチル−ピラゾール−1−イル)ピリジン−4−イル]−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ}−シクロヘキサノール、
3−[3−(2−ピラゾール−1−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノール、
(1SR,3RS)−1−メチル−3−{3−(2−ピラゾール−1−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノールおよび
(1SR,3RS)−3−[3−(2−ピラゾール−1−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノール。
【0008】
ここに記載した態様において、一部の可変基のみ定義されているとき、残りの可変基は本明細書の任意の態様において定義された通りであることが意図されている。それ故に、本発明は、可変基の限定されたまたは任意の定義の組合せについて提供される。
【0009】
本明細書で使用する以下の用語は、以下の意味を有する:
ここで使用する“所望により置換されていてよい”は、言及されている基が置換されていないか、またはここにに挙げられた基の任意の1個または任意の組合せで1個所または2個所または3個所を置換されていてもよいことを意味する。
ここで使用する“ハロ”または“ハロゲン”は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0010】
ここで使用する“C−Cアルキル”、“C−Cアルキル”、“C−Cアルキル”などは、1個から6個または7個(または適切な数)の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖アルキル基を意味し、それは定義した通り置換されていてよい。
【0011】
ここで使用する“アリール”は、6〜15個の炭素原子を有する芳香族炭素環式環系を意味する。単環式でも、二環式でも三環式でもよく、定義した通り所望により置換されていてよい。C−C15−アリール基の例は、フェニル、フェニレン、ベンゼントリル、インダニル、ナフチル、ナフチレン、ナフタレントリルおよびアントラセニルを含み、これらに限定されない。
【0012】
“ヘテロシクリル”または“ヘテロ環式”は、窒素、酸素および硫黄から成る群から選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を含む4から14員ヘテロ環式環系を意味し、それは飽和でも、部分的に飽和でも芳香族(すなわちヘテロアリール)でもよい。4から14員ヘテロ環式基の例は、フラン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、イソトリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピペリジン、ピラジン、オキサゾール、イソオキサゾール、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、ピロリジン、ピロリジノン、ピリジノン、モルホリン、トリアジン、オキサジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチオピラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、1,4−オキサチアン、インダゾール、キノリン、インドール、チアゾール、チオフェン、イソキノリン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイソチアゾール、ベンゾフラン、ジヒドロベンゾフラン、ベンゾジオキソール、ベンゾイミダゾールまたはテトラヒドロナフチリジンを含み、これらに限定されない。“ヘテロシクリル”または“ヘテロ環式”はまた、架橋ヘテロ環式基、例えば3−ヒドロキシ−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−8−イルおよび縮合環系も含む。4から14員ヘテロ環式基は置換されていなくても、置換されていてもよい。
【0013】
“ヘテロシクリル”はヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキル基を含む。
“ヘテロアリール”は、5〜15環原子を含み、その1個以上がO、NまたはSから選択されるヘテロ原子である、芳香環系である。好ましくは1個または2個のヘテロ原子が存在する。ヘテロアリール(ヘテロ環式アリール)は、例えば:ピリジル、インドリル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、フラニル、ピロリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チエニルを意味する。ヘテロアリール基は置換されていても置換されていなくてもよい。
【0014】
“C−C10−シクロアルキル”は、3〜10個の環炭素原子を有する完全に飽和された炭素環式環、例えば単環式基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルまたはシクロデシル、または二環式基、例えばビシクロヘプチルまたはビシクロオクチルを意味する。炭素原子の異なる数が、この定義のそれに応じた変更を伴い、特定され得る。シクロアルキル基は置換されていても置換されていなくてもよい。
【0015】
“C−C10−シクロアルケニル”は、5〜10個の環炭素原子を有する部分的に飽和された炭素環式環、例えば単環式基、例えばシクロペンテニルまたはシクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニルまたはシクロノネニル、または二環式基、例えばビシクロヘプテニルまたはビシクロオクテニルを意味する。この環または環系は、1個を超える炭素−炭素二重結合を含んでよい。炭素原子の異なる数が、この定義のそれに応じた変更を伴い、特定され得る。シクロアルケニル基は置換されていても置換されていなくてもよい。
【0016】
ここで使用する“C−C−ハロアルキル”は、1個以上のハロゲン原子、好ましくは1個、2個または3個のハロゲン原子で置換された、上で定義したC−C−アルキルを意味する。炭素原子の異なる数が、この定義のそれに応じた変更を伴い、特定され得る。
【0017】
ここで使用する“C−C−アルキルアミノ”は、同一でも異なってもよい1個または2個の上で定義したC−C−アルキルで置換されたアミノを意味する。炭素原子の異なる数が、この定義のそれに応じた変更を伴い、特定され得る。
【0018】
ここで使用する“C−C−アルコキシ”は、1〜7個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖アルコキシを意味する。炭素原子の異なる数が、この定義のそれに応じた変更を伴い、特定され得る。
【0019】
本明細書および添付する特許請求の範囲を通して、文脈から他の解釈が必要ではない限り、用語“含む”、またはその変形、例えば“含み”または“含んで”は、記載する整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を包含することを意図するが、全ての他の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を除外しないと理解されるべきである。
【0020】
塩基性中心を含む式Iの化合物は、酸付加塩、特に薬学的に許容される酸付加塩を形成できる。式Iの化合物の薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸、例えば、ハロゲン化水素酸、例えばフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸;および有機酸、例えば脂肪族モノカルボン酸類、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸および酪酸、カプリル酸、ジクロロ酢酸、馬尿酸、脂肪族ヒドロキシ酸類、例えば乳酸、クエン酸、酒石酸またはリンゴ酸、グルコン酸、マンデル酸、ジカルボン酸類、例えばマレイン酸またはコハク酸、アジピン酸、アスパラギン酸、フマル酸、グルタミン酸、マロン酸、セバシン酸、芳香族カルボン酸類、例えば安息香酸、p−クロロ−安息香酸、ニコチン酸、ジフェニル酢酸またはトリフェニル酢酸、芳香族ヒドロキシ酸類、例えばo−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸または3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸、およびスルホン酸類、例えばメタンスルホン酸またはベンゼンスルホン酸、エタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸、(+)カンファー−10−スルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸との塩を含む。これらの塩は、式Iの化合物から既知の塩形成法により製造し得る。薬学的に許容される溶媒和物は一般に水和物である。
【0021】
酸性基、例えばカルボキシル基を含む式Iの化合物はまた、塩基、特に薬学的に許容される塩基、例えば当分野で既知のものと塩を形成できる;適当なかかる塩は、金属塩、特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウム塩、またはアンモニアまたは薬学的に許容される有機アミン類またはヘテロ環式塩基、例えばエタノールアミン類、ベンジルアミン類またはピリジン、アルギニン、ベネタミン、ベンザチン、ジエタノールアミン、4−(2−ヒドロキシ−エチル)モルホリン,1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、N−メチルグルタミン、ピペラジン、トリエタノール−アミンまたはトロメタミンとの塩を含む。これらの塩は、式Iの化合物から既知の塩形成法により製造し得る。酸性基、例えばカルボキシル基を含む式Iの化合物はまた、第4級アンモニウム中心と双性イオンも形成し得る。
【0022】
遊離形の式Iの化合物を、慣用法で塩形態に変換でき、また逆も可能である。遊離または塩形態の化合物は、水和物または結晶化に使用した溶媒を含む溶媒和物の形で得ることができる。式Iの化合物は慣用法で反応混合物から回収し、精製できる。異性体、例えば鏡像体は、慣用法で、例えば分別結晶または対応して不斉に置換された、例えば光学活性な、出発物質からの不斉合成により得ることができる。
【0023】
本発明の化合物の幾つかは、少なくとも1個の不斉炭素原子を有し、故にそれらは個々の光学活性異性形態でまたはその混合物として、例えばラセミ混合物として存在する。さらなる不斉中心が存在するとき、本発明はまた個々の光学活性異性体ならびにその混合物、例えばジアステレオマー混合物の両方を包含する。
【0024】
本発明は全てのかかる形態、特に純粋異性形態を含む。慣用法により異なる異性形態が分離でき、または一方を他方から分割でき、またはある異性体が慣用の合成法によりまたは;立体特異的もしくは不斉合成により得ることができる。本発明の化合物は医薬組成物での使用が意図されるため、それらは各々好ましくは実質的に純粋な形態、例えば少なくとも60%純粋、より適切には少なくとも75%純粋および好ましくは少なくとも85%、特に少なくとも98%純粋で提供されることは容易に理解されよう(%は重量対重量基準である)。本化合物の不純な生成物を使用して、医薬組成物に使用するより純粋な形態を製造してよい;本化合物のこれらのあまり純粋ではない調製物は、少なくとも1%、より適切には少なくとも5%および好ましくは10〜59%の本発明の化合物を含むべきである。
【0025】
本発明は、1個以上の原子が、同一の原子数を有するが、原子質量または質量数が通常天然で見られる原子質量または質量数と異なる原子で置換されている、全ての薬学的に許容される同位体標識された式Iの化合物を包含する。本発明の化合物に包含するために適当な同位体の例は、水素の同位体、例えばHおよびH、炭素の同位体、例えば11C、13Cおよび14C、塩素の同位体、例えば36Cl、フッ素の同位体、例えば18F、ヨウ素の同位体、例えば123Iおよび125I、窒素の同位体、例えば13Nおよび15N、酸素の同位体、例えば15O、17Oおよび18O、および硫黄の同位体、例えば35Sを含む。
【0026】
ある種の同位体標識された式Iの化合物、例えば放射性同位体を含むものは、薬剤および/または基質組織分布試験に有用である。放射性同位体トリチウム(H)および炭素−14(14C)が、その取り込みの容易さおよび検出手段の手近さからこの目的で特に有用である。重い同位体、例えば重水素(H)での置換は、大きな代謝安定性に起因するある種の治療的利点、例えばインビボ半減期の延長または必要投与量減少を提供し得て、故に、ある状況下で好ましいことがある。陽電子放出同位体、例えば11C、18F、15O、および13Nは、基質受容体占拠試験のための、陽電子放出断層撮影(Positron Emission Topography)(PET)試験に有用であり得る。
【0027】
同位体標識された式Iの化合物は、一般に、当業者に既知の慣用の技術により、または添付する実施例に記載した方法に準じて、適切に同位体標識された試薬を先に使用した日標識試薬の変わりに使用して製造できる。
【0028】
本発明による薬学的に許容される溶媒和物は、結晶化の溶媒が同位体置換されている、例えばDO、d−アセトンまたはd−DMSOであり得るものを含む。
【0029】
合成
本発明の化合物は下記の一般的合成経路により合成でき、その具体例は、実施例にさらに詳細に記載する。
【0030】
【化2】

【0031】
上記一般的スキームを、RおよびRの両方ともHである式Iの化合物の製造に使用し得る。スキーム1において、L、LおよびLは、全て例えば、ハロゲン基のような適当な脱離基である。さらに、RHおよびRHに替わる反応材を、例えば異なる脱離基を有するもの、または本反応材の塩形態を使用できることが、当業者は理解できる。所望の特定の化合物を、適当な出発物質、反応材および反応条件を選択することにより製造できる。
上記スキームの出発物質および反応材は、全て、市販されているか、既知の文献に従って製造できる。
【0032】
上記スキームは、RおよびRが両方ともHである式Iの化合物の合成を示す。しかしながら、RおよびRがH以外である式Iの化合物を、適当な出発物質、反応材および反応条件の使用により類似の合成経路を使用して合成できることが、当業者には理解できる。
【0033】
XがNである式Iの化合物は適当なピリジニル出発物質を使用して合成でき、XがCRである式Iの化合物はピリジニル反応材の代わりに適当なフェニル反応材を使用して類似の合成経路を使用して合成できる。
【0034】
当業者には、最後の2工程の順番を変えることが可能であることが認識され得る。換言すると、LをRに変え、その後LをRに変えることができる。
【0035】
式Iの化合物は、例えば、実施例に詳述する反応および方法またはその変法を使用して製造できる。反応は、用いる反応材および物質に適切であり、そして行う変換に適切である溶媒中で行い得る。有機合成の分野の当業者には当然のことながら、分子上に存在する官能基を、企図する変換と一致させなければならない。これには、所望の本発明の化合物を得るために、合成工程の順番を変える、またはある特定の工程スキームを他のものから選択する必要とすることがある。
【0036】
上記反応スキームに示す合成中間体および最終産物上の種々の置換基は、その完成された形態で、当業者に理解される通り必要であるときは適当な保護基と共に、または当業者には周知の方法により最終形態へと後に完成できる前駆形態で存在できる。置換基はまた、一連の合成の種々の段階で、または一連の合成の完了後に付加することもできる。多くの場合、一般的に使用される官能基操作を使用してある中間体を別の中間体に、またはある式Iの化合物を別の式Iの化合物に変換できる。かかる操作の例は、エステルまたはケトンのアルコールへの変換;エステルのケトンへの変換;エステル、酸およびアミドの相互変換;アルコール類およびアミン類のアルキル化、アシル化およびスルホニル化;およびその他多数である。置換基を、一般的な反応、例えばアルキル化、アシル化、ハロゲン化または酸化を使用して付加できる。かかる操作は当分野で既知であり、多くの参考書にかかる操作の工程および方法が要約されている。多くの官能基操作について、あるいは有機合成の分野で一般的に使用される他の変換についての基礎的文献の例および参考となるいくつかの参考書は、March's Organic Chemistry, 5th Edition, Wiley and Chichester, Eds. (2001); Comprehensive Organic Transformations, Larock, Ed., VCH (1989); Comprehensive Organic Functional Group Transformations, Katritzky et al. (series editors), Pergamon (1995); and Comprehensive Organic Synthesis, Trost and Fleming (series editors), Pergamon (1991)である。この分野で何らかの合成経路を計画する際のもう一つの大きな要素は、本明細書に記載する化合物に存在する反応性官能基の保護に使用する保護基の賢明な選択であることも当然である。同じ分子内の多数の保護基を、望む結果によってこれらの保護基の各々が同じ分子内の他の保護基が除去されることなく除去されるように、または数個の保護基を同じ反応工程を使用して除去できるように選択できる。熟練した実施者に対して多くの選択肢を説明する信頼できる文献は、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, Wiley and Sons (1999)である。
【0037】
本発明のさらなる局面として、遊離または塩または溶媒和物形態の式Iの化合物の製造方法が提供される。
【0038】
本発明の別の局面によって、次の工程を含む式Iの化合物の製造方法が提供される:
(a)式II
【化3】

〔式中、XおよびRは上のどこかで定義した通りであり、そしてLは例えばハロゲン原子のような適当な脱離基である。〕
の化合物と、化合物R(式中、Rは上に定義した通りであり、そしてAは例えばH、ボロン酸または無水ボロン酸のような適当な反応性基である)を反応させるか;または
【0039】
(b)式III
【化4】

〔式中、XおよびRは上に定義した通りであり、そしてLは例えばハロゲン原子のような適当な脱離基である。〕
の化合物と、式R(式中、Rは上に定義した通りであり、そしてAは例えばH、ボロン酸または無水ボロン酸のような適当な反応性基である)を有する化合物を反応させる。
【0040】
上記方法において、用語“反応性基”は、RまたはRが適宜LまたはLに取って代わるように、RまたはRに適当な反応性を付与できる全ての基を包含することを意図する。かかる反応性基は、例えば、パラジウム触媒クロスカップリング反応のときボロン酸類および無水ボロン酸を、そして、反応材が負に荷電した基を形成するための反応前にまたは反応中に脱プロトン化しているとき水素原子を含む。
【0041】
本発明の薬剤は、アクチビン様キナーゼ(“ALK”)−5阻害剤として作用する。少なくともこれらの化合物の多くは、ALK−4阻害剤としても働く。
【0042】
TGF−β1は、1回膜貫通型セリン/スレオニンキナーゼ受容体のファミリーを介してシグナル伝達する、TGF−β類、アクチビン類、インヒビン類、骨形成タンパク質およびミュラー管抑制因子を含むサイトカイン類のファミリーの原型メンバーである。これらの受容体は2クラス、I型またはアクチビン様キナーゼ(ALK)受容体およびII型受容体に分類できる。ALK受容体は、II型受容体と、ALK受容体が(a)セリン/スレオニン・リッチ細胞内テイルを欠く、(b)I型受容体間で非常に相同性のセリン/スレオニンキナーゼドメインを有する、および(c)グリシンおよびセリン残基に富む領域から成る、GSドメインと呼ばれる共通モチーフを共有する点で、区別される。GSドメインは、細胞内キナーゼドメインのアミノ末端にあり、II型受容体による活性化に必須である。TGF−βシグナル伝達がALKおよびII型受容体の両方を必要とすることを示すいくつかの試験がある。具体的に、II型受容体はTGF−β存在下でTGF−βのI型受容体のGSドメイン、ALK5をリン酸化する。続いて、ALK5は、細胞質性タンパク質Smad2およびSmad3を、2個のカルボキシ末端セリンでリン酸化する。リン酸化Smadタンパク質は核に転座し、細胞外マトリックスの酸性に関与する遺伝子を活性化する。故に、好ましい本発明の化合物は、I型受容体を阻害する点で、選択的である。
【0043】
アクチビン類は、TGF−βに類似する方法でシグナル伝達する。アクチビン類は、アクチビンII型受容体(ActRIIB)であるセリン/トレオニンキナーゼに結合し、活性化されたII型受容体は、ALK4のGS領域中のセリン/スレオニン残基を過リン酸化する。この活性化されたALK4は、続いてSmad2およびSmad3をリン酸化する。最終的なSmad4とのヘテロ−Smad複合体の形成が、遺伝子転写のアクチビン誘発制御をもたらす。
【0044】
TGF−β1軸活性化および細胞外マトリックスの拡張は、慢性腎臓疾患および血管疾患の発症および進行の初期のおよび永続性の寄与因子である。Border W.A., et al, N. Engl. J. Med., 1994: 331(19), 1286-92。さらに、TGF−β1は、TGF−β1受容体ALK5によるSmad3リン酸化を介して、硬化性沈着物の成分であるフィブロネクチンおよびプラスミノーゲンアクティベーター阻害剤−1の形成に役割を有する。Zhang Y., et al, Nature, 1998: 394(6696), 909-13: Usui T., et al, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 1998: 39(11), 1981-9。
【0045】
腎臓および心血管系の進行性線維症は罹患および死亡の主要な原因であり、医療費に大きく関与している。TGF−β1は、多くの腎臓線維化障害と関連付けられている。Border W.A., et al, N. Engl. J. Med., 1994: 331(19), 1286-92。TGF−β1は急性および慢性糸球体腎炎(Yoshioka K., et al, Lab. Invest., 1993: 68(2),154-63)、糖尿病性腎症(Yamamoto, T., et al, 1993, PNAS 90, 1814-1818.)、同種移植片拒絶反応、HIV腎症およびアンギオテンシン誘発腎症(Border W.A., et al, N. Engl. 5 J. Med., 1994: 331(19), 1286-92)で上昇する。これらの疾患において、TGF−β1発現レベルは細胞外マトリックス産生と相関する。3系統の証拠が、TGF−β1とマトリックス産生の間の因果関係を示唆する。第一に、インビトロで外因性TGF−β1により、正常糸球体、メサンギウム細胞および非腎臓細胞を誘発して細胞外マトリックスタンパク質を産生させ、プロテアーゼ活性を阻害できる。第二に、TGF−β1に対する中和抗体は、腎炎ラットで細胞外マトリックスの蓄積を阻止できる。第三に、TGF−β1トランスジェニックマウスは、または正常ラット腎臓へのTGF−β1遺伝子のインビボトランスフェクションは、糸球体硬化症の急速な発症を引き起こす。Kopp J.B., et al, Lab. Invest., 1996: 74(6), 991 1003。故に、TGF−β1活性の阻害は慢性腎臓疾患の治療的介入として示される。
【0046】
TGF−β1およびその受容体は傷害された血管で増加し、バルーン血管形成術後の新生内膜形成を示す(Saltis J., et al, Clin. Exp. Pharmacol. Physiol., 1996: 23(3), 193-200)。加えて、TGF−β1はインビトロでの平滑筋細胞(“SMC”)遊走の強力な刺激因子であり、動脈壁におけるSMCの遊走はアテローム性動脈硬化症および再狭窄の病因の寄与因子である。さらに、総コレステロールに対する内皮細胞生成物の多変量解析で、TGF−β受容体ALK5は総コレステロールと相関する(P<0.001)(Blann A.D., et al, Atherosclerosis, 1996: 120(1-2), 221-6)。
【0047】
さらに、ヒト動脈硬化病変由来のSMCで、ALK5/TGF−βII型受容体比は増加している。TGF−β1が線維増殖性血管病巣で過発現しているため、受容体−I変異体細胞はゆっくりではあるが、制御されない様式での成長が可能となり、同時に細胞外マトリックス成分を過剰産生する(McCaffrey T.A., et al, Jr., J. Clin.: Invest., 1995: 96(6), 2667-75)。TGF−β1は、活性マトリックス合成が起こる場所である動脈硬化病変中の非泡沫状マクロファージに免疫局在し、非泡沫状マクロファージが、TGF−β依存性機構を介してアテローム硬化性リモデリングにおけるマトリックス遺伝子発現に酸化し得ることを示唆する。故に、ALK5上のTGF−β1の活性化の阻止が、アテローム性動脈硬化症および再狭窄においても示される。
【0048】
肝臓線維症は、多くの要因、例えばB型肝炎およびC型肝炎ウイルス、アルコールまたは薬物、および自己免疫性疾患により誘発される慢性肝臓損傷に応答した不均衡な創傷治癒の結果である。最終的に、肝臓線維症は生命を脅かす硬変および肝臓癌に至り得る(Gressner et al(2006)J. Cell. Mol. Med. 2006, 10(1): 76-99によるレビュー文献を参照)。
【0049】
数種の細胞シグナル伝達経路が慢性肝臓傷害により改変されることが知られている。TGFβシグナル伝達、その受容体および関連するSmad−シグナル伝達タンパク質は、線維形成に関与する細胞型に存在するとして十分に証明されている。TGFβの循環レベルは、肝臓線維症を含む線維性疾患の多くの動物モデルで上昇することが判明している。TGFβ1を過発現するトランスジェニックマウスは、肝臓、腎臓、肺および心臓を含む複数臓器に線維症を発症する。上昇したTGFβシグナル伝達は、肝臓線維症を含む線維性疾患の全タイプに関与しているように見える。この概念は、線維症モデルにTGFβ阻害剤を使用した数種の試験でさらに確認されている。TGFβは、そのシグナルを2個のser/thrキナーゼ受容体、TGFβRIIおよびALK5に結合することにより伝達する。ドミナントネガティブTGFβRIIの発現は、ラットのジメチルニトロソアミン誘発肝臓線維症モデルで有益な効果を示す(Qi et al(1999)Proc. Natl. Acad. Sci. 96: 2345-9およびNakamura et al (2000) Hepatology 32: 247-55参照)。アンチセンス法を使用したTGFβ発現阻害も、胆管結紮により誘発した肝臓線維症を低下させる(Arias et al(2003)BMC Gastroenterol. 3: 29参照)。近年、ALK5の小分子阻害剤であるGW6604を、ラットに治療的に投与したとき、ジメチルニトロソアミン誘発肝臓線維症の処置に顕著な効果を有した。GW6604が、死亡率の40%を阻止し、線維症の鍵となる測定値である細胞外マトリックス沈着を60%まで抑制する。重要なことに、GW6604での3週間処置期間中、明らかな副作用は示されなかった(De Gouville et al (2005) Br. J. Pharmacol. 145: 166-77参照)。合わせて、これらの試験は、TGFβシグナル伝達阻止が肝臓線維性疾患の処置に有効であることを示唆する。
【0050】
TGF−β1はまた創傷修復にも関与する。TGF−β1に対する中和抗体が多くのモデルで使用され、TGF−β1シグナル伝達阻止が、治癒過程中の過剰な瘢痕形成を限定することにより、傷害後の機能回復に有益であることが説明されている。例えば、TGF−β1およびTGF−β2に対する中和抗体は、ラットにおいて単球およびマクロファージの数を減らすことによりならびに皮膚フィブロネクチンおよびコラーゲン沈着を減らすことにより、瘢痕形成を減らし、新真皮の細胞構築を改善した(Shah M., J. Cell. Sci., 1995,108, 985-1002)。さらに、TGF−β抗体はまたウサギの角膜創傷治癒も改善し(Moller-Pedersen T., Curr. Eye Res., 1998, 17, 736-747)、ラットの胃潰瘍の創傷治癒を加速させる(Ernst H., Gut, 1996, 39, 172-175)。これらのデータは、TGF−βの活性の制限が、多くの組織で有用であることを強く示唆し、TGF−βの慢性的増加を伴う全ての疾患が、Smad2およびSmad3シグナル伝達経路の阻害により利益を受けることを示唆する。
【0051】
TGF−βはまた腹膜癒着にも関与する(Sand G.M., et al, Wound Repair Regeneration, 1999 Nov-Dec, 7(6), 504-510)。故に、ALK5の阻害剤は、外科手技後の腹膜および皮下線維性癒着の防止に有益であり得る。
【0052】
TGF−βはまた皮膚の光老化にも関与する(Fisher GJ. Kang SW. Varani J. Bata-Csorgo Z. Wan YS. Data S. Voorhees J J., Mechanisms of photoaging and chronological skin ageing, Archives of Dermatology, 138(11):1462-1470, 2002 Nov. and Schwartz E. Sapadin AN. Kligman LH. “UItraviolet B radiation increases steady state mRNA levels for cytokines and integrins in hairless mouse skin-modulation by 25 topical tretinoin”, Archives of Dermatological Research, 290(3):137-144, 1998 Mar.参照)。
【0053】
TGF−βシグナル伝達はまた肺障害、特に肺高血圧および肺線維症の発症にも関与する(Morrell NW, Yang X, Upton PD, Jourdan KB, Morgan N, Sheares KK, Trembath RC., Altered growth responses of pulmonary artery smooth muscle cells from patients with primary pulmonary hypertension to transforming growth factor-beta(1) and bone morphogenetic proteins. Circulation. 2001 Aug 14: 104(7):790-5. Bhatt N, Baran CP, Allen J, Magro C, Marsh CB., Promising pharmacologic innovations in treating pulmonary fibrosis. Curr Opin Pharmacol. 2006 Apr 28参照)。
【0054】
TGF−β1レベルは、肺高血圧の動物モデルで上昇する(Mata-Greenwood E, Meyrick B, Steinhorn RH, Fineman JR, Black SM. Alterations in TGF-beta1 expression in lambs with increased pulmonary blood flow and pulmonary hypertension. Am. J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol. 2003 Jul: 285(1):L209-21)。他の試験は、肺内皮細胞由来TGF−β1が、肺高血圧個体の肺脈管構造で見られる筋肉化(muscularisation)亢進の基礎であり得る肺血管平滑筋細胞の成長を刺激できる(Sakao S, Taraseviciene-Stewart L, Wood K, Cool CD, Norbert VF. Apoptosis of pulmonary microvascular endothelial cells stimulates vascular smooth muscle cell growth. Am. J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol. 2006 Apr 14)。故に、ALK5上のTGF−β1の活性の阻害は、肺高血圧の治療的介入として示される。
【0055】
加えて、TGF−βシグナル伝達調節不全もまた特発性肺線維症の発症に関与している。ALK5の活性化はSmad3活性化および線維性過程に関与する遺伝子、例えばプラスミノーゲンアクティベーター阻害剤−1、プロコラーゲン3A1、および結合組織増殖因子の発現の下流調節をもたらす。TGF−β1およびその下流線維化促進性(profibrotic)メディエーターのレベルが、特発性肺線維症患者(Hiwatari N, Shimura S, Yamauchi K, Nara M, Hida W, Shirato K. Significance of elevated procollagen-III-peptide and transforming growth factor-beta levels of bronchoalveolar lavage fluids from idiopathic pulmonary fibrosis patients. Tohoku J. Exp. Med. 1997 Feb: 181(2): 285-95)および特発性肺線維症の動物モデル(Westergren-Thorsson G, Hernnas J, Sarnstrand B, Oldberg A, Heinegard D, Malmstrom A. Altered expression of small proteoglycans, collagen, and transforming growth factor-beta 1 in developing bleomycin-induced pulmonary fibrosis in rats. J. Clin. Invest. 1993 Aug: 92(2):632-7)から採った気管支肺胞洗浄で情報制御されていることが証明されている。
【0056】
アデノウイルスベクター介在遺伝子導入を使用した、マウス肺における活性TGF−β1の一過性過発現は、野生型マウスで進行性肺線維症を引き起こしたが、Smad3ノックアウトマウスの肺ではTGF−β1攻撃28後まで線維症が観察されなかった(Khalil N, Parekh TV, O'Connor RN, Gold LI. Differential expression of transforming growth factor-beta type I and II receptors by pulmonary cells in bleomycin-induced lung injury: correlation with repair and fibrosis. Exp. Lung. Res. 2002 Apr-May: 28(3):233-50)。故に、ALK5のTGF−β1活性化の阻害がまた肺線維症に対して示される。
【0057】
TGF−ベータ1はまた腫瘍に関与している可能性があり、故に、本発明の薬剤は、例えば、腫瘍進行の処置および/または予防において、前立腺癌、乳癌、胃癌、血管形成、転移、腫瘍を含む癌の処置に有用であり得る。
【0058】
アクチビンシグナル伝達およびアクチビン過発現は、細胞外マトリックス蓄積および線維症(例えば、Matsuse, T. et al., Am. J. Respir Cell Mol. Biol. 13:17-24(1995): Inoue, S. et al., Biochem. Biophys. Res. Comn. 205:441 - 448(1994): Matsuse, T. et al., Am. J. Pathol. 148:707-713(1996): De Bleser et al., Hepatology 26:905-912(1997): Pawlowski, J. E., et al., J. Clin. Invest. 100:639-648(1997): Sugiyama, M. et al., Gastroenterology 114:550-558(1998): Munz, B. et al., EMBO J. 18:5205-5215(1999))、炎症性応答(例えば、 Rosendahl, A. et al., Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 25:60-68(2001)、カヘキシーまたは消耗(Matzuk7 M. M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:8817-8821(1994): Coerver, K. A. et al., Mol. Endocrinol. 10:531 543(1996): Cipriano, S. C. et al., Endocrinology 141:2319-2327(2000))、中枢神経系の疾患または病的応答(例えば、Logan, A. et al., Eur. J. Neurosci. 11:2367- 2374(1999): Logan, A. et al., Exp. Neurol. 159:504-510(1999): Masliah, E. et al., Neurochem. Int. 39:393-400(2001): De Groot, C. J. A. et al., J. Neuropathol. Exp. Neural. 58:174-187(1999): John, G. R. et al., Nat. Med. 8:1115-1121(2002))および高血圧(例えば、Dahly, A. J. et al., Am. J. Physiol. Regul. Integr Comp. Physiol. 283: R757-767(2002))が関与する病的障害に関連する。試験は、TGF−βおよびアクチビンが、細胞外マトリックス産生に対して相乗的に作用できることを示している(例えば、Sugiyama, M. et al., Gastroerterology 114: 550-558(1998))。
【0059】
故に、本発明の薬剤によるSmad2およびSmad3のALK5および/またはALK4リン酸化の阻害は、これらのシグナル伝達経路が関与する障害の処置および予防に有用であり得るということである。
【0060】
アクチビンシグナル伝達はまた肺障害、特に肺高血圧および肺線維症の発症にも関与している。例えば、間質性肺線維症の患者からの肺サンプルにおけるアクチビンA発現は、異形成上皮、過形成平滑筋細胞、落屑細胞、および肺胞マクロファージ上のアクチビンAの強い発現を証明した。一次性または二次性肺高血圧の患者からの肺動脈は、平滑筋細胞上の大量の免疫反応性アクチビンAを示した。これらの発見は、この増殖因子、アクチビンAの間質性肺線維症および肺高血圧と関連する肺組織リモデリングの病因における役割の可能性を示唆する(Matsuse T, Ikegami A, Ohga E, Hosoi T, Oka T, Kida K, Fukayama M, Inoue S, Nagase T, Ouchi Y, Fukuchi Y. Expression of immunoreactive activin A protein in remodelling lesions associated with interstitial pulmonary fibrosis. Am. J. Pathol. 1996 Mar: 148(3):707-13)。線維芽細胞および関連する結合組織の増加は、肺線維症および肺高血圧の特徴である。アクチビンAは、特に増殖およびその筋線維芽細胞への分化に関して、ヒト肺線維芽細胞(HFL1)活性を調節することが証明されており、故にアクチビンAは、肺線維芽細胞の増殖およびその筋線維芽細胞への分化に対して効果を有する可能性があり、肺線維症および高血圧で見られる構造的リモデリングに関与し得る(Ohga E, Matsuse T, Teramoto S, Katayama H, Nagase T, Fukuchi Y, Ouchi Y. Effects of activin A on proliferation and differrentiation of human lung fibroblasts. Biochem. Biophys. Res. Commun. 1996 Nov 12: 228(2): 391-6)。ラットでのブレオマイシン攻撃が仲介する肺線維症は、肺に浸潤したマクロファージのアクチビンA上方制御をもたらし、線維性領域に蓄積した線維芽細胞蓄積を検出した。ブレオマイシン処置ラットへのアクチビンシグナル伝達のアンタゴニストであるフォリスタチンの投与は、気管支肺胞洗浄中のマクロファージおよび好中球数を顕著に減らし、タンパク質含量を減らした。フォリスタチンは浸潤細胞数を顕著に減らし、肺構造の破壊を軽減し、肺線維症を減弱した(Aoki F, Kurabayashi M, Hasegawa Y, Kojima I. Attenuation of bleomycin-induced pulmonary fibrosis by follistatin. Am. J. Respir. Crit. Care Med. 2005 Sep 15: 172(6):713-20)。
【0061】
故に、ALK4阻害を介したアクチビンシグナル伝達の阻害は、肺線維症および肺高血圧の処置にまた有用であり得る。
【0062】
近年、TGF−βシグナル伝達の、そのエフェクターSmad3を介した減少が、骨マトリックスの機械的特性および鉱物含量、ならびに骨質量を亢進し、骨に骨折に対するより優れた耐性を付与することが証明されている。これらの結果は、TGF−βシグナル伝達の減少が、骨障害の処置治療標的として見なされ得ることを示唆する(Balooch G, et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 2005 Dec 27: 102(52):18813-8)。故に、ALK5のTGF−β1活性化の阻害は、また、骨の鉱物密度強度および含量の増加のためにも指示され、例えば、骨減少症、骨粗鬆症、骨折および低骨鉱物密度が疾患の証明である他の障害を含む、種々の状態の処置に利用し得る。
【0063】
そのALK−5および/またはALK−4受容体阻害を考慮して、本発明の薬剤はALK−5および/またはALK−4受容体が仲介する状態の処置に有用である。本発明による処置は、対症的でも予防的でもよい。
【0064】
それ故に、さらなる局面によって、本発明は、ALK−5またはALK−4が仲介する疾患または状態の処置または予防用医薬の製造における、本発明の薬剤の使用を提供する。
【0065】
ALK−5またはALK−4が仲介する疾患または状態は、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、狼瘡腎炎、高血圧誘発腎症、腎臓間質性線維症、薬物暴露の合併症に起因する腎臓線維症、HIV関連腎症、移植片壊死(transplant necropathy)、全ての原因による肝臓線維症、感染に起因する肝不全、アルコール誘発肝炎、胆管の障害、肺線維症、肺高血圧、急性肺損傷、成人呼吸窮迫症候群、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、感染性または毒性動因による肺疾患、梗塞後心線維症、鬱血性心不全、拡張型心筋症、心筋炎、血管狭窄、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、眼瘢痕、角膜瘢痕、増殖性硝子体網膜症、外傷または外科的創傷に起因する創傷治癒中に皮膚で起こる過剰なまたは過形成瘢痕またはケロイド形成、腹膜および皮下癒着、強皮症、線維硬化症、進行性全身性硬化症、皮膚筋炎、多発性筋炎、関節炎、潰瘍、神経機能障害、男性勃起不全、アルツハイマー病、レイノー症候群、線維性癌、腫瘍転移性増殖、放射線誘発線維症、血栓症、および増加したカルシウム枯渇または吸収と関連するまたは骨形成および骨中のカルシウム固定の刺激が望まれる骨状態、例えば骨減少症および骨粗鬆症を含む。
【0066】
ALK−5が仲介する疾患または状態は、特に慢性腎臓疾患、急性腎臓疾患、創傷治癒、関節炎、骨粗鬆症、腎臓疾患、鬱血性心不全、炎症性または閉塞性気道疾患、肺高血圧、潰瘍(糖尿病性潰瘍、慢性潰瘍、胃潰瘍、および十二指腸潰瘍を含む)、眼障害、角膜創傷、糖尿病性腎症、神経機能障害、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、腹膜および皮下癒着、ならびに、腎臓線維症、肺線維症および肝臓線維症、例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、アルコール誘発肝炎、ヘモクロマトーシス、原発性胆汁性肝硬変、再狭窄、後腹膜線維症、腸間膜線維症、子宮内膜症、ケロイド、癌、骨機能異常、炎症性障害、瘢痕および皮膚の光老化を含み、これらに限定されない線維症が主要素であるすべての疾患を含む。
【0067】
本発明を適用可能な炎症性または閉塞性気道疾患は、そのタイプまたは原因にかかわりなく、内因性(非アレルギー性)喘息および外因性(アレルギー性)喘息の両方を含む。喘息の処置はまた、喘鳴症状を示し、主要な医学的懸念の確立された患者カテゴリーであり、現在しばしば早期または初期相喘息と同定される“喘鳴幼児”と診断されまたは診断可能な、例えば4歳または5歳未満の対象の処置も包含すると理解すべきである。(便宜上、この特定の喘息状態を“幼児喘鳴症候群(wheezy-infant syndrome)”と呼ぶ。)
【0068】
喘息の処置における予防効果は、症候性発作、例えば急性喘息性または気管支収縮性の頻度または重症度の減少、肺機能改善または気道反応性亢進改善により証明される。さらに、他の対症治療、すなわち症候性発作がおきたときその制限または停止を意図した治療、例えば抗炎症剤(例えばコルチコステロイド)または気管支拡張剤の必要性の低下によっても証明され得る。喘息における予防的利益は、特に“早朝悪化(morning dipping)”の傾向にある対象において明らかであり得る。“早朝悪化”は、認識された喘息の症候群であり、喘息のかなりの割合に共通し、例えば、おおよそ午前4〜6時、すなわち、前回の何らかの対症喘息治療剤の投与から通常かなり離れた時間の喘息発作により特徴付けられる。
【0069】
本発明が適用可能な他の炎症性または閉塞性気道疾患および状態は、成人/急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性気管支炎、またはそれに伴う呼吸困難を含む慢性閉塞性の肺または気道疾患(COPDまたはCOAD)、気腫、ならびに他の薬物療法、特に、他の吸入治療の結果としての気道反応性亢進の増悪を含む。本発明はまた、例えば、急性、アラキジン性(arachidic)、カタル性、クループ性(croupus)、慢性または結核様(phthinoid)気管支炎を含み、タイプおよび原因にかかわりなく、気管支炎の治療に適用できる。本発明が適用可能なさらなる炎症性または閉塞性の気道疾患は、例えば、アルミニウム肺症、炭粉沈着症、石綿肺症、石肺症、ダチョウ塵肺症、鉄沈着症、珪肺症、タバコ症および綿肺症を含み、タイプおよび原因にかかわりなく、塵肺(頻繁に気道閉塞を伴う、慢性または急性の、および粉塵の反復吸引がきっかけの炎症性の、一般的に職業性の、肺疾患)を含む。
【0070】
好ましくは、ALK−5またはALK−4が仲介する疾患または状態は肺高血圧、肺線維症、肝臓線維症、筋肉疾患、癌または骨粗鬆症である。
【0071】
本発明に従い処置される肺高血圧は、一次性肺高血圧(PPH);二次性肺高血圧(SPH);家族性PPH;散発性PPH;前毛細血管肺高血圧;肺動脈性高血圧(PAH);肺動脈高血圧;特発性肺高血圧;血栓性肺動脈症(TPA);叢形成性(plexogenic)肺動脈症;機能分類I〜IVの肺高血圧;および、左室機能不全、僧帽弁疾患、収縮性心膜炎、大動脈狭窄、心筋症、縦隔線維症、異常肺静脈ドレナージ、肺静脈閉塞性疾患、コラーゲン血管疾患、先天性心臓疾患、HIVウイルス感染、薬物および毒素、例えばフェンフルラミン類、先天性心臓疾患、肺静脈高血圧、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、睡眠呼吸障害、肺胞低換気障害、高地への慢性暴露、新生児肺疾患、肺胞−毛管形成不全症、鎌状赤血球疾患、他の凝血障害、慢性血栓塞栓、結合組織疾患、狼瘡、住血吸虫症、サルコイドーシスまたは肺毛細血管腫症に関連し、関係し、または二次性の肺高血圧を含む。
【0072】
本発明によって処置される肺高血圧は、最も具体的には、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、睡眠呼吸障害、肺胞低換気障害、高地への慢性暴露、新生児肺疾患および肺胞−毛管形成不全症、特に慢性閉塞性肺疾患を含み、呼吸器系および/または低酸素血症の障害と関連する肺高血圧である。
肺線維症は特に特発性肺線維症を含む。
【0073】
本発明の化合物はまた、筋萎縮(例えば廃用性)、筋ジストロフィー(例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型ジストロフィー)、筋肉減少症およびカヘキシーを含む筋肉疾患の処置にも使用できる。
【0074】
筋疾患、例えば筋萎縮症およびジストロフィーの処置は、医学的要求がほとんど満たされていない。極く僅かな化合物が、主に癌誘発およびHIV筋肉消耗またはカヘキシーの領域で、種々の筋肉障害への使用について承認されているに過ぎず、さらにいくつかの化合物が、これらの適応症に未承認で使用されている。加えて、これらの薬物のほとんどが体重減少のみを扱い、筋肉増殖および機能には特異的に影響しない。従って、カヘキシー(例えば癌、HIVおよびCOPDにおける)に関連する筋肉疾患、廃用性萎縮症、筋肉減少症およびジストロフィーと関連する機能的障害を処置する有効な治療の要求がある。
【0075】
トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)ファミリーのメンバーであるミオスタチンは、骨格筋質量の重要な負の調節因子である。二倍筋肉(double-muscle)ウシおよび骨格筋肥大のヒト身体で、ミオスタチン遺伝子の種々の変異が検出された(McPherron et al(1997)Nature 387:83-90: Schuelke et al(2004)N. Engl. J. Med. 350:2682-2688)。ミオスタチンの骨格筋成長および障害に対する重要な役割は、種々のインビボおよびインビトロ試験で確認された。例えば、マウスにおけるミオスタチンの筋肉特異的過発現は、筋肉質量低下をもたらし(Reisz-Porszasz et al(2003)AJP-Endo. 285:876-888)、一方ミオスタチンヌルマウスは、骨格筋質量が増加し、体脂肪が減少している(Lin et al(2002)Biochem. Biophys. Res. Comm. 291: 701-706)。これと一致して、野生型およびジストロフィーのmdxマウスにおいてミオスタチンの全身投与は、カヘキシーを誘発し(Zimmers et al(2002)Science 296:1486-1488)、一方、ミオスタチンの、例えば、ミオスタチン中和抗体JA16による阻害は筋肉質量および強度を増加させる(Bogdanovich et al(2002)Nature 420: 418-421.2002: Wagner et al(2002)Ann. Neurol. 52: 832-836: Wolfman et al(2003)Proc. Natl. Acad. Sci. 100(26): 15842-15846)。加えて、ミオスタチンレベル上昇が、実験的および臨床的筋萎縮症の両方で、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、癌または肝臓硬変ならびに高齢者およびグルココルチコイド処置下の筋肉減少症の患者で観察されている(Ma et al(2003)Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. 285: E363-371: Gonzales-Cadavid et al(1998)Proc. Natl. Acad. Sci. 95: 14938-14943: see also Reisz-Porszasz et al(2003)AJP-Endo. 285:876-888およびJespersen et al(2006)Scand. J. Med. Sci. Sports. 16: 74-82)。これらの発見は、筋萎縮およびジストロフィーの処置としてのミオスタチン阻害剤の高い可能性を示す。
【0076】
ミオスタチンの作用機序はなお試験中である。ミオスタチンがSmad2/3を介してシグナル伝達することは比較的よく確立されている(Lee S. J.(2004)Ann. Rev. Dev. Biol. 20: 61-86)。さらに、成熟ミオスタチンは、脂肪細胞のアクチビンIIb型およびアクチビン受容体様キナーゼ(ALK)受容体を介して作用することが示されている(Rebbarpragada et al(2003)Mol. Cell. Biol. 23: 7230-7242)。しかしながら、骨格筋細胞におけるこれらの発見は記載されていない。ミオスタチンは、ALKシグナル伝達を介して分化を阻止し、萎縮を起すと考えられている。さらに、ALKシグナル伝達阻害は、skMC分化を促進し、skMC肥大を引き起こす。
【0077】
骨粗鬆症は、低骨質量および骨組織の微小構造変質により特徴付けられる全身性骨格障害であり、その後の骨脆弱性および骨折の可能性の増進を伴う。骨粗鬆症性症候群は多面的であり、一次性障害、例えば閉経後または加齢性骨粗鬆症、および疾患状態または投薬に付随する二次性症状を含む。骨マトリックスの機械的強度および組成は、骨の質量および構造と共に、骨の骨折耐久性の重要な決定因子である。
【0078】
故に、さらなる態様において、本発明は、医薬として使用するための本発明の薬剤を含む。
【0079】
故に、さらなる局面において、本発明は、カルシウム枯渇または吸収の増進と関連し、または骨における骨形成およびカルシウム固定の促進が望まれる骨状態の予防または処置方法であって、有効量の本発明の薬剤、またはその薬学的に許容されるおよび開裂可能なエステル、または酸付加塩を、かかる処置を必要とする患者に投与することを含む、方法を含む。
【0080】
さらに別の局面において、本発明は、本発明の薬剤、またはその薬学的に許容されるおよび開裂可能なエステル、または酸付加塩を、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体と共に含み、カルシウム枯渇または吸収の増進と関連し、または骨における骨形成およびカルシウム固定の促進が望まれる骨状態の予防または処置用医薬組成物を含む。
【0081】
さらに別の局面において、本発明は骨状態の処置または予防用医薬の製造における、本発明の薬剤の使用を含む。
【0082】
下記実施例の化合物は、10μM以下、典型的に1μM以下のIC50値を有する。例えば、次の実施例化合物は、示すIC50値を有する。
【表1】

【0083】
ALK5のキナーゼ活性は、一般的基質、カゼインへの放射標識ホスフェート[33P]取り込みの測定により評価する。ヒトALK5のキナーゼドメイン(アミノ酸200−503)を、N−末端ヒスチジンタグと縮合させる。ALK5のキナーゼ活性を、アミノ酸204の点変異(スレオニンからアスパラギン酸への修飾、ALK5T204D)により構造的とし、キナーゼ構築物を、昆虫細胞中のバキュロウイルス発現構築物から発現されるように操作する。精製した組み換え発現ヒスチジンタグ付加ALK5T204Dタンパク質を50mM Tris−HCl pH8.0、150mM NaCl、5mM DTT中5.4mg/mlで溶解する。ALK5T204Dを、使用する日にアッセイ緩衝液(アッセイ緩衝液:20mM Tris−HCl pH7.4、10mM MgCl、2mM MnCl)に2.5μg/mlで溶解する。
【0084】
試験化合物および対照化合物を、DTTを含まず、5%(v/v)DMSOを含むアッセイ緩衝液に油お買いする。試験および対照化合物の貯蔵溶液を、DTT(1.25mM)を含み、4.5%(v/v)DMSOを含むアッセイ緩衝液に溶解する。試験または対照化合物10μlを、96ウェルU底プレートの適当なウェルに添加する。全酵素活性を、ALK5キナーゼ阻害剤対照化合物非存在下のALK5T204D活性の測定により決定する。非特異的結合(NSB)を、ALK5キナーゼ阻害剤対照化合物存在下のALK5T204D活性の測定により決定する。ウェルあたり10μlの脱リン酸化カゼイン貯蔵溶液(脱リン酸化カゼインをddHOに20mg/mlで溶解)を添加する(200μg/ウェル最終アッセイ濃度)。ウェルあたり20μlのALK5T204D(2.5μg/ml溶液)を添加する(50ng/ウェル最終アッセイ濃度)。プレートを室温で10分間インキュベートする。
【0085】
10μlのATPミックスをウェルに添加して、反応を開始させる(0.66nM [33P]ATP/1μM非標識ATP/ウェル最終アッセイ濃度)。ATPミックスを次の通り製造する、非標識ATP(3mM)をddHOに溶解し、pHを7.4に調節する。[33P]ATPの貯蔵濃度は10μCi/μlである。適当量の[33P]ATPを、ウェルあたりの最終アッセイ濃度が0.1μCiとなるように非標識ATP溶液に添加する。ATPミックス添加後、プレートを室温で50分間インキュベートする。キナーゼ反応を、50μL停止緩衝液(20mM Tris−HCl pH7.4、10mM EDTA)の添加により停止させる。
【0086】
反応プレートからの75μl/ウェルを、Multiscreen-IPプレート(MultiScreen-IPプレートは、ウェルあたり50μLの70%(v/v)エタノールを添加し、5分間、室温でインキュベートすることにより調製する。エタノールを、MultiScreen HTS Vaccum Manifold unit(Millipore, Cat no:MSVMHT500)を介した吸引により除去する。プレートを2回200μl/ウェル ddHOの添加により洗浄する)。MultiScreen-IPプレートを室温で30分間インキュベートして、カゼインをプレートに結合させる。MultiScreen-IPプレートを3回200μl/ウェル 100mMリン酸溶液の添加により洗浄し、ガスケットをMultiScreen-IPプレートの背部から注意深く除去し、プレートをオーブンで30分間乾燥させる。MultiScreen-IPプレートをバックシールし、50μLのMicroscintTM20を添加し、次いでプレートをトップシールし、33Pシンチレーションプロトコールを使用し、TopCountTMプレートリーダーで放射標識カゼインを検出し、定量する。
【0087】
本発明の薬剤はまた、特に閉塞性または炎症性気道疾患、例えば前記のものの処置において、他の医薬物質、例えば抗炎症性、気管支拡張性、抗ヒスタミン性、鬱血除去性または鎮咳性医薬物質と組み合わせて使用するための併用剤として、例えばかかる薬物の治療活性の増強剤として、またはかかる薬物の必要投与量または潜在的副作用を減らす手段として、有用である。本発明の薬剤を、1種以上の他の医薬物質と、固定された医薬組成物で混合してよく、または他の医薬物質の投与前、同時または後に別々に投与してよい。
【0088】
かかる抗炎症剤は、ステロイド、ステロイド、特にグルココルチコステロイド、例えばブデソニド、ベクロメタゾン(beclamethasone)ジプロピオネート、フルチカゾンプロピオネート、シクレソニドまたはモメタゾンフロエート、またはWO02/88167、WO02/12266、WO02/100879、WO02/00679[Novartis](特に実施例3、11、14、17、19、26、34、37、39、51、60、67、72、73、90、99および101のもの)、WO03/35668、WO03/48181、WO03/62259、WO03/64445、WO03/72592、WO04/39827およびWO04/66920に記載されたステロイド;非ステロイド性グルココルチコイド受容体アゴニスト、例えばDE10261874、WO00/00531、WO02/10143、WO03/82280、WO03/82787、WO03/86294、WO03/104195、WO03/101932、WO04/05229、WO04/18429、WO04/19935、WO04/26248およびWO05/05452に記載されたもの;LTB4アンタゴニスト、例えばBIIL 284、CP-195543、DPC11870、LTB4エタノールアミド、LY 293111、LY 255283、CGS025019C、CP-195543、ONO-4057、SB 209247、SC-53228およびUS5451700およびWO04/108720に記載されたもの;LTD4アンタゴニスト、例えばモンテルカスト、プランルカスト、ザフィルカスト、アコレート、SR2640、Wy-48,252、ICI 198615、MK-571、LY-171883、Ro 24-5913およびL-648051;ドーパミン受容体アゴニスト、例えばカベルゴリン、ブロモクリプチン、ロピニロールおよび4−ヒドロキシ−7−[2−[[2−[[3−(2−フェニルエトキシ)−プロピル]スルホニル]エチル]アミノ]エチル]−2(3H)−ベンゾチアゾロンおよびその薬学的に許容される塩(塩酸塩はViozan(登録商標)-AstraZeneca);PDE4阻害剤、例えばシロミラスト(Ariflo(登録商標) GlaxoSmithKline)、ロフルミラスト(Byk Gulden)、V-11294A(Napp)、BAY19-8004(Bayer)、SCH-351591(Schering-Plough)、アロフィリン(Almirall Prodesfarma)、PD189659/PD168787(Parke-Davis)、AWD-12-281(Asta Medica)、CDC-801(Celgene)、SelCID(TM)CC-10004(Celgene)、VM554/UM565(Vernalis)、T-440(Tanabe)、KW-4490(Kyowa Hakko Kogyo)、GRC 3886(Oglemilast、Glenmark)、WO92/19594、WO93/19749、WO93/19750、WO93/19751、WO99/16766、WO01/13953、WO03/104204、WO03/104205、WO04/000814、WO04/000839およびWO04/005258(Merck)、WO04018450、WO04/018451、WO04/018457、WO04/018465、WO04/018431、WO04/018449、WO04/018450、WO04/018451、WO04/018457、WO04/018465、WO04/019944、WO04/019945、WO04/045607、WO04/037805、WO04/063197、WO04/103998、WO04/111044、WO05012252、WO05012253、WO05/013995、WO05/030212、WO05/030725、WO05/087744、WO05/087745、WO05/087749およびWO05/090345ならびにWO98/18796およびWO03/39544に記載されたもの;A2aアゴニスト、例えばEP409595A2、EP1052264、EP1241176、WO94/17090、WO96/02543、WO96/02553、WO98/28319、WO99/24449、WO99/24450、WO99/24451、WO99/38877、WO99/41267、WO99/67263、WO99/67264、WO99/67265、WO99/67266、WO00/23457、WO00/77018、WO00/78774、WO01/23399、WO01/27130、WO01/27131、WO01/60835、WO01/94368、WO02/00676、WO02/22630、WO02/96462、WO03/086408、WO04/039762、WO04/039766、WO04/045618およびWO04/046083に記載されたもの;およびA2bアンタゴニスト、例えばWO02/42298およびWO03/042214に記載されたものを含む。
【0089】
かかる気管支拡張剤は、ベータ−2アドレナリン受容体アゴニストを含む。適当なベータ−2アドレナリン受容体アゴニストは、アルブテロール(サルブタモール)、メタプロテレノール、テルブタリン、サルメテロール、フェノテロール、プロカテロール、および特に、フォルモテロール、カルモテロール、GSK159797およびその薬学的に許容される塩、および引用により本明細書に包含させるWO00/75114の(遊離または塩または溶媒和物形態の)式Iの化合物、好ましくはその実施例化合物、特に式
【化5】

の化合物およびその薬学的に許容される塩、ならびにWO04/16601の(遊離または塩または溶媒和物形態の)式Iの化合物またはWO04/087142の式Iの化合物を含む。さらに適当なβ−2−アドレナリン受容体アゴニストは、化合物、例えばに記載のものおよびまたEP147719、EP1440966、EP1460064、EP1477167、EP1574501、JP05025045、JP2005187357、US2002/0055651、US2004/0242622、US2004/0229904、US2005/0133417、US2005/5159448、US2005/5159448、US2005/171147、US2005/182091、US2005/182092、US2005/209227、US2005/256115、US2005/277632、US2005/272769、US2005/239778、US2005/215542、US2005/215590、US2006/19991、US2006/58530、WO93/18007、WO99/64035、WO01/42193、WO01/83462、WO02/66422、WO02/70490、WO02/76933、WO03/24439、WO03/42160、WO03/42164、WO03/72539、WO03/91204、WO03/99764、WO04/16578、WO04/22547、WO04/32921、WO04/33412、WO04/37768、WO04/37773、WO04/37807、WO04/39762、WO04/39766、WO04/45618、WO04/46083、WO04/80964、WO04/087142、WO04/89892、WO04/108675、WO04/108676、WO05/33121、WO05/40103、WO05/44787、WO05/58867、WO05/65650、WO05/66140、WO05/70908、WO05/74924、WO05/77361、WO05/90288、WO05/92860、WO05/92887、WO05/90287、WO05/95328、WO05/102350、WO06/56471、WO06/74897またはWO06/8173の化合物を含む。
【0090】
かかる気管支拡張剤はまた、他の抗コリン剤または抗ムスカリン剤、特にイプラトロピウムブロマイド、オキシトロピウムブロマイド、チオトロピウム塩、グリコピロレート、CHF 4226(Chiesi)およびSVT-40776だけでなく、またEP424021、US3714357、US5171744、US2005/171147、US2005/182091、WO01/04118、WO02/00652、WO02/51841、WO02/53564、WO03/00840、WO03/33495、WO03/53966、WO03/87094、WO04/18422、WO04/05285、WO04/96800、WO05/77361およびWO06/48225に記載のものを含む。
【0091】
好適なデュアル抗炎症性および気管支拡張剤は、デュアルベータ−2アドレナリン受容体アゴニスト/ムスカリンアンタゴニスト、例えばUS2004/0167167、US2004/0242622、US2005/182092、US2005/256114、US2006/35933、WO04/74246、WO04/74812、WO04/89892およびWO06/23475に記載のものを含む。
【0092】
好適な抗ヒスタミン性/抗アレルギー性医薬物質は、セチリジンヒドロクロライド、レボセチリジン、アセトアミノフェン、フマル酸クレマスチン、プロメタジン、ロラタジン(loratidine)、デスロラタジン(loratidine)、ジフェンヒドラミンおよびフェキソフェナジンヒドロクロライド、アクティバスチン(activastine)、アステミゾール、アゼラスチン、ジメチンデン、エバスチン、エピナスチン、レボカバスチン、ミゾラスチンおよびテルフェナジン(tefenadine)ならびにWO03/099807、WO04/026841およびJP2004107299に記載のものを含む。
【0093】
本発明のさらなる態様によって、本発明の薬剤は、他の治療、例えば骨粗鬆症治療におけるような、例えば骨吸収阻害剤を使用した治療、特にカルシウム、カルシトニン(ealeitonin)またはその類似体または誘導体、例えばサケ、ウナギまたはヒトカルシトニン、ステロイドホルモン、例えばエストロゲン、部分的エストロゲンアゴニストまたはエストロゲン−ゲスターゲン組み合わせ剤、SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)、例えばラロキシフェン、ラソフォキシフェン、TSE−424、FC1271、チボロン(Livial A)、ビタミンDまたはその類似体またはPTH、PTHフラグメントまたはPTH誘導体、例えばPTH(1−84)、PTH(1−34)、PTH(1−36)、PTH(1−38)、PTH(1−31)NH2またはPTS893を使用した治療の補助剤またはアジュバントとして使用し得る。
【0094】
前記によって、本発明はまた閉塞性または炎症性気道疾患の処置方法であって、それを必要とする対象、特にヒト対象に、本発明の薬剤、またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物を投与することを含む、方法も提供する。他の局面において、本発明は、閉塞性または炎症性気道疾患の処置用医薬の製造における、本発明の薬剤、またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物の使用も提供する。
【0095】
本発明の薬剤は任意の適切な経路で、例えば経口的に、例えば錠剤またはカプセル剤の形で;非経腸的に、例えば静脈内に;例えば乾癬の処置において皮膚に局所的に;例えば枯草熱の処置において経鼻的に;または、好ましくは、特に閉塞性または炎症性気道疾患において、吸入により投与してよい。特に、本発明の薬剤は、COPDおよび喘息の処置用に吸入可能製剤として送達し得る。
【0096】
さらなる局面において、本発明はまた遊離形またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物の形の本発明の薬剤を所望により薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む、医薬組成物も提供する。かかる組成物は、ガレヌス分野(galenic art)で既知の希釈剤または賦形剤および技術を使用して製造し得る。故に、経口投与形態は錠剤およびカプセル剤を含む。局所投与用製剤は、クリーム、軟膏、ゲルまたは経皮送達系、例えばパッチの形を取り得る。吸入用組成物は、エアロゾルまたは他の噴霧可能製剤または乾燥粉末製剤を含み得る。
【0097】
活性成分の吸入可能形態がエアロゾル組成物であるとき、吸入器は、定量、例えば10〜100μl、例えば25〜50μlの組成物を送達するのに適合したバルブを備えたエアロゾルバイアル、すなわち定量吸入器として既知のデバイスであり得る。好適なかかるエアロゾルバイアルおよびその中にエアロゾル組成物を加圧下に入れる方法は、吸入治療剤の分野の当業者には既知である。例えば、エアロゾル組成物を、例えばEP−A−0642992に記載の通り、被覆缶から投与し得る。活性成分の吸入可能形態が霧化可能水性、有機または水性/有機分散物であるとき、吸入器は既知ネブライザー、例えば、1〜50ml、一般には1〜10mlの分散物を含み得る、例えば慣用の空気式(pneumatic)ネブライザー、例えばエアージェット(airjet)ネブライザー、または超音波ネブライザー;または、慣用のネブライザーよりもはるかに少量の霧化体積、例えば10〜100μlを可能にする、ソフトミストまたはソフトスプレー吸入器と呼ばれることもある携帯型ネブライザー、例えば電子制御デバイス、例えばAERx(Aradigm, US)またはAerodose(Aerogen)、または機械的デバイス、例えばRESPIMAT(Boehringer Ingelheim)ネブライザーであり得る。活性成分の吸入可能形態が微粉化粒子形態であるとき、吸入器は、例えば、(A)および/または(B)の一投与量単位を含む乾燥粉末を含むカプセルまたはブリスターから乾燥粉末を送達するのに適合させた乾燥粉末吸入器または、駆動あたり(A)および/または(B)の一投与量単位を含む、例えば3−25mgの乾燥粉末の送達に適合させた多投与量乾燥粉末吸入(MDPI)装置であり得る。乾燥粉末組成物は、好ましくは希釈剤または担体、例えばラクトース、および湿気による製品性能劣化に対する保護を助ける化合、例えばステアリン酸マグネシウムを含む。好適なかかる乾燥粉末吸入器は、US3991761(AEROLIZERTMデバイスを含む)、WO05/113042、WO97/20589(CERTIHALERTMデバイスを含む)、WO97/30743(TWISTHALERTMデバイスを含む)およびWO05/37353(GYROHALERTMデバイスを含む)に記載されたデバイスを含む。
【0098】
本発明はまた、(A)吸入可能形態の、遊離形、またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物の前記の式Iの化合物;(B)吸入可能形態のかかる化合物を吸入可能形態の薬学的に許容される担体と共に含む、吸入可能医薬;(C)吸入可能な形態のかかる化合物を吸入器と共に含む、医薬品;および(D)吸入可能形態のかかる化合物を含む吸入器も含む。
【0099】
本発明の実施に際して用いられる本発明の薬剤の投与量は、当然、例えば、処置する特定の状態、望む効果および投与方式によって変わる。一般に、吸入で投与するための好適な1日投与量は0.0001〜30mg/kg、典型的に患者あたり0.01〜10mgの程度であり、経口投与に好適な1日投与量は、0.01〜100mg/kgの程度である。
【0100】
本発明を次の実施例により説明する。
【実施例】
【0101】
実施例
本発明の実施例化合物は、式Ia
【化6】

の化合物を含み、これは下記表1に示し、その製造方法は後記する。
【0102】
【表2】

【表3】

【表4】

【0103】
次の実施例に関して、好ましい態様の化合物をここに記載の方法または当分野で既知の他の方法を使用して合成する。
【0104】
好ましい態様に従う有機化合物は、互変異性の現象を示し得ることは理解すべきである。本明細書中の化学構造は可能性のある互変異性形態の一つしか示すことができないが、好ましい態様は、記載された構造の全ての互変異性形態を含むことは理解されるべきである。
【0105】
本発明は説明のためにここに呈示する態様に限定されず、上の記載の範囲内に入る全てのかかる形態を包含すると理解されるべきである。
【0106】
一般的条件:
マススペクトルは、LCMSシステムでエレクトロスプレーイオン化を使用して行う。これらは、Agilent 1100 HPLC/Micromass Platform質量分光計の組合せまたはWaters Acquity UPLCとSQD質量分光計のいずれかである。[M+H]は、モノアイソトピック分子量を意味する。
【0107】
略語:
実験の章で、次の略語を使用する:
【表5】

【0108】
最終化合物の製造
実施例1.1
4−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノール
工程1:4−[3−(2−クロロ−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノール
5−ブロモ−3−(2−クロロ−ピリジン−4−イル)−3−H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン(中間体A)(1当量、0.323mmol、100mg)、BINAP(0.025mmol、40mg)およびPd(dba)(0.0125mmol、25mg)を含む混合物を、Nの不活性雰囲気下、ジオキサンに懸濁し、85℃に加熱する。別のフラスコで4−アミノ−シクロヘキサノール(2当量、0.647mmol、74mg)およびナトリウムtertブトキシド(2.5当量、0.809mmol、77mg)をジオキサンに溶解し、50℃に温め、その後反応混合物に添加する。合わせた混合物を2時間加熱した。室温に冷却後、混合物を98:2 DCM:アンモニアのMeOH溶液で溶出するシリカクロマトグラフィーで精製して、表題化合物を得て、それを精製せずに次工程に使用する;[M+H] 310。
【0109】
工程2:4−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノール
4−[3−(2−クロロ−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノール(1当量、100mg、0.29mmol)、3−フリルボロン酸(1.05当量、0.3mmol、34mg)、NaCO(2当量、0.58mmol、62mg)のEtOH(2ml)およびHO(0.7ml)溶液に、Nの不活性雰囲気下、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.1当量、0.029mmol、21mg)を添加する。反応を、マイクロ波照射を使用して、80℃で2時間加熱する。混合物をHO(5ml)で希釈し、EtOAcで抽出する。合わせた有機部分を塩水で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、真空で濃縮する。残留物を0−2.5% MeOHのEtOAc溶液で溶出するシリカフラッシュクロマトグラフィーで精製して、表題化合物を得る;[M+H] 375。
NMR(400 MHz, MeOD):8.53 (1H, d), 8.48 (1H, s), 8.43 (1H, s), 8.14 (1H, s), 7.95 (1H, dd), 7.61-7.54 (2H, m), 6.96 (1H, s), 6.40 (1H, d), 3.78-3.67 (1H, m), 3.52-3.45 (1H, m), 2.12-2.05 (2H, m), 1.94-1.84 (2H, m)および 1.38-1.12 (4H, m)
【0110】
次の実施例化合物、すなわち:
実施例1.2 (1SR、2SR)−2−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノール、
実施例1.3 {(1SR、2SR)−2−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノール、
実施例1.4 (1SR、2SR)−3−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノール、
実施例1.5 (1SR、3RS)−3−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノール、
実施例1.6 (1SR、3SR)−3−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−1−メチル−シクロヘキサノール、
実施例1.8 (1SR、3RS)−3−{3−[2−(4−フルオロフェニル)−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ}−シクロヘキサノール、
実施例1.9 (1SR、3SR)−3−{3−[2−(4−フルオロフェニル)−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ}−シクロヘキサノール、
実施例1.10 (1SR、3RS)−3−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−1−メチル−シクロヘキサノール、
実施例1.14 3−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−アダマンタン−1−オール、
実施例1.15 シクロヘキシル−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イル]−アミンおよび
実施例1.16 (1SR,3RS)−1−メチル−3−{3−[2−(1−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−ピリジン−4−イル]−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ}−シクロヘキサノール
を、5−ブロモ−3−(2−クロロ−ピリジン−4−イル)−3−H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン(中間体A)から、実施例1.1に準じて、工程1において4−アミノ−シクロヘキサノールを適当なアミンに置き換え、そして工程2において3−フラン−2−イルボロン酸を適当なボロン酸に置き換えて製造する。
【0111】
実施例1.13
(1SR,3RS)−3−{3−[2−(3−メチル−ピラゾール−1−イル)ピリジン−4−イル]−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ}−シクロヘキサノール
工程1:(1SR,3SR)−3−[3−(2−クロロ−ピリジン(pryidin)−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノシクロヘキサノール
5−ブロモ−3−(2−クロロ−ピリジン−4−イル)−3−H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン(中間体A)(1当量、0.323mmol、100mg)、BINAP(0.025mmol、40mg)およびPd(dba)(0.0125mmol、25mg)を、Nの不活性雰囲気下、ジオキサンに懸濁させ、85℃に加熱する。別のフラスコで(1SR,3SR)−3−アミノシクロヘキサノール(2当量、0.647mmol、83mg)およびナトリウムtertブトキシド(2.5当量、0.809mmol、77mg)をジオキサンに溶解し、50℃に温める。その温度で混合物を反応混合物に添加し、2時間加熱する。室温に冷却後、混合物を、98:2 DCM:2MアンモニアのMeOH溶液で溶出するシリカクロマトグラフィーで精製して、表題化合物を得て、それを精製せずに次工程に使用する;[M+H] 310。
【0112】
工程2:(1SR,3SR)−3−{3−[2−(3−メチル−ピラゾール−1−イル)ピリジン−4−イル]−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ}−シクロヘキサノール
3−[3−(2−クロロ−ピリジン(pryidin)−4−イミダゾ(dazo)[4,5−b]ピリジン−5−イルヘキサノール(1当量、0.12mmol、40mg)、3−メチルピラゾール(5当量、0.73mmol、50mg)および炭酸セシウム(3当量、0.368mmol、119mg)を含むDMF(2ml)中の混合物を、マイクロ波照射を使用して145℃で3時間加熱する。室温に冷却後、混合物を、MeOH、続いて2M NHのMeOHで溶出するSCX−2カートリッジに載せる。メタノール性アンモニアフラクションを真空濃縮し、得られた油状物を逆相カラムクロマトグラフィー(IsoluteTM C18、0−100%アセトニトリル)により精製し、適当なフラクションを合わせ、真空濃縮して、表題化合物を得る;[M+H]=390。
NMR (400 MHz, MeOD), 8.96 (1H, s), 8.89 (1H, s), 8.58-8.55 (2H, m), 7.93(1H, dd), 7.79 (1H, d), 6.65 (1h, d), 6.40 (1H, s), 4.02 (1H, ddd), 3.71 (1H, ddd), 2.42(3H, s), 2.42-2.32 (1H, m), 2.17-2.09 (1H, m), 1.97-1.91 (1H, m), 1.86-1.78 (1H, m), 1.47-1.38 (1H, m)および1-29-1.15 (3H, m)
【0113】
次の実施例化合物、すなわち:
実施例1.7 (1RS,3SR)−3−{3−[2−(3−メチル−ピラゾール−1−イル)ピリジン−4−イル]−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ}−シクロヘキサノール、
実施例1.11 3−[3−(2−ピラゾール−1−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノール、
実施例1.12 (1SR,3RS)−1−メチル−3−{3−(2−ピラゾール−1−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノールおよび
実施例1.17 (1SR,3RS)−3−[3−(2−ピラゾール−1−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノール
を、5−ブロモ−3−(2−クロロ−ピリジン−4−イル)−3−H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン(中間体A)から、実施例1.13に準じて、工程1において(1SR,3RS)−3−アミノシクロヘキサノールに置き換え、そして工程2において3−メチルピラゾールを適当なヘテロ環に置き換えて製造する。
【0114】
中間体化合物の製造
中間体A
5−ブロモ−3−(2−クロロ−ピリジン−4−イル)−3−H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン
工程1:(6−ブロモ−3−ニトロ−ピリジン−2−イル)−(2−クロロ−ピリジン−4−イル)−アミン
2−クロロ−ピリジン−4−イルアミン(1当量、6.6mmol、850mg)および2、6−ジブロモ−3−ニトロピリジン(2当量、13.2mmol、3.85g)を、IPA(15ml)に溶解し、マイクロ波照射を使用して150℃で6時間加熱する。室温に冷却後、トリエチルアミン(1当量)を添加し、反応混合物を1時間撹拌する。溶媒の大部分を真空で除去し、残留物を6% DCMのイソヘキサン溶液(75ml)を使用して希釈する。溶媒を傾捨し、この工程を3回繰り返す。得られた褐色固体をDCMに溶解し、過剰なアミンをSCX−2樹脂(6g)を使用して取り除き、廃棄する。固体をヘキサン、DCMおよびIPA(50mlの58:40:2混合物)でトリチュレートし、得られた黄色固体を濾過により回収する。固体をDCMに溶解し、水で洗浄する。有機部分を乾燥させ(MgSO)、真空濃縮して、表題化合物を得る;[M+H] 330。
【0115】
工程2:6−ブロモ−N−(2−クロロ−ピリジン−4−イル)−ピリジン−2,3−ジアミン
(6−ブロモ−3−ニトロ−ピリジン−2−イル)−(2−クロロ−ピリジン−4−イル)アミン(工程1)(1当量、0.303mmol、100mg)をMeOH/THF(6mlの1:1混合物)に溶解し、5分間、RTで撹拌する。亜鉛(22当量、6.6mmol、350mg)を添加し、反応混合物をさらに20分間撹拌する。飽和水性塩化アンモニウム(0.8ml)を反応混合物に添加し、撹拌を室温で30分間続ける。混合物をCelite(登録商標)を通して濾過し、濾液を水(10ml)で希釈し、EtOAc(2×10ml)で抽出する。有機部分を合わせ、乾燥させ(MgSO)、真空濃縮して、表題化合物を得る;[M+H] 300。
【0116】
工程3:5−ブロモ−3−(2−クロロ−ピリジン−4−イル)−3−H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン
6−ブロモ−N−(2−クロロ−ピリジン−4−イル)−ピリジン−2,3−ジアミン(工程2)(1当量、1.22mmol、634mg)をEtOH(15mL)に溶解し、酢酸ホルムアミジン(5当量、6.105mmol、634mg)で処理する。反応を3時間加熱還流し、室温に冷却させる。混合物を飽和水性重炭酸ナトリウムで洗浄し、EtOAc(3×10ml)で抽出する。有機部分を合わせ、乾燥させ(MgSO)、真空で濃縮する。残留物の5−10% EtOAcのヘキサン溶液で溶出するシリカフラッシュクロマトグラフィーでの精製により、表題化合物を得る;[M+H]=310。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I、
【化1】

〔式中、
XはCRまたはNであり;
は独立してH、ハロ、OH、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cシクロアルキル、NRおよびZから選択され;
はアリール、ヘテロシクリル、C−Cアルキル、C−C10−シクロアルキル、C−C10シクロアルケニル、C(O)NR、ハロ、C−Cアルコキシ、アルキルチオ、ヒドロキシル、C−Cアルキルカルボニル、カルボキシ、カルボニル、シアノおよびスルホンアミドから選択され、ここで、該アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリールおよびヘテロシクリル基は、所望によりハロゲン、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから選択される1個以上の置換基で置換されていてよく;
はH、ハロ、NR1920およびOR21から選択され;
は独立してH、ハロゲン、アリールおよびヘテロシクリルから選択され、ここで、該アリールおよびヘテロシクリル基は、所望により1個以上のR基で置換されていてよく、ここで、各Rは独立してヒドロキシル、カルボニル、アミノカルボニル、C−Cアルキルアミノカルボニル、アミノ、C−Cアルキルアミノ、C−Cアルキルチオ、スルホニルアミノ、カルボニルアミノ、C−Cアルキルカルボニルアミノ、ハロ、カルボキシル、C−Cアルコキシ、ベンジルオキシ、C−Cアルコキシカルボニル、アミノスルホニル、C−Cアルキル、シアノ、スルホニル、スルファニル、スルホキシド、アリール、ヘテロシクリル、カルボニルオキシ、C−Cアミノアルキル、C−Cアルキルアミノ−C−Cアルキルから選択され、そして2個のR基が存在するとき、それらは一体となってRに縮合する環形を形成し、基R自体、所望によりヒドロキシル、C−Cアルキル、アリール、アミノ、C−Cアルキルアミノ、ヘテロシクリル、シアノ、ハロ、スルホニル、スルファニル、スルホキシド、ヒドロキシ−C−Cアルキル、C−CアルコキシおよびC−Cアルキルアミノ−C−Cアルキルから選択される1個以上の基で置換されていてよい。
ただしRがH以外であるとき、RはH、ハロ、OH、C−Cアルキル、C−CアルコキシまたはC−Cシクロアルキルであり;そしてRがHであるとき、Rはハロゲン、NRまたはZであり;
はH、OHおよびC−Cアルコキシから選択され;
、RおよびRは各々独立してH、C−Cアルキル、C−CシクロアルキルおよびC−Cアルキル−C−Cシクロアルキルから選択され;
はC−C10シクロアルキルおよび5または6員ヘテロ環式基から選択され、各々所望によりC−Cアルキル、C−Cアルコキシ、OHおよびC−Cアルキル(OHまたはNHで置換されている)から選択される1個以上の基で置換されていてよく;
Zは5または6員ヘテロアリールおよびアリールから選択され、各々所望によりC−Cアルキル、C−Cアルコキシ、OH、CN、ハロ、−C(O)H、−C(O)OC−Cアルキル、−C(O)NR10、−(CH)NR1112、−(CH)het、−NR13C(O)C−Cアルキルおよび−NR14S(O)−Cアルキルから独立して選択される1個以上の基で置換されていてよく;
hetは5または6員ヘテロ環式基所望によりOH、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから選択される1個以上の基で置換されていてよく;
nおよびpは各々独立して0、1または2であり;
、R11、R13およびR14は各々独立してH、C−Cアルキル、C−CシクロアルキルおよびC−Cアルキル−C−Cシクロアルキルから選択され;
10はH、C−Cアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、−(CH)NR1516およびC−Cシクロアルキル(所望によりOH、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから選択される1個以上の置換基で置換されていてよい)から選択されるか;または
およびR10は、それらが結合している窒素原子と一体となって5または6員ヘテロ環式基を形成し、それは所望によりN、OおよびSから選択されるさらなるヘテロ原子を含んでよく、該ヘテロ環式基は所望によりOH、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから選択される1個以上の基で置換されていてよく;
mは2または3であり;
12はH、C−Cアルキルおよび(CH)NR1718から選択され;
qは2、3または4であり;
15、R16、R17およびR18は各々独立してH、C−Cアルキル、C−CシクロアルキルおよびC−Cアルキル−C−Cシクロアルキルから選択されるか;または
15およびR16は、それらが結合している窒素原子と一体となって5または6員ヘテロ環式基を形成し、それは所望によりN、OおよびSから選択されるさらなるヘテロ原子を含んでよく、該ヘテロ環式基は所望によりOH、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから選択される1個以上の基で置換されていてよいか;または
17およびR18は、それらが結合している窒素原子と一体となって5または6員ヘテロ環式基を形成し、それは所望によりN、OおよびSから選択されるさらなるヘテロ原子を含んでよく、該ヘテロ環式基は所望によりOH、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから選択される1個以上の基で置換されていてよく;そして
19、R20およびR21は各々独立してH、C−CアルキルおよびC−Cシクロアルキルから選択されるか;またはR19およびR20は、それらが結合している窒素原子と一体となって、4、5または6員N含有ヘテロ環式基を形成する。〕
の化合物またはその溶媒和物、水和物または薬学的に許容される塩。
【請求項2】
がC(O)NR、C−Cアルコキシ、C−Cシクロアルケニル、ハロゲン、5または6員ヘテロアリールおよびアリールから選択され、ここで、該シクロアルケニル、ヘテロアリールおよびアリール基は、所望によりハロゲン、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから独立して選択される1個以上の基で置換されていてよい、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が5または6員ヘテロアリールまたはアリールであり、各々所望によりハロゲン、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから独立して選択される1個以上の基で置換されていてよい、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
がHである、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
がH、フェニルまたはピリジニルであり、ここで、該フェニルおよびピリジニル基は、所望によりC−Cアルキル、C−Cアルコキシ、OH、CN、ハロ、−C(O)H、−C(O)OC−Cアルキル、−C(O)NR10、−(CH)NR1112、−(CH)het、−NR13C(O)C−Cアルキルおよび−NR14S(O)−Cアルキルから独立して選択される1個以上の基で置換されていてよく;
、R11、R13およびR14が各々独立してHおよびC−Cアルキルから選択され;
10がH、C−Cアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、−(CH)NR1516およびC−Cシクロアルキル(所望によりOH、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから選択される1個以上の置換基で置換されていてよい)から選択されるか;または
およびR10が、それらが結合している窒素原子と一体となって5または6員ヘテロ環式基を形成し、それは所望によりN、OおよびSから選択されるさらなるヘテロ原子を含んでよく、該ヘテロ環式基は所望によりOH、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから選択される1個以上の基で置換されていてよく;そして
mが2または3である、
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
がHであり、そしてRがハロゲン、NRまたはZである、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
がNRである、請求項1〜6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
次のものから選択される、請求項1に記載の化合物:
4−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノール、
(1SR、2SR)−2−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノール、
{(1SR、2SR)−2−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノール、
(1SR、2SR)−3−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノール、
(1SR、3RS)−3−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノール、
(1SR、3SR)−3−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−1−メチル−シクロヘキサノール、
(1SR、3RS)−3−{3−[2−(4−フルオロフェニル)−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ}−シクロヘキサノール、
(1SR、3SR)−3−{3−[2−(4−フルオロフェニル)−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ}−シクロヘキサノール、
(1SR、3RS)−3−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−1−メチル−シクロヘキサノール、
3−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−アダマンタン−1−オール、
シクロヘキシル−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イル]−アミン、
(1SR,3RS)−1−メチル−3−{3−[2−(1−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−ピリジン−4−イル]−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ}−シクロヘキサノール、
(1SR,3RS)−3−{3−[2−(3−メチル−ピラゾール−1−イル)ピリジン−4−イル]−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ}−シクロヘキサノール、
(1RS,3SR)−3−{3−[2−(3−メチル−ピラゾール−1−イル)ピリジン−4−イル]−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ}−シクロヘキサノール、
3−[3−(2−ピラゾール−1−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノール、
(1SR,3RS)−1−メチル−3−{3−(2−ピラゾール−1−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノールおよび
(1SR,3RS)−3−[3−(2−ピラゾール−1−イル−ピリジン−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−イルアミノ]−シクロヘキサノール。
【請求項9】
医薬として使用するための、請求項1〜8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の化合物および1個以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤および/または担体を含む、医薬組成物。
【請求項11】
ALK−5またはALK−4が仲介する疾患または状態の処置または予防用医薬の製造のための、請求項1〜8のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項12】
次の工程を含む、式Iの化合物の製造方法:
(a)式II
【化2】

〔式中、XおよびRは上のどこかで定義した通りであり、そしてLは適当な脱離基である。〕
の化合物と、化合物R(式中、Rは上のどこかで定義した通りであり、そしてAは適当な反応性基である)を反応させるか;または
(b)式III
【化3】

〔式中、XおよびRは上のどこかで定義した通りであり、そしてLは適当な脱離基である。〕
の化合物と、式R(式中、Rは上のどこかで定義した通りであり、そしてAは適当な反応性基である)を有する化合物を反応させる。

【公表番号】特表2011−518856(P2011−518856A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506677(P2011−506677)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055066
【国際公開番号】WO2009/133070
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】