説明

アクチュエータおよびマニピュレータ

【課題】煩雑な作業を行うことなく、ピペットを正確に直線運動させること。
【解決手段】ピペット素子34を駆動対象とするねじ軸52と、ねじ軸52とボールねじナット60を介して連結された回転軸54を回転駆動する中空モータ70と、圧電素子92への印加電圧に応じて回転軸54をその軸方向に沿って微動駆動させる微動機構44を備え、中空モータ70の駆動に伴う回転軸54の回転運動をボールねじナット60を介して直線運動に変換してねじ軸52に伝達する。中空モータ70の粗動駆動に伴うねじ軸52の直線運動によってピペット34をその軸方向に沿って粗動駆動し、微動機構44の微動駆動に伴うねじ軸52の直線運動によってピペット34をその軸方向に沿って微動駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータおよびマニピュレータに係り、特に、ねじ軸を直線運動させるアクチュエータおよびこのアクチュエータを用いたマニピュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジーの分野において、顕微鏡の観察下で細胞に針を挿入して、細胞に核などを注入するマイクロマニピュレータとして、例えば、駆動アクチュエータに圧電素子を用いたものが提案されている(特許文献1および2参照)。
【0003】
特許文献1には、保持体に当接部材を介して摩擦力で支持される微小器具と、この微小器具に形成される鍔部と、この鍔部に設けられ、微小器具と同心円状に配置される圧電素子と、この圧電素子に取り付けられ、その圧電素子の駆動により微小器具に衝撃力を付与する慣性体とを備えたものが記載されている。
【0004】
一方、特許文献2には、直線方向に移動自在な移動体と、この移動体に取り付けられた圧電・電歪素子と、この圧電・電歪素子の先端部に取り付けられた微小器具とを備えたものが記載されている。
【特許文献1】特公平6−98582号公報
【特許文献2】特開2003−1574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術のうち前者のものは、圧電素子の駆動により微小器具の移動方向と慣性体の移動方向とを一致させるために、厳密な芯合わせを行わなければならず、設置作業が面倒である。また後者のものは、微小器具をマニピュレータに固定する際に、軟らかい弾性部材で操作者が固定しなければならず、このときの締め付け度合によっては、圧電アクチュエータの効果を十分に発揮できないことが危惧される。
【0006】
そこで、本発明は、煩雑な作業を行うことなく、ピペットを正確に直線運動させることができるアクチュエータおよびアクチュエータを用いたマニピュレータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、ピペットを駆動対象として、外周側にねじ部を有するねじ軸と、回転軸をその軸方向への移動を自在に支持するとともに前記回転軸を回転駆動するモータと、前記回転軸に固定されて前記ねじ軸にねじ結合され、前記ねじ軸をその軸方向への移動を自在に支持するねじ要素と、圧電素子への印加電圧に応じて前記回転軸をその軸方向に沿って微動駆動させる微動機構とを備えてなるアクチュエータを構成したことを特徴とする。
【0008】
係る構成によれば、モータを粗動駆動すると、モータの回転軸の回転に伴う回転運動がねじ要素を介してねじ軸に直線運動として伝達され、ねじ軸がピペットを駆動対象として、その軸方向に沿って移動する。この際、微動機構の圧電素子に電圧を印加すると、この印加電圧に応じて回転軸がその軸方向に沿って微動駆動されるため、この微動駆動をねじ要素を介してねじ軸に伝達することで、ピペットをその軸方向に沿って直線運動させることができる。すなわち、ピペットにキャピラリを取り付けるだけで、ピペットを直線運動させることができ、煩雑な作業を不要とすることができる。
【0009】
前記アクチュエータを構成するに際しては、以下の要素を付加することができる。
【0010】
好適には、前記ねじ軸のうち前記ねじ要素よりも前記ピペット側の部位をスライド自在に支持するリニアガイドを備えてなる。
【0011】
係る構成によれば、ねじ軸のうちねじ要素よりもピペット側の部位を、リニアガイドでスライド自在に支持することで、ねじ軸の直線運動のみをピペットに伝達することができる。
【0012】
好適には、前記圧電素子に対する印加電圧を制御する制御回路を備え、前記制御回路は、前記圧電素子に対して、前記ピペットがインジェクション動作可能な電圧を印加してなる。
【0013】
係る構成によれば、圧電素子に対して、ピペットがインジェクション動作可能な電圧を印加することで、ピペットによる微動動作として、ピペットに対してインジェクション動作を行わせることができる。
【0014】
また、上述のアクチュエータは、前記回転軸を回転自在に支持するように前記回転軸の外周に配置された軸受と、前記軸受と前記圧電素子とが収容されるハウジングと、を備えることが好ましい。ハウジング内に配置された圧電素子は軸受を介してピペットを軸方向に直動させる。この場合、前記圧電素子に対する印加電圧を制御する制御回路を備え、前記制御回路は、前記圧電素子に対して所定変位可能なオフセット電圧を印加することで、圧電素子がハウジング内で予圧を増加して軸受の剛性を大きくすることにより圧電素子の応答性を向上できる。また、前記圧電素子を少なくとも2つ備え、1つは予圧調整用圧電素子であり、もう1つが微動駆動用圧電素子であり、予圧調整用圧電素子にオフセット電圧を印加し、微動駆動用圧電素子に微動駆動電圧を印加するようにしてもよい。
【0015】
また、本発明は、ピペットを駆動対象として、外周側にねじ部を有するねじ軸と、回転軸をその軸方向への移動を自在に支持するとともに前記回転軸を回転駆動するモータと、前記回転軸に固定されて前記ねじ軸にねじ結合され、前記ねじ軸をその軸方向への移動を自在に支持するねじ要素と、圧電素子への印加電圧に応じて前記回転軸をその軸方向に沿って微動駆動させる微動機構と、前記微動機構を伴って三次元空間を移動して前記ピペットの位置を制御する三次元軸移動テーブルとを備えてなるマニピュレータを構成したものである。
【0016】
係る構成によれば、三次元軸移動テーブルの駆動により、微動機構を三次元空間の任意の位置に移動させることができる。微動機構が三次元空間の任意の位置に位置決めされたときに、モータを粗動駆動すると、モータの回転軸の回転に伴う回転運動がねじ要素を介してねじ軸に直線運動として伝達され、ねじ軸がピペットを駆動対象として、その軸方向に沿って移動する。この際、微動機構の圧電素子に電圧を印加すると、この印加電圧に応じて回転軸がその軸方向に沿って微動駆動されるため、この微動駆動をねじ要素を介してねじ軸に伝達することで、ピペットをその軸方向に沿って直線運動させることができる。すなわち、ピペットにキャピラリを取り付けるだけで、ピペットを直線運動させることができ、煩雑な作業を不要とすることができる。
【0017】
前記マニピュレータを構成するに際しては、以下の要素を付加することができる。
【0018】
好適には、前記ねじ軸のうち前記ねじ要素よりも前記ピペット側の部位をスライド自在に支持するリニアガイドを備えてなる。
【0019】
係る構成によれば、ねじ軸のうちねじ要素よりもピペット側の部位を、リニアガイドでスライド自在に支持することで、ねじ軸の直線運動のみをピペットに伝達することができる。
【0020】
好適には、前記圧電素子に対する印加電圧を制御する制御回路を備え、前記制御回路は、前記圧電素子に対して、前記ピペットがインジェクション動作可能な電圧を印加してなる。
【0021】
係る構成によれば、圧電素子に対して、ピペットがインジェクション動作可能な電圧を印加することで、ピペットによる微動動作として、ピペットに対してインジェクション動作を行わせることができる。
【0022】
また、上述のマニピュレータは、前記回転軸を回転自在に支持するように前記回転軸の外周に配置された軸受と、前記軸受と前記圧電素子とが収容されるハウジングと、を備えることが好ましい。ハウジング内に配置された圧電素子は軸受を介してピペットを軸方向に直動させる。この場合、前記圧電素子に対する印加電圧を制御する制御回路を備え、前記制御回路は、前記圧電素子に対して所定変位可能なオフセット電圧を印加することで、圧電素子がハウジング内で予圧を増加して軸受の剛性を大きくすることにより圧電素子の応答性を向上できる。また、前記圧電素子を少なくとも2つ備え、1つは予圧調整用圧電素子であり、もう1つが微動駆動用圧電素子であり、予圧調整用圧電素子にオフセット電圧を印加し、微動駆動用圧電素子に微動駆動電圧を印加するようにしてもよい。
【0023】
また、前記ねじ要素は前記回転軸と一体化されており、前記ねじ軸は中空に構成され、前記ピペットの保持部材が前記ねじ軸内に配置されて前記ねじ軸に固定されているように構成することで、回転軸を別個の部品として用意することが不要となり、部品点数の削減及び組み立て容易化を実現できる。
【0024】
また、前記ねじ要素は前記回転軸と一体化されており、前記ねじ軸が省略され、前記ピペットの保持部材が前記回転軸のねじ部とねじ結合するねじ部を外周に有し前記回転軸内に配置されるように構成することで、さらにねじ軸が不要となり、一層の部品点数の削減及び組み立て容易化を実現できる。
【0025】
本実施形態によるアクチュエータは、内周側にねじ部が形成された回転軸を有するボールねじナットと、前記回転軸を回転駆動するモータと、前記回転軸のねじ部とねじ結合し前記回転軸の回転により直動可能なピペット保持部材と、前記回転軸を回転自在に支持するように前記回転軸の外周に配置された軸受と、前記軸受と前記圧電素子とが収容されるハウジングと、を備え、前記圧電素子を駆動することで前記軸受を介して前記ピペット保持部材がその軸方向に微動駆動される。
【0026】
このアクチュエータによれば、カラスキャピラリを先端に取り付け可能なピペット保持部材と圧電素子とを同軸上に配置することができるとともに、圧電素子とピペット保持部材との位置関係も可能な限り近づけることができるので、圧電素子の動作を効率よくガラスキャピラリへ伝達することができる。さらに、圧電素子と電動とでガラスキャピラリの微細な位置決め(セッティング)が可能になり、位置決め装置としても構成でき、また、アクチュエータ内にはばね要素として軸受及びボールねじナットのボールねじしか存在しないため、高剛性のアクチュエータを実現でき、位置決めの際の応答性が向上する。
【0027】
上記アクチュエータにおいて前記圧電素子に対し所定変位のためのオフセット電圧を印加することで前記ハウジング内で予圧を付与することで、ハウジング内で予圧を増加して軸受の剛性を大きくすることにより圧電素子の応答性を向上できる。また、前記圧電素子を少なくとも2つ備え、1つは予圧調整用圧電素子であり、もう1つが微動駆動用圧電素子であり、前記予圧調整用圧電素子にオフセット電圧を印加し、前記微動駆動用圧電素子に前記微動駆動のための電圧を印加するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ピペットにキャピラリを取り付けるだけで、ピペットを直線運動させることができ、煩雑な作業を不要とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
〈第1の実施形態〉
図1は、第1の実施形態を示すマニピュレータの構成図である。図1において、マニピュレータシステム10は、顕微鏡観察下で試料に人口操作を実施するためのシステムとして、顕微鏡ユニット12と、マニピュレータ14と、マニピュレータ16とを備えており、顕微鏡ユニット12の両側にマニピュレータ14、16が分かれて配置されている。
【0031】
顕微鏡ユニット12は、撮像素子としてのカメラ18、顕微鏡20、試料台としてのベース22を備えている。このベース22の直上に顕微鏡20が配置される構造となっている。なお、顕微鏡20とカメラ18とは一体構造となっており、図示は省略したが、ベース22に向けて光を照射する光源を備えている。
【0032】
ベース22上には試料(図示せず)が乗せられるようになっている。この状態で、ベース22上の試料に顕微鏡20から光が照射され、ベース22上の細胞で反射した光が顕微鏡20に入射すると、細胞に関する光学像は、顕微鏡20で拡大されたあとカメラ18で撮像されるようになっており、カメラ18の撮像による画像を基に試料を観察することができる。
【0033】
マニピュレータ14は、図1に示すように、X軸‐Y軸‐Z軸の3軸構成のマニピュレータとして、ピペット24、X‐Y軸テーブル26、Z軸テーブル28、X‐Y軸テーブル26を駆動する駆動装置30、Z軸テーブルを駆動する駆動装置32を備えて構成されている。ピペット24の先端には、毛細管チップであるキャピラリ24Aが取り付けられている。
【0034】
ピペット24は、Z軸テーブル28に連結され、Z軸テーブル28は、X‐Y軸テーブル26上に上下動自在に配置され、駆動装置30、32はコントローラ43に接続されている。
【0035】
X‐Y軸テーブル26は、駆動装置30の駆動により、X軸またはY軸に沿って移動するように構成され、Z軸テーブル28は、駆動装置32の駆動により、Z軸に沿って(鉛直軸方向に沿って)移動するように構成されている。Z軸テーブル28に連結されたピペット24は、X‐Y軸テーブル26とZ軸テーブル28の移動にしたがって3次元空間を移動領域として移動し、ベース22上の細胞などを保持するように構成されている。
【0036】
マニピュレータ16は、直交3軸構成のマニピュレータとして、ピペット(インジェクションピペット)34と、X‐Y軸テーブル36と、Z軸テーブル38と、X‐Y軸テーブル36を駆動する駆動装置40と、Z軸テーブル38を駆動する駆動装置42を備え、ピペット34は、Z軸テーブル38に連結され、Z軸テーブル38は、X‐Y軸テーブル36上に上下動自在に配置され、駆動装置40、42は、コントローラ43に接続されている。ピペット34の先端にはキャピラリ(ガラスキャピラリ)34Aが取り付けられている。
【0037】
X‐Y軸テーブル36は、駆動装置40の駆動により、X軸またはY軸に沿って移動するように構成され、Z軸テーブル38は、駆動装置42の駆動により、Z軸に沿って(鉛直軸方向に沿って)移動するように構成されている。Z軸テーブル38に連結されたピペット34は、X‐Y軸テーブル36とZ軸テーブル38の移動にしたがって3次元空間を移動領域として移動し、ベース22上の試料に人工操作を行うように構成されている。このように、マニピュレータ14、16はほぼ同一構成であり、以下、ピペット34が連結されたマニピュレータ16を例に挙げて説明する。
【0038】
X‐Y軸テーブル36は、駆動装置40の駆動(モータ)により、X軸またはY軸に沿って移動するように構成され、Z軸テーブル38は、駆動装置42の駆動(モータ)により、Z軸に沿って(鉛直軸方向に沿って)移動するように構成されているとともに、ベース22上の細胞などを、針を挿入するための挿入対象とするピペット34を連結している。
【0039】
すなわち、X‐Y軸テーブル36とZ軸テーブル38は、駆動装置40、42の駆動により、ベース22上の細胞などを含む3次元空間を移動領域として移動し、ピペット34を、例えば、ピペット34の先端側からベース22上の細胞(試料)に対して、針を挿入するための挿入位置まで粗動駆動する粗動機構(3次元軸移動テーブル)として構成されている。
【0040】
また、Z軸テーブル38とピペット34との連結部は、ナノポジショナとしての機能を備えている。ナノポジショナは、ピペット34を設置している方向へ自在に移動可能に支持するとともに、さらに、ピペット34をその長手方向(軸線方向)に沿って微動駆動するように構成されている。
【0041】
具体的には、Z軸テーブル38とピペット34との連結部には、ナノポジショナとして、微動機構44を備えている。
【0042】
微動機構44は、図2乃至図4に示すように、圧電アクチュエータの本体を構成するハウジング48を備えており、ほぼ筒状に形成されたハウジング48内には、ピペット34を駆動対象として、外周側にねじ部を有するねじ軸52と、ねじ軸52を囲む中空状の回転軸54が挿通されている。ハウジング48はその底部がベース56に固定されている。
【0043】
ねじ軸52の先端側には、治具58を介してピペット34の根元側が連結されており、ねじ軸52の中程には、ねじ軸52外周のねじ部とねじ結合されるねじ要素としてのボールねじナット(BSナット)60が装着され、治具58とねじ軸52との間にはスライダ62が連結されている。スライダ62はベース56とほぼ直交する方向に配置され、切り欠き64を間にしてリニアガイド66に連結されている。リニアガイド66はベース56底部側に配置され、ベアリング68を介して、ねじ軸52の軸方向に沿って移動自在にベース56に連結されている。
【0044】
すなわち、リニアガイド66は、ねじ軸52の軸方向の移動に合わせて、ねじ軸52の先端側を支持したスライダ62を、ベース56に沿って往復動させるようになっている。この際、ねじ軸52のうちボールねじナット60よりもピペット34側の部位が、スライダ62を介してリニアガイド66でスライド自在に支持されるので、ねじ軸52の直線運動をピペット34へ伝達することができる。
【0045】
ボールねじナット60は、回転軸54の軸方向一端側(先端側)の段部54aに固定されているとともに、ねじ軸52外周のねじ部とねじ結合され、ねじ軸52がその軸方向に沿って往復動(直線運動)するのを自在に支持するようになっている。すなわち、ボールねじナット60は、回転軸54の回転運動をねじ軸52の直線運動に変換するための要素として構成されている。
【0046】
回転軸54の軸方向他端側は、中空モータ70内の回転部に連結している。中空モータ70のハウジング74は、その底部側がベース56に弾性体としてのゴムワッシャ76を介してボルト78が固定されている。中空モータ70が駆動されると回転軸54が回転し、回転軸54の回転運動がボールねじナット60を介してねじ軸52に伝達され、ねじ軸52がその軸方向に沿って直線運動するようになっている。なお、モータ70と回転軸54との連結にカップリングを使用してもよい。
【0047】
一方、回転軸54の段部54aに隣接して、軸受80、82が内輪間座84を間にして収納されている。軸受80、82は、それぞれ内輪80a、82aと、外輪80b、82bと、内輪と外輪間に挿入されたボール80c、82cを備え、各内輪80a、82aが回転軸54の外周面に嵌合され、各外輪80b、82bがハウジング48の内周面に嵌合され、回転軸54を回転自在に支持するようになっている。軸受80、82は、内輪間座84を間にし、回転軸54にロックナット86により固定されている。軸受80は、ハウジング48内の段部54aと円環状のスペーサ92と当接することにより、回転軸54の軸方向への移動が規制されるようになっている。軸受82の外輪82bとハウジング48の蓋88との間に、円環状の圧電素子92と円環状のスペーサ90が圧入されている。
【0048】
また、各軸受80、82、圧電素子92は、スペーサ90の長さを調節し、蓋88を閉めることにより、予圧が付与される。
【0049】
具体的には、スペーサ90の長さを調整し、蓋88を閉めると、その位置に応じた締結力が軸受82と軸受80の外輪82b、80bに、軸方向に沿った押圧力として予圧が付与されるとともに、同時に圧電素子92にも予圧が付与される。これにより、軸受80、82および圧電素子92に所定の予圧が付与され、軸受80、82の外輪間に軸方向間の距離としての間隙94が形成される。
【0050】
圧電素子92は、リード線(図示せず)を介して制御回路としてのコントローラ43に接続されており、コントローラ43からの電圧に応じて回転軸54の長手方向(軸方向)に沿って伸縮する圧電アクチュエータの一要素として構成されている。すなわち、圧電素子92は、コントローラ43からの印加電圧に応答して、回転軸54の軸方向に沿って伸縮し、回転軸54をその軸方向に沿って微動させるようになっている。回転軸54が軸方向に沿って微動すると、この微動がねじ軸52を介してピペット34に伝達され、ピペット34の位置が微調整されることになる。
【0051】
上記構成において、インジェクション用マニピュレータ16を駆動するに際しては、XY軸テーブル36とZ軸テーブル38を粗動駆動して、インジェクションピペット34をベース22上の細胞に近づけて位置決めしたあと、微動機構44を用いてピペット34を微動駆動することとしている。
【0052】
具体的には、ピペット34にキャピラリ34Aとして、ガラスキャピラリをセッティングするに際しては、図5に示すように、顕微鏡作業箇所に配置されたベース22からピペット34を退避させる状態になるように、マニピュレータ14,16を駆動する。これにより、ピペット34にガラスキャピラリ34Aをセッティングする際、十分な作業スペースが得られる。
【0053】
ガラスキャピラリ34Aをピペット34に取り付けた後は、コントローラ43からの指令により、マニピュレータ14、16を駆動し、図6に示すように、ガラスキャピラリ34Aが取り付けられたピペット34を顕微鏡作業箇所であるベース22上へ移動させる。このときの作業方法はジョイスティック43Aやボタン43Bを用いたりする方法を用いることもできる。
【0054】
ガラスキャピラリ43Aを顕微鏡作業箇所に移動させる際、1回目(初めての)の操作の場合、顕微鏡視野倍率を低倍にし、アクチュエータを駆動することで、顕微鏡20の視野内にガラスキャピラリ34Aが確認でき次第、アクチュエータの駆動を停止する。
【0055】
このあと、コントローラ43の画像処理を利用し、アクチュエータを駆動することで、顕微鏡20の視野内に、ガラスキャピラリ34Aを最適位置へ移動し、アクチュエータの駆動を停止する。このとき、1回目の操作の際に駆動したアクチュエータの移動量をコントローラ43に記憶する。このとき必要であれば、XYZの駆動系も駆動しても良い。
【0056】
次に、マニピュレータ16を操作し、シャーレの交換あるいはガラスキャピラリ34Aの交換が必要になった場合、アクチュエータを駆動し、顕微鏡作業箇所からガラスキャピラリ34Aを退避させるための操作を行う。このときボタン43Bの操作により、ガラスキャピラリ34Aをセッティングした位置まで駆動しても良いし、ジョイスティング43Aなどを用いて任意の位置まで退避するようにしてもよい。
【0057】
一方、再度、顕微鏡作業箇所へガラスキャピラリ34Aを移動する場合、1回目にセッティングした際の位置をコントローラ43が記憶しているため、マニピュレータ16で、容易にガラスキャピラリ34Aの位置を調整することが可能になる。
【0058】
また一連の細胞操作作業中にガラスキャピラリ34Aを交換する必要があった場合でも、ピペット34をマニピュレータ16から外すことなく、ガラスキャピラリ34Aをセッティングすることが可能となるので、作業効率を向上することができる。
【0059】
ガラスキャピラリ34Aとして、その形状が均一なものを使用する場合は、本発明に係るマニピュレータ16を用いることで、従来のものよりも効率を向上させることができる。
【0060】
またガラスキャピラリ34Aの形状にばらつきがある場合でもピペット34をアクチュエータ(ねじ軸52)の駆動によって直線往復運動させることができるため、ガラスキャピラリ34Aの位置を微細に調整することができる。
【0061】
また、ガラスキャピラリ34Aが細胞の挿入位置に位置決めされたときには、圧電素子92にインジェクション用の電圧を印加し、微動機構44を微動駆動することで、ピペット34によるインジェクション動作を行うことができる。この際、圧電素子92からピペット34を支持する治具58までの間には弱いばね要素を配置していないため、高い応答性を得ることが可能である。
【0062】
圧電素子92に印加する電圧の電圧波形としては、正弦波、矩形波、三角波などを用いることができる。また圧電素子92に電圧を印加する方法としては、操作者がボタン43Bを押している間、信号波形を連続して出力して駆動しても良いし、バースト波形を使用しても良い。
【0063】
本実施形態においては、軸受80、82のうち軸受80の内輪80aと外輪80bの変位量であって、圧電素子92の変位の半分の変位量がピペット34の変位量に設定されているため、圧電素子92には微動変位量の2倍の変位を与えるための制御電圧と初期設定電圧とを加算した微動用電圧を印加することになる。
【0064】
例えば、圧電素子92に2xの伸びが生じたときには、この伸びによる押圧力は微動制御を行う前の予圧荷重に加えて軸受82の外輪82bを押圧し、軸受80の外輪80bを軸方向に移動させ、軸受80、82の各外輪間の間隙94が2x分更に狭くなって圧電素子92の軸方向の伸びを吸収する。
【0065】
この間隙94の変位は、弾性変形に伴って軸受80、82がそれぞれ軸方向にxずつ変位し、軸受80の外輪80bが軸方向に合わせて2x変位することにより生じる。
【0066】
逆に、圧電素子92が2x縮むと、押圧力が減少し、軸受80、82の弾性変形がそれぞれxずつ減少し、間隙94が広がる方向に、軸受80の外輪80bが軸方向に合わせて2x変位することになり、圧電素子92の縮む分を吸収する。
【0067】
このように、間隙94の変位xを軸受80、82がxずつ分けて吸収するので、軸受80、82を互いに押圧する力がバランスしたときに、軸受80、82の内輪80a、80bが回転軸54と共に軸方向にx変位する。これにより、回軸軸54にねじ軸52を介して連結されたピペット34が軸方向にxだけ変位する。つまり、圧電素子92の2xの半分の変位量がピペット34の微動変位量となってピペット34が挿入位置に挿入される。ピペット34が挿入位置に位置決めされたあと、圧電素子92にインジェクション用電圧を印加すると、ピペット34がインジェクション動作を行うことになる。
【0068】
本実施形態によれば、中空モータ70の駆動に伴う回転軸54の回転運動をボールねじナット60を介して直線運動に変換してねじ軸52に伝達し、中空モータ70の粗動駆動に伴うねじ軸52の直線運動によってピペット34をその軸方向に沿って粗動駆動し、微動機構44の微動駆動に伴うねじ軸52の直線運動によってピペット34をその軸方向に沿って微動駆動させるようにしたため、ピペット34にガラスキャピラリ34Aを取り付けるだけで、ピペット34を直線運動させることができ、顕微鏡作業箇所に配置されたベース22へ向けてピペット34を移動させたり、ベース22からピペット34を退避させたりする際に、煩雑な作業を不要とすることができる。
【0069】
〈第2の実施形態〉
図7は、第2の実施形態による圧電アクチュエータの平面から内部を見た断面図である。図7の圧電アクチュエータは、第1の実施形態のアクチュエータの構造においてBSねじ軸にインジェクション用のピペット保持部材を固定したものである。すなわち、図2〜図4の圧電アクチュエータと基本的に同一の構成であるが、ボールねじナットに接続している回転軸を省略してボールねじナットと一体化し、BSねじ軸を中空にし、中空のBSねじ軸内にピペット保持部材を配置して固定したものである。
【0070】
図7の圧電アクチュエータは、上述の微動機構44として使用可能であり、ほぼ筒状に形成されたハウジング110内には、外周側にボールねじ(BSねじ)部を有する中空のねじ軸122と、ねじ軸122の外周のねじ部とねじ結合されるねじ要素としてのボールねじナット(BSナット)121とが挿通されている。
【0071】
図7のように、ハウジング110の内周側であってボールねじナット121の外周側には、軸方向先端側から、軸受111と、軸受112と、内輪間座113と、ロックナット114と、間座117と、圧電素子115と、が軸方向に並ぶように配置されている。軸受111と軸受112と内輪間座113とは、図3の軸受80、82、内輪間座84と同様の構成である。
【0072】
ボールねじナット121のつば部121aが軸受111の内輪111bの側面に当接し、つば部121aとロックナット114との間で軸受111の内輪111bと軸受112の内輪112bとが内輪間座113を挟んでロックナット114の締め付けにより固定されている。
【0073】
軸受111は外輪111aの側面がハウジング110のつば部110aに当接するように配置されている。また、全体が円環状で断面L字形の間座117が軸受112の外輪112aの側面に当接しかつロックナット114の収容空間を形成するように配置されている。円環状の圧電素子115が軸受112の外輪112aに間座117を介して配置される。間座117は圧電素子115の変位を軸受112の外輪112aへ伝達する。軸受111,112と圧電素子115には、間座117の軸方向の寸法を調整し、蓋116をハウジング110に取り付けることで予圧が付与される。
【0074】
ボールねじナット121の回転軸部121bは、ハウジング110の蓋116の外側まで延在し、中空モータ120内の回転部に連結し、中空モータ120の回転により回転駆動される。ハウジング110及び中空モータ120は、図2〜図4と同様にしてベース56に固定されている。
【0075】
ボールねじナット121は、ハウジング110により軸受111,112を介して回転可能に支持されており、回転軸部121bがねじ軸122の外周のねじ部とねじ結合され、中空モータ120の回転により回転軸部121bとともに回転しながら、ねじ軸122がその軸方向に沿って往復動(直線運動)することを支持する。このように、ボールねじナット121は、回転軸部121bの回転運動をねじ軸122の直線運動に変換するための要素として構成されている。
【0076】
中空のねじ軸122内にはピペット保持部材130の直線状の円筒部131が挿通し、ねじ軸122の中空内に円筒部131がねじ固定や接着固定等により固定されている。ピペット保持部材130は、内部に図2〜図4のようなピペットを保持し保護しており、その先端側にはインジェクション用のガラスキャピラリ34Aが取り付け固定され、その後端側には細胞等へのインジェクションのための溶液を送るチューブ132が接続されている。
【0077】
中空モータ120の回転によりボールねじナット121が回転することで、ボールねじナット121とねじ結合したねじ軸122がピペット保持部材130とともに直線運動し、ガラスキャピラリ34Aが図の矢印方向に直線的に往復動する。また、圧電素子115は、図1のコントローラ43からの印加電圧に応答して、ねじ軸122の軸方向に沿って伸縮し、ねじ軸122をピペット保持部材130とともにその軸方向に沿って微動させる。ねじ軸122が軸方向に沿って微動すると、ガラスキャピラリ34Aも軸方向に微動し、ガラスキャピラリ34Aの位置を微調整できる。
【0078】
図7の圧電アクチュエータは、図1のインジェクション用マニピュレータ16に上述の微動機構44として適用されることで、図1〜図6と同様にして、XY軸テーブル36とZ軸テーブル38を粗動駆動して、インジェクション用のガラスキャピラリ34Aをベース22上の細胞に近づけて位置決めした後、ガラスキャピラリ34Aを微動駆動することができる。
【0079】
図7の圧電アクチュエータによれば、図2〜図4ではボールねじナットに回転軸が取り付けられているが、図7では回転軸が不要であり、部品を削減でき、組立も容易化できるため、安価に提供できる。また、ピペット保持部材130と圧電素子115とを同軸上に配置できるとともに、圧電素子115とピペット保持部材130との位置関係も可能な限り近づけることができるので、圧電素子115の動作を効率よくガラスキャピラリ34Aへ伝達することができる。
【0080】
また、図7の圧電アクチュエータの微動機構44により、電動でガラスキャピラリの微細な位置決め(セッティング)が可能になる。また、アクチュエータ内には、ばね要素として軸受111,112及びボールねじナット121のボールねじしか存在しないため、従来よりも高剛性のアクチュエータを実現でき、位置決めの際の応答性が向上する。
【0081】
また、ボールねじナット121が回転するナット回転型のアクチュエータにピペット保持部材130を取付けており、ガラスキャピラリ34Aをセッティングする際に、操作者はピペット保持部材130やマニピュレータ16に触ることなく、図7の圧電アクチュエータを駆動することでガラスキャピラリ34Aを顕微鏡作業箇所から退避させ、逆に、顕微鏡作業箇所へ移動させることが可能となる。
【0082】
また、図7のナット回転型アクチュエータ内に圧電素子115が配置されているため、圧電素子がピペット保持部材に直付けされておらず、このため、ピペット保持部材130の取付け時の煩雑な作業が不要となる。
【0083】
次に、第2の実施形態による圧電アクチュエータの別の例について図8を参照して説明する。図8は、第2の実施形態による別の圧電アクチュエータの平面から内部を見た断面図である。
【0084】
図8の圧電アクチュエータは、図7の構成と比べ、ピペット保持部材130の外周上にボールねじ(BS)のねじ加工を施し、中空のねじ軸122を省略した以外は、基本的な構成は同一である。すなわち、ピペット保持部材130は外周がBSねじ加工された直線状の円筒部133を有し、ボールねじナット121は、直線状の円筒部133の外周のねじ部とねじ結合されている。図8の圧電アクチュエータは、図7と同様に駆動され、図1のインジェクション用マニピュレータ16に上述の微動機構44として適用される。
【0085】
図8の圧電アクチュエータによれば、図7と同様の作用効果を得ることができるとともに、中空のねじ軸122を省略できるので、図7の中空のねじ軸122とピペット保持部材130との組立作業が不要となり、部品点数の削減につながるとともに、組み立ても容易となるから、安価に提供できる。
【0086】
〈第3の実施形態〉
図9は第3の実施形態による圧電アクチュエータの圧電素子に印加するオフセット用電圧波形及び圧電素子による変位波形の例を示す図である。第3の実施形態は、図7の圧電アクチュエータを図1のマニュピレータに適用し、細胞へのインジェクション時に、圧電素子115に対しオフセット電圧値を印加するようにしたものである。
【0087】
例えば、オフセットのための入力信号として図9の方形波電圧信号aを圧電素子115に印加して圧電素子115を変位させることで軸受111,112の剛性を向上させることができる。そして、オフセット信号に駆動信号を加算し、圧電素子115を駆動し、インジェクション操作を行う。これにより、圧電素子115が図9の変位カーブbのように変位し、オフセット信号を加えない場合の変位カーブcと比べると、先端のガラスキャピラリ34Aの振動発生を抑えることができ、圧電素子115がよく応答して変位する。このように、圧電素子115にオフセット信号を加えることで、圧電素子115による変位の応答性が向上する。
【0088】
次に、第3の実施形態の別の例について図10,図11を参照して説明する。図10は、第3の実施形態による圧電アクチュエータの平面から内部を見た断面図である。図11は、第3の実施形態による別の圧電アクチュエータの平面から内部を見た断面図である。
【0089】
図10の圧電アクチュエータは、図7と比べて、圧電素子を2つに分割して配置した以外は基本的に同じ構成であるので、同一部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。図10のように、圧電アクチュエータのハウジング110内で間座117と蓋116との間に、円環状の略同一形状の2つの圧電素子115a、115bが配置されている。
【0090】
同様に、図11の圧電アクチュエータは、図8と比べて、圧電素子を2つに分割して配置した以外は基本的に同じ構成であるので、同一部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。図11のように、圧電アクチュエータのハウジング110内で間座117と蓋116との間に、円環状の略同一形状の2つの圧電素子115a、115bが配置されている。
【0091】
図10,図11では、例えば、圧電素子115aをインジェクション用圧電素子とし、圧電素子115bを予圧調整用圧電素子とすることで、図10,図11の各圧電アクチュエータを図1のマニュピレータに適用し、細胞へのインジェクション時に、圧電素子を駆動する際の応答性を向上させるために予圧調整用圧電素子115bを変位させ、予圧を増加し軸受の剛性を上げた上で、インジェクション用圧電素子115aを駆動し、インジェクション操作をする。その結果、インジェクション用圧電素子を駆動した際、ガラスキャピラリ34Aの振動発生を抑えることができ、インジェクション用圧電素子115aの応答性を向上することができる。なお、インジェクション時に予圧調整用圧電素子115bへ印加する電圧波形は問わない。
【0092】
以上のように本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、第3の実施形態について、図9を参照し図7の圧電アクチュエータを例にして説明したが、図8の圧電アクチュエータ及び図2〜図4の圧電アクチュエータも同様にして圧電素子にオフセット信号を印加して駆動することで軸受剛性の向上及び応答性向上を実現することができる。また、圧電素子を少なくとも2つ配置する構成は、図2〜図4の圧電アクチュエータにも適用可能であることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】第1の実施形態を示す細胞マニピュレータのブロック構成図である。
【図2】図1のマニピュレータに使用可能な圧電アクチュエータの正面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図2の圧電アクチュエータの斜視図である。
【図5】図1のマニピュレータを顕微鏡作業箇所へ導入する前の状態を示す斜視図である。
【図6】図1のマニピュレータを顕微鏡作業箇所へ配置したときの状態を示す斜視図である。
【図7】第2の実施形態による圧電アクチュエータの平面から内部を見た断面図である。
【図8】第2の実施形態による別の圧電アクチュエータの平面から内部を見た断面図である。
【図9】第3の実施形態による圧電アクチュエータの圧電素子に印加するオフセット用電圧波形及び圧電素子による変位波形の例を示す図である。
【図10】第3の実施形態による圧電アクチュエータの平面から内部を見た断面図である。
【図11】第3の実施形態による別の圧電アクチュエータの平面から内部を見た断面図である。
【符号の説明】
【0094】
10 マニピュレータシステム、12 顕微鏡ユニット、14 ホールディング用マニピュレータ、16 インジェクション用マニピュレータ、18 カメラ、20 顕微鏡 22 ベース、34 ピペット、38 XY軸テーブル、38 Z軸テーブル、44 微動機構、52 ねじ軸、54 回転軸、62 スライダ、66 リニアガイド、70 中空モータ、92 圧電素子、110 ハウジング、111,112 軸受、115 圧電素子、115a インジェクション用圧電素子、115b 予圧調整用圧電素子、120 中空モータ、121 ボールねじナット、121b 回転軸部(回転軸)、122 ねじ軸、130 ピペット保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットを駆動対象として、外周側にねじ部を有するねじ軸と、回転軸をその軸方向への移動を自在に支持するとともに前記回転軸を回転駆動するモータと、前記回転軸に固定されて前記ねじ軸にねじ結合され、前記ねじ軸をその軸方向への移動を自在に支持するねじ要素と、圧電素子への印加電圧に応じて前記回転軸をその軸方向に沿って微動駆動させる微動機構とを備えるアクチュエータ。
【請求項2】
前記ねじ軸のうち前記ねじ要素よりも前記ピペット側の部位をスライド自在に支持するリニアガイドを備える請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記圧電素子に対する印加電圧を制御する制御回路を備え、前記制御回路は、前記圧電素子に対して、前記ピペットがインジェクション動作可能な電圧を印加する請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記回転軸を回転自在に支持するように前記回転軸の外周に配置された軸受と、前記軸受と前記圧電素子とが収容されるハウジングと、を備える請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記圧電素子に対する印加電圧を制御する制御回路を備え、前記制御回路は、前記圧電素子に対して所定変位可能なオフセット電圧を印加する請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記圧電素子を少なくとも2つ備え、1つは予圧調整用圧電素子であり、もう1つが微動駆動用圧電素子である請求項4または5に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
ピペットを駆動対象として、外周側にねじ部を有するねじ軸と、回転軸をその軸方向への移動を自在に支持するとともに前記回転軸を回転駆動するモータと、前記回転軸に固定されて前記ねじ軸にねじ結合され、前記ねじ軸をその軸方向への移動を自在に支持するねじ要素と、圧電素子への印加電圧に応じて前記回転軸をその軸方向に沿って微動駆動させる微動機構と、前記微動機構を伴って三次元空間を移動して前記ピペットの位置を制御する三次元軸移動テーブルとを備えるマニピュレータ。
【請求項8】
前記ねじ軸のうち前記ねじ要素よりも前記ピペット側の部位をスライド自在に支持するリニアガイドを備える請求項7に記載のマニピュレータ。
【請求項9】
前記圧電素子に対する印加電圧を制御する制御回路を備え、前記制御回路は、前記圧電素子に対して、前記ピペットがインジェクション動作可能な電圧を印加する請求項7または8に記載のマニピュレータ。
【請求項10】
前記回転軸を回転自在に支持するように前記回転軸の外周に配置された軸受と、前記軸受と前記圧電素子とが収容されるハウジングと、を備える請求項7乃至9のいずれか1項に記載のマニピュレータ。
【請求項11】
前記圧電素子に対する印加電圧を制御する制御回路を備え、前記制御回路は、前記圧電素子に対して所定変位可能なオフセット電圧を印加する請求項10に記載のマニピュレータ。
【請求項12】
前記圧電素子を少なくとも2つ備え、1つは予圧調整用圧電素子であり、もう1つが微動駆動用圧電素子である請求項10または11に記載のマニピュレータ。
【請求項13】
前記ねじ要素は前記回転軸と一体化されており、
前記ねじ軸は中空に構成され、前記ピペットの保持部材が前記ねじ軸内に配置されて前記ねじ軸に固定されている請求項7乃至12のいずれか1項に記載のマニピュレータ。
【請求項14】
前記ねじ要素は前記回転軸と一体化されており、
前記ねじ軸が省略され、
前記ピペットの保持部材が前記回転軸のねじ部とねじ結合するねじ部を外周に有し前記回転軸内に配置される請求項7乃至12のいずれか1項に記載のマニピュレータ。
【請求項15】
内周側にねじ部が形成された回転軸を有するボールねじナットと、
前記回転軸を回転駆動するモータと、
前記回転軸のねじ部とねじ結合し前記回転軸の回転により直動可能なピペット保持部材と、
前記回転軸を回転自在に支持するように前記回転軸の外周に配置された軸受と、
前記軸受と前記圧電素子とが収容されるハウジングと、を備え、
前記圧電素子を駆動することで前記軸受を介して前記ピペット保持部材がその軸方向に微動駆動されるアクチュエータ。
【請求項16】
前記圧電素子に対し所定変位のためのオフセット電圧を印加することで前記ハウジング内で予圧を付与する請求項15に記載のアクチュエータ。
【請求項17】
前記圧電素子を少なくとも2つ備え、1つは予圧調整用圧電素子であり、もう1つが微動駆動用圧電素子であり、前記予圧調整用圧電素子にオフセット電圧を印加し、前記微動駆動用圧電素子に前記微動駆動のための電圧を印加する請求項15または16に記載のアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−211024(P2009−211024A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127275(P2008−127275)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】