説明

アクチュエータおよびリハビリ機器

【課題】流体の供給圧に対する耐圧性を高めると共に、様々な用途に適用できるアクチュエータを提供する。
【解決手段】アクチュエータ1は、ベース部材2に内膜部材3および外膜部材4を糸5で縛り付けて取り付けている。内膜部材3は流体供給で膨らむようにベース部材2に取り付けられる。外膜部材4は内膜部材3の膨らみを抑える締付力を有すると共に、内膜部材3が単体で最大限に膨らんだ場合の表面積以下の表面積となるようにベース部材2に取り付けられる。そのため、内膜部材3は最大限に膨らむ前に外膜部材4により膨らみが抑えられ、内膜部材3の破裂は防止される。また、アクチュエータ1は、ベース部材2により固定が容易になると共に、作動する方向がベース部材2からの一方向になるので様々な用途に適用しやすくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧式のアクチュエータの中で、いわゆるメンブレン(membrane:膜)方式のものに関し、特に、供給される流体の圧に対する耐圧性を高めると共に、様々な用途に適用しやすくしたものであり、さらには、このようなアクチュエータをリハビリ機器に適用したものである。
【背景技術】
【0002】
従来、気体(たとえば空気)又は液体等の流体を供給して作動させる流体圧式のアクチュエータとしては、チューブ状のものが一般的であった(特許文献1参照)。また、チューブ状以外の流体圧式アクチュエータとしては、メンブレン(membrane:膜)方式のものがある(特許文献2参照)。
【0003】
一方、従来から手、指などを対象としたリハビリ機器が各種存在し、手、指などの機能を回復させるためのリハビリ動作に係る作動手段として、気体(空気)の供給による袋体の膨らみを用いたものが下記の特許文献3〜5で開示されており、ゴムなどの伸縮性弾性材が具備する引っ張り力を利用したものが下記の特許文献6で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−132103号公報
【特許文献2】特開2007−120513号公報
【特許文献3】特開平10−33604号公報
【特許文献4】特開2010−167228号公報
【特許文献5】特開平9−47477号公報
【特許文献6】特開2009−125218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に係るメンブレン方式のアクチュエータは、流体の供給により弾性シート(内膜部材に相当)を膨らまして線材を引っ張る構成になっている。そのため、供給される流体の圧を弾性シートだけで受け止めることになり、流体の供給圧が高まると弾性シートの供給圧に対する負担が高まると共に、使用頻度が増すにつれて弾性シートの劣化も進みやすくなるという問題がある。また、流体の供給圧をコントロールするレギュレータ等の故障により、流体の供給圧が過度になると、弾性シートが破裂に至ることもある。なお、特許文献2に係るアクチュエータでは、弾性シートの上に網状の被覆シートを被せているが、この被覆シートは、線材が弾性シートを傷付けることを防止するためのものであり、この被覆シートで、流体の供給圧に対する弾性シートの負担を緩和することはできない。
【0006】
そして、特許文献2に係るメンブレン方式のアクチュエータは、線材の先端を対象物に連結することで、その対象物を線材の引っ張りにより駆動させているので、アクチュエータの用途が、線材で引っ張ることができる場合に限定されるという問題もある。
【0007】
また、従来の一般的なチューブ状のアクチュエータの場合でも、アクチュエータの一端を直接または間接的に対象物に連結する必要があることから、用途が限定されるという問題があった。さらに、アクチュエータの形状がチューブ状であると共に、流体の供給によりラグビーボール状に変形することから、アクチュエータを安定した状態で設置するには、全周囲方向へのクリアランス寸法を確保した上でアクチュエータの両端を取付金具等で設置対象に固定する必要があり、設置スペースが大きくなると共に設置に対して手間を要するという問題もあった。
【0008】
一方、気体(空気)の供給により袋体を膨らませるリハビリ機器では、指全体または手全体に一度に作用するものであったため、リハビリを必要とする人の症状・状態ごとに応じたきめ細やかなリハビリ作業を行えず、一律的なリハビリ動作しか提供できなかったという問題がある。
【0009】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、所定の締付力を有する部材で内膜部材を被覆することで従来に比べて流体供給圧に対する耐圧性を高めると共に、線材を引っ張る用途以外にも幅広く容易に適用できるようにしたアクチュエータを提供することを目的とする。
また、本発明は、上述したアクチュエータを、リハビリを必要とする人の指ごとに配置することで、様々な症状・状態に対応しえるリハビリ機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係るアクチュエータは、厚み方向に貫通する貫通孔を形成した板状のベース部材と、前記貫通孔の一方の開口を覆うように前記ベース部材に取り付けてある内膜部材と、前記内膜部材を被覆するように前記ベース部材に取り付けてある外膜部材とを備え、前記内膜部材は、前記貫通孔を通じた流体の供給により膨らむようにしてあり、前記外膜部材は、膨らんだ前記内膜部材に伴って変形することが可能な柔軟性を有すると共に、第一状態まで膨らんだ前記内膜部材が、前記第一状態を超過して膨らむようになることを抑える締付力を有することを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、内膜部材が第一状態を超えて膨らむようになることを、所要の締付力を有する外膜部材で抑えるので、内膜部材は第一状態より大きく膨らまないと共に、この第一状態では、流体の供給圧に対する負担は、ほとんどが外膜部材にかかった状態になる。そのため、内膜部材における流体供給に対する負担が低減されると共に、使用に伴う材質の劣化進行も従来に比べて抑制されるようになる。また、内膜部材は第一状態より大きく膨らまないので、内膜部材が破裂するような事態の発生が防止される。そして、外膜部材は、内膜部材の膨らみを抑える締付力を有することから、流体の供給圧に抗して流体供給に伴う負担を受け止めることができ、従来のメンブレン方式のアクチュエータに比べて耐圧性の向上が図れる。なお、第一状態とは、内膜部材が単体で最大に膨らんだ状態を100%とすると、それに対して約40〜100%の範囲内のいずれかのパーセントまで内膜部材が膨らんだ状態を意味する。そのため、本発明では、100%を超えて内膜部材が膨らむことはない。
【0012】
さらに、内膜部材および外膜部材はともにベース部材に取り付けられるので、アクチュエータの内膜部材が膨らむ方向は、ベース部材から内膜部材および外膜部材が位置する側への一方向のみとなり、アクチュエータの設置スペースを確保しやすくなると共に、板状のベース部材を介してアクチュエータの設置も容易に行えるようになる。
【0013】
さらにまた、アクチュエータの膨らむ方向(作動方向)が一方向になることで、全周方向に膨らむチューブ状のアクチュエータに比べ、作動方向を一方向に集中させて効率的な作動量を確保でき、さらには、線材を引っ張る用途だけでなく、対象物を持ち上げる用途、対象物を押しつける用途、対象物を挟み込む用途等にも適用しやすくなり、従来のアクチュエータに比べて幅広い用途に適用しやすくなる。
【0014】
本発明に係るアクチュエータは、前記内膜部材が、非伸縮性であると共に、前記外膜部材に被覆されていない単体の状態では前記第一状態を超えて膨らむことが可能な面積寸法を有しており、前記外膜部材が前記内膜部材の膨らむ範囲を被覆する被覆範囲面積は、前記内膜部材が単体で最大に膨らむことが可能な範囲の面積以下にしてあることを特徴とする。
【0015】
本発明にあっては、弾性変形しない非伸縮性の内膜部材を用いるので、素材的な伸縮が生じないことから長年の使用に対しても素材劣化が進行しにくく、その上、流体の供給に係る抵抗が少なくなり、流体の供給圧が低い場合でも内膜部材がスムーズに膨らむようになる。なお、このように非伸縮性の内膜部材を用いた場合でも、外膜部材の被覆範囲面積を、内膜部材が単体の状態で最大に膨らむことが可能な範囲の面積以下にしているので、外膜部材の締付力により、内膜部材の最大許容量を超えて流体が供給されて大きく膨らむ状態へと至らないので、流体供給系の故障等により、過度に流体が供給されるような事態が生じても、内膜部材の破裂は防止される。
【0016】
また、本発明に係るアクチュエータは、前記内膜部材が、伸縮性を有すると共に、前記外膜部材に被覆されていない単体の状態では前記第一状態を超えて伸長可能にしてあり、前記外膜部材が前記内膜部材の膨らむ範囲を被覆する被覆範囲面積は、前記内膜部材が単体で最大に伸張して膨らむことが可能な範囲の面積以下にしてあることを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、伸縮性を有する内膜部材を用いるので、ある程度の量の流体が供給されて内膜部材が伸長し始めると、その後は流体の供給量に比例した状態で内膜部材が膨らむようになるので、供給する流体の量に応じた線形的な変化でアクチュエータを作動させることを望む場合に好適となる。なお、このように伸縮性の内膜部材を用いた場合でも、外膜部材の被覆範囲面積を、内膜部材が最大に伸張して膨らむことが可能な範囲の面積以下にしているので、外膜部材の締付力により、内膜部材が最大限に伸長できる範囲を超えるまでには至らないので、流体供給系の故障等により、過度に流体が供給されるような事態が生じても、内膜部材が破裂することは防止される。
【0018】
さらに、本発明に係るアクチュエータは、前記内膜部材が、流体の非供給状態で前記ベース部材の前記貫通孔が開口する面に伸長した状態で接するように、前記ベース部材に取り付けてあることを特徴とする。
【0019】
本発明にあっては、流体の非供給状態で、内膜部材が伸長してベース部材の一方の面に接するように取り付けてあるので、流体供給の開始時から内膜部材が伸長し始めるようになり、流体供給の最初から供給する流体の量に応じてアクチュエータが線形的に作動し、流体の供給にレスポンス良く作動可能なアクチュエータを実現できる。また、流体の非供給状態では内膜部材がベース部材の一方の面に接して収縮しているので、流体の非供給状態におけるアクチュエータのコンパクト化を図れる。
【0020】
本発明に係るアクチュエータは、前記外膜部材が非伸縮性であることを特徴とする。
本発明にあっては、外膜部材を非伸縮性にしたので、第一状態を超えないように内膜部材の膨らみを確実に抑える締付力を具備できるようになる。
【0021】
本発明に係るアクチュエータは、前記外膜部材が、通気性を有することを特徴とする。
本発明にあっては、外膜部材が通気性を有するので、内膜部材と外膜部材の間に存在する空気は、内膜部材の膨らみに伴って通気性を有する外膜部材を通じて外方へ押し出される。そのため内膜部材が膨らむ際に、内膜部材と外膜部材の間に空気が留まって内膜部材が膨らむのを妨げるようなことも生じなくなり、内膜部材はスムーズに膨らむことが可能になる。
【0022】
また、本発明に係るリハビリ機器は、少なくとも人の指を載置することが可能な載置台と、前記載置台の人の指が載置される箇所に配置してある前記アクチュエータとを備え、前記アクチュエータは、前記ベース部材を介して前記載置台に取り付けてあることを特徴とする。
【0023】
本発明にあっては、上述したアクチュエータを人の指が置かれる箇所に取り付けたので、指単位でリハビリに係る作動を行えるようになり、症状・状態ごとに要望される様々なリハビリ動作に細かく対応できるようになる。また、アクチュエータは、板状のベース部材を介して載置台に取り付けられることから、リハビリ機器の製作段階で容易にアクチュエータを設置できると共に、リハビリ機器の使用時においては安定した姿勢でアクチュエータを作動させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明にあっては、内膜部材が第一状態を超過して膨らむことを、所要の締付力を具備した外膜部材で抑えるので、内膜部材の流体供給に対する負担を低減でき、使用に伴う材質の劣化進行も従来に比べて抑制できると共に、内膜部材が破裂するような事態の発生も防止できる。その上、本発明にあっては、アクチュエータの内膜部材が膨らむ方向は、ベース部材からの一方向のみとなるので、設置スペースの確保およびアクチュエータの設置を容易に行うことができると共に、作動方向を一方向のみに集中して大きな作動量を確保でき、線材を引っ張る以外にも、幅広い用途に適用できる。
【0025】
本発明にあっては、非伸縮性の内膜部材を用いるので、伸縮を伴わない内膜部材の安定した長期使用を確保できると共に、流体供給に係る抵抗を少なくして、流体の供給圧が低い場合でも内膜部材がスムーズに膨らませることができるという特性を確保しながら、所要の被覆範囲面積を有する外膜部材により、非伸縮性の内膜部材の破裂を確実に防止できる。
【0026】
本発明にあっては、伸縮性を有する内膜部材を用いるので、流体供給に伴って内膜部材が伸長し始めた後は流体の供給量に比例した線形的な状態で内膜部材が膨らんで、供給する流体の量に対するアクチュエータの作動応答性を向上できるという特性を確保しながら、所要の被覆範囲面積を有する外膜部材により、伸縮性を有する内膜部材の破裂を確実に防止できる。
【0027】
本発明にあっては、流体の非供給状態で、内膜部材がベース部材の一方の面に接して収縮するので、流体供給の最初から、流体供給に対するアクチュエータの作動応答性を向上できると共に、流体の非供給状態におけるアクチュエータのコンパクト化を図れるので、設置スペースが限られる場合でも好適に設置できる。
【0028】
本発明にあっては、外膜部材を非伸縮性にしたので、第一状態を超えないように内膜部材の膨らみを確実に抑える締付力を有することができ、内膜部材の破裂を確実に防止できる。
また、本発明にあっては、外膜部材が通気性を有するので、内膜部材と外膜部材の間に存在する空気は、内膜部材の膨らみに伴って通気性を有する外膜部材を通じて外方へ押し出すことができ、内膜部材が膨らむ際に、内膜部材と外膜部材の間に空気が留まって内膜部材が膨らむのを妨げるような事態を防止して、スムーズに内膜部材を膨らませることができる。
【0029】
本発明にあっては、上述したアクチュエータを人の指が置かれる箇所に配置したので、症状・状態ごとに要望される様々なリハビリ動作に細かく対応でき、また、アクチュエータは、板状のベース部材を介して載置台に取り付けられることから、リハビリ機器にアクチュエータを容易に設置できると共に、リハビリ機器の使用時ではアクチュエータを安定した姿勢で作動させられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係るアクチュエータであり、(a)は流体の非供給状態の斜視図、(b)は流体が供給されてアクチュエータが最大限に作動した状態を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係るアクチュエータの分解斜視図である。
【図3】暫定的に内膜部材を単体でベース部材に取り付けたものであり、(a)は流体の非供給状態の断面図、(b)は流体を供給して内膜部材を単体で最大限膨らませた状態を示す断面図である。
【図4】内膜部材の膨らみに追従して、外膜部材が最大に膨らんだ状態を示す断面図である。
【図5】実施形態に係るアクチュエータであり、(a)は流体の非供給状態の断面図、(b)は流体が供給されてアクチュエータが最大限に作動した状態を示す断面図である。
【図6】実施形態に係るアクチュエータをリフト機構に適用した例を示し、(a)は流体の非供給状態の断面図、(b)は流体が供給されて対象物を持ち上げた状態の概略外観図である。
【図7】実施形態に係る2台のアクチュエータを対向配置して把持機構に適用した例を示す概略外観図である。
【図8】実施形態に係る5台のアクチュエータを配置したリハビリ機器を示し、(a)は概略斜視図、(b)は人の手を載せた状態の概略斜視図である。
【図9】(a)はリハビリ機器におけるアクチュエータの配置される箇所を示す要部斜視図、(b)はリハビリ動作の概要を示す概略断面図である。
【図10】変形例のリハビリ機器を示し、(a)は4台のアクチュエータを配置したリハビリ機器の概略斜視図であり、(b)は1台のアクチュエータを配置したリハビリ機器の概略斜視図である。
【図11】本発明の別の実施形態に係るアクチュエータであり、(a)は流体の非供給状態の断面図、(b)は流体の供給開始状態の断面図、(c)は更に流体を供給した状態の断面図である。
【図12】本発明の別の実施形態に係るアクチュエータであり、(a)は所要量の流体を供給した状態の断面図、(b)はアクチュエータが最大限に作動した状態を示す断面図である。
【図13】流体の供給量と内膜部材の容積の関係を示すグラフである。
【図14】(a)、(b)、(c)は変形例の外膜部材を示す概略斜視図である。
【図15】別の変形例の外膜部材を示す概略斜視図である。
【図16】(a)は更に別の変形例の外膜部材を示す概略斜視図であり、(b)は変形例のアクチュエータが最大限に作動した状態を示す概略図である。
【図17】(a)は変形例の取付部材を示す分解斜視図であり、(b)は変形例の取付部材を用いた内膜部材及び外膜部材の取付状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1(a)、(b)は、本発明の実施形態に係るアクチュエータ1を示している。この実施形態(第1実施形態)のアクチュエータ1は、流体の供給により、図1(a)に示す偏平な状態から、図1(b)に示す最大限に作動した球状の状態へと至り、このような球状へとアクチュエータ1が変形することで、対象物に対して様々な動作を行えるようになっている。なお、本実施形態に係るアクチュエータ1では、流体として、主に空気のような加圧に対して圧縮性を示す気体を想定しているが、加圧に対して基本的に非圧縮性を示す液体を流体として用いることも可能である。
【0032】
図2は、アクチュエータ1の分解状態を示している。アクチュエータ1は、円板状のベース部材2に、円形シート状の内膜部材3及び円形網シート状の外膜部材4を、糸5を巻回して取り付けたものになっている。以下、アクチュエータ1を構成する各部材2、3、4等を説明する。
【0033】
ベース部材2は、所要の剛性を有する円板状の部材であり、本実施形態では合成樹脂製のものを使用しているが、金属製、陶器製、ガラス製、粘土製などのものも適用できる。ベース部材2は、底面2bから表面2aへ至る厚み方向に貫通する貫通孔2eを円板面(表面2a、底面2b)の中央に形成しており、また、側面2cの周囲には、厚み方向の中央部を窪ませた凹部2dを形成している。この凹部2dは、内膜部材3及び外膜部材4に対して糸5を巻き付けて取り付けた際に、抜け止めとして機能する。
【0034】
なお、ベース部材2の貫通孔2eには、底面2bからホース6を圧入している。ホース6は、流体(空気)をアクチュエータ1へ運ぶものであり、図示していないホースの端部には、電磁弁、レギュレータ、及びフィルタ等を介してコンプレッサ(流体の供給源)が接続されており、これらの機器を介して所定圧(たとえば、約0.11〜1.0MPa)で流体(空気)をアクチュエータ1へ適宜供給できるようにしている。なお、アクチュエータ1の故障発生を未然に防ぐためには、流体供給側に圧力センサを設けて、標準値以上の供給圧になった場合は、アクチュエータ1への流体供給を停止するような制御を行うことが好ましい。また、この種の制御の別の例として、フローセンサーを設けてアクチュエータ1への供給量を随時検知し、アクチュエータ1が最大限に作動する以前の程度の流体量が供給されると、自動的に流体の供給を停止する制御を行うようにしてもよい。
【0035】
内膜部材3は、ベース部材2の表面2aより大きい表面積(シート面の面積)を有した柔軟性(可撓性)のあるシート状部材(弾性のない非ゴム系のシート状部材と同等)であり、素材としては流体を通過させない非伸縮性のものを使用する。具体的には、合成高分子化合物に属するポリプロピレン系シート、塩化ビニル系シート、テフロン(登録商標)系シート、ポリエステル系シート、ポリアミド系シート、ポリエチレン系シート、ポリイミド系シート、ポリスチレン系シート、ポリカボネート系シート等のいずれかを適用でき、また、合成高分子化合物以外には紙製シートも適用できる。
【0036】
図3(a)(b)は、内膜部材3の流体の供給に対する変化の状態を示すために、内膜部材3を仮に単体でベース部材2に取り付けたものを示している。内膜部材3は、ベース部材2の表面2eに開口する貫通孔2eを覆うように、ベース部材2の側面2cに糸5で縛り付けられて、ベース部材2に取り付けられている。この際、図3(a)において、ベース部材2の表面2eから上方で、内膜部材3が余るように取り付けることになり、このベース部材2の表面2eより上の余った範囲が、流体の供給により内膜部材3が膨らむ範囲(図3(b)において矢印で示す範囲)となる。この内膜部材3が膨らむ範囲は、図3(b)に示すように、流体が供給された内膜部材3が単体で最大に膨らんだ場合の外面3aにおける表面積が「A1」になるようにしている。なお、内膜部材3には、厚み寸法が20μm以上600μm以下のものを適用でき、特に、流体の非供給状態で、内膜部材3のボリュームが出にくくして、アクチュエータ1のコンパクト化を図るには、厚み寸法が250μm〜300μmの範囲のものを適用することが好ましい。
【0037】
図3(b)は上述したように、ホース6を介して、内膜部材3の内面3bとベース部材2の表面2aで形成される閉鎖空間に空気を供給して、内膜部材3を破裂しない範囲で最大限に膨らませた状態(第二状態に相当)を示している。内膜部材3は、空気が供給されることで、膨らんで半球状に変形することになる。この図3(b)に示す状態において、内膜部材3の膨らむ範囲の最大体積(外面3aでの体積)は、「V1」になっている。
【0038】
なお、内膜部材3に供給される気体(空気)は、圧縮性の流体であるため、供給圧によって気体の体積は異なるが、図3(b)の状態では、所定の供給圧下で、内膜部材の最大体積が「V1」になることに見合った量(体積)の気体が供給されることになる。また、気体の替わりに液体を流体として用いる場合、流体は通常の供給圧では非圧縮性の流体であるため、図3(b)に示す状態に内膜部材3を膨らますには、「V1」と同等の量(体積)の液体が供給されることになる。
【0039】
また、内膜部材3を図3(a)、(b)に示すような状態でベース部材2へ取り付けるための目安としては、内膜部材3の外周縁3cをベース部材2の裏面2bの周縁2fと一致するようにすれば、内膜部材3の膨らむ範囲の表面積が「A1」となるように、円形の内膜部材3の直径寸法を設定することが好適である。このような図3(a)、(b)に示す状態は、内膜部材3の膨らむ範囲を説明するために、内膜部材3のみを暫定的に糸5でベース部材2へ取り付けた状態を示すものであり、アクチュエータ1の実際の構成状態を示すものではない。
【0040】
一方、外膜部材4(図2参照)は、上述した内膜部材3を被覆する円形のシート状部材であり、ベース部材2の表面2aより大きい表面積を有する非伸縮性の素材で形成されている。外膜部材4は、エステル系の糸(たとえば、275デジテックスのポリエステルマルチフィラメント糸)を用いて、通気性が確保できるように網状に編み上げられており、それにより、膨らんだ内膜部材3に伴って変形できる柔軟性を有している。外膜部材4は、編成用の糸の素材、糸の太さ、網の目の大きさ、および外膜部材4の内膜部材3の膨らむ範囲を覆う面積などを所定のものにすることで、上述した内膜部材3が所定の大きさにまで膨らむと、その状態を超過して大きく膨らむことを抑える締め付け力を発揮できるようにしている。具体的には、編成用の糸として、非伸縮性嵩高加工糸を用いると、外膜部材4が非伸縮性となり、所定の締付力を確保しやすくなる。
【0041】
図4は、外膜部材4は、内膜部材3を覆ってベース部材2に糸5で取り付けた状態を示している。具体的には、上述した内膜部材3の膨らむ範囲を被覆する範囲(図4において、ベース部材2の表面2aより上方となる範囲。図4の矢印で示す範囲に相当)の表面積(内面4bの表面積)が「A2」となるように、外膜部材4はベース部材2に取り付けられている。ここで本実施形態では、外膜部材4の被覆範囲の表面積の「A2」は、内膜部材3の膨らむ範囲の表面積の「A1」より小さくなるようにしているが(A2<A1)、流体として圧縮性流体の空気を用いて、1気圧より大きい供給圧で空気を供給するような仕様にする場合などでは、1気圧のときより圧縮されて小さくなった体積で空気が内膜部材3へ供給されることから、「A2」を「A1」と同等の面積にすることも可能であるが(A2=A1)、流体として液体を用いるときは、液体が非圧縮性であることより、確実に内膜部材3の破裂を防ぐために、上記の「A2<A1」の関係にする。
【0042】
また、本実施形態の外膜部材4が、図4に示すように最も半球状に変形した場合の内部最大容積(内面4bでの容積)は「V2」になっており、この内部最大容積の「V2」も、内膜部材3の膨らむ範囲の最大体積の「V1」よりも小さくなるようにしている(V2<V1)。ここでも、流体として圧縮性流体の気体(空気)を用いて、1気圧より大きい供給圧で気体(空気)を供給するような仕様の場合などでは、「V2」を「V1」と同等にすることも可能であるが(V2=V1)、流体として液体を用いる場合は、上記の「V2<V1」の関係にして、内膜部材3の破裂を防ぐことが重要となる。
【0043】
なお、外膜部材4を図4に示すような状態でベース部材2へ取り付けるための目安としては、外膜部材4の外周縁4cをベース部材2の裏面2bの周縁2fと一致するようにすれば、外膜部材4の被覆範囲面積(内膜部材3の膨らむ範囲を被覆する範囲の内面4bの表面積)A2となるように、円形の外膜部材4の直径寸法を設定することが好適である。
【0044】
これらの内膜部材3、外膜部材4等を用いて、アクチュエータ1を製作する仕方としては、図2、4等に示すように、内膜部材3の外面3aを被覆するように外膜部材4を重ねた状態にして、ベース部材2の表面2aに被せる。そして、内膜部材3の外周縁3cと、外膜部材4の外周縁4cと、ベース部材2の裏面2bの周縁2fとが、それぞれ一致するように、内膜部材3および外膜部材4の位置を整える。このように位置を整えた状態で、糸5を、ベース部材2の側面2cに応じた箇所の外膜部材4の外面4aに強く巻回することで、ベース部材2の側面2cに形成された凹部2dの底で糸5を巻き込んだ状態にしてから、糸5の端部を結び付ける。これにより、アクチュエータ1は完成し、内膜部材3の内面3bとベース部材2の表面2aとで閉鎖される空間が形成される。
【0045】
このように完成したアクチュエータ1には、ベース部材2の底面2から貫通孔2eにホース6を挿入して、アクチュエータ1へ流体(たとえば空気)を供給できる状態にする。なお、本実施形態では、ホース6を直接的に貫通孔2eへ取り付けているが、継手(たとえばSMC社製の継手。型番KJH、KQ2Hなど)を介してホース6の先端を貫通孔2eへ取り付けることも当然可能であり、このように継手を用いる場合は、貫通孔2eの内面に雌ネジを形成して継手の雄ネジと螺合させることになる。
【0046】
図1(a)、図5(a)は、ホース6を取り付けたアクチュエータ1に、流体(空気)を供給する前の状態(流体の非供給状態)を示している。この状態では、内膜部材3の内部に空気が供給されていないことから、内膜部材3は萎んだ状態になっており、それに伴い、内膜部材3を被覆する外膜部材4も内膜部材3に沿った偏平的な形状になっている。
【0047】
この状態からアクチュエータ1への空気の供給を開始すると、内膜部材3が膨らみ始める。なお、内膜部材3は、非伸縮性であると共に柔軟に変形できることから、空気の供給圧が低くても(たとえば、約0.11〜0.2MPa程度の供給圧)、内膜部材3をスムーズに膨らませることができる。さらに、内膜部材3と外膜部材4との間の隙間S(図5(a)参照)に存在する空気は、外膜部材4が通気性を有することから、内膜部材3の膨らみに伴って、外膜部材4を通過して外方へ押し出されるので、隙間Sにする空気により内膜部材3がスムーズに膨らむことが妨げられることはない。
【0048】
図1(b)、図5(b)は、所定量の空気を供給してアクチュエータ1が最大限に作動した状態を示しており、この状態では、外膜部材4は内膜部材3の膨らみにより、最も押し広げられて半球状に変形した状態(最も引っ張られた状態)になっており、内膜部材3に対して外膜部材4の締付力が発揮されている。
【0049】
この状態においては、図5(b)に示すように、外膜部材4の頂部4dからベース部材2の表面までの距離は、Hになっている。このようなアクチュエータ1が最大限に作動した状態においては、上述したように外膜部材4の被覆範囲の表面積の「A2」が、内膜部材3の膨らむ範囲の表面積の「A1」より小さいと共に(A2<A1)、上述したように被覆部材4は内膜部材3の膨らみを抑える締付力を有することから、この被覆部材4の締付力により内膜部材3は、さらに膨らむことが可能な余長分を残した状態(第一状態に相当)になっている。このような余長分は、図5(b)において、内膜部材3の頂部3dに、撓んだ部分(膨らまずに余った部分)として残存しているのが示されている。
【0050】
よって、本実施形態におけるアクチュエータ1は、アクチュエータとして最大限に作動した場合でも、非伸縮性の内膜部材3には膨らまずに余った部分が残るようにしているので、内膜部材3に破裂のおそれが生じず、スムーズ且つ安定した作動状態を確保できる。また、アクチュエータ1の作動時の流体供給に対する負担は、外膜部材4で受け止められ、内膜部材3の負担は軽減されるので、従来のメンブレン方式のアクチュエータに比べて耐圧性を向上できると共に、使用によるアクチュエータ1の経年劣化を抑制でき、安定した使用状態を長期にわたり維持できる。
【0051】
なお、図5(b)に示す内膜部材3の余った部分を残した状態(第一状態)は、流体として圧縮性の気体(空気)を用いる場合、図3(b)に示すように、内膜部材3が、外膜部材4の被覆がない単体で最大限に膨らんだ状態(100%の状態。第二状態に相当)の80〜100%の範囲になるように、外膜部材4の被覆範囲の表面積A2および締付力等を設定することが重要である。なお、内膜部材3の負担を抑えて使用劣化の進行防止を重要視する場合、または流体として非圧縮性の液体を用いる場合などでは、内膜部材3の最大限に膨らんだ状態(第二状態)に対する第一状態の割合を、約80〜98%程度に設定することが好ましい。
【0052】
また、アクチュエータとして最大限に作動した場合の寸法としては、外膜部材4の頂部4dからベース部材2の表面2aまでの距離Hが、ベース部材2の表面2aの直径D(図5(b)参照)の半分になるようにすると、アクチュエータ1が最大限に作動した場合の外膜部材4の形状が、半球状になる。そのため、アクチュエータ1の用途として、作動させた場合の形状が半球状にすることが必要であれば、「距離H=直径D/2」という寸法関係に近づくように、内膜部材3、外膜部材4の寸法を設定することになるが、半球状にすることが必要でない場合は、特に上記の寸法関係にこだわらなくてもよい。
【0053】
そして、図5(b)に示すようにアクチュエータ1を膨らました状態で、ホース6の空気供給源側に設けられた電磁弁が大気解放となるように作動させると、アクチュエータ1に供給された空気がホース6を介して外方へ抜け始める。それにより、アクチュエータ1が萎み始めて、図5(a)に示す状態に戻る。よって、電磁弁の制御により、アクチュエータ1は、図5(a)に示す状態と、図5(b)に示す状態との間で随時変形して作動し、それにより様々な用途に使用できるようになる。たとえば、アクチュエータ1の上方に線材を配置して、アクチュエータ1の作動により、その線材を押し上げるような構成にすれば(たとえば、特許文献2の図1〜図4等の構成を参照)、上述した特許文献2に示されるアクチュエータと同様に、線材の引っ張り機構を実現することができる。
【0054】
また、図6(a)(b)は、上述したアクチュエータ1をリフト機構の用途に適用した一例を示している。この例では、リフト機構を構成するフレーム部材8に、アクチュエータ1を固定する必要があることから、アクチュエータ1のベース部材2の底面2bに複数のネジ穴2g(雌ネジの穴)を形成している。そして、アクチュエータ1をフレーム部材8の配置面8aに載置した状態で、フレーム部材8に形成した貫通孔8bに通された複数のボルトBを各ネジ穴2gに螺合してアクチュエータ1をフレーム部材8に固定している。なお、フレーム部材8には、ホース6の通過穴8cも形成し、ホース6を空気の供給側へ導けるようにしている。このようにアクチュエータ1には、ベース部材2が存在することから、ベース部材2を介して適用対象へ容易克つ安定した形態で設置することが可能となる。
【0055】
このリフト機構で対象物Wを持ち上げるには、図6(a)に示すように、アクチュエータ1の外膜部材4に対象物Wを載置する。それから、アクチュエータ1に空気を供給すると、アクチュエータ1が膨らんで、最終的には図6(b)に示すように、アクチュエータ1の内膜部材3および外膜部材4が半球状になって対象物Wを持ち上げることになる。そして、リフト機構に適用したアクチュエータ1では、作動方向がリフト方向だけになることから、アクチュエータ1の作動量を全てリフト方向の一方向に割り当てることができ、マッキンベン型のアクチュエータに比べて、供給する流体の量に対する作動効率を高めることができる。なお、アクチュエータ1を適用したリフト機構を、図6(a)(b)に示す状態と天地が逆となるようにした場合は、アクチュエータ1の作動により対象物Wを下方へ押し付ける動作を行えるようになる。
【0056】
図7は、アクチュエータ1を別の用途として、把持機構に適用した一例であり、丁度、図6(a)、(b)に示したリフト機構を2台用いると共に、所定の間隔を開けて対向配置したような形態になっている。具体的には、「逆U字」状のフレーム部材9の一方の垂直部分9bに、上述したリフト機構と同様に第1のアクチュエータ1を固定し、他方の垂直部分9cに第2のアクチュエータ2を固定した形態となっている。なお、フレーム部材9の水平部分9aに、汎用のロボットアームの先端10を固定すれば、図7に示す把持機構は、簡易なロボットハンドとしても機能させることができる。
【0057】
この把持機構で対象物Wを把持するには、空気を供給しないで萎ませた状態の両側のアクチュエータ1、1の間に、対象物Wが位置するように、フレーム部材9を移動させる。それから、空気を供給すると、両側のアクチュエータ1、1が膨らみ、最終的には図7に示すように、半球状になった両側のアクチュエータ1、1で対象物Wを挟持することになる。この対象物Wを挟持した状態で、ロボットアームにより所定の場所へフレーム部材9を移動させると共に、両側のアクチュエータ1、1へ供給していた空気を抜き取ると、両側のアクチュエータ1、1が萎み、対象物Wが解放される。よって、アクチュエータ1を適用した把持機構と、ロボットアームのような移動機構を組み合わせることで、対象物Wを自由に移動させることが可能になる。
【0058】
なお、図7に示すような把持機構を簡易にすることも可能である。この場合は、一方のアクチュエータ1を廃止すると共に(例えば、図7の右側のアクチュエータ1を廃止)、一方の垂直部材9bの位置を、右側のアクチュエータ1が最大に膨らんだときの頂部の付近に配置した構成のフレーム部材を用いることになる。このような簡易な構成でも、1台のアクチュエータ1のみで、一方の垂直部材9bとの間で対象物Wを把持することができる。
【0059】
図8(a)(b)は、上述したアクチュエータ1を手・指のリハビリ用に適用したリハビリ機器100を示している。このリハビリ機器100は、リハビリを行う人の手を載せるために、板状の載置台101を用いており、載置台101は上面101aに、丁度の手の形状に合うように窪ませた凹部102を形成している。凹部102は、載置台101の中央付近に手のひらを載置するために広がった形状の載置凹部102aを形成すると共に、先端101b側には手の指にあわせて、親指を載置するための親指用凹部102b、人差し指を載置するための人差し指用凹部102c、中指を載置するための中指用凹部102d、薬指を載置するための薬指用凹部102e、小指を載置するための小指用凹部102fを夫々設けている。なお、親指用凹部102bは、親指の先端が抜けないようにするため、先端側に洞窟状の差し込み部102gを形成している。これら各指用の凹部102b〜102fには、上述したアクチュエータ1を夫々配置している。
【0060】
図9(a)は、人差し指用凹部102cおよび中指用凹部102dにおけるアクチュエータ1の配置箇所を示している。人差し指凹部102cでは、載置される指の長さに応じた長手方向の中央付近102hに、円形状のザグリ穴部105aを形成し、そのザグリ穴部105aの中央に貫通孔106aを形成している。ザグリ穴部105aは、図2に示す円板状のベース部材2が全体に入り込むことが可能な深さ寸法にすると共に、完成した状態のアクチュエータ1のベース部材2における外径寸法に応じた内径寸法にして、アクチュエータ1がベース部材2を介して、ザグリ穴部105aの内部に嵌め込んで、取り付けられるようにしている。なお、アクチュエータ1を強固に取り付ける場合には、接着剤で、ベース部材2の下面をザグリ穴部105aの底面を固着させるか、または、図6(b)に示す構成と同様にしてボルト止めすることになる。また、ザグリ穴部105aに設けた貫通孔106aは、アクチュエータ1に取り付けられたホース6が通過できる内径寸法を有している(図9(b)参照)。
【0061】
また、図9(a)に示すように、中指用凹部102dにも、中央付近102iにザグリ穴部105bおよび貫通孔106bを形成してアクチュエータ1を、上記と同様に取り付けられるようにしている。なお、他の凹部102b、102e、102fでも、上記と同様にザグリ穴部および貫通孔を設けてアクチュエータ1を配置して取り付けられるようにしているが、親指用凹部102bでは、差し込み部102gにかかる範囲にザグリ穴部および貫通孔を設けて、アクチュエータ1が半分程度、差し込み部102gの内部に位置するようにしている。
【0062】
図8(a)に戻って、載置台101の説明を続けると、載置台101は、凹部102に載置された手の手首から甲のあたりを覆うようにベルト103を取り付けている。ベルト103は、バックル部103a(図8(b)参照)で、ベルト長を調整できるようになっている。上述したような構成のリハビリ機器100は、各アクチュエータ1から延出するホース6のそれぞれを、個別に電磁弁に接続しており、それにより独立して個々のアクチュエータ1を駆動できるようにしている。
【0063】
図8(b)は、上述したリハビリ機器100の使用状況を示している。リハビリ機器100を使用するには、まず、リハビリを受ける人の手を載置台100の凹部102に載せる。具体的には、手のひらを載置凹部102aに載せ、親指を親指用凹部102bに載置し、人差し指を人差し指用凹部102cに載置し、中指を中指用凹部102dに載置し、薬指を薬指用凹部102eに載置し、小指を小指用凹部102fに載置すると共に、親指の先端を差し込み部102gに差し込む。それから、ベルト103を手に巻回してからベルト長を調整することで、手首から甲のあたりを載置台101に固定する。
【0064】
このようにリハビリを行う人の手を載置台100にセットした状態で、流体を供給して各アクチュエータ1を作動させると、図9(b)に示すように、膨らんだアクチュエータ1により指が持ち上げられ、持ち上げられた指は関節部分(第二関節の部分)で曲がることになる。そして、供給した流体を排出させて、膨らんだアクチュエータ1を萎んだ状態に戻すと、アクチュエータ1で持ち上げられた指は下ろされ伸ばされることになる。
【0065】
よって、流体の供給・排出を繰り返すことで、アクチュエータ1は膨らんだり、萎んだりすることを繰り返し、それに伴い、指は持ち上げられて曲がった状態と、下がって伸ばされた状態とを繰り返すという屈伸動作を行うことになる。このような指の屈指動作が、指の曲げ伸ばしの機能を回復するためのリハビリ動作になる。
【0066】
上記のような動作を指ごとに行うことで、各指に対してリハビリの治療を行える。また、各アクチュエータ1は個別に駆動することが可能なので、リハビリ動作の形態として、親指から小指にかけて、順番にアクチュエータ1を作動させてリハビリの治療を行うこと、またはランダムの順序で各指のリハビリの治療を行うことなどが可能となり、様々なパターンの刺激を、リハビリを行う人の症状等に合わせて与えることができる。
【0067】
なお、上述した説明では、指の第二関節あたりの部分をアクチュエータ1で持ち上げるようにしていたが、手の配置箇所を指の長手方向に沿って前後させることにより、アクチュエータ1の当たる箇所を変えて、指を曲げる以外のリハビリ作業を行うことも可能である。たとえば、指先の腹部分にアクチュエータ1が当たるように手を載置した場合、アクチュエータ1を膨らませると、指が伸びた状態で指先が持ち上げられるような動作となり、このような動作では、指の付け根部分を動かして、付け根部分の関節機能の回復動作に貢献できると共に、指の腱をストレッチするような運動にもつながり、上述した指の屈伸的なリハビリと異なる種類のリハビリ動作を行える。
【0068】
図10(a)は、変形例のリハビリ機器110を示しており、この変形例のリハビリ機器110は、上述したリハビリ機器100(図8(a)参照)の指を載置する箇所のみを抽出したような構成になっている。すなわち、リハビリ機器110は、矩形板状の載置台111の上面111aに、人差し指用凹部112a、中指用凹部112b、薬指用凹部112c、小指用凹部112dを夫々、並行的に設けている。また各凹部112a〜112dには、一方側の端部に根本側ベルト113a〜113dを取り付けていると共に、他方側の端部には先端側ベルト114a〜114dを取り付けている。なお、これらのベルト113a〜113d、114a〜114dはベルト長が調整可能になっており、リハビリを受ける人の指の太さに合わせられるようになっている。
【0069】
そして、各凹部112a〜112dには、根本側ベルト113a〜113dと、先端側ベルト114a〜114dとの間の箇所に、アクチュエータ1をそれぞれ配置している。なお、アクチュエータ1の取り付けに係る構成は、上述した図9(a)に示すものと同じである。
【0070】
このような変形例のリハビリ機器110を使用するには、リハビリを受ける人の指を根本側から各凹部112a〜112dに差し込んで載置し、各ベルト113a〜113d、114a〜114dのベルト長を調整して、指を固定する。それからホース6より流体を供給して各アクチュエータ1を、上述した図8(a)等に示すリハビリ機器100と同様に駆動することで、リハビリを受ける人は、指に対して様々なパターンのリハビリ動作を行うことができる。この変形例のリハビリ機器110は、図8(a)等に示すリハビリ機器100に比べて、構造が簡易であると共に、アクチュエータ1に対する指の配置箇所の自由度が高いという利点があり、それにより、様々なパターンのリハビリ動作を行いやすくしている。なお、変形例のリハビリ機器110では、手のひらを載置する部分を省略していることから、手のひらを置いてリハビリ動作を行う場合は、机などの台の上にリハビリ機器110を設置し、机などの台の面上を手のひらの載置箇所として利用することになる。
【0071】
また、図10(b)は、さらなる別の変形例のリハビリ機器120を示しており、この変形例のリハビリ機器120は、図10(a)に示すリハビリ機器110の指を載置する箇所を一つだけ抽出したような構成になっている。すなわち、リハビリ機器120は、矩形板状の載置台121の上面121aに、指用凹部122を設け、その指用凹部122の一方側の端部に根本側ベルト123を取り付けると共に、他方側の端部に先端側ベルト124を取り付けている。そして、指用凹部122には、根本側ベルト123と、先端側ベルト124との間の箇所に、アクチュエータ1を、図10(a)に示すリハビリ機器110と同様に取り付けている。
【0072】
このリハビリ機器120は、一本の指のみを載置する構成になっているので、構成自体を、上述したリハビリ機器100、110に比べて一段と簡易にでき、親指から小指までのいずれの指にも適用できると共に、アクチュエータ1に対する指の配置箇所の自由度が更に高く、様々なパターンのリハビリ動作を行いやすいという利点がある。
【0073】
図11(a)〜(c)は、本発明の別の実施形態(第2実施形態)のアクチュエータ11を示している。この第2実施形態のアクチュエータ11は、内膜部材13として、伸縮性のある素材を用いたことが特徴になっている。具体的には、厚みが約0.3mmの合成ゴム製の円形シートを内膜部材13として用いており、それにより、第2実施形態に係る内膜部材13は、弾性変形して伸縮可能になっている(伸縮性を具備)。
【0074】
このような第2実施形態に係る内膜部材13の寸法は、内膜部材13の膨らむ範囲の最大伸長時の面積が、外膜部材14の被覆範囲の表面積より大きくなるようにしている。具体的には、丁度、第1実施形態の図3(a)、(b)で説明した場合と同様に、内膜部材13をベース部材12に単体で取り付けた状態で、空気を供給して伸長させて、内膜部材13が破裂しない範囲で最大に伸張して膨らんだ状態(第二状態。図3(b)に示すような状態を参照)における内膜部材の最大に膨らむことが可能な範囲の表面積(ベース部材12の表面より上方での外面13aの表面積)が第1実施形態の場合と同様に「A1」となるようにしており、その表面積の「A1」が外膜部材14の被覆範囲の表面積の「A2」より大きくなるようにしている(A2<A1)。
【0075】
また、第2実施形態においても、流体として圧縮性流体の気体(空気)を用いて、1気圧より大きい供給圧で気体(空気)を供給するような仕様を採用する場合などでは、1気圧より圧縮された気体(空気)が内膜部材13へ供給されることから、「A2」を「A1」と同等の面積にすることも可能である(A2=A1)。そして、流体として液体を用いるときは、液体が非圧縮性であることより、確実に内膜部材3の破裂を防ぐために、上記の「A2<A1」の関係にする。
【0076】
さらに、第2実施形態の外膜部材14の内部最大容積(内面14bでの容積)を「V2」、内膜部材13の膨らむ範囲の最大体積を「V1」とした場合、「V2」と「V1」は、第1実施形態と同様の関係が成立し、基本的には「V2<V1」の関係が好ましく、流体として空気を用いれば、「V2=V1」の関係も可能であるが、流体として液体を用いる場合は、「V2<V1」の関係にすることが重要である。
【0077】
なお、第2実施形態に係るアクチュエータ11において、上述の内膜部材13以外の事項(ベース部材12、外膜部材14、糸15、適用される流体の種類等)については、第1実施形態と同様であると共に、アクチュエータ11へのホース16の取付も第1実施形態と同様である。
【0078】
上述した内膜部材13は、図11(a)に示すように伸長した状態で、ベース部材12の表面12aに内面13bが接するように取り付けられている。そのため、ベース部材12の貫通孔12eは内膜部材13で閉鎖され、内膜部材13がベース部材12に密着して、流体の非供給状態でのアクチュエータ11の外形寸法のコンパクト化を図れる。また、図11(b)以降で示すように、第2実施形態では、ベース部材12の表面12aに接する部分が、内膜部材13の膨らむ範囲に相当する。なお、内膜部材13及び外膜部材14のベース部材12への取付方自体は第1実施形態と同様であり、糸15の巻回によりベース部材12の側面に形成された凹部12dに締付固定されている。
【0079】
図11(a)に示す流体(たとえば、空気)の非供給状態から、ホース16を介して流体の供給が始まると、図11(b)、(c)に示すように、供給される空気の量に比例的に内膜部材13が伸長して膨らむようになる。それに伴い、内膜部材13の外面13aが、撓んでいた外膜部材14の内面14bに触れて、外膜部材14を押し上げ始める。
【0080】
図12(a)、(b)は、図11(c)の続きを示している。詳しくは、図12(a)は図11(c)に示す状態から、更に空気が供給されて内膜部材13が伸長して膨らみ、外膜部材14を押し広げている状態を示している。
【0081】
そして、図12(b)は、アクチュエータとして最大限に作動した状態を示しており、この状態では、外膜部材14は内膜部材13の膨らみにより、最も押し広げられたて半球状に変形した状態(最も引っ張られた状態)となって、内膜部材13へ締付力を発揮している。そのため、外膜部材14に被覆された内膜部材13は、更に伸長できる余長代を残して膨らんだ状態(第一状態に相当)になっている。この状態において、内膜部材13の膨らむ範囲(ベース部材12の表面12aより上方の範囲)を被覆する外膜部材14の被覆範囲の表面積(ベース部材12の表面12aより上方の内面14bの表面積)は、第1実施形態と同様に「A2」になっており、外膜部材14に被覆されて締め付けられることで、内膜部材13の表面積は、単体では可能な「A1」へ到達していない。
【0082】
よって、第2実施形態に係るアクチュエータ11が最大限に作動した場合でも、伸縮性の内膜部材13が最大限の第二状態(表面積が「A1」の状態)にまで伸長して破裂するおそれは生じない(第一状態<第二状態)。ここで、第2実施形態では、伸縮性の内膜部材13を用いることから、単体で内膜部材13を単体で膨らませたときに対するアクチュエータとして最大限に作動した場合(図12(b)参照)における内膜部材13の膨らみ具合を示すパーセント範囲の下限は、第1実施形態より下がっている。具体的には、流体として圧縮性の気体(空気)を用いる場合、図12(b)に示す内膜部材13が更に伸長して膨らむことが可能な状態(第一状態)は、内膜部材13が単体で最大限に膨らんだ状態(100%の状態、第二状態に相当)の30〜100%の範囲になるように、外膜部材14の被覆範囲の表面積の「A2」および締付力等を設定できる。ただし、内膜部材13が安定して長期にわたり伸縮性を維持するためには、最大に近い状態まで伸びることを回避できるように(伸びきった元に戻りにくくなるのを回避できるように)、第一状態を、内膜部材13が単体で最大限に膨らんだ状態(100%)の約30〜55%程度に設定することが好適である。このことは、流体として非圧縮性の液体を用いる場合などでも同様である。
【0083】
また、第二実施形態においても、外膜部材14が、図12(b)に示すように最も半球状に変形した場合の内部最大容積(内面14bでの容積)は「V2」になっており、この内部最大容積の「V2」も、内膜部材13の膨らむ範囲の最大体積の「V1」よりも小さくなるようにしている(V2<V1)。ここでも、流体として圧縮性流体の気体(空気)を用いて、1気圧より大きい供給圧で気体(空気)を供給するような仕様を採用する場合などでは、第一実施形態と同様に、「V2」を「V1」と同等にすることも可能であるが(V2=V1)、流体として液体を用いる場合は、上記の「V2<V1」の関係にして、内膜部材13の破裂を防ぐことが重要となる。
【0084】
図13は、上述した第2実施形態に係るアクチュエータ11における流体(空気)の供給量(供給圧における体積の量)に対する内膜部材13の容積(膨らみ具合)の関係を示すグラフ(内膜部材13が第一状態にまで膨らむ前の範囲におけるグラフ)である。内膜部材13は、図11(b)に示すように、空気の非供給状態ではベース部材12の表面12a全体に接しているため、内部容積はゼロであることから、空気の供給開始に伴って伸長して膨らみ始めるので、第2実施形態のアクチュエータ11は空気の供給量に対して線形的な作動特性を得ることができ、空気(流体)の供給に対してレスポンスのよく作動できる。
【0085】
また、図12(b)に示す状態から、供給した空気を外部へ排出すれば、膨らむ場合とは逆にアクチュエータ11は萎んでいくが、このときも内膜部材13に収縮性(弾性)があることから、この場合は、内膜部材13の収縮力により排出される空気の量に比例してレスポンス良くアクチュエータ11は萎むことができる。
【0086】
上述したアクチュエータ11では、図11(a)に示すように、空気の非供給状態でも、内膜部材13が伸長した状態になっており、内膜部材13の伸長に対する負荷がかかる時間が長いので、これを避けるためには、第1実施形態と同様に、空気の非供給状態では、内膜部材13を図11(a)のように取り付けるのではなく、内膜部材13が伸長しない状態でベース部材12に取り付ける形態にすることも可能である(第1実施形態の図3(a)、図5(a)の内膜部材3の取付方式と同様に、第2実施形態の伸縮性のある内膜部材13を取り付けることも可能)。なお、第二実施形態のアクチュエータ11も、図6〜図10(b)に示すような例に適用することは勿論可能である。
【0087】
また、図14(a)〜(c)は、変形例の外膜部材24、34、44を示している。上述した第1実施形態および第2実施形態に係る外膜部材4、14は、全体を均質に編成していたが、これら変形例の外膜部材24、34、44は、部分的に編成の仕方を変えたものになっており、第1実施形態のアクチュエータ1または第2実施形態のアクチュエータ11のいずれにも適用可能である。
【0088】
図14(a)に示す外膜部材24は、円形の中央付近に、網状に編み上げた網状部分24aを形成すると共に、その他の周囲部分を細かい目で強靱に編成したものになっている。このような外膜部材24では、中央の網状部分24aで通気性が確保されるので、内膜部材3、13が膨らむ際、頂部付近から内膜部材3、13と外膜部材24との間に位置する空気が抜け出るので、内膜部材3、13の膨らむ方向に沿って、内・外膜部材間の空気を外方へ排出でき、内膜部材3、13がスムーズに膨らむことに対して貢献できる。
【0089】
図14(b)に示す外膜部材34は、円形の中央付近から径方向(法線方向)に沿った計4箇所に、網状に編み上げた網状部分34a〜34dを形成すると共に、その他の部分を細かい目で強靱に編成したものになっている。また、各網状部分34a〜34dの外周側の端辺部34e〜34hは、外膜部材34をベース部材2、12へ取り付ける際の位置の目安になるようにしている。具体的には、これら端辺部34e〜34hがベース部材2、12の表面2a、12aの周縁2h(図2参照)、12h(図12(b)参照)と一致するように、外膜部材34を取り付ければ、外膜部材34の被覆範囲の表面積が上述した「A2」になる。この変形例の外膜部材34は、内膜部材3、13が膨らむ際、周囲の四箇所より内・外膜部材間の空気を外方へ排出できると共に、ベース部材2、12への取付の位置決めの容易化を達成できる。
【0090】
図14(c)に示す外膜部材44は、円形の周方向に沿った計4箇所に、網状に編み上げた網状部分44a〜44dを形成すると共に、その他の部分を細かい目で強靱に編成したものになっている。また、各網状部分44a〜44dの外周側の端辺部44e〜44hは、外膜部材44をベース部材2、12へ取り付ける際の位置の目安になるようにしており、具体的には、これら端辺部44e〜44hがベース部材2、12の表面2a、12aの周縁2h、12hと一致するように、外膜部材44を取り付ければ、外膜部材44の被覆範囲の表面積が上述した「A2」になる。このような外膜部材44は、内膜部材3、13が膨らむ際、周囲の四箇所より内・外膜部材間の空気を外方へ排出できると共に、長目の端辺部44e〜44hにより、ベース部材2、12への位置決めを一段と容易に行うことができる。
【0091】
図15に示す外膜部材54は、別の変形例であり、網状部分を設けないで均質に編成したシートに、通気性を確保するために計4個の穴54a〜54dを形成したものである。外膜部材54は、目を細かく編んだ非収縮性の強靱なものであり、周囲付近の計四箇所にベース部材2、12への取付用の目印を兼ねた穴54a〜54dを設けている。このような外膜部材54では、穴54a〜54dより内・外膜部材間の空気を排出できると共に、穴54a〜54dがベース部材2、12の表面2a、12aの周縁2h、12hと一致するように取付を行えば、所要の被覆範囲の表面積を確保でき、その上、網状部分を設けていないことから、上述した各外膜部材4、14、24、34、44より大きな締付力を発揮することができ、空気の供給圧が高い場合(約0.3MPa〜約1.0MPa程度)に好適となる。なお、穴の数は適宜増減することが可能であり、内・外膜部材間の空気排出を重要視する場合は、4個より多くの数の穴を設けることが好適であり、大きな締付力の確保を重要視する場合は、4個より少ない数の穴を設けることが好ましい。
【0092】
また、上述した各外膜部材4、14、24、34、44、54は、いずれも非伸縮性としたが、必ず非伸縮性であることが要求されるものではなく、アクチュエータ1、11が最大限に作動したときに、所要の被覆範囲の表面積および内膜部材3、13への締付力を確保できるのであれば、伸縮性のものを適用してもよい。
【0093】
たとえば、外膜部材としては伸縮性を有するが、アクチュエータ1、11の標準的な流体の供給圧(約0.11MPa〜約1.0MPa程度)の範囲内であれば伸長せず、この範囲を超える引っ張り力がかかると伸長するという特性の素材であれば、上述した各外膜部材4、14、24、34、44、54に用いることができる。また、外膜部材として伸縮性を有するが、一定の範囲で伸長した後は、アクチュエータ1、11の標準的な流体の供給圧(約0.11MPa〜約1.0MPa程度)の範囲内であれば伸長しないという特性の素材のものでも、一定の範囲で伸長した場合に、被覆範囲の表面積が「A2」になると共に、内膜部材3、13への締付力を確保できるのであれば、このような特性の素材も外膜部材として適用可能となる。このような伸縮性を有する素材は、上述した各外膜部材4、14、24、34、44、54のいずれにも適用することが可能である。
【0094】
また、編み方を工夫すること、または部分的に用いる糸を変えることなどを適宜用いれば、伸縮性と非伸縮性が部分的に混ざり合うような外膜部材を作ることも可能であり、このような外膜部材を用いると、アクチュエータの用途に応じてアクチュエータの作動形状を半球状以外の形にすることも可能になる。
【0095】
図16(a)は、伸縮性と非伸縮性が部分的に混ざり合った変形例の外膜部材64を示している。円形の外膜部材64は、中央部分64aを非伸縮性にしており、その周囲のドーナツ状部分64bを網状に編み上げて伸縮性にしており、外周部分64cを非伸縮性にしている。伸縮性を有するドーナツ状部分64bは、一定の供給圧(例えば0.2MPa)により内膜部材3、13により押し広げられて所定寸法だけ伸長するが、その後は伸長しないという特性を有し、所定寸法だけ伸長した場合での外膜部材64の被覆範囲の表面積は、上述した場合と同様の「A2」になるようにしている。なお、このドーナツ状部分64bの外周側の端辺部64dは、ベース部材2、12へ取り付ける際の位置決めの目安になっており、端辺部64dがベース部材2、12の表面2a、12aの周縁2h、12hと一致するように、外膜部材64を取り付ければ、外膜部材64の被覆範囲の表面積が「A2」となるようにしている。
【0096】
図16(b)は、上述した変形例の外膜部材64を用いたアクチュエータ61を最大限に作動させた状態を示している。この場合、外膜部材64のドーナツ状部分64bは所定寸法だけ伸長することから、ドーナツ状部分64bに応じた範囲は外方へ球面的に膨らむように変形しているが、中央部分64aは非伸縮性であるため締め付け力を発揮して、なだらかな丘状に変形しており、全体としては、図5(b)に示す半球状の形を上方から押し込んだ偏平的な形状になっている。そのため、この変形例のアクチュエータ61は、図6(b)に示すように対象物Wをリフトする機構に好適であり、中央部分64aに相当する上部が、図6(b)に示すアクチュエータ1に比べて、偏平的な形状であることから、リフト対象の対象物Wを安定して配置することができ、より確実に対象物Wをリフトすることができる。
【0097】
なお、伸縮性と非伸縮性が部分的に混ざり合うような外膜部材は、伸縮性のシートに、非伸縮性のシートを部分的に貼り合わせる又は縫い合わせることで作ることも可能である。また、図16(a)に示す外膜部材64の非伸縮性の部分の強化を図りたい場合には、非伸縮性のシートを非伸縮性の部分(例えば中央部分64a)に貼り合わせる又は縫い合わせるようにしてもよい。このようにすれば、非伸縮性の部分の締付力を更に向上できると共に、対象物Wを持ち上げる際に、対象物Wと触れる箇所の耐摩耗性も向上でき、長期の安定した使用に好適である。
【0098】
さらに、アクチュエータの寸法および外膜部材が伸縮性を有する場合などは、内・外膜部材間に存在する空気の影響は小さくなることもあるので、上述した各外膜部材は、通気性を有しない素材のものを適用してもよい。このような通気性を有さない外膜部材を用いる場合でも、内膜部材との間に、部分的にスペーサなどを介在させて外膜部材を取り付ければ、内膜部材と外膜部材との間に隙間が生じ、この隙間から内・外膜部材間の空気を排出することも可能となる。
【0099】
また、上述した各内膜部材、外膜部材は円形に限定されるものでなく、アクチュエータを構成できる形であれば、特に形状は限定されない。同様に、ベース部材2、12も円板状のものに限定されるものではなく、三角形状、四角形状などの多角形の板状のもの、または、楕円、ひょうたん形状等を適用することが可能である。そして、このようにベース部材2、12の形状を変更すれば、アクチュエータ1、11の作動状態の形状も変わるようになり、例えば、ベース部材2、12が三角形状であれば、アクチュエータ1、11が最大に作動した形状も三角柱状になり、ベース部材2、12が四角形状であれば、アクチュエータ1、11が最大に作動した形状も四角柱状になるので、アクチュエータ1、11の用途に合わせて、ベース部材2、12の形状を適宜選択することが重要となる。
【0100】
さらに、アクチュエータへ流体を供給するためにベース部材2、12に形成する貫通孔2e、12eの位置は、ベース部材2、12の中央箇所に限定されるものではなく、ベース部材2、12の形状に合わせて適宜変更することも可能である。さらにまた、流体の供給・排出のスピードアップを図るには、貫通孔2e、12eを複数形成すると共に、それぞれにホース6、16を取り付けて、複数の貫通孔2e、12eから同時に流体の供給・排出を行えるようにしてもよい。そして、上記のように複数の貫通孔2e、12eを設けた場合では、いずれかを供給専用、残りを排出専用にして、流体の供給・排出に係る経路を整理して、スムーズな流体の給排を行えるようにしてもよい。
【0101】
また、内膜部材および外膜部材のベース部材への取付方は、糸5、15によるものに限定されず、他の取付方を適用することも当然可能である。
図17(a)、(b)は、糸5、15の替わりにリング状のバンド部材85で、内膜部材73および外膜部材74をベース部材72へ取り付ける例を示している。この場合、ベース部材72は、側面72cに、図2等に示す凹部2dを形成しておらず、側面72cは平らな周面になっている。
【0102】
バンド部材85は、いわゆるホースバンド的な構造になっており、巻回する帯状部分86、径調整部分87、およびネジ88を有している。帯状部分86は、可撓性のある帯状の部材であり、後端に筒状の径調整部分87を設けると共に、先端部86aを周回させて径調整部分87に設けたスリットを通過させることでリング状になっている。また、帯状部分86は内周面86bに二段の凸部86c、86dを全周に突設しており、これら凸部86c、86dの頂部は外膜部材74を傷つけない曲率の曲面になっている(図17(b)参照)。さらに、帯状部分86は、外周面86eに雌ネジ部86fを形成しており、この雌ネジ部86fが、径調整部分87の内部にねじ込まれたネジ88と螺合し、ネジ88を締め付ける方向に回転させると、帯状部分86の径寸法が縮径し、ネジ88を緩める方向に回転させると、帯状部分86の径寸法が拡径する。
【0103】
図17(b)に示すように、内膜部材73および外膜部材74をベース部材72に対して、上述したように位置決めした状態で、拡径した状態のバンド部材85をベース部材72の側面72cに対向する位置で外膜部材74を外嵌し、その状態でネジ88を締め付けると、帯状部分86が縮径して、凸部86c、86dにより、内膜部材73および外膜部材74は側面72cへ押し付けられ、内膜部材73および外膜部材74はベース部材72に取り付けられる。この状態では、二段の凸部86c、86dによりシールポイントが形成されるので、内膜部材73とベース部材72の表面72aとで閉鎖空間が形成され、ホース76を介して貫通孔72eより供給される流体により内膜部材73は膨らむことができる。以上のように図17(a)、(b)に示すバンド部材85を用いると、ネジ88の締め付けで容易に内膜部材73および外膜部材74を取り付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明に係るアクチュエータは、破裂等の不具合発生を確実に防止した上で、対象物の持ち上げ(リフト)、押し付け、把持等の様々な用途に対して好適に利用可能であると共に、リハビリ機器にも適用できる。
【符号の説明】
【0105】
1、11、61 アクチュエータ
2、12、72 ベース部材
3、13、73 内膜部材
4、14、24、34、44、54、64、74 外膜部材
5、15 糸
6、16、76 ホース
100、110、120 リハビリ機器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に貫通する貫通孔を形成した板状のベース部材と、
前記貫通孔の一方の開口を覆うように前記ベース部材に取り付けてある内膜部材と、
前記内膜部材を被覆するように前記ベース部材に取り付けてある外膜部材と
を備え、
前記内膜部材は、前記貫通孔を通じた流体の供給により膨らむようにしてあり、
前記外膜部材は、膨らんだ前記内膜部材に伴って変形することが可能な柔軟性を有すると共に、第一状態まで膨らんだ前記内膜部材が、前記第一状態を超過して膨らむようになることを抑える締付力を有することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記内膜部材は、非伸縮性であると共に、前記外膜部材に被覆されていない単体の状態では前記第一状態を超えて膨らむことが可能な面積寸法を有しており、
前記外膜部材が前記内膜部材の膨らむ範囲を被覆する被覆範囲面積は、前記内膜部材が単体で最大に膨らむことが可能な範囲の面積以下にしてある請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記内膜部材は、伸縮性を有すると共に、前記外膜部材に被覆されていない単体の状態では前記第一状態を超えて伸長可能にしてあり、
前記外膜部材が前記内膜部材の膨らむ範囲を被覆する被覆範囲面積は、前記内膜部材が単体で最大に伸張して膨らむことが可能な範囲の面積以下にしてある請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記内膜部材は、流体の非供給状態で前記ベース部材の前記貫通孔が開口する面に伸長した状態で接するように、前記ベース部材に取り付けてある請求項3に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記外膜部材は、非伸縮性である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記外膜部材は、通気性を有する請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
少なくとも人の指を載置することが可能な載置台と、
前記載置台の人の指が載置される箇所に配置してある請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のアクチュエータと
を備え、
前記アクチュエータは、前記ベース部材を介して前記載置台に取り付けてあることを特徴とするリハビリ機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−72796(P2012−72796A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216525(P2010−216525)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(502319752)スキューズ株式会社 (7)
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【出願人】(509349141)京都府公立大学法人 (19)
【Fターム(参考)】