説明

アクチュエータ及びそれを備えたレンズユニット及びカメラ

【課題】 簡単な機構で、小型化することができるアクチュエータ、及びそれを備えたレンズユニット及びカメラを提供する。
【解決手段】 本発明のアクチュエータ(1)は、固定側部材(2)と、可動側部材(4)と、この可動側部材を、固定側部材に対して移動できるように支持する可動側部材支持手段と、固定側部材又は可動側部材のうちの何れか一方に取り付けられた駆動用コイル(6)と、固定側部材又は可動側部材のうちの他方に取り付けられ、駆動用コイルに電流が流れると駆動力を受けるように配置された駆動用磁石(8)と、駆動用コイルの巻線の内側に配置され、駆動用磁石の位置を検出する磁気センサ(12)と、可動側部材の移動すべき位置を指令する信号及び磁気センサによって検出された位置信号に基づいて、駆動用コイルに流す駆動電流を制御する制御手段(14)と、を有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ及びそれを備えたレンズユニット及びカメラに係わる。
【背景技術】
【0002】
特開平3−186823号公報(特許文献1)には、像ブレを防止する防振装置が記載されている。この防振装置では、レンズ鏡筒の振動を検出し、検出された振動に基づいて、像ブレを起こさないようにフィルムに平行な面内で補正用レンズを駆動している。補正用レンズを任意の方向に並進運動させるために、この防振装置では、補正レンズを固定した固定枠と、この固定枠を光軸に直交する第1の方向に移動可能に支持する第1の保持枠と、この第1の保持枠を、光軸及び第1の方向と直交する第2の方向に移動可能に保持し、レンズ鏡筒に固定された第2の保持枠と、を利用している。これら直交する第1及び第2の方向の運動を合成することにより、補正用レンズは、レンズ鏡筒に対してフィルムに平行な面内で任意の方向に並進運動可能に支持される。さらに、この防振装置は、上記の第1の方向、第2の方向に補正用レンズを駆動するための専用のリニアモータを夫々備え、これらのモータによる駆動量を合成することによって、補正用レンズを任意の方向に移動させている。また、この防振装置では、補正レンズを固定した固定枠の両側に投光器と受光器が配置されており、これらにより固定枠の位置を検出して、補正レンズの位置制御を行っている。
【0003】
また、特開平10−26781号公報(特許文献2)には、像振れを防止する振れ補正装置が記載されている。この振れ補正装置では、補正レンズを支持する支持枠に取り付けられた磁石を、固定された地板に設けられたコイルで駆動して、像振れを補正している。補正レンズを支持する支持枠の移動は、磁石を挟んでコイルの反対側に配置されたホール素子によって検出している。
【0004】
【特許文献1】特開平3−186823号公報
【特許文献2】特開平10−26781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開平3−186823号公報に記載された防振装置のアクチュエータのように、可動部分の位置の移動を、投光器を使用して検出するには、投光器の反対側にその光を受ける受光器を配置し、それらの間で移動する可動部分にはスリットを設ける必要がある。このため、アクチュエータ全体の構成が複雑になって大型化し、コストも高くなるという問題がある。
【0006】
一方、特開平10−26781号公報に記載された振れ補正装置のアクチュエータのように、可動部分の位置の移動を、ホール素子等の磁気センサを使用して検出する場合には、駆動に使用する磁石の磁気を、位置検出用に兼用することができるので、ホール素子のみで位置検出を行うことができる。しかしながら、磁気センサを使用する場合には、磁気センサの取付け位置を、駆動用の磁石の磁気を検出することができ、駆動用のコイルが発生する磁気の影響を受けない位置に設定する必要がある。このため、特開平10−26781号公報の振れ補正装置のアクチュエータでは、駆動用の磁石の両側にホール素子と駆動用のコイルを夫々配置した構成となっている。このため、アクチュエータ全体の構成が複雑になって大型化してしまうという問題がある。
【0007】
或いは、磁気センサと駆動用のコイルを同一平面上に配置する構成も可能ではあるが、この場合には、磁気センサが、駆動用のコイルが発生する磁気の影響を受けないように、それらを十分に離間させる必要がある。しかしながら、磁気センサと駆動用のコイルを離間させると、駆動用のコイルが発生する駆動力の作用点と、磁気センサによる位置の測定点も離間してしまうため、アクチュエータの位置決め精度が悪化するという問題がある。
【0008】
従って、本発明は、簡単な機構で、小型化することができるアクチュエータ、及びそれを備えたレンズユニット及びカメラを提供することを目的としている。
また、本発明は、簡単な機構で、位置決め精度が高いアクチュエータ、及びそれを備えたレンズユニット及びカメラを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明のアクチュエータは、固定側部材と、可動側部材と、この可動側部材を、固定側部材に対して移動できるように支持する可動側部材支持手段と、固定側部材又は可動側部材のうちの何れか一方に取り付けられた駆動用コイルと、固定側部材又は可動側部材のうちの他方に取り付けられ、駆動用コイルに電流が流れると駆動力を受けるように配置された駆動用磁石と、駆動用コイルの巻線の内側に配置され、駆動用磁石の位置を検出する磁気センサと、可動側部材の移動すべき位置を指令する信号及び磁気センサによって検出された位置信号に基づいて、駆動用コイルに流す駆動電流を制御する制御手段と、を有することを特徴としている。
【0010】
このように構成された本発明においては、可動側部材の移動すべき位置を指令する信号が制御手段に入力される。制御手段は、位置を指令する信号及び駆動用コイルの内側に配置された磁気センサによって検出された位置情報に基づいて、駆動用コイルに流す駆動電流を制御する。駆動用コイルに電流が流れて駆動用コイルが磁界を発生すると、駆動用コイルと駆動用磁石との間で力を及ぼしあう。この力によって可動側部材は、固定側部材に対して移動される。可動側部材が移動した位置は、磁気センサによって検出され、制御手段に入力される。
【0011】
このように構成された本発明によれば、磁気センサが駆動用コイルの巻線の内側に配置されているので、簡単な機構で、アクチュエータを小型に構成することができる。また、駆動用コイルによってもたらされる駆動力の作用点と、磁気センサによって位置を検出する点が近接するので、高い位置精度で可動側部材を移動させることができる。
【0012】
また、本発明のアクチュエータは、固定側部材と、可動側部材と、この可動側部材を、固定側部材に対して平行な平面上の任意の位置に移動できるように支持する可動側部材支持手段と、固定側部材又は可動側部材のうちの何れか一方に取り付けられた少なくとも3つの駆動用コイルと、固定側部材又は可動側部材のうちの他方の、各駆動用コイルに夫々対応する位置に取り付けられた駆動用磁石と、各駆動用コイルの巻線の内側に夫々配置され、各駆動用コイルに対する各駆動用磁石の位置を夫々検出する磁気センサと、可動側部材の移動すべき位置を指令する信号に基づいて各駆動用コイルに対するコイル位置指令信号を生成し、このコイル位置指令信号及び各磁気センサによって検出された位置信号に基づいて、各駆動用コイルに流す駆動電流を制御する制御手段と、を有することを特徴としている。
【0013】
このように構成された本発明においては、可動側部材の移動すべき位置を指令する信号が制御手段に入力され、制御手段は、この位置指令信号に基づいて各駆動用コイルに対するコイル位置指令信号を生成する。さらに、制御手段は、コイル位置指令信号及びコイルの内側に配置された磁気センサによって検出された位置情報に基づいて、各駆動用コイルに流す駆動電流を制御する。各駆動用コイルに電流が流れて各駆動用コイルが磁界を発生すると、各駆動用コイルとそれに対応した駆動用磁石との間で力を及ぼしあう。この力によって可動側部材は、固定側部材に対して平行な平面内で移動される。可動側部材が移動した位置は、磁気センサによって検出され、制御手段に入力される。
【0014】
このように構成された本発明によれば、磁気センサが駆動用コイルの巻線の内側に配置されているので、簡単な機構で、アクチュエータを小型に構成することができる。また、駆動用コイルによってもたらされる駆動力の作用点と、磁気センサによって位置を検出する点が近接するので、高い位置精度で可動側部材を移動させることができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、さらに、駆動用コイルによって生成される磁界が磁気センサに与える影響を除去するために、磁気センサによって検出された位置信号を補正する補正手段を有する。
このように構成された本発明によれば、駆動用コイルによって生成される磁界が磁気センサに与える影響は、補正手段によって補正されるので、磁気センサを駆動用コイルの巻線の内側に配置しても、磁気センサによって精度良く位置を検出することができる。
【0016】
また、本発明において、好ましくは、補正手段は、駆動用コイルに流れた電流を検出する電流検出手段を有し、この電流検出手段によって検出された電流に基づいて補正信号を生成し、磁気センサによって検出された位置信号を補正する。
さらに、本発明において、好ましくは、駆動用コイルに流される電流が、パルス幅変調又はパルス密度変調されており、補正手段は、電流検出手段が検出したパルス幅変調又はパルス密度変調された電流を平滑化して補正信号を生成する平滑化手段を有する。
このように構成された本発明によれば、高いエネルギー効率で可動側部材を駆動することができる。
【0017】
また、本発明のレンズユニットは、レンズ鏡筒と、このレンズ鏡筒の中に配置された撮像用レンズと、レンズ鏡筒に取り付けられた固定側部材と、画像安定化用レンズが取り付けられた可動側部材と、この可動側部材を、固定側部材に対して平行な平面上の任意の位置に移動できるように支持する可動側部材支持手段と、固定側部材又は可動側部材のうちの何れか一方に取り付けられた少なくとも3つの駆動用コイルと、固定側部材又は可動側部材のうちの他方の、各駆動用コイルに夫々対応する位置に取り付けられた駆動用磁石と、各駆動用コイルの巻線の内側に夫々配置され、各駆動用コイルに対する各駆動用磁石の位置を夫々検出する磁気センサと、レンズ鏡筒の振動を検出する振動検出手段と、この振動検出手段によって検出された信号に基づいて、画像安定化用レンズを移動させる位置を指令するレンズ位置指令信号を生成するレンズ位置指令信号生成手段と、このレンズ位置指令信号生成手段によって生成されたレンズ位置指令信号に基づいて各駆動用コイルに対するコイル位置指令信号を生成し、このコイル位置指令信号及び各磁気センサによって検出された位置信号に基づいて、各駆動用コイルに流す駆動電流を制御する制御手段と、を有することを特徴としている。
また、本発明のカメラは、本発明のレンズユニットを有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡単な機構で、小型なアクチュエータ、及びそれを備えたレンズユニット及びカメラを提供することができる。
また、本発明によれば、簡単な機構で、位置決め精度が高いアクチュエータ、及びそれを備えたレンズユニット及びカメラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
まず、図1及び図2を参照して、本発明の第1実施形態によるアクチュエータを説明する。図1(a)は、本発明の第1実施形態によるアクチュエータの側面図であり、(b)は、アクチュエータの固定板を取り除いて示した底面図である。図2は、本実施形態によるアクチュエータの制御回路の一例を示す図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の第1実施形態によるアクチュエータ1は、固定側部材である固定板2と、この固定板2上に摺動可能に支持された可動側部材である移動枠4と、を有する。さらに、アクチュエータ1は、固定板2上に取り付けられた駆動用コイル6と、移動枠4の駆動用コイル6に対応する位置に配置された駆動用磁石8と、駆動用磁石8の磁気を駆動用コイル6に差し向けるバックヨーク10と、を有する。また、移動枠4の位置を検出するために、駆動用コイル6の巻線の内側には、磁気センサであるホール素子12が取り付けられている。さらに、アクチュエータ1は、ホール素子12によって検出された位置信号及び指令信号に基づいて、駆動用コイル6に電流を流す制御手段であるコントローラ14と、を有する。
【0021】
移動枠4は、固定板2によって、図1の左右方向に摺動可能に支持され、図1の紙面に垂直な方向の移動は拘束されている。また、移動枠4は、それに取り付けられたバックヨーク10及び駆動用磁石8を、駆動用コイル6から所定の距離離れた位置に支持できる形状に形成されている。本実施形態においては、移動枠4が、可動側部材支持手段としても機能する。
図1(b)に示すように、駆動用コイル6は、概ね正方形の巻枠(図示せず)に導線を巻きつけた、概ね正方形状のコイルであり、固定板2の上に取り付けられている。駆動用コイル6の巻線に電流を流すと、概ね図1(a)の破線に示すような磁界を発生する。
【0022】
駆動用磁石8は、移動枠4の底面側に、バックヨーク10を介して取り付けられている。また、図1(a)に示すように、駆動用磁石8は、駆動用コイル6に面する側の左側がN極、右側がS極、バックヨーク10に面する側の右側がN極、左側がS極となるように磁化されている。従って、駆動用磁石8の磁気的中立軸線Cは長方形の駆動用磁石8の各長辺の中点を通るように位置する。また、駆動用磁石8の磁束は、移動枠4と駆動用磁石8との間に取り付けられたバックヨーク10によって偏向され、図1(a)の二点鎖線のような曲線を描いて分布する。なお、本明細書において、磁気的中立軸線Cとは、駆動用磁石8の両端を夫々S極、N極としたとき、その中間のS極からN極に極性が変化する点を連ねた線を言うものとする。
【0023】
図1(b)に示すように、ホール素子12は、固定板2上の、駆動用コイル6の巻線の内側に取り付けられ、駆動用磁石8と重なるように配置されている。このホール素子12は、駆動用磁石8の磁束を検出し、移動枠4の位置を測定するように構成されている。ホール素子12は、その感度中心点Sが、駆動用磁石8の磁気的中立軸線C上にあるときは、出力が0であり、移動枠4が図1(a)の左右方向に移動すると、出力信号が正弦波状に変化する。ただし、アクチュエータ1の実際の可動範囲においては、ホール素子12の出力信号は、移動枠4の移動距離にほぼ比例している。
【0024】
コントローラ14は、移動枠4を移動させるべき位置を指令する指令信号と、ホール素子12によって検出された位置信号に基づいて、駆動用コイル6に流す電流を制御し、移動枠4を指令信号によって指令された位置に移動させるように構成されている。また、コントローラ14は、駆動用コイル6によって生成された磁界の影響を、ホール素子12の検出信号から除去するための補正手段である補正回路16を内蔵している。
【0025】
次に、図2を参照して、コントローラ14の具体的な回路の一例を説明する。図2は、駆動用コイル6に流す電流を制御する回路の一例を示す。なお、図2の回路では、各オペアンプを作動させるための電源供給ライン等の付属的な回路は省略されている。まず、図2に示すように、電源電圧+Vccとアース電位GNDの間に電気抵抗R8及びR9が直列に接続される。さらに、オペアンプOP5のプラス入力端子が、電気抵抗R8とR9の間に接続される。また、オペアンプOP5のマイナス入力端子は、オペアンプOP5の出力端子に接続されている。これにより、オペアンプOP5の出力端子の電圧は、電気抵抗R7及びR8によって、電源電圧+Vccとアース電位GNDの間の基準電圧VREFに設定され、維持される。
【0026】
一方、ホール素子12の1番端子と2番端子の間には、電源電圧+Vccが印加される。また、ホール素子12の3番端子は、基準電圧VREFに接続されている。これによりホール素子12に作用する磁気が変化すると、ホール素子12の4番端子の電圧が+VccとGNDの間で変化する。
ホール素子12の4番端子は、オペアンプOP1のプラス入力端子に接続されている。また、オペアンプOP1の出力端子は、マイナス入力端子に接続されており、オペアンプOP1は、ホール素子12の出力信号のバッファアンプとして機能する。さらに、オペアンプOP1の出力端子は、電気抵抗R1を介してオペアンプOP2のマイナス入力端子に接続されている。
【0027】
また、可変抵抗VR1の両固定端子が、+Vcc及びGNDに夫々接続されている。可変抵抗VR1の可動端子は電気抵抗R3を介して、オペアンプOP2のマイナス入力端子に接続されている。可変抵抗VR1を調整することによって、オペアンプOP2の出力のオフセット電圧が調整される。また、オペアンプOP2の出力端子は、可変抵抗VR2を介して、オペアンプOP2のマイナス入力端子に接続されている。可変抵抗VR2を調節することによってオペアンプOP2のゲインを調整することができる。さらに、オペアンプOP2のプラス入力端子は、基準電圧VREFに接続されている。
【0028】
移動枠4が移動すべき位置を指令する位置指令信号はオペアンプOP4のプラス入力端子に接続されている。オペアンプOP4の出力端子は、オペアンプOP4のマイナス入力端子に接続されている。従って、オペアンプOP4は、位置指令信号のバッファアンプとして作用する。
【0029】
オペアンプOP4の出力端子は、電気抵抗R5を介して、オペアンプOP3のマイナス入力端子に接続されている。また、オペアンプOP3の出力端子は、電気抵抗R6を介して、オペアンプOP3のマイナス入力端子に接続されている。さらに、オペアンプOP3のプラス入力端子には、電気抵抗R7を介してオペアンプOP2の出力端子が接続され、さらに、電気抵抗R4を介して基準電圧VREFが接続されている。このため、磁気センサ12の出力と位置指令信号の差がオペアンプOP3の出力端子から出力される。また、電気抵抗R4乃至R7によって、オペアンプOP3のゲインが設定される。
【0030】
オペアンプOP3の出力端子は、駆動用コイル6の一端に接続され、駆動用コイル6の他端は、電流検出手段である電流検出用の電気抵抗R10を介して基準電圧VREFに接続される。本実施形態においては、電流検出用の電気抵抗R10は、0.1Ωに設定されている。従って、駆動用コイル6には、概ねオペアンプOP3の出力と基準電圧VREFの電位差に応じた電流が流れる。駆動用コイル6に電流が流れると磁界が発生し、駆動用磁石8に磁力を作用させ、駆動用磁石8を移動させる。この磁力は、駆動用磁石8が位置指令信号で指令された位置に近づく方向に作用する。駆動用磁石8が移動されると、ホール素子12の4番端子から出力される電圧が変化する。駆動用磁石8がコイル位置指令信号で指令された位置まで移動すると、オペアンプOP3のプラス入力端子及びマイナス入力端子に入力される電圧が等しくなり、駆動用コイル6には電流が流れなくなる。
【0031】
ただし、駆動用コイル6に流れると、図1(a)に示すように、駆動用コイル6の周囲に磁界が発生する。この磁界は、駆動用コイル6の巻線の内側に配置されたホール素子12の出力にも影響を与える。そこで、駆動用コイル6に流れる電流を検出し、この電流によって発生する磁界の影響を、ホール素子12の出力信号から除去する。具体的には、電流検出用の電気抵抗R10の、駆動用コイル6に接続されている側の端子を、電気抵抗R2を介してオペアンプOP2のマイナス入力端子に接続する。この電気抵抗R2と、オペアンプOP1の出力端子とオペアンプOP2のマイナス入力端子の間に接続された電気抵抗R1を適当な値に設定することにより、駆動用コイル6が発生する磁界の影響を除去することができる。
【0032】
例えば、駆動用磁石8を駆動用コイル6から遠ざけ、駆動用磁石8の磁力線の影響がない状態で、駆動用コイル6に50mAの電流を流したとき、ホール素子12が基準電圧VREFに対してvih=−1.5mVの出力電圧を発生したとする。この電圧vihは、バッファアンプであるオペアンプOP1を介して、オペアンプOP1の出力端子に現れる。一方、駆動用コイル6に50mAの電流が流れると、電流検出用の電気抵抗R10の、駆動用コイル6側の端子には、基準電圧VREFに対してvi=+5mVの電圧が発生する。ここで、電気抵抗R1とR2の比を、電圧vihとviの絶対値の比と等しく設定することにより、駆動用コイル6が発生する磁界の影響によるホール素子12の出力をキャンセルすることができる。即ち、電気抵抗R1とR2をこのように設定することによって、駆動用コイル6の磁界によって発生するホール素子12の出力電圧と、電気抵抗R10の端子電圧は等しくされ(符号は逆)、オペアンプOP2のマイナス入力端子において加算されてゼロになる。なお、本実施形態においては、電気抵抗R1を1kΩ、R2を3.33kΩに設定している。
【0033】
さらに、実使用状態においては、駆動用磁石8の磁気及び駆動用コイル6の磁気を重畳させた磁気に対応した出力電圧がホール素子12から出力される。従って、ホール素子12が、駆動用磁石8及び駆動用コイル6の磁気を受けている場合には、駆動用コイル6が発生する磁気の成分だけがキャンセルされ、オペアンプOP2の出力端子には、駆動用磁石8の位置に比例した信号が出力される。本発明の第1実施形態において、電気抵抗R1、R2、R10及びオペアンプOP2は、補正回路16として機能する。また、本実施形態において、電気抵抗R10から、電気抵抗R2を介してオペアンプOP2に入力される信号は、ホール素子12から出力される信号を補正する補正信号として機能する。
【0034】
また、電流検出用の電気抵抗R10の値0.1Ωは、電気抵抗R1及びR2の値である1kΩ及び3.33kΩよりも十分小さいので無視することができ、電気抵抗R2を接続することによる電気抵抗R10の端子電圧の変動は、無視することができる。さらに、電気抵抗R1を介してオペアンプOP2のマイナス端子に入力される電圧は、実際には、オペアンプOP1のオフセット電圧による影響を受ける場合がある。この影響を除去するためには、オペアンプOP1を除去し、ホール素子12を電気抵抗R1に直結すればよい。ただし、この場合には、電気抵抗R1、R2の定数を、ホール素子12の内部抵抗を考慮して決定する必要がある。
【0035】
次に、本発明の第1実施形態によるアクチュエータ1の作用を説明する。まず、移動枠4が、駆動用磁石8の磁気的中立軸線Cとホール素子12の感度中心点Sが重なる初期位置にあり、コントローラ14に位置指令信号が入力されていない場合には、オペアンプOP3のプラス及びマイナス入力端子の電位は等しく、駆動用コイル6には電流は流れない。次に、コントローラ14に位置指令信号を入力すると、オペアンプOP3のマイナス入力端子の電位が変化し、オペアンプOP3の出力端子に電圧が生じ、駆動用コイル6に電流が流れる。駆動用コイル6に電流が流れると、駆動用コイル6が磁界を発生し、移動枠4の駆動用磁石8に駆動力を及ぼす。駆動用磁石8に作用する駆動力は、移動枠4を、位置指令信号によって指令された位置に近づくように移動させる。
【0036】
移動枠4が初期位置から移動されると、駆動用磁石8の磁気的中立軸線Cとホール素子12の感度中心点Sが重ならなくなるので、ホール素子12に出力信号が生じる。また、ホール素子12には、駆動用コイル6が発生した磁界も作用するので、ホール素子12の出力信号には、駆動用コイル6の磁界の成分も含まれることになる。一方、駆動用コイル6に電流が流れると、電流検出用の電気抵抗R10の駆動用コイル6側の端子に、電流信号としての電圧が発生する。
【0037】
ホール素子12の出力信号及び電流信号は、夫々電気抵抗R1、R2を介してオペアンプOP2のマイナス入力端子で加算され、ホール素子12の出力信号に含まれる駆動用コイル6の磁界の影響による成分がキャンセルされる。ホール素子12の出力信号から、駆動用コイル6の磁界の影響による成分を除去した信号は、オペアンプOP2によって増幅され、オペアンプOP3のプラス入力端子に入力される。
【0038】
移動枠4が、位置指令信号によって指令された位置に近づくように移動されると、ホール素子12の出力信号が変化するので、オペアンプOP3のプラス及びマイナス入力端子の電位差は減少する。さらに、移動枠4が位置指令信号によって指令された位置に到達すると、オペアンプOP3のプラス及びマイナス入力端子の電位差はゼロになり、駆動用コイル6に流れる電流もゼロになる。位置指令信号が変化した場合、又は、外乱により移動枠4が位置指令信号の指令位置からずれた場合には、再び駆動用コイル6に電流が流れ、移動枠4を位置指令信号の指令位置に移動させる。以上の作用を繰り返すことによって、移動枠4は、位置指令信号に追従して移動される。
【0039】
本発明の第1実施形態のアクチュエータによれば、駆動用磁石の移動を、駆動用コイルの巻線の内側に配置したホール素子によって検出しているので、簡単な機構で、小型のアクチュエータを構成することができる。即ち、本実施形態のアクチュエータによれば、従来デッドスペースとなっていた駆動用コイルの巻線の内側にホール素子を配置することができるので、スペースを効率的に利用し、アクチュエータを小型に構成することが可能になる。
【0040】
また、本発明の第1実施形態のアクチュエータによれば、駆動用磁石の移動を、駆動用コイルの巻線の内側に配置したホール素子によって検出しているので、ホール素子で位置を測定する点と、駆動用コイルによる駆動力の中心点が一致して、移動枠の位置を精度良く検出することができる。
さらに、本発明の第1実施形態のアクチュエータによれば、駆動用コイルが生成する磁界のホール素子に対する影響を補正回路によって除去しているので、ホール素子を駆動用コイルの内側に配置しても精度良く位置検出を行うことができる。
また、上述した実施形態では、移動枠は、固定板上で摺動するように構成されていたが、移動枠をリニアベアリングや、コロ等任意の可動側部材支持手段で支持することができる。
【0041】
さらに、上述した実施形態では、駆動用コイルに流す電流を、駆動用コイルに印加する電圧をアナログ的に変化させることによって制御していたが、変形例として、駆動用コイルに印加する電圧をパルス幅変調(PWM)又はパルス密度変調(PDM)した高周波パルスとして加えても良い。この場合には、電流検出用の電気抵抗R10の駆動用コイル側の端子電圧もパルス状に変化するので、図2に想像線で示す平滑化手段であるコンデンサC1及び/又はコイルI1を接続して電流信号を生成する。即ち、補正回路に、ローパスフィルターとして作用するコンデンサC1及び/又はコイルI1を付加することにより、パルス状の波形は復調され、駆動用コイルにアナログ的に電圧を印加した場合と同様の電流信号が得られる。この変形例によれば、移動枠を駆動するエネルギー効率を改善することができる。
【0042】
次に、図3乃至図12を参照して、本発明の第2実施形態によるカメラを説明する。本実施形態によるカメラは、本発明の第1実施形態のアクチュエータを応用した構造のアクチュエータを、カメラの画像安定化用レンズの駆動機構として利用したものである。
【0043】
図3は本発明の第2実施形態によるカメラの断面図である。図3に示すように、本発明の第2実施形態のカメラ101は、レンズユニット102と、カメラ本体104と、を有する。レンズユニット102は、レンズ鏡筒106と、このレンズ鏡筒の中に配置された複数の撮像用レンズ108と、画像安定化用レンズ116を所定の平面内で移動させるアクチュエータ110と、レンズ鏡筒106の振動を検出する振動検出手段であるジャイロ134a、134b(図1には134aのみ図示)と、を有する。本発明の実施形態のカメラ101は、ジャイロ134a、134bによって振動を検出し、検出された振動に基づいてアクチュエータ110を作動させて画像安定化用レンズ116を移動させ、カメラ本体104内のフィルム面Fに合焦される画像を安定化させている。本実施形態においては、ジャイロ134a、134bとして、圧電振動ジャイロを使用している。なお、本実施形態においては、画像安定化用レンズ116は、1枚のレンズによって構成されているが、画像を安定させるためのレンズは、複数枚のレンズ群であっても良い。本明細書において、画像安定化用レンズとは、画像を安定させるための1枚のレンズ及びレンズ群を含むものとする。
【0044】
次に、図4乃至図6を参照して、アクチュエータ110を説明する。図4はアクチュエータ110の正面部分断面図、図5は図4のA−A線側面断面図、図6は上面部分断面図である。なお、図3は、図2におけるフィルム面F側からアクチュエータ110を見た図であり、固定板112を部分的に破断して示した図であるが、ここでは、便宜的にこれを正面図と呼ぶものとする。図4乃至図6に示すように、アクチュエータ110は、レンズ鏡筒106内に固定された固定側部材である固定板112と、この固定板112に対して移動可能に支持された可動側部材である移動枠114と、この移動枠114を支持する可動側部材支持手段である3つのスチールボール118と、を有する。さらに、アクチュエータ110は、固定板112に取り付けられた3つの駆動用コイル120a、120b、120cと、移動枠114の、駆動用コイル120a、120b、120cに夫々対応する位置に取り付けられた3つの駆動用磁石122と、各駆動用コイル120a、120b、120cの内側に配置された位置検出手段である磁気センサ124a、124b、124cと、を有する。また、アクチュエータ110は、駆動用磁石122の磁力によって移動枠114を固定板112に吸着させるために、固定板112に取り付けられた吸着用ヨーク126と、駆動用磁石122の磁力を固定板112の方に効果的に差し向けるように、駆動用磁石122の裏側に取り付けられたバックヨーク128と、を有する。さらに、アクチュエータ110は、スチールボール118を移動枠114に吸着させる吸着用磁石130と、スチールボール118が固定板112と移動枠114の間で滑らかに転がるように固定板112及び移動枠114の夫々に取り付けられたスチールボール受け132と、を有する。なお、駆動用コイル120a、120b、120c、及びこれらに対応する位置に取り付けられた3つの駆動用磁石122は、移動枠114を、固定板112に対して並進運動させ、且つ回転運動させることができる駆動手段を構成する。
【0045】
さらに、図3に示すように、アクチュエータ110は、ジャイロ134a、134bによって検出された振動と、磁気センサ124a、124b、124cによって検出された移動枠114の位置情報に基づいて、各駆動用コイル120a、120b、120cに流す電流を制御する制御手段であるコントローラ136を有する。
レンズユニット102は、カメラ本体104に取り付けられ、入射した光をフィルム面Fに結像させるように構成されている。
概ね円筒形のレンズ鏡筒106は、内部に複数の撮像用レンズ108を保持しており、一部の撮像用レンズ108を移動させることによりピント調整を可能としている。
【0046】
アクチュエータ110は、移動枠114を、レンズ鏡筒106に固定された固定板112に対してフィルム面Fに平行な平面内で移動させ、これにより移動枠114に取り付けられた画像安定化用レンズ116を移動させ、レンズ鏡筒106が振動してもフィルム面Fに結像される像が乱れることがないように駆動される。
固定板112は概ねドーナツ板状の形状を有し、その上に3つの駆動用コイル120a、120b、120cが配置されている。図2に示すように、これら3つの駆動用コイル120a、120b、120cは、その中心が、レンズユニット102の光軸を中心とする円周上にそれぞれ配置されている。本実施形態においては、駆動用コイル120aは光軸の鉛直上方に配置され、駆動用コイル120bは光軸に対して水平方向に配置され、駆動用コイル120cは、駆動用コイル120a及び120bから夫々中心角135゜隔てた位置に配置されている。従って、駆動用コイル120aと120bの間は中心角90゜、駆動用コイル120bと120cの間は中心角135゜、駆動用コイル120cと120aの間は中心角135゜隔てられていることになる。また、駆動用コイル120a、120b、120cは、夫々、その巻線が角の丸い矩形状に巻かれ、この矩形の中心線が円周の半径方向と一致するように配置されている。
【0047】
移動枠114は、概ねドーナツ板状の形状を有し、固定板112と平行に、固定板112と重なるように配置されている。移動枠114の中央の開口には、画像安定化用レンズ116が取り付けられている。移動枠114上の円周の、各駆動用コイル120a、120b、120cに対応する位置には、長方形の駆動用磁石122が夫々埋め込まれている。なお、本明細書において、駆動用コイルに対応する位置とは、駆動用コイルによって形成される磁界の影響が実質的に及ぶ位置を意味している。また、駆動用磁石122の裏側、即ち、各駆動用コイルの反対側には、各駆動用磁石122の磁束が、固定板112の方に効率良く差し向けられるように、長方形のバックヨーク128が夫々取り付けられている。
【0048】
また、固定板112の各駆動用コイルの裏側、即ち、移動枠114の反対側には、長方形の吸着用ヨーク126が夫々取り付けられている。移動枠114は、各駆動用磁石122が、それに対応して取り付けられた吸着用ヨーク126に及ぼす磁力によって、固定板112に吸着される。本実施形態においては、駆動用磁石122の磁力線が、吸着用ヨーク126に効率良く到達するように、固定板112を非磁性材料で構成している。
【0049】
図7(a)は、駆動用コイル120a、駆動用磁石122、バックヨーク128及び吸着用ヨーク126の位置関係を示す部分拡大上面図であり、(b)は部分拡大正面図である。図4及び図7(a)、(b)に示すように、夫々長方形の形状を有する駆動用磁石122、バックヨーク128及び吸着用ヨーク126は、各長辺、短辺が夫々重なり合うように配置されている。また、駆動用コイル120aは、その各辺が、長方形のバックヨーク128の各長辺、短辺と夫々平行になるように配置されている。さらに、駆動用磁石122は、その磁気的な中立軸線Cが、各駆動用磁石122が配置されている円周の半径方向に一致するように向けられている。これにより、駆動用磁石122は、対応する駆動用コイルに電流が流れると、円周の接線方向の駆動力を受ける。他の駆動用コイル120b、120cについても、同様の位置関係で対応する駆動用磁石122、バックヨーク128及び吸着用ヨーク126が配置されている。本実施形態においては、磁気的中立軸線Cは、長方形の駆動用磁石122の各長辺の中点を通るように位置する。また、図7(a)に示すように、駆動用磁石122は、その厚さ方向にも極性が変化しており、図7(a)において左下の角がS極、右下がN極、左上がN極、右上がS極になっている。
【0050】
図4乃至図7に示すように、各駆動用コイル120a、120b、120cの内側には、夫々磁気センサ124a、124b、124cが配置されている。各磁気センサは、移動枠114が中立位置にあるとき、その感度中心点Sが、各駆動用磁石122の磁気的中立軸線C上に位置するように配置されている。本実施形態においては、磁気センサとしてホール素子を使用している。
【0051】
図8及び図9は、駆動用磁石122の移動と磁気センサ124aから出力される信号との関係を説明する図である。図8に示すように、磁気センサ124aの感度中心点Sが、駆動用磁石122の磁気的な中立軸線C上に位置する場合には、磁気センサ124aからの出力信号は0である。移動枠114と共に駆動用磁石122が移動し、磁気センサ124aの感度中心点が駆動用磁石122の磁気的中立軸線上から外れると、磁気センサ124aの出力信号が変化する。図8に示すように、駆動用磁石122が磁気的中立軸線Cに直交する方向、即ち、X軸方向に移動すると、磁気センサ124aは、正弦波状の信号を発生する。従って、この移動量が微小である場合には、磁気センサ124aは、駆動用磁石122の移動距離にほぼ比例した信号を出力する。本実施形態において、駆動用磁石122の移動距離が、駆動用磁石122の長辺の長さの3%程度以内の場合には、磁気センサ124aから出力される信号は、磁気センサ124aの感度中心点Sと駆動用磁石122の磁気的中立軸線Cの間の距離にほぼ比例する。また、本実施形態において、アクチュエータ110は、各磁気センサの出力が距離にほぼ比例する範囲内で作動する。
【0052】
図9(a)乃至(c)に示すように、磁気センサ124aの感度中心点S上に駆動用磁石122の磁気的中立軸線Cが位置する場合には、図9(b)のように駆動用磁石122が回転移動した場合、図9(c)のように駆動用磁石122が磁気的中立軸線Cの方向に移動した場合とも、磁気センサ124aからの出力信号は0である。また、図9(d)乃至(f)に示すように、駆動用磁石122の磁気的中立軸線Cが磁気センサ124aの感度中心点Sから外れた場合には、感度中心点Sを中心とする磁気的中立軸線Cに接する円の半径rの大きさに比例した信号が磁気センサ124aから出力される。従って、感度中心点Sを中心とする磁気的中立軸線Cに接する円の半径rが同じであれば、図9(d)のように駆動用磁石122が磁気的中立軸線Cに直交する方向に移動した場合、図9(e)のように駆動用磁石122が並進及び回転移動した場合、図9(f)のように任意の方向に並進移動した場合とも、何れも同じ大きさの信号が磁気センサ124aから出力される。
【0053】
ここでは、磁気センサ124aについて説明したが、他の磁気センサ124b、124cも、それらに対応する駆動用磁石122との位置関係に基づいて同様の信号を出力する。このため、各磁気センサ124a、124b、124cによって検出された信号に基づいて、移動枠114が固定枠112に対して並進移動及び回転移動した位置を特定することができる。
【0054】
図4に示すように、3つのスチールボール118は、固定枠112の各駆動用コイルを配置した円周よりも外側の円周上に夫々配置されている。3つのスチールボール118は、夫々、中心角120゜の間隔を隔てて配置され、スチールボール118のうちの1つが、駆動用コイル120aと120bの間に位置するように配置されている。図5に示すように、各スチールボール118は、移動枠114の、各スチールボール118に対応する位置に埋め込まれた吸着用磁石130によって、移動枠114に吸着されている。各スチールボール118は吸着用磁石130によって移動枠114に吸着され、移動枠114は駆動用磁石122によって固定板112に吸着されるので、各スチールボール118は固定板112と移動枠114の間に挟持されることになる。これにより、移動枠114は固定板112に平行な平面上に支持され、各スチールボール118が挟持されながら転がることによって、移動枠114の固定板112に対する任意の方向の並進運動及び回転運動を許容する。
【0055】
また、固定板112及び移動枠114の外周部には、スチールボール118と当接するように、環状のスチールボール受け132が夫々取り付けられている。スチールボール118が固定板112と移動枠114の間に挟持された状態で、移動枠114が移動すると、各スチールボール118は、スチールボール受け132の上で転がる。このため、移動枠114が固定板112に対して移動する場合にも、それらの間に摺動摩擦が生じることはない。好ましくは、スチールボール118とスチールボール受け132の間の転がり抵抗が小さくなるように、スチールボール受け132の表面を平滑に形成し、表面硬度の高い材料でスチールボール受け132を構成するのが良い。
【0056】
なお、本実施形態においては、吸着用磁石130の磁力線がスチールボール118に効率良く到達するように、スチールボール受け132を非磁性材料で構成している。また、本実施形態においては、スチールボール118として鋼製の球体を使用しているが、スチールボール118は必ずしも球体でなくても良い。即ち、アクチュエータ110の作動中においてスチールボール受け132と接触する部分が概ね球面の形状を有する形態であればスチールボール118として使用することができる。なお、本明細書において、このような形態を球状体という。
【0057】
次に、図10を参照して、アクチュエータ110の制御を説明する。図10は、コントローラ136における信号処理を示すブロック図である。図10に示すように、レンズユニット102の振動は、2つのジャイロ134a、134bによって時々刻々検出され、コントローラ136に内蔵されたレンズ位置指令信号生成手段である演算回路138a、138bに入力される。本実施形態においては、ジャイロ134aはレンズユニット2のヨーイング運動の角加速度を、ジャイロ134bはピッチング運動の角加速度を夫々検出するように構成され、配置されている。
【0058】
演算回路138a、138bは、ジャイロ134a、134bから時々刻々入力される角加速度に基づいて、画像安定化用レンズ116を移動させるべき位置を時系列で指令するレンズ位置指令信号を生成する。すなわち、演算回路138aは、ジャイロ134aによって検出されるヨーイング運動の角加速度を2回時間積分し、所定の修正信号を加算することによってレンズ位置指令信号の水平方向成分を生成し、同様に、演算回路138bは、ジャイロ134bによって検出されるピッチング運動の角加速度に基づいてレンズ位置指令信号の鉛直方向成分を生成するように構成されている。このようにして得られたレンズ位置指令信号に従って、画像安定化用レンズ116を時々刻々移動させることにより、写真撮影の露光中にレンズユニット102が振動した場合にも、カメラ本体104内のフィルム面Fに合焦される像は乱れることなく安定化される。
【0059】
コントローラ136に内蔵されたコイル位置指令信号生成手段は、演算回路138a、138bによって生成されたレンズ位置指令信号に基づいて、各駆動用コイルに対するコイル位置指令信号を生成するように構成されている。コイル位置指令信号は、画像安定化用レンズ116をレンズ位置指令信号で指定された位置へ移動させたときの、各駆動用コイル120a、120b、120cとそれに対応した駆動用磁石122の位置関係を表す信号である。すなわち、各駆動用コイルに対応した駆動用磁石122が、各駆動用コイルに対するコイル位置指令信号によって指令された位置に移動すると、その結果、画像安定化用レンズ116は、レンズ位置指令信号によって指令された位置へ移動する。本実施形態においては、駆動用コイル120aが光軸の鉛直上方に設けられているので、駆動用コイル120aに対するコイル位置指令信号は、演算回路138aから出力されるレンズ位置指令信号の水平方向成分と等しくなる。また、駆動用コイル120bは光軸の横方向に設けられているので、駆動用コイル120bに対するコイル位置指令信号は、演算回路138bから出力されるレンズ位置指令信号の鉛直方向成分と等しくなる。さらに、駆動用コイル120cに対するコイル位置指令信号は、レンズ位置指令信号の水平方向成分及び鉛直方向成分に基づいて、コイル位置指令信号生成手段である演算回路140によって生成される。
【0060】
一方、磁気センサ124aによって測定された、駆動用コイル120aに対する駆動用磁石122の移動量は、磁気センサアンプ142aによって所定の倍率に増幅される。差動回路144aは、演算回路138aから出力されたコイル位置指令信号の水平成分と、磁気センサアンプ142aから出力された駆動用コイル120aに対する駆動用磁石122の移動量との差に比例した電流を駆動用コイル120aに流す。従って、コイル位置指令信号と磁気センサアンプ142aからの出力に差がなくなると、駆動用コイル120aには電流が流れなくなり、駆動用磁石122に作用する駆動力が0になる。
【0061】
同様に、磁気センサ124bによって測定された、駆動用コイル120bに対する駆動用磁石122の移動量は、磁気センサアンプ142bによって所定の倍率に増幅される。差動回路144bは、演算回路138bから出力されたコイル位置指令信号の鉛直成分と、磁気センサアンプ142bから出力された駆動用コイル120bに対する駆動用磁石122の移動量との差に比例した電流を駆動用コイル120bに流す。従って、コイル位置指令信号と磁気センサアンプ142bからの出力に差がなくなると、駆動用コイル120bには電流が流れなくなり、駆動用磁石122に作用する駆動力が0になる。
【0062】
また、磁気センサ124cによって測定された、駆動用コイル120cに対する駆動用磁石122の移動量は、磁気センサアンプ142cによって所定の倍率に増幅される。差動回路144cは、演算回路140から出力されたコイル位置指令信号と、磁気センサアンプ142cから出力された駆動用コイル120cに対する駆動用磁石122の移動量との差に比例した電流を駆動用コイル120cに流す。従って、コイル位置指令信号と磁気センサアンプ142cからの出力に差がなくなると、駆動用コイル120cには電流が流れなくなり、駆動用磁石122に作用する駆動力が0になる。
【0063】
次に、図11を参照して、移動枠114を並進運動させる場合のレンズ位置指令信号と、コイル位置指令信号との関係を説明する。図11は、固定板112上に配置された駆動用コイル120a、120b、120c、移動枠114上に配置された3つの駆動用磁石122の位置関係を示す図である。まず、3つの駆動用コイル120a、120b、120cは、その中心点が、点Qを原点とする半径Rの円周上の点L、M、N上に夫々配置されている。また、各磁気センサ124a、124b、124cも、その感度中心点Sが点L、M、N上に位置するように夫々配置されている。さらに、移動枠114が中立位置にあるとき、すなわち、画像安定化用レンズ116の中心が光軸上にある場合には、各駆動用コイルに対応した各駆動用磁石122の磁気的中立軸線Cの中点も、夫々点L、M、N上に位置する。また、点Qを原点とする水平軸線をX軸、鉛直軸線をY軸、X軸及びY軸に対して夫々135゜の角をなす軸をV軸とすれば、各駆動用磁石122の磁気的中立軸線Cは、夫々X軸、Y軸、V軸と重なる位置にある。
【0064】
ここで、移動枠114が移動して、画像安定化用レンズ116の中心点が点Q1に移り、さらに、移動枠114が点Q1を中心に反時計回りに角θ回転すると、各駆動用磁石122の磁気的中立軸線Cの中点は、点L1、M1、N1に夫々移動する。移動枠114がこのような位置に移動するためには、駆動用コイル120aに対するコイル位置指令信号の大きさは、点Lを中心として直線Q11に接する円の半径に、駆動用コイル120bのコイル位置指令信号は、点Mを中心として直線Q11に接する円の半径に、駆動用コイル120cのコイル位置指令信号は、点Nを中心として直線Q11に接する円の半径に夫々比例する値である必要がある。これらの円の半径を夫々rX、rY、rVとする。
【0065】
なお、各コイル位置指令信号rX、rY、rVの符号を図11に示すように定める。即ち、点L1を第1象限に移動させるコイル位置指令信号rXを正、第2象限に移動させるコイル位置指令信号rXを負と定め、同様に、点M1を第1象限に移動させるコイル位置指令信号rYを正、第4象限に移動させるコイル位置指令信号rYを負と定める。また、点N1をV軸の下側に移動させるコイル位置指令信号rVを正、V軸の上側に移動させるコイル位置指令信号rVを負と定める。さらに、角度の符号は時計回りを正とする。従って、移動枠14を中立位置から時計回りに回転させる場合、コイル位置指令信号rXは正、コイル位置指令信号rYは負、コイル位置指令信号rVは負となる。
【0066】
また、点Q1の座標を(j,g)、点L1の座標を(i,e)、点N1の座標を(k,h)とし、V軸とY軸の為す角をαとする。さらに、点Mを通り直線Q11に平行な補助線A、及び点Lを通り直線Q11に平行な補助線Bを引き、補助線Aと補助線Bの交点を点Pとする。
【0067】
ここで、直角三角形LMPについて正弦定理を適用すると、

となる。従って、



の関係が成り立つ。また、座標e、g、h、i、j、kを、R、rX、rY、rV、θ、αで表すと、幾何学的関係及び数式3より、

が得られる。さらに、座標(k,g)、(j,g)、(k,h)を頂点とする直角三角形について、下記の関係が成り立つ。

【0068】
数式5の関係を展開して整理すると、

の関係が得られる。さらに、移動枠14が並進運動する場合には、θ=0であるから数式6は、

となる。また、本実施形態においては、α=45゜であるから、数式7の関係は、

と簡略化される。従って、本実施形態においては、レンズ位置指令信号によって画像安定化用レンズ116の中心を座標(j,g)に並進運動させる場合、駆動用コイル120aに対しては座標jの大きさに比例したコイル位置指令信号rXを与え、駆動用コイル120bに対しては座標gの大きさに比例したコイル位置指令信号rYを与え、駆動用コイル120cに対しては数式8によってコイル位置指令信号rVを計算して与える。
【0069】
なお、コイル位置指令信号rXは図10の演算回路138aの出力信号に、コイル位置指令信号rYは演算回路138bの出力信号に対応している。また、コイル位置指令信号rVは、数式8と等価な計算を行う演算回路140の出力信号に対応している。
次に、図12を参照して、移動枠114を回転運動させる場合のレンズ位置指令信号と、コイル位置指令信号との関係を説明する。図12は、移動枠114が並進運動及び回転運動した場合のコイル位置指令信号を説明する図である。図12に示すように、まず、移動枠114が並進移動されることにより、これに取り付けられた画像安定化用レンズ116の中心が、点Qから点Q2に移動されると、移動枠114に取り付けられた駆動用磁石122は、点L、M、Nから、点L2、M2、N2に夫々移動される。この並進運動に対するコイル位置指令信号をrX、rY、rVとする。これらのコイル位置指令信号の大きさは、上述した数式8等によって求めることができる。ここでは、移動枠114が、点Q2を中心に角度η反時計回りに回転された場合のコイル位置指令信号r、r、rを計算する。
【0070】
まず、図11の場合と同様に、点Q2の座標を(j,g)、直線Q22とNを中心とする半径rVの円の接点の座標を(k,h)とし、数式4のθに0を代入すると、

の関係が得られる。
【0071】
次に、移動枠114が、点Q2を中心に角度η反時計回りに回転されると、点L2、M2、N2は点L3、M3、N3に夫々移動される。また、線分Q22とQ2Lの為す角をβ、線分Q22とQ2Mの為す角をδ、線分Q22とQ2Nの為す角をγとする。さらに、線分Q2Lの長さをU、線分Q2Mの長さをW、線分Q2Nの長さをVとする。ここで、コイル位置指令信号r、r、rの大きさは、点L、M、Nを中心として、直線Q23、Q23、Q23と接する円の半径に夫々等しいので、

の関係が成り立つ。
【0072】
また、sinβ、cosβ等は、幾何学的関係から、次のように表すことができる。

さらに、数式11の関係を数式10に代入して、β、γ、δ等を消去すると、

の関係が得られる。従って、画像安定化用レンズ116の中心を座標(j,g)に並進運動させ、さらに、その点を中心に反時計回りに角度η回転運動させた位置に移動枠114を移動させるためには、まず、数式8及び9によってrX、rY、rVを計算し、次に、その値を数式12に代入することによってコイル位置指令信号r、r、rを計算し、これらを各駆動用コイルに与えればよい。
【0073】
また、移動枠114を並進運動させずに、点Qを中心に反時計回りに角度η回転運動させる場合には、数式12のrX、rY、rVに0を代入した

によってコイル位置指令信号r、r、rを計算すればよい。
【0074】
また、コントローラ136は、具体的には、図2に一例を示した回路を、各駆動用コイルに対して設けることによって構成することができる。例えば、駆動用コイル120aに流す電流を制御する回路を構成するには、駆動用コイル6を駆動用コイル120置き換え、演算回路138aの出力を、図2の回路の位置指令信号として加えればよい。この場合、図2のオペアンプOP2が磁気センサアンプ142aに対応し、オペアンプOP3が差動回路144aに対応する。また、駆動用コイル120bに流す電流を制御する回路も同様に構成することができる。また、駆動用コイル120cに流す電流も同様の回路で制御することができるが、この場合には、演算回路140の出力を、オペアンプOP4のプラス入力端子に位置指令信号として接続する。なお、演算回路140は、数式8と等価な計算を行うために、オペアンプOP3と同様の差動回路、及びその出力を(1/2)1/2に分圧する電気抵抗等で構成することができる。
【0075】
次に、図3及び10を参照して、本発明の実施形態によるカメラ101の作用を説明する。まず、カメラ101の手ブレ防止機能の起動スイッチ(図示せず)をONにすることにより、レンズユニット102に備えられたアクチュエータ110が作動される。レンズユニット102に取り付けられたジャイロ134a、134bは、所定周波数帯域の振動を時々刻々検出し、コントローラ136に内蔵された演算回路138a、138bに出力する。ジャイロ134aはレンズユニット102のヨーイング方向の角加速度の信号を演算回路138aに出力し、ジャイロ134bはピッチング方向の角加速度の信号を演算回路138bに出力する。演算回路138aは、入力された角加速度信号を時間で2回積分して、ヨーイング角度を算出し、これに所定の修正信号を加えて水平方向のレンズ位置指令信号を生成する。同様に、演算回路138bは、入力された角加速度信号を時間で2回積分して、ピッチング角度を算出し、これに所定の修正信号を加えて鉛直方向のレンズ位置指令信号を生成する。演算回路138a、138bによって時系列で出力されるレンズ位置指令信号によって指令される位置に、画像安定化用レンズ116を時々刻々移動させることによって、カメラ本体104のフィルム面Fに合焦される像が安定化される。
【0076】
演算回路138aによって出力された水平方向のレンズ位置指令信号は、駆動用コイル120aに対するコイル位置指令信号rXとして作動回路144aに入力される。同様に、演算回路138bによって出力された鉛直方向のレンズ位置指令信号は、駆動用コイル120bに対するコイル位置指令信号rYとして作動回路144bに入力される。また、演算回路138a、138bの出力は、演算回路140に入力され、数式8で表される演算により、駆動用コイル120cに対するコイル位置指令信号rVが生成される。
【0077】
一方、駆動用コイル120aの内側に配置された磁気センサ124aは磁気センサアンプ142aに、駆動用コイル120bの内側の磁気センサ124bは磁気センサアンプ142bに、駆動用コイル120cの内側の磁気センサ124cは磁気センサアンプ142cに検出信号を出力する。磁気センサアンプ142a、142b、142cで夫々増幅された磁気センサの検出信号は、作動回路144a、144b、144cに夫々入力される。
【0078】
作動回路144a、144b、144cは、入力された各磁気センサの検出信号と、コイル位置指令信号rX、rY、rVの差に応じた電圧を夫々発生し、この電圧に比例した電流を駆動用コイル120a、120b、120cに流す。各駆動用コイルに電流が流れると電流に比例した磁界が発生する。この磁界により各駆動用コイルに対応して配置された各駆動用磁石122は夫々、コイル位置指令信号rX、rY、rVによって指定された位置に近づく方向の駆動力を受け、移動枠114が移動される。駆動用磁石122が、この駆動力によってコイル位置指令信号により指定された位置に到達すると、コイル位置指令信号と磁気センサの検出信号が一致するので作動回路の出力は0となり、駆動力も0になる。また、外乱、又は、コイル位置指令信号の変化等により、各駆動用磁石122がコイル位置指令信号により指定された位置から外れると、再び各駆動用コイルに電流が流され、各駆動用磁石122はコイル位置指令信号によって指定された位置に戻される。
【0079】
以上の作用が時々刻々繰り返されることにより、各駆動用磁石122を有する移動枠114に取り付けられた画像安定化用レンズ116が、レンズ位置指令信号に追従するように移動される。これにより、カメラ本体104のフィルム面Fに合焦される像が安定化される。
【0080】
本発明の第2実施形態によるカメラでは、直交する2方向のガイドを使用することなく、画像安定化用のアクチュエータの移動枠を任意の方向に並進運動させることができるので、アクチュエータを簡単な機構で構成することができる。また、機構を簡略化することにより、アクチュエータの移動枠を軽量化することができるので、高速な応答が可能なアクチュエータを構成することができる。
【0081】
本発明の第2実施形態によるカメラにおいては、画像安定化用のアクチュエータの移動枠を所定の平面内で任意の方向に並進運動及び回転運動させることができる。
また、磁気センサが駆動用コイルの内側に配置されているので、駆動用コイルから駆動用磁石に及ぼされる力の作用点と、駆動用磁石上の磁気センサによって位置を計測される点がほぼ等しくなり、機械的なガタ等に影響されることなく、正確に移動枠の位置を検出することができる。さらに、コントローラが補正回路を内蔵しているので、駆動用コイルが生成する磁界が磁気センサに及ぼす影響を排除することができる。
【0082】
本発明の第2実施形態によるカメラにおいては、固定板と移動枠の間の間隔が、スチールボールによって一定に維持され、固定板と移動枠の間でスチールボールが転がることによって、固定板に対して移動枠が移動されるので、摺動抵抗が作用することなく、移動枠が固定板に対して移動される。
【0083】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した第2実施形態では、本発明をフィルムカメラに適用していたが、本発明は、デジタルカメラ、ビデオカメラ等、静止画又は動画撮像用の任意のカメラに適用することができる。また、本発明を、これらのカメラのカメラ本体と共に使用されるレンズユニットに適用することもできる。さらに、本発明は、カメラの画像安定化用レンズの駆動用の他、XYステージの駆動用等の任意のアクチュエータに適用することができる。
【0084】
また、上述した実施形態においては、固定側部材に駆動用コイルが取り付けられ、可動側部材に駆動用磁石が取り付けられていたが、固定側部材に駆動用磁石を、可動側部材に駆動用コイルを取り付けることもできる。さらに、上述した第2実施形態においては、駆動用コイルと駆動用磁石が3組使用されていたが、4組以上の駆動用コイルと駆動用磁石を使用することもできる。また、上述した実施形態においては、駆動用磁石として永久磁石を使用しているが、駆動用磁石として電磁石を使用することもできる。
【0085】
また、上述した第2実施形態においては、可動側部材支持手段として、3つのスチールボール18が使用されているが、可動側部材支持手段を4つ以上の球状体で構成することもできる。あるいは、球状体を使用せずに、可動側部材及び固定側部材の接触面を平滑に仕上げておき、可動側部材と固定側部材を直接接触させて滑動させることによって、可動側部材支持手段を構成しても良い。
【0086】
さらに、上述した第2実施形態においては、駆動用コイル124aと124bの間の中心角が90度、駆動用コイル124cと駆動用コイル124a及び124bの間の中心角が135度となるように駆動用コイルを配置しているが、駆動用コイル124bと124cの間の中心角が(90+α)度、0≦α≦90となるように、駆動用コイル124cを配置しても良い。この場合には、駆動用コイル124cに対するコイル位置指令信号は、数式7によって計算することができる。或いは、駆動用コイル124aと124bの間の中心角は90度でなくても良く、3つの駆動用コイルの間の中心角を夫々120゜にする等、各駆動用コイルの間の中心角を、90度以上180度以下の任意の角度にすることもできる。
【0087】
また、上述した第2実施形態においては、駆動用磁石の磁気的中立軸線は、全て半径方向に向けられていたが、各駆動用磁石の磁気的中立軸線は、任意の方向に向けることができる。好ましくは、少なくとも1つの駆動用磁石の磁気的中立軸線を、ほぼ半径方向に向けて配置するのが良い。
【0088】
図13は、上述した本発明の第2実施形態において、駆動用コイル124a及び124bに対応する駆動用磁石122の磁気的中立軸線を、点Qを中心とする円の接線方向に向け、駆動用コイル124cに対応する駆動用磁石122の磁気的中立軸線を半径方向に向けた変形例を示す。なお、図示を省略しているが、駆動用コイル124aは点Lに、駆動用コイル124bは点Mに、駆動用コイル124cは点Nに夫々配置されている。この例では、点Lに配置された駆動用コイル124aに対するコイル位置指令信号rX、点Mに配置された駆動用コイル124bに対するコイル位置指令信号ry、点Nに配置された駆動用コイル124cに対するコイル位置指令信号rVが与えられている。この指令信号によって、移動枠114の中立位置において、点L、M、N上に位置していた各駆動用磁石122の磁気的中立軸線の中点は、点L4、M4、N4に夫々移動され、画像安定化用レンズ116の中心点は、点Qから点Q3に移動される。
【0089】
なお、この変形例では、レンズ位置指令信号の水平方向成分に対応するコイル位置指令信号rXが点Mに配置された駆動用コイル124bに与えられ、鉛直方向成分に対応するコイル位置指令信号rYが点Lに配置された駆動用コイル124aに与えられる。また、図13の例において、コイル位置指令信号rX、rYを数式8に代入し、求められたコイル位置指令信号rVを駆動用コイル124cに与えると、点QはX軸方向に−rX、Y軸方向にrY並進移動される。
【0090】
次に、図14を参照して、本発明の第2実施形態の更なる変形例を説明する。この変形例のアクチュエータ145は、移動枠114の制御を行わないとき、移動枠114を固定板112に対して係止するための係止機構を有する点が、上述した実施形態とは異なる。
図14に示すように、本変形例のアクチュエータ145では、移動枠114の外周に3つの係合突起114aが形成されている。また、固定板112には、移動枠114を取り囲むように配置された環状部材146が取り付けられており、この環状部材146の内周部には、係合突起114aと夫々係合するように形成された3つの係合部146aが設けられている。さらに、移動枠114の外周には、3つの可動側保持用磁石148が取り付けられている。また、環状部材146の内周部の可動側保持用磁石148に夫々対応する位置には、可動側保持用磁石148と磁力を及ぼしあうように位置決めされた3つの固定側保持用磁石150が夫々取り付けられている。さらに、手動係止用部材152が、環状部材146の外側から半径方向内方に向けて延びるように、環状部材146の円周方向に移動可能に設けられている。この手動係止用部材152の先端には、U字型の凹部152aが形成されている。移動枠114の外周には、U字型の凹部152aの中に受け入れられ、手動係止用部材152と係合するように、係合ピン154が取り付けられている。
【0091】
次に、アクチュエータ145の作用を説明する。まず、アクチュエータ145の移動枠114を、図14において反時計回りに回転駆動することにより、移動枠114外周の係合突起114aが環状部材146の係合部146aに夫々係合し、移動枠114が固定板112に対して係止される。また、移動枠114に設けられた可動側保持用磁石148と、環状部材146の固定側保持用磁石150は、図14に示す状態では、殆ど磁力を及ぼしあうことはない。移動枠114が反時計回りに回転駆動され、可動側保持用磁石148が固定側保持用磁石150に近づくと、固定側保持用磁石150は、移動枠114を時計回りに回転させる方向の磁力を、移動枠114に及ぼす。この磁力に抗して、移動枠114が反時計回りにさらに回転駆動され、可動側保持用磁石148が固定側保持用磁石150を通り過ぎると、固定側保持用磁石150は、移動枠114を反時計回りに回転させる方向の磁力を、移動枠114に及ぼす。この磁力により、係合突起114aは係合部146aに押し付けられ、係合突起114aと係合部146aの係合状態が保持される。これにより、アクチュエータ145の電源が切られた状態でも、係合突起114aと係合部146aの係合状態が保持され、移動枠114が固定板112に対して係止される。
【0092】
また、手動係止用部材152を、図14において反時計回りに手動で回転移動させると、移動枠114の係合ピン154がU字型の凹部152aと係合して、移動枠114も反時計回りに回転移動される。これにより、係合突起114aと係合部146aが、手動で係合される。逆に、手動係止用部材152を、図14において時計回りに手動で回転移動させると、移動枠114が時計回りに回転移動され、係合突起114aと係合部146aの係合状態が解除される。
本発明の第2実施形態のアクチュエータは、移動枠を回転移動させることもできるので、本変形例のような係止機構を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1実施形態によるアクチュエータの(a)側面図、及び(b)底面図である。
【図2】駆動用コイルに流す電流を制御するコントローラの回路の一例を示す回路図である。
【図3】本発明の第2実施形態によるカメラの断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態によるカメラに使用されているアクチュエータの一部を破断して示した正面部分断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態によるカメラに使用されているアクチュエータの、図4のA−A線側面断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態によるカメラに使用されているアクチュエータの上面部分断面図である。
【図7】(a)駆動用コイル、駆動用磁石、バックヨーク及び吸着用ヨークの位置関係を示す部分拡大上面図、及び(b)部分拡大正面図である。
【図8】駆動用磁石の移動と磁気センサから出力される信号との関係を示す図である。
【図9】駆動用磁石の移動と磁気センサから出力される信号との関係を示す図である。
【図10】コントローラにおける信号処理を示すブロック図である。
【図11】固定板上に配置された駆動用コイル、移動枠上に配置された3つの駆動用磁石の位置関係を示す図である。
【図12】移動枠が並進運動及び回転運動した場合のコイル位置指令信号を説明する図である。
【図13】本発明の第2実施形態におけるアクチュエータの変形例を示す図である。
【図14】本発明の第2実施形態におけるアクチュエータの更なる変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0094】
C 磁気的中立軸線
S 感度中心点
1 本発明の第1実施形態によるアクチュエータ
2 固定板
4 移動枠
6 駆動用コイル
8 駆動用磁石
10 バックヨーク
12 ホール素子
14 コントローラ
16 補正回路
101 本発明の第2実施形態によるカメラ
102 レンズユニット
104 カメラ本体
106 レンズ鏡筒
108 撮像用レンズ
110 アクチュエータ
112 固定板
114 移動枠
116 画像安定化用レンズ
118 スチールボール
120a 駆動用コイル
120b 駆動用コイル
120c 駆動用コイル
122 駆動用磁石
124a 磁気センサ
124b 磁気センサ
124c 磁気センサ
126 吸着用ヨーク
128 バックヨーク
130 吸着用磁石
132 スチールボール受け
134a ジャイロ
134b ジャイロ
136 コントローラ
138a 演算回路
138b 演算回路
140 演算回路
142a 磁気センサアンプ
142b 磁気センサアンプ
142c 磁気センサアンプ
144a 差動回路
144b 差動回路
144c 差動回路
145 本発明の実施形態の変形例のアクチュエータ
146 環状部材
146a 係合部
148 可動側保持用磁石
150 固定側保持用磁石
152 手動係止用部材
152a U字型の凹部
154 係合ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側部材と、
可動側部材と、
この可動側部材を、上記固定側部材に対して移動できるように支持する可動側部材支持手段と、
上記固定側部材又は上記可動側部材のうちの何れか一方に取り付けられた駆動用コイルと、
上記固定側部材又は上記可動側部材のうちの他方に取り付けられ、上記駆動用コイルに電流が流れると駆動力を受けるように配置された駆動用磁石と、
上記駆動用コイルの巻線の内側に配置され、上記駆動用磁石の位置を検出する磁気センサと、
上記可動側部材の移動すべき位置を指令する信号及び上記磁気センサによって検出された位置信号に基づいて、上記駆動用コイルに流す駆動電流を制御する制御手段と、
を有することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
固定側部材と、
可動側部材と、
この可動側部材を、上記固定側部材に対して平行な平面上の任意の位置に移動できるように支持する可動側部材支持手段と、
上記固定側部材又は上記可動側部材のうちの何れか一方に取り付けられた少なくとも3つの駆動用コイルと、
上記固定側部材又は上記可動側部材のうちの他方の、上記各駆動用コイルに夫々対応する位置に取り付けられた駆動用磁石と、
上記各駆動用コイルの巻線の内側に夫々配置され、上記各駆動用コイルに対する上記各駆動用磁石の位置を夫々検出する磁気センサと、
可動側部材の移動すべき位置を指令する信号に基づいて各駆動用コイルに対するコイル位置指令信号を生成し、このコイル位置指令信号及び上記各磁気センサによって検出された位置信号に基づいて、上記各駆動用コイルに流す駆動電流を制御する制御手段と、
を有することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
さらに、上記駆動用コイルによって生成される磁界が上記磁気センサに与える影響を除去するために、上記磁気センサによって検出された位置信号を補正する補正手段を有する請求項1又は請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
上記補正手段は、上記駆動用コイルに流れた電流を検出する電流検出手段を有し、この電流検出手段によって検出された電流に基づいて補正信号を生成し、上記磁気センサによって検出された位置信号を補正する請求項3記載のアクチュエータ。
【請求項5】
上記駆動用コイルに流される電流が、パルス幅変調又はパルス密度変調されており、上記補正手段は、上記電流検出手段が検出したパルス幅変調又はパルス密度変調された電流を平滑化して補正信号を生成する平滑化手段を有する請求項4記載のアクチュエータ。
【請求項6】
レンズ鏡筒と、
このレンズ鏡筒の中に配置された撮像用レンズと、
上記レンズ鏡筒に取り付けられた固定側部材と、
画像安定化用レンズが取り付けられた可動側部材と、
この可動側部材を、上記固定側部材に対して平行な平面上の任意の位置に移動できるように支持する可動側部材支持手段と、
上記固定側部材又は上記可動側部材のうちの何れか一方に取り付けられた少なくとも3つの駆動用コイルと、
上記固定側部材又は上記可動側部材のうちの他方の、上記各駆動用コイルに夫々対応する位置に取り付けられた駆動用磁石と、
上記各駆動用コイルの巻線の内側に夫々配置され、上記各駆動用コイルに対する上記各駆動用磁石の位置を夫々検出する磁気センサと、
上記レンズ鏡筒の振動を検出する振動検出手段と、
この振動検出手段によって検出された信号に基づいて、上記画像安定化用レンズを移動させる位置を指令するレンズ位置指令信号を生成するレンズ位置指令信号生成手段と
このレンズ位置指令信号生成手段によって生成されたレンズ位置指令信号に基づいて各駆動用コイルに対するコイル位置指令信号を生成し、このコイル位置指令信号及び上記各磁気センサによって検出された位置信号に基づいて、上記各駆動用コイルに流す駆動電流を制御する制御手段と、
を有することを特徴とするレンズユニット。
【請求項7】
請求項6記載のレンズユニットを有するカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−174588(P2006−174588A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−362924(P2004−362924)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000133227)株式会社タムロン (355)
【Fターム(参考)】