説明

アクチュエータ駆動用モータ

【課題】自動車エンジンのスロットルバルブや自動車の前照灯の光軸制御装置等に用いられるアクチュエータ駆動用のモータにおいて、その応答性を改善し、振動・衝撃に対する耐久性を向上させることを目的とする。
【解決手段】開口部側に内径拡大部を設けたカップ状の2つのロータヨーク1121、1122を、この内径拡大部に嵌合する外径を有するリング状の連結部材1123を内径拡大部に挿入して連結しながら2つのロータヨーク1121、1122のそれぞれの中心にシャフト1110を固着してロータヨーク組立体1124を形成し、このロータヨーク組立体1124の外周にマグネット1130を固着してアクチュエータ駆動用モータのロータ1100を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車エンジンのスロットルバルブや自動車の前照灯の光軸制御装置等に用いられるアクチュエータ駆動用のモータに関するものであり、詳しくは応答性を改善し、振動・衝撃に対する耐久性を向上させたロータの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジンのスロットルバルブや自動車の前照灯の光軸制御装置等に用いられるアクチュエータ駆動用のモータは応答性が良いことと振動・衝撃に対する耐久性が要求されるため、ロータヨークに鋼板を使用してロータの慣性モーメントおよび重量を小さくして応答性を改善し、振動・衝撃に対する耐久性を向上させたモータが考案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図8に上記特許文献1に記載されたモータの構造を示す。図8においてステータはヨークブラケット8001の内周面に固着されて巻線が施された鉄心8002により構成されており、ロータは中空環状に成形された磁性板材8022、8023をロータヨークとして、その外周面に筒状のマグネット8021を固着し、磁性板材8022、8023の中心部を貫通してシャフト8006を固着して構成されている。またヨークブラケット8001の両端2箇所にはロータのシャフト8006を回転自在に支持する軸受8007が配置されている。
【0004】
上記特許文献1に記載のモータはロータヨークを磁性板材を使用して中空環状にすることにより慣性モーメントを小さく構成し起動性・応答性を高めるとともに、軽量のロータをロータヨークの外側2箇所で支持することによって、振動・衝撃に対して強い構造としている。
【0005】
図10に実用に供されている別のモータの構造(第2例)を示す。なお図10はモータの内部に電子部品が実装されたブラシレスモータである。
【0006】
図10においてステータはフレーム1410の内周面に固着されて巻線1220が施された鉄心1210により構成されており、ロータ1100はカップ状に成形されたロータヨーク1121、1122を同方向に積み重ねたものをロータヨークとして、ロータヨーク1121、1122の中心を貫通してシャフト1110を固着し、その外周面に筒状のマグネット1130を固着して構成されている。さらにシャフト1110にはスラストリング1140が固着されており軸受1302とともにスラスト軸受を構成している。
【0007】
このスラストリング1140によりプリント基板1510上に電子部品を実装するためのシャフト貫通方向のスペースH101を設定するとともにプリント基板1510に開けた穴の直径D102をスラストリングの直径D101より大きい最小限の直径に設定することで電子部品の実装面積を確保している。
【0008】
またフレーム1410および1420にはロータ1100のシャフト1110を支持する軸受1301および1302が配置されており、ロータ1100は回転自在に保持されている。1521はマグネット1130の磁極位置を検出するための磁電変換素子でプリント基板1510上に実装され、モータ駆動回路(図示せず)にロータの磁極位置信号を送出し、モータに所定のトルクを発生させる様に構成されている。
【特許文献1】実開平1−64969号公報(実願昭62−158767号のマイクロフィルム)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に示された従来の構成では、ロータヨークを2分割したものを組み合わせるため2つの部品の外周振れの方向(位相)の違いによりロータマグネットを組み付け不能になったり、ロータのアンバランス発生を招くという課題があった。
【0010】
図9はこの課題を説明した図である。なお図9は図8のロータの一部分を抜き出した図であり、図8と同じ部品には図8と同じ符号が付与している。
【0011】
図9においてシャフト8006を磁性板材8022および8023に圧入あるいは接着等の方法で固着する場合には両者が垂直度ゼロの状態で固着される事はごく希で、両者はいくらかの傾きを持った状態で固着される。この傾きの大きさおよび方向(位相)は磁性板材8022および8023ごとに異なるため、実効的なロータの外径D93は磁性板材8022および8023それぞれの外径D91、D92よりも大きくなる。そのためロータヨークと嵌まりあうようにD91およびD92よりわずかに大きく内径が形成された筒状のマグネット8021を組み付けることができなくなってしまうという課題があった。
【0012】
またシャフト8006と磁性板材8022および8023の傾きは磁性板材8022および8023の外周の振れになるため、ロータのアンバランス発生を招くという課題があった。
【0013】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、ロータの慣性モーメントおよび重量を小さくして応答性を高めるとともに振動・衝撃に対する耐久性を向上させたモータを提供することを目的とする。
【0014】
また第2例として記載した、実用に供されている別のモータの構成では上記特許文献1の場合と同じ問題が発生するだけでなく、スラストリング1140が新たに必要となるため部品点数が増加するだけでは無く、振動・衝撃に対する耐久性がスラストリング1140をシャフト1110に固着する固着力により左右される様になるため信頼性が低下するという課題があった。
【0015】
本発明は、このような課題をも解決するものであり、部品点数の増加や信頼性の低下を伴うことなくロータの慣性モーメントおよび重量を小さくして応答性を高めるとともに振動・衝撃に対する耐久性を向上させたモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために本発明は、開口部側に内径拡大部を設けたカップ状の2つのロータヨークを、この内径拡大部に嵌合する外径を有するリング状の連結部材を内径拡大部に挿入して連結しながら2つのロータヨークのそれぞれの中心にシャフトを固着してロータヨーク組立体を形成し、このロータヨーク組立体の外周にマグネットを固着してアクチュエータ駆動用モータのロータを構成したものである。
【0017】
また上記構成に加えて、ロータに固着されたマグネットの磁極位置を検出する磁電変換素子を実装したプリント基板を備え、このプリント基板と対向する側のロータヨークに前記マグネットの内径より直径の小さい張り出し部を設け、前記プリント基板の中心に前記ロータの張り出し部より大きな穴を設けて前記ロータの張り出し部を貫通させ、前記張り出し部の端面をスラスト軸受部材として使用したものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば自動車エンジンのスロットルバルブや自動車の前照灯の光軸制御装置等に用いられるアクチュエータ駆動用のモータの応答性や振動・衝撃に対する耐久性を向上させることが出来る。
【0019】
本発明の請求項1に記載の発明は、カップ状の2つのロータヨークを連結部材により連結した状態でシャフトを固着するため2つのロータヨークの外周振れ位相が一致した状態で矯正されるため、ロータマグネットが組み付け不能になることがない。
【0020】
また、連結部材により2つのロータヨークを連結することにより2つのロータヨークの外周振れが矯正、相殺され、ロータのアンバランスが小さくなる。
【0021】
さらに連結部材が2つのロータヨークの開口部を連結して一体にするためロータヨーク組立体の剛性が向上し、モータの振動・衝撃に対する耐久性を向上させることが出来るという効果を有する。また、ロータヨーク組立体の剛性が向上するため従来よりロータヨークを薄肉化して軽量に構成することが可能であるため応答性をさらに改善することも可能である。
【0022】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の効果に加えて、カップ状の2つのロータヨークの一方のみにシャフトを固着するための突き出し部を設けることにより、突き出し部を設け無い他方のロータヨークのシャフトに対する固着力を弱く構成したため、連結部材により2つのロータヨークを連結する際に、突き出し部の無い側のロータヨークの外周振れが突き出し部を設けた側のロータヨークの外周振れに合わせて修正、矯正されるため、ロータマグネットが組み付け不能になることが無い。
【0023】
また、2つのロータヨークの外周振れが矯正、相殺され、ロータのアンバランスが小さくなるという効果を有する。
【0024】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1から請求項2に記載の発明の効果に加えて、突き出し部を設けたロータヨークの高さ寸法を直径と同等以下に形成することにより、突き出し部を設けたロータヨークの開口部側の外周振れが小さく出来るので、これに合わせて修正、矯正される他方のロータヨークの外周振れも一層小さく出来るという効果を有する。
【0025】
請求項4に記載の発明は、上記請求項1から請求項3に記載の発明の効果に加えて、2つのロータヨークの外周振れを規制した状態でこの2つのロータヨークを保持しながらシャフトを固着してロータヨーク組立体を形成することにより、容易かつ確実に2つのロータヨークの外周振れを合わせて修正・矯正することができるという効果を有する。
【0026】
請求項5に記載の発明は、上記請求項1から請求項4に記載の発明の効果に加えて、ロータヨーク組立体が一体に構成されているためスラスト方向の振動、衝撃が加わった際にも移動する可能性のある固着箇所が無いため、モータを構成する部品を増加させることなく、振動・衝撃に対する耐久性の高いブラシレスモータを実現出来るという効果を有する。
【0027】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のモータにおいて、ロータヨーク組立体の端面をスラスト軸受部材として使用する際のエンドプレーを正確に設定することが可能となるので、シャフトと平行方向の振動に対する耐久性を一層高めることができるという効果を有する。
【0028】
請求項7に記載の発明は請求項1から請求項6に記載された構造を持つモータを使用す
ることにより自動車エンジンのスロットルバルブや自動車の前照灯の光軸制御機装置等に用いられるアクチュエータ駆動用モータのロータ慣性モーメントを低減し、アクチュエータの応答性を改善するのみならず、アクチュエータを構成する部品の中で最も重く、振動・衝撃に弱い部品であるモータのロータ重量を低減することができるためアクチュエータの振動・衝撃に対する耐久性を向上させることが出来るという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0030】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係わるモータの断面構造図である。
【0031】
図1においてフレーム1410(図8のヨークブラケット8001と同じ)の内周面に、巻線1220が施された鉄心1210により構成されたステータが固着されている。そして、カップ状に成形され、開口部側に内径拡大部を設けたロータヨーク1121、1122をリング状の連結部材1123で連結した状態で、ロータヨーク1121、1122の中心を貫通してシャフト1110を固着してロータヨーク組立体1124を形成し、このロータヨーク組立体1124の外周面に筒状のマグネット1130を固着してロータ1100を構成している。またフレーム1410および1420にはロータ1100のシャフト1110を支持する軸受1301および1302が配置されており、ロータ1100は回転自在に保持されている。
【0032】
図2は図1でロータヨーク1121、1122、連結部材1123およびシャフト1110で構成されたロータヨーク組立体1124の詳細および組立方法を説明するための断面構造図である。
【0033】
図2においてカップ状に成形されたロータヨーク1121、1122はその中心にシャフト1110を固着(圧入)するための突き出し部1121a、1122aを持っているが、シャフト1110を固着(圧入)する前に連結部材1123で連結して一体化する。
【0034】
この際に連結部材1123の外径をロータヨークの開口部側の内径拡大部の直径よりわずかに小さく設定する事によってロータヨーク1121、1122の開口部外周の振れ位相が一致した状態で一体化される。この後にシャフト1110をロータヨーク1121、1122の中心を貫通して固着(圧入)する。
【0035】
かかる構成によればロータヨーク1121、1122を連結部材1123で連結して一体化することによりロータマグネットが組み付け不能になることがない。
【0036】
またロータヨーク1121、1122の開口部外周の振れが矯正され、ロータ1100のアンバランスが小さくなることにより運転時の振動・騒音が低減されるとともに、連結部材によって一体化することにより剛性が高くなるため、ロータが中空構造で慣性モーメントが小さいため応答性が高く、ロータが軽量・高剛性であるため振動・衝撃に対する耐久性が高いモータを実現することができる。
【0037】
さらにロータヨーク1121、1122は同一の形状であるためロータヨークを製作するための金型は1種類ですむ。この金型はロータヨークをカップ状に形成する際の深さが浅くて済むため製品の精度、金型の耐久性、金型費用の面で有利である。
【0038】
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の形態2に係わるモータのロータヨーク組立体の構造を示す断面構
造図である。
【0039】
図3においてカップ状に成形されたロータヨーク1121はその中心にシャフト1110を固着するための突き出し部1121aを持つが、もう一方のロータヨーク1122は突き出し部を持たず、ロータヨーク1122はシャフト1110に対する固着力をロータヨーク1121より弱く構成してあり、実施の形態1と同様にロータヨーク1121、1122を連結部材1123で連結して一体化した後にシャフト1110をロータヨーク1121、1122の中心を貫通して固着(圧入)する。
【0040】
かかる構成によれば突き出し部の無いロータヨーク1122の振れが突き出し部を持ったロータヨーク1121の振れに合わせて修正、矯正されるため、ロータマグネットが組み付け不能になることが無く、ロータ1100のアンバランスが小さくなることにより運転時の振動・騒音が低減されるとともに、連結部材によって一体化することにより剛性が高くなるため、ロータが中空構造で慣性モーメントが小さいため応答性が高く、ロータが軽量・高剛性であるため振動・衝撃に対する耐久性が高いモータを実現することができる。
【0041】
(実施の形態3)
図4は本発明の実施の形態3に係わるモータのロータヨーク組立体の構造を示す断面構造図である。
【0042】
図4においてカップ状に成形されたロータヨーク1121はその中心にシャフト1110を固着するための突き出し部1121aを持つが、もう一方のロータヨーク1122は突き出し部を持たず、ロータヨーク1122はシャフト1110に対する固着力をロータヨーク1121より弱く構成してある。
【0043】
また突き出し部1121aを持ったロータヨーク1121はその高さH41を直径D41と同等以下の寸法に構成してあり、突き出し部を持たないロータヨーク1122はロータヨーク1121と同じ直径D42を持つがその高さH42は前記H41より大きくなっており、実施の形態1と同様にロータヨーク1121、1122を連結部材1123で連結して一体化した後にシャフト1110をロータヨーク1121、1122の中心を貫通して固着(圧入)する。
【0044】
かかる構成によればシャフト1110をロータヨーク1121、1122の中心を貫通して固着(圧入)する際に突き出し部の無いロータヨーク1122の振れが突き出し部を持ったロータヨーク1121の振れに合わせて修正・矯正されるが、突き出し部を持ったロータヨーク1121の高さH41が直径D41と同等以下の寸法に構成してあるため、ロータヨーク1121の開口部外周の振れを実施の形態1の場合に比べ小さくすることができるため、ロータマグネットが組み付け不能になることが無く、ロータ1100のアンバランスがさらに小さくなることにより運転時の振動・騒音が低減される。
【0045】
また連結部材によって一体化することにより剛性が高くなるため、ロータが中空構造で慣性モーメントが小さいため応答性が高く、ロータが軽量・高剛性であるため振動・衝撃に対する耐久性が高いモータを実現することができる。
【0046】
(実施の形態4)
図5は本発明の実施の形態4に係わるモータのロータヨーク組立体の構造を示す断面構造図である。
【0047】
図5においてカップ状に成形されたロータヨーク5121、5122はその中心を貫通
してシャフト5110を固着(圧入)する前に組立治具(下側)5210に挿入され外周の振れが矯正された状態で保持される。この後組立治具(上側)5220によってシャフト貫通方向にロータヨーク5121および5122を押圧した状態でロータヨーク5121、5122の中心を貫通してシャフト5110を固着(圧入)する。
【0048】
かかる構成によればロータヨーク5121、5122は外周の振れが矯正された状態で開口部端面が接触しているため。その中心を貫通してシャフト5110を固着(圧入)した際にもロータヨーク5121、5122はお互いに干渉して他方の変形(外周の振れの拡大)を矯正、相殺するためロータマグネットが組み付け不能になることがない。
【0049】
またロータヨーク5121、5122の外周の振れが矯正され、ロータのアンバランスが小さくなることにより運転時の振動・騒音が低減されるとともに、ロータが中空構造で慣性モーメントが小さくなるため応答性が高く、ロータが軽量であるため振動・衝撃に対する耐久性が高いモータを実現することができる。
【0050】
(実施の形態5)
図6は本発明の実施の形態5に係わるモータの断面構造図である。
【0051】
なお図6において図1と同じ働きをする部品には図1と同じ符号を付与して説明を省略する。
【0052】
図6においてカップ状に成形されたロータヨーク1121はその中心にシャフト1110を固着するための突き出し部1121aを持つが、もう一方のロータヨーク1122は突き出し部を持たず、ロータヨーク1122はシャフト1110に対する固着力をロータヨーク1121より弱く構成してある。
【0053】
また突き出し部を持たないロータヨーク1122はマグネット1130の内径D63より小さい直径D61を持つ張り出し部を持ち、プリント基板1510の中心に開いたロータヨーク1122の張り出し部より大きな直径D62の穴にロータヨーク1122の張り出し部を貫通させ、ロータヨーク1122の張り出し部の端面をスラスト軸受部材として使用しており、実施の形態1と同様にロータヨーク1121、1122を連結部材1123で連結して一体化した後にシャフト1110をロータヨーク1121、1122の中心を貫通して固着(圧入)している。
【0054】
かかる構成によれば突き出し部の無いロータヨーク1122の振れが突き出し部を持ったロータヨーク1121の振れに合わせて修正、矯正されるため、ロータマグネット1130が組み付け不能になることが無く、ロータ1100のアンバランスが小さくなることにより運転時の振動・騒音が低減されるとともに、連結部材によって一体化することにより剛性が高くなるため、ロータ1100が中空構造で慣性モーメントが小さいため応答性が高く、ロータ1100が軽量・高剛性であるため振動・衝撃に対する耐久性が高いモータを実現することができる。
【0055】
また、ロータヨーク組立体1124が一体に構成されているためスラスト方向の振動、衝撃が加わった際にも移動する可能性のある固着箇所が無いため、モータを構成する部品を増加させることなく、振動・衝撃に対する耐久性の高いブラシレスモータを実現出来るという効果を有する。
【0056】
さらにロータヨーク1122が突き出し部を持たないことから張り出し部の直径D61を小さくすることによりプリント基板1510の穴の直径D62を小さくすることができるため、電子部品の実装面積を増やすことが可能になる。また突き出し部が無いためスラ
スト軸受として機能する部分の平面度・直角度等の精度を出すことも容易になる。
【0057】
(実施の形態6)
図7aは本発明の実施の形態6に係わるモータのロータヨークの構造を示す断面構造図、図7bはその組立方法を説明する説明図である。
【0058】
図7aにおいてカップ状に成形されたロータヨーク1121、1122はその中心にシャフト1110を固着(圧入)するための突き出し部1121a、1122aを持っている。シャフト1110を固着(圧入)する際には図7bに示すように先にロータヨーク1122とシャフト1110を先に固着(圧入)しておき、後から連結部材1123を挟んだ状態でロータヨーク1121を固着(圧入)する。
【0059】
この際にロータヨーク1121、1122の開口部を当接させず、図7aにL71で示すようなすきまを空けて離間した状態でロータヨーク1121、1122の中心にシャフト1110を固着してロータヨーク組立体1124を構成する。
【0060】
なおこの際には図5に組立治具(下側)5210として示した様な外周の振れを矯正した状態でロータヨーク1121を保持することのできる治具を使用する。
【0061】
かかる構成によればロータヨーク1121、1122の寸法に無関係に図7aのL72寸法を設定することができるためロータヨーク組立体1124の端面をスラスト軸受部材として使用する際のエンドプレーを正確に設定することができるため、シャフトと平行方向の振動に対する耐久性を高めることができる。
【0062】
また、ロータヨーク1121、1122を連結部材1123で連結して一体化することによりロータマグネットが組み付け不能になることがなく、ロータヨーク1121、1122の開口部外周の振れが矯正され、ロータ1100のアンバランスが小さくなることにより運転時の振動・騒音が低減されるとともに、連結部材によって一体化することにより剛性が高くなるため、ロータが中空構造で慣性モーメントが小さいため応答性が高く、ロータが軽量・高剛性であるため振動・衝撃に対する耐久性が高いモータを実現することができる。
【0063】
なお、以上の説明では、ロータヨークがシャフトを固着するための突き出し部を持った形状で構成した例で説明したが、ロータヨークとシャフトを固着するための部品を別に設けた場合についても同様に実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係るアクチュエータ駆動用モータは応答性や振動・衝撃に対する耐久性を向上させることが出来るため、自動車エンジンのスロットルバルブや自動車の前照灯の光軸制御装置等に用いられるアクチュエータ駆動用のモータとして有用である。
(その他の例1)
本発明に係るアクチュエータ駆動用モータはロータの慣性モーメントが小さく応答性がよいため、起動特性が重視されるプリンタやコピーマシン等の事務用機器のメカニズム駆動用のモータや、マニピュレータや小型ロボットの関節駆動用のモータとしても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態1によるモータを示す断面構造図
【図2】本発明の実施の形態1におけるロータヨーク、連結部材およびシャフトで構成されたロータヨーク組立体の詳細および組立方法を説明するための断面構造図
【図3】本発明の実施の形態2におけるロータヨーク、連結部材およびシャフトで構成されたロータヨーク組立体の断面構造図
【図4】本発明の実施の形態3におけるロータヨーク、連結部材およびシャフトで構成されたロータヨーク組立体の断面構造図
【図5】本発明の実施の形態4におけるロータヨークおよびシャフトで構成されたロータヨーク組立体の組立方法を説明するための断面構造図
【図6】本発明の実施の形態5によるモータを示す断面構造図
【図7】(a)本発明の実施の形態6によるロータヨークを示す断面構造図、(b)本発明の実施の形態6によるロータヨーク、連結部材およびシャフトで構成されたロータヨーク組立体の構造およびその組立方法を説明するための断面構造図
【図8】従来のモータ(特許文献1)の断面構造図
【図9】従来のモータ(特許文献1)の課題を説明するための図
【図10】従来のモータ(第2例)の断面構造図
【符号の説明】
【0066】
1100 ロータ
1110、5110、8006 シャフト
1121、1122、5121、5122、8022、8023 ロータヨーク
1121a、1122a シャフト固着のための突き出し部
1123 連結部材
1124 ロータヨーク組立体
1130、8021 マグネット
1140 スラストリング
1210、8002 鉄心
1220 巻線
1301、1302、8007 軸受
1410、1420、8001 フレームまたはヨークブラケット
1510 プリント基板
1521 磁電変換素子
5210 組立治具(下側)
5220 組立治具(上側)
H41、H42、H101 高さ
D63 内径
D91、D92、D93 外径
D41、D42、D61、D62、D101、D102 直径
L71、L72 寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部側に内径拡大部を設けたカップ状の2つのロータヨークと前記内径拡大部に外径が嵌合するリング状の連結部材とを備え、この連結部材に前記2つのロータヨークの両方の内径拡大部を挿入しながら前記2つのロータヨークの開口部端面を向かい合わせて連結し、連結した前記2つのロータヨークのそれぞれの中心にシャフトを固着して形成したロータヨーク組立体の外周にマグネットを固着してなるロータと、前記マグネットと対向して配置され巻線が施された鉄心よりなるステータと、前記ロータのシャフトを支承する軸受と、前記ステータを内挿し両端に前記軸受を保持するフレームとからなるブラシレスモータ。
【請求項2】
2つのロータヨークの一方にのみシャフトを固着するための突き出し部を設けた請求項1に記載のブラシレスモータ。
【請求項3】
突き出し部を設けたロータヨークの高さ寸法を直径と同等以下に形成し、他方のロータヨークの高さ寸法を突き出し部を設けたロータヨークの高さ寸法より大きく形成した請求項2に記載のブラシレスモータ。
【請求項4】
2つのロータヨークの外周振れを規制した状態でこの2つのロータヨークを保持しながらシャフトを固着してロータヨーク組立体を形成した請求項2から請求項3のいずれか1項に記載のブラシレスモータ。
【請求項5】
ロータに固着されたマグネットの磁極位置を検出する磁電変換素子を実装したプリント基板を備え、このプリント基板と対向する側のロータヨークに前記マグネットの内径より直径の小さい張り出し部を設け、前記プリント基板の中心に前記ロータヨークの張り出し部より大きな穴を設けて前記ロータヨークの張り出し部を貫通させ、前記張り出し部の端面をスラスト軸受け部材として使用した請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のブラシレスモータ。
【請求項6】
2つのロータヨークの開口部端面を当接させずに離間した状態で連結し、シャフトを固着してロータヨーク組立体を形成した請求項5に記載のブラシレスモータ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のブラシレスモータを搭載したアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−178204(P2008−178204A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8824(P2007−8824)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】