説明

アクチュエータ

【課題】ケースに対してターミナルを容易に固定でき、製造コストを削減できるアクチュエータを提供する。
【解決手段】モータケーシング35と、給電端子43と、モータケーシング35の前端部38から突出する回転軸20とを備えるモータ19と、一端がモータ19の給電端子43と接続され、他端に設けられて回転軸20の突出方向とは反対向きに伸びる第1のタブ状部84と、第1のタブ状部84の伸び方向に対して交差する方向に伸びる段部83とを備えるターミナル31と、モータケーシング35を収容したモータ収容部52と、相手方コネクタが接続される開口とは反対側の閉塞部54に第1のタブ状部84の先端が挿通された挿通孔70を設けたコネクタ部57とを備えるケース14と、ケース14の一部を構成し、モータ収容部52に収容されたモータケーシング35との間に段部83を挟持してターミナル31を固定するターミナル挟持部60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータに関し、例えばドアラッチ装置に組み込み可能なアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータが組み込まれたドアラッチ装置が知られている。このドアラッチ装置は、車両のトランクドアやハッチバックドアなどに使用される。ドアラッチ装置は、車体側に設けたストライカを保持するフック(フォーク)と、フックに係合して該フックがストライカを係止した状態に保持するラチェット(クロー)と、ラチェットをモータの駆動力によって作動させるアクチュエータとを備えている。
【0003】
アクチュエータは、モータと、モータによって回転するウォームホイールと、ウォームホイールに設けられたカムとがケース内に収容されて構成されている。モータが作動してモータの出力軸が回転すると、ウォームホイール、およびウォームホイールに形成されたカムが回転する。そして、このカムがラチェットを操作してフックとの係合を解除する。その結果、フックによるストライカの保持が解除され、ドアが開放可能となる。
【0004】
特許文献1に示すドアロック装置では、アクチュエータのモータ用ターミナルをインサート成形にてケースに一体的に成形する方法が採用されている。しかし、インサート成形によってターミナルをケースに装着する場合、ケースを成形する金型にターミナルを押さえるためのピン等の作動部材が必要となり、金型費の上昇によって製造コストを上昇させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平06−065585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ケースに対してターミナルを容易に固定でき、製造コストを削減できるアクチュエータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する手段として、本発明のアクチュエータは、モータケーシングと、給電端子と、前記モータケーシングの前端部から突出する回転軸とを備えるモータと、一端が前記モータの給電端子と接続され、他端に設けられて前記回転軸の突出方向とは反対向きに伸びる第1のタブ状部と、前記第1のタブ状部の伸び方向に対して交差する方向に伸びる段部とを備えるターミナルと、前記モータケーシングを収容したモータ収容部と、相手方コネクタが接続される開口とは反対側の閉塞部に前記ターミナルの前記第1のタブ状部の先端が挿通された挿通孔を設けたコネクタ部とを備えるケースと、前記ケースの一部を構成し、前記モータ収容部に収容された前記モータケーシングとの間に前記段部を挟持して前記ターミナルを固定するターミナル挟持部とを備えるようにした。
【0008】
この構成によれば、ターミナルの第1のタブ状部をモータ収容部側から挿通孔に挿通し、ターミナルの段部をケースのターミナル挟持部とモータケーシングとによって挟持することにより、モータの給電端子と接続されたターミナルをケースに容易に固定できる。
【0009】
前記モータケーシングは、前記回転軸が前記閉塞部から離れる向きに突出する姿勢で前記モータ収容部に収容され、前記ターミナル挟持部は、前記モータケーシングの後端部との間で前記ターミナルの前記段部を挟持することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、回転軸が閉塞部から離れる向きに突出する姿勢でモータ収容部に収容されたモータの後端部とターミナル挟持部との間で、ターミナルの段部を挟持することにより、モータの給電端子と接続されたターミナルをケースに容易に固定できる。
【0011】
前記ターミナルは、前記段部の伸び方向に伸びて前記モータの前記給電端子に接続された第2のタブ状部を一端に備えると共に、前記第2のタブ状部と前記段部の一端とを接続する前記第1のタブ状部の伸び方向に伸びる基部とを備え、前記第1のタブ状部の基端は、前記段部の他端に接続されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、第1のタブ状部を閉塞部の挿通孔に挿通し、基部を第1のタブ状部の伸び方向に伸びるように配置し、段部の伸び方向に伸びた第2のタブ状部をモータの給電端子に接続した状態で、段部をターミナル挟持部に当接させることができる。これにより、モータケーシングとターミナル挟持部との間で、ターミナルの段部を挟持することができ、モータの給電端子と接続されたターミナルをケースに容易に固定できる。
【0013】
前記モータ収容部の底壁に前記ターミナルの前記基部を収容する凹部が形成されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、モータ収容部内でターミナルの第1のタブ状部を挿通孔に容易に対応させて挿通できる。また、組み付け状態においても、モータと凹部に収容されたターミナルの基部とが干渉することを防止でき、モータをモータ収容部に確実に収容できる。したがって、ターミナルを容易かつ確実にケースに固定できる。
【0015】
前記ケースは、前記モータ収容部に収容された前記モータケーシングの前記前端部と当接し、前記モータケーシングの前記後端部が前記ターミナル挟持部との間に前記段部を挟持した状態を維持するように前記モータケーシングの変位を規制する規制部を備えることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、モータケーシングの後端部がターミナル挟持部との間に段部を挟持した状態を維持できる。したがって、ターミナルを容易かつ確実にケースに固定できる。
【0017】
前記ケースは、前記モータケーシングの前記後端部に設けられた円筒部を挟持する一対の保持板部を備えることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、一対の保持板部によってモータケーシングの後端部の円筒部をがたつきなく挟持できるので、モータをモータ収容部に確実に固定できる。したがって、ターミナルを容易かつ確実にケースに固定できる。
【0019】
前記ケースは、前記閉塞部の前記モータ収容部側における前記挿通孔の孔縁から前記回転軸の突出方向に伸びるターミナルガイド部を備えることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、回転軸の突出方向とは反対向きに伸びる第1のタブ状部を、ターミナルガイド部によって容易かつ確実に挿通孔に案内できる。
【0021】
前記ターミナルガイド部は、前記ターミナル挟持部に接続されていることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、ターミナルガイド部とターミナル挟持部とを一体的かつコンパクトに形成できる。
【0023】
前記モータケーシングは、一端が開口端のバレルと、前記バレルの前記開口端を閉鎖するエンドベルキャップとを備え、前記エンドベルキャップと前記ターミナル挟持部との間に前記ターミナルの前記段部が挟持され、前記ケースと前記エンドベルキャップは絶縁性材料からなることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、エンドベルキャップとターミナル挟持部との間でターミナルの段部を挟持できる。したがって、モータの給電端子と接続されたターミナルをケースに容易に固定できる。また、ケースとエンドベルキャップが絶縁性材料からなっているので、ターミナルとケースやエンドベルキャップとがショートするのを防止できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ターミナルの第1のタブ状部をモータ収容部側から挿通孔に挿通し、ターミナルの段部をケースのターミナル挟持部とモータケーシングとによって挟持することにより、モータの給電端子と接続されたターミナルをケースに容易に固定できる。したがって、ターミナル31を固定する専用の別部材が不要であり、ターミナル31を簡単に低コストにてケースに固定できる。また、コネクタ部に相手方コネクタが接続された際、ターミナルがコネクタ部内で後退するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明にかかるアクチュエータが組み込まれたラッチ装置を示す図。
【図2】ケースとカバーを図示していない本発明にかかるアクチュエータが組み込まれたラッチ装置を示す図。
【図3】本発明にかかるアクチュエータを示す平面図。
【図4】図3のIV−IV線断面図。
【図5】図3のV−V線断面図。
【図6】本発明にかかるアクチュエータのモータを示す図。
【図7】本発明にかかるアクチュエータのケースを示す平面図。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図。
【図9】ターミナルの側面図。
【図10】ターミナルの上面図。
【図11】ターミナルの正面図。
【図12】ターミナルのケースへの組み付け手順を示す図。
【図13】ターミナルのケースへの組み付け手順を示す図。
【図14】ターミナルのケースへの組み付け手順を示す図。
【図15】所定位置にターミナルが装着されたケースへのモータの組み付け手順を示す図。
【図16】所定位置にターミナルが装着されたケースへのモータの組み付け手順を示す図。
【図17】所定位置にターミナルが装着されたケースへのモータの組み付け手順を示す図。
【図18】ターミナルとエンドベルキャップとの間に挟み込まれた絶縁シートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0028】
図1は、本発明にかかるアクチュエータ10が組み込まれたラッチ装置11を示す。このラッチ装置11は、トランクドアやハッチバックドアなどの開閉体および車体のうち一方に装着され、他方に配設されたストライカ(図示せず)を離脱可能に係止することにより、ドアの閉塞状態を維持するものである。
【0029】
このラッチ装置11は、ベース12の開口がカバー13とケース14とによって覆われたケーシング15を備えている。
【0030】
図2に示すように、カバー13に覆われるベース12部分には、フォーク16およびクロー17を有するラッチ機構18が設けられている。
【0031】
図1に示すように、ケース14に覆われたベース12部分には、後述する操作部23が他部材の操作受部28に押圧可能なアクチュエータ10が着脱可能に装着されている。図3は、本発明にかかるアクチュエータ10を示す。このアクチュエータ10は、ケース14に、モータ19と、モータ19の回転軸20に取り付けられたウォーム21に噛み合うウォームホイール22とが収容されている。ウォームホイール22の外周には、径方向外側に突出するカム部(操作部)23が設けられている。このアクチュエータ10については後に詳述する。
【0032】
このラッチ装置11は、ドアを閉じると、ストライカがフォーク16の係止溝24に進入し、フォーク16が反時計回りに回動する。そして、図2に示すようにフォーク16の係止溝24がベース12の挿通溝25に対して略直交方向に位置すると、フォーク16の係止段部26にクロー17の係止部27が係合する。これにより、フォーク16がラッチ位置に維持される。
【0033】
このラッチ状態で、ラッチ開放操作部材である車内スイッチにより開放操作されると、そのスイッチ操作をコントローラが検知して、該コントローラがアクチュエータ10のモータ19を通電して回転作動させる。そうすると、ウォームホイール22が反時計周りに回転し、カム部23がクロー17の操作受部28を押圧し、クロー17が時計回りに回動する。そうすると、フォーク16の係止段部26とクロー17の係止部27との係止が解除される。そして、フォーク16が時計回りに回動することにより、ストライカを開放可能なアンラッチ状態となる。なお、コントローラは所定の時間が経過するとモータ19への通電を解除する。そうすると、ウォームホイール22は、内部のリターンスプリング(図示せず)の復元力により時計周りに回転し、回転前の初期位置へ戻る。
【0034】
このラッチ装置11は、手動によってラッチ機構18を解除するオープンレバー29をさらに備えている。このオープンレバー29もウォームホイール22と同軸となるように取り付けられている。オープンレバー29の一端には操作ハンドル(図示せず)が設けられ、他端には操作部30が設けられている。操作ハンドルが開放操作されると、オープンレバー29が反時計回りに回動され、操作部30がクロー17の操作受部28を押圧する。これにより、アクチュエータ10と同様にラッチ機構18が解除される。
【0035】
本発明にかかるアクチュエータ10について説明する。以下の説明では、図3のように、アクチュエータ10のケース14の開口を正面に見た場合において、長さ方向をモータ19の回転軸20と平行な方向とする。幅方向は、紙面上でモータ19の回転軸20と直交する方向とする。高さ(深さ)方向は、紙面と直交する方向とし、紙面の手前側が上、紙面側が下とする。
【0036】
図3に示すように、アクチュエータ10は、モータ19、ケース14、一対のターミナル31A,31B、およびウォーム21とウォームホイール22からなるウォームギヤ32を備えている。図4は、図3のIV−IV線断面図である。図5は、図3のV−V線断面図である。
【0037】
図6に示すように、モータ19は、モータケーシング35と回転軸20とを備えている。
【0038】
モータケーシング35は、一端が開口端33aのバレル33とバレル33の開口端33aを閉鎖する一端開口で筒状のエンドベルキャップ34とを有する。エンドベルキャップ34は絶縁性材料からなっている。図4に示すように、モータケーシング35は、回転軸20と平行であり、かつ互いに略平行な2つの平坦面36,37を備えている。この2つの平坦面36,37は、モータケーシング35において、軸方向全体に形成されている。バレル33の開口端33aと対向する閉塞面(前端部)38の略中央には、外側に突出するように前端部側円筒部39が設けられている。また、開口端33aと対向するエンドベルキャップ34の閉塞面(後端部)40の略中央には、外側に突出するように後端部側円筒部41が設けられている。図5に示すように、モータケーシング35の前端部38から後端部40までの長さはL1である。バレル33には、固定子(図示せず)、および回転軸20と一体化した回転子(図示せず)が収容されている。
【0039】
図6に示すように、エンドベルキャップ34の平坦面36には、エンドベルキャップ34の内部と外部の間を貫通する一対の貫通孔42A,42Bが設けられている。エンドベルキャップ34の貫通孔42A,42Bと隣接した内面には、一対の給電端子43A,43Bが設けられている。給電端子43は、貫通孔42を通して挿入された後述のターミナル31のモータ接続部81と電気的に接続されるようになっている。
【0040】
回転軸20は、内部にそれぞれ軸受を有する前端部側円筒部39と後端部側円筒部41とにより回転可能に支持されている。回転軸20は、一端がバレル33の前端部側円筒部39から突出している。回転軸20の他端は、エンドベルキャップ34の後端部側円筒部41から僅かに外側に延びただけである。
【0041】
前端部側円筒部39から外側に延びた回転軸20の先端には、ウォーム21が取り付けられている。ウォーム21は、先端部分に先端部45を備えている。
【0042】
図7に示すように、ケース14は一端開口の箱形状である。ケース14は絶縁性材料からなっている。ケース14は、内部に規制壁(規制部)51が設けられ、モータ収容部52とカム配設部53とが区画されている。ケース14には、カム配設部53と反対側でモータ収容部52に隣接するコネクタ部57が設けられている。
【0043】
モータ収容部52は、モータケーシング35を収容可能な略直方体の空間を有している。モータ収容部52は、規制壁51、規制壁51と対向する閉塞壁(閉塞部)54、規制壁51と閉塞壁54とを連結する2つの側壁55,55、および前記4つの壁51,54,55,55と連続する底壁56を備えている。図5に示すように、規制壁51と閉塞壁54との間の長さL2は、バレル33の前端部側円筒部39より径方向外側の閉塞面38と、エンドベルキャップ34の後端部側円筒部41に支持された回転軸20の端部との間の長さL3より長い。図3に示すように、一方の側壁55と他方の側壁55の間の幅は、モータケーシング35の外径とほぼ同じである。図4に示すように、前記4つの壁51,54,55,55の高さH1は、モータ19の一方の平坦面36と他方の平坦面37の間の距離H2と、後述する凹部66の深さH3とを合わせたものより高い。ケース14に組み付けられるベース12には、モータ収容部52に対応する位置に、モータ19の平坦面37と当接するモータ押さえ部77が設けられている。
【0044】
図7および図8に示すように、モータ収容部52の底壁56には、閉塞壁54と連続するようにターミナル固定部59が設けられている。ターミナル固定部59は、ターミナル挟持面(ターミナル挟持部)60とターミナルガイド面(ターミナルガイド部)61とを有している。ターミナル固定部59は、後述する一対のモータ保持板部63の間隔と同じ幅である。
【0045】
ターミナル挟持面60は、モータケーシング35の前端部38から後端部40までの長さL1にターミナル31の厚みdを加えた長さL4だけ規制壁51から閉塞壁54側に間隔をあけた所に位置している。ターミナル挟持面60は、回転軸20と略直交する。
【0046】
図8に示すように、ターミナルガイド面61は、閉塞壁54のモータ収容部52側における後述の一対の挿通孔70A,70Bそれぞれの孔縁から回転軸20の突出方向に伸びている。図4に示すように、ターミナルガイド面61は、ターミナルガイド面61の上に厚みdのターミナル31を配置した状態で、ターミナル31がモータ19の後端部側円筒部41と干渉しない高さに形成されている。ターミナルガイド面61は、ターミナル挟持面60と略直交するように接続されている。ターミナルガイド面61には、軸方向に延びるように補助ガイド部62が設けられている。幅方向には、挿通孔70Aと挿通孔70Bの間の中央に位置している。補助ガイド部62は、モータ19の後端部側円筒部41と干渉しない高さに形成されている。補助ガイド部62は、ターミナル31の厚みdと同じ高さ以上であることが好ましいが、ターミナル31を挿通孔70に案内できる程度の高さを有していればターミナル31の厚みd以下であってもよい。補助ガイド部62は、ターミナル31A,31Bそれぞれを対応する挿通孔70A,70Bそれぞれに案内するとともに、ケース14に装着されたターミナル31A,31B同士が接触するのを防止する。
【0047】
モータ収容部52の閉塞壁54には、一対のモータ保持板(モータ保持板部)63A,63Bが突設されている。モータ保持板63は、矩形である。モータ保持板63A,63Bは、モータ19の後端部側円筒部41を挟んで、長さ方向において、モータ収容部52の閉塞壁54からモータ19の後端部40までの範囲に延在している。図4に示すように、一対のモータ保持板63A,63Bは、幅方向には、回転軸20の両側にモータ19の後端部側円筒部41の外径と同じ間隔に配置されている。本実施形態においては、各モータ保持板63A,63Bは、上端がモータ19の後端部側円筒部41より上に位置し、下端は、ターミナル固定部59と連結されている。モータ保持板63は、モータケーシング35の閉塞面40に設けられた後端部側円筒部41を挟持する。
【0048】
図7および図8に示すように、モータ収容部52の底壁56には、開口面が略矩形状の凹部66が設けられている。図5に示すように、凹部66は、軸方向と直交する開口面の一方の端縁がモータ19のバレル33の領域に位置している。図7に示すように、回転軸20と直交する開口面の他方の端縁69は、モータ保持板63A,63Bの端面64A,64Bと隣接している。凹部66は、端縁69の中央部分では、モータ保持板63A,63Bとターミナル固定部59のターミナル挟持面60の両方と隣接するように拡張されている。この拡張領域67は、後述するターミナル31A,31Bの段部83A,83Bが収容される領域である。凹部66の幅方向の間隔は、一対のモータ保持板63A,63B間より広い。凹部66は、後述する一対のターミナル31A,31Bそれぞれのコネクタ接続部(第1のタブ状部)84A,84Bが一対の挿通孔70A,70Bそれぞれに対向する位置まで高さ方向に一対のターミナル31A,31Bそれぞれを移動可能な深さを有して底壁68が形成されている。凹部66は、組み付け状態において一対のターミナル31A,31Bそれぞれの基部82A,82Bを収容する大きさであり、基部82A,82Bとモータ19とは干渉しない。
【0049】
閉塞壁54には、モータ収容部52の内部とコネクタ部57の内部とを連通する一対の挿通孔70A,70Bが設けられている。挿通孔70Aには、ターミナル31Aが挿通される。挿通孔70Bには、ターミナル31Bが挿通される。挿通孔70A,70Bは、それぞれ、ターミナル31A,31Bのコネクタ接続部84A,84Bの断面形状とほぼ同じ断面形状の貫通孔である。挿通孔70Aは、幅方向には、モータ保持板63Aと補助ガイド部62の間に配置されている。挿通孔70Bは、幅方向には、モータ保持板63Bと補助ガイド部62の間に配置されている。一対の挿通孔70A,70Bは、補助ガイド部62から等距離に位置している。
【0050】
規制壁51の上端縁には、モータ19の前端部側円筒部39を支持する中間支持部71が設けられている。中間支持部71は、回転軸20と同軸に配置された仮想円の略下半分の領域が切り欠かれた部分の端縁面である。前記仮想円の直径は、前端部側円筒部39の外径とほぼ同じである。規制壁51は、モータ収容部52に収容されたモータケーシング35の閉塞面38と当接する。規制壁51は、モータケーシング35の後端部40がターミナル挟持面60との間に段部83を挟持した状態を維持するようにモータケーシング35の変位を規制する。
【0051】
規制壁51には、軸線に対して後述する軸部75側の端部に位置決め部78が設けられている。位置決め部78は、カム部23を非作動状態の初期位置に位置決めをする。カム部23の初期位置では、位置決め部78と、リターンスプリング(図示せず)により付勢されたウォームホイール22のカム部23とが当接する。
【0052】
モータ収容部52には、略対角線上に位置するように、ネジ孔72,72が設けられている。このネジ孔72,72にネジを挿通させ、アクチュエータ10をベース12に取り付ける。
【0053】
カム配設部53は、モータ19の軸線上に設けられた軸受部73を備えている。軸受部73は、モータ19の回転軸20に取り付けられたウォーム21の先端部45を支持する。また、カム配設部53の底壁74には、ウォーム21と噛み合うウォームホイール22と、オープンレバー29とを取り付けて軸支するための軸部75が高さ方向に突設されている。軸部75は、モータ19の回転軸20に対して位置規制部78と同じ側に位置している。軸部75は、先端がベース12に設けられた取り付け孔(図示せず)に内嵌される。
【0054】
モータ収容部52の閉塞壁54には、相手方コネクタと接続するコネクタ部57が設けられている。コネクタ部57は、モータ収容部52からカム配設部53とは反対側に突出している。コネクタ部57は先端側が開口した四角筒状である。図3に示すように、コネクタ部57には、一対のターミナル31A,31Bの端部であるコネクタ接続部84が内部に配置される。コネクタ部57は、相手方コネクタを係止する係止爪76を備えている。
【0055】
ターミナル31A,31Bは金属製であり、断面は矩形である。ターミナル31A,31Bはモータ19に駆動電力を供給する。ターミナル31A,31Bは、プラスターミナルとマイナスターミナルの一対で構成されている。
【0056】
図9ないし図11に示すように、ターミナル31Aは、モータ接続部(第2のタブ状部)81、基部82、段部83、およびコネクタ接続部(第1のタブ状部)84を備えている。
【0057】
モータ接続部81は、プラスターミナル31Aの一端に形成されている。図5に示すように、モータ接続部81は、基部82が凹部66の底壁68と当接した状態で、モータ19の貫通孔42に挿入されエンドベルキャップ34内部の給電端子43と接続できる長さである。モータ接続部81は、段部83の伸び方向に伸びている。
【0058】
基部82は、モータ接続部81と段部83とを接続する同一平面上でL字状に折れ曲がった部分である。基部82は、一端でモータ接続部81と直交するように連続している。基部82は、前記L字状に折れ曲がった部分の段部83側がコネクタ接続部84の伸び方向に伸びている。図5に示すように、基部82は、モータ19をケース14に装着した状態で、凹部66の底壁68と当接するように配置される。基部82のL字状部分のモータ接続部81側の長さは、モータ19の貫通孔42Aと挿通孔70Aの幅方向の間隔と同じである。基部82のL字状部分の段部83側の長さは、モータ19の貫通孔42Aとターミナル挟持面60の軸方向の間隔と同じである。
【0059】
段部83は、コネクタ接続部84の伸び方向に対して略垂直方向に伸びるように設けられている。段部83は、基部82の他端でモータ接続部81と同一方向に向かって延びるように連続している。段部83は、凹部66の底壁68から挿通孔70までの高さと同じ長さである。
【0060】
コネクタ接続部84は、基端が段部83の他端に接続されている。コネクタ接続部84は、段部83側の基部82が延びる方向と同方向、すなわちアクチュエータ10に装着した状態で、モータ19の回転軸20の突出方向とは反対向きに伸びている。コネクタ接続部84は、段部83がターミナル挟持面60と当接した状態で、コネクタ部57内に挿入された相手方コネクタと接続できる長さである。
【0061】
要するに、ターミナル31Aは、基部82から直角に折り曲げて段部83が形成され、段部83の先端を直角に折り曲げてコネクタ接続部84が形成されている。
【0062】
ターミナル31Bは、アクチュエータ10に装着した状態で、回転軸20を通り高さ方向に延びる面に対してターミナル31Aと左右対称な形状である。
【0063】
図3に示すように、ウォームギヤ32は、ウォーム21とウォーム21に噛み合うウォームホイール22とからなっている。ウォーム21は、モータ19の回転軸20に取り付けられている。ウォームホイール22には、軸心にケース14の軸部75を挿通する軸挿通孔85が設けられている。ウォームホイール22は、軸部75を挿通しカム配設部53に回転可能に配設される。ウォームホイール22の内部には、カム部23が操作受部28に当接していない非開放操作位置に復帰させるリターンスプリング(図示せず)が設けられている。カム部23は、組み付けられる装置の操作受部を押圧して作動可能な形状に形成されている。
【0064】
本発明にかかるアクチュエータ10のラッチ装置11への組み付け手順について説明する。
【0065】
図12に示すように、アクチュエータ10のケース14を開口を上向きにして置く。ターミナル31Aを、基部82が凹部66の底壁68側に向き、かつコネクタ接続部84がコネクタ部57側に向いた姿勢で、コネクタ接続部84の先端が挿通孔70Aに対向するように、底壁68の上方から底壁68側にターミナル31を移動させる。そして、図13に示すように、基部82を底壁68に当接させるとともに、コネクタ接続部84の先端の一部をモータ保持板63Aと補助ガイド部62の間のターミナルガイド面61に当接させる。
【0066】
次に、ターミナル31Aを段部83がターミナル固定部59のターミナル挟持面60に当接するまで図14中左側に移動させて、ターミナル31Aのコネクタ接続部84を挿通孔70Aに挿通させる。
【0067】
ターミナル31Bもターミナル31Aと同様の手順で組み付ける。
【0068】
そして、図15に示すように、予めウォーム21を回転軸20に取り付けたモータ19を、回転軸20が閉塞部54から離れる向きに突出する姿勢で給電端子43A,43Bがモータ収容部52の底壁56側に向くようにしてモータ収容部52の上方に移動させる。そして、図16に示すように、ウォーム21の先端部45をカム配設部53内の軸受部73に配置し、エンドベルキャップ34の後端部側円筒部41がモータ保持板63A,63B間に挿入されるようにして、モータケーシング35をモータ収容部52の上方からモータ収容部52の内側に移動させる。そして、エンドベルキャップ34の貫通孔42A,42Bにターミナル31A,31Bのモータ接続部81A,81Bを挿入しつつ、エンドベルキャップ34の閉塞面38とターミナル固定部59のターミナル挟持面60とによりターミナル31A,31Bの段部83A,83Bを挟み込むようにしてモータケーシング35をモータ収容部52に押し込む。モータケーシング35のバレル33をモータ収容部52の底壁56に当接するまで押し込むと、ターミナル31A,31Bのモータ接続部81A,81Bがモータ19の給電端子43A,43Bに接続される。そして、図17に示すように、ターミナル31A,31Bの段部83A,83Bはエンドベルキャップ34の閉塞面38とターミナル固定部59のターミナル挟持面60とにより挟持されターミナル31A,31Bはケース14に確実に固定される。一方、図4に示すように、モータ19は、エンドベルキャップ34の後端部側円筒部41が隙間のない状態でモータ保持板63A,63B間に挟み込まれている。これにより、ケース14内でのがたつきが防止されてモータ19がケース14に確実に固定される。
【0069】
なお、エンドベルキャップ34は、モータ19の回転軸20を保持するとともにモータ19内の給電端子43、ブラシ(図示せず)等を保持するが、絶縁性材料からなっているため、エンドベルキャップ34で各ターミナル31を挟み込んでもショートすることはない。
【0070】
しかしながら、大型のモータ19を使用する場合、回転軸20を保持する強度を大きくする必要があるため、エンドベルキャップ34は、鋼板のエンドベルと、樹脂性のブラシホルダとによって構成される。このタイプのモータ19では、鋼板のエンドベルが後端に位置するため、このエンドベルキャップ34で直接ターミナル31を押さえるようにすると、ショートしてしまう。このため、図18に示すように、ターミナル31とエンドベルキャップ34との間に、絶縁シート(絶縁部材)86を挟み込む必要がある。
【0071】
最後に、ケース14の軸部75に、ウォームホイール22とオープンレバー29を挿通させる。その際、ウォームホイール22のカム部23を位置決め部78と当接させる。その後、ケース14の開口にベース12をネジ止めして固定する。このようにして、ケース14内にモータ19ががたつくことなく収容保持された状態で、アクチュエータ10をラッチ装置11に装着できる。
【0072】
本発明によれば、ターミナル31のコネクタ接続部84をモータ収容部52側から挿通孔70に挿通し、ターミナル31の段部83をケース14のターミナル挟持面60とモータケーシング35とによって挟持することにより、モータ19の給電端子43と接続されたターミナル31をケース14に容易に固定できる。したがって、ターミナル31を固定する専用の別部材が不要であり、ターミナル31を簡単に低コストにてケースに固定できる。また、コネクタ部57に相手方コネクタが接続された際、ターミナル31がコネクタ部57内で後退するのを防止できる。
【0073】
凹部66の形成により、モータ収容部52内でターミナル31のコネクタ接続部84を挿通孔70に容易に対応させて挿通できる。組み付け状態においても、モータ19と凹部66に収容されたターミナル31の基部82とが干渉することを防止でき、モータ19をモータ収容部52に確実に収容できる。したがって、ターミナル31を容易かつ確実にケース14に固定できる。
【0074】
保持板部63によってモータケーシング35の後端部40の後端部側円筒部41をがたつきなく挟持できるので、モータ19をモータ収容部52に確実に固定できる。したがって、ターミナル31を容易かつ確実にケース14に固定できる。
【0075】
モータ収容部52の規制壁51により、モータケーシング35の後端部40がターミナル挟持面60との間に段部83を挟持した状態を維持できる。したがって、ターミナル31を容易かつ確実にケース14に固定できる。
【0076】
回転軸20の突出方向とは反対向きに伸びるコネクタ接続部84を、ターミナルガイド面61によって容易かつ確実に挿通孔70に案内できる。
【0077】
エンドベルキャップ34とターミナル挟持面60との間でターミナル31の段部83を挟持できる。したがって、モータ19の給電端子43と接続されたターミナル31をケース14に容易に固定できる。また、ケース14とエンドベルキャップ34が絶縁性材料からなっているので、ターミナル31とケース14やエンドベルキャップ34とがショートするのを防止できる。
【0078】
ターミナルガイド面61とターミナル挟持面60と接続することにより、ターミナルガイド面61とターミナル挟持面60とを一体的かつコンパクトに形成できる。
【符号の説明】
【0079】
10 アクチュエータ
14 ケース
19 モータ
20 回転軸
31,31A,31B ターミナル
33 バレル
33a 開口端
34 エンドベルキャップ
35 モータケーシング
38 閉塞面(前端部)
40 閉塞面(後端部)
41 後端部側円筒部
43A,43B 給電端子
51 規制壁(規制部)
52 モータ収容部
54 閉塞壁(閉塞部)
56 底壁
57 コネクタ部
60 ターミナル挟持面(ターミナル挟持部)
61 ターミナルガイド面(ターミナルガイド部)
63A,63B モータ保持板(モータ保持板部)
66 凹部
70A,70B 挿通孔
81 モータ接続部(第2のタブ状部)
82 基部
83 段部
84,84A,84B コネクタ接続部(第1のタブ状部)
H1 モータ収容部の壁の高さ
H2 モータの一方の平坦面と他方の平坦面の間の距離
H3 凹部の深さ
L1 モータケーシングの前端部から後端部までの長さ
L2 規制壁と閉塞壁の間の長さ
L3 規制壁と後端部側円筒部に支持された回転軸の端部の間の長さ
L4 長さL1にターミナルの厚みdを加えた長さ
d ターミナルの厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータケーシングと、給電端子と、前記モータケーシングの前端部から突出する回転軸とを備えるモータと、
一端が前記モータの給電端子と接続され、他端に設けられて前記回転軸の突出方向とは反対向きに伸びる第1のタブ状部と、前記第1のタブ状部の伸び方向に対して交差する方向に伸びる段部とを備えるターミナルと、
前記モータケーシングを収容したモータ収容部と、相手方コネクタが接続される開口とは反対側の閉塞部に前記ターミナルの前記第1のタブ状部の先端が挿通された挿通孔を設けたコネクタ部とを備えるケースと、
前記ケースの一部を構成し、前記モータ収容部に収容された前記モータケーシングとの間に前記段部を挟持して前記ターミナルを固定するターミナル挟持部と
を備えるアクチュエータ。
【請求項2】
前記モータケーシングは、前記回転軸が前記閉塞部から離れる向きに突出する姿勢で前記モータ収容部に収容され、
前記ターミナル挟持部は、前記モータケーシングの後端部との間で前記ターミナルの前記段部を挟持する、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記ターミナルは、前記段部の伸び方向に伸びて前記モータの前記給電端子に接続された第2のタブ状部を一端に備えると共に、前記第2のタブ状部と前記段部の一端とを接続する前記第1のタブ状部の伸び方向に伸びる基部とを備え、
前記第1のタブ状部の基端は、前記段部の他端に接続されている、請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記モータ収容部の底壁に前記ターミナルの前記基部を収容する凹部が形成されている、請求項3に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記ケースは、前記モータ収容部に収容された前記モータケーシングの前記前端部と当接し、前記モータケーシングの前記後端部が前記ターミナル挟持部との間に前記段部を挟持した状態を維持するように前記モータケーシングの変位を規制する規制部を備える、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記ケースは、前記モータケーシングの前記後端部に設けられた円筒部を挟持する一対の保持板部を備える、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記ケースは、前記閉塞部の前記モータ収容部側における前記挿通孔の孔縁から前記回転軸の突出方向に伸びるターミナルガイド部を備える、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記ターミナルガイド部は、前記ターミナル挟持部に接続されている、請求項7に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記モータケーシングは、一端が開口端のバレルと、前記バレルの前記開口端を閉鎖するエンドベルキャップとを備え、
前記エンドベルキャップと前記ターミナル挟持部との間に前記ターミナルの前記段部が挟持され、
前記ケースと前記エンドベルキャップは絶縁性材料からなる、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−110078(P2012−110078A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255118(P2010−255118)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】