説明

アクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造

【課題】 画面が大型化してもディスプレイ装置を安定して駆動させることができるアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造を提供する。
【解決手段】 アクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置1において、基板2の裏面22の一端側には共通電源伝送線路10が延設されており、この共通電源伝送線路10は電源に電気的に接続されるように構成されている。また裏面22において共通電源伝送線路10より他端側には画素アレイ6が設けられており、この画素アレイ6は共通電源伝送線路10に電気的に接続されている。一方、カバー4は基板2とで共通電源伝送線路10を囲むチャネル44を形成しており、チャネル44内には共通電源伝送線路10を被覆する被覆材18が設けられている。この被覆材18は導電性を有しており、共通電源伝送線路10と、前記カバー4とで本発明の電流供給構造を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置において、電源から画素アレイに電流を供給する電流供給構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば特許文献1に示すような有機発光ダイオード(OLED)を用いたディスプレイ装置は、高性能の潜在特性を有することからフラットディスプレイ装置の主流の一つとなっている。この有機発光ダイオードは、元来、パッシブマトリクス方式で駆動されるディスプレイ装置の発光材として多く用いられてきた。しかし、このようなディスプレイ装置は入力される電荷量に比例して有機発光ダイオードによる発光がなされることから、画面の解像度を上げる場合には以下の基本的な問題が発生する。
【0003】
すなわち画面の解像度が上がると各画素の駆動時間が減少するため、装置を駆動させるのに高い電流密度が必要となる。したがって、インジウムスズ酸化物(ITO)または類似の導電材を用いた内部回路において大幅な電圧降下を招いてしまうため、有機発光ダイオードを高電圧で駆動させなければならない。
【0004】
前述の問題に対しては既にアクティブマトリクス駆動技術が開発されており、これに伴ってアクティブマトリクス駆動用の有機発光ダイオード(AMOLED)も急速に発展してきている。このアクティブマトリクス駆動技術は発光ディスプレイ装置の画素を充電する一種の方法であり、一般的に薄膜トランジスタが使用されている。この薄膜トランジスタは、通常ポリシリコンの関連技術を用いて形成されている。
【0005】
また電流をマトリクス状に配列された各画素に送るために、パッシブマトリクス型ディスプレイ装置では単純な導電グリッドを用いているのに対し、アクティブマトリクス型ディスプレイ装置では充電を一定時間維持するトランジスタグリッドを用いている。
【0006】
またアクティブマトリクス型ディスプレイ装置では、トランジスタのスイッチング動作によって必要な画素だけを駆動させることからパッシブマトリクス型のディスプレイ装置に比べて画像品質を上げることができ、さらにトランジスタの充電維持機能によって駆動した画素は更新されるまでその状態を維持することができる。
【0007】
したがってアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置では、各画素で一定の電流源を生成するために前述した薄膜トランジスタを用いており、各画素には全フレーム期間で一定の電流が供給されるように構成されている。このため、パッシブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の時に発生していた高電流の問題は解決されている。
【0008】
しかし有機発光ディスプレイ装置で用いられる薄膜トランジスタの技術は、液晶ディスプレイ装置で用いられる薄膜トランジスタの技術とは異なる。すなわち有機発光ダイオードは自己発光することから、この有機発光ダイオードを発光させるために電源からの電流は全て、共通電源伝送線路を介して基板上に設けられた画素アレイ内の薄膜トランジスタへ供給されている。また共通電源伝送線路が画素アレイへ供給するのに必要な電流量は、例えば画面の大きさが2平方インチの小型ディスプレイ装置を駆動する場合に300ミリアンペアと比較的低いものとなっている。
【特許文献1】米国特許第6,013,384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながらこのような共通電源伝送線路は一般的に薄く形成されていることから電気抵抗が大きい。このため、例えば30インチの大画面を有したディスプレイ装置を駆動する場合には、共通電源伝送線路が画素アレイへ供給するのに必要な電流量が5アンペア〜10アンペアに増大し、共通電源伝送線路にかかる電圧が27ボルトと高くなる。したがって、ディスプレイ装置が駆動しなくなる、あるいは各画素の動作に不具合が生じて輝度が均一にならない問題があった。
【0010】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、画面が大型化してもディスプレイ装置を安定して駆動させることができるアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために本発明のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造においては、電源から基板の裏面に設けられた画素アレイに電流を供給するアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造において、前記基板の裏面に設けられ、前記電源と前記画素アレイとを電気的に接続する共通電源伝送線路と、前記基板の裏面に設けられ、前記基板とで前記共通電源伝送線路を囲むチャネルを形成するカバーと、前記チャネル内に設けられ、前記共通電源伝送線路を被覆する被覆材とを備え、この被覆材は導電性を有していることを特徴としている。
【0012】
また本発明のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造においては、前記カバーは、前記基板の裏面で前記共通電源伝送線路全体の左右側にわたって立設された一対の側壁部と、両側壁部の上面全体に結合して前記共通電源伝送線路を覆う上壁部とを備え、この上壁部と前記一対の側壁部と前記基板とにより前記チャネルを構成したことを特徴としている。
【0013】
また本発明のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造においては、前記共通電源伝送線路および前記チャネルは、前記基板の裏面の一端側に設けられたことを特徴としている。
【0014】
また本発明のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造においては、前記被覆材は、導電性で且つ変形可能な材料を用いて形成されたことを特徴としている。
【0015】
また本発明のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造においては、前記被覆材は、導電性のエポキシ材を用いて形成されたことを特徴としている。
【0016】
また本発明のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造においては、前記共通電源伝送線路は、薄膜状に形成された導電リードであることを特徴としている。
【0017】
また本発明のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造においては、前記カバーは、前記画素アレイの周囲を囲んで前記基板の裏面に立設された周壁部と、この周壁部の上面全体に結合して前記画素アレイを覆う第二の上壁部とを備え、この第二の上壁部は、前記周壁部と前記基板とで密閉空間を形成するように形成されたことを特徴としている。
【0018】
また本発明のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造においては、前記密閉空間内には乾燥剤が設けられたことを特徴としている。
【0019】
また本発明のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造においては、前記チャネルの断面積は0.005mm〜5mmであることを特徴としている。
【0020】
また本発明のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造においては、前記被覆材の断面積は0.005mm〜5mmであることを特徴としている。
【0021】
また本発明のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造においては、前記被覆材の厚さは0.01〜1mmであることを特徴としている。
【0022】
また本発明のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造においては、前記被覆材は、前記カバーを前記基板に接着させる導電性の接着剤であることを特徴としている。
【0023】
したがって要約すると、本発明のアクティブマトリクス型有機ディスプレイ装置の電流供給構造は、基板と、共通電源伝送線路と、カバーと、被覆材と、画素アレイとを含む。共通電源伝送線路とカバーは基板の裏面に設けられ、カバーは基板とチャネルを形成する。また被覆材は導電性を有し、チャネル内に設けられて共通電源伝送線路を被覆する。そして画素アレイは基板の裏面に設けられて共通電源伝送線路に電気的に接続され、この共通電源伝送線路と被覆材とを介して電源から電流が供給される。
【0024】
また画素アレイは周知のように縦横に交差した複数のデータライン及びゲートラインと、両ラインによってマトリクス状に形成された複数の画素とを備えている。各画素は電流が供給されるとエレクトロルミネセンスの原理により発光するものであり、例えば有機発光ダイオードと薄膜トランジスタとを備えたものでも良い。また基板の裏面にパターン化された導電性の薄膜を形成し、この薄膜によって各画素を共通電源伝送線路に接続するインターコネクトリードを構成したり、共通電源伝送線路の一部を構成してもよい。
【0025】
またカバーは、画素アレイをカバーするように形成しても良いし、基板との間にチャネルを形成するような溝を形成し、チャネル内の少なくとも一部に被覆材が入るようにしても良い。そして被覆材は共通電源伝送線路を被覆した状態で電気的に接続されることにより、共通電源伝送線路が電源から各画素への電力を供給するのを補助するため、画面が大型化しても高電流を受けることが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造においては、電流が通る部分の断面積が大きくなるようにしたため抵抗が小さくなる。したがって大型の画面を有するアクティブマトリクスディスプレイ装置に設けた場合に、供給される電流値が大きくなっても電圧が従来よりも低く抑えられる。よって、安定して駆動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明についての目的、特徴、長所が一層明確に理解されるよう、以下に実施の形態を例示し、図面を参照にしながら、詳細に説明する。
【0028】
第1の実施の形態:
図1は、本発明の第1の実施の形態を示すアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置1を裏側から見た要部斜視図であり、図2はこのディスプレイ装置1の平面図である。このディスプレイ装置1は、基板2と、基板2の裏面22に設けられたカバー4とを中心にして構成されている。
【0029】
基板2は、ガラス、水晶または各種透光プラスチック等の透光材を用いて形成されている。そして基板2の裏面22において一端側には共通電源伝送線路10が延設されており、この共通電源伝送線路10は電源(図示せず)に電気的に接続されるように構成されている。
【0030】
さらに裏面22において共通電源伝送線路10より他端側には画素アレイ6が設けられており、画素アレイ6は共通電源伝送線路10に電気的に接続されている。また画素アレイ6は、周知のように縦横に交差した複数のデータライン及びゲートラインと、両ラインによってマトリクス状に形成された複数の画素とを備えている。各画素は裏面22に形成された有機発光ダイオードと対応する薄膜トランジスタとをそれぞれ備えており、電流が供給されると有機発光ダイオードがエレクトロルミネセンスの原理で発光するように構成されている。
【0031】
一方、カバー4は、基板2の裏面22の一端側で共通電源伝送線路10全体の左右側にわたって立設された一対の側壁部41、41と、画素アレイ6よりも他端側に立設された側壁部42と、これらの側壁部41、41、42の上面全体に結合したカバー本体43とを備えている。
【0032】
カバー本体43は共通電源伝送線路10と画素アレイ6とを覆うように形成されており、本発明にかかる上壁部を構成している。一方、一端側の側壁部41、41はカバー本体43との間に溝24を形成しており、底面28が基板2の裏面22に面接して結合されている。これによりカバー4は、基板2とで共通電源伝送線路10を囲むチャネル44を形成している。
【0033】
このチャネル44は断面積が0.005〜5mmの範囲に設定されており、チャネル44内には、共通電源伝送線路10を被覆する被覆材18が少なくとも部分的に設けられている。そしてこの被覆材18は導電性を有しており、共通電源伝送線路10と、前記カバー4とで本発明の電流供給構造を構成している。
【0034】
またこの被覆材18は、断面積が0.005〜5mm、厚さが0.01〜1mmの範囲にそれぞれ設定されている。なお断面積および厚さは本実施の形態において設定したものであり、他の実施の形態では本実施の形態と異なる値に設定しても良い。
【0035】
かかる構成においては、電流が通る部分(被覆材18と共通電源伝送線路10)の断面積が、従来の電流供給構造において電流が通る部分(共通電源伝送線路10のみ)の断面積よりも被覆材18を設けた分だけ大きくなる。このため、この部分の抵抗が小さくなり電流容量が増加する。したがって、例えば30インチの大画面を有するディスプレイ装置に本実施の形態の電流供給構造を適用した場合には、供給される電流値が大きくなっても電圧を従来よりも低く抑えられる。よって本実施の形態の電流供給構造においては、画面が大型化してもディスプレイ装置を安定して駆動させることができる。
【0036】
第2の実施の形態:
図3は、本発明の第2の実施の形態を示すアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置100の背面図であり、図4はこのディスプレイ装置100の要部側面図である。本実施の形態では第1の実施の形態よりもさらに詳細に説明する。このディスプレイ装置100は、30インチの大型画面を有しており、基板102と、基板102の裏面122に設けられたカバー104とを中心にして構成されている。
【0037】
基板102は第1の実施の形態の基板2と同様に透光材を用いて形成されており、基板102の裏面122には、一端側に共通電源伝送線路110が延設されている。この共通電源伝送線路110は導電リード120から構成され、電源供給線114と電源供給接点116とを介して電源(図示せず)に電気的に接続されるように構成されている。また導電リード120は、ITO、アルミニウム、銅、またはその他の適合する導電材料を用いて直線状且つ薄膜状に形成されており、厚さが0.3ミクロン〜0.5ミクロンに設定されている。
【0038】
また基板102の裏面122には、共通電源伝送線路110の他端側にインターコネクトリード112が設けられており、インターコネクトリード112は一端側が共通電源伝送線路110に接続されている。このインターコネクトリード112は、ITO、アルミニウム、銅、またはその他の適合する導電材料を用いて薄膜状に形成されており、厚さが0.5ミクロン以下に設定されている。なお、このインターコネクトリード112と前記導電リード120は同じ導電材料を用いて形成しても良い。
【0039】
さらに基板102の裏面122には、インターコネクトリード112の他端側に画素アレイ106が設けられている。この画素アレイ106は、その幅106aが共通電源伝送線路110よりも短く設定されてインターコネクトリード112の他端側に接続されている。また画素アレイ106は周知のように縦横に交差した複数のデータライン及びゲートラインと、両ラインによってマトリクス状に形成された複数の画素とを備えており、各画素は裏面122に形成された有機発光ダイオードと対応する薄膜トランジスタとをそれぞれ備えている。また、有機発光ダイオードは各種方法を用いて形成しても良い。
【0040】
一方、前記カバー104は、図2に示すように基板102の裏面122の端部108にまで広がって形成されており、裏面122において共通電源伝送線路110の左右側の一方に垂直に立設された側壁部130と、共通電源伝送線路110の左右側の他方で画素アレイ106の周囲を囲んで立設された周壁部131と、側壁部130上面全体と周壁部131上面全体とに結合したカバー本体133とを備えている。
【0041】
側壁部130と周壁部131は共通電源伝送線路110の左右側全体にわたって平行且つ同じ高さに形成されており、カバー本体133との間に溝124を形成している。そして両壁部130、131は底面128が裏面122に面接して結合されており、これによってカバー104は基板102とで共通電源伝送線路110を囲むチャネル126を形成している。
【0042】
このチャネル126は、断面領域が幅140と高さ142で定義されている。高さ142は0.2mm〜1mmの範囲に設定されている。なお断面領域の幅と高さは本実施の形態において設定したものであり他の実施の形態では異なっても良い。また断面領域の面積(断面積)は0.005mm〜5mmの範囲に設定されている。例えば断面積が0.7mmの場合には、幅140が2mmで高さ142が0.35mmである。
【0043】
そしてこのチャネル126内には、導電リード120を被覆する被覆材118が充填されている。この被覆材118は導電性を有しており、前記共通電源伝送線路110と、前記カバー104とで本発明の電流供給構造を構成している。
【0044】
またこの被覆材118は導電リード120と連続面を形成している一方、チャネル126内に充填されていることから被覆材118と導電リード120とを合わせた断面積がチャネル126の断面積と同じ値になっている。
【0045】
一方、カバー本体133は基板102の裏面122と平行に配置されて画素アレイ106と共通電源伝送線路110とを覆うように形成されており、本発明にかかる上壁部と第二の上壁部とを構成している。さらにこのカバー本体133は、周壁部131と基板102とで密閉空間132を形成するように形成されており、密閉空間132内には乾燥剤134が設けられている。
【0046】
かかる構成においてディスプレイ装置100を駆動するには、電源供給接点16に電源を接続する。これにより電源から供給される電流が電源供給接点16と電源供給線114とを介して被覆材118および導電リード120に送られ、さらにインターコネクトリード112を介して画素アレイ6の各画素の薄膜トランジスタに送られる。すると、薄膜トランジスタに接続された有機発光ダイオードがエレクトロルミネセンスの原理により発光する。
【0047】
そして本実施の形態の電流供給構造では共通電源伝送線路110を被覆材118で被覆したことにより、電流が通る部分(被覆材118と共通電源伝送線路110)の断面積が、従来の電流供給構造において電流が通る部分(共通電源伝送線路110のみ)の断面積よりも被覆材118を設けた分だけ大きくなる。このため、この部分の抵抗値は0.01オームより小さくなり電流容量が増加する。したがって、本実施の形態のように30インチの大画面を有する大型ディスプレイ装置100にこの電流供給構造を設けた場合には、駆動に必要である5アンペア〜10アンペアという高い電流を供給しても、この構造にかかる電圧が従来よりも低く抑えられる。
【0048】
具体的に説明すると、共通電源伝送線路10と導電材18との合計断面積が0.7mmの場合には抵抗値が0.0046オームとなる。これは従来に比べて抵抗値がほぼ1000倍前後小さくなるとともに電圧を1000倍前後小さくさせることができる。よって、本実施の形態の電流供給構造においては、大画面を有するディスプレイ装置100を安定して駆動させることができ、各画素の輝度の均一化を図ることができる。
【0049】
第3の実施の形態:
図5は、本発明の第3の実施の形態を示すアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置200においてカバー104取付時の状態を示す要部側面図である。なお本実施の形態では第2の実施の形態と同じ部分には同じ符号を付し、異なる部分を中心にして説明する。本実施の形態では共通電源伝送線路210を被覆する被覆材として導電性のエポキシ材(接着剤)218が使用されており、このエポキシ材218と、共通電源伝送線路210と、カバー104とで本発明の電流供給構造を構成している。またこのエポキシ材218はレーザー光236を照射することによって硬化するように構成されている。
【0050】
かかる構成においてカバー104を設置するには、まずカバー104を基板102の裏面122の所定位置に置き、チャネル126内にエポキシ材218をチャネル126の長さ方向に充填しないように入れる。そしてカバー104の上方からエポキシ材218に向けてレーザー光236を照射してエポキシ材218を硬化させて、カバー4を裏面122に固定させる(図6参照)。このときチャネル126内には空隙領域238が形成される。
【0051】
そして本実施の形態の電流供給構造においても、前述した各実施の形態と同様に、電流が通る部分(エポキシ218と共通電源伝送線路210)の断面積が、従来の電流供給構造において電流が通る部分(共通電源伝送線路210のみ)の断面積よりも被覆材18を設けた分だけ大きくなる。したがって、この部分の抵抗が小さくなって電流容量が増加するため、大画面を有するディスプレイ装置に本実施の形態の電流供給構造を適用した場合に、供給される電流値が大きくなっても電圧を従来よりも低く抑えられるので、ディスプレイ装置を安定して駆動させることができる。
【0052】
なお被覆材は導電性を有する材料であれば、液体、ゲル、粉末等、チャネル内に容易に入れられる変形可能な材料を用いても良く、溶解した導電性ガラスフリットを用いた金属ろう付け法、共晶はんだを用いた共晶ろう付け法等で形成しても良い。さらに被覆材はエポキシ材218の他に、紫外線照射や熱で硬化する導電性の硬化性接着剤を使用しても良い。またカバーは接着剤を用いる他に接着剤以外の方法で基板に固定しても良く、カバーが基板に固定された後に、液体、ゲル、粉末、錠剤またはエポキシ材等を用いて被覆材を固定したりあるいは硬化させて良い。
【0053】
なお各実施の形態で説明した内容および図は本発明の原則を簡単に述べている。本発明の精神及び範囲を逸脱しない限りにおいては、当業者であれば行い得る少々の変更や修飾を付加することは可能である。例えば図3の共通電源伝送線路110は画素アレイ106に比べて長く形成されているが、画素アレイ106とほぼ同じ長さ、または少し短くしても良い。また共通電源伝送線路とチャネルは、画素アレイの一方側よりずっとさらに延ばして形成しても良い。
【0054】
また実施の形態で使用された語句、例えば「平行」、「垂直」等は、全て図に対応して行われた説明であり、本発明を制限するものではない。
【0055】
以上、本発明の好適な実施の形態を例示したが、これは本発明を限定するものではなく、本発明の精神及び範囲を逸脱しない限りにおいては、当業者であれば行い得る少々の変更や修飾を付加することは可能である。従って、本発明が保護を請求する範囲は、特許請求の範囲を基準とする。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように本発明のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造においては、画面が大型化してもディスプレイ装置を安定して駆動させることができるので、この技術分野で十分使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示すアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置を裏側から見た要部斜視図である。
【図2】同実施の形態のディスプレイ装置の平面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態を示すアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の背面図である。
【図4】同実施の形態のディスプレイ装置の要部側面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態を示すアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置においてカバー取付時の状態を示す要部側面図である。
【図6】同実施の形態においてカバーが取り付けられた状態を示す要部側面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 アクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置
2 基板
4 カバー
6 画素アレイ
10 共通電源伝送線路
18 被覆材
22 裏面
41 側壁部
43 カバー本体
44 チャネル
100 アクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置
102 基板
104 カバー
110 共通電源伝送線路
118 被覆材
120 導電リード
126 チャネル
130 側壁部
131 周壁部
132 密閉空間
133 カバー本体
134 乾燥剤
200 アクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置
210 共通電源伝送線路
218 エポキシ材(被覆材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から基板の裏面に設けられた画素アレイに電流を供給するアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造において、
前記基板の裏面に設けられ、前記電源と前記画素アレイとを電気的に接続する共通電源伝送線路と、
前記基板の裏面に設けられ、前記基板とで前記共通電源伝送線路を囲むチャネルを形成するカバーと、
前記チャネル内に設けられ、前記共通電源伝送線路を被覆する被覆材とを備え、
この被覆材は導電性を有していることを特徴とするアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造。
【請求項2】
前記カバーは、
前記基板の裏面で前記共通電源伝送線路全体の左右側にわたって立設された一対の側壁部と、
両側壁部の上面全体に結合して前記共通電源伝送線路を覆う上壁部とを備え、
この上壁部と前記一対の側壁部と前記基板とにより前記チャネルを構成したことを特徴とする請求項1記載のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造。
【請求項3】
前記共通電源伝送線路および前記チャネルは、前記基板の裏面の一端側に設けられたことを特徴とする請求項1記載のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造。
【請求項4】
前記被覆材は、導電性で且つ変形可能な材料を用いて形成されたことを特徴とする請求項1記載のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造。
【請求項5】
前記被覆材は、導電性のエポキシ材を用いて形成されたことを特徴とする請求項1記載のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造。
【請求項6】
前記共通電源伝送線路は、薄膜状に形成された導電リードであることを特徴とする請求項1記載のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造。
【請求項7】
前記カバーは、
前記画素アレイの周囲を囲んで前記基板の裏面に立設された周壁部と、
この周壁部の上面全体に結合して前記画素アレイを覆う第二の上壁部とを備え、
この第二の上壁部は、前記周壁部と前記基板とで密閉空間を形成するように形成されたことを特徴とする請求項1記載のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造。
【請求項8】
前記密閉空間内には乾燥剤が設けられたことを特徴とする請求項7記載のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造。
【請求項9】
前記チャネルの断面積は0.005mm〜5mmであることを特徴とする請求項1記載のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造。
【請求項10】
前記被覆材の断面積は0.005mm〜5mmであることを特徴とする請求項1記載のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造。
【請求項11】
前記被覆材の厚さは0.01〜1mmであることを特徴とする請求項1記載のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造。
【請求項12】
前記被覆材は、前記カバーを前記基板に接着させる導電性の接着剤であることを特徴とする請求項1記載のアクティブマトリクス型有機発光ディスプレイ装置の電流供給構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−23746(P2006−23746A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198715(P2005−198715)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(304060520)友達光電股▲ふん▼有限公司 (15)
【Fターム(参考)】