説明

アクティブマトリクス駆動型有機エレクトロルミネッセンス表示装置

【課題】本発明は、特性の劣化を受けることなく、抵抗の小さい電極を備えた、トップエミッション型の光取り出しに向く、アクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置を提供することを課題とする。
【解決手段】画素毎に形成された第一電極と、第二電極と、両電極間に配置された有機発光媒体層と、前記第一電極に接続された薄膜トランジスタを備えたアクティブマトリクス駆動型有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、有機発光媒体層側とは反対面の第二電極上の非画素領域に補助電極を具備することを特徴とするアクティブマトリクス駆動型有機エレクトロルミネッセンス表示装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示装置や照明装置として用いられる有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関し、特に少ない電力で応答の速い映像を表示できるアクティブマトリクス駆動型有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高度情報化に伴い、薄型、低消費電力、軽量の表示素子への要望が高まる中、有機EL表示装置が注目を集めている。
有機EL表示装置は有機発光材料を含む発光層を、第一の電極と第二の電極で挟んだ単純な基本構造をしている。この電極間に電圧を印加し、一方の電極から注入されるホールと、他方の電極から注入される電子とが発光層内で再結合する際に生じる光を画像表示や光源として用いるというものである。
【0003】
このような有機EL表示装置をディスプレイとして実用化するにあたって、バックプレーン(背面基板)としてTFTのような画素スイッチを搭載した基板を用いて作製されるアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置の開発が多くの研究機関で検討されている。有機EL表示装置には、光の取り出し方向によってボトムエミッション型とトップエミッション型に分けることができる。封止側から光を取り出すトップエミッション型は、画素電極を有するバックプレーンに有機発光層を積層した後、その上に電極として光透過性の導電膜を成膜する必要がある。
【0004】
このような光透過性の導電膜を成膜する方法としては一般にスパッタ法が用いられるが、成膜中に発生するイオン、電子、反跳分子、電磁波などが有機発光層にダメージを与えてしまい、作製された有機EL表示装置の特性が劣化することが知られている(例えば特許文献1参照)。しかしダメージを低減するために導電膜を薄くすると、電気抵抗が大きいため電圧ドロップにより画素ごとに電圧が異なったり、ドライバ回路への負担となることが知られている。
【特許文献1】特開2004−296234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、特性の劣化を受けることなく、抵抗の小さい電極を備えた、トップエミッション型の光取り出しに向く、アクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、第一の発明は、画素毎に形成された第一電極と、第二電極と、両電極間に配置された有機発光媒体層と、前記第一電極に接続された薄膜トランジスタを備えたアクティブマトリクス駆動型有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、有機発光媒体層側とは反対面の第二電極上の非画素領域に補助電極を具備することを特徴とするアクティブマトリクス駆動型有機エレクトロルミネッセンス表示装置である。
【0007】
第二の発明は、前記第二電極は厚み10nm以上20nm以下の金属薄膜であることを特徴とする請求項1記載のアクティブマトリクス駆動型有機エレクトロルミネッセンス表示装置である。
第三の発明は、前記第二電極は厚み10nm以上300nm以下の金属化合物であることを特徴とする請求項1記載のアクティブマトリクス駆動型有機エレクトロルミネッセンス表示装置である。
第四の発明は、前記補助電極は印刷法にて形成されたことを特徴とする請求項1乃至3記載のアクティブマトリクス駆動型有機エレクトロルミネッセンス表示装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置は、第二電極の上部に補助電極を有しているので、第二電極そのものが薄く、抵抗が高い状態であっても、十分に各画素に電流を供給することができる。このとき補助電極は第二電極上の非画素形成部分に形成されるので有機EL表示装置の発光を妨げることがない。また、有機発光媒体層は通常溶液・分散状態の有機発光媒体インキを隔壁内の区画された領域に供給する方法で形成されるが、有機発光媒体層は多層構成とする場合、上層のインキに用いる溶媒は下層の材料に関しては貧溶媒でなくてはならないという制約がある。本発明のアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置では、有機発光媒体層の上に一旦第二電極を形成するので、その上部への補助電極の形成方法には下方の有機発光媒体材料が何であるかにかかわらず効率のよい印刷法を選択することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置は、少なくとも薄膜トランジスタを備えた基板と、薄膜トランジスタの上方に平坦化層を介して積層され、各画素毎に薄膜トランジスタとコンタクトホールで接続されている第一電極と、第一電極の上方に形成された有機発光媒体層と、有機発光媒体層の上方に形成された第二電極と、第二電極の上部であって画素の間に設けられた補助電極を備える。また、有機発光媒体層の形成法によっては、画素内での、あるいは隣接画素同士でのショート、混色を防ぐために第一電極の端部を覆い、各画素を区画する隔壁を設ける。
【0010】
本発明のアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置は、第二電極の上部に補助電極を有しているので、第二電極そのものが薄く、抵抗が高い状態であっても、十分に各画素に電流を供給することができる。また、有機発光媒体層は通常溶液・分散状態の有機発光媒体インキを隔壁内の区画された領域に供給する方法で形成されるが、有機発光媒体層は多層構成とする場合、上層のインキに用いる溶媒は下層の材料に関しては貧溶媒でなくてはならないという制約がある。本発明のアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置では、有機発光媒体層の上に一旦第二電極を形成するので、その上部への補助電極の形成方法には下方の有機発光媒体材料が何であるかにかかわらず効率のよい印刷法を選択することが可能である。
【0011】
<基板>
本発明のアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置に用いる基板11(バックプレーン)は、TFT120上に、平坦化層117が形成してあるとともに、平坦化層117上に有機EL表示装置の下部電極(第一電極12)が設けられており、かつ、TFTと下部電極とが平坦化層117に設けたコンタクトホール118を介して電気接続してあることが好ましい。このように構成することにより、TFTと、有機EL表示装置との間で、優れた電気絶縁性を得ることができる。
【0012】
TFT120や、その上方に構成されるアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置は支持体111で支持される。支持体としては機械的強度、絶縁性を有し寸法安定性に優れた支持体であれば如何なる材料も使用することができる。例えば、ガラスや石英、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルムやシート、または、これらプラスチックフィルムやシートに酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属酸化物や、弗化アルミニウム、弗化マグネシウム等の金属弗化物、窒化珪素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物、酸窒化珪素などの金属酸窒化物、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などの高分子樹脂膜を単層もしくは積層させた透光性基材や、アルミニウムやステンレスなどの金属箔、シート、板や、前記プラスチックフィルムやシートにアルミニウム、銅、ニッケル、ステンレスなどの金属膜を積層させた非透光性基材などを用いることができる。光取出しをどちらの面から行うかに応じて支持体の透光性を選択すればよい。これらの材料からなる支持体は、有機EL表示装置内への水分の侵入を避けるために、無機膜を形成したり、フッ素樹脂を塗布したりして、防湿処理や疎水性処理を施してあることが好ましい。特に、有機発光媒体層への水分の侵入を避けるために、支持体における含水率およびガス透過係数を小さくすることが好ましい。
【0013】
支持体上に設ける薄膜トランジスタ120は、公知の薄膜トランジスタを用いることができる。具体的には、主として、ソース/ドレイン領域及びチャネル領域が形成される活性層、ゲート絶縁膜及びゲート電極から構成される薄膜トランジスタが挙げられる。薄膜トランジスタの構造としては、特に限定されるものではなく、例えば、スタガ型、逆スタガ型、トップゲート型、コプレーナ型等が挙げられる。
【0014】
活性層112は、特に限定されるものではなく、例えば、非晶質シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、セレン化カドミウム等の無機半導体材料又はチオフエンオリゴマー、ポリ(p−フェリレンビニレン)等の有機半導体材料により形成することができる。これらの活性層は、例えば、アモルファスシリコンをプラズマCVD法により積層し、イオンドーピングする方法;SiHガスを用いてLPCVD法によりアモルファスシリコンを形成し、固相成長法によりアモルファスシリコンを結晶化してポリシリコンを得た後、イオン打ち込み法によりイオンドーピングする方法;Siガスを用いてLPCVD法により、また、SiHガスを用いてPECVD法によりアモルファスシリコンを形成し、エキシマレーザー等のレーザーによりアニールし、アモルファスシリコンを結晶化してポリシリコンを得た後、イオンドーピング法によりイオンドーピングする方法(低温プロセス);減圧CVD法又はLPCVD法によりポリシリコンを積層し、1000℃以上で熱酸化してゲート絶縁膜を形成し、その上にn+ポリシリコンのゲート電極114を形成し、その後、イオン打ち込み法によりイオンドーピングする方法(高温プロセス)等が挙げられる。
【0015】
ゲート絶縁膜113としては、通常、ゲート絶縁膜として使用されているものを用いることができ、例えば、PECVD法、LPCVD法等により形成されたSiO;ポリシリコン膜を熱酸化して得られるSiO等を用いることができる。
ゲート電極114としては、通常、ゲート電極として使用されているものを用いることができ、例えば、アルミ、銅等の金属;チタン、タンタル、タングステン等の高融点金属;ポリシリコン;高融点金属のシリサイド;ポリサイド;等が挙げられる。
薄膜トランジスタ120は、シングルゲート構造、ダブルゲート構造、ゲート電極が3つ以上のマルチゲート構造であってもよい。また、LDD構造、オフセット構造を有していてもよい。さらに、1つの画素中に2つ以上の薄膜トランジスタが配置されていてもよい。
【0016】
本発明の表示装置は薄膜トランジスタが有機EL表示装置のスイッチング素子として機能するように接続されている必要があり、トランジスタのドレイン電極116と有機EL表示装置の画素電極(第一電極12)が電気的に接続されている。さらに有機EL表示装置がトップエミッション構造をとるための画素電極は一般に光を反射する金属が用いられる必要がある。
薄膜トランジスタ120とドレイン電極116と有機EL表示装置の画素電極12との接続は、平坦化膜117を貫通するコンタクトホール118内に形成された接続配線を介して行われる。
【0017】
平坦化膜117の材料についてはSiO、スピンオンガラス、SiN(Si)、TaO(Ta)等の無機材料、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、フォトレジスト材料、ブラックマトリックス材料等の有機材料等を用いることができる。これらの材料に合わせてスピンコーティング、CVD、蒸着法等を選択できる。必要に応じて、平坦化層として感光性樹脂を用いフォトリソグラフィーの手法により、あるいは一旦全面に平坦化層を形成後、下層の薄膜トランジスタ120に対応した位置にドライエッチング、ウェットエッチング等でコンタクトホール118を形成する。コンタクトホールはその後導電性材料で埋めて平坦化層上層に形成される画素電極との導通を図る。平坦化層の厚みは下層のTFT、コンデンサ、配線等を覆うことができればよく、厚みは数μm、例えば3μm程度あればよい。アクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置用の基板11として用いることのできる基板の一例の断面図を図1(b)に、上面図を図2に示す。
【0018】
<第一電極>
基板11の上に第一電極12を成膜し、必要に応じてパターニングをおこなう(図1(a))。本発明では第一電極は隔壁によって区画され、各画素に対応した画素電極となる。第一電極の材料としては、ITO(インジウムスズ複合酸化物)やインジウム亜鉛複合酸化物、亜鉛アルミニウム複合酸化sxs物などの金属複合酸化物や、金、白金などの金属材料や、これら金属酸化物や金属材料の微粒子をエポキシ樹脂やアクリル樹脂などに分散した微粒子分散膜を、単層もしくは積層したものをいずれも使用することができる。第一電極を陽極とする場合にはITOなど仕事関数の高い材料を選択することが好ましい。下方から光を取り出す、いわゆるボトムエミッション構造の場合は透光性のある材料を選択する必要がある。必要に応じて、第一電極の配線抵抗を低くするために、銅やアルミニウムなどの金属材料を補助電極として併設してもよい。第一電極の形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式成膜法や、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの湿式成膜法などを用いることができる。第一電極のパターニング方法としては、材料や成膜方法に応じて、マスク蒸着法、フォトリソグラフィー法、ウェットエッチング法、ドライエッチング法などの既存のパターニング法を用いることができる。基板としてTFTを形成した物を用いる場合は下層の画素に対応して導通を図ることができるように形成する。
【0019】
<隔壁>
本発明の隔壁13は画素に対応した発光領域を区画するように形成する。第一電極の端部を覆うように形成するのが好ましい(図1(a)、(b))。一般的にアクティブマトリクス駆動型の表示装置は各画素に対して第一電極(画素電極)が形成され、それぞれの画素ができるだけ広い面積を占有しようとするため、第一電極の端部を覆うように形成される隔壁の最も好ましい形状は各画素電極を最短距離で区切る格子状を基本とする(図2)。
【0020】
隔壁の形成方法としては、従来と同様、基体上に無機膜を一様に形成し、レジストでマスキングした後、ドライエッチングを行う方法や、基体上に感光性樹脂を積層し、フォトリソ法により所定のパターンとする方法が挙げられる。必要に応じて撥水剤を添加したり、プラズマやUVを照射して形成後にインクに対する撥液性を付与することもできる。
隔壁の好ましい高さは0.1μm〜10μmであり、より好ましくは0.5μm〜2μm程度である。高すぎると第二電極の形成及び封止を妨げ、低すぎると第一電極の端部を覆い切れない、あるいは有機発光媒体層形成時に隣接する画素とショートしたり混色したりしてしまうからである。
【0021】
<有機発光媒体層>
次に、有機発光媒体層14を形成する(図1(a))。本発明における有機発光媒体層14としては、発光物質を含む単層膜、あるいは多層膜で形成することができる。多層膜で形成する場合の構成例としては、正孔輸送層、電子輸送性発光層または正孔輸送性発光層、電子輸送層からなる2層構成や正孔輸送層、発光層、電子輸送層からなる3層構成、さらには、必要に応じて正孔(電子)注入機能と正孔(電子)輸送機能を分けたり、正孔(電子)の輸送をプロックする層などを挿入することにより、さらに多層形成することがより好ましい。なお、本発明中の有機発光層とは有機発光材料を含む層を指し、電荷輸送層とは正孔輸送層等それ以外の発光効率を上げるために形成されている層を指す。
【0022】
正孔輸送材料の例としては、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン類及び無金属フタロシアニン類、キナクリドン化合物、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン系低分子正孔注入輸送材料や、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物などの高分子正孔輸送材料、ポリチオフェンオリゴマー材料、その他既存の正孔輸送材料の中から選ぶことができる。
【0023】
有機発光材料としては、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノリノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス〔8−(パラ−トシル)アミノキノリン〕亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、ポリ−2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレン、クマリン系蛍光体、ペリレン系蛍光体、ピラン系蛍光体、アンスロン系蛍光体、ポルフィリン系蛍光体、キナクリドン系蛍光体、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系蛍光体、ナフタルイミド系蛍光体、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系蛍光体等、Ir錯体等の燐光性発光体などの低分子系発光材料や、ポリフルオレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリスピロなどの高分子材料や、これら高分子材料に前記低分子材料の分散または共重合した材料や、その他既存の高分子・低分子発光材料を用いることができる。
【0024】
電子輸送材料の例としては、2−(4−ビフィニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、オキサジアゾール誘導体やビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラート)ベリリウム錯体、トリアゾール化合物等を用いることができる。形成には真空蒸着等を用いることができる。
【0025】
有機発光媒体層14の膜厚は、単層または積層により形成する場合においても1000nm以下であり、好ましくは50〜150nmである。特に、有機EL表示装置の正孔輸送材料は、基体や第一電極の表面突起を覆う効果が大きく、50〜100nm程度厚い膜を成膜することがより好ましい。
【0026】
有機発光媒体層14の形成方法としては、各層を構成する材料に応じて、真空蒸着法や、スピンコート、スプレーコート、フレキソ、グラビア、マイクログラビア、凹版オフセットなどのコーティング法、印刷法やインクジェット法などを用いることができる。有機発光媒体層を構成する材料を溶液化する際には、形成方法に応じて、溶剤の蒸気圧、固形分比、粘度などを制御することが好ましい。溶剤としては、水、キシレン、アニソール、シクロヘキサノン、メシチレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、トルエン、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの単独溶媒でも、混合溶媒でも良い。また、塗工性向上のために、必要に応じて界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤などの添加剤を適量混合することがより好ましい。塗布液の乾燥方法としては、発光特性に支障のない程度に溶剤を取り除ければ良く、加熱しても、減圧しても、加熱減圧しても良い。
【0027】
本発明のアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置が具備する有機発光媒体層は印刷法によって形成されることが好ましい。印刷法によって形成される層はカラー化に対応して色分けの必要があることから有機発光層が好ましく、また隔壁上に形成してしまうと電流リークの恐れがあることから電荷輸送層の形成にも好ましく適用できる。この方法によれば各色発光材料の特性に対応して電荷輸送材料を変更する場合にも好ましく適応できる。有機発光媒体層を構成する層全てを本発明の印刷法で形成すれば製造工程を大きく簡略化できる。
【0028】
本発明で用いることのできる印刷法としては、凸版印刷法、グラビア印刷法、平版(オフセット)印刷法等を挙げることができる。有機EL表示装置を構成する基板はガラスやプラスチックフィルムを使用することが多い。従って局所的な圧力に弱く、破損する恐れが高いため、被印刷基板に当たる面がゴムなどの樹脂で形成されているオフセット印刷法や凸版印刷法の中でも樹脂やゴムの版を用いるタイプを好ましく選択することができる。オフセット印刷法を用いる場合は、膜厚が均一に形成できることから凸版反転オフセット法が好ましい。
【0029】
<第二電極>
次に、第二電極15を形成する(図1(a))。第二電極を陰極とする場合には有機発光媒体層14への電子注入効率の高い、仕事関数の低い物質を用いる。具体的にはMg,Al,Yb等の金属単体を用いたり、発光媒体と接する界面にLiや酸化Li,LiF等の化合物を1nm程度挟んで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して用いてもよい。または電子注入効率と安定性を両立させるため、仕事関数が低いLi,Mg,Ca,Sr,La,Ce,Er,Eu,Sc,Y,Yb等の金属1種以上と、安定なAg,Al,Cu等の金属元素との合金系を用いてもよい。具体的にはMgAg,AlLi,CuLi等の合金が使用できる。第二電極側から光を取り出す、いわゆるトップエミッション構造とする場合には透光性を有する材料を選択することが好ましい。この場合、仕事関数が低いLi,Caを薄く設けた後に、ITO(インジウムスズ複合酸化物)やインジウム亜鉛複合酸化物、亜鉛アルミニウム複合酸化物などの金属複合酸化物を積層してもよく、前記有機発光媒体層4に、仕事関数が低いLi,Caなどの金属を少量ドーピングして、ITOなどの金属化合物を積層してもよい。
【0030】
第二電極の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法を用いることができる。第二電極の厚さに特に制限はないが、十分な抵抗値を確保するためには10nm〜1000nm程度が望ましい。また、第二電極を透光性電極層として利用する場合は透光性を持たせるため薄いことが好ましく、Ca、BaやLiなどの金属材料を用いる場合の膜厚は透光性をそれほど必要としなければ40nm程度、透光性を必要とする場合は30nm以下、最も好ましくは20nm以下である。電極としての抵抗値を確保するため、また膜としての形状を維持するためには10nm以上が好ましい。第二電極としてITOなどの透光性野ある導電性金属化合物を用いる場合は、十分な抵抗値を確保するため10nm以上300nm以下、積層時に下層の有機発光媒体層に与えるダメージを考慮すると100nm以下が好ましい。金属薄膜と金属化合物の両方を積層して第二電極としてもよい。
さらに、LiF等の金属化合物材料を第二電極の一部として、あるいは第二電極に隣接する層に積層してもよい。
【0031】
<補助電極>
本発明のアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置が備える補助電極は第二電極上の非画素領域に設けられているため、当該表示装置の表示性能を妨げることがない。さらに隔壁端面で断線した第二電極の修復を行うこともできる。本発明のアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置では、有機発光媒体層の上に一旦第二電極を形成するので、その上部への補助電極の形成方法には下方の有機発光媒体材料が何であるかにかかわらず効率のよい印刷法を選択することが可能である。
【0032】
補助電極の形成方法は材料に応じて選択すれば特に制限はないが、下層の有機発光媒体層への影響を考慮すると第二電極上に直接的にパターンを形成できる方法が好ましい。このような方法としては蒸着法、スパッタ法、印刷法が挙げられ、印刷法としては例えば凸版印刷法、平版印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、反転オフセット印刷法等を挙げることができる。この際は銀や金のペースト、カーボンペースト等の導電性ペーストを用いることができる。溶媒に溶解可能な導電性高分子を用いることもできる。
【0033】
補助電極は非画素領域であれば設けることができ、主に隔壁の上方となる。また、隔壁よりも幅が広くてもよく、この場合は隔壁の存在によって断線した第二電極を修復する効果が望める。隔壁よりも大きくはみ出すと、非画素領域が広がり相対的に画素領域が減少するため、この場合は補助電極材料としても透光性の材料を選択することが好ましい。アクティブマトリクス基板61に第一電極62、隔壁63、有機発光媒体層64、第二電極65、補助電極66を備えたアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置60の断面模式図を図6に示す。
【0034】
<封止体>
有機EL表示装置としては電極間に発光材料を挟み、電流を流すことで発光させることが可能であるが、有機発光材料は大気中の水分や酸素によって容易に劣化してしまうため通常は外部と遮断するための封止体を設ける。
封止体16は例えば封止材16a上に樹脂層16bを設けて作成することができる(図1(a))。
【0035】
封止材16aとしては、水分や酸素の透過性が低い基材である必要がある。また、材料の一例として、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素等のセラミックス、無アルカリガラス、アルカリガラス等のガラス、石英、アルミニウムやステンレスなどの金属箔、耐湿性フィルムなどを挙げることができる。耐湿性フィルムの例として、プラスチック基材の両面にSiOxをCVD法で形成したフィルムや、透過性の小さいフィルムと吸水性のあるフィルムまたは吸水剤を塗布した重合体フィルムなどがあり、耐湿性フィルムの水蒸気透過率は、10−6g/m/day以下であることが好ましい。
【0036】
樹脂層16bの材料の一例として、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂などからなる光硬化型接着性樹脂、熱硬化型接着性樹脂、2液硬化型接着性樹脂や、エチレンエチルアクリレート(EEA)ポリマー等のアクリル系樹脂、エチレンビニルアセテート(EVA)等のビニル系樹脂、ポリアミド、合成ゴム等の熱可塑性樹脂や、ポリエチレンやポリプロピレンの酸変性物などの熱可塑性接着性樹脂を挙げることができる。樹脂層を封止材の上に形成する方法の一例として、溶剤溶液法、押出ラミ法、溶融・ホットメルト法、カレンダー法、ノズル塗布法、スクリーン印刷法、真空ラミネート法、熱ロールラミネート法などを挙げることができる。必要に応じて吸湿性や吸酸素性を有する材料を含有させることもできる。封止材上に形成する樹脂層の厚みは、封止する有機EL表示装置の大きさや形状により任意に決定されるが、5〜500μm程度が望ましい。なお、ここでは封止材上に樹脂層として形成したが直接有機EL表示装置側に形成することもできる。
【0037】
最後に、有機EL表示装置10と封止体16との貼り合わせを封止室で行う。封止体を、封止材と樹脂層の2層構造とし、樹脂層に熱可塑性樹脂を使用した場合は、加熱したロールで圧着のみ行うことが好ましい。熱硬化型接着樹脂を使用した場合は、加熱したロールで圧着した後、さらに硬化温度で加熱硬化を行うことが好ましい。光硬化性接着樹脂を使用した場合は、ロールで圧着した後、さらに光を照射することで硬化を行うことができる。
【0038】
封止体を用いて封止を行う前やその代わりに、例えばパッシベーション膜として、CVD法を用いて、窒化珪素膜を150nm成膜するなど、無機薄膜による封止を行うことができる。
【実施例1】
【0039】
以下、本発明の一実施例について図3から図5を用い説明する。
基板として、支持体上に設けられたスイッチング素子として機能する薄膜トランジスタ(図示せず)と、その上方に形成された平坦化層31と、平坦化層上にコンタクトホール32によって前記薄膜トランジスタと導通が図られている第一電極33とを備えたトップエミッション用アクティブマトリクス基板30を用いた。基板のサイズは対角5インチ、画素数は320×240である(図3(a))。
この基板30上に設けられている第一電極22の端部を被覆し画素を区画するような形状で隔壁34を形成した。隔壁の形成は、日本ゼオン社製ポジレジストZWD6216−6をスピンコータにて基板全面に厚み2μmで形成した後、フォトリソグラフィーによって幅40μmの隔壁を形成した。これによりサブピクセル数960×240ドット、0.12mm×0.36mmピッチ画素領域が区画された(図3(b))。
【0040】
第一電極上に正孔輸送層として、厚さ0.1μmのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の混合物(以下PEDOT/PSSという)を、スピンコート法により成膜した。その後メタノールを用いてふき取ることによって不必要箇所を取り除いた。
【0041】
その後、この基板を真空蒸着機内にセッティングし、シャドーマスク法を用いて一列毎にR、G、Bの三色に塗り分け、フルカラー表示装置とした。G(緑)発光材料としてAlq(tris(8−hydroxyquinoline)aluminium)、B(青)発光材料としてDPVBi(1、4−bis(2、2−diphenylivinyl)biphenyl)、R(赤)発光材料としてAlqにDCM(ジシアノメチレンピラン誘導体)を1.0wt%添加したものを用いた。共に10の−5乗Pa台まで真空引きを行い、その後抵抗加熱法によってそれぞれの有機発光材料の蒸着を行って有機発光層とし、正孔輸送層と合わせて有機発光媒体層35とした(図4(c))。
【0042】
その後、第二電極36として真空蒸着法でカルシウムを厚み20nm成膜し、その後開口幅40μmの横ストライプメタルマスクに入れ替え有機EL表示装置の非画素領域に相当する横方向の隔壁に位置を合わせ、アルミニウムを厚み300nmを同じく抵抗加熱法で成膜して第一補助電極37aとした(図4(d))。更に縦ストライプメタルマスクに入れ替え同様に縦方向の隔壁に位置を合わせてアルミニウムを厚み300nm成膜することによって第二補助電極37bを形成し第一補助電極と導通させることで、格子状に補助電極37を形成した(図5(e))。
【0043】
その後、補助電極を形成した基板上に熱接着剤を全面に塗布した後、透光性封止材としてガラス板を発光領域全てをカバーするように載せ、約90℃で1時間接着剤を熱硬化して封止を行った。このようにして完成したパネルは第二電極であるカルシウムが薄膜であるため有機発光層からの光を良好に透過し、封止側から発光を取り出すことができた。こうして得られたアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置を駆動したところ、第二電極の配線抵抗による輝度ムラもなく均一な発光状態であった。
【実施例2】
【0044】
実施例1と同様に有機発光媒体層形成までを行った。
次いで、第二電極をバリウムにして、実施例1と同様、真空蒸着法により厚み20nm成膜し、その後露点−80℃、酸素濃度が1ppm以下で管理された窒素グローブボックスへ基板を搬送した。グローブボックス内に設置されたスクリーン印刷機にて、Agペーストを40μm幅、10μmの膜厚でのストライプを非画素領域である隔壁に位置を合わせて縦方向で1回、横方向で1回の都合2回にわけてパターニングした後、150℃で60分焼成を行った。
【0045】
その後、実施例1と同様、補助電極を形成した基板上に熱接着剤を全面に塗布した後、透光性封止材としてガラス板を発光領域全てをカバーするように載せ、約90℃で1時間接着剤を熱硬化して封止を行った。このようにして完成したパネルは第二電極であるバリウムが薄膜であるため有機発光層からの光を良好に透過し、封止側から発光を取り出すことができた。こうして得られたアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置を駆動したところ、第二電極の配線抵抗による輝度ムラもなく均一な発光状態であった。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(a)本発明のアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置の断面を示した模式図である。(b)本発明で用いることのできるアクティブマトリクス基板の一例を示した断面図である。
【図2】本発明で用いることのできるアクティブマトリクス基板の一例を示した上面図である。
【図3】本発明のアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置の製造工程の一例を説明する模式図である。
【図4】本発明のアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置の製造工程の一例を説明する模式図である。
【図5】本発明のアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置の製造工程の一例を説明する模式図である。
【図6】本発明のアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置の一例を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0047】
10:有機EL表示装置 11:基板 12:第一電極 13:隔壁 14:有機発光媒体層 15:第二電極 16:封止体 16a:封止材 16b:樹脂層
111:支持体 112:活性層 113:ゲート絶縁膜 114:ゲート電極 115:層間絶縁膜 116:ドレイン電極 117:平坦化層 118:コンタクトホール 119:データ線 120:薄膜トランジスタ 20:アクティブマトリクス基板
21:平坦化層 22:コンタクトホール 23:第一電極
24:データ線 25:共通線 26:走査線
30:アクティブマトリクス基板 31:平坦化層 32:コンタクトホール 33:第一電極 34:隔壁 35:有機発光媒体層 36:第二電極 37:補助電極 37a:第一補助電極 37b:第二補助電極
60:アクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置 61:アクティブマトリクス基板 62:第一電極 63:隔壁 64:有機発光媒体層 64a:正孔輸送層 64b:有機発光層 65:第二電極 66:補助電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素毎に形成された第一電極と、第二電極と、両電極間に配置された有機発光媒体層と、前記第一電極に接続された薄膜トランジスタを備えたアクティブマトリクス駆動型有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、有機発光媒体層側とは反対面の第二電極上の非画素領域に補助電極を具備することを特徴とするアクティブマトリクス駆動型有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
前記第二電極は厚み1nm以上40nm以下の金属薄膜であることを特徴とする請求項1記載のアクティブマトリクス駆動型有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
前記第二電極は厚み10nm以上300nm以下の金属化合物であることを特徴とする請求項1記載のアクティブマトリクス駆動型有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
前記補助電極は印刷法にて形成されたことを特徴とする請求項1乃至3記載のアクティブマトリクス駆動型有機エレクトロルミネッセンス表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−95515(P2007−95515A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283986(P2005−283986)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】