説明

アクリル樹脂基材接着用エチレン酢酸ビニル共重合体組成物及びその製造方法

【課題】架橋剤を含有し、接着性を向上させたEVA組成物であって、アクリル樹脂基材に有効に利用することができるEVA組成物及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】アクリル樹脂基材接着用エチレン酢酸ビニル共重合体組成物の製造方法であって、架橋剤を溶解度パラメーター(16.5〜18.4)(J/cm31/2の液体に溶解又は希釈して架橋剤溶液を調製する工程、前記架橋剤溶液をエチレン酢酸ビニル共重合体へ混合する工程、を含むアクリル樹脂基材接着用エチレン酢酸ビニル共重合体組成物の製造方法、及びエチレン酢酸ビニル共重合体、及び架橋剤を含む、アクリル樹脂基材接着用エチレン酢酸ビニル共重合体組成物であって、更に前記液体を含むことを特徴とする組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ等の画像表示部に貼付される光学フィルタ等に用いられる、アクリル樹脂基材の接着に利用されるエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)組成物に関し、特に、架橋剤を含有し、接着性が向上されたEVA組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エチレン酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと略す)組成物は、合わせガラス用中間膜や太陽電池用封止膜として利用される他、PDP等の画像表示部に用いられる光学フィルタ等に用いられるアクリル樹脂基材の接着に利用されている。合わせガラス用中間膜としては、ガラス板の間に挟持され、耐貫通性や破損したガラスの飛散防止等の機能を発揮する(特許文献1、2)。太陽電池用封止膜としては、太陽電池用セルの表面及び裏面に配置され、絶縁性の確保や機械的耐久性の確保等の機能を発揮する(特許文献3)。また、光学フィルタ等に用いられるアクリル樹脂基材を接着する場合についても、高い絶縁性、耐久性、耐候性等が求められている。
【0003】
これらの機能のため、EVA組成物は接着性を向上させる必要があり、一般に有機過酸化物等の架橋剤を配合し、加熱等によりEVAを架橋させている。
【0004】
EVA組成物に架橋剤を配合する場合、組成物を混練、成膜する際に加熱によるゲル化等が生じないようにするため、加工温度の制限があり、加工性に問題があった。特許文献1では、EVAと過酸化物等の架橋剤を混合する場合の加工性を改良するために、EVA組成物に可塑剤を配合する方法が開示されている。また、特許文献2ではあらかじめ成膜したEVA樹脂に架橋剤として有機過酸化物を有機溶剤等に溶解して塗布又は浸漬する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−79848号公報
【特許文献2】特開昭58−79850号公報
【特許文献3】特開2008−258255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法においては、EVA組成物に架橋剤を配合する場合に、単に可塑剤を配合してもEVAとの相溶性が低く、特に固体の架橋剤を配合する場合に分散不良を起こして接着性が低くなる場合があった。また、特許文献2の方法では、E
VA樹脂を成膜した後に架橋剤溶液を塗布等するので、EVAに架橋剤が均一に浸透せず十分な接着性が得られない場合があった。
【0007】
本発明者らは、特願2009−32399号(未公開)において、架橋剤の分散性を改良し、接着性を向上させたEVA組成物の製造方法を見出している。ただし、この方法で得られるEVA組成物を、アクリル樹脂基材に利用すると、アクリル樹脂が浸食され、基材の変形等の損傷が生じる場合があった。
【0008】
従って、本発明の目的は、架橋剤を含有し、接着性を向上させたEVA組成物であって、アクリル樹脂基材に有効に利用することができるEVA組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記未公開特許出願において、EVA、及び架橋剤を含むEVA組成物を製造する際に、架橋剤を、溶解度パラメーター14.3〜19.2(J/cm31/2の液体に溶解又は希釈して架橋剤溶液を調製し、それをEVAへ混合することにより、架橋剤の分散性を改良し、接着性を向上させたEVA組成物が製造できることを見出している。溶解度パラメーター(Solubility parameter)(以下、SP値と略す)は凝集エネルギー密度(CED)、即ち1分子の単位体積当たりの蒸発エネルギーを1/2乗したもので、物質の単位体積当たりの極性の大きさを示す値である(「実用プラスチック用語辞典、第2版」565頁(昭和45年、(株)プラスチックエージ)参照)。架橋剤を溶解又は希釈する液体として、SP値が上記の値のものを使用し、これに架橋剤を溶解又は希釈して架橋剤溶液を調製した後に、その架橋剤溶液をEVAに混合することで、架橋剤をEVA組成物中に均一に分散・混合させることができるので、EVAの架橋構造を均一に形成させることができ、接着性を向上することができる。これは架橋剤を溶解又は希釈する液体のSP値がEVAのSP値に近似するため、架橋剤の相溶性が向上したためと考えられる。
【0010】
更に、本発明者らは、上記製造方法において、アクリル樹脂基材に有効に利用できるものについて検討した。その結果、架橋剤を溶解又は希釈する液体のSP値が一定の範囲であれば、組成物に含まれる当該液体によるアクリル樹脂を侵食し難く、アクリル樹脂を含む基材に使用しても基材の変形等の損傷が生じないことを見出し、本発明に至った。
【0011】
即ち、上記目的は、アクリル樹脂基材接着用EVA組成物の製造方法であって、架橋剤を溶解度パラメーター16.5〜18.4(J/cm31/2の液体に溶解又は希釈して架橋剤溶液を調製する工程、前記架橋剤溶液をEVAへ混合する工程、を含む製造方法によって達成される。
【0012】
本発明に係る製造方法の好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記架橋剤が、固体の架橋剤である。
(2)前記液体が、可塑剤である。
(3)前記可塑剤が、炭素原子数2〜20の飽和又は不飽和多価カルボン酸又は炭素原子数8〜20の芳香族多価カルボン酸のエステル化合物である。
(4)前記多価カルボン酸のエステル化合物が、前記多価カルボン酸と、炭素原子数2〜14のアルコールとのエステル化合物である。
(5)前記多価カルボン酸のエステル化合物が、アジピン酸エステル化合物、ドデカン二酸エステル化合物、トリメリット酸エステル化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。
(6)前記可塑剤が、リン含有化合物である。
(7)前記リン含有化合物が、ホスファイト化合物である。
(8)前記ホスファイト化合物が、下記式(I):
P(OR13 (I)
(式中、3個のR1は、同一であっても異なっていてもよく、炭素原子数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アリール基、アラルキル基である。)で表されるホスファイト化合物である。
(9)前記架橋剤が有機過酸化物である。
【0013】
また、本発明の目的は、EVA、及び架橋剤を含む、アクリル樹脂基材接着用EVA組成物であって、当該組成物が、更に溶解度パラメーター16.5〜18.4(J/cm31/2の液体を含むことを特徴とする組成物によっても達成される。このEVA組成物には本発明の製造方法で得られたアクリル樹脂基材接着用EVA組成物が含まれる。
【0014】
本発明に係るEVA組成物の好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記架橋剤が、予め、前記液体に溶解又は希釈されて、EVAに添加されている。
(2)前記液体が、炭素原子数2〜20の飽和又は不飽和多価カルボン酸又は炭素原子数8〜20の芳香族多価カルボン酸と、炭素原子数2〜14のアルコールとのエステル化合物である。
(3)前記エステル化合物が、アジピン酸エステル化合物、ドデカン二酸エステル化合物、トリメリット酸エステル化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。
(4)前記液体が、下記式(I):
P(OR13 (I)
(式中、3個のR1は、同一であっても異なっていてもよく、炭素原子数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アリール基、アラルキル基である。)で表されるホスファイト化合物である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、接着性を向上させたアクリル樹脂基材接着用EVA組成物を提供することができる。従って、光学フィルタ等に用いられるアクリル樹脂基材の接着に、本発明のEVA組成物を使用することで、光学フィルタ等について、変形等の損傷を生じることなく、絶縁性、耐久性、耐候性等を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】接着力の評価方法である、180°ピール試験法を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明のアクリル樹脂基材接着用EVA組成物の製造方法について詳細に説明する。本発明のEVA組成物の製造方法においては、少なくともEVA、架橋剤、及びその架橋剤を溶解又は希釈できる液体(以下、「希釈剤」と言う。)として、SP値16.5〜18.4(J/cm31/2、好ましくは17.0〜18.0(J/cm31/2、更に好ましくは17.0〜17.5(J/cm31/2の液体を使用する。そして、その製造方法は、
(1)架橋剤を希釈剤に溶解又は希釈して架橋剤溶液を調製する工程、
(2)その架橋剤溶液をEVAに混合する工程、
を含む。本発明に用いるEVAのSP値は約17〜18(J/cm31/2であるため、工程(1)において、SP値が上記の範囲の希釈剤で架橋剤を溶解又は希釈することで、工程(2)において、架橋剤溶液がEVAに極めて分散・混合し易くなっていると考えられる。これにより、EVA組成物の接着性が向上することができる。更に、上記の範囲のSP値の希釈剤であれば、アクリル樹脂を侵食し難いものとすることができる。
【0018】
従来は、架橋剤をEVAに混合する場合に、混合方法は特に検討されず、予備溶解又は希釈する場合も、希釈剤のSP値を意識することはなく、トルエン等の有機溶剤に溶解されていた。本発明者らは、上記未公開特許出願において、上述の通り、希釈剤のSP値に着目し、SP値14.3〜19.2(J/cm31/2の希釈剤を用いて、予め架橋剤を溶解又は希釈することで、架橋剤のEVAに対する相溶性が向上し、EVA組成物の接着性を向上することを見出している。本発明においては、更にSP値を上記範囲に限定することにより、アクリル樹脂を浸食し難い希釈剤とすることができることを見出した。
【0019】
従って、本発明の製造方法により得られるEVA組成物は、アクリル樹脂基材の接着に使用する場合、基材の変形等の損傷を生じることなく、強力に接着することができる。なお、SP値は以下の式(数I)に従って算出する(「実用プラスチック用語辞典、第2版」565頁(昭和45年、(株)プラスチックエージ)参照)。
【0020】
【数1】

【0021】
(希釈剤)
本発明に使用する希釈剤は、架橋剤を溶解又は希釈することができ、上記のSP値を有する液体であれば、特に制限はない。特に樹脂に対する相溶性が高い可塑剤を使用するのが好ましい。可塑剤としては、特に限定されるものではないが、一般に、多価カルボン酸エステル化合物、多価カルボン酸金属塩、ホスファイトやリン酸エステル等のリン含有化合物、多価アルコールエステル化合物等が使用できる。特に、多価カルボン酸エステル化合物又はリン含有化合物が好ましい。
【0022】
多価カルボン酸エステル化合物としては、炭素原子数2〜20、好ましくは4〜16、更に好ましくは6〜12の飽和又は不飽和多価カルボン酸又は炭素原子数8〜20、好ましくは9〜16の芳香族多価カルボン酸のエステル化合物が好ましい。更に、前記エステル化合物は、前記多価カルボン酸と、炭素原子数2〜14、好ましくは4〜12、更に好ましくは6〜10のアルコールとのエステル化合物が好ましい。その例として、アジピン酸ジトリデシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸n−オクチル−n−デシルエステル、アジピン酸メチルジグリコールブチルジグリコールエステル、アジピン酸ベンジルメチルジグリコールエステル等のアジピン酸エステル化合物、ドデカンニ酸ジ−2−エチルヘキシル等のドデカン二酸エステル化合物、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル等のアゼライン酸エステル化合物、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル等のセバシン酸エステル化合物、フマル酸ジオクチル等のフマル酸エステル化合物、トリメリテートトリn−オクチル、トリメリテートトリブチル、トリメリテートトリヘキシル等のトリメリット酸エステル化合物、フタル酸ジエチル等のフタル酸エステル化合物等を挙げることができる。特に、アジピン酸エステル化合物(特に、アジピン酸ジトリデシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸n−オクチル−n−デシルエステル)、ドデカン二酸エステル化合物(特に、ドデカン二酸ジ−2−エチルヘキシル、ドデカン二酸ジn−オクチル)、トリメリット酸エステル化合物(特に、トリメリテートトリn−オクチル、トリメリテートトリヘキシル)が好ましい。
【0023】
また、リン含有化合物としては、ホスファイト化合物が好ましい。ホスファイト化合物は、リン原子に、酸素原子を介して、炭化水素基が3個結合したものである。好ましいホスファイト化合物としては、下記式(I)
P(OR13 (I)
(式中、R1は炭素原子数1〜20の炭化水素基である)で示されるホスファイト化合物が挙げられる。
【0024】
前記式(I)における3個のR1は、同一であっても異なっていてもよく、炭素原子数1〜20の炭化水素基である。具体的には、アルキル基、アリール基、アラルキル基が好ましく挙げられる。
【0025】
アルキル基としては、直鎖状又は分岐状のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、n−オクチル基、iso−オクチル、n−デシル基、iso−デシル基、n−ドデシル基、iso−ドデシル基、n−トリデシル基、iso−トリデシル基、n−テトラデシル基、iso−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、iso−ヘキサデシル基、ステアリル基、ノナデシル基などが挙げられる。
【0026】
アリール基としては、フェニル基、4−プロピルフェニル基、4−ペンチルフェニル基、4−オクチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−プロポキシフェニル基、4−ペンチルオキシフェニル基、4−オクチルオキシフェニル基、4−ブトキシメチルフェニル基、4−オクチルオキシエチルフェニル基、4−ブトキシエトキシフェニル基、4−オクチルオキシエトキシフェニル基、4−ブトキシブトキシフェニル基などが挙げられる。
【0027】
アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルヘキシル基などが挙げられる。
【0028】
前記ホスファイト化合物として具体的には、トリスイソデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト等のアルキルホスファイト、トリフェニルホスファイト、又はトリス(ノニルフェニル)ホスファイト等のアリールホスファイト;ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、ジイソオクチルオクチルフェニルホスファイト、フェニルネオペンチルグリコールホスファイト、又は2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル−(2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール)ホスファイトなどのアルキル−アリールホスファイトなどが挙げられる。特に、トリイソデシルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイトが好ましい。
【0029】
本発明において、希釈剤は一種の化合物を用いてもよく、二種以上組み合わせて使用しても良い。希釈剤の使用量は、エチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対して0.05〜5質量部の範囲が好ましく、更に0.1〜3質量部が好ましく、特に0.5〜2.5質量部が好ましい。
【0030】
(架橋剤)
本発明に使用する架橋剤としては、EVAの架橋構造を形成させるものであれば、特に制限はなく、固体の架橋剤でも、液体の架橋剤でも良い。より希釈剤の効果が得られる固体の架橋剤が好ましい。架橋剤として好ましくは、100℃以上の温度で分解してラジカルを発生する有機過酸化物を使用することができる。有機過酸化物は、一般に、成膜温度、組成物の調整条件、硬化温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。特に、半減期10時間の分解温度が70℃以上のものが好ましい。
【0031】
前記有機過酸化物としては、樹脂の加工温度・貯蔵安定性の観点から、例えば、
2官能のペルオキシモノカーボネートの構造を有する化合物;
1,4ービス(tーブチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,4ービス(tーアミルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,4ービス(tーヘキシルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,4ービス(tーオクチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,5ービス(tーブチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,5ービス(tーアミルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,5ービス(tーヘキシルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,5ービス(tーオクチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,6ービス(tーブチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,6ービス(tーアミルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,6ービス(tーヘキシルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,6ービス(tーオクチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、オキシビスエチレンビス(tーブチルペルオキシカーボネート)、オキシビスエチレンビス(tーアミルペルオキシカーボネート)、オキシビスエチレンビス(tーヘキシルペルオキシカーボネート)、オキシビスエチレンビス(tーオクチルペルオキシカーボネート)、2,2ージメチルー1,3ービス(tーブチルペルオキシカルボニルオキシ)プロパン、2,2ージメチルー1,3ービス(tーアミルペルオキシカルボニルオキシ)プロパン、2,2ージメチルー1,3ービス(tーヘキシルペルオキシカルボニルオキシ)プロパン、2,2ージメチルー1,3ービス(tーオクチルペルオキシカルボニルオキシ)プロパン等、
ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤;
ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等、
その他;
tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、スクシニックアシドパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオイル+ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサネート、2,2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシマレイックアシド、tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。
【0032】
これらの架橋剤は1種でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。架橋剤としては、特に1,6ービス(tーブチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが好ましく挙げられる。この有機過酸化物であれば、EVAの架橋密度を向上させることができる。
【0033】
本発明において、架橋剤の使用量は、EVA100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部、特に0.5〜2.5質量部である。
【0034】
工程(1)において、前記架橋剤の希釈剤への溶解又は希釈は、ミキサーやブレンダー等を用いて公知の方法で行うことができる。例えば、溶解槽中に希釈剤を入れ、ミキサーで攪拌しつつ架橋剤を投入し、十分に攪拌して架橋剤溶液を調製する。
【0035】
(エチレン酢酸ビニル共重合体)
本発明に使用するエチレン酢酸ビニル重合体(EVA)には特に制限はなく、EVA組成物の用途に応じて選定することができる。EVAにおける酢酸ビニルの含有量は、前記EVA100質量部に対して、20〜35質量部が好ましく、特に、20〜25質量部が好ましい。EVAの酢酸ビニル単位の含有量が低い程、EVA組成物が硬くなる傾向がある。一方、酢酸ビニルの含有量が20質量部未満ではEVA組成物の透明性が低下する場合がある。また、35質量部を超えるとEVA組成物により樹脂層を形成した場合に、硬さが不十分となる場合がある。
【0036】
工程(2)において、工程(1)で調製した架橋剤溶液のEVAへの混合は、スーパーミキサー(高速流動混合機)、ロールミル等を用いて、公知の方法で行うことができる。混合する温度は、40〜90℃が好ましく、特に50〜80℃が好ましい。
【0037】
(その他)
本発明の製造方法は、工程(2)において、上述の成分の他、必要に応じて架橋助剤、接着向上剤、希釈剤とは別の可塑剤等を添加しても良い。
【0038】
架橋助剤は、EVAのゲル分率を向上させ、EVA組成物の接着性及び耐久性を向上させることができる。架橋助剤(官能基としてラジカル重合性基を有する化合物)としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の3官能の架橋助剤の他、(メタ)アクリルエステル(例、NKエステル等)の単官能又は2官能の架橋助剤等を挙げることができる。なかでも、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートが好ましく、特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。
【0039】
これらの架橋助剤は、エチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、一般に10質量部以下、好ましくは0.1〜5質量部で使用される。
【0040】
接着向上剤としては、シランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤の例として、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。これらシランカップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上組み合わせて使用しても良い。また前記接着向上剤の含有量は、エチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対して5質量部以下であることが好ましい。
【0041】
別の可塑剤としては、上記の可塑剤の他、例えば、グリセリンモノアセトモノラウレート等のグリセリン系可塑剤、ポリエチレングリコール等の、ポリアルキレングリコール系可塑剤、エポキシトリグリセリド等のエポキシ系可塑剤、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート等の脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、その他、ポリアクリル酸エステル、シリコーンオイル及びパラフィン類等を挙げることができる。
【0042】
また、本発明の製造方法は、EVA組成物の用途により、例えば、光学フィルタの物性(機械的強度、接着性、透明性等の光学的特性、耐熱性、耐光性、架橋速度等)の改良あるいは調整のため、必要に応じて、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物、エポキシ基含有化合物、紫外線吸収剤、光安定剤、及び/又は老化防止剤などの各種添加剤を添加して製造してもよい。
【0043】
本発明のEVA組成物は、EVA、及び架橋剤を含む、アクリル樹脂基材接着用EVA組成物であって、当該組成物が、更に溶解度パラメーター16.5〜18.4(J/cm31/2の液体(希釈剤)を含むことを特徴とする組成物である。本発明のEVA組成物において、より接着性を向上させるためには、前記架橋剤が、予め、希釈剤に溶解又は希釈されてEVA組成物に添加されているのが好ましい。
【0044】
本発明のEVA組成物には、上述の本発明の製造方法により得られたアクリル樹脂基材接着用EVA組成物が含まれる。従って、上述したEVA組成物の製造方法に係る好ましい態様として記載した希釈剤の好ましい種類等は、本発明のEVA組成物についても好ましい態様である。
【0045】
本発明のEVA組成物は接着性が向上されており、且つアクリル樹脂に対する浸食性が抑制されているので、アクリル樹脂を含む基材の接着に有利に使用できる。アクリル樹脂は、一般に、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの重合体である。例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル等のメタアクリル酸アルキルエステル類のホモポリマー、コポリマーが挙げられる。本発明においては、アクリル樹脂の種類は特に限定は無いが、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートまたはブチルメタクリレート等のホモポリマー、コポリマーが好ましい。
【0046】
本発明のEVA組成物を使用して接着するアクリル樹脂基材は、アクリル樹脂を主に含む基材であれば良く、アクリル樹脂で形成された透明なアクリルガラスやアクリルフィルム、及びアクリル樹脂を塗工して形成されたアクリル樹脂層を有する基材でも良い。従って、本発明のEVA組成物は、例えば、PDPや液晶ディスプレイ等の画像表示部に貼付される光学フィルタのアクリル樹脂層上にPETフィルムを接着したり、アクリルフィルムをガラス板に貼りつけたり、アクリルガラスを用いた合わせガラスの中間膜として有効に使用することができる。
【0047】
本発明のEVA組成物を使用する場合は、例えば、上述の通り製造したEVA組成物を通常の押出成形、又はカレンダ成形(カレンダリング)等により加熱圧延してシート状物を得る方法により成膜して使用することができる。また、前記EVA組成物を溶剤に溶解させ、この溶液を適当な塗布機(コーター)で適当な支持体上に塗布、乾燥して塗膜を形成することによりシート状物を得て使用することもできる。なお、成膜時の加熱温度は、40〜90℃、特に50〜80℃とするのが好ましい。
【0048】
光学フィルタ等に用いられるアクリル樹脂基材を接着する際は、例えば、上記のように成形したEVA組成物のフィルム又はシートを、接着する2枚の基材間に挟持して積層し、その積層体を脱気し、加熱下に押圧することにより(高温ラミネート工程)、中間膜に含まれるEVAを架橋硬化して、各層を接合一体化することにより行われる。高温ラミネート工程は、一般に100〜150℃、特に130℃付近で、10分〜120分、好ましくは10分〜60分、加熱処理することにより行われる。架橋硬化は、例えば80〜120℃の温度で予備圧着した後に行われてもよい。前記加熱処理は、例えば130℃で10〜30分間(雰囲気温度)が特に好ましい。また、前記加熱処理は0〜800KPaのプレス圧力を積層体に加えながら行うのが好ましい。架橋後の積層体の冷却は一般に室温で行われるが、特に、冷却は速いほど好ましい。
【0049】
このように接着された積層体は、本発明のEVA組成物を使用しているので、アクリル樹脂基材の変形等の損傷を生じることなく、接着性が向上されており、絶縁性、耐久性、耐候性に優れている。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0051】
(実施例1〜4、比較例1〜3)
表1に示した実施例1〜4及び比較例1〜3の配合で、架橋剤を希釈剤に溶解し、架橋剤溶液を調製した。次いで、表1に示したそれぞれの配合で、EVA、架橋助剤、シランカップリング剤及び先に調製した架橋剤溶液をスーパーミキサーに供給し、60℃で混練してEVA組成物を調製した。それらのEVA組成物を、80℃で、カレンダ成形し、放冷後、EVA樹脂膜(厚さ0.4mm)を作製した。
(評価方法)
(1)各可塑剤のアクリル膜に対する浸食性の評価
上記各実施例及び比較例で使用した可塑剤について、光学フィルタのアクリル樹脂膜
(ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)膜)に滴下し、85℃、30分加熱し、アクリル樹脂膜が溶解するか目視にて確認した。アクリル樹脂膜の溶解が認められない場合は〇、認められた場合は×とした。
(2)接着性の評価
上記で作成した各EVA樹脂膜のRETフィルムへの接着性を180°ピール試験(JIS K 6584、1994年)により評価した。180°ピール試験は、具体的には、下記手順に従って図1に示すように行った。
【0052】
ガラス基板21、上記各EVA樹脂膜23及びPETフィルム(厚さ0.05mm、幅10cm)22をこの順で積層し、得られた積層体を真空ラミネーターで真空脱気し、90℃の温度で予備圧着した後、さらにオーブンに入れ、温度110℃の条件で30分間加圧加熱処理した。次に、23℃、50%RH雰囲気下で、積層体を24時間放置した後、EVA樹脂膜23とPETフィルム22との間の一部を剥離して、PETフィルム22を180°折り返して引張試験機(島津製作所社製、オートグラフ)を用いて引っ張り速度100mm/分時の引き剥がし力(PET接着力)[N/cm]を測定した。接着性は、10N/cm以上が良好と評価した。
【0053】
【表1】

【0054】
(評価結果)
上記各評価の結果を表1に示す。実施例1〜4において、希釈剤としてSP値17.2〜18.2(J/cm31/2の可塑剤を用いたところ、アクリル樹脂に対する浸食性がないことが示された。また、PET接着力は11.8〜12.8N/cmで、良好であった。
【0055】
これに対し、希釈剤としてSP値16.4(J/cm31/2の可塑剤を使用した比較例1、18.6(J/cm31/2の可塑剤を使用した比較例2は、接着力は良好であったが、アクリル樹脂に対する浸食性があった。また、SP値20.5(J/cm31/2の可塑剤を使用した比較例3は、実施例と同じ架橋剤を使用したにもかかわらず、PET接着力は2.0N/cmと低く、アクリル樹脂に対する浸食性もあった。
【0056】
以上により、EVA組成物を製造する際に、固体の架橋剤の希釈剤として、SP値16.5〜18.4(J/cm31/2の液体を使用することで、アクリル樹脂を侵食することなく、EVA組成物の接着性を向上させることができることが認められた。
【0057】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のEVA組成物を光学フィルタ等に係るアクリル樹脂を含む基材の接着に使用することで、絶縁性、耐久性、耐候性が向上された光学フィルタ等を製造することができる。
【符号の説明】
【0059】
21 ガラス基板
22 PETフィルム
23 EVA樹脂膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル樹脂基材接着用エチレン酢酸ビニル共重合体組成物の製造方法であって、
架橋剤を溶解度パラメーター16.5〜18.4(J/cm31/2の液体に溶解又は希釈して架橋剤溶液を調製する工程、
前記架橋剤溶液をエチレン酢酸ビニル共重合体へ混合する工程、
を含む製造方法。
【請求項2】
前記架橋剤が、固体の架橋剤である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記液体が、可塑剤である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記可塑剤が、炭素原子数2〜20の飽和又は不飽和多価カルボン酸又は炭素原子数8〜20の芳香族多価カルボン酸のエステル化合物である請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記多価カルボン酸のエステル化合物が、前記多価カルボン酸と、炭素原子数2〜14のアルコールとのエステル化合物である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記多価カルボン酸のエステル化合物が、アジピン酸エステル化合物、ドデカン二酸エステル化合物、トリメリット酸エステル化合物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記可塑剤が、リン含有化合物である請求項3に記載の製造方法。
【請求項8】
前記リン含有化合物が、ホスファイト化合物である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ホスファイト化合物が、下記式(I):
P(OR13 (I)
(式中、3個のR1は、同一であっても異なっていてもよく、炭素原子数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アリール基、アラルキル基である。)で表されるホスファイト化合物である請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記架橋剤が有機過酸化物である請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
エチレン酢酸ビニル共重合体、及び架橋剤を含む、アクリル樹脂基材接着用エチレン酢酸ビニル共重合体組成物であって、
当該組成物が更に溶解度パラメーター16.5〜18.4(J/cm31/2の液体を含むことを特徴とする組成物。
【請求項12】
前記架橋剤が、予め、前記液体に溶解又は希釈されて、エチレン酢酸ビニル共重合体に添加されている請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記液体が、炭素原子数2〜20の飽和又は不飽和多価カルボン酸又は炭素原子数8〜20の芳香族多価カルボン酸と、炭素原子数2〜14のアルコールとのエステル化合物である請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
前記エステル化合物が、アジピン酸エステル化合物、ドデカン二酸エステル化合物、トリメリット酸エステル化合物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記液体が、
下記式(I):
P(OR13 (I)
(式中、3個のR1は、同一であっても異なっていてもよく、炭素原子数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アリール基、アラルキル基である。)で表されるホスファイト化合物である請求項11又は12に記載の組成物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−254774(P2010−254774A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104712(P2009−104712)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】