説明

アクリル酸の製造方法

アクリル酸のC3前駆体の触媒気相部分酸化によって得られ、アクリル酸を含む生成物ガス混合物を、内蔵構造物を備えた凝縮カラム内で分別凝縮させて、上昇させ;粗アクリル酸を側面で回収し、液相アクリル酸を含む酸性水を回収し、抽出媒体である酸性水を含むアクリル酸に吸収させ;続いてアクリル酸を抽出物から分離し、凝縮カラムに戻し、または金属水酸化物水溶液に吸収させ、または粗アクリル酸のさらなる精製に向けて誘導するアクリル酸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル酸、水蒸気および二次成分を含む生成物ガス混合物を、高温における固体触媒上の分子酸素を用いた少なくとも1つのアクリル酸のC3前駆体の不均一触媒気相部分酸化によって得て、アクリル酸、水蒸気および二次成分を含む生成物ガス混合物の温度を、場合により、直接および/または間接冷却によって低下させ、次いでアクリル酸、水蒸気および二次成分を含む生成物ガス混合物を、分離内部構造物を備えた凝縮カラムに流し込み、凝縮カラム内で上昇させることで、分別凝縮させ、水および二次成分を希薄な形で含む粗アクリル酸を、目標製造物として、凝縮カラムから、生成物ガス混合物の供給点の上方に位置する第1の側流取出口を介して凝縮カラムに誘導するとともに、アクリル酸および二次成分をさらに含む酸性水を、第1の側流取出口の上方に位置する第2の液相取出口(好ましくは側流取出口)を介して誘導し、水より低い沸点を有する((大気圧をベースとして)水より低い温度で沸騰する)二次成分を含む残留ガス混合物を凝縮カラムの上部に誘導し、アクリル酸および後続生成物、および(大気圧をベースとして)アクリル酸より高い沸点を有する二次生成物をさらに含む底部液体を凝縮カラムの底部空間から誘導し、回収された酸性水の一部をそのまま、かつ/またはその冷却後に還流液として凝縮カラムに返送し、場合により、そのさらなる精製を目的として少なくとも1つのさらなる熱分離方法を粗アクリル酸に施すアクリル酸の製造方法に関する。
【0002】
アクリル酸は、例えば、ポリマー分散体(場合によりアルカノールおよびそのエステルの形も含む)および超吸水性ポリマーの製造に使用される重要な中間体である。
【0003】
アクリル酸は、なかでも、高温における固体触媒上の分子酸素を用いたアクリル酸のC3前駆体(C3前駆体化合物)の不均一触媒気相部分酸化によって得られる(この用語は、特に、公式にはアクリル酸の還元で得られる化学化合物を包含し、アクリル酸の既知のC3前駆体は、例えば、プロパン、プロペン、アクロレイン、プロピオンアルデヒドおよびプロピオン酸であり、該用語は、前記化合物の前駆体化合物、例えば、グリセロールをも包含する(グリセロールから出発し、例えば、気相における不均一触媒酸化脱水によってアクリル酸を得ることができる;例えば、EP−A1710227、WO06/114506およびWO06/092272)参照)。
【0004】
この製造において、不活性ガス、例えば、窒素、CO、飽和炭化水素および/または水蒸気で全体的に希釈された上記出発ガスを、高温および場合により高圧にて分子酸素との混合物の形で(例えば遷移金属)混合酸化物触媒上に流し、アクリル酸、水、および(そこからアクリル酸を除去しなければならない)望ましくない副産物、例えば、フルフラル、ベンズアルデヒド、アセトン、ホルムアルデヒドおよび無水マレイン酸等を含む生成物ガス混合物に酸化変換する(水蒸気以外の副産物および不活性希釈ガスを「二次成分」という用語で本文献に包含するものとする;この用語は、典型的にはアクリル酸除去方法において添加される重合防止剤をも包括する)。
【0005】
プロピオンアルデヒドおよび/またはプロピオン酸から出発し、分子酸素を用いた不均一触媒気相部分酸化は、少なくとも部分的に、酸化脱水である。
【0006】
冒頭に記載したように、文献DE−A19924533、DE−A19924532、WO01/77056、DE−A10156016、DE−A10243625、DE−A10223058、DE−A10235847、WO2004/035514、WO00/53560およびDE−A10332758には、粗アクリル酸の基本的除去が不均一触媒気相部分酸化の生成物ガス混合物の分別凝集によって実施されるアクリル酸の製造方法が開示されている。「粗アクリル酸」という用語は、第1の側流取出口を介して回収されたアクリル酸が純粋の製造物でなく、アクリル酸(一般には全質量の50または60質量%以上、通常は70または80質量%以上、多くの場合において90質量%以上、往々にして95質量%以上)とともに、水および二次成分、例えば低級アルデヒド(例えば、フルフラル、アクロレイン、ベンズアルデヒド)、低級カルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、ギ酸)等をも含む混合物を表す。それぞれの場合において、アクリル酸の含有量に対する水および二次成分の全含有量は、気相部分酸化の生成物ガス混合物より粗アクリル酸の方が小さく、それは、粗アクリル酸がこれらの構成成分を全体的に希薄な形で含むと言われる理由を説明するものである(対照的に、個々の構成成分は、比較的高濃度の形で粗アクリル酸に存在し得る)。
【0007】
場合によっては、かようにして除去された粗アクリル酸の純度は、アクリル酸の考えられる最終用途(例えば、そのエステル化を目的とする、または遊離ラジカル重合によって得られるポリマーを形成することを目的とする)に既に十分なものである。しかし、多くの場合において、特定の最終用途に必要とされる純度を有する(粗アクリル酸と比較して質量%単位のアクリル酸含有量が大きい)より純度の高いアクリル酸を粗アクリル酸から得るために、除去されたアクリル酸に少なくとも1つのさらなる熱分離方法が施される。
【0008】
熱分離方法は、(一般的には熱)エネルギーの供給または回収により、物理的に少なくとも二相の系が得られ、相間に存在する温度勾配および量的勾配により熱および質量移動が生じることで、究極的に所望の分離および抽出がもたらされる方法であることが理解される。
【0009】
往々にして、熱分離方法は、前記少なくとも2つの相が概して互いに向流して誘導される、分離内部構造物を含む分離カラムで実施される。多くの場合において、2つの相の一方が(一般には、分離カラムにおいて上昇相として誘導される)気体であり、他方が(一般には、分離カラムにおいて下降相として誘導される)液体である。しかし、基本的に、少なくとも2つの層は、液体(例えば、抽出物の場合)または固体および液体(例えば、結晶の場合)または固体および気体(例えば、吸着物の場合)であってもよい。
【0010】
少なくとも2つの相の一方が液体であり、他方が気体であるため、本文献に用いられている「熱分離方法」という用語の固有の要素である熱分離方法の構成例として、精留(上昇気相が、分離カラムにおいて下降気相と向流して誘導される)および脱離(吸収の逆の方法;液相に溶解した気体が、液相に対する圧力を下げることによって、液相の温度を上昇させることによって、かつ/または液相を介して気相を誘導することによって液相から誘導される;気相の誘導を伴うときは、脱離はストリッピングとも称する)があげられる。しかし、吸収(一般には、分離カラムにおいて上昇する気体が、分離カラムにおいて下降する少なくとも1つの吸収剤と向流して誘導される)およびガス混合物(気/液相の例)の分別凝縮も「熱分離方法」の一部である。粗アクリル酸のさらなる精製のための特に好ましい熱分離処理は、さらなる結晶化精製(結晶化)である。
【0011】
しかし、アクリル酸の少なくとも1つのC3前駆体の不均一触媒気相部分酸化の生成物ガス混合物の分別凝縮による粗アクリル酸の基本的除去のための既知の方法の短所は、
アクリル酸および二次成分をさらに含む酸性水の付加的な発生である。「酸性水」という用語は、第1に、酸性水が一般には50質量%以上、往々にして60質量%以上、多くの場合において70質量%、しばしば80質量%の水(一般には、反応水、および気相部分酸化の過程で不活性希釈ガスとして使用される希釈水(水蒸気)の両方)を含むことを意味する。
【0012】
しかし、該用語は、酸性水が、水とともに、二次成分の酸、例えば、プロピオン酸、酢酸およびギ酸、さらにはアクリル酸を含むため、7未満のpHを有することをも意味する(アクリル酸以外の二次成分のカルボン酸の全含有量は通常、酸性水の質量に対して、10質量%以下であり、場合によっては5質量%以下である)。
【0013】
通常、酸性水のアクリル酸含有量は、4または5から15質量%、往々にして約10質量%である。先行技術で推奨されている不均一触媒気相部分酸化の生成物ガス混合物からのアクリル酸の基本的除去のための方法の短所は、それらが、アクリル酸をさらに含み、精留カラムに返送されていない酸性水をすべて焼却に送ることである(特に、DE−A10243625、WO2004/035514およびDE−A10332758参照)。
【0014】
これは、酸性水の焼却が、例えば、所望のアクリル酸製造物の収率を低下させる点で不利である。
【0015】
記載の先行技術に鑑み、本発明の目的は、特に、アクリル酸の純度を有意に低下させることなくその収率を確実に増加させる点で注目すべきアクリル酸の改善型製造方法を提供することであった。
【0016】
よって、アクリル酸、水蒸気および二次成分を含む生成物ガス混合物を、高温における固体触媒上の分子酸素を用いた少なくとも1つのアクリル酸のC3前駆体(C3前駆体化合物)の不均一触媒気相部分酸化によって得て、アクリル酸、水蒸気および二次成分を含む生成物ガス混合物の温度を、場合により、直接(冷却液との直接接触による)および/または間接冷却によって低下させ、次いでアクリル酸、水蒸気および二次成分を含む生成物ガス混合物を、分離内部構造物を備えた凝縮カラムに流し込み、凝縮カラム内で上昇させることで、分別凝縮させ、水および二次成分を全体的に希薄な形で含む粗アクリル酸を、目標製造物として、凝縮カラムから、生成物ガス混合物の供給点の上方に位置する第1の側流取出口を介して凝縮カラムに誘導するとともに、アクリル酸および二次成分をさらに含む酸性水を、第1の側流取出口の上方に位置する第2の液相取出口(好ましくは側流取出口:本文献におけるすべての記述は、特に、当該酸性水側流取出口の場合に当てはまる)を介して誘導し、水より低い沸点を有する((大気圧をベースとして)水より低い温度で沸騰する)二次成分を含む残留ガス混合物を凝縮カラムの上部に誘導し、アクリル酸および後続生成物、およびアクリル酸より高い沸点を有する二次生成物をさらに含む底部液体を凝縮カラムの底部空間から誘導し、回収された酸性水の一部をそのまま、かつ/またはその冷却後に還流液として凝縮カラムに返送し、場合により、そのさらなる精製を目的として少なくとも1つのさらなる熱分離方法を粗アクリル酸に施し、凝縮カラムに返送されていない酸性水の少なくとも一部に存在するアクリル酸を、有機溶媒を用いた抽出によって酸性水から有機溶媒に吸収させ、アクリル酸を含有する有機抽出物を調整し、次いで、少なくとも1つの熱分離方法を用いてアクリル酸を有機抽出物から除去し、抽出物から除去されたアクリル酸を凝縮カラムに返送し、または粗アクリル酸のさらなる精製に送り、かつ/または金属水酸化物の水溶液に吸収させるアクリル酸の製造方法を見いだした。
【0017】
有利には、本発明によれば、凝縮カラムに返送されていない酸性水の少なくとも25質量%、より良くは少なくとも50質量%、さらにより良くは少なくとも75質量%、好ましくはすべてが抽出され、本発明に従ってさらに処理される。
【0018】
基本的に、液−液抽出物に対する既知のすべての抽出装置が、本発明に必要な抽出を実施するのに有用である。この装置は、大きな相界面面積および連続相におけるこれらの液滴の緻密な分布が得られること、また質量移動の完了に際しての迅速かつ実質的に完全な相分離を可能な限り保証する必要がある。
【0019】
最も単純な場合において、使用される抽出装置は、分離器(例えば沈降器)を備えたミキサー(例えば、撹拌容器または固定ミキサー)であってよい。使用される撹拌機は、基本的に、一般的なすべての撹拌機であってよい。例としては、ディスク撹拌機、翼車撹拌機、クロスビーム撹拌機、グリッド撹拌機、ブレード撹拌機、アンカー撹拌機、パドル撹拌機、プロペラ撹拌機、螺旋撹拌機および多層惰力向流撹拌機が挙げられる。撹拌機は、多段式、すなわち複数の撹拌機が共軸積層されたものであってよい。二段式翼車撹拌機を使用するのが好ましい。有用な沈降器は、基本的に一般的なすべての容器である。水平容器を使用するのが好ましい。当該抽出装置は連続式またはバッチ式で動作させることができ、沈降器は、バッチ動作では不必要であり、相分離は撹拌容器内で行われる。ミキサーにおいて、抽出対象物質(価値のある材料)が吸収剤相に移動し、分離器において2つの相が(重力により)分離される。連続動作において、流れ方向に交差する内部構造物によって、沈降器における供給物の重および軽相への分離を向上させることができる。有用な内部構造物としては、基本的に、一般的なすべての内部構造物、例えば、有孔シート、プレート、構造充填材および/または乱雑充填材が挙げられる。乱雑充填材のなかでは、リング、螺旋体、サドル、ラシヒ、イントスまたはパルリング、バレルもしくはインタロクスサドル、トップ−パック等またはブレードを含む充填材が好ましい。有孔シートと乱雑充填材の組合せが特に好ましい。沈降器における滞留時間は、典型的には、0.05から2時間である。
【0020】
複数のミキサー−沈降機装置を縦列接続する場合は、カスケードが挙げられる。装置を並流または向流または交流接続することができる。
【0021】
適宜用途の観点から、本発明に従って実施される抽出は、分離内部構造物を含む抽出カラムにおいて実施されることになる。より高い比重を有する相は、カラムの上部に入り、より低い比重を有する相は底部に入る。カラムにおいて、2つの相が向流で移動する。基本的に、抽出カラムは、向流蒸留(精留)用カラムと同等である。換言すれば、発明の抽出方法に好適な抽出カラムは、本質的に既知の設計であり、特注の内部構造物を有することができる。
【0022】
考えられるカラムのタイプとしては、エネルギーが入力されるカラムおよび入力されないカラム両方の抽出カラムが挙げられる。構造充填材および/または乱雑充填材の形の内部構造物を含む抽出カラムを、エネルギーを入力して動作させてもよいし、入力せずに動作させてもよい。乱雑充填材のなかでは、リング、螺旋体、サドル、ラシヒ、イントスまたはパルリング、バレルもしくはインタロクスサドル、トップ−パック等を含む充填材が好ましい。本発明に従って使用される抽出カラムに特に好適な構造充填材は、例えば、D−40705 HildenにおけるJulius Montz GmbHの構造充填材、例えば、Montz−Pak B1−350構造充填材である。ステンレス鋼シートで構成された穿孔構造充填材を使用するのが好ましい。構造充填材を含む充填カラムは、本質的に当業者に既知であり、例えば、Chem.−Ing.Tech.58(1986)1、p.19−31およびスイスWinterhurのGebrueder Sulzer AktiengesellschaftのTechnischen Rundschau Sulzer[Sulzer Technical Review]2/1979,p.49ffに記載されている。加えて、トレイの形の内部構造物を含む抽出カラムも好適であり、ここでは、律動篩トレイカラムと向流篩トレイカラムを区別しなければならない。律動篩トレイカラムでは、2つの相が、篩トレイにおける流路オリフィス(一般には孔、すなわち円形流路オリフィス)を通じて誘導される。律動の上向行程において、より軽い相が、篩トレイの孔を通じて上方に押し上げられ、それに応じて重い相が下向工程で下降する。相がここで律動する液体でなく、篩トレイが上下に移動する点を除いては、カールカラムも同様に作用する。律動篩トレイカラムが好適である。対照的に、向流篩トレイカラムを使用すると、密度の差により、連続相が、1つのトレイから次のトレイに下降管を介して下降し、分散相だけが篩トレイの孔を通る(質量移動トレイについて本文献に用いられている用語は、DE−A10332758の用語に準じるものである)。
【0023】
本発明に従って酸性水の抽出を行うのに1から10個の理論段で十分である。理論段は(または理論的分離ステージ)は、本文献において極めて一般的に、分離内部構造物を含み、熱力学的平衡に対応する濃縮をもたらす熱分離方法に使用される分離カラムの空間単位を指す。換言すれば、用語「理論段」は、質量移動トレイを含む抽出カラムにも、構造充填材および/または乱雑充填材を含む抽出カラムにも適用可能である。
【0024】
本発明による方法に抽出カラムが使用されると、2つの相のうちより高い比重を有する相は、適宜用途の観点から、分配路によりカラムの上部に導入され、断面の分布が非常に均一になる。より低い比重を有する相は、適宜用途の観点から、同様に分配路を介してカラムの底部に入る。よって、カラムにおいて、より軽い相は上昇し、重い相は下降する。2つの相のうちのより軽い相が分散されると、すなわち液滴の形で存在すると、カラムの上部で相分離が生じる。重い相が分散される逆の場合は、カラムの底部で相分離が生じる。いずれの場合も、好ましい液滴サイズは、1から10mmの範囲、好ましくは2から5mmの範囲の直径(長手方向の寸法)を有する。
【0025】
有利には、本発明によれば、抽出剤は、一般には、有機抽出物からのアクリル酸の後の除去を容易にするという理由から、アクリル酸より沸点(各々の場合において大気圧をベースとする)が高い。
【0026】
本発明に従って実施される抽出において、状況としては、抽出剤として使用される有機溶媒が水より有意に高い粘度を有する確率が高くなる。この場合、本発明によれば、抽出カラムに入る有機抽出物が分散相として存在し、酸性水が連続相として存在する場合に有利である(これは、例えば、2層間の物質の移動を加速させ、究極的には、より短いカラムで同じ分離結果をもたらすことを可能にする;連続水相は、また、ステンレス鋼から製造された抽出カラムおよびそれらの内部構造物をより十分に湿潤させる;また、抽出される物質が連続相から分散相に移動することで後者が安定する(癒合傾向が小さくなる))。酸性水の質量密度より大きい質量密度の有機抽出剤を使用すると、抽出剤がカラムの上部に導入・分散され、得られた抽出剤液滴がカラム内で下降することになる。逆の場合、すなわち酸性水の質量密度より低い質量密度を有する抽出剤を使用する場合には、抽出剤がカラムの底部に分散され、得られた抽出剤液滴がカラム内で上昇する。構造充填材、乱雑充填材および/またはトレイの形の内部構造物を有する、既に記載した種類の抽出カラムにおいて、通常分散相の液滴が別の方法で内部構造物に沿って全体的にクリープするため、分散した連続相は、選択された内部構造物を効率的に湿潤させる必要がある。
【0027】
最も単純な方法において、有機抽出剤は、一般には丸い流路オリフィス(穴)を有し、カラム断面に配置され、通常は円筒形の抽出カラムの特定の断面長に沿って伸びるチューブ(通常は同一の断面を有する;チューブ下降管も挙げられる)を介して導入される。円形流路オリフィスは、有機抽出剤がカラムの上部に導入されると下を向き、抽出剤がカラムの底部に導入されると上を向く。前記流路オリフィスの直径(最長寸法)は、典型的には1mmから10mm、好ましくは3mmから6mm、多くの場合において2から5mmである。抽出剤を単純に分配チューブに流し込み、流路オリフィスから戻すことができる。
【0028】
基本的に、本発明に従って酸性水抽出を実施するために撹拌カラムまたは遠心抽出器を使用することも可能である。攪拌カラムは2つの相の接触を向上させる。カラムのすべての撹拌機は、適宜用途の観点から、共通軸上に存在する。カラムチューブは、壁に固定子リングを適宜備える。一般に中央に配置された軸は、典型的には、各々の場合において撹拌機が2つの固定子リングの間で回転するように撹拌機装置を有する。撹拌カラムの例としては、RDC(回転ディスク接触子)カラム、ARD(非対称回転ディスク)カラム、Kuhniカラム(Kuhni設計による撹拌カラム)またはQVF撹拌セル抽出器が挙げられる。遠心抽出器は、向流で誘導される2つの相を混合・分離するために遠心力を利用する。遠心力は、また、2つの層が安定したエマルジョンを形成するときに良好な抽残液/抽出物分離をもたらす。ここで例としてポドビールニアク抽出器またはウェストフェリア抽出器をあげる。
【0029】
本発明による方法のための抽出装置は、好ましくは、材料1.4571から製造されたものである。これは、アクリル酸を不均一触媒気相部分酸化の生成物ガス混合物から除去するのに使用できる他の装置にも適用される。
【0030】
抽出物と抽残液を分離するための駆動力は、それら2つの層の質量密度(g/cm3)の差である。2つの液相の質量密度差が大きいと、相分離が容易になり、エマルジョンの形成が低減される。
【0031】
したがって、有利には、kg/m3単位のその質量密度が、水の質量密度(同様にkg/m3単位)と(抽出に採用される圧力および抽出に採用される温度をベースとして)25kg/m3以上、好ましくは50kg/m3以上の差がある有機溶媒が、本発明に従って実施される抽出に使用される。しかし、概して、前記質量密度差は、250kg/m3以下、一般には150kg/m3以下である。
【0032】
加えて、抽出条件下での有機抽出物の動粘度が100mPa・s以下、好ましくは50mPa・s以下である場合は、本発明による方法に好適である。しかし、概して、前記動粘度は、1mPa・s以上になる。本発明による特に好適な動粘度は、2から10mPa・sの範囲の動粘度である。
【0033】
2つの流体相間の界面張力が比較的大きい場合は、本発明による方法に有利である。既に記載した背景に対して、酸性水抽出のための本発明による好適な抽出剤としては、標準圧(1気圧)におけるその沸点が約150℃または約160℃を超える有機液が挙げられる。例としては、パラフィン蒸留による中間油留分、ジフェニルエーテル、ジフェニル、または前記液体の混合物、例えば、約70から75質量%のジフェニルエーテルと25から30質量%のジフェニルとの混合物が挙げられる。また、70から75質量%のジフェニルエーテルと25から30質量%のジフェニルとの混合物と、さらに該混合物に対して0.1から25質量%のフタル酸o−ジメチルとからなる混合物の使用が好適である。
【0034】
酸性水抽出のための本発明による特に好適な有機溶媒は、そのアルコール成分が1から8個の炭素原子を含み、そのカルボン酸成分が5から20個の炭素原子を含む脂肪族または芳香族モノまたはジカルボン酸のエステル(特に両カルボキシル基がエステル化されている場合)である。アルコール成分は、好ましくは、エステル化の前に単に2つのヒドロキシル基または単に1つのヒドロキシル基を有する。アルコール成分は、好ましくは、一価(OH基1つ)または二価(OH基2つ)のアルカノールを含む。有利には、(特に一価または二価のアルカノールの場合の)アルコール成分の炭素原子の数は、1から6個、より好ましくは1から4個、最も好ましくは1または2個である。脂肪族または芳香族モノまたはジカルボン酸は、有利には5から15個の炭素原子、好ましくは5から10個の炭素原子、より好ましくは6から8個の炭素原子(特に、アルカノールが1から4個または1から2個の炭素原子を有するそれぞれのエステル化の場合(ジエステルの場合も同様))を有する。ジカルボンサンは、該当するエステルの酸成分としてモノカルボン酸より好適である(特に両カルボキシル基がエステル化されている場合)。フタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸と、さらにアジピン酸は、本発明によれば、該当するエステルの特に好適な酸成分である。後者は、ジアルキルエステル(C1−からC8−アルキル、有利にはC1−からC6−アルキル、特に有利にはC1−からC4−アルキル、さらに良くはC1−またはC2−アルキル)の場合に特に当てはまる。換言すれば、本発明による方法に特に好適な抽出剤は、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル(例えば、BASF AktiengesellschaftのPalatinol(登録商標))、イソフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチルおよびアジピン酸ジエチルである。発明の酸性水抽出に好適なさらなるエステルは、リン酸のトリエステル、例えば、リン酸トリブチルまたはリン酸トリクレシルである。有用なクレシルラジカルとしては、オルト−クレシル、メタ−クレシルおよびパラ−クレシルが挙げられる。アクリル酸と分枝状または直鎖状の一価のC6−からC12−アルカノールのエステル(例えば、アクリル酸2−プロピルヘプチルまたはアクリル酸2−エチルヘキシル)と、さらにマレイン酸と一価のC4−からC10−アルカノールのモノ−またはジエステルも発明の酸性水抽出のための抽出剤として有用である。同時に、本発明によれば、すべての上記抽出剤のなかでも、標準圧で沸点が150℃を超える、または160℃を超える、または170℃を超える、または180℃を超える、または190℃を超えるものが好ましい。
【0035】
概して、抽出される酸性水は、アクリル酸および水とともに、さらなる構成成分として酢酸(一般には、酸性水の全量に対する質量%が三番目に大きい構成成分)を含むことになる。部分酸化を実施する方法(選択される触媒、反応混合物の水蒸気含有量、部分酸化の温度)に応じて、酸性水は、10質量%まで、または5質量%まで(往々にして2から8質量%まで)またはそれ以上の量の酢酸を含むことができる。往々にして、酸性水は、酢酸の質量比率に対して約2倍の質量比率のアクリル酸を含む。考えられる他の酸性二次成分の含有量は通常、それより有意に少ない。したがって、本発明によれば、酢酸と比較してアクリル酸を優先的に吸収する抽出剤が好ましい。これらの抽出剤としては、特にフタル酸ジエチルが挙げられる。
【0036】
また、本発明によれば、抽出剤が抽出条件下で水と反応せず、水にわずかしか溶解しない場合に有利である。例えば、フタル酸ジエチルは、特に加水分解安定性である。フタル酸ジエチルのさらなる利点は、標準圧(1気圧)における沸点が比較的高いことであり、該沸点は、本発明により有利には、使用される抽出剤(有機溶媒)では200℃以上、より良くは225℃以上、さらにより良くは250℃以上である。
【0037】
加えて、水に対する溶解度が比較的低い(これにより抽出ロスも低下する)。概して、酸性水は、50から80℃、好ましくは60から70℃の温度で本発明に従って実施される生成物ガス混合物の分別凝縮で得られる。換言すれば、それは、通常、この温度で第2の液相取出口(好ましくは側流取出口)を介して回収される(温度が低いほど、重合防止剤が必要でなくなる;好適な場合は、酸性水、抽出剤、抽残液および/または抽出物に対して個別に添加する必要がない)。したがって、適宜用途の観点から、抽出もこの範囲の温度で実施される。換言すれば、本発明により有利には、抽出剤は、基本的に前記温度で抽出装置、好ましくは抽出カラム(より好ましくは、構造充填材を含むカラム、有利にはMontz−Pak B1−350)に誘導されることになる。有利には、それは、底部から抽出カラムに供給され、より大きな比重を有する抽出剤(有利にはフタル酸ジエチル)が上部から導入される。典型的には、導入される抽出剤の温度は、供給される酸性水の温度と大差無い。典型的には、この温度差の規模は、0℃以上20℃以下、好ましくは0℃以上15℃以下、多くの場合において0℃以上10℃以下である。凝縮カラムから回収される酸性水の圧力は、回収点において、本発明により典型的には、1バール強から1.5バール、往々にして2バールである。回収される酸性水は、ポンプによって抽出カラムに誘導される。輸送圧力は、例えば、2から6バールであってよい。抽出カラムにおける使用圧力は、有機抽出物を第1のストリッピングカラムに輸送するためにさらなるポンプを必要としないように本発明に従って選択される。しかし、基本的に、酸性水抽出をより高温または低温、およびより高圧または低圧で実施することもできる。抽出カラムを動作させると、その手順は、適宜用途の観点から、最初に抽出カラムに酸性水を充填し、次いで上記のように、有利には抽出カラムの上部に液滴の形で有機抽出剤を導入する。酸性水(好ましくは連続相)を、基本的に、適切な供給ノズルを介して直接供給することができる。しかし、基本的に、1つ(または複数の)流路オリフィスをその壁に有する供給チューブを介して酸性水を供給することもできる(流路オリフィスの直径は、典型的には5から10mmである)。
【0038】
既に述べたように、抽出カラムは、適宜用途の観点から、ステンレス鋼から製造される。典型的な肉厚は、5から20mmである。抽出カラムは、通常、従来の方法で外側が断熱されている。
【0039】
本発明の方法において、抽出カラムに供給される有機抽出剤の流量(E;kg/h単位)と酸性水の流量(S;kg/h単位)の比V、すなわちE:Sは、0.05から20、好ましくは0.1から10、より良くは0.8から1.2、より好ましくは1:1であってよい。
【0040】
アクリル酸が希薄な(抽出された)酸性水は、通常、処分に向けて送られる(例えば、焼却されるか、または水処理工場に誘導される)。本発明により典型的には、酸性水は、抽出カラムの上部から(抽残液として)排出され、アクリル酸を含む有機抽出物は、典型的には、抽出カラムの底部から排出される。
【0041】
抽出カラムからのその回収温度が酸性水の抽出カラムへの供給温度に実質的に対応する有機抽出物からのアクリル酸の除去を、基本的に、異なる熱分離方法を用いて、または当該熱分離方法の組合せを用いて実施することができる。
【0042】
好適な別形の除去は、結晶除去である。考えられる結晶化方法としては、DE−A19838845およびDE−A102005015637に推奨されているもののすべてが挙げられる。結晶除去が好ましい理由は、結晶化が、他の熱分離方法と対照的に、区別的な分離方法であることである。換言すれば、形成するアクリル酸結晶の組成は、液相、すなわち液体抽出物の組成とほとんど無関係(理想的な場合では全く無関係)である。対照的に、非区別的な熱分離方法は、分離方法が採用された場合に形成し、目標製造物を高濃度に含む相の組成が、分離される混合物の組成に著しく左右される。換言すれば、区別的な分離方法では、純粋の目標製造物を得るために、平衡が1回確立すれば熱力学的理論上十分であるが、非区別的な熱分離方法では、この目的のために熱力学的平衡が連続的に繰り返し確立する必要がある。本発明によれば、アクリル酸を抽出物から除去する目的に特に好適である結晶化方法は、懸濁結晶化および層結晶化である。
【0043】
(特に、使用される抽出物の(標準圧における)沸点が、アクリル酸の対応する沸点(=141℃)より少なくとも60℃、好ましくは少なくとも80℃、最も好ましくは少なくとも100℃上回る場合に)本発明により特に有利には、アクリル酸の抽出物からの除去は、脱離によって実施されることになる。使用される脱離装置は、典型的には、分離内部構造物を有するカラムである。有用な当該カラム内部構造物としては、基本的に、すべての既知の分離内部構造物が挙げられる。これらは、特に、トレイ、構造充填材および/または乱雑充填材を含む。質量移動トレイのなかでは、バブルキャップトレイ、篩トレイ(例えば、強制篩トレイまたは細流篩トレイ(二重流トレイ))、バルブトレイおよび/またはThormannトレイ(すなわちThormann(登録商標)トレイ)が好ましい。乱雑充填材のなかでは、リング、螺旋体、サドル、ラシヒ、イントスもしくはパルリング、バレルもしくはインタロクスサドル、トップ−パック等またはブレードを含むものが好ましい。二重流トレイおよび/またはThormannトレイが特に好ましい。Thormannトレイのなかでは、単一流Thormannトレイが好適である。二重流トレイおよびThormannトレイが使用される場合は、二重流トレイが脱離装置の下部で使用され、Thormannトレイが脱離装置の上部で使用されるのが最も好ましい。概して、脱離装置に5から10個の理論段が存在すれば十分である。基本的に、専ら圧力を下げることによって、脱離を生じさせることができる。用途の観点から特に有利には、脱離条件下で非凝縮性であり(1気圧におけるストリッピングガスの沸点は、好ましくは、水の沸点を少なくとも50℃下回る)、(化学変化に対して)本質的に不活性なガスで希釈することによって、脱離するアクリル酸の分圧を下げる。換言すれば、酸性水抽出の抽出相からのアクリル酸の除去は、最も好ましくは、ガスを利用したストリッピング(ガスによるストリッピング)によって実施される。換言すれば、抽出物にガスを流すと、アクリル酸がガスに吸収され、抽出物から誘導される。この方法の背後の駆動力は、抽出物から除去されるアクリル酸の蒸気圧がガスにおけるその分圧より大きいことによる、アクリル酸の抽出物からガスへの移動である。有利には、抽出物は、ストリッピングを目的として、ストリッピングガスの流れ方向に逆らって(すなわち向流で)誘導される。換言すれば、抽出物は、有利には、ストリッピングカラムの上部に導入され、ストリッピングガスは、ストリッピングカラムの底部に誘導される。特に有利には、使用されるストリッピングガスは、精留カラムの上部から誘導される残留ガス(または残留ガス混合物)、あるいは全体的な残留ガスと同一または異なる組成を有するこの残留ガスの一部、あるいはその組成が残留ガス1つまたは複数の不活性構成成分(例えば、水蒸気、N2、CO2および/または空気)に対応するガスである。ストリッピングガスとしての残留ガス混合物の本発明による好適な使用は、第1に、(後に処分しなければならなくなる)さらなるストリッピングガスを供給する必要がなく、第2に、部分酸化の生成物ガス混合物からのアクリル酸の全体的な除去方法に無関係の構成成分を含まないストリッピングガスが使用されることである。概して、残留ガスは、主として、(部分酸化で実質的に化学変化しない)アクリル酸のC3前駆体の部分酸化に使用される不活性希釈ガスと、さらに典型的には、部分酸化で副産物として形成され、希釈ガスとして添加されていてもよい水蒸気、および副反応としての望ましくない完全酸化によって形成された一酸化炭素からなる(往々にして、残留ガス混合組成を有する残留ガスの一部が、希釈ガスとして部分酸化に返送される;これは、本文献では、部分酸化循環ガスまたは循環ガスと称するものとする)。それは、部分酸化で消費されなかった少量の分子酸素((例えば、望ましくないポリマーの形成を回避するのに)有利である残留酸素)および/または少量の未変換のC3前駆体および/または未変換の中間体をさらに含む。部分酸化に使用される不活性希釈ガス(例えば、N2、CO2、H2Oおよび/または飽和炭化水素等)は、第1に、部分酸化で放出された反応熱を吸収するのに役立ち、第2に、反応混合物を爆発範囲外、または安全に制御できる爆発範囲の領域内に維持することによって、C3前駆体の不均一触媒気相部分酸化の安全な処理を全体的に確保する(例えば、DE−A19740253、DE−A19740252、DE−A10243625、DE−A10332758およびWO2004/035514参照)。
【0044】
二重流トレイが脱離カラム(ストリッピングカラム)における分離内部構造物として使用される場合は、全直径(トレイにおける流路オリフィスの直径)は、一般に8から50mm、好ましくは10から35mmである。全直径は、好ましくは、下に行くほど大きくなる。トレイ間隔(トレイは、典型的には等間隔で配置される)は、往々にして300から800mm、多くの場合において400から600mm、往々にして500mmである。既に述べたように、脱離装置は、典型的には、オーステナイト鋼、好ましくは材料1.4571から製造されたものである(DIN EN10020)。
【0045】
ストリッピングされる抽出物のカラム供給物は、脱離装置の上部領域、好ましくはその最上位のトレイ(理論段)に存在する。適宜用途の観点から、抽出物は、(典型的には80から120℃、往々にして約100℃の温度に)予め加熱される。ストリッピングカラム(脱離カラム)の底部に熱を追加的に供給するために、有利には、従来の設計の内部および/または外部の間接熱交換器(例えば、ロバート蒸発器、強制循環チューブバンドル伝熱器、強制循環チューブバンドルフラッシュ伝熱器、プレート伝熱器等;例えばEP−A854129参照)および/またはジャケット加熱を介する当該熱交換器(使用される熱媒体は、有利には、部分酸化の廃熱を用いて得られた水蒸気である)が使用される。それは、好ましくは、自然または強制循環による外部循環蒸発器を介して実施される。より好ましくは、強制循環による外部循環蒸発器(特にフラッシュ循環)が使用される。縦列または並列接続された複数の蒸発器を使用することが可能である(典型的な底部温度は145から165℃、往々にして約155℃である)。
【0046】
採用される脱離条件下で凝縮しない不活性ストリッピングガスは、有利には、脱離装置の底部に直接導入される。外部伝熱器(必要な熱が予め回収された底部液体に供給される)からの供給は、有利には、下部カラムトレイ(理論段)の1つ(好ましくは、下から2〜4番目の理論段の領域に存在する)またはその下で実施される。脱離カラムのカラム底部で得られる実質的にアクリル酸のない抽出剤は、有利には、酸性水抽出の上部に返送される。
【0047】
それは、通常、抽出装置で得られる抽出物と比較して高い温度を有するため、抽出物を加熱し、抽出剤を冷却するために、抽出からストリッピングカラムに誘導される抽出物、およびストリッピングカラムの底部から抽出に返送される抽出剤(必要とされる抽出およびストリッピングカラムの活性重合防止は、返送により、有利には、ストリッピングカラムの底部内で実施されることになる;例えば、ストリッピングガスが分子酸素を含む場合はMEHQおよび/またはPTZを利用する)を、間接熱交換において従来の設計の間接伝熱器(チューブバンドル伝熱器またはプレート伝熱器)に誘導することが妥当である。続いて、抽出剤を、通常は付随的に、例えば水冷によって、間接伝熱器における酸性水抽出における使用温度にする。ストリッピングカラムの底部から抽出に返送された抽出剤供給流に対して、ストリッピングカラムの0.01から1質量%の底部液体を、通常は付随的に排出させる(浄化供給流)(前記水冷の他に、新たな抽出剤の適切な供給流を、通常、抽出剤返送供給流に補給する)。この浄化供給流を処分する(例えば、残留ガスとともに焼却する)か、または精留によって処理して、新たな抽出剤に変換することができる。
【0048】
ストリッピングガスは、好ましくは、少なくともストリッピングカラムにおける底部液体の温度に概ね対応する温度でストリッピングカラムに誘導される(概して、それら2つの温度の差は、30℃を超えず、より良くは20℃を超えない)。残留ガスがストリッピングガスとして使用される場合は、例えば、それを高圧まで圧縮することによって、前記温度にすることができる。有利には、この圧縮を、循環ガスとともに、(典型的には、遠心圧縮機を利用して)C3前駆体部分酸化への残留ガスの返送にも好適である圧力まで実施することができる。典型的には、前記圧力は、(典型的には1バールより大きく、1.5バール以下の残留ガス圧力において)2から4バール、往々にして2.5から3.5バールである。
【0049】
1kgの抽出物に対して、アクリル酸がなくなるまでストリッピングするのに必要なストリッピングガスの量は、典型的には、1.5から2.5Nm3である。アクリル酸を含むストリッピングガスの(ストリッピングカラムの上部における)典型的な充填量は、2から6質量%である。
【0050】
基本的に、ストリッピングカラムの底部への入熱量を、使用されるストリッピングガスの量を増加させることによって減少させることができる。脱離条件下で典型的に凝縮しない不活性ストリッピングガスを用いてストリッピングすることにより、アクリル酸を抽出物から除去することが好ましい理由の1つは、それが、エネルギーおよび装置の観点から、比較的要件が緩い特に効率的な除去方法であるためである。加えて、例えば、抽出物からの結晶または精留除去と対照的に、アクリル酸を高濃度で含み、さらなる著しい重合防止のコストおよび労力を必要とするさらなる液相を生成しないという利点を伴う。
【0051】
前記の事実は、とりわけ、アクリル酸含有ストリッピングガスを、特にストリッピングに残留ガスが使用されたときに、(部分酸化の生成物ガス混合物の分別凝縮に使用される)凝縮カラムにそのまま返送できるという事実に起因する。適宜、当該返送は、凝縮カラムへの第1の側流取出口の下で実施される。有利には、返送は、凝縮カラムの底部空間において直接実施される。基本的に、それを底部液体内で直接実施することができる。
【0052】
したがって、本出願は、特に、凝縮カラムに返送されていない酸性水の少なくとも一部(有利には少なくとも25質量%、より良くは少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも75質量%、または全部)に存在するアクリル酸を、有機溶媒を用いた抽出によって酸性水から有機溶媒に吸収させて、アクリル酸を含む有機抽出物を形成し、次いでストリッピングガスでストリッピングすることによってアクリル酸を有機抽出物から除去し、アクリル酸含有ストリッピングガスを凝縮カラムに返送する本発明による方法を含む。基本的に、負荷状態のストリッピングガスに存在するアクリル酸の凝縮カラムへの返送を凝縮した形で実施することも可能である。しかし、凝縮したアクリル酸を、凝縮カラムから回収された粗アクリル酸と一緒に、そのさらなる精製に送ることも可能である。
【0053】
しかし、特に有利には、本発明による方法において、底部液体が処分に向けて送られる前に、第2のストリッピングカラムにおいて、凝縮カラムから回収された底部液体にまだ存在する(そして、後に凝縮カラムに返送されることになる)遊離アクリル酸を同様にストリッピングするために、負荷状態のストリッピングガス(またはその少なくとも一部)が使用されることになる。
本発明により有利には、WO2004/035514およびDE−A10332758に既に記載されているように、この第2のストリッピングの負荷状態のストリッピングガスにも(向流)精留が施される(ただし、ストリッピングガスとして残留ガスがそのまま使用される)(そして、後にそれが凝縮カラムに返送される)。
【0054】
本発明による方法に使用される凝縮カラム(または極めて一般的に、分離内部構造物を有するカラム)における底部空間、凝縮カラム内の最下位の分離内部構造物(例えば、分離カラムにおいて向流で誘導される相の間の界面を大きくするトレイ、構造充填材および乱雑充填材)の下の空間。
【0055】
特に、標準圧(1気圧)におけるその沸点がアクリル酸の沸点を超える構成成分を含む所謂底部液体がその中に集まる。これらは、第1に、アクリル酸より高い沸点を有する副産物、例えば無水マレイン酸、重合防止剤として添加されたフェノチアジンなどの二次成分のみならず、部分酸化の生成物ガス供給流の分別凝縮の過程で構成成分から単に形成される変換生成物である。これらの変換生成物としては、特に、重合防止にかかわらず、望ましくない様式で形成するアクリル酸の遊離ラジカルポリマーが挙げられる。部分酸化の生成物ガス混合物の異なる構成成分の凝縮反応物によって形成される高分子量化合物もそのなかに含まれる。それらは、とりわけ、アクリル酸のそれ自体、およびこのようにして形成するアクリル酸ダイマー(「ジアクリル酸」)またはオリゴマーへのアクリル酸の可逆マイケル付加によって形成されるマイケル付加物を含む(したがって、本文献では、「アクリル酸オリゴマー」という用語は、常に対応するマイケル付加物を指し、遊離ラジカル重合によって形成されたアクリル酸オリゴマーを指すものではない)。形成されたアクリル酸を同時に除去することによる高温の作用(例えば、好ましくは、(化学的に)不活性であり、適切な条件下で凝縮しないガスを用いた「ストリッピング」による)は、マイケル付加を逆転させる。しかし、モノマーアクリル酸自体も凝縮カラムにおける底部液体の無視できない程度の構成成分であり、そのことは、それを完全にストリッピングする価値があることを意味する。しかし、凝縮カラムの底部液体は、標準圧において、アクリル酸の沸点よりほんのわずかに高い温度で沸騰する副産物(例えば、ベンズアルデヒド、フルフラルおよび無水マレイン酸)をも含むため、この第2のストリッピングの負荷状態のストリッピングガスに対して(例えば、それが凝縮カラムに返送される前に)、(ほぼ同じカラムにおいて)アクリル酸を含有する第2のストリッピングガスの純度を高める(向流)精留(すなわち還流液の向流)がさらに施される。
【0056】
第1の負荷状態のストリッピングガスおよび/または第2の負荷状態のストリッピングガスの凝縮カラムへの返送は、必ずしも直接的な経路によって実施される必要がない。
【0057】
その代わり、第1の負荷状態のストリッピングガスおよび/または第2の負荷状態のストリッピングガスを、少なくとも部分的または完全に、生成物ガス混合物と混合することができ、得られたガス混合物を凝縮カラムに誘導することができる。
【0058】
気相部分酸化の生成物ガス混合物の直接および/または間接冷却を行う前、最中および/または後に混合を実施することができる。
【0059】
以降、差別化するために、抽出物ストリッピングからのアクリル酸含有ストリッピングガスは、「第1の負荷状態のガス」と称し、(凝縮カラム)底部ストリッピングからのアクリル酸含有(好ましくは精留)ストリッピングガスは、「第2の負荷状態のガス」と称する(それに応じて、抽出ストリッピングは、「第1のストリッピング」と称し、底部ストリッピングは、「第2のストリッピング」等と称する)。概して、第1の負荷状態のガスは、1.5から3.5バール、往々にして2から3バール、例えば2.5バールの圧力で抽出物ストリッピングを出る。その温度は、典型的には、抽出物が第1のストリッピングカラムに導入される温度より約10℃低い。第1の負荷状態のガスの典型的な温度は、65から95℃、往々にして75から95℃、または85℃である。
【0060】
(ストリッピングガスの精留を含む)第2のストリッピングを実施するために、有用なカラムは、基本的に、分離内部構造物を含むすべてのカラムであり、考えられる内部構造物は、例えば、構造充填材、乱雑充填材および/またはトレイである。基本的に、還流液を液滴に噴霧する回転カラムとして知られる、回転内部構造物を含むカラムを使用することも可能である。本発明によれば、トレイおよび/または構造充填材のみを含むカラムを第2のストリッピングカラムとして使用するのが好ましい。使用されるトレイは、有利には、二重流トレイであり、ストリッピングカラムは、特に有利には、分離内部構造物として専ら二重流トレイを含む。
【0061】
本文献では、二重流トレイは、単純な流路(穴、溝等)を有するプレートを指すものと理解される。第2のストリッピングカラムにおいて上昇するガス、および第2のストリッピングカラムにおいて下降する還流液は、同じ流路を反対方向に流れる。流路の断面は、本質的に既知の方法で、第2のストリッピングカラムの充填量に合わせて調整される。それが小さすぎると、ストリッピングカラムにおいて下降する還流液が分離作用を実質的に受けずに閉じ込められるほどの高速で、上昇ガスが流路を流れる。流路の断面が大きすぎると、上昇ガスおよび下降還流が、実質的に交換せずに互いにすれ違い、トレイが枯渇する危険性がある。典型的には、二重流トレイは、それらを次のトレイに接続するドレイン管を有さない。勿論、各二重流トレイは、第2のストリッピングカラムの壁とじかに接触し得る。しかし、接続素子を介してそれを壁に接触させることもできる。液圧シール交流トレイと異なり、二重流トレイは、第2のストリッピングカラムの充填量が増加すると枯渇する。
【0062】
適宜本発明によれば、(指定された精留を含む)第2のストリッピングに使用可能な二重流トレイストリッピングカラムは、60個までの二重流トレイを含むことができる。有利には、これらは、10から20%、好ましくは10から15%のオリフィス比(分解ガスに対して浸透性を有するトレイの面積(D)とトレイの総面積(U)との比から形成されるD:U比)を有する。
【0063】
二重流トレイの流路は、好ましくは、円形の穴であり、円の直径は、トレイ内で均一である。円の直径は、約10から30mmである。円の直径は、カラムの上部では、有利には10から20mmまたは10から15mmであり、カラムの下部では、有利には20から30mmである。さらに、円形の穴は、好ましくは、個々の二重流トレイ上に厳密な三角形のピッチで均一に配列される(DE−A10230219参照)。さらに、第2のストリッピングカラムにおける二重流トレイに開けられた流路オリフィスの穿孔バリは、好ましくは下を向いている。通常、第2のストリッピングカラムにおける二重流トレイは、等間隔で配置される。典型的には、トレイ間隔は、300mmから500mmである。本発明によれば、400mmのトレイ間隔も好適である。適宜、ストリッピングされる底部液体(部分酸化の生成物ガス混合物の直接冷却のために予め使用してもよく、かつ/または凝縮カラムの下部領域において回収された高沸点留分が補給されていてもよい)が、第2のストリッピングカラムの(下から計算して)4番目から10番目の二重流トレイに供給される。第2のストリッピングカラムにおける底部温度は、有利には、150から190℃、好ましくは160から180℃に維持される。第2のストリッピングカラムにおける使用圧力は、通常は、1強から3バール、往々にして1.5から2.5バールになる。
第2のストリッピングカラムにおいて必要なエネルギー入力は、有利には、外部の強制循環チューブバンドルフラッシュ蒸発器を利用して供給され、それに対して、第2のストリッピングカラムから回収された底部液体が、それを過熱する目的で供給され、次いで、過熱されて第2のストリッピングカラムに返送される(DE−A10332758参照)。基本的に、この時点で、第2のストリッピングカラムに統合することもできる純粋の強制循環蒸発器または自然循環蒸発器、例えばロバート蒸発器を使用することも可能である。
【0064】
第2のストリッピングカラムそのものは、(凝縮カラムおよび第1のストリッピングカラムと同様に)適宜用途の観点から、環境から断熱されている。
【0065】
還流液を直接および/または間接冷却によって生成することができる。本発明により有利には、直接冷却方法が採用される。このために、最も単純な方法において、最後のトレイ(理論段)を流れるガスは、例えば、第2のストリッピングカラムの分離内部構造物から排気筒トレイによって区切られた(分離部分に取りつけられた)第2のストリッピングカラムに統合することができる急冷装置に供給される。しかし、基本的に、急冷装置を第2のストリッピングカラムの外側の空間に配置することもできる。有用な当該急冷装置としては、先行技術においてこの目的のための既知のすべての装置(例えば、スプレースクラッバ、ベンチュリスクラッバ、気泡カラム、またはスプレー面を有する他の装置)が挙げられ、ベンチュリスクラッバまたはスプレー冷却器を使用するのが好ましい。有利には、向流装置(例えば、インピンジメントプレートノズルを備えたもの)が使用される。急冷液の間接冷却の場合は、典型的には、(間接)伝熱器または熱交換器を通じて誘導される。この点において、好適な装置は、一般的なあらゆる伝熱器または熱交換器である。好適な装置としては、チューブバンドル熱交換器、プレート熱交換器および空気冷却器が挙げられる。好適な冷媒は、適切な空気冷却器では空気であり、他の冷却装置では冷却液、特に水(例えば表面水)である。適宜用途の観点から、使用される急冷液(以降「急冷液0」とも称する)は、急冷で形成された凝縮液の一部である。急冷で形成された凝縮液の他の部分は、実質的に還流液として第2のストリッピングカラムの最上位のトレイ(理論段)に返送される(凝縮液の小部分をこの点で分岐させ、凝縮カラムから回収された底部液体に供給し、それと混合することもできる;得られた混合物の一部を、本文献のさらなる過程でさらに導入されることになる急冷液1として使用することができる;この混合物の別の部分は、第2のストリッピングカラムへの供給物を形成し、この混合物の(比較的少ない)残量は、凝縮液の残留部分と混合され、次いでこの混合において、第1に第2のストリッピングカラムの最上位のトレイ(理論段)への還流液を、第2に急冷液0を形成する)。典型的には、急冷に使用する直前の急冷液0の温度は、約40℃であるのに対して、還流液は、典型的には約80℃で返送される。返送される還流液と、第2のストリッピングカラムに供給される底部液体(および場合により高沸点液)との質量比は、典型的には2以上である。それは、往々にして2から10、好ましくは4から8である。
【0066】
勿論、第2のストリッピングカラムを(有意なアクリル酸含有量を有する液相が誘導されるすべての他の装置と同様に)、重合を防止しながら動作させなければならない。この目的に使用される当該重合防止剤は、基本的に、先行技術で既知のすべての重合防止剤である。
【0067】
それらの例としては、フェノチアジン(PTZ)およびp−メトキシフェノール(MEHQ)が挙げられる。往々にして、これら2つの重合防止剤は併用される。適宜この目的のために、それらは、純アクリル酸に添加・溶解される。MEHQは、好ましくは、溶融物として計測される。
【0068】
しかし、重合防止された、すなわち重合防止剤を含み、凝縮カラムから誘導された底部液体(および場合により高沸点留分)の一部を急冷回路0に添加することによって、急冷回路0および第2のストリッピングカラムの重合防止を特に簡潔に遂行することができる。したがって、典型的には、この急冷液0は、例えば、0.01から0.1質量%のMEHQおよび0.01から0.5質量%のPTZを含む。典型的には、(第2のストリッピングカラムのためのストリッピングガスとして機能する)第1の負荷状態のガスに存在する分子酸素は、重合防止を促進する。
【0069】
第2のストリッピングカラムの底部に生じる底部液体の一部が、連続的に排出され除去される。必要に応じて、有機溶媒、例えばメタノールを添加して、最も揮発性の低い残留物を流動状態に維持する。メタノールの代わりに、他の親水性有機液、例えば、エタノール、またはWO2004/035514に推奨されているもの(または当該液体の混合物)を使用することも可能である。凝縮カラムから供給される底部液体の供給流に対して、前記排出流は、約10または20から30質量%である。適宜用途の観点から、強制循環フラッシュ蒸発器から過熱された形で排出される供給流から分岐し、第2のストリッピングカラムにエネルギーを供給する。それは脱気され、例えばメタノールで希釈され、例えば残留物焼却に送られる。
【0070】
次いで、冷却された形で急冷回路0から排出される第2の負荷状態のガス(典型的な温度は70℃から90℃)を凝縮カラムにそのままの形で返送させることができる(この点において、凝縮カラムから供給される底部液体1kgに対して、1から10Nm3の第1の負荷状態のガスが、第2のストリッピングカラムにおけるストリッピングガスとして使用される;典型的には、該液体は、第2のストリッピングカラムの底部に沸騰した状態で存在する)。そのアクリル酸含有量は、典型的には15から20%である。基本的に、その中に存在するアクリル酸の凝縮カラムへの返送を凝縮した形で実施することも可能である。しかし、当該アクリル酸凝縮液を、凝縮カラムから回収された粗アクリル酸と一緒に、さらなる精製に向けて供給することもできる。本発明によれば、そのままの形、すなわち気体の形で第2の負荷状態のガスの構成成分としてアクリル酸を凝縮カラムに返送するのが好ましい(基本的に、返送を部分的に凝縮された形で実施することもできる)。
【0071】
第2の負荷状態のガスの凝縮カラムへの返送(すべての記述が、第1の負荷状態のガスのそのままの形での凝縮カラムへの返送に等しく適用される)は、好ましくは、第1の側流取出口の下で実施される(基本的に、気相部分酸化の生成物ガス混合物の直接冷却回路に返送することもできる)。適宜用途の観点から、それは、凝縮カラムの底部空間に返送される。底部液体中に浸した状態で、または底部液体の液面の上方で、かつ凝縮カラムの第1のトレイ(理論段)の下で実施することができる。凝縮カラムの底部空間は、有利には、上昇ガスによる底部液体液滴の連行を抑制するために、液滴分離器(例えば遠心液滴分離器)を含む。さらに、底部空間を第1の排気筒トレイによって最下位の分離内部構造物から分離させることができる。
【0072】
第2のストリッピング装置における凝縮カラムから第2のストリッピングカラムに供給される底部液体(場合により、回収された高沸点留分を含む)の滞留時間は、典型的には(最終的に排出される高沸点の二次成分では)0.5から4時間であるべきである。勿論、例えばWO2004/035514に推奨されているように、アクリル酸オリゴマーの再分解のための再分解触媒を第2のストリッピング装置の底部に計りとることができる。
【0073】
第2のストリッピングカラムの底部に対して、Mol(ハンガリー)からのKomad(登録商標)313などの補助剤および/または分散剤(例えば、EP−A1062197および/またはUS−A3,271,296)、例えば、間接熱交換器の汚染を低減して、必要なエネルギーを供給させるとともに、アクリル酸収率を向上させる三級アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミンおよびペンタメチルジエチレントリアミン)を添加することも可能である。添加量は、第2のストリッピングカラムの底部に対して0.1から10質量%であってよい。それらの物質は、有利には、既に高沸点の物質であるか、またはこれらの添加剤がアクリル酸とそれらの物質を形成するため、それらは同時にストリッピングされない。
【0074】
記載の発明の手順が有利である理由の1つは、第1の側流取出口を介して回収された粗アクリル酸の純度を有意に低下させることなくアクリル酸の収率を向上させられることである。凝縮カラムからの残留ガスがストリッピングを目的として記載のように使用される場合であっても、これは、とりわけ、記載の別形ストリッピングに関する。
【0075】
この場合、(例えば、超給水ポリマーを製造するために)アクリル酸を後に使用する際に分裂する二次成分に関する第1の負荷状態のガスおよび第2の負荷状態のガス両方の純度は、既に良好であるため、その中に存在するアクリル酸を第1または第2の負荷状態のガスの気相から(各々の場合に、第1および/または第2の負荷状態のガス全体またはその一部から)金属水酸化物(例えば、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物、例えば、NaOH、KOH、Ca(OH)2および/またはMg(OH)2)の水溶液に(例えば、WO2003/095410に記載されている手順に完全に対応する方法で)一様に吸収させることができ、例えば、水酸化ナトリウム水溶液に吸収させた場合に得られるアクリル酸ナトリウムの水溶液を、例えば、適切な遊離ラジカル重合による超給水ポリマーの製造にそのまま使用することができる(この件に関してはWO2003/014172も参照のこと)。
【0076】
これは、とりわけ、ホルムアルデヒドおよびギ酸などの副産物が、通常、酸性水の水相に優先的に残留するためである。例えば、分離内部構造物(トレイ、乱雑充填材および/または構造充填材)を含むカラムにおける水酸化ナトリウム水溶液(または前記金属水酸化物水溶液のいずれか)による向流スクラビングによるアクリル酸の第1および第2の負荷状態のガス供給物を後に抽出物ストリッピングに返送し、かつ/または焼却に送ることができる。
【0077】
典型的には、固体触媒上の分子酸素を用いたアクリル酸のC3前駆体の不均一触媒気相部分酸化のアクリル酸含有生成物ガス混合物は、例えば、(特に、使用されるC3前駆体がプロピレンである場合に)以下の内容物を有することができる。
【0078】
1から30質量%のアクリル酸
0.05から10質量%の分子酸素
1から30質量%の水
0強から5質量%の酢酸
0強から3質量%のプロピオン酸
0強から1質量%のマレイン酸および/または無水マレイン酸
0から2質量%のアクロレイン
0から1質量%のホルムアルデヒド
0強から1質量%のフルフラル
0強から0.5質量%のベンズアルデヒド
0から1質量%のプロピレン、ならびにその他の内容物として、実質的に不活性な気体、例えば、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタンおよび/またはプロパン
典型的には、生成物ガス混合物は、存在するアクリル酸に対して、0.005モル%以上、往々にして0.03モル%以上のフルフラルを含む。しかし、概して、この基準でのフルフラル含有量は、3モル%以下である。
【0079】
気相部分酸化そのものは、先行技術に記載されているようにして実施され得る。プロピレンから出発して、例えば、EP−A700714およびEP−A700893に記載されている2つの連続的酸化段階で気相部分酸化を実施することができる。しかし、DE−A19740253およびDE−A19740252に引用されている気相部分酸化を用いることもできることが理解されるであろう。
【0080】
少量の二次成分を形成する目的で、プロピレン気相部分酸化は、好ましくは、DE−A10148566に記載されているようにして実施される。この目的のために、使用されるプロピレン供給源は、DE−A10232748に記載のポリマーグレードプロピレンまたは化学グレードプロピレンであってよい。使用されるC3前駆体がプロパンである場合は、部分酸化をDE−A10245585に記載されているようにして実施することができる。
【0081】
しかし、気相部分酸化を基本的にUS2006/0161019、WO2006/092410、WO2006/002703、WO2006/002713、WO2005/113127、DE−A102004021763、EP−A1611076、WO2005/108342、EP−A1656335、EP−A1656335、EP−A1682478、EP−A1682477、独国出願102006054214.2および102006024901.1、EP−A1611080、EP−A1734030、独国出願102006000996.7、102005062026.4、102005062010.8、国際出願PCT/EP2006/065416、PCT/EP2006/067784およびPCT/EP2006/067080の文献に記載されているようにして実施することができる。
【0082】
往々にして、気相部分酸化を受けた後の生成物ガス混合物の温度は、150から350℃、多くの場合において200から300℃、ときには500℃までである。
【0083】
適宜用途の観点から、高温生成物混合物は、その後、一般には100から180℃の温度まで直接冷却によって急冷装置で冷却されてから、有利には用途の観点から、使用される急冷液1とともに、分別凝縮を目的として、好ましくは、分離内部構造物を含む凝縮カラムの下部(好ましくは最下部、例えば底部空間)に流し込まれる。
【0084】
好適な凝縮カラム内部構造物は、基本的に、一般的なすべての内部構造物、特にトレイ、構造充填材および/または乱雑充填材である。トレイのなかでも、バブルキャップトレイ、篩トレイ、バルブトレイおよび/または二重流トレイが好ましい。典型的には、トレイカラムにおける分離トレイの総数は、20から100、往々にして20から80、好ましくは50から80である。
【0085】
本発明により好ましくは、凝縮カラムは、分離内部構造物として、下から順に、第1の二重流トレイ、次いでDE−A10243625、DE−A19924532およびDE−A10243625に推奨されている液圧シール交流トレイ(例えばThormann(登録商標)トレイ)を含むカラムである。二重流トレイの数は、5から60、往々にして25から45であってよく、液圧シール交流トレイの数は、同様に5から60、往々にして30から50であってよい。本発明により好適な酸性水形成領域では(下から上方に向かう還流液のアクリル酸含有量は、15質量%以下、場合によっては10質量%以下である)、有用な分離内部構造物は、好ましくは、DE−A19924532およびDE−A10243625に記載されているバルブトレイである。しかし、基本的に、他の一般的な分離内部構造物を使用することも可能である(凝縮カラム内の個々の領域も、勿論極めて一般的に、相応に小さいカラムの縦列接続体として、(互いに積層するのでなく)全く同様に構成することができ、それが、本文献に具体的に用いられている「凝縮カラム」という用語と、さらに本文献に全般的に用いられている「カラム」という用語が何故対応するより小さいカラムの当該縦列接続体を含む理由である)。
【0086】
使用される急冷装置1は、先行技術におけるこの目的に対応する既知のすべての装置(例えば、スプレースクラッバ、ベンチュリスクラッバ、気泡カラムまたはスプレー面を有する他の装置)であってよく、ベンチュリスクラッバまたはスプレー冷却器を使用するのが好ましい。
【0087】
急冷液1の間接冷却または加熱は、特に始動の過程で実施されるが、好ましくは必ずしも伝熱器または熱交換器を介して実施されない。この点において、すべての一般的な伝熱器または熱交換器が好適である。バンドル熱交換器、プレート熱交換器および空気冷却器が好ましい。好適な冷媒は、対応する空気冷却器における空気、および他の冷却装置における冷却液、特に水である。
【0088】
使用される急冷液1は、例えば、凝縮カラムの底部から回収された底部液体(場合により、急冷回路0から誘導された凝縮液と混合される)、または底部に近い側流取出口を介して回収された底部液体、高沸点留分、あるいは当該底部液体と高沸点留分の混合物(特に、底部空間と最下位のトレイ(理論段(最下位の分離内部構造物))が排気筒トレイによって隔てられる場合)であってよい。場合により、凝縮カラムの底部から回収された急冷液1の一部のみが、前記熱交換器を通じて誘導される。急冷装置1に入る急冷液1の温度は、一般には、適宜90℃から120℃である。
【0089】
触媒気相部分酸化の急冷された(または別の方法で冷却された、もしくは冷却されていない)生成混合物(本発明によれば、記載したように、好ましくは直接冷却に使用される急冷液1との混合物の形)の凝縮カラムへの導入は、有利には、集中遠心液滴分離器を含み、第1の排気筒トレイによって最下位の分離内部構造物と全体的に隔てられたこのカラムの底部空間で行われる(適宜用途の観点から、この場合、高沸点留分が、接続ラインまたは越流を介して凝縮カラムの底部に絶え間なく流し込まれる)。(全体的な機能性を制限することなく以降専ら記載される)例示的かつ好適な実施形態において、この最下位の分離内部構造物は、第1の一連の適宜等間隔の二重流トレイの第1の二重流トレイである。排気筒トレイは、そこから凝縮液(高沸点留分)が連続的に回収され、急冷液1の一部として急冷装置1または底部空間に誘導される回収トレイと同時に機能する。第1の一連の二重流トレイは、第2の排気筒トレイ(回収トレイ)で終端する。この第2の回収トレイから、好ましくは90または95質量%の純度を有する粗アクリル酸が、第1の側流取出口における中程度の沸点の留分として連続的に回収される。
【0090】
この粗アクリル酸は、さらなる蒸留(精留)および/またはさらなる結晶化精製段階に送られ、この蒸留(精留)および/または結晶化の過程で得られた底部液体および/または母液の少なくとも一部が、第1の側流取出口の下方であって第1の回収トレイの上方に位置する凝縮カラムに返送されることになる。この返送は、好ましくは、熱を調整しながら実施される。換言すれば、返送される低温の母液は、凝縮カラムから回収され、熱交換器の反対側を誘導された、結晶化によってさらに精製される粗アクリル酸をそのなかで冷却するために、1つまたは複数の縦列接続間接熱交換器(例えば螺旋形熱交換器)を通じて誘導される。同時に、これによって、母液が加熱される。この目的のために、縦列接続された2つのプレート熱交換器を使用するのが好ましい。
【0091】
適宜、(中程度の沸点の留分として)回収された粗アクリル酸は、さらなる精製を目的とする結晶化に向けて送られることになる。使用される結晶化プロセスは、基本的に、制限を受ける。所望の純度になるまで、結晶化を連続的にまたはバッチ式で、1段階または2段階以上で実施することができる。
【0092】
必要に応じて、有利には、結晶化の前に、精製される粗アクリル酸に水を添加することが可能である(概して、これは、存在するアクリル酸の量に対して、20質量%まで、または10質量%まで、通常は5質量%までの水を含む)。アルデヒドまたは他の二次成分の含有量が大きい場合は、この場合のアルデヒドは、水の機能を果たすことが可能であるため、水の添加を省略することができる。本発明により特に有利には、水は、酸性水の形で添加される。これにより、氷アクリル酸の収率が向上する。
【0093】
前述のように酸性水を粗アクリル酸に添加した場合でも(この手段も同様にアクリル酸の収率の向上をもたらす)、最も厳しい要求(98質量%以上の純度)を満たす(例えば、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メチルおよびアクリル酸エチルを製造するための)エステル化グレードのアクリル酸を単一の結晶化段階によって得られるのは驚くべきことである。適宜、この結晶化段階は、DE−A19924532の第10欄またはDE−A10223058の実施例1に記載されているように、(例えば、WO2006/111565に記載されている冷却−円板結晶器で)懸濁結晶化として実施される。懸濁結晶化で形成されるアクリル酸結晶は、立方体または立方体状の外形を有する。長さ(L)対厚さ(D)比は、典型的には、L:D=1:1からL:D=6:1の範囲、好ましくは1:1から4:1の範囲、より好ましくは1.5:1から3.5:1の範囲である。結晶の厚さDは、典型的には、20から600μm、しばしば50から300μmの範囲である。結晶の長さLは、典型的には、50から1500μm、しばしば200から800μmの範囲である。エステル化に好適なアクリル酸の場合は、遠心器(例えば、2または3段プッシャ遠心器)上の残留母液から懸濁結晶を除去することができ、この場合、除去された結晶は、有利には、溶融した純粋の結晶により遠心で洗浄される。懸濁結晶が、洗浄カラム例えば溶融物洗浄カラム(例えば、WO01/77056またはDE−A10156016またはDE−A10223058によるカラム、あるいはWO2006/111565、WO04/35514、WO03/41833、WO02/09839、WO03/41832、DE−A10036881、WO02/55469およびWO03/78378)により、残留する母液から分離される場合は、単一の結晶化段階によって、超吸収グレードのアクリル酸(純度99.7〜99.9質量%以上)、すなわち超吸水性または他のポリアクリレートを製造するのに好適なアクリル酸をも得ることが可能である。この場合、除去される母液のすべてが、凝縮カラムに適宜返送される。
【0094】
しかし、結晶化を、EP−A616998に推奨されている分別流下膜式結晶化として実施することもできる。これは、例えば、2つまたは3つ以上の(例えば2つから4つの)精製段階を含むことができる(この状況において好適な流下膜式結晶器は、例えば、長さが10から15mであり、外径が50から100mmである1000から1400個の結晶化チューブを含むことができる。より高度な精製段階で除去された母液を前の精製段階の1つに返送することができる。第1の精製段階で除去された母液は、有利には、凝縮カラムに完全に返送される。前の精製段階の1つに返送する代わりに、個々の精製段階の母液を凝縮カラムにすべて返送することができる。最後から2番目の精製段階の純粋の製造物を完全または部分的に最後の精製段階に供給することができる。部分供給が実施される場合は、残りの量を最後の精製段階の純粋な製造物とあまねく混合して、後にすぐに使用できる最終製造物を得ることになる。
【0095】
適宜本発明によれば、第1の側流取出口を介して回収された粗アクリル酸の一部が、付随する回収トレイの下に位置する二重流トレイに供給されることになる。凝縮に返送される母液も、場合により、一般には、このトレイに供給されることになる。供給の前に、母液は、一般には、既に記載したように、粗アクリル酸の回収温度にほぼ対応する温度まで熱を調整しながら加熱されることになる。
【0096】
第1の側流取出口を介して回収された粗アクリル酸の別の部分は、有利には、間接熱交換によって10から15℃だけ加熱され、回収点の上方、好ましくは第1の後続の二重流トレイの真下における凝集カラムに返送されることになる。この手段は、回収された粗アクリル酸の酢酸含有量に好ましい影響を与える。
【0097】
第2の回収トレイの上方には、第2の一連の適宜等間隔の二重流トレイが続き、次いで、適宜同様に等間隔で配置された液圧シール交流質量移動トレイ(例えば、Thormannトレイ、またはDE−A10243625に記載の改造型Thormannトレイ)がそれに続く。最上位の二重流トレイは、場合により、分配トレイとして改造される。換言すれば、それは、例えば、鋸歯状の越流を含む越流路を有する。
【0098】
下から1番目のThormannトレイは、適宜用途の観点から、トレイから流れる液体がチューブとして構成された6つの下降管を流れるトレイである。これらのチューブは、下から2番目の二重流トレイのガス空間から液圧シールされる。6つの下降管の堰の高さは、適宜用途の観点から、交流トレイの流れ方向に小さくなる。有利には、液圧シールは、インピンジメントプレートとともに空のオリフィスを有する。流出チューブは、好ましくは、(トレイに供給される側と反対側の)トレイ断面の後半部、より好ましくは最後の3分の1の部分に均一に分配される。
【0099】
液圧シールは、傾斜した越流堰を有するカップ状になる(45℃)。交流質量移動トレイは、第3の排気筒トレイ(回収トレイ)で終端する。
【0100】
第3の回収トレイの上方には、好ましくは二重流バルブトレイが配置される。バルブトレイ、および本発明により使用可能なバルブトレイを、例えば、Technische Fortschrittsberichte[Technical progress reports]、volume 61、Grundlagen der Dimensionierung von Kolonnenboden[Fundamentals of the dimensioning of column trays]、p.96 to 138に見いだすことができる。それらは、実質的に、幅広い負荷範囲にわたって流動する蒸気に対する特定の負荷に対応する流れオリフィスを提供することを特徴とする。本発明によれば、バラストトレイを使用するのが好ましい。換言すれば、質量によってオリフィスが閉鎖されたケージが、トレイのオリフィスに配置される。本発明によれば、Stahl(ドイツViernheim)のVV12バルブが特に好ましい。実質的に、水、および水より揮発性の低い構成成分がバルブトレイの空間で凝縮する。得られた凝縮液は、酸性水である。
【0101】
酸性水は、第2の側流取出口において、第3の回収トレイから連続的に回収される。回収された酸性水の一部が、凝縮カラムに交差流質量移動トレイの最上位のトレイまで回収される。回収された酸性水の別の部分は、間接熱交換によって冷却され、適切な方法で分割され、同様に凝縮カラムに返送される。冷却された部分は、凝縮カラムに最上位のバルブトレイまで(15から25℃、好ましくは20から25℃の温度で)返送され、他の冷却された部分は、第3の回収トレイと最上位のバルブトレイの間にほぼ等間隔で配置されたバルブトレイまで(20から35℃、好ましくは25から30℃の温度で)返送される。本発明によれば、存在するアクリル酸の量を、回収された酸性水の残量から除くことができる。
【0102】
液体の形で貯蔵されたC3前駆体、例えばプロピレンを、不均一触媒気相酸化のために気相に変換するため、酸性水の適切な部分が、C3前駆体の蒸発器(例えば、プロピレン蒸発器)を通じて誘導されることによって、(縦列接続された1つまたは複数の間接熱交換器によって実施することができる)ある種の冷却が生じる。
【0103】
水より揮発性の高い構成成分は、凝縮カラムの上部に残留ガス(または残留ガス混合物)として気体の形で吸い込まれ、通常、少なくとも部分的に希釈ガス(循環ガス)として気相部分酸化に返送される。循環ガス圧縮機における凝縮を防止するために、残留ガス混合物は、間接熱交換によって予め過熱される。循環されない残留ガス混合物の部分は、通常、焼却に送られる。(好ましくは圧縮された)残留ガス混合物の一部は、既に記載したように、有利には、抽出物および凝縮カラムの底部液体からアクリル酸を除去するためのストリッピングガスとして使用される。有利には、気相部分酸化は、過剰の分子酸素を用いて実施されるため、残留ガス混合物が当該ストリッピングガスとして使用される場合に、残留ガス混合物ならびに第1および第2のストリッピングガスが分子酸素を含む。
【0104】
重合防止を目的として、アクリル酸のp−メトキシフェノール(=MEHQ)溶液または(本発明により好ましくは)MEHQ溶融物および(両方の場合において)場合により、さらにアクリル酸のフェノチアジン溶液が、液圧シール交流質量移動トレイの最上位のトレイに供給される。使用されるアクリル酸は、好ましくは、回収された粗アクリル酸のさらなる精製で得られる純粋のアクリル酸である。例えば、さらなる結晶化精製の過程で得られる氷アクリル酸(純粋製造物)を使用することができる。この溶液を純粋製造物の安定化に適宜使用することもできる。
【0105】
加えて、液圧シール質量移動トレイを含むカラム断面のほぼ中央に、純粋製造物のフェノチアジン(=PTZ)溶液が供給される。
【0106】
基本的に、酸性水の形成を、例えば、第1の凝縮カラム以外で実施することができる(DE−A10235847参照)。この場合、内部構造物が実質的にない下流空間(第2のカラム)(この空間を、酸性水形成を目的として凝縮カラムに統合することもできる;次いで、内部構造物のない当該急冷空間は、通常、例えば排気筒トレイによって凝縮カラム内の最上位の分離内部構造物から隔てられる)または内部構造物を含む空間において、急冷液2を用いて適宜直接冷却を行うことによって、後に第1の凝縮カラムの上部から出る低沸点ガス供給流から実質的に水が凝縮する。得られた凝縮液は、結果として酸性水である。次いで、酸性水の一部が望ましくはそこに返送されて、第1の凝縮カラムの上部における分離性能を向上させることになる。酸性水のさらなる部分が、外部熱交換器で間接冷却され、急冷液2として使用され、次に、アクリル酸を本発明に従って残量の酸性水から抽出することができる。次に、水より揮発性の高い低沸点供給流の構成成分が、通常、少なくとも部分的に循環ガスとして気相部分酸化に返送され、またはストリッピングガスとして使用される残留ガスを形成する。
【0107】
適宜、本発明による方法の好適な別形における二重流トレイは、凝縮カラムにおいて、凝縮カラムにおける断面付近まで伸び、そこからカラムの上部に向かう還流液のアクリル酸含有量は、還流液の質量に対して90質量%以下である。
【0108】
二重流トレイの数は、記載の分別凝縮の好適な別形では、既に述べたように、一般的に25から45である。それらのオリフィス比は、約12から25%である。二重流トレイは、流路として、好ましくは、均一の円直径を有する円形の穴を有する。後者は、約10から20mmである。必要に応じて、凝縮カラムにおける穴の直径を上から下に向かって縮小または拡大することができ、かつ/または穴の数を減少または増加させることができる(例えば、穴の直径を一定の14mmとすることができ、オリフィス比を上から下に向かって17.4%から18.3%に増加させることができる)。しかし、穴の数は、すべての二重流トレイに対して一定であってもよい。加えて、円形穴は、好ましくは、個々の二重流トレイに対して厳密な三角形のピッチで均一に配置される(DE−A10230219参照)。
【0109】
さらに、凝縮カラムでは、二重流トレイに開けられた流路オリフィスの穿孔バリは、好ましくは下を向いている(これは、望ましくないポリマーの形成を低減する)。
【0110】
本発明によれば、凝縮カラムに使用される二重流トレイの数が約10から15個の理論段に対応する場合に望ましい。
【0111】
本発明により好適な凝縮カラムにおける二重流トレイに続く液圧シール交流質量移動トレイの数は、既に記載したように、一般的に30から50である。それらのオリフィス比は、約5から25%、好ましくは10から20%である(オリフィス比は、極めて一般的に、全断面における流路断面の割合を表す;好適に使用される交流質量移動トレイでは、それは、一般には適宜前記範囲内にある)。
【0112】
本発明によれば、単流交流質量移動トレイを使用するのが好適である。
【0113】
概して、分別生成物ガス混合物凝縮の好適な別形の液圧シール交流トレイの数は、約10から30個、往々にして25個の理論段に対応する数になる。
【0114】
液圧シール交差流トレイおよび使用されるあらゆるバルブトレイは、少なくとも1つの下降管を有する。それらは、単流または多流、例えば二重流構成を有することができる。単流構成の場合でも、2つ以上の下降管を有することができる。概して、バルブトレイの供給シャフトも液圧シールされる。
【0115】
部分気相酸化の生成物ガス混合物のための急冷システム1の重合防止を、急冷に使用される(凝縮カラムからの)底部液体に存在する重合防止剤を用いて、または急冷に使用される(凝縮カラムからの)高沸点留分に存在する重合防止剤を用いて実施することができる。
【0116】
再び、本発明による方法が有利である理由は、実質的に同じ純度の粗アクリル酸の収率を増加させられることである。本文献に記載されているすべての内容は、特に、プロピレンのアクリル酸への(好ましくは2段階)不均一部分酸化によって得られた生成物ガス混合物に適用される。本発明による上記好適な別形は、全体的な性能を制限するものではない。
【0117】
最後に、第1のストリッピングガスおよび第2のストリッピングガスは、有利には、分子酸素を含むことも強調すべきである。
【0118】
加えて、本発明による方法において、場合により、1気圧の圧力における沸点Tsが1気圧における水の沸点Tw以上である(還流液以外の)別の液体吸収剤が、その第1の側流取出口とその第2の側流取出口との間に配置された供給点を介して濃縮カラムに供給されることも付け加えるべきである。基本的に、例えば、EP−A1818324に記載されているようにして行うことが可能である。有用な当該吸収剤は、例えば、比較的高沸点の有機液であってよい。例えば、DE−A10336386および本文献に引用されている従来技術において吸収剤として推奨されている有機液が好適である。この点において、EP−A1818324に推奨されている吸収剤を使用することも可能であることが理解される。
【0119】
例えば、好適な当該吸収剤は、EP−A722926、DE−A4436243およびDE−A10336386に記載されている高沸点(不活性)液体疎水性有機液(例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルおよび/またはDiphyl)である。これらは、例えば、標準圧(1気圧)におけるその沸点がアクリル酸の沸点より高く、外部活性極性基を含まないため、例えば、水素結合を形成することが不可能である少なくとも70質量%程度の分子からなる液体である。当該吸収剤の例としては、ジフェニルエーテル(70から75質量%)とDiphyl(登録商標)と称するジフェニル(25から30質量%)との混合物、および70から75質量%のジフェニルエーテルと25から30質量%のジフェニルとの混合物と、該混合物に対して0.1から25質量%のフタル酸ジメチルとの混合物が挙げられる。
【0120】
使用される当該吸収剤は水性液であってもよいことが理解されるであろう。例えば、有用な当該水性液は、EP−A1818324に推奨されているものである。他には、水がこれらの吸収剤に含まれる。使用される当該水性吸収剤は、本発明に従って実施される酸性水抽出において抽出された形で残留する水相であってもよい。
【0121】
典型的には、前記吸収剤の添加は、第1の側流取出口を介して凝縮カラムから誘導される粗アクリル酸に存在する特定の二次成分の割合を制御下で低下させる目的を果たすことになる。したがって、使用される吸収剤そのものは、これらの二次成分を非常に低い質量比率で含む(または好ましくは全く含まない)場合に有利である。
【0122】
水性吸収剤を使用する場合は、例えば、二次成分のその個々の質量比率が酸性水における対応する質量比率より小さい場合に好適である。
【0123】
とりわけ、第1の側流取出口を介して凝縮カラムから誘導される粗アクリル酸におけるアクリル酸と同等の沸点を有するアルデヒドの含有量(特にフルフラルの含有量)を減少させるための特に有利な方法で、水性吸収剤(例えば水)を供給するのが好適である。基本的に、使用される当該吸収剤は、水性液や有機液の混合物であってもよい。基本的に、当該混合物は、多相であってもよい。
【0124】
吸収剤を、有利には、還流液と同じ高さで凝縮カラムに誘導することができる。両者を混合物の形で凝縮カラムに誘導することもできる。
【0125】
凝縮カラムに供給されるときの吸収剤の温度は、大幅に異なり得る。それは、還流温度より高くても低くてもよい。往々にして、吸収剤の温度は、還流液の温度±20℃の範囲内になる。還流液と吸収剤の温度が同じであるのが好ましい。
【0126】
第1の側流取出口を介して回収される粗アクリル酸が、追加的に使用される複数部の吸収剤を含むとき、それらは、一般には、本文献に記載されている粗アクリル酸のさらなる結晶化精製によってそこから除去される。あるいは、追加的に使用される吸収剤は、通常、凝集カラムから誘導された底部液体中に得られ、上記のようにしてそこから除去された後に、吸収剤として再利用され得る。
【0127】
適宜本発明によれば、凝縮カラムに誘導される吸収剤の質量流量は、凝縮カラムに供給される生成物ガス混合物の構成成分として凝縮カラムに誘導されるアクリル酸の質量流量に対して、0から30%になる。
【0128】
カラムから第1の側流取出口と第2の側流取出口の間に配置された凝縮カラムの縦断面に基づいて、凝縮カラムへの吸収剤の供給物は、適宜用途の観点から、この縦断面の上から3分の1の部分に誘導される。
【0129】
本文献に記載されている粗アクリル酸のさらなる結晶化精製を、本発明により得られる粗アクリル酸に適用する代わりに、DE−A10336386に記載されている手順(特に、本文献の請求項16から20に記載のさらなる結晶化精製)によって得られる粗アクリル酸に適用できる。当該さらなる結晶化精製を前記2種類の粗アクリル酸の任意の所望の混合物に適用することもできる。当該手順は、例えば、アクリル酸のC3前駆体の(場合により平行して実施される)不均一触媒部分気相酸化の生成物ガス混合物からアクリル酸を除去するために、発明の除去方法およびDE−A10336386による除去方法が平行して実施される場合に使用されることになる。当該アクリル酸除去のための発明の分別凝縮の実施を一時的に停止しなければならないが、DE−A10336386により得られた粗アクリル酸をこのさらなる結晶化精製に供給しなければならない場合には、アクリル酸結晶懸濁物からの懸濁結晶の除去で得られた母液の部分供給流(さらなる結晶化精製に供給される粗アクリル酸の質量流量に基づいて、5から30%、典型的には10から20%の質量流量(除去された結晶は規格を満たしていなければならない);母液の残留供給流は、通常、(該質量流量の粗アクリル酸と一緒に(混合物の形で))結晶化に返送されることになる))は、途中で、貯蔵タンクに貯蔵され(貯蔵タンクへの供給は、連続的または周期的であってよい)、分別凝縮が再開された後に、後に本発明により得られる母液との混合物の形で分別凝縮に(後に、本発明により得られる母液の質量流量になり、分別凝縮に返送される質量流量に対して、0強から20%、好ましくは0強から10%の質量流量で)徐々に返送されることになる。この目的のために、貯蔵タンクからの回収は、連続的または周期的であってよい。それは、通常、得られた結晶が規格を満たすように回収される(結晶化の設計能力は、一般には、粗アクリル酸の製造の設計能力を上回る;しかし、手短に述べると、結晶化の設計能力を超えたさらなる結晶化精製も可能である)。
【0130】
したがって、本発明は、特に、以下の実施形態を含む。
【0131】
1.アクリル酸、水蒸気および二次成分を含む生成物ガス混合物を、高温における固体触媒上の分子酸素を用いた少なくとも1つのアクリル酸のC3前駆体の不均一触媒気相部分酸化によって得て、アクリル酸、水蒸気および二次成分を含む生成物ガス混合物の温度を、場合により、直接および/または間接冷却によって低下させ、次いでアクリル酸、水蒸気および二次成分を含む生成物ガス混合物を、分離内部構造物を備えた凝縮カラムに流し込み、凝縮カラム内で上昇させることで、分別凝縮させ、生成物ガス混合物の凝縮カラムへの供給点の上方に位置する第1の側流取出口を介して水および二次成分を希薄な形で含む粗アクリル酸を目標製造物として導出するとともに、第1の側流取出口の上方に位置する第2の液相取出口を介してアクリル酸および二次成分をさらに含む酸性水を導出し、凝縮カラムの上部で水より低い沸点を有する二次成分を含む残留ガス混合物を導出し、凝縮カラムの底部空間からアクリル酸およびアクリル酸より高い沸点を有する後続生成物および二次生成物をさらに含む底部液体を凝縮カラムから導出し、回収された酸性水の一部をそのまま、かつ/またはその冷却後に還流液として凝縮カラムに返送し、場合により、そのさらなる精製を目的として少なくとも1つのさらなる熱分離方法を粗アクリル酸に施す、アクリル酸の製造方法において、凝縮カラムに返送されていない酸性水の少なくとも部分量でその中に存在するアクリル酸を、有機溶媒を用いた抽出によって、酸性水から有機溶媒に吸収させて、アクリル酸を含む有機抽出物を形成し、次いで、少なくとも1つの熱分離方法を用いてアクリル酸を有機抽出物から除去し、抽出物から除去されたアクリル酸を凝縮カラムに返送し、または粗アクリル酸のさらなる精製に送り、かつ/または金属水酸化物の水溶液に吸収させることを特徴とする、アクリル酸の製造方法。
【0132】
2.C3前駆体が、プロピレンまたはアクロレイン、あるいはプロピレンとアクロレインの混合物であることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0133】
3.凝縮カラムに返送されていない酸性水の少なくとも25質量%でその中に存在するアクリル酸を、有機溶媒を用いた抽出によって、酸性水から有機溶媒に吸収させて、アクリル酸を含む有機抽出物を形成し、次いで、少なくとも1つの熱分離方法を用いてアクリル酸を有機抽出物から除去し、抽出物から除去されたアクリル酸を凝縮カラムに返送し、または粗アクリル酸のさらなる精製に送り、かつ/または金属水酸化物の水溶液に吸収させることを特徴とする、実施形態1または2に記載の方法。
【0134】
4.酸性水からのアクリル酸の抽出を、構造充填材および/または篩トレイを分離内部構造物として含む抽出カラムで実施することを特徴とする、実施形態1から3までのいずれかに記載の方法。
【0135】
5.有機溶媒を抽出カラムの上部に導入し、酸性水を抽出カラムの底部領域に導入し、有機溶媒を連続的な酸性水の相における分散相として上昇させ、または酸性水を抽出カラムの上部に導入し、有機溶媒を抽出カラムの底部領域に導入し、有機溶媒を連続的な酸性水の相における分散相として上昇させることを特徴とする、実施形態4に記載の方法。
【0136】
6.有機溶媒が、5から20個の炭素原子を含む脂肪族または芳香族モノカルボン酸と、1から8個の炭素原子を有するアルコールとの少なくとも1つのエステルを含むことを特徴とする、実施形態1から5までのいずれかに記載の方法。
【0137】
7.有機溶媒が、5から20個の炭素原子を含む脂肪族または芳香族ジカルボン酸と、1から8個の炭素原子を有するアルコールとの少なくとも1つのジエステルを含むことを特徴とする、実施形態1から5までのいずれかに記載の方法。
【0138】
8.有機溶媒が、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、イソフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジメチルおよび/またはテレフタル酸ジエチルであることを特徴とする、実施形態1から5または実施形態7に記載の方法。
【0139】
9.大気圧における有機溶媒の沸点が200℃以上であることを特徴とする、実施形態1から8までのいずれかに記載の方法。
【0140】
10.第1のストリッピングガスを用いたストリッピングによってアクリル酸を有機抽出物から除去し、アクリル酸で負荷された第1のストリッピングガスを凝縮カラムに返送し、かつ/または第1の負荷されたストリッピングガスに存在するアクリル酸を金属水酸化物の水溶液に吸収させることを特徴とする、実施形態1から9までのいずれかに記載の方法。
【0141】
11.第1のストリッピングガスを用いたストリッピングによってアクリル酸を有機抽出物から除去し、得られたアクリル酸で負荷された第1のストリッピングガスを第2のストリッピングガスとして、凝縮カラムから導出される底部液体になおも存在するアクリル酸をストリッピングして除き、得られたアクリル酸で負荷された第2のストリッピングガスを凝縮カラムに返送し、かつ/または第2のストリッピングガスに存在するアクリル酸を金属水酸化物の水溶液に吸収させることを特徴とする、実施形態1から9までのいずれかに記載の方法。
【0142】
12.凝縮カラムから導出される底部液体のストリッピングを、分離内部構造物を備えたストリッピングカラムで実施し、ストリッピングカラムの底部の温度は、150から190℃であることを特徴とする、実施形態11に記載の方法。
【0143】
13.アクリル酸で負荷された第2のストリッピングガスを向流精留に施し、アクリル酸で負荷する前に凝縮カラムに返送し、かつ/またはそこに存在するアクリル酸を金属水酸化物の水溶液に吸収させることを特徴とする、実施形態11または12に記載の方法。
【0144】
14.使用される第1のストリッピングガスが、空気、N2、CO2および/または水蒸気であることを特徴とする、実施形態10から13までのいずれかに記載の方法。
【0145】
15.使用される第1のストリッピングガスが残留ガス混合物であることを特徴とする、実施形態10から13までのいずれかに記載の方法。
【0146】
16.粗アクリル酸を結晶化によってさらに精製することを特徴とする、実施形態1から15までのいずれかに記載の方法。
【0147】
17.凝縮カラムに返送されていない酸性水の一部をさらなる結晶化精製の前に粗アクリル酸に添加することを特徴とする、実施形態16に記載の方法。
【0148】
18.粗アクリル酸またはその酸性水との混合物のさらなる結晶化精製を懸濁結晶化によって実施することを特徴とする、実施形態16または17に記載の方法。
【0149】
19.さらに洗浄カラムを使用して、懸濁結晶化に残留する母液と形成された懸濁結晶とを分離することを特徴とする、実施形態18に記載の方法。
【0150】
20.溶融アクリル酸結晶および/またはその金属塩を重合する遊離ラジカル重合の方法がその後に続くことを特徴とする、実施形態17から19までのいずれかに記載の方法。
【0151】
21.負荷状態の第1および/または第2のストリッピングガスから金属水酸化物の水溶液に吸収されたアクリル酸を重合する遊離ラジカル重合の方法がその後に続くことを特徴とする、実施形態10、11、13までのいずれかに記載の方法。
【0152】
22.残留ガス混合物の部分量を循環ガスとして気相部分酸化に返送することを特徴とする、実施形態1から21までのいずれかに記載の方法。
【0153】
23.有機溶媒が、抽出条件下で、水の質量密度と25kg/m3以上の差がある質量密度を有することを特徴とする、実施形態1から22までのいずれかに記載の方法。
【0154】
24.金属水酸化物の水溶液が、NaOH、KOH、Ca(OH)2および/またはMg(OH)2を溶解した形で含むことを特徴とする、実施形態1から23までのいずれかに記載の方法。
【0155】
25.1気圧におけるその沸点Tsが1気圧における水の沸点Tw以上である液体吸収剤を、その第1の側流取出口とその第2の側流取出口との間に位置する供給点を介して、凝縮カラムに供給することを特徴とする、実施形態1から24までのいずれかに記載の方法。
【0156】
2007年1月26日に出願された米国仮特許出願第60/886771号および2007年11月16日に出願された同第60/988619号が、参考として本発明の出願で援用される。前記教示に関して、本発明からの多くの変更が可能である。したがって、本発明を、添付の請求項の範囲内で、本明細書に記載されている方法と異なる方法で実施できるものと想定することが可能である。
【0157】
実施例および比較例
実施例1(定常状態を説明する)
3つの並列タンデム反応器系列における化学グレードの純度のプロピレンの2段階不均一触媒気相部分酸化によって、270℃の温度および1.5バールの圧力、ならびに以下の組成を有する生成物ガス混合物を得る。
【0158】
10.3141質量%のアクリル酸、
0.2609質量%の酢酸、
4.6513質量%の水、
0.0251質量%のギ酸、
0.0851質量%のホルムアルデヒド、
0.1052質量%のアクロレイン、
0.0024質量%のプロピオン酸、
0.0028質量%のフルフラル、
0.0012質量%のアクリル酸アリル、
0.0013質量%のギ酸アリル、
0.0032質量%のベンズアルデヒド、
0.01151質量%の無水マレイン酸、
0.0096質量%の安息香酸、
0.0126質量%の無水フタル酸、
2.0334質量%のCO2
0.6604質量%のCO、
0.6259質量%のプロパン、
0.1459質量%のプロピレン、
2.3772質量%のO2、および
78.5670質量%のN2
【0159】
各々の場合において3つのタンデム反応器系列に供給される反応ガス混合物は、各々の場合において、循環ガスと化学グレードプロピレンの混合物であり、後にその中に一次空気が計測導入される。混合を、各々の場合において、固定ミキサーによって実施する。
【0160】
各々の場合において、第1段階の反応器と第2段階の反応器の間に二次空気も供給する。
【0161】
量比を特定の反応器系列の動作状態に合わせて調整すると、第1の反応器の上流では、以下のようになる。
【0162】
A)循環ガス=25339kg/h
化学グレードプロピレン=3481kg/h
空気=17791kg/h
B)循環ガス=38341kg/h
化学グレードプロピレン=4035kg/h
空気=19561kg/h
C)循環ガス=30874kg/h
化学グレードプロピレン=4689kg/h
空気=23936kg/h
得られた3つの反応ガス混合物供給流の主な内容物は、以下の通りである。
【0163】
A)10.2909質量%のO2
1.2926質量%のCO2
0.4136質量%のCO、
0.6533質量%のプロパン、
7.2976質量%のプロピレン、
1.5383質量%のH2O、および
78.2693質量%のN2
B)8.9782質量%のO2
1.4660質量%のCO2
0.4710質量%のCO、
0.6744質量%のプロパン、
6.3907質量%のプロピレン、
1.6626質量%のH2O、および
80.0789質量%のN2;および
C)10.6981質量%のO2
1.2357質量%のCO2
0.3948質量%のCO、
0.6500質量%のプロパン、
7.6922質量%のプロピレン、
1.4968質量%のH2O、および
77.5992質量%のN2
【0164】
生成物ガス混合物(177184kg/h)を、直接冷却により、並流動作するスプレー冷却器で107.3℃の温度まで冷却する(急冷1)。
【0165】
生成物ガス混合物を直接冷却するのに使用される液体(急冷液1)は、以下に記載する濃縮カラムの底部から回収される底部液体と、急冷回路0から回収される少量(251kg/h)の凝縮液との混合物1の一部である。
【0166】
この混合物1(温度=104.9℃)の内容物は、以下の通りである。
【0167】
64.6170質量%のアクリル酸、
0.3883質量%の酢酸、
1.0300質量%の水、
0.0132質量%のギ酸、
0.0011質量%のホルムアルデヒド、
0.0083質量%のアクロレイン、
0.0384質量%のプロピオン酸、
0.3331質量%のフルフラル、
0.0016質量%のアクリル酸アリル、
0.0008質量%のギ酸アリル、
0.1609質量%のベンズアルデヒド、
4.4001質量%の無水マレイン酸、
0.3976質量%の安息香酸、
0.5228質量%の無水フタル酸、
12.8970質量%のジアクリル酸、
13.9178質量%のポリアクリル酸
0.1258質量%のフェノチアジン、
0.4408質量%のMEHQ、
0.7052質量%の他の高沸点構成成分、および
0.0002質量%の酸素。
(前記ジアクリル酸及びポリアクリル酸はマイケル付加物である)
生成物ガス混合物を直接冷却するために、わずか458m3/hの量を前記温度で急冷回路1のスプレー冷却器に供給する。3137kg/hを第2のストリッピングカラムに供給し、1195kg/hを急冷回路0に供給することで、第2のストリッピングカラムの最上位のトレイに誘導される急冷液0および還流液の望ましくない重合を阻止する。
【0168】
107.3℃に冷却された生成物ガス混合物と、直接冷却をもたらす非蒸発性急冷液1との混合物を凝縮カラムの底部にそのまま誘導する。底部空間および急冷1における圧力は、1.50バールである。
【0169】
Thromannトレイの領域における凝縮カラムの内径は、6.5mあるいは6.0mである。
【0170】
3137kgの混合物1を、分離内部構造物として50個の二重流トレイを含む第2のストリッピングカラムに供給物として供給する。凝縮カラムと全く同様に、第2のストリッピングカラムを環境から断熱する。第2のストリッピングカラムの内径は、すべての二重流トレイにわたって、一定の2.4mである。二重流トレイを第2のストリッピングカラムに等間隔(400mm)で配置する。それらのオリフィス比は、一定の12%である。下から上に向かって、最初の8個の二重流トレイの穴径は、一定の14mmであり(厳密な三角形のピッチに対応する穴径;穴中心から穴中心までの距離は26mmに等しい)、すべての後続の二重流トレイの穴径は、一定の14mmである(同様に厳密な三角形のピッチに対応する穴径;穴中心から穴中心までの距離は25mmに等しい)。
【0171】
3137kg/hの混合物1を105.2℃の温度で(下から)8番目の二重流トレイに供給する。
【0172】
外部の強制循環三重流チューブバンドルフラッシュ蒸発器を用いて、エネルギーを第2のストリッピングカラムに供給する(Grundoperationen chemischer Verfahrenstechnik,4th edition,Steinkopff Verlag Dresden,1974,p.434)。第2のストリッピングカラムの底部から回収され、151.7℃の温度および1.655バールの圧力を有する271650kg/hの底部液体は、そこに供給され、以下の内容物を有する。
【0173】
2.0713質量%のアクリル酸、
0.2201質量%の酢酸、
0.2608質量%の水、
0.0094質量%のギ酸、
0.0001質量%のホルムアルデヒド、
0.0036質量%のアクロレイン、
0.0017質量%のプロピオン酸、
0.0001質量%のフルフラル、
0.0008質量%のギ酸アリル、
0.5731質量%のフタル酸ジエチル、
0.7638質量%のベンズアルデヒド、
23.2670質量%の無水マレイン酸、
2.2693質量%の安息香酸、
2.9848質量%の無水フタル酸、
38.3947質量%のジアクリル酸、
21.2842質量%のポリアクリル酸
0.7185質量%のフェノチアジン、
2.5151質量%のMEHQ、
4.6615質量%の他の高沸点構成成分、および
0.0001質量%の酸素。
(前記ジアクリル酸及びポリアクリル酸はマイケル付加物である)
熱交換器チューブを囲む空間を通じて誘導される(適切な偏向プレートによって蛇行して誘導される)熱媒体は、水蒸気(圧力=16バール)である。それが熱交換器チューブを流れると、底部液体が加熱され、熱交換器を通じて誘導される全量の270900kg/hが158.6℃の温度で第2のストリッピングカラムの底部に返送される。熱交換器を通じて誘導される底部液体の全量750kg/hを分岐させ、脱気し、メタノールで希釈し、残留物焼却に送る。
【0174】
加えて、第1のストリッピングカラムの上部から誘導された17424kg/hの第1の負荷状態のガスは、82.2℃の温度および約2.50バールの圧力で第2のストリッピングカラムの底部に供給され、以下の内容物を有する。
【0175】
3.3977質量%のアクリル酸、
1.1198質量%の酢酸、
4.1030質量%の水、
0.0622質量%のギ酸、
0.0321質量%のホルムアルデヒド、
0.1181質量%のアクロレイン、
0.0030質量%のプロピオン酸、
0.0006質量%のフルフラル、
0.0139質量%のギ酸アリル、
0.0247質量%のフタル酸ジエチル、
2.5667質量%のO2
2.1951質量%のCO2
0.7129質量%のCO、
0.6756質量%のプロパン、
0.1575質量%のプロピレン、および
84.8133質量%のN2
【0176】
第2の負荷状態のガスを25831kg/hの量(温度=96.7℃、圧力=1.58バール)で第2のストリッピングカラムの上部から誘導し、並流で動作するスプレー冷却器での直接冷却(急冷0)によって80.9℃の温度まで冷却し、部分的に凝縮させる。
【0177】
直接冷却において残留しているガス混合物は、20755kg/hの量で1.58バールの圧力にて凝縮カラム(浸漬されていない)の底部空間に返送され、以下の内容物を有する。
【0178】
18.5793質量%のアクリル酸、
0.9849質量%の酢酸、
3.6185質量%の水、
0.0571質量%のギ酸、
0.0271質量%のホルムアルデヒド、
0.1006質量%のアクロレイン、
0.0099質量%のプロピオン酸、
0.0436質量%のフルフラル、
0.0003質量%のアクリル酸アリル、
0.0117質量%のギ酸アリル、
0.0053質量%のベンズアルデヒド、
0.0642質量%の無水マレイン酸、
0.0001質量%の安息香酸、
0.0001質量%のジアクリル酸、
0.0001質量%のMEHQ、
2.1548質量%のO2
1.8428質量%のCO2
0.5985質量%のCO、
0.5672質量%のプロパン、
0.1322質量%のプロピレン、および
71.2018質量%のN2
【0179】
使用する急冷液0は、1195kg/hの混合物1と、急冷0の直接冷却で形成された37761kg/hの凝縮液との32956kg/hの混合物(この目的で、混合物のこの部分を間接熱交換器で80.9℃から40.1℃に冷却する(タイプ:螺旋熱交換器;水に対する熱交換))。80.9℃の温度を有する6020kg/hのこの混合物を還流液として第2のストリッピングカラムの最上位のトレイに誘導する。
【0180】
混合物は、以下の内容物を有する。
【0181】
87.9166質量%のアクリル酸、
2.3313質量%の酢酸、
2.6130質量%のH2O、
0.0688質量%のギ酸、
0.0010質量%のホルムアルデヒド、
0.0151質量%のアクロレイン、
0.0480質量%のプロピオン酸、
0.2980質量%のフルフラル、
0.0008質量%のアクリル酸アリル、
0.0096質量%のギ酸アリル、
0.0568質量%のベンズアルデヒド、
1.1099質量%の無水マレイン酸、
0.0761質量%の安息香酸、
0.1000質量%の無水フタル酸、
2.4592質量%のジアクリル酸、
2.6522質量%のポリアクリル酸
0.0240質量%のフェノチアジン、
0.0847質量%のMEHQ、
0.1345質量%の他の高沸点構成成分、および
0.0004質量%の酸素。
(前記ジアクリル酸及びポリアクリル酸はマイケル付加物である)
底部液体の液滴が底部空間から上方に運ばれることを防ぐ遠心液滴分離器を凝縮カラムの底部空間に統合する。
【0182】
凝縮カラムの底部空間は、既に述べたように、7.80mのカラム高さ(すべての高さ同様に、カラム底部から計算される)において第1の回収トレイ(約16個の分配された屋根付き排気筒を有する排気筒トレイ;排気筒直径:600mm;排気筒高さ:1m)により7.80mのカラム高さで結合している。
【0183】
回収トレイは、2°の内方向傾斜および中央ドローカップおよびドローノズル(DN〜200)を備えた二重壁構成を有する。遊離ガス断面は、約30%である。
【0184】
88579kg/hの高沸点留分をこの第1の回収トレイから、第1の回収トレイの下に位置する底部空間に誘導する。
【0185】
高沸点留分は、99.8℃の温度および約1.50バールの圧力で、以下の内容物を有する。
【0186】
94.6665質量%のアクリル酸、
0.5402質量%の酢酸、
1.3577質量%の水、
0.0160質量%のギ酸、
0.0014質量%のホルムアルデヒド、
0.0071質量%のアクロレイン、
0.0577質量%のプロピオン酸、
0.3814質量%のフルフラル、
0.0023質量%のアクリル酸アリル、
0.0010質量%のギ酸アリル、
0.1279質量%のベンズアルデヒド、
2.1925質量%の無水マレイン酸、
0.0051質量%の安息香酸、
0.0046質量%の無水フタル酸、
0.6008質量%のジアクリル酸、
0.0061質量%のフェノチアジン、
0.0314質量%のMEHQ、および
0.0002質量%のO2
【0187】
底部温度は、104.9℃であり、(液面の)底部圧力は、1.51バールである。
【0188】
第1の回収トレイから2.0m上方には、最初に15個の二重流トレイのうちの1番目のトレイを配置する。これらの二重流トレイ(穴の数は一定の33678個)を380mmのトレイ間隔で等間隔に装着する。流路オリフィスは、14mmの一定の直径を有する円形オリフィスからなり、穿孔バリは、分離カラムにおいて下を向いている。円形流路の中心の配列は、厳密な三角形のピッチに従う。2つの円の最も短い間隔は、24.5mmである。
【0189】
15個の二重流トレイは、分配トレイとして機能する。この目的のために、カラム壁は、2番目の回収トレイと15番目の二重流トレイの間に、挿入チューブ1つ当たり45個の排液口(直径:15mm)を有する2つの挿入チューブ(DN〜150)を含む。
【0190】
粗アクリル酸および母液を、挿入チューブを介して、凝縮カラムに返送する。
【0191】
第1の一連の二重流トレイは、最後の二重流トレイから1.50m上方に装着されている2番目の回収トレイ(16個のほぼ均一に分配された屋根付き排気筒を有する排気筒トレイ;排気筒高さ約1.70m、ドローノズル(DN〜250)を備えた中央ドローカップ、遊離ガス断面は30%である)に結合している。
【0192】
2番目の回収トレイから、97.1℃の温度の粗アクリル酸が、1.48バールで第1の側流取出口として連続的に回収され、以下の内容物を有する。
【0193】
96.7716質量%のアクリル酸、
0.8253質量%の酢酸、
1.6640質量%の水、
0.0213質量%のギ酸、
0.0018質量%のホルムアルデヒド、
0.0070質量%のアクロレイン、
0.0681質量%のプロピオン酸、
0.1642質量%のフルフラル、
0.0027質量%のアクリル酸アリル、
0.0012質量%のギ酸アリル、
0.0164質量%のベンズアルデヒド、
0.1052質量%の無水マレイン酸、
0.3278質量%のジアクリル酸、
0.0050質量%のフェノチアジン、
0.0180質量%のMEHQ、および
0.0002質量%の酸素。
【0194】
第2の回収トレイから回収された18474kg/hの粗アクリル酸を、回収された粗アクリル酸のさらなる結晶化精製で得られる、回収されたアクリル酸および水蒸気を熱媒体(72716kg/h)とする間接熱交換で90℃に加熱された母液とともに、2番目の回収トレイの真下の前記挿入トレイを介して凝集カラム、凝縮カラムの2番目の回収トレイの下に位置する二重流トレイに返送させる。
【0195】
2番目の回収トレイから回収された89.303kg/hの粗アクリル酸を多段間接熱交換によって(とりわけ、凝縮カラムに返送される前記母液に対して熱調整しながら)29℃まで冷却し、場合によりタンクファームにてそのまま緩衝処理する。次いで、凝縮カラムの第2の側流取出口から回収された1204kg/hの酸性水を冷却された粗アクリル酸に添加する。
【0196】
酸性水は、以下の内容物を有する。
【0197】
10.7677質量%のアクリル酸、
6.4390質量%の酢酸、
79.5610質量%の水、
0.7038質量%のギ酸、
2.4712質量%のホルムアルデヒド、
0.0132質量%のアクロレイン、
0.0082質量%のプロピオン酸、
0.0013質量%のフルフラル、
0.0331質量%のギ酸アリル、
0.0001質量%のMEHQ、および
0.0013質量%の酸素。
【0198】
得られた混合物を別の間接熱交換(冷却ブラインに対する熱交換(水/グリコール混合物;25〜35質量%のグリコールおよび65〜75%質量%の水))によって16℃まで冷却し、次いで並列に動作する2から3個の冷却ディスク結晶器(WO2006/111565参照)に分配誘導する。これらの各々は、24個のワイピングされた円形冷却プレート(それぞれの内部に冷媒(水とグリコールの混合物;グリコール含有量=25から35質量%)が循環する)が30±1cmの等間隔で連続的に懸垂配列されたトラフを含む(プレート直径=3.3m)。特定の冷媒を、冷却ディスクから次の冷却ディスクに、結晶化混合物に向流させて、特定の結晶器に流す。換言すれば、特定の冷媒を、2つの並行流の形に分割して、特定の結晶器の冷却プレートを通じて誘導する。一方の流れは、偶数番号の冷却プレートを通り、他方の流れは、奇数番号の冷却プレートを通る(冷却ディスクの番号は、流れ方向により1から始める)。結晶器1つ当たりの冷媒の具体的な量は、全量で180〜220t/h(メートルトン)、すなわち1つの流れについて90〜110t/hである。冷却ディスク1つ当たりの圧力降下は、60から100mバールである。冷媒(ブライン)の入口温度は、+2.5から+3℃である。出口温度は、それより2.5℃高い。ステンレス鋼から製造された冷却面の肉厚は、4mmである。ブライン側の伝熱係数は、約1500から2500W/(m2・K)である。伝熱係数は、通常、380から420W/(m2・K)である。具体的な冷却性能は、冷却面1m2当たり1.5±0.2kWである。冷却プレートのワイピングは、結晶層の形成を抑制する。含水量の多い粗アクリル酸を、(ポンプで、または越流制御下で)特定の結晶器を通じて後方から前方に連続的に誘導する。同時に、含水量の多い単相の粗アクリル酸は、濃縮されて(滞留時間2.5時間)、温度が7から8.5℃で、出口の固形分が約25質量%の固相としてアクリル酸結晶を含む二相懸濁液になる。懸濁液の質量密度は、典型的には、1110から1115kg/m3である。ワイパーの速度は、毎分5から6回転である。ワイパーを駆動させ、冷却ディスクの中心を通る軸を、水洗されたスタッフィングボックス充填材でシールする(テフロンまたはグラファイトの充填材スレッド、洗浄速度=1シール当たり毎時数リットルから数十リットル)。
【0199】
ワイピング不可能な冷却ディスクの周囲には、中空プロファイル(例えば、最も単純な実施形態ではチューブ)を装着(例えば溶接)し、第2の熱媒体(例えば、同様に水/グリコール混合物)によって(結晶化温度を超える温度;通常8から20℃、好ましくは10から14℃の温度まで)加熱する。これらの周辺加熱器に第2の熱媒体が並行して流れる。
【0200】
加えて、ワイパーを好ましくは半径方向に(4区画に)分割する。冷却面に垂直な設置状態のワイパーの具体的な押圧は、活動状態のワイパーの縁の長さ1cm当たり3から5Nである。使用されるワイパーの材料は、高分子量ポリエチレンまたは超高分子量ポリエチレン、例えばMultilene(登録商標)PE1000である。ワイパーに加えて、軸は、混合の向上をもたらすパドル(2つの冷却ディスクの間であって、最初の冷却ディスクと最後の冷却ディスクの前にそれぞれ2つ対称的に適宜配置されている)。
【0201】
懸濁液の輸送方向(好ましくは最後の冷却ディスクの上)の特定の結晶器の最後の部分において、懸濁結晶から母液を除去するために、EP−A1272453、EP−A1448283、WO03/041833、EP−A1305097、DE−A10156016、DE−A102005018702およびDE−A10223058に記載されているように、懸濁液を、装着されたチューブ(適宜浸漬して装着される;あるいは、懸濁液は、越流堰を介して、そこから洗浄カラムが充填される撹拌回収容器に流れることができる)を通じて液圧溶融物洗浄カラムに誘導する。洗浄カラムの直径は、1.4mである。遠心ポンプ(チャネルホイール型)を用いて洗浄カラムに結晶懸濁液を充填し、流量を、好ましくは、ポンプの速度調整によって制御する。制御供給流ポンプは同様に、調整弁を備えた遠心ポンプとして構成される。典型的には、洗浄カラムを調整するために採用される供給流制御流量は、5から60t/h、通常8から30t/hである。場合によっては、懸濁液とともに供給される液体の量が、結晶層を輸送するのに既に十分であるときに制御供給流を用いずに特定の洗浄カラムを動作させることが可能である。有効輸送差圧と有効洗浄差圧の典型的な比率は、1.1から3、通常1.2から1.8である。回転速度は、通常5から10毎分の値である。溶融物回路の温度は、通常13から16℃である。互いの比で設定される異なる層長さに対する2つの圧力降下測定値を用いて、DE−A102005018702に従って濾過前面の監視を行う。洗浄前面を結晶層の温度測定によって制御する。
【0202】
制御のために、結晶層の全高さは、250から1500mm、通常600から1100mmである。洗浄前面は、典型的には、ブレードの100から200m上方に存在する。好適な溶融物回路ポンプは、軸シール(スリップ−リングシール;二重設計、隔壁媒体が15〜30℃に冷却されている(水/グリコール混合物))を生成物側でフラッシングした遠心ポンプ、または滑り軸受のフラッシングが強化された磁石連結ポンプである。特定の溶融物回路における循環速度は、ブレードから擦り取られた精製結晶1トン当たり10から15m3/hである。200から300質量ppmのMEHQ、または40から70質量ppmのMEHQ、または100から300質量ppmのPTZを用いて、カラムに特異的な方法で、後の用途に応じて溶融物回路を安定化させる。加えて、空気、またはリーンエア(6容量%以下の酸素を含む窒素−空気混合物)を溶融物回路に導入し、洗浄溶融物が洗浄カラムに入る前にその余剰量(洗浄溶解物に溶融物に溶融しない割合)をガス分離器によって除去する。これにより、溶融純粋製造物における溶存酸素の含有量が5から40質量ppmになる。
【0203】
[a)エステル化グレードのアクリル酸を製造するために、溶融物洗浄カラムの代わりに遠心器(例えば2または3段プッシャ遠心器)を用いて懸濁結晶を除去すれば十分である。好適な網目サイズは150から300μmであり、利用可能な遠心加速度は500から900g、通常600から800gであり、好適な行程速度は40から80行程/分である。
【0204】
遠心の2段階目または3段階目で除去された結晶を、好ましくは、結晶1kg当たり0.15から0.3kgの洗浄液で洗浄する。洗浄液の温度は、15から30℃、好ましくは20から30℃である。堆積を回避するために、遠心器の固体排出シュートを、温度が15から30℃に調整されたフラッシング液でフラッシングする。フラッシュ液または洗浄液は、好ましくは、遠心器を用いて除去・洗浄された溶融結晶である。堆積およびインクラステーションを防止するために、遠心器ケーシング、懸濁液供給チューブおよび洗浄液供給チューブを15℃以上40℃以下の温度に維持することが妥当である。遠心器の生成系空間を窒素または空気と窒素の混合物で適宜不活性化する。軸シールをガス(例えば、窒素または空気と窒素の混合物)あるいは水でパージする。
【0205】
b)懸濁結晶化の代わりに、2つまたは3つ以上の(例えば2から4つの)精製段階の層結晶化(例えば、EP−A616998に記載の流下膜式結晶化、または完全内流通チューブによる流下膜式結晶化)を採用することも可能である。次の精製段階の母液を先の精製段階に返送する代わりに、一緒に凝縮カラムに返送することもできる。]
17894kg/hの氷アクリル酸(温度=14℃、圧力=1.5バール)を溶融物回路から回収し、溶融物回路から回収された101kg/hの氷酢酸(25℃)に3kg/hのMEHQを溶解させた全部で104kg/hの溶液(温度=25℃、圧力=1.1バール)を添加することによって安定化すると、それは以下の内容物を有する。
【0206】
99.7334質量%のアクリル酸、
0.2091質量%の酢酸、
0.0180質量%の水、
0.0230質量%のプロピオン酸、
0.0001質量%のフルフラル、
0.0001質量%未満のベンズアルデヒド、
0.0001質量%の無水マレイン酸、
0.0002質量%のジアクリル酸、
0.0150質量%のMEHQ、および
0.001質量%のO2
【0207】
それは、ポリアクリル酸ナトリウムに基づいて超吸収剤を製造するのに極めて好適である。
【0208】
5kg/hのPTZを352kg/hの前記加熱された氷アクリル酸に溶解させて25℃の防止剤溶液1を製造する。19kg/hのMEHQを30kg/hの防止剤溶液1に溶解させて、同様に25℃の防止剤溶液2を形成する。
【0209】
17439kg/hのMEHQ安定化氷アクリル酸(25℃、1.5バール)を貯蔵タンクに連続的に供給する。
【0210】
洗浄カラムで除去された母液を最初に加熱可能な回収容器に誘導し、そこからタンクに誘導する。このタンクから、(既に述べたように)熱調整しながら90℃に加熱し、2番目の回収トレイに回収された18474kg/hの粗アクリル酸とともに72716kg/hの量で凝縮カラムの(下から数えて)15番目の二重流トレイに返送する。この返送した母液の組成は、以下の通りである。
【0211】
94.6188質量%のアクリル酸、
1.0690質量%の酢酸、
3.3562質量%の水、
0.0378質量%のギ酸、
0.0431質量%のホルムアルデヒド、
0.0088質量%のアクロレイン、
0.0782質量%のプロピオン酸、
0.2016質量%のフルフラル、
0.0034質量%のアクリル酸アリル、
0.0021質量%のギ酸アリル、
0.0202質量%のベンズアルデヒド、
0.1292質量%の無水マレイン酸、
0.4025質量%のジアクリル酸、
0.0061質量%のフェノチアジン、
0.0227質量%のMEHQ、および
0.0003質量%の酸素。
【0212】
凝縮カラムにおける第2の回収トレイの2.9m上方に、この場合も380mmのトレイ間隔で等間隔に配列された既に記載のタイプの21個のさらなる二重流トレイの内の1番目のトレイを配置する(ここでも穴直径は一定の14mmであるが、穴の数は一定の32020であり、2つの円形流路中心の最短距離は24.5mmである)。
【0213】
最後の二重流トレイの800mm上方から、凝縮カラムが円錐状に広がり始める。最後の二重流トレイの500mm上方で、この広がりは、6.50mのカラム直径で終わる。
【0214】
この高さ、すなわち最後の二重流トレイの1.50m上方から、28個の従来の単一流Thormannトレイの等間隔(トレイ間隔=500mm)配列が始まる。Thormannトレイの下から1番目のトレイは、液体がトレイ排液口からチューブとして構成された6つの下降管を介して排出されるトレイである。これらのチューブを、下に向かって次の二重流トレイのガス空間から液圧シールする。6つの排液チューブ堰高さは、交流トレイの流れ方向に低くなる。液圧シールは、インピンジメントプレートとともに空のオリフィスを有する。排液チューブは、(トレイに供給される側と反対側の)トレイ断面の最後の3分の1の部分に均一に分配される。液圧シールは、傾斜した越流堰(45°)を有するカップ中で行われる。
【0215】
あるいは、Thormannトレイは、Thormannトレイのフードの流通溝の配列を介する流れ方向の連続流路に、液体の互いに反対の流れ方向が得られるように構成される。
【0216】
Thormannトレイのオリフィス比は14%である。排気筒面積と溝出口面積の比は0.8である。排気筒高さおよび排液堰の高さは40mmである。気泡キャップのトレイ間隔(溝の下縁とトレイの距離)は10mmである。溝高さは15mmである。斜めに傾斜した溝とフードの縦方向縁との角度は30度である。フードの縦方向縁の長さは、最大で800mmである。カラムの縁領域において、カラムの丸みに合わせて調整するために、フード長さを200mmに短縮させる。1つのライン上の2つのフードの交差流方向の距離は66mmである。下降管の排液面積は、トレイの断面積に対して1.5%である。フードの2つの縦方向下縁の間の幅は64mmである。
【0217】
最上位のThormannトレイの高さから、分離カラムが円錐状に再び狭小し始める。最上位のThormannトレイの700mm上方において、この狭小が完了し、カラム内径が6.00mに縮小する。
【0218】
最上位のThormannトレイの1.70m上方に、3番目の回収トレイ(16個のほぼ均一に分配された屋根付き排気筒を有する排気筒トレイ;排気筒高さ=1.50m)を配置する。
【0219】
65.1℃の温度および約1.24バールの圧力を有する535506kg/hの酸性水を第2の側流取出口として3番目の回収トレイから回収する。
【0220】
酸性水は、既に記載したように、以下の内容物を有する。
【0221】
10.7677質量%のアクリル酸、
6.4390質量%の酢酸、
79.5610質量%の水、
0.7038質量%のギ酸、
2.4712質量%のホルムアルデヒド、
0.0132質量%のアクロレイン、
0.0082質量%のプロピオン酸、
0.0013質量%のフルフラル、
0.0331質量%のギ酸アリル、および
0.0001質量%のMEHQ、ならびに
0.0013質量%の酸素。
【0222】
回収された25537kg/hの酸性水(65.1℃)を防止剤溶液2とともに最上位のThormannトレイに返送する。
【0223】
329kg/hの防止剤溶液1を(25℃の温度で)(下から数えて)19番目のThormannトレイに返送する。
【0224】
回収された316kg/hの酸性水を焼却に送る。
【0225】
回収された310m3/hの酸性水を以下に記載されるバルブトレイのうちの(下から数えて)6番目のトレイに29.1℃の温度で返送する(冷却を多段間接熱交換によって実施する)。
【0226】
回収された194011kg/hの酸性水を以下に記載されるバルブトレイの最上位のトレイに23℃の温度で返送する(冷却を多段間接熱交換によって前記量の酸性水とともに実施する;29.1℃から23℃までの最終冷却段階を、熱的および熱を調整しながら実施する(液体化学グレードプロピレンは、冷媒として使用され、同時に蒸発する;得られた気体プロピレンは、後に、気相部分酸化のための反応ガス混合物の構成に使用される))。
【0227】
回収された1204kg/hの酸性水を、既に記載したように、結晶化によってさらに精製される粗アクリル酸に添加する。
【0228】
その後さらに実施される発明の抽出のために、回収された6010kg/hの酸性水を抽出カラムに供給する。
【0229】
凝縮カラムにおける3番目の回収トレイの2300mm上方に、11個の二重流バルブトレイを(トレイ間隔=500mmの)等間隔で取りつける。越流堰の高さは18から35mmである(上部のトレイの当該高さは、下部のトレイの当該高さより高い)。オリフィス比(比穴面積)は14.8%であり、2つの連続的なバルブトレイの下降管の排液口面積の合計は、カラム断面積の約10%である。使用したバルブは、Stahl(ドイツViermheim)のVV12バルブであった。
【0230】
カラム上部の圧力は、1.17バールである。
カラムの上部において、31℃の温度および以下の内容物を有する170121kg/hの残留ガスが分離カラムから排出される。
【0231】
0.1946質量%のアクリル酸、
0.1246質量%の酢酸、
2.3031質量%の水、
0.0062質量%のギ酸、
0.1212質量%のアクロレイン、
0.0002質量%のプロピオン酸、
0.0001質量%のフルフラル、
0.0027質量%のギ酸アリル、
2.3427質量%のCO2
0.7609質量%のCO、
0.7211質量%のプロパン、
0.1681質量%のプロピレン、
2.7387質量%のO2
90.5158質量%のN2
【0232】
間接熱交換器において、残留ガスを38℃に加熱し、次いで110880kg/hのこの残留ガスを循環ガス圧縮機によって2.9バールの圧力まで圧縮することで、温度を約160℃まで上昇させる。94553kg/hの圧縮循環ガスを循環ガスとして気相部分酸化に返送する。酸性水抽出による抽出物をストリッピングすることを目的として、16327kg/hの圧縮循環ガスを第1のストリッピングカラムに供給し、59241kg/hの残留ガスを焼却に送る。
【0233】
酸性水抽出のための抽出カラムは、分離内部構造物として、縁で流れるよう(充填材要素の高さ:200mm)に装着され、互いに積層配列された有効全高が10mのMontz−Pak B1−350型のステンレス鋼シート(材料1.4571)で構成された穿孔構造充填材を含む。
【0234】
すべての充填材に関する抽出カラムの内径は、一定の800mmである。それらの高さは14mである。使用された抽出剤はPalatinol(登録商標)Aである。底部における相分離を向上させ、カラムの上部における抽出剤の巻込みを低減するために、カラムの底部および上部容器の直径を1100mmに広げる。加えて、乱雑プラスチック充填材(例えば、ポリエチレンまたはテフロン)を融合補助としてカラムの上部に導入する。
【0235】
抽出される6010kg/hの酸性水(温度=65.1℃)を、適切な流路オリフィス(直径8mmの穴)を有するチューブ状分配路を介して、抽出カラムの最下位の充填材の下に供給する。抽出カラムの最上位の充填材の上方に、約25kg/hの新たなPalatinol(登録商標)A)と、第1のストリッピングカラムから返送され、予めストリッピングされた5987kg/hの抽出剤との混合物(温度=50℃)を導入する。
【0236】
返送された抽出剤は、以下の内容物を有する。
【0237】
0.5質量%以下のアクリル酸、
0.03質量%以下の酢酸、
0.02質量%以下の水、
0.001質量%以下のギ酸、
0.0035質量%以下のアクロレイン、
0.0005質量%以下のプロピオン酸、
0.0001質量%以下のフルフラル、
0.001質量%のギ酸アリル、
0.03質量%以下のMEHQ、
0.0001質量%の酸素、および
99.5質量%以上のPalatinol(登録商標)A。
【0238】
酸性水の比質量は、967.5kg/m3である。抽出剤を、同様に、適切な流路オリフィス(直径4mmの穴)を有するチューブ状分配路を介して導入する。
【0239】
酸性水は、連続相を形成し、抽出剤は、水相で下降する、液滴の形(液滴の直径は2から5mmの範囲である)で分散された相を形成する。
【0240】
抽出カラムの上部において、以下の内容物を有する4930kg/hの抽残液(温度約57.6℃)を回収する。
【0241】
1.7618質量%のアクリル酸、
4.3046質量%の酢酸、
90.1197質量%の水、
0.6446質量%のギ酸、
2.8993質量%のホルムアルデヒド、および
0.27質量%のPalatinol(登録商標)A。
【0242】
それを、焼却される残留ガスとともに焼却に送る。以下の内容物を含む7090kg/hの抽出物を抽出カラムの底部から回収する(温度約64.5℃)。
【0243】
8.1556質量%のアクリル酸、
2.4838質量%の酢酸、
4.7901質量%の水、
0.1490質量%のギ酸、
0.0788質量%のホルムアルデヒド、
0.0140質量%のアクロレイン、
0.0073質量%のプロピオン酸、
0.0014質量%のフルフラル、
0.0282質量%のギ酸アリル、および
0.0192質量%のMEHQ、
84.2726質量%のPalatinol(登録商標)A。
【0244】
抽出物全体を第1のストリッピングカラムの上部に誘導する。抽出物をプレート熱交換器にて間接熱交換によって95℃に加熱する。使用する熱媒体は、第1のストリッピングカラムに回収された5987kg/hの底部液体である。第1のストリッピングカラムは、分離内部構造物として、5個の二重流トレイおよび15個のThormannトレイを含む。第1のストリッピングカラムは、抽出カラムと全く同様に、環境から断熱されている。すべてのトレイに関する第1のストリッピングカラムの内径は、一定の1.5mである。
【0245】
その高さは14.5mである。最下位の5個のトレイを、二重流トレイとして構成し、第1のストリッピングカラムに(500mmの)等間隔で配列する。それらのオリフィス比は、一定の18%である。二重流トレイの穴直径は、一定の14mmである(穴の配列は、厳密な三角形のピッチに対応する)。最上位の二重流トレイの上方に、(500mmの)等間隔で配置された15個の単一流Thormannトレイを配置する。Thormannトレイは、Thormannトレイのフードの流通溝の配列を介する流れ方向の連続流路に、液体の互いに反対の流れ方向が得られるように構成される。オリフィス比(断面に基づくガス流路面積)は14%である。
【0246】
最後のトレイの上方に、液滴トラップとしての層(高さ400mm、金属製ポールリング、25×25)も配置する。
【0247】
最下位の二重流トレイの下方において、13000Nm3/hの圧縮残留ガス(圧力約2.9バール、温度約160℃)を第1のストリッピングカラムに誘導し、ストリッピングカラムにおいて下降する抽出物と交流して上昇させる。
【0248】
第1のストリッピングカラムの上部から17424kg/hの第1の負荷状態のガス(温度=82.2℃)を誘導し、第2のストリッピングカラムに供給する。第1のストリッピングカラムの底部の温度は、約155℃である。49311kg/hの底部液体を第1のストリッピングカラムの底部から連続的に回収する。第1のストリッピングカラムから回収された5987kg/hの底部液体を2段階間接熱交換(抽出物に対する熱調整を伴うプレート熱交換器における第1の段階)によって50℃まで冷却し、抽出カラムの上部に返送する。第1のストリッピングカラムから回収された43324kg/hの底部液体を外部強制循環チューブバンドルフラッシュ蒸発器にて160℃に加熱し、第1のストリッピングカラムの底部に返送する。
【0249】
比較例
手順は、実施例で抽出した酸性水を抽出せず、先行技術のように焼却する点を除いて実施例と同様である。
【0250】
抽出カラムおよび第1のストリッピングカラムを使用しない。凝縮カラムから回収された底部液体をストリッピングするために、対応する量の圧縮残留ガスを使用する。第1の側流取出口を介して回収された粗アクリル酸の供給流は、87307kg/hであり、96.863質量%のアクリル酸を含む。貯蔵タンクに供給される氷アクリル酸の量は、16994kg/hである。その純度は、アクリル酸が99.736質量%である。
【0251】
実施例2
防止剤と混合されておらず、50℃の温度を有する498gの酸性水を、内部容量が50℃で1.3lの(水で調温された)二段式三枚羽根撹拌機で撹拌されたジャケット付撹拌容器に導入した。該酸性水は、以下の内容物を有していた。
【0252】
2.19質量%のホルムアルデヒド、
82.00質量%の水、
4.01質量%の酢酸、
11.09質量%のアクリル酸、
0.69質量%のギ酸、および
0.01質量%のジアクリル酸。
【0253】
次いで、同様に50℃の499gのフタル酸ジメチルを撹拌しながら添加した。50℃の一定温度で、得られた混合物を10分間にわたって250回転/分の速度で撹拌した。撹拌機のスイッチを切り、混合物を50℃で放置したところ、短時間で相分離した。有機相の質量は565gであった。水相の質量は432gであった。それはさらに、20.26gのアクリル酸および13.0gの酢酸を含んでいることが水相のガスクロマトグラフィー分析によって明らかになった。
【0254】
実施例3
アクリル酸を酸性水から抽出するために、ガラス製の抽出カラムを使用した。防止剤と混合されていない酸性水は、以下の内容物を有していた。
【0255】
2.36質量%のホルムアルデヒド、
83.12質量%の水、
3.98質量%の酢酸、
9.70質量%のアクリル酸、
0.68質量%のギ酸、および
0.01質量%のジアクリル酸。
【0256】
抽出カラムは、ジャケットを介して(60℃の水で)調温可能であった。抽出カラムに存在する分離内部構造物は、構造ステンレス鋼シート金属充填材であった(1.4404型ステンレス鋼、B1−350型のMontzの穿孔充填材)。充填部における抽出カラムの内径は40mmであった。10kg/hの水溶液(温度=60℃)をカラムの底部に誘導した。抽出カラムの上部に、10kg/hのフタル酸ジエチル(温度=60℃)を分散相(液滴サイズ:4から5mm)として向流で供給した。カラムの上部から誘導された水性抽残液はさらに、0.8質量%のアクリル酸および2.9質量%の酢酸を含んでいた。したがって、(最初の質量含有率に対する)酸性水におけるアクリル酸の含有量を93.3質量%減少させ、酢酸の含有量を41質量%減少させることが可能であった。0.2質量%のフタル酸ジエチルを抽残液に溶解させた。
【0257】
実施例4
手順は、実施例3と同様であった。抽出剤および分散相として、27.5kg/hのフタル酸ジメチル(T=60℃)を抽出カラムの上部に導入した(液滴サイズ:4から5mm)。27.5kg/hの流量で、同様に、連続相として60℃の温度でカラムの底部に供給された酸性水は、以下の内容物を有していた。
【0258】
2.77質量%のホルムアルデヒド、
82.82質量%の水、
4.02質量%の酢酸、
9.53質量%のアクリル酸、
0.63質量%のギ酸、および
0.05質量%のジアクリル酸。
【0259】
抽出カラムの上部において下降する水性抽残液はさらに、0.2質量%のアクリル酸および2.4質量%の酢酸を含んでいた。したがって、(最初の質量含有率に対する)酸性水におけるアクリル酸の含有量を98.3質量%減少させ、酢酸の含有量を51.5質量%減少させることが可能であった。0.9質量%のフタル酸ジメチルを抽残液に溶解させた。
【0260】
実施例5
手順は、実施例1と同様である。還流液(酸性水)に加えて、1000kg/hの水(さらなる吸収剤)を、それと一緒に同じ温度で、凝縮カラムに誘導する。その結果、2番目の回収トレイから第1の側流取出口として凝縮カラムから誘導された粗アクリル酸のフルフラル含有量は、0.1642質量%(実施例1における値)から0.1225質量%に減少する。
【0261】
実施例6
手順は、実施例1と同様である。還流液(酸性水)に加えて、5000kg/hの水(さらなる吸収剤)を、それと一緒に同じ温度で、凝縮カラムに誘導する。その結果、2番目の回収トレイから第1の側流取出口として凝縮カラムから誘導された粗アクリル酸のフルフラル含有量は、0.1642質量%(実施例1における値)から0.1125質量%に減少する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸、水蒸気および二次成分を含む生成物ガス混合物を、高温における固体触媒上の分子酸素を用いた少なくとも1つのアクリル酸のC3前駆体の不均一触媒気相部分酸化によって得て、アクリル酸、水蒸気および二次成分を含む生成物ガス混合物の温度を、場合により、直接および/または間接冷却によって低下させ、次いでアクリル酸、水蒸気および二次成分を含む生成物ガス混合物を、分離内部構造物を備えた凝縮カラムに流し込み、凝縮カラム内で上昇させることで、分別凝縮させ、生成物ガス混合物の凝縮カラムへの供給点の上方に位置する第1の側流取出口を介して水および二次成分を希薄な形で含む粗アクリル酸を目標製造物として導出するとともに、第1の側流取出口の上方に位置する第2の液相取出口を介してアクリル酸および二次成分をさらに含む酸性水を導出し、凝縮カラムの上部で水より低い沸点を有する二次成分を含む残留ガス混合物を導出し、凝縮カラムの底部空間からアクリル酸およびアクリル酸より高い沸点を有する後続生成物および二次生成物をさらに含む底部液体を凝縮カラムから導出し、回収された酸性水の一部をそのまま、かつ/またはその冷却後に還流液として凝縮カラムに返送し、場合により、そのさらなる精製を目的として少なくとも1つのさらなる熱分離方法を粗アクリル酸に施す、アクリル酸の製造方法において、凝縮カラムに返送されていない酸性水の少なくとも部分量でその中に存在するアクリル酸を、有機溶媒を用いた抽出によって、酸性水から有機溶媒に吸収させて、アクリル酸を含む有機抽出物を形成し、次いで、少なくとも1つの熱分離方法を用いてアクリル酸を有機抽出物から除去し、抽出物から除去されたアクリル酸を凝縮カラムに返送し、または粗アクリル酸のさらなる精製に送り、かつ/または金属水酸化物の水溶液に吸収させることを特徴とする、アクリル酸の製造方法。
【請求項2】
3前駆体が、プロピレンまたはアクロレイン、あるいはプロピレンとアクロレインの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
凝縮カラムに返送されていない酸性水の少なくとも25質量%でその中に存在するアクリル酸を、有機溶媒を用いた抽出によって、酸性水から有機溶媒に吸収させて、アクリル酸を含む有機抽出物を形成し、次いで、少なくとも1つの熱分離方法を用いてアクリル酸を有機抽出物から除去し、抽出物から除去されたアクリル酸を凝縮カラムに返送し、または粗アクリル酸のさらなる精製に送り、かつ/または金属水酸化物の水溶液に吸収させることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
酸性水からのアクリル酸の抽出を、構造充填材および/または篩トレイを分離内部構造物として含む抽出カラムで実施することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
有機溶媒を抽出カラムの上部に導入し、酸性水を抽出カラムの底部領域に導入し、有機溶媒を連続的な酸性水の相における分散相として上昇させ、または酸性水を抽出カラムの上部に導入し、有機溶媒を抽出カラムの底部領域に導入し、有機溶媒を連続的な酸性水の相における分散相として上昇させることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
有機溶媒が、5から20個の炭素原子を含む脂肪族または芳香族モノカルボン酸と、1から8個の炭素原子を有するアルコールとの少なくとも1つのエステルを含むことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
有機溶媒が、5から20個の炭素原子を含む脂肪族または芳香族ジカルボン酸と、1から8個の炭素原子を有するアルコールとの少なくとも1つのジエステルを含むことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
有機溶媒が、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、イソフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジメチルおよび/またはテレフタル酸ジエチルであることを特徴とする、請求項1から5または請求項7に記載の方法。
【請求項9】
大気圧における有機溶媒の沸点が200℃以上であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
第1のストリッピングガスを用いたストリッピングによってアクリル酸を有機抽出物から除去し、アクリル酸で負荷された第1のストリッピングガスを凝縮カラムに返送し、かつ/または第1の負荷されたストリッピングガスに存在するアクリル酸を金属水酸化物の水溶液に吸収させることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
第1のストリッピングガスを用いたストリッピングによってアクリル酸を有機抽出物から除去し、得られたアクリル酸で負荷された第1のストリッピングガスを第2のストリッピングガスとして、凝縮カラムから導出される底部液体になおも存在するアクリル酸をストリッピングして除き、得られたアクリル酸で負荷された第2のストリッピングガスを凝縮カラムに返送し、かつ/または第2のストリッピングガスに存在するアクリル酸を金属水酸化物の水溶液に吸収させることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
凝縮カラムから導出される底部液体のストリッピングを、分離内部構造物を備えたストリッピングカラムで実施し、ストリッピングカラムの底部の温度は、150から190℃であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アクリル酸で負荷された第2のストリッピングガスを向流精留に施し、アクリル酸で負荷する前に凝縮カラムに返送し、かつ/またはそこに存在するアクリル酸を金属水酸化物の水溶液に吸収させることを特徴とする、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
使用される第1のストリッピングガスが、空気、N2、CO2および/または水蒸気であることを特徴とする、請求項10から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
使用される第1のストリッピングガスが残留ガス混合物であることを特徴とする、請求項10から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
粗アクリル酸を結晶化によってさらに精製することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
凝縮カラムに返送されていない酸性水の一部をさらなる結晶化精製の前に粗アクリル酸に添加することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
粗アクリル酸またはその酸性水との混合物のさらなる結晶化精製を懸濁結晶化によって実施することを特徴とする、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
さらに洗浄カラムを使用して、懸濁結晶化に残留する母液と形成された懸濁結晶とを分離することを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
溶融アクリル酸結晶および/またはその金属塩を重合する遊離ラジカル重合の方法がその後に続くことを特徴とする、請求項17から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
負荷状態の第1および/または第2のストリッピングガスから金属水酸化物の水溶液に吸収されたアクリル酸を重合する遊離ラジカル重合の方法がその後に続くことを特徴とする、請求項10、11、13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
残留ガス混合物の部分量を循環ガスとして気相部分酸化に返送することを特徴とする、請求項1から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
有機溶媒が、抽出条件下で、水の質量密度と25kg/m3以上の差がある質量密度を有することを特徴とする、請求項1から22までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
金属水酸化物の水溶液が、NaOH、KOH、Ca(OH)2および/またはMg(OH)2を溶解した形で含むことを特徴とする、請求項1から23までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
1気圧におけるその沸点Tsが1気圧における水の沸点Tw以上である液体吸収剤を、その第1の側流取出口とその第2の側流取出口との間に位置する供給点を介して、凝縮カラムに供給することを特徴とする、請求項1から24までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−516738(P2010−516738A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546752(P2009−546752)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/050785
【国際公開番号】WO2008/090190
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】