説明

アクロレインからアクリル酸への不均一系触媒作用による気相部分酸化の長期運転のための方法

アクロレインからアクリル酸への不均一系触媒作用による気相部分酸化の長期運転のための方法であって、固定化触媒床の温度を経時的に上昇させ、そして温度上昇が8℃となる前に部分酸化を中断し、酸素含有ガスを固定化触媒床に通す方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクロレイン、分子状酸素及び不活性希釈剤を少なくとも1つ含む原料反応ガス混合物を、触媒の活性組成物が元素Mo及びVを含有する少なくとも1つの多金属酸化物であるような昇温された固定化触媒床に通すことにより、そして、固定化触媒床の脱活性化に対抗するために経時的に固定化触媒の温度を上昇させることにより、アクロレインからアクリル酸への不均一系触媒作用による気相部分酸化の長期運転のための方法に関する。
【0002】
アクリル酸は多くの用途のうち例えば接着剤及び水分吸収材として使用される重合体を製造するために、そのまま、またはそのアルキルエステルの形態において適している反応性の単量体である。
【0003】
アクリル酸はアクロレイン、分子状酸素及び不活性希釈剤を少なくとも1つ含む原料反応ガス混合物を、触媒の活性組成物が元素Mo及びVを含有する少なくとも1つの多金属酸化物であるような昇温された固定化触媒床に通すことによるアクロレインからアクリル酸への不均一系触媒作用による気相部分酸化の長期運転のための方法により、工業的規模において製造できる(例えばDE−A4431949、WO0053559参照)ということが知られている。
【0004】
アクロレインからアクリル酸への不均一系触媒作用による気相部分酸化このような方法は1つの同じ固定化触媒床上で長時間に渡り実質的に連続的に運転してよいこともわかっている。しかしながら、固定化触媒床は運転時間の経過において品質を損なう。一般的にはその活性及び目的生成物形成の選択性が低下する。
【0005】
これにも関わらず、内容物を含む反応系において可能な限り長時間、製造及び交換が比較的不都合で費用のかかる固定化触媒床を運転するためには、従来技術は高度に多様な方法においてその老化過程に対抗している。
【0006】
EP−A990636(例えば8ページの13〜15行)及びEP−A1106598(例えば13ページの43〜45行)は、通常では実質的に一定の運転条件となる運転中の特定の固定化触媒床の温度を徐々に上昇させることにより固定化触媒床を通る反応ガス混合物の単回通過におけるアクロレインの変換を実質的に保持することによる部分固定化触媒床の品質の低下の実質的な補償を提案している。
【0007】
この点に関し、固定化触媒床の温度とは化学反応が理論的に非存在である場合(即ち反応熱の影響がない場合)を除き、部分酸化過程が行われている場合の固定化触媒床の温度を指す。このことは本明細書においても適用する。一方、特定の固定化触媒床の有効温度とは本明細書部分酸化の反応熱を考慮した固定化触媒床の実際の温度を指す。固定化触媒床に沿って固定化触媒床の温度が一定でない場合(例えば複数の温度区域がある場合)は、本明細書における固定化触媒床の温度という用語は固定化触媒床に沿った温度の(算術)平均を意味する。
【0008】
上記説明において反応ガス混合物の温度(即ち固定化触媒床の温度)は固定化触媒床を通過する場合に最大値(ホットスポット値と称する)を通過する。ホットスポット値とホットスポット値の位置における固定化触媒床の温度の差はホットスポットエクスパンジョンと称する。
【0009】
EP−A990636及びEP−A1106598において推奨される操作法の不都合な点は、固定化触媒床の温度上昇が大きくなるのに従い、その老化過程は加速される(例えば老化に寄与する触媒内の特定の移動過程がより急速に進行するという点である。一般的に、これは特に固定化触媒床の温度の上昇に伴って固定化触媒床そのものの温度よりもより急激にホットスポットエクスパンジョンが通常は上昇するためである(例えばEP−A1106598の12ページ45〜48行、及びEP−A990636の8ページ11〜15行参照)。従って固定化触媒床の有効温度は、通常は固定化触媒床の加齢を更に促進するホットスポット領域において不均衡に上昇する。
【0010】
従って、固定化触媒床の温度の最高値が達成された時に固定化触媒床は完全に交換されるのが慣行である。
【0011】
しかしながら、このような完全な交換の不利益な点はそれが比較的に費用を要し、不都合な点である。アクリル酸の製造方法を長時間中断しなければならず、そして触媒製造の費用も同様に多大となる。
【0012】
従って、反応形内の固定化触媒床のオンストリームの時間を可能な限り延長する場合に有用であるアクリル酸へのアクロレインの不均一系触媒作用による気相部分酸化のための方法が望まれている。
【0013】
この点に関し、DE−A10232748は固定化触媒床を完全に交換するのではなくその一部のみを新しい触媒で置き換えることを推奨している。この提案の不利益は固定化触媒床の部分的交換であっても多大な費用と不都合を伴うという点である。
【0014】
EP−A614872は、数年間15℃〜30℃以上の温度の上層を伴う固定化触媒床を運転した後に、部分酸化のための方法を中断し、そして、260〜450℃の固定化触媒床温度において酸素、水蒸気及び不活性ガスよりなるガス混合物を導入し、その後部分酸化を継続することにより、固定化触媒床のオンストリーム時間を延長することを推奨している。
【0015】
この点に関し、特定の条件下に固定化触媒床に通されるガス混合物中の不活性ガスは本明細書においてはその少なくとも95モル%、好ましくは少なくとも99モル%または99.5モル%が固定化触媒床に通されても未変化のまま残存するガスを指す。本発明において使用するガス混合物Gについては、水蒸気及びCOは不活性ガスという用語には包含されない。
【0016】
しかしながら、EP−A614872の操作法の不利益な点は部分酸化が中断される時点まで、固定化触媒床の老化が継続し、遮蔽されること無く促進される点である。
【0017】
本発明の目的は、経時的なホットスポット拡大の強度が従来技術の操作法よりも低値となる態様において触媒の老化に対抗するアクロレインからアクリル酸への不均一系触媒作用気相部分の長期運転のための方法を提供することである。
【0018】
本発明者等は、この目的が、アクロレイン、分子状酸素及び少なくとも1つの不活性希釈剤を含む原料反応ガス混合物を、触媒の活性組成物が元素Mo及びVを含有する少なくとも1つの多金属酸化物であるような昇温された固定化触媒床に通すことにより、そして、固定化触媒床の脱活性化に対抗するために経時的に固定化触媒の温度を上昇させることにより、アクロレインからアクリル酸への不均一系触媒作用による気相部分酸化の長期運転のための方法であって、以下の工程、即ち:固定化触媒床の温度の上昇が恒久的に≧10℃または≧8℃となる前に、そして200〜450℃(好ましくは250〜400℃、更には300〜400℃、または250〜350℃、または250〜300℃)の固定化触媒床温度において、少なくとも1回、気相部分酸化を中断すること、固定化触媒床に分子状酸素、不活性ガス及び場合により水蒸気及び更に場合によりCOを含むアクロレイン非含有酸化ガス混合物を通すことを含む方法により達成されることを発見した(ガス混合物Gは好ましくは上記した成分のみよりなるか、実質的にそれのみよりなるものである)。
【0019】
本明細書において、酸化ガス混合物Gとは、本発明の方法を使用した場合に、固定化触媒床への進入時に多金属酸化物活性組成物中に存在する金属の酸化状態を還元しない(むしろ一般的には酸化させる)ようなガス混合物Gを指す。
【0020】
従って、一般的にガス混合物Gは、そのCOモル含有量及びCO、不活性ガス、OおよびHO以外の成分のそのモル含有量の総和より(好ましくは少なくとも2倍)高値である固定化触媒床内へのガス混合物Gの進入時の分子状酸素のモル含有量を特徴とする。
【0021】
意外にも、本発明の方法を用いた場合、アクロレインからアクリル酸への不均一系触媒作用気相部分酸化の長期運転が可能であり、これにより経時的なホットスポット拡大の強度が従来技術による方法より低値となる。好ましい場合においては、経時的なホットスポット拡大の強度はむしろ低下する。更にまた、アクリル酸形成の選択性は通常は実質的経時的一定を維持する。
【0022】
本発明によれば、気相部分酸化は、好ましくは固定化触媒床の温度の上昇が恒久的に≧7℃、または≧6℃、または≧5℃、または≧4℃となる前に、少なくとも1回中断することにより、200〜450℃の固定化触媒床温度において固定化触媒床に分子状酸素、不活性ガス及び場合により水蒸気及び更に場合によりCOを含むアクロレイン非含有酸化ガス混合物を通す。
【0023】
本発明の方法においては、気相部分酸化は、より好ましくは、固定化触媒床の温度の上昇が恒久的に≧3℃または≧2℃となる前に、少なくとも1回中断することにより、200〜450℃の固定化触媒床温度において固定化触媒床に分子状酸素、不活性ガス及び場合により水蒸気及び更に場合によりCOを含むアクロレイン非含有酸化ガス混合物を通す。
【0024】
しかしながら、本発明の方法はまた、固定化触媒床の温度の上昇が恒久的に≧1℃となる前に、気相部分酸化を少なくとも1回中断し、そして、200〜450℃の温度において固定化触媒床に分子状酸素、不活性ガス及び場合により水蒸気及び更に場合によりCOを含むアクロレイン非含有酸化ガス混合物を通す場合にも好都合である。しかしながら、固定化触媒の温度上昇は一般的には、気相部分酸化が本発明により少なくとも1回中断されるより前は、恒久的に≧0.1℃または≧0.2℃である。
【0025】
ガス混合物Gを本発明の方法の実施の過程において通している間の固定化触媒床の温度は好ましくは、本発明による固定化触媒床にガス混合物Gを通すために中断されるよりも前に部分酸化が行われる固定化触媒床のその温度Tvに実質的に相当する値のTにおいて保持される。
【0026】
換言すれば、本発明によれば好都合にT=T±50℃、またはT=T±20℃、そして特に好都合にはT=Tとなる。通常は、Tは200〜400℃の範囲、しばしば220〜350℃の範囲となる。ガス混合物Gを本発明の方法における固定化触媒床に通すべき持続時間tは一般的に2時間または6時間〜120時間、しばしば12時間〜72時間、そして多くの場合20時間〜40時間である。しかしながら、ガス混合物Gのより低値の酸素含有量はより長い持続時間tを与える。ガス混合物G中の増大した酸素含有量は本発明において好都合である。
【0027】
適切には、持続時間tは少なくともガス混合物Gの酸素含有量が固定化触媒床への進入及び退去時において異ならない程度に十分長いものとする。
【0028】
適切には、適用の観点からは本発明の方法におけるガス混合物G(特段の記載が無い限り、本明細書に記載するガス混合物Gの全内容物は固定化触媒床内へのガス混合物Gの進入に関わる)は酸素少なくとも1または2容量%、好ましくは少なくとも3容量%、より好ましくは少なくとも4容量%である。しかしながら、ガス混合物Gの酸素含有量は一般的には≦21容量%である。換言すれば、可能なガス混合物Gは空気である。別の可能なガス混合物Gは低混合(lean)空気である。これは酸素の枯渇した空気である。本発明において好都合なものは酸素3〜10容量%、好ましくは4〜6容量%及び残余の窒素分子よりなる低混合空気である。ガス混合物Gが分子状酸素及び不活性ガスのみならず更に水蒸気も含むことが好都合である場合が多い。適用の観点から、適切には、ガス混合物Gは水蒸気を少なくとも0.1容量%、しばしば少なくとも0.5容量%、多くは少なくとも1容量%を含有する。通常はガス混合物Gの水蒸気含有量は≦75容量%である。ガス混合物Gの不活性ガス含有量は一般的に省内95容量%、通常は省内90容量%である。即ち本発明において適しているガス混合物Gは、例えば分子状酸素3〜20容量%、水蒸気1〜75容量%および残余は不活性ガスよりなる。好ましい不活性ガスはN及びCOである。本発明の方法のために有用なガス混合物Gは特にEP−A614872において推奨されているものの全てである。EP−A614872において推奨されている全ての再生条件を本発明の方法においても同様に使用してよい。
【0029】
本発明において使用されるガス混合物GのCO含有量は一般的に5容量%を超えない。しばしばCO含有量は≦3容量%または≦2容量%または≦1容量%、または無視できる量である。
【0030】
ガス混合物Gがその固定化触媒床内への進入時に有する本発明の方法におけるCO含有量Cがt=0における0でない開始値から時間t内に低下する場合が好都合であることがわかっている。
【0031】
本発明によれば、CO含有量Cは好ましくは開始値Aの50%未満、好ましくは25%未満、より好ましくは10%未満または5%未満である値Eまで、その開始値Aから時間t内に低下する。特に好ましくは、CO含有量CはE=0の値まで低下する。
【0032】
ガス混合物GのCO含有量もまた相当する態様において時間t内に変動してよい。
【0033】
逆に、本発明の方法においては、ガス混合物Gの酸素含有量が時間t内に低値から高値に上昇する場合が好都合である。
【0034】
典型的には、約1〜3容量%からのガス混合物Gの酸素含有量から開始し、そして、時間t内に10容量%まで、好ましくは6容量%まで上昇させることが好都合であることがわかっている。一方、時間t内のガス混合物Gの水蒸気含有量の低下が頻繁に選択される。開始値は多くの場合において10容量%までであり、最終値は≦3容量%である場合が多い。
【0035】
従って、本発明において適切であるガス混合物Gは下記成分:
酸素1〜8(好ましくは3〜6)容量%、
CO0〜3容量%、
CO0〜5容量%、
O0〜25容量%、及び、
少なくとも55容量%(Gは好ましくはこれ等の成分よりなり、この場合、全量を100容量%とするための残余は窒素が構成する)、
を含有するガス混合物Gである。
【0036】
ガス混合物GのHO及びCO及びCOの含有量は、好ましくは時間t内に低下するが、O含有量は上記した通り上昇する。固定化触媒床進入時のガス混合物Gはガス状Mo含有化合物、例えば酸化モリブデン水和物を>0〜≦20ppm、しばしば≦15または省内10または≦5または≦1重量ppmを有する場合に特に好都合であることがわかっている。この含有量は、例えば酸化モリブデン含有床を経由させながら、本発明の使用の前に、上昇した温度(例えば250〜500℃)で水蒸気含有ガス混合物Gを通過させることにより、達成してよい。
【0037】
本発明の方法において固定化触媒床を通すガス混合物Gの量は5または100〜5000Nl/l・h、好ましくは20または200〜2000Nl/l・hである(比較対象の基となるものは全体的な固定化触媒床、即ち不活性物質のみよりなる何れかの使用区分を含むものである)。
【0038】
一般的に、少なくとも一年に1回、好ましくは少なくとも3四半期または半年に1回、より好ましくは四半期に1回、より好ましくは一ヶ月に1回の頻度Fにおいて、200〜450℃の固定化触媒床温度において本発明の方法によってガス混合物Gを固定化触媒床に通す。その他の場合は、アクロレインからアクリル酸の不均一系触媒作用気相部分酸化の方法は実質的に連続的に行われる。
【0039】
換言すれば、部分酸化運転7500または7000時間に少なくとも1回、または6000に少なくとも1回、好ましくは5500または5000時間に少なくとも1回、そして最も好ましくは4000または3000、または2000または1500、または1000、または500時間に少なくとも1回、200〜450℃の固定化触媒床温度において、本発明の方法によって固定化触媒床にガス混合物Gを通す。本発明の方法の実施は好都合な作用を有する場合が多い。
【0040】
固定化触媒床の触媒のために適当な活性組成物は当該分野で知られる通り、Mo及びVを含む多金属酸化物である。
【0041】
本発明に適するMo及びVを含む多金属酸化物活性組成物は例えばUS−A3775474、US−A3954855、US−A3893951及びUS−A4339355またはEP−A614872またはEP−A1041062またはWO03/055835またはWO03/057653に記載されている。
【0042】
特に適するものはまた、DE−A10325487及びDE−A10325488の多金属酸化物活性組成物である。
【0043】
本発明の方法に適する固定化触媒床のための活性組成物としてやはり特に適するものは、EP−A−427508、DE−A2909671、DE−C3151805、DE−B2626887、DE−A4302991、EP−A700893、EP−A714700及びDE−A19736105の多金属酸化物組成物である。この点に関して特に好ましいものはEP−A714700及びDE−A19736105に例示される実施形態である。
【0044】
該固定化触媒床に適するこれ等の多金属酸化物活性組成物の多くのものは、下記式I:
Mo12 (1)
[式中、変数は以下の定義:
=W、Nb、Ta、Cr及び/またはCe、
=Cu、Ni、Co、Fe、Mn及び/またはZn、
=Sb及び/またはBi、
=アルカリ金属1つ以上、
=アルカリ土類金属1つ以上、
=Si、Al、Ti及び/またはZr、
a=1〜6、
b=0.2〜4、
c=0.5〜18、
d=0〜40、
e=0〜2、
f=0〜4、
g=0〜40、及び、
n=酸素ではない式I中の元素の原子価及び頻度により決定される数、
を有する]に含まれる。
【0045】
活性多金属酸化物Iのうち好ましい実施形態は式Iの変数の以下に示す定義、即ち:
=W、Nb及び/またはCr、
=Cu、Ni、Co及び/またはFe、
=Sb、
=Na及び/またはK、
=Ca、Sr及び/またはBa、
=Si、Al及び/またはTi、
a=1.5〜5、
b=0.5〜2、
c=0.5〜3、
d=0〜2、
e=0〜0.2、
f=0〜1、及び、
n=酸素ではない式I中の元素の原子価及び頻度により決定される数、
に含まれる。
【0046】
しかしながら、本発明により非常に好ましいとされる多金属酸化物Iは下記式II:
Mo12’Y’Y’Y’Y’O
[式中、
=W及び/またはNb、
=Cu及び/またはNi、
=Ca及び/またはSr、
=Si及び/またはAl、
a’=2〜4、
b’=1〜1.5、
c’=1〜3
f’=0〜0.5、
g’=0〜8、及び、
n’=酸素ではない式II中の元素の原子価及び頻度により決定される数]
に含まれる。
【0047】
本発明に適する多金属酸化物活性組成物(I)は、例えばDE−A4335973またはEP−A714700に開示されている公知の態様において得ることができる。しかしながら、DE−A10261の多金属酸化物活性組成物が特に適している。
【0048】
原則として、本発明の方法のために使用される固定化触媒床のための適当な多金属酸化物活性組成物、特に式Iのものは、その元素構成成分の適当な原料からその化学両論に相当する組成を有する極めて緊密な、好ましくは微細分割された乾燥混合物を得ること、及び、それを350〜600℃の温度で炭化することにより、単純な態様において製造できる。炭化は不活性ガス下、または、酸化的雰囲気下、例えば空気中(不活性ガスと酸素の混合物)、及び、還元的雰囲気下(例えば不活性ガスと還元性ガス、例えばH、NH、CO、メタン及び/またはアクロレインまたは記載した還元性ガス自体)において実施できる。炭化時間は数分〜数時間であり、典型的には温度と共に減少する。多金属酸化物活性組成物Iの元素構成成分の有用な原料は既に酸化物であるもの、及び/または、少なくとも酸素の存在下、加熱により酸化物に変換できる化合物を包含する。
【0049】
多金属酸化物組成物Iを製造するための原料化合物は、乾燥または湿潤した形態において緊密に混合できる。乾燥形態で混合する場合は、原料化合物は好都合には微細分割粉末として使用し、そして混合及び旨適圧縮後に炭化に付す。しかしながら、湿潤形態において緊密に混合することが好ましい。
【0050】
これは典型的には水性の溶液及び/または懸濁液の形態で原料化合物を混合することにより行う。特に緊密な乾燥混合物は、原料物質が溶解形態における元素構成成分の唯一の原料である場合は、記載した混合方法により得られる。使用する溶媒は好ましくは水である。その後、得られた水性組成物を乾燥し、乾燥方法は好ましくは100〜150℃の吐出温度において水性混合物を噴霧乾燥することにより行う。
【0051】
本発明の方法のために使用する固定化触媒床のための適当な多金属酸化物活性組成物、特に式Iのものは、粉末形態または特定の触媒の形状の何れかにおいて本発明の方法のために使用してよく、そして成型は最終的炭化の前または後に行ってよい。例えば、未支持の触媒は、活性組成物の粉末形態またはその未炭化前駆体組成物から、場合により補助剤、例えば潤滑剤としてのグラファイトまたはステアリン酸、及び/またはガラス、アスベスト、炭化ケイ素またはチタン酸カリウムのマイクロファイバーのような形状化補助剤及び補強材を添加しながら、所望の触媒の形状に圧縮成型(例えば錠剤成型または押出)することにより製造できる。適当な未支持の触媒の形状は2〜10mmの外径及び長さを有する非中空円筒または中空円筒である。中空円筒の場合は、1〜3mmの壁厚が好都合である。未支持の触媒はまた球状であってよく、球の直径は2〜10mmである。
【0052】
炭化前の粉状の活性組成物またはその粉状の前駆体組成物は、また予備形状付与された不活性の触媒支持体に適用することにより形状付与することができる。コーティングされた触媒を製造するための支持体本体のコーティングは一般的に適当な回転可能な容器中で、例えばDE−A2909671、EP−A293859またはEP−A714700に開示されている通り行う。
【0053】
支持体本体をコーティングするためには、適用すべき粉末組成物を適宜湿潤させ、そして適用後に再度、例えば熱風により乾燥させる。支持体本体の適用される粉末組成物のコーティング厚みは10〜1000μmの範囲、好ましくは50〜500μmの範囲、より好ましくは150〜250μmの範囲で選択するのが好都合である。
【0054】
有用な支持体材料は慣用的な多孔性または非多孔性の酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化トリウム、二酸化ジルコニウム、炭化ケイ素またはケイ酸塩、例えばケイ酸マグネシウムまたはケイ酸アルミニウムである。支持体本体は規則的または非規則的な形状を有してよいが、明確な表面粗放度を有する規則的な形状を有する支持体本体、例えば球または中空円筒が好ましい。直径1〜8mm、好ましくは4〜5mmの滑石よりなる、実質的に非多孔性の表面粗放化された球状の支持体を使用するのが適当である。しかしながら、適当な支持体本体は長さ2〜10mm、外径4〜10mmの円筒も包含する。支持体本体として本発明において適当である環状物の場合は、壁厚波典型的には1〜4mmである。
【0055】
本発明において好ましく使用される輪状の支持体本体は長さ3〜6mm、外径4〜8mm及び壁厚1〜2mmを有する。本発明において適当な支持体本体はまた、特に7mmx3mmx4mm(外径x長さx内径)の形状を有する環状物である。支持体本体の表面上に適用される触媒活性酸化物組成物の微細度は所望のコーティング厚みに適合させる(EP−A714700参照)。
【0056】
本発明の方法に適する固定化触媒床のために使用される好都合な多金属酸化物活性組成物はまた、下記式III:
[D][E] (III)
[式中、変数は以下の定義:
D=Mo12”Z”Z”Z”Z”Z”Z”O”、
E=Z12Cu”H”O”、
=W、Nb、Ta、Cr及び/またはCe、
=Cu、Ni、Co、Fe、Mn及び/またはZn、
=Sb及び/またはBi、
=Li、Na、K、Rb、Cs及び/またはH、
=Mg、Ca、Sr及び/またはBa、
=Si、Al、Ti及び/またはZr、
=Mo、W,V、Nb及び/またはTa、
a”=1〜8、
b”=0.2〜5、
c”=0〜23、
d”=0〜50、
e”=0〜2、
f”=0〜5、
g”=0〜50、
h”=4〜30、
i”=0〜20、
x”、y”=式III中の酸素ではない元素の原子価及び頻度により決定される数、及び、
p、q=p/qの比が160:1〜1:1であるゼロではない数、
を有する]の組成物であり、これは微細分割形態(原料組成物1)の多金属酸化物組成物E:
12Cu”H”O
を個別に予備形成すること、及び、その後、予備形成された固体原料組成物1を所望のp:q比を有する以下の化学量論式D:
Mo12”Z”Z”Z”Z”Z”Z
の上記元素を含む元素Mo、V、Z、Z、Z、Z、Z、Zの原料の水溶液または懸濁液または微細分割された乾燥混合物(原料組成物2)中に配合すること、水溶液が形成される場合はをそれを乾燥すること、及び、得られた乾燥前駆体組成物を、250〜600℃の温度で乾燥する前または後に炭化することにより所望の触媒形状とすること、により得られる。
【0057】
予備形成された固体原料組成物1を<70℃の温度で水性原料組成物2中に配合する多金属酸化物活性組成物IIIが好ましい。多金属酸化物組成物IIIの触媒の詳細な説明は例えばEP−A668104、DE−A19736105及びDE−A19528646に記載されている。
【0058】
形状付与に関しては、多金属酸化物活性組成物I触媒に関する記述を多金属酸化物活性組成物III触媒に対しても適用する。
【0059】
本発明の固定化触媒床の触媒のための好都合な多金属酸化物活性組成物はまた、下記式IV:
[A][B][C]
[式中、変数は以下の定義:
A=Mo12
B=XCu
C=XSb
=W、Nb、Ta、Cr及び/またはCe、好ましくはW、Nb及び/またはCr、
=Cu、Ni、Co、Fe、Mn及び/またはZn、好ましくはCu、Ni、Co及び/またはFe、
=Sb及び/またはBi、好ましくはSb、
=Li、Na、K、Rb、Cs及び/またはH、好ましくはNa及び/またはK、
=Mg、Ca、Sr及び/またはBa、好ましくはCa、Sr及び/またはBa、
=Si、Al、Ti及び/またはZr、好ましくはSi、Al及び/またはTi、
=Mo、W,V、Nb及び/またはTa、好ましくはMo及び/またはW、
=Cu、Ni、Zn、Co、Fe、Cd、Mn、Mg、Ca、Sr及び/またはBa、好ましくはCu及び/またはZn、より好ましくはCu、
a=1〜8、好ましくは2〜6、
b=0.2〜5、好ましくは0.4〜2.5、
c=0〜23、好ましくは0〜4、
d=0〜50、好ましくは0〜3、
e=0〜2、好ましくは0〜0.3、
f=0〜5、好ましくは0〜2、
g=0〜50、好ましくは0〜20、
h=0.3〜2.5、好ましくは0.5〜2、より好ましくは0.75〜1.5、
i=0〜2、好ましくは0〜1、
j=0.1〜50、好ましくは0.2〜20、より好ましくは0.2〜5、
k=0〜50、好ましくは0〜20、より好ましくは0〜12、
x、y、z=酸素ではない式A、B、C中の元素の原子価及び頻度により決定される数、
p、q=正の数、
r=0または正の数、好ましくは正の数であり、ここでp/(q+r)比=20:1〜1:20、好ましくは5:1〜1:14であり、そして、
より好ましくは、2:1〜1:8であり、そして、rが正の数である場合は、q/r比=20:1〜1:20、好ましくは4:1〜1:4、
より好ましくは2:1〜1:2、そして最も好ましくは1:1であり、
これは、以下の化学組成:
A:Mo12
の3次元領域(相)Aにおける区分[A]
以下の化学組成:
B:XCu
の3次元領域(相)Bにおける区分[B]、及び、
以下の化学組成:
C:XSb
の3次元領域(相)Cにおける区分[C]
を含有し、
ここで領域A、B及び存在する場合はCも、微細分割されたA、微細分割されたB、及び存在する場合は微細分割されたCの混合物として相互に分散しており、そして、全ての変数は予め定義された範囲内において選択されるが、ただし、酸素ではない多金属酸化物活性組成物IV中の全元素の総量における元素Moのモル区分は20モル%〜80モル%であり、触媒活性多金属酸化物組成物IV中に存在する触媒活性多金属酸化物組成物IV〜V中に存在するMoのモル比、Mo/Vは15:1〜1:1であり、相当するモルMo/.Cu比は30:1〜1:3であり、そして相当するモルMo/(W及びNbの総量)比は80:1〜1:4である]の多金属酸化物活性組成物である。
【0060】
好ましい多金属酸化物活性組成物IVは下記式V:
Mo12
[式中、
=W及び/またはNb、
=Cu及び/またはNi、
=Ca及び/またはSr、
=Si及び/またはAl、
a=2〜6、
b=1〜2、
c=1〜3、
f=0〜0.75、
g=0〜10、及び、
x=酸素ではない式(V)中の元素の原子価及び頻度により決定される数]の化学量論的パターンに属する組成を有する。
【0061】
多金属酸化物活性組成物Vに関連して使用する「相」という用語は、自身の化学組成がその環境のものとは異なる三次元の領域を意味する。相は必ずしもX線均質ではない。一般的に、相Aは相Bの粒子、及び、存在する場合はCが分散している連続層を形成する。
【0062】
微細分割の相B及び存在する場合はCは、好都合にはその最大直径、即ち粒子の中心を通過し粒子の表面上の2点を連結する最長の線が300μm以下、好ましくは0.1〜200μm、より好ましくは0.5〜50μm、最も好ましくは1〜30μmであるような粒子よりなる。しかしながら、10〜80μmまたは75〜125μmの最長直径を有する粒子も適している。
【0063】
一般的に、相A、B及び存在する場合は相Cは、多金属酸化物活性組成物IVにおいて不定形及び/または結晶形態であってよい。
【0064】
式IVの多金属酸化物活性組成物の基となり、後に熱処理されて活性組成物となる緊密乾燥混合物は、例えば、文献WO02/24327、DE−A4405514、DE−A4440891、DE−A19528646、DE−A19740493、EP−A756894、ED−A19815280、DE−A19815278、EP−A774297、DE−A19815281、EP−A668104及びDE−A19736105に記載されている通り得てよい。
【0065】
熱処理により式IVの多金属酸化物活性組成物をもたらす緊密乾燥混合物を製造する基本的原理は、微細分割形態において、個々に、または原料組成物1としての少なくとも1種の多金属酸化物組成物B(XCu)とそして、適宜、原料組成物2としての少なくとも1種の多金属酸化物組成物C(XSb)と組み合わせて、実施し、そしてその後、化学量論Aに相当する組成の以下の多金属酸化物組成物A:
Mo12 (A)
の元素構成成分の原料を含む混合物と、原料組成物1及び適宜、原料組成物2を所望の比(式IVに相応したもの)において緊密に接触させること、及び、場合により得られた緊密混合物を乾燥させることである。
【0066】
原料組成物1及び適宜2の構成成分を多金属酸化物組成物A(原料組成物3)の元素構成成分の原料を含む混合物に緊密に接触させることは、乾燥または湿潤形態の何れかにおいて行ってよい。後者の場合は、予備形成された相(クリスタライト)B及び適宜Cが溶液になら内容にのみ注意しなければならない。水性媒体においては、後者は通常は7から大きく離れないpH当たりにおいて、そして過剰に高値ではない温度において行われる。緊密接触を湿潤形態で行う場合は、通常は最終的に乾燥(例えば噴霧乾燥)することにより本発明により熱処理されるべき緊密乾燥混合物とする。乾燥混合の場合は、そのような乾燥塊が自動的に得られる。微細分割形態に予備形成された相B及び適宜相Cはまた、DE−A10046928において推奨されるとおり、多金属酸化物組成物Aの元素構成成分の原料を含む可塑的に再成型可能な混合物中に配合してよい。原料組成物1及び適宜2の構成成分の多金属酸化物組成物A(原料組成物3)の原料との緊密接触は、当然ながらDE−A19815281に記載の通り行ってもよい。
【0067】
活性組成物を得るための熱処理及び形状付与は、多金属酸化物活性組成物I〜IIIに関して記載したとおり行ってよい。
【0068】
一般的に、多金属酸化物活性組成物I〜IV触媒は好都合にはDE−A10325487またはDE−A10325488に記載の通り製造してよい。
【0069】
適用の観点から適切には、アクロレインからアクリル酸への不均一系触媒作用気相部分酸化のための本発明の方法は、例えばEP−A700893またはDE−A4431949またはWO03/057653またはWO03/055835またはWO03/059857またはWO03/0576373に記載の通り、固定化触媒床を充填した管束反応器内で行われる。
【0070】
換言すれば、最も単純な態様において、本発明の方法により使用される固定化触媒床は管束反応器の均一に充填された金属チューブ内に配置させ、そして加熱媒体(ワンゾーン法)、一般的には塩溶融物を金属チューブ周囲に導入する。塩溶融物(加熱媒体)及び反応ガスの混合物を単純な同方向または対向流の内部に導入してよい。しかしながら、加熱媒体(塩溶融物)はまた反応器上に目視できる屈曲した態様において管束の周囲に導入することにより、全反応器上の目視された部分のみが同方向または対向流を起こして反応ガス混合物吐出口の方向に流動するようにしてもよい。加熱媒体(熱交換媒体)の体積流速は典型的には反応器への導入口から反応器から吐出口に渡る熱交換媒体の温度上昇(発熱反応により起こる)が0〜10℃、しばしば2〜8℃、多くの場合3〜6℃であるようにする。管束反応器内への熱交換媒体の導入口温度(本明細書においては、これは固定化触媒床の温度に相当する)は、一般的に220〜350℃、しばしば245〜285℃、または245〜265℃である。適当な熱交換媒体は特に流体の熱媒体である。硝酸カリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム及び/または硝酸ナトリウムのような塩、または、ナトリウム、水銀及び種々の金属の合金のような低融点金属の溶融物の使用が特に適している。イオン性の液体もまた使用できる。
【0071】
適切には、反応ガス混合物を所望の温度まで予備加熱した固定化触媒床の内容物に供給する。
【0072】
固定化触媒床上のアクロレインの所望の高値(例えば≧140Nl/l・h、一般的には≦600Nl/l・h)の最終時間当たり空間速度の場合は、本発明の方法は適切には2ゾーンの管束反応器内で行う(しかしながら1ゾーンの管束反応器内で行うことも同様に可能である)。本発明によりこの目的のために使用できる2ゾーンの管束反応器の好ましい変形例は、DE−C2830765に開示されている。しかしながら、DE−C2513405、US−A3147084、DE−A2201528、EP−A383224及びDE−A2903582に開示されている2ゾーンの管束反応器も適している。
【0073】
換言すれば、最も単純な態様において、本発明において使用する固定化触媒床は管束反応器の均一に充填された金属チューブ内に配置され、そして2種の実質的に空間的に離れた媒体、一般的に塩溶融物を金属チューブ周囲に導入する。特定の塩のバスが伸長しているチューブのセクションが、温度または反応のゾーンを示す。
【0074】
例えば、塩バスAは好ましくはアクロレインの酸化変換(単回通過)が55〜85モル%の範囲の変換値が達成されるまで進行するチューブのセクション(反応ゾーンA)の周囲を流動し、そして、塩バスBは好ましくは、アクロレインのその後の酸化変換(単回通過)が一般的に少なくとも90モル%の範囲の変換値が達成されるまで進行するチューブのセクション(反応ゾーンB)の周囲を流動する(必要に応じて、反応ゾーンA、Bの後に独立した温度に維持されている別の反応ゾーンが存在してもよい)。
【0075】
特定の温度ゾーンにおいて、塩バスは原則として1ゾーン法において実施してよい。塩バスBの導入口温度は通常は塩バスAの温度の少なくとも5〜10℃高値である。そうでない場合は、導入口温度は1ゾーン法で推奨される導入口温度に関する温度範囲内にあってよい。
【0076】
或いは、2ゾーン高負荷法を、例えばDE−A19948523、EP−A1106598に記載の通り、またはDE−A19948248に記載の通り実施してよい。
【0077】
従って、本発明の方法は≧70Nl/l・h、≧90Nl/l・h、≧110Nl/l・h、≧130Nl/l・h、≧180Nl/l・h、≧240Nl/l・h、≧300Nl/l・h、しかし通常は≦600Nl/l・hの固定化触媒床上のアクロレイン時間当たり空間速度について適している。本明細書においては(即ち本明細書におけるアクロレインの時間当たり空間速度の場合においては)、本明細書の基準とは独立して、時間当たり空間速度は不活性物質のみよりなる使用される何れかのセクションを除き、固定化触媒床の容量に基づいている。
【0078】
充填されたガス混合物のために使用する不活性ガスは、例えば≧20容量%または≧30容量%または≧40容量%または≧50容量%または≧60容量%または≧70容量%または≧80容量%または≧90容量%または≧95容量%の分子状窒素よりなってよい。
【0079】
しかしながら、アクロレインの気相部分酸化がプロペンからアクリル酸への2段階気相部分酸化の第2の反応段階である場合、不活性希釈ガスはしばしばHO5〜25または20重量%(第1反応段階で形成され、そして場合により添加される)及びN70〜90容量%よりなる。
【0080】
しかしながら、250Nl/l・hより高値の固定化触媒床上のアクロレインの時間当たり空間速度においては、プロパン、エタン、メタン、ブタン、ペンタン、CO、CO、水蒸気及び/または希ガスのような不活性希釈ガスの使用が本発明の方法のために推奨される。しかしながら、これ等のガスはまた比較的低値のアクロレインの時間当たり空間速度においても使用してよい。
【0081】
アクロレインの本発明の気相部分酸化におけるワーキング圧力は大気圧未満(例えば0.5bar以下)または大気圧より高値であってよい。典型的には、アクロレインの気相部分酸化におけるワーキング圧力は1〜5bar、しばしば1〜3barの値である。
【0082】
通常は本発明のアクロレイン部分酸化の反応圧力は100barを超えない。
【0083】
本発明の固定化触媒床に通される原料反応ガスのモルO:アクロレイン比は通常は≧1である。典型的には、この比は≦3の値である。本発明によれば、上記した充填ガス混合物におけるモルO:アクロレイン比はしばしば1〜2、または1〜1.5である。多くの場合において、本発明の方法は原料反応ガス混合物中に存在するアクロレイン:酸素:水蒸気:不活性ガスの容量比(Nl)が1:(1〜3):(0〜20):(3〜30)、好ましくは1:(1〜3):(0.5〜10):(7〜10)となる状態で実施される。
【0084】
原料反応ガス混合物中のアクロレイン画分は、例えば3または6〜15容量%、しばしば4または6〜10容量%、または、5〜8容量%(各々の場合総容量に基づく)であってよい。
【0085】
固定化触媒床を製造するには、本発明の方法において、多金属酸化物活性組成物を有する適切に形状付与された触媒本体のみ、または、多金属酸化物活性組成物を有する形状付与された触媒本体と、不均一系触媒作用部分気相酸化に関して実質的に不活性の挙動を示す(そして不活性物質よりなる)多金属酸化物活性組成物を有さない形状付与された物体(形状付与された希釈材本体)の、実質的に均質な混合物を使用することが可能である。このような不活性の形状付与された物体の有用な材料は、原則として本発明に適するコーティングされた触媒のための支持体物質としても適するもの全てである。有用なこれ等の物質は例えば多孔性または非多孔性の酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化トリウム、二酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、ケイ酸塩、例えばケイ酸マグネシウムまたはケイ酸アルミニウム、または、既に記載した滑石(例えばCeramTecより入手可能なSteatiteC−220)である。
【0086】
このような不活性の形状付与された希釈材本体の形状は、原則として所望に応じたものとしてよい。換言すれば、これ等は例えば球状、多角形、非中空円筒またはその他の環状であってよい。本発明によれば、選択される不活性の形状付与された希釈材本体は好ましくはそれらにより希釈される形状付与された触媒本体のものに自身の形状が相当しているものである。
【0087】
一般的に、使用する活性組成物の化学組成が固定化触媒床に渡って変化しない場合が望ましい。換言すれば、個々の形状付与された触媒本体のために使用される活性組成物は元素Mo及びVを含む種々の多金属酸化物の混合物であってよいが、同じ混合物はその後固定化触媒床の全ての形状付与された触媒本体に対して好都合に使用されなければならない。
【0088】
容量特異的(即ち容量単位に対して規格化された)活性は好ましくは通常、原料反応ガス混合物の幾何学的特徴の方向に、固定化触媒床内部で継続的、急激または段階的に増大する。
【0089】
容量特異的活性は例えば、形状付与された希釈材本体で均質な態様において製造された形状付与された触媒本体の基本的な量を均質に希釈することにより単純な態様において低減してよい。選択された形状付与された希釈材本体の画分が高値であるほど、固定化床の特定の容量において、低値の活性組成物量、即ち触媒活性となる。
【0090】
即ち、固定化触媒床に渡り反応ガス混合物の流動方向において少なくとも1回上昇する容量特異的活性は、本発明の方法のための単純な態様において、例えば、形状付与された触媒本体の1つの型に基づいて不活性の形状付与された希釈材本体の高値の画分で触媒床を始め、そしてその後、連続的、または少なくとも1回または1回より多く、急激(例えば段階的)に流動方向において形状付与された希釈材本体の上記画分を低減させることにより、得ることができる、しかしながら、容量特異的活性の上昇はまた、例えば、形状付与されたコーティングされた触媒本体の一定の幾何学的特徴及び活性組成物において、支持体に適用された活性組成物の層の厚みを増大させるか、または、同じ幾何学的特徴を有するが異なる重量比の活性組成物を有するコーティングされた触媒の混合物においては、活性組成物のより高い重量比を有する形状付与された触媒本体の画分を増大させることによっても可能である。或いは、活性組成物製造の過程において、例えば炭化すべき原料化合物の乾燥混合物中に焼結二酸化ケイ素のような不活性希釈物質を配合することにより、活性組成物自体を希釈してもよい。希釈物質の異なる添加量は自動的に異なる活性をもたらす。希釈材が多いほど、得られる活性は低値となる。例えば未支持触媒及びコーティング触媒(同じ活性組成物を有する)の混合物の混合比を適宜変化させることによっても、同様の作用を達成できる。記載した変法は組み合わせにおいても使用してよい。
【0091】
当然ながら、化学的に異なる活性組成物を有し、そしてこの異なる組成物の結果として異なる活性を有する触媒もまた、固定化触媒床のために使用してよい。これ等の混合物を不活性希釈物本体で希釈してよい。
【0092】
活性組成物を有する固定化触媒床のセクションの上流及び/または下流は、不活性物質(例えば形状付与された希釈材本体のみ)のみよりなる配置床であってよい(本明細書においては、それらは特段の記載が無い限り、用語の意味のためには固定化触媒床に包まれる)。これ等は同様に固定化触媒床の温度としてよい。不活性床のために使用される形状付与された希釈材本体は活性組成物を有する固定化触媒床のセクションのために用いられる形状付与された触媒本体と同様の幾何学的特徴を有してよい。しかしながら、不活性床用に使用される形状付与された希釈材本体の幾何学的特徴は、また形状付与された触媒本体の上記した幾何学的特徴と異なっていてもよい(例えば輪状ではなく球状)。
【0093】
しばしば、このような不活性床用に使用される形状付与された本体は、輪状の幾何学的特徴である7mx7mmx4mm(外径x長さx内径)または直径d=4〜5mmを有する球状の幾何学的特徴を有する。
【0094】
多くの場合、活性組成物を有する固定化触媒床のセクションは、本発明の方法における反応ガス混合物の流動方向に以下に記載する通り構成される。
【0095】
第1に、10〜60%、好ましくは10〜50%、より好ましくはr20〜40%、最も好ましくは25〜35%の長さまで(即ち、例えば0.70〜1.50m、好ましくは0.90〜1.20mの長さまで)は、活性組成物を持つ固定化触媒床のセクションの全長の各々、1種の均質な混合物または形状付与された触媒本体及び形状付与された希釈材本体(共に好ましくは実質的に同じ幾何学的特徴を有する)の2種の連続した均質な混合物(漸減希釈を有する)であり、ここで、形状付与された希釈材本体の重量比率(形状付与された触媒本体及び形状付与された希釈材本体の質量密度は一般的に僅かに異なるのみである)は、通常は10〜50重量%、好ましくは20〜45重量%、そしてより好ましくは25〜35重量%である。次にこの第1のゾーンの下流、活性組成物を持つ固定化触媒床のセクションの長さの末端まで(即ち、例えば、2.00〜3.00m、好ましくは2.50〜3.00mの長さまで)しばしば好都合に配置されるものは、より低い(第1のゾーンより)程度にのみ希釈された形状付与された触媒本体の床、または、最も好ましくは、第1のゾーンで既に使用されているものと同じ形状付与された触媒本体の単独床である。
【0096】
上記がよく当てはまる場合は、固定化触媒床に使用される形状付与された触媒本体は、コーティングされた触媒の環状物またはコーティングされた触媒の球状物である(特に本明細書において好ましいものとして列挙したもの)。上述した構造形成の目的のためには、本発明における形状付与された触媒本体またはその支持体の環状物及び形状付与された希釈材本体は、好都合には実質的に環状の幾何学的特徴である7mmx3mmx4mm(外径x長さx内径)を有する。
【0097】
上記がよく当てはまる場合はまた、形状付与された希釈材本体のほかに、活性組成物含有量が固定化触媒床の末端における形状付与されたコーティング触媒本体の活性組成物含有量より2〜15重量%低値である形状付与されたコーティング触媒本体を使用する場合である。
【0098】
固定化触媒床の全長を基にして自身の長さが約5〜20%である純粋な不活性物質床は、一般的に反応ガス混合物の流動方向において固定化触媒床を開始する。それは反応ガス混合物の加熱ゾーンとして通常は使用される。
【0099】
典型的には、管束反応器中の触媒チューブは鋼鉄から製造され、そして典型的には1〜3mmの壁厚を有する。その内径は一般的に(均一に)20〜30mm、しばしば21〜26mmである。適用の観点から適切には、管束容器内に収容されている触媒チューブの数は少なくとも5000、好ましくは少なくとも10000である。しばしば、反応容器内に収容されている触媒チューブの数は15000〜30000である。40000超の触媒チューブ数を有する管束反応器は通常は例外的である。容器内には触媒チューブは通常は均質な分布で配置され、分布は、隣接する触媒チューブの中心内軸の間隔(触媒チューブピッチと称する)が35〜45mmとなるように適宜選択する(例えばEP−B468290参照)。
【0100】
本発明の方法における反応ガス混合物の固定化触媒床(ここでは純粋な不活性のセクションを除く)に対する時間当たり空間速度は典型的には1000〜10000Nl/l・h、通常は1000〜5000Nl/l・h、頻繁には1500〜4000Nl/l・hである。
【0101】
本発明の方法を実施する場合、新しい固定化触媒床を、コンディショニング後、通常は、反応ガス混合物の組成を決定し、反応ガス混合物の固定化触媒床上の時間当たり空間速度を決定した後、固定化触媒床の温度(または管束反応器の加熱ゾーン内に入る加熱媒体の導入温度)を、固定化触媒床を通る反応ガス混合物の単回通過におけるアクロレインの変換Cacrが少なくとも90モル%となるように調節する。好ましい触媒を使用する場合は、≧92モル%、または≧94モル%、または≧96モル%、または≧98モル%、及び、しばしば更に≧99モル%以上のCacrの値が可能である。
【0102】
アクリル酸へのアクロレインの不均一系触媒作用部分酸化を持続的に実施する場合は、原料反応ガス混合物の組成及び原料反応ガス混合物の固定化触媒床上の時間当たり空間速度は実質的に一定に維持する(所望に応じて時間当たり空間速度は市場要求変動に適合させる)。反応ガス混合物の単回通過におけるアクロレインの変換を所望の目標枠内(即ち≧90モル%、または≧92モル%、または≧94モル%、または≧96モル%、または≧98モル%、または≧99モル%の値)に維持するためには、適宜(加熱媒体の流量も同様に通常は実質的に保持する)固定化触媒床の温度(管束反応器の温度ゾーン内に入る加熱媒体の導入温度)を上昇させることにより上記製造条件下において通常は経時的な固定化触媒床の活性の低下に対抗する。しかしながら、このような操作は本明細書の冒頭に記載した不都合な点を伴っている。
【0103】
従って、200〜450℃の固定化触媒床温度において固定化触媒床に分子状酸素、不活性ガス及び場合により水蒸気及びやはり場合によりCOを含むアクロレイン非含有酸化ガス混合物G(例えば分子状酸素、不活性ガス及び場合により水蒸気よりなる)を通すためには、操作法は好都合には本発明に従って、既に開始されている固定化触媒床の温度上昇が恒久的に≧10℃または≧8℃(あらかじめ設定した固定化触媒床の温度に基づく)となる前に少なくとも1回、気相部分酸化を中断することである。その後、方法の条件を実質的に保持しながら部分酸化を継続(例えばDE−A10337788に記載されている通り、新しい固定化触媒床の場合のように固定化触媒床上のアクロレインの時間当たり空間速度を徐々に復元することが好ましい)し、そして固定化触媒床の温度は、アクロレインの変換が所望の目標値を達成できるように調節する。一般的に、同じ変換に対するこの温度の値は、部分酸化の中断及びガス混合物Gによる本発明の処理の前に固定化触媒床が有している温度よりも幾分低値となる。固定化触媒床のこの温度の値から開始して、部分酸化を継続しつつ、残存する条件を実質的に維持し、そして固定化触媒床の経時的活性低下に対しては経時的に固定化触媒床の温度を上昇させることにより適宜対抗する。本発明の態様において固定化触媒床にガス混合物Gを通すためには、既に起こっている固定化触媒床の温度上昇が恒久的に≧10℃または≧8℃となる前に、部分酸化を本発明に従って少なくとも1回中断する。その後、記載した通り、部分酸化を本発明に従って好都合に再開する。
【0104】
「固定化触媒床の意図する温度上昇が恒久的に≧10℃または8℃(一般的に≧X℃)となる前に」という表現は、工業規模における固定化触媒床の温度が種々の理由から特定の偏移を有することを考慮している。この場合、固定化触媒床の温度の実際の変動を経時的にプロットし、そしてLegendreとGaussによる最小二乗法の偏差により測定点全体に渡りフィット曲線を作成する。このフィット曲線上で≧10℃または≧8℃(一般的に≧X℃)の温度上昇が達成されれば、「恒久的」という特徴が満たされる。
【0105】
意外にも、アクロレインからアクリル酸への不均一系触媒作用気相部分酸化の長期運転において、本発明の方法におけるホットスポットエクスパンジョンの強度は従来技術の方法よりも好ましい挙動を示す。即ち、本発明の方法は一方では部分的または完全に交換するよりも前に反応器内の固定化触媒床のより長いオンストリームの時間を可能にする。他方で、本発明の方法におけるホットスポットの位置は通常は経時的には反応ガス混合物の導入点から固定化触媒床内への方向に移行するため、経時的に積算して達成されるアクロレインの変換が増大し、そしてアクリル酸形成の選択性も同様に促進される。即ち、ホットスポットは反応ガス混合物中でアクリル酸含有量がまだ顕著となっていない領域内に漸増的に移行する。これにより、既に形成されたアクリル酸がホットスポット温度の影響下に部分的に望ましくない完全燃焼を起こす可能性が低下する。ホットスポット温度は例えばEP−A873783、WO03−076373及びEP−A1270065に記載のサーマルチューブを用いる等、管束反応器中で本発明の方法において測定できる。管束反応器内のこのようなサーマルチューブの数は適切には4〜20本である。好都合には、それらは管束反応器内に均一に分布するように配置される。
【0106】
しばしば、本発明の方法における固定化触媒床の温度の上昇は、固定化触媒床を通る反応ガス混合物の単回通過におけるアクロレインの変換が90モル%、または92モル%、または94モル%、または96モル%、または98モル%、または99モル%未満とならないように実施する。還元すれば、固定化触媒床温度は、部分酸化の運転時間が7500または7000時間となる前、通常は6000時間、そして多くの場合は5000または4000時間となる前に少なくとも1回、通常は上昇させる。
【0107】
最終的に、強調されることは、特に好ましい触媒(例えば本明細書において推奨するもの)を用いる場合の本発明の方法における経時的な固定化触媒床温度の上昇は、好ましくは、生成ガス混合物中のアクロレインの含有量が1500重量ppm、好ましくは600重量ppm、より好ましくは350重量ppmの値を超過しないような態様において実施する(通常は実質的に連続的)。これは部分酸化の生成ガス混合物からアクリル酸を除去するための方法において、アクロレインはアクリル酸の重合傾向を促進するという点で悪影響を有することを考慮している(EP−A1041062参照)。更にまた、生成ガス混合物中の残存酸素は一般的に少なくとも1容量%、好ましくは少なくとも2容量%、より好ましくは少なくとも3容量%でなければならない。
【0108】
本発明の方法は、≧110Nl/l・h、または≧120Nl/l・h、または130Nl/l・hの固定化触媒床上のアクロレインの時間当たり空間速度において運転する場合に特に好都合である。一般的に、新しく充填した固定化触媒床はEP−A990636及びEP−A1106598に記載される通り、ホットスポットの形成とその温度感受性の両方が極めて低値となるような態様に構成する。更にまた、初回試行の場合及び本発明の方法を実施した後の再試行の場合の両方において、アクロレインの固定化触媒床上の時間当たり空間速度は好都合には、安定な運転が樹立されるまで、最初は≦100Nl/l・hの数値のままとする。
【0109】
実施例
A)使用触媒の製造
1.原料組成物1及び2の製造における炭化のために使用するロータリーチューブ炉の一般的説明
ロータリーチューブ炉の模式図を本明細書に添付した図1に示す。以下の参照番号はこの図1に関連する。
【0110】
ロータリーチューブ炉の中央の要素はロータリーチューブ(1)である。これは長さ4000mmであり、内径700mmである。1.4893のステンレス製であり、壁厚10mmである。
【0111】
ロータリーチューブ炉の内壁上には高さ5cm長さ23.5cmのリフティングランセットが搭載されている。これ等は主にロータリーチューブ炉内で熱処理されるべき材料を上昇させて混合する目的に寄与する。
【0112】
ロータリーチューブ炉の同一のある高さにおいて、周囲に等距離(各々90°間隔)で各々4個のリフティングランセット(4連)が搭載されている。ロータリーチューブ炉に沿ってこのような4連物が8セット配置されている(各々23.5cm間隔)。2つの隣接する4連物のリフティングランセットは外周上で相互に対してオフセットとなっている。ロータリーチューブ炉の開始部及び終止部(最初及び最後の23.5cm)においては、リフティングランセットは存在しない。
【0113】
ロータリーチューブ炉の周囲を各々が包囲するロータリーチューブの長さにおいて連続的であり、等しい長さである4つの電気的に加熱される(抵抗加熱の)加熱ゾーンを有するキューボイド(2)内において、ロータリーチューブは自由に回転できる。加熱ゾーンの各々は室温と850℃の間の温度にまで適切なロータリーチューブのセクションを加熱してよい。各加熱ゾーンの最大加熱出力は30kWである。伝記的加熱ゾーンとロータリーチューブの外面の間の距離は約10cmである。開始部及び収量部において、ロータリーチューブはキューボイドを約30cm超えて突出している。
【0114】
回転速度は0〜3rpmの間で可変調節してよい。ロータリーチューブは左回転または右回転できる。右回転の場合は、材料はロータリーチューブ内に残存し、左回転の場合は材料は導入口(3)から吐出口(4)に運搬される。ロータリーチューブの水平に対する傾きの角度は0°〜2°の間で可変調節してよい。バッチ式の運転の場合は、実際は0°である。連続運転の場合は、ロータリーチューブの最低点が材料吐出口になる。ロータリーチューブは電気加熱ゾーンをオフにし、ベンチレーターを(5)をオンにすることにより急速に冷却してよい。これはキューボイドの下方基部の穴(6)を経由して周囲の空気を吸引し、それを蓋内に可変調節できる開口部を有する3つのフラップ(7)を経由して運搬する。
【0115】
材料導入口はロータリースターフィーダーにより制御される(質量制御)。材料吐出口は既に記載したとおり、ロータリーチューブの回転方向により制御される。
【0116】
ロータリーチューブのバッチ運転の場合は250〜500kgの材料の量を熱処理してよい。量は通常はロータリーチューブの加熱セクション中のみに入れられる。
【0117】
ロータリーチューブの中央軸上に位置するランセット(8)から、合計で3種のサーモエレメント(9)が800mmの間隔で材料内に垂直に連絡する。それらは材料の温度の測定を可能とする。本明細書においては、材料の温度とは3種のサーモエレメントの温度の算術平均を指す。本発明によれば、ロータリーチューブ内の材料の2測定温度の最大の偏差は適切には30℃未満、好ましくは20℃未満、より好ましくは10℃未満、最も好ましくは5または3℃未満である。
【0118】
ガス流はロータリーチューブを通してよく、これにより炭化雰囲気または一般的に材料熱処理の雰囲気を調節できる。
【0119】
ヒーター(10)はロータリーチューブ内に通されるガス流をそれがロータリーチューブ内への進入より前に所望の温度(例えば材料についてロータリーチューブ内で望まれる温度)にまで加熱できるようにする。ヒーターの最大出力は1x50kW+1x30kWである。原則として、ヒーター(10)は例えば間接的な熱交換器であってよい。このようなヒーターは原則として冷却器としても使用される。しかしながら、一般的に電気を使用して加熱される金属ワイヤー上のガス流が通される電気ヒーターである(適切にはC,Schniewindt KG,58805Neuerade,Germanyより入手可能な97D/80CSNフローヒーター)。
【0120】
原則として、ロータリーチューブの装置はロータリーチューブを通るガス流の部分的または完全な再循環を可能にする。この目的のために必要な再循環ラインをボールベアリングを用いるか、または、グラファイト圧力シールを用いて、ロータリーチューブ導入口及びロータリーチューブ吐出口に可動な態様において、ロータリーチューブに連結する。これ等の連結部は不活性ガス(例えば窒素)(バリアガス)でフラッシュする。2種のフラッシュ流(11)はロータリーチューブの導入口及びロータリーチューブの吐出口においてロータリーチューブに通されるガス流を供給する。適切には、ロータリーチューブはその開始部及び終止部において狭小化し、そしてそれぞれそこに至る、及びそこから離れる再循環ラインのチューブ内に突出する。
【0121】
ロータリーチューブに通されるガス流の吐出部の下流には、ガス流内で運搬されていた固体粒子を除去するためのサイクロン(12)が配置される(遠心分離器は遠心力と重力の相互作用により気相中に懸垂している固体粒子を分離し;渦巻きとして回転するガス流の遠心力が懸垂粒子の沈降を加速する)。
【0122】
循環ガス流(24)の運搬(ガス循環)はサイクロンの方向に吸引し、他方向に吹付ける循環ガスコンプレッサー(13)(ベンチレーター)を用いて行う。循環ガスコンプレッサーの直ぐ下流ではガス圧は一般的に1気圧より高い。循環ガスコンプレッサーの下流には循環ガス吐出口が配置される(循環ガスは調節弁(14)を介して排出してよい)。吐出口の下流に配置するダイアフラム(ファクター約3で断面減少、圧力低減器)(15)により排出を容易にする。
【0123】
ロータリーチューブ吐出口下流の圧力は調節弁を解して制御できる。これはロータリーチューブ吐出口の下流に搭載された圧力センサー(16)、調節弁に向けて吸引するオフガスコンプレッサー(17)(ベンチレーター)、循環ガスコンプレッサー(13)及び新鮮ガス供給物と組み合わせて行われる。外部の圧力と相対比較して、ロータリーチューブ吐出口の(直ぐ)下流の圧力は例えば+1.0mbar高値及び例えば−1.2mbar低値に設定してよい。換言すれば、ロータリーチューブ内を通って流れるガス流はロータリーチューブから退去する時点においてロータリーチューブの周囲圧力より低値であってよい。
【0124】
ロータリーチューブを通るガス流を少なくとも部分的に再循環することを意図しない場合は、サイクロン(12)と循環ガスコンプレッサー(13)との間の連結を3方向弁の原理(26)により作成し、そしてガス流をオフガスクリーニング装置(23)内に直接通す。循環ガスコンプレッサーの下流に配置したオフガスクリーニング装置への連結は、この場合も同様に3方向弁の原理により作成する。ガス流が実質的に空気のみよりなる場合は、それは循環ガスコンプレッサー(13)を介して吸引(27)する。サイクロンへの連結は3方向弁の原理により作成する。この場合、ガス流は好ましくはロータリーチューブを通って吸引され、これにより内部のロータリーチューブの圧力が大気圧より低くなるようにする。
【0125】
ロータリーチューブ炉装置の連続運転の場合は、ロータリーチューブ吐出口の下流の圧力は好都合には外部の圧力より−0.2mbar低値に設定する。ロータリーチューブ装置のバッチ運転の場合は、ロータリーチューブ吐出口の下流の圧力は好都合には外部の圧力より−0.8mbar低値に設定する。僅かに低値の圧力はロータリーチューブ炉からのガス混合物による周囲空位の汚染を防止する目的に寄与する。
【0126】
循環ガスコンプレッサー及びサイクロンの間には例えば循環ガス中のアンモニア含有量及び酸素含有量を測定するセンサー(18)が配置されている。アンモニアセンサーは好ましくは光学的な測定原理(特定の波長の光の吸収がガスのアンモニア含有量に正比例する)により作動し、そして適切にはPerkin&Elmerより入手できるMCS100である。酸素センサーは酸素の常磁性特性に基づいており、そして適切にはOxymat MAT SF 7MB1010−2CA01−1AA1−Z型のSiemensより入手できるOximatである。
【0127】
ダイアフラム(15)とヒーター(10)の間には、実際に再循環している循環ガス画分(19)内に空気、窒素、アンモニアまたは他のガスのようなガスが計量導入される。しばしば、窒素の基礎的負荷量を(20)に計量導入する。別の窒素/空気スプリッター(21)を用いて酸素センサーの測定値に対応してもよい。
【0128】
廃棄された循環ガス画分(22)(オフガス)がしばしばNO、酢酸、NH等のようなガスを含有し、これ等は完全には安全ではないため、通常はオフガスクリーニング装置(23)により除去される。
【0129】
この目的のために、オフガスはまず洗浄カラムに通される(本質的に内容物を含有しないカラムであり、その吐出口の上流に分離構造の充填物を含有し;オフガス及び水性噴霧ミストが逆方向及び同方向に流動する(反対の噴霧方向を有する2噴霧ノズル)。
【0130】
洗浄カラムを出ると、オフガスは微細粉末フィルタ(一般的に一連のバッグフィルター)を含有する装置に通され、その内部から透過性のオフガスが排出される。最終的に焼却はマッフル炉において行われる。
【0131】
ロータリーチューブに供給され、バリアガスとは異なるガス流の流量は、455JrモデルのKURZ Instruments,Inc.,Montery(USA)より入手可能なセンサー(28)を用いて測定制御する(測定原理:等温風速計を用いた熱−滞留物質流測定)。
【0132】
連続運転の場合は、材料及び気相を対向流においてロータリーチューブ炉に通す。
【0133】
本実施例との関連においては、窒素は常時、≧99容量%の純度を有する窒素を意味する。
2.化学量論的特徴CuMo0.50.5を有する原料組成物1(相B)の製造
25重量%のNH水溶液98lを水603lに添加した。その後、酢酸銅(II)水和物100kg(含有量:CuO40.0重量%)を水性混合物中に溶解し、透明深青色の水溶液1とし、これはCu3.9重量%を含有しており、室温とした。
【0134】
溶液1とは独立して、水620lを40℃に加熱した。7モリブデン酸アンモニウム4水和物(MoO81.5重量%)27.4kgを40℃に維持しながら20分以内に攪拌しながらそこに溶解した。次にパラタングステン酸アンモニウム7水和物(WO88.9重量%)を添加し、90℃に加熱した後、45分以内にこの温度において攪拌しながら溶解した。透明黄橙色の水溶液2を得た。
【0135】
その後、水溶液1を90℃で溶液2に攪拌しながら添加し、その間、全体の混合物の温度は80℃未満には低下しなかった。得られた水性懸濁液を30分間80℃で攪拌した。その後、Niro−Atomizer(Copenhagen)から入手したS−50−N/R噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥した(ガス導入口温度:315℃、ガス吐出口温度:110℃、同方向流)。噴霧粉末は2〜50μmの粒径を有していた。
【0136】
このようにして得られた明緑色の噴霧粉末100kgをAMK(Aachener Misch−und Knetmaschinen Fabrik)より入手可能なVIU160混練器(Sigma刃)内に計量導入し、そして水8lを添加しながら混練した(滞留時間:30分間、温度:40〜50℃)。その後、混練した材料を押出機に空け、押出機(Bonnot Company(Ohio)より入手、型式:G103−10/D7A−572K(6”ExtruderW/Packer))を用いて押出物(長さ:1〜10cm、直径:6mm)として成型した。ベルトドライヤー上において、押出物を120℃の温度(材料温度)で1時間乾燥した。乾燥した押出物をその後、以下の「1」に記載する通りロータリーチューブ炉内で熱処理(炭化)した。
− 熱処理は押出物50kg/hの材料投入量で連続的に行い;
− 水平に対するロータリーチューブの傾きは2°とし;
− 材料に対する対抗流においては、75m(STP)/hの空気流をロータリーチューブに通し、そして、25℃において合計(2x25)50m(STP)/hのバリアガスを補給し;
− ロータリーチューブ吐出口下流の圧力は外部の圧力より0.8mbar低値とし;
− ロータリーチューブは1.5回転/分で左に回転させ;
− 循環ガス法は使用せず;
− ロータリーチューブを通る押出物の初回通過において、外部ロータリーチューブ壁の温度は340℃に設定し;気流をロータリーチューブ内に20〜30℃の温度で通し;
− その後、押出物を以下の相違点を除き、同じスループット速度及び同じ条件下にロータリーチューブに通した。
【0137】
− ロータリーチューブ壁の温度は790℃に設定し;
− 気流は400℃の温度まで加熱されたロータリーチューブ内に通した。
【0138】
その後、赤茶色の押出物をHosokawa−Alpine(Augsburg)より入手した、BQ500Biplexクロスフロー分類ミル上で3〜5μmの平均粒径となるまで粉砕した。このようにして得られた原料組成物1は≦1m/gのBET表面積を有していた。X線回折を用いて以下の相を測定した。
【0139】
1.ウルフラマイト構造を有するCuMoO−III;
2.HT銅モリブデン酸塩。
3.化学量論的特徴CuSbを有する原料組成物2(相C)の製造
3酸化アンチモン(Sb99.9重量%)52kgを水216l(25℃)中に懸濁した。得られた水性懸濁液を80℃に加熱した。その後、20分間80℃に維持しながら攪拌を継続した。その後、30重量%の過酸化水素水溶液40kgを1時間以内に添加し、その間80℃を維持した。この温度を維持しながら、1.5時間攪拌を継続した。次に60℃の水20lを添加して水性懸濁液1を得た。この溶液中に、酢酸銅(II)のアンモニア水溶液618.3kg(溶液kg当たり酢酸銅60.8g及び溶液618.3kg中25重量%のアンモニア水溶液75l)を70℃の温度で攪拌しながら添加した。次に混合物を95℃に加熱し、30分間この温度で攪拌を継続した。次に70℃の水更に50lを添加し、混合物を80℃に加熱した。
【0140】
最後に、水性懸濁液を噴霧乾燥した(Niro−Atomizer(Copenhagen)より入手したS−50−N/R噴霧乾燥機、ガス導入口温度360℃、ガス吐出口温度110℃、同方向流)。噴霧粉末は2〜50μmの粒径を有していた。
【0141】
このようにして得られた噴霧粉末75kgをAMK(Aachener Misch− und Knetmaschinen Fabrik)より入手可能なVIU160混練器(Sigma刃)内に計量導入し、そして水12lを添加しながら混練した(滞留時間:30分間、温度:40〜50℃)。その後、混練した材料を押出機(相Bの製造と同様の押出機)に空け、押出物(長さ:1〜10cm、直径:6mm)として成型した。ベルトドライヤー上において、押出物を120℃の温度(材料温度)で1時間乾燥した。
【0142】
このようにして得られた押出物250kgを以下の「1」に記載する通りロータリーチューブ炉内で熱処理(炭化)した。
− 熱処理は押出物250kgを用いてバッチ式で行い;
− 水平に対するロータリーチューブの傾きは≒0°とし;
− ロータリーチューブは1.5回転/分で右に回転させ;
− 205m(STP)/hのガス流をロータリーチューブに通し;熱処理開始時は空気180m(STP)/h及びN1x25m(STP)/hをバリアガスとして用い;ロータリーチューブを退去するガス流には更にN1x25m(STP)/hを補給し;この全体の気流中、22〜25容量%がロータリーチューブに再循環し、残余は排出され;排出量の分はバリアガスにより、そして残余は新鮮空気で補給し;
− ガス流は25℃でロータリーチューブ内に通し;
− ロータリーチューブ吐出口の下流の圧力は外部の圧力(大気圧)より0.5mbar低値とし;
− 材料の温度は初期は直線的に25℃から250℃まで1.5時間内に上昇させ;次に材料の温度は直線的に250℃から300℃まで2時間内に上昇させ、この温度を2時間維持し;次に材料の温度を直線的に300℃から405℃まで3時間内に上昇させ、この温度をその後2時間維持し;次に加熱ゾーンのスイッチをオフにし、空気を吸引氏、最終的に周囲温度にまで冷却することによりロータリーチューブの急速な冷却を活性化することにより1時間以内に100℃未満まで温度を低下させた。
【0143】
得られた粉状の原料組成物2は0.6m/gのBET表面積及び組成CuSbを有していた。得られた粉末の粉末X線ダイアグラムは実質的にCuSbの屈折角を示していた(JCPDS−ICDDインデックスnスペクトル17−0284と比較)。
4.化学量論的特徴Mo123.351.38を有する原料組成物3の製造
攪拌タンクにまず攪拌しながら25℃の水900lを投入した。その後、7モリブデン酸アンモニウム4水和物(MoO81.5重量%)122.4kgを添加し、混合物を攪拌しながら90℃に加熱した。まずメタバナジウム酸アンモニウム22.7kgを添加し、最後にパラタングステン酸アンモニウム7水和物(WO88.9重量%)20.0kgを添加し、次に90℃に維持しながら攪拌した。合計80分間90℃で攪拌することにより透明な橙色の溶液が得られた。これを80℃に冷却した。80℃に維持しながらまず酢酸18.8kg(≒100重量%、氷酢酸)、次に25重量%のアンモニア水溶液24lを攪拌添加した。
【0144】
溶液は透明橙色のまま残存し、Niro−Atomizer(Copenhagen)から入手したS−50−N/R噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥した(ガス導入口温度:260℃、ガス吐出口温度:110℃、同方向流)。得られた噴霧粉末は原料組成物3を構成し、そして2〜50μmの粒径を有していた。
5.熱処理用であり化学量論的特徴(Mo123.461.390.87(CuMo0.50.50.4(CuSb0.4を有する乾燥組成物の製造
AMK(Aachener Misch−und Knetmaschinen Fabrik)より入手可能なSigma刃2本を有するVIU160トラフ混練器に原料組成物3を75kg、水を5.2l、そして酢酸(氷酢酸100重量%)6.9gをまず充填し、22分間混練した。その後、原料組成物1を3.1kg、そして原料組成物2を4.7kg添加し、更に8分間混練した(T≒40〜50℃)。
【0145】
その後、混練した材料を押出機(相Bの製造と同様の押出機)にあけ、押出機を用いて押出物(長さ:1〜10cm、直径:6mm)として成型した。次にこれ等をベルトドライヤー上において、120℃の温度(材料温度)で1時間乾燥した。
【0146】
その後、乾燥押出物306kgを以下の「1」に記載する通りロータリーチューブ炉内で熱処理した。
− 熱処理は押出物306kgを用いてバッチ式で行い;
− 水平に対するロータリーチューブの傾きは≒0°とし;
− ロータリーチューブは1.5回転/分で右に回転させ;
− 材料の温度は初期は直線的に25℃から100℃まで2時間内に上昇させ;
その間、(実質的に)窒素流205m(STP)/hをロータリーチューブに通した。定常状態において(初期に存在した空気の置換の後)、これは以下の組成を有している。
基本負荷窒素(20)110m(STP)/h;
バリアガス窒素(11)25m(STP)/h;及び、
再循環ガス(19)70m(STP)/h。
【0147】
バリアガス窒素は25℃の温度で供給した。2種の他の窒素流を各々、ロータリーチューブ内で各々が有していた温度においてロータリーチューブに通した。
− その後、加熱速度0.7℃/分で材料温度を100℃〜320℃に上昇させ;
300℃の材料温度が達成されるまで、205m(STP)/hのガス流をロータリーチューブに通し、その組成は以下の通りとした。
基本負荷窒素(20)110m(STP)/h及びロータリーチューブ内に放出されたガスよりなるもの;
バリアガス窒素(11)25m(STP)/h;及び、
再循環ガス(19)70m(STP)/h。
【0148】
バリアガス窒素は25℃の温度で供給した。2種の他の窒素流を各々、ロータリーチューブ内で各々が有していた温度においてロータリーチューブに通した。
【0149】
160℃の材料温度を超えてから300℃の材料温度となるまで、材料の全体的熱処理の過程において放出されたアンモニアの総量Mの40モル%が材料から放出された。
− 320℃の材料温度に到達した時点で、ロータリーチューブのガス流の酸素含有量を0容量%から1.5容量%に増大させ、その後4時間維持した。
【0150】
同時に、ロータリーチューブの4加熱ゾーンの温度を5℃(325℃まで)低下させ、その後4時間そのまま維持した。
【0151】
材料温度は325℃より高値の温度最高値を通過し、これは材料の温度が325℃に戻るまで340℃を超えなかった。
【0152】
205m(STP)/hのロータリーチューブに通すガス流の組成を、この4時間に渡り以下の通り変更した。
基本負荷窒素(20)95m(STP)/h及びロータリーチューブ内に放出されたガスよりなるもの;
バリアガス窒素(11)25m(STP)/h;
再循環ガス(19)70m(STP)/h;及び、
スプリッターを介した空気15m(STP)/h。
【0153】
バリアガス窒素は25℃の温度で供給した。
【0154】
他のガス流の混合物は各々、ロータリーチューブ内で各々が有していた温度においてロータリーチューブに通した。
【0155】
材料温度300℃超過時から4時間経過するまで、材料の全体的熱処理の過程において放出されたアンモニアの総量Mの55モル%が材料から放出された(合計40モル%+55モル%=95モル%のアンモニア量Mが4時間経過前にに放出された)。
− 4時間経過時に、材料の温度は0.85℃/分の加熱速度で約1.5時間以内に400℃まで上昇した。
【0156】
その後、この温度を30分間維持した。
【0157】
この時間に渡り、205m(STP)/hのロータリーチューブに供給されたガス流の組成は以下の通りであった。
基本負荷窒素(20)95m(STP)/h及びロータリーチューブ内に放出されたガスよりなるもの;
空気(スプリッター(21))15m(STP)/h;
バリアガス窒素(11)25m(STP)/h;及び、
再循環ガス70m(STP)/h。
【0158】
バリアガス窒素は25℃の温度で供給した。他のガス流の混合物は各々、ロータリーチューブ内で各々が有していた温度においてロータリーチューブに通した。
− 材料の温度の低下により炭化を終了し;この終了時まで、加熱ゾーンをオフにし、空気吸引によるロータリーチューブの急速冷却をオンとし、そして材料温度を2時間以内に100℃未満の温度まで低下させ、そして最終的には周囲温度まで冷却し;
加熱ゾーンはオフとし、205m(STP)/hのロータリーチューブに供給されたガス流の組成を以下の通り変更した。
基本負荷窒素(20)110m(STP)/h及びロータリーチューブ内に放出されたガスよりなるもの;
空気(スプリッター(21))0m(STP)/h;
バリアガス窒素(11)25m(STP)/h;及び、
再循環ガス70m(STP)/h。
【0159】
バリアガス窒素は25℃の温度でロータリーチューブに供給した。
− 全体の熱処理に渡り、ロータリーチューブ吐出口の(直ぐ)下流の圧力は外部の圧力より0.2mbar低値であった。
6.多金属酸化物活性組成物の形状付与
「5」において得られた触媒活性材料をBQ500Biplexクロスフロー分類ミル(Hosokawa−Alpine Augsburg)上で、その粉末粒子の50%が1〜10μmのメッシュ幅のシーブを通過し、50μmより高値の最大径を有する粒子の画分が1%未満となるように微細分割粉末とした。
【0160】
EP−B714700のS1に記載の通り、粉砕した粉末を用いて輪状の支持体本体をコーティングした(外径7mm、長さ3mm、内径4mm、表面粗放度Rz45μmを有するCeramTecより入手可能なC220型滑石)。バインダーは水75重量%及びグリセロール25重量%の水溶液とした。
【0161】
しかしながら、得られたコーティング触媒の選択された活性組成物の画分は上記した実施例S1とは異なり、20重量%であった(支持体本体及び活性組成物の総重量に基づく)。粉末とバインダーの比は比例的に使用された。
【0162】
図2は材料温度℃の関数としてのMのパーセンテージを示す。図3は材料温度℃の関数としての熱処理に渡る容量%で示した雰囲気中のアンモニア濃度Aである。
B)部分酸化の性能
I.一般的な方法の条件の説明
使用した熱交換媒体:硝酸カリウム60重量%及び亜硝酸ナトリウム40重量%よりなる塩溶融物
触媒チューブの材料:鋼鉄
触媒チューブの大きさ:長さ3200mm、内径25mm、外径30mm(壁厚:2.5mm)
管束中の触媒チューブの数:25,500
反応器:直径6800mmの円筒状容器;中空部分を有する輪状に配置された管束。
【0163】
中空部分の直径:1000mm。容器壁面から最も外側の触媒チューブの距離:150mm。管束中で均質な触媒チューブの分布(触媒チューブ当たり6つの等距離に隣接するチューブ)。
触媒チューブピッチ:38mm
触媒チューブは125mmの厚みの触媒チューブプレート中に固定してその端部を密封され、そしてそのオリフィスにより上端または下端において容器に連結されているフード内に開口させた。
【0164】
管束への熱交換媒体の供給:
管束は4つの等距離(各730mm)の長手方向のセクション(ゾーン)内に長手方向にある触媒チューブプレートの間に連続して搭載された3つの偏向するプレート(各々厚み10mm)により分割した。
【0165】
最上層及び最下層の偏向プレートは輪状の幾何学的特徴を有し、輪の内径は100mmであり、輪の外径は容器壁部を密封しながら伸長させた。触媒チューブは偏向プレートに固定密封しなかった。むしろ、1つのゾーン内で塩溶融物の横方向の流量が実質的に一定となるように、<0.5mmの幅の隙間を有する隙間を残存させた。
【0166】
中央の偏向プレートは環状であり、管束の最も外側の触媒チューブに向けて伸長させた。
【0167】
塩溶融物の再循環は2種の塩ポンプにより行い、その各々には管束の長さの半量を供給させた。
【0168】
反応器のジャケットの周囲の底部に配置され、容器の周辺に渡って塩溶融物を分割する輪状のチャンネル内に向けてポンプに塩溶融物を圧入させた。塩溶融物は反応器ジャケット内のウインドウを通って最下部の長手方向のセクション内の管束に到達する。次に塩溶融物は、下部から上部に向けて容器を目視した場合、実質的に屈曲した態様にて、以下の順序、即ち、
− 外部から内側に、
− 内部から外側に、
− 外部から内側に、
− 内部から外側に、
において、偏向プレートにより誘導される通り流動させた。塩溶融物は反応器ジャケットの上部周囲に搭載した輪状のチャンネル内の容器の周辺を包囲する最上部の長手方向のセクション内に搭載されたウインドウを介して収集し、そして、元の導入口温度まで冷却した後、ポンプにより底部の輪状のチャンネル内に強制的に戻した。
【0169】
原料反応ガス混合物の組成は運転時間に渡り以下の枠組み、即ち:
アクロレイン4〜6容量%、
5〜8容量%、
CO1.2〜2.5容量%、
O6〜10容量%、及び、
少なくとも75容量%、
の範囲内であった。
反応器充填:塩溶融物及び反応ガス混合物を反応器上部より見た場合に逆流となるように通した。塩溶融物は底部より、反応ガス混合物は上部より進入させた。
【0170】
開始時(固定化触媒床のコンディショニング終了時)の塩溶融物の導入口温度は約265℃とした。開始時の塩溶融物の関連吐出口温度は約267℃とした。
【0171】
ポンプ吐出口は塩溶融物6200m/時とした。
【0172】
原料反応ガス混合物は240℃の温度で反応器に供給した。
固定化触媒床のアクロレイン負荷:95〜110Nl/l・h
固定化触媒床の触媒チューブ充填量(上から下へ):
ゾーンA:幾何学的特徴が7mmx7mmx4mm(外径x長さx内径)の滑石環状物の20cmの予備床。
ゾーンB:幾何学的特徴が7mmx3mmx4mm(外径x長さx内径)の滑石環状物30重量%及び調製した輪状(約7mmx3mmx4mm)コーティング触媒70重量%の均質な混合物の100cm触媒充填。
ゾーンC:調製した輪状(約7mmx3mmx4mm)コーティング触媒の200cm触媒充填。
【0173】
熱チューブ(その数は10であり、これは管束の中央領域において均質に分布させた)は以下の通りの構成及び充填、即ち:
(それらを用いてホットスポット温度を測定し;これは10熱チューブの独立した測定の算術平均である)。
【0174】
10熱チューブの各々は40温度測定点を有する中心サーモウェルを有していた(即ち、熱チューブの各々は40個のサーモエレメントを有し、それらは異なる長さでサーモウェル内に組み込まれ、これによりマルチサーモエレメントを構成し、これにより熱チューブ内の異なる高さで温度を同時に測定できるようになる)。
【0175】
各々40温度測定点のうち、最低13最大30が固定化触媒床の活性セクションの最初の1メートルの領域内にあった(反応ガス混合物の流れ方向)。
【0176】
熱チューブの内径は27mmであった。壁厚及びチューブの材料はワーキングチューブと同様であった。
【0177】
サーモウェルの外径は4mmであった。
【0178】
熱チューブに製造した輪状コーティング触媒を充填した。更にまた、球状のコーティングされた触媒(輪状コーティング触媒と同じ活性組成物、SteatiteC220(CeramTec)支持体球の直径は2〜3mm;活性組成物画分は20重量%、調製は、バインダーが適量の水であった以外は輪状コーティング触媒について記載したとおりとした)を熱チューブ内に充填した。
【0179】
熱チューブ通過時の反応ガス混合物の圧力低下がワーキングチューブを反応ガス混合物が通過する場合のものに相当するように、特定の熱チューブの固定化触媒床の全活性セクションに渡り均質な分布となるように球状コーティング触媒を充填した(固定化触媒床の活性セクションに基づく(即ち不活性のセクションを除く);この目的のためには球状コーティング触媒の5〜20重量%が熱チューブ内に必要であった)。同時に、ワーキング及び熱チューブの活性及び不活性のセクションの特定の全充填高さは同様とし、そしてワーキング及び熱チューブ内のチューブの熱交換表面に対するチューブ内に存在する活性組成物の総量の比を同様の値に設定した。
II.長期運転(結果)
固定化触媒床を通る反応ガス混合物の単回通過において変換されるべきアクロレインの目標変換率は99.3モル%に設定した。
【0180】
塩溶融物の導入口温度の連続的上昇により、方法を持続的に実施した場合の時間全体にわたって、この変換率の数値が維持された。一ヶ月に1回部分酸化を中断(毎月の中断までの塩溶融物の導入口温度の上昇は常時≧0.3℃及び≦4℃であった)し、最後に使用した塩溶融物の導入口温度を維持し、24時間〜48時間の期間tに付き30Nl/l・hの固定化触媒床上の時間当たり空間速度においてガス混合物Gを固定化触媒床に通した。ガス混合物Gの酸素含有量を期間tの過程において約2容量%から6容量%に上昇させた。ガス混合物GのCO及びCO含有量は≦1容量%(CO)及び≦4容量%(CO)の値から0容量%まで期間tの過程において低下し、水蒸気含有量は≦6容量%であり、酸化モリブデン水和物は≦1重量ppmであり、ガス混合物Gの残余は実質的に窒素よりなるものであった。
【0181】
次に部分酸化を継続し、塩溶融物の導入口温度を目標変換率がなお維持されるように調節した。
【0182】
塩溶融物の導入口温度及びホットスポット温度及びアクリル酸形成の選択性SAAも、以下の通り開発した。
開始時:
塩溶融物導入口温度=265℃
ホットスポット温度=290℃
AA=94.3モル%
運転時間1年の後:
塩溶融物導入口温度=276℃
ホットスポット温度=297℃
AA=94.2モル%
運転時間2年の後:
塩溶融物導入口温度=282℃
ホットスポット温度=303℃
AA=94.3モル%
運転時間3年の後:
塩溶融物導入口温度=299℃
ホットスポット温度=312℃
AA=94.4モル%
運転時間3年内において、ホットスポット温度の位置は反応ガス混合物の導入点の方向に約25cm移動した。
【0183】
第2の同一設計同一負荷で運転された管束反応器において、部分酸化を相当する態様において実施し、以下の結果を得た。
開始時:
塩溶融物導入口温度=266℃
ホットスポット温度=292℃
AA=94.6モル%
運転時間1年の後:
塩溶融物導入口温度=274℃
ホットスポット温度=299℃
AA=94.6モル%
運転時間2年の後:
塩溶融物導入口温度=283℃
ホットスポット温度=305℃
AA=94.7モル%
運転時間3年の後:
塩溶融物導入口温度=299℃
ホットスポット温度=311℃
AA=94.7モル%
ホットスポット温度の位置の移動は上記の通りであった。
【0184】
温度データ(開始時を除く)は全ての場合において、各々、部分酸化の中断及びガス混合物Gによる固定化触媒床の処理の直前である時間に関するものである。
【0185】
2003年10月29日に出願された米国暫定出願60/514918は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0186】
上記説明により本発明の多くの改変または変更が可能である。従って、添付した請求項の範囲内の本発明は、本明細書に特に記載した態様とは異なるように実施してよい。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】図1は、ロータリーチューブ炉の模式図を示している
【図2】図2は、材料温度℃の関数としてのMのパーセンテージを示す
【図3】図3は、材料温度℃の関数としての熱処理に渡る容量%で示した雰囲気中のアンモニア濃度Aである
【符号の説明】
【0188】
1 ロータリーチューブ、 2 キューボイド、 3 導入口、 4 吐出口、 5 ベンチレータ、 6 キューボイドの下方基部の穴、 7 フラップ、 8 ランセット、 9 サーモエレメント、 10 ヒーター、 11 フラッシュ流、 12 サイクロン、 13 コンプレッサー、 14 調節弁、 15 圧力低減器、 16 圧力センサー、 17 オフガスコンプレッサー、 18 センサー、 19 循環ガス画分、 20 窒素の基礎的負荷量、 21 窒素/空気スプリッター、 22 循環ガス画分、 23 オフガスクリーニング装置、 24 循環ガス流、 26 3方向弁の原理、 27 吸引、 28 センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクロレイン、分子状酸素及び少なくとも1つの不活性希釈剤を含む原料反応ガス混合物を、触媒の活性組成物が元素Mo及びVを含有する少なくとも1つの多金属酸化物であるような昇温された固定化触媒床に通すことにより、そして、固定化触媒床の脱活性化に対抗するために経時的に固定化触媒の温度を上昇させることにより、アクロレインからアクリル酸への不均一系触媒作用による気相部分酸化の長期運転のための方法であって、下記工程:
固定化触媒床の温度の上昇が恒久的に≧10℃となる前に、そして少なくとも1回、気相部分酸化を中断すること、200〜450℃の固定化触媒床温度において固定化触媒床に分子状酸素、不活性ガス及び場合により水蒸気及び更に場合によりCOを含むアクロレイン非含有酸化ガス混合物を通すこと、
を含む方法。
【請求項2】
固定化触媒床の温度の上昇が恒久的に≧8℃となる前に少なくとも1回、気相部分酸化を中断し、そしてガス混合物Gを固定化触媒床に通す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
固定化触媒床の温度の上昇が恒久的に≧4℃となる前に少なくとも1回、気相部分酸化を中断し、そしてガス混合物Gを固定化触媒床に通す、請求項1記載の方法。
【請求項4】
固定化触媒床の温度の上昇が恒久的に≧2℃となる前に少なくとも1回、気相部分酸化を中断し、そしてガス混合物Gを固定化触媒床に通す、請求項1記載の方法。
【請求項5】
ガス混合物Gを固定化触媒床に通す時間が2時間〜120時間である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
固定化触媒床に通すガス混合物Gが酸素を少なくとも2容量%含有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
固定化触媒床に通すガス混合物Gが酸素を少なくとも3容量%含有する請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
固定化触媒床に通すガス混合物Gが酸素1〜8容量%、CO0〜3容量%、CO0〜5容量%、HO0〜25容量%及びNを少なくとも55容量%含有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
触媒の活性組成物が下記式I:
Mo12 (1)
[式中、変数は以下の定義:
=W、Nb、Ta、Cr及び/またはCe、
=Cu、Ni、Co、Fe、Mn及び/またはZn、
=Sb及び/またはBi、
=アルカリ金属1つ以上、
=アルカリ土類金属1つ以上、
=Si、Al、Ti及び/またはZr、
a=1〜6、
b=0.2〜4、
c=0.5〜18、
d=0〜40、
e=0〜2、
f=0〜4、
g=0〜40、及び、
n=酸素ではない式I中の元素の原子価及び頻度により決定される数、
を有する]の少なくとも1つの多金属酸化物である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
管束反応器内で行われる、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
経時的な固定化触媒床の温度の上昇が生成ガス混合物中のアクロレインの含有量が1500重量ppmを超えないように行われる、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
固定化触媒床上のアクロレインの時間当たりの空間速度が≧90Nl/l・hである、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
固定化触媒床上のアクロレインの時間当たりの空間速度が≧130Nl/l・hである、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ガス混合物Gを固定化触媒床に通す時間t内にガス混合物GのCO含有量が0でない開始値から低下する、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ガス混合物Gが>0〜≦20重量ppmのガス状Mo含有化合物を有する、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ガス混合物Gを固定化触媒床に通す時間t内に、ガス混合物Gの酸素含有量が低値の開始値から高値の終止値まで上昇する、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
経時的な固定化触媒床の温度の上昇が、固定化触媒床を通る反応ガス混合物の単回の通過におけるアクロレインの変換が94モル%未満とならないように行われる、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
原料反応ガス混合物がアクロレイン6〜15容量%を含有する、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−509864(P2007−509864A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537102(P2006−537102)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011259
【国際公開番号】WO2005/047226
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】