説明

アゴメラチンの新規結晶形態VI、製造方法及びその応用

アゴメラチンの新規結晶形態、その製造方法及び応用が提供される。アゴメラチンの結晶形態粉末のX線回折パターンにおいて、回折角2θが11.13、11.82、17.49、18.29、19.48、19.72、20.50、21.76、22.54、22.97、24.56、25.36、27.16及び31.93であるところに主なピークがある。新規結晶形態は、良好な純度、安定性及び再現性を有し、調剤において優位性を有する。さらに、安定性及び溶解性は、現状の結晶形態のそれらよりも良好である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アゴメラチン、N−[2−(7−メトキシ−1−ナフチル)]アセトアミドの結晶形態、その製造及びその用途に関する。
【0002】
技術的背景
化学名N−[2−(7−メトキシ−1−ナフチル)エチル]アセトアミド及びブランド名バルドクサン(Valdoxan)を持つアゴメラチンは、以下の式:
【0003】
【化1】


を有する。
【0004】
アゴメラチンは、メラトニン作動系受容体のアゴニストとして且つ5HT2C受容体のアンタゴニストとして作用することにより、二重の作用を有する。その特性は、中枢神経系に、特に大うつ病、季節性情動障害、睡眠障害、心血管疾患、消化器系の疾患、時差ぼけによる不眠と疲労、食欲障害及び肥満症の処置に、活性であることを可能にする。アゴメラチンは、最初のメラトニン作動性抗うつ剤であり、うつ病の処置、睡眠パラメーターの改善及び性機能の維持に有効である。アゴメラチンの製造及び治療用途は、欧州特許EP0447285に報告されている。
【0005】
アゴメラチンの薬学的な価値の観点から、医薬製剤中で好都合であり、温度、光、湿度及び酸素濃度について特定の条件なしで長期保存に十分安定であるように、その化合物を、高純度及び安定な結晶形態で、しかも良好な再現性で得ることは重要である。
【0006】
中国特許CN200510071611.6、CN200610108396.7、CN200610108394.8及びCN200610108395.2は、それぞれ、アゴメラチンの結晶形態II、III、IV、V及びそれらの製造を開示している。
【0007】
これらのうち、結晶形態IIは、エタノールと水から再結晶することにより製造され;結晶形態IIIは、完全な融解が生じるまで110℃で加熱し、次いで結晶の生成までゆっくり冷却することにより製造され;結晶形態IVは、完全な融解が生じるまで110℃でアゴメラチンを加熱し、その後50〜70℃に急速に冷却し、結晶の生成が生じるまで、70℃で約5時間維持することにより製造され;結晶形態Vは、アゴメラチンのいわゆる「高エネルギー」機械的摩砕により製造される。
【0008】
本発明の説明
本発明の目的は、アゴメラチンの新規な結晶形態、すなわち、医薬製剤において有益な特徴を示す結晶形態VIを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、実施が簡単であり、容易に再現しうる、アゴメラチンの結晶形態VIの製造方法を提供することである。
【0010】
アゴメラチンの結晶形態の粉末X線回折図が、回折角2θ 11.13°、11.82°、17.49°、18.29°、19.48°、19.72°、20.50°、21.76°、22.54°、22.97°、24.56°、25.36°、27.16°及び31.93°に主なピークを示す、アゴメラチンの結晶形態。
【0011】
アゴメラチンの結晶形態の粉末X線回折図における回折角2θでの主なピークが、以下の相対強度(パーセント):
【0012】
【表1】


を示す、アゴメラチンの結晶形態。
【0013】
アゴメラチンを、まず酢酸に溶解し、次いで0〜25℃の水に加えて結晶を析出させる、アゴメラチンの結晶形態の製造方法。
【0014】
酢酸中のアゴメラチンの溶液を、最も好ましくは、攪拌を続けながら、ゆっくり水に加えて、結晶の析出を促進する、上記のアゴメラチンの結晶形態の製造方法。この水への徐々の添加は、滴下により達成しうる。
【0015】
本発明に係るアゴメラチンの結晶形態VIについての薬理学的な研究により、アゴメラチンの結晶形態VIは、メラトニン作動系の疾患、睡眠障害、ストレス、不安症、季節性情動障害又は大うつ病、心血管疾患、消化器系の疾患、時差ぼけによる不眠と疲労、統合失調症、恐怖症、うつ病などの処置に使用しうることを示した。
【0016】
本発明により提供されるアゴメラチンの結晶形態VIは、種々の薬学的に許容しうる助剤又は賦形剤と一緒に、経口又は注入投与用の種々の投与剤形として、製剤化されうる。
【0017】
本発明によれば、新規結晶形態VIは、高い純度、安定性且つ良好な再現性で得られ、医薬製剤に好都合である。さらに、前記結晶形態の安定性及び溶解性は、また、いくつかの従来の結晶形態よりも優れている。
【0018】
図面の簡単な説明
図1は、以下の設定:光源としてCuka 40Kv 40mA、ステップ長0.02°、スキャン速度:8°/min、スキャン範囲:3°〜80°、室温の下に、Bruker D8 ADVANCE機器で測定された、本発明の実施例1から得られた結晶形態VIのX線回折図である。
【0019】
特定の実施態様
実施例1
アゴメラチン1gを攪拌しながら酢酸4mlに溶解し、次いで水80mlにゆっくりと滴下した。混合物を、攪拌しながら3.5時間0℃に維持し、ろ過した。固体を、水8mlx2で洗浄し、重量が一定になるまで真空下に55℃で乾燥して、白色固体0.91gを得た。純度:99.6%、融点:97〜98℃。
【0020】
実施例2
アゴメラチン1gを攪拌しながら酢酸4mlに溶解し、次いで水80mlにゆっくりと滴下した。混合物を、攪拌しながら3時間5℃に維持し、ろ過した。固体を、水8mlx2で洗浄し、重量が一定になるまで真空下に55℃で乾燥して、白色固体0.90gを得た。純度:99.6%、融点:97〜98℃。
【0021】
実施例3
アゴメラチン2gを攪拌しながら酢酸8mlに溶解し、次いで水160mlにゆっくりと滴下した。混合物を、攪拌しながら3時間20℃に維持し、ろ過した。固体を、水16mlx2で洗浄し、重量が一定になるまで真空下に55℃で乾燥して、白色固体1.76gを得た。純度:99.6%、融点:97〜98℃。
【0022】
実施例2からのアゴメラチンの結晶形態を乾燥して粉末状の生成物を得、これのX線回折図を、以下のように格子面間隔d、ブラッグ2θ角及び相対強度でプロットした。
【0023】
【表2】

【0024】
実験結果のテスト
結晶形態II、III、IV及びVIをそれぞれ、温度自動調節容器中に40℃で20日間置いた。該結晶形態の安定性を、高速液体クロマトグラフィーにより評価した。
【0025】
1.試料の純度測定
クロマトグラフィー条件:充填剤として、オクタデシルシラン結合シリカ;移動相として、10mM/Lリン酸緩衝液(水酸化ナトリウムによりpH7.0に調整した)とアセトニトリルの容積で2:7の混合溶液;カラム温度40℃;検出波長220nm。純度は、内部標準法を用いて決定する。
【0026】
結晶形態II、III、IV及びVIを、1mg/mL溶液として移動相と調合した。各溶液10μLを取り去り、液体クロマトグラフィーに注入した。クロマトグラムを記録した。
【0027】
2.試料のアッセイ
アッセイは、試料の純度測定の下で記述した外部標準法を用いて行った。結果を表Iに示す:
【0028】
【表3】

【0029】
3.水中の溶解度測定
測定は、HPLCにより外部標準法を用いて行った。結果は表IIに示したとおりである:
【0030】
【表4】

【0031】
上記の結果から、アゴメラチンの新規結晶形態VIが、安定性と溶解性の点で、いくつかの従来の結晶形態よりも優れていることがわかる。その製造に関して、新規結晶形態は、また、工業的な応用の点で、従来の結晶形態III、IV及びVよりもさらに大きな価値がある。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アゴメラチンの結晶形態の粉末X線回折図が、回折角2θ 11.13°、11.82°、17.49°、18.29°、19.48°、19.72°、20.50°、21.76°、22.54°、22.97°、24.56°、25.36°、27.16°及び31.93°に主なピークを示す、アゴメラチンの結晶形態。
【請求項2】
アゴメラチンの結晶形態の粉末X線回折図における回折角2θでの主なピークが、以下の相対強度(パーセント):
【表5】


を示す、請求項1記載のアゴメラチンの結晶形態。
【請求項3】
アゴメラチンを、まず酢酸に溶解し、次いで0〜25℃の水に加えて結晶を析出させる、請求項1又は2記載のアゴメラチンの結晶形態の製造方法。
【請求項4】
酢酸中のアゴメラチンの溶液を、攪拌を続けながら、ゆっくり水に加えて、結晶の析出を促進する、請求項3記載のアゴメラチンの結晶形態の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載のアゴメラチンの結晶形態VIを、薬学的に許容しうる助剤又は賦形剤と一緒に製剤化されうる、医薬組成物。
【請求項6】
メラトニン作動系の疾患、睡眠障害、ストレス、不安症、季節性情動障害又は大うつ病、心血管疾患、消化器系の疾患、時差ぼけによる不眠と疲労、統合失調症、恐怖症、うつ病などの処置に使用するための、請求項1又は2記載のアゴメラチンの結晶形態VI。

【公表番号】特表2012−519715(P2012−519715A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553265(P2011−553265)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【国際出願番号】PCT/CN2010/070931
【国際公開番号】WO2010/102554
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(500287019)レ ラボラトワール セルヴィエ (166)
【Fターム(参考)】